1 00:02:26,072 --> 00:02:29,608 ・~ 2 00:02:29,608 --> 00:02:32,611 (宮本武蔵) 己が 信じられなくなったら・ 3 00:02:32,611 --> 00:02:35,114 俺は 生きてはいけない。 4 00:02:35,114 --> 00:02:37,616 (又八)己を 信じるために…・ 5 00:02:37,616 --> 00:02:40,119 信じたいために…・ 6 00:02:40,119 --> 00:02:42,621 子供を 斬るのか 武蔵 7 00:02:42,621 --> 00:02:45,621 (お通) 二度と 会えない気がして…。 8 00:02:47,626 --> 00:02:49,628 お通 9 00:02:49,628 --> 00:02:51,628 死なないで。 10 00:02:53,632 --> 00:02:55,632 生きる 11 00:02:59,138 --> 00:03:14,153 ・~(テーマ音楽) 12 00:03:14,153 --> 00:03:26,653 ・~ 13 00:04:34,099 --> 00:04:37,099 (雷鳴) 14 00:05:45,604 --> 00:05:50,109 <武蔵は 吉岡門の総大将 壬生源次郎を斬る事で・ 15 00:05:50,109 --> 00:05:53,109 戦は終わると考えていた> 16 00:05:56,115 --> 00:05:59,618 < あとは 刻も早く 戦場から立ち去ろう…・ 17 00:05:59,618 --> 00:06:02,618 そう思っていた。 しかし…> 18 00:06:08,627 --> 00:06:10,627 え~い 19 00:06:13,632 --> 00:06:19,138 総大将を 斬った~ 20 00:06:19,138 --> 00:06:22,141 (お杉)鬼じゃ 鬼じゃ 21 00:06:22,141 --> 00:06:24,576 (源左衛門) 源次郎 (銃声) 22 00:06:24,576 --> 00:06:27,076 (門弟たち)源次郎様 23 00:06:30,582 --> 00:06:33,082 生きて帰すな。 かかれ~ 24 00:06:36,588 --> 00:06:54,606 ・~ 25 00:06:54,606 --> 00:06:56,606 (銃声) 26 00:06:58,610 --> 00:07:00,612 (御池)退け~ 27 00:07:00,612 --> 00:07:39,585 ・~ 28 00:07:39,585 --> 00:07:41,585 (刺さる音) 29 00:07:55,601 --> 00:07:57,601 や~っ 30 00:08:02,107 --> 00:09:10,607 ・~ 31 00:09:21,119 --> 00:09:24,122 武蔵…。 32 00:09:24,122 --> 00:09:27,122 お前が死ぬまで 戦は 終わらんのだ。 33 00:09:31,063 --> 00:09:33,063 や~っ 34 00:09:51,083 --> 00:09:53,083 や~っ 35 00:10:11,103 --> 00:10:13,103 や~っ 36 00:10:16,108 --> 00:10:26,051 ・~ 37 00:10:26,051 --> 00:10:28,053 行くぞ お通 38 00:10:28,053 --> 00:10:34,059 ・~ 39 00:10:34,059 --> 00:10:38,063 (権六)どうするんじゃ? これから…。 40 00:10:38,063 --> 00:10:41,567 鬼の所に お前は 行くのだろうが 41 00:10:41,567 --> 00:10:43,567 嫌~っ 42 00:10:45,571 --> 00:10:47,571 嫌…。 43 00:10:53,078 --> 00:10:58,584 私を…・ 44 00:10:58,584 --> 00:11:00,586 もう ほっといて。 45 00:11:00,586 --> 00:11:08,594 ・~ 46 00:11:08,594 --> 00:11:10,596 (城太郎) お通さん 47 00:11:10,596 --> 00:11:25,544 ・~ 48 00:11:25,544 --> 00:11:27,546 [ おびえて逃げる農民 ] 49 00:11:27,546 --> 00:11:44,062 ・~ 50 00:11:44,062 --> 00:11:47,065 (お甲)藤次 51 00:11:47,065 --> 00:11:49,067 大丈夫なのかい? 52 00:11:49,067 --> 00:11:51,067 (小橋) 何とか 命は…。 53 00:11:53,071 --> 00:11:55,574 しっかり おしよ 藤次。 54 00:11:55,574 --> 00:11:59,077 俺は もう駄目だ お甲。 