1 00:02:27,836 --> 00:02:30,836 ・~ 2 00:02:32,841 --> 00:02:35,877 <武蔵は 京の名門・吉岡流に・ 3 00:02:35,877 --> 00:02:39,881 たった人で 立ち向かって 勝利した。・ 4 00:02:39,881 --> 00:02:49,391 しかし その事を 素直に喜べない ものが 武蔵の心に生まれた。・ 5 00:02:49,391 --> 00:02:54,896 「武蔵が怖い」… そう叫んだ お通の声が・ 6 00:02:54,896 --> 00:02:58,896 武蔵の胸を 強く刺し貫いたのである> 7 00:03:00,902 --> 00:03:15,917 ・~(テーマ音楽) 8 00:03:15,917 --> 00:03:28,417 ・~ 9 00:04:35,864 --> 00:04:38,864 (雷鳴) 10 00:05:58,380 --> 00:06:09,391 ・~ 11 00:06:09,391 --> 00:06:11,393 うん。 12 00:06:11,393 --> 00:06:16,398 ・~ 13 00:06:16,398 --> 00:06:21,403 <比叡山から 琵琶湖を渡って 岐阜の山中へ…。・ 14 00:06:21,403 --> 00:06:25,907 武蔵は ただ人で歩き続けた。・ 15 00:06:25,907 --> 00:06:30,345 向かう所はなく ただ 歩き続ける…・ 16 00:06:30,345 --> 00:06:33,848 今の武蔵には それしかなかった> 17 00:06:33,848 --> 00:06:42,848 ・~ 18 00:06:48,863 --> 00:06:51,866 (光悦)なかなか うまくなったな。 19 00:06:51,866 --> 00:06:53,868 ヘヘヘ…。 20 00:06:53,868 --> 00:06:57,372 (妙秀)ずっと ここで 働いてもよいのですよ。 21 00:06:57,372 --> 00:06:59,374 ほんと? 22 00:06:59,374 --> 00:07:02,877 きっと いい職人になりますよ。 23 00:07:02,877 --> 00:07:06,881 俺は 天下の 焼き物師になるんだ。 24 00:07:06,881 --> 00:07:08,881 おやおや…。 25 00:07:12,887 --> 00:07:16,891 お通さんの貼った屏風には…・ 26 00:07:16,891 --> 00:07:20,895 宗達に頼んで 下絵を描いてもらおう。 27 00:07:20,895 --> 00:07:24,399 (お通)いいんですか? 私が貼ったものなんかに。 28 00:07:24,399 --> 00:07:27,335 (宗仁)なかなか 出来栄えですよ お通さん。 29 00:07:27,335 --> 00:07:31,840 金銀泥下絵にでもして 私が 字を書こうかな? 30 00:07:31,840 --> 00:07:34,843 そんな… もったいのうございます。 31 00:07:34,843 --> 00:07:36,845 お通さんに ふさわしい・ 32 00:07:36,845 --> 00:07:40,849 華やかな屏風に 仕上がりますよ きっと。 33 00:07:40,849 --> 00:08:48,850 ・~ 34 00:08:48,850 --> 00:08:51,352 (沢庵)お通 35 00:08:51,352 --> 00:08:53,855 沢庵様・ 36 00:08:53,855 --> 00:08:55,857 どうして ここに おる? 37 00:08:55,857 --> 00:08:57,859 冬から ずっと・ 38 00:08:57,859 --> 00:09:00,862 ここで 御厄介に なっているのです。 39 00:09:00,862 --> 00:09:03,865 武蔵も 緒か? 40 00:09:03,865 --> 00:09:08,369 沢庵様は 光悦様と お知り合いなのですか? 41 00:09:08,369 --> 00:09:10,369 そうじゃ。 42 00:09:12,373 --> 00:09:14,873 武蔵と 何か あったのか? 43 00:09:18,379 --> 00:09:20,381 (城太郎)和尚さん 44 00:09:20,381 --> 00:09:22,383 あの時の 和尚さんだ 45 00:09:22,383 --> 00:09:24,385 おう… 茶店の面を・ 46 00:09:24,385 --> 00:09:27,322 「どうしても ほしい」と 言い張った 小わっぱか? 47 00:09:27,322 --> 00:09:29,324 どうして ここに いるの? 48 00:09:29,324 --> 00:09:32,827 沢庵様は 光悦様と お知り合いなのです。 49 00:09:32,827 --> 00:09:35,330 そうか…。 50 00:09:35,330 --> 00:09:38,833 随分 うまくなったな お通さん。 