1 00:00:32,758 --> 00:00:35,694 ♬~(尺八) 2 00:00:35,694 --> 00:01:07,026 ♬~ 3 00:01:07,026 --> 00:01:09,326 (女中)ご苦労さまです。 4 00:01:14,700 --> 00:01:29,900 ♬~ 5 00:01:35,488 --> 00:01:43,829 ご公儀大番頭 法月一学様のご嫡子 弦之丞様でござるな。 6 00:01:43,829 --> 00:01:45,764 待たれよ! それがし➡ 7 00:01:45,764 --> 00:01:51,504 元京都所司代 松平左京之介が家臣 荒木源兵衛と申す。➡ 8 00:01:51,504 --> 00:01:55,204 しばし おつきあい願いたい。 9 00:02:00,179 --> 00:02:03,215 ねえさん どいてくれ! 危ねえよ! 10 00:02:03,215 --> 00:02:07,515 おっと! 大丈夫かい? 11 00:02:10,523 --> 00:02:14,193 ええ。 ほんと 危ないったらないんだから。 12 00:02:14,193 --> 00:02:16,529 ねえ 旦那さん。 まったくねぇ。 13 00:02:16,529 --> 00:02:20,829 怪我はないかい? ええ。 ありがとうござんした。 14 00:02:22,401 --> 00:02:26,101 いい女だねぇ…。 15 00:02:30,543 --> 00:02:32,743 さ… 財布が! 16 00:02:40,819 --> 00:02:44,519 しけた お大尽だぜ ったく…。 17 00:02:50,329 --> 00:02:52,665 (荒木)その文にもあると思うが➡ 18 00:02:52,665 --> 00:02:55,501 是が非でも 屋敷までお越し頂きたいとの➡ 19 00:02:55,501 --> 00:02:57,436 殿の言づてがござる。 20 00:02:57,436 --> 00:03:00,372 (弦之丞)世阿弥殿の事とあるが…。 21 00:03:00,372 --> 00:03:03,375 ご承諾頂いたという事で。 22 00:03:03,375 --> 00:03:06,675 これは ご喜捨でござる。 23 00:03:08,514 --> 00:03:11,314 では これにて。 24 00:03:14,320 --> 00:03:17,120 世阿弥殿…。 25 00:03:22,861 --> 00:03:27,733 ♬~(尺八) 26 00:03:27,733 --> 00:03:45,184 ♬~ 27 00:03:45,184 --> 00:03:47,820 待て。 28 00:03:47,820 --> 00:03:52,820 その腰の小刀 業物と見える。 置いていけ。 29 00:03:54,994 --> 00:03:59,331 聞こえぬか 虚無僧。 30 00:03:59,331 --> 00:04:02,835 近頃 江戸で名高い辻斬りの噂➡ 31 00:04:02,835 --> 00:04:04,770 聞いた事ないか? 32 00:04:04,770 --> 00:04:06,970 ♬~(尺八) 33 00:04:12,344 --> 00:04:27,192 ♬~ 34 00:04:27,192 --> 00:04:29,128 やっ! 35 00:04:29,128 --> 00:04:39,138 ♬~ 36 00:04:39,138 --> 00:04:41,073 や~! 37 00:04:41,073 --> 00:04:46,373 ♬~ 38 00:04:54,153 --> 00:04:57,656 (鼻歌) 39 00:04:57,656 --> 00:05:00,856 あら ごめんなさい。 40 00:05:02,828 --> 00:05:16,675 ♬~ 41 00:05:16,675 --> 00:05:20,345 <この男 法月弦之丞。➡ 42 00:05:20,345 --> 00:05:23,849 故あって 虚無僧姿に 身をやつしてはいるが➡ 43 00:05:23,849 --> 00:05:27,352 出自は れっきとした大身旗本。➡ 44 00:05:27,352 --> 00:05:31,790 身分ある この男が どうして 虚無僧姿になっているのか➡ 45 00:05:31,790 --> 00:05:35,090 さて その理由とは…> 46 00:05:46,638 --> 00:05:50,142 話は 十数年前まで遡る。 47 00:05:50,142 --> 00:05:56,815 ここは 公儀隠密甲賀宗家頭領 世阿弥の屋敷内。 48 00:05:56,815 --> 00:06:00,652 えい! えい! 49 00:06:00,652 --> 00:06:06,325 さすがは 世阿弥の娘だ。 千絵は 筋がよさそうじゃな。 50 00:06:06,325 --> 00:06:09,228 あれでは 嫁に行けません。 51 00:06:09,228 --> 00:06:14,500 それなら 当方で引き受ける。 千絵なら 申し分ない。 52 00:06:14,500 --> 00:06:16,435 えい! 53 00:06:16,435 --> 00:06:19,838 もっとも 当の弦之丞が➡ 54 00:06:19,838 --> 00:06:22,741 このままではのう…。 55 00:06:22,741 --> 00:06:28,847 母上が亡くなってから お人が変わったかのように…。 56 00:06:28,847 --> 00:06:32,284 見えるか。 57 00:06:32,284 --> 00:06:36,121 わしを疎んじておる。 58 00:06:36,121 --> 00:06:38,056 何故? 59 00:06:38,056 --> 00:06:40,292 妻が身罷った時➡ 60 00:06:40,292 --> 00:06:44,129 わしは お上の御用で 家を空けておった。➡ 61 00:06:44,129 --> 00:06:47,633 その事が 許せぬようだ。 62 00:06:47,633 --> 00:06:50,669 母上! 母上! 63 00:06:50,669 --> 00:06:54,506 ですが それは 武家の習い。 64 00:06:54,506 --> 00:07:00,145 理屈が通じる年では まだ なかろう。 65 00:07:00,145 --> 00:07:02,481 えい! えい! 66 00:07:02,481 --> 00:07:07,319 えい! えい! 67 00:07:07,319 --> 00:07:09,319 えい! 68 00:07:11,490 --> 00:07:14,393 今 何と申した? 69 00:07:14,393 --> 00:07:16,995 戸ヶ崎夕雲先生のお供をして➡ 70 00:07:16,995 --> 00:07:21,500 剣を携え 廻国修行の旅に出たいと。 71 00:07:21,500 --> 00:07:24,169 な… 何を馬鹿な事を! 72 00:07:24,169 --> 00:07:28,841 そなたは 代々 大番頭を勤める この法月家の跡取りではないか。 73 00:07:28,841 --> 00:07:31,276 剣の修行より…。 