1 00:00:01,235 --> 00:00:06,139 ♬~ 2 00:00:06,139 --> 00:00:11,612 よそ者が でかい面して 歩いてんちゃうぞ! 3 00:00:11,612 --> 00:00:14,948 (高田屋嘉兵衛)盗っ人と呼ばれて この島で 暮らしていけるかい! 4 00:00:14,948 --> 00:00:18,285 わしはな 北前船を持つぞ。 5 00:00:18,285 --> 00:00:21,622 そしてな 地の果てのオロシャにも船を出すぞ。 6 00:00:21,622 --> 00:00:23,557 あほ! 7 00:00:23,557 --> 00:00:26,493 どうか この淡路から 無事 逃れる事ができますよう…。 8 00:00:26,493 --> 00:00:29,963 (おふさ)お前様は 日本一の日本人じゃ。 9 00:00:29,963 --> 00:00:31,899 日本人になるんや! 10 00:00:31,899 --> 00:00:33,901 日本人じゃい! 宝船じゃい! 11 00:00:37,304 --> 00:00:42,976 <寛政元年 西暦1789年 フランス革命が起こったころ➡ 12 00:00:42,976 --> 00:00:47,848 江戸は 人口100万を超える 日本一の消費都市であった。➡ 13 00:00:47,848 --> 00:00:50,651 その江戸に必要な物資の多くは➡ 14 00:00:50,651 --> 00:00:52,586 経済の中心だった大坂から➡ 15 00:00:52,586 --> 00:00:54,521 船で運ばれた。➡ 16 00:00:54,521 --> 00:00:58,525 その船は 菱垣廻船 樽廻船と呼ばれ➡ 17 00:00:58,525 --> 00:01:01,261 北海道 東北の物資を 日本海まわりで➡ 18 00:01:01,261 --> 00:01:03,597 大坂へ運んだ北前船と並んで➡ 19 00:01:03,597 --> 00:01:05,899 海運の大動脈であった> 20 00:01:07,467 --> 00:01:11,939 <いずれの航路も 転覆や沈没の危険と 背中合わせではあったが➡ 21 00:01:11,939 --> 00:01:14,942 その航海の利益は莫大なものであった> 22 00:01:16,610 --> 00:01:20,280 <後に 日本一の大船団の頭領となった➡ 23 00:01:20,280 --> 00:01:22,616 高田屋嘉兵衛は このころ➡ 24 00:01:22,616 --> 00:01:25,919 二十歳を過ぎたばかりの若者であった> 25 00:01:28,956 --> 00:01:31,858 <嘉兵衛は 初めて千石船に乗った時から➡ 26 00:01:31,858 --> 00:01:34,628 その扱いを熟知していた。➡ 27 00:01:34,628 --> 00:01:39,333 まさに 船に乗るために生まれてきた男である> 28 00:01:43,303 --> 00:01:56,316 ♬~ (テーマ音楽) 29 00:01:56,316 --> 00:02:28,015 ♬~ 30 00:02:29,616 --> 00:02:34,955 海は いいのう! なんちゅう景色じゃい! 31 00:02:34,955 --> 00:02:36,957 ハハハハ…! 32 00:02:41,294 --> 00:02:45,999 陸では味わえん! うまいのう! 33 00:02:49,970 --> 00:02:51,905 (笑い声) 34 00:02:51,905 --> 00:02:55,308 (彦助)嘉兵衛さんは まっこと初めて 千石船に乗ったんかのう?へい…。 35 00:02:55,308 --> 00:02:59,646 へえ~…! それにしては 見事な帆さばきじゃのう。 36 00:02:59,646 --> 00:03:03,517 (又蔵)船が好きなんじゃろう。 まっこと楽しそうじゃわ。 37 00:03:03,517 --> 00:03:05,452 すんまへん…。 38 00:03:05,452 --> 00:03:09,456 瓦船のころは このような楽しさは ございませんでした。 39 00:03:09,456 --> 00:03:12,926 (嘉蔵)千石船と瓦船とは 似てるとこがあるか? 40 00:03:12,926 --> 00:03:15,829 そうやなあ…。 41 00:03:15,829 --> 00:03:19,800 同じ事じゃ! 船というのは 所詮 板や。 42 00:03:19,800 --> 00:03:23,937 その上に 人間が乗り 海の上を滑っていくだけの事じゃ。 43 00:03:23,937 --> 00:03:26,606 (金蔵)なるほどな。 ええ事 言うわな。 なあ? 44 00:03:26,606 --> 00:03:28,942 (文五郎)ほんまや! 飲んでや! 45 00:03:28,942 --> 00:03:34,648 (笑い声) 46 00:03:36,283 --> 00:03:40,620 <兵庫の湊には 北風という商人がいる。➡ 47 00:03:40,620 --> 00:03:43,957 荷主 船頭 水主など 身分を問わず➡ 48 00:03:43,957 --> 00:03:46,293 船に乗る者を大切にせよというのが➡ 49 00:03:46,293 --> 00:03:50,997 兵庫の代表的な廻船問屋である北風家の 家訓になっている> 50 00:03:53,633 --> 00:03:55,969 <兵庫の湊に入ると➡ 51 00:03:55,969 --> 00:03:59,639 たくさんの船乗り達が 北風家に やって来る。➡ 52 00:03:59,639 --> 00:04:04,344 風呂も 寝起きも 飲み食いも すべて タダだったからである> 53 00:04:07,447 --> 00:04:09,916 お~っとっとっとっ…! すんまへん! 54 00:04:09,916 --> 00:04:11,852 新入りか? はい。 55 00:04:11,852 --> 00:04:14,554 よろしゅうお願いします。頑張れよ! はい。 56 00:04:16,256 --> 00:04:20,127 <おふさは ここで働き始めた> 57 00:04:20,127 --> 00:04:23,597 (北風荘右衛門)淡路の都志の網元の娘の➡ 58 00:04:23,597 --> 00:04:26,500 おふささんですな。 59 00:04:26,500 --> 00:04:30,270 悪い虫が つかんよう 話を通しておきましょう。 60 00:04:30,270 --> 00:04:32,973 ありがとう存じます。 61 00:04:36,610 --> 00:04:41,481 これは 蝦夷の松前から 届いた知らせです。 62 00:04:41,481 --> 00:04:48,221 今年は 鮭が大漁やそうな。 …が 米がない。 63 00:04:48,221 --> 00:04:52,626 こっちから 今 米を運ぶと儲かりますね。 64 00:04:52,626 --> 00:04:58,498 その金で 鮭を持って帰れば もっと 銭になるという事ですね。 65 00:04:58,498 --> 00:05:03,570 もうじき 堺屋さんの新しい船が 出来上がる。 66 00:05:03,570 --> 00:05:09,910 その船で 米を運んだらええ。 行って帰って 千両近うなる。 67 00:05:09,910 --> 00:05:12,813 船代が浮きますわ。 68 00:05:12,813 --> 00:05:15,782 北風様も お人がお悪い。 うん? 69 00:05:15,782 --> 00:05:21,254 堺屋は 北前の商いができないのを ご存じでしょう? 70 00:05:21,254 --> 00:05:25,926 おお… そうやった そうやった。 71 00:05:25,926 --> 00:05:31,798 近頃 堺屋さんは 鳥取藩御用となって えらい景気やと聞いたんで➡ 72 00:05:31,798 --> 00:05:36,102 つい うっかり 株を持ってると思ってしもうた。 73 00:05:37,938 --> 00:05:42,609 このような 書付 全国から届くのですか? 74 00:05:42,609 --> 00:05:45,512 はい。 うちに泊まった船乗り達が➡ 75 00:05:45,512 --> 00:05:51,952 頼みもせんのに 商いの便りを よこしてきます。 76 00:05:51,952 --> 00:05:57,624 隠密を 全国に放ってると思われたら えらい事でございますね。 77 00:05:57,624 --> 00:06:03,230 そないな事 ご公儀は とっくに ご存じのはず。 78 00:06:03,230 --> 00:06:06,533 ハハハハ…! 79 00:06:13,240 --> 00:06:16,910 嘉兵衛さんは 算術を いつ覚えたのかのう? 80 00:06:16,910 --> 00:06:20,580 瓦船に乗ってる時に。 ほう…! 81 00:06:20,580 --> 00:06:24,918 大したもんやな。 わしは そっちのほうは からっきしや。 82 00:06:24,918 --> 00:06:28,922 嘉兵衛さんが来てくれて助かった。 ハハハ…! 83 00:06:31,591 --> 00:06:35,262 おふさ! 何で表から入る? はい。 84 00:06:35,262 --> 00:06:37,597 用があるなら裏へ回れ。 85 00:06:37,597 --> 00:06:40,934 船から降りても 会いに来てくれへんのやもん。 86 00:06:40,934 --> 00:06:42,936 忙しいんじゃ…。 87 00:06:44,804 --> 00:06:47,274 離さんかい! 88 00:06:47,274 --> 00:06:49,209 来たん? 89 00:06:49,209 --> 00:06:53,613 嘉兵衛 正月に 西宮に年賀に行ってくだされ。 90 00:06:53,613 --> 00:06:57,284 西宮? 新造の船の宝喜丸。 91 00:06:57,284 --> 00:07:01,888 西宮の廻船問屋の和泉屋に 預けるいう事になったそうや。➡ 92 00:07:01,888 --> 00:07:07,227 堺屋喜兵衛の代理の者として 挨拶をしてきておくれ。はい。 93 00:07:07,227 --> 00:07:10,130 親父は? この師走の大忙しの時期に➡ 94 00:07:10,130 --> 00:07:16,569 熱があるいうて…。 このごろ ちょっと 体 弱いな。 95 00:07:16,569 --> 00:07:19,239 袷と帯を買いなはれ。 はい。 96 00:07:19,239 --> 00:07:21,908 古着屋が まだ 店を開けてるでしょう。 97 00:07:21,908 --> 00:07:25,245 せっかくやから おふささんを連れてっておやり。 98 00:07:25,245 --> 00:07:28,581 年賀にでございますか? あほやなあ あんた。 99 00:07:28,581 --> 00:07:32,252 西宮の えびすさんにでも 連れてってやんなさい。 100 00:07:32,252 --> 00:07:34,921 ありがとうございます。 101 00:07:34,921 --> 00:07:36,923 ありがとうございます。 102 00:07:43,596 --> 00:07:50,270 お正月で お客が少のうて のんびり お湯にもつかれて よかったわ。 103 00:07:50,270 --> 00:07:55,275 おふさ うれしいか? はい。 104 00:07:56,943 --> 00:08:00,547 お前 乳が大きゅうなったのと違うか? 105 00:08:00,547 --> 00:08:03,883 はい。 ややが とまったみたい。 106 00:08:03,883 --> 00:08:08,755 そうか? ややが出来たか? はい。 107 00:08:08,755 --> 00:08:10,757 これで ほんまの夫婦やな。 108 00:08:10,757 --> 00:08:14,527 はよ 所帯が持ちたい。 所帯持つのに 銭は いくらかかる? 109 00:08:14,527 --> 00:08:18,431 うちが ちゃんといたします。 あなた様は はよ 船に慣れてください。 