1 00:01:22,203 --> 00:01:23,071 2 00:01:23,071 --> 00:01:37,085 ♬~ 3 00:01:37,085 --> 00:01:51,085 ♬~ 4 00:01:53,067 --> 00:01:58,072 (ナレーター)<このとき 武蔵にとって 剣とは 相手に勝つことであった> 5 00:01:58,072 --> 00:02:04,078 <そして 武蔵は 蓮台寺野で 吉岡清十郎を一撃で倒した> 6 00:02:04,078 --> 00:02:07,081 <続いて 雪の三十三間堂で➡ 7 00:02:07,081 --> 00:02:12,086 武蔵は 清十郎の弟 伝七郎の 豪剣も打ち破った> 8 00:02:12,086 --> 00:02:15,089 <清十郎は片腕を失って去り➡ 9 00:02:15,089 --> 00:02:19,027 伝七郎もまた 白雪を紅に染めて敗れた> 10 00:02:19,027 --> 00:02:24,032 <立て続けに 一門の総帥を 討たれた吉岡の門弟たちは➡ 11 00:02:24,032 --> 00:02:29,037 混乱の中 武蔵への憎悪だけが その結束を支えていた> 12 00:02:29,037 --> 00:02:31,039 <佐々木小次郎の仲介で➡ 13 00:02:31,039 --> 00:02:35,043 武蔵と吉岡一門の果たし合いは 日を改めて➡ 14 00:02:35,043 --> 00:02:39,047 藪之郷 一乗寺下り松で 行われることになった> 15 00:02:39,047 --> 00:02:41,049 (門下生) 八つ裂きにしても飽き足らぬ奴! 16 00:02:41,049 --> 00:02:44,052 (門下生) 首をはねて五条大橋にさらせ! 17 00:02:44,052 --> 00:02:46,054 (門下生) 武蔵を生きて 京より出すな! 18 00:02:46,054 --> 00:02:50,058 (烏丸)吉岡方は 清十郎を破られ 伝七郎を討たれ➡ 19 00:02:50,058 --> 00:02:54,062 今度という今度こそ 最後の弔い合戦 20 00:02:54,062 --> 00:02:56,064 破れかぶれも手伝って➡ 21 00:02:56,064 --> 00:03:00,068 血の上がった連中が 四条道場に首を集め➡ 22 00:03:00,068 --> 00:03:04,072 「このうえは 多少の外聞に関わろうとも➡ 23 00:03:04,072 --> 00:03:06,074 なんでも 武蔵を討ち殺してしまえ」 24 00:03:06,074 --> 00:03:10,078 「尋常の手段や作法に こだわることはない」と➡ 25 00:03:10,078 --> 00:03:13,081 公然と言い放っておるそうじゃ 26 00:03:13,081 --> 00:03:16,084 (お通)ハァ… ハァ… 27 00:03:16,084 --> 00:03:20,021 (沢庵) これ いかん 寝てのうてはいかん 28 00:03:20,021 --> 00:03:24,025 (お通) 沢庵さん 武蔵さまが大変なことに 29 00:03:24,025 --> 00:03:28,029 聞いていたのかい (烏丸)悪いことをしましたな 30 00:03:28,029 --> 00:03:32,033 《1人対100人…》 31 00:03:32,033 --> 00:03:36,037 《これは もはや戦じゃ》 32 00:03:36,037 --> 00:03:42,043 お通さん 武蔵を信じるんじゃ 33 00:03:42,043 --> 00:03:46,047 (男性)あの武蔵という浪人 今度は なぶり斬りに遭うやろうな 34 00:03:46,047 --> 00:03:48,049 (男性)分からへんで 35 00:03:48,049 --> 00:03:50,051 多分 武蔵のほうも 助太刀を駆り集めて➡ 36 00:03:50,051 --> 00:03:56,057 吉岡方が大勢なら 武蔵も多数 そうなりゃ けんかは本物やで 37 00:03:56,057 --> 00:03:58,059 (男性)いいや そうなったら けんかやない 戦や 38 00:03:58,059 --> 00:04:01,059 この騒ぎは戦やで (男性)戦!? 39 00:04:04,065 --> 00:04:07,065 (おゆき)ずるい 起きてるんや 40 00:04:11,072 --> 00:04:13,074 やっぱり寝てる 41 00:04:13,074 --> 00:04:18,079 (朱実)吉岡の門弟衆が 200もいるとは本当ですか? 42 00:04:18,079 --> 00:04:22,016 (小次郎) 中には 腰抜けもおるからな 43 00:04:22,016 --> 00:04:26,020 当日 決戦に臨むは まず 70~80 44 00:04:26,020 --> 00:04:31,025 70~80… (小次郎)容易ならざる数だ 45 00:04:31,025 --> 00:04:37,031 武蔵は恐らく ひとり 尋常なら勝ち目はない 46 00:04:37,031 --> 00:04:41,035 武蔵 どう戦うかだ 47 00:04:41,035 --> 00:04:45,039 あなたなら勝てますか? 48 00:04:45,039 --> 00:04:47,039 勝てる 49 00:04:49,043 --> 00:04:52,046 さて 武蔵 いかに戦うか 50 00:04:52,046 --> 00:04:56,050 あの男 わしのような強い心が持てるかだ 51 00:04:56,050 --> 00:05:00,054 強い心? (小次郎)そうだ 52 00:05:00,054 --> 00:05:08,062 吉岡方の名目人は12歳 いまだ 前髪の取れぬ少年 53 00:05:08,062 --> 00:05:11,065 子供を斬るが あなたの策か? 54 00:05:11,065 --> 00:05:15,069 勝つための策 これしかありえぬ 55 00:05:15,069 --> 00:05:17,071 子供であれ 斬り捨てるには➡ 56 00:05:17,071 --> 00:05:19,006 強い心が必要と申すのは そのことだ 57 00:05:19,006 --> 00:05:23,010 強いとは思いませぬ (小次郎)なに? 58 00:05:23,010 --> 00:05:28,015 冷たい 氷のような心です あなたという人は 59 00:05:28,015 --> 00:05:30,017 ハハハハッ… 60 00:05:30,017 --> 00:05:35,022 武蔵も武芸者の端くれなら 同じ心を持ち合わせておる 61 00:05:35,022 --> 00:05:42,022 さもなくば この戦で あの男 必ず死ぬ 62 00:05:47,034 --> 00:05:49,034 (武蔵)ハァ~ッ… 63 00:05:51,038 --> 00:05:54,041 亭主 勘定を頼む 64 00:05:54,041 --> 00:05:57,044 (亭主)へい おおきに 2文ちょうだいいたします 65 00:05:57,044 --> 00:06:01,048 すまなかった 店じまいと気づかなかった 66 00:06:01,048 --> 00:06:04,051 いえ あまり よくお休みでございましたもので 67 00:06:04,051 --> 00:06:07,051 ああ よく寝た 68 00:06:11,058 --> 00:06:13,060 亭主 へい 69 00:06:13,060 --> 00:06:17,064 一乗寺村というのは ここから まだ だいぶんあるか? 