1 00:00:04,071 --> 00:00:09,877 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:09,877 --> 00:01:01,161 ♬~ 3 00:01:03,096 --> 00:01:08,702 <昭和8年 「入兆」は 久々に 景気のいい正月を迎えた。➡ 4 00:01:08,702 --> 00:01:12,205 防腐剤混入事件が 無実と分かり➡ 5 00:01:12,205 --> 00:01:17,077 「入兆印」の品質のよさが 天下に とどろいたからである> 6 00:01:17,077 --> 00:01:20,714 (弥太郎) あ~ あ~ あ~! アカンて! 7 00:01:20,714 --> 00:01:23,216 危ない! 危ないて! おい! 8 00:01:24,885 --> 00:01:29,222 <そして 松飾りも取れた ある日…> 9 00:01:29,222 --> 00:01:32,726 (かをる)かをるです。 ⚟(久兵衛)ああ お入り。 10 00:01:38,732 --> 00:01:41,735 ほら こっちへ 座り。 はい。 11 00:01:51,244 --> 00:01:54,147 梅木がな…➡ 12 00:01:54,147 --> 00:01:56,650 お前と 話をしたいそうや。 13 00:01:59,119 --> 00:02:03,690 まあ とにかく 聞いてやってくれ。 わしは 席を外そう。 14 00:02:03,690 --> 00:02:06,193 お父さん。 ええから 言うとおりにせえ。 15 00:02:06,193 --> 00:02:09,229 2人で 話し合うた方が早い。 梅木 ええな。➡ 16 00:02:09,229 --> 00:02:13,233 あれやぞ。 分かったな。 17 00:02:32,219 --> 00:02:36,723 (梅木)何から お話ししていいのか 分かりません。 18 00:02:39,726 --> 00:02:42,529 だから 率直に申し上げます。 19 00:02:46,600 --> 00:02:49,102 私と 結婚して下さい。 20 00:02:51,238 --> 00:02:57,911 かをるさんの お気持ちは 旦那様から 伺っております。 21 00:02:57,911 --> 00:03:02,182 二度と 再婚する意志が ないという事も。 22 00:03:02,182 --> 00:03:07,054 惣吉さんの事を 忘れられずにいるという事も。 23 00:03:07,054 --> 00:03:12,692 それを知っていながら 厚かましく結婚を申し込むのは➡ 24 00:03:12,692 --> 00:03:14,728 非常識だと思います。 25 00:03:14,728 --> 00:03:20,200 でも 私は かをるさんの事を➡ 26 00:03:20,200 --> 00:03:23,703 ずっと以前から 思い続けてきました。 27 00:03:23,703 --> 00:03:28,575 しかし かをるさんは 「入兆」の お嬢さん。 28 00:03:28,575 --> 00:03:32,212 私は 使用人の一人です。 29 00:03:32,212 --> 00:03:36,716 到底 かなわない恋と あきらめていました。 30 00:03:36,716 --> 00:03:43,223 それだけに… かをるさんが 結婚なさった時は➡ 31 00:03:43,223 --> 00:03:46,726 正直に告白しますと➡ 32 00:03:46,726 --> 00:03:51,598 よっぽど 「入兆」を辞めようかと 思ったくらいです。 33 00:03:51,598 --> 00:03:58,238 それが… こういう形で かをるさんが帰ってこられて➡ 34 00:03:58,238 --> 00:04:02,008 私は 動揺しました。 35 00:04:02,008 --> 00:04:08,715 毎日が… 雲に乗ってるような 不思議な気持ちで…。 36 00:04:12,652 --> 00:04:17,157 お話は それだけでしょうか? は? 37 00:04:22,195 --> 00:04:26,700 梅木さんには 申し訳ないと思いますが➡ 38 00:04:26,700 --> 00:04:31,204 私の気持ちは変わりません。 かをるさん…。 39 00:04:31,204 --> 00:04:35,709 あなたは 父に頼まれて 結婚を 申し込んでいるんでしょう? 40 00:04:35,709 --> 00:04:37,744 それは違います。 41 00:04:37,744 --> 00:04:42,482 確かに 旦那様からも 励ましの お言葉を頂きました。 42 00:04:42,482 --> 00:04:46,219 しかし 私は 自分の意志で➡ 43 00:04:46,219 --> 00:04:48,555 あなたに 結婚を 申し込んでいるんです。 44 00:04:48,555 --> 00:04:51,224 これだけは 誤解しないで下さい。 