1 00:00:01,235 --> 00:00:06,240 ♬~ 2 00:00:23,290 --> 00:00:39,306 ♬~ 3 00:00:39,306 --> 00:00:42,309 どこの船でっしゃろ? 4 00:00:43,977 --> 00:00:48,315 (高田屋嘉兵衛)オロシャや。 オロシャ!? 5 00:00:48,315 --> 00:00:51,318 鉄砲を撃つぜ! 伏せるんや! 伏せろ! 6 00:00:53,186 --> 00:00:55,188 (鉄砲の音) 7 00:00:55,188 --> 00:00:57,324 (水夫達の叫び声) 8 00:00:57,324 --> 00:00:59,259 待て! 逃げるな! 9 00:00:59,259 --> 00:01:11,271 ♬~ 10 00:01:11,271 --> 00:01:15,275 無礼者! ここは日本やぞ! 11 00:01:17,144 --> 00:01:19,146 お前達 無礼やないか! 12 00:01:19,146 --> 00:02:07,260 ♬~ 13 00:02:07,260 --> 00:02:20,273 ♬~ (テーマ音楽) 14 00:02:20,273 --> 00:02:53,273 ♬~ 15 00:02:56,176 --> 00:02:58,645 ⚟待たんかい! こら! 16 00:02:58,645 --> 00:03:02,349 ⚟よそ者が でかい面して 歩いてんちゃうぞ! 17 00:03:05,252 --> 00:03:09,122 (駒吉)本村の宿の者は 新在家から出て行け。 18 00:03:09,122 --> 00:03:13,126 ほら! 清めじゃ 清めじゃ! 19 00:03:13,126 --> 00:03:17,831 (平吉)こら こっちの水 飲むんやったらな 水 飲む時に➡ 20 00:03:17,831 --> 00:03:21,268 「水を頂戴いたします。 ありがとうございます」と➡ 21 00:03:21,268 --> 00:03:24,171 大きな声で氏神様に お礼を言え! 22 00:03:24,171 --> 00:03:26,139 分かったか こら ハハハ。 23 00:03:26,139 --> 00:03:28,141 うわ~! おい 待て こら! 24 00:03:41,288 --> 00:03:43,223 待て こら! 25 00:03:43,223 --> 00:03:45,158 逃げんな こら! 26 00:03:45,158 --> 00:03:50,297 あの人 前世で どんな悪い事したん? 27 00:03:50,297 --> 00:03:52,232 かわいそうに…。 28 00:03:52,232 --> 00:03:58,171 まっ 前世? こいさん そら 関係ありませんわ。 29 00:03:58,171 --> 00:04:03,243 顔が悪いからでございます。 顔? 30 00:04:03,243 --> 00:04:15,255 ♬~ 31 00:04:15,255 --> 00:04:17,190 ♬~怖い顔。 32 00:04:17,190 --> 00:04:24,264 ♬~ 33 00:04:24,264 --> 00:04:27,267 こいさん! お清め お清め。 34 00:04:29,136 --> 00:04:33,273 顔が悪いだけで人をいじめたら あかんのや! 35 00:04:33,273 --> 00:04:38,145 <淡路の都志には いくつかの 若衆宿があった。➡ 36 00:04:38,145 --> 00:04:41,615 嘉兵衛は 生家のある本村の宿に 入っていたが➡ 37 00:04:41,615 --> 00:04:44,284 日常 暮らしているのは 隣村の新在家であり➡ 38 00:04:44,284 --> 00:04:49,156 その事が 新在家の若衆達を トゲトゲしくさせていた。➡ 39 00:04:49,156 --> 00:04:56,296 当時の日本の村社会というものは 恐ろしく 閉鎖的 排他的であった> 40 00:04:56,296 --> 00:05:01,134 (幸蔵)そら 近松さんでも書けん 名台詞じゃ。 41 00:05:01,134 --> 00:05:07,240 ほんま ほんま あいつは きっと 陰で なんぞ悪い事してるに違いないわ。 42 00:05:07,240 --> 00:05:11,111 (おらく)あんた 姉さんの倅を そんなふうに言われて笑うやなんて。 43 00:05:11,111 --> 00:05:13,113 ごめんなさい。 44 00:05:13,113 --> 00:05:18,118 まあ… 確かに 嘉兵衛は 悪相やけどねえ。 45 00:05:20,253 --> 00:05:23,924 こいさん 嘉兵衛が 夜這いを かけてきたら どうする? 46 00:05:23,924 --> 00:05:28,228 いやぁ! (一同の笑い声) 47 00:05:30,263 --> 00:05:34,601 網屋の こいさんに 夜這いなんぞ仕掛けたら➡ 48 00:05:34,601 --> 00:05:36,603 海に捨てるだけのこっちゃ。 49 00:05:38,271 --> 00:05:41,274 (駒吉)何や お前! ⚟あっ 嘉兵衛や。 50 00:05:43,143 --> 00:05:50,283 (幸蔵)こら! これは うちらが呼んだ一座や。➡ 51 00:05:50,283 --> 00:05:55,288 よそ者は 見たらいかんのじゃ! ⚟そや そや。 早く帰れよ! 52 00:05:58,158 --> 00:06:01,228 その目は 何や? こら。 53 00:06:01,228 --> 00:06:05,899 ⚟帰れ 帰れ! ⚟何しに来たんじゃ! 54 00:06:05,899 --> 00:06:09,603 (笑い声) ⚟来んなよ! 55 00:06:12,239 --> 00:06:18,111 〽 (三味線) 56 00:06:18,111 --> 00:06:23,250 〽 (「曽根崎心中」) 57 00:06:23,250 --> 00:06:41,268 〽 この世のなごり 夜もなごり 58 00:06:41,268 --> 00:06:46,139 〽 (三味線) 59 00:06:46,139 --> 00:07:07,227 〽 死にに行く身を たとふれば 60 00:07:07,227 --> 00:07:28,214 〽 あだしが原の道の霜 61 00:07:35,255 --> 00:07:50,270 〽 一足づゝに消えて行く 62 00:07:50,270 --> 00:08:13,259 〽 夢の夢こそ あはれなれ 63 00:08:29,109 --> 00:08:32,245 覚悟しとけや。 64 00:08:32,245 --> 00:08:37,117 「覚悟」… 何や? それ。 65 00:08:37,117 --> 00:08:40,120 夜這い 仕掛けるけんのう。 66 00:08:40,120 --> 00:09:04,110 〽 (三味線) 67 00:09:09,082 --> 00:09:15,221 せやけど お前 あいつやったら やりかねへんで。何を? 68 00:09:15,221 --> 00:09:18,124 ほんまに 夜這いに 来るかもしれへんで。 69 00:09:18,124 --> 00:09:21,094 (駒吉)来てみいや。 海 捨てたるわい! 70 00:09:21,094 --> 00:09:23,096 海が汚れるわい! 71 00:09:25,231 --> 00:09:31,538 気性は きついけどな 顔は京顔でのう。 72 00:09:35,241 --> 00:09:38,244  回想 夜這い 仕掛けるけんのう。 73 00:09:43,116 --> 00:09:51,257 (およし)どないしたんや? この子は。 さっきから ため息ばっかりついて。 74 00:09:51,257 --> 00:09:55,128 (幾右衛門)大丈夫や。 若衆が見回ってくれるで。 75 00:09:55,128 --> 00:10:00,266 違うん。 何で うちが ここで 若い衆に 姿を見せなければ ならんの? 76 00:10:00,266 --> 00:10:05,138 そら お前… お前に懸想する若い衆が➡ 77 00:10:05,138 --> 00:10:09,275 一人も おらんと困るじゃろうが。 これは顔見せじゃ。 78 00:10:09,275 --> 00:10:11,277 要らん! 79 00:10:13,146 --> 00:10:15,148 何じゃいな。 80 00:10:18,284 --> 00:10:26,292 (波の音) 81 00:10:34,300 --> 00:10:39,639 そやけども 網元の こいさんに 夜這うっちゅうのは…➡ 82 00:10:39,639 --> 00:10:42,308 そんな大それた事を? 83 00:10:42,308 --> 00:10:45,211 嘉兵衛やったら しかねんわね。 84 00:10:45,211 --> 00:10:50,183 けど こいさんは 何で そんな事 わてに話さはったんやろな。 85 00:10:50,183 --> 00:10:55,855 せやねえ。 ひょっとして➡ 86 00:10:55,855 --> 00:11:00,260 好きなんと違いますやろか? 87 00:11:00,260 --> 00:11:02,262 (2人)ええ~!? 88 00:11:11,271 --> 00:11:28,288 ♬~ 89 00:11:28,288 --> 00:11:33,159 それは 堺物やから値が高い。 もし 安いのが欲しかったら➡ 90 00:11:33,159 --> 00:11:37,297 その辺の野鍛冶に行って買うたほうが 得や。 