1 00:00:01,235 --> 00:00:05,939 ♬~ 2 00:00:07,941 --> 00:00:11,278 (高田屋嘉兵衛) 海に自分の世界を作ってやる。 3 00:00:11,278 --> 00:00:16,149 ♬~ 4 00:00:16,149 --> 00:00:19,152 こんな所で死んでたまるか! 5 00:00:19,152 --> 00:00:21,922 (おふさ)はよ 高田屋を作り 海の至る所に➡ 6 00:00:21,922 --> 00:00:23,857 あんたの船を走らせてください。 7 00:00:23,857 --> 00:00:27,628 わしはな 自分の船を… 自分の船を持つぜ! 8 00:00:27,628 --> 00:00:30,964 ♬~ 9 00:00:30,964 --> 00:00:35,969 おふさ! 夢の景色じゃ。 10 00:00:37,638 --> 00:00:42,976 <ロシア人が シベリアという北アジアの 広大な大地に現れるのは➡ 11 00:00:42,976 --> 00:00:45,679 16世紀半ばになってからである> 12 00:00:48,315 --> 00:00:51,218 <ヨーロッパにとって 暗黒の地だったシベリアに➡ 13 00:00:51,218 --> 00:00:53,987 毛皮を求める商人達が入り込み➡ 14 00:00:53,987 --> 00:00:58,692 彼らの足跡は そのまま ロシアの領土となっていった> 15 00:01:00,594 --> 00:01:03,931 <カムチャツカ半島が ロシア領として公布されたのは➡ 16 00:01:03,931 --> 00:01:07,801 ピョートル大帝在位中の1707年。➡ 17 00:01:07,801 --> 00:01:10,804 シベリア全域を領土とするのに➡ 18 00:01:10,804 --> 00:01:14,942 僅か1世紀半しか かからなかった事になる。➡ 19 00:01:14,942 --> 00:01:18,612 このころから ロシア側は 南下政策をとり➡ 20 00:01:18,612 --> 00:01:24,284 日本との通商を求めるロシア船が たびたび 蝦夷地を訪れるようになった。➡ 21 00:01:24,284 --> 00:01:28,155 当時 鎖国中の日本は その要求を拒絶し➡ 22 00:01:28,155 --> 00:01:32,960 両国の関係は 激しい緊張状態にあった> 23 00:01:32,960 --> 00:01:45,539 ♬~ (テーマ音楽) 24 00:01:45,539 --> 00:02:21,475 ♬~ 25 00:02:21,475 --> 00:02:23,944 <寛政8年 夏➡ 26 00:02:23,944 --> 00:02:25,879 高田屋を旗揚げした嘉兵衛は➡ 27 00:02:25,879 --> 00:02:27,814 真新しい辰悦丸で➡ 28 00:02:27,814 --> 00:02:30,817 蝦夷地との交易に奔走していた> 29 00:02:32,953 --> 00:02:37,290 <そのころ まだ寂しい漁村だった 箱館に目をつけた嘉兵衛は➡ 30 00:02:37,290 --> 00:02:42,162 ここに町をつくり 蝦夷地有数の湊にしたいと思った。➡ 31 00:02:42,162 --> 00:02:44,631 しかし 蝦夷地については➡ 32 00:02:44,631 --> 00:02:48,335 幕府も松前藩も 神経をとがらせていた> 33 00:02:50,303 --> 00:02:52,239 (高橋三平)お~い 嘉兵衛! 34 00:02:52,239 --> 00:02:54,174 高橋様! 35 00:02:54,174 --> 00:02:56,643 (金兵衛)あまり 侍と関わりにならんほうが ええぞ。 36 00:02:56,643 --> 00:02:58,578 高橋様は ご公儀のお役人や。 37 00:02:58,578 --> 00:03:01,248 こっちで商いが しにくうなる。 分かっておる。 38 00:03:01,248 --> 00:03:04,151 (五平)高田屋さん 旦那様が見送りにまいりました。 39 00:03:04,151 --> 00:03:07,120 (文治)見送りなんぞ要らん! 文治 あほ! 何を言う! 40 00:03:07,120 --> 00:03:09,589 江戸の侍と つきあうと 松前で商売が しにくうなる。 41 00:03:09,589 --> 00:03:11,525 あほが! 申し訳ございません…! 42 00:03:11,525 --> 00:03:17,464 <嘉兵衛は 蝦夷を調査に来ていた 幕臣・高橋三平と知り合った> 43 00:03:17,464 --> 00:03:21,201 大きいな…。 はい。 44 00:03:21,201 --> 00:03:24,137 来年は どうだ? また来るか? 45 00:03:24,137 --> 00:03:26,139 真っ先に来たいと思っております。 46 00:03:26,139 --> 00:03:30,610 嘉兵衛 今から わしの言うのは独り言だ。 47 00:03:30,610 --> 00:03:34,614 はい。 みんな! 耳を塞いどけ。 48 00:03:39,286 --> 00:03:43,623 独り言だ。 返事はせずとも よいぞ。 はい。 49 00:03:43,623 --> 00:03:47,961 松前藩といっても 上士 下士 合わせて 三百人ほどだ。 50 00:03:47,961 --> 00:03:50,630 これでは オロシャは防げまい。 51 00:03:50,630 --> 00:03:54,968 オロシャが戦を仕掛けてくると…? 52 00:03:54,968 --> 00:04:00,240 しかし オロシャが いかに大国とは申せ 一万の兵を送るには➡ 53 00:04:00,240 --> 00:04:04,111 三十艘の大船が必要になります。 54 00:04:04,111 --> 00:04:10,584 嘉兵衛 オロシャの願いは交易だろう。 55 00:04:10,584 --> 00:04:15,922 物を売って 蝦夷地の金銀を持って帰る。 それがねらいだ。 56 00:04:15,922 --> 00:04:21,261 だがな 彼らは 人が あまり 住んでいない所を領地にしてしまう。➡ 57 00:04:21,261 --> 00:04:23,597 今の松前藩のやり方では➡ 58 00:04:23,597 --> 00:04:26,500 蝦夷地と千島が そういう目に遭ってしまう。 59 00:04:26,500 --> 00:04:29,469 箱館に人を集め 町や港をつくり➡ 60 00:04:29,469 --> 00:04:33,940 この地から 逆に オロシャの領地に向かって船を出し➡ 61 00:04:33,940 --> 00:04:38,278 交易するような商人が出ても よいと思う。 62 00:04:38,278 --> 00:04:40,947 抜け荷は御法度でござります。 63 00:04:40,947 --> 00:04:45,252 ハハハハ…! 独り言を申しておるのだ。 64 00:04:47,621 --> 00:04:53,960 わしはな オロシャ船が出没するたびに うろたえ 色を失う➡ 65 00:04:53,960 --> 00:04:55,896 この国の姿が好きではない。➡ 66 00:04:55,896 --> 00:05:01,201 国益というものは正々堂々とした対決が なくてはいけない。 67 00:05:03,236 --> 00:05:08,108 高田屋嘉兵衛という男なら それができると思ったのだ。 68 00:05:08,108 --> 00:05:12,579 遠からず 蝦夷地を松前藩から召し上げ➡ 69 00:05:12,579 --> 00:05:15,916 ご公儀の 直轄になさるおつもりですか? 70 00:05:15,916 --> 00:05:19,786 兄やん! よけいな事言うな! わしらは商人じゃ。 71 00:05:19,786 --> 00:05:21,788 耳! 72 00:05:23,790 --> 00:05:29,262 これからは わしと一緒に 蝦夷の事で働いてもらわねばならぬ。 73 00:05:29,262 --> 00:05:35,936 高橋様 私は ただの船頭でございますよ。 74 00:05:35,936 --> 00:05:41,641 ご公儀は もっともっと欲深く お前の事を見ているかもしれぬ。 75 00:05:44,945 --> 00:05:46,947 気をつけてな。 76 00:05:49,616 --> 00:05:52,519 <この高橋三平との出会いが➡ 77 00:05:52,519 --> 00:05:57,524 後に 嘉兵衛の運命を 大きく左右する事になった> 78 00:06:05,899 --> 00:06:09,236 兄やん! ああっ ああっ…! 79 00:06:09,236 --> 00:06:11,538 金兵衛! 80 00:06:13,106 --> 00:06:15,108 兄やん! 大丈夫か? 81 00:06:15,108 --> 00:06:22,249 これぐらいの波 瓦船でも造作はないわ。 嘉蔵は? 82 00:06:22,249 --> 00:06:24,184 酔っ払って寝てるわい! 83 00:06:24,184 --> 00:06:26,119 (文治)船から降りろ 降りろ! 84 00:06:26,119 --> 00:06:29,122 文治! お前は ちょっと うるさいぞ! 85 00:06:29,122 --> 00:06:31,124 (文治)すいません! 86 00:06:36,796 --> 00:06:40,934 兄やん 荷を全部 北風様に渡すのか? 87 00:06:40,934 --> 00:06:46,273 難しいのう。 北風様には恩がある。 堺屋にも渡さなならん。 88 00:06:46,273 --> 00:06:48,608 兵庫の町には 住みにくうなるのう。 89 00:06:48,608 --> 00:06:53,280 でもよ 全部の荷を 北風の店頭に売るって事になると➡ 90 00:06:53,280 --> 00:06:58,151 わしらは ただ イリコ 昆布 干鰊 塩鮭➡ 91 00:06:58,151 --> 00:07:01,087 蝦夷から運んで来ただけの 運び屋にしかならんぞ。 92 00:07:01,087 --> 00:07:04,557 そうなる事が 北風様の最初からのねらいや! 93 00:07:04,557 --> 00:07:07,460 わしは 嫌やな。 94 00:07:07,460 --> 00:07:10,897 薬師丸を タダ同然で 譲ってもらった恩➡ 95 00:07:10,897 --> 00:07:14,567 辰悦丸を造る時に 銭を貸してくれた恩➡ 96 00:07:14,567 --> 00:07:16,503 いろいろ あるんじゃい。 97 00:07:16,503 --> 00:07:19,239 辰悦丸の金は もう とっくに返したで。 98 00:07:19,239 --> 00:07:23,576 堺屋の寛政丸と春日丸を 夜も日もなく走らせて。 99 00:07:23,576 --> 00:07:25,512 銭の事だけで 言うとるんやない。 100 00:07:25,512 --> 00:07:27,447 そうやけどよ。 101 00:07:27,447 --> 00:07:31,918 わしはな 武家というのが大嫌いやった。 102 00:07:31,918 --> 00:07:36,790 武家は 何一つ働かず 弱い者をいじめて➡ 103 00:07:36,790 --> 00:07:39,793 のうのうと生きておると思っとった…。 104 00:07:39,793 --> 00:07:44,264 じゃがなあ 高橋三平様のような人もおるんや。 105 00:07:44,264 --> 00:07:49,135 高橋様? わしは今 北風様の事を 話しとるんやがのう。 106 00:07:49,135 --> 00:07:52,939 お前と北風様は 同じような人間や。 どこがや? 107 00:07:52,939 --> 00:07:58,812 北風様もお前も 海は ただ 銭を稼ぐだけの手だてやと思うとる。 