1 00:00:08,141 --> 00:00:13,847 70年以上 検察が保管していた映像。 2 00:00:24,491 --> 00:00:30,197 映っているのは 史上まれに見る凶悪犯とされた男。 3 00:00:31,965 --> 00:00:36,970 犯行を再現させる取り調べの様子だ。 4 00:00:40,307 --> 00:00:45,512 ここから 事件の大きな矛盾が見つかった。 5 00:00:55,322 --> 00:00:59,660 77年前 敗戦国となった日本。 6 00:00:59,660 --> 00:01:05,966 アメリカを中心とする進駐軍の占領下で その事件は起きた。 7 00:01:13,941 --> 00:01:20,647 白昼の銀行に現れた 謎の男による大量毒殺事件だ。 8 00:01:34,628 --> 00:01:40,334 逮捕された意外な人物に 世間は驚いた。 9 00:01:41,969 --> 00:01:46,974 著名な画家だった平沢貞通。 10 00:01:59,987 --> 00:02:03,757 シリーズ「未解決事件」。 11 00:02:03,757 --> 00:02:07,260 今回は 戦後最大のミステリーといわれる➡ 12 00:02:07,260 --> 00:02:10,597 帝銀事件をひもとく。 13 00:02:10,597 --> 00:02:14,267 ノンフィクションで書かせてくれ。 14 00:02:14,267 --> 00:02:21,575 ドラマでは 事件と 作家 松本清張の知られざる闘いを追った。 15 00:02:24,611 --> 00:02:30,317 これが冤罪なら… 理不尽ではないか! 16 00:02:31,952 --> 00:02:33,887 今夜のドキュメンタリーでは➡ 17 00:02:33,887 --> 00:02:39,893 清張が解明しようとした 事件の真相に迫る。 18 00:02:42,596 --> 00:02:46,967 平沢は 本当に犯人なのか? 19 00:02:46,967 --> 00:02:52,773 残された謎について 清張が語った肉声が見つかった。 20 00:03:04,451 --> 00:03:11,958 今回 当時不可能だった技術や 新たな証言から 事件の謎に挑む。 21 00:03:21,601 --> 00:03:25,472 警察は 何を追っていたのか。 22 00:03:25,472 --> 00:03:29,776 鍵を握る刑事 甲斐文助。 23 00:03:32,612 --> 00:03:37,484 2,000ページを超える 膨大な記録を残していた。 24 00:03:37,484 --> 00:03:45,192 徹底分析から見えてきたのは 警察が追跡していた旧日本軍の闇。 25 00:04:07,748 --> 00:04:15,455 そして 捜査で20回以上報告されていた ある憲兵の存在。 26 00:04:20,260 --> 00:04:25,932 警察は なぜ 平沢逮捕へと かじを切ったのか? 27 00:04:25,932 --> 00:04:30,804 影を落としていたのはGHQだった。 28 00:04:30,804 --> 00:04:36,610 真相を覆い隠そうとした アメリカの思惑とは。 29 00:04:53,627 --> 00:04:57,931 深き闇の真相を追う。 30 00:05:17,817 --> 00:05:26,259 310万人もの犠牲の上 敗戦国となった日本。 31 00:05:26,259 --> 00:05:31,131 GHQの統治下で 戦争の勝者と敗者が交錯し➡ 32 00:05:31,131 --> 00:05:36,269 混とんを生み出していた。 33 00:05:36,269 --> 00:05:42,776 不衛生な環境と栄養失調で チフスや赤痢などの疫病が流行。 34 00:05:45,946 --> 00:05:48,615 戦地から戻った者。 35 00:05:48,615 --> 00:05:52,485 家族を失った者。 36 00:05:52,485 --> 00:05:58,191 誰もが どん底から はい上がろうとしていた。 37 00:06:03,897 --> 00:06:10,604 事件が起きたのは そんな戦後の混乱が続く冬だった。 38 00:06:18,912 --> 00:06:24,584 閉店直後の帝国銀行椎名町支店。 39 00:06:24,584 --> 00:06:30,590 都の衛生課の職員を名乗る男が現れた。 40 00:06:36,930 --> 00:06:43,270 男は 赤痢の予防薬を飲むよう 銀行員たちに指示。 41 00:06:43,270 --> 00:06:48,275 私が 薬の飲み方を教えます。 42 00:06:52,612 --> 00:06:55,282 薬は2種類。 43 00:06:55,282 --> 00:07:01,588 1つ目を飲んでから 1分後に 2つ目を飲むよう説明した。 44 00:07:04,557 --> 00:07:09,896 薬を自ら飲んで実演する 特異な手口だった。 45 00:07:09,896 --> 00:07:13,600 こう飲むのです。 