1 00:00:06,847 --> 00:00:10,284 父の弱々しい ほほ笑みを見て➡ 2 00:00:10,284 --> 00:00:15,122 おしんは 父への恨みや憎悪が 一度に消えていた。 3 00:00:15,122 --> 00:00:19,059 この人は 何のために 生まれてきたのだろうか。 4 00:00:19,059 --> 00:00:23,859 そう思うと 父が哀れでならなかった。 5 00:00:33,640 --> 00:00:37,311 (明美)千遥ちゃんから 手紙が来た! 6 00:00:37,311 --> 00:00:40,814 千遥から手紙が届いたのは➡ 7 00:00:40,814 --> 00:00:45,614 千遥が消えて 2日後のことでした。 8 00:00:47,321 --> 00:00:51,158 (砂良)消印は帯広ね。 帯広から出したんだ。 9 00:00:51,158 --> 00:00:54,061 (咲太郎)帯広にいるのか? 10 00:00:54,061 --> 00:01:00,868 ♬~ 11 00:01:00,868 --> 00:01:12,446 ♬~ 12 00:01:12,446 --> 00:01:21,488 ♬「重い扉を押し開けたら 暗い道が続いてて」 13 00:01:21,488 --> 00:01:31,165 ♬「めげずに歩いたその先に 知らなかった世界」 14 00:01:31,165 --> 00:01:40,641 ♬「氷を散らす風すら 味方にもできるんだなあ」 15 00:01:40,641 --> 00:01:49,983 ♬「切り取られることのない 丸い大空の色を」 16 00:01:49,983 --> 00:01:59,326 ♬「優しいあの子にも教えたい」 17 00:01:59,326 --> 00:02:09,126 ♬「ルルル…」 18 00:02:17,711 --> 00:02:20,011 (なつ)読むね。 19 00:02:22,349 --> 00:02:28,488 「お姉ちゃん お兄ちゃん 急に帰ってしまってごめんなさい。➡ 20 00:02:28,488 --> 00:02:33,961 柴田牧場の皆さんにも 大変失礼なことをしました。➡ 21 00:02:33,961 --> 00:02:38,298 おわび申し上げます。➡ 22 00:02:38,298 --> 00:02:41,201 私は 子どもの頃➡ 23 00:02:41,201 --> 00:02:46,807 おばさんの家にいるのがつらくて 逃げ出しました。➡ 24 00:02:46,807 --> 00:02:51,144 線路を見つけて そこを たどっていけば➡ 25 00:02:51,144 --> 00:02:56,650 お姉ちゃんや お兄ちゃんのいる 東京に行けると思ったのです。➡ 26 00:02:56,650 --> 00:03:01,989 どこかの駅で 一人の復員兵の人に助けられました。➡ 27 00:03:01,989 --> 00:03:11,989 今では 顔も思い出せないその人は 私を連れて 東京に行ってくれました」。 28 00:03:14,001 --> 00:03:20,474 (千遥)「そして 私を自分の娘だと言って 置屋に売ったのです。➡ 29 00:03:20,474 --> 00:03:26,179 私は 18歳になる今まで そこの女将さんを お母さんと呼んで➡ 30 00:03:26,179 --> 00:03:29,216 人並みに育つことができました」。 31 00:03:29,216 --> 00:03:31,952 お稽古 お願いします。 32 00:03:31,952 --> 00:03:35,452 はい 始めましょう。 33 00:03:38,825 --> 00:03:44,665 ♬~ 34 00:03:44,665 --> 00:03:51,305 (千遥) 「私は 今 奥原千遥ではありません。➡ 35 00:03:51,305 --> 00:03:56,643 女将さんは 私を 戦災孤児として届け出をして➡ 36 00:03:56,643 --> 00:04:02,316 自分の戸籍に 養女として迎えてくれたからです。➡ 37 00:04:02,316 --> 00:04:04,818 今でも独身の女将さんは➡ 38 00:04:04,818 --> 00:04:09,690 本当に 私のお母さんになってくれたのです。