1 00:00:43,182 --> 00:00:47,203 <90年代 次々と現れたIT起業家たち。 2 00:00:47,203 --> 00:00:51,190 ある者は 時代の寵児となり➡ 3 00:00:51,190 --> 00:00:54,427 ある者は 時代の狭間に消えていった。 4 00:00:54,427 --> 00:01:00,327 起業家たちの 知られざる実話に迫る> 5 00:01:10,459 --> 00:01:12,478 これだけ毎日 使っているのに➡ 6 00:01:12,478 --> 00:01:15,564 日本で最初に ネット事業を始めたのが誰か➡ 7 00:01:15,564 --> 00:01:18,764 みんな知らないんだよな。 8 00:01:21,720 --> 00:01:25,220 今回 追いかけるのは 日本にインターネットをもたらした人物。 9 00:01:30,229 --> 00:01:32,264 日本にインターネットを持ってきた➡ 10 00:01:32,264 --> 00:01:34,867 知る人ぞ知る人物だ。 11 00:01:34,867 --> 00:01:37,703 日本人の大部分が まだ インターネットという➡ 12 00:01:37,703 --> 00:01:39,705 言葉すら知らない時代➡ 13 00:01:39,705 --> 00:01:41,707 鈴木は いかにして➡ 14 00:01:41,707 --> 00:01:44,210 未知の技術を持ち込んだのか。 15 00:01:44,210 --> 00:01:46,712 最初の一歩を踏み出すまでには➡ 16 00:01:46,712 --> 00:01:48,714 いくつもの高い壁を➡ 17 00:01:48,714 --> 00:01:50,714 乗り越えねばならなかった。 18 00:01:53,285 --> 00:01:55,371 < そして 95年に起きた➡ 19 00:01:55,371 --> 00:01:58,374 あの大災害と大事件が➡ 20 00:01:58,374 --> 00:02:01,274 インターネットの未来に 大きな影響を与えた> 21 00:02:06,899 --> 00:02:09,869 とにかく 日本のインターネットは➡ 22 00:02:09,869 --> 00:02:14,369 解体寸前で空き部屋ばかりの ビルの片隅から始まった。 23 00:02:23,532 --> 00:02:26,368 お~い 足りないだろう? 24 00:02:26,368 --> 00:02:30,055 お疲れさまです。 ありがとうございます。 25 00:02:30,055 --> 00:02:32,041 全部 開けちゃって。 いただきました。 26 00:02:32,041 --> 00:02:34,341 ありがとうございます。 いやいや。 27 00:02:45,888 --> 00:02:48,874 < この日 日本で インターネット事業を始めるべく➡ 28 00:02:48,874 --> 00:02:51,327 鈴木の会社がスタートした。 29 00:02:51,327 --> 00:02:54,627 実に 寂しい船出だった> 30 00:03:02,721 --> 00:03:04,707 < ことの始まりは半年前。 31 00:03:04,707 --> 00:03:08,007 鈴木の元に 2人の友人が訪ねてきた> 32 00:03:15,684 --> 00:03:18,354 <2人は 鈴木に 個人や会社が使う➡ 33 00:03:18,354 --> 00:03:21,357 インターネット接続サービスの会社を作って➡ 34 00:03:21,357 --> 00:03:24,693 経営を見てくれないかと 持ちかけた。 35 00:03:24,693 --> 00:03:29,198 アメリカで やっとインターネットのサービスが 産声を上げたばかりの時代。 36 00:03:29,198 --> 00:03:34,853 日本では 一部の学者や 技術者が知る程度の技術だった。 37 00:03:34,853 --> 00:03:40,359 鈴木は 22歳のとき 雑誌で インターネットの存在を知ってから➡ 38 00:03:40,359 --> 00:03:44,863 グーテンベルクの活版印刷に 匹敵する革新となると➡ 39 00:03:44,863 --> 00:03:46,849 思っていた。 40 00:03:46,849 --> 00:03:49,685 鈴木は 将来の日本における➡ 41 00:03:49,685 --> 00:03:52,688 インターネット市場規模を予測した。 