1 00:01:22,223 --> 00:01:23,090 2 00:01:23,090 --> 00:01:37,104 ♬~ 3 00:01:37,104 --> 00:01:51,104 ♬~ 4 00:01:53,087 --> 00:01:58,092 (ナレーター)<慶長5年9月 世にいう天下分け目の関ヶ原> 5 00:01:58,092 --> 00:02:01,095 <乱世に下剋上の夢を託す者> 6 00:02:01,095 --> 00:02:05,099 <また 絶望に突き落とされ なお 這い上がろうとする者…> 7 00:02:05,099 --> 00:02:07,101 <激動の最後の時にこそ➡ 8 00:02:07,101 --> 00:02:11,105 燃え上がり 燃え盛る いくつかの青春があった> 9 00:02:11,105 --> 00:02:15,109 (武蔵)((ンンッ… ンンッ…)) 10 00:02:15,109 --> 00:02:19,046 (お通)((城下外れの 花田橋で待ってますよ)) 11 00:02:19,046 --> 00:02:24,046 ((来ないうちは 100日でも 1000日でも立ってますからね)) 12 00:02:26,053 --> 00:02:29,056 <関ヶ原の戦いに夢敗れた武蔵は➡ 13 00:02:29,056 --> 00:02:33,060 僧 沢庵の計らいで 死を免れたものの➡ 14 00:02:33,060 --> 00:02:36,063 姫路城 天守閣の 開かずの間に幽閉された> 15 00:02:36,063 --> 00:02:41,068 <日もささぬ暗黒の部屋で 人と会わず ひたすら書物を読み➡ 16 00:02:41,068 --> 00:02:47,074 何事かをつかまんとする 青年 武蔵に 時は流れていった> 17 00:02:47,074 --> 00:02:54,081 ≪(つばめの鳴き声) 18 00:02:54,081 --> 00:02:56,081 つばめか… 19 00:02:58,085 --> 00:03:00,085 春が来たのか 20 00:03:03,090 --> 00:03:08,095 「孫子いわく 地形通ずる者あり➡ 21 00:03:08,095 --> 00:03:15,102 かかる者あり 支うる者あり 隘なる者あり➡ 22 00:03:15,102 --> 00:03:19,102 険なる者あり 遠き者あり」 23 00:03:23,043 --> 00:03:26,046 沢庵坊 24 00:03:26,046 --> 00:03:29,049 (沢庵)今 旅から帰ってきたのよ 25 00:03:29,049 --> 00:03:33,053 ちょうど3年目じゃ 26 00:03:33,053 --> 00:03:35,055 もう おぬしもな➡ 27 00:03:35,055 --> 00:03:39,055 赤子から 少しは骨組みが できたじゃろうと思うてのぅ 28 00:03:45,065 --> 00:03:48,068 ご高恩のほど… 29 00:03:48,068 --> 00:03:53,073 何と お礼を述べましょうやら 30 00:03:53,073 --> 00:03:57,077 お礼? ハハハハッ… 31 00:03:57,077 --> 00:04:01,081 だいぶ 人間らしい言葉遣いを覚えたのぅ 32 00:04:01,081 --> 00:04:03,081 アア… 33 00:04:05,085 --> 00:04:08,088 さあ 今日は出よう 34 00:04:08,088 --> 00:04:14,094 光明を抱いて 世の中に 人間たちの中へのぅ 35 00:04:14,094 --> 00:04:18,094 (輝政)3年は長い月日じゃ 36 00:04:20,034 --> 00:04:23,037 何を得た? 37 00:04:23,037 --> 00:04:25,039 申してみよ 38 00:04:25,039 --> 00:04:29,043 いまだ 何事も得ませぬ ただ… 39 00:04:29,043 --> 00:04:31,045 「ただ」? 40 00:04:31,045 --> 00:04:35,049 己が無知を恥ずるのみです 41 00:04:35,049 --> 00:04:39,053 これまでの私は 何事も その真実を知らず 42 00:04:39,053 --> 00:04:42,056 ただ やみくもに怒り 憎み 43 00:04:42,056 --> 00:04:46,060 たけりくるって 日々を走り抜けたのみ 44 00:04:46,060 --> 00:04:50,064 身に残る何ものもなき 貧しき人生でございました 45 00:04:50,064 --> 00:04:55,069 (輝政) …して どうする? これより先 46 00:04:55,069 --> 00:04:57,069 分かりませぬ 47 00:04:59,073 --> 00:05:04,078 どうじゃな? 当家に奉公する気はないか? 48 00:05:04,078 --> 00:05:11,085 身に余るお言葉ですが 己の何たるやも分からぬ不心得者 49 00:05:11,085 --> 00:05:14,088 お役に立つ何ものも 持ち合わせませぬ 50 00:05:14,088 --> 00:05:18,092 この世に生を受けし者 必ず 何か役に立っておる 51 00:05:18,092 --> 00:05:24,031 鳥 魚 草木とて同じことよ 52 00:05:24,031 --> 00:05:28,035 はい 私も そう考えたいと思います 53 00:05:28,035 --> 00:05:34,041 こうして 3年を過ごす前は ただ むやみに栄達を欲し➡ 54 00:05:34,041 --> 00:05:37,044 栄華を望んでいたように 思えるのです 55 00:05:37,044 --> 00:05:42,044 栄達も栄華も 今の私には むなしく思えます 56 00:05:44,051 --> 00:05:48,055 私という人間の生きている意味を 57 00:05:48,055 --> 00:05:51,058 この手で しっかりと つかみ取ってみたいのです 58 00:05:51,058 --> 00:05:53,058 なるほど 59 00:05:55,062 --> 00:05:57,064 そのためには何とする? 60 00:05:57,064 --> 00:06:00,067 流浪の望みでござります 61 00:06:00,067 --> 00:06:02,067 そうか… 62 00:06:07,074 --> 00:06:12,079 この者に 衣服と路銀をやれ 63 00:06:12,079 --> 00:06:18,079 ご高恩 沢庵からも ありがたく お礼を申します 64 00:06:20,020 --> 00:06:23,023 (輝政)若いうちは流浪もよかろう 65 00:06:23,023 --> 00:06:30,030 しかし どこへ行っても 身の生い立ちを忘れぬよう➡ 66 00:06:30,030 --> 00:06:35,035 以後は 故郷の村にあやかり➡ 67 00:06:35,035 --> 00:06:39,039 姓も宮本と名乗るがよかろう 68 00:06:39,039 --> 00:06:43,043 宮本と呼べ 宮本と 69 00:06:43,043 --> 00:06:45,045 ははっ… 70 00:06:45,045 --> 00:06:52,052 名も 「たけぞう」よりは 「むさし」と読むがよい 71 00:06:52,052 --> 00:06:59,059 暗黒の幽閉所から 今日こそ 光明の世界へ 72 00:06:59,059 --> 00:07:06,059 生まれ変わった誕生の第一日 全て新たになるがよかろう 73 00:07:08,068 --> 00:07:13,073 武骨ばかりと思うていた輝政公が 名付け親とは フフッ… 74 00:07:13,073 --> 00:07:17,077 風流を身に着けましたのぅ (輝政)うむ… 75 00:07:17,077 --> 00:07:25,018 フフフフッ… うむ! 宮本武蔵か よい名だ 76 00:07:25,018 --> 00:07:29,022 祝ってやろう これ 酒を持て 77 00:07:29,022 --> 00:07:35,028 (輝政の笑い声) 78 00:07:35,028 --> 00:07:40,033 (沢庵) これからは お互いに競争じゃのぅ 79 00:07:40,033 --> 00:07:43,036 わしの修行と おぬしの修行 80 00:07:43,036 --> 00:07:45,038 なあ 武蔵 81 00:07:45,038 --> 00:07:49,042 旅に出る前に会うていきたい人が おるんではないか? 82 00:07:49,042 --> 00:07:51,044 姉上のことですか? 