1 00:00:03,070 --> 00:00:08,842 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:08,842 --> 00:01:24,851 ♬~ 3 00:01:27,187 --> 00:01:31,358 <昭和2年2月半ば。 女学校の卒業を前にして➡ 4 00:01:31,358 --> 00:01:34,661 かをるは 慌ただしい日々を送っていた> 5 00:01:37,164 --> 00:01:40,067 (かをる)ただいま~! (惣吉)やあ! 6 00:01:40,067 --> 00:01:43,704 ♬~ 7 00:01:43,704 --> 00:01:48,041 (ツエ)あ お帰んなさい。 待っててもらって よかった。 8 00:01:48,041 --> 00:01:53,714 先日は どうも…。 足は 治ったかい? 9 00:01:53,714 --> 00:01:57,217 おかげさまで…。 ああ そいつは よかった。 10 00:01:57,217 --> 00:02:03,657 今日は 傘を返しにきたんだ。 わざわざ 恐れ入ります。 11 00:02:03,657 --> 00:02:07,160 遅くなって すまねえ。 ずっと 気にかけてたんだが➡ 12 00:02:07,160 --> 00:02:10,063 ここんとこ イワシが たくさん取れて…。 13 00:02:10,063 --> 00:02:15,035 (ツエ)そうだ。 お土産に すばらしい ヒラメを 頂きました。 14 00:02:15,035 --> 00:02:17,170 まあ! それは ごていねいに…。 15 00:02:17,170 --> 00:02:19,673 (ツエ)すぐ 帰ると おっしゃったんですよ。➡ 16 00:02:19,673 --> 00:02:22,175 お引き止めしたのは 私の手柄です。 17 00:02:22,175 --> 00:02:25,512 ♬~ 18 00:02:25,512 --> 00:02:27,447 お母さんは? 19 00:02:27,447 --> 00:02:30,183 うまい具合に 山下さんの お葬式で…。 20 00:02:30,183 --> 00:02:32,686 ♬~ 21 00:02:32,686 --> 00:02:35,188 どうぞ お上がり下さい。 どうぞ どうぞ。 22 00:02:35,188 --> 00:02:38,091 いや… 今日は これで…。 23 00:02:38,091 --> 00:02:41,595 お急ぎですか? 船の修繕が あるんだ。 24 00:02:43,697 --> 00:02:45,632 それじゃ… 駅まで お送りします。 25 00:02:45,632 --> 00:02:57,210 ♬~ 26 00:02:57,210 --> 00:03:00,647 <当時は 未婚の男女が 並んで歩く事など➡ 27 00:03:00,647 --> 00:03:02,983 世間が 許さなかった。➡ 28 00:03:02,983 --> 00:03:07,154 道徳に反するものとして 白い目で 見られた> 29 00:03:07,154 --> 00:03:11,024 ♬~ 30 00:03:11,024 --> 00:03:17,664 私の名前 覚えてますか? 「すみれ」だったかな? 31 00:03:17,664 --> 00:03:21,535 違います! アハハハ 古川かをるだろう? 32 00:03:21,535 --> 00:03:27,174 ちゃんと 覚えてるよ。 ひどい。 人を からかってばかり。 33 00:03:27,174 --> 00:03:34,047 俺の名前は 覚えてっか? 吉武惣吉。 「ソウ」は 物の下に心➡ 34 00:03:34,047 --> 00:03:38,185 物には すべて 心がある。 えらい! 35 00:03:38,185 --> 00:03:40,687 一度だって 忘れた事は ありません。 36 00:03:40,687 --> 00:03:42,689 俺もだ! 37 00:03:49,196 --> 00:03:53,700 (行商の女)こんちは! 魚 どうかね?さようなら。 38 00:03:59,206 --> 00:04:01,708 惣吉さん…。 うん? 39 00:04:03,643 --> 00:04:08,148 こんな事 聞くのは おかしいかもしれませんけど…。 40 00:04:10,150 --> 00:04:14,654 失礼かもしれませんけど…。 失礼なら 聞くな。 41 00:04:17,657 --> 00:04:20,994 いえ やっぱり 聞きます。 42 00:04:20,994 --> 00:04:24,664 惣吉さんは どんな お嫁さんを もらうんですか? 43 00:04:24,664 --> 00:04:27,567 分かるもんか そんな事…。 44 00:04:27,567 --> 00:04:30,570 まだ 決まってないんですか? 決まってねえよ。 45 00:04:33,673 --> 00:04:36,176 好きな人は いるんでしょう? 46 00:04:36,176 --> 00:04:39,179 いるよ 1人だけ…。 47 00:04:59,699 --> 00:05:05,205 どうした? もう 帰ってもいいよ。 