91 00:11:37,297 --> 00:11:39,632 本村の宿に入ってんのに➡ 92 00:11:39,632 --> 00:11:41,568 この村におるから みんなに いじめられるんよ。 93 00:11:41,568 --> 00:11:43,970 それが どうした? 94 00:11:43,970 --> 00:11:48,308 ガキのころから ここにおって いじめられるんは慣れとるわ。 95 00:11:48,308 --> 00:11:52,178 これ よう切れる? 96 00:11:52,178 --> 00:11:55,181 ああ。 97 00:11:55,181 --> 00:12:02,188 じゃあ お代は あとで届ける。 ああ。 98 00:12:07,260 --> 00:12:13,132 うちは 若い衆で いっぱいや。 来たら死ぬわ。 99 00:12:13,132 --> 00:12:19,839 わしは 菜の花が好きや。 座敷に飾っとけ。 100 00:12:19,839 --> 00:12:38,224 ♬~ 101 00:12:38,224 --> 00:12:58,311  回想 〽 夢の夢こそ あはれなれ 102 00:12:58,311 --> 00:13:12,025 ♬~ 103 00:13:16,262 --> 00:13:21,134 <淡路一円では 方々で瓦を焼いている。➡ 104 00:13:21,134 --> 00:13:25,605 百姓仕事の合間に もみ干し場の隅で 焼いている家も あれば➡ 105 00:13:25,605 --> 00:13:30,276 山中に 窯を築いて 大がかりにやっている家もある。➡ 106 00:13:30,276 --> 00:13:34,280 そういう瓦を集めて大坂へ運ぶのである> 107 00:13:36,149 --> 00:13:38,151 ⚟(佐平)嘉兵衛! はい! 108 00:13:46,292 --> 00:13:50,163 あほ! 水は命じゃ。 むやみに飲ますな! 109 00:13:50,163 --> 00:13:54,167 聞こえたか! すんません。 110 00:13:54,167 --> 00:13:59,172 <風が従えば 瓦船は帆走する> 111 00:14:00,807 --> 00:14:03,242 あれは何じゃい? 112 00:14:03,242 --> 00:14:06,145 (佐平)あれこそ 船の王の北前船よ。 113 00:14:06,145 --> 00:14:08,915 千石はあるのう。 114 00:14:08,915 --> 00:14:12,251 あのような大きな船を 持ちたいもんじゃい。 115 00:14:12,251 --> 00:14:16,122 (佐平)ハハハハ…! 116 00:14:16,122 --> 00:14:22,829 お~い! お~い! お~い! 117 00:14:25,264 --> 00:14:30,136 姉さん 盗っ人や言われてんのに 家に置くわけにはいかんがね。 118 00:14:30,136 --> 00:14:36,275 盗みをするようなやつじゃ ないがのう…。 119 00:14:36,275 --> 00:14:41,614 そやけど あいつは とにかく この新在家では嫌われ者でのう。 120 00:14:41,614 --> 00:14:47,487 えらい ご迷惑かけて。 すんまへん。 121 00:14:47,487 --> 00:14:54,193 けどなあ 本村へ戻っても何の職もないし…。 122 00:14:54,193 --> 00:14:59,165 (おらく)せやよって 3年前に 兵庫に嘉兵衛をやれば よかったんや。 123 00:14:59,165 --> 00:15:06,239 そうは言うたんじゃがのう どないしても 弟の嘉蔵のほうが かわいいて➡ 124 00:15:06,239 --> 00:15:10,109 頭が良さそうだっちゅうて ほんで 連れて行ったんじゃから。 125 00:15:10,109 --> 00:15:16,249 嘉兵衛かて よう見ると 味のある顔してるし 頭かて ええしね。 126 00:15:16,249 --> 00:15:22,121 そうじゃ。 読み書き算盤 これは大したもんじゃ。 127 00:15:22,121 --> 00:15:24,123 ⚟ごめんなされ。 128 00:15:27,260 --> 00:15:29,262 おいでなさい。 129 00:15:32,131 --> 00:15:35,134 紙を。 へい。 130 00:15:44,277 --> 00:15:47,180 あの…。 131 00:15:47,180 --> 00:15:49,182 へい。 132 00:15:51,150 --> 00:16:00,159 あの… 嘉兵衛は 瓦船に雇われましてのう で 大坂へ行っとりましてのう。 133 00:16:03,763 --> 00:16:07,233 (おらく)嘉兵衛に懸想してるらしいわ。 134 00:16:07,233 --> 00:16:12,238 網元の こいさんが? 何かの間違いやわ。 135 00:16:13,906 --> 00:16:16,242 へい お待ちどおさん。 136 00:16:16,242 --> 00:16:19,145 あれっ…? どないしたん? 137 00:16:19,145 --> 00:16:23,115 大坂で 百目蝋燭や小蝋燭 紙を買うてきた。 138 00:16:23,115 --> 00:16:25,251 次の湊で売ろうと思うてのう。 139 00:16:25,251 --> 00:16:29,121 そしたら 船頭の佐平さんに叱られた。 140 00:16:29,121 --> 00:16:32,124 ホマチを稼ぐのは百年早い言われた。 141 00:16:32,124 --> 00:16:34,260 それで 船から降ろされた。 142 00:16:34,260 --> 00:16:37,163 要するに お前は嫌われたんじゃ。 143 00:16:37,163 --> 00:16:42,134 そうみたいやな。 紙なら こっちのほうが ええ。 144 00:16:42,134 --> 00:16:45,271 おおきに。 145 00:16:45,271 --> 00:16:48,608 母ちゃん どないしたんや? 146 00:16:48,608 --> 00:16:53,279 おまはん イリコ 盗んでんのか? イリコ? 147 00:16:53,279 --> 00:17:00,887 浜に干してあるイリコが盗まれて 盗っ人は おまはんやて…。➡ 148 00:17:00,887 --> 00:17:06,225 本村へ帰ってくるか? 149 00:17:06,225 --> 00:17:08,227 誰が帰るか! 150 00:17:11,097 --> 00:17:13,099 嘉兵衛! 151 00:17:13,099 --> 00:17:22,241 ♬~ 152 00:17:22,241 --> 00:17:25,144 わしゃ 盗っ人じゃない! 153 00:17:25,144 --> 00:17:28,114 盗っ人じゃねえぞ! おい! 154 00:17:28,114 --> 00:17:32,251 噂になれば 盗っ人じゃ! 155 00:17:32,251 --> 00:17:36,956 盗っ人と呼ばれて この島で 暮らしていけるかい! 156 00:17:40,126 --> 00:17:46,265 長々 こらえてきたんじゃ。 この わしの分際を思い➡ 157 00:17:46,265 --> 00:17:50,937 世話になった義叔父夫婦の恩を 思えばこそじゃ! 158 00:17:50,937 --> 00:17:58,277 わしゃな この島で 死骸に なってやるわい! 159 00:17:58,277 --> 00:18:00,546 「死骸」? 160 00:18:00,546 --> 00:18:07,219 ♬~ 161 00:18:07,219 --> 00:18:10,122 死骸じゃ! 死骸じゃ…! 162 00:18:10,122 --> 00:18:14,093 ♬~ 163 00:18:14,093 --> 00:18:18,230 かわいそうに…。 164 00:18:18,230 --> 00:18:22,935 (叫び声) 165 00:18:33,245 --> 00:18:39,118 播州。 おふさ 何ぞ あったんかいな? 166 00:18:39,118 --> 00:18:46,258 〽 千々に乱れる 乙女心 167 00:18:46,258 --> 00:18:49,562 「乱れる」って 何に乱れるんのや? 168 00:19:01,741 --> 00:19:35,241 ♬~ 169 00:19:35,241 --> 00:19:37,576 ⚟おい! ⚟逃げろ 逃げろ…! 170 00:19:37,576 --> 00:19:42,248 ♬~ 171 00:19:42,248 --> 00:19:44,250 お~い! 172 00:19:46,118 --> 00:19:48,120 ああっ! 173 00:19:48,120 --> 00:19:54,260 ⚟(戸をたたく音) 174 00:19:54,260 --> 00:20:00,566 誰や? ⚟旦那はん 幸蔵です。 175 00:20:06,272 --> 00:20:09,942 すんまへん。 浜で 駒吉が➡ 176 00:20:09,942 --> 00:20:13,279 嘉兵衛に捕まったもんで。 何でや? 177 00:20:13,279 --> 00:20:15,948 嘉兵衛が おふささんに 懸想してるから➡ 178 00:20:15,948 --> 00:20:19,285 鍋にしよう思うたら 返り討ちに遭うたそうで。 179 00:20:19,285 --> 00:20:24,623 それはうそや。 きっと 駒吉はんは イリコを盗みに行って捕まったんや。 