83 00:07:51,044 --> 00:07:56,049 いや お吟どののことは 心配無用じゃ 84 00:07:56,049 --> 00:07:59,052 おとがめもなく 今ではのぅ 85 00:07:59,052 --> 00:08:05,058 佐用郷の縁者の所に 落ち着いてござる 86 00:08:05,058 --> 00:08:12,065 私だけでなく 姉上まで 大慈悲 ただ かようでござります 87 00:08:12,065 --> 00:08:17,070 わしは西へ行く おぬしは東へ行きなさい 88 00:08:17,070 --> 00:08:22,009 このまま一本道を行けば 花田橋じゃ 89 00:08:22,009 --> 00:08:28,015 よろしいな? 武蔵 この道を行け では おさらばじゃ 90 00:08:28,015 --> 00:08:37,024 ♬~ 91 00:08:37,024 --> 00:08:42,029 《宮本武蔵 俺の青春 まだ遅くはない》 92 00:08:42,029 --> 00:08:48,029 ♬~ 93 00:09:01,048 --> 00:09:03,048 ≪(お通)武蔵さん! 94 00:09:12,059 --> 00:09:17,064 武蔵さん あなたは この橋の名を お忘れになったのですか? 95 00:09:17,064 --> 00:09:21,001 あなたの来ぬうちは 100日でも 1000日でも➡ 96 00:09:21,001 --> 00:09:23,003 ここに待ってると言った お通の言葉も 97 00:09:23,003 --> 00:09:28,008 そなたは 3年前から ここに待っていたのか? 98 00:09:28,008 --> 00:09:30,008 待ってました 99 00:09:32,012 --> 00:09:39,019 あの家へ訳を話し 奉公しながら あなたの姿を待っておりました 100 00:09:39,019 --> 00:09:43,023 今日は日数にして ちょうど970日目 101 00:09:43,023 --> 00:09:47,027 これから先は 一緒に 連れてってくださるでしょうね? 102 00:09:47,027 --> 00:09:54,034 わしの行く先は 苦難の道だ 遊びに遍路するのではない 103 00:09:54,034 --> 00:09:58,038 分かっております あなたの ご修行のお妨げはしません 104 00:09:58,038 --> 00:10:00,040 どんな苦しみも いといません 105 00:10:00,040 --> 00:10:06,046 女連れの武者修行があろうか? 袖をお離し 106 00:10:06,046 --> 00:10:11,051 中山越えの峠の上で 約束したではありませんか 107 00:10:11,051 --> 00:10:15,055 あのときは 追われる身で うつつだった 108 00:10:15,055 --> 00:10:17,057 自分から言ったのではなく➡ 109 00:10:17,057 --> 00:10:22,996 そなたの言葉に 気がせくまま 「うん」と答えただけだった 110 00:10:22,996 --> 00:10:25,999 いいえ いいえ! そんなことはありません 111 00:10:25,999 --> 00:10:30,003 千年杉の所で 私が あなたの 縄目を切るときにも言いました 112 00:10:30,003 --> 00:10:32,005 「一緒に逃げてくれますか」と 113 00:10:32,005 --> 00:10:35,008 あなたは喜んで 「切ってくれ この縄目を切ってくれ」と➡ 114 00:10:35,008 --> 00:10:38,011 2度目でも そう叫んだではありませんか 115 00:10:38,011 --> 00:10:43,016 お離し… 往来の人が驚いている 116 00:10:43,016 --> 00:10:45,016 ハッ… 117 00:10:50,023 --> 00:10:55,028 すいません つい はしたないこと言いました 118 00:10:55,028 --> 00:11:00,028 恩着せがましい今の言葉 忘れてください 119 00:11:02,035 --> 00:11:05,038 お通さん 120 00:11:05,038 --> 00:11:10,043 実は わしは 今日まで900幾十日の間➡ 121 00:11:10,043 --> 00:11:16,049 あの姫路城の天守閣の上に 日の目も見ずに籠もっていたのだ 122 00:11:16,049 --> 00:11:20,053 ええ 伺っておりました 123 00:11:20,053 --> 00:11:26,053 知っていたのか? 沢庵さんから聞いてました 124 00:11:30,063 --> 00:11:33,066 そうか 125 00:11:33,066 --> 00:11:38,071 3年前 中山峠で あなたと お別れしたあと➡ 126 00:11:38,071 --> 00:11:42,075 山道で難儀してたのを 救ってくれたのも沢庵さん 127 00:11:42,075 --> 00:11:48,081 そこの土産物屋へ 奉公口を 見つけてくれたのも沢庵さんです 128 00:11:48,081 --> 00:11:51,084 そして 「男と女のことだ」 129 00:11:51,084 --> 00:11:56,089 「これから先は知らないよ」と 謎みたいなことを言って➡ 130 00:11:56,089 --> 00:11:59,092 昨日も 店で お茶を飲んでいかれました 131 00:11:59,092 --> 00:12:04,097 ♬~ 132 00:12:04,097 --> 00:12:10,103 いいでしょう? ねっ? ねっ? 133 00:12:10,103 --> 00:12:14,107 いつでも店では 暇をくださる 約束になってるんですから➡ 134 00:12:14,107 --> 00:12:18,111 すぐ訳を話して支度をしてきます ここで待っていてくださいましね 135 00:12:18,111 --> 00:12:20,046 最前も言ったとおり➡ 136 00:12:20,046 --> 00:12:25,051 わしは闇の中に3年 書を読み もだえに もだえ➡ 137 00:12:25,051 --> 00:12:28,054 ここへ生まれ変わって 出てきたばかりなのだ 138 00:12:28,054 --> 00:12:35,061 これからが武蔵の… いや 名も宮本武蔵と改めた 139 00:12:35,061 --> 00:12:42,068 この身の大事な1日1日 修行のほかに 何の心もない 140 00:12:42,068 --> 00:12:46,072 そういう人間と 一緒に長い苦難の道を歩いても➡ 141 00:12:46,072 --> 00:12:49,075 そなたは 決して幸せではあるまいが 142 00:12:49,075 --> 00:12:55,081 でも 私は どこまでも お慕い申します 143 00:12:55,081 --> 00:12:58,084 ご修行の邪魔さえ しなければよいのでしょう? 144 00:12:58,084 --> 00:13:02,084 そうでしょう? ねえ そうでしょう? 145 00:13:04,090 --> 00:13:09,090 きっと 邪魔にならないようにしますから 146 00:13:11,097 --> 00:13:13,099 いいですか? 147 00:13:13,099 --> 00:13:16,102 黙って行ってしまうと 私は怒ります 148 00:13:16,102 --> 00:13:21,041 ここで待っていてくださいね すぐ来ますから 149 00:13:21,041 --> 00:13:27,041 ♬~ 150 00:13:30,050 --> 00:13:33,050 嫌ですよ 行ってしまっては 151 00:13:40,060 --> 00:13:43,060 (お通)おじさん! おばさん! 152 00:13:46,066 --> 00:13:52,066 (とんびの鳴き声) 153 00:14:08,088 --> 00:14:10,090 (店主)じゃ 気をつけてな 154 00:14:10,090 --> 00:14:13,093 (お通) 長い間 ありがとうございました 155 00:14:13,093 --> 00:14:16,093 (女将)気をつけて行きなされよ さあさあ さあ 156 00:14:22,035 --> 00:14:27,040 ♬~ 157 00:14:27,040 --> 00:14:32,045 武蔵さん! 武蔵さん! 158 00:14:32,045 --> 00:14:51,064 ♬~ 159 00:14:51,064 --> 00:15:04,064 (泣き声) 160 00:15:06,079 --> 00:15:12,079 (お杉)又八 又八よ なぜ戻らぬ? 