1 00:00:03,674 --> 00:00:11,148 ♬~ 2 00:00:11,148 --> 00:00:15,019 生まれて初めて書く 便りである。 3 00:00:15,019 --> 00:00:20,319 書き終わった時は 空が 白み始めていた。 4 00:00:35,306 --> 00:00:39,806 なつよ さあ 始まる。 5 00:00:46,017 --> 00:01:05,303 ♬~ 6 00:01:05,303 --> 00:01:14,345 ♬「重い扉を押し開けたら 暗い道が続いてて」 7 00:01:14,345 --> 00:01:24,021 ♬「めげずに歩いたその先に 知らなかった世界」 8 00:01:24,021 --> 00:01:33,464 ♬「氷を散らす風すら 味方にもできるんだなあ」 9 00:01:33,464 --> 00:01:42,807 ♬「切り取られることのない 丸い大空の色を」 10 00:01:42,807 --> 00:01:52,149 ♬「優しいあの子にも教えたい」 11 00:01:52,149 --> 00:02:01,949 ♬「ルルル…」 12 00:02:07,331 --> 00:02:15,840 ♬~ 13 00:02:15,840 --> 00:02:20,010 ♬~ (笑い声) 14 00:02:20,010 --> 00:03:05,990 ♬~ 15 00:03:05,990 --> 00:03:16,500 (拍手) 16 00:03:16,500 --> 00:03:29,079 ♬~ 17 00:03:29,079 --> 00:03:31,048 (夕見子)ねえ 何してるの? 18 00:03:31,048 --> 00:03:33,918 (なつ)えっ? 19 00:03:33,918 --> 00:03:36,718 もしかして 漏らしたの? 20 00:03:38,456 --> 00:03:40,958 私は ずっと我慢してた。 21 00:03:40,958 --> 00:03:43,158 先 行くね。 22 00:03:48,132 --> 00:03:50,167 天陽君! 23 00:03:50,167 --> 00:03:52,303 あっ 郵便屋さん。 24 00:03:52,303 --> 00:03:55,339 (正治)やあ 君は 柴田牧場さんとこの…。 25 00:03:55,339 --> 00:03:58,175 天陽の友達だったのか。 はい。 26 00:03:58,175 --> 00:04:00,478 (天陽)えっ 知ってるの? 27 00:04:00,478 --> 00:04:02,813 うん 手紙を… ね。 28 00:04:02,813 --> 00:04:05,149 あの まだ来ませんか? 29 00:04:05,149 --> 00:04:07,184 うん… そうみたいだね。 30 00:04:07,184 --> 00:04:10,821 来たら すぐに届けるから。 31 00:04:10,821 --> 00:04:13,624 あなたが 東京から来た子ね。 32 00:04:13,624 --> 00:04:18,496 はい。 いろいろ 大変なことが あったんでしょうね。 33 00:04:18,496 --> 00:04:21,499 天陽と 仲よくしてやってね。 34 00:04:21,499 --> 00:04:25,836 はい。 あっ 面白かったね! 35 00:04:25,836 --> 00:04:30,007 えっ? 漫画映画 すごく面白かった! 36 00:04:30,007 --> 00:04:34,445 あっ そうか。 天陽君は 面白くなかった? 37 00:04:34,445 --> 00:04:38,949 そんなことないよ。 前見たのは 白黒だったけど➡ 38 00:04:38,949 --> 00:04:43,120 今のは天然色だったし。 色が すごくきれいだった。 39 00:04:43,120 --> 00:04:47,291 やっぱり アメリカの映画は進んでるなあ。 40 00:04:47,291 --> 00:04:49,326 兄ちゃんが言ってたけど アメリカには➡ 41 00:04:49,326 --> 00:04:51,595 ディズニーっていう漫画映画が あるんだって。 42 00:04:51,595 --> 00:04:56,133 それは すごいらしいよ。 わあ~ 見たいなあ。 43 00:04:56,133 --> 00:05:01,805 しかし 恐ろしい爆弾も作れば ああいうものも作るんだからな。 44 00:05:01,805 --> 00:05:04,708 学校も すぐに アメリカ礼賛っていうのは どうなんだろうな。 45 00:05:04,708 --> 00:05:08,979 さんざん 鬼畜米英だと教育しといて。 あなた…。 46 00:05:08,979 --> 00:05:12,316 (剛男)なっちゃん 帰ろう。 