51 00:09:38,833 --> 00:09:40,833 偉そうに 52 00:09:48,843 --> 00:10:07,362 ・~ 53 00:10:07,362 --> 00:10:10,365 武蔵殿に してみれば・ 54 00:10:10,365 --> 00:10:15,370 子供を斬るほかに 道は なかったのでしょう。 55 00:10:15,370 --> 00:10:17,872 非があるのは むしろ…・ 56 00:10:17,872 --> 00:10:22,377 年端も行かぬ子供を 名目人に押し立てて・ 57 00:10:22,377 --> 00:10:26,314 戦まがいの事を仕掛けた 吉岡のほうです。 58 00:10:26,314 --> 00:10:28,816 しかり。 59 00:10:28,816 --> 00:10:32,820 ただ…・ 60 00:10:32,820 --> 00:10:40,828 武蔵殿が 目の前で 子供を 斬るのを見た お通さんは…・ 61 00:10:40,828 --> 00:10:45,333 心を 乱してしまいましてな…。 62 00:10:45,333 --> 00:10:51,839 ここへ来た当時は すっかり やつれ果ててしまって。 63 00:10:51,839 --> 00:10:54,842 そうでしたか…。 64 00:10:54,842 --> 00:10:59,847 ものを作っていると 心が癒やされます。 65 00:10:59,847 --> 00:11:05,853 お通さんは 宗仁の手伝いをしているうちに・ 66 00:11:05,853 --> 00:11:11,853 少しずつ 心が 元に戻りました。 67 00:11:14,362 --> 00:11:18,866 「美というものは 心を癒やし・ 68 00:11:18,866 --> 00:11:22,870 人に 生きる力を 与えるもの」…。 69 00:11:22,870 --> 00:11:26,307 光悦様は 昔から そう言うておられた。 70 00:11:26,307 --> 00:11:28,810 そういう意味では・ 71 00:11:28,810 --> 00:11:36,818 私も 沢庵殿も 目指すところは 同じなのかもしれません。 72 00:11:36,818 --> 00:11:38,820 頂戴します。 73 00:11:38,820 --> 00:12:09,820 ・~ 74 00:12:12,854 --> 00:12:16,854 ここは いつ来ても 心が落ち着く。 75 00:12:20,862 --> 00:12:23,865 家康様が…・ 76 00:12:23,865 --> 00:12:27,869 「いずれは 土地を 与えてもよい」と・ 77 00:12:27,869 --> 00:12:30,872 言ってきましてな…。 78 00:12:30,872 --> 00:12:32,874 光悦殿は・ 79 00:12:32,874 --> 00:12:39,881 「絵師 研ぎ師 焼き物作りを集めて 職人の村をつくりたい」と…・ 80 00:12:39,881 --> 00:12:41,881 よう言うておられた。 81 00:12:43,885 --> 00:12:48,389 家康様は 「美」というものが 分からぬ男。 82 00:12:48,389 --> 00:12:54,395 ただ 「美」の持つ力は ちゃんと知っている。 83 00:12:54,395 --> 00:12:58,399 賢い お方ですから。 84 00:12:58,399 --> 00:13:05,907 自分が 京の嫌われ者だと いう事も 十分 承知している。 85 00:13:05,907 --> 00:13:08,910 私を取り立てる事で・ 86 00:13:08,910 --> 00:13:11,913 「美」に理解がある事を・ 87 00:13:11,913 --> 00:13:15,917 京の町衆に 知らしめようと しているのでしょう。 88 00:13:15,917 --> 00:13:18,917 して どうなさる おつもりで? 89 00:13:20,922 --> 00:13:24,425 決めかねている ところです。 90 00:13:24,425 --> 00:13:28,863 ちょうど いい時に 沢庵殿に 来て頂いた。 91 00:13:28,863 --> 00:13:31,866 実は… 私も・ 92 00:13:31,866 --> 00:13:36,370 「江戸に行ってくれまいか」と 頼まれておりましてな。 93 00:13:36,370 --> 00:13:38,372 「江戸」へ? 94 00:13:38,372 --> 00:13:42,376 …という事は 徳川家の許へですか? 95 00:13:42,376 --> 00:13:45,379 柳生石舟斎殿が・ 96 00:13:45,379 --> 00:13:49,383 「息子・宗矩に ついていてくれまいか」と。 97 00:13:49,383 --> 00:13:55,890 いずれは 将軍家兵法指南役に なるだろうと いわれている男…。 98 00:13:55,890 --> 00:13:57,892 禅僧とは…・ 99 00:13:57,892 --> 00:14:03,397 本来 身つで行脚する事を 終生の行とするもの。 100 00:14:03,397 --> 00:14:09,397 権勢などには近づかず 野に隠れて おればよい という意見もある。 101 00:14:12,907 --> 00:14:16,410 難しいものですなあ。 