1 00:00:03,947 --> 00:00:06,747 父親は 知っていた。 2 00:00:08,719 --> 00:00:14,391 ごめん 邪魔して…。 しょうのないやつだ。 3 00:00:14,391 --> 00:00:25,591 ♬~ 4 00:00:33,510 --> 00:00:48,992 ♬~ 5 00:00:48,992 --> 00:00:56,733 (なつ)<ここは 私が育った 北海道の十勝です。➡ 6 00:00:56,733 --> 00:01:01,533 私の大好きな風景に 今日も風が吹いています> 7 00:01:07,377 --> 00:01:10,947 <私は 子どもの頃 たった一枚の絵から➡ 8 00:01:10,947 --> 00:01:14,447 アニメーションの世界と 出会うことになりました> 9 00:01:18,455 --> 00:01:22,325 <そして 18の夏。➡ 10 00:01:22,325 --> 00:01:29,466 その懐かしい人は 突然 私の前に現れました。➡ 11 00:01:29,466 --> 00:01:33,966 私は その手に救われたことがあります> 12 00:01:46,583 --> 00:01:51,721 <昭和20年3月 東京に大空襲があった日> 13 00:01:51,721 --> 00:01:55,592 (爆撃音) 14 00:01:55,592 --> 00:02:02,466 <私は 逃げ惑う人の波に流されて 家族を見失いました> 15 00:02:02,466 --> 00:02:06,466 お母さ~ん! 16 00:02:09,139 --> 00:02:13,443 <避難所の学校に 私は とにかく向かいました。➡ 17 00:02:13,443 --> 00:02:18,243 そこかしこに 無数の焼夷弾が降っていました> 18 00:02:21,318 --> 00:02:26,456 <その時 誰かが 私の手をつかんだのです。➡ 19 00:02:26,456 --> 00:02:32,156 私は その手に導かれて 学校のプールに飛び込みました> 20 00:02:40,403 --> 00:02:43,703 <それで生き延びたのです> 21 00:02:45,709 --> 00:02:51,209 <だけど その日から 私の人生は一変しました> 22 00:02:55,085 --> 00:02:57,587 信さん…? 23 00:02:57,587 --> 00:03:00,590 本当に 信さん!? 24 00:03:00,590 --> 00:03:02,790 (信哉)元気だったか? 25 00:03:06,596 --> 00:03:09,266 うん。 26 00:03:09,266 --> 00:03:14,766 なっちゃんに また会えてよかった。 27 00:03:16,740 --> 00:03:19,740 私も。 28 00:03:21,578 --> 00:03:25,482 ずっと ずっと 会いたかったわ。 29 00:03:25,482 --> 00:03:34,257 ♬~ 30 00:03:34,257 --> 00:03:42,232 <これから語る この物語は 紛れもなく 私の人生そのものです。➡ 31 00:03:42,232 --> 00:03:48,732 私は やがて アニメーションという世界に その人生をかけてゆくのです> 32 00:03:57,414 --> 00:04:08,592 ♬~ 33 00:04:08,592 --> 00:04:17,601 ♬「重い扉を押し開けたら 暗い道が続いてて」 34 00:04:17,601 --> 00:04:27,277 ♬「めげずに歩いたその先に 知らなかった世界」 35 00:04:27,277 --> 00:04:36,553 ♬「氷を散らす風すら 味方にもできるんだなあ」 36 00:04:36,553 --> 00:04:46,062 ♬「切り取られることのない 丸い大空の色を」 37 00:04:46,062 --> 00:04:55,405 ♬「優しいあの子にも教えたい」 38 00:04:55,405 --> 00:05:04,914 ♬「ルルル…」 39 00:05:04,914 --> 00:05:14,257 ♬「口にする度に泣けるほど 憧れて砕かれて」 40 00:05:14,257 --> 00:05:22,957 ♬「消えかけた火を胸に抱き たどり着いたコタン」 41 00:05:33,543 --> 00:05:37,047 はい 今は 昭和21年➡ 42 00:05:37,047 --> 00:05:41,685 戦争が終わった翌年の初夏です。 