45 00:04:51,224 --> 00:04:55,095 私は 一度 結婚した女です。 46 00:04:55,095 --> 00:05:00,033 亡くなった夫を 忘れられるはずがありません。 47 00:05:00,033 --> 00:05:03,036 それは よく分かります。 48 00:05:05,172 --> 00:05:10,043 しかし… 私は 惣吉さんに 負けないつもりです。 49 00:05:10,043 --> 00:05:13,046 それだけ深く あなたを愛しています。 50 00:05:13,046 --> 00:05:16,683 梅木さん。 坂東家には 英一郎さんという➡ 51 00:05:16,683 --> 00:05:21,188 後継者が いるんですよ。 どういう意味でしょうか? 52 00:05:21,188 --> 00:05:23,690 私は お醤油が好きです。 53 00:05:23,690 --> 00:05:28,562 これからも ずっと醤油に 関わっていきたいと思っています。 54 00:05:28,562 --> 00:05:32,199 だけど 「入兆」を継ぐ気は ありません。 55 00:05:32,199 --> 00:05:36,703 どうか… どうか これだけは 誤解しないで下さい。 56 00:05:36,703 --> 00:05:41,575 私は 出世のために あなたを 望んでいるんではありません。 57 00:05:41,575 --> 00:05:45,712 それは 私も男ですから 出世したい気持ちは あります。 58 00:05:45,712 --> 00:05:47,647 野心もあります。 59 00:05:47,647 --> 00:05:49,583 いつかは 大きな仕事をするつもりで➡ 60 00:05:49,583 --> 00:05:52,219 まじめに 勤めてきました。 でも その事と➡ 61 00:05:52,219 --> 00:05:55,722 結婚の事は 別です。 62 00:05:55,722 --> 00:06:01,528 私は 「入兆」の婿になる気は ありません。 63 00:06:01,528 --> 00:06:06,533 あなたが 「梅木かをる」に なって下されば 本望です。 64 00:06:09,669 --> 00:06:14,007 ごめんなさい。 失礼な事を言ったかもしれません。 65 00:06:14,007 --> 00:06:18,178 いえ いいんです。 今日は お互いに 心のままを➡ 66 00:06:18,178 --> 00:06:23,049 お話しできれば なによりだと思ってます。 67 00:06:23,049 --> 00:06:27,687 これ以上 お話しする事は ないと思いますけど。 68 00:06:27,687 --> 00:06:30,590 そう おっしゃらないで下さい。 69 00:06:30,590 --> 00:06:35,195 気を悪くしないで下さい。 私は 誰とも結婚しません。 70 00:06:35,195 --> 00:06:37,130 私は 待ちます。 71 00:06:37,130 --> 00:06:39,866 かをるさんの気持ちが変わるまで 何年でも待ちます。 72 00:06:39,866 --> 00:06:43,703 そんな事 言われても困るんです。 73 00:06:43,703 --> 00:06:47,207 私が… 私が嫌いですか? 74 00:06:47,207 --> 00:06:51,077 好きとか 嫌いとかの問題じゃ ないんです。 75 00:06:51,077 --> 00:06:53,880 かをるさんの事を思う時➡ 76 00:06:53,880 --> 00:06:58,718 私は 自分が 石ころや鉄の塊じゃ ない事を 強く感じます。 77 00:06:58,718 --> 00:07:02,155 私は 長い間 じっと耐えてきました。 78 00:07:02,155 --> 00:07:04,090 でも 今は違います。 79 00:07:04,090 --> 00:07:06,660 体中の血が 音をたてて流れています。 80 00:07:06,660 --> 00:07:09,663 もう この勢いを抑える事は できないんです。 81 00:07:12,532 --> 00:07:14,534 失礼します。 82 00:07:14,534 --> 00:07:32,185 ♬~ 83 00:07:32,185 --> 00:07:36,356 <かをるは 梅木が 嫌いではなかった。➡ 84 00:07:36,356 --> 00:07:40,860 父の信頼を受け 従順に まじめに尽くしている姿を➡ 85 00:07:40,860 --> 00:07:44,698 女学校時代から 見てきている。➡ 86 00:07:44,698 --> 00:07:50,203 だが かをるの中に 惣吉の面影が 住んでいるかぎり➡ 87 00:07:50,203 --> 00:07:54,074 他の男の事など 思いも及ばなかった> 88 00:07:54,074 --> 00:08:11,091 ♬~ 89 00:08:12,826 --> 00:08:14,828 おい どやった? 90 00:08:16,496 --> 00:08:18,998 あっ… 断られました。 