48 00:05:07,140 --> 00:05:10,043 嫌です! 49 00:05:10,043 --> 00:05:12,646 惣吉さんには もう 会えないと思うんです。 50 00:05:12,646 --> 00:05:14,648 どうして? 51 00:05:17,517 --> 00:05:22,656 私は 卒業したら あの家を出て よそへ行くんです。 52 00:05:22,656 --> 00:05:26,159 「入兆」という 醤油屋 知ってますか? 53 00:05:26,159 --> 00:05:28,829 本通りの? はい。 54 00:05:28,829 --> 00:05:33,166 私は あそこへ もらわれていきます。 55 00:05:33,166 --> 00:05:36,670 嫁に行くのか? 違います! 56 00:05:36,670 --> 00:05:42,175 「入兆」の坂東久兵衛は 私の父なんです。 57 00:05:42,175 --> 00:05:46,846 父といっても 私は 妾の子ですけど…。 58 00:05:46,846 --> 00:05:49,649 醤油屋の娘だったのか…。 59 00:05:52,185 --> 00:05:56,022 ⚟(電車の警笛) 60 00:05:56,022 --> 00:06:00,227 父は私を 「入兆」から お嫁に 行かせようとしているんです。 61 00:06:02,629 --> 00:06:05,131 同じ銚子に住んでいても➡ 62 00:06:05,131 --> 00:06:10,470 醤油屋と 浜の人たちとは 別世界です。 63 00:06:10,470 --> 00:06:16,142 だから もう 会えませんけど…。 64 00:06:16,142 --> 00:06:22,148 私は 吉武惣吉という名前を 一生 忘れません。 65 00:06:24,651 --> 00:06:28,154 初めて会った日から 今日までの事を➡ 66 00:06:28,154 --> 00:06:30,156 決して忘れません。 67 00:06:33,026 --> 00:06:37,163 まだ会えるよ。 え? 68 00:06:37,163 --> 00:06:40,667 俺たちは… 会うんだ! 69 00:06:40,667 --> 00:06:44,004 ♬~ 70 00:06:44,004 --> 00:06:47,040 惣吉さん…。 71 00:06:47,040 --> 00:07:10,797 ♬~ 72 00:07:10,797 --> 00:07:14,634 <節くれだった たくましい手であった。➡ 73 00:07:14,634 --> 00:07:20,507 かをるは その手から 惣吉の心情を 感じとった。➡ 74 00:07:20,507 --> 00:07:24,344 誰も 引き裂く事のできない きずなを感じた> 75 00:07:24,344 --> 00:07:27,147 (発車の笛) 76 00:07:27,147 --> 00:07:34,654 ♬~ 77 00:07:34,654 --> 00:07:36,589 惣吉さ~ん! 78 00:07:36,589 --> 00:07:50,904 ♬~ 79 00:07:54,040 --> 00:07:56,042 (清次)結核? (るい)うん。➡ 80 00:07:56,042 --> 00:07:58,678 ほら 紀州から こっちへ いらっしゃる時➡ 81 00:07:58,678 --> 00:08:00,613 例の大寒波が あったでしょう? ああ。 82 00:08:00,613 --> 00:08:03,650 あれも こたえたみたい。 は~あ。 83 00:08:03,650 --> 00:08:06,119 (ひな)かをるちゃん 大丈夫? 84 00:08:06,119 --> 00:08:09,990 うつったら 大変よ。 私は バレーボールで鍛えてますから…。 85 00:08:09,990 --> 00:08:13,460 アハハハ。それに 奥様はね 離れみたいな奥座敷に➡ 86 00:08:13,460 --> 00:08:16,496 寝てらっしゃるの。 それなら 少し安心ね。 87 00:08:16,496 --> 00:08:20,633 で どうだったい? 奥様の ご機嫌は…。 88 00:08:20,633 --> 00:08:25,505 それがね 兄さん 優しい言葉 掛けて下さって…。 89 00:08:25,505 --> 00:08:28,141 ご自分は 病弱だから 何にも できない。 90 00:08:28,141 --> 00:08:31,044 だから 今までどおり 旦那様の 面倒は➡ 91 00:08:31,044 --> 00:08:34,014 るいさんが見てくれれば 助かるって…。 92 00:08:34,014 --> 00:08:37,650 本当かい? もう 私 感動しちゃって。 93 00:08:37,650 --> 00:08:43,523 奥様の お言いつけなら 何でも してさしあげたいと思った。 94 00:08:43,523 --> 00:08:49,662 できた お人じゃねえかあ。 聞きしにまさる 賢夫人だよ。 95 00:08:49,662 --> 00:08:53,533 お前にもな ツメの垢でも 煎じて 飲ましてえぐれえだ。 