70 00:06:17,064 --> 00:06:20,001 へい 一乗寺村は➡ 71 00:06:20,001 --> 00:06:26,007 白川から もっと ず~んと外れで 叡山の近くの山里でございます 72 00:06:26,007 --> 00:06:28,009 (おゆき) 山里でも 人は住んでます! 73 00:06:28,009 --> 00:06:30,011 (亭主)ハハハッ… この娘は➡ 74 00:06:30,011 --> 00:06:34,015 一乗寺村の出でございまして ほう 75 00:06:34,015 --> 00:06:39,020 お客さんも果たし合いの見物? うむ… まあ そうだ 76 00:06:39,020 --> 00:06:43,024 私が 一乗寺村へ行く道筋を 絵図にしてあげるから➡ 77 00:06:43,024 --> 00:06:45,026 お駄賃ちょうだい 78 00:06:45,026 --> 00:06:47,028 これ おゆき お前… いや よい 79 00:06:47,028 --> 00:06:53,034 おゆきさん 書いてくれるなら 下り松辺りの詳しい絵図が欲しい 80 00:06:53,034 --> 00:06:55,036 下り松? 81 00:06:55,036 --> 00:06:58,039 お侍さま 大変 失礼ですが➡ 82 00:06:58,039 --> 00:07:01,042 今宵の宿は もう お決まりでございますか? 83 00:07:01,042 --> 00:07:04,045 いや 先ほどまで 十分 寝かせてもらったから➡ 84 00:07:04,045 --> 00:07:08,049 今夜は どこか 堂の中ででも 一夜を明かすつもりだ 85 00:07:08,049 --> 00:07:11,052 (亭主)それならば 手前どもの納屋で よろしければ➡ 86 00:07:11,052 --> 00:07:13,054 どうぞ お使いくださいまし 87 00:07:13,054 --> 00:07:16,057 おゆき そこで ゆっくり 絵図を描いてさし上げなさい 88 00:07:16,057 --> 00:07:19,994 うん! 居眠りのお侍さん こっちへおいで 89 00:07:19,994 --> 00:07:21,994 (亭主)さあさあ どうぞ 90 00:07:23,998 --> 00:07:29,003 (話し声) 91 00:07:29,003 --> 00:07:34,008 (お杉)果たし合いの人数のうちに 我ら親子を加えていただき➡ 92 00:07:34,008 --> 00:07:39,013 及ばずながら 恨みの刃を 浴びせたいのが我らの願い 93 00:07:39,013 --> 00:07:41,015 (植田)気持ちは分かるが➡ 94 00:07:41,015 --> 00:07:44,018 これは 我ら一門の 意趣のかかった果たし合いだ 95 00:07:44,018 --> 00:07:49,023 世間では 当道場が滅亡したかに 申す輩がおるらしいが… 96 00:07:49,023 --> 00:07:52,026 (植田)痩せても枯れても 吉岡流 門弟150 97 00:07:52,026 --> 00:07:56,030 よもや 師の敵を 討ち漏らしはせん! 98 00:07:56,030 --> 00:08:02,036 危ないぞ けがをせぬうちに 早々と立ち去られい 99 00:08:02,036 --> 00:08:06,040 (又八)おふくろ なあ おふくろ! 100 00:08:06,040 --> 00:08:08,042 武蔵が 皆さまに討たれたのちに➡ 101 00:08:08,042 --> 00:08:12,046 その死骸に ひと太刀 恨ませてもらえばよい 102 00:08:12,046 --> 00:08:15,049 その上で 髪の毛なり 片袖なりをもらって➡ 103 00:08:15,049 --> 00:08:18,052 武蔵を討ち取ったと 故郷の人に話せば➡ 104 00:08:18,052 --> 00:08:19,987 俺たちの顔は立つではないか 105 00:08:19,987 --> 00:08:24,992 さすれば お通ひとり 106 00:08:24,992 --> 00:08:26,994 武蔵がいなければ➡ 107 00:08:26,994 --> 00:08:31,999 お通は 木から落ちた猿も同様じゃ 見つけしだい 成敗することじゃ 108 00:08:31,999 --> 00:08:35,002 (御池) 討つべき相手は武蔵ひとりだが➡ 109 00:08:35,002 --> 00:08:40,007 三十三間堂の不覚に学び この度は 万全の備えで臨みたい! 110 00:08:40,007 --> 00:08:42,009 同感だ! 111 00:08:42,009 --> 00:08:48,015 思えば 今ほど 一門の同志の心を 通じ合わせたことはない! 112 00:08:48,015 --> 00:08:53,020 この結束をもってすれば 必ずや 師の遺恨は晴らせると確信する 113 00:08:53,020 --> 00:08:55,022 (高弟)この道場の灯を消せば➡ 114 00:08:55,022 --> 00:08:59,026 我らも ちりぢりに 自活の道を求めねばならぬ 115 00:08:59,026 --> 00:09:02,029 100余名の 生活の懸かった一戦だ 116 00:09:02,029 --> 00:09:05,032 いかなる手段を用いても まず 勝つこと 117 00:09:05,032 --> 00:09:07,034 武蔵を葬り去ることだ! 118 00:09:07,034 --> 00:09:12,039 (御池) さて 明日の備えだが… ここだ 119 00:09:12,039 --> 00:09:14,041 <京都の北東➡ 120 00:09:14,041 --> 00:09:18,979 京福 叡山線 一乗寺駅近くに 石碑と共に残る松> 121 00:09:18,979 --> 00:09:22,983 <植え替えられて 3代目の一乗寺下り松である> 122 00:09:22,983 --> 00:09:32,993 ♬~ 123 00:09:32,993 --> 00:09:35,996 (おゆき)これが 一乗寺の下り松 124 00:09:35,996 --> 00:09:37,998 (御池) この街道は3つに分かれておる 125 00:09:37,998 --> 00:09:42,002 武蔵が どこから来るか それが考えものだ 126 00:09:42,002 --> 00:09:45,005 同勢を全て3手に分け 途中で伏せ 127 00:09:45,005 --> 00:09:50,010 下り松には 名目人の源次郎さま 壬生の源左どの 128 00:09:50,010 --> 00:09:53,013 そのほか 拙者 植田どのなど➡ 129 00:09:53,013 --> 00:09:56,016 古参方が10名ほど 控えておいたらよかろうかと思う 130 00:09:56,016 --> 00:09:58,018 いや ここの足場は狭い 131 00:09:58,018 --> 00:10:00,020 あまり1か所に固めておいては かえって不利だ 132 00:10:00,020 --> 00:10:03,023 それよりも もっと距離を置いて➡ 133 00:10:03,023 --> 00:10:08,028 武蔵の通り道に隠れ 武蔵の姿を一度 やり過ごしてから 134 00:10:08,028 --> 00:10:11,031 前と後ろと 一時に立って➡ 135 00:10:11,031 --> 00:10:15,035 袋包みにすれば 万討ち漏らすことはあるまい 136 00:10:15,035 --> 00:10:21,976 この辺りの道は傾斜しておろうな そりゃ 山の真下やさかいね 137 00:10:21,976 --> 00:10:26,981 急な坂道で それに 石が ごろごろしてる 138 00:10:26,981 --> 00:10:28,983 この辺りは? 