161 00:15:14,087 --> 00:15:19,025 この母はのぅ 本位田に嫁いで以来 162 00:15:19,025 --> 00:15:25,031 お前が生きがいで つらい日々を耐えてこれたのじゃ 163 00:15:25,031 --> 00:15:29,035 なのに 又八 164 00:15:29,035 --> 00:15:33,035 お前は この母を捨てたのか? 165 00:15:35,041 --> 00:15:38,044 誰じゃ!? 166 00:15:38,044 --> 00:15:42,048 又八… 又八! 167 00:15:42,048 --> 00:15:45,051 (権六)わしじゃ 権六じゃ 168 00:15:45,051 --> 00:15:50,056 ほう 又八の武者人形じゃな 169 00:15:50,056 --> 00:15:54,060 (お杉) わしが嫁に来たときの祝い物じゃ 170 00:15:54,060 --> 00:16:01,067 うむ… あれほど慈しんだ又八が 家を捨てるとは皮肉なことだ 171 00:16:01,067 --> 00:16:04,070 武蔵めが悪いのじゃ 172 00:16:04,070 --> 00:16:08,074 あやつが 又八に悪霊を吹き込んだのじゃ 173 00:16:08,074 --> 00:16:10,076 それに お通 174 00:16:10,076 --> 00:16:15,081 嫁と定めた身なのに ほかの男に思いを寄せるなど➡ 175 00:16:15,081 --> 00:16:23,022 アア… 獣同様の振る舞いじゃ 許せぬ! 許せぬのじゃ! 176 00:16:23,022 --> 00:16:27,026 権叔父 武蔵のこと 何ぞ分かったか? 177 00:16:27,026 --> 00:16:31,030 (権六)う… うむ… 178 00:16:31,030 --> 00:16:33,032 どうした? 179 00:16:33,032 --> 00:16:39,038 姫路から戻った番所役人の話では 武蔵は赦免されたとか 180 00:16:39,038 --> 00:16:42,041 誠か!? 181 00:16:42,041 --> 00:16:48,047 お杉どの 今更 武蔵を追って どうなさる? 182 00:16:48,047 --> 00:16:52,051 3年前 国境で止められて➡ 183 00:16:52,051 --> 00:16:55,054 皆の言うことを聞いて 戻ってきたが 184 00:16:55,054 --> 00:16:59,058 フッ… 今じゃ 村の衆の笑いぐさになっとるわい 185 00:16:59,058 --> 00:17:04,063 このまま ご領地では 本位田家は暮らすこともできぬ 186 00:17:04,063 --> 00:17:07,066 わし1人がのぅ 国越えは勝手じゃ 187 00:17:07,066 --> 00:17:12,071 なんとしても 武蔵 お通を討って➡ 188 00:17:12,071 --> 00:17:18,077 先祖伝来の面目を 取り戻さなければいけないのじゃ 189 00:17:18,077 --> 00:17:23,016 おばば1人は行かさぬ わしも行こう 190 00:17:23,016 --> 00:17:27,016 (権六)年寄りの冷や水 死に花を咲かしてみるか 191 00:17:29,088 --> 00:17:33,092 <中條流は 足利末期に創始された 剣術の流派のひとつだが➡ 192 00:17:33,092 --> 00:17:38,097 小太刀の名手として名高い 6代目 富田勢源の道場に➡ 193 00:17:38,097 --> 00:17:41,097 佐々木小次郎の姿があった> 194 00:17:44,103 --> 00:17:49,108 (勢源)武器は この長太刀だ 195 00:17:49,108 --> 00:17:51,110 (小次郎)先生 196 00:17:51,110 --> 00:17:55,114 私は 中條流小太刀を学ぶために 当道場に入門いたしたのです 197 00:17:55,114 --> 00:17:59,118 わしの稽古台になるのが不服か? (小次郎)いえ 198 00:17:59,118 --> 00:18:01,120 (勢源)ならば 長太刀を持て 199 00:18:01,120 --> 00:18:06,125 お前のような長身で 腕力がのうては 長太刀は扱えん 200 00:18:06,125 --> 00:18:10,129 わしが 小太刀の術 完成のために役立つことも➡ 201 00:18:10,129 --> 00:18:13,129 また 弟子の道だ 202 00:18:29,082 --> 00:18:31,082 (勢源)ヤーッ! (小次郎)ウッ! 203 00:18:36,089 --> 00:18:39,092 (小太郎)《長刀しか 持たしてもらえぬなら➡ 204 00:18:39,092 --> 00:18:43,096 この長刀で 小次郎の剣 編み出してみせる》 205 00:18:43,096 --> 00:18:46,096 (鳥の鳴き声) 206 00:18:48,101 --> 00:18:55,108 ♬~ 207 00:18:55,108 --> 00:18:57,110 (滑る音) 208 00:18:57,110 --> 00:19:15,128 ♬~ 209 00:19:15,128 --> 00:19:17,063 (叫び声) 210 00:19:17,063 --> 00:19:20,066 <武蔵は ひとり 剣の修行に励んでいた> 211 00:19:20,066 --> 00:19:23,069 <小次郎が技を磨いたのに対し➡ 212 00:19:23,069 --> 00:19:28,074 武蔵は むしろ 基礎的な体力の強化に努めていた> 213 00:19:28,074 --> 00:19:30,076 <武蔵の若い情熱は➡ 214 00:19:30,076 --> 00:19:35,081 3年の幽閉を経て なお 出口を求めて燃えたぎっていた> 215 00:19:35,081 --> 00:19:38,084 <柳生但馬守は➡ 216 00:19:38,084 --> 00:19:40,086 関ヶ原の役での功績により➡ 217 00:19:40,086 --> 00:19:43,089 家康より 1万2000石を賜っていた> 218 00:19:43,089 --> 00:19:49,095 <そして このとき 将軍家指南役の 地位も獲得していたのである> 219 00:19:49,095 --> 00:19:52,098 (柳生)問題は 関ヶ原の役後➡ 220 00:19:52,098 --> 00:19:55,101 諸国にあふれた 浪人たちのことです 221 00:19:55,101 --> 00:19:58,104 彼らは 折あらばと うかがっておりまする 222 00:19:58,104 --> 00:20:02,108 (家康)ならば 但馬が策は何じゃ? 223 00:20:02,108 --> 00:20:06,112 浪人たちの中にも 用いて役に立つ者もおりまする 224 00:20:06,112 --> 00:20:10,116 要は 大坂方につかせぬこと 225 00:20:10,116 --> 00:20:13,119 大御所さまに お味方する諸大名に 226 00:20:13,119 --> 00:20:16,055 召し抱えさせるが よろしかろうと存じまする 227 00:20:16,055 --> 00:20:20,059 役に立たぬ浪人どもは どうする? 228 00:20:20,059 --> 00:20:27,059 されば その者たちこそ処断が肝要 烏合の衆も 時に侮れませぬ 229 00:20:35,074 --> 00:20:39,078 小次郎 その構え 中條流にあらず! 230 00:20:39,078 --> 00:20:41,080 これは私の流儀です 231 00:20:41,080 --> 00:20:44,080 こしゃくな… トーッ! 232 00:20:48,087 --> 00:20:50,089 (打ちつける音) アアッ! 233 00:20:50,089 --> 00:20:52,091 (門下生たち)先生! 234 00:20:52,091 --> 00:20:59,098 ♬~ 235 00:20:59,098 --> 00:21:03,102 <小次郎の姿が 富田道場から消えたのは➡ 236 00:21:03,102 --> 00:21:05,104 その夜のことである> 237 00:21:05,104 --> 00:21:08,107 <平安京の昔から現代に至るまで➡ 238 00:21:08,107 --> 00:21:12,111 京都は常に 日本人の心の中心にあった> 239 00:21:12,111 --> 00:21:16,115 <伝統に根ざした 日本文化の象徴として➡ 240 00:21:16,115 --> 00:21:19,118 日本を代表する都市 京都> 241 00:21:19,118 --> 00:21:24,123 <この辺り 平安 吉岡拳法の 道場のあった四条は➡ 242 00:21:24,123 --> 00:21:27,126 現在 京都のメーンストリートである> 243 00:21:27,126 --> 00:21:31,130 <足利13代将軍 義輝の 指南役だった吉岡家は➡ 244 00:21:31,130 --> 00:21:34,133 天下の武芸者の 目標でもあった> 245 00:21:34,133 --> 00:21:40,139 <門弟 数百人の頂点に 4代 吉岡清十郎がいた> 246 00:21:40,139 --> 00:21:42,141 (門下生) ハハハッ… あの家の女どもは➡ 247 00:21:42,141 --> 00:21:45,144 若先生ひとりに こびて 俺たちを相手にせん! 