夕見子は? 47 00:05:12,316 --> 00:05:16,186 お便所。 あ~…。 (富士子)あら 郵便屋さん。 48 00:05:16,186 --> 00:05:20,057 こんにちは 柴田さん。 山田の家内です。 49 00:05:20,057 --> 00:05:24,895 いつも 学校で 息子が なつさんと仲よくしてもらってるようで。 50 00:05:24,895 --> 00:05:28,165 ありがとうございます。 こちらこそ。 51 00:05:28,165 --> 00:05:30,200 なんだ そだったの? 52 00:05:30,200 --> 00:05:34,438 はい。 それじゃあ これで。 53 00:05:34,438 --> 00:05:38,108 さようなら。 失礼します。 さようなら。 54 00:05:38,108 --> 00:05:41,011 今度 うちに 遊びに来いよ。 えっ? 55 00:05:41,011 --> 00:05:44,782 うちに 絵の具があるんだ。 絵を描かしてやるよ。 56 00:05:44,782 --> 00:05:47,585 本当に? いいの? 行っても。 いいよ。 57 00:05:47,585 --> 00:05:54,291 天陽 あんな家に 柴田さんのお嬢さんを 招くなんて 失礼だぞ。 58 00:05:54,291 --> 00:05:57,795 ダメですか? 59 00:05:57,795 --> 00:06:01,131 あの~ もしよかったら 是非。 60 00:06:01,131 --> 00:06:05,603 あっ… そりゃ もちろん うちは構いませんが。 61 00:06:05,603 --> 00:06:10,140 はい… いつでも どうぞ。 62 00:06:10,140 --> 00:06:16,313 ♬~ 63 00:06:16,313 --> 00:06:21,619 それから ある日のこと。 学校帰りに なつは➡ 64 00:06:21,619 --> 00:06:26,119 天陽君と一緒に その家に向かいました。 65 00:06:28,158 --> 00:06:32,129 天陽君の家は 本当に小さな家でした。 66 00:06:32,129 --> 00:06:36,129 こっちは 馬小屋なんだ。 行こう。 うん。 67 00:06:45,109 --> 00:06:47,945 わあ~ すごい! 68 00:06:47,945 --> 00:06:49,880 これ 天陽君が描いたの!? 69 00:06:49,880 --> 00:06:53,283 違うよ。 それは 兄ちゃんが描いたんだ。 70 00:06:53,283 --> 00:06:56,186 お兄さんが? うん。 71 00:06:56,186 --> 00:06:59,957 中学で 美術部に入ってるんだ。 72 00:06:59,957 --> 00:07:04,128 兄ちゃんの絵 すごいだろ。 73 00:07:04,128 --> 00:07:10,601 父さんも 兄ちゃんのために 無理して 絵の具を買ってるんだ。 74 00:07:10,601 --> 00:07:13,101 僕の絵は こっちだよ。 75 00:07:20,978 --> 00:07:25,149 ここで 死んだ馬を描いたんだ。 76 00:07:25,149 --> 00:07:28,819 だから黒いの? そういうわけじゃないよ。 77 00:07:28,819 --> 00:07:33,257 黒い絵の具は 赤や黄色よりも安いんだって。 78 00:07:33,257 --> 00:07:38,929 それに あんまり 兄ちゃん使わないから。 79 00:07:38,929 --> 00:07:40,864 何か描く? 80 00:07:40,864 --> 00:07:45,436 ここにあるやつ どれ使ってもいいって 兄ちゃんに言われてるんだ。 81 00:07:45,436 --> 00:07:48,272 あっ… いいよ。 82 00:07:48,272 --> 00:07:51,308 せっかく来たのに。 83 00:07:51,308 --> 00:07:56,146 遠慮するなよ。 絵 描きたいんだろ? 84 00:07:56,146 --> 00:07:58,582 また 今度。 85 00:07:58,582 --> 00:08:04,121 今日は 天陽君の絵を 見られただけで満足。 86 00:08:04,121 --> 00:08:06,321 そっか。 87 00:08:11,995 --> 00:08:16,467 貧しくて驚いたろ? そんなことないよ。 88 00:08:16,467 --> 00:08:21,267 私なんて ずっと家がなかったんだから。 そっか。 89 00:08:30,481 --> 00:08:32,781 頂きます! 90 00:08:37,921 --> 00:08:39,921 冷たくておいしい! 