180 00:20:24,623 --> 00:20:27,293 イリコ盗み? 181 00:20:27,293 --> 00:20:34,166 おふさ お前 何で そんな事 知ってんのや? 182 00:20:34,166 --> 00:20:40,172 お前 あの男と 何ぞ 言い交わしたんではあるまいね? 183 00:20:47,313 --> 00:20:50,216 何で泣くのや? 184 00:20:50,216 --> 00:20:57,656 〽 梅田の橋を 鵲の橋と 契りて いつまでも 185 00:20:57,656 --> 00:21:05,264 〽 我と そなたは チチン 女夫星 186 00:21:05,264 --> 00:21:11,137 嘉兵衛さんは 顔は悪いが 声は 淡路一でございます。 187 00:21:11,137 --> 00:21:14,940 こいさんの心も ちょっと 乱れてはりますようで。 188 00:21:14,940 --> 00:21:17,610 播州はん 勝手な事 なぜ言う! 189 00:21:17,610 --> 00:21:23,282 そら まあ わては 網屋の奉公人ですよって。 190 00:21:23,282 --> 00:21:28,154 幸蔵 今の話 誰にも しゃべったらあかんで。 191 00:21:28,154 --> 00:21:30,156 へい。 192 00:21:32,291 --> 00:21:34,293 好きなんか? 193 00:21:36,162 --> 00:21:41,300 こいさん ご本心 明かしなはれ。 194 00:21:41,300 --> 00:21:46,172 こいさんも もう 17。 夜這う相手が出来てもええころや。 195 00:21:46,172 --> 00:21:49,175 とんでもない事を。 196 00:21:49,175 --> 00:21:56,315 おふさ この一件 話が済むまで 家から出たらあきまへん。 197 00:21:56,315 --> 00:21:58,317 出ん。 198 00:22:00,186 --> 00:22:07,259 「いりこぬしとは かへいにござなく こまきちに ござそろ」。 199 00:22:07,259 --> 00:22:10,162 けど むごい事を。 200 00:22:10,162 --> 00:22:14,934 そうや ほどいてやれ。 駒吉は新在家の者じゃ。 201 00:22:14,934 --> 00:22:17,236 やかましい! 202 00:22:19,271 --> 00:22:21,207 どないしたんなら? 義叔父さん。 203 00:22:21,207 --> 00:22:26,212 熊野牛王の誓紙を 1枚もろうた。 詳しい事は この男に聞いてくれ。 204 00:22:28,280 --> 00:22:31,617 あの和郎は どないする? 205 00:22:31,617 --> 00:22:35,287 夜 宿で 寄り合って決める。 206 00:22:35,287 --> 00:22:39,592 嘉兵衛 ほどいてもええか? ああ。 207 00:22:56,308 --> 00:23:02,114 お前については 本村に伝えるよって いずれ 裁きがあるやろ。 208 00:23:02,114 --> 00:23:06,118 わしが何をしたか? 裁きとは 何や! 209 00:23:06,118 --> 00:23:08,888 わしは 罪になるような事は 何もしとらん。 210 00:23:08,888 --> 00:23:15,194 ここは新在家じゃ。 本村ではない。 それを忘れるな。 211 00:23:25,271 --> 00:23:33,279 嘉兵衛 よう 駒吉を殺さなんだの。 よう辛抱した。 212 00:23:38,284 --> 00:23:42,955 熊野牛王さんが 大きな罪を犯さんように➡ 213 00:23:42,955 --> 00:23:46,258 お前を守ってくださったんじゃのう。 214 00:23:47,826 --> 00:23:53,299 義叔父さん。 義叔父さんよう。おう。 215 00:23:53,299 --> 00:24:02,308 もし… 網屋の おふさと契ったら わしは殺されるかのう? 216 00:24:05,244 --> 00:24:08,947 堪忍してくれよ。 217 00:24:11,116 --> 00:24:17,823 わしも おらくも ここに おられんようになる。 218 00:24:17,823 --> 00:24:21,593 お前かて ここ以外に どこで生きていく? 219 00:24:21,593 --> 00:24:23,529 ここしか ないのか! 220 00:24:23,529 --> 00:24:29,268 網屋の おふさを どうにかしたら 命はないと思え! 221 00:24:29,268 --> 00:24:33,138 もし 無事に この島から出られたとしても➡ 222 00:24:33,138 --> 00:24:38,277 人別帳から外されて 無宿者になるだけじゃ。 223 00:24:38,277 --> 00:24:40,212 なっ? 224 00:24:40,212 --> 00:24:43,215 無宿者か…。 225 00:24:58,297 --> 00:25:03,135 こいさん 和田屋さんが おわびに お越しになりましたで。 226 00:25:03,135 --> 00:25:10,576 このたびは 嘉兵衛が申し訳ない事を…。 こいさんに のぼせるやて。 227 00:25:10,576 --> 00:25:12,911 いいえ…。 228 00:25:12,911 --> 00:25:17,583 あっ… どうぞ。 どうぞ。 229 00:25:17,583 --> 00:25:20,886 失礼いたします。 230 00:25:27,259 --> 00:25:33,265 これは ほんの おわびのしるしで…。 231 00:25:39,271 --> 00:25:41,206 きれい…。 232 00:25:41,206 --> 00:25:44,143 なんて きれいな布やろ。 233 00:25:44,143 --> 00:25:47,146 蝦夷錦という布やそうで。 234 00:25:47,146 --> 00:25:50,282 蝦夷て 遠い北の国ですやろ? 235 00:25:50,282 --> 00:25:53,619 ええ。 海の向こうの オロシャという異国から➡ 236 00:25:53,619 --> 00:25:57,289 渡ってきた布やと聞きました。 237 00:25:57,289 --> 00:26:00,192 そんな大切な物を頂戴できません。 238 00:26:00,192 --> 00:26:07,099 いいえ。 嘉兵衛が 大それた事を申しました。➡ 239 00:26:07,099 --> 00:26:11,236 こいさんの事で 若い衆が いきりたってるそうで➡ 240 00:26:11,236 --> 00:26:18,110 心配でたまりまへん。 どうぞ お許しくださいませ。 241 00:26:18,110 --> 00:26:29,121 ♬~ 242 00:26:36,261 --> 00:26:41,567 駒吉を鍋にすべきか。 243 00:26:46,271 --> 00:26:48,273 ⚟(播州はん)入りますよ。 244 00:26:51,610 --> 00:26:59,284 こいさん 納屋に 在所中の若い衆が 顔色変えて集まってます。 245 00:26:59,284 --> 00:27:02,187 こいさん? 246 00:27:02,187 --> 00:27:06,191 嘉兵衛さんは 今 どこにおるんやろ? 247 00:27:10,896 --> 00:27:15,234 うち 出てくるわ。 248 00:27:15,234 --> 00:27:17,169 何でやすて? 249 00:27:17,169 --> 00:27:31,183 (波の音) 250 00:27:44,263 --> 00:27:49,134 何してたんや? 五体を清めてたんや。 251 00:27:49,134 --> 00:27:55,274 お前こそ 何や? このわしと一緒じゃ まずかろう。 252 00:27:55,274 --> 00:27:59,144 五体清めて どうすんのや? 253 00:27:59,144 --> 00:28:02,881 お前のとこに通うためじゃ。 254 00:28:02,881 --> 00:28:07,219 嫌われ騒がれ そのうえ 盗っ人にまでされて➡ 255 00:28:07,219 --> 00:28:11,924 このまま引き下がったら 男が立たねえよ! 256 00:28:26,238 --> 00:28:29,241 何や? 257 00:28:41,253 --> 00:28:45,123 おお~ きれいな布じゃのう。 258 00:28:45,123 --> 00:28:48,126 蝦夷錦いうんやて。 259 00:28:48,126 --> 00:28:53,265 遠い異国から 海を渡ってきたって。 260 00:28:53,265 --> 00:28:56,168 異国か。 261 00:28:56,168 --> 00:28:58,937 オロシャから 蝦夷に来て➡ 262 00:28:58,937 --> 00:29:03,208 蝦夷から 誰かが この淡路へ運んできたんやろ。 263 00:29:03,208 --> 00:29:17,222 ♬~ 264 00:29:17,222 --> 00:29:22,094 布になったらええんやわ。 何やて? 265 00:29:22,094 --> 00:29:26,565 布が 海を渡って 異国へ来れるんやったら➡ 266 00:29:26,565 --> 00:29:30,268 何で 人が 海を渡って 異国に行けんのやろ? 