43 00:05:41,685 --> 00:05:46,222 なつは 初めて 北海道・十勝にやって来ました。 44 00:05:46,222 --> 00:05:49,022 まだ 9つの時です。 45 00:05:51,061 --> 00:05:54,097 どうだ 広いだろう。 46 00:05:54,097 --> 00:05:57,934 東京は焼け野原だけど ここは 本当の野原だ。 47 00:05:57,934 --> 00:06:00,634 お~! 48 00:06:05,909 --> 00:06:09,412 ああ… ハハ…。 49 00:06:09,412 --> 00:06:11,912 うわっ…。 50 00:06:16,286 --> 00:06:18,922 あっ。 51 00:06:18,922 --> 00:06:22,425 どうした? 52 00:06:22,425 --> 00:06:26,225 あっ… タンポポか。 53 00:06:27,931 --> 00:06:30,967 あっ! ああ…。 54 00:06:30,967 --> 00:06:33,203 何だ 腹減ってんかい。 55 00:06:33,203 --> 00:06:36,673 もう少しの我慢だよ。 56 00:06:36,673 --> 00:06:38,742 あの~ なっちゃん。 57 00:06:38,742 --> 00:06:41,544 ここまで来て言うのもなんだけど➡ 58 00:06:41,544 --> 00:06:44,547 最初は 怖いおじいさんが いるかもしれないけど➡ 59 00:06:44,547 --> 00:06:47,884 大丈夫だからな。 60 00:06:47,884 --> 00:06:50,920 おじさんは婿養子なんだ。 61 00:06:50,920 --> 00:06:54,057 まあ いいや。 行こう。 62 00:06:54,057 --> 00:06:56,893 うん! 63 00:06:56,893 --> 00:07:01,398 どうして なつが この大地で生きることになったか➡ 64 00:07:01,398 --> 00:07:04,434 まずは そこからお話ししましょう。 65 00:07:04,434 --> 00:07:26,556 ♬~ 66 00:07:26,556 --> 00:07:29,092 あれが おじさんの家だ。 67 00:07:29,092 --> 00:07:31,392 今日から なっちゃんの暮らす家だよ。 68 00:07:36,366 --> 00:07:38,301 行こう。 69 00:07:38,301 --> 00:07:50,801 ♬~ 70 00:08:05,895 --> 00:08:08,395 (富士子)剛男さん! 71 00:08:10,700 --> 00:08:14,571 剛男さんが帰ってきた! 72 00:08:14,571 --> 00:08:20,271 照男! 夕見子! お父さんが… お父さんが帰ってきましたよ! 73 00:08:31,521 --> 00:08:34,023 (照男)お父さん! (夕見子)お父さん! 74 00:08:34,023 --> 00:08:38,194 あなた お帰りなさい。 75 00:08:38,194 --> 00:08:40,663 ただいま。 76 00:08:40,663 --> 00:08:44,200 やっと帰ってこられたわ。 77 00:08:44,200 --> 00:08:47,400 きっと帰ってくるって信じてました。 78 00:08:53,376 --> 00:08:58,548 照男 夕見子 大きくなったな。 79 00:08:58,548 --> 00:09:00,884 よく今まで頑張った。 80 00:09:00,884 --> 00:09:04,754 お帰んなさい。 お帰んなさい。 81 00:09:04,754 --> 00:09:08,558 明美か! もうこんなに大きくなったんか。 82 00:09:08,558 --> 00:09:11,561 お父さんだぞ ず~っと会いたかったんだ。 83 00:09:11,561 --> 00:09:15,261 うん? ほ~ら よしよし よしよし…。 (富士子)分かる? 84 00:09:20,069 --> 00:09:22,906 お義父さん ただいま戻りました。 85 00:09:22,906 --> 00:09:26,406 うん よく戻った。 86 00:09:33,182 --> 00:09:36,219 で この子は誰なんですか? 