➡ 39 00:04:09,690 --> 00:04:15,529 私は 置屋の娘になりました」。 40 00:04:15,529 --> 00:04:18,999 「そんな私に 最近➡ 41 00:04:18,999 --> 00:04:25,472 結婚してほしいという人が現れました。➡ 42 00:04:25,472 --> 00:04:32,672 とても立派な家柄の人で 私には とても不釣り合いな人です」。 43 00:04:34,181 --> 00:04:38,151 千遥ちゃん 結婚するの? 44 00:04:38,151 --> 00:04:43,623 そうみたいね。 (なつのすすり泣き) 45 00:04:43,623 --> 00:04:51,131 (富士子)なつ… 何なら もう みんなに読んでくれなくて いいんだよ。 46 00:04:51,131 --> 00:04:54,131 大丈夫…。 47 00:04:57,003 --> 00:05:03,803 「その時 お母さんから 兄の手紙を見せられました」。 48 00:05:06,613 --> 00:05:09,816 (千遥)「どこかで無くしたと 思っていましたが➡ 49 00:05:09,816 --> 00:05:16,990 お母さんが 私の荷物から見つけて 預かってくれていたのです」。 50 00:05:16,990 --> 00:05:22,329 それは お前の兄さんからの手紙だろ? 51 00:05:22,329 --> 00:05:24,264 はい。 52 00:05:24,264 --> 00:05:29,836 でも お母さん 私は この手紙に どんなことが書いてあったのか➡ 53 00:05:29,836 --> 00:05:31,805 よく知らないんですよ。 54 00:05:31,805 --> 00:05:36,610 あのころは 字が あまり読めなかったもので。 55 00:05:36,610 --> 00:05:41,281 その手紙に お前の姉さんが住んでるっていう➡ 56 00:05:41,281 --> 00:05:44,951 北海道の住所が書いてあったんだよ。 57 00:05:44,951 --> 00:05:48,822 えっ? (なほ子)そこは 親戚でもなく➡ 58 00:05:48,822 --> 00:05:53,960 戦死なすった お父さんの 友人のうちだそうだ。 59 00:05:53,960 --> 00:05:57,631 私の姉が そこに? 60 00:05:57,631 --> 00:06:02,502 (なほ子)うん… で その北海道に➡ 61 00:06:02,502 --> 00:06:05,505 お前のことを 連絡しようかどうか迷ったんだよ。 62 00:06:05,505 --> 00:06:10,143 ただ… お前の姉さんが そこで どんな暮らしをしてるのか➡ 63 00:06:10,143 --> 00:06:14,014 お前のこと聞いて どう思うのか どうなるのか…➡ 64 00:06:14,014 --> 00:06:17,317 それで 2人とも 幸せになれるのかどうか…➡ 65 00:06:17,317 --> 00:06:21,154 いくら考えても 答えが出なくてね➡ 66 00:06:21,154 --> 00:06:28,829 そのうちに… お前を手放すのが 惜しくなってしまったのさ。 67 00:06:28,829 --> 00:06:31,731 千遥… すまなかった! 68 00:06:31,731 --> 00:06:35,101 その手紙を 今まで隠してて 本当に申し訳なかった! 69 00:06:35,101 --> 00:06:37,404 このとおり 謝るよ。 70 00:06:37,404 --> 00:06:40,106 お母さん やめて下さい! 71 00:06:40,106 --> 00:06:45,979 お母さんが そんな 私に謝ることなんて 一つもないんだから…。 72 00:06:45,979 --> 00:06:49,282 だけどね 千遥…➡ 73 00:06:49,282 --> 00:06:54,621 この先 もし あの方と結婚するなら➡ 74 00:06:54,621 --> 00:07:00,321 昔の家族とは 縁を切らなくてはいけないよ。 75 00:07:05,131 --> 00:07:13,306 「昔の家族とは 縁を切らなくては ならないと言われました。