55 00:11:59,077 --> 00:12:01,079 藤次…。 56 00:12:01,079 --> 00:12:03,081 俺を頼らず…・ 57 00:12:03,081 --> 00:12:05,081 お前人で 生きていけ。 58 00:12:08,587 --> 00:12:11,089 (叩く音) 59 00:12:11,089 --> 00:12:13,091 何 言ってんだよ 60 00:12:13,091 --> 00:12:17,095 しおらしい事を 言うんじゃないよ 61 00:12:17,095 --> 00:12:21,099 悪なら 悪らしく…・ 62 00:12:21,099 --> 00:12:25,103 最後の最後まで しぶとく生きていきなよ 63 00:12:25,103 --> 00:12:39,117 ・~ 64 00:12:39,117 --> 00:12:42,120 「果たし合いが終わったら・ 65 00:12:42,120 --> 00:12:45,123 の滝に お通さんを 連れてこい」って・ 66 00:12:45,123 --> 00:12:47,123 師匠が言ってたよ。 67 00:12:51,129 --> 00:12:53,131 どうしたの? お通さん。 68 00:12:53,131 --> 00:13:01,131 ・~ 69 00:13:47,119 --> 00:13:49,119 お通…。 70 00:13:54,126 --> 00:13:59,131 武蔵が…・ 71 00:13:59,131 --> 00:14:01,131 怖い。 72 00:14:03,135 --> 00:14:06,638 武蔵が…・ 73 00:14:06,638 --> 00:14:09,141 怖い。 74 00:14:09,141 --> 00:14:15,147 どうして…・ 75 00:14:15,147 --> 00:14:19,151 子供を斬ってまで…・ 76 00:14:19,151 --> 00:14:21,651 名を挙げたいのよ・ 77 00:14:26,591 --> 00:14:29,094 そうじゃない 78 00:14:29,094 --> 00:14:31,094 そうじゃない お通 79 00:14:33,598 --> 00:14:35,598 分かってくれ。 80 00:14:39,604 --> 00:14:41,604 分かって下さい。 81 00:14:48,113 --> 00:14:51,616 俺は…・ 82 00:14:51,616 --> 00:14:53,616 あれしか なかった 83 00:14:56,621 --> 00:14:58,623 お通 84 00:14:58,623 --> 00:15:00,625 離して…。 85 00:15:00,625 --> 00:15:04,129 離して 武蔵。 86 00:15:04,129 --> 00:15:06,631 やめて 87 00:15:06,631 --> 00:15:08,633 やめろよ 88 00:15:08,633 --> 00:15:10,633 師匠 やめろよ 89 00:15:30,088 --> 00:16:06,124 ・~ 90 00:16:06,124 --> 00:16:12,130 私は…・ 91 00:16:12,130 --> 00:16:19,137 武蔵を追いかけて…・ 92 00:16:19,137 --> 00:16:21,637 ずっと旅をしてきた。 93 00:16:26,077 --> 00:16:31,082 命を…・ 94 00:16:31,082 --> 00:16:35,587 命を懸けてでも…・ 95 00:16:35,587 --> 00:16:38,089 武蔵を…・ 96 00:16:38,089 --> 00:16:40,089 追っていこうと思った。 97 00:16:42,093 --> 00:16:52,103 でも 武蔵は…・ 98 00:16:52,103 --> 00:16:55,103 私の思っていた武蔵とは違う。 99 00:17:00,111 --> 00:17:04,616 私は…・ 100 00:17:04,616 --> 00:17:07,118 武蔵が…・ 101 00:17:07,118 --> 00:17:09,120 怖い。 102 00:17:09,120 --> 00:17:57,120 ・~ 103 00:18:01,606 --> 00:18:04,606 (琴)何を考えて おられるのです? 104 00:18:06,611 --> 00:18:09,614 (小次郎) よく聞くのう。 105 00:18:09,614 --> 00:18:12,117 え? 106 00:18:12,117 --> 00:18:15,117 「俺が 何を 考えているのだ」と。 107 00:18:17,122 --> 00:18:22,627 時々 小次郎様の事が 分からなくなります。 