102 00:14:16,410 --> 00:14:18,412 はい…。 103 00:14:18,412 --> 00:14:20,412 難しいものです。 104 00:14:24,919 --> 00:14:27,855 江戸の屋敷に 行く事になりましたので・ 105 00:14:27,855 --> 00:14:30,858 父上に 御挨拶に上がりました。 106 00:14:30,858 --> 00:14:32,860 うん。 107 00:14:32,860 --> 00:14:35,863 りん… そなたも緒にか? 108 00:14:35,863 --> 00:14:37,865 (りん)いいえ。 109 00:14:37,865 --> 00:14:41,369 江戸は 女 子供の 行く所では ありません。 110 00:14:41,369 --> 00:14:43,871 城の周りは まだ 空き地ばかり。 111 00:14:43,871 --> 00:14:46,374 家康公は 沼地を埋め立てて・ 112 00:14:46,374 --> 00:14:49,877 御城下を つくろうと 急いでおられるのです。 113 00:14:49,877 --> 00:14:53,881 家康公は 将軍の宣下を 受けるおつもりなのでは…? 114 00:14:53,881 --> 00:14:56,384 合わせて 右大臣にも…? 115 00:14:56,384 --> 00:14:59,887 豊臣家に代わって 徳川家が 天下を治める…。 116 00:14:59,887 --> 00:15:02,890 そういう世の中が 来たのだ 兵庫助。 117 00:15:02,890 --> 00:15:04,892 あとはじゃ…・ 118 00:15:04,892 --> 00:15:09,397 秀頼様を担ぎ上げようとする 豊臣方の大名衆を・ 119 00:15:09,397 --> 00:15:11,899 いかに叩き潰すか…。 120 00:15:11,899 --> 00:15:13,901 時の流れを読み・ 121 00:15:13,901 --> 00:15:16,404 無理な事は 決して なさらない…・ 122 00:15:16,404 --> 00:15:21,409 それが 家康公の優れたところだと 思っております。 123 00:15:21,409 --> 00:15:25,413 りん この宗矩はな…・ 124 00:15:25,413 --> 00:15:28,349 時の流れを 読む事にかけては・ 125 00:15:28,349 --> 00:15:32,353 家康殿に 負けぬところが あってのう…。 126 00:15:32,353 --> 00:15:34,853 りん… 江戸へ行きなさい。 127 00:15:36,857 --> 00:15:40,861 宗矩は これから ますます偉くなっていく。 128 00:15:40,861 --> 00:15:43,364 伏見の屋敷にいたのでは・ 129 00:15:43,364 --> 00:15:45,866 置いていかれるだけだぞ。 130 00:15:45,866 --> 00:15:47,868 (宗矩)父上…。 131 00:15:47,868 --> 00:15:50,871 わしはのう… お前と りんが・ 132 00:15:50,871 --> 00:15:54,875 時がたっても 夫婦らしく なっていかぬのが・ 133 00:15:54,875 --> 00:15:57,378 気になっておるのじゃ。 134 00:15:57,378 --> 00:16:03,378 人は いろいろな理に従うて 夫婦になる。 135 00:16:05,386 --> 00:16:07,888 しかしなあ…・ 136 00:16:07,888 --> 00:16:14,395 時がたつにつれて 夫婦らしく なっていくものじゃよ。 137 00:16:14,395 --> 00:16:17,898 時が 夫婦にしてくれるのじゃ。 138 00:16:17,898 --> 00:16:20,901 はい。 139 00:16:20,901 --> 00:16:24,905 遠くにあるものを求めて 生きるのもよい。 140 00:16:24,905 --> 00:16:26,841 しかしな…・ 141 00:16:26,841 --> 00:16:30,845 近くにあるものを もそっと大事にせねば・ 142 00:16:30,845 --> 00:16:33,848 後悔する時がくるぞ 宗矩。 143 00:16:33,848 --> 00:16:45,359 ・~ 144 00:16:45,359 --> 00:16:47,859 江戸へ来るか? りん。 145 00:16:49,864 --> 00:16:51,864 参りません。 146 00:16:53,868 --> 00:16:58,868 お前は 父上の言う事なら 素直に聞くのであろうが? 147 00:17:00,875 --> 00:17:02,877 江戸へ行かれて・ 148 00:17:02,877 --> 00:17:06,377 もし 私が必要ならば お呼び下さい。 149 00:17:08,382 --> 00:17:12,386 お父上に言われて 無理に そうなさろうとするのは・ 150 00:17:12,386 --> 00:17:14,388 私は 嫌でございます。 