248 00:21:45,144 --> 00:21:48,147 (門下生)今日は 若先生の何者かを 全く知らぬ家へまいろう 249 00:21:48,147 --> 00:21:53,152 ♪(女性たち) 柴垣 柴垣 柴垣越えて… 250 00:21:53,152 --> 00:21:56,155 (門下生) 京八流の 我が吉岡先生を除いて➡ 251 00:21:56,155 --> 00:21:59,158 天下に剣の分かる人間が 1匹でもいるか? 252 00:21:59,158 --> 00:22:03,162 (植田)若先生がいると思って 見え透いた おべっか言うな 253 00:22:03,162 --> 00:22:08,167 天下に剣術は 京八流だけではない この京だけでも➡ 254 00:22:08,167 --> 00:22:11,170 北野に小笠原源信斎 白河に伊藤弥五郎がおる 255 00:22:11,170 --> 00:22:13,172 (門下生)貴様! 256 00:22:13,172 --> 00:22:16,109 吉岡先生の門下でありながら 吉岡拳法流をくさすのか!? 257 00:22:16,109 --> 00:22:20,113 くさしはせぬ 時代は変わったと言っておる 258 00:22:20,113 --> 00:22:24,117 今や 剣の道を志す輩は 雲のごとく起こり➡ 259 00:22:24,117 --> 00:22:27,120 京はおろか 江戸 常陸 越前 近畿➡ 260 00:22:27,120 --> 00:22:29,122 中国 九州の果てにまで➡ 261 00:22:29,122 --> 00:22:32,125 名人上手の少なくない時勢と なっておる 262 00:22:32,125 --> 00:22:36,129 兵法者のくせに 他を恐れる卑屈な奴だ! 263 00:22:36,129 --> 00:22:38,131 卑屈とは何だ!? 貴様 (門下生)なんだと!? 264 00:22:38,131 --> 00:22:41,134 (騒ぎ声) 265 00:22:41,134 --> 00:22:45,138 (藤次) 若先生 面白くないでしょう? 266 00:22:45,138 --> 00:22:49,138 手前が お供いたします 席を替えましょう 267 00:22:56,149 --> 00:22:58,151 (藤次)お甲 つけてやろうか? 268 00:22:58,151 --> 00:23:01,154 (お甲)あら 若先生 269 00:23:01,154 --> 00:23:03,154 さあ どうぞ 270 00:23:10,163 --> 00:23:14,167 (藤次)おっ いやいや さあさあ さあさあさあ… 271 00:23:14,167 --> 00:23:18,104 はいはい 若先生が お待ちかねですよ 272 00:23:18,104 --> 00:23:20,106 さあ 邪魔者は消えましょう 273 00:23:20,106 --> 00:23:22,106 (朱実)はい 274 00:23:29,115 --> 00:23:34,120 若先生は 朱実に ぞっこんだな (お甲)フフフフッ… 275 00:23:34,120 --> 00:23:36,120 何が おかしいんだ? (お甲)ウン! 276 00:23:40,126 --> 00:23:42,126 どうぞ 277 00:23:47,133 --> 00:23:50,136 (清十郎)辛いものだのぅ (朱実)フフフッ… 278 00:23:50,136 --> 00:23:52,138 藤次は どこへ行った? 279 00:23:52,138 --> 00:23:54,140 また お母さんの部屋でしょう 280 00:23:54,140 --> 00:23:58,144 あいつ お甲に惚れているな 281 00:23:58,144 --> 00:24:02,148 藤次め 時々 わしを置いて 1人で ここに通っているな? 282 00:24:02,148 --> 00:24:06,152 そうであろう? (朱実)嫌な人 フフッ… 283 00:24:06,152 --> 00:24:13,159 ちょうどよいではないか 恋の一対 藤次とお甲 わしと そなた 284 00:24:13,159 --> 00:24:16,095 いや! (清十郎)朱実 よいではないか 285 00:24:16,095 --> 00:24:20,099 いや! 離して! お酒を… お酒を取ってきますから 286 00:24:20,099 --> 00:24:23,102 酒など… (朱実)いや! お母さん! 287 00:24:23,102 --> 00:24:25,104 いや! 誰か来てー! 288 00:24:25,104 --> 00:24:28,107 (清十郎)お甲は… お甲は藤次と仲良くしておるわ 289 00:24:28,107 --> 00:24:32,107 ハァ… お母さん! お母さん お母さん! 290 00:24:34,113 --> 00:24:37,116 チッ… 帰る! 291 00:24:37,116 --> 00:24:40,119 清さま 何を怒っておいでです? 292 00:24:40,119 --> 00:24:43,122 藤次 藤次! さあ 飲み直しましょう 293 00:24:43,122 --> 00:24:47,126 (藤次)さあさあ さあさあ… 何を子供みたいに さあさあ 294 00:24:47,126 --> 00:24:50,129 ほら 機嫌を直して うん? 295 00:24:50,129 --> 00:24:54,133 さあ お酌をなさい (朱実)はい 296 00:24:54,133 --> 00:24:57,136 (お甲)これですもの 297 00:24:57,136 --> 00:25:02,141 清さま この子は いつまでたっても子供なんですよ 298 00:25:02,141 --> 00:25:04,143 もう21だというのに 299 00:25:04,143 --> 00:25:09,148 (藤次)21には見えんな やっと16か17 300 00:25:09,148 --> 00:25:14,153 本当? 藤次さん うれしい! 私 いつまでも16でいたい 301 00:25:14,153 --> 00:25:16,088 16のときに いいことがあったから 302 00:25:16,088 --> 00:25:21,088 ≪(気合い声) 303 00:25:23,095 --> 00:25:26,098 (門下生) 1食のお恵みならば 台所へ回れ 304 00:25:26,098 --> 00:25:28,100 いえ 物ごいではありませぬ 305 00:25:28,100 --> 00:25:33,105 吉岡清十郎先生に 試合をお願いいたしたい 306 00:25:33,105 --> 00:25:37,109 ハハハハッ… おい! 面白いのが来たぞ 307 00:25:37,109 --> 00:25:39,111 先生に試合を申し込んでおる 308 00:25:39,111 --> 00:25:42,114 (門下生)追っ払え 追っ払え! (門下生)待て待て! 309 00:25:42,114 --> 00:25:46,118 貴公 何流か? 誰を師として剣を学んだ? 310 00:25:46,118 --> 00:25:48,120 師も流派もございませぬ 311 00:25:48,120 --> 00:25:54,126 至らぬ身ながら一心に励んで 将来 宮本流を立てたいのが望みです 312 00:25:54,126 --> 00:26:00,132 そのためにも 京八流の神髄 是非 ご一手ご教示賜りたい 313 00:26:00,132 --> 00:26:03,135 (笑い声) 貴公の死骸の引受人はあるのか? 314 00:26:03,135 --> 00:26:07,139 万一の場合は 鳥辺山へお捨てくださろうとも➡ 315 00:26:07,139 --> 00:26:11,143 鴨川へ 芥と共に お流しくださろうとも➡ 316 00:26:11,143 --> 00:26:13,145 決して お恨みには存じません 317 00:26:13,145 --> 00:26:16,082 (藤次) おい! お甲 どこだ? 