139 00:10:28,983 --> 00:10:34,989 藪… 冬でも私が隠れるくらいの 枯れ草が生えてる 140 00:10:34,989 --> 00:10:36,991 ここは? ここは どうだ? 141 00:10:36,991 --> 00:10:42,997 川… 今時分は 水かさが増してるかもしれん 142 00:10:42,997 --> 00:10:47,001 お侍さんは ほんまに果たし合いの見物客? 143 00:10:47,001 --> 00:10:50,004 うん? ハハッ… 144 00:10:50,004 --> 00:10:56,010 見物に行って 巻き添えで けがをするのは つまらんからな 145 00:10:56,010 --> 00:11:01,010 遅くまで すまなかった おゆきさん ありがとう 146 00:11:04,018 --> 00:11:09,018 (沢庵)お通さん… お通さん? 147 00:11:14,028 --> 00:11:16,028 お通さん! 148 00:11:22,036 --> 00:11:24,038 お通さん! 149 00:11:24,038 --> 00:11:27,041 あっ… ハッ!? 150 00:11:27,041 --> 00:11:29,043 お通さん! 151 00:11:29,043 --> 00:11:32,046 アア… 私 行かなくては 152 00:11:32,046 --> 00:11:35,049 武蔵さまの… (沢庵)馬鹿なことを言うな! 153 00:11:35,049 --> 00:11:39,053 この寒い夜に 熱も引かぬ身で 死んでしまうぞ 154 00:11:39,053 --> 00:11:45,053 かまいませぬ お会いできれば 死んでもいいんです 155 00:11:49,063 --> 00:11:55,069 人間 熱い血が流れてこその恋 156 00:11:55,069 --> 00:12:02,076 冷たい骸に 男と女子の情は交わせん 157 00:12:02,076 --> 00:12:05,076 ひと目 あのお方に… 158 00:12:07,081 --> 00:12:12,086 沢庵さん 後生です 私を連れてってください 159 00:12:12,086 --> 00:12:18,092 私を どうぞ… 一乗寺下り松へ 160 00:12:18,092 --> 00:12:24,031 <吉岡一門 総勢73名が 道場を出発したのは➡ 161 00:12:24,031 --> 00:12:29,031 約束の卯の下刻より2時間も早い 夜明け前のことであった> 162 00:12:34,041 --> 00:12:36,041 ンンッ! 163 00:13:04,071 --> 00:13:18,085 ♬~ 164 00:13:18,085 --> 00:13:20,085 (御池)来た! 165 00:13:22,022 --> 00:13:25,025 源次郎さまだ (高弟)駕籠でござったな 166 00:13:25,025 --> 00:13:28,028 何といっても まだ ご年少だからな 167 00:13:28,028 --> 00:13:41,041 ♬~ 168 00:13:41,041 --> 00:13:45,041 (源左衛門) おう そろったな おのおの方 169 00:13:47,047 --> 00:13:49,049 (源左衛門)これ 源次郎 170 00:13:49,049 --> 00:13:52,052 そちは この下り松の所に 立っていればよい 171 00:13:52,052 --> 00:13:55,055 松の根元を動くではないぞ 172 00:13:55,055 --> 00:13:59,059 今日の果たし合いは そちが名目人になっているが➡ 173 00:13:59,059 --> 00:14:03,063 戦いは ほかの門弟衆がやる 174 00:14:03,063 --> 00:14:05,065 そちは まだ幼いゆえ➡ 175 00:14:05,065 --> 00:14:09,069 じっと ここに控えていればよいのじゃ 176 00:14:09,069 --> 00:14:12,072 刻限までには だいぶ間があるのぅ 177 00:14:12,072 --> 00:14:16,076 (御池)壬生のご老台 まず 人数の 手分けをいたしては いかがかな? 178 00:14:16,076 --> 00:14:22,016 うむ… 備え立てして敵を待つか …して どう分けるというのじゃ? 179 00:14:22,016 --> 00:14:24,018 (御池)この下り松を中心に➡ 180 00:14:24,018 --> 00:14:28,022 三方の街道へ おのおの 20間ばかりの距離を置いて➡ 181 00:14:28,022 --> 00:14:30,024 道の両側へ潜ませることとする 182 00:14:30,024 --> 00:14:32,026 (源左衛門)…して ここには? 183 00:14:32,026 --> 00:14:35,029 (御池)源次郎さまおそばには 拙者 また ご老台 184 00:14:35,029 --> 00:14:39,033 そのほか10名ほどで 固め 守るばかりでなく➡ 185 00:14:39,033 --> 00:14:42,036 三道の どっからか 武蔵が来たとの合図が起これば➡ 186 00:14:42,036 --> 00:14:45,039 すぐ それへ合体して 一挙に奴を葬ってしまう 187 00:14:45,039 --> 00:14:47,041 (源左衛門)待たっしゃい 188 00:14:47,041 --> 00:14:51,045 伝七郎との勝負の折の あの身の引きようを見ても➡ 189 00:14:51,045 --> 00:14:55,049 武蔵という奴 剣も鋭いが 引きも上手と見た 190 00:14:55,049 --> 00:14:59,053 いわゆる 逃げ上手という兵法を 知った奴じゃ 191 00:14:59,053 --> 00:15:01,055 それゆえ 手薄な所で➡ 192 00:15:01,055 --> 00:15:05,059 3~4名に素早く傷を負わせ さっと引き揚げて➡ 193 00:15:05,059 --> 00:15:08,062 「吉岡一門70余名を相手に➡ 194 00:15:08,062 --> 00:15:11,065 我ひとりにて勝てり」と 言い触らすかも分からんぞ 195 00:15:11,065 --> 00:15:13,067 分かり申した 196 00:15:13,067 --> 00:15:19,006 おっしゃるとおり 万が一にも再び 武蔵を逃すような失策を生じたら 197 00:15:19,006 --> 00:15:23,010 あとで どう弁解しようとも 我々の汚名は もう拭われません 198 00:15:23,010 --> 00:15:26,013 ですから こたびは ただひとつ 199 00:15:26,013 --> 00:15:31,018 奴を討ち殺すことだけを目的とし 手段を選ばぬ所存でござる 200 00:15:31,018 --> 00:15:35,022 (御池)坂田 南雲 平山 下島 (門下生たち)はっ! 201 00:15:35,022 --> 00:15:38,025 (御池) ご老台 実は こういう用意まで いたしているのでござる 202 00:15:38,025 --> 00:15:40,027 (源左衛門)飛び道具か 203 00:15:40,027 --> 00:15:43,030 (御池)どこか小高い場所か 木の上に伏せておいて 204 00:15:43,030 --> 00:15:46,033 (源左衛門)ひどいしかたと 世間の評が うるさくはないか? 