46 00:07:19,239 --> 00:07:27,247 銀行員たちが苦しむ様子を 顔色一つ変えずに見守っていた男。 47 00:07:29,883 --> 00:07:36,589 現金16万円と小切手を奪って立ち去った。 48 00:07:41,261 --> 00:07:46,099 8歳の子供を含む12人が死亡。 49 00:07:46,099 --> 00:07:51,905 戦後犯罪史に刻まれる凶悪事件となった。 50 00:07:58,611 --> 00:08:05,318 その凄惨な現場について 生存者が語った肉声が新たに見つかった。 51 00:08:06,886 --> 00:08:12,359 一命を取り留めた竹内正子さん。 52 00:08:12,359 --> 00:08:17,564 長年 事件について語るのを避けていた。 53 00:08:57,837 --> 00:09:06,346 事件で19歳の娘を目の前で亡くした父親は こう書き残した。 54 00:09:37,243 --> 00:09:40,246 犯人は何者なのか。 55 00:09:40,246 --> 00:09:45,752 前例のない事件に 警察は延べ2万人以上を動員。 56 00:09:45,752 --> 00:09:50,090 初めて 本格的なモンタージュ写真も 作成するなど➡ 57 00:09:50,090 --> 00:09:54,394 7か月にわたって捜査を続けた。 58 00:10:01,267 --> 00:10:07,474 そして 一人の男が北海道で逮捕された。 59 00:10:17,917 --> 00:10:24,224 横山大観の弟子で 一流の画家として 名をはせていた。 60 00:10:26,292 --> 00:10:31,965 かつて事件現場の近くに住んでいた平沢。 61 00:10:31,965 --> 00:10:37,637 事件直後 出所不明の大金を手にしており➡ 62 00:10:37,637 --> 00:10:41,641 アリバイも立証できなかった。 63 00:10:43,309 --> 00:10:52,018 更に 奪われた小切手の筆跡と 平沢の筆跡が鑑定でも有力視された。 64 00:11:03,263 --> 00:11:07,934 当初 犯行を否認していた平沢。 65 00:11:07,934 --> 00:11:14,641 1か月以上の取り調べで 帝銀事件について自白した。 66 00:11:27,954 --> 00:11:31,624 裁判では 死刑判決が確定。 67 00:11:31,624 --> 00:11:37,497 凶器は青酸カリ 動機は金目的とされた。 68 00:11:37,497 --> 00:11:42,001 だが 明確な物的証拠は示されなかった。 69 00:11:45,638 --> 00:11:49,976 判決には異論が相次いだ。 70 00:11:49,976 --> 00:11:55,782 犯人を目撃した あの竹内正子さんも その一人だ。 71 00:11:59,319 --> 00:12:04,157 警察の取調室で 平沢と面会した時の様子を➡ 72 00:12:04,157 --> 00:12:08,161 こう語っていた。 73 00:12:50,603 --> 00:12:53,973 正子さんは 6年前に亡くなるまで➡ 74 00:12:53,973 --> 00:12:59,979 犯人像について 一貫した考えを持っていたという。 75 00:13:33,613 --> 00:13:38,951 被害者ですら 犯人ではないとしていた平沢。 76 00:13:38,951 --> 00:13:45,158 なぜ 犯行を自白したのか 裁判で こう語っている。 77 00:14:06,112 --> 00:14:11,250 この自白には何か裏がある。 78 00:14:11,250 --> 00:14:16,956 そう 疑問を抱いたのは 作家 松本清張だった。 79 00:14:18,925 --> 00:14:27,100 その根拠の一つが 平沢が抱えていた病気 コルサコフ症候群。 80 00:14:27,100 --> 00:14:30,136 記憶障害や虚言などが特徴で➡ 81 00:14:30,136 --> 00:14:36,442 平沢は 検察の求めに応じて 自白したのではないか。 82 00:14:38,277 --> 00:14:45,585 だが 推理を重ねても 疑惑を晴らす材料は 集められなかった。 83 00:14:49,989 --> 00:14:58,798 今回 平沢の供述を 74年前には 不可能だった技術で解析を試みた。 84 00:15:18,251 --> 00:15:21,154 テキストマイニングという技術で➡ 85 00:15:21,154 --> 00:15:25,858 冤罪事件の容疑者の供述を 分析してきた。 86 00:15:31,264 --> 00:15:37,136 平沢が自白した裏側に何があったのか。 87 00:15:37,136 --> 00:15:42,842 毒物の特定を急ぐ検事と 平沢のやりとりを解析した。 88 00:15:46,279 --> 00:15:50,616 取り調べが始まって僅か2日目。 89 00:15:50,616 --> 00:15:56,622 検事は 「青酸カリ」という言葉を切り出す。 