108 00:07:58,812 --> 00:08:02,749 じゃがな 高橋様には志があるんや。 109 00:08:02,749 --> 00:08:05,518 志? 110 00:08:05,518 --> 00:08:11,224 海はな 果てもなく 異国へと つながっておるという志じゃ。 111 00:08:11,224 --> 00:08:13,560 このわしも同じ事よ。 112 00:08:13,560 --> 00:08:20,433 兄やん これからも高橋様と ご公儀の人間達と つきあうつもりか? 113 00:08:20,433 --> 00:08:22,902 それは 神様が決めるわい。 114 00:08:22,902 --> 00:08:28,241 兄やん! 堺屋も 藩の御用を勤めたばっかりに➡ 115 00:08:28,241 --> 00:08:31,144 安い仕事ばっかりやらされて。 116 00:08:31,144 --> 00:08:38,885 金兵衛よ! わしはな ガキのころから海に船を走らせて➡ 117 00:08:38,885 --> 00:08:44,257 自由に行きたい所に行く事だけを 考えてきたのよ。 118 00:08:44,257 --> 00:08:47,594 海は たくさんの異国と つながっておるからのう! 119 00:08:47,594 --> 00:08:55,268 ♬~ 120 00:08:55,268 --> 00:08:59,606 <兵庫湊に戻ったのは 秋の暮れであった> 121 00:08:59,606 --> 00:09:01,541 ただいま帰りました。 122 00:09:01,541 --> 00:09:04,210 嘉兵衛さん 荷を北風へ運ぶが➡ 123 00:09:04,210 --> 00:09:06,880 この事で まさか お前に 子細はあるまいな? 124 00:09:06,880 --> 00:09:09,182 ありまへん。 125 00:09:12,552 --> 00:09:14,487 (文五郎)嘉兵衛さんの事を 「お前」とは何や? 126 00:09:14,487 --> 00:09:16,489 (又蔵)ほんまじゃ。 かまへん。 127 00:09:20,427 --> 00:09:22,562 弥吉! 128 00:09:22,562 --> 00:09:24,898 こら! 弥吉! 129 00:09:24,898 --> 00:09:29,235 (播州はん) あっ! こらこら! お母はんに…。 130 00:09:29,235 --> 00:09:32,539 もう… 悪い子! 131 00:09:35,108 --> 00:09:37,911 弥吉! 何という事を! 132 00:09:37,911 --> 00:09:40,580 <父が めったに帰ってこない寂しさからか➡ 133 00:09:40,580 --> 00:09:44,584 弥吉は 次第に 手の焼ける子どもになっていった> 134 00:10:00,600 --> 00:10:02,602 夜分 恐れ入ります。 135 00:10:05,271 --> 00:10:09,609 (北風荘右衛門) 大きい船で帰ってきたそうやな。 136 00:10:09,609 --> 00:10:12,512 蝦夷地の繁盛は どうや? 137 00:10:12,512 --> 00:10:15,482 なにぶん かの地に行くのは 初めてでございますので➡ 138 00:10:15,482 --> 00:10:20,253 見るもの聞くもの すべてが珍しゅうござりまして。 139 00:10:20,253 --> 00:10:23,957 近頃 抜け荷が多いそうやな。 140 00:10:23,957 --> 00:10:28,828 はい。 その点については 松前藩も頭を痛めております。 141 00:10:28,828 --> 00:10:32,298 松前様は 少人数でございます。 142 00:10:32,298 --> 00:10:36,169 それに引き換え 蝦夷地は 大きゅうございますから➡ 143 00:10:36,169 --> 00:10:38,638 お手が回らぬのでございましょう。 144 00:10:38,638 --> 00:10:43,510 ご公儀が 蝦夷地を直轄になされるという うわさがある。 145 00:10:43,510 --> 00:10:59,526 ♬~ 146 00:11:05,265 --> 00:11:07,200 おふさ! ただいま帰ったぞ! 147 00:11:07,200 --> 00:11:09,135 お戻りなさいませ。 148 00:11:09,135 --> 00:11:11,938 お前 何で浜に来んのや? 149 00:11:11,938 --> 00:11:14,274 浜に うちの顔が見えんと寂しい? 150 00:11:14,274 --> 00:11:18,144 当たり前や。 フフフ…! 151 00:11:18,144 --> 00:11:21,447 弥吉は? 寝とるか…。 152 00:11:25,285 --> 00:11:27,220 何や? これは。 153 00:11:27,220 --> 00:11:29,956 きかん子で。 とにかく きかん子や。 154 00:11:29,956 --> 00:11:32,292 お前に似たんや。 155 00:11:32,292 --> 00:11:34,227 そうかもしれません。 156 00:11:34,227 --> 00:11:37,964 けど 子どもらしゅうない悪さをいたします。 157 00:11:37,964 --> 00:11:41,668 先が思いやられます。 158 00:11:45,838 --> 00:11:48,975 久しぶりに帰った夜は 酒は要らん。 159 00:11:48,975 --> 00:11:50,977 何で? 160 00:11:52,845 --> 00:11:55,148 おふさ…。 161 00:11:57,650 --> 00:12:00,353 ええ香りや。 162 00:12:02,922 --> 00:12:05,825 弥吉。 何をするんや。 163 00:12:05,825 --> 00:12:08,261 弥吉 お父はんや。 164 00:12:08,261 --> 00:12:10,597 (弥吉)知らん! 165 00:12:10,597 --> 00:12:13,933 何や? その目は…。 166 00:12:13,933 --> 00:12:20,807 ♬~ 167 00:12:20,807 --> 00:12:23,810 わしのガキのころに そっくりや。 168 00:12:35,955 --> 00:12:38,258 うま~い! 169 00:12:40,293 --> 00:12:43,630 (新蔵)堺屋の商い高は 一日五百両。➡ 170 00:12:43,630 --> 00:12:47,967 それに引き換え こっちは百両にもならん。 171 00:12:47,967 --> 00:12:51,971 これでは 北風の沽券に関わる。 172 00:12:54,641 --> 00:12:58,978 同じ辰悦丸の荷で 私も こちらに立ち会っておりますのに。 173 00:12:58,978 --> 00:13:04,584 堺屋のほうは 弟の金兵衛どんはじめ 辰悦丸の船乗り達が➡ 174 00:13:04,584 --> 00:13:08,254 大声を上げて 威勢よく売っとるそうやないか。 175 00:13:08,254 --> 00:13:10,923 大坂から来た仲買人まで➡ 176 00:13:10,923 --> 00:13:14,260 辰悦丸の荷なら 堺屋へ行け言うておる。 177 00:13:14,260 --> 00:13:16,929 あんた わざわざ嫌がらせするために➡ 178 00:13:16,929 --> 00:13:20,266 荷をよこしてきたようなもんやな。 それは違います。 179 00:13:20,266 --> 00:13:22,935 ⚟嘉兵衛さん! 何や? 180 00:13:22,935 --> 00:13:26,806 旦那様が 湯殿でお呼びでっせ。 ほんまか。 181 00:13:26,806 --> 00:13:28,808 失礼いたします。 182 00:13:28,808 --> 00:13:33,946 (御影屋松右衛門)嘉兵衛さんが 蝦夷地から 辰悦丸に荷を満載して➡ 183 00:13:33,946 --> 00:13:36,282 兵庫湊に帰ってきたおかげで➡ 184 00:13:36,282 --> 00:13:40,153 大坂のほうからも商人が来てくれた。 いやいや ありがたい事や。 185 00:13:40,153 --> 00:13:45,291 うん。 まあ ほかの店の連中は いろいろ言うておる。 186 00:13:45,291 --> 00:13:48,628 嘉兵衛は 北風の出入りやとか➡ 187 00:13:48,628 --> 00:13:52,965 わしの世話で薬師丸を手に入れ 船持ちの身になり➡ 188 00:13:52,965 --> 00:13:55,635 それがもとで 商いが膨らみ➡ 189 00:13:55,635 --> 00:13:58,971 辰悦丸を造らせたんやとか。 190 00:13:58,971 --> 00:14:03,810 まあ 世の中というものは 悪いうわさを立てられるうちが花やで。 191 00:14:03,810 --> 00:14:08,247 そうや。 出る杭は打たれるいうてな。 192 00:14:08,247 --> 00:14:14,120 高田屋の品物はええという 評判を聞いたぞ。 193 00:14:14,120 --> 00:14:20,827 質 量ともに ごまかしがのうて 荷造りも しっかりしているとな。 194 00:14:20,827 --> 00:14:23,596 それは 北風様も同じでございます。 195 00:14:23,596 --> 00:14:28,267 高田屋は 北風をしのごうと しているのではないかとも➡ 196 00:14:28,267 --> 00:14:30,603 うわさに聞いた。 197 00:14:30,603 --> 00:14:33,940 めっそうもない。 とんでもないうわさでございます。 198 00:14:33,940 --> 00:14:38,811 北風というのはな 北風様などといわれ➡ 199 00:14:38,811 --> 00:14:42,949 神仏に次ぐとまで ありがたがられているのや。➡ 200 00:14:42,949 --> 00:14:48,621 地元の人々のために 自分の利益を犠牲にして尽くし➡ 201 00:14:48,621 --> 00:14:51,290 今日の繁栄をもたらした。 202 00:14:51,290 --> 00:14:58,631 兵庫湊で 北風様に盾ついたんでは 商人としては立ちゆかんぞ。 203 00:14:58,631 --> 00:15:00,900 よう分かっております。 204 00:15:00,900 --> 00:15:03,236 嘉兵衛。 はい。 205 00:15:03,236 --> 00:15:08,107 明日から辰悦丸の積み荷は扱わへん。 206 00:15:08,107 --> 00:15:13,880 これは また 北風様ともあろう御仁が了見が狭い。 207 00:15:13,880 --> 00:15:17,250 御影屋はん うん? わしは この男から➡ 208 00:15:17,250 --> 00:15:21,587 一文でも 銭をもらおうとは 思うとらんのです。 209 00:15:21,587 --> 00:15:29,262 辰悦丸の積み荷の三分の一で 五百石積みの船 一艘分やから➡ 210 00:15:29,262 --> 00:15:35,935 それだけ 利も大きい。 その分 嘉兵衛に儲けてもらいたい。 211 00:15:35,935 --> 00:15:39,272 そして 新しい船も造ってもらいたい。 212 00:15:39,272 --> 00:15:42,175 それが 兵庫のためになる。 213 00:15:42,175 --> 00:15:47,180 こりゃ また 度量が大きい! 214 00:15:50,283 --> 00:15:57,156 お前は わしの恩を 受けとうはないと思うやろうが➡ 215 00:15:57,156 --> 00:16:06,232 生涯 わしには足を向けられんという 心がけだけは持っておれ。 