朱実! 318 00:26:16,082 --> 00:26:20,086 若先生が阿国歌舞伎へ 連れてってくださるぞ 319 00:26:20,086 --> 00:26:24,086 (藤次)あっ これは粗相 お客でござったか 320 00:26:26,092 --> 00:26:29,095 (又八)客ではない! 321 00:26:29,095 --> 00:26:32,098 これは失礼 322 00:26:32,098 --> 00:26:37,103 (又八)おい! 閉めていけ 323 00:26:37,103 --> 00:26:39,103 ご無礼いたした 324 00:26:43,109 --> 00:26:47,113 あなた なに怒ってるんですよ? 325 00:26:47,113 --> 00:26:51,117 又八さんも行かない? (又八)どこへ? 326 00:26:51,117 --> 00:26:54,120 阿国歌舞伎 (又八)ハン! 327 00:26:54,120 --> 00:26:57,123 女房の尻に付きまとう客の➡ 328 00:26:57,123 --> 00:27:00,126 そのまた尻に ついていく亭主があるか! 329 00:27:00,126 --> 00:27:04,130 男のくせに妬いてばかりいて 嫌になっちゃう 330 00:27:04,130 --> 00:27:07,133 ハァ… こんな飲んだくれは置いといて➡ 331 00:27:07,133 --> 00:27:09,135 朱実 さっさと行こう 332 00:27:09,135 --> 00:27:13,139 飲んだくれとは何だ? 亭主に向かって 飲んだくれとは 333 00:27:13,139 --> 00:27:17,076 なにさ ハハハハッ… 334 00:27:17,076 --> 00:27:20,079 亭主なら 亭主らしいことしてごらんよ 335 00:27:20,079 --> 00:27:24,083 誰に食わしてもらってると 思ってんだい? (又八)なに!? 336 00:27:24,083 --> 00:27:28,087 (お甲)江州を出てから お前が 1文でも稼いだことあるかい? 337 00:27:28,087 --> 00:27:33,092 みんな 朱実と 私の腕で 稼いできたんだよ 338 00:27:33,092 --> 00:27:36,095 毎日 酒を飲んで ぶらぶら ぶらぶら… 339 00:27:36,095 --> 00:27:39,098 お城の石担ぎをしてでも 俺が食わしてやる! 340 00:27:39,098 --> 00:27:42,101 フッ… それほど 石担ぎが したいんだったら➡ 341 00:27:42,101 --> 00:27:44,103 この家を出て 1人でおやり 342 00:27:44,103 --> 00:27:49,108 誰も この家にいてくれとは お頼みしませんから 343 00:27:49,108 --> 00:27:51,110 どうぞ ご遠慮なく 344 00:27:51,110 --> 00:27:53,112 さあ 朱実 345 00:27:53,112 --> 00:27:57,116 あら お待たせ ≪(藤次)これは お甲 346 00:27:57,116 --> 00:28:01,116 くそ… ≪(お甲の笑い声) 347 00:28:18,070 --> 00:28:20,072 (打ちつける音) アアッ! 348 00:28:20,072 --> 00:28:37,089 ♬~ 349 00:28:37,089 --> 00:28:39,091 (突く音) ウウッ! 350 00:28:39,091 --> 00:28:44,096 ♬~ 351 00:28:44,096 --> 00:28:47,096 吉岡一門 植田左内 相手になる! 352 00:28:49,101 --> 00:28:53,105 無益なことです 353 00:28:53,105 --> 00:28:59,105 このうえは 吉岡清十郎先生に 一手お願いいたすのみ 354 00:29:06,118 --> 00:29:08,118 (又八)うん? 355 00:29:10,122 --> 00:29:12,124 (植田) 四条の吉岡家の使いでござる 356 00:29:12,124 --> 00:29:15,127 若先生と藤次どのが まいっておりませぬか? 357 00:29:15,127 --> 00:29:17,062 知らぬ 358 00:29:17,062 --> 00:29:20,065 いや まいっておるはずでござる 359 00:29:20,065 --> 00:29:23,068 隠れ遊びの先へ 心ない業とは承知しておりますが 360 00:29:23,068 --> 00:29:27,072 道場の一大事 吉岡家の名にも関わることと… 361 00:29:27,072 --> 00:29:31,076 やかましい! (植田)では お取り次ぎでよろしい 362 00:29:31,076 --> 00:29:36,081 作州の浪人 宮本武蔵という 武者修行の者 道場に立ち寄り➡ 363 00:29:36,081 --> 00:29:39,084 門弟たちに 立ち向かえる者 1人もなく➡ 364 00:29:39,084 --> 00:29:43,088 若先生のお帰りを待とうと 頑として動かずにおりますゆえ➡ 365 00:29:43,088 --> 00:29:47,088 すぐ お帰り願いたいと (又八)宮本武蔵? 366 00:29:53,098 --> 00:29:55,098 (門下生)ウウッ… (門下生)しっかりしろ! 367 00:29:59,104 --> 00:30:01,104 (門下生)駄目か… 368 00:30:06,111 --> 00:30:09,114 どうしたのだ? このざまは 369 00:30:09,114 --> 00:30:11,116 何をしていたとは お手前のことだ 370 00:30:11,116 --> 00:30:14,119 若先生を ひとり誘い歩いて 馬鹿も程にしたがよい! 371 00:30:14,119 --> 00:30:16,055 なんだと? (門下生)やまかしい! 372 00:30:16,055 --> 00:30:18,057 そんな内輪喧嘩より➡ 373 00:30:18,057 --> 00:30:23,062 若先生が帰ってきたなら 早く 今日の無念晴らしをしてくれ 374 00:30:23,062 --> 00:30:26,065 いいか? 頼むぞ 375 00:30:26,065 --> 00:30:28,065 たすき! 376 00:30:30,069 --> 00:30:32,071 浪人者は? 377 00:30:32,071 --> 00:30:35,074 お帰りを待とうという 彼奴の言葉に任せ➡ 378 00:30:35,074 --> 00:30:38,077 あの一室に控えさせてあります 379 00:30:38,077 --> 00:30:41,080 道場に連れてこい (門下生たち)はっ! 380 00:30:41,080 --> 00:30:44,083 待て! 早まるな 381 00:30:44,083 --> 00:30:46,085 こっち来い 382 00:30:46,085 --> 00:31:00,099 ♬~ 383 00:31:00,099 --> 00:31:03,102 騙し討ち!? 384 00:31:03,102 --> 00:31:07,106 そんな卑怯な手を使っては 清十郎の名が立たぬ 385 00:31:07,106 --> 00:31:10,109 たかの知れた田舎武芸者に 恐れをなして➡ 386 00:31:10,109 --> 00:31:12,111 多勢で討ったと 世間に言われては… 387 00:31:12,111 --> 00:31:16,115 勝って名誉な敵ではなし 若先生が手を下すには➡ 388 00:31:16,115 --> 00:31:19,118 もったいないと 一同が申すのでござる 389 00:31:19,118 --> 00:31:25,118 とにかく 生かして帰すは それこそ ご当家の恥 390 00:31:36,135 --> 00:31:42,135 (藤次)宮本氏 お待たせいたした お顔を拝借願いたい 391 00:31:45,144 --> 00:31:47,146 (門下生)いないぞ! 392 00:31:47,146 --> 00:31:50,149 (藤次)追え 追え! 逃がすな! (門下生たち)はっ! 393 00:31:50,149 --> 00:31:52,151 (藤次)逃がすなよ! 逃がすな! 394 00:31:52,151 --> 00:31:55,151 (門下生)おい いたぞ! (門下生)待て! 卑怯者 395 00:31:57,156 --> 00:32:00,159 (藤次)待て待て! 