108 00:18:22,627 --> 00:18:26,627 人の心は 誰にも分からぬものだ。 109 00:18:30,568 --> 00:18:32,568 そうですね。 110 00:18:34,572 --> 00:18:38,076 俺が 考えていたのは…・ 111 00:18:38,076 --> 00:18:41,079 あの 「武蔵」という男の事だ。 112 00:18:41,079 --> 00:18:43,581 「武蔵」? 113 00:18:43,581 --> 00:18:46,081 あの男が 吉岡を潰した。 114 00:18:48,586 --> 00:18:53,091 足利将軍以来 権勢を誇っていた兵法所が・ 115 00:18:53,091 --> 00:18:57,595 たった人の男のために 滅んだ。 116 00:18:57,595 --> 00:18:59,595 そうなのですか…。 117 00:19:01,599 --> 00:19:04,602 しかし あの男は…・ 118 00:19:04,602 --> 00:19:07,105 己の強さゆえに・ 119 00:19:07,105 --> 00:19:10,608 自分の生き方を 狭めている。 120 00:19:10,608 --> 00:19:13,111 だが 俺の剣は・ 121 00:19:13,111 --> 00:19:15,611 己を 解き放つためのものだ。 122 00:19:17,615 --> 00:19:21,115 私のために 後藤様に雇われても? 123 00:19:24,556 --> 00:19:27,559 そうだ。 124 00:19:27,559 --> 00:19:30,061 お主は 美しい。 125 00:19:30,061 --> 00:19:33,064 美しいもののために 何をしても・ 126 00:19:33,064 --> 00:19:36,067 俺の生き方を 狭める事にはならぬ。 127 00:19:36,067 --> 00:19:39,070 私が 美しくなくなった時には・ 128 00:19:39,070 --> 00:19:41,573 小次郎様は 私を お捨てになる? 129 00:19:41,573 --> 00:19:45,076 そうだ。 130 00:19:45,076 --> 00:19:48,079 俺が 強さを失った時…・ 131 00:19:48,079 --> 00:19:51,583 俺で なくなるように…・ 132 00:19:51,583 --> 00:19:55,086 お主が 美しさを失った時は・ 133 00:19:55,086 --> 00:19:57,589 お主ではなくなる。 134 00:19:57,589 --> 00:20:01,092 そう思って…・ 135 00:20:01,092 --> 00:20:04,092 いつまでも 美しいままでいろ。 136 00:20:38,563 --> 00:20:40,565 大丈夫かい? 137 00:20:40,565 --> 00:20:42,567 ええ。 138 00:20:42,567 --> 00:20:45,069 「俺に 何かあったら・ 139 00:20:45,069 --> 00:20:48,573 光悦様の家に お通さんを連れていけ」と・ 140 00:20:48,573 --> 00:20:52,076 師匠が言ってたんだ。 141 00:20:52,076 --> 00:20:54,076 もうすぐだよ。 142 00:21:13,097 --> 00:21:29,047 [ お経をずさむ ] 143 00:21:29,047 --> 00:21:33,051 ~ 144 00:21:33,051 --> 00:21:38,056 <比叡山に入った武蔵は ただ ひたすら歩いた> 145 00:21:38,056 --> 00:21:42,060 ~ 146 00:21:42,060 --> 00:21:44,062 <武蔵が歩いた道は 147 00:21:44,062 --> 00:21:47,565 平安の頃に始まり 今でも続いている 148 00:21:47,565 --> 00:21:52,565 「回峰行」という この山独特の 修行の道であった> 149 00:21:54,572 --> 00:21:57,075 <「千日回峰行」となると 150 00:21:57,075 --> 00:22:02,075 地球を周するほどの距離を 歩くと いわれている> 151 00:22:05,083 --> 00:22:09,087 <天正年間より現代まで 400年の間に 152 00:22:09,087 --> 00:22:14,092 「千日回峰行」を終えた者は 50名に達していない。 153 00:22:14,092 --> 00:22:17,592 それほどの 厳しい行なのである> 154 00:22:20,098 --> 00:22:23,101 <「回峰行」に 目的はない。 