205 00:15:46,033 --> 00:15:49,036 世評よりも 武蔵を倒すことが第一です 206 00:15:49,036 --> 00:15:52,039 勝てさえすれば世評も作れる 207 00:15:52,039 --> 00:15:55,042 (源左衛門)よし そこまで 腹を据えているなら異存はない 208 00:15:55,042 --> 00:15:58,045 このうえは 評議を重ねるより配備じゃ 209 00:15:58,045 --> 00:16:01,048 采配は おぬしに任せる (御池)では 210 00:16:01,048 --> 00:16:04,051 一同 かかれ! (門下生たち)はっ! 211 00:16:04,051 --> 00:16:18,065 ♬~ 212 00:16:18,065 --> 00:16:21,001 なんじゃ 震えているのか? 臆病者め 213 00:16:21,001 --> 00:16:24,004 (源次郎) 背中に松葉が入ったのです 怖くなどありません 214 00:16:24,004 --> 00:16:28,008 それならばよい おぬしにも よい試練じゃ 215 00:16:28,008 --> 00:16:33,008 やがて 斬り合いが始まる よく見ておくのだぞ 216 00:16:35,015 --> 00:16:40,020 《人の世を眺めるのも これが限りかもしれん》 217 00:16:40,020 --> 00:16:44,024 《悔いはないか? 武蔵》 218 00:16:44,024 --> 00:16:48,028 《なんの! 俺は今 こうして生きている》 219 00:16:48,028 --> 00:16:52,032 《たとえ この決戦に命を落とそうとも➡ 220 00:16:52,032 --> 00:16:55,035 戦いに臨む この充実》 221 00:16:55,035 --> 00:16:58,038 《死地に足を向けている この体の緊張》 222 00:16:58,038 --> 00:17:02,042 《これこそが生きていると いうことじゃないか》 223 00:17:02,042 --> 00:17:04,044 《ただ…》 224 00:17:04,044 --> 00:17:06,044 お通… 225 00:17:23,997 --> 00:17:25,999 (小次郎)やあ 226 00:17:25,999 --> 00:17:32,005 お1人か? そうです 227 00:17:32,005 --> 00:17:36,009 いつぞやは 郭の総門で失礼いたした 228 00:17:36,009 --> 00:17:40,013 不行き届きな仲介を 受けてもらって 感謝しておる 229 00:17:40,013 --> 00:17:43,016 いや その折は どうも 230 00:17:43,016 --> 00:17:47,020 約束の場所へ赴かれるのか? 231 00:17:47,020 --> 00:17:49,022 はっ! 232 00:17:49,022 --> 00:17:55,028 お1人でか? 1人です 233 00:17:55,028 --> 00:18:00,033 武蔵どの こたびは 清十郎のときと異なり➡ 234 00:18:00,033 --> 00:18:04,037 1対1とは決めてはござらんぞ 分かっております 235 00:18:04,037 --> 00:18:08,041 吉岡方の名目人は 吉岡源次郎 236 00:18:08,041 --> 00:18:12,045 骨のある門人が こぞって 藪之郷一帯に備え➡ 237 00:18:12,045 --> 00:18:15,048 貴公の来るのを待ち構えておる 238 00:18:15,048 --> 00:18:17,985 それでも あくまで 1人で向かわれるか? 239 00:18:17,985 --> 00:18:21,989 吉岡衆は さだめし大勢でござろうが➡ 240 00:18:21,989 --> 00:18:24,992 この武蔵は 見らるるごとく ただ一人 241 00:18:24,992 --> 00:18:27,995 吉岡衆が多数のゆえ➡ 242 00:18:27,995 --> 00:18:33,000 我も多勢で当たろうとすれば これは際限なきこと 243 00:18:33,000 --> 00:18:37,004 世間を騒がすのみ だが 武蔵どの 244 00:18:37,004 --> 00:18:44,011 みすみす負けと分かっている戦を するのは 兵法にないと思うが 245 00:18:44,011 --> 00:18:50,017 兵法にはないが 私の場合だけには あるとしておきましょう 246 00:18:50,017 --> 00:18:54,021 そのような兵法に外れた 戦のしかたをなぜなさる? 247 00:18:54,021 --> 00:18:57,024 なぜ もっと 活路をお取りなさらんのだ? 248 00:18:57,024 --> 00:19:02,029 活路は 今 歩いている この道です 249 00:19:02,029 --> 00:19:05,032 冥土の道でなければ幸いだが 250 00:19:05,032 --> 00:19:07,034 自分を生かす活路は➡ 251 00:19:07,034 --> 00:19:11,038 このひと筋より ほかにはありません 252 00:19:11,038 --> 00:19:14,041 死に神に取りつかれたか? 武蔵どの 253 00:19:14,041 --> 00:19:20,981 生きて死ぬる者もある 死んで生きる者もある 254 00:19:20,981 --> 00:19:24,985 不憫な… 255 00:19:24,985 --> 00:19:28,989 小次郎どの これを上れば どこへ通じますかな 256 00:19:28,989 --> 00:19:32,993 花ノ木村から 一乗寺 藪之郷 257 00:19:32,993 --> 00:19:36,997 すなわち 貴公の死に場所 下り松につながる 258 00:19:36,997 --> 00:19:41,001 下り松まで道のりは? ここから 早や半里余り 259 00:19:41,001 --> 00:19:45,005 ゆるゆる行かれても 時刻の余裕は まだ十分 260 00:19:45,005 --> 00:19:47,005 では 後刻 また 261 00:19:53,013 --> 00:19:58,013 (小次郎)道が違う! 武蔵どの 道が違いますぞ 262 00:20:00,020 --> 00:20:02,020 小用か 263 00:20:05,025 --> 00:20:10,025 あの男 倒れるまでに何人斬れるか 264 00:20:15,969 --> 00:20:19,969 武蔵どの! 