人違いだ (又八)ウウッ… アア… 396 00:32:00,159 --> 00:32:03,162 (藤次)おっ この男… (門下生)ご存じか? 397 00:32:03,162 --> 00:32:06,165 「よもぎの寮」という茶屋の奥で 398 00:32:06,165 --> 00:32:08,167 (門下生) この間に武蔵を逃してしまう 399 00:32:08,167 --> 00:32:10,169 手分けして せめて 彼奴の泊まっている宿先でも 400 00:32:10,169 --> 00:32:13,172 よし 捜せ! (門下生たち)はっ! 401 00:32:13,172 --> 00:32:16,108 (又八)もし もし… しばらく (門下生)何だ? 402 00:32:16,108 --> 00:32:18,110 道場に来た武蔵という者は いくつくらいでしたか? 403 00:32:18,110 --> 00:32:20,112 (門下生)年など知らん! (又八)手前と➡ 404 00:32:20,112 --> 00:32:23,115 同じぐらいじゃございませんか? (門下生)まあ そんなものだ 405 00:32:23,115 --> 00:32:26,118 作州 宮本村と申しましたか? 生国は (門下生)さよう 406 00:32:26,118 --> 00:32:29,121 武蔵とは 「たけぞう」と 書くのでございましょうな? 407 00:32:29,121 --> 00:32:32,124 うるさい! 用もない所をうろつくと➡ 408 00:32:32,124 --> 00:32:35,127 また 今のような目に遭うぞ 409 00:32:35,127 --> 00:32:40,132 そうか… やっぱり そうか! 410 00:32:40,132 --> 00:32:44,136 武蔵と名を変えての武者修行か 411 00:32:44,136 --> 00:32:46,136 武蔵… 412 00:32:49,141 --> 00:32:54,146 だが 今 会うのは面目ない 413 00:32:54,146 --> 00:32:57,149 俺にも意地はある 414 00:32:57,149 --> 00:33:00,152 (鐘の音) 415 00:33:00,152 --> 00:33:04,156 (お杉)今日が満願59日 416 00:33:04,156 --> 00:33:08,160 どうか 我が願いをお聞きくだされませ 417 00:33:08,160 --> 00:33:15,167 武蔵めの命! 武蔵めの命! 418 00:33:15,167 --> 00:33:18,103 おばばー! おばば 喜べ! 419 00:33:18,103 --> 00:33:24,109 仏の導きじゃ 武蔵めを見つけた! 420 00:33:24,109 --> 00:33:27,112 武蔵めをな 421 00:33:27,112 --> 00:33:30,115 (駕籠屋)わっしょい わっしょい… (お杉)それー! 422 00:33:30,115 --> 00:33:32,117 (駕籠屋)わっしょい わっしょい… 423 00:33:32,117 --> 00:33:35,120 それー! 急げ! (駕籠屋)わっしょい わっしょい… 424 00:33:35,120 --> 00:33:39,124 わっしょい わっしょい… (お杉)急げ! 425 00:33:39,124 --> 00:33:42,127 それー! 426 00:33:42,127 --> 00:33:45,127 権叔父 抜かるでないぞ 427 00:33:47,132 --> 00:33:51,136 武蔵! ここで会うたは おぬしの運の尽きぞ 428 00:33:51,136 --> 00:33:54,139 (駕籠屋)やれやれ! (駕籠屋)男らしく討たれちまえ! 429 00:33:54,139 --> 00:33:58,143 武蔵 フフフフッ… そなた 名を変えたそうじゃな 430 00:33:58,143 --> 00:34:03,148 宮本武蔵? へえ! 偉そうな名じゃのぅ 431 00:34:03,148 --> 00:34:06,151 ハハハハッ… 名を変えれば このばばあに➡ 432 00:34:06,151 --> 00:34:10,155 捜し当てられないとでも思うたか 浅はかな 433 00:34:10,155 --> 00:34:13,158 お天道さまは お見通しじゃ 434 00:34:13,158 --> 00:34:19,097 見事 このばばあの首を取るか そなたの命をもらうか 勝負しろ! 435 00:34:19,097 --> 00:34:24,102 (権六)指折り数えて早や5年 どれほど捜すに骨折ったか 436 00:34:24,102 --> 00:34:30,108 清水寺へ日参の甲斐あった さあ 覚悟! 437 00:34:30,108 --> 00:34:32,110 (お杉)覚悟! 438 00:34:32,110 --> 00:34:39,117 抜きやれ! その刀は飾り物か? 斬る腕は持たぬか? 439 00:34:39,117 --> 00:34:41,117 ない! 440 00:34:43,121 --> 00:34:46,124 待てー! 待たぬかー! 441 00:34:46,124 --> 00:34:51,129 ハァ… 待たぬか 卑怯者! 卑怯者! 442 00:34:51,129 --> 00:34:54,132 (駕籠屋)卑怯者! 腰抜けー! 443 00:34:54,132 --> 00:34:57,135 (駕籠屋) あっ あれ? 逃げやがった! 444 00:34:57,135 --> 00:35:00,138 おのれー! 445 00:35:00,138 --> 00:35:03,138 卑怯者! 腰抜けめー! 446 00:35:07,079 --> 00:35:09,081 (城太郎) じいさん! 旅籠のじいさん! 447 00:35:09,081 --> 00:35:11,083 (亭主)おお 城太郎か 448 00:35:11,083 --> 00:35:15,020 今日はな お客さまが まだ帰らねえから 酒は要らねえよ 449 00:35:15,020 --> 00:35:18,023 (城太郎)じいさん そこで何をしてるんだい? 450 00:35:18,023 --> 00:35:23,028 鞍馬の知り人に手紙じゃ いやぁ 書き出したが➡ 451 00:35:23,028 --> 00:35:26,031 1字1字 字が思い出せねえで 困っとるんじゃい 452 00:35:26,031 --> 00:35:30,035 おらが書いてやろっか? (亭主)あほ抜かせ 453 00:35:30,035 --> 00:35:32,037 本当だってば! 454 00:35:32,037 --> 00:35:35,040 ハハハッ… そんな 「芋」という字があるものか 455 00:35:35,040 --> 00:35:38,043 それじゃ 「竿」だよ (亭主)じゃ お前 書いてみろ 456 00:35:38,043 --> 00:35:42,047 ほれ ほらほら (城太郎)文句は? 457 00:35:42,047 --> 00:35:45,050 (亭主)「先日 お送りいただいた」… (城太郎)だから はなっからだよ 458 00:35:45,050 --> 00:35:47,050 (亭主)「手紙まいらせ候」 459 00:35:50,055 --> 00:35:54,059 あっ! 人が悪いなぁ 宮本さんは すまん すまん 460 00:35:54,059 --> 00:35:57,062 許してやるから うちのお酒を買っておくれ 461 00:35:57,062 --> 00:36:00,065 ハハッ… また小僧に酒を売りつけられたぞ 462 00:36:00,065 --> 00:36:03,068 5合! そんなに飲めん 463 00:36:03,068 --> 00:36:05,070 けちだなぁ 宮本さんは 464 00:36:05,070 --> 00:36:10,075 実を言えば 小遣いが乏しいのだ 貧乏武芸者だ そう悪く申すな 465 00:36:10,075 --> 00:36:13,011 じゃ おらが升を量って 安く持ってくるよ 466 00:36:13,011 --> 00:36:16,014 手紙は あとでな (亭主)おう 467 00:36:16,014 --> 00:36:18,016 おやじ はい 468 00:36:18,016 --> 00:36:21,019 これは 今の小僧が書いたのか? さようで 469 00:36:21,019 --> 00:36:24,022 もう あきれてるんでございますよ あいつの賢いのには 470 00:36:24,022 --> 00:36:26,024 ほう… 471 00:36:26,024 --> 00:36:29,024 酒屋の小僧が どうして このような見事な字を… 472 00:36:31,029 --> 00:36:34,032 (城太郎)お酒の注文取ってきたよ (店主)へい 473 00:36:34,032 --> 00:36:36,034 (城太郎) あっ おいらが升で量るから 474 00:36:36,034 --> 00:36:39,037 (又八)おい 小僧! 