155 00:22:23,101 --> 00:22:26,104 歩く事 ただ ひたすら歩く事… 156 00:22:26,104 --> 00:22:29,107 それが 行の目的である> 157 00:22:29,107 --> 00:22:34,107 ~ 158 00:22:44,122 --> 00:22:49,127 (慧言)「宮本武蔵」と いうのは そこもとか? 159 00:22:49,127 --> 00:22:51,129 はい。 160 00:22:51,129 --> 00:22:54,632 夜明けとともに 161 00:22:54,632 --> 00:22:58,136 即刻 当山を退去すべし。 162 00:22:58,136 --> 00:23:00,638 (旦元)比叡は 霊域なり。 163 00:23:00,638 --> 00:23:05,143 怨恨を負うて 逃げ込む者の 潜伏を許さん。 164 00:23:05,143 --> 00:23:11,649 俺は ただ 当山で 祈りを捧げたい… 165 00:23:11,649 --> 00:23:14,652 そう 思っているだけなのですが。 166 00:23:14,652 --> 00:23:20,658 本坊においては 当初 吉岡方の大勢を 167 00:23:20,658 --> 00:23:26,097 たった人で 相手にした 兵法者と 好意を持っておった。 168 00:23:26,097 --> 00:23:31,602 しかし そののち いろいろと悪評が伝わり 169 00:23:31,602 --> 00:23:37,608 当山に匿いおく事 まかりならんと いう事になったのだ。 170 00:23:37,608 --> 00:23:41,612 世間の噂など 何物でもござらん。 171 00:23:41,612 --> 00:23:46,117 言いたい者には 言わせておけばよい。 172 00:23:46,117 --> 00:23:50,617 この期に及んで まだ そんな事を言うか 外道 173 00:23:55,126 --> 00:24:00,126 何故 まだ年端も行かぬ 子供まで斬ったか? 174 00:24:02,133 --> 00:24:04,635 兵法者は… 175 00:24:04,635 --> 00:24:11,142 闘いに臨んで 負けるという事は 許されぬ。 176 00:24:11,142 --> 00:24:17,148 あの際 総大将に 撃を下しておけば 177 00:24:17,148 --> 00:24:23,154 たとえ そののち 多勢に無勢で 斬り死にをしようとも 178 00:24:23,154 --> 00:24:26,591 俺の勝ちは 明らかになる。 179 00:24:26,591 --> 00:24:30,094 その考えが 間違っているとは 180 00:24:30,094 --> 00:24:35,600 今の今でも 思ってはおりません。 181 00:24:35,600 --> 00:24:40,100 お主にとっては 勝つ事が すべてなのか? 182 00:24:43,107 --> 00:24:46,110 兵法者にとって 183 00:24:46,110 --> 00:24:50,114 負けるという事は 184 00:24:50,114 --> 00:24:53,117 「死」を意味する。 185 00:24:53,117 --> 00:25:02,126 それを知って 卑怯な手を 使ってきたのは… 186 00:25:02,126 --> 00:25:04,128 吉岡のほうだ。 187 00:25:04,128 --> 00:25:07,128 見苦しい言い訳を するな 188 00:25:09,133 --> 00:25:13,137 叡山は そなたを追う。 189 00:25:13,137 --> 00:25:18,142 刻も早く 当山から 出てうせい 190 00:25:18,142 --> 00:25:42,142 ~ 191 00:25:44,101 --> 00:25:49,106 (妙秀)元気が戻るまで ここにいて いいのですよ。 192 00:25:49,106 --> 00:25:51,106 ありがとうございます。 193 00:25:53,611 --> 00:25:56,113 私は あのお方に 194 00:25:56,113 --> 00:26:00,618 「美しさを知る心を 持ちなさい」と 言ったのです。 195 00:26:00,618 --> 00:26:06,123 若い時の 匂うような美しさ…。 196 00:26:06,123 --> 00:26:13,130 それが 命の 強さと はかなさなのです。 197 00:26:13,130 --> 00:26:18,636 光悦も その 命の 強さと はかなさを 198 00:26:18,636 --> 00:26:24,136 何とか 形に残したいと 思っているのですよ。 199 00:26:34,585 --> 00:26:38,089 何を作ってるの? 200 00:26:38,089 --> 00:26:40,591 茶碗だ。 