216 00:16:06,232 --> 00:16:08,534 はい。 217 00:16:16,242 --> 00:16:19,545 あれ 何じゃ? うん? 218 00:16:22,114 --> 00:16:25,251 ばあちゃん ばあちゃん…! 219 00:16:25,251 --> 00:16:30,590 ♬~ 220 00:16:30,590 --> 00:16:32,925 えらいこっちゃ…! 221 00:16:32,925 --> 00:16:44,937 ♬~ 222 00:16:44,937 --> 00:16:48,941 ⚟(和田屋喜十郎)えらいこっちゃ! えらいこっちゃ…! 223 00:16:57,283 --> 00:16:59,952 かっ… 帰ってきましたで。 224 00:16:59,952 --> 00:17:01,888 (およし)誰が? 225 00:17:01,888 --> 00:17:04,790 誰がって… あの…。 226 00:17:04,790 --> 00:17:06,759 ⚟(幸蔵)旦那はん! 227 00:17:06,759 --> 00:17:11,898 旦那はん! 鯨のような ものすごい千石船で➡ 228 00:17:11,898 --> 00:17:13,833 今 嘉兵衛が こいさんと! 229 00:17:13,833 --> 00:17:17,570 (網屋幾右衛門)うるさいな! わしは知らん。 230 00:17:17,570 --> 00:17:21,240 男の子も一緒で。 231 00:17:21,240 --> 00:17:25,111 男の子? かわいい子か? 232 00:17:25,111 --> 00:17:29,115 ♬~ 233 00:17:29,115 --> 00:17:31,250 おふさ! 234 00:17:31,250 --> 00:17:34,153 おっかさん! おとっつぁん! 235 00:17:34,153 --> 00:17:36,923 おお~! みんな そろっとるのう。 236 00:17:36,923 --> 00:17:46,265 ♬~ 237 00:17:46,265 --> 00:17:48,935 おっかさん…! 238 00:17:48,935 --> 00:17:55,808 ♬~ 239 00:17:55,808 --> 00:18:00,546 (おらく)嘉兵衛さん なんと ものすごい船で帰って。 240 00:18:00,546 --> 00:18:03,449 義叔父さん… 叔母さん。 241 00:18:03,449 --> 00:18:08,220 わしは もう 何と言っていいのか…。 242 00:18:08,220 --> 00:18:12,892 生きとるうちによう こんな どでかい船が見られてよう➡ 243 00:18:12,892 --> 00:18:16,228 ええ冥土の土産よのう。 244 00:18:16,228 --> 00:18:22,568 大したもんじゃ…! 毎日 わしはよう➡ 245 00:18:22,568 --> 00:18:25,471 菜の花の中から 毎日➡ 246 00:18:25,471 --> 00:18:30,242 遠い海ばっかり見とった嘉兵衛さんの姿➡ 247 00:18:30,242 --> 00:18:33,913 思い出しとったんよ。 はい…。 248 00:18:33,913 --> 00:18:40,586 幸蔵 八分いうのは 一年やったな? 249 00:18:40,586 --> 00:18:44,256 嘉兵衛さんを八分にしたのは 一年だけ。 250 00:18:44,256 --> 00:18:49,595 そうか。 そんなら もう 口を利いても ええんやな。 251 00:18:49,595 --> 00:18:51,597 へい。 252 00:18:54,934 --> 00:18:56,869 嘉兵衛! 253 00:18:56,869 --> 00:18:58,871 はい。 254 00:19:08,481 --> 00:19:11,484 おふさを頼む。 255 00:19:14,220 --> 00:19:16,555 はい。 256 00:19:16,555 --> 00:19:33,839 ♬~ 257 00:19:39,245 --> 00:19:43,582 一人で何してるんな。 258 00:19:43,582 --> 00:19:47,253 何にも。 259 00:19:47,253 --> 00:19:51,123 ぼ~っと しとったんやわ。 260 00:19:51,123 --> 00:19:54,126 蝦夷の事を考えていたんでしょう。 261 00:19:57,263 --> 00:20:01,133 ご公儀のお役人の高橋様というお方が➡ 262 00:20:01,133 --> 00:20:04,603 あんたの事を高う買うておられるとか。 263 00:20:04,603 --> 00:20:07,273 金兵衛に聞いたのか? 264 00:20:07,273 --> 00:20:09,275 いいえ。 265 00:20:15,147 --> 00:20:17,283 文治か? 266 00:20:17,283 --> 00:20:21,954 文治は あんたに命をささげています。 267 00:20:21,954 --> 00:20:24,623 文治が何と言うた? 268 00:20:24,623 --> 00:20:30,296 ご公儀が あんたの事を 高う買うているので心配やと。 269 00:20:30,296 --> 00:20:32,998 侍は大嫌いやて。 270 00:20:40,306 --> 00:20:43,008 おふさ。 271 00:20:45,978 --> 00:20:51,317 この間 北風様に こう言われた。 272 00:20:51,317 --> 00:20:58,324 「生涯 このわしに足を向けて寝ない という気持ちだけは持っておけ」と…。 273 00:20:59,992 --> 00:21:01,927 何や? 274 00:21:01,927 --> 00:21:08,601 そんな事… あんたに言えば言うだけ 逆の気持ちにさせるもんを。 275 00:21:08,601 --> 00:21:13,272 あんたは 人に従うのが大嫌いな人やもんね。 276 00:21:13,272 --> 00:21:17,943 海にしか従えん人やのに。 いや そうやない。 277 00:21:17,943 --> 00:21:24,817 わしは 北風様には 終生 足を向けへんが…。 278 00:21:24,817 --> 00:21:27,620 ただ➡ 279 00:21:27,620 --> 00:21:35,961 蝦夷地に行って あの辺りの様子を つぶさに見とると➡ 280 00:21:35,961 --> 00:21:39,298 兵庫湊の事だけを 考えてとるわけにはいかんのや。 281 00:21:39,298 --> 00:21:45,171 この国の事? そうや。 282 00:21:45,171 --> 00:21:52,311 オロシャは 必ず やって来る。 同じ海で つながっとるんや。 283 00:21:52,311 --> 00:21:57,316 オロシャ国は 目と鼻の先じゃ。 284 00:21:59,985 --> 00:22:03,856 あんた 蝦夷に店を移すつもりですか? 285 00:22:03,856 --> 00:22:10,596 うん。 これからの高田屋は 蝦夷地一本でいく。 286 00:22:10,596 --> 00:22:15,935 嘉蔵 金兵衛も 喜んで わしの意見に従う言うとる。 287 00:22:15,935 --> 00:22:19,805 淡路の弟達にも手伝うてもらう。 288 00:22:19,805 --> 00:22:26,946 箱館に町をつくり 船建場も造る。 289 00:22:26,946 --> 00:22:29,248 それとな…。 290 00:22:31,817 --> 00:22:36,956 オロシャ国と 商いをやろう思っとるんや。 291 00:22:36,956 --> 00:22:39,859 それは 重い罪でございますやろ。 292 00:22:39,859 --> 00:22:43,295 同じ一つの海じゃわい。 293 00:22:43,295 --> 00:22:48,634 国が禁じたところで船は行く。 294 00:22:48,634 --> 00:22:51,537 仲ようせんといかんのや。 295 00:22:51,537 --> 00:22:56,976 それは いずれ 北風様と仲が悪うなるという事を➡ 296 00:22:56,976 --> 00:22:59,879 覚悟しておけという事でございますね。 297 00:22:59,879 --> 00:23:03,582 そうなるかもしれんのう。 298 00:23:03,582 --> 00:23:07,253 じゃが おふさ➡ 299 00:23:07,253 --> 00:23:11,590 もともと わしは➡ 300 00:23:11,590 --> 00:23:14,927 ここの浜一つよ。 301 00:23:14,927 --> 00:23:17,596 もとは ここ➡ 302 00:23:17,596 --> 00:23:22,935 この小さな淡路の海を 見てるだけの男やったんや。 303 00:23:22,935 --> 00:23:29,608 失敗しても ここ一つ。 ここに戻ってくればええんじゃい。 304 00:23:29,608 --> 00:23:33,479 まあ あんたの好きにしたらええわ。 305 00:23:33,479 --> 00:23:36,482 死んでも一緒や。 306 00:23:36,482 --> 00:23:39,952 ⚟兄やん! 307 00:23:39,952 --> 00:23:42,855 おう! よう来たの。 308 00:23:42,855 --> 00:23:46,825 みんな 船に乗ってくれ。 人手が足りんのや。 309 00:23:46,825 --> 00:23:49,628 おっかさんは どうしたんだ? 310 00:23:49,628 --> 00:23:52,965 自分のような者が姿を見せると 嘉兵衛に恥をかかせる言うて。 311 00:23:52,965 --> 00:23:54,900 どう言うても来んのじゃ。 312 00:23:54,900 --> 00:23:58,637 あほ! わしが淡路に戻ったのは おふくろ様に会うためじゃ。 313 00:23:58,637 --> 00:24:00,639 何でや! 314 00:24:16,588 --> 00:24:35,941 ♬~ 315 00:24:35,941 --> 00:24:37,876 おっかさん! 316 00:24:37,876 --> 00:24:40,279 おとっつぁん! 317 00:24:40,279 --> 00:25:11,243 ♬~ 318 00:25:11,243 --> 00:25:15,948 <それから 2年の歳月が流れた> 319 00:25:24,790 --> 00:25:28,260 嘉蔵さんが留守ばっかりで つらい。 320 00:25:28,260 --> 00:25:33,132 女房のつらい分 船の入った湊の人が 幸せになるんやから。 321 00:25:33,132 --> 00:25:37,936 人が幸せになっても うれしゅうないわ。 322 00:25:37,936 --> 00:25:44,243 そのうち たまに帰ってくる時の うれしさが分かるようになります。 323 00:25:45,811 --> 00:25:50,516 この豆腐も遠い昔 船に乗って唐から来たのよ。 324 00:25:50,516 --> 00:25:55,287 西瓜も南瓜も薩摩芋も みんな船で来た。 325 00:25:55,287 --> 00:26:00,125 西国で米のとれない土には 薩摩芋を植えて食べるし➡ 326 00:26:00,125 --> 00:26:04,096 南瓜のありがたさは おじうさんも よう知ってるでしょう? 327 00:26:04,096 --> 00:26:09,234 それも これも みんな船のおかげやねん。 328 00:26:09,234 --> 00:26:11,170 これ! 