酒だ 酒くれ! 475 00:36:39,037 --> 00:36:41,037 フン! 酔っ払い! 476 00:36:49,047 --> 00:36:53,051 おじさん 熱燗だよ うむ… 477 00:36:53,051 --> 00:36:55,053 兵法家っていうのは➡ 478 00:36:55,053 --> 00:36:59,057 みんな 大名のお抱えになって 知行が たくさん取れるんだろう? 479 00:36:59,057 --> 00:37:01,059 おいら 店のお客に聞いたんだけど 480 00:37:01,059 --> 00:37:04,062 昔 塚原卜伝なんかは 道中するときには➡ 481 00:37:04,062 --> 00:37:07,065 70~80人も 家来を連れて歩いたんだってね 482 00:37:07,065 --> 00:37:09,067 うむ… そのとおり 483 00:37:09,067 --> 00:37:12,070 徳川さまへ抱えられた 柳生さまは➡ 484 00:37:12,070 --> 00:37:16,008 江戸で1万2000石って本当? 本当だ 485 00:37:16,008 --> 00:37:19,011 だのに おじさんは なぜ そんなに貧乏なんだろう? 486 00:37:19,011 --> 00:37:23,015 まだ勉強中だから じゃ いくつになったら➡ 487 00:37:23,015 --> 00:37:27,019 上泉伊勢守や塚原卜伝のように たくさんお供を連れて歩くの? 488 00:37:27,019 --> 00:37:31,023 ハハハハッ… お前 故郷は どこだ? 489 00:37:31,023 --> 00:37:33,025 姫路 播州か 490 00:37:33,025 --> 00:37:36,028 それで 何をしていた? お父さんは 491 00:37:36,028 --> 00:37:39,031 侍だよ 侍 ほう… 492 00:37:39,031 --> 00:37:42,034 お父っつぁんは 姫路藩で 500石も取っていたんだぜ 493 00:37:42,034 --> 00:37:45,037 けれど おいらが6つのときに 浪人しちゃって➡ 494 00:37:45,037 --> 00:37:48,040 それから 京へ来て だんだん 貧乏しちまったもんだから➡ 495 00:37:48,040 --> 00:37:52,044 おいらを居酒屋に預けて 自分は 虚無僧寺に入っちまったんだよ 496 00:37:52,044 --> 00:37:55,047 困ったもんだ ふ~む… 497 00:37:55,047 --> 00:37:57,049 <城太郎の父は➡ 498 00:37:57,049 --> 00:38:02,054 武蔵を捕らえに来た姫路藩の役人 あの青木丹左衛門であった> 499 00:38:02,054 --> 00:38:07,059 <運命のいたずらを このとき 武蔵は知る由もなかった> 500 00:38:07,059 --> 00:38:11,063 だから おいら どうしても侍になりたいんだ 501 00:38:11,063 --> 00:38:15,000 侍になるには 剣術が 上手になるのが いちばんだろう? 502 00:38:15,000 --> 00:38:19,004 おじさん お願いだから おいらを お弟子にしてくれないか? 503 00:38:19,004 --> 00:38:21,006 こないだっから毎日頼んでるのに 504 00:38:21,006 --> 00:38:24,009 おじさん どうして 「うん」って言ってくれないのさ? 505 00:38:24,009 --> 00:38:27,012 おじさん お願いだよ! お願いだよ! 506 00:38:27,012 --> 00:38:30,015 よ~し よし 弟子にしてやろう 507 00:38:30,015 --> 00:38:34,019 だが 今夜は帰って おやじとも よく話したうえ➡ 508 00:38:34,019 --> 00:38:37,022 出直してこなければいけないぞ 509 00:38:37,022 --> 00:38:39,022 うん! 分かった 510 00:38:41,026 --> 00:38:44,029 (亭主) 宮本さまは これから どちらへ? 511 00:38:44,029 --> 00:38:47,032 宝蔵院へまいってみようと… ああ およしなさいまし 512 00:38:47,032 --> 00:38:52,037 失礼ながら お噂の腕では命を取られます 513 00:38:52,037 --> 00:38:54,039 ほう… 評判の強さは本物か? 514 00:38:54,039 --> 00:38:57,042 宮本さまが好きだから 申し上げてるんでございます 515 00:38:57,042 --> 00:39:01,046 宝蔵院は 武者修行の墓場でございますよ 516 00:39:01,046 --> 00:39:05,046 ふむ… 心いたそう 517 00:39:07,052 --> 00:39:11,056 ≪(城太郎) おじさ~ん! おじさ~ん! 518 00:39:11,056 --> 00:39:12,991 嘘つき! 519 00:39:12,991 --> 00:39:16,995 おじさんの嘘つき! おじさん 嘘つき! 520 00:39:16,995 --> 00:39:19,998 どうした? 小僧 (泣き声) 521 00:39:19,998 --> 00:39:22,000 泣く奴があるか! 522 00:39:22,000 --> 00:39:24,002 (泣き声) 523 00:39:24,002 --> 00:39:27,005 もう泣くな! 524 00:39:27,005 --> 00:39:31,009 騙す気ではなかったが お前には父があり おやじがいる 525 00:39:31,009 --> 00:39:34,012 その人たちの承知がなければ 連れていけぬから➡ 526 00:39:34,012 --> 00:39:36,014 相談してこいと申したのだ 527 00:39:36,014 --> 00:39:39,017 そんなら おいらが返事に行くまで 待ってればいいじゃないか 528 00:39:39,017 --> 00:39:43,021 だから 謝っておる おやじには話したか? 529 00:39:43,021 --> 00:39:45,023 うん! 530 00:39:45,023 --> 00:39:49,027 「てめえみたいな小僧は とても 当たり前な道場や武芸者では➡ 531 00:39:49,027 --> 00:39:51,029 弟子にしてくれるはずがねえ」 532 00:39:51,029 --> 00:39:54,032 「あの木賃宿に泊まっている 浪人なら 弱いので評判だ」 533 00:39:54,032 --> 00:39:56,034 「てめえには ちょうどいい師匠だ」って➡ 534 00:39:56,034 --> 00:40:01,039 餞別に この木剣をくれたよ ハハッ… 面白いおやじだのぅ 535 00:40:01,039 --> 00:40:03,041 木賃のじいさんには こいつをもらった 536 00:40:03,041 --> 00:40:09,047 (笑い声) 537 00:40:09,047 --> 00:40:14,986 《先ごろは お留守中に訪問し 貴眉に接しざるは遺憾至極》 538 00:40:14,986 --> 00:40:19,991 《明春1月か2月 必ず再度の 訪問をお約束いたすものなり》 539 00:40:19,991 --> 00:40:23,995 《当方も1年の間 一段と鈍剣を磨く所存にて➡ 540 00:40:23,995 --> 00:40:29,000 貴殿も せっかくのご自愛 陰ながら お祈り申し上げる》 541 00:40:29,000 --> 00:40:35,006 城太郎 使いに行ってほしいが どこまで? 542 00:40:35,006 --> 00:40:40,006 四条の吉岡道場に これを届けてほしい 543 00:40:44,015 --> 00:40:47,018 嫌か? 嫌じゃないけど➡ 544 00:40:47,018 --> 00:40:50,021 おじさん また おいらを 置いてけぼりにするつもりだろう 545 00:40:50,021 --> 00:40:55,026 いや 決して嘘は言わん 昨日のことは許せ 546 00:40:55,026 --> 00:40:58,029 分かった! だけど おじさん 547 00:40:58,029 --> 00:41:01,032 おいらが帰ってくる間 どこで待っているんだい? 548 00:41:01,032 --> 00:41:04,035 こういたそう わしは 奈良に先に行っている 549 00:41:04,035 --> 00:41:09,040 居所は 槍の宝蔵院で 聞けば分かるようにいたしておく 550 00:41:09,040 --> 00:41:12,043 きっと? まだ疑っているのか? 