42 00:03:52,688 --> 00:03:57,843 間違いなく巨大市場が生まれる> 43 00:03:57,843 --> 00:03:59,862 インターネットの接続サービスの➡ 44 00:03:59,862 --> 00:04:03,015 事業化ができれば➡ 45 00:04:03,015 --> 00:04:06,885 日本を変えることができる。 46 00:04:06,885 --> 00:04:09,705 <2人は 会社の立ち上げに際し➡ 47 00:04:09,705 --> 00:04:12,341 大手企業から 10億円から20億円の出資を➡ 48 00:04:12,341 --> 00:04:17,012 受けられる約束になっていると 言った。 49 00:04:17,012 --> 00:04:19,381 多くの企業の面倒を 見てきた鈴木は➡ 50 00:04:19,381 --> 00:04:21,383 大企業が そんなに簡単に➡ 51 00:04:21,383 --> 00:04:24,520 出資をしてくれるものだろうかと いう思いがあった。 52 00:04:24,520 --> 00:04:29,675 しかし インターネットという世界を 変えうる技術革新の将来には➡ 53 00:04:29,675 --> 00:04:31,860 強く惹かれていた。 54 00:04:31,860 --> 00:04:35,230 鈴木は↴ 55 00:04:35,230 --> 00:04:38,267 インターネットの企業を 設立するということで➡ 56 00:04:38,267 --> 00:04:41,520 優秀な若い技術者たちも 集まってきた。 57 00:04:41,520 --> 00:04:44,220 鈴木の挑戦が始まった> 58 00:04:46,392 --> 00:04:50,892 インターネットというか 当時 言わなかったけど いわゆる…。 59 00:04:54,183 --> 00:04:58,070 1962年ごろから やってるんですね アメリカは。 60 00:04:58,070 --> 00:05:00,070 非常におもしろいと↴ 61 00:05:06,362 --> 00:05:08,562 すごく大きな…。 62 00:05:28,200 --> 00:05:30,300 こうして立ち上げた会社名は…。 63 00:05:34,206 --> 00:05:38,610 イニシアティブは 先導 主導権などの意味を持つ。 64 00:05:38,610 --> 00:05:41,810 つまり 自分たちが…。 65 00:05:44,366 --> 00:05:46,766 という思いが込められていた。 66 00:05:49,021 --> 00:05:52,041 まだまだ クリアすべき問題が あったとはいえ➡ 67 00:05:52,041 --> 00:05:58,041 そのときの鈴木は 輝かしい未来を 思い描いていたんだろうなぁ。 68 00:06:02,017 --> 00:06:07,317 そんな鈴木の前に 最初の壁が 立ちはだかることになる。 69 00:06:09,508 --> 00:06:11,527 話が違うじゃないですか。 70 00:06:11,527 --> 00:06:14,327 絶対ダメですか? 71 00:06:16,382 --> 00:06:18,400 応援したいとは言いましたが➡ 72 00:06:18,400 --> 00:06:21,520 具体的な話には なっていなかったはずです。 73 00:06:21,520 --> 00:06:23,539 そうですよね…。 74 00:06:23,539 --> 00:06:25,541 <大手企業の役員に➡ 75 00:06:25,541 --> 00:06:29,111 10億円の出資を 約束した 覚えはないと告げられた> 76 00:06:29,111 --> 00:06:33,182 そんなことだろうとは 思ってたけどな。 77 00:06:33,182 --> 00:06:37,352 <出資が受けられなければ 自分たちが出すしかない。 78 00:06:37,352 --> 00:06:40,355 他に参加したメンバーや 共感した技術者からも➡ 79 00:06:40,355 --> 00:06:43,855 応援を得るが…> 80 00:06:47,379 --> 00:06:49,379 <鈴木の過酷な時間が始まった> 81 00:06:51,450 --> 00:06:53,368 < いきなりの資金難。 82 00:06:53,368 --> 00:06:55,521 鈴木は 建設会社の友人に➡ 83 00:06:55,521 --> 00:06:58,524 できるだけ 安い物件を 紹介してもらった。 