一旦 事あらば➡ 74 00:07:31,276 --> 00:07:33,312 兵の先頭に立つのが➡ 75 00:07:33,312 --> 00:07:36,949 大番頭たる者の 役目ではありませぬか。 76 00:07:36,949 --> 00:07:40,619 そのための剣の修行が いけませんか。 77 00:07:40,619 --> 00:07:43,956 それに…。 何だ? 78 00:07:43,956 --> 00:07:46,458 法月家を継いだあとは➡ 79 00:07:46,458 --> 00:07:51,158 お上に逆らわず生きるしか 道はないのでしょう。 80 00:07:53,332 --> 00:07:58,170 ならば 千絵の事は どうする? 81 00:07:58,170 --> 00:08:00,973 千絵を好いておる事は 分かっておる。 82 00:08:00,973 --> 00:08:06,311 なればこそ 世阿弥と語らい 末は夫婦にと…。 83 00:08:06,311 --> 00:08:09,815 今のままの気持ちでは➡ 84 00:08:09,815 --> 00:08:13,515 父上と同じ道は歩けませぬ。 85 00:08:23,829 --> 00:08:26,129 弦之丞様! 86 00:08:29,001 --> 00:08:31,436 千絵殿。 87 00:08:31,436 --> 00:08:34,339 千絵は お待ちしております。 88 00:08:34,339 --> 00:08:37,309 それで よいのですね。 89 00:08:37,309 --> 00:08:42,080 必ず 戻ってきます。 その時は…。 90 00:08:42,080 --> 00:08:44,780 その時は…。 91 00:08:46,785 --> 00:08:50,455 (夕雲)弦之丞! 92 00:08:50,455 --> 00:08:52,791 では。 93 00:08:52,791 --> 00:08:55,127 これを。 94 00:08:55,127 --> 00:09:17,983 ♬~ 95 00:09:17,983 --> 00:09:21,783 ご武運を お祈り致しております。 96 00:09:27,693 --> 00:09:29,693 弦之丞。 97 00:09:33,098 --> 00:09:37,898 <こうして 弦之丞は江戸を離れた> 98 00:09:40,772 --> 00:09:44,943 <それから しばらくした頃 京の都において➡ 99 00:09:44,943 --> 00:09:48,814 竹屋三位卿藤原有村という 公家が➡ 100 00:09:48,814 --> 00:09:53,452 若い公家たちと共に 幕府転覆を計ったという理由で➡ 101 00:09:53,452 --> 00:09:57,322 京都所司代 松平左京之介の手によって➡ 102 00:09:57,322 --> 00:09:59,958 都を追放されるという➡ 103 00:09:59,958 --> 00:10:02,794 世に言う 宝暦の変が起こる> 104 00:10:02,794 --> 00:10:07,666 いつの世も 今の天下は 危うき天下! 105 00:10:07,666 --> 00:10:12,471 ただ それだけの事でおじゃるよ! 106 00:10:12,471 --> 00:10:15,974 ハッ! 107 00:10:15,974 --> 00:10:20,312 <これで 事は収まったかのように見えた。➡ 108 00:10:20,312 --> 00:10:22,247 しかし…> 109 00:10:22,247 --> 00:10:27,486 この一件 まだ終わりではない。 110 00:10:27,486 --> 00:10:29,988 …と 申されますと? 111 00:10:29,988 --> 00:10:36,661 京を追放された 竹屋三位卿が今 いずこにおると思う? 112 00:10:36,661 --> 00:10:38,597 はて…。 113 00:10:38,597 --> 00:10:43,535 大坂から鳴門のうずを渡った先 阿波の国よ。 114 00:10:43,535 --> 00:10:45,670 阿波? 115 00:10:45,670 --> 00:10:50,842 宝暦の変の後ろ盾には 阿波の国 徳島25万石➡ 116 00:10:50,842 --> 00:10:56,181 蜂須賀重喜様が おられるという事だ。 117 00:10:56,181 --> 00:10:58,216 更にだ➡ 118 00:10:58,216 --> 00:11:00,519 阿波には 昔から➡ 119 00:11:00,519 --> 00:11:03,188 倒幕の血判を記した➡ 120 00:11:03,188 --> 00:11:09,861 「鳴門秘帖」なるものがあると 風の噂に聞く。 121 00:11:09,861 --> 00:11:12,764 鳴門秘帖? 122 00:11:12,764 --> 00:11:18,870 甲賀宗家のお主に その秘帖を探してもらいたい。➡ 123 00:11:18,870 --> 00:11:23,542 鳴門秘帖… あるのが まことならば➡ 124 00:11:23,542 --> 00:11:27,042 阿波をたたく好機となる。 125 00:11:29,347 --> 00:11:33,819 これは お上の密命じゃ。 126 00:11:33,819 --> 00:11:37,489 (一学)危うい話よのう…。 127 00:11:37,489 --> 00:11:42,327 …とは申せ お上の御用とあらば➡ 128 00:11:42,327 --> 00:11:48,200 甲賀の頭領として 逆らう事はできませぬ。 129 00:11:48,200 --> 00:11:55,040 阿波か… 遠いのう。 130 00:11:55,040 --> 00:11:59,878 まあ 千絵の事は任せておけ。 131 00:11:59,878 --> 00:12:04,349 よいな 千絵。 いつでも訪ねてくるがよい。 132 00:12:04,349 --> 00:12:06,284 ありがとうございます。 133 00:12:06,284 --> 00:12:13,525 もし 弦之丞殿と 旅の途中で会う事があらば➡ 134 00:12:13,525 --> 00:12:15,560 いかが致しましょう? 135 00:12:15,560 --> 00:12:17,863 放っておけばよい。 136 00:12:17,863 --> 00:12:21,733 手紙一つよこさぬ 親不孝者じゃ。 137 00:12:21,733 --> 00:12:25,036 弦之丞様は必ず戻ってまいります。 138 00:12:25,036 --> 00:12:29,908 おっと… 千絵に叱られた。 139 00:12:29,908 --> 00:12:33,708 ハハハハハ…。 140 00:12:37,149 --> 00:12:40,185 ではな。 141 00:12:40,185 --> 00:12:45,657 父上…。 泣くな。 142 00:12:45,657 --> 00:12:51,163 あの時も こうして 弦之丞様を お見送りしました。 143 00:12:51,163 --> 00:12:55,333 その弦之丞様も まだ お戻りになられず➡ 144 00:12:55,333 --> 00:12:58,370 今 また 父上まで…。 