201 00:26:40,591 --> 00:26:45,096 「楽茶碗」といってな… 202 00:26:45,096 --> 00:26:49,600 ろくろを使わぬ 手びねり茶碗だ。 203 00:26:49,600 --> 00:26:52,603 俺にも 作れる? 204 00:26:52,603 --> 00:26:55,103 誰にだって 作れるさ。 205 00:27:03,114 --> 00:27:06,117 よし。 さ…。 206 00:27:06,117 --> 00:27:11,122 真ん中へ 親指を突っ込んで ひねり上げるんだ。 207 00:27:11,122 --> 00:27:13,122 やってごらん。 208 00:27:16,127 --> 00:27:18,127 そうだ…。 209 00:27:21,132 --> 00:27:25,570 手を通じて 土に 命を与える…。 210 00:27:25,570 --> 00:27:27,570 そう思って 作るんだよ。 211 00:27:30,074 --> 00:27:46,591 ・~ 212 00:27:46,591 --> 00:27:49,093 紙を作って いるのでしょう? 213 00:27:49,093 --> 00:27:51,095 (宗仁)ええ。 214 00:27:51,095 --> 00:27:54,095 私も 村で 教わった事があります。 215 00:27:59,103 --> 00:28:02,106 でも こんなに薄く…・ 216 00:28:02,106 --> 00:28:05,106 見事な紙を 見た事は ありません。 217 00:28:10,114 --> 00:28:13,117 見ていても いいですか? 218 00:28:13,117 --> 00:28:15,119 ええ。 219 00:28:15,119 --> 00:28:38,576 ・~ 220 00:28:38,576 --> 00:28:44,081 この宗仁や 絵師の俵屋宗達に 出会って 初めて…・ 221 00:28:44,081 --> 00:28:48,586 紙と模様と文字が 体となった・ 222 00:28:48,586 --> 00:28:54,592 新しい美を 作り上げる事が できると 心弾んでいるんですよ。 223 00:28:54,592 --> 00:29:02,099 ・~ 224 00:29:02,099 --> 00:29:04,602 <光悦の生まれた 本阿弥家は・ 225 00:29:04,602 --> 00:29:08,105 刀の研ぎ 目利きを 家業としていた。・ 226 00:29:08,105 --> 00:29:14,111 鍛冶屋はもちろん 木工 漆 金細工などの技が つになって・ 227 00:29:14,111 --> 00:29:17,114 ふりの刀が出来上がる。・ 228 00:29:17,114 --> 00:29:20,117 本阿弥家にとって 刀とは・ 229 00:29:20,117 --> 00:29:24,121 工芸の粋を集めた 美術品だったのである> 230 00:29:24,121 --> 00:29:30,061 ・~ 231 00:29:30,061 --> 00:29:32,563 <家業に励んでいる間に・ 232 00:29:32,563 --> 00:29:37,068 光悦は 美に対する鋭い目を養っていき・ 233 00:29:37,068 --> 00:29:42,073 「元祖アートプロデューサー」と 呼ぶべき存在に なっていった> 234 00:29:42,073 --> 00:29:58,573 ・~ 235 00:30:21,112 --> 00:30:25,549 捕らえたぞよ 武蔵。 236 00:30:25,549 --> 00:30:30,554 叡山を 追い出されたので あろうが? 237 00:30:30,554 --> 00:30:33,057 お杉婆なのか…? 238 00:30:33,057 --> 00:30:37,061 言いがかりをつけて 俺を追い出させたのは 239 00:30:37,061 --> 00:30:41,065 そうじゃ わしじゃ。 文句があるか 武蔵 240 00:30:41,065 --> 00:30:45,569 なぜ それほどまでに 俺を恨む? 241 00:30:45,569 --> 00:30:50,074 お前のせいで 又八は 家を出た。 242 00:30:50,074 --> 00:30:53,577 俺が 無理やり 連れ出した訳じゃない 243 00:30:53,577 --> 00:30:55,579 お前のせいで・ 244 00:30:55,579 --> 00:30:58,082 お通という恩知らずが・ 245 00:30:58,082 --> 00:31:01,082 又八を 袖にしよった 246 00:31:03,087 --> 00:31:06,087 言葉が出ぬか? 武蔵。 