90 00:16:13,372 --> 00:16:19,178 その後も検事は 度々 「青酸カリ」という単語を繰り返す。 91 00:16:20,913 --> 00:16:25,384 そして 平沢は 20日目に自白。 92 00:16:25,384 --> 00:16:31,691 稲葉教授が注目したのは その後の平沢の発言だ。 93 00:16:38,598 --> 00:16:45,938 平沢は自白後 「塩酸」と何度も答えていた。 94 00:16:45,938 --> 00:16:49,775 だが 取り調べが 長期化するにつれ➡ 95 00:16:49,775 --> 00:16:54,480 青酸カリへと 供述が 変わっていったのだ。 96 00:17:35,922 --> 00:17:40,259 平沢は 本当に犯人なのか。 97 00:17:40,259 --> 00:17:45,564 その謎に一石を投じる 新たな資料が見つかった。 98 00:17:47,133 --> 00:17:55,841 70年以上前 法廷で 事件の被害者たちを 前に 上映された映像だ。 99 00:18:06,218 --> 00:18:14,927 これは 平沢が毒を どう飲ませたか 警察が犯行を再現させる様子。 100 00:18:20,232 --> 00:18:24,570 撮影されたのは 自白から11日目。 101 00:18:24,570 --> 00:18:32,078 このころ 平沢は犯行について 自主的に語ろうとしていた。 102 00:18:54,266 --> 00:18:58,938 ところが ここで 一つの疑惑が浮かび上がった。 103 00:18:58,938 --> 00:19:02,742 毒物を入れる動作だ。 104 00:19:05,745 --> 00:19:13,753 映像では 平沢はピペットを 指先で つまむような動きをしている。 105 00:19:20,893 --> 00:19:26,565 生存者の証言では 犯人はピペットを握り➡ 106 00:19:26,565 --> 00:19:32,071 親指で押すような動きだったと されている。 107 00:19:34,240 --> 00:19:38,744 次に毒物の飲ませ方について。 108 00:19:41,580 --> 00:19:49,088 平沢は まっすぐ舌を出すようにして 飲むよう促したと再現した。 109 00:19:51,924 --> 00:19:55,261 しかし 実際の犯人は➡ 110 00:19:55,261 --> 00:20:00,566 舌で歯を包むようにして飲むよう 指示していた。 111 00:20:02,601 --> 00:20:07,940 2種類の液体を 時間差をつけて飲ませた犯人。 112 00:20:07,940 --> 00:20:15,648 全ての生存者の間で 一致しているのは 2つ目の液体を飲むまでの時間だ。 113 00:20:23,489 --> 00:20:27,960 平沢は迷わず「2分」と回答。 114 00:20:27,960 --> 00:20:34,667 だが 犯人が話したのは 「1分」という時間だった。 115 00:20:48,981 --> 00:20:57,323 映像は 平沢の裁判のやり直しを求める 弁護士が 検察の記録から入手。 116 00:20:57,323 --> 00:21:01,594 供述分析を行う心理学者の鑑定のもと➡ 117 00:21:01,594 --> 00:21:07,900 自白の矛盾を裏付ける新証拠として 裁判所に提出した。 118 00:21:38,497 --> 00:21:43,969 生涯にわたって無実を訴え続けた平沢。 119 00:21:43,969 --> 00:21:48,974 35年前 獄中で死亡した。 120 00:21:56,982 --> 00:22:03,989 拘置所で 平沢と面会を重ねていた 支援者の細川次郎さん。 121 00:22:11,397 --> 00:22:16,235 中学生の時 平沢の絵画展を 見に行ったのを きっかけに➡ 122 00:22:16,235 --> 00:22:19,939 交流を深めるようになった。 123 00:22:22,608 --> 00:22:28,314 平沢が 生前 語った言葉を今も覚えている。 124 00:22:40,159 --> 00:22:44,863 けれど 俺の子や孫がね… 125 00:22:54,540 --> 00:23:00,546 凶悪事件の犯人として 歴史に刻まれた平沢。 126 00:23:02,915 --> 00:23:10,923 しかし その裏側で 警察は 全く別の犯人像を追っていた。 127 00:23:16,929 --> 00:23:21,800 その動きを独自につかんでいた松本清張。 128 00:23:21,800 --> 00:23:28,507 捜査の本丸が 旧日本軍の関係者だと突き止めていた。 129 00:23:31,277 --> 00:23:33,579 田川君! 130 00:23:35,147 --> 00:23:37,850 ツテ 探してくれ。 131 00:23:40,619 --> 00:23:45,491 当時 捜査の一部始終を 知る立場にあった刑事がいた。 132 00:23:45,491 --> 00:23:48,961 ここまで。 