➡ 76 00:07:13,306 --> 00:07:19,179 相手は 立派な家柄なので 私が浮浪児だったということを➡ 77 00:07:19,179 --> 00:07:24,317 先方の親に知られたら 破談になってしまうからです」。 78 00:07:24,317 --> 00:07:37,964 ♬~ 79 00:07:37,964 --> 00:07:40,464 お母さん…。 80 00:07:44,271 --> 00:07:49,776 私には もう 兄や姉の記憶はないんです。 81 00:07:49,776 --> 00:07:55,649 あるのは ここに来てからのことばかりで➡ 82 00:07:55,649 --> 00:07:59,149 幸せな記憶ばかりです。 83 00:08:00,954 --> 00:08:06,760 お母さんが望むことなら 私は 喜んで結婚します。 84 00:08:06,760 --> 00:08:12,132 私の望みは お前が幸せになることだけなんだよ! 85 00:08:12,132 --> 00:08:17,804 大丈夫… 私は幸せです。 86 00:08:17,804 --> 00:08:24,578 お母さんの娘になれて 本当に幸せです。 87 00:08:24,578 --> 00:08:27,314 千遥…。 88 00:08:27,314 --> 00:08:30,317 (千遥)「私の幸せを願う お母さんのためにも➡ 89 00:08:30,317 --> 00:08:35,117 私は 結婚をしようと思いました」。 90 00:08:37,591 --> 00:08:43,096 (千遥)「それでも 私は 最後に 北海道に行くことを➡ 91 00:08:43,096 --> 00:08:46,896 お母さんに許してもらいました」。 92 00:09:00,280 --> 00:09:04,117 「もし お姉ちゃんが 今 不幸でいたなら➡ 93 00:09:04,117 --> 00:09:08,955 私は 今の幸せを投げ出してでも 助けなければならないと➡ 94 00:09:08,955 --> 00:09:11,858 そう思いました。➡ 95 00:09:11,858 --> 00:09:18,965 だけど もし幸せでいてくれたら➡ 96 00:09:18,965 --> 00:09:27,440 私は お姉ちゃんと 永遠に… 別れなくてはいけないと➡ 97 00:09:27,440 --> 00:09:31,240 そう決意しました」。 98 00:09:35,248 --> 00:09:38,248 (富士子)あなたが千遥ちゃん? 99 00:09:40,587 --> 00:09:46,092 よく来た… よく来てくれたわ…。 100 00:09:46,092 --> 00:09:49,129 (泰樹)ここはな なつのうちだ。 101 00:09:49,129 --> 00:09:54,768 ということは 妹のあんたのうちでもあるんだ。 102 00:09:54,768 --> 00:09:57,768 好きにしてればいい。 103 00:10:02,275 --> 00:10:09,049 よし。 明日は早起きして 一緒に働くべ。 104 00:10:09,049 --> 00:10:14,788 (剛男)何が よしですか? はい! 私にも教えて下さい。 105 00:10:14,788 --> 00:10:19,626 「その家で お姉ちゃんが どんなふうに暮らしていたか➡ 106 00:10:19,626 --> 00:10:25,965 それを知るのに 時間はかかりませんでした。➡ 107 00:10:25,965 --> 00:10:31,771 それから お姉ちゃんとお兄ちゃんと 電話で話した時に➡ 108 00:10:31,771 --> 00:10:35,471 突然 昔のことを思い出したのです」。 109 00:10:38,545 --> 00:10:40,513 (千遥)「空襲のあと➡ 110 00:10:40,513 --> 00:10:43,316 おばあさんに 芋を恵んでもらって➡ 111 00:10:43,316 --> 00:10:46,219 お姉ちゃんと食べたこと。➡ 112 00:10:46,219 --> 00:10:51,458 アメリカ軍人の靴磨きをして チョコレートをもらったこと。