96 00:08:53,533 --> 00:08:59,172 でも 肺病じゃねえ…。 おめえも 早く 肺病になれ。 97 00:08:59,172 --> 00:09:02,609 兄さん…! もういっぺん 言ってみな。 98 00:09:02,609 --> 00:09:05,111 言っていい冗談と 悪い冗談が ありますよ! 99 00:09:05,111 --> 00:09:08,014 つい 本音が出だのよ。 謝んなさいよ 兄さん。 100 00:09:08,014 --> 00:09:11,885 勘違えすんなよ。 俺はな 旦那の お気持ちを察しただけよ。 101 00:09:11,885 --> 00:09:15,121 奥様が肺病じゃ どんなに切なかろうと…。 102 00:09:15,121 --> 00:09:19,125 ごまかすんじゃないよ! うだでえなあ…。 103 00:09:22,629 --> 00:09:27,133 (久兵衛)明治時代 100万人台やった東京の人口が➡ 104 00:09:27,133 --> 00:09:31,638 今日 300万人になろうとしておる。➡ 105 00:09:31,638 --> 00:09:36,142 これは 一体 何を意味しておるか。➡ 106 00:09:36,142 --> 00:09:38,478 何を 意味しておるか? 107 00:09:38,478 --> 00:09:41,514 (小浜)いや…。 分からんのか!? 108 00:09:41,514 --> 00:09:45,652 醤油を使う人間が それだけ増えたという事や! 109 00:09:45,652 --> 00:09:48,988 (一同の感嘆の声) (久兵衛)ええか 考えてみい!➡ 110 00:09:48,988 --> 00:09:53,159 日本人で 醤油を使わん人間が おるか!? 111 00:09:53,159 --> 00:09:55,662 (弥太郎)おらん! そうや。 112 00:09:55,662 --> 00:09:58,698 日本人で 醤油を使わん日本人は…。 113 00:09:58,698 --> 00:10:01,468 日本人やない! (久兵衛)そのとおりや! 114 00:10:01,468 --> 00:10:05,171 …したがって 世の中 不況不況 言うとるが➡ 115 00:10:05,171 --> 00:10:08,007 まず 醤油屋は安泰や。 116 00:10:08,007 --> 00:10:11,845 まあ多少の波は あるかもしれんが 大きく揺らぐ事はない。➡ 117 00:10:11,845 --> 00:10:16,683 潰れる醤油屋というのは それ相応の 理由がある。➡ 118 00:10:16,683 --> 00:10:22,188 放漫な経営主 働く意欲のない従業員。➡ 119 00:10:22,188 --> 00:10:25,692 計画のない設備への投資。 120 00:10:25,692 --> 00:10:29,562 その点 この「入兆」は すべて うまくいっておる! 121 00:10:29,562 --> 00:10:33,433 まず 潰れる心配はないから 安心して 働いてくれ! 122 00:10:33,433 --> 00:10:35,702 ええぞ 大将! (竹田)やかましい この野郎! 123 00:10:35,702 --> 00:10:38,204 (三村)静かにしねえか! 124 00:10:38,204 --> 00:10:42,709 さて 次に わが社の方針やが➡ 125 00:10:42,709 --> 00:10:47,547 醸造タンク エンジンボイラーの買い付けは 中止する事に決定した! 126 00:10:47,547 --> 00:10:50,216 (ざわめき) 127 00:10:50,216 --> 00:10:52,152 (神山)黙って聞いてろ! 128 00:10:52,152 --> 00:10:56,890 「入兆」は 280年の伝統を守るんや。 129 00:10:56,890 --> 00:11:00,760 祖先から受け継いだ 日本人の味を守るんや! 130 00:11:00,760 --> 00:11:03,163 桶仕込みの天然醸造…。 131 00:11:03,163 --> 00:11:05,098 これが 「入兆」の命や! 132 00:11:05,098 --> 00:11:07,667 賛成! 大賛成! なっ なっ! 133 00:11:07,667 --> 00:11:09,602 (猪熊)いいかげんにしろ! い 痛いな。 134 00:11:09,602 --> 00:11:12,338 お前かい 蹴ったの。 (赤川)バカ 俺じゃねえ! 135 00:11:12,338 --> 00:11:14,274 お前やな こら! 違う違う。 136 00:11:14,274 --> 00:11:18,678 (神山)つまみ出せ! (言い争う声) 137 00:11:18,678 --> 00:11:21,181 (戸を開ける音) 138 00:11:23,183 --> 00:11:26,686 (梅木)旦那様 準備できました。 おう。 139 00:11:26,686 --> 00:11:32,192 え~ 紀州から 家内と一緒に来た 3人を 改めて紹介する。 140 00:11:32,192 --> 00:11:34,694 顔と名前ぐらい 覚えてやってくれ。 