武蔵どの! 265 00:20:21,975 --> 00:20:26,975 逃げたか 武蔵… 卑怯な! 266 00:20:30,984 --> 00:20:37,991 ♬~ 267 00:20:37,991 --> 00:20:41,995 <一乗寺下り松への道筋は 3つあった> 268 00:20:41,995 --> 00:20:43,997 <3本の道には それぞれ➡ 269 00:20:43,997 --> 00:20:49,002 吉岡道場の門弟たちが息を潜め 待ち伏せていた> 270 00:20:49,002 --> 00:20:51,004 (鳥の鳴き声) 271 00:20:51,004 --> 00:21:01,014 ♬~ 272 00:21:01,014 --> 00:21:07,014 <そして 武蔵は その3つの道の いずれも選ばなかったのである> 273 00:21:10,023 --> 00:21:15,028 <正に 一乗寺とは反対の方向の 山懐へ 藪を抜け➡ 274 00:21:15,028 --> 00:21:21,034 道なき急斜面を登っていった 武蔵のねらいは何か?> 275 00:21:21,034 --> 00:21:25,038 <武蔵の胸中に 戦法は既に決まっていた> 276 00:21:25,038 --> 00:21:28,041 <目的の一乗寺下り松の ちょうど真後ろへ➡ 277 00:21:28,041 --> 00:21:33,041 山の上から駆け下りようとする 武蔵の策であった> 278 00:21:36,049 --> 00:21:39,052 (沢庵)なあ お通さん この道をな 279 00:21:39,052 --> 00:21:45,058 山の腹を縫っていけば ひとりでに 叡山のほうへ出るんじゃ 280 00:21:45,058 --> 00:21:48,061 どうじゃ? しばらく休んでいかんかい? 281 00:21:48,061 --> 00:21:50,063 大丈夫か… (お通)アアッ! 282 00:21:50,063 --> 00:21:53,066 お通さん ど… どうした? どうした? 283 00:21:53,066 --> 00:21:59,066 ハァハァ ハァハァ… (沢庵)大丈夫か? そこへ行け 284 00:22:04,077 --> 00:22:06,079 苦しいかい? 285 00:22:06,079 --> 00:22:10,083 水か? 水が欲しいんじゃの? 286 00:22:10,083 --> 00:22:13,086 よし! 287 00:22:13,086 --> 00:22:17,023 待っとれよ うん? (お通)アア… 288 00:22:17,023 --> 00:22:19,023 (せきこみ) 289 00:22:29,035 --> 00:22:32,035 ンンッ! ハァ… 290 00:22:34,040 --> 00:22:37,043 武蔵… 武蔵どの 291 00:22:37,043 --> 00:22:42,048 おう 沢庵どの どうして ここへ? 292 00:22:42,048 --> 00:22:45,051 一乗寺下り松の 果たし合いを聞いてのぅ 293 00:22:45,051 --> 00:22:50,056 この戦 武蔵どの どのような策で 臨むか それを考えたのじゃ 294 00:22:50,056 --> 00:22:55,061 待ち受ける敵は100近く 向かうは御身ただひとり 295 00:22:55,061 --> 00:22:59,065 桶狭間の信長公 古くは鵯越の戦法 296 00:22:59,065 --> 00:23:02,068 わしならば その故知にならう ハハハハッ… 297 00:23:02,068 --> 00:23:07,073 そんなことより その腰の竹筒をよこせ 298 00:23:07,073 --> 00:23:10,076 うむ… よ~し 299 00:23:10,076 --> 00:23:16,016 いやぁ この上にな 連れが難儀しておるんじゃ 300 00:23:16,016 --> 00:23:20,020 行ってな この水を 飲ませてやってくれんかいのぅ? 301 00:23:20,020 --> 00:23:22,022 はぁ… この上じゃ 302 00:23:22,022 --> 00:23:25,022 何をしとる? さあ 早よう行け 頼む! 303 00:23:31,031 --> 00:23:33,031 お通さん! 304 00:23:35,035 --> 00:23:38,035 しっかりしろ お通さん! 305 00:23:41,041 --> 00:23:45,041 さあ… お通さん 306 00:23:55,055 --> 00:24:01,061 お通さん… 大丈夫か? 307 00:24:01,061 --> 00:24:05,061 武蔵さま… アア… 308 00:24:07,067 --> 00:24:11,067 お通さん これで ええじゃろう? 309 00:24:13,073 --> 00:24:17,010 のう 武蔵どの お通さんはのぅ 310 00:24:17,010 --> 00:24:20,013 どうしても 武蔵どのに会うんじゃと言うて➡ 311 00:24:20,013 --> 00:24:23,016 病人のくせに 言うことを聞かんのじゃ 312 00:24:23,016 --> 00:24:25,018 こんなことを 度々すると死んでしまう 313 00:24:25,018 --> 00:24:28,021 おぬしから よう言うて聞かせてくれ 314 00:24:28,021 --> 00:24:32,025 もう わしの言うことは 聞かんのでのぅ ハハハハッ… 315 00:24:32,025 --> 00:24:37,030 わしが悪いのだ… すまん 316 00:24:37,030 --> 00:24:42,035 いいえ… うれしい 317 00:24:42,035 --> 00:24:46,039 私は うれしゅうございます 318 00:24:46,039 --> 00:24:49,042 わしは しばらく この上で お経でも読んどるからのぅ 319 00:24:49,042 --> 00:24:52,045 2人で ゆっくり話し合うんじゃのぅ 320 00:24:52,045 --> 00:24:56,045 (お通)沢庵さん そんな遠くへ行かなくても… 321 00:25:07,060 --> 00:25:11,060 (鳥の鳴き声) 322 00:25:13,066 --> 00:25:18,066 お通さん 体をいとうてくれ 323 00:25:22,008 --> 00:25:26,012 私は大丈夫でございます 324 00:25:26,012 --> 00:25:28,014 それよりも あなたは➡ 325 00:25:28,014 --> 00:25:34,020 これから 一乗寺の跡とやらで 死ぬお覚悟でございましょう? 326 00:25:34,020 --> 00:25:41,027 あなたが斬り死にあそばしたら 私も生きていないつもりです 327 00:25:41,027 --> 00:25:43,027 馬鹿な! 328 00:25:46,032 --> 00:25:50,036 剣に生きる人間が 剣で死ぬのは宿命 329 00:25:50,036 --> 00:25:53,039 だが そなたが死ぬのは許せない! 330 00:25:53,039 --> 00:25:59,045 気持ちは うれしいが わしのような者のために死ぬなど 331 00:25:59,045 --> 00:26:04,050 虫のように哀れで はかない考えではないか? 