247 00:31:08,092 --> 00:31:15,099 お前は 本位田家の疫病神じゃ 248 00:31:15,099 --> 00:31:17,101 (吹く音) 249 00:31:17,101 --> 00:31:20,101 あっ 痛っ お杉婆 何をした・ 250 00:31:22,106 --> 00:31:24,106 (吹く音) あ~っ 251 00:31:26,043 --> 00:31:28,546 お杉婆 252 00:31:28,546 --> 00:31:31,048 権じい 早く とどめを刺せ 253 00:31:31,048 --> 00:31:33,050 何をしておる・ 254 00:31:33,050 --> 00:31:36,053 いいかげんにせい 255 00:31:36,053 --> 00:31:39,056 や~っ 256 00:31:39,056 --> 00:31:42,059 や~っ 257 00:31:42,059 --> 00:31:46,063 この婆の 憎しみを背負って・ 258 00:31:46,063 --> 00:31:50,067 目の見えぬまま 生きていくがよいぞ 259 00:31:50,067 --> 00:31:53,070 あ~っ 260 00:31:53,070 --> 00:32:11,589 ・~ 261 00:32:11,589 --> 00:32:13,591 あ~っ 262 00:32:13,591 --> 00:32:31,609 ・~ 263 00:32:31,609 --> 00:32:33,611 あ~っ 264 00:32:33,611 --> 00:32:38,616 ・~ 265 00:32:38,616 --> 00:32:48,125 (半鐘の音) 266 00:32:48,125 --> 00:32:50,125 (藤次)火付けは 死罪だぞ。 267 00:32:52,630 --> 00:32:55,630 吉岡の金で 買った家じゃないか。 268 00:32:57,635 --> 00:33:01,639 吉岡が滅んだ今…・ 269 00:33:01,639 --> 00:33:05,139 あんなもの なくなったほうが さっぱりするよ。 270 00:33:08,646 --> 00:33:13,150 お前にしちゃ 欲のない事を 言うじゃないか。 271 00:33:13,150 --> 00:33:17,154 金なんざ いくらだって 手に入るだろう? 272 00:33:17,154 --> 00:33:19,657 お前さんの その腕で。 273 00:33:19,657 --> 00:33:21,659 うん? 274 00:33:21,659 --> 00:33:26,096 追いはぎでも 押し込みでも 何でも やりゃいいんだ。 275 00:33:26,096 --> 00:33:28,098 それが…・ 276 00:33:28,098 --> 00:33:30,598 悪の道ってもんだろ? 277 00:33:40,110 --> 00:33:43,614 (役人頭)屋の お甲だな? 278 00:33:43,614 --> 00:33:45,616 そうだよ。 279 00:33:45,616 --> 00:33:48,619 家に火を放つところを 見た者がいる。 280 00:33:48,619 --> 00:33:50,621 火付けの罪で 召し捕る。 281 00:33:50,621 --> 00:33:52,623 おとなしくせい 282 00:33:52,623 --> 00:33:55,125 お前さん 斬れるかい? 283 00:33:55,125 --> 00:33:57,127 任しとけ。 284 00:33:57,127 --> 00:34:01,131 やせても 枯れても 吉岡の剣術指南役だ。 285 00:34:01,131 --> 00:34:03,634 こんな奴らには 斬られやしない。 286 00:34:03,634 --> 00:34:06,136 下がってろ。 あいよ。 287 00:34:06,136 --> 00:34:08,138 召し捕れ 288 00:34:08,138 --> 00:34:16,647 ・~ 289 00:34:16,647 --> 00:34:18,649 え~や~っ 290 00:34:18,649 --> 00:34:35,149 ・~ 291 00:34:47,111 --> 00:34:49,113 誰だ? 292 00:34:49,113 --> 00:34:51,113 (吉野太夫) 私です。 293 00:34:53,617 --> 00:34:57,117 吉野… 太夫? 294 00:34:59,123 --> 00:35:03,127 覚えていて下さいましたか? 295 00:35:03,127 --> 00:35:05,127 うれしゅうございます。 296 00:35:09,633 --> 00:35:12,636 なぜ…・ 297 00:35:12,636 --> 00:35:14,638 俺は ここにいる? 