151 00:17:14,388 --> 00:17:24,899 ・~ 152 00:17:24,899 --> 00:17:54,899 ・~(笛) 153 00:17:56,864 --> 00:17:59,867 誰が 笛を 吹いてるのかと思ったら・ 154 00:17:59,867 --> 00:18:02,870 お通さんなの? 155 00:18:02,870 --> 00:18:04,872 妙秀様…。 156 00:18:04,872 --> 00:18:08,872 お続けなさい。 なかなかの音色でしたよ。 157 00:18:10,878 --> 00:18:15,883 久しぶりに この笛の事を 思い出したのです。 158 00:18:15,883 --> 00:18:19,386 どなたかに 教わったのですか? 159 00:18:19,386 --> 00:18:21,388 いいえ…。 160 00:18:21,388 --> 00:18:24,892 子供の頃に 手すさびで 吹いているうちに・ 161 00:18:24,892 --> 00:18:27,828 いつしか 吹けるように なったのです。 162 00:18:27,828 --> 00:18:33,834 子供の手すさびとしては 見事な笛ですよ。 163 00:18:33,834 --> 00:18:36,837 母が 吹いていたものだと 思います。 164 00:18:36,837 --> 00:18:38,837 ああ それで…。 165 00:18:43,344 --> 00:18:45,846 母は… 166 00:18:45,846 --> 00:18:51,852 戦の時に さらわれて どこかへ 売られていったのです。 167 00:18:51,852 --> 00:18:53,854 え…? 168 00:18:53,854 --> 00:18:57,358 赤子の私は 森に捨てられるところを 169 00:18:57,358 --> 00:19:01,862 美作の おふくろ様に 買うてもらったんです。 170 00:19:01,862 --> 00:19:03,864 そうなの…。 171 00:19:03,864 --> 00:19:09,870 母が 私と引き離される時に 商人に託したのが 172 00:19:09,870 --> 00:19:12,370 この笛だったそうです。 173 00:19:14,375 --> 00:19:16,877 物心ついた時から… 174 00:19:16,877 --> 00:19:19,880 この笛とは ずっと緒…。 175 00:19:19,880 --> 00:19:25,886 吹くと 母御の事を 思い出されますか? 176 00:19:25,886 --> 00:19:27,821 思い出したくても 177 00:19:27,821 --> 00:19:32,826 もともと 何も 知らないんです… 母の事は。 178 00:19:32,826 --> 00:19:36,330 そう…。 179 00:19:36,330 --> 00:19:39,333 顔も 分からない…。 180 00:19:39,333 --> 00:19:41,835 では… 181 00:19:41,835 --> 00:19:45,839 何を 思い浮かべているのですか? 182 00:19:45,839 --> 00:19:47,841 笛を吹いている時…。 183 00:19:47,841 --> 00:19:54,348 ~ 184 00:19:54,348 --> 00:19:58,352 育った… 村の事。 185 00:19:58,352 --> 00:20:01,352 ~ 186 00:20:14,868 --> 00:20:16,868 (小次郎)何をしておる? 187 00:20:18,872 --> 00:20:21,872 (琴)庭の竹を 見ているのです。 188 00:20:24,378 --> 00:20:26,378 毎日 同じ竹だ。 189 00:20:28,315 --> 00:20:32,820 私には 同じ毎日しか ないのです。 190 00:20:32,820 --> 00:20:36,824 俺が 色里へ出かけるのが 気に入らない… 191 00:20:36,824 --> 00:20:39,827 そう言っておるのか? 192 00:20:39,827 --> 00:20:42,329 いいえ。 193 00:20:42,329 --> 00:20:45,332 後藤は 毎晩のように 出かけていく。 194 00:20:45,332 --> 00:20:50,838 用心棒の俺が ついていかぬ訳にはいくまい。 195 00:20:50,838 --> 00:20:55,342 後藤様は 押し込みや盗人から 家屋敷を守るために 196 00:20:55,342 --> 00:20:58,345 小次郎様を お雇いになったのでしょう? 197 00:20:58,345 --> 00:21:01,348 後藤が 誘うから ついていくだけだ。 198 00:21:01,348 --> 00:21:04,351 好んで 自ら 行ってはおらぬ。 199 00:21:04,351 --> 00:21:06,854 私は… 200 00:21:06,854 --> 00:21:09,857 小次郎様を 責めてはおりません。 