332 00:26:04,050 --> 00:26:10,056 お通さん わしは知らず知らず そなたに むごい仕打ちをしてきた 333 00:26:10,056 --> 00:26:15,061 千年杉のときも 花田橋のときも 334 00:26:15,061 --> 00:26:19,999 そのことは いつか わびなければと思っていた 335 00:26:19,999 --> 00:26:25,999 だが お通さん これから言う言葉は嘘ではない 336 00:26:30,009 --> 00:26:32,009 わしは そなたが好きだ 337 00:26:38,017 --> 00:26:42,017 1日でも 思わぬ日のなかったほど好きだ 338 00:26:45,024 --> 00:26:53,024 何もかも捨てて 共に暮らしたいと どれほど思い悩んだことか 339 00:26:57,036 --> 00:27:01,040 お通さん 恥も見栄もなく言う 340 00:27:01,040 --> 00:27:06,045 今日まで お通さんのことを思うと 昼も うつつな日があった 341 00:27:06,045 --> 00:27:12,051 寺で寝ても 野に伏しても お通さんの夢が付きまとい➡ 342 00:27:12,051 --> 00:27:15,989 歯がみをして 夜を明かした晩すらある 343 00:27:15,989 --> 00:27:20,994 それほど わしは お通さんに恋している 344 00:27:20,994 --> 00:27:25,999 けれど… けれど➡ 345 00:27:25,999 --> 00:27:29,002 そんなときでも 人知れず 剣を抜いて見ていると➡ 346 00:27:29,002 --> 00:27:33,006 狂おしい血も 水のように澄んでしまい➡ 347 00:27:33,006 --> 00:27:39,012 お通さんの影も霧のように わしの頭から薄れてしまう 348 00:27:39,012 --> 00:27:41,014 そして また➡ 349 00:27:41,014 --> 00:27:47,014 わしは剣の修行に 身も心も打ち込んでいったのだ 350 00:27:49,022 --> 00:27:51,022 お通さん… 351 00:27:53,026 --> 00:27:56,029 これが武蔵の本心だ 352 00:27:56,029 --> 00:28:01,034 迷いに迷い 悩みに悩み➡ 353 00:28:01,034 --> 00:28:06,034 今日まで 必死で 剣の道に身を引きずってきた 354 00:28:09,042 --> 00:28:12,042 武蔵とは そういう男だ 355 00:28:15,048 --> 00:28:20,048 お通さん うまく言えぬが 分かってほしい 356 00:28:21,988 --> 00:28:24,991 これが わしの精いっぱいの言葉だ 357 00:28:24,991 --> 00:28:30,997 ♬~ 358 00:28:30,997 --> 00:28:32,999 知ってます そんなこと 359 00:28:32,999 --> 00:28:36,002 そういう あなたで あるぐらいなこと 360 00:28:36,002 --> 00:28:42,008 知らないで… 知らないで 恋をしては まいりませぬ 361 00:28:42,008 --> 00:28:46,012 それなら この武蔵と共に 死のうなどと言うな 362 00:28:46,012 --> 00:28:49,012 愛する人と死を願う男が どこにいるか!? 363 00:28:52,018 --> 00:28:57,023 武蔵は お通さんに生きていてほしい 364 00:28:57,023 --> 00:29:06,032 ♬~ 365 00:29:06,032 --> 00:29:08,032 待って! 366 00:29:10,036 --> 00:29:14,040 分かりました 分かってくれたか 367 00:29:14,040 --> 00:29:15,975 けれど 私は やはり➡ 368 00:29:15,975 --> 00:29:19,979 あなたが お死になれば あとから死にます 369 00:29:19,979 --> 00:29:21,981 決して 虫のように➡ 370 00:29:21,981 --> 00:29:24,984 いっときの悲しみに溺れて 死ぬのではありませぬ 371 00:29:24,984 --> 00:29:28,988 あなたは 私のような者でも➡ 372 00:29:28,988 --> 00:29:34,988 心の内だけでも 妻として 許してくださいますでしょうね? 373 00:29:36,996 --> 00:29:43,002 もう それだけで 私は全ての望みが満ち足りました 374 00:29:43,002 --> 00:29:50,009 この気持ち この喜びは 私だけの持っていられる幸せです 375 00:29:50,009 --> 00:29:52,011 あなたは➡ 376 00:29:52,011 --> 00:29:55,014 私を不幸にしたくないからと おっしゃるのでしょう 377 00:29:55,014 --> 00:30:01,020 でも 私は 決して不幸に負けて 死ぬのではありません 378 00:30:01,020 --> 00:30:05,024 世間の人たちが 全て 私を不幸だと言っても➡ 379 00:30:05,024 --> 00:30:10,029 私自身は ちっとも不幸ではないのです 380 00:30:10,029 --> 00:30:13,032 いいか? 381 00:30:13,032 --> 00:30:17,971 わしだって 無駄に 命を捨てに急ぐわけではない 382 00:30:17,971 --> 00:30:20,974 お通さん 見ていてくれ 383 00:30:20,974 --> 00:30:23,974 武蔵の体が土になっても… 384 00:30:26,980 --> 00:30:29,983 武蔵は きっと そなたの中に生きているから 385 00:30:29,983 --> 00:30:40,994 ♬~ 386 00:30:40,994 --> 00:30:50,994 ♬~ 387 00:30:53,072 --> 00:30:55,074 (又八)おばば 少し休もう 388 00:30:55,074 --> 00:30:58,077 (お杉) 果たし合いが終わってしまうぞ 389 00:30:58,077 --> 00:31:01,080 (又八)俺たちが刃の中に 飛び込むわけじゃないんだ 390 00:31:01,080 --> 00:31:05,084 勝負が ついたあとで 吉岡方に頼んで➡ 391 00:31:05,084 --> 00:31:09,088 武蔵の死骸から 髪の毛でも もらうだけの話じゃないか 392 00:31:09,088 --> 00:31:13,092 武蔵が討たれぬときは どうする? 393 00:31:13,092 --> 00:31:16,095 ああ 喉が渇いた 394 00:31:16,095 --> 00:31:21,095 おばば 少し先に行ってくれ 395 00:31:41,120 --> 00:31:43,120 (又八)朱実? 396 00:31:45,124 --> 00:31:48,127 朱実じゃねえか 397 00:31:48,127 --> 00:31:54,133 どうした? 朱実 お前も旅支度か 398 00:31:54,133 --> 00:31:59,138 そうか 分かった 一乗寺村か 399 00:31:59,138 --> 00:32:04,143 そうか お前も武蔵を忘れきれずか 400 00:32:04,143 --> 00:32:09,148 もう諦めています (又八)じゃ なぜ? 401 00:32:09,148 --> 00:32:12,151 そこの気持ちが 自分でも分からない 402 00:32:12,151 --> 00:32:15,151 佐々木小次郎は どうする? 403 00:32:20,093 --> 00:32:25,098 《この女 道連れを探している》 404 00:32:25,098 --> 00:32:31,104 朱実 江戸へ逃げねえか? (朱実)江戸へ? 405 00:32:31,104 --> 00:32:35,108 人の噂では これからは江戸だ 京 大坂は もう古い 406 00:32:35,108 --> 00:32:39,112 江戸城を巡ってな 新しい町が どんどん建ってるそうだ 407 00:32:39,112 --> 00:32:41,114 そういう所へ行って 早く割り込めば➡ 408 00:32:41,114 --> 00:32:43,114 きっと うまい話がある 409 00:32:45,118 --> 00:32:51,124 どうせ てめえも俺も 群れから はぐれた迷い雁だ 410 00:32:51,124 --> 00:32:56,124 なあ 行かねえか? 