145 00:12:58,370 --> 00:13:05,070 案ずる事はない。 弦之丞殿は そのうち戻る。 146 00:13:07,045 --> 00:13:11,516 この父もまた…。 147 00:13:11,516 --> 00:13:15,020 周馬 後の事は頼む。 148 00:13:15,020 --> 00:13:16,955 はっ! 149 00:13:16,955 --> 00:13:20,825 千絵…。 150 00:13:20,825 --> 00:13:23,528 達者で暮らせよ。 151 00:13:23,528 --> 00:13:36,107 ♬~ 152 00:13:36,107 --> 00:13:42,407 (せきこみ) 153 00:13:44,316 --> 00:13:47,819 あ… 世阿弥様。 154 00:13:47,819 --> 00:13:53,319 旅に出る。 旅に? 155 00:14:05,237 --> 00:14:10,937 母を… 大事にな。 156 00:14:15,347 --> 00:14:18,250 誰? あの方はね…。 157 00:14:18,250 --> 00:14:20,852 あっ…。 ああっ! 158 00:14:20,852 --> 00:14:23,755 何しに来やがったんだ あの野郎! 159 00:14:23,755 --> 00:14:25,724 何すんだよ! 160 00:14:25,724 --> 00:14:28,026 うるせえ! 161 00:14:28,026 --> 00:14:31,796 馬鹿野郎! あんなの父ちゃんじゃないよ! 162 00:14:31,796 --> 00:14:34,466 (泣き声) 泣くんじゃないよ。 163 00:14:34,466 --> 00:14:37,969 金なら あたしが作ってやるから。 (お才のせきこみ) 164 00:14:37,969 --> 00:14:40,872 母ちゃん しっかり! (せきこみ) 165 00:14:40,872 --> 00:14:43,672 (せきこみ) 166 00:14:46,478 --> 00:14:51,778 <この後 江戸に世阿弥が戻る事はなかった> 167 00:14:58,089 --> 00:15:00,825 (夕雲)弦之丞➡ 168 00:15:00,825 --> 00:15:06,331 もはや お主に教える事は 何もない。 169 00:15:06,331 --> 00:15:14,205 無住心剣夕雲流の極意を 授ける時が来たようじゃ。 170 00:15:14,205 --> 00:15:17,842 先生…。 言うな。 171 00:15:17,842 --> 00:15:23,715 夕雲流免許皆伝を与うる時は➡ 172 00:15:23,715 --> 00:15:28,353 師を乗り越えねばならぬのが 決まり。 173 00:15:28,353 --> 00:15:30,353 抜け! 174 00:15:33,325 --> 00:15:36,625 抜かずば 免許皆伝ならず! 175 00:15:41,900 --> 00:15:43,900 や~! 176 00:15:50,975 --> 00:15:56,314 先生! 先生! 177 00:15:56,314 --> 00:15:59,150 弦之丞…。 178 00:15:59,150 --> 00:16:06,491 剣術とは 所詮 人を斬る術よ…。 179 00:16:06,491 --> 00:16:13,832 わしを斬り その屍を乗り越えて➡ 180 00:16:13,832 --> 00:16:19,170 剣の道を進むかぎり➡ 181 00:16:19,170 --> 00:16:26,911 お主は 人でなしとなる…。 182 00:16:26,911 --> 00:16:37,911 よいか 人でなしの道を歩む事に…。 183 00:16:42,961 --> 00:16:46,798 先生…。 184 00:16:46,798 --> 00:16:50,098 先生! 185 00:16:53,138 --> 00:16:58,643 人でなし… 人でなし…。 186 00:16:58,643 --> 00:17:02,514 どうしたのさ 旦那 ブツブツと。 187 00:17:02,514 --> 00:17:07,986 私は 人でなしになるのだそうだ。 188 00:17:07,986 --> 00:17:12,157 じゃあ あたいと おんなじだ。 189 00:17:12,157 --> 00:17:14,092 何? 190 00:17:14,092 --> 00:17:17,829 こんな商売してりゃ とっくに人でなしさね。 191 00:17:17,829 --> 00:17:22,500 だから 人でいられるように 仏様を拝んでんだ。 192 00:17:22,500 --> 00:17:24,436 こうしてね。 193 00:17:24,436 --> 00:17:29,274 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏ってさ。 194 00:17:29,274 --> 00:17:37,074 旦那にも ご加護があるように 南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…。 195 00:17:39,784 --> 00:17:42,454 <こうして 旅に出て10年➡ 196 00:17:42,454 --> 00:17:45,790 ようやく 弦之丞は江戸に戻り➡ 197 00:17:45,790 --> 00:17:48,827 お綱に出会った> 198 00:17:48,827 --> 00:17:52,027 あら ごめんなさい。 199 00:17:54,132 --> 00:17:57,469 旦那 いつまで 人様の腕を握ってんだい! 200 00:17:57,469 --> 00:17:59,804 いいかげん 放しておくんなよ! 201 00:17:59,804 --> 00:18:02,307 こうなったら 四の五の言いやしないよ。 202 00:18:02,307 --> 00:18:04,607 番屋でも どこでも 突き出しゃいいじゃないか! 203 00:18:07,479 --> 00:18:09,814 見なかった事にしよう。 204 00:18:09,814 --> 00:18:11,749 え…? 205 00:18:11,749 --> 00:18:14,686 ≪弦之丞様。 206 00:18:14,686 --> 00:18:17,155 あ? おめえは! 207 00:18:17,155 --> 00:18:19,657 見返りお綱! 208 00:18:19,657 --> 00:18:22,357 おい 銀五郎! へい! 209 00:18:28,333 --> 00:18:32,103 弦之丞様 一体どうなすったんで? 210 00:18:32,103 --> 00:18:36,441 あの女 知り人か。 掏摸でさぁ。 211 00:18:36,441 --> 00:18:39,944 見返りお綱って 二つ名のある女でして。 212 00:18:39,944 --> 00:18:41,880 見返りお綱? 213 00:18:41,880 --> 00:18:46,618 吉原は衣紋坂の見返り柳を もじったんでしょうかね。 214 00:18:46,618 --> 00:18:49,287 懐は大丈夫でしたかい? 