84 00:06:58,524 --> 00:07:02,694 オフィスを構えたのは 都心の一等地ではあったが➡ 85 00:07:02,694 --> 00:07:05,197 1年半後に 解体が予定されている➡ 86 00:07:05,197 --> 00:07:07,497 ボロボロのビルだった> 87 00:07:17,025 --> 00:07:21,225 <鈴木とIIJの船出は 実に みじめなものだった> 88 00:07:23,182 --> 00:07:26,185 <行き詰まったときは 大きな話をするにかぎる。 89 00:07:26,185 --> 00:07:29,188 鈴木は経験から そう考えた。 90 00:07:29,188 --> 00:07:31,190 そして 社員たちに言った> 91 00:07:31,190 --> 00:07:33,190 みんなさ…。 92 00:07:35,527 --> 00:07:38,380 大変な出発になっちゃったけど➡ 93 00:07:38,380 --> 00:07:42,167 僕たちのインターネットは きっと 日本を変える。 94 00:07:42,167 --> 00:07:45,521 100年続いた電話に 取って代わる事業だ。 95 00:07:45,521 --> 00:07:49,174 そう簡単にいかないさ。 なあ? そうですね。 96 00:07:49,174 --> 00:07:52,361 きっと うまくいきますよね。 そうだよ。 97 00:07:52,361 --> 00:07:55,998 通信が大きく変わるというのは 揺るぎないことだ。 98 00:07:55,998 --> 00:07:58,667 今 僕たちは耐えるしかない。 99 00:07:58,667 --> 00:08:00,686 必ず好転する。 100 00:08:00,686 --> 00:08:03,689 信じます。 101 00:08:03,689 --> 00:08:08,093 じゃあ IIJの未来に みんなで頑張りましょう。 102 00:08:08,093 --> 00:08:11,029 (一同)乾杯! 103 00:08:11,029 --> 00:08:13,031 <インターネットの未来を信じて➡ 104 00:08:13,031 --> 00:08:15,184 集まってくれた 若い技術者たちのためにも➡ 105 00:08:15,184 --> 00:08:18,537 鈴木は やり遂げるほかなかった> 106 00:08:18,537 --> 00:08:21,037 あれだけ…。 107 00:08:44,029 --> 00:08:46,829 バカみたいに…。 108 00:08:49,518 --> 00:08:52,855 IIJは なんとか 船出することになったが➡ 109 00:08:52,855 --> 00:08:56,525 ここで 最大の壁が 立ちはだかることになる。 110 00:08:56,525 --> 00:09:02,681 それは新しい通信技術のインターネットを 商用で使う場合➡ 111 00:09:02,681 --> 00:09:06,852 当時の郵政省の役人の 認可が必要だった。 112 00:09:06,852 --> 00:09:10,839 しかし 当時 通信の常識といえば➡ 113 00:09:10,839 --> 00:09:12,875 電話だった。 114 00:09:12,875 --> 00:09:15,777 新しい インターネットという技術は➡ 115 00:09:15,777 --> 00:09:20,777 郵政省の幹部たちに まったく理解されなかった。 116 00:09:23,518 --> 00:09:26,955 通信は 公益事業です。 117 00:09:26,955 --> 00:09:30,676 日本の歴史で インフラを支えた通信事業者が➡ 118 00:09:30,676 --> 00:09:33,178 倒産したという例はありません。 119 00:09:33,178 --> 00:09:38,183 IIJが絶対に潰れないという 証明をしてください。 120 00:09:38,183 --> 00:09:40,185 事業ですよ? 121 00:09:40,185 --> 00:09:43,238 そんな保証 できるわけないじゃないですか。 122 00:09:43,238 --> 00:09:45,774 サービスが始まれば すぐに契約が取れて➡ 123 00:09:45,774 --> 00:09:47,693 収入が入ります。 それじゃ だめですか? 124 00:09:47,693 --> 00:09:51,513 ひとつの契約も取れない可能性も あるわけですよね? 125 00:09:51,513 --> 00:09:55,584 それは… ゼロではありませんけど。 