298 00:35:14,638 --> 00:35:20,644 私が かんがん様と 琵琶湖で 舟遊びをしておりましたら・ 299 00:35:20,644 --> 00:35:23,647 湖水に 足を踏み入れて・ 300 00:35:23,647 --> 00:35:29,086 大きな声で 訳の分からぬ事を 叫んでいる お方が おりました。 301 00:35:29,086 --> 00:35:31,088 舟を近づけてみると・ 302 00:35:31,088 --> 00:35:33,588 宮本様だったのです。 303 00:35:35,592 --> 00:35:39,596 目が見えぬまま…・ 304 00:35:39,596 --> 00:35:42,599 比叡山を下った。 305 00:35:42,599 --> 00:35:47,104 どこで 何をしていたか…・ 306 00:35:47,104 --> 00:35:49,104 全く 覚えていない。 307 00:35:51,108 --> 00:35:55,108 両の目に 傷があったそうです。 308 00:35:59,116 --> 00:36:03,120 俺の目は…・ 309 00:36:03,120 --> 00:36:06,123 もう見えぬのか? 310 00:36:06,123 --> 00:36:09,626 「じっとしておれば 見えるようになる」…・ 311 00:36:09,626 --> 00:36:12,626 薬師は そう申しておりました。 312 00:36:17,134 --> 00:36:22,639 ・~ 313 00:36:22,639 --> 00:36:25,075 私と…・ 314 00:36:25,075 --> 00:36:27,077 しばらく ここで・ 315 00:36:27,077 --> 00:36:31,077 じっと していましょう 武蔵様。 316 00:36:33,584 --> 00:36:36,086 よいのか? 317 00:36:36,086 --> 00:36:38,088 私は…・ 318 00:36:38,088 --> 00:36:41,091 いまだに 美というものを 知らぬ男が・ 319 00:36:41,091 --> 00:36:44,094 目の見えるように なった時に…・ 320 00:36:44,094 --> 00:36:49,099 真っ先に 美しいものを 見せてあげたいのですよ。 321 00:36:49,099 --> 00:37:24,134 ・~ 322 00:37:24,134 --> 00:37:28,572 どうして そんなに 膨れっ面してるのよ? 323 00:37:28,572 --> 00:37:31,074 お通さんは…・ 324 00:37:31,074 --> 00:37:36,079 師匠の事を もう忘れたのかい? 325 00:37:36,079 --> 00:37:40,079 女は すぐ 気が変わるんだ。 326 00:37:44,087 --> 00:37:48,091 城太郎さんにも 気が 変わってほしくない人がいるの? 327 00:37:48,091 --> 00:37:51,595 そんな事 言ってるんじゃない 328 00:37:51,595 --> 00:37:58,101 師匠が かわいそうじゃないか 329 00:37:58,101 --> 00:38:01,605 武蔵の事 嫌いに なったんじゃなかったの? 330 00:38:01,605 --> 00:38:04,608 俺は…・ 331 00:38:04,608 --> 00:38:08,111 俺は お通さんとは 違うんだ。 332 00:38:08,111 --> 00:38:12,611 そう簡単に 師匠の事を 忘れたりなんかしない 333 00:38:14,618 --> 00:38:17,120 私だって…・ 334 00:38:17,120 --> 00:38:19,620 簡単に 忘れたりしない。 335 00:38:29,066 --> 00:38:33,070 私と武蔵はね…・ 336 00:38:33,070 --> 00:38:35,072 城太郎さんより・ 337 00:38:35,072 --> 00:38:39,572 ずっとずっと 長い つきあいなんだから。 338 00:39:10,607 --> 00:39:14,611 ・~ 339 00:39:14,611 --> 00:39:17,614 私を…・ 340 00:39:17,614 --> 00:39:20,617 美しいと お思いになりますか? 341 00:39:20,617 --> 00:39:31,061 ・~ 342 00:39:31,061 --> 00:39:33,061 思う。 343 00:39:35,065 --> 00:39:38,068 抱いて下さい…・ 344 00:39:38,068 --> 00:39:40,068 武蔵様。 345 00:39:42,072 --> 00:39:44,074 私を…・ 346 00:39:44,074 --> 00:39:46,076 抱きなさい。 