215 00:18:49,287 --> 00:18:51,806 ご喜捨で生きておる。 216 00:18:51,806 --> 00:18:55,476 近頃は せちがらく 懐は軽い。 217 00:18:55,476 --> 00:18:58,776 ハッ 違えねえや。 ハハハ。 218 00:19:07,488 --> 00:19:09,824 あのアマ! 219 00:19:09,824 --> 00:19:13,494 とんだ韋駄天だぜ。 220 00:19:13,494 --> 00:19:15,494 チッ…。 221 00:19:20,268 --> 00:19:24,839 ハッ おあいにくさまってんだ。 222 00:19:24,839 --> 00:19:28,343 (男)女。 223 00:19:28,343 --> 00:19:31,246 あたしの事ですかい? 224 00:19:31,246 --> 00:19:35,617 知れた事。 なぜ 邪魔をした? 225 00:19:35,617 --> 00:19:37,952 邪魔をした? 226 00:19:37,952 --> 00:19:40,622 ハハッ そうかい。 227 00:19:40,622 --> 00:19:44,492 石を蹴飛ばしたんで 斬り損なった とばっちりを➡ 228 00:19:44,492 --> 00:19:48,129 あたしに持ち込もうって 魂胆ですか。 何だと? 229 00:19:48,129 --> 00:19:51,165 お前さんも稼業人なら覚えときな。 230 00:19:51,165 --> 00:19:57,138 女掏摸の見返りお綱とは あたしの事さ! 231 00:19:57,138 --> 00:19:59,073 文句があるんなら➡ 232 00:19:59,073 --> 00:20:06,648 本郷妻恋一丁目 粋な門垣根の 長唄の師匠のうちを訪ねてきな。 233 00:20:06,648 --> 00:20:11,319 それが あたしの仮の姿だからさ。 234 00:20:11,319 --> 00:20:15,823 それじゃ お先。 235 00:20:15,823 --> 00:20:19,823 辻斬り稼ぎの荒事師の旦那。 236 00:20:29,003 --> 00:20:31,203 ≪ありがとうございました! ≪ごちそうさん。 237 00:20:33,341 --> 00:20:36,177 さあさあ さあさあさあ。 238 00:20:36,177 --> 00:20:38,112 おう 今 帰ったぜ。 239 00:20:38,112 --> 00:20:40,048 あっ お帰り。 240 00:20:40,048 --> 00:20:43,851 あら お帰りなさいまし 若様。 241 00:20:43,851 --> 00:20:46,521 その「若様」は もうやめてくれぬか。 242 00:20:46,521 --> 00:20:49,190 それは そう思うんですけどね➡ 243 00:20:49,190 --> 00:20:51,225 昔っからの癖ですからねぇ。 244 00:20:51,225 --> 00:20:55,530 法月のお屋敷で 使いっ走りで これが顔を出して➡ 245 00:20:55,530 --> 00:20:58,433 厄介ばっかりかけてた頃からの おつきあいですから。 246 00:20:58,433 --> 00:21:00,401 何 言いやがる。 俺は これっぽっちも➡ 247 00:21:00,401 --> 00:21:02,403 厄介なんか かけた事はねえぞ。 248 00:21:02,403 --> 00:21:04,706 いつだって 俺の十手がな…。 249 00:21:04,706 --> 00:21:07,742 はいはい あんたの手柄話は もう聞き飽きたよ。 250 00:21:07,742 --> 00:21:09,877 若さ… あっ じゃなかった。 251 00:21:09,877 --> 00:21:13,715 弦之丞様 今 お膳の用意しますから。 252 00:21:13,715 --> 00:21:16,384 銀の字 あんたも食べていくといいよ。 253 00:21:16,384 --> 00:21:18,319 へ~い。 254 00:21:18,319 --> 00:21:21,055 …ったく うちの嬶は口が減らねえ。 255 00:21:21,055 --> 00:21:22,990 何だって? 256 00:21:22,990 --> 00:21:24,926 いいから 飯の支度しろ。 257 00:21:24,926 --> 00:21:27,228 仲がよくて 結構な事だ。 258 00:21:27,228 --> 00:21:31,099 ええ? ハッ どうですかね。 259 00:21:31,099 --> 00:21:37,505 …で 千絵様のお屋敷には 顔をお出しなすったんですか?➡ 260 00:21:37,505 --> 00:21:41,342 困ったお人だ。 何べんも言いますが➡ 261 00:21:41,342 --> 00:21:44,011 法月の殿様は 病に倒れるし➡ 262 00:21:44,011 --> 00:21:47,048 千絵様の甲賀の家は 跡取りがないって事で➡ 263 00:21:47,048 --> 00:21:50,685 取り潰される瀬戸際なんですよ。 それなのに➡ 264 00:21:50,685 --> 00:21:54,021 江戸に戻ってるってえのに 虚無僧なんかになっちまって。 265 00:21:54,021 --> 00:21:57,892 信じられませんでしたよ この間 町で見かけた時は。➡ 266 00:21:57,892 --> 00:22:01,763 だが こうして出会ったのが 運の尽きだ。 267 00:22:01,763 --> 00:22:04,198 ねっ とにもかくにも➡ 268 00:22:04,198 --> 00:22:08,035 殿様のところと 千絵様のところには➡ 269 00:22:08,035 --> 00:22:11,873 お顔をお出しなすった方がいい。 分かっておる。 270 00:22:11,873 --> 00:22:13,808 分かってるなら 早くすりゃいいのに。 271 00:22:13,808 --> 00:22:16,711 おい おめえが 嘴 突っ込む話じゃねえんだい。 272 00:22:16,711 --> 00:22:19,213 黙ってろ! へ~い。 273 00:22:19,213 --> 00:22:21,149 (お吉)あ~! ちょちょ…! おう どうした!? 274 00:22:21,149 --> 00:22:23,084 ねずみ いる! ねずみ! 何だと? 275 00:22:23,084 --> 00:22:26,387 なんとかしておくれよ~! しょうがねえな どれ? 276 00:22:26,387 --> 00:22:29,424 ここに… ここ… 捕まえて! 277 00:22:29,424 --> 00:22:34,662 ブツクサ言いながら 親分は 姐さんに ゾッコンってやつだ。 278 00:22:34,662 --> 00:22:39,000 旦那も 千絵様とやらに そうだった。 279 00:22:39,000 --> 00:22:43,337 なのに どうして お会いなさらねえんで? 