110 00:08:18,431 --> 00:08:20,900 船など もう とっくに慣れとるわ。 111 00:08:20,900 --> 00:08:25,572 皆がのう このわしは 生まれついての船乗りや言うてくれた。 112 00:08:25,572 --> 00:08:28,241 その顔で そんな事言うたら嫌われます。 113 00:08:28,241 --> 00:08:30,910 淡路と一緒で また損しますよ。 114 00:08:30,910 --> 00:08:35,248 その顔でとは 何や? この顔は 生まれつきや! 115 00:08:35,248 --> 00:08:37,183 フフフフ…! 116 00:08:37,183 --> 00:08:42,188 ややも この わしに そっくりやぞ! そっくりやぞ! 117 00:08:44,591 --> 00:08:47,494 <灘の酒を江戸に運ぶ樽廻船には➡ 118 00:08:47,494 --> 00:08:50,463 専門の廻船問屋があった。➡ 119 00:08:50,463 --> 00:08:54,768 西宮の和泉屋伊兵衛は その有力者である> 120 00:09:00,874 --> 00:09:03,176 こちらでございます。 121 00:09:10,550 --> 00:09:15,889 旦那様。 兵庫湊の堺屋さんの 嘉兵衛さんとおっしゃいます。 122 00:09:15,889 --> 00:09:18,792 お年賀のご挨拶に お越しくださいましたそうで。 123 00:09:18,792 --> 00:09:20,760 (伊兵衛)ああ そうか。 124 00:09:20,760 --> 00:09:25,899 嘉兵衛と申します。 以後 お見知りおきを。 125 00:09:25,899 --> 00:09:28,568 あれは どないなったんか? 126 00:09:28,568 --> 00:09:36,443 ♬~ 127 00:09:36,443 --> 00:09:40,580 嫌われたというて そんなに ぎょうさん飲む事ないのに…。 128 00:09:40,580 --> 00:09:44,250 ちくしょう! 和泉屋のじじい…! 129 00:09:44,250 --> 00:09:48,121 宝喜丸は 堺屋の船やからな。 130 00:09:48,121 --> 00:09:52,926 このわしが 積み荷の見張りに 送り込まれたんだと思ったんやろ。 131 00:09:52,926 --> 00:09:56,796 じろ~っと 嫌な目で見くさって…! 132 00:09:56,796 --> 00:09:59,599 ちくしょう! 133 00:09:59,599 --> 00:10:03,937 おふさ。 はい。 134 00:10:03,937 --> 00:10:10,610 今度の航海で いくら儲かると思う? さあ…。 135 00:10:10,610 --> 00:10:13,513 千両やぞ 千両! 136 00:10:13,513 --> 00:10:15,482 (鳴き声) 137 00:10:15,482 --> 00:10:18,952 うるせえ! 犬まで吠えるな! この野郎! 138 00:10:18,952 --> 00:10:22,622 冗談やない! 嘉兵衛は わしの名代や。 139 00:10:22,622 --> 00:10:25,291 親父。 和泉屋は 何と言うてきたん? 140 00:10:25,291 --> 00:10:28,628 「ああいう いかがわしい男を よこしてくれては困る」やと…。 141 00:10:28,628 --> 00:10:32,298 同心と悶着を起こして 相当 番所から言われたらしい。 142 00:10:32,298 --> 00:10:34,634 (飛脚) お返事をという事でございますが…。 143 00:10:34,634 --> 00:10:37,537 嘉兵衛は わしの名代や! 144 00:10:37,537 --> 00:10:40,240 そう伝えてくれ。 へい。 145 00:10:42,976 --> 00:10:46,312 旦那… あいすいません。 146 00:10:46,312 --> 00:10:51,184 堺屋を なめるもんやない。 宝喜丸は うちの持ち船や。 147 00:10:51,184 --> 00:10:54,988 酒以外の積み荷の半分は うちのもんや。 それを 偉そうに…! 148 00:10:54,988 --> 00:10:58,324 年賀の挨拶に行っても 言葉一つ かけなんだそうや。 149 00:10:58,324 --> 00:11:00,260 何やて?➡ 150 00:11:00,260 --> 00:11:02,595 ほんまか? 嘉兵衛。 へい…。 151 00:11:02,595 --> 00:11:06,466 今度 なめた態度見せたら 我慢する事はない。 怒ってええ! 152 00:11:06,466 --> 00:11:09,469 お前は わしの名代や。 153 00:11:09,469 --> 00:11:11,604 わしの沽券にも関わる。 154 00:11:11,604 --> 00:11:14,507 商いにも響くんや! あっ 痛っ…! 155 00:11:14,507 --> 00:11:18,278 親父! 旦那…! はよ 水や! 156 00:11:18,278 --> 00:11:23,283 いい…! ただ のぼせただけや。 大事ない 大事ない。 157 00:11:31,624 --> 00:11:35,295 よっ! 気をつけてな。 158 00:11:35,295 --> 00:11:37,630 ⚟嘉兵衛さん! 159 00:11:37,630 --> 00:11:40,967 おふさ…。 160 00:11:40,967 --> 00:11:44,637 昨日 和泉屋さんに 積み荷を見ていただきました。 161 00:11:44,637 --> 00:11:47,974 和泉屋さん 何と言うてた? 何も…。 162 00:11:47,974 --> 00:11:51,311 「ふん… これかい」言うて すぐにお帰りになられました。 163 00:11:51,311 --> 00:11:55,648 「ふん… これかい」やと? 旦那…。 164 00:11:55,648 --> 00:11:58,318 兵庫の堺屋を なめおって! 嘉兵衛! 165 00:11:58,318 --> 00:12:00,587 切手渡しには 絶対 一番を取れ! 166 00:12:00,587 --> 00:12:02,889 ええな? へい! 167 00:12:04,457 --> 00:12:06,926 切手渡しというのはな➡ 168 00:12:06,926 --> 00:12:11,264 江戸に発つ樽廻船の 出船の儀式の事でな。 169 00:12:11,264 --> 00:12:16,936 廻船問屋の旦那の切手を受け取って 沖の船に運ぶんじゃ。 170 00:12:16,936 --> 00:12:20,807 一人で艀を漕いで? ああ 一人じゃ。 171 00:12:20,807 --> 00:12:25,945 嘉兵衛さんに海で勝てる者はおらんわ。 そうか。 172 00:12:25,945 --> 00:12:30,617 おふさは いつも このわしを 信じておるな。はい。 173 00:12:30,617 --> 00:12:34,287 寒いか? ううん 温い。 174 00:12:34,287 --> 00:12:37,624 明日から春やわ。 175 00:12:37,624 --> 00:12:40,960 そうか そうか うん…! 176 00:12:40,960 --> 00:12:43,296 江戸へは どのぐらいかかるの? 177 00:12:43,296 --> 00:12:47,967 そうやな… 風や日和によって 随分 違うが➡ 178 00:12:47,967 --> 00:12:50,637 5日で行った者もあると聞く。 179 00:12:50,637 --> 00:12:54,974 じゃが 普通 半月は かかるよ。 180 00:12:54,974 --> 00:12:58,311 半月…。 うん。 181 00:12:58,311 --> 00:13:03,583 江戸の女子と遊ぶ? わしがか? 182 00:13:03,583 --> 00:13:08,288 銭がない。 銭があったら? 183 00:13:10,256 --> 00:13:12,959 遊んだら 怒るんか? 184 00:13:16,129 --> 00:13:21,834 うそじゃ。 遊ばんて。 遊んでもええ。 185 00:13:23,603 --> 00:13:25,938 ほんまか? 186 00:13:25,938 --> 00:13:29,809 遊ばんよ。 ええ。 けど➡ 187 00:13:29,809 --> 00:13:33,112 その女子に情を移したりしたら嫌や。 188 00:13:34,947 --> 00:13:40,820 おふさ。 お前 随分と怖い目をするのう。 189 00:13:40,820 --> 00:13:45,291 うち あんたが よその女子に情を移したりしたら➡ 190 00:13:45,291 --> 00:13:47,627 あんた殺して 死ぬ。 191 00:13:47,627 --> 00:13:52,298 あほ! それは こっちのせりふや! 192 00:13:52,298 --> 00:13:56,169 お前こそ このわしがいない間 身持ちを堅うしておれよ。 193 00:13:56,169 --> 00:14:00,106 ややがいて何ができる? あほや! 194 00:14:00,106 --> 00:14:03,910 何や? ややがおらんかったら するんか? 195 00:14:03,910 --> 00:14:07,246 北風の湯で ええ男にでも会うたんか! 196 00:14:07,246 --> 00:14:13,586 うるさい! 江戸で女子と遊ぶくせに! 銭がないわ! 197 00:14:13,586 --> 00:14:17,256 もう…! おふさ…。 198 00:14:17,256 --> 00:14:27,266 ♬~ 199 00:14:29,602 --> 00:14:36,275 <新酒の江戸一番乗りを競う樽廻船の事を 特に番船という。➡ 200 00:14:36,275 --> 00:14:43,149 荷初めの新酒ばかりは 縁起を祝い 江戸までの競走が行われるのである。➡ 201 00:14:43,149 --> 00:14:46,619 品川に 一番乗りした船には褒賞がある。➡ 202 00:14:46,619 --> 00:14:48,955 酒は 特に高く買い上げられ➡ 203 00:14:48,955 --> 00:14:52,291 その船についても 優勝した年 1年間は➡ 204 00:14:52,291 --> 00:14:58,164 品川 西宮での積み荷作業の優先権が 与えられる。➡ 205 00:14:58,164 --> 00:15:03,870 切手渡しは その番船の競走の開始を飾る行事である> 206 00:15:07,774 --> 00:15:10,243 嘉兵衛さん…。 207 00:15:10,243 --> 00:15:14,580 おお…! あの宝喜丸の男は 体は小さいが➡ 208 00:15:14,580 --> 00:15:17,250 肩と胸が まるで 衝立みたいやのう。 209 00:15:17,250 --> 00:15:20,586 うちの夫の嘉兵衛でございます。 210 00:15:20,586 --> 00:15:24,924 いや なんとも たくましい体じゃ。 ありがとうございます。 211 00:15:24,924 --> 00:15:28,227 ハハハハ…! おお 来た来た! 212 00:15:31,597 --> 00:15:36,602 おお…! 顔も凛々しゅうて ええがな! ありがとうございます。 213 00:15:46,612 --> 00:15:50,316 刻限でございます! 214 00:15:51,951 --> 00:15:56,656 (柝の音) 215 00:15:58,291 --> 00:16:27,453 ♬~ 216 00:16:27,453 --> 00:16:31,591 ええ勝負や! 嘉兵衛! 217 00:16:31,591 --> 00:16:48,140 ♬~ 218 00:16:48,140 --> 00:16:50,610 光ってる! 219 00:16:50,610 --> 00:17:08,895 ♬~ 220 00:17:08,895 --> 00:17:11,564 おお…! 