347 00:39:46,076 --> 00:40:14,604 ・~ 348 00:40:14,604 --> 00:40:17,607 「女は美しい」…。 349 00:40:17,607 --> 00:40:22,112 私は 武蔵様に・ 350 00:40:22,112 --> 00:40:25,048 そう思ってほしいのです。 351 00:40:25,048 --> 00:40:57,080 ・~ 352 00:40:57,080 --> 00:40:59,082 行くのか? 353 00:40:59,082 --> 00:41:01,084 はい。 354 00:41:01,084 --> 00:41:04,087 なぜ 俺を かばった? 355 00:41:04,087 --> 00:41:09,092 傷を負った者を そのままに しては おけませぬ。 356 00:41:09,092 --> 00:41:12,092 薬師に任せておけば いい事だ。 357 00:41:14,097 --> 00:41:18,101 なぜ…・ 358 00:41:18,101 --> 00:41:22,105 俺を…? 359 00:41:22,105 --> 00:41:24,107 私も…・ 360 00:41:24,107 --> 00:41:27,607 修羅の道を 歩んだ事があるからです。 361 00:41:29,546 --> 00:41:33,046 修羅の道を歩んで ここまで来ました。 362 00:41:35,552 --> 00:41:38,054 私には…・ 363 00:41:38,054 --> 00:41:41,554 今の あなたの心が 分かるのです。 364 00:41:44,060 --> 00:41:47,564 では…・ 365 00:41:47,564 --> 00:41:50,567 なぜ行く? 366 00:41:50,567 --> 00:41:53,069 なぜ…・ 367 00:41:53,069 --> 00:41:55,572 俺を置いて 京に戻る? 368 00:41:55,572 --> 00:42:02,579 ・~ 369 00:42:02,579 --> 00:42:06,082 私は 太夫です。 370 00:42:06,082 --> 00:42:09,586 太夫である事に 誇りを持っています。 371 00:42:09,586 --> 00:42:12,589 たとえ どんな お人が 現れようと・ 372 00:42:12,589 --> 00:42:16,593 私は 太夫を捨てる気は ありませぬ。 373 00:42:16,593 --> 00:42:26,102 ・~ 374 00:42:26,102 --> 00:42:32,108 (りん弥)駕籠が参りました。 375 00:42:32,108 --> 00:42:38,114 私の事を 「美しい」と 言って頂きました。 376 00:42:38,114 --> 00:42:42,114 その言葉を うれしく 胸にしまっておきます。 377 00:42:44,120 --> 00:42:48,124 「美」というものは うつろいやすいもの。 378 00:42:48,124 --> 00:42:53,129 やがては 私も 美しさを 失っていくでしょう。 379 00:42:53,129 --> 00:42:56,132 いや そのような事は…。 380 00:42:56,132 --> 00:42:58,635 うつろいやすいからこそ・ 381 00:42:58,635 --> 00:43:01,137 美は 美なのです。 382 00:43:01,137 --> 00:43:04,641 美というものは 生きているもの。 383 00:43:04,641 --> 00:43:07,141 だから 美しい。 384 00:43:09,646 --> 00:43:11,648 光悦様は・ 385 00:43:11,648 --> 00:43:16,648 あなたに それを 仰せに なりたかったのだと思いますよ。 386 00:43:50,120 --> 00:44:05,135 ・~ 387 00:44:05,135 --> 00:44:10,140 <「太夫である事に誇りを持つ」と 言った吉野太夫を・ 388 00:44:10,140 --> 00:44:14,644 武蔵は 美しいと思った。・ 389 00:44:14,644 --> 00:44:16,646 誰が 何を言おうとも・ 390 00:44:16,646 --> 00:44:22,652 己が決め 己がした事には 誇りを持たなければならぬ。・ 391 00:44:22,652 --> 00:44:31,595 それが 誰にも頼らず 己の力で 生きていく人間の強さなのだ。・ 392 00:44:31,595 --> 00:44:35,098 のちになって 武蔵は 書いている…・ 393 00:44:35,098 --> 00:44:39,102 「われ 事において後悔せず」と> 394 00:44:39,102 --> 00:44:45,102 ・~