141 00:11:38,064 --> 00:11:44,704 奥様付きの女中頭 ハマさんだ。 (ハマ)若林ハマ 申します。 142 00:11:44,704 --> 00:11:49,576 店の経理を手伝う 桑原さん。 (桑原)桑原太兵衛です。 143 00:11:49,576 --> 00:11:55,215 英一郎様付きの女中 早苗さんだ。 (早苗)早苗です。 144 00:11:55,215 --> 00:11:59,085 早苗ちゃん! うるせえ! こら! 145 00:11:59,085 --> 00:12:02,822 この3人は 「入兆」のために 故郷を捨てて➡ 146 00:12:02,822 --> 00:12:06,993 この銚子に 骨を埋める覚悟で 来てくれた。 147 00:12:06,993 --> 00:12:09,028 仲ようしたってくれ! 148 00:12:09,028 --> 00:12:15,034 (一同の拍手) 149 00:12:17,170 --> 00:12:22,675 (電車の走行音) 150 00:12:22,675 --> 00:12:27,547 <かをるは 自分の行く末を 考えていた。➡ 151 00:12:27,547 --> 00:12:31,184 「入兆」へ引き取られ おそらく 資産家か➡ 152 00:12:31,184 --> 00:12:35,021 格式ある旧家へ 嫁ぐ事になるだろう。➡ 153 00:12:35,021 --> 00:12:37,523 父も母も それを 望んでいるし➡ 154 00:12:37,523 --> 00:12:40,560 その運命を変える事は もう できない> 155 00:12:40,560 --> 00:12:44,297 ♬~ 156 00:12:44,297 --> 00:12:50,103 <吉武惣吉への思慕の念は 当然 断ち切らなければならないのだ。➡ 157 00:12:50,103 --> 00:12:54,707 反目し合っている醤油屋と 漁師の子弟が 結ばれる事など➡ 158 00:12:54,707 --> 00:12:57,610 万に一つも ありえない。➡ 159 00:12:57,610 --> 00:13:01,514 しかし 惣吉は この手を握りしめた。➡ 160 00:13:01,514 --> 00:13:04,150 「俺たちは会うんだ」と言った> 161 00:13:04,150 --> 00:13:12,025 ♬~ 162 00:13:12,025 --> 00:13:17,664 (大八車の音) 163 00:13:17,664 --> 00:13:21,167 (みずえ)運が よかったのよ。 数学の問題 やさしかったから。 164 00:13:21,167 --> 00:13:24,203 (由岐)ご謙そん ご謙そん! お父さん 喜んだでしょう? 165 00:13:24,203 --> 00:13:26,506 喜んでるような 悲しんでるような…。 166 00:13:26,506 --> 00:13:28,541 どうして? 合格したって事は➡ 167 00:13:28,541 --> 00:13:31,010 娘を手放す事でしょう? ふ~ん。 168 00:13:31,010 --> 00:13:32,945 そりゃそうね。 千葉師範を出ても➡ 169 00:13:32,945 --> 00:13:35,348 勤務先が 銚子になるとは 限らないし…。 170 00:13:35,348 --> 00:13:40,520 うん そうねえ。 そうよ。先生か…。 171 00:13:40,520 --> 00:13:43,856 いつから? そうねえ…。 172 00:13:43,856 --> 00:13:46,693 (英一郎)姉さん…。 何よ!? 173 00:13:46,693 --> 00:13:48,728 英一郎さん…。 え? 174 00:13:48,728 --> 00:13:54,200 どうしたんですか? これ… 上級生に頼まれたんや。 175 00:13:54,200 --> 00:13:57,103 姉さん 銚子商業で ごっつい人気 あるんやね。 176 00:13:57,103 --> 00:13:59,072 ラブレターなら お断りよ。 177 00:13:59,072 --> 00:14:04,877 受け取ってくれへんかったら… 殴られるんや。 178 00:14:07,146 --> 00:14:10,149 おおきに 姉さん…。 179 00:14:14,020 --> 00:14:17,156 「姉さん」て 言ったわね? 言った 言った! 180 00:14:17,156 --> 00:14:20,660 「入兆」の息子なの。 それじゃ かをるさんの弟? 181 00:14:20,660 --> 00:14:24,163 母親違いのね。 (2人)へえ~。 182 00:14:24,163 --> 00:14:26,833 ♬~ 183 00:14:26,833 --> 00:14:32,638 <かをるは 英一郎から 「姉さん」と 呼ばれた事が 意外だった。➡ 184 00:14:32,638 --> 00:14:35,541 その こだわりのなさが うれしかった> 185 00:14:35,541 --> 00:14:48,121 ♬~ 186 00:14:48,121 --> 00:14:51,624 えいっ!あ~ 危ないわね! (3人の笑い声)