267 00:29:32,237 --> 00:29:40,545 どこへでも行けるわ。 どこにも人はおるし 生きていけるわ。 268 00:29:43,248 --> 00:29:46,251 おふさ。 269 00:29:51,123 --> 00:29:54,259 このわしと一緒に逃げよう 言うとんのか? 270 00:29:54,259 --> 00:29:58,597 ♬~ 271 00:29:58,597 --> 00:30:02,267 謡うて。 何を? 272 00:30:02,267 --> 00:30:07,272 「道行」や。 ああ…。 273 00:30:12,277 --> 00:30:40,272 〽 この世のなごり 夜もなごり 274 00:30:43,241 --> 00:30:46,178 浄瑠璃人形や。 275 00:30:46,178 --> 00:30:57,322 ♬~ 276 00:30:57,322 --> 00:31:12,604 〽 一足づゝに消えて行く 277 00:31:12,604 --> 00:31:30,589 ♬~ 278 00:31:34,292 --> 00:31:41,299 おふさ。 嘉兵衛は 1年間 八分と決まった。 279 00:31:43,301 --> 00:31:47,172 何や? その顔は。 280 00:31:47,172 --> 00:31:51,176 うち 顔 変わった? 281 00:31:51,176 --> 00:31:55,313 どういう意味や? 282 00:31:55,313 --> 00:32:01,119 女って 不思議な生き物やいう事が ある日 突然 分かるんやわ。 283 00:32:01,119 --> 00:32:03,121 おふさ お前…。 284 00:32:03,121 --> 00:32:09,261 まさか お前 あの真っ黒い 目ばっかりギョロギョロした男に…。 285 00:32:09,261 --> 00:32:15,133 好きな人が出来ると お父はんと お母はん 捨てて➡ 286 00:32:15,133 --> 00:32:20,605 どんな遠い所でも そう… オロシャの果てでも➡ 287 00:32:20,605 --> 00:32:23,275 その男に ついていけるいう事が分かる。 288 00:32:23,275 --> 00:32:27,145 な~んも 怖いもんがなくなる。 289 00:32:27,145 --> 00:32:30,949 嘉兵衛と 契ったのか!? 290 00:32:30,949 --> 00:32:32,884 あほ! 291 00:32:32,884 --> 00:32:35,620 あんた…。 痛いなあ! 292 00:32:35,620 --> 00:32:39,291 こいさん! 旦那はんに向かって…。 293 00:32:39,291 --> 00:32:46,164 お父はん お母はん! うちは まだ きれいなままです。 294 00:32:46,164 --> 00:32:48,300 そうか…。 295 00:32:48,300 --> 00:32:53,171 けど うち あの人 好いてます。 296 00:32:53,171 --> 00:32:56,174 ああ… ちょっと 播州はん! 297 00:32:56,174 --> 00:33:00,245 あんた ちょっと なんとかしてえな! 298 00:33:00,245 --> 00:33:04,115 さかりが ついとりますよってな。えっ? 299 00:33:04,115 --> 00:33:14,259 ♬~ 300 00:33:14,259 --> 00:33:18,263 (鳥の声) 301 00:33:25,270 --> 00:33:28,273 おっかさん…。 302 00:33:31,142 --> 00:33:36,615 わら 持ってきてくれたんか。 夜は ここは寒うなるさかいな。 303 00:33:36,615 --> 00:33:40,952 こんな山奥へ…。 304 00:33:40,952 --> 00:33:44,289 ぐずぐずしとったらな 暗うなるさかい。 305 00:33:44,289 --> 00:33:48,293 嘉兵衛… 帰るで。 306 00:33:55,300 --> 00:34:00,138 きれいやなあ これ。 307 00:34:00,138 --> 00:34:02,140 おふさに もろうたんや。 308 00:34:07,879 --> 00:34:10,248 おっかさん…。 309 00:34:10,248 --> 00:34:13,251 よかったなあ。 310 00:34:17,122 --> 00:34:29,935 (せみの鳴き声) 311 00:34:29,935 --> 00:34:32,604 おい! うわ~! 312 00:34:32,604 --> 00:34:36,274 (泣き声) 313 00:34:36,274 --> 00:34:41,279 (話し声) 314 00:34:49,287 --> 00:34:52,290 (笑い声) 315 00:35:01,566 --> 00:35:05,904 (駒吉)もうじき 莚にくるんで 沖に捨ててやる。 316 00:35:05,904 --> 00:35:09,240 莚が もったいないわ。 ハハハハ…! 317 00:35:09,240 --> 00:35:11,242 あほ! 318 00:35:16,114 --> 00:35:19,117 八分者は 誰ともしゃべられへんのや。 319 00:35:21,252 --> 00:35:25,123 (笑い声) ⚟はよ帰れや お前。 320 00:35:25,123 --> 00:35:41,272 ♬~ 321 00:35:41,272 --> 00:35:43,608 しょんべん臭え。 322 00:35:43,608 --> 00:35:52,283 ♬~ 323 00:35:52,283 --> 00:35:55,987 何じゃ? こりゃ。 何じゃ…? 324 00:35:58,156 --> 00:36:00,558 八分者が姿を現したで! 325 00:36:00,558 --> 00:36:04,262 何やて? 何しに来たんじゃ! 326 00:36:07,232 --> 00:36:11,569 八分者は 人の家を訪ねられへんし➡ 327 00:36:11,569 --> 00:36:16,241 まして 若衆宿に踏み込むのは 神様の罰が当たるぞ。 328 00:36:16,241 --> 00:36:18,176 たたき出せ! 329 00:36:18,176 --> 00:36:21,179 このわしの身に手を触れるな。 330 00:36:23,114 --> 00:36:26,584 触れたら死ぬと思え。 331 00:36:26,584 --> 00:36:35,927 こいさん。 えらい事に。 八分やいうのに 若衆宿へ。 332 00:36:35,927 --> 00:36:38,263 刃物は持ってないやろな? 333 00:36:38,263 --> 00:36:44,936 持っているのは この 誰かの尿のしみこんだ寝わらだけじゃ! 334 00:36:44,936 --> 00:36:48,273 ここに百姓の伜がおろう。 335 00:36:48,273 --> 00:36:51,176 尿は 家に帰ってせいと 教えられんかったか? 336 00:36:51,176 --> 00:36:55,146 下肥のもとになるからの。 337 00:36:55,146 --> 00:37:00,218 そういうわけで 今日は この大切な尿を返しにきたんや。 338 00:37:00,218 --> 00:37:02,153 そうか。 339 00:37:02,153 --> 00:37:05,090 あんた 止めんと。 340 00:37:05,090 --> 00:37:10,228 ⚟(幸蔵)ここは若衆宿や。 341 00:37:10,228 --> 00:37:12,163 ⚟わしも まだ帰らん。 342 00:37:12,163 --> 00:37:14,099 ⚟(幸蔵)どうするんや! 343 00:37:14,099 --> 00:37:19,237 この蝦夷錦に 尿をかけたやつがおる。 344 00:37:19,237 --> 00:37:24,109 ⚟これは おふさにもろうた 命よりも大切な布や。➡ 345 00:37:24,109 --> 00:37:28,913 誰や? こいつに尿をかけたやつは。 346 00:37:28,913 --> 00:37:33,251 そいつは 今 ここで このわしが殺す。 347 00:37:33,251 --> 00:37:38,556 あんた! なあ あんたて! 348 00:37:40,125 --> 00:37:48,266 駒吉 お前 このわしを 莚にくるんで沖に沈めるとか言うたな。 349 00:37:48,266 --> 00:37:52,137 皆々様も そのつもりやろう。 350 00:37:52,137 --> 00:37:56,141 だったら 今のうちにするがええ。 351 00:37:56,141 --> 00:37:59,277 できるか。 352 00:37:59,277 --> 00:38:05,083 わしはな おふさと契るで。 353 00:38:05,083 --> 00:38:08,086 契って 淡路を出る。 354 00:38:08,086 --> 00:38:16,561 ♬~ 355 00:38:16,561 --> 00:38:20,231 ⚟(戸を開く音) 356 00:38:20,231 --> 00:38:22,167 (播州はん)ここに おりなはれ。 357 00:38:22,167 --> 00:38:27,172 こいさん 旦那はんは あの男を見に行ったんや。 358 00:38:29,240 --> 00:38:34,112 (幸蔵) こいさんと契り 無宿者となるのか! 