126 00:09:55,584 --> 00:09:58,186 3年間 収入がなくても➡ 127 00:09:58,186 --> 00:10:02,007 会社を維持できるという 保証を示していただかなければ➡ 128 00:10:02,007 --> 00:10:04,192 認可できません。 129 00:10:04,192 --> 00:10:07,846 そんなこと 法律に 書いてないじゃないですか! 130 00:10:07,846 --> 00:10:10,866 郵政省の内規です。 131 00:10:10,866 --> 00:10:14,766 公益事業というものは そういうものです。 132 00:10:24,863 --> 00:10:29,184 鈴木は めげずに 何度も郵政省に足を運んだ。 133 00:10:29,184 --> 00:10:34,206 しかし いくら説明しても らちが明かない。 134 00:10:34,206 --> 00:10:38,377 100年以上 電話を支えてきた 役人だから➡ 135 00:10:38,377 --> 00:10:43,277 インターネットという新しい技術を 簡単に認めないのも わかる。 136 00:10:45,250 --> 00:10:47,750 どうしたらいいんだ…。 137 00:10:54,526 --> 00:10:57,946 <オフィスは もともとショールームだったので➡ 138 00:10:57,946 --> 00:11:00,699 直射日光が容赦なく差し込む。 139 00:11:00,699 --> 00:11:04,870 カーテンすら買えない鈴木たちは パソコンが熱を持たないように➡ 140 00:11:04,870 --> 00:11:07,870 傘をさして 保護しなければならなかった> 141 00:11:10,542 --> 00:11:13,211 <IIJ設立から1年➡ 142 00:11:13,211 --> 00:11:16,898 何もできないまま 時間ばかりが過ぎていく。 143 00:11:16,898 --> 00:11:20,869 担保をかき集め なんとか銀行に 融資をしてもらってきたが…。 144 00:11:20,869 --> 00:11:24,206 社員の前では 決して落ち込む様子を見せない➡ 145 00:11:24,206 --> 00:11:29,561 鈴木だったが 先を考えると 暗く沈んでいった> 146 00:11:29,561 --> 00:11:33,715 既成概念は役人だけはなかった。 147 00:11:33,715 --> 00:11:37,352 出資をお願いしにいった ある大企業の幹部からは➡ 148 00:11:37,352 --> 00:11:39,371 こうまで言われた。 149 00:11:39,371 --> 00:11:42,274 「ネットを 企業が使うようになるなんて➡ 150 00:11:42,274 --> 00:11:44,326 夢物語だ」と。 151 00:11:44,326 --> 00:11:48,380 「そんな日が来たら 私は逆立ちをしながら➡ 152 00:11:48,380 --> 00:11:53,218 フルチンで 銀座を歩いてみせますよ」と。 153 00:11:53,218 --> 00:11:56,204 <アメリカでは いよいよインターネット産業が➡ 154 00:11:56,204 --> 00:11:58,223 始まろうとしていた。 155 00:11:58,223 --> 00:12:03,211 1993年 アメリカの研究者 アンドリーセンは➡ 156 00:12:03,211 --> 00:12:05,881 ブラウザ 「モザイク」を開発。 157 00:12:05,881 --> 00:12:07,866 ついに 誰でも手軽に➡ 158 00:12:07,866 --> 00:12:11,386 インターネットを楽しめるツールが登場した。 159 00:12:11,386 --> 00:12:16,708 アンドリーセンは 日本のネットの先駆者が IIJであると聞き➡ 160 00:12:16,708 --> 00:12:19,044 出資を打診してきた。 161 00:12:19,044 --> 00:12:23,198 他にも 海外から いくつもの出資話が舞い込んだ> 162 00:12:23,198 --> 00:12:27,202 クソッ 千載一遇のチャンスなのに…。 163 00:12:27,202 --> 00:12:29,221 <悔しさがこみ上げる。 164 00:12:29,221 --> 00:12:31,873 規制という壁を 乗り越えなければ➡ 165 00:12:31,873 --> 00:12:34,873 インターネット事業は 始めることさえできない> 166 00:12:42,517 --> 00:12:45,687 何やってんだ? 食費の節約です。 