221 00:17:11,564 --> 00:17:50,603 ♬~ 222 00:17:50,603 --> 00:17:55,274 よっしゃ~! 帆を上げろ! 223 00:17:55,274 --> 00:17:58,611 一番 宝喜丸! 224 00:17:58,611 --> 00:18:02,481 おお…! やりおったのう! 225 00:18:02,481 --> 00:18:04,784 やりおった! ハハハハ…! ハハハハ…! 226 00:18:06,419 --> 00:18:09,889 やっぱりや…。 227 00:18:09,889 --> 00:18:13,759 やっぱり 嘉兵衛さんは光ってる。 228 00:18:13,759 --> 00:18:43,055 ♬~ 229 00:18:45,257 --> 00:18:47,593 ⚟(重右衛門)嘉兵衛どん! へい! 230 00:18:47,593 --> 00:18:50,930 頼むで。 へい! 231 00:18:50,930 --> 00:18:57,803 この航海で 羅針盤で沖を走る沖乗りを 全部 覚えてしまうとええ。へい! 232 00:18:57,803 --> 00:19:01,874 わしは 二合の晩酌さえ飲めりゃ 何の欲もない男やが➡ 233 00:19:01,874 --> 00:19:04,777 船と航海だけには目がない。 234 00:19:04,777 --> 00:19:08,547 兵庫や西宮で わしに勝てる沖船頭はおらん! 235 00:19:08,547 --> 00:19:11,217 ハハハハ…! 236 00:19:11,217 --> 00:19:16,088 その わしから見て 嘉兵衛さん あんたは ええ船頭になる。 237 00:19:16,088 --> 00:19:18,090 きっと なると にらんだ。 238 00:19:18,090 --> 00:19:22,561 末は ひと航海で 三両 四両で雇われる沖船頭ではのうて➡ 239 00:19:22,561 --> 00:19:28,901 船を持つ直乗り船頭になれる男や。 ハハハハ…! 240 00:19:28,901 --> 00:19:31,804 命を懸けて海と暮らしてると➡ 241 00:19:31,804 --> 00:19:34,774 一目 見れば その男の価値は分かるようになる。 242 00:19:34,774 --> 00:19:38,244 駄目なやつは船には乗れん。 243 00:19:38,244 --> 00:19:45,584 そのうちの一番ええ男が 命を預かる船頭になる。 244 00:19:45,584 --> 00:19:48,287 ハハハハ…! 245 00:19:50,456 --> 00:19:53,259 (千蔵)面舵よう! 246 00:19:53,259 --> 00:19:57,596 面舵! 面舵! 247 00:19:57,596 --> 00:20:05,604 ♬~ 248 00:20:12,144 --> 00:20:14,146 おい! 喜べ。 249 00:20:14,146 --> 00:20:17,917 亭主の乗った宝喜丸が 一番で 品川 入ったぞ。 250 00:20:17,917 --> 00:20:20,286 宝喜丸が 一番ですか? おう! 251 00:20:20,286 --> 00:20:25,157 6日や。 6日でな 西宮から江戸まで突っ走ったそうや。 252 00:20:25,157 --> 00:20:27,626 よかったのう。 はい! 253 00:20:27,626 --> 00:20:31,297 おい みんな 宝喜丸が 一番やぞ! 254 00:20:31,297 --> 00:20:34,300 おお~…! さすがじゃのう! 255 00:20:35,968 --> 00:20:38,637 おせいさん。 あの方は どちらの? 256 00:20:38,637 --> 00:20:41,974 (おせい)松右衛門旦那は 廻船問屋の御影屋のご主人で➡ 257 00:20:41,974 --> 00:20:45,311 船の帆を作った人や。 船の帆を…? 258 00:20:45,311 --> 00:20:49,982 昔は 船の帆は莚やったんやて。 それを 今の布にした人や。 259 00:20:49,982 --> 00:20:54,653 へえ~! ああ見えて 頭がええんやね。 260 00:20:54,653 --> 00:20:57,990 さあ どんどん ついでもらおうか。 おお~…! 261 00:20:57,990 --> 00:20:59,992 ちょいちょい ちょいちょい…! 262 00:21:14,273 --> 00:21:17,977 帰ってきたで! 来たで 来たで! 263 00:21:19,612 --> 00:21:23,916 来たで! 来たで! はよ…! はよ はよ! 264 00:21:31,624 --> 00:21:35,961 おかえりなさい! おふさ! 265 00:21:35,961 --> 00:21:38,864 どういう事や? サトニラ様が➡ 266 00:21:38,864 --> 00:21:40,833 ややを産む家がないのは 不憫だとおっしゃって➡ 267 00:21:40,833 --> 00:21:44,537 買ってくれはりました。 ほんまか。 さあ さあ さあ。 268 00:21:49,308 --> 00:21:55,014 おふさ 布団敷け。 はよ…。 えっ? 269 00:21:56,649 --> 00:21:58,984 もう我慢できん! ああっ…! 270 00:21:58,984 --> 00:22:02,855 ⚟おふさ! わしはな 品川の廓にも行かなんだ。➡ 271 00:22:02,855 --> 00:22:06,258 お前が わしの子を 身ごもってると思うだけでな➡ 272 00:22:06,258 --> 00:22:08,928 必死で こらえたんじゃ。 ⚟ああ 駄目! ああ~…! 273 00:22:08,928 --> 00:22:11,263 おふさ! 困る! 困る…。 274 00:22:11,263 --> 00:22:14,266 何が困るんや? 困る! 275 00:22:18,604 --> 00:22:22,942 皆様が 新居のお祝いにとお越しになって…。 276 00:22:22,942 --> 00:22:24,944 何やて? 277 00:22:26,812 --> 00:22:30,115 なぜ それを はよ言わんのだ。 278 00:22:34,553 --> 00:22:36,555 ⚟ただいま帰りました。 279 00:22:39,291 --> 00:22:42,995 何や? 誰もいないやないか。 280 00:22:45,965 --> 00:22:48,267 何や? これ。 281 00:22:52,304 --> 00:22:54,240 「兄弟達より」…。 282 00:22:54,240 --> 00:22:59,178 ♬~ 283 00:22:59,178 --> 00:23:09,588 おふさ。 わしは 今日という日を決して忘れんぞ。 284 00:23:09,588 --> 00:23:14,893 決して忘れん。 はい。 285 00:23:17,463 --> 00:23:23,602 淡路では誰からも好かれんかったんや。 286 00:23:23,602 --> 00:23:28,474 じゃがな 海の上では みんな わしの事を➡ 287 00:23:28,474 --> 00:23:31,477 兄弟じゃ 兄弟じゃ 言うてくれてのう。 288 00:23:31,477 --> 00:23:35,948 ハハハハ…! 289 00:23:35,948 --> 00:23:40,286 立派な家や! ハハハハ…! 290 00:23:40,286 --> 00:23:49,962 ♬~ 291 00:23:49,962 --> 00:23:52,631 (かしわ手) 292 00:23:52,631 --> 00:24:05,577 ♬~ 293 00:24:05,577 --> 00:24:11,450 嘉兵衛さん 顔変わった。 そうか? 294 00:24:11,450 --> 00:24:15,921 ええ顔になったか? そうでもない。 295 00:24:15,921 --> 00:24:19,792 醜男は昔からや。 そうとも違う。 296 00:24:19,792 --> 00:24:25,264 どう変わったんや? 童離れした。 297 00:24:25,264 --> 00:24:27,566 童離れか…。 298 00:24:29,134 --> 00:24:36,608 そうかもしれんのう。 わしは 今度の航海で志を持った。 299 00:24:36,608 --> 00:24:39,511 志? うん。 300 00:24:39,511 --> 00:24:44,283 船は 海に浮かぶ 一枚の板切れにすぎん。 301 00:24:44,283 --> 00:24:49,154 その板の上に 陸とは違う別の世界を➡ 302 00:24:49,154 --> 00:24:53,292 自分なりに作れるかもしれんと思った。 303 00:24:53,292 --> 00:24:57,963 ♬~ 304 00:24:57,963 --> 00:25:06,572 海に浮かぶ 一枚の板切れに 陸とは違う別の世界を作る…。 305 00:25:06,572 --> 00:25:12,444 なんと まあ 大きな男になったもの。 306 00:25:12,444 --> 00:25:15,581 (笑い声) 307 00:25:15,581 --> 00:25:17,916 童離れか。 308 00:25:17,916 --> 00:25:25,591 確かに 菜の花を見ても さほど 淡路を恋しいとは思わん。 309 00:25:25,591 --> 00:25:29,895 ♬~ 310 00:25:39,138 --> 00:25:43,142 嘉兵衛さんは なぜ うちの湯に 入りに来なさらんのじゃ? 311 00:25:43,142 --> 00:25:46,278 えっ? 北風の湯に 入りに来なさらんと➡ 312 00:25:46,278 --> 00:25:49,615 偉い船乗りには なれまへん。 フフフフ…! 313 00:25:49,615 --> 00:25:56,321 毎日 嫁と一緒に行水かえ? ハハハハ…! 314 00:26:03,896 --> 00:26:10,569 おお 嘉兵衛 とうとう来たか。 重右衛門さん。 315 00:26:10,569 --> 00:26:14,239 何じゃい 怒ったような顔をして。 316 00:26:14,239 --> 00:26:18,577 わしはな 宝喜丸に乗って 海に出たいんです。 317 00:26:18,577 --> 00:26:22,247 船に乗りたいんです。 ハハハハ…! 318 00:26:22,247 --> 00:26:25,918 船など いくらでも乗れる。 319 00:26:25,918 --> 00:26:28,587 和泉屋の伊兵衛は欲張りや。 320 00:26:28,587 --> 00:26:33,926 宝喜丸に今度も お前が乗れば 和泉屋の荷の差配をする事になるやろ。 321 00:26:33,926 --> 00:26:37,262 それが嫌なんや。 ハハハ…!➡ 322 00:26:37,262 --> 00:26:41,600 お前ほどの男や 仕事は いくらでもある。 323 00:26:41,600 --> 00:26:44,269 嘉兵衛 この人はのう➡ 324 00:26:44,269 --> 00:26:49,141 帆さばきの名人と呼ばれる 宮越の平蔵どんじゃ。 325 00:26:49,141 --> 00:26:53,278 (平蔵)話は重右衛門さんから聞いた。 326 00:26:53,278 --> 00:26:56,181 若いのに ええ面構えじゃのう。 327 00:26:56,181 --> 00:26:58,617 帆さばきの名人でございますか? 328 00:26:58,617 --> 00:27:02,621 間切る時の帆の握り方を 教えてくださいますか。 329 00:27:05,224 --> 00:27:07,226 ちょっと すみません。 ああ。 330 00:27:12,898 --> 00:27:18,237 加賀の宮越の者。 但馬今子浦の者。 331 00:27:18,237 --> 00:27:24,109 越前三国湊の者。 越中伏木湊の者。 332 00:27:24,109 --> 00:27:30,249 出羽の酒田。 讃岐の塩飽。 