359 00:38:34,112 --> 00:38:38,583 わしはな 日本人になるんや! 360 00:38:38,583 --> 00:39:02,574 ♬~ 361 00:39:12,217 --> 00:39:16,087 聞こえた。 本気か? 362 00:39:16,087 --> 00:39:18,389 はい。 363 00:39:30,235 --> 00:39:37,108 どうや? 音を上げい。 おふさを諦めい。 364 00:39:37,108 --> 00:39:43,248 わしは おふさと契る。 どうしても。 365 00:39:43,248 --> 00:39:47,118 何が日本人じゃ! 下郎! 366 00:39:47,118 --> 00:39:50,421 日本人じゃい! 黙れ! 367 00:39:56,261 --> 00:40:06,271 わしは 海を渡り 遠い異国で 宝を北前船に積んで➡ 368 00:40:06,271 --> 00:40:12,610 運んでくるんじゃ! 日本人じゃい! 日本人じゃい! 宝船じゃい! 369 00:40:12,610 --> 00:40:24,622 ♬~ 370 00:40:24,622 --> 00:40:29,961 (波の音) 371 00:40:29,961 --> 00:40:35,667 (せみの鳴き声) 372 00:40:37,302 --> 00:40:41,306 おう 目 覚めたか。 義叔父さん。 373 00:40:44,175 --> 00:40:48,646 かまへん 寝とれ… 寝とったらええ。 寝とったらええ 寝とったらええ。 374 00:40:48,646 --> 00:40:52,317 よいしょ…。 375 00:40:52,317 --> 00:40:57,188 外 歩いても 誰一人 話をしようとせんわ。 376 00:40:57,188 --> 00:41:00,491 あてが八分にされてるみたいやわ。 377 00:41:06,264 --> 00:41:11,135 ここはのう… ほうけ狸でいくんじゃ。 378 00:41:11,135 --> 00:41:17,275 嘉兵衛の事は 一切知らん。 かけらも存じませぬちゅうての。 379 00:41:17,275 --> 00:41:20,178 ほんでのうては 商売もあがったりじゃ フフフフ…。 380 00:41:20,178 --> 00:41:22,947 ⚟ごめんなされ。 へい。 381 00:41:22,947 --> 00:41:26,284 ああ 帰りなはったかえ。 382 00:41:26,284 --> 00:41:28,619 兵庫の摩耶山に参ってきました。 383 00:41:28,619 --> 00:41:32,290 摩耶山に。 それは 信心深い事やなあ。 384 00:41:32,290 --> 00:41:35,193 ちゃんと おるようやな。 385 00:41:35,193 --> 00:41:37,161 何か? 386 00:41:37,161 --> 00:41:40,164 火つけをするんやないかと 噂があってな。 387 00:41:40,164 --> 00:41:44,302 こいさんが 心配で夜も寝られんと申して。 388 00:41:44,302 --> 00:41:48,973 (おらく) 火をつける? 嘉兵衛が? 播州はん。 389 00:41:48,973 --> 00:41:54,312 案じてるだけ。 こいさんは 今夜も寝んと 火の用心や。 390 00:41:54,312 --> 00:41:59,317 寝られんて 心配で。 ほな。 391 00:42:02,120 --> 00:42:08,259 なんぼなんでも 火つけとは…。 ひどい事を…。 392 00:42:08,259 --> 00:42:12,130 あほやなあ お前は。 393 00:42:12,130 --> 00:42:18,603 火をつけてほしいと言うてるんや おふささんは。 394 00:42:18,603 --> 00:42:21,305 えっ… ええ~? 395 00:42:23,274 --> 00:42:29,147 義叔父さん 無心があります。 396 00:42:29,147 --> 00:42:32,617 古い柄杓を1本ください。 397 00:42:32,617 --> 00:42:38,489 古い柄杓て… ぜぜやないのか? 嘉兵衛。 398 00:42:38,489 --> 00:42:43,628 柄杓というたら お伊勢さんの 抜け参りの印やないか。 399 00:42:43,628 --> 00:42:47,298 お前 どこぞへ消えるつもりか?➡ 400 00:42:47,298 --> 00:42:53,638 どこへ行く? 1年 辛抱が でけへんのか。 401 00:42:53,638 --> 00:42:56,307 義叔父と叔母と申しても➡ 402 00:42:56,307 --> 00:42:59,644 小さいころから お前を預かり 情も深うなり➡ 403 00:42:59,644 --> 00:43:02,246 あては お前の母親とも思うて! 404 00:43:02,246 --> 00:43:05,249 はよ 柄杓を持ってこい。 405 00:43:07,118 --> 00:43:09,120 はよせい! へい…。 406 00:43:16,260 --> 00:43:21,265 銭は要らんのか? はい。 407 00:43:23,134 --> 00:43:29,273 兵庫に わしの弟がおるのは 知っておるな? 408 00:43:29,273 --> 00:43:32,176 堺屋喜兵衛というてな➡ 409 00:43:32,176 --> 00:43:39,283 このたび 摩耶山に参ったあと 寄って お前の話は しといた。 410 00:43:39,283 --> 00:43:42,186 義叔父さん。 411 00:43:42,186 --> 00:43:45,156 心配すな。 412 00:43:45,156 --> 00:43:52,830 お前は…➡ 413 00:43:52,830 --> 00:43:59,137 お前は 男らしい 立派な ええ顔しとる。 414 00:44:01,239 --> 00:44:12,250 ほんまやで。 わしはな これでも 人相を見るんじゃ。 415 00:44:12,250 --> 00:44:19,924 嘉兵衛 出世して戻ってこい。 416 00:44:19,924 --> 00:44:23,227 いじめた みんな 見返したれ! 417 00:44:26,264 --> 00:44:31,602 決して 淡路を恨むなよ。 418 00:44:31,602 --> 00:44:34,272 はい。 419 00:44:34,272 --> 00:44:56,961 ♬~ 420 00:44:56,961 --> 00:45:10,274 (戸をたたく音) 421 00:45:45,276 --> 00:45:48,279 おふさ 来たぞ。 422 00:46:12,236 --> 00:46:17,108 何? それ。 抜け参りの姿やないの。 423 00:46:17,108 --> 00:46:21,245 そうや。 わしは 村を抜ける。 424 00:46:21,245 --> 00:46:24,148 一人で? 一人じゃ。 425 00:46:24,148 --> 00:46:26,917 何で うち 残して行くん? 426 00:46:26,917 --> 00:46:30,588 わしは貧しい。 貧しいゆえ➡ 427 00:46:30,588 --> 00:46:32,523 お前を食わしてやる事ができん。 428 00:46:32,523 --> 00:46:37,261 うちも働きます。 気遣い 要りまへん。 429 00:46:37,261 --> 00:46:42,133 わしはな 必ず お前を女房にする。 430 00:46:42,133 --> 00:46:46,270 ただ 夜這うて 遊びにきたわけじゃないんじゃ! 431 00:46:46,270 --> 00:46:48,205 おふさ! 432 00:46:48,205 --> 00:46:54,145 夫婦になる? 何を たわ言を! 433 00:46:54,145 --> 00:47:02,219 ♬~ 434 00:47:02,219 --> 00:47:05,923 ちょっと あんた もう。 ちょっと…。 435 00:47:08,092 --> 00:47:12,396 気を静めて 落ち着きなはれ。 436 00:47:15,232 --> 00:47:20,104 おふさ わしはな 北前船を持つぞ。 437 00:47:20,104 --> 00:47:25,242 そしてな 地の果てのオロシャにも船を出すぞ。 438 00:47:25,242 --> 00:47:30,114 わしは 日本人になる。 淡路の人は もうやめじゃ。 439 00:47:30,114 --> 00:47:35,252 日本人じゃ! 440 00:47:35,252 --> 00:47:38,155 なれるかのう? おふさ。 441 00:47:38,155 --> 00:47:45,596 お前様は 日本一の男じゃ。 日本一の日本人じゃ。 442 00:47:45,596 --> 00:47:48,265 おふさ! 443 00:47:48,265 --> 00:48:12,223 ♬~ 444 00:48:12,223 --> 00:48:14,225 ⚟お~い。 445 00:48:22,233 --> 00:48:24,235 これを持って行け。 446 00:48:40,251 --> 00:48:47,124 これは… おふさですか? 447 00:48:47,124 --> 00:48:52,129 どこぞなりと 好きな所へ消えたらええ。 448 00:48:58,269 --> 00:49:03,274 嘉兵衛! おふさを待つなよ。 