167 00:12:45,687 --> 00:12:48,707 <会社の資金は とっくに底を突いていた。 168 00:12:48,707 --> 00:12:51,676 鈴木自身も 自らの貯金を切り崩し➡ 169 00:12:51,676 --> 00:12:53,862 なんとか しのぐ状態。 170 00:12:53,862 --> 00:12:58,700 社員に渡す給与は 毎月 減らさねばならなかった> 171 00:12:58,700 --> 00:13:01,520 社員たちの状況を見て➡ 172 00:13:01,520 --> 00:13:05,520 鈴木は絶望的な気持ちに なったんだろうな…。 173 00:13:16,518 --> 00:13:20,188 <鈴木は ビルの空き部屋に 卓球台を持ち込んだ。 174 00:13:20,188 --> 00:13:23,608 そして月末 給与を支払う日になると➡ 175 00:13:23,608 --> 00:13:25,510 社員から隠れるように➡ 176 00:13:25,510 --> 00:13:29,347 経理の担当者と 無心でピンポン玉を打つ。 177 00:13:29,347 --> 00:13:32,901 この先 会社はどうなるのか。 178 00:13:32,901 --> 00:13:37,522 一心不乱に ピンポン玉を打ち続けた。 179 00:13:37,522 --> 00:13:42,861 会社の存続のため 鈴木は必死に金策に走った。 180 00:13:42,861 --> 00:13:47,849 しかし 金を出してくれるところはない。 181 00:13:47,849 --> 00:13:51,770 資金繰りで万策尽きた鈴木は➡ 182 00:13:51,770 --> 00:13:55,857 すがりつく思いで 銀行に勤める友人と会った。 183 00:13:55,857 --> 00:13:58,193 最後の望みだった。 184 00:13:58,193 --> 00:14:02,180 しかし友人は 融資の話を切り出させまいと➡ 185 00:14:02,180 --> 00:14:05,700 話題を変えながら 一方的に しゃべり続ける。 186 00:14:05,700 --> 00:14:08,700 脈なしだと すぐにわかった> 187 00:14:20,198 --> 00:14:22,698 終わったな。 188 00:14:25,187 --> 00:14:29,207 なんで郵政省のヤツら わからないんだろうな。 189 00:14:29,207 --> 00:14:33,707 <「倒産」という言葉が 脳裏を横切る> 190 00:14:36,715 --> 00:14:39,815 最後 やるだけやってやる。 191 00:14:53,965 --> 00:14:58,965 腹をくくった鈴木は 一か八かの賭けに出た。 192 00:15:01,873 --> 00:15:04,876 <鈴木は 知人に頼み込み➡ 193 00:15:04,876 --> 00:15:08,296 郵政省幹部と新年会を開いた。 194 00:15:08,296 --> 00:15:12,534 鈴木の剣幕に おとそ気分の宴会が凍りついた> 195 00:15:12,534 --> 00:15:16,187 え~ 新年早々 無粋な話で恐縮ですが➡ 196 00:15:16,187 --> 00:15:21,559 今 郵政省に インターネット事業者の 申請をしております。 197 00:15:21,559 --> 00:15:24,879 しかし 認可が得られません。 198 00:15:24,879 --> 00:15:28,867 このままでは IIJとしては➡ 199 00:15:28,867 --> 00:15:32,871 裁判に持ち込むよりほかないと 考えております。 200 00:15:32,871 --> 00:15:37,175 これから私が示す条件で サービスが開始できるかどうか➡ 201 00:15:37,175 --> 00:15:40,178 確認させていただきたいのです。 202 00:15:40,178 --> 00:15:43,531 もしだめなら 諦めます。 203 00:15:43,531 --> 00:15:49,120 このままの状態が続くようなら 提訴します。 204 00:15:49,120 --> 00:15:53,858 少なくとも 明後日までに 返事をお願いします。 205 00:15:53,858 --> 00:15:57,228 <一歩間違えば 二度と認可が下りなくなる➡ 206 00:15:57,228 --> 00:16:00,828 可能性もあった。 鈴木の大きな賭けだった> 207 00:17:33,208 --> 00:17:36,227 郵政省は 具体的な条件を了解した。 