行ってみねえか? 411 00:33:00,133 --> 00:33:02,135 なあ 朱実 412 00:33:02,135 --> 00:33:06,139 これから やりてえことやって 楽しく暮らすんだ 413 00:33:06,139 --> 00:33:10,143 生半可 正直に 了見をよくしようなんて思っても 414 00:33:10,143 --> 00:33:13,079 かえって ろくな道は開けはしねえよ 415 00:33:13,079 --> 00:33:16,082 朱実 この世の中な 416 00:33:16,082 --> 00:33:20,086 餌になって食われちゃ駄目だ 食う人間にならなきゃ 417 00:33:20,086 --> 00:33:23,089 嫌か? 418 00:33:23,089 --> 00:33:25,091 お前が一緒に行ってくれりゃ➡ 419 00:33:25,091 --> 00:33:30,096 俺だって 大切なものを捨てる覚悟だぜ 420 00:33:30,096 --> 00:33:36,096 ≪(お杉)せがれよー! 又八よー! 421 00:33:58,124 --> 00:34:01,127 (源左衛門) まだ現れぬか? 武蔵めは 422 00:34:01,127 --> 00:34:03,129 (小次郎)いや 出会った 423 00:34:03,129 --> 00:34:06,132 出会ったが 武蔵の奴➡ 424 00:34:06,132 --> 00:34:10,136 どう思ったか 突然 不意に姿を消してしもうた 425 00:34:10,136 --> 00:34:12,138 (御池)さては逃げたな? 426 00:34:12,138 --> 00:34:14,073 (小次郎) いや 逃げ去ったとは考えられぬ 427 00:34:14,073 --> 00:34:18,077 思うに この小次郎に知られては➡ 428 00:34:18,077 --> 00:34:22,081 具合の悪い奇策を用いるため わしをまいたのだ 429 00:34:22,081 --> 00:34:24,083 油断は決してなりませぬぞ 430 00:34:24,083 --> 00:34:27,086 奇策? 奇策とは? 431 00:34:27,086 --> 00:34:31,090 武蔵の助太刀の者たちが 奴と どっかで待ち合わして➡ 432 00:34:31,090 --> 00:34:34,093 それと合して ここへ 攻めてくるつもりかもしれん 433 00:34:34,093 --> 00:34:36,095 うむ… それは ありそうなことじゃ 434 00:34:36,095 --> 00:34:38,097 しからば ここへ来るのも もう間はないぞ 435 00:34:38,097 --> 00:34:42,101 備えが崩れているときに 武蔵方が不意をつけば 不覚を取る 436 00:34:42,101 --> 00:34:44,103 そうだ 油断するな! 437 00:34:44,103 --> 00:34:47,103 (植田)部署につけ! (御池)戻れ! 戻れ! 438 00:34:50,109 --> 00:34:53,112 (小次郎)怖いか? 439 00:34:53,112 --> 00:34:59,118 では 寒いのか? 唇が紫色だ 440 00:34:59,118 --> 00:35:01,120 そこもとは吉岡の名目人 441 00:35:01,120 --> 00:35:04,123 つまり 今日の 果たし合いの総大将だからな 442 00:35:04,123 --> 00:35:09,128 しっかりせねばいかんぞ (源次郎)はい 443 00:35:09,128 --> 00:35:13,065 どれ わしも どこか地の利のよい所で➡ 444 00:35:13,065 --> 00:35:15,065 立会人として検分つかまつる 445 00:35:45,097 --> 00:35:49,097 ハァ… ハァ… 446 00:35:53,105 --> 00:35:59,105 《そうだ わしの後ろには 神があるということか》 447 00:36:17,063 --> 00:36:19,063 (吹きかける音) 448 00:36:36,082 --> 00:36:39,085 《待て!》 449 00:36:39,085 --> 00:36:42,088 《自分は今 ここへ何を願おうとしたのか》 450 00:36:42,088 --> 00:36:45,091 《朝に生きて 夕べに死ぬる身と➡ 451 00:36:45,091 --> 00:36:48,094 死を 潔く受ける修行をしてきた己が➡ 452 00:36:48,094 --> 00:36:53,094 この期になって 何ゆえ 神の力を頼む》 453 00:36:57,103 --> 00:37:00,103 神仏を頼まず… 454 00:37:02,108 --> 00:37:04,110 頼むは この一剣! 455 00:37:04,110 --> 00:37:21,060 ♬~ 456 00:37:21,060 --> 00:37:24,060 《卑怯な!》 457 00:37:45,084 --> 00:37:47,084 ウウッ! (銃声) 458 00:37:49,088 --> 00:37:52,091 (御池)どうした!? (門下生)後ろだ! 459 00:37:52,091 --> 00:37:54,093 (門下生)武蔵だ! (御池)植田! 460 00:37:54,093 --> 00:37:57,096 (植田)いけー! 抜かるな! 461 00:37:57,096 --> 00:38:04,103 約定によって 作州浪人 宮本武蔵 試合に まかり越した! 462 00:38:04,103 --> 00:38:08,107 武蔵は かくのごとく ただ一人! 463 00:38:08,107 --> 00:38:13,045 ひとりひとり かかられるもよし 総がかりに来られるのも勝手 464 00:38:13,045 --> 00:38:15,047 いざ! 465 00:38:15,047 --> 00:38:18,050 (御池)遅いぞ 武蔵! (植田)後れたか! 466 00:38:18,050 --> 00:38:20,050 ハアッ! (御池たち)オオッ… 467 00:38:23,055 --> 00:38:25,057 (斬る音) 468 00:38:25,057 --> 00:38:27,059 名目人 源次郎どのは いずれに おわすか!? 469 00:38:27,059 --> 00:38:29,059 (斬る音) アアッ! 470 00:38:32,064 --> 00:38:34,066 私だー! 471 00:38:34,066 --> 00:38:40,072 《これが… 俺が真っ先に斬るべき相手か》 472 00:38:40,072 --> 00:38:42,074 ンンッ! 473 00:38:42,074 --> 00:38:46,078 《来るな… 来るな!》 474 00:38:46,078 --> 00:38:48,078 