449 00:49:08,078 --> 00:49:11,081 おふさ。 450 00:49:20,224 --> 00:49:51,188 ♬~ 451 00:49:51,188 --> 00:49:55,125 <嘉兵衛は いったん 浜へ逃げたあと 再び 本道に戻り➡ 452 00:49:55,125 --> 00:49:59,263 島の反対側の志筑を目指した。➡ 453 00:49:59,263 --> 00:50:04,268 西海岸の都志から東海岸の志筑まで4里> 454 00:50:21,285 --> 00:50:26,156 どうか どうか この淡路から 無事 逃れる事ができますよう➡ 455 00:50:26,156 --> 00:50:31,161 何とぞ 何とぞ お頼み申します。 456 00:50:41,305 --> 00:50:47,978 おふさ おふさ 頼んだぞ。 457 00:50:47,978 --> 00:50:50,281 おふさ。 458 00:51:01,258 --> 00:51:04,261 お~い! 待ってくれ~! 459 00:51:34,158 --> 00:51:38,162 嘉兵衛さんは 淡路を抜けたと 幸蔵さんが言うてはりました。 460 00:51:38,162 --> 00:51:40,297 ほんま? 461 00:51:40,297 --> 00:51:42,232 (播州はん) 志筑の浦で嘉兵衛さんに似た人が➡ 462 00:51:42,232 --> 00:51:45,169 船に乗るのを見たいうお人が いたいう話ですわ。 463 00:51:45,169 --> 00:51:47,972 やった~! やった やった~! 464 00:51:47,972 --> 00:51:52,276 おふさ 飯は静かに食え。 465 00:51:58,315 --> 00:52:03,320 おいしい! ややが出来てるとええのに フフフ…。 466 00:52:06,924 --> 00:52:10,260 <当時 兵庫は 北前航路により➡ 467 00:52:10,260 --> 00:52:14,131 日本有数の港町として繁栄していた> 468 00:52:14,131 --> 00:52:16,133 あっ 抜け参りや! 汚え! 469 00:52:16,133 --> 00:52:18,602 臭えぞ! うるせえ! 470 00:52:18,602 --> 00:52:20,938 逃げろ 逃げろ! うわ~! 471 00:52:20,938 --> 00:52:23,841 <和田屋喜十郎の弟 堺屋喜兵衛は➡ 472 00:52:23,841 --> 00:52:28,612 その兵庫の西出町に 小さな廻船問屋を持っている。➡ 473 00:52:28,612 --> 00:52:30,948 サトニラというあだ名が➡ 474 00:52:30,948 --> 00:52:34,284 淡路で育った子どものころから 付いていた。➡ 475 00:52:34,284 --> 00:52:38,589 サトニラとは 世間でいうラッキョウの事である> 476 00:52:41,158 --> 00:52:45,162 (喜兵衛)あの男は 何じゃ? さあ…。 477 00:52:54,304 --> 00:52:57,207 和田屋にいた嘉兵衛と申します。 478 00:52:57,207 --> 00:53:03,213 ああ… これ 彦助と相談して決めてくれ。 479 00:53:10,254 --> 00:53:12,923 湯屋が近くにある。 湯屋に行ってもらいたい。 480 00:53:12,923 --> 00:53:16,260 いやいや いやいや…! お前の風体が悪いというわけやない。 481 00:53:16,260 --> 00:53:19,930 この堺屋という家は 女房の貞代をはじめ➡ 482 00:53:19,930 --> 00:53:22,266 客も奉公人も 皆 伯耆者や。➡ 483 00:53:22,266 --> 00:53:24,201 淡路者が そのなりでは➡ 484 00:53:24,201 --> 00:53:27,905 どうにも困るんじゃ。はい。 485 00:53:29,606 --> 00:53:34,278 廻船問屋の「北風の湯」は えらいもんらしいのう。 486 00:53:34,278 --> 00:53:39,149 噂では えらいべっぴんの女子が ぎょうさんいて➡ 487 00:53:39,149 --> 00:53:43,287 何から何まで 世話をしてくれるそうじゃのう。 488 00:53:43,287 --> 00:53:47,157 酒も 飯も 極上らしい。 へえ…。 489 00:53:47,157 --> 00:53:50,160 北風荘右衛門様の湯に 入った事がおありで? 490 00:53:50,160 --> 00:53:53,931 いや。 私は 堺屋の人間なもので。 491 00:53:53,931 --> 00:53:57,301 堺屋… 堺屋 はて? 492 00:53:57,301 --> 00:54:04,108 ほれ あの ごっつい きつい 貞代という おかみのいる所やろ。 493 00:54:04,108 --> 00:54:11,815 ああ…! 昔 鳥取藩の家老の所で 上女中をしていたという。 494 00:54:11,815 --> 00:54:14,251 さあさあ どうぞ こっちでございます。 495 00:54:14,251 --> 00:54:16,186 堺屋は 伯耆者ばっかりです。 496 00:54:16,186 --> 00:54:21,125 たまに よその人が来ても なじむまで なかなか辛抱ができしまへん。 497 00:54:21,125 --> 00:54:23,127 それに…。 498 00:54:31,268 --> 00:54:34,171 ⚟おかみさん。 嘉兵衛さんを お連れしました。 499 00:54:34,171 --> 00:54:37,174 (貞代)そうか ご苦労さん。 500 00:54:48,285 --> 00:54:51,188 ⚟(貞代)お入り。 501 00:54:51,188 --> 00:54:53,190 はい。 502 00:55:03,233 --> 00:55:09,106 嘉兵衛と申します。 今後 よろしく お叱りを願わしゅうございます。 503 00:55:09,106 --> 00:55:13,110 どうぞ 中へ お入りなさい。 はい。 504 00:55:20,250 --> 00:55:23,253 障子を閉めてください。 はい。 505 00:55:26,123 --> 00:55:30,127 あっ 申し訳ございません。 506 00:55:32,829 --> 00:55:34,831 いいえ。 507 00:55:37,601 --> 00:55:41,271 嘉兵衛は 丁寧な物言いができるのですね。 508 00:55:41,271 --> 00:55:43,207 どこで習いました? 509 00:55:43,207 --> 00:55:46,143 父が いつも このように しゃべっておりました。 510 00:55:46,143 --> 00:55:50,280 父は 高田の本家から出ましたので➡ 511 00:55:50,280 --> 00:55:53,183 しゃべり方 作法は とても丁寧でした。 512 00:55:53,183 --> 00:55:57,955 それは よかったわ。 何で 村を出たんですか? 513 00:55:57,955 --> 00:56:00,257 水主になるためでございます。 514 00:56:07,231 --> 00:56:13,103 女子の事で 村を抜けたのではないんですか? 515 00:56:13,103 --> 00:56:16,240 網屋の おふささんという人の事は➡ 516 00:56:16,240 --> 00:56:21,111 淡路の都志から来る瓦船の人から 聞きました。 517 00:56:21,111 --> 00:56:26,250 奉公人の事は 何でも知っておかなければなりません。 518 00:56:26,250 --> 00:56:31,121 淡路を出るもとになったのは おふさの事でございますが➡ 519 00:56:31,121 --> 00:56:35,125 こちらに参りましたのは 水主になるためでございます。 520 00:56:47,271 --> 00:56:50,173 どうや? 挨拶は済んだか。 521 00:56:50,173 --> 00:56:54,144 若いのに 言う事に よどみがない事で。 522 00:56:54,144 --> 00:56:58,148 そうか 頭がええのや。 のう 嘉兵衛。 523 00:57:00,217 --> 00:57:04,087 何か お気に障ったのなら お許しください。 524 00:57:04,087 --> 00:57:09,092 何も…。 巾着を貸しなはれ。 525 00:57:20,237 --> 00:57:24,107 明日一日 兵庫を見物しておいでなさい。 526 00:57:24,107 --> 00:57:30,247 はい? 遊んでこいという事や。 527 00:57:30,247 --> 00:57:32,182 ありがとうございます。 528 00:57:32,182 --> 00:57:35,185 ほな ゆっくり休みなはれ。 529 00:57:37,120 --> 00:57:41,258 はい。 失礼いたします。 530 00:57:41,258 --> 00:57:53,270 ♬~ 531 00:57:53,270 --> 00:57:58,608 どうや あかんか? 油断のならん男ですね。 532 00:57:58,608 --> 00:58:03,213 そうかのう。 顔のせいじゃろ。 533 00:58:03,213 --> 00:58:07,084 鳥取藩の御用を勤める堺屋には➡ 534 00:58:07,084 --> 00:58:10,087 なるべく 土地の者を使うたほうがよいのです。 