280 00:22:43,337 --> 00:22:47,208 前髪立ちの頃からの恋だの なんだのって言っておきながら➡ 281 00:22:47,208 --> 00:22:50,011 勝手に ヤットウのために 江戸を離れて➡ 282 00:22:50,011 --> 00:22:52,680 ようやく10年ぶりに 帰ってきたと思ったら➡ 283 00:22:52,680 --> 00:22:55,716 こんな格好になっちまって 顔を見せようともしねえ。 284 00:22:55,716 --> 00:22:58,853 そりゃあ あんまりだ。 男らしくねえ。 285 00:22:58,853 --> 00:23:03,191 銀五郎とやら お主 千絵殿を知っておるのか? 286 00:23:03,191 --> 00:23:06,027 知りませんよ。 会った事もねえ。 287 00:23:06,027 --> 00:23:10,531 けど 万吉親分の 下ッ引きになってから このかた➡ 288 00:23:10,531 --> 00:23:14,402 お二人の話を いつもいつも聞かされてね。 289 00:23:14,402 --> 00:23:19,540 千絵様って人が お気の毒で かわいそうになってきたんですよ。 290 00:23:19,540 --> 00:23:21,576 旦那に しんから惚れて➡ 291 00:23:21,576 --> 00:23:24,412 じっと あのお屋敷で待ってるお人だ。 292 00:23:24,412 --> 00:23:27,882 顔だけでも見せてあげたって 罰は当たらねえでしょ。 293 00:23:27,882 --> 00:23:29,817 違いますか? 294 00:23:29,817 --> 00:23:33,154 顔を見せたところで どうなる。 え? 295 00:23:33,154 --> 00:23:35,189 私が江戸を離れたせいで➡ 296 00:23:35,189 --> 00:23:38,493 千絵殿には させぬでもよい苦労をかけ➡ 297 00:23:38,493 --> 00:23:41,829 取り返しがつかぬ事に なってしまったのだ。 298 00:23:41,829 --> 00:23:48,002 この10年の間 千絵殿にも 法月の家にも➡ 299 00:23:48,002 --> 00:23:52,502 顔向けができぬ生き方を してきたのだからな 私は。 300 00:23:54,175 --> 00:23:57,512 人でなしには…➡ 301 00:23:57,512 --> 00:24:02,183 人でなしの生き方しか できぬのだよ。 302 00:24:02,183 --> 00:24:04,118 違えねえ。 303 00:24:04,118 --> 00:24:08,523 旦那は まったく どうしようもねえ 人でなしだ。 304 00:24:08,523 --> 00:24:14,395 けど なら 何で 江戸にお戻りなすった? 305 00:24:14,395 --> 00:24:18,695 千絵様の事が気になったから じゃないんですかい? 306 00:24:21,102 --> 00:24:23,070 図星でしょ。 307 00:24:23,070 --> 00:24:27,875 そうだよ。 千絵様には あんたがいなくちゃいけねえ。 308 00:24:27,875 --> 00:24:31,746 それに そう思ってるのは わっしだけじゃねえ。 309 00:24:31,746 --> 00:24:35,316 それを忘れてもらっちゃ困る。 310 00:24:35,316 --> 00:24:38,152 面白い男だな お主。 311 00:24:38,152 --> 00:24:41,489 そいつは どうも。 ヘヘヘ! 312 00:24:41,489 --> 00:24:44,289 キャ~! 313 00:24:48,162 --> 00:24:50,462 (ねずみの鳴き声) 314 00:25:13,187 --> 00:25:15,856 [ 回想 ] これを。 315 00:25:15,856 --> 00:25:42,950 ♬~ 316 00:25:42,950 --> 00:25:46,487 多市 きれいな星です。 317 00:25:46,487 --> 00:25:48,823 はい。 318 00:25:48,823 --> 00:25:52,693 弦之丞様も見ているでしょうか。 319 00:25:52,693 --> 00:25:56,330 (多市)恐らく。 320 00:25:56,330 --> 00:25:58,830 よい子です。 321 00:26:02,203 --> 00:26:06,040 周馬 いつまで こうしておらねばなりませぬ? 322 00:26:06,040 --> 00:26:08,676 今が大事。 323 00:26:08,676 --> 00:26:14,348 世阿弥様が戻らず 10年。 お家が断絶になりかねぬ瀬戸際。 324 00:26:14,348 --> 00:26:16,851 お沙汰が下るまで どうにもできませぬ。 325 00:26:16,851 --> 00:26:21,188 ですが…。 千絵様 あなたの一挙手一投足が➡ 326 00:26:21,188 --> 00:26:25,359 我ら 甲賀の者たちの 命を握っておられるのです。 327 00:26:25,359 --> 00:26:27,559 ご辛抱の程を。 328 00:26:42,309 --> 00:26:45,212 よいか 目を離してはならぬ。 329 00:26:45,212 --> 00:26:47,648 はい。 330 00:26:47,648 --> 00:26:51,819 あれで なかなかの じゃじゃ馬。 331 00:26:51,819 --> 00:26:55,489 いよいよ こなたのもとへと 七つ八つ! 332 00:26:55,489 --> 00:26:58,993 お獅子 逆さ歩き! 333 00:26:58,993 --> 00:27:00,928 はっ! 334 00:27:00,928 --> 00:27:02,863 (太鼓の音) 335 00:27:02,863 --> 00:27:07,668 ≪わ~! ≪すごいなぁ! 336 00:27:07,668 --> 00:27:10,705 はっ! これにて 打ち止め! 337 00:27:10,705 --> 00:27:12,840 (太鼓の音) 338 00:27:12,840 --> 00:27:15,876 お姉ちゃん! 339 00:27:15,876 --> 00:27:19,013 待って お姉ちゃん! 340 00:27:19,013 --> 00:27:22,683 あっ…。 お姉ちゃん どこに行くの? 341 00:27:22,683 --> 00:27:25,019 何で逃げるのよ? そうだよ! 342 00:27:25,019 --> 00:27:27,719 おいらのお姉ちゃんじゃないか! 343 00:27:29,356 --> 00:27:34,856 ごめんよ… ごめんよ。 344 00:27:38,065 --> 00:27:40,000 お姉ちゃん。 345 00:27:40,000 --> 00:27:42,002 何だい? 346 00:27:42,002 --> 00:27:45,139 お姉ちゃん。 だから 何? 347 00:27:45,139 --> 00:27:48,175 ううん 呼んでみただけ。 おいらも。 