201 00:21:09,857 --> 00:21:12,357 その顔は 責めている顔だ。 202 00:21:24,872 --> 00:21:26,872 来い… 琴。 203 00:21:32,313 --> 00:21:35,816 「来い」と 言っておる 204 00:21:35,816 --> 00:21:41,316 ほかの女の 白粉の匂う体に 抱かれるのは 嫌でございます 205 00:22:07,348 --> 00:22:12,853 ~ 206 00:22:12,853 --> 00:22:14,855 (吐息) 207 00:22:14,855 --> 00:22:25,366 ~ 208 00:22:25,366 --> 00:22:27,368 お通さん。 209 00:22:27,368 --> 00:22:29,870 あ 妙秀様。 210 00:22:29,870 --> 00:22:33,374 宗仁は あの屏風を持って 211 00:22:33,374 --> 00:22:36,377 今 光悦と緒に 出かけましたよ。 212 00:22:36,377 --> 00:22:38,377 はい。 213 00:22:41,382 --> 00:22:46,887 茶屋四郎次郎様が あの屏風を 買ってくれたのですよ。 214 00:22:46,887 --> 00:22:48,889 本当ですか 215 00:22:48,889 --> 00:22:53,894 「見事な屏風に 仕上がった」と 光悦も 言っておりました。 216 00:22:53,894 --> 00:22:58,899 俵屋宗達も 「満足な出来上がりだ」と…。 217 00:22:58,899 --> 00:23:04,905 光悦様の字が 下絵を 生きたものに していく様には 218 00:23:04,905 --> 00:23:06,907 驚かされました。 219 00:23:06,907 --> 00:23:11,412 お通さんも よく分かるように なりましたね。 220 00:23:11,412 --> 00:23:13,412 いいえ…。 221 00:23:17,918 --> 00:23:20,921 宗仁がね… 222 00:23:20,921 --> 00:23:26,860 「お通さんに ここに ず~っと いてもらえないか」と 223 00:23:26,860 --> 00:23:30,864 光悦に 話しておりましたよ。 224 00:23:30,864 --> 00:23:34,368 「それは お通さんが 決める事だ」と 225 00:23:34,368 --> 00:23:37,871 光悦は 答えておりました。 226 00:23:37,871 --> 00:23:41,875 宗仁は 腕の確かな… 227 00:23:41,875 --> 00:23:43,877 優しい男ですよ。 228 00:23:43,877 --> 00:23:52,877 ~ 229 00:24:20,914 --> 00:25:26,914 ~ 230 00:25:29,850 --> 00:25:34,850 妙秀様が お通さんに 何か おっしゃいましたか? 231 00:25:37,357 --> 00:25:40,360 はい。 232 00:25:40,360 --> 00:25:42,863 気にしないで下さい。 233 00:25:42,863 --> 00:25:48,869 この間の屏風 茶屋四郎次郎様に 褒められたそうですね? 234 00:25:48,869 --> 00:25:50,871 はい。 235 00:25:50,871 --> 00:25:54,374 ほんの少しでも 手伝ったものが 236 00:25:54,374 --> 00:25:58,879 あんな立派な屏風になって 私も うれしかった。 237 00:25:58,879 --> 00:26:03,383 お通さんの もともとの貼り方が よかったんですよ。 238 00:26:03,383 --> 00:26:07,888 ものを作るという仕事は 楽しい事ですよね。 239 00:26:07,888 --> 00:26:09,890 ええ。 240 00:26:09,890 --> 00:26:15,896 特に 美しいものを 作るという仕事は…。 241 00:26:15,896 --> 00:26:17,896 ええ。 242 00:26:31,845 --> 00:26:34,348 後藤様…? 243 00:26:34,348 --> 00:26:38,352 (後藤)小次郎は まだだな? 244 00:26:38,352 --> 00:26:42,856 御緒に お出かけでは なかったのですか? 245 00:26:42,856 --> 00:26:46,356 用があって 足先に 帰ってきた。 246 00:26:48,362 --> 00:26:51,862 では すぐに戻ると 思いますので…。 247 00:26:56,870 --> 00:26:58,872 琴殿…。 248 00:26:58,872 --> 00:27:00,872 はい。 249 00:27:02,876 --> 00:27:05,376 何を なさいます 後藤様 250 00:27:07,381 --> 00:27:09,881 おやめ下さい 後藤様 251 00:27:11,885 --> 00:27:13,887 小次郎様が…。 