91 00:08:27,674 --> 00:08:29,676 全く 脈なしか? 92 00:08:31,544 --> 00:08:34,447 そのようです。 93 00:08:34,447 --> 00:08:38,651 しかし 私は… 決して あきらめていません。 94 00:08:40,253 --> 00:08:44,691 うん…。 応援するぞ。 95 00:08:44,691 --> 00:08:49,029 おい いざとなったらな わしが家長として命令してもええ。 96 00:08:49,029 --> 00:08:54,200 旦那様 お願いがあります。 うん。 97 00:08:54,200 --> 00:09:00,206 私も男として 自力でかをるさんを 獲得したいと思います。 98 00:09:02,008 --> 00:09:04,644 わしに 「口 出すな」という事か? 99 00:09:04,644 --> 00:09:08,148 生意気 言って 申し訳ありません。 100 00:09:08,148 --> 00:09:12,318 いや… お前が それでええねやったら➡ 101 00:09:12,318 --> 00:09:14,654 お前に任せる。 102 00:09:14,654 --> 00:09:16,656 (梅木)ありがとうございます。 103 00:09:19,526 --> 00:09:26,166 かをるさんと私は 今のところ 大豆と小麦のようなものです。 104 00:09:26,166 --> 00:09:31,037 私は じっくりと もろみが熟成するのを 待ちます。 105 00:09:31,037 --> 00:09:34,040 なるほど。 106 00:09:34,040 --> 00:09:38,678 お前 農業型やな。 (梅木)はっ? 107 00:09:38,678 --> 00:09:43,016 吉武惣吉は 漁師そのものやった。 108 00:09:43,016 --> 00:09:44,951 かをるを 一本釣りで➡ 109 00:09:44,951 --> 00:09:49,189 ピュ~ッ すばやく ひっさろうていきくさった。 110 00:09:49,189 --> 00:09:53,693 いや 何も お前と比較しようと してるんやないぞ。 111 00:09:53,693 --> 00:09:56,029 けどな 梅木。 112 00:09:56,029 --> 00:10:00,200 待つだけ待ってやな 気が付いたら➡ 113 00:10:00,200 --> 00:10:05,071 白髪頭のじいさんになってた っていうんじゃ 話にならんぞ。 114 00:10:05,071 --> 00:10:07,073 はい。 115 00:10:11,211 --> 00:10:13,713 (英一郎)再婚は すべきですよ。 116 00:10:13,713 --> 00:10:16,749 姉さんは まだ若いんだし 良縁があったら➡ 117 00:10:16,749 --> 00:10:19,586 もう一度 幸せになる努力を するべきだよ。 118 00:10:19,586 --> 00:10:23,223 その方が 惣吉さんも 安心するんじゃないのかな。 119 00:10:23,223 --> 00:10:26,726 (るい)そうね。 誰が考えたって そう思うのよね。 120 00:10:26,726 --> 00:10:29,229 ただし 相手が 梅木さんで いいかどうかは➡ 121 00:10:29,229 --> 00:10:31,164 別問題でしょう。 122 00:10:31,164 --> 00:10:34,100 私は 梅木さんが 一番いいと思うけど。 123 00:10:34,100 --> 00:10:36,736 それじゃ 政略結婚だ。 どうして? 124 00:10:36,736 --> 00:10:39,072 お父さんや るいさんのために 姉さんが 結婚するんじゃ➡ 125 00:10:39,072 --> 00:10:42,108 かわいそうだよ。 126 00:10:42,108 --> 00:10:46,746 (るい)かをる。 女が ひとりで 暮らしていくって事は➡ 127 00:10:46,746 --> 00:10:49,649 そんな簡単な事じゃ ありませんよ。 128 00:10:49,649 --> 00:10:54,621 必ず 支えてくれる人が 欲しくなるもんなの。 129 00:10:54,621 --> 00:11:01,694 家庭を持って 子供を産んで その子供を 立派に育てるの。 130 00:11:01,694 --> 00:11:04,197 それが 女の幸せなのよ。 131 00:11:25,718 --> 00:11:30,223 ♬~ 132 00:11:30,223 --> 00:11:35,728 <騒擾事件まで引き起こした 高神村役場の使途不明金問題は➡ 133 00:11:35,728 --> 00:11:40,233 犯罪を認める収入役と 否認する村長の両者とも➡ 134 00:11:40,233 --> 00:11:43,136 有罪の 厳しい判決が下された> 135 00:11:43,136 --> 00:11:45,405 ♬~ 136 00:11:45,405 --> 00:11:48,741 (ぎん)こんな バカげた話が あるでしょうか。 