208 00:17:36,227 --> 00:17:39,727 認可の条件は 3億円の資金保証。 209 00:17:41,783 --> 00:17:45,186 <鈴木は必死に銀行に通いつめた。 210 00:17:45,186 --> 00:17:49,691 突破口は 住友銀行の一ツ橋支店だった> 211 00:17:49,691 --> 00:17:53,828 鈴木は アメリカ帰りで インターネットに理解のある➡ 212 00:17:53,828 --> 00:17:56,514 副支店長と面識があった。 213 00:17:56,514 --> 00:17:59,184 この副支店長にお願いし➡ 214 00:17:59,184 --> 00:18:04,355 常務と20分だけ 面会できることになった。 215 00:18:04,355 --> 00:18:08,710 インターネットというのは 今 どれくらいの人が使ってるのかね。 216 00:18:08,710 --> 00:18:12,263 研究者を中心に せいぜい数百人ほどです。 217 00:18:12,263 --> 00:18:15,183 でも 10年後には 最低3, 000万人になります。 218 00:18:15,183 --> 00:18:17,185 3, 000万人。 219 00:18:17,185 --> 00:18:21,189 そこまでのホラは なかなか聞けないな。 220 00:18:21,189 --> 00:18:25,610 私には インターネットのことは わからないけど➡ 221 00:18:25,610 --> 00:18:30,515 あなたの顔は 失敗する顔じゃないな。 222 00:18:30,515 --> 00:18:32,534 えっ? 223 00:18:32,534 --> 00:18:39,023 私はね 自分の理解を超えたことは 相手の顔で決めるんだ。 224 00:18:39,023 --> 00:18:45,180 少しだけ おつきあいして みますか。 225 00:18:45,180 --> 00:18:50,101 <鈴木は 1億円の融資保証を得た。 226 00:18:50,101 --> 00:18:54,355 すると他銀行も続き 郵政省が求める3億円の保証を➡ 227 00:18:54,355 --> 00:18:56,841 何とか手に入れた。 228 00:18:56,841 --> 00:19:01,279 実は このときの 鈴木の読みは 外れたんだよな。 229 00:19:01,279 --> 00:19:03,865 インターネット利用者は 10年後➡ 230 00:19:03,865 --> 00:19:05,850 3000万人どころか➡ 231 00:19:05,850 --> 00:19:09,250 7700万人にまで 膨れ上がったんだから> 232 00:19:12,690 --> 00:19:16,678 なにはともあれ 3億の保証が手に入った鈴木は➡ 233 00:19:16,678 --> 00:19:21,015 再び郵政省と折衝。 234 00:19:21,015 --> 00:19:24,185 そして↴ 235 00:19:24,185 --> 00:19:28,706 郵政省の認可が下りた。 236 00:19:28,706 --> 00:19:31,876 IIJは ついに国際通信ができる➡ 237 00:19:31,876 --> 00:19:34,746 特別二種の通信業者として➡ 238 00:19:34,746 --> 00:19:37,866 登録が認められた。 239 00:19:37,866 --> 00:19:45,907 認可が下りた日 鈴木は バーで1人 ウイスキーのグラスを傾けた。 240 00:19:45,907 --> 00:20:08,730 ♬~ 241 00:20:08,730 --> 00:20:12,817 沁みただろうな。 242 00:20:12,817 --> 00:20:25,046 ♬~ 243 00:20:25,046 --> 00:20:27,346 なんとかなったよ。 244 00:20:30,885 --> 00:20:33,071 これで 潰れなくて済むな。 245 00:20:33,071 --> 00:20:35,924 ハハハ。 笑えないです。 246 00:20:35,924 --> 00:20:39,944 <焦りと戦い続けた 空白の1年3ヵ月が➡ 247 00:20:39,944 --> 00:20:42,344 ようやく終わりを告げた> 248 00:20:44,866 --> 00:20:46,866 さぁ! 249 00:20:50,338 --> 00:20:55,526 <IIJは 日本で最初の 商用インターネット接続事業者になった。 