333 00:27:30,249 --> 00:27:32,584 ここに座っとる者だけで➡ 334 00:27:32,584 --> 00:27:39,258 日本の海沿いの地図が描けるやろ。 なあ? ハハハハ…! 335 00:27:39,258 --> 00:27:41,593 さあさあ さあさあ。 ありがとうございます。 336 00:27:41,593 --> 00:27:45,264 わしは 御影の松右衛門や。 337 00:27:45,264 --> 00:27:48,600 存じ上げております。 おお…! 何で知っとる? 338 00:27:48,600 --> 00:27:51,937 以前 相撲の黒岩関と 酒の飲み比べをしているところを➡ 339 00:27:51,937 --> 00:27:54,606 見た事がありました。 ハハハ…! 340 00:27:54,606 --> 00:27:58,477 わしは大ばか者でのう。 ハハハハ…! 341 00:27:58,477 --> 00:28:02,214 お前は海が好きか? はい。 342 00:28:02,214 --> 00:28:04,883 いくつや? 23です。 343 00:28:04,883 --> 00:28:10,222 ほう…! 羨ましいのう 重右衛門さん。 はい はい はい。 344 00:28:10,222 --> 00:28:15,093 お前も 今に自分の船持ってな 北へ行けよ。 345 00:28:15,093 --> 00:28:19,231 男なれば 北前行きの商いをすべきじゃ。 346 00:28:19,231 --> 00:28:25,904 私は まだ駆け出しでございます。 あほ! 347 00:28:25,904 --> 00:28:29,775 お前が 北前の男になって 堺屋さん 引っ張ってやるんじゃ! 348 00:28:29,775 --> 00:28:33,779 喜兵衛さんも 因州様から名字などもろうて➡ 349 00:28:33,779 --> 00:28:38,917 本業の商いもできんと 今に お前 先細りや。 350 00:28:38,917 --> 00:28:44,790 私は 船を持つどころか 乗せてくれる船もありません。 351 00:28:44,790 --> 00:28:51,496 よし! 今からすぐに 長崎へ行け。 長崎でございますか? 352 00:28:51,496 --> 00:28:54,933 今日 わしの船が長崎へ出る。 それに乗っていけ。 353 00:28:54,933 --> 00:28:58,270 銭は海から湧いてくるて。 354 00:28:58,270 --> 00:29:03,542 「銭は海から湧いてくる」…。 そうや。 355 00:29:03,542 --> 00:29:05,477 おふさ! はい。 356 00:29:05,477 --> 00:29:08,213 わしは 今日 長崎へ行っても よいかの? おいおい…! 357 00:29:08,213 --> 00:29:13,085 あほか? お前は。 いちいち 女房に 相談するか そんな事を。 358 00:29:13,085 --> 00:29:16,888 いや 私は 全部 おふさに聞いて決めております。 359 00:29:16,888 --> 00:29:20,559 なんと… なんと この顔でか? 360 00:29:20,559 --> 00:29:30,268 (笑い声) 361 00:29:33,572 --> 00:29:43,248 ♬~ 362 00:29:43,248 --> 00:29:46,151 <生まれて初めて長崎に行った嘉兵衛は➡ 363 00:29:46,151 --> 00:29:49,154 ひとつきたっても帰ってこなかった> 364 00:29:50,922 --> 00:29:57,796 「嘉兵衛 恋しや 潮路の果てに 届けおふさの胸の内」。 365 00:29:57,796 --> 00:30:02,934 からかうもんやないぞ。 おふささんは身重なんじゃ。 366 00:30:02,934 --> 00:30:07,606 (貞代)船乗りの女房は 皆 寂しいもんや。 367 00:30:07,606 --> 00:30:10,275 はい。 368 00:30:10,275 --> 00:30:12,944 嘉兵衛は いずれ 船の名人になるぞ。 369 00:30:12,944 --> 00:30:17,616 わしは 事あるごとに 兵庫じゅうに そう言うて回っておるのじゃ。 370 00:30:17,616 --> 00:30:20,952 おおきに。 ありがとうございます。 371 00:30:20,952 --> 00:30:28,293 私の子達は 皆 船が下手で 堺屋の先は 嘉兵衛に かかってるのよ。 372 00:30:28,293 --> 00:30:30,962 そうじゃ。 373 00:30:30,962 --> 00:30:35,834 堺屋は船が下手だと さんざん 陰口をたたかれているが➡ 374 00:30:35,834 --> 00:30:40,305 今に見ておれよ! ハハハハ…!➡ 375 00:30:40,305 --> 00:30:43,208 わしは長崎に行った事がない。➡ 376 00:30:43,208 --> 00:30:46,645 あそこには 大きなオランダ船が入ってくる。➡ 377 00:30:46,645 --> 00:30:50,982 嘉兵衛は見たのかのう。 はい。 見たそうです。 378 00:30:50,982 --> 00:30:55,854 ああ…! そうか。 オランダ船は 八千石もあるそうです。 379 00:30:55,854 --> 00:31:01,259 なんと…! 八千石か。 すさまじいのう。 380 00:31:01,259 --> 00:31:05,597 船底は 船食虫を防ぐために 薄い銅板で覆われていて➡ 381 00:31:05,597 --> 00:31:09,468 大砲は 三十ぐらいあるそうですわ。 なんと…! 382 00:31:09,468 --> 00:31:13,271 商いの船も大砲を積んでおるのか? はい。 383 00:31:13,271 --> 00:31:17,142 そういう大きな船で異国へ行ってみたいと 書いてありました。 384 00:31:17,142 --> 00:31:19,945 異国!? 385 00:31:19,945 --> 00:31:24,616 異国へ行くなどと そんな 御禁制に触れるような事を…。 386 00:31:24,616 --> 00:31:28,954 あんた 嘉兵衛が 異国へ行こうと言ったら ついて行くやろ? 387 00:31:28,954 --> 00:31:30,956 はい。 388 00:31:39,598 --> 00:31:41,600 嘉兵衛さん? 389 00:31:47,973 --> 00:31:49,975 お父っつぁん…。 390 00:32:01,253 --> 00:32:06,124 こいさん! まあ まあ ややですか? 391 00:32:06,124 --> 00:32:08,126 播州はん…。 392 00:32:08,126 --> 00:32:12,264 網屋のこいさんが こんな小さな家で ややを産むんでっか。➡ 393 00:32:12,264 --> 00:32:14,566 健気なこって…。 394 00:32:18,603 --> 00:32:21,506 旦那はん? (幾右衛門)去ぬ。 395 00:32:21,506 --> 00:32:25,944 去ぬって…。 わては どないしたら よろしい? 396 00:32:25,944 --> 00:32:28,280 見てみなはりまっせ このおなか。 397 00:32:28,280 --> 00:32:31,183 もうじき産まれるのに帰れますか? 398 00:32:31,183 --> 00:32:36,154 お前みたいな者は もう 親でもなければ子でもない! 399 00:32:36,154 --> 00:32:39,624 嘉兵衛さんは 兵庫でも評判の船乗りになってます。 400 00:32:39,624 --> 00:32:41,927 知らん! 401 00:32:46,298 --> 00:32:50,635 播州はん あんたも去んで。 いいえ! 402 00:32:50,635 --> 00:32:55,507 帰って。 うちは 一人で ややを産みたい。 403 00:32:55,507 --> 00:32:58,310 誰の助けも欲しゅうない。 404 00:32:58,310 --> 00:33:01,580 一人で淡路を出てきたんやから。 405 00:33:01,580 --> 00:33:07,285 播州 お前はん 残りたかったら 残ったらええ。 406 00:33:08,920 --> 00:33:11,623 わしは 一人で淡路へ帰る。 407 00:33:25,270 --> 00:33:32,277 (せみの鳴き声) 408 00:33:34,946 --> 00:33:36,882 こちらでございます。 409 00:33:36,882 --> 00:33:39,284 (松右衛門)おお 嘉兵衛! 410 00:33:39,284 --> 00:33:41,219 ただいま戻りました。 411 00:33:41,219 --> 00:33:44,155 どうやった? 長崎は。 オランダ船を見たか? 412 00:33:44,155 --> 00:33:46,958 あのような大きな船を見るのは 初めてでございます。 413 00:33:46,958 --> 00:33:48,894 八千石 ありました。 414 00:33:48,894 --> 00:33:53,298 驚く事はない。 世界には 二万石の船があるというぞ。 415 00:33:53,298 --> 00:33:56,601 二万石でございますか。 まあまあ 座って飲め。 416 00:33:58,169 --> 00:34:01,573 そのような大きな船を 造ってみたいもんでございます。 417 00:34:01,573 --> 00:34:03,909 恐ろしい事を言うなあ。 418 00:34:03,909 --> 00:34:09,781 西国の大名でも 五百石以上の軍船は造れんて。 419 00:34:09,781 --> 00:34:13,251 ご公儀のお達しで そうなっとる。 存じてます。 420 00:34:13,251 --> 00:34:18,123 しかし 夢物語を語るのは…。 そりゃ かまわん。 421 00:34:18,123 --> 00:34:21,593 オランダ船は とても大きく 立派な船でございますが➡ 422 00:34:21,593 --> 00:34:24,496 あれは 船首の形が よくありません。 423 00:34:24,496 --> 00:34:27,933 和船のように 波切りのよい形をしておりません。 424 00:34:27,933 --> 00:34:31,603 和船は 波切りがよく 波をかぶりにくい。 425 00:34:31,603 --> 00:34:35,941 ただし オランダ船は 帆の数が多く たとえ 舵が小さくても➡ 426 00:34:35,941 --> 00:34:40,612 帆を さまざまに動かしていけば 方向を自由に変えていけます。 427 00:34:40,612 --> 00:34:44,282 和船とオランダ船の長所を探り➡ 428 00:34:44,282 --> 00:34:49,955 使い勝手のええ最高の船を造れたら…。 なるほどなあ。 429 00:34:49,955 --> 00:34:53,625 ハハハハ…! ハハハハ…! そうか! 430 00:34:53,625 --> 00:35:01,232 ♬~ 431 00:35:01,232 --> 00:35:06,571 お前は 運がええぞ。 北風様や 引き合わせてやろう。 432 00:35:06,571 --> 00:35:09,474 あっ 荘右衛門様 この人は…。 433 00:35:09,474 --> 00:35:15,246 嘉兵衛さんですな。 北風荘右衛門です。 434 00:35:15,246 --> 00:35:18,583 (松右衛門) おお… びっくりしてしもうたな。 435 00:35:18,583 --> 00:35:21,920 手を上げて座りなさい。 めっそうもない…! 436 00:35:21,920 --> 00:35:24,255 かまへん。 さあ さあ さあ 座りなさい。 437 00:35:24,255 --> 00:35:28,560 同じ海の仲間やないか。 ハハハハ…! 438 00:35:31,596 --> 00:35:37,268 今 帰ったのは ある大名の御重役です。 439 00:35:37,268 --> 00:35:42,607 わしに ぜひ 扶持取りになれと 言うてきたんやが断った。 