551 00:41:12,043 --> 00:41:15,046 今度 約束を違えたら わしの首をやる 552 00:41:15,046 --> 00:41:17,046 うん! 頼むぞ 553 00:41:21,052 --> 00:41:24,055 (店主・女中) ありがとうございました 554 00:41:24,055 --> 00:41:26,057 よこせ! (朱実)おお こわっ… 555 00:41:26,057 --> 00:41:29,060 ≪(障子の開閉音) (植田)若先生 556 00:41:29,060 --> 00:41:32,063 道場のほうに 武蔵の使いが まいりました 557 00:41:32,063 --> 00:41:37,068 ♬~ 558 00:41:37,068 --> 00:41:39,070 (植田)ご返事が いただきたいと➡ 559 00:41:39,070 --> 00:41:41,070 使いの小童が ついてきておりますが 560 00:41:43,074 --> 00:41:45,074 「武蔵」… 561 00:41:47,078 --> 00:41:51,082 (朱実)ねえ あんたが 武蔵さまという人のお使い? 562 00:41:51,082 --> 00:41:53,084 (城太郎)ああ 563 00:41:53,084 --> 00:41:55,086 (朱実)その人 「たけぞう」って いうんじゃないの? 564 00:41:55,086 --> 00:41:57,088 (城太郎)むさしだよ 565 00:41:57,088 --> 00:42:01,092 (朱実)もしかして その人は 作州 宮本村の人じゃないの? 566 00:42:01,092 --> 00:42:05,096 (城太郎)うん (朱実)武蔵さんだ 567 00:42:05,096 --> 00:42:08,099 ≪(お甲)朱実 何してんの? 568 00:42:08,099 --> 00:42:12,103 ねえ 坊や あなた これから 武蔵さんの所へ帰るのね? 569 00:42:12,103 --> 00:42:16,041 武蔵さまだよ (朱実)ええ 武蔵さまに会ったら… 570 00:42:16,041 --> 00:42:19,044 何か伝えるの? 571 00:42:19,044 --> 00:42:21,044 何を言うのさ? 572 00:42:23,048 --> 00:42:25,048 ≪(お甲)朱実! 573 00:42:29,054 --> 00:42:33,058 変なの 女って分からねえや 574 00:42:33,058 --> 00:42:45,070 (草笛の音) 575 00:42:45,070 --> 00:42:47,072 (牛方)この野郎! (城太郎)イテッ! 576 00:42:47,072 --> 00:42:49,074 (牛方)どうして 牛車なんぞに乗りやがった? 577 00:42:49,074 --> 00:42:51,076 いけないの? (牛方)当たり前じゃ! 578 00:42:51,076 --> 00:42:54,079 おじさんが引っ張るわけじゃ ないから いいじゃないか 579 00:42:54,079 --> 00:42:56,081 ふざけんな! (城太郎)イテッ! 580 00:42:56,081 --> 00:42:58,083 (牛の鳴き声) 581 00:42:58,083 --> 00:43:01,086 アア… 痛え… 582 00:43:01,086 --> 00:43:04,089 あれ? 583 00:43:04,089 --> 00:43:07,092 あれ? ないぞ 584 00:43:07,092 --> 00:43:10,095 何か落としたの? (城太郎)うん 585 00:43:10,095 --> 00:43:14,032 紐のついた竹の筒でしょう? (城太郎)うん それだ! 586 00:43:14,032 --> 00:43:17,035 フフッ… それなら さっき そなたが万福寺の下で➡ 587 00:43:17,035 --> 00:43:21,039 馬子衆の馬に いたずらして どなられたでしょう (城太郎)ああ 588 00:43:21,039 --> 00:43:23,041 びっくりして逃げ出したとき 落としたのを➡ 589 00:43:23,041 --> 00:43:25,043 お侍が拾ってたようですから 戻って聞いてごらん 590 00:43:25,043 --> 00:43:27,045 本当? (お通)ええ 591 00:43:27,045 --> 00:43:29,047 ありがとう! 592 00:43:29,047 --> 00:43:34,052 あっ 戻るには及びません あのお侍さまですよ あの人 593 00:43:34,052 --> 00:43:36,054 (兵庫助)ハハハッ… おい 小僧 594 00:43:36,054 --> 00:43:38,056 お前であろう? これを落としたのは 595 00:43:38,056 --> 00:43:40,058 うん あったあった! 596 00:43:40,058 --> 00:43:42,060 おい 「あった」は ないものじゃ 礼を言わんか 礼を 597 00:43:42,060 --> 00:43:44,062 すみません 598 00:43:44,062 --> 00:43:48,066 お女中 この小僧は あなたのお連れか? 599 00:43:48,066 --> 00:43:52,070 いいえ まるで 知らない子でございますけど 600 00:43:52,070 --> 00:43:55,073 ハハハハッ… どうも 釣り合いが取れぬと思うたわ 601 00:43:55,073 --> 00:43:58,076 子供ひとり どこまで行くのでございましょう 602 00:43:58,076 --> 00:44:01,079 おいら 奈良の宝蔵院まで行くのさ 603 00:44:01,079 --> 00:44:04,082 (兵庫助)小僧 その腰の物は何だ? 604 00:44:04,082 --> 00:44:08,086 侍が 木剣を知らないのかい? 剣術を覚えるためにさ 605 00:44:08,086 --> 00:44:12,090 フフフッ… (兵庫助)ハハハハッ… 606 00:44:12,090 --> 00:44:15,026 …して お女中は どちらまで まいられる? 607 00:44:15,026 --> 00:44:19,030 私は どこという当てもございませぬが 608 00:44:19,030 --> 00:44:24,035 奈良には このごろ 多くの浪人衆が集まってると聞き 609 00:44:24,035 --> 00:44:27,038 実は どうあっても 巡り会いたいお人を➡ 610 00:44:27,038 --> 00:44:30,041 多年 捜しておりますので➡ 611 00:44:30,041 --> 00:44:35,046 そんな はかない噂を頼りに まいる途中でございまする 612 00:44:35,046 --> 00:44:38,049 <五重塔で知られた 奈良 興福寺> 613 00:44:38,049 --> 00:44:42,053 <その一角に 槍で名高い宝蔵院があった> 614 00:44:42,053 --> 00:44:44,055 <奈良の僧兵は➡ 615 00:44:44,055 --> 00:44:47,058 古来 京都 叡山の僧兵と 双璧であった> 616 00:44:47,058 --> 00:44:50,061 <初代 宝蔵院 胤栄は➡ 617 00:44:50,061 --> 00:44:54,065 その武術を 剣豪 上泉伊勢守に 習ったといわれる> 618 00:44:54,065 --> 00:44:57,068 <2代目 胤舜となって 更に 名は上がり➡ 619 00:44:57,068 --> 00:45:02,068 槍の宝蔵院は 諸国 武芸者の目標となっていた> 620 00:45:21,025 --> 00:45:23,025 《何者?》 621 00:45:25,029 --> 00:45:45,049 ♬~ 622 00:45:45,049 --> 00:46:05,069 ♬~ 623 00:46:05,069 --> 00:46:25,023 ♬~ 624 00:46:25,023 --> 00:46:45,043 ♬~ 625 00:46:45,043 --> 00:47:05,063 ♬~ 626 00:47:05,063 --> 00:47:24,063 ♬~ 627 00:47:27,085 --> 00:47:29,087 (大友)討て! 628 00:47:29,087 --> 00:47:37,095 (僧兵たちの叫び声) 629 00:47:37,095 --> 00:47:40,098 《死のう… 見事に死のう!》 630 00:47:40,098 --> 00:47:44,098 おお~~!