348 00:27:48,175 --> 00:27:54,648 ごめんな お三輪も乙吉も 姉ちゃんを堪忍しておくれな。 349 00:27:54,648 --> 00:28:00,154 今に 姉ちゃんが うちに戻ったら 角兵衛獅子なんかさせないで➡ 350 00:28:00,154 --> 00:28:04,492 必ず いいおべべ着せて 手習いにだって通わせてやる。 351 00:28:04,492 --> 00:28:07,161 だから もう少し辛抱しておくれ。 352 00:28:07,161 --> 00:28:10,831 ほんとかい? 姉ちゃん。 うん。 353 00:28:10,831 --> 00:28:13,868 あたしが 父ちゃんと 仲よくできたらいいんだけど➡ 354 00:28:13,868 --> 00:28:17,004 あんな 飲んだくれのゴロツキだからさ。 355 00:28:17,004 --> 00:28:19,039 母ちゃんも死んじまったし➡ 356 00:28:19,039 --> 00:28:22,676 あんたらだけに 苦労かけてるけど…。 357 00:28:22,676 --> 00:28:25,579 いいよ 姉ちゃん。 分かってるよ。 358 00:28:25,579 --> 00:28:29,350 姉ちゃんが うちにいたら あの父ちゃんの事だもの➡ 359 00:28:29,350 --> 00:28:31,952 吉原に売っちまうに 決まってるって➡ 360 00:28:31,952 --> 00:28:33,988 角の荒物屋のおばあさんが 言ってた。 361 00:28:33,988 --> 00:28:38,826 「もっとも 見返りお綱って 金箔つきだけどね」って笑ってた。 362 00:28:38,826 --> 00:28:41,662 ハハハ…。 363 00:28:41,662 --> 00:28:44,131 ねえ。 うん? 364 00:28:44,131 --> 00:28:46,467 金箔つきって 何? 365 00:28:46,467 --> 00:28:49,370 金箔つきっていうのは…➡ 366 00:28:49,370 --> 00:28:53,140 そうだ 立派なお屋敷って事だよ。 367 00:28:53,140 --> 00:28:55,643 お姉ちゃんは そこで働いてんだ。 368 00:28:55,643 --> 00:28:58,546 だから めったに うちに戻ってこれないんだよ。 369 00:28:58,546 --> 00:29:00,546 そうか。 370 00:29:03,150 --> 00:29:05,085 [ 心の声 ] 嘘ばかりついてる…。➡ 371 00:29:05,085 --> 00:29:08,489 こんな暮らし いつまでも続けてちゃいけない。 372 00:29:08,489 --> 00:29:10,424 見なかった事にしよう。 373 00:29:10,424 --> 00:29:12,993 [ 心の声 ] 本当は あのまま➡ 374 00:29:12,993 --> 00:29:16,497 番屋送りだったかもしれないんだ。 375 00:29:16,497 --> 00:29:18,432 [ 回想 ] (少年)見なかった事にする。 376 00:29:18,432 --> 00:29:20,367 [ 心の声 ] 何? 今の…。 377 00:29:20,367 --> 00:29:22,369 [ 回想 ] (少年)見なかった事にする。 378 00:29:22,369 --> 00:29:26,507 [ 心の声 ] そうだ あれは確か…。 379 00:29:26,507 --> 00:29:32,947 東西東西 本日は この平賀源内が 初めて催す 薬品会だ! 380 00:29:32,947 --> 00:29:36,784 <薬品会とは 今でいう博覧会。➡ 381 00:29:36,784 --> 00:29:42,284 遠い昔 この場所で お綱に一つの出会いがあった> 382 00:29:54,635 --> 00:29:57,137 見なかった事にする。 えっ? 383 00:29:57,137 --> 00:29:59,137 早く行け! 384 00:30:02,309 --> 00:30:05,212 坊ちゃん どうされました? 385 00:30:05,212 --> 00:30:08,012 財布が落ちてた。 えっ? 386 00:30:18,158 --> 00:30:20,494 見なかった事にしよう。 387 00:30:20,494 --> 00:30:23,831 見なかった事にする。 388 00:30:23,831 --> 00:30:28,502 (お三輪) どうしたの? お姉ちゃん。 389 00:30:28,502 --> 00:30:32,840 お三輪 乙吉…。 390 00:30:32,840 --> 00:30:37,340 ごめんね。 お姉ちゃん もう帰らなきゃ。 391 00:30:43,017 --> 00:30:45,352 姉ちゃん お屋敷奉公だからさ➡ 392 00:30:45,352 --> 00:30:47,288 いつまでも こうしていられないんだよ。 393 00:30:47,288 --> 00:30:49,223 (お三輪と乙吉の泣き声) また そのうち➡ 394 00:30:49,223 --> 00:30:52,526 必ず 帰ってくるから。 なっ。 395 00:30:52,526 --> 00:30:58,399 お姉ちゃん! 一緒に帰っておくれよ! 396 00:30:58,399 --> 00:31:01,035 このまま一緒に…。 397 00:31:01,035 --> 00:31:05,205 乙吉! わがまま言って 姉ちゃんを困らせたら駄目! 398 00:31:05,205 --> 00:31:07,141 うん…。 399 00:31:07,141 --> 00:31:12,947 (お三輪と乙吉の泣き声) 400 00:31:12,947 --> 00:31:16,717 ごめんね。 401 00:31:16,717 --> 00:31:21,588 そのうち 必ず お前たちを 幸せにしてみせるから。 402 00:31:21,588 --> 00:31:26,894 それまで… それまで辛抱してておくれ。 403 00:31:26,894 --> 00:31:37,004 (3人の泣き声) 404 00:31:37,004 --> 00:31:42,509 お姉ちゃん! 乙吉! お姉ちゃん! 405 00:31:42,509 --> 00:31:44,545 お姉ちゃん! 406 00:31:44,545 --> 00:31:50,250 [ 心の声 ] あの虚無僧の旦那は あの時の?➡ 407 00:31:50,250 --> 00:31:53,750 そんな… そんな事って…。 408 00:31:57,992 --> 00:32:00,861 さあ 今日のご喜捨の場所は➡ 409 00:32:00,861 --> 00:32:04,361 駿河台は甲賀屋敷と 参りましょうか。 410 00:32:18,412 --> 00:32:20,547 遅かったな お綱。 あっ! 411 00:32:20,547 --> 00:32:22,483 何すんのさ! 412 00:32:22,483 --> 00:32:26,220 訪ねてこいと言ったから 訪ねてきてやったのだ。 413 00:32:26,220 --> 00:32:28,889 俺は お前の啖呵が気に入った。 