252 00:27:13,887 --> 00:27:16,390 小次郎様が 戻って参ります。 253 00:27:16,390 --> 00:27:18,392 戻らぬ 254 00:27:18,392 --> 00:27:20,394 え? 255 00:27:20,394 --> 00:27:23,397 小次郎は 承知なんだよ。 256 00:27:23,397 --> 00:27:52,859 ~ 257 00:27:52,859 --> 00:27:54,861 琴…。 258 00:27:54,861 --> 00:28:08,875 ~ 259 00:28:08,875 --> 00:28:10,877 琴。 260 00:28:10,877 --> 00:28:13,880 ~ 261 00:28:13,880 --> 00:28:15,882 どうした? 262 00:28:15,882 --> 00:28:31,832 ~ 263 00:28:31,832 --> 00:28:34,334 どうした 264 00:28:34,334 --> 00:28:36,837 何が あったのだ 265 00:28:36,837 --> 00:28:43,844 後藤様に… 266 00:28:43,844 --> 00:28:48,348 「私を 思うままにしていい」と おっしゃったのですか? 267 00:28:48,348 --> 00:28:50,350 何? 268 00:28:50,350 --> 00:28:53,353 「俺は… 269 00:28:53,353 --> 00:28:55,355 承知だ」と。 270 00:28:55,355 --> 00:29:07,868 ~ 271 00:29:07,868 --> 00:29:09,868 うわっ 272 00:29:16,877 --> 00:29:18,877 忘れろ。 273 00:29:20,881 --> 00:29:23,383 何をですか? 274 00:29:23,383 --> 00:29:27,883 俺は お前が汚れたなどと 思っておらん。 275 00:29:30,323 --> 00:29:33,326 私が 汚れようと 汚れまいと 276 00:29:33,326 --> 00:29:37,826 小次郎様は どちらでも いいのでしょう? 277 00:29:41,334 --> 00:29:43,334 なぜ 絡む? 278 00:29:46,339 --> 00:29:48,839 なぜ そんなに 絡むのだ? 279 00:29:54,347 --> 00:29:57,847 後藤の言う事などを どうして 信じた? 280 00:29:59,853 --> 00:30:03,356 俺が 承知するとでも 思ったのか? 281 00:30:03,356 --> 00:30:05,358 あの時は 282 00:30:05,358 --> 00:30:08,858 「そうかも しれない」と 思ったのです。 283 00:30:11,364 --> 00:30:14,868 俺は… 284 00:30:14,868 --> 00:30:18,371 お前を 粗末に 扱った事はない。 285 00:30:18,371 --> 00:30:20,371 はい。 286 00:30:22,375 --> 00:30:26,313 冷たくした事もない。 287 00:30:26,313 --> 00:30:28,313 はい。 288 00:30:30,817 --> 00:30:32,817 なぜだ? 289 00:30:34,821 --> 00:30:39,826 なぜ そんなふうに 俺の心を 疑う? 290 00:30:39,826 --> 00:30:42,329 私は… 291 00:30:42,329 --> 00:30:48,335 小次郎様に 粗末に 扱われた事は ありません。 292 00:30:48,335 --> 00:30:50,837 そうだ。 293 00:30:50,837 --> 00:30:55,342 小次郎様に 冷たくされた事も ありません。 294 00:30:55,342 --> 00:30:57,342 ああ。 295 00:31:00,847 --> 00:31:05,352 でも… 296 00:31:05,352 --> 00:31:10,857 小次郎様の心は 私を 粗末にしておられます。 297 00:31:10,857 --> 00:31:16,363 小次郎様の心は 私に 冷たいのです。 298 00:31:16,363 --> 00:31:19,366 小次郎様は 最初から 299 00:31:19,366 --> 00:31:25,372 「厄介なものを背負った」と 私の事を 思っておられる。 300 00:31:25,372 --> 00:31:29,809 「俺は もう 女を 不幸にはしたくない」…。 301 00:31:29,809 --> 00:31:33,313 小次郎様の心にあるのは 302 00:31:33,313 --> 00:31:35,313 ただ それだけ。 303 00:31:37,317 --> 00:31:41,321 私を 連れて歩いているのも… 304 00:31:41,321 --> 00:31:45,825 ただ… 305 00:31:45,825 --> 00:31:47,827 それだけの事…。 