91 00:08:46,430 --> 00:08:53,203 畑が うまくいかないから… ダメなんだ。 92 00:08:53,203 --> 00:08:55,203 えっ? 93 00:09:01,912 --> 00:09:07,284 ここは いくら耕しても 土が悪いと言われて➡ 94 00:09:07,284 --> 00:09:11,955 父さんは もう 耕す気もなくなってしまったんだ。 95 00:09:11,955 --> 00:09:14,291 そうなの? 96 00:09:14,291 --> 00:09:19,163 それで 父さんは なんとか 郵便局の仕事を見つけて➡ 97 00:09:19,163 --> 00:09:25,463 母さんは 近くの畑を手伝って 食べ物をもらってくるんだ。 98 00:09:31,141 --> 00:09:36,547 それも 今年の秋までのことかもしれない。 99 00:09:36,547 --> 00:09:38,916 えっ? 100 00:09:38,916 --> 00:09:40,851 ここを離れるんだ。 101 00:09:40,851 --> 00:09:43,253 東京に戻るの!? 102 00:09:43,253 --> 00:09:47,253 分からない。 だけど もう ここにはいられないよ。 103 00:09:49,126 --> 00:09:53,826 作物が育たなければ 捨てるしかないよ こんな土地。 104 00:10:03,273 --> 00:10:07,444 せめて あの馬が生きていたらな…。 105 00:10:07,444 --> 00:10:11,949 俺の力じゃ どうすることもできない! 106 00:10:11,949 --> 00:10:16,453 農家にとって 馬の力は欠かせないんだ。 107 00:10:16,453 --> 00:10:18,956 悔しいけど…。 108 00:10:18,956 --> 00:10:24,828 チクショー! チクショー! 109 00:10:24,828 --> 00:10:28,131 天陽君は 農家をやりたいの? 110 00:10:28,131 --> 00:10:31,168 そりゃ やりたいよ! 俺は ここで生きたいんだ! 111 00:10:31,168 --> 00:10:35,305 ここが好きなんだ! 112 00:10:35,305 --> 00:10:38,976 この土に勝ちたいよ! 勝ちたい…。 113 00:10:38,976 --> 00:10:43,146 くそ~! くそ~! くそ~! 114 00:10:43,146 --> 00:10:45,482 あ~! 115 00:10:45,482 --> 00:11:12,342 ♬~ 116 00:11:12,342 --> 00:11:15,846 (悠吉)それは 拓北農兵隊だな。 117 00:11:15,846 --> 00:11:18,749 たくほくのうへいたい? 何ですか? それ。 118 00:11:18,749 --> 00:11:21,718 ああ 剛男さんは 戦争に行ってて知らんでしょう。 119 00:11:21,718 --> 00:11:26,857 つまり 日本の政府が 空襲で 家をなくした東京の人に➡ 120 00:11:26,857 --> 00:11:31,028 北海道へ行って開拓しなさいよと 勧めたってわけです。 121 00:11:31,028 --> 00:11:34,598 なっちゃんの同級生も そんで ここ 音問別に来たんだべ。 122 00:11:34,598 --> 00:11:38,468 (菊介)けど 今更来たって まともな土地は みんな 開拓されたあとで➡ 123 00:11:38,468 --> 00:11:41,471 もう人が住んでるのさ。 (剛男)そうだろうねえ。 124 00:11:41,471 --> 00:11:45,242 (菊介)結局 たくさんの人が もう東京に帰ったって話だけどね。 125 00:11:45,242 --> 00:11:49,542 しかたないもな。 食うもんが作れないんじゃ。 126 00:11:59,156 --> 00:12:01,156 なっちゃん? 127 00:12:05,629 --> 00:12:08,498 (泰樹)ん? 何だ。 128 00:12:08,498 --> 00:12:11,835 あの… お願いがあります。 129 00:12:11,835 --> 00:12:15,035 天陽君を助けて下さい。 130 00:12:19,176 --> 00:12:23,347 何 助ける? 畑で 収穫ができるように。 131 00:12:23,347 --> 00:12:26,850 親は とっくに諦めてるんだべ。 132 00:12:26,850 --> 00:12:31,188 天陽君は それでも やりたいって言ったんです。 