133 00:23:48,961 --> 00:23:50,963 (床を蹴る音) 134 00:24:00,906 --> 00:24:06,912 甲斐は 日々の捜査会議の 膨大な記録を残していた。 135 00:24:08,580 --> 00:24:13,886 今回 2,000ページ以上に及ぶ手記を入手。 136 00:24:16,255 --> 00:24:23,562 近現代史の専門家 山田 朗教授と共に 徹底分析した。 137 00:24:58,831 --> 00:25:04,636 平沢逮捕までの7か月にわたる捜査。 138 00:25:04,636 --> 00:25:10,142 捜査員の報告の数と種類を 時系列で解析した。 139 00:25:14,079 --> 00:25:19,885 当初 警察は 犯人に似た人物や通報 聞き取りなど➡ 140 00:25:19,885 --> 00:25:24,890 現場の情報に重点を置いて 捜査していたことが うかがえる。 141 00:25:26,658 --> 00:25:29,628 しかし 捜査が中盤にさしかかると➡ 142 00:25:29,628 --> 00:25:35,434 旧日本軍の関係者への捜査が 急増していく。 143 00:25:37,269 --> 00:25:44,476 手記からは 旧日本軍の暗部が 次々と浮かび上がってきた。 144 00:25:59,291 --> 00:26:06,298 事件が起きた当時 戦地から軍人たちが続々と帰還していた。 145 00:26:07,900 --> 00:26:12,571 しかし 軍の秘密部隊の実態は極秘とされ➡ 146 00:26:12,571 --> 00:26:15,908 当事者たちも口をつぐみ➡ 147 00:26:15,908 --> 00:26:19,211 全く知られていない時代だった。 148 00:26:51,810 --> 00:26:56,281 捜査員が 重要な物証として目をつけたのが➡ 149 00:26:56,281 --> 00:26:59,985 ある男の名刺だった。 150 00:27:01,553 --> 00:27:04,456 実は 帝銀事件が起きる前➡ 151 00:27:04,456 --> 00:27:10,062 別の銀行で 似た手口の未遂事件が起きていた。 152 00:27:10,062 --> 00:27:13,365 その犯人が現場に残していたのが➡ 153 00:27:13,365 --> 00:27:18,871 厚生技官の 松井 蔚という人物の名刺だった。 154 00:27:21,106 --> 00:27:26,245 松井は平沢と 過去に名刺交換をしたことがあり➡ 155 00:27:26,245 --> 00:27:32,050 平沢に疑いが向けられる 一因となっていた。 156 00:27:32,050 --> 00:27:37,589 捜査員たちは 名刺の持ち主 松井を調査。 157 00:27:37,589 --> 00:27:42,594 その中で 軍の極秘情報に触れることになる。 158 00:27:45,097 --> 00:27:52,604 「2月8日 月曜 晴れ。 防犯主任からの報告。➡ 159 00:27:52,604 --> 00:27:56,108 防疫給水部があり➡ 160 00:27:56,108 --> 00:27:58,944 現地では 原住民を使い➡ 161 00:27:58,944 --> 00:28:03,916 その後 殺すため 毒殺班があったらしい。➡ 162 00:28:03,916 --> 00:28:09,121 当時 松井博士は これに関連していた」。 163 00:28:11,223 --> 00:28:19,097 戦時中 松井が関わっていたという 南方軍防疫給水部。 164 00:28:19,097 --> 00:28:21,567 シンガポールを中心に➡ 165 00:28:21,567 --> 00:28:26,872 日本軍が占領した東南アジアに 支部を広げていた。 166 00:28:29,241 --> 00:28:34,580 これは現地の軍医が 当時 撮影した貴重なフィルム。 167 00:28:34,580 --> 00:28:38,917 防疫給水部は 戦場で汚れた水をろ過し➡ 168 00:28:38,917 --> 00:28:44,723 感染症予防を行うことを 主な任務としていた。 169 00:28:47,626 --> 00:28:53,265 しかし その裏で毒物の研究を進めていたと➡ 170 00:28:53,265 --> 00:28:57,269 捜査の手記に書かれていた。 171 00:29:15,887 --> 00:29:22,394 捜査員たちは 青酸を使った研究に注目した。 172 00:29:25,564 --> 00:29:31,737 事件直後の鑑定では 毒物は 青酸化合物とまでしか特定されておらず➡ 173 00:29:31,737 --> 00:29:36,742 その正体は 分かっていなかったからだ。 174 00:29:42,247 --> 00:29:50,455 松井自身も捜査員に対し 現地住民を殺害したことも認めていた。 