306 00:31:47,827 --> 00:31:51,827 ~ 307 00:31:54,334 --> 00:31:56,336 「江戸」へ? 308 00:31:56,336 --> 00:32:00,836 本当は このまま 野に隠れてしまいたい。 309 00:32:02,842 --> 00:32:04,844 だが… 310 00:32:04,844 --> 00:32:08,848 世のため 人のために 生きるのが 僧の務めなら 311 00:32:08,848 --> 00:32:14,354 ただ 野に隠れておればよい というものでもない。 312 00:32:14,354 --> 00:32:18,854 手を汚すべきか 汚さざるべきか…。 313 00:32:23,863 --> 00:32:26,366 「生きていく」というのは 314 00:32:26,366 --> 00:32:30,366 きれい事だけでは すまんものでな…。 315 00:32:35,875 --> 00:32:39,879 「武蔵を許してやれ」と 言われるのですか? 316 00:32:39,879 --> 00:32:42,882 わしは わしの事を 言うたまでじゃ。 317 00:32:42,882 --> 00:32:49,889 今のわしは 人に 「ああしろ こうしろ」という 心の余裕はない。 318 00:32:49,889 --> 00:32:52,389 そうなんじゃよ お通さん。 319 00:33:01,401 --> 00:33:05,405 柳生の里で お会いした時… 320 00:33:05,405 --> 00:33:10,410 沢庵様は 私に 仰せになりました…。 うん? 321 00:33:10,410 --> 00:33:12,912 「武蔵を 追っていっても・ 322 00:33:12,912 --> 00:33:17,917 武蔵のほうは お前を 必要と しておらぬかも しれんぞ」と…。 323 00:33:17,917 --> 00:33:19,919 ああ 言うた。 324 00:33:19,919 --> 00:33:23,923 「自分を 本当に 必要と しているものは何か…・ 325 00:33:23,923 --> 00:33:26,359 それを よく考えろ」と…。 326 00:33:26,359 --> 00:33:28,862 うん。 327 00:33:28,862 --> 00:33:30,864 「それが…・ 328 00:33:30,864 --> 00:33:33,864 女子の幸せというものだ」と…。 329 00:33:35,869 --> 00:33:37,871 あの時は…・ 330 00:33:37,871 --> 00:33:41,871 沢庵様の言葉に 聞く耳を 持たなかった。 331 00:33:43,877 --> 00:33:46,877 今は あるのか? 「聞く耳」が…。 332 00:33:48,882 --> 00:33:53,382 己の心に 素直に 生きれば よいのじゃ。 333 00:33:57,891 --> 00:34:02,395 沢庵様は 御自分の心が 分かっておられますか? 334 00:34:02,395 --> 00:34:04,397 うん? 335 00:34:04,397 --> 00:34:06,900 御自分の心が 分からないから・ 336 00:34:06,900 --> 00:34:11,905 江戸に行こうか どうか 迷っておられるのでは…? 337 00:34:11,905 --> 00:34:15,408 お通さんに やられたな。 338 00:34:15,408 --> 00:34:17,911 私には 分かるのです…。 339 00:34:17,911 --> 00:34:19,913 何が? 340 00:34:19,913 --> 00:34:25,418 武蔵が 今…・ 341 00:34:25,418 --> 00:34:30,356 生まれて初めて こう思ってるはずです…。 342 00:34:30,356 --> 00:34:32,358 「私に…・ 343 00:34:32,358 --> 00:34:34,360 傍にいてほしい」と。 344 00:34:34,360 --> 00:34:40,860 ・~ 345 00:34:43,870 --> 00:34:45,872 でも…・ 346 00:34:45,872 --> 00:34:47,872 私は ここに居たい。 347 00:34:50,376 --> 00:36:43,876 ・~(笛) 348 00:37:12,885 --> 00:37:41,347 ・~ 349 00:37:41,347 --> 00:37:43,847 なぜ 俺の後をつける? 350 00:37:46,853 --> 00:37:48,853 (弥之助)宮本武蔵だな? 351 00:37:50,857 --> 00:37:53,860 吉岡か? 352 00:37:53,860 --> 00:37:56,362 違う。 353 00:37:56,362 --> 00:37:59,365 俺に 恨みでも…? 354 00:37:59,365 --> 00:38:01,367 ない。 355 00:38:01,367 --> 00:38:19,886 ・~ 356 00:38:19,886 --> 00:38:21,888 では…・ 357 00:38:21,888 --> 00:38:24,891 なぜ 俺を追う? 358 00:38:24,891 --> 00:38:27,327 天下の吉岡流を・ 359 00:38:27,327 --> 00:38:31,831 たった人で 打ち破った 宮本武蔵…。 