弥吉! 329 00:26:11,170 --> 00:26:13,572 これ なんという事を! 330 00:26:13,572 --> 00:26:16,475 まったく しょうがない。 331 00:26:16,475 --> 00:26:19,912 義姉さん… 寂しゅうない? 332 00:26:19,912 --> 00:26:23,248 そりゃ 寂しいけど…。 333 00:26:23,248 --> 00:26:27,586 女子でも寂しいのに 男は もっと寂しいでしょう。 334 00:26:27,586 --> 00:26:29,922 どうしてるんな? 335 00:26:29,922 --> 00:26:32,825 湊 湊に 女子が おるわいね。 336 00:26:32,825 --> 00:26:35,594 はあ? 心配ない。 337 00:26:35,594 --> 00:26:37,529 三年もすれば慣れる。 338 00:26:37,529 --> 00:26:39,465 ⚟こいさん! 339 00:26:39,465 --> 00:26:42,468 こいさん 北風の旦那はんです。 340 00:26:47,206 --> 00:26:49,141 おいでなさりませ。 341 00:26:49,141 --> 00:26:53,946 水をもらいたいのやが…。 朝から歩き回ってな。 342 00:26:53,946 --> 00:26:56,615 へい 今すぐ。 343 00:26:56,615 --> 00:27:03,222 十日に一遍ほど 朝はようから 野山を歩き回るのが わしの楽しみでな。 344 00:27:03,222 --> 00:27:07,559 これ 文鳥や。 あんたに あげまひょ。 345 00:27:07,559 --> 00:27:10,562 まあ かわいい。 346 00:27:12,231 --> 00:27:15,133 嘉兵衛どんから 文は来ますか? 347 00:27:15,133 --> 00:27:19,104 はい。 筆まめな人でございます。 ああ… おおきに。 348 00:27:19,104 --> 00:27:24,243 そうか。 いや わしも この間 文をもろた。 349 00:27:24,243 --> 00:27:28,580 蝦夷地へ北風の店を出せと 書いてあった。 350 00:27:28,580 --> 00:27:32,451 まあ…! 兵庫の北風様に 差し出がましい事を。 351 00:27:32,451 --> 00:27:37,589 いや 嘉兵衛は 恩を返そうと思うてくれてる。 352 00:27:37,589 --> 00:27:41,460 これからの蝦夷地は おもろうなるらしい。 353 00:27:41,460 --> 00:27:46,598 けど わしは 蝦夷の事は 嘉兵衛に任せてあると思うてる。 354 00:27:46,598 --> 00:27:49,935 そやから 返事は こう書いてもろたらええ。 355 00:27:49,935 --> 00:27:53,605 わしは ちょっと 機嫌が悪かったと。 356 00:27:53,605 --> 00:27:59,278 「ちょっと」ではなく「ものすごく」と 書いておきましょう。 357 00:27:59,278 --> 00:28:03,148 嘉兵衛は 少し増長しているのでございます。 358 00:28:03,148 --> 00:28:07,886 何やら ご公儀の高橋様というお方に 見込まれまして➡ 359 00:28:07,886 --> 00:28:12,558 厚岸のほうに公儀米を運ぶとか 申しておりました。 360 00:28:12,558 --> 00:28:16,428 公儀米? そうか。 361 00:28:16,428 --> 00:28:21,233 嘉兵衛は あほで 頼まれると嫌とは申せません。 362 00:28:21,233 --> 00:28:25,103 商人は 商いの事だけをやる事や。 363 00:28:25,103 --> 00:28:30,576 武家のために働いたら そら 商人とは言えまへん。 364 00:28:30,576 --> 00:28:33,245 文に そう書いておきましょう。 365 00:28:33,245 --> 00:28:42,921 ♬~ 366 00:28:42,921 --> 00:28:45,591 かごの鳥は哀れやわ。 367 00:28:45,591 --> 00:28:48,894 勝手気ままに飛ばせてやるほうがええ。 368 00:28:54,600 --> 00:28:56,935 これより 一度 兵庫に戻りまして➡ 369 00:28:56,935 --> 00:29:00,539 来年の春には 出羽の酒田より 公儀米を運んでまいります。 370 00:29:00,539 --> 00:29:02,874 (高橋)すまんな。 よろしく頼む。 371 00:29:02,874 --> 00:29:05,777 善兵衛! 船酔いの具合は どうや? 372 00:29:05,777 --> 00:29:09,748 まだ 体が揺れてるようで 時々 吐き気がする。 373 00:29:09,748 --> 00:29:14,219 あかん あかん。 しばらく金兵衛を手伝え。 374 00:29:14,219 --> 00:29:18,090 高橋様 恐れながら…。 何だ? 375 00:29:18,090 --> 00:29:21,560 厚岸へ公儀米を運ぶ事は よい事といたしましても➡ 376 00:29:21,560 --> 00:29:24,896 その後の事にござりまするが…。 うん。 377 00:29:24,896 --> 00:29:29,234 高田屋のご公儀御用は この一件だけに いたしてくださりませぬか。 378 00:29:29,234 --> 00:29:32,137 金兵衛。 高橋様に失礼な口を利くな。 379 00:29:32,137 --> 00:29:37,109 兄やんは そう言うが 箱館には 高田屋を泊めてくれようとする宿もない。 380 00:29:37,109 --> 00:29:39,578 しかたなしに家を建てておるんや。 381 00:29:39,578 --> 00:29:42,247 いずれは 高田屋を建てなあかんのや。 382 00:29:42,247 --> 00:29:46,918 まあ 遅かれ早かれ ご公儀の定御雇船頭になろう。 383 00:29:46,918 --> 00:29:51,590 それは困ります。 定御雇船頭などというものになり➡ 384 00:29:51,590 --> 00:29:53,925 ご公儀に縛られるのは 御免でございます。 385 00:29:53,925 --> 00:29:57,596 それなら 兵庫湊に 北風様という立派な御仁がおられます。 386 00:29:57,596 --> 00:30:02,267 北風荘右衛門か。 あれは ただの商人だ。 387 00:30:02,267 --> 00:30:06,138 ただの商人…。 388 00:30:06,138 --> 00:30:10,142 定御雇船頭というのは わしの軽口じゃ。 忘れてくれ。 389 00:30:10,142 --> 00:30:14,446 それより 公儀米の事 よろしく頼んだぞ。はい。 390 00:30:18,817 --> 00:30:21,953 兄やん! 391 00:30:21,953 --> 00:30:25,824 分かっとる。 定御雇船頭などというものに このわしがなるかい。 392 00:30:25,824 --> 00:30:29,628 ご公儀の定御雇なら話は違う。 何やと? 393 00:30:29,628 --> 00:30:32,964 堺屋の鳥取藩御用とは 格が違うで。 394 00:30:32,964 --> 00:30:38,837 この淡路の百姓の伜達が 日本中の船乗りの頭になる事や。 395 00:30:38,837 --> 00:30:43,608 日本中の海の大将や。 北風は ただの商人やってよ。 396 00:30:43,608 --> 00:30:45,544 金兵衛…。 397 00:30:45,544 --> 00:30:49,981 わしは どうも 北風様は好かん。 398 00:30:49,981 --> 00:30:55,654 一生 北風様の風下に立つのはかなわん。 399 00:30:55,654 --> 00:30:58,557 金兵衛… 恩人やぞ。 400 00:30:58,557 --> 00:31:02,260 そら 分かっとるがな。 けど 一生 兄やんを➡ 401 00:31:02,260 --> 00:31:07,132 自分の子分にしておくつもりなんは お断りやで。 402 00:31:07,132 --> 00:31:14,606 兄やんは もっとでかい。 もっともっと とてつもなくでかいよ。 403 00:31:14,606 --> 00:31:19,911 金兵衛よ 海の事だけを考えてればええ。 404 00:31:25,250 --> 00:31:31,156 <寛政11年 正月 幕府は 蝦夷地のうち 東蝦夷地を➡ 405 00:31:31,156 --> 00:31:35,160 7年間の期限つきで 松前藩から借り上げた> 406 00:31:37,295 --> 00:31:43,001 <兵庫に戻った嘉兵衛は 北風荘右衛門に呼び出された> 407 00:31:46,304 --> 00:31:51,176 ご公儀は 一体 どういう おつもりなのやろう? 408 00:31:51,176 --> 00:31:53,178 …と申されますと? 409 00:31:53,178 --> 00:31:57,649 七年たてば 松前様に お戻しになるのか。 410 00:31:57,649 --> 00:32:01,920 それとも それは 松前藩を怒らせないための口実で➡ 411 00:32:01,920 --> 00:32:04,823 結局は お取り上げあそばすのか。 412 00:32:04,823 --> 00:32:08,260 オロシャが 千島を伝って 南に下りつつあり➡ 413 00:32:08,260 --> 00:32:11,930 いまや エトロフ島 クナシリ島の蝦夷までが➡ 414 00:32:11,930 --> 00:32:14,833 オロシャに懐柔されているという説が あります。 415 00:32:14,833 --> 00:32:18,136 オロシャですか…。 416 00:32:19,805 --> 00:32:23,542 蝦夷地の場所請負は➡ 417 00:32:23,542 --> 00:32:28,947 なるほど 蝦夷を牛馬のように扱うて 誠に けしからぬ。 418 00:32:28,947 --> 00:32:32,818 それは 商人が 今まで続けてきたもんで➡ 419 00:32:32,818 --> 00:32:37,622 それを 一朝に廃して あとは どうなさるおつもりやろう? 420 00:32:37,622 --> 00:32:40,292 ご公儀の直轄になるのではないかと。 421 00:32:40,292 --> 00:32:46,965 ご公儀がなさる! ご公儀の役人に 商いができまっか? 422 00:32:46,965 --> 00:32:50,635 蝦夷でお会いした 高橋三平様というお方は➡ 423 00:32:50,635 --> 00:32:52,571 大層立派なお方で➡ 424 00:32:52,571 --> 00:32:56,508 蝦夷を なんとかしたいという志を 持っておられました。 425 00:32:56,508 --> 00:32:58,510 志? 426 00:32:58,510 --> 00:33:02,914 はい。 私は 武士を毛嫌いしておりましたが➡ 427 00:33:02,914 --> 00:33:06,251 高橋様のような 志を持ったお方がいる事を知り…。 428 00:33:06,251 --> 00:33:09,154 若いな…。 429 00:33:09,154 --> 00:33:14,159 若いと申されましても もう 三十一でございます。 430 00:33:17,863 --> 00:33:20,799 それで 北風様は何て言うた? 431 00:33:20,799 --> 00:33:24,936 「三十一にもなって青い事を申すな」と 言われました。 432 00:33:24,936 --> 00:33:30,609 それは お前が ご公儀の侍と つきおうてる事に やいてるのや。 