175 00:29:52,257 --> 00:29:58,130 しかし 帝銀事件が起きた時 松井には 確かなアリバイがあり➡ 176 00:29:58,130 --> 00:30:03,335 捜査線上からは外れていった。 177 00:30:05,604 --> 00:30:08,106 松井の捜査をきっかけに➡ 178 00:30:08,106 --> 00:30:12,944 警察は 南方軍防疫給水部と つながりのあった関係者へと➡ 179 00:30:12,944 --> 00:30:16,948 網を広げていく。 180 00:30:20,118 --> 00:30:22,954 捜査から1か月。 181 00:30:22,954 --> 00:30:28,460 帝銀事件と状況が重なる証言も 飛び出した。 182 00:30:50,982 --> 00:30:58,290 2か月後 警察は ある秘密部隊に到達する。 183 00:31:02,627 --> 00:31:06,932 通称 731部隊。 184 00:31:06,932 --> 00:31:11,937 最大3,000人の隊員を抱えていた。 185 00:31:16,942 --> 00:31:23,648 捜査員たちは 部隊を率いていた 石井四郎の居場所を割り出し 接触。 186 00:31:26,284 --> 00:31:31,590 石井は 驚くべきことを語り始めた。 187 00:31:53,512 --> 00:31:58,216 石井が率いていた731部隊。 188 00:32:00,152 --> 00:32:08,460 戦時中 細菌兵器開発のため 旧満州で 人体実験を繰り返していた。 189 00:32:10,796 --> 00:32:17,569 これは 731部隊の元隊員が持っていた写真。 190 00:32:17,569 --> 00:32:24,476 捕らえた中国やソビエトの人々を 実験材料にしていたという。 191 00:32:24,476 --> 00:32:33,485 囚人たちは マルタと呼ばれ その犠牲者は 3,000人ともいわれている。 192 00:32:37,422 --> 00:32:41,793 捜査員は 石井から更なる情報を得ようと➡ 193 00:32:41,793 --> 00:32:47,098 たばこを差し入れるなどして 接触を続けた。 194 00:32:48,967 --> 00:32:52,304 5回目の聴取。 195 00:32:52,304 --> 00:32:59,010 そこでついに 青酸カリを使った 人体実験の情報を引き出した。 196 00:33:23,268 --> 00:33:26,605 更に この実験の詳細を知る➡ 197 00:33:26,605 --> 00:33:30,909 ある人物の名前を挙げていたことが 明らかになった。 198 00:33:32,477 --> 00:33:39,684 「憲兵の指揮官 軍曹Aが一番よく似ている」。 199 00:33:42,087 --> 00:33:48,627 731部隊の本部に配属されていた 憲兵A。 200 00:33:48,627 --> 00:33:54,933 旧満州で 日本に反抗する勢力の 取締りを担当していた。 201 00:33:57,335 --> 00:34:04,142 反抗勢力のリーダーを 毒殺したという情報もあった。 202 00:34:11,583 --> 00:34:17,389 「所在および当時の憲兵の名簿を たずねたが得るところなし」。 203 00:34:25,130 --> 00:34:32,837 Aの名前は 捜査会議でも 20回以上取り上げられ 警察も有力視。 204 00:34:34,806 --> 00:34:41,513 九州にゆかりがある人物だということが 分かり その行方を追っていた。 205 00:34:51,790 --> 00:34:54,626 真犯人を追うのと同時に➡ 206 00:34:54,626 --> 00:35:00,332 捜査員たちは 凶器となった 毒物の正体に迫ろうとしていた。 207 00:35:01,900 --> 00:35:10,608 被害者たちが苦しみだすまでに 数分の時間があったという遅効性の毒物。 208 00:35:10,608 --> 00:35:17,315 即効性があるといわれる青酸カリでは 説明がつかない特徴があったのだ。 209 00:35:20,285 --> 00:35:22,754 捜査員たちが注目したのは➡ 210 00:35:22,754 --> 00:35:28,960 731部隊と深いつながりがあった 極秘の研究機関だった。 211 00:35:31,096 --> 00:35:37,302 細菌を乗せた気球を アメリカまで飛ばす風船爆弾。 212 00:35:38,837 --> 00:35:44,642 中国経済を混乱させるための 精巧な にせ札。 213 00:35:48,279 --> 00:35:52,617 通称 登戸研究所。 214 00:35:52,617 --> 00:35:58,423 戦時下での諜報工作に使われる 秘密兵器を製造していた。 215 00:36:01,893 --> 00:36:06,564 終戦とともに研究データや資料を焼却。 216 00:36:06,564 --> 00:36:12,270 今も詳しい実態は分かっていない組織だ。 