535 00:58:10,087 --> 00:58:16,226 まあな。 しかし 嘉兵衛は縁戚筋やからのう。 536 00:58:16,226 --> 00:58:22,099 あの銭を どう使うてくるのか それによって決めましょう。 537 00:58:22,099 --> 00:58:24,101 どう使えばええのや。 538 00:58:24,101 --> 00:58:27,571 あんさんには教えません。 539 00:58:27,571 --> 00:58:30,574 ♬~ 540 00:58:37,247 --> 00:58:40,150 (ざわめき) 541 00:58:40,150 --> 00:58:46,256 (松右衛門)わしの番や。 ついでもらおうか。 542 00:58:46,256 --> 00:58:51,962 大関の黒岩と 松右衛門はんが飲み比べや! 543 00:59:00,203 --> 00:59:03,106 北風荘右衛門いう人は…。 544 00:59:03,106 --> 00:59:07,077 荘右衛門はんか? あの人は えらい人やで。 545 00:59:07,077 --> 00:59:11,214 盆と正月にしか見られへん人やで。 546 00:59:11,214 --> 00:59:13,150 おお~! 547 00:59:13,150 --> 00:59:15,085 ⚟いいぞ いいぞ! 548 00:59:15,085 --> 00:59:22,225 どうや どうや。 今度は大関や。 まだまだ いくで。 549 00:59:22,225 --> 00:59:25,128 (黒岩)旦那 まいりました。 550 00:59:25,128 --> 00:59:30,100 何じゃ? それでも大関か? 飲め! 551 00:59:30,100 --> 00:59:33,236 明日 七宮明神で勧進相撲があるのじゃ。 552 00:59:33,236 --> 00:59:35,172 許してくれ。 553 00:59:35,172 --> 00:59:40,177 明神様に 酒臭い裸で 相撲見せるわけにはいかんからな。 554 00:59:43,246 --> 00:59:48,118 黒岩 相撲取りが敵に背中を見せるんか? 555 00:59:48,118 --> 00:59:53,123 あの人が 北風の旦那かい? そうや 北風の旦那様や。 556 00:59:55,258 --> 00:59:59,129 旦那が そうおっしゃるなら 死んでも飲まんわけにはいきまへん。 557 00:59:59,129 --> 01:00:01,131 もらいましょう。 558 01:00:01,131 --> 01:00:06,136 ハハハハ…! それでこそ 男というもんや。 559 01:00:09,272 --> 01:00:12,175 <北風荘右衛門のような男を➡ 560 01:00:12,175 --> 01:00:17,147 嘉兵衛は 今まで 一度たりとも見た事がなかった。➡ 561 01:00:17,147 --> 01:00:23,286 その存在感の大きさに ただただ圧倒されていた> 562 01:00:23,286 --> 01:00:30,160 ♬~ 563 01:00:30,160 --> 01:00:33,296 ハハハハ…! 564 01:00:33,296 --> 01:00:37,167 <金は 全部使ってやろうと思った。➡ 565 01:00:37,167 --> 01:00:41,171 貞代が気に入らないのは 自分の分別くささである。➡ 566 01:00:41,171 --> 01:00:44,908 幼いころから 他人の家の飯を食って育った自分に➡ 567 01:00:44,908 --> 01:00:48,311 苔のように くっついている分別。➡ 568 01:00:48,311 --> 01:00:52,182 それが 貞代には 何とも かわいくないのだろう> 569 01:00:52,182 --> 01:01:02,192 〽 (三味線) 570 01:01:12,269 --> 01:01:15,171 えらい ゆっくり 遊んできたもんやな。 571 01:01:15,171 --> 01:01:18,141 はい。 見るもの聞くもの 初めてのものばかりで➡ 572 01:01:18,141 --> 01:01:21,278 楽しくてたまらず 遅くなりました。 573 01:01:21,278 --> 01:01:23,213 すいません。 ただいま 帰りました。 574 01:01:23,213 --> 01:01:27,217 おかえり。 巾着は? はい。 575 01:01:32,289 --> 01:01:34,224 おや 空っぽやないか。 576 01:01:34,224 --> 01:01:37,227 はい。 受け取りは中に入っております。 577 01:01:45,302 --> 01:01:48,204 「おりき おたえ そめか」。 578 01:01:48,204 --> 01:01:51,174 これ 女子の名前ですか? 579 01:01:51,174 --> 01:01:56,646 はい。 その3人と ドンチャン騒ぎして➡ 580 01:01:56,646 --> 01:01:58,982 全部 使うてしまいました。 581 01:01:58,982 --> 01:02:02,852 全部 使うたって… 何やってんのや お前。 582 01:02:02,852 --> 01:02:05,255 おふささんに申し訳ないとは 思わんのですか? 583 01:02:05,255 --> 01:02:11,127 中途半端に使うと おかみさんに暇を出されると思うて➡ 584 01:02:11,127 --> 01:02:16,132 おふさに謝りながら 死ぬ気で遊びました。 585 01:02:18,268 --> 01:02:22,138 私が 中途半端は嫌いやと どうして分かりましたか? 586 01:02:22,138 --> 01:02:28,912 はい。 人の気持ちを分かり過ぎるのが 私の悪いところです。 587 01:02:28,912 --> 01:02:34,217 幼いころから 他人の飯を食うて 生きてきたものですから。 588 01:02:36,286 --> 01:02:44,294 嘉兵衛 明日は忙しい。 うちの船が帰ってくる。 はよ寝ろ。 589 01:02:47,297 --> 01:02:50,300 ここに置いてくださるんですか? 590 01:02:52,168 --> 01:02:56,640 遊んだ事 おふささんに言うたら どうする? 591 01:02:56,640 --> 01:03:02,245 堪忍してください! おふさのために… おふさのために死ぬ気で遊んだんです。 592 01:03:02,245 --> 01:03:08,118 おふさと一緒になりたいために どうしても ここに置いてもらうために。 593 01:03:08,118 --> 01:03:10,920 (笑い声) 594 01:03:10,920 --> 01:03:21,264 ♬~ 595 01:03:21,264 --> 01:03:28,271 <嘉兵衛の弟の嘉蔵は 3年前に兵庫に出て 堺屋の船に乗っていた> 596 01:03:32,275 --> 01:03:37,147 嘉蔵 力が強うなったのう。 危ないところやった。 597 01:03:37,147 --> 01:03:43,286 船は 力が要るんじゃ。 兄やん サトニラさんの息子達や。 598 01:03:43,286 --> 01:03:46,189 堺屋喜兵衛の惣領の彦助です。 599 01:03:46,189 --> 01:03:49,159 彦助の弟の 又蔵です。 600 01:03:49,159 --> 01:03:55,298 文五郎です。 頼んます。 末弟の 金蔵です。 601 01:03:55,298 --> 01:03:59,169 嘉兵衛と申します。 よろしく お頼み申します。 602 01:03:59,169 --> 01:04:02,906 ⚟お~い。 へい! 603 01:04:02,906 --> 01:04:07,243 (勘蔵)米俵の積み替えだ。 嘉兵衛さん 頼んだぞ。へい! 604 01:04:07,243 --> 01:04:14,250 ♬~ 605 01:04:20,256 --> 01:04:23,927 <巡礼姿に身をやつした おふさが 島を出たのは➡ 606 01:04:23,927 --> 01:04:27,230 秋風が立ち始めたころであった> 607 01:04:34,270 --> 01:04:38,141 こちらに 嘉兵衛さんというお方は…。 私です。 608 01:04:38,141 --> 01:04:41,144 船大工町の旅籠 みさき屋の者です。 609 01:04:41,144 --> 01:04:44,280 これを ことづかりました。 610 01:04:44,280 --> 01:04:46,282 ご苦労さまです。 611 01:04:53,289 --> 01:05:02,098 「やうやう 島を 出で来り候 今宵お越し下されたく ふさ」。 612 01:05:02,098 --> 01:05:16,513 ♬~ 613 01:05:16,513 --> 01:05:20,250 お前 何さらすんじゃ こら! 614 01:05:20,250 --> 01:05:24,120 ♬~ 615 01:05:24,120 --> 01:05:26,122 これで どうや! 616 01:05:26,122 --> 01:05:33,797 ♬~ 617 01:05:33,797 --> 01:05:38,268 旦那様! 旦那様! 一大事でございます! 旦那様…! 618 01:05:38,268 --> 01:05:40,603 まあまあ… 一体 どうしたの? 