440 00:35:42,607 --> 00:35:46,478 武士になったところで 銭が儲かるわけやない。 441 00:35:46,478 --> 00:35:53,618 逆に 大名に 安う使われて 自由に商いができんようになる。 442 00:35:53,618 --> 00:35:59,290 わしは あなたの主の堺屋さんに ものを言うとるのではありませんよ。 443 00:35:59,290 --> 00:36:07,565 ただ 商人は 海の男は 独立不羈でのうてはいかん。 444 00:36:07,565 --> 00:36:10,235 独立不羈…。 445 00:36:10,235 --> 00:36:14,906 何事にもへつらわず 恐れぬという事や。 446 00:36:14,906 --> 00:36:19,577 嘉兵衛さんは そういう顔をしてるな。 447 00:36:19,577 --> 00:36:23,281 顔は 生まれつきでございます。 448 00:36:24,916 --> 00:36:29,587 長崎で おふささんの土産に何を買いました? 449 00:36:29,587 --> 00:36:31,523 鰹節を買うてまいりました。 450 00:36:31,523 --> 00:36:33,458 鰹節って…。 451 00:36:33,458 --> 00:36:38,263 子どもの産まれた女房に鰹節って お前 おふさは猫やないぞ。 452 00:36:38,263 --> 00:36:45,603 長崎やったらビードロとか南蛮の布とか 女子の喜ぶもの ぎょうさんあるやろが。 453 00:36:45,603 --> 00:36:48,506 子どもが産まれたと申されますと➡ 454 00:36:48,506 --> 00:36:51,476 私の子でございますか? そうや。 455 00:36:51,476 --> 00:36:54,946 もう ひとつきも前じゃ。 知らんのか? 456 00:36:54,946 --> 00:37:00,218 北風様 松右衛門様。 今日は これにて失礼いたします! 457 00:37:00,218 --> 00:37:02,554 おい! おいおい! 458 00:37:02,554 --> 00:37:07,425 船乗りが あれでは いかん。 今度会うたら 意見してやろう。 459 00:37:07,425 --> 00:37:10,228 鰹節を買うてきたのか。 460 00:37:10,228 --> 00:37:14,566 鰹節って この町に なんぼでもあるものを。 461 00:37:14,566 --> 00:37:20,438 海の事しか頭にないのやろう。 462 00:37:20,438 --> 00:37:23,742 えらい気に入った。 463 00:37:30,115 --> 00:37:33,585 おふさ! おふさ! ただいま帰ったで…。 464 00:37:33,585 --> 00:37:36,488 おふさ! おふさ! (金兵衛)兄やん! 465 00:37:36,488 --> 00:37:39,257 お前 何しに来たんや? 兄やん! 466 00:37:39,257 --> 00:37:41,192 おう…! どっちや? どっちや? 467 00:37:41,192 --> 00:37:44,129 男の子です…。 先月の末に 産まれました。 468 00:37:44,129 --> 00:37:48,266 そうか そうか 男の子か…。 469 00:37:48,266 --> 00:37:52,937 かわいいのう かわいいのう…。 おふさ! おふさ! 470 00:37:52,937 --> 00:37:57,609 おかえりなさい。 ようやった… ようやったのう。 471 00:37:57,609 --> 00:38:02,213 男の子や 男の子や! ハハハ…! 472 00:38:02,213 --> 00:38:05,550 何や… 元気がないのう。 473 00:38:05,550 --> 00:38:07,886 十月十日 たたんうちに産まれたので➡ 474 00:38:07,886 --> 00:38:10,789 こいさんの体も それだけの準備が できてなかったんやろ。 475 00:38:10,789 --> 00:38:13,224 そうか そうか…。 けどな➡ 476 00:38:13,224 --> 00:38:15,560 わてが毎日のように ちょぼ汁 作っていますさかい➡ 477 00:38:15,560 --> 00:38:18,463 すっかり お元気にならはりました。 ご苦労やったの。 478 00:38:18,463 --> 00:38:21,232 播州はんが居てくれはって 助かりました。 479 00:38:21,232 --> 00:38:27,238 何を おっしゃいます。 堺屋のおかみも ようしてくれはりました。 480 00:38:30,575 --> 00:38:32,911 金兵衛…。 481 00:38:32,911 --> 00:38:36,781 お前 何しに来たんや? 何しにって 兄やん…。 482 00:38:36,781 --> 00:38:40,785 わしも 船に乗りたい! そうか… 乗れ! 483 00:38:40,785 --> 00:38:43,555 (播州はん)嘉兵衛はん ややの名前を付けてもらわんと…。 484 00:38:43,555 --> 00:38:47,258 おふさ これを見てくれ。 邪魔や…! 485 00:38:50,261 --> 00:38:52,931 うわ~! こんな ぎょうさんの鰹節 どうしたんだ? 486 00:38:52,931 --> 00:38:54,933 長崎で買うたんや。 487 00:38:57,268 --> 00:38:59,204 (たたく音) 488 00:38:59,204 --> 00:39:02,540 どうや? 樫の木のように冴えてるやろ。 489 00:39:02,540 --> 00:39:06,878 これが 天下の土佐節じゃ。 これを わざわざ 長崎で? 490 00:39:06,878 --> 00:39:09,214 悪いか? いいえ…。 491 00:39:09,214 --> 00:39:11,149 これがな 熊野節じゃ。 492 00:39:11,149 --> 00:39:14,552 カビ付けの具合は どうや? 触ってみ。 493 00:39:14,552 --> 00:39:20,425 これは 形は悪いが 味は 土佐にも熊野にも劣らん薩摩節じゃ。 494 00:39:20,425 --> 00:39:24,896 嘉兵衛はん! ややこ 放り出して 鰹節 抱いて どういう事です? 495 00:39:24,896 --> 00:39:26,831 黙っとってくれ! 496 00:39:26,831 --> 00:39:32,237 おふさ わしはな この鰹で 自分の船を持とうと思ったんや。 497 00:39:32,237 --> 00:39:36,574 松右衛門さんは 「銭は海から湧いてくる」と申された。 498 00:39:36,574 --> 00:39:42,247 あの人は 海からの風を受けた船の帆で 今日の財を作った。 499 00:39:42,247 --> 00:39:47,919 わしも 海の魚で自分の船を持とうと思ったんや。 500 00:39:47,919 --> 00:39:51,789 鰹は この辺りじゃと 熊野の沖を通る。 そこを狙うんじゃ。 501 00:39:51,789 --> 00:39:53,791 (播州はん)また その話ですか。➡ 502 00:39:53,791 --> 00:39:57,262 女子が命を懸けて ややを産んだというのに。➡ 503 00:39:57,262 --> 00:40:00,932 まったく なんちゅう男やろ…! こういう人なのです。 504 00:40:00,932 --> 00:40:04,269 この人こそが ややなのです。 そのとおりや! 505 00:40:04,269 --> 00:40:09,607 おふさ わしはな 自分の船を… 自分の船を持つぜ! 506 00:40:09,607 --> 00:40:15,280 男の子も出来た。 ハハハ…! かわいいのう。 507 00:40:15,280 --> 00:40:21,152 おふさ わしは 必ず 船持ちになってみせる! 508 00:40:21,152 --> 00:40:31,863 ♬~ 509 00:40:36,567 --> 00:40:41,272 こんばんは。 文五郎さん 里吉さん 今日 長崎表から戻りました。 510 00:40:43,308 --> 00:40:47,979 親父なら 奥で ふせってるで。 ふせってるというと 病ですか? 511 00:40:47,979 --> 00:40:50,682 (里吉)そら カ~ッと しますがな…。 512 00:40:56,321 --> 00:40:58,323 嘉兵衛です。 513 00:41:01,159 --> 00:41:06,164 (嘉蔵)兄やん! あんまりじゃ! 何が…? 514 00:41:08,599 --> 00:41:16,274 おっ 皆さん おそろいで。 何や しけた面して…。 515 00:41:16,274 --> 00:41:19,610 旦那はん… お体 悪いんですか? 516 00:41:19,610 --> 00:41:22,280 やかましい! アチッ! アチッチ…! 517 00:41:22,280 --> 00:41:27,285 旦那! アチッ! アチチ…! アチチッ…! アチアチッ…! 518 00:41:31,956 --> 00:41:34,292 旦那 お背中… 大丈夫ですか? 519 00:41:34,292 --> 00:41:39,297 お前こそ 指は どうや? やけど せなんだか? 520 00:41:41,966 --> 00:41:44,669 旦那…。 521 00:41:49,640 --> 00:41:55,513 堺屋は わし一代や…。 522 00:41:55,513 --> 00:41:59,317 お前がいてくれたら いつか きっと➡ 523 00:41:59,317 --> 00:42:04,922 「堺屋の船下手」という陰口も のうなるやろうと思うていたが…。 524 00:42:04,922 --> 00:42:08,259 旦那 それは 何ですか? 525 00:42:08,259 --> 00:42:13,931 嘉兵衛さん 和泉屋が お前様を 宝喜丸の沖船頭にと言うてきた。➡ 526 00:42:13,931 --> 00:42:19,270 ただし 堺屋から暇をとるという条件で…。 527 00:42:19,270 --> 00:42:24,142 (又蔵)あんた そういうふうに 和泉屋と話 したんか?いや。 528 00:42:24,142 --> 00:42:28,279 俺達と 一緒の船で過ごした事を 忘れたわけではないんやろな? 529 00:42:28,279 --> 00:42:31,949 この どあほ! わしが そないな男と思っとるのか! 530 00:42:31,949 --> 00:42:36,621 兄やん でもよ 和泉屋が そう言うてきたのは ほんまや。 531 00:42:36,621 --> 00:42:42,493 あほ! 何で わしが 堺屋を辞めて 和泉屋の沖船頭なんぞになるかい! 532 00:42:42,493 --> 00:42:44,495 あほも休み休み言え! 533 00:42:44,495 --> 00:42:49,200 ほんまか? 沖船頭を諦めると 言うてくれるのか? 534 00:42:49,200 --> 00:42:53,971 旦那はん わしが そないな 恩知らずだと思うておられるんですか? 535 00:42:53,971 --> 00:42:58,309 思うてない 思うてない…。 536 00:42:58,309 --> 00:43:00,578 ややの名前 付けましたか? 537 00:43:00,578 --> 00:43:04,449 はい 弥吉と。 「弥吉」…? 538 00:43:04,449 --> 00:43:08,453 はい。 亡くなった父の名前をもらいました。 539 00:43:10,588 --> 00:43:16,294 子を産む時には お世話になったそうで…。 ありがとうございます。 540 00:43:19,597 --> 00:43:23,468 北風はんも 松右衛門さんも いいえ…➡ 541 00:43:23,468 --> 00:43:27,271 兵庫じゅうの廻船問屋の旦那衆が 皆➡ 542 00:43:27,271 --> 00:43:31,142 あなたの事を見ていらっしゃるのは 分かってますか? 