1 00:00:03,604 --> 00:00:08,942 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:08,942 --> 00:01:00,627 ♬~ 3 00:01:02,296 --> 00:01:05,132 <昭和 2年 3月18日➡ 4 00:01:05,132 --> 00:01:10,270 銚子高等女学校の卒業式が 行われた。➡ 5 00:01:10,270 --> 00:01:15,142 かをるには 学校長・吉野誠治の 式辞が印象的で➡ 6 00:01:15,142 --> 00:01:18,779 いつまでも 心に残った> 7 00:01:18,779 --> 00:01:23,617 (吉野)しかしながら 醤油の原料で もう一つ➡ 8 00:01:23,617 --> 00:01:27,287 塩がある事を 忘れては なりません。➡ 9 00:01:27,287 --> 00:01:30,190 三度三度の食事においても➡ 10 00:01:30,190 --> 00:01:36,296 おかずの塩加減は はなはだ 難しい。➡ 11 00:01:36,296 --> 00:01:42,169 煮物でも 吸い物でも 塩が 効き過ぎるのは よくないし➡ 12 00:01:42,169 --> 00:01:47,908 塩が足りないのも 間が抜けて おいしくありません。 13 00:01:47,908 --> 00:01:52,846 そして ちょうどいい塩加減というのは➡ 14 00:01:52,846 --> 00:01:55,682 目立たないものであります。 15 00:01:55,682 --> 00:01:58,552 目立たなくて いながら➡ 16 00:01:58,552 --> 00:02:02,756 引き締めるところは きちっと引き締める。➡ 17 00:02:02,756 --> 00:02:05,659 ここが 大切なのである。 18 00:02:05,659 --> 00:02:12,466 ♬~(「仰げば尊し」) 19 00:02:12,466 --> 00:02:31,284 ♬~ 20 00:02:31,284 --> 00:02:36,790 <かをるにとっては 思い出深い 4年間であった。➡ 21 00:02:36,790 --> 00:02:41,661 今日を限りに 恩師と別れ 友と別れる。➡ 22 00:02:41,661 --> 00:02:46,800 そして 吉武惣吉も 遠い存在となるだろう> 23 00:02:46,800 --> 00:02:59,312 ♬~ 24 00:02:59,312 --> 00:03:06,753 <この時 かをるは 満16歳。 当時の数え方では 18歳である> 25 00:03:06,753 --> 00:03:14,928 ♬~(「蛍の光」) 26 00:03:14,928 --> 00:03:39,219 ♬~ 27 00:03:50,731 --> 00:03:53,233 (かをる)お母さん。 (るい)ん? 28 00:04:04,744 --> 00:04:10,250 いろいろ ありがとうございました。 29 00:04:10,250 --> 00:04:13,253 私も 無事に卒業できました。 30 00:04:16,757 --> 00:04:20,627 (ツエ) おめでとうございます。 31 00:04:20,627 --> 00:04:24,631 どうしたのよ 急に改まって。 32 00:04:24,631 --> 00:04:29,136 私 反省してるの。 反省? 33 00:04:30,937 --> 00:04:33,940 明日から 「入兆」へ行くのよ。 34 00:04:35,575 --> 00:04:41,448 それなのに 今まで 何の親孝行もできなかったでしょ。 35 00:04:41,448 --> 00:04:44,918 もっと お母さんに優しく してあげればよかったなあ➡ 36 00:04:44,918 --> 00:04:48,255 って思って。 37 00:04:48,255 --> 00:04:50,924 手遅れよ。 38 00:04:50,924 --> 00:04:54,227 私って 悪い娘だった? 39 00:04:56,730 --> 00:05:00,200 そんな事は ありません。 40 00:05:00,200 --> 00:05:04,371 あんたは 銚子高女にも入ってくれたし➡ 41 00:05:04,371 --> 00:05:07,207 ちゃんと卒業できたし…➡ 42 00:05:07,207 --> 00:05:11,711 お父さんのいない家庭なのに ひねくれもせず➡ 43 00:05:11,711 --> 00:05:13,747 ちゃんと育ってくれたわ。 44 00:05:13,747 --> 00:05:17,050 みんなに自慢したいぐらい。 45 00:05:19,219 --> 00:05:23,723 お母さんに そう言ってもらえると 一番うれしいな。 46 00:05:25,392 --> 00:05:29,229 あんたなら 「入兆」へ行っても 大丈夫。 