414 00:32:28,889 --> 00:32:31,859 よしとくれよ こんな真っ昼間から。 415 00:32:31,859 --> 00:32:35,162 だったら 中で しっぽり いこうじゃないか。 416 00:32:35,162 --> 00:32:37,664 本気で言ってるのかい? 旦那。 417 00:32:37,664 --> 00:32:41,335 言ったろ? おめえに 俺は惚れたんだよ。 418 00:32:41,335 --> 00:32:43,270 だったら 名前くらい➡ 419 00:32:43,270 --> 00:32:46,840 聞かせておくんなさいよ。 420 00:32:46,840 --> 00:32:50,511 関谷孫兵衛。 421 00:32:50,511 --> 00:32:53,547 またの名を お十夜孫兵衛だ。 422 00:32:53,547 --> 00:32:57,017 見知りおけ。 そうですか。 423 00:32:57,017 --> 00:32:59,853 けど あたしの相手じゃないね。 424 00:32:59,853 --> 00:33:04,725 旦那の顔 見ても とんと胸に落ちないもの。 425 00:33:04,725 --> 00:33:06,725 何だと? 426 00:33:08,862 --> 00:33:11,698 あたしを 見くびってもらっちゃ 困るよ。 427 00:33:11,698 --> 00:33:14,198 お放しよ 手を。 428 00:33:19,039 --> 00:33:21,708 あたしゃ 今 機嫌が悪いんだ。 429 00:33:21,708 --> 00:33:24,545 これ以上 長引くと 命がないよ。 430 00:33:24,545 --> 00:33:28,382 ますます気に入った。 431 00:33:28,382 --> 00:33:30,382 また来るぜ。 432 00:33:33,654 --> 00:33:37,854 来なくていいってんだ 唐変木が。 433 00:33:46,166 --> 00:33:48,102 見なかった事にしよう。 434 00:33:48,102 --> 00:33:50,337 え…? 435 00:33:50,337 --> 00:33:53,006 (万吉)弦之丞様。 436 00:33:53,006 --> 00:33:56,306 弦之丞様…。 437 00:33:58,812 --> 00:34:02,512 旦那 ほんとに よろしいんで? 438 00:34:05,719 --> 00:34:09,022 これ以上 付きまとわれても かなわぬ。 439 00:34:09,022 --> 00:34:10,958 千絵殿が会うと言ったなら 会おう。 440 00:34:10,958 --> 00:34:12,893 そう こなくっちゃ 男じゃねえ! 441 00:34:12,893 --> 00:34:15,693 千絵様を救えるのは 旦那しかいねえんだ。 442 00:34:24,505 --> 00:34:26,805 ごめんくだせえ! 443 00:34:29,209 --> 00:34:31,145 いかがした? 周馬。 444 00:34:31,145 --> 00:34:33,845 何事もありません。 445 00:34:40,854 --> 00:34:43,323 旦那。 446 00:34:43,323 --> 00:34:45,359 甲賀の方か。 447 00:34:45,359 --> 00:34:51,832 それがし 法月弦之丞と申す。 千絵殿にお会いしたいのだが。 448 00:34:51,832 --> 00:34:56,170 世阿弥様の門弟筆頭 旅川周馬でござる。 449 00:34:56,170 --> 00:34:59,506 法月様の事は伺っております。 450 00:34:59,506 --> 00:35:03,377 …ですが そのいでたちは? 451 00:35:03,377 --> 00:35:05,377 これは…。 452 00:35:07,181 --> 00:35:09,683 申し訳ございませぬが➡ 453 00:35:09,683 --> 00:35:14,555 千絵様は お会いなさらぬとの事。 何? 454 00:35:14,555 --> 00:35:18,859 千絵様は 今 気うつの病に かかっておいででございます。 455 00:35:18,859 --> 00:35:21,528 気うつ? 456 00:35:21,528 --> 00:35:25,699 世阿弥様が 10年もの間 江戸を留守に致された事から➡ 457 00:35:25,699 --> 00:35:29,036 我が甲賀家のお取り潰しも 近くなったせいで➡ 458 00:35:29,036 --> 00:35:31,471 ご自分を責められたせいかと。 459 00:35:31,471 --> 00:35:34,308 一目 会うだけでいいのだが。 460 00:35:34,308 --> 00:35:40,113 それが どうしても会いたくないと 仰せなのです。 461 00:35:40,113 --> 00:35:43,483 いや そんなはずはねえ。 10年ですぜ。 462 00:35:43,483 --> 00:35:45,419 10年たって ようやく 旦那が こうやって戻ってきたって…。 463 00:35:45,419 --> 00:35:48,322 控えい 下郎! 464 00:35:48,322 --> 00:35:52,192 いま一度 お取り次ぎ願いたい。 465 00:35:52,192 --> 00:35:56,496 弦之丞が会いに来たと いま一度。 466 00:35:56,496 --> 00:35:59,166 これはしたり。 467 00:35:59,166 --> 00:36:03,670 法月家といえば七千石の大身旗本。 その ご嫡子が➡ 468 00:36:03,670 --> 00:36:07,174 取り潰しになるやもしれぬ 我が屋敷の門前で➡ 469 00:36:07,174 --> 00:36:11,345 頭を下げられたなどと噂が立てば 当方も迷惑。 470 00:36:11,345 --> 00:36:15,845 これ以上の事 平にご容赦を。 471 00:36:28,762 --> 00:36:30,962 お帰りを。 472 00:36:32,633 --> 00:36:35,333 旅川殿とやら。 473 00:36:37,137 --> 00:36:41,008 これを 千絵殿にお渡し下さい。 474 00:36:41,008 --> 00:36:44,311 江戸を出る時に渡されたものです。 475 00:36:44,311 --> 00:36:48,181 一日も手放した事はないと…➡ 476 00:36:48,181 --> 00:36:50,381 また来ると。 477 00:36:57,858 --> 00:36:59,860 (戸が閉まる音) 478 00:36:59,860 --> 00:37:01,860 旦那…。 479 00:37:05,699 --> 00:37:07,834 こんなはずはねえ! 480 00:37:07,834 --> 00:37:09,770 千絵様が会いたくねえと おっしゃる事ぁねえはずだ。 481 00:37:09,770 --> 00:37:11,705 銀五郎。 へい。 482 00:37:11,705 --> 00:37:14,508 腕に自信はあるか? いえ… それほど。 