543 00:43:31,142 --> 00:43:33,144 湊が栄えるかどうかは➡ 544 00:43:33,144 --> 00:43:37,915 船のよしあし 商いのよしあしではないんです。 545 00:43:37,915 --> 00:43:40,618 船乗りです。 546 00:43:40,618 --> 00:43:45,289 船乗り…? そうです。 547 00:43:45,289 --> 00:43:49,160 よい船乗りがいたら 湊は栄える…。 548 00:43:49,160 --> 00:43:54,632 荷主が 安心して荷物を託せますのや。 549 00:43:54,632 --> 00:43:59,937 そういう船乗りを育てん事には 兵庫湊の先はない…。 550 00:44:04,242 --> 00:44:09,580 おふさに 子が生まれたとか 家や船を持ちたいとか➡ 551 00:44:09,580 --> 00:44:12,483 そういう小さい話ではなく➡ 552 00:44:12,483 --> 00:44:19,257 兵庫湊 西宮湊 すべての行く末は➡ 553 00:44:19,257 --> 00:44:23,261 たった一人の大きな船乗りを 作れるかどうか。 554 00:44:30,268 --> 00:44:36,941 あんた 人さんに 正直にならんでもええ…。 555 00:44:36,941 --> 00:44:40,278 海に 正直になれとおっしゃるんですか? 556 00:44:40,278 --> 00:44:59,297 ♬~ 557 00:44:59,297 --> 00:45:07,572 私は ガキのころ 毎日 海ばかりを見ておりました。 558 00:45:07,572 --> 00:45:11,442 何もない汚いガキのころ➡ 559 00:45:11,442 --> 00:45:17,582 海ならば 誰にも いじめられず➡ 560 00:45:17,582 --> 00:45:21,252 どこへでも好きな所に行けると 思うておりました。 561 00:45:21,252 --> 00:45:31,896 ♬~ 562 00:45:31,896 --> 00:45:40,271 旦那様 お許しくださいませ。 563 00:45:40,271 --> 00:45:45,276 どうか 私を 宝喜丸の沖船頭にならせてくださりませ。 564 00:45:47,144 --> 00:45:54,285 きっと 立派な船頭になって ご恩返しをいたします。 565 00:45:54,285 --> 00:45:56,220 このとおりです。 566 00:45:56,220 --> 00:46:03,561 ♬~ 567 00:46:03,561 --> 00:46:09,233 ああ そうせい。➡ 568 00:46:09,233 --> 00:46:14,105 兵庫湊のためやと言われたら 何も言えんわい。 569 00:46:14,105 --> 00:46:19,577 わしはな 北風はんが お前に手を伸ばしてる事も➡ 570 00:46:19,577 --> 00:46:22,246 正直言うて つらい。 571 00:46:22,246 --> 00:46:28,586 わしが 何にもしてやれん事が歯がゆうて…。 572 00:46:28,586 --> 00:46:31,255 それで ついカッと…。 573 00:46:31,255 --> 00:46:34,925 貞代… 灸や! また熱うなってきた。 574 00:46:34,925 --> 00:46:38,929 まったく 気の細い人やわ…。 うるさいわい! 575 00:46:42,266 --> 00:46:48,939 お許しを頂戴いたしまして ありがとうございます。 576 00:46:48,939 --> 00:46:55,279 ♬~ 577 00:46:55,279 --> 00:46:58,616 <人々の期待どおり 嘉兵衛は➡ 578 00:46:58,616 --> 00:47:03,454 江戸まで5日という速さで突っ走り 評判の沖船頭となり➡ 579 00:47:03,454 --> 00:47:09,894 もはや 兵庫 西宮で 嘉兵衛の名を知らぬ者はいなくなった> 580 00:47:09,894 --> 00:47:22,239 〽 (三味線と太鼓) 581 00:47:22,239 --> 00:47:28,579 金兵衛よ! 何じゃ お前は…! 海の仲間は命は一つじゃい! 582 00:47:28,579 --> 00:47:32,450 一緒に来て遊ばんかい! わしは 遊びは好かん。 583 00:47:32,450 --> 00:47:38,255 何やと? 変わり者じゃのう お前は。 584 00:47:38,255 --> 00:47:43,127 まあ いい。 飲め! 兄やん…。 585 00:47:43,127 --> 00:47:46,931 兄やん 悪いが わしは 酒は やらぬ。 586 00:47:46,931 --> 00:47:50,267 何や… お前 下戸じゃったかのう? 587 00:47:50,267 --> 00:47:53,604 ではないが やらぬ。 588 00:47:53,604 --> 00:47:58,909 金兵衛よ 何を考えとるんや お前は! 589 00:48:01,212 --> 00:48:08,085 金兵衛 高田屋を作ろうな。 高田屋を。 590 00:48:08,085 --> 00:48:12,223 高田屋って 廻船問屋か? おう。 591 00:48:12,223 --> 00:48:16,894 よう! 松右衛門さん…。 592 00:48:16,894 --> 00:48:19,563 嘉兵衛なら できる。 593 00:48:19,563 --> 00:48:24,235 今 兵庫湊は嘉兵衛の噂で持ちきりや。 594 00:48:24,235 --> 00:48:27,138 これ おふさに食べさせてやれ。 かたじけねえ! 595 00:48:27,138 --> 00:48:29,106 金兵衛! 持っていけ! 596 00:48:29,106 --> 00:48:35,579 この鮭に塩 詰めてな 北の土地から 運ぶのを考えたの このわしやで。 597 00:48:35,579 --> 00:48:38,916 知っとるか? はい。 有名な話でございます。 598 00:48:38,916 --> 00:48:43,254 旦那が 千石船の帆を作ったのも とっくに知っております。 599 00:48:43,254 --> 00:48:47,124 よし! 男はな 天下に尽くさにゃならん。 600 00:48:47,124 --> 00:48:50,928 お前も 高田屋 作って 世のために働け。 601 00:48:50,928 --> 00:48:53,831 宝喜丸の沖船頭で 満足しとったら あかんど! 602 00:48:53,831 --> 00:48:56,600 はよ お前も 自分の船 持たんかい! 603 00:48:56,600 --> 00:49:00,871 船一つ 千両は かかろう。 そうじゃい。 604 00:49:00,871 --> 00:49:05,743 千両… 千匹の鰹を釣り そのうちの三百本は➡ 605 00:49:05,743 --> 00:49:07,745 船に乗る者の食い扶持と給金。 606 00:49:07,745 --> 00:49:11,515 あと五百本は 船の借り賃。 残りは 二百本。 607 00:49:11,515 --> 00:49:14,218 鰹二十本を 一両で卸したとして➡ 608 00:49:14,218 --> 00:49:17,555 最後に 兄やんの手に残るのは 十両ばっかし。 609 00:49:17,555 --> 00:49:23,427 すると 年に一回の鰹漁として 千両になるには百年かかる。 610 00:49:23,427 --> 00:49:29,166 頭のええ弟やのう…。 ちょっと変わり者で…。 611 00:49:29,166 --> 00:49:33,103 松右衛門の旦那は 船の帆で儲けて 船が造れたでしょうが➡ 612 00:49:33,103 --> 00:49:36,240 兄やんは どうして 千両もの金を作る…? 613 00:49:36,240 --> 00:49:40,911 金兵衛! 人の運は 潮と同じや。 614 00:49:40,911 --> 00:49:44,782 上げ潮 満ち潮の時は 何の苦もなく叶うもんや…。 615 00:49:44,782 --> 00:49:47,585 …とは思えまへんなあ。 616 00:49:47,585 --> 00:49:50,254 金兵衛! やかましいわ お前は! 617 00:49:50,254 --> 00:49:54,592 兄やんは 船に乗るのはうまいが 銭を作るのは下手や。 618 00:49:54,592 --> 00:49:59,263 そこが問題や。やかましい やかましい! もっともらしい面して➡ 619 00:49:59,263 --> 00:50:01,198 分かったような事ぬかすな この どあほ! 620 00:50:01,198 --> 00:50:05,202 お前も向こうへ行って一緒に飲めや! 621 00:50:08,272 --> 00:50:13,143 駄目じゃ! 大事な鮭なんじゃ! 駄目じゃ! 622 00:50:13,143 --> 00:50:16,614 大事な鮭なんじゃ! 623 00:50:16,614 --> 00:50:18,616 ああっ…! 624 00:50:24,288 --> 00:50:26,290 松右衛門様…。 625 00:50:28,158 --> 00:50:30,461 嘉兵衛さん。 626 00:50:37,835 --> 00:50:44,975 何じゃい! 女子が のこのこ 来るような所じゃないぞ。はい。 627 00:50:44,975 --> 00:50:48,312 なんぼ遊ぼうと船に乗る人ですから 文句は言いません。 628 00:50:48,312 --> 00:50:54,018 うちも網屋の娘。 そのような事は得心しております。 629 00:50:57,655 --> 00:50:59,657 それなら 何じゃい! 630 00:51:05,262 --> 00:51:10,134 わしは 決して ええ事をしとるとは思うておらん。 631 00:51:10,134 --> 00:51:14,939 いつも 胸の内で お前に謝っとるんや…。 632 00:51:14,939 --> 00:51:18,809 じゃがなあ 海の男のつきあいってものがあるんじゃ! 633 00:51:18,809 --> 00:51:21,278 なあ! 634 00:51:21,278 --> 00:51:23,948 そのような事を 申しているのではございません。 635 00:51:23,948 --> 00:51:27,284 北風様から お使いが参りました。 636 00:51:27,284 --> 00:51:30,187 北風様から…? はい。 637 00:51:30,187 --> 00:51:34,625 紀州 熊野の新宮に浮かんでいる 百年物の桧を 二十本➡ 638 00:51:34,625 --> 00:51:36,560 江戸へ運んでほしいそうでございます。 639 00:51:36,560 --> 00:51:42,499 紀州 熊野の百年物の桧を二十本 紀州様の仕事じゃの?はい。 640 00:51:42,499 --> 00:51:45,636 皆の衆! このわしと一緒に➡ 641 00:51:45,636 --> 00:51:49,306 紀州 熊野の百年物の桧を二十本 運んでくれるかい? 642 00:51:49,306 --> 00:51:51,976 (一同)おう! よ~し やってくれ! 643 00:51:51,976 --> 00:51:55,312 ⚟そ~れ! ヨイ ヨイ ヨイ! ヨイ ヨイ ヨイ! 644 00:51:55,312 --> 00:52:09,259 〽 (三味線と太鼓) 645 00:52:09,259 --> 00:52:17,134 ♬~ 646 00:52:17,134 --> 00:52:21,605 彦助どん また来たぞ。おう 来たか! 647 00:52:21,605 --> 00:52:24,942 ⚟お~い! 難破したのか? 648 00:52:24,942 --> 00:52:28,278 難破などするか! 旗が見えんのか! 649 00:52:28,278 --> 00:52:33,150 紀州様御用の御丸太じゃ! やるじゃろうが! 650 00:52:33,150 --> 00:52:35,619 紀州様御用達じゃ! 