47 00:05:29,229 --> 00:05:32,732 きっと みんなに かわいがってもらえるわ。 48 00:05:32,732 --> 00:05:36,236 そうかしら? そりゃ そうよ。 49 00:05:36,236 --> 00:05:38,238 母さんの娘だもん。 50 00:05:39,906 --> 00:05:42,809 しょってるわね。 51 00:05:42,809 --> 00:05:47,247 (かをると るいの泣き笑い) 52 00:05:47,247 --> 00:05:50,750 (ツエの泣き声) 53 00:05:50,750 --> 00:05:53,787 どうしたの ツエさん。 54 00:05:53,787 --> 00:05:56,590 明日から 寂しくなります…。 55 00:06:00,560 --> 00:06:06,199 泣かないで ツエさん。 時々 遊びに来るんだから。 56 00:06:06,199 --> 00:06:08,201 はい。 57 00:06:14,074 --> 00:06:19,079 お母さんを よろしくね。 はい。 58 00:06:21,214 --> 00:06:25,885 (清次)いや~ めでてえこった。 てえしたもんだ。 59 00:06:25,885 --> 00:06:27,821 (ひな)あんた 字が読めんの? 60 00:06:27,821 --> 00:06:31,625 なに ぬかしやがるんだ。 ばかにすんねえ。 へい。 61 00:06:37,230 --> 00:06:42,736 伯父さん 伯母さん お世話になりました。 62 00:06:42,736 --> 00:06:45,238 いよいよ明日から 「入兆」へ参ります。 63 00:06:45,238 --> 00:06:48,141 ああ それも めでてえこった。 秋頃にはよ➡ 64 00:06:48,141 --> 00:06:51,578 きっと ぶったまげるような 縁談が転がりごむぜ。 65 00:06:51,578 --> 00:06:54,080 どのぐれえの玉の輿に乗れっかは お前の心がけしでえよ。 66 00:06:54,080 --> 00:06:56,750 なっ。 しっかりやんな。はい。 おう。 67 00:06:56,750 --> 00:06:59,653 (ひな)「入兆」で 苦労しなきゃ いいがねえ。 68 00:06:59,653 --> 00:07:02,188 つまんねえ事 ぶっちゃけんな。 69 00:07:02,188 --> 00:07:06,059 その袴 どうすんの? 大事に しまっておきます。 70 00:07:06,059 --> 00:07:08,061 そうだべね~。 71 00:07:10,697 --> 00:07:14,200 (フラッシュの音) (写真屋)はい 結構です。 72 00:07:14,200 --> 00:07:18,071 (由岐)よく撮れてますように。 (みずえ)一生の宝ですから。 73 00:07:18,071 --> 00:07:20,073 (写真屋) 大丈夫だよ。 修整すっから。 74 00:07:20,073 --> 00:07:22,075 修整? 75 00:07:22,075 --> 00:07:24,711 (写真屋)今度は 一人ずつだね? 76 00:07:24,711 --> 00:07:28,214 お見合い用ですから よろしく。 うそばっかり。 77 00:07:28,214 --> 00:07:30,717 由岐さんは 決まってるじゃない。 78 00:07:30,717 --> 00:07:32,652 いつ 破談になるか 分かんないでしょ。 79 00:07:32,652 --> 00:07:35,221 そりゃそうね。 由岐さんが気に入ったとしても➡ 80 00:07:35,221 --> 00:07:37,724 むこうが 気に入るかどうか 分からないもんね~! 81 00:07:37,724 --> 00:07:39,659 こら! ウフフ…。 82 00:07:39,659 --> 00:07:42,162 (写真屋)誰からですか? はい。 83 00:07:44,597 --> 00:07:47,233 (みずえ)もっと にっこりして。 84 00:07:47,233 --> 00:07:49,736 (由岐)笑い過ぎよ。 85 00:07:49,736 --> 00:07:53,606 お~ さらばじゃ。 我らが青春。 86 00:07:53,606 --> 00:07:55,608 (フラッシュの音) 87 00:07:59,245 --> 00:08:03,116 <翌日の午後 「入兆」から 迎えの者が来た。➡ 88 00:08:03,116 --> 00:08:07,053 るいも 一緒に来るように という事であった> 89 00:08:07,053 --> 00:08:09,689 お待たせしました。 (梅木)このたびは➡ 90 00:08:09,689 --> 00:08:12,192 ご卒業おめでとう存じます。 91 00:08:12,192 --> 00:08:16,696 ありがとうございます。 奥様 お加減は いかがですか? 92 00:08:16,696 --> 00:08:19,599 だいぶ よろしいようで。 