433 00:33:30,609 --> 00:33:35,280 まさか 今度の話をせなんだろうな? はい。 434 00:33:35,280 --> 00:33:39,951 出羽の酒田から 公儀米を厚岸に運ぶというのは➡ 435 00:33:39,951 --> 00:33:43,622 公儀御雇船という事になる。 436 00:33:43,622 --> 00:33:46,524 お断りすればよかったと思うております。 437 00:33:46,524 --> 00:33:51,963 功名心に はやって 冬の海に船を走らすなどという事は➡ 438 00:33:51,963 --> 00:33:55,300 北風様は軽蔑なさろうな。 439 00:33:55,300 --> 00:33:58,637 決して 功名心などというものではございません。 440 00:33:58,637 --> 00:34:03,241 その事を このわしに頼んだ御仁が とても立派なお方で。 441 00:34:03,241 --> 00:34:10,115 人がええ。 冬の石州灘を通るなというのが 船乗りの鉄則じゃ。 442 00:34:10,115 --> 00:34:16,588 しかし 三月までに厚岸に着くためには 今しかありません。 443 00:34:16,588 --> 00:34:19,925 ハハハハ…! ⚟(文治)大将! 444 00:34:19,925 --> 00:34:23,261 おう 文治…。 大将! 弥吉が怖がってるんですが。 445 00:34:23,261 --> 00:34:25,196 何や 何や 何や! 446 00:34:25,196 --> 00:34:28,133 弥吉! 何を怖がっとるんや。 447 00:34:28,133 --> 00:34:32,938 弥吉よ 辰悦丸が待っとる。 さあ 行くぞ! 448 00:34:32,938 --> 00:34:35,273 (弥吉)嫌や! 船なんぞ乗らん! 449 00:34:35,273 --> 00:34:41,146 怖がるな! このわしがついとるやろ。 ほら 弥吉 見てみ! 450 00:34:41,146 --> 00:34:45,617 (文治)弥吉 怖がんな! 頑張れ! 451 00:34:45,617 --> 00:34:50,956 弥吉よ。 箱館の町を見せてやるからな。 452 00:34:50,956 --> 00:34:54,626 きれいな町じゃい。 453 00:34:54,626 --> 00:35:00,332 何や 泣いとるのか? 泣くな 男が…。 弥吉! 454 00:35:02,901 --> 00:35:05,570 何や その目は! 455 00:35:05,570 --> 00:35:07,505 すんまへん…。 456 00:35:07,505 --> 00:35:09,808 弥吉…。 457 00:35:14,579 --> 00:35:24,589 〽 我と そなたは女夫星 458 00:35:24,589 --> 00:35:35,233 〽 必ず添うと すがり寄り 459 00:35:35,233 --> 00:35:44,909 〽 二人が中に 降る涙 460 00:35:44,909 --> 00:36:02,594 〽 川の水嵩も まさるべし 461 00:36:05,230 --> 00:36:09,901 (おじう)船乗りの女房が寂しいのは常や なんて言うておいて➡ 462 00:36:09,901 --> 00:36:14,773 自分が寂しうて病になれば世話ないわね。 463 00:36:14,773 --> 00:36:18,243 はい。 ありがとう。 464 00:36:18,243 --> 00:36:22,580 けど 冬の海に 船を走らせなくてもいいのにって➡ 465 00:36:22,580 --> 00:36:24,516 嘉蔵も言うてたわ。 466 00:36:24,516 --> 00:36:26,918 船が好きなんですよ。 467 00:36:26,918 --> 00:36:32,257 けどな 秋の終わりに戻ってきて 正月が済んだら出ていくなんて。 468 00:36:32,257 --> 00:36:35,927 今年は 一つやった。 469 00:36:35,927 --> 00:36:38,263 一つ? 470 00:36:38,263 --> 00:36:41,599 うちが かぜひいて 具合が悪うてな➡ 471 00:36:41,599 --> 00:36:44,502 餅つきは 一度やった。 472 00:36:44,502 --> 00:36:48,273 餅つきが 一度? 473 00:36:48,273 --> 00:36:51,176 うわっ! それ 夫婦の事? 474 00:36:51,176 --> 00:36:54,145 それで ややが出来た。 475 00:36:54,145 --> 00:36:57,282 へえ…! やや子なん? 476 00:36:57,282 --> 00:37:04,556 そうや。 嘉兵衛さんにも 箱館に女手が要るわなあ。 477 00:37:04,556 --> 00:37:06,491 えっ? 478 00:37:06,491 --> 00:37:12,497 (鳥の鳴き声) 479 00:37:14,566 --> 00:37:19,904 ♬~ 480 00:37:19,904 --> 00:37:26,578 <厚岸に公儀米を運んだ嘉兵衛は 再び 箱館に向かった> 481 00:37:26,578 --> 00:37:38,590 ♬~ 482 00:37:38,590 --> 00:37:41,926 <嘉兵衛が 箱館の浜に上陸すると➡ 483 00:37:41,926 --> 00:37:45,263 以前とは打って変わっての人の行き来に 驚いた。➡ 484 00:37:45,263 --> 00:37:50,602 そして 蝦夷地での商いの拠点となる 箱館本店も出来上がっていた。➡ 485 00:37:50,602 --> 00:37:54,272 すべては 弟の金兵衛が やったものである> 486 00:37:54,272 --> 00:37:58,943 これは また ええ品ばかりやのう。 487 00:37:58,943 --> 00:38:04,215 さすがに 蝦夷の花や。 大坂へ運ぶと 高うに売れる。 488 00:38:04,215 --> 00:38:09,087 船一艘の ひと航海で 船が一艘 買えるほど儲かるわ。 489 00:38:09,087 --> 00:38:12,557 私は 高田屋の仕事を 銭儲けとは思うておりません。 490 00:38:12,557 --> 00:38:17,228 蝦夷を 京や江戸と同じ暮らしのできる 土地にするためでございます。 491 00:38:17,228 --> 00:38:21,099 そうか。 金兵衛さんは 若いのに ようできている。 492 00:38:21,099 --> 00:38:23,101 恐れ入ります。 493 00:38:23,101 --> 00:38:26,905 金兵衛。 武士の姿が 方々 目についたが…。 494 00:38:26,905 --> 00:38:31,576 ご公儀が近隣の諸藩に命じ 蝦夷地警備の兵を出させたんです。 495 00:38:31,576 --> 00:38:35,446 そうか。 松前様のほうは大変やろう。 496 00:38:35,446 --> 00:38:38,449 大変です。 私が道を歩いてて➡ 497 00:38:38,449 --> 00:38:41,586 松前様の御家中のお方と行き合って 丁寧に頭を下げても➡ 498 00:38:41,586 --> 00:38:43,521 横を お向きになります。 499 00:38:43,521 --> 00:38:49,260 「高田屋のやつか」言うて 地面に つばを吐きなさるお人もあります。 500 00:38:49,260 --> 00:38:51,930 御免! これは 高橋様。 501 00:38:51,930 --> 00:38:55,266 嘉兵衛! 御用米を運んでもらい かたじけなかった。 502 00:38:55,266 --> 00:38:57,602 冬の海なので案じておった。 503 00:38:57,602 --> 00:39:01,873 とんでもございません。 高橋様。 こちらが いつぞや お話をした➡ 504 00:39:01,873 --> 00:39:04,209 兵庫の松右衛門様でございます。 505 00:39:04,209 --> 00:39:07,879 ああ…! 蝦夷調査役の高橋です。 506 00:39:07,879 --> 00:39:10,215 松右衛門にございます。 507 00:39:10,215 --> 00:39:16,087 何やら 箱館の町をつくるのを手伝えと 言われて ついてまいりました。 508 00:39:16,087 --> 00:39:21,226 嘉兵衛さんが ご公儀の定御雇船頭になるまで➡ 509 00:39:21,226 --> 00:39:23,561 力を貸すつもりでございます。 510 00:39:23,561 --> 00:39:26,464 これは また 生臭い事を。 511 00:39:26,464 --> 00:39:29,767 (笑い声) 512 00:39:36,908 --> 00:39:41,579 ほう… これは なかなか立派な店構えではないか。 513 00:39:41,579 --> 00:39:43,514 (金兵衛)恐れ入ります。 514 00:39:43,514 --> 00:39:46,217 (五平)嘉兵衛様。 515 00:39:52,223 --> 00:39:54,158 こちらは つねさんと申しまして➡ 516 00:39:54,158 --> 00:39:56,127 様似の網屋の ご内儀でございます。 517 00:39:56,127 --> 00:39:58,930 御主人は 一昨年 海で お亡くなりになられまして➡ 518 00:39:58,930 --> 00:40:01,266 今は 一人でございます。 519 00:40:01,266 --> 00:40:03,201 兄やん 気に入らんか? 520 00:40:03,201 --> 00:40:06,938 何を言うてんのや お前は。 義姉さんから頼まれたんや。 521 00:40:06,938 --> 00:40:10,808 箱館で身の回りの世話をする人を 探してくれと。 522 00:40:10,808 --> 00:40:13,811 おふさが? 523 00:40:13,811 --> 00:40:18,283 主人がいないので 子どもに 満足にごはんも食べさせてやれません。 524 00:40:18,283 --> 00:40:22,153 どうか 私を そばに置いてくださいまし。 525 00:40:22,153 --> 00:40:25,156 子が おるのか? はい。 526 00:40:25,156 --> 00:40:27,292 よし 分かった。 527 00:40:27,292 --> 00:40:31,963 ♬~ 528 00:40:31,963 --> 00:40:36,834 <この年 嘉兵衛は クナシリ エトロフ間の 潮の流れを調査した。➡ 529 00:40:36,834 --> 00:40:40,305 最大の難所とされた この海域で➡ 530 00:40:40,305 --> 00:40:42,974 嘉兵衛は 3本の潮流を発見し➡ 531 00:40:42,974 --> 00:40:47,845 これを迂回する 新しい航路を開拓する事に成功した> 532 00:40:47,845 --> 00:40:55,553 ♬~ 533 00:41:00,458 --> 00:41:02,460 お戻りなさいませ。 534 00:41:02,460 --> 00:41:05,463 つねさん。 ただいま帰った。 535 00:41:09,934 --> 00:41:12,270 おふさは何か言うとったか? いや。 536 00:41:12,270 --> 00:41:15,173 ええ女子が見つかってよかったと 文に書いてあった。 537 00:41:15,173 --> 00:41:20,611 それよりも 北風が 辰悦丸で 出羽から公儀米を運んだ事を知り➡ 538 00:41:20,611 --> 00:41:23,281 番頭や手代が怒ってるらしい。 539 00:41:23,281 --> 00:41:25,216 そうか。 