217 00:36:16,241 --> 00:36:20,912 捜査員は 研究所の全容を知る立場にあった➡ 218 00:36:20,912 --> 00:36:24,215 重要人物に接触する。 219 00:36:27,585 --> 00:36:31,456 古参幹部の伴 繁雄。 220 00:36:31,456 --> 00:36:39,264 明かしたのは 独自に開発した未知の毒物の存在だった。 221 00:37:11,896 --> 00:37:17,569 効果が遅れて現れる青酸ニトリール。 222 00:37:17,569 --> 00:37:21,573 事件の毒物と特徴が似ていた。 223 00:37:44,596 --> 00:37:50,935 しかし 青酸ニトリールは厳重に管理されていた。 224 00:37:50,935 --> 00:37:55,240 外部に持ち出される可能性はあったのか。 225 00:37:56,808 --> 00:38:02,881 捜査員は 毒物を管理していた人物を特定し 接触。 226 00:38:02,881 --> 00:38:07,585 そこで重大な情報に ぶつかっていた。 227 00:38:10,555 --> 00:38:18,563 明かしたのは 毒物を複数の人間が 持ち去ったという事実だった。 228 00:38:21,566 --> 00:38:25,370 晩年の肉声が残されていた。 229 00:38:56,768 --> 00:39:02,207 敗戦直後 戦地の悪夢から抜け出せない者や➡ 230 00:39:02,207 --> 00:39:07,512 明日生きる道を見失う者が数多くいた。 231 00:39:09,347 --> 00:39:13,218 混乱の時代の中 青酸ニトリールが➡ 232 00:39:13,218 --> 00:39:18,523 軍関係者によって 持ち出されていたというのだ。 233 00:39:35,473 --> 00:39:40,445 帝銀事件とのつながりを思わせる 軍関係者の情報。 234 00:39:40,445 --> 00:39:45,250 そして 新たな毒物の実態。 235 00:39:45,250 --> 00:39:47,385 ここまで迫りながら➡ 236 00:39:47,385 --> 00:39:53,591 警察は なぜ画家だった平沢へと 捜査を転換させたのか。 237 00:39:57,128 --> 00:40:00,265 松本清張は その背後で➡ 238 00:40:00,265 --> 00:40:06,070 巨大な力が働いたのではないかという 仮説を打ち立てた。 239 00:40:19,284 --> 00:40:21,953 当時の捜査について➡ 240 00:40:21,953 --> 00:40:27,959 清張が語ったテープが 今回 初めて見つかった。 241 00:40:56,654 --> 00:41:04,262 占領期 日本で絶大な影響力を持っていたGHQ。 242 00:41:04,262 --> 00:41:09,467 警察や報道機関も管理下に置いていた。 243 00:41:12,770 --> 00:41:19,277 GHQは 当時の捜査や報道に どんな影響を与えたのか。 244 00:41:21,279 --> 00:41:25,783 その暗部に迫ろうとした人がいる。 245 00:41:28,619 --> 00:41:33,925 アメリカのジャーナリスト ウィリアム・トリプレットさん。 246 00:41:50,875 --> 00:41:53,845 事件を追ううちに➡ 247 00:41:53,845 --> 00:41:59,050 アメリカの公文書館で ある文書に行き着いた。 248 00:42:15,600 --> 00:42:21,305 これは GHQと 警視庁の会議の内容を記した文書。 249 00:42:22,940 --> 00:42:31,249 刑事部長が 軍の研究機関で 毒物実験をした人物を調べていると報告。 250 00:42:35,286 --> 00:42:40,291 それに対し GHQは…。 251 00:43:21,799 --> 00:43:26,938 帝銀事件で731部隊を取材しようとした 新聞記者は➡ 252 00:43:26,938 --> 00:43:33,644 警視庁の刑事部長から こう言われたと回想している。 253 00:43:57,001 --> 00:43:59,637 なぜ GHQは➡ 254 00:43:59,637 --> 00:44:06,344 帝銀事件と旧日本軍との関係に 触れないよう求めてきたのか。 255 00:44:08,446 --> 00:44:14,452 事件当時 日本にいたGHQメンバーが 取材に応じた。 256 00:44:21,592 --> 00:44:25,463 明かしたのは 旧日本軍と水面下で進めていた➡ 257 00:44:25,463 --> 00:44:29,467 取り引きについてだった。 258 00:44:48,619 --> 00:44:52,957 これは帝銀事件の8か月前。 259 00:44:52,957 --> 00:44:59,263 最高司令官 マッカーサーの名義で アメリカに送られた文書。 