87 00:09:36,219 --> 00:09:38,988 あ… なっちゃん。 88 00:09:38,988 --> 00:09:40,924 なっちゃん…? 89 00:09:40,924 --> 00:09:45,662 こんにちは! 奥原なつと申します。 90 00:09:45,662 --> 00:09:48,031 (剛男)まずは 風呂たいてくれんかい?➡ 91 00:09:48,031 --> 00:09:50,731 なっちゃん お風呂に入れてやりたい。 92 00:09:58,541 --> 00:10:03,212 なつがやって来た柴田家は 苦労して 荒れ野を切り開き➡ 93 00:10:03,212 --> 00:10:07,712 この地に移り住んだ 開拓者の一家でした。 94 00:10:15,925 --> 00:10:19,562 (泰樹)奥原なつと言ったな どこの子じゃ。 95 00:10:19,562 --> 00:10:23,066 あの子は 僕の戦友の子なんです。 96 00:10:23,066 --> 00:10:28,237 その人は 残念ながら 満州で戦死してしまったんだ。 97 00:10:28,237 --> 00:10:32,709 そんで? それで その人と約束したんです。 98 00:10:32,709 --> 00:10:35,612 もし どっちかが戦死した時には➡ 99 00:10:35,612 --> 00:10:39,916 その家族に宛てた手紙を 必ず届けるべって。 100 00:10:39,916 --> 00:10:42,585 手紙を? うん。 101 00:10:42,585 --> 00:10:45,421 本当に 家族に 書き残したいことを書いて➡ 102 00:10:45,421 --> 00:10:50,293 軍に検閲されないよう お互い託したんだ。 103 00:10:50,293 --> 00:10:54,097 遺書みたいなもんかい? そだな。 104 00:10:54,097 --> 00:10:58,434 あんたも書いたの? ああ 書いた。 105 00:10:58,434 --> 00:11:00,937 どんなこと書いたの? 106 00:11:00,937 --> 00:11:03,439 いや それは恥ずかしいな 生きてるのに。 107 00:11:03,439 --> 00:11:05,742 んなことは どうだっていい。 108 00:11:05,742 --> 00:11:09,445 何で その子どもが ここにいるんじゃ? 109 00:11:09,445 --> 00:11:12,281 ですから その手紙を 届けようとしたんです。 110 00:11:12,281 --> 00:11:16,619 その人は 東京の日本橋で 料理屋をやってると聞いていたんで➡ 111 00:11:16,619 --> 00:11:20,289 復員して ここに帰る前に寄ったんだわ。 112 00:11:20,289 --> 00:11:24,489 でも その家もなかったんですよ 空襲で。 113 00:11:31,901 --> 00:11:38,401 <私は 真っ赤な夕日を見て あの日のことを思い出していました> 114 00:11:40,610 --> 00:11:44,414 <空襲があったその日 夜が明けると➡ 115 00:11:44,414 --> 00:11:50,114 私の住んでた東京の街は 跡形もなく消えていました> 116 00:11:54,123 --> 00:11:56,592 ≪(咲太郎)なつ! 117 00:11:56,592 --> 00:12:00,596 お兄ちゃん! 千遥! お姉ちゃん! 118 00:12:00,596 --> 00:12:04,734 なつ 無事だったか よかった…。 119 00:12:04,734 --> 00:12:08,604 お姉ちゃん。 お前は 佐々岡医院の…。 120 00:12:08,604 --> 00:12:11,107 佐々岡信哉です。 121 00:12:11,107 --> 00:12:14,610 お母さんは? 122 00:12:14,610 --> 00:12:19,482 ダメだった… 死んだんだ。 123 00:12:19,482 --> 00:12:23,753 えっ…。 最後まで なつのこと心配してた。 124 00:12:23,753 --> 00:12:26,453 なつが 無事でよかったよ。 125 00:12:28,291 --> 00:12:34,491 うちもダメだった。 父さんと母さんは防空壕の中で…。 126 00:12:38,101 --> 00:12:42,901 大丈夫だ。 