540 00:41:25,216 --> 00:41:31,622 このわしが 蝦夷地での商いを 独り占めする気やと思うておるんやろう。 541 00:41:31,622 --> 00:41:38,963 それとも 北風家は 武家とのつきあいを 毛嫌いしとるからのう。 542 00:41:38,963 --> 00:41:41,632 その どっちもや。 543 00:41:41,632 --> 00:41:45,970 公儀御用船になると 高田屋は 廻船問屋になれる。 544 00:41:45,970 --> 00:41:50,308 兵庫では 廻船問屋の株は 十三軒しかない。 545 00:41:50,308 --> 00:41:53,978 今 高田屋は 堺屋の株を使っているが➡ 546 00:41:53,978 --> 00:41:57,849 正式に 認められているわけではないからのう。 547 00:41:57,849 --> 00:42:02,787 船を買うには ともかく懸命に商いをしなければならん。 548 00:42:02,787 --> 00:42:07,525 しかし 幕府の御用になれば それができなくなる。 549 00:42:07,525 --> 00:42:11,262 そのとおりや。 やめるか? 550 00:42:11,262 --> 00:42:18,136 うん。 わしは 何だかんだ言うても 北風様には恩があるからのう。 551 00:42:18,136 --> 00:42:21,272 うん。 552 00:42:21,272 --> 00:42:24,609 ⚟(嘉四郎)高橋様が お越しです。 553 00:42:24,609 --> 00:42:27,945 高田屋! ご苦労であった。 554 00:42:27,945 --> 00:42:30,848 そなたが こたび➡ 555 00:42:30,848 --> 00:42:33,818 クナシリからエトロフへ渡る水路を 見いだした手柄は➡ 556 00:42:33,818 --> 00:42:38,289 合戦でいえば 僅かの手勢を率いて 敵の城を落としたより大きい。 557 00:42:38,289 --> 00:42:43,161 とんでもない。 しかし エトロフは➡ 558 00:42:43,161 --> 00:42:47,632 淡路くらいの小さな国を一つ得たほどの 利益をもたらすかと思われます。 559 00:42:47,632 --> 00:42:52,303 ハハハ…! さすがに 高田屋嘉兵衛だ。 560 00:42:52,303 --> 00:42:57,642 時にな 明日 箱館の役所から呼ばれると思うが➡ 561 00:42:57,642 --> 00:43:04,348 話の内容は 蝦夷地御用を勤めるようにという事だ。 562 00:43:08,586 --> 00:43:12,256 あなたも 厚岸 クナシリ エトロフの➡ 563 00:43:12,256 --> 00:43:15,159 蝦夷人の暮らしのひどい様子を 見たと思う。 564 00:43:15,159 --> 00:43:18,129 場所請負という 松前藩の圧政により➡ 565 00:43:18,129 --> 00:43:22,266 人々が 人間らしい暮らしが できないような状態になってるんだ。 566 00:43:22,266 --> 00:43:27,138 それに オロシャは 今 しきりに南へ向かおうとしている。 567 00:43:27,138 --> 00:43:29,607 たった一艘の軍船でも 上陸すれば➡ 568 00:43:29,607 --> 00:43:34,479 簡単に オロシャの領土とされてしまうだろう。 569 00:43:34,479 --> 00:43:40,785 嘉兵衛! 日本国のためだ。 570 00:43:44,956 --> 00:43:48,659 日本国のため…。 571 00:43:50,628 --> 00:43:52,930 何や? あれ! 572 00:43:55,967 --> 00:43:57,902 何じゃ? あのざまは…。 573 00:43:57,902 --> 00:44:04,242 ♬~ 574 00:44:04,242 --> 00:44:09,580 <日の丸は 幕府御用船のしるしである> 575 00:44:09,580 --> 00:44:12,917 ♬~ 576 00:44:12,917 --> 00:44:17,788 日の丸を掲げて 港に入ってきたそうですな。 577 00:44:17,788 --> 00:44:23,261 はい。 幕府の お役人の御命令で あの御用のもと➡ 578 00:44:23,261 --> 00:44:25,930 兵庫でも漁具を 仕入れなくてはなりません。 579 00:44:25,930 --> 00:44:29,600 クナシリとエトロフは どんな場所です? 580 00:44:29,600 --> 00:44:33,271 日本国にはまれな漁場でございます。 581 00:44:33,271 --> 00:44:36,173 それで? 582 00:44:36,173 --> 00:44:39,143 「それで?」と申されますと? 583 00:44:39,143 --> 00:44:42,947 高田屋が その二つの島を やるんですか? 584 00:44:42,947 --> 00:44:46,617 いいえ。 585 00:44:46,617 --> 00:44:52,623 兵庫の浦では 御用の日の丸は遠慮する事やな。 586 00:45:02,900 --> 00:45:05,236 (北風)何や? それは。 587 00:45:05,236 --> 00:45:08,139 幕府の御命令書でございます。 588 00:45:08,139 --> 00:45:10,141 何やて? 589 00:45:17,582 --> 00:45:21,452 「箱館ならびに エトロフ島において➡ 590 00:45:21,452 --> 00:45:27,925 船着場 造る事 お許しくだされそうろう」…。 591 00:45:27,925 --> 00:45:31,796 まったく わしという男は…。 592 00:45:31,796 --> 00:45:38,102 権柄ずくで言われると むらむらと反抗心が起こってのう。 593 00:45:40,938 --> 00:45:43,841 北風様に申し訳ない事をした。 594 00:45:43,841 --> 00:45:47,612 北風様は お怒りでございましたか? 595 00:45:47,612 --> 00:45:52,483 うん。 何も それをひけらかすつもりは なかったんやが➡ 596 00:45:52,483 --> 00:46:00,558 北風様の顔が 赤い色から すうっと白い色に変わってのう。 597 00:46:00,558 --> 00:46:05,229 それだけ 自分が大きゅうなったと思えばよい事。 598 00:46:05,229 --> 00:46:07,231 そうかの。 599 00:46:09,100 --> 00:46:11,102 弥吉! うわ~! 600 00:46:11,102 --> 00:46:13,104 何をするんや お前は! 601 00:46:13,104 --> 00:46:22,246 ♬~ 602 00:46:22,246 --> 00:46:24,181 今に見てろよ! 603 00:46:24,181 --> 00:46:26,117 誰に ものを言うとんのや! 604 00:46:26,117 --> 00:46:28,119 弥吉! お父はんに何するんや! 605 00:46:28,119 --> 00:46:30,588 誰が お父はんや! 知らんわ こんなやつ! 606 00:46:30,588 --> 00:46:34,458 弥吉! 弥吉! 607 00:46:34,458 --> 00:46:39,263 ♬~ 608 00:46:39,263 --> 00:46:42,166 海よりも思うようにならんわ。 609 00:46:42,166 --> 00:46:48,472 ♬~ 610 00:47:00,885 --> 00:47:03,554 今年は雪が多いのう。 611 00:47:03,554 --> 00:47:06,557 雪がとけるのは 四月でございましょう。 612 00:47:09,226 --> 00:47:13,097 金兵衛! 五月末に 大挙 エトロフへ行くぞ。 613 00:47:13,097 --> 00:47:16,901 そうか。 魚の取れ高は上がるかな? 614 00:47:16,901 --> 00:47:19,804 心配するな。 以前 エトロフで見た漁法は➡ 615 00:47:19,804 --> 00:47:23,240 鮭や鱒を もりで突くだけで 網はなかった。 616 00:47:23,240 --> 00:47:26,577 そうか。 兄やん 大きくやろう。 617 00:47:26,577 --> 00:47:32,249 大型図合船 二艘。 小型図合船 十三艘。 長呂船 数十艘。 618 00:47:32,249 --> 00:47:36,253 欲張るな 金兵衛。 ⚟おい! 嘉兵衛! 619 00:47:39,590 --> 00:47:43,928 もはや わしの事を 旦那と呼ぶな。 工楽様と呼べ。 620 00:47:43,928 --> 00:47:48,599 くらく様… ですか? ご公儀から名字を頂戴したのや。 621 00:47:48,599 --> 00:47:54,271 さまざまに工夫をし 私財を投じて 港を造った功により➡ 622 00:47:54,271 --> 00:47:59,143 「工夫を楽しむ」の略で「工楽」や。 623 00:47:59,143 --> 00:48:03,080 工楽松右衛門様にございますな。 そうや。 624 00:48:03,080 --> 00:48:07,218 おう そうや 町の図面 引いた。 625 00:48:07,218 --> 00:48:10,121 ほれ。 626 00:48:10,121 --> 00:48:16,560 内澗の海岸を埋め立て 掘割をうち その上に橋や。 627 00:48:16,560 --> 00:48:19,563 これが船建場や。 628 00:48:21,432 --> 00:48:26,904 (北風)昔は 雨が降ると町の人々が争うように➡ 629 00:48:26,904 --> 00:48:32,209 北風の表に やって来て 傘を取っていったものやが…。 630 00:48:34,779 --> 00:48:45,589 (北風)今は 店の前を通る人も減った。 もう 高田屋の時代になった。 631 00:48:45,589 --> 00:48:54,265 北風様と申せば 兵庫湊の神様ではございませぬか。 632 00:48:54,265 --> 00:48:58,569 それは昔の事や。 633 00:49:08,546 --> 00:49:13,217 北風の家も このとおりでね。 634 00:49:13,217 --> 00:49:18,889 高田屋の人々だけが 今 忙しそうにしてるなあ。 635 00:49:18,889 --> 00:49:22,760 はい。 エトロフ島へ運ぶ荷の調達を。 636 00:49:22,760 --> 00:49:28,232 エトロフ島? そこで嘉兵衛は場所請負をするのんか? 637 00:49:28,232 --> 00:49:31,569 ご公儀の御命令で嫌々でござります。 638 00:49:31,569 --> 00:49:37,241 やはり 蝦夷地御用というわけか。 639 00:49:37,241 --> 00:49:39,910 しかし エトロフ島は大変やろう。 640 00:49:39,910 --> 00:49:44,582 船を走らせてさえいたら 大きく 利が上がろうに。 641 00:49:44,582 --> 00:49:47,918 ええ オロシャとの事で。 642 00:49:47,918 --> 00:49:50,821 オロシャ? はい。 643 00:49:50,821 --> 00:49:54,792 商人が 政に首を突っ込む事はない。 644 00:49:54,792 --> 00:49:58,929 嘉兵衛は 死んでもいいと 思うております。 645 00:49:58,929 --> 00:50:02,633 そら死ぬな。 646 00:50:08,272 --> 00:50:12,943 (播州はん)こいさん。 