260 00:45:01,766 --> 00:45:05,069 記されていたのは 731部隊が➡ 261 00:45:05,069 --> 00:45:10,775 戦時中に行っていた 人体実験のデータについてだった。 262 00:45:13,244 --> 00:45:16,581 そのデータを独占する代わりに➡ 263 00:45:16,581 --> 00:45:23,087 石井たちの戦争犯罪を免責するよう 提言していたのだ。 264 00:45:53,951 --> 00:45:58,656 帝銀事件の裏側で行われていた取り引き。 265 00:46:00,224 --> 00:46:05,096 旧日本軍の秘密部隊の存在が 世に伝わることを➡ 266 00:46:05,096 --> 00:46:08,899 GHQは望んでいなかった。 267 00:46:08,899 --> 00:46:13,404 シャタックさんは そう明かした。 268 00:46:17,375 --> 00:46:22,213 当時 ソビエトをはじめとする 共産主義国の勢いが強まり➡ 269 00:46:22,213 --> 00:46:27,218 東西冷戦の緊張が高まっていた。 270 00:46:29,120 --> 00:46:34,392 危機感を抱いたアメリカは 日本を反共の防壁と位置づけ➡ 271 00:46:34,392 --> 00:46:40,398 ソビエトに日本軍の機密情報を 漏らさないようにしていた。 272 00:46:45,936 --> 00:46:52,243 GHQの関係者は 石井四郎のもとにも足しげく通っていた。 273 00:46:53,811 --> 00:46:59,116 その様子を 石井の娘が間近で見ていた。 274 00:47:24,775 --> 00:47:29,080 捜査員たちが GHQの存在に直面したのは➡ 275 00:47:29,080 --> 00:47:33,884 ある2人の元陸軍将校を 聴取した時だった。 276 00:47:40,091 --> 00:47:44,261 陸軍中将だった有末精三と➡ 277 00:47:44,261 --> 00:47:48,265 大佐の服部卓四郎だ。 278 00:47:51,135 --> 00:47:57,141 230万人の軍人 軍属が犠牲となった 先の戦争。 279 00:47:59,810 --> 00:48:04,882 2人は 陸軍の最高機関 参謀本部の中枢で➡ 280 00:48:04,882 --> 00:48:09,186 作戦の立案や指揮を担っていた。 281 00:48:11,555 --> 00:48:17,561 これは 有末が 進駐軍を出迎える様子を撮影した映像。 282 00:48:19,230 --> 00:48:27,538 2人は 戦争の責任を問われることなく GHQと急速に関係を深めていった。 283 00:48:29,240 --> 00:48:33,577 帝銀事件について聞きたいと 訪ねてきた捜査員に➡ 284 00:48:33,577 --> 00:48:37,081 2人は こう答えている。 285 00:49:01,205 --> 00:49:05,876 GHQの存在を ほのめかした2人。 286 00:49:05,876 --> 00:49:12,082 軍関係の捜査に難色を示し 注意を与えていた。 287 00:49:15,886 --> 00:49:19,757 そして 捜査に協力していた軍関係者たちも➡ 288 00:49:19,757 --> 00:49:24,762 次第に口をつぐむようになっていく。 289 00:49:28,065 --> 00:49:32,937 「私たちの身柄を保障してくれると 米軍では申し➡ 290 00:49:32,937 --> 00:49:35,806 もし 米ソ戦争が 開始をされた際には➡ 291 00:49:35,806 --> 00:49:40,077 身柄は 早速 アメリカ本国へ 移すことになっていると➡ 292 00:49:40,077 --> 00:49:43,781 聴いている」。 293 00:49:57,628 --> 00:50:01,098 「本件については 絶対口外せぬよう➡ 294 00:50:01,098 --> 00:50:05,903 誓約したのであるから 勘弁してくれ」。 295 00:50:48,512 --> 00:50:55,286 有末 服部の聴取から1週間後。 296 00:50:55,286 --> 00:51:00,124 警察は突如 平沢の逮捕状を取得。 297 00:51:00,124 --> 00:51:05,829 本丸だった軍関係者への捜査は 急転換する。 298 00:51:08,832 --> 00:51:13,270 警察が追っていた憲兵A。 299 00:51:13,270 --> 00:51:18,776 最後まで 所在をつかむことはできなかった。 300 00:51:21,612 --> 00:51:29,320 今回の取材で 戦後にまとめられた 元憲兵たちの名簿を入手。 301 00:51:30,955 --> 00:51:39,964 そこには Aが昭和49年に 亡くなっていると記されていた。 302 00:51:44,501 --> 00:51:50,007 平沢の逮捕後 不可解な動きを見せた人物がいる。 303 00:51:54,144 --> 00:51:59,650 凶器は 登戸研究所が開発した 青酸ニトリール。 