まあ それは よがった。 93 00:08:19,599 --> 00:08:24,571 お天気のいい日は 縁側で 日なたぼっこをしておられます。 94 00:08:24,571 --> 00:08:26,573 さあ。 はい。 95 00:08:32,178 --> 00:08:36,082 (久兵衛)なあ せっかく かをるの一生に一度の晴れ姿➡ 96 00:08:36,082 --> 00:08:41,221 見られんで 残念してしもた。 かをるは 皆勤賞を頂きました。 97 00:08:41,221 --> 00:08:44,557 そうか。 そりゃよかった。 98 00:08:44,557 --> 00:08:47,594 健康はな 優等生より ずっと値打ちがある。 99 00:08:47,594 --> 00:08:50,230 細い割には 病気しません。 100 00:08:50,230 --> 00:08:54,234 う~ん 病気は いかん。 家ん中がな 暗なる。 101 00:08:55,902 --> 00:09:00,673 奥様 快方に向かってらっしゃると 聞きましたけれど…。 102 00:09:00,673 --> 00:09:05,178 う~ん… まあ 小康状態というとこやな。➡ 103 00:09:05,178 --> 00:09:08,681 お前も 千代から 聞いてるやろけど➡ 104 00:09:08,681 --> 00:09:11,184 あいつは 肺結核や。 105 00:09:13,186 --> 00:09:19,058 肺にな ピンポン玉ぐらいの 空洞が あいてるらしい。 106 00:09:19,058 --> 00:09:25,198 そやから いずれは入院して 人工気胸を受けんならんやろな。 107 00:09:25,198 --> 00:09:30,069 そこでな… るいに頼みがある。 はい。 108 00:09:30,069 --> 00:09:34,207 お前は 千代から わしの世話を してくれと頼まれたらしいが➡ 109 00:09:34,207 --> 00:09:37,110 それは困る。 110 00:09:37,110 --> 00:09:39,379 家内が 病気をええことにして➡ 111 00:09:39,379 --> 00:09:45,718 囲い者の親子を家に入れた 言われたら 坂東家の名折れや。 112 00:09:45,718 --> 00:09:50,590 ご迷惑でしたら 私は身を引かせて頂きます。 113 00:09:50,590 --> 00:09:55,228 そんな顔をするな。 わしはな➡ 114 00:09:55,228 --> 00:09:57,564 お前に 千代の世話を 頼みたいのや。 115 00:09:57,564 --> 00:10:00,233 えっ? (久兵衛)毎日 ここへ通て➡ 116 00:10:00,233 --> 00:10:02,569 薬 のませたり 着替え 手伝うたり➡ 117 00:10:02,569 --> 00:10:05,238 話の相手をしてやってほしい。➡ 118 00:10:05,238 --> 00:10:09,742 千代に それ言うたらな まんざらでもない顔しとった。➡ 119 00:10:09,742 --> 00:10:14,614 あいつは お前の事が好きらしい。 千代の肺結核も➡ 120 00:10:14,614 --> 00:10:19,752 人に うつるような たちのもんでは ないらしいしな。 121 00:10:19,752 --> 00:10:23,623 そんな事は どうでもいいんです。 122 00:10:23,623 --> 00:10:25,625 奥様が そう おっしゃってくださるんなら➡ 123 00:10:25,625 --> 00:10:28,761 私は 喜んで 何でもいたします。 124 00:10:28,761 --> 00:10:31,664 そうか。 そうしてやってくれるか? 125 00:10:31,664 --> 00:10:34,267 そしたら お前も 毎日 かをるの顔が見られるし➡ 126 00:10:34,267 --> 00:10:37,770 こっちも ありがたい。 ハハハ…。 127 00:10:37,770 --> 00:10:40,673 ⚟(ハマ)旦那様。 (久兵衛)誰や? 128 00:10:40,673 --> 00:10:42,675 ⚟ハマでございます。 129 00:10:45,645 --> 00:10:49,382 今のお話は 納得いきません。➡ 130 00:10:49,382 --> 00:10:52,185 奥様のお世話は ハマがいたします。 131 00:10:53,953 --> 00:10:57,457 お前 そこで 盗み聞きしてたんか? 132 00:10:57,457 --> 00:11:00,960 いえ ちょうど お茶を…。 (久兵衛)ええから 中 入れ。 133 00:11:29,756 --> 00:11:34,928 旦那様。 私が紀州から参りましたんは➡ 134 00:11:34,928 --> 00:11:37,263 奥様と お嬢様の お世話をするためです。 