619 01:05:40,603 --> 01:05:44,274 どうした? 620 01:05:44,274 --> 01:05:49,145 「やうやう 島を 出で来り候」 何が 一大事じゃ。 621 01:05:49,145 --> 01:05:52,148 大事とは 主家にとっての事で言うもんじゃ。 622 01:05:52,148 --> 01:05:55,285 そのなりで 女子に会いに行くのですか? 623 01:05:55,285 --> 01:05:57,220 何です? そんなに ぬれて。 624 01:05:57,220 --> 01:06:00,123 若い水主に 水をかけてしまい けんかになりそうやったんで➡ 625 01:06:00,123 --> 01:06:02,559 自分で 水を浴びました。 何ですって? 626 01:06:02,559 --> 01:06:08,231 嘉兵衛 お前の性根が割れた。 たかが 女子で うろたえおって。 627 01:06:08,231 --> 01:06:10,166 今まで お前の器量を 推し量ってきたのは➡ 628 01:06:10,166 --> 01:06:13,102 いずれは 帆や舵として 使うてやろうと思うたからで➡ 629 01:06:13,102 --> 01:06:16,105 そやからこそ 無駄飯を食わせてきたんや。 630 01:06:16,105 --> 01:06:18,241 おふさは たかが女子ではありません。 631 01:06:18,241 --> 01:06:21,144 理屈を言うのか。 二世を 契ろうと契るまいと➡ 632 01:06:21,144 --> 01:06:24,113 そのような事で うろたえて ええかげんにせい! 633 01:06:24,113 --> 01:06:27,917 奉公に 気を抜くようなやつには 暇を出す。 634 01:06:27,917 --> 01:06:32,255 旦那様 それは…。 明日 伜達が伯耆に行く船に乗る。 635 01:06:32,255 --> 01:06:34,190 お前も 一緒に乗ってこい! はい? 636 01:06:34,190 --> 01:06:38,928 船に乗るのか おふさに乗るのか! サァ! 637 01:06:38,928 --> 01:06:42,265 サァ サァサァサァ! どうじゃ? 638 01:06:42,265 --> 01:06:45,168 あほ。 わしは真面目に怒ってんのや。 639 01:06:45,168 --> 01:06:47,604 ⚟こちらでございます。 さあ さあ どうぞ。 640 01:06:47,604 --> 01:06:49,906 お客様を お連れいたしました。 641 01:06:52,275 --> 01:06:55,178 まあ なんと かわいらしい。 642 01:06:55,178 --> 01:06:59,148 淡路国 津名郡 都志村 新在家より参りました。 643 01:06:59,148 --> 01:07:02,085 網屋の おふさと申します。 644 01:07:02,085 --> 01:07:05,221 何でや! 何でや! 何でや! 645 01:07:05,221 --> 01:07:09,092 わしは 今 大事な奉公中や! 何で来たんや! 646 01:07:09,092 --> 01:07:13,096 夜まで 我慢ができなくなりました。 647 01:07:17,233 --> 01:07:19,168 嘉兵衛! 648 01:07:19,168 --> 01:07:24,107 あの人 気が おかしなってる。 さあ! さあ こちらへ。 649 01:07:24,107 --> 01:07:26,242 ありがとうございます。 650 01:07:26,242 --> 01:07:30,113 嘉兵衛は まだ 船の事も知らぬ未熟者や。 651 01:07:30,113 --> 01:07:32,115 あんたと つきおうてる間はないで。 652 01:07:32,115 --> 01:07:37,854 はい。 うちも ここで働き口を探します。 大丈夫です。 653 01:07:37,854 --> 01:07:40,256 さあ 上がって休んでちょうだい。 654 01:07:40,256 --> 01:07:42,258 ありがとうございます。 655 01:07:44,127 --> 01:07:48,131 嘉兵衛 あんた 出て行くつもりか? 656 01:07:48,131 --> 01:07:51,267 なんの。 えっ? 657 01:07:51,267 --> 01:07:54,170 おふさ。 俺は 明日 船に乗る。 658 01:07:54,170 --> 01:07:57,140 これを お前と思うて 連れて行く。 659 01:07:57,140 --> 01:07:59,842 しばらく 辛抱していてくれ。 660 01:08:01,544 --> 01:08:07,216 うち 何でも あんたの 言うとおりにする。そうか。 661 01:08:07,216 --> 01:08:12,088 浜まで 一緒に行ったらええわ。 さあ 一緒に行きなはれ。 662 01:08:12,088 --> 01:08:15,091 ありがとうございます。 ありがとうございます。 663 01:08:15,091 --> 01:08:17,093 おふさ 行こう。 664 01:08:19,228 --> 01:08:21,230 あっ 草履 忘れた。 665 01:08:28,237 --> 01:08:30,239 ええ女子やのう。 666 01:08:34,110 --> 01:08:39,248 ♬~ 667 01:08:39,248 --> 01:08:42,151 明石の御番所で 偽の巡礼と疑われて➡ 668 01:08:42,151 --> 01:08:46,589 半刻も取り調べられたんや。 怖かった。 669 01:08:46,589 --> 01:08:49,258 ♬~ 670 01:08:49,258 --> 01:08:51,194 はよ 抱いて! はよ。 671 01:08:51,194 --> 01:08:58,267 ♬~ 672 01:08:58,267 --> 01:09:00,203 おふさ! 673 01:09:00,203 --> 01:09:13,216 ♬~ 674 01:09:13,216 --> 01:09:15,885 寒くないか? ううん。 675 01:09:15,885 --> 01:09:18,187 寒いやろ。 676 01:09:20,757 --> 01:09:25,461 冷たいやないか 冷たいやないか。 677 01:09:30,433 --> 01:09:32,435 あっ… でも 寒いやろ。 678 01:09:32,435 --> 01:09:36,205 いや わしは暑いんや! 暑いんや 暑いんや! 679 01:09:36,205 --> 01:09:38,908 おおきに。 680 01:09:38,908 --> 01:09:41,811 おふさ! えっ? おふさ! 681 01:09:41,811 --> 01:09:46,249 こい! よいしょ…。 682 01:09:46,249 --> 01:09:50,586 おふさ よう来たなあ! ああ~! 683 01:09:50,586 --> 01:09:53,489 よう来た よう来た よう来た よう来た よう来た~! 684 01:09:53,489 --> 01:09:57,260 (笑い声) 685 01:09:57,260 --> 01:10:12,275 〽 我と そなたは女夫星 必ず添うと すがり寄り 686 01:10:12,275 --> 01:10:37,300 〽 二人が中に 降る涙 海の水嵩も まさるべし 687 01:10:37,300 --> 01:10:40,203 (笑い声) 688 01:10:40,203 --> 01:10:43,206 おふさ~! 689 01:10:50,313 --> 01:10:52,982 自分の船を 自分の船を持つぜ! 690 01:10:52,982 --> 01:10:55,651 こんな所で 死んでたまるか! 691 01:10:55,651 --> 01:11:00,256 おっかあ! 夢の景色や。 692 01:11:00,256 --> 01:12:28,244 ♬~ 693 01:12:30,246 --> 01:12:36,152 ♬~ 694 01:12:36,152 --> 01:12:39,288 <ふるさとを見下ろす 小高い丘の上に➡ 695 01:12:39,288 --> 01:12:43,593 嘉兵衛は 今も ひっそりと眠っています> 696 01:12:48,965 --> 01:12:52,635 <瀬戸内海に浮かぶ 淡路島。➡ 697 01:12:52,635 --> 01:12:55,538 国生みの神話でも知られる この島に➡ 698 01:12:55,538 --> 01:12:57,974 嘉兵衛は生まれました> 699 01:12:57,974 --> 01:13:07,250 ♬~ 700 01:13:07,250 --> 01:13:11,921 <嘉兵衛の生まれた都志本村と 川を挟んだ反対側に➡ 701 01:13:11,921 --> 01:13:15,925 おふさの住んでいた新在家がありました> 702 01:13:19,262 --> 01:13:22,598 <晩年 淡路に戻った嘉兵衛は➡ 703 01:13:22,598 --> 01:13:25,935 港の修築や神社仏閣への寄進など➡ 704 01:13:25,935 --> 01:13:29,238 郷土の発展に尽くしました> 705 01:13:40,283 --> 01:13:42,618 <島の至る所で➡ 706 01:13:42,618 --> 01:13:48,291 嘉兵衛の業績をたたえる石碑や像を 見る事ができます。➡ 707 01:13:48,291 --> 01:13:53,996 海に生きる淡路の人々に 嘉兵衛は 今も愛されています>