137 00:11:48,741 --> 00:11:52,612 ほとんどの お金は 港の工事を 円滑に進めるための➡ 138 00:11:52,612 --> 00:11:54,614 運動費だったんですよ。 139 00:11:54,614 --> 00:11:57,750 自分の懐には 1銭も 入れてないんですから。 140 00:11:57,750 --> 00:12:00,353 しかしやな ばく大な遊興費を➡ 141 00:12:00,353 --> 00:12:04,190 県の役人と一緒に使たというのも 事実やないか。 え? 142 00:12:04,190 --> 00:12:07,860 だったら お役人だって 同罪じゃありませんか。 143 00:12:07,860 --> 00:12:13,199 主人は 村民に裏切られ 県庁からも 突き放されたんです。 144 00:12:13,199 --> 00:12:16,703 おかげで すっかり気落ちして 寝込んでるんですよ。 145 00:12:16,703 --> 00:12:18,638 泣き言を 言うな。 146 00:12:18,638 --> 00:12:22,041 政治家の看板 ぶら下げてる以上 争い事は付き物や。 147 00:12:22,041 --> 00:12:24,711 勝つ時もあれば 負ける時もあるわい。 148 00:12:24,711 --> 00:12:27,380 ひと事だと思って。 149 00:12:27,380 --> 00:12:30,717 裁判には ばく大な費用が かかったんです。 150 00:12:30,717 --> 00:12:34,587 7,200円もの大金を どうやって返せば いいんですか? 151 00:12:34,587 --> 00:12:37,590 (久兵衛)家屋敷を 売るしかないのんちゃうか? 152 00:12:37,590 --> 00:12:40,226 兄さん ひどい事 言いますね。 153 00:12:40,226 --> 00:12:45,732 現に 収入役は 名洗の家を売って 弁償する 言うてるやないか。 154 00:12:45,732 --> 00:12:48,635 名取家は 高神きっての 旧家ですよ。 155 00:12:48,635 --> 00:12:50,903 そんな みっともないまねが できますか? 156 00:12:50,903 --> 00:12:52,839 そういう ごう慢さがな➡ 157 00:12:52,839 --> 00:12:55,241 ああいう事件 引き起こしたんやぞ。 158 00:12:55,241 --> 00:12:57,176 兄さんにまで どうして そんな ひどい事を➡ 159 00:12:57,176 --> 00:12:59,112 言われなければならないんですか。 160 00:12:59,112 --> 00:13:02,515 <高神村の事件は 今もって 謎とされている。➡ 161 00:13:02,515 --> 00:13:05,218 真相は 霧の中である> 162 00:13:07,353 --> 00:13:13,860 (波の音と カモメの鳴き声) 163 00:13:13,860 --> 00:13:19,732 <かをるは 惣吉の墓に 高神村事件の判決を報告した。➡ 164 00:13:19,732 --> 00:13:23,870 事件に決起した惣吉への 手向けであった。➡ 165 00:13:23,870 --> 00:13:27,874 また かをるは 聞いてもらいたい事があった> 166 00:13:30,209 --> 00:13:33,112 惣吉さん…。 167 00:13:33,112 --> 00:13:38,618 父と母が 私に… 再婚を勧めてるの。 168 00:13:41,220 --> 00:13:44,223 「入兆」の 新しい番頭さんと。 169 00:13:46,092 --> 00:13:51,597 あなた 知ってるでしょう? ほら 梅木さんの事です。 170 00:13:54,734 --> 00:13:58,604 もちろん 私は断りました。 171 00:13:58,604 --> 00:14:03,109 だって 私には あなたが いるんですもの。 172 00:14:08,381 --> 00:14:10,583 でも…。 173 00:14:14,687 --> 00:14:21,561 周りの人たちは みんな 「再婚した方がいい」って言うの。 174 00:14:21,561 --> 00:14:25,765 (カモメの鳴き声) 175 00:14:28,701 --> 00:14:30,636 惣吉さん。 176 00:14:30,636 --> 00:14:33,206 なんとか 言って下さい。 177 00:14:33,206 --> 00:14:41,080 ♬~ 178 00:14:41,080 --> 00:14:46,219 黙ってたら… 再婚しちゃうから。 179 00:14:46,219 --> 00:14:56,229 ♬~