304 00:51:59,650 --> 00:52:03,654 そう指摘していた伴 繁雄。 305 00:52:05,456 --> 00:52:12,596 平沢の裁判が始まる前 警察に求められ 捜査会議に出席。 306 00:52:12,596 --> 00:52:18,602 毒物について それまでの供述を 覆す意見書を提出していた。 307 00:52:20,471 --> 00:52:23,607 「事件に使用の毒物は➡ 308 00:52:23,607 --> 00:52:27,911 入手比較的容易なものである 青酸カリ」。 309 00:52:30,948 --> 00:52:39,757 伴は 裁判でも証人として招かれ この意見書と同様の見解を述べた。 310 00:52:41,592 --> 00:52:49,600 判決では平沢でも入手が可能な青酸カリが 凶器として認定された。 311 00:52:52,236 --> 00:52:59,309 平沢を有罪とする判決に 結果的に加担することになった伴。 312 00:52:59,309 --> 00:53:05,115 その後 帝銀事件について 固く口を閉ざす。 313 00:53:10,921 --> 00:53:18,629 なぜ 伴は 青酸ニトリールから 青酸カリへと供述を変えたのか。 314 00:53:20,264 --> 00:53:23,567 晩年の未公開の手記が見つかった。 315 00:53:29,273 --> 00:53:32,276 そこに記されていたのは…。 316 00:53:35,145 --> 00:53:40,150 「GHQ・G-2に召喚さる」。 317 00:53:42,619 --> 00:53:48,292 伴は 帝銀事件の捜査で 警察から聴取を受けたのと同じ頃➡ 318 00:53:48,292 --> 00:53:53,797 GHQから呼び出され 尋問を受けていた。 319 00:53:59,002 --> 00:54:04,508 「戦犯の指名をうける日が ついに来た」。 320 00:54:27,931 --> 00:54:35,272 伴は GHQと どのような約束を交わしたのか。 321 00:54:35,272 --> 00:54:42,780 詳細を語ることなく 平成5年に この世を去った。 322 00:54:46,617 --> 00:54:55,325 逮捕当初 平沢に同情的だった世論も マスコミの報道で変化していく。 323 00:54:55,325 --> 00:55:00,164 平沢が 過去に詐欺事件を 起こしていたことが報じられると➡ 324 00:55:00,164 --> 00:55:04,101 冤罪の被害者という声はかき消され➡ 325 00:55:04,101 --> 00:55:08,805 未曽有の凶悪犯だと非難が集まった。 326 00:55:10,574 --> 00:55:18,282 そして 警察は 全ての軍関係者への捜査を終了した。 327 00:55:20,918 --> 00:55:25,789 帝銀事件を取材した松本清張。 328 00:55:25,789 --> 00:55:28,492 こう書き残している。 329 00:55:31,094 --> 00:55:40,604 「世間の大衆が真犯人の平沢に 憎悪の目を投げつけたのは当然である。➡ 330 00:55:40,604 --> 00:55:49,780 彼らは新聞による報道だけで 詳細な内容を知らされていない。➡ 331 00:55:49,780 --> 00:55:54,117 警視庁の主観が 新聞の主観となり➡ 332 00:55:54,117 --> 00:55:56,620 それが読者の主観となり➡ 333 00:55:56,620 --> 00:56:01,825 世論の主観となるのである」。 334 00:56:09,566 --> 00:56:15,572 昭和の終わりとともに 95歳で この世を去った平沢。 335 00:56:19,243 --> 00:56:23,547 先月 平沢の絵画展が開かれた。 336 00:56:25,115 --> 00:56:33,423 39年にわたる獄中生活で 筆をとり続け 2,000点の作品を描き残した。 337 00:56:40,264 --> 00:56:46,970 現在 20回目の再審請求が行われている。 338 00:56:48,939 --> 00:56:55,812 弁護団は 独自に自白の検証や 毒物の鑑定などを行いながら➡ 339 00:56:55,812 --> 00:57:01,218 裁判のやり直しを求めている。 340 00:57:01,218 --> 00:57:08,425 検察は 取材に対し 個別の事件には答えられないとしている。 341 00:57:12,829 --> 00:57:17,534 今の日本が形づくられた占領期。 342 00:57:19,569 --> 00:57:22,372 捜査員たちが かいま見た闇は➡ 343 00:57:22,372 --> 00:57:28,879 一人の画家の逮捕とともに 歴史の奥へと消えた。 344 00:57:33,116 --> 00:57:39,923 帝銀事件で娘を亡くした父親は 心境を こうつづっている。 345 00:58:38,582 --> 00:58:53,597 ♬~