651 00:52:35,619 --> 00:52:38,956 日本一!日本一! 652 00:52:38,956 --> 00:52:43,293 ありがとう! またのう! 653 00:52:43,293 --> 00:52:47,164 ♬~ 654 00:52:47,164 --> 00:52:52,970 達者でのう! 気をつけて行けよ! 655 00:52:52,970 --> 00:52:56,840 ♬~ 656 00:52:56,840 --> 00:53:01,845 (風の音) 657 00:53:09,253 --> 00:53:12,589 おえ~! 658 00:53:12,589 --> 00:53:14,925 (笑い声) 659 00:53:14,925 --> 00:53:18,796 何が おかしいんじゃ! おえ~! 660 00:53:18,796 --> 00:53:23,267 (文治)淡路者は波に弱いのう。 わしは 新宮や。 661 00:53:23,267 --> 00:53:26,937 こんな波は 気持ようて眠とうなるわ。 662 00:53:26,937 --> 00:53:29,640 おえっ! ハハハ…! 663 00:53:32,276 --> 00:53:35,612 <熊野の船大工の徒弟をしていた文治は➡ 664 00:53:35,612 --> 00:53:40,284 この筏船から嘉兵衛に従い 後に カムチャツカで死ぬまで➡ 665 00:53:40,284 --> 00:53:44,288 終生 嘉兵衛のそばを離れなかった> 666 00:53:46,623 --> 00:53:56,934 〽 加太の瀬戸から雨山背風 667 00:53:58,635 --> 00:54:00,571 <江戸に着いた嘉兵衛は➡ 668 00:54:00,571 --> 00:54:05,275 紀州藩出入りの木材商 立花屋に 身を寄せた> 669 00:54:08,445 --> 00:54:13,917 文治… これで どないや? あっ! 670 00:54:13,917 --> 00:54:17,254 彦助さん… 待ったや それ! 待ったは なしや! 671 00:54:17,254 --> 00:54:20,557 堪忍や! ハハハ…! どないしよう…。 672 00:54:22,593 --> 00:54:25,496 兄やん! おもちゃの問屋に行ってきた。 673 00:54:25,496 --> 00:54:29,266 弥吉の土産じゃ。 大ばか者や。 674 00:54:29,266 --> 00:54:34,138 兄やん わしが 弥吉に 土産を買うてきたのが悪いんか? 675 00:54:34,138 --> 00:54:41,612 いや このわしに言うたんや。 自分に頭にきたんや! 676 00:54:41,612 --> 00:54:47,484 おい 薬師丸をくれると 北風様が言うてきた。 677 00:54:47,484 --> 00:54:52,256 薬師丸というと和泉屋伊兵衛の持ち船か? そうや。 678 00:54:52,256 --> 00:54:57,961 それが 難破して 今 常州の那珂湊につながれてるそうや。 679 00:54:57,961 --> 00:55:02,800 和泉屋は捨てる気やったが 北風様が捨て値で買い取ってくれた。 680 00:55:02,800 --> 00:55:06,770 「その船で 伊豆 安房沖を走り➡ 681 00:55:06,770 --> 00:55:11,909 鰹をとるなり何なりと致せ」と書いてある。 682 00:55:11,909 --> 00:55:15,579 兄やん! それは すごく ええ話やないか! 683 00:55:15,579 --> 00:55:19,249 (彦助)薬師丸は 運の悪い船や。 684 00:55:19,249 --> 00:55:24,121 出来たばっかりの時に 水主が 船頭を刺して 大けがをさせた。 685 00:55:24,121 --> 00:55:28,592 また 酒樽を 江戸へ運ぶ時に嵐に遭い 船頭が死んだ。➡ 686 00:55:28,592 --> 00:55:34,264 遠州灘でも難破し 水主がけがをし 荷も駄目になった。 687 00:55:34,264 --> 00:55:37,601 その船をくれる 言われてものう…。 688 00:55:37,601 --> 00:55:41,939 難破しとる船じゃろ? どのぐらいの傷みかも分からんしのう。 689 00:55:41,939 --> 00:55:45,275 帆柱を切り倒したという事のみで➡ 690 00:55:45,275 --> 00:55:47,945 ほかは 一切 分からないと書いてある。 691 00:55:47,945 --> 00:55:55,285 もし 船底の航でも割れてたら 修理も何も 薪にもならん…。 692 00:55:55,285 --> 00:55:59,156 しかし 「要らん」言うと 北風様は どう思うか…。 693 00:55:59,156 --> 00:56:03,093 そんな船 気の利いた船乗りなら 拾うはずはないでしょう。 694 00:56:03,093 --> 00:56:07,231 いくら 北風様でも それは 兄やんに失礼じゃ。 695 00:56:07,231 --> 00:56:13,103 金兵衛 お前も大ばか者じゃのう。えっ? 696 00:56:13,103 --> 00:56:18,242 北風様は 今 このわしを試しておるんや。 697 00:56:18,242 --> 00:56:23,113 「ぼろ船を くれてやるぞ。 どうじゃ? 受け取るか?➡ 698 00:56:23,113 --> 00:56:32,256 それとも びくびくして断るか?」。 その様子を じっと見ていなさる。 699 00:56:32,256 --> 00:56:36,927 ええか ここは強気でいくんじゃ。 700 00:56:36,927 --> 00:56:39,263 上げ潮じゃと信じて➡ 701 00:56:39,263 --> 00:56:43,567 その運の悪い薬師丸を ありがたく頂戴するんや。 702 00:56:45,602 --> 00:56:49,940 <嘉兵衛は ついに 自分の船を持った。➡ 703 00:56:49,940 --> 00:56:52,609 そして もっと大きな船を造るため➡ 704 00:56:52,609 --> 00:56:56,947 老朽化した薬師丸で走りに走った。➡ 705 00:56:56,947 --> 00:57:00,817 新しい船を造るには 莫大な金が要る。➡ 706 00:57:00,817 --> 00:57:06,223 嘉兵衛は まさに 上げ潮だった> 707 00:57:06,223 --> 00:57:17,234 ♬~ 708 00:57:17,234 --> 00:57:20,904 ♬~ 709 00:57:20,904 --> 00:57:25,242 こいさん! 弥吉。 お父っつぁんやで。 710 00:57:25,242 --> 00:57:43,927 ♬~ 711 00:57:43,927 --> 00:57:49,266 ああ…! 薬師丸じゃ! とうとう 嘉兵衛が船を持ったのう。 712 00:57:49,266 --> 00:57:53,270 おめでとう。 ありがとうございます。 713 00:57:55,939 --> 00:58:02,746 おふさ! 弥吉! 帰ったぞ! 714 00:58:02,746 --> 00:58:07,551 おかえりなさい! 715 00:58:07,551 --> 00:58:12,222 干鰯 しめ粕 何せ 五百石の船でございますから➡ 716 00:58:12,222 --> 00:58:14,891 銭にすると 大した額にはならないと存じますが➡ 717 00:58:14,891 --> 00:58:17,794 積み荷のすべてを 受け取っていただきたいと存じまして。 718 00:58:17,794 --> 00:58:21,231 嘉兵衛 それは無用の事や。 719 00:58:21,231 --> 00:58:24,568 しかし…。 相手は この北風や。 720 00:58:24,568 --> 00:58:31,274 分かっておりますが…。 もっと かわいらしゅうせい! 721 00:58:37,147 --> 00:58:40,917 甘えろと言う時には甘えておけと 叱られた。 722 00:58:40,917 --> 00:58:48,592 で 結局…?積み荷は 何一つ 受け取ってもらえなんだ。 723 00:58:48,592 --> 00:58:54,264 人がええ。 まったくや。 北風様は神様や。 724 00:58:54,264 --> 00:59:02,072 人で 神様などというお方は ございません。何やて? 725 00:59:02,072 --> 00:59:06,543 人がええ。 俺がか? 726 00:59:06,543 --> 00:59:08,478 はい。 何で? 727 00:59:08,478 --> 00:59:12,883 あんたが 兵庫一の船頭やから ようしてくださるのです。 728 00:59:12,883 --> 00:59:15,552 北風様は商人です。 729 00:59:15,552 --> 00:59:19,890 薬師丸の恩は恩として 今日 どういうふうに言われても➡ 730 00:59:19,890 --> 00:59:23,226 積み荷のすべてを お渡ししてくるべきでした。 731 00:59:23,226 --> 00:59:28,565 今日の借りは高いものになりますよ。 732 00:59:28,565 --> 00:59:32,436 やかましい! 女子が 男の仕事に 口を出すな! 733 00:59:32,436 --> 00:59:35,138 はい…。 734 00:59:39,576 --> 00:59:43,914 で… 何や? おふさ! 735 00:59:43,914 --> 00:59:48,251 口を出すなと言われました。 ええから言うてみ。 736 00:59:48,251 --> 00:59:51,154 うちは あんたに 北風荘右衛門様の➡ 737 00:59:51,154 --> 00:59:53,123 子飼いになってもらいたくは ございません。 738 00:59:53,123 --> 00:59:55,125 ええやないか かわいがってもらってるんや。 739 00:59:55,125 --> 00:59:57,594 ありがたいと思ってる。 嘉兵衛さん! 何じゃい! 740 00:59:57,594 --> 01:00:01,932 うちも淡路の都志の網屋のおふさ…。 741 01:00:01,932 --> 01:00:07,270 〽 父さん捨てて 母さん捨てて 742 01:00:07,270 --> 01:00:10,173 人が 真面目に ものを言うてる時に…! 何すんのや! 743 01:00:10,173 --> 01:00:13,143 死ぬまで 北風様の下で働くなどという男なら➡ 744 01:00:13,143 --> 01:00:15,946 淡路を出てきた甲斐がございません。 745 01:00:15,946 --> 01:00:20,817 はよ 高田屋を作り 千石船を造り 松前 蝦夷➡ 746 01:00:20,817 --> 01:00:26,957 いいえ… 海の至る所に あんたの船を走らせてください。 747 01:00:26,957 --> 01:00:28,892 すごい事を言うのう。 748 01:00:28,892 --> 01:00:34,297 「海に浮かべた板の上に 陸とは違う別の世界を作る」。 749 01:00:34,297 --> 01:00:36,633 そう言うたのを覚えていますね。 750 01:00:36,633 --> 01:00:40,937 そうや。 途方もない事を言うた。 751 01:00:46,643 --> 01:00:52,349 そのとおりや。 わしは海に自分の世界を作ってやる。 752 01:00:55,318 --> 01:00:59,189 おふさ… わしは やるで! 753 01:00:59,189 --> 01:01:02,592 ハハハハ…! 754 01:01:02,592 --> 01:01:09,933 ♬~ 755 01:01:09,933 --> 01:01:11,868 文治! へ~い! 756 01:01:11,868 --> 01:01:15,605 帆を畳め! へ~い! 757 01:01:15,605 --> 01:01:19,276 金兵衛! しっかりせい! 758 01:01:19,276 --> 01:01:22,946 ああっ! ああっ…! 