133 00:12:31,188 --> 00:12:36,159 はっきり言いました。 土に勝ちたいって。 134 00:12:36,159 --> 00:12:39,463 勝ちたい? はい。 135 00:12:39,463 --> 00:12:42,966 土に勝たせてあげて下さい! 136 00:12:42,966 --> 00:12:45,002 無理だ。 137 00:12:45,002 --> 00:12:47,304 土が悪すぎる。 138 00:12:47,304 --> 00:12:49,806 見てもないのに…。 139 00:12:49,806 --> 00:12:52,476 見んでも分かる。 140 00:12:52,476 --> 00:12:55,479 おじいさんだって 最初は そうだったんでしょ? 141 00:12:55,479 --> 00:12:58,148 土が悪かったって。 142 00:12:58,148 --> 00:13:02,019 なつ もう ほっといてやれ。 143 00:13:02,019 --> 00:13:04,019 うそつき! 144 00:13:07,491 --> 00:13:12,329 おじいさんは 自分の力で働いていたら➡ 145 00:13:12,329 --> 00:13:18,135 いつか 必ず 誰かが助けてくれるもんだ って言ったじゃない! 146 00:13:18,135 --> 00:13:22,005 天陽君は 一人で頑張ってるの! 147 00:13:22,005 --> 00:13:25,509 一人で 土を耕してるの! 148 00:13:25,509 --> 00:13:29,809 天陽君を 誰が助けてくれるの!? 149 00:13:36,953 --> 00:13:40,590 なっちゃん 分かったから… ねっ。 150 00:13:40,590 --> 00:13:55,806 ♬~ 151 00:13:55,806 --> 00:13:58,475 なっちゃんは? 部屋に行ったみたい。 152 00:13:58,475 --> 00:14:03,980 そう… 天陽君が離農しそうだって 本当に心配してるんだなあ。 153 00:14:03,980 --> 00:14:06,883 天陽君 いなくなるの? うん。 154 00:14:06,883 --> 00:14:10,487 それで お義父さんに 助けてくれって 泣いて頼んでたよ。 155 00:14:10,487 --> 00:14:14,157 あの子が そんなことを? 優しい子だよ。 156 00:14:14,157 --> 00:14:18,829 好きなのさ その子が。 好きなのか… えっ? 157 00:14:18,829 --> 00:14:21,498 あの子の好きな人でしょ 天陽君って。 158 00:14:21,498 --> 00:14:23,500 そうなの? やっぱり。 159 00:14:23,500 --> 00:14:25,502 いや いや いや いや 好きとか 嫌いとか➡ 160 00:14:25,502 --> 00:14:28,271 そういうもんでは ないでしょう。 まだ子どもなのに。 161 00:14:28,271 --> 00:14:31,208 はあ~? それは あなたが➡ 162 00:14:31,208 --> 00:14:34,578 まだ子どもだと思いたいだけでしょう。 えっ? 163 00:14:34,578 --> 00:14:37,447 好きになった子と離れたくないのね きっと。 164 00:14:37,447 --> 00:14:42,319 いやいや それは 君が 逆に あの子を子どもに見てるだけだと思うな。 165 00:14:42,319 --> 00:14:46,456 あの子の怒りは そんな単純なものでは なかったような気がする。 166 00:14:46,456 --> 00:14:49,359 じゃあ どういうもんだ? 167 00:14:49,359 --> 00:14:54,798 ああっ… あの もっと… この世界に対する 何と言うか こう…。 168 00:14:54,798 --> 00:14:58,135 あの子の怒りは あの子にしか分からん。 169 00:14:58,135 --> 00:15:01,605 それでいい。 ごちゃごちゃ言うな。 170 00:15:01,605 --> 00:15:04,307 ごちゃごちゃ言わせてるのは お義父さんでしょう。 171 00:15:04,307 --> 00:15:08,178 何? あっ いや…。 172 00:15:08,178 --> 00:15:13,617 <私にも そんなことは分かりませんでした。➡ 173 00:15:13,617 --> 00:15:18,155 自分が なぜ あんなに怒ったのか> 174 00:15:18,155 --> 00:15:24,955 なつよ それは お前が 今 少なからず幸せだからだ。