360 00:38:31,831 --> 00:38:33,833 それが どうした? 361 00:38:33,833 --> 00:38:35,835 それを倒せば・ 362 00:38:35,835 --> 00:38:40,840 天下に 名を 轟かせる事ができる 363 00:38:40,840 --> 00:38:42,842 そのために・ 364 00:38:42,842 --> 00:38:46,846 何日も 後をつけてきたのか? 365 00:38:46,846 --> 00:38:49,349 隙を狙って倒す…。 366 00:38:49,349 --> 00:38:52,849 それしか 術のない事は 分かっている。 367 00:38:54,854 --> 00:38:57,857 刀を 引け。 368 00:38:57,857 --> 00:39:05,365 ・~ 369 00:39:05,365 --> 00:39:09,869 お主を倒して 名を挙げ 仕官の足がかりにする。 370 00:39:09,869 --> 00:39:14,874 そういう男が これから 次々に出てくる。 371 00:39:14,874 --> 00:39:17,877 お前のような 男が? 372 00:39:17,877 --> 00:39:19,879 そうだ。 373 00:39:19,879 --> 00:39:24,884 ・~ 374 00:39:24,884 --> 00:39:26,884 え~い 375 00:39:33,826 --> 00:39:35,826 行け 376 00:39:48,841 --> 00:40:07,360 ・~ 377 00:40:07,360 --> 00:40:09,360 (沢庵)お世話になりました。 378 00:40:11,364 --> 00:40:14,367 また お寄り下さる時を・ 379 00:40:14,367 --> 00:40:16,869 心待ちに 致しております。 380 00:40:16,869 --> 00:40:19,872 ありがとう ございます。 381 00:40:19,872 --> 00:40:23,876 お互い なかなか 問いは解けませんな。 382 00:40:23,876 --> 00:40:25,876 いかにも。 383 00:40:27,814 --> 00:40:33,814 わしは おのが心に ゆっくりと 問いかけてみるつもりです。 384 00:40:36,322 --> 00:40:38,825 では…。 385 00:40:38,825 --> 00:40:41,828 俺 そこまで 送っていくよ。 386 00:40:41,828 --> 00:40:59,846 ・~ 387 00:40:59,846 --> 00:41:02,348 お通を頼むぞ。 388 00:41:02,348 --> 00:41:04,350 俺に 頼むの? 389 00:41:04,350 --> 00:41:07,850 お通が頼れるのは お前しか おらん。 390 00:41:09,856 --> 00:41:13,359 分かった 俺に 任せておいてよ。 391 00:41:13,359 --> 00:41:16,863 何があっても お通の味方に なってやってくれ。 392 00:41:16,863 --> 00:41:19,866 そうするよ 和尚さん。 393 00:41:19,866 --> 00:41:21,868 頼む。 394 00:41:21,868 --> 00:42:04,868 ・~ 395 00:42:07,847 --> 00:42:10,850 お頼み申す。 396 00:42:10,850 --> 00:42:12,850 お頼み申す 397 00:42:19,358 --> 00:42:21,358 お頼み申す 398 00:42:29,869 --> 00:42:32,369 道に迷って しまいました。 399 00:42:34,373 --> 00:42:38,878 雨を避ける所が どこにも見当たらず…・ 400 00:42:38,878 --> 00:42:42,882 どこぞの隅でも かまいませぬゆえ…・ 401 00:42:42,882 --> 00:42:46,882 軒の下を お借りしたいのですが。 402 00:42:49,388 --> 00:42:51,388 あいにくの雨ですな。 403 00:42:54,393 --> 00:42:56,896 (お篠)どうしたの? 404 00:42:56,896 --> 00:42:58,898 このお方が・ 405 00:42:58,898 --> 00:43:01,898 「宿を借りたい」と 言っておられる。 406 00:43:03,903 --> 00:43:07,907 軒の下でも かまいませぬゆえ・ 407 00:43:07,907 --> 00:43:12,407 雨を 避けさせて 頂きたいのです。 408 00:43:18,918 --> 00:43:20,918 どうぞ お入り下さい。 409 00:43:28,361 --> 00:43:30,361 かたじけない。 410 00:43:41,874 --> 00:44:34,874 ・~