483 00:37:14,508 --> 00:37:16,443 足には? まあ そこそこ。 484 00:37:16,443 --> 00:37:19,243 ならば 走って逃げろ! 485 00:37:23,850 --> 00:37:25,786 行け! 486 00:37:25,786 --> 00:37:41,268 ♬~ 487 00:37:41,268 --> 00:37:43,637 (銀五郎)人殺しだ! 人殺し!➡ 488 00:37:43,637 --> 00:37:47,474 誰か… 誰か来てくれ! 人殺しだ! 489 00:37:47,474 --> 00:38:00,654 ♬~ 490 00:38:00,654 --> 00:38:04,154 うわっ 人殺しだ! 人殺し~! 491 00:38:06,159 --> 00:38:08,095 (呼び子の音) 492 00:38:08,095 --> 00:38:11,832 甲賀の衆であろう! 何故 私を襲う! 493 00:38:11,832 --> 00:38:14,032 (指笛の音) 494 00:38:18,505 --> 00:38:20,505 旦那…。 495 00:38:26,179 --> 00:38:29,216 分かった。 あやつから目を離すな。 496 00:38:29,216 --> 00:38:31,216 はっ! 497 00:38:37,290 --> 00:38:39,960 周馬 何がありました? 498 00:38:39,960 --> 00:38:42,462 いえ。 499 00:38:42,462 --> 00:38:45,966 何ですか? それは。 500 00:38:45,966 --> 00:38:48,468 これは その…。 501 00:38:48,468 --> 00:38:50,404 見せなさい。 502 00:38:50,404 --> 00:38:52,404 お見せなさい。 503 00:39:03,316 --> 00:39:08,155 これは…。 504 00:39:08,155 --> 00:39:12,025 弦之丞様がいらしたのですか? 505 00:39:12,025 --> 00:39:15,328 そうなのですね。 506 00:39:15,328 --> 00:39:17,831 なぜ 知らせなかったのですか! 507 00:39:17,831 --> 00:39:20,333 どこに いらっしゃるのですか 弦之丞様は! 508 00:39:20,333 --> 00:39:24,004 法月様は…➡ 509 00:39:24,004 --> 00:39:27,040 お帰りになられました。 510 00:39:27,040 --> 00:39:30,677 帰った…? 511 00:39:30,677 --> 00:39:32,646 なぜですか? 512 00:39:32,646 --> 00:39:35,649 心をお静めになって お聞き下さい。 513 00:39:35,649 --> 00:39:39,486 法月様は もう お会いにはなれないと➡ 514 00:39:39,486 --> 00:39:42,789 それを伝えに参られたのです。 515 00:39:42,789 --> 00:39:45,125 昔の事は 忘れてくれと。 516 00:39:45,125 --> 00:39:47,060 嘘です…。 517 00:39:47,060 --> 00:39:50,464 嘘ではありません! それゆえ そのお守り袋を➡ 518 00:39:50,464 --> 00:39:52,799 それがしに託したのです。 519 00:39:52,799 --> 00:39:55,836 あの時の思いを 千絵様にお返しすると➡ 520 00:39:55,836 --> 00:39:58,305 そう おっしゃられて…。➡ 521 00:39:58,305 --> 00:40:00,240 無念でございます 千絵様。➡ 522 00:40:00,240 --> 00:40:03,477 世阿弥様が戻らないばかりに こんな…! 523 00:40:03,477 --> 00:40:07,814 嘘です… 嘘です! 524 00:40:07,814 --> 00:40:10,514 (千絵の泣き声) 525 00:40:17,491 --> 00:40:19,826 多市! (多市)はっ! 526 00:40:19,826 --> 00:40:22,126 千絵様。 527 00:40:26,500 --> 00:40:29,402 法月弦之丞め…➡ 528 00:40:29,402 --> 00:40:33,673 今更 戻っても 遅いわ。 529 00:40:33,673 --> 00:40:38,345 千絵と甲賀は わしが頂く。 530 00:40:38,345 --> 00:40:40,345 フフフフフ…。 531 00:40:49,856 --> 00:40:52,893 ≪確かなのだな その法月とかいう男が➡ 532 00:40:52,893 --> 00:40:55,028 虚無僧になっておるというのは。 533 00:40:55,028 --> 00:40:57,028 [ 心の声 ] 法月!? 534 00:40:58,698 --> 00:41:00,698 来たぞ! 535 00:41:02,369 --> 00:41:04,369 弦之丞様 危ない! 536 00:41:08,875 --> 00:41:10,810 何者! 537 00:41:10,810 --> 00:41:12,746 や~! 538 00:41:12,746 --> 00:41:27,727 ♬~ 539 00:41:27,727 --> 00:41:29,763 おのれ! 540 00:41:29,763 --> 00:41:36,002 ♬~ 541 00:41:36,002 --> 00:41:40,507 弦之丞様が どうして…。 542 00:41:40,507 --> 00:41:47,280 ♬~ 543 00:41:47,280 --> 00:41:51,080 名を名乗れ。 名乗らぬか 卑怯者! 544 00:41:52,852 --> 00:41:55,188 阿波徳島の原士➡ 545 00:41:55,188 --> 00:41:57,123 天堂一角! 546 00:41:57,123 --> 00:42:01,061 阿波? 何故 阿波の方々が私を! 547 00:42:01,061 --> 00:42:03,061 黙れ! 548 00:42:05,832 --> 00:42:10,203 鳴門秘帖に関わる事 相成らぬ! 549 00:42:10,203 --> 00:42:25,552 ♬~ 550 00:42:25,552 --> 00:42:30,824 <鳴門秘帖を求め 阿波に渡った 世阿弥> 551 00:42:30,824 --> 00:42:42,435 ♬~ 552 00:42:42,435 --> 00:42:48,842 ♬~ 553 00:42:48,842 --> 00:42:50,777 帰らぬ 世阿弥を巡り➡ 554 00:42:50,777 --> 00:42:53,713 江戸では 弦之丞 千絵 そして お綱の➡ 555 00:42:53,713 --> 00:42:57,183 宿命の糸が絡まり始めていた。 556 00:42:57,183 --> 00:43:01,521 鳴門秘帖は そこに関わる人々の 運命を翻弄し➡ 557 00:43:01,521 --> 00:43:05,021 うずとなって 襲おうとしていたのであります。