➡ 113 00:10:51,458 --> 00:10:54,661 お兄ちゃんが 大勢の人を前に➡ 114 00:10:54,661 --> 00:10:57,564 かっこよく踊っていたこと。➡ 115 00:10:57,564 --> 00:11:02,001 信さんも一緒に みんな家族のように➡ 116 00:11:02,001 --> 00:11:07,340 池のほとりで たき火をして ザリガニを焼いたこと」。 117 00:11:07,340 --> 00:11:09,843 お母さんに会いたい! 118 00:11:09,843 --> 00:11:12,345 大丈夫だってば! 119 00:11:12,345 --> 00:11:16,216 (千遥)「石蹴りをして転んで 泣きわめく私を➡ 120 00:11:16,216 --> 00:11:22,021 お姉ちゃんが 力いっぱい抱き締めてくれたこと。➡ 121 00:11:22,021 --> 00:11:28,495 私は 柴田牧場で お姉ちゃんの服を着て働いた時➡ 122 00:11:28,495 --> 00:11:31,197 何だか お姉ちゃんに➡ 123 00:11:31,197 --> 00:11:36,035 抱き締められて いるような気がしました。➡ 124 00:11:36,035 --> 00:11:40,306 ここで 私まで幸せを感じて➡ 125 00:11:40,306 --> 00:11:45,178 そして お兄ちゃん お姉ちゃんに 会ってしまったら➡ 126 00:11:45,178 --> 00:11:49,983 別れられなくなると 怖くなったのです」。 127 00:11:49,983 --> 00:11:59,993 ♬~ 128 00:11:59,993 --> 00:12:05,293 (千遥)「だから 私は逃げ出したのです」。 129 00:12:10,336 --> 00:12:15,208 「一生 会うことは もうありません。➡ 130 00:12:15,208 --> 00:12:20,346 会えません。➡ 131 00:12:20,346 --> 00:12:26,846 お兄ちゃんも 元気でいてくれて 本当によかった」。 132 00:12:31,291 --> 00:12:38,164 「私は 一生 自分の過去とは別れません。➡ 133 00:12:38,164 --> 00:12:45,305 柴田牧場で過ごした短い時間も 忘れることはありません。➡ 134 00:12:45,305 --> 00:12:49,642 どうか 皆さん お元気で。➡ 135 00:12:49,642 --> 00:12:56,983 お世話になりました。➡ 136 00:12:56,983 --> 00:13:00,653 さようなら。➡ 137 00:13:00,653 --> 00:13:04,824 ごめんなさい。➡ 138 00:13:04,824 --> 00:13:07,824 千遥」。 139 00:13:12,999 --> 00:13:16,299 (菊介)こったらことって あっかよ! 140 00:13:18,872 --> 00:13:22,872 (悠吉)よっぽどの思いだべ…。 141 00:13:32,485 --> 00:13:35,121 (千遥)「追伸➡ 142 00:13:35,121 --> 00:13:40,627 私の記憶の中にある お兄ちゃんとお姉ちゃんを思い出して➡ 143 00:13:40,627 --> 00:13:44,497 絵を描きました。➡ 144 00:13:44,497 --> 00:13:48,368 感謝を込めて。➡ 145 00:13:48,368 --> 00:13:51,568 ありがとう」。 146 00:13:54,140 --> 00:14:04,851 ♬~ 147 00:14:04,851 --> 00:14:08,051 お兄ちゃん…。 148 00:14:09,989 --> 00:14:12,989 なつ…。 149 00:14:17,864 --> 00:14:20,664 うまいな…。 150 00:14:22,468 --> 00:14:25,268 うまいね…。 151 00:14:28,174 --> 00:14:31,611 上手だね 千遥…。 152 00:14:31,611 --> 00:15:13,820 ♬~ 153 00:15:13,820 --> 00:15:16,322 なつよ…➡ 154 00:15:16,322 --> 00:15:21,122 千遥を抱き締めてやれ。