135 00:11:37,263 --> 00:11:41,768 そんな事 お前が勝手に決めるな。 お前の仕事は わしが指図する。 136 00:11:41,768 --> 00:11:44,270 奥様が 私を嫌うてるんですか? 137 00:11:44,270 --> 00:11:49,142 そんな事 あるはずがないやろ。 それやったら なんで? 138 00:11:49,142 --> 00:11:52,946 それを今 わしが ここで 答えな いかんか? 139 00:11:52,946 --> 00:11:57,617 私は 長い間 奥様のお世話をしてきました。 140 00:11:57,617 --> 00:12:01,221 奥様の事やったら 誰よりも 私が よう知っております。 141 00:12:01,221 --> 00:12:03,723 旦那様。 お前は 黙っとれ。 142 00:12:03,723 --> 00:12:05,758 旦那様は ご存じないんです。 143 00:12:05,758 --> 00:12:08,595 奥様の はたには 私がおらな あきません。 144 00:12:08,595 --> 00:12:12,432 そうや そのとおりや。 あいつが 健康な時は そのとおりやったな。 145 00:12:12,432 --> 00:12:17,737 けど 今は違う。 お前は病人の世話には向いとらん。 146 00:12:17,737 --> 00:12:20,240 なんでです? 147 00:12:20,240 --> 00:12:24,744 お前 むっつりしててな 性格が暗い。 陰気だ。 148 00:12:24,744 --> 00:12:28,081 病人は 気が めいって疲れる。 149 00:12:28,081 --> 00:12:32,752 お前は 気が利いて 何でも よう 間違いのうやってくれる。 150 00:12:32,752 --> 00:12:35,755 でも それだけは 欠点やな。 151 00:12:38,625 --> 00:12:41,427 よう 分かりました。 152 00:12:41,427 --> 00:12:43,763 私は 紀州へ いなして もらいます。 153 00:12:43,763 --> 00:12:45,698 (久兵衛)アホ!➡ 154 00:12:45,698 --> 00:12:49,936 お前が おらな 「入兆」は どないなるんや。➡ 155 00:12:49,936 --> 00:12:54,274 ハマはな この「入兆」の 母屋を取りしきるんや。 156 00:12:54,274 --> 00:12:58,144 お客の接待 女中のしつけ 年中行事の手配。 157 00:12:58,144 --> 00:13:01,547 全部 お前に してもらわん ならんのやないしょ。 158 00:13:01,547 --> 00:13:03,549 そうやろが。 159 00:13:07,220 --> 00:13:12,091 まず 仕事始めは この かをるの しつけや。➡ 160 00:13:12,091 --> 00:13:16,229 「入兆」の娘として 恥ずかしない行儀作法➡ 161 00:13:16,229 --> 00:13:19,232 家のしきたり これ 教えてやってほしい。 162 00:13:27,740 --> 00:13:31,244 (久兵衛)かをるは 今日から 坂東家の娘や。➡ 163 00:13:31,244 --> 00:13:35,114 分からん事があったら 何でもハマに聞きなさい。➡ 164 00:13:35,114 --> 00:13:39,118 ハマは うるそうて 厳しいが それも 修業や思て➡ 165 00:13:39,118 --> 00:13:41,254 辛抱するんやで。➡ 166 00:13:41,254 --> 00:13:43,756 それでも どうしても 辛抱でけへん事が あったら➡ 167 00:13:43,756 --> 00:13:45,692 わしに言いなさい。 168 00:13:45,692 --> 00:13:47,627 はい。 169 00:13:47,627 --> 00:13:53,266 ハマ。 きつい事 言うて すまなんだな。 頼むで。 170 00:13:53,266 --> 00:13:55,768 失礼します。 171 00:13:55,768 --> 00:14:09,716 ♬~ 172 00:14:09,716 --> 00:14:12,618 (小声で) あれだけの鬼軍曹がおらんとな➡ 173 00:14:12,618 --> 00:14:15,121 集団が なかなか まとまらん。 174 00:14:16,889 --> 00:14:21,761 <校長先生の言う 「塩味」かなと かをるは思った。➡ 175 00:14:21,761 --> 00:14:26,265 しかし この塩は 効き過ぎて辛いと思った> 176 00:14:32,238 --> 00:14:36,743 <母が帰ったあと かをるは 部屋へ案内された。➡ 177 00:14:36,743 --> 00:14:41,247 女中頭・ハマが決めた 自分の部屋である> 178 00:14:41,247 --> 00:14:54,961 ♬~