647 00:50:12,943 --> 00:50:15,613 旦那様➡ 648 00:50:15,613 --> 00:50:19,483 嘉兵衛が 娘の名付け親に なってくれるよう申しました。 649 00:50:19,483 --> 00:50:22,286 とんでもない。 650 00:50:22,286 --> 00:50:28,626 北風風情が 蝦夷地御用の大商人の 娘の名など おそれ多い。 651 00:50:28,626 --> 00:50:34,632 ご公儀のお偉い人に付けてもろたら よろしい。 652 00:50:36,500 --> 00:50:41,639 あらあら まあ… 名付け親は嫌ですて。 653 00:50:41,639 --> 00:50:46,977 北風様 よっぽど お体が悪いのかもしれませんな。 654 00:50:46,977 --> 00:50:51,682 あのように お気持ちをむき出しにするお方では…。 655 00:50:53,317 --> 00:50:57,655 こいさん 「くに」いう名前は いかがでっしゃろな。 656 00:50:57,655 --> 00:50:59,590 「くに」? へい。 657 00:50:59,590 --> 00:51:07,264 嘉兵衛様 今 国の事で夢中でっしゃろ。 それで「くに」。 658 00:51:07,264 --> 00:51:12,136 ハハハ…! 播州はんゆうたら。 659 00:51:12,136 --> 00:51:15,839 くに…。 660 00:51:46,637 --> 00:51:48,639 あんた!? 661 00:51:52,309 --> 00:51:54,979 いつ エトロフからお帰りに? 662 00:51:54,979 --> 00:52:01,585 急な用件があってのう 江戸からの定期船で戻った。 663 00:52:01,585 --> 00:52:04,254 弥吉か? 664 00:52:04,254 --> 00:52:07,558 怒らんでください。 665 00:52:10,127 --> 00:52:13,597 弥吉 障子を張れ。 666 00:52:13,597 --> 00:52:16,500 自分でした事の始末は自分でするんや。 667 00:52:16,500 --> 00:52:20,270 あとで。 今は やめてください。 668 00:52:20,270 --> 00:52:22,573 どうしたんや? 669 00:52:25,943 --> 00:52:29,279 隣村の男の子と けんかして 手を…。 670 00:52:29,279 --> 00:52:34,151 そうか。 男の子のけんかはしかたがない。 671 00:52:34,151 --> 00:52:40,290 わしも ようした。 そんな事で わざわざ謝ってきたのか? 672 00:52:40,290 --> 00:52:44,628 それから 銭を ちょっと。 673 00:52:44,628 --> 00:52:47,331 人の銭をとったのか? 674 00:52:52,302 --> 00:52:54,304 弥吉…。 675 00:52:56,173 --> 00:53:01,578 父は近ごろ 花を生けるのが好きや。 676 00:53:01,578 --> 00:53:06,283 花は何もしゃべらず 静かに咲いている。 677 00:53:08,252 --> 00:53:14,925 その花を見ていると心が澄んでくる。 678 00:53:14,925 --> 00:53:19,930 弥吉… お前も花を生けろ。 679 00:53:24,935 --> 00:53:32,810 父は このたび ご公儀の定御雇船頭となった。 680 00:53:32,810 --> 00:53:37,281 分かるか? 定御雇船頭というのは➡ 681 00:53:37,281 --> 00:53:43,620 日本中の船乗りの中で 一番偉い人になったという事だ。 682 00:53:43,620 --> 00:53:49,960 わしは 正直 疲れておる。 683 00:53:49,960 --> 00:53:55,632 海にではない。 人間というものにや。 684 00:53:55,632 --> 00:54:00,471 お前も大きくなれば 分かると思うが➡ 685 00:54:00,471 --> 00:54:03,907 人というものが 一番やっかいや。 686 00:54:03,907 --> 00:54:07,578 人が人と正しくつきあう事➡ 687 00:54:07,578 --> 00:54:11,448 その事が最も大変な事や。 688 00:54:11,448 --> 00:54:16,920 だから その定御雇船頭の話をされた時に➡ 689 00:54:16,920 --> 00:54:22,793 一瞬 お前と おっかあのいる 兵庫に帰って➡ 690 00:54:22,793 --> 00:54:26,930 ゆっくり過ごす事も考えた。 691 00:54:26,930 --> 00:54:31,268 お前と 頭を くっつけ合わせて 過ごした日々は➡ 692 00:54:31,268 --> 00:54:36,607 数えるほどしかなかった。 693 00:54:36,607 --> 00:54:41,478 父は悲しい。 694 00:54:41,478 --> 00:54:45,616 お前も悲しかろう。 695 00:54:45,616 --> 00:54:47,551 弥吉➡ 696 00:54:47,551 --> 00:54:51,955 お前の事が いとおしくないはずはない。 697 00:54:51,955 --> 00:54:56,827 かわいくて かわいくて 食うてしまいたいほどや。 698 00:54:56,827 --> 00:55:03,233 朝から晩まで一緒にいたい。 さすれば➡ 699 00:55:03,233 --> 00:55:08,572 お前も このわしに笑ってくれよう。 700 00:55:08,572 --> 00:55:14,444 そう思ったが 北の国には➡ 701 00:55:14,444 --> 00:55:20,184 このわしの助けを求めてる人々が たくさんおる。 702 00:55:20,184 --> 00:55:29,259 いや… 人のためなどというものではない。 703 00:55:29,259 --> 00:55:33,597 わしは 幼いころ 貧乏で➡ 704 00:55:33,597 --> 00:55:39,937 他人からは あざけられ いじめられた哀れなガキでのう。 705 00:55:39,937 --> 00:55:46,610 毎日 泣きながら 青い淡路の海を見て➡ 706 00:55:46,610 --> 00:55:52,282 どこか遠くへ行きたい。 どこか遠くへ行きたい。 707 00:55:52,282 --> 00:55:55,185 そう 思い込まなければ➡ 708 00:55:55,185 --> 00:56:00,090 生きる力の湧かぬ子でのう。 709 00:56:00,090 --> 00:56:06,230 ただ ひたすら 海の事を。 710 00:56:06,230 --> 00:56:11,568 ただ それだけや…。 711 00:56:11,568 --> 00:56:17,441 弥吉 お前を寺に入れる。 えっ! 712 00:56:17,441 --> 00:56:19,443 寺? 悲しいが そうする。 713 00:56:19,443 --> 00:56:24,147 嫌や! 恨みたければ恨め。 714 00:56:24,147 --> 00:56:28,151 嫌や! 寺なんぞ行かん! 715 00:56:30,921 --> 00:56:33,590 弥吉…! 716 00:56:33,590 --> 00:56:36,927 嫌や! 大嫌いや! 717 00:56:36,927 --> 00:56:46,937 ♬~ 718 00:56:46,937 --> 00:56:53,610 エトロフは ご公儀に納める運上金だけで千五百両。 719 00:56:53,610 --> 00:57:00,417 エトロフの人々に漁を教えてのう。 720 00:57:00,417 --> 00:57:07,891 これが 意外に よう収穫があってのう。 721 00:57:07,891 --> 00:57:12,596 あんた 弥吉…。 722 00:57:15,565 --> 00:57:22,239 人にけがさせて 銭を奪うようなやつは➡ 723 00:57:22,239 --> 00:57:28,578 たとえ 我が子でも許せんのや。 724 00:57:28,578 --> 00:57:35,585 うちが悪い子を産んで すんません。 725 00:57:38,255 --> 00:57:41,158 すんません。 726 00:57:41,158 --> 00:57:44,127 すんません…。 727 00:57:44,127 --> 00:57:50,133 ♬~ 728 00:57:54,604 --> 00:57:58,942 このところ 体が悪いのや。 729 00:57:58,942 --> 00:58:02,813 どうやら 死病を抱え込んだかとみてる。 730 00:58:02,813 --> 00:58:05,749 医者には? うん。 かかっているが➡ 731 00:58:05,749 --> 00:58:11,521 まあ 人間は いずれ死ぬのや。 732 00:58:11,521 --> 00:58:15,225 嘉兵衛 はい。 わしはのう➡ 733 00:58:15,225 --> 00:58:21,098 兵庫湊のために 大坂町奉行所と闘うてきた。 734 00:58:21,098 --> 00:58:29,773 大坂町奉行所は 大坂の商いを 育て 守る事を役目としてた。 735 00:58:29,773 --> 00:58:34,911 それで 兵庫の問屋は いじめ抜かれた。 736 00:58:34,911 --> 00:58:41,251 その兵庫を 今日にするため わしは…。 737 00:58:41,251 --> 00:58:45,922 くどいか? 年のせいで くどうなった。 738 00:58:45,922 --> 00:58:50,594 北風様の偉さは 日本中の船乗りが知っております。 739 00:58:50,594 --> 00:58:54,931 だが お前が それを 崩そうとしているではないか。 740 00:58:54,931 --> 00:58:58,802 兵庫へ荷をよこさず 大坂で売る。 741 00:58:58,802 --> 00:59:05,542 船も尼崎で造らせていると聞いたぞ。 742 00:59:05,542 --> 00:59:08,211 まあ ええ。 743 00:59:08,211 --> 00:59:13,550 商いは どこで どうしようが それは 自由や。 744 00:59:13,550 --> 00:59:18,422 ええ場所へ風が吹くのんが 商売というものや。 745 00:59:18,422 --> 00:59:22,559 船は 何艘 造らせている? 746 00:59:22,559 --> 00:59:27,898 三百五十石が二艘。 七百石が三艘。 747 00:59:27,898 --> 00:59:30,801 これは 公儀の船でございます。 748 00:59:30,801 --> 00:59:39,242 千七百石 千四百石 七百石の 高田屋の持ち船が 各一艘ずつ。 749 00:59:39,242 --> 00:59:44,114 今 公儀の船と言うたな? はい。 750 00:59:44,114 --> 00:59:50,253 公儀の船を お前が造らせているというのは? 751 00:59:50,253 --> 00:59:56,126 北風様 このたび 私は 定御雇船頭に…。 752 00:59:56,126 --> 01:00:03,600 定御雇船頭? 嘉兵衛 お前がか? はい。 753 01:00:03,600 --> 01:00:06,603 ご公儀とは つきあうな! 754 01:00:09,473 --> 01:00:11,942 お前は わしの恩を忘れたか! 755 01:00:11,942 --> 01:00:15,612 わしが どれだけの思いで 公儀と闘い➡ 756 01:00:15,612 --> 01:00:18,281 兵庫湊を築いてきたか よう分かっておろう。 