大丈夫か? 759 01:01:22,946 --> 01:01:26,616 頑張れ! 760 01:01:26,616 --> 01:01:30,487 ♬~ 761 01:01:30,487 --> 01:01:35,959 船を風に流すな! 風に逆らえ! 762 01:01:35,959 --> 01:01:39,629 ♬~ 763 01:01:39,629 --> 01:01:41,565 ひっくり返るぞ! 764 01:01:41,565 --> 01:01:44,301 兄やん! 金兵衛! 765 01:01:44,301 --> 01:01:47,204 舵から手を下ろせ! 風に任せるんや! 766 01:01:47,204 --> 01:01:50,974 文治! 何やっとるんや! 767 01:01:50,974 --> 01:01:57,647 ♬~ 768 01:01:57,647 --> 01:02:01,918 この風の向きやったら 唐 天竺まで流されてまう! 769 01:02:01,918 --> 01:02:07,591 唐でも 天竺でも どこでも行ってやるわ! 770 01:02:07,591 --> 01:02:10,493 兄やん どうするんじゃ! 荷を捨てるか? 771 01:02:10,493 --> 01:02:13,263 あほ! 待て! 772 01:02:13,263 --> 01:02:16,566 文治! はい! 773 01:02:18,935 --> 01:02:22,238 うわ~ 兄やん! 金兵衛…! 774 01:02:23,807 --> 01:02:29,579 兄やん! わしはな 新しい船を造るんや。 775 01:02:29,579 --> 01:02:32,949 こんな所で死んでたまるか! 776 01:02:32,949 --> 01:02:37,821 ♬~ 777 01:02:37,821 --> 01:02:44,527 文治! 文治! 眠るな! 落ちたら死ぬぞ! 778 01:02:46,496 --> 01:02:51,635 文治! 歌でも歌ってろ! はい! 779 01:02:51,635 --> 01:03:05,181 〽 雨風に間切るその夜の その身のつらさ 780 01:03:05,181 --> 01:03:16,192 ♬~ 781 01:03:20,797 --> 01:03:23,933 夜が明けるぞ! 782 01:03:23,933 --> 01:03:28,605 島影が見える! 783 01:03:28,605 --> 01:03:32,942 あれは 唐の国か? それとも 天竺やろか? 784 01:03:32,942 --> 01:03:37,614 あほ! 隠岐の島や! 785 01:03:37,614 --> 01:03:43,286 隠岐の島か! 日本やな! そうや 日本や! 786 01:03:43,286 --> 01:03:47,624 助かったぞ~! 助かったぞ! 787 01:03:47,624 --> 01:03:54,631 助かったぞ! 助かったぞ 喜べ! 助かったぞ! 788 01:03:56,299 --> 01:04:01,604 おふさ… おふさよ…。 789 01:04:03,106 --> 01:04:06,109 (雷鳴) 790 01:04:06,109 --> 01:04:24,094 ♬~ 791 01:04:41,277 --> 01:04:47,150 兄やん… 不思議な夢を見た。何やて? 792 01:04:47,150 --> 01:04:49,953 何? 俺も見た。 793 01:04:49,953 --> 01:04:55,625 北の海に お天道様が昇る夢か? ああ…。 794 01:04:55,625 --> 01:04:59,295 高田屋の大きな帆を上げた千石船が 走っとったやろ? 795 01:04:59,295 --> 01:05:02,198 船は 黄金色に光ってた。 796 01:05:02,198 --> 01:05:05,902 兄やん その時が来たで。 797 01:05:05,902 --> 01:05:16,546 ♬~ 798 01:05:16,546 --> 01:05:21,251 おかげさまをもちまして 新しい船を造る事になりました。 799 01:05:21,251 --> 01:05:25,922 それも ひとえに 旦那様とおかみ様のおかげでございます。 800 01:05:25,922 --> 01:05:28,825 おめでとう。 801 01:05:28,825 --> 01:05:34,264 嘉兵衛 ここに座れ。 とんでもない。 802 01:05:34,264 --> 01:05:40,136 言うとおりに。 また 血が上る。はい。 803 01:05:40,136 --> 01:05:42,138 では 失礼して…。 804 01:05:49,279 --> 01:05:51,948 (喜兵衛)嘉兵衛…。 はい…。 805 01:05:51,948 --> 01:05:56,252 わしは ついに 商いから身を引く事にした。 806 01:05:58,288 --> 01:06:01,558 知ってるとおり もう 体が あかん…。 807 01:06:01,558 --> 01:06:06,429 鳥取のほうに引きこもり 貞代と のんびり暮らすつもりや。➡ 808 01:06:06,429 --> 01:06:10,567 で… 全部 お前に渡す。 809 01:06:10,567 --> 01:06:12,902 私に? うん。 810 01:06:12,902 --> 01:06:17,774 寛政丸と春日丸 この二艘を お前に預ける。 811 01:06:17,774 --> 01:06:21,911 寛政丸と春日丸は 鳥取藩の御用船では? 812 01:06:21,911 --> 01:06:24,814 因州様には 廃船にしたと申し上げる。 813 01:06:24,814 --> 01:06:28,685 今まで さんざん 安く使うていただいた。 814 01:06:28,685 --> 01:06:32,255 寛政丸も 春日丸も 疲れたやろう。 815 01:06:32,255 --> 01:06:35,158 しかし 旦那様には 彦助さんはじめ➡ 816 01:06:35,158 --> 01:06:37,927 私以上に立派な船乗りが 大勢いらっしゃいます。 817 01:06:37,927 --> 01:06:39,863 やかましい! はい…。 818 01:06:39,863 --> 01:06:44,601 わしに 自分の子が お前よりはるかに 船が下手じゃと何度も言わせたいのか? 819 01:06:44,601 --> 01:06:47,503 いや とんでもない…! 嘉兵衛 頼む…。 820 01:06:47,503 --> 01:06:52,275 因州様の御用お勤め 結局 安く使われ➡ 821 01:06:52,275 --> 01:06:56,613 兵庫の仲間からは 堺屋の船下手と 陰口をたたかれ続けた…。 822 01:06:56,613 --> 01:07:01,217 わしの気持ちも察して 一緒に北前行きの店を起こしてくれ。 823 01:07:01,217 --> 01:07:03,519 なあ 頼む! 824 01:07:13,229 --> 01:07:16,900 このように 私の事を思うてくださる方々が➡ 825 01:07:16,900 --> 01:07:20,770 いてくださるとは…。 826 01:07:20,770 --> 01:07:28,244 私は 幼いころから 誰からも 好かれた事のない男でございました。 827 01:07:28,244 --> 01:07:39,956 それが 旦那様をはじめ 皆々様が この私に 店を開けと言うてくださる。 828 01:07:43,259 --> 01:07:48,131 北の海に 太陽が昇る夢を見ました。 829 01:07:48,131 --> 01:07:54,604 北の海に 日の昇る夢か。 それは めでたい夢や。 830 01:07:54,604 --> 01:07:56,940 はい。 831 01:07:56,940 --> 01:08:03,546 高田屋の大きな帆の翻った千石船が➡ 832 01:08:03,546 --> 01:08:09,886 黄金色に輝きながら海を走る夢でした。 833 01:08:09,886 --> 01:08:14,757 ♬~ 834 01:08:14,757 --> 01:08:17,226 嘉兵衛。 835 01:08:17,226 --> 01:08:25,902 寛政丸と春日丸をもろうて 私の子らを使うて…。 お願いや。 836 01:08:25,902 --> 01:08:32,575 ♬~ 837 01:08:32,575 --> 01:08:36,879 ありがとうございます。 ありがとうございます…。 838 01:08:41,918 --> 01:08:46,589 親父様…。 839 01:08:46,589 --> 01:08:49,258 おふくろ様…。 840 01:08:49,258 --> 01:08:52,562 ありがとうございます。 841 01:08:55,598 --> 01:08:58,935 よし! 高田屋が出来たぞ。 842 01:08:58,935 --> 01:09:02,205 うん 出来た! 出来た! 843 01:09:02,205 --> 01:09:06,075 (拍手) 844 01:09:06,075 --> 01:09:55,925 ♬~ 845 01:09:55,925 --> 01:10:03,800 ええ風や! まともに当たっとる。 船が香っとるわ! 846 01:10:03,800 --> 01:10:08,271 <辰悦丸。 千五百石の新しい船は➡ 847 01:10:08,271 --> 01:10:11,941 辰年にちなんで そう名付けられた。➡ 848 01:10:11,941 --> 01:10:14,844 嘉兵衛は 弱冠27歳にして➡ 849 01:10:14,844 --> 01:10:23,953 寛政丸 春日丸 薬師丸 そして 辰悦丸の 四艘の大船団の頭領となった。➡ 850 01:10:23,953 --> 01:10:27,290 高田屋の誕生である> 851 01:10:27,290 --> 01:10:32,628 おふさ! 夢の景色じゃ。 852 01:10:32,628 --> 01:10:43,639 ♬~ 853 01:10:45,208 --> 01:10:47,176 オロシャは 必ず やって来る。 854 01:10:47,176 --> 01:10:51,647 お前が定御雇船頭? この国の船頭の大将? 855 01:10:51,647 --> 01:10:53,950 (鉄砲の音) 856 01:11:00,256 --> 01:12:28,244 ♬~ 857 01:12:30,246 --> 01:12:35,618 ♬~ 858 01:12:35,618 --> 01:12:40,289 <兵庫は 海運の中心として 古くから栄えていました。➡ 859 01:12:40,289 --> 01:12:43,192 嘉兵衛は 22歳の時 淡路を出て➡ 860 01:12:43,192 --> 01:12:45,895 この港町に移り住んだのです> 861 01:12:48,164 --> 01:12:53,302 <嘉兵衛が おふさと所帯を構えた西出町。➡ 862 01:12:53,302 --> 01:12:55,638 この町の鎮守稲荷神社には➡ 863 01:12:55,638 --> 01:13:03,346 嘉兵衛が航海の安全を祈って奉納した 灯籠が 今も残されています> 864 01:13:11,120 --> 01:13:14,924 <兵庫には 廻船問屋が集まり ここから たくさんの➡ 865 01:13:14,924 --> 01:13:18,794 樽廻船や菱垣廻船 北前船などが➡ 866 01:13:18,794 --> 01:13:21,097 湊を出ていきました> 867 01:13:23,266 --> 01:13:28,137 <北前船は 河村瑞賢が開発した 西まわり航路を利用して➡ 868 01:13:28,137 --> 01:13:33,142 北海道の海産物や 酒田の米などを 上方に運びました> 869 01:13:35,278 --> 01:13:39,949 <佐渡の小木町には 船材を使って建てられた屋敷など➡ 870 01:13:39,949 --> 01:13:44,954 北前船によって栄えた集落が 今も保存されています> 871 01:13:48,291 --> 01:13:51,627 <当時 この湊は たくさんの北前船で➡ 872 01:13:51,627 --> 01:13:54,330 にぎわっていたのです>