ヤーッ! ハアッ! 475 00:38:50,082 --> 00:38:52,084 (源左衛門)ヤーッ! 476 00:38:52,084 --> 00:38:54,084 (斬る音) 477 00:38:56,088 --> 00:38:58,088 (斬る音) 478 00:39:00,092 --> 00:39:02,092 アア… 479 00:39:05,097 --> 00:39:07,099 (叫び声) 480 00:39:07,099 --> 00:39:09,101 (御池)源次郎さま! (植田)ご老台! 481 00:39:09,101 --> 00:39:11,103 許さん! 482 00:39:11,103 --> 00:39:13,103 ハアッ! 483 00:39:15,040 --> 00:39:17,040 (門下生)逃がすな! (門下生)待て! 484 00:39:21,046 --> 00:39:23,048 (斬る音) 485 00:39:23,048 --> 00:39:29,054 ♬~ 486 00:39:29,054 --> 00:39:32,057 (叫び声) 487 00:39:32,057 --> 00:39:35,060 (小次郎) 下り松だ 下り松へ出合え! 488 00:39:35,060 --> 00:39:41,066 武蔵は下り松だ 下り松へ行け! 489 00:39:41,066 --> 00:39:45,070 (門下生)いくぞー! (門下生たち)おう! 490 00:39:45,070 --> 00:39:47,072 ≪(小次郎)下り松へ行け! 491 00:39:47,072 --> 00:39:56,081 ♬~ 492 00:39:56,081 --> 00:39:58,083 (斬る音) 493 00:39:58,083 --> 00:40:07,092 ♬~ 494 00:40:07,092 --> 00:40:09,092 (斬る音) 495 00:40:12,097 --> 00:40:15,034 (門下生)おのれ! 逃げるな! (門下生)武蔵! 496 00:40:15,034 --> 00:40:19,038 <待ち受ける70余名の敵の 背後をつき➡ 497 00:40:19,038 --> 00:40:23,042 その総大将を倒すのが 武蔵の第1の策であり➡ 498 00:40:23,042 --> 00:40:28,047 第2の策は 狭い道に敵を迎えれば 多数も1列となって➡ 499 00:40:28,047 --> 00:40:32,051 いわば 1対1になる原理を 利用したのであった> 500 00:40:32,051 --> 00:40:34,053 (植田)武蔵は!? (門下生)来ないぞ! 501 00:40:34,053 --> 00:40:37,056 (植田)そんなはずはない! 502 00:40:37,056 --> 00:40:39,058 ここだ! 503 00:40:39,058 --> 00:40:43,062 (深呼吸) 504 00:40:43,062 --> 00:40:47,066 (騒ぎ声) 505 00:40:47,066 --> 00:40:49,068 (叫び声) 506 00:40:49,068 --> 00:41:02,081 ♬~ 507 00:41:02,081 --> 00:41:04,083 (斬る音) 508 00:41:04,083 --> 00:41:13,092 ♬~ 509 00:41:13,092 --> 00:41:16,095 (植田)ひくな! ひくな! 510 00:41:16,095 --> 00:41:19,095 ひくな ひくな! 斬れ! 511 00:41:21,100 --> 00:41:23,102 (斬る音) 512 00:41:23,102 --> 00:41:29,108 (植田) ひくな! ひくな! ひくな! 513 00:41:29,108 --> 00:41:31,110 (斬る音) 514 00:41:31,110 --> 00:41:35,114 (叫び声) 515 00:41:35,114 --> 00:41:40,119 ひくな ひくな! 斬れ 斬れ! 516 00:41:40,119 --> 00:41:45,124 ♬~ 517 00:41:45,124 --> 00:41:47,124 (斬る音) 518 00:41:49,128 --> 00:41:51,130 (斬る音) 519 00:41:51,130 --> 00:41:57,136 ♬~ 520 00:41:57,136 --> 00:42:01,140 (叫び声) 521 00:42:01,140 --> 00:42:07,146 ♬~ 522 00:42:07,146 --> 00:42:11,150 (門下生たち)斬れ! 斬れ! 523 00:42:11,150 --> 00:42:22,094 ♬~ 524 00:42:22,094 --> 00:42:27,094 (叫び声) 525 00:42:29,101 --> 00:42:31,103 (斬る音) 526 00:42:31,103 --> 00:42:51,123 ♬~ 527 00:42:51,123 --> 00:43:09,141 ♬~ 528 00:43:09,141 --> 00:43:11,143 ヤーッ! 529 00:43:11,143 --> 00:43:18,143 ♬~ 530 00:43:20,085 --> 00:43:25,085 (深呼吸) 531 00:43:49,114 --> 00:43:51,114 (門下生)アアッ! 532 00:44:02,127 --> 00:44:04,127 (高弟)くそ… 533 00:44:12,137 --> 00:44:29,087 (法師の読経) 534 00:44:29,087 --> 00:44:49,107 ♬~ 535 00:44:49,107 --> 00:45:09,127 ♬~ 536 00:45:09,127 --> 00:45:29,081 ♬~ 537 00:45:29,081 --> 00:45:49,101 ♬~ 538 00:45:49,101 --> 00:46:09,121 ♬~ 539 00:46:09,121 --> 00:46:28,121 ♬~ 540 00:46:30,042 --> 00:46:33,045 (大法師)何がゆえに まだ12歳の子供まで斬ったか!? 541 00:46:33,045 --> 00:46:36,048 (大法師) いかに 武道のうえとはいえ➡ 542 00:46:36,048 --> 00:46:38,050 血も涙もないしかたじゃ 543 00:46:38,050 --> 00:46:40,052 (小次郎)聞けば 無動寺で➡ 544 00:46:40,052 --> 00:46:44,056 10日の余も 観音像を彫り続けた由 545 00:46:44,056 --> 00:46:47,056 討たれた少年の 供養のおつもりか? 546 00:46:50,062 --> 00:46:55,067 あの場合 拙者でも まず 名目人を斬っておる 547 00:46:55,067 --> 00:47:00,072 しかし 拙者なら 斬ったあとに悔やみはせぬ 548 00:47:00,072 --> 00:47:04,076 観音像を刻むなど いまだ未熟 549 00:47:04,076 --> 00:47:10,015 その心の弱さが いつか 貴公に死をもたらす 550 00:47:10,015 --> 00:47:16,021 ♬~ 551 00:47:16,021 --> 00:47:23,028 ハハハハッ… おぬし 鉄の心を持てる日が来るかな? 552 00:47:23,028 --> 00:47:35,040 ♬~ 553 00:47:35,040 --> 00:47:46,040 ♬~