兄ちゃんがついてる。 127 00:12:48,911 --> 00:12:52,582 (剛男)あの子は 空襲で お母さんも亡くして➡ 128 00:12:52,582 --> 00:12:56,252 まだ12歳のお兄さんと 幼い妹と➡ 129 00:12:56,252 --> 00:12:59,252 子どもだけで生きてきたらしいです。 130 00:13:03,426 --> 00:13:07,730 僕は 孤児のいそうな所を必死に探して➡ 131 00:13:07,730 --> 00:13:11,267 事情があって あの子だけ 引き取ることにしたのさ。 132 00:13:11,267 --> 00:13:13,736 (富士子)引き取るって➡ 133 00:13:13,736 --> 00:13:16,105 これから ここで暮らすってことかい? 134 00:13:16,105 --> 00:13:18,608 ほっとけなかったんだ。 135 00:13:18,608 --> 00:13:20,543 いや したけど…。 136 00:13:20,543 --> 00:13:25,043 すまん。 苦労かけるけど なんとか頼むわ。 137 00:13:34,090 --> 00:13:36,692 分かった。 大丈夫よ。 138 00:13:36,692 --> 00:13:39,595 1人ぐらい増えたって。 かわいそうだものね。 139 00:13:39,595 --> 00:13:42,899 かわいそうだからって 犬猫みたいに拾ってくるやつがあるか。 140 00:13:42,899 --> 00:13:45,701 お義父さん。 牛や馬なら まだしも➡ 141 00:13:45,701 --> 00:13:47,770 役立たんやつ増やして どうするんじゃ。 142 00:13:47,770 --> 00:13:52,408 あの子は 僕の大事な戦友の子なんです! 赤の他人に変わりはないべや。 143 00:13:52,408 --> 00:13:54,911 そんな冷たいこと言わないで下さいよ。 144 00:13:54,911 --> 00:13:59,415 大丈夫よ。 父さんは 一人で 北海道に渡って 苦労をし過ぎて➡ 145 00:13:59,415 --> 00:14:01,350 苦労が まひしてんの。 146 00:14:01,350 --> 00:14:05,221 だから そんな 血も涙もないことが言えるんだわ。 147 00:14:05,221 --> 00:14:07,590 お前は 苦労し過ぎて➡ 148 00:14:07,590 --> 00:14:10,927 誰んでも優しくしなければなんないと 思い込んどるだけじゃ。 149 00:14:10,927 --> 00:14:14,797 いや したらさ 時と場合を選んで 人を助けろって言うのかい? 150 00:14:14,797 --> 00:14:17,600 何でもかんでもは 考えなしと同じだべ。 151 00:14:17,600 --> 00:14:21,103 やめて下さい! 2人が喧嘩することはないんです。 152 00:14:21,103 --> 00:14:24,440 とにかく あの子は 僕が守りますから。 153 00:14:24,440 --> 00:14:27,440 いるよ そこに。 えっ? 154 00:14:31,681 --> 00:14:34,884 あっ… もう上がったの。 155 00:14:34,884 --> 00:14:38,184 また そんな汚い服着て。 156 00:14:41,057 --> 00:14:43,693 お風呂は 気持ちいかったかい? 157 00:14:43,693 --> 00:14:47,897 はい。 そう いかった。 158 00:14:47,897 --> 00:14:50,399 長旅で疲れたっしょ。 159 00:14:50,399 --> 00:14:53,236 今日は ぐっすり寝なね。 160 00:14:53,236 --> 00:14:57,106 おばさん ありがとう…。 161 00:14:57,106 --> 00:15:01,410 (泣き声) あれ どうしたの。 162 00:15:01,410 --> 00:15:10,586 (泣き声) 163 00:15:10,586 --> 00:15:16,392 大丈夫… もう大丈夫よ。 164 00:15:16,392 --> 00:15:21,597 なつは ここで 生きてゆくしかありませんでした。 165 00:15:21,597 --> 00:15:25,797 なつよ 思いっきり泣け。