757 01:00:18,281 --> 01:00:22,953 公儀とつきあえば 必ず甘い汁を吸われて捨てられるのや。 758 01:00:22,953 --> 01:00:27,290 お前が定御雇船頭? この国の船頭の大将? 759 01:00:27,290 --> 01:00:30,293 ふざけた事を申すな! 760 01:00:38,301 --> 01:00:43,173 わしは 生涯を この世で善をなすために費やした。 761 01:00:43,173 --> 01:00:48,311 天明の飢饉の時は 窮した民人を集め➡ 762 01:00:48,311 --> 01:00:52,649 彼らに賃銀を与え 湊川の荒れ地を開き➡ 763 01:00:52,649 --> 01:00:58,522 貧しい人々に その田の米を与えた。 いや それより以前➡ 764 01:00:58,522 --> 01:01:06,596 兵庫の不景気には 金を出して二十九軒の同業者を救うた。 765 01:01:06,596 --> 01:01:10,267 商人の このわしがや。 766 01:01:10,267 --> 01:01:14,137 蝦夷地の事を知りますと➡ 767 01:01:14,137 --> 01:01:17,140 高田屋など潰れてもよい。 768 01:01:17,140 --> 01:01:23,613 自分だけが 他の岸に逃れる事は できないと思います。 769 01:01:23,613 --> 01:01:28,952 オロシャは すぐそこまで来ております。 770 01:01:28,952 --> 01:01:34,624 もう ここへは来るな 嘉兵衛。 771 01:01:34,624 --> 01:01:40,497 どうせ 蝦夷の事は風向きが変わるやろう。 772 01:01:40,497 --> 01:01:44,634 お上というものは その時の都合や。 773 01:01:44,634 --> 01:01:50,307 いつ何時 松前藩に蝦夷を返すと言うか 分かるものではない。 774 01:01:50,307 --> 01:01:57,013 その時 北風は お前と運命を共にはできぬ。 775 01:01:58,982 --> 01:02:03,587 承りました。 776 01:02:03,587 --> 01:02:20,937 ♬~ 777 01:02:20,937 --> 01:02:25,809 すまんな…。 778 01:02:25,809 --> 01:02:30,947 わしは よほど 体が悪い。 779 01:02:30,947 --> 01:02:36,820 お前に温かい言葉をかけてやれぬ。 780 01:02:36,820 --> 01:02:43,293 気持ちが とても とげとげしい。 781 01:02:43,293 --> 01:02:51,167 お前に やきもちをやくとは 北風荘右衛門らしゅうもない。 782 01:02:51,167 --> 01:02:55,305 ♬~ 783 01:02:55,305 --> 01:02:58,975 嘉兵衛。 はい。 784 01:02:58,975 --> 01:03:03,246 これから 十年 お前は忙しい。 785 01:03:03,246 --> 01:03:09,119 今が盛りじゃ。 体をいとうてな…。 786 01:03:09,119 --> 01:03:13,590 ♬~ 787 01:03:13,590 --> 01:03:16,493 ありがとうございます。 788 01:03:16,493 --> 01:03:31,808 ♬~ 789 01:03:46,489 --> 01:03:49,492 おかみさん! 790 01:03:51,294 --> 01:03:55,165 (貞代)ご公儀の定御雇船頭やてな。 おめでとう。 791 01:03:55,165 --> 01:04:01,905 日本一の船頭になったな。 夫も どれほど うれしかろう。 792 01:04:01,905 --> 01:04:06,776 ありがとうございます。 旦那さん お体の具合は? 793 01:04:06,776 --> 01:04:09,579 田舎じゃもん 気楽よねえ。 794 01:04:09,579 --> 01:04:12,916 あとは死ぬだけじゃいうて 元気にしてるわ。 795 01:04:12,916 --> 01:04:16,252 そうですか。 嘉蔵! 荷の手配は? 796 01:04:16,252 --> 01:04:20,924 米は もう 文治の船でエトロフに送ったが 塩が高うてのう…。 797 01:04:20,924 --> 01:04:22,859 けちくさい事を言うな。 798 01:04:22,859 --> 01:04:25,595 紅鮭は どうしても 赤穂の塩でなければ駄目ですか? 799 01:04:25,595 --> 01:04:27,931 駄目や 駄目や! 赤穂の塩でなきゃ駄目や。 800 01:04:27,931 --> 01:04:30,834 高田屋の品物はええという評判を 大事にしたいんや。 801 01:04:30,834 --> 01:04:36,606 分かりました。 ⚟船が出るぞ! 802 01:04:36,606 --> 01:04:39,509 じゃあ おかみさん いってまいります。 803 01:04:39,509 --> 01:04:41,478 お体を大切に。 804 01:04:41,478 --> 01:04:45,615 嘉兵衛 元気でな。 805 01:04:45,615 --> 01:04:48,618 はい。 806 01:04:55,291 --> 01:04:57,293 いってまいります。 807 01:05:13,777 --> 01:05:16,079 ⚟(弥吉)おとっつぁん! 808 01:05:18,915 --> 01:05:22,252 おとっつぁん! 809 01:05:22,252 --> 01:05:24,954 弥吉…。 810 01:05:26,923 --> 01:05:29,259 おとっつぁん! 811 01:05:29,259 --> 01:05:33,129 おとっつぁん! 812 01:05:33,129 --> 01:05:37,600 ♬~ 813 01:05:37,600 --> 01:05:41,271 <嘉兵衛は 弥吉が かわいそうでならなかった。➡ 814 01:05:41,271 --> 01:05:46,609 我が子よりも海がかわいい男を 父親に持った弥吉が不憫で➡ 815 01:05:46,609 --> 01:05:48,945 哀れでならなかった> 816 01:05:48,945 --> 01:06:07,230 ♬~ 817 01:06:18,575 --> 01:06:24,247 <それから 12年後 文化9年8月 嘉兵衛の乗った観世丸は➡ 818 01:06:24,247 --> 01:06:29,586 濃い霧のため クナシリ島の沖合に停泊していた> 819 01:06:29,586 --> 01:06:33,289 ⚟(大砲の音) 820 01:06:35,258 --> 01:06:38,561 ⚟(大砲の音) 821 01:06:42,932 --> 01:06:49,639 ⚟(大砲の音) 822 01:06:56,279 --> 01:06:58,615 どこの船でっしゃろ? 823 01:06:58,615 --> 01:07:05,421 ♬~ 824 01:07:05,421 --> 01:07:09,893 オロシャや。 オロシャ!? 825 01:07:09,893 --> 01:07:13,196 鉄砲を持ってるぜ! 伏せるんや! 伏せろ! 826 01:07:14,764 --> 01:07:16,766 (鉄砲の音) 827 01:07:16,766 --> 01:07:19,903 伏せろ…! 伏せるんや! 828 01:07:19,903 --> 01:07:22,572 待て! 逃げるな! うわ~! 829 01:07:22,572 --> 01:07:24,908 あほ! 830 01:07:24,908 --> 01:07:28,244 捜せ! 捜すんや! 喜三郎…! 喜三郎を捜すんや! 831 01:07:28,244 --> 01:07:32,916 ♬~ 832 01:07:32,916 --> 01:07:34,851 何や お前ら! 833 01:07:34,851 --> 01:07:37,153 ここは日本やぞ。 834 01:07:41,591 --> 01:07:44,494 誰や? お前は。 ここは日本やぞ。 835 01:07:44,494 --> 01:07:46,930 (ロシア語) 836 01:07:46,930 --> 01:07:48,865 何を言うとんのや。 837 01:07:48,865 --> 01:07:50,800 何すんのや! 何しとるんや! 838 01:07:50,800 --> 01:07:52,802 文治! よせ! 839 01:07:52,802 --> 01:07:57,507 みんな! 手を出すな。 わしに任せろ。 840 01:08:01,210 --> 01:08:06,082 わしが この船の船頭や。 高田屋嘉兵衛と申す。 841 01:08:06,082 --> 01:08:09,085 お前は 誰や? 842 01:08:09,085 --> 01:08:25,435 ♬~ 843 01:08:25,435 --> 01:08:28,905 何や? あれは…。 844 01:08:28,905 --> 01:09:54,924 ♬~ 845 01:09:54,924 --> 01:09:57,827 お前が大将か? 846 01:09:57,827 --> 01:10:01,597 わしを どうするつもりだ。 847 01:10:01,597 --> 01:10:03,933 ここは日本の海だぞ。 848 01:10:03,933 --> 01:10:09,272 (ロシア語) 849 01:10:09,272 --> 01:10:12,942 日本の海だと言っている。 850 01:10:12,942 --> 01:10:17,613 分かるか? ここは日本なんだ。 851 01:10:17,613 --> 01:10:43,306 ♬~ 852 01:10:46,309 --> 01:10:49,645 ロシアが消えるかもしれない。 オロシャがなくなる? 853 01:10:49,645 --> 01:10:53,983 嘉兵衛が無事に戻ったら離縁してもらう。 854 01:10:53,983 --> 01:11:00,256 〽 道の霜 855 01:11:00,256 --> 01:12:28,244 ♬~ 856 01:12:30,246 --> 01:12:37,153 ♬~ 857 01:12:37,153 --> 01:12:41,290 <北海道の玄関口 函館。➡ 858 01:12:41,290 --> 01:12:47,997 今も栄える この港町の基礎を作ったのが 高田屋嘉兵衛です> 859 01:12:51,634 --> 01:12:54,971 <嘉兵衛は 大坂や兵庫から船大工を招き➡ 860 01:12:54,971 --> 01:12:57,873 造船所や港を建設しました> 861 01:12:57,873 --> 01:13:04,247 ♬~ 862 01:13:04,247 --> 01:13:09,585 <高田屋は 当時 広大な屋敷と本店を構えていましたが➡ 863 01:13:09,585 --> 01:13:13,923 今では 場所を記す石柱が残されているばかりで➡ 864 01:13:13,923 --> 01:13:16,592 当時の面影はありません> 865 01:13:16,592 --> 01:13:24,934 ♬~ 866 01:13:24,934 --> 01:13:29,605 <嘉兵衛ゆかりの品々は 資料館に収められています> 867 01:13:29,605 --> 01:13:37,480 ♬~ 868 01:13:37,480 --> 01:13:42,184 <函館山の植林や 海岸の埋め立て➡ 869 01:13:42,184 --> 01:13:45,621 ハマグリやシジミの養殖など➡ 870 01:13:45,621 --> 01:13:49,292 嘉兵衛は 函館の町づくりに力を尽くし➡ 871 01:13:49,292 --> 01:13:53,296 今日の繁栄をもたらしたのです>