250 00:20:55,526 --> 00:20:59,514 それは この国のインターネット産業が➡ 251 00:20:59,514 --> 00:21:01,814 静かな産声を 上げた日でもあった> 252 00:21:05,353 --> 00:21:07,353 やっぱり でもね…。 253 00:22:03,544 --> 00:22:09,200 その後 鈴木は 30年近く インターネット事業に携わってきた。 254 00:22:09,200 --> 00:22:14,200 その中で鈴木には 忘れられない出来事があった。 255 00:23:58,509 --> 00:24:01,579 <阪神淡路大震災発生。 256 00:24:01,579 --> 00:24:04,615 直後から 関西方面への電話が殺到し➡ 257 00:24:04,615 --> 00:24:06,517 通信制限がかかった電話は➡ 258 00:24:06,517 --> 00:24:09,020 まともに 機能しなくなってしまった。 259 00:24:09,020 --> 00:24:11,506 この未曾有の大災害に直面し➡ 260 00:24:11,506 --> 00:24:15,693 鈴木は インターネットの特性を 最大限に活用した。 261 00:24:15,693 --> 00:24:20,581 ネット上に被災者の安否などを 自由に書き込めるサイトを作る。 262 00:24:20,581 --> 00:24:23,634 被災者から寄せられる 生々しい写真や➡ 263 00:24:23,634 --> 00:24:27,388 メッセージがリアルタイムで発信された。 264 00:24:27,388 --> 00:24:30,358 インターネットの発達した 今でこそ当たり前だが➡ 265 00:24:30,358 --> 00:24:34,212 これは当時としては 画期的な試みだった。 266 00:24:34,212 --> 00:24:37,715 震災という 不幸な出来事の結果とはいえ➡ 267 00:24:37,715 --> 00:24:40,384 鈴木は インターネットが社会の構造を➡ 268 00:24:40,384 --> 00:24:42,537 大きく 変えるものだということを➡ 269 00:24:42,537 --> 00:24:46,390 具体的に 世に示すことができたと感じた。 270 00:24:46,390 --> 00:24:49,090 それから わずか2か月> 271 00:24:52,697 --> 00:24:57,568 <日本中を震撼させた 地下鉄サリン事件が発生。 272 00:24:57,568 --> 00:25:03,207 死者13人 負傷者は 6, 000人を超えるテロ事件だった。 273 00:25:03,207 --> 00:25:07,228 この事件が起きる1年前 実は➡ 274 00:25:07,228 --> 00:25:11,866 IIJの鈴木のもとを 警視庁の幹部が訪ねてきた。 275 00:25:11,866 --> 00:25:15,866 警視庁幹部は 鈴木に こう告げた> 276 00:25:21,209 --> 00:25:23,711 <インターネットの情報提供は➡ 277 00:25:23,711 --> 00:25:26,681 通信の秘密に 抵触するのではないか。 278 00:25:26,681 --> 00:25:28,716 鈴木は悩んだ。 279 00:25:28,716 --> 00:25:32,687 そして… 事件は起きた。 280 00:25:32,687 --> 00:25:37,875 通信の秘密の順守と 市民社会の安全を守ること。 281 00:25:37,875 --> 00:25:40,862 そのバランスをどう取ればいいのか。 282 00:25:40,862 --> 00:25:44,062 鈴木は 大きな課題を 突きつけられた気がした> 283 00:25:46,000 --> 00:25:51,372 ラットイヤー。 歩みの速い IT業界を例える言葉だ。 284 00:25:51,372 --> 00:25:55,843 ネズミの1年は 人間の20年に相当する。 285 00:25:55,843 --> 00:25:59,743 それだけIT業界の進歩は 速いということだ。 286 00:26:18,382 --> 00:26:20,382 なんか でもやっぱり↴ 287 00:27:11,953 --> 00:27:14,353 セキュリティにしても何にしてもね。 288 00:27:28,352 --> 00:27:31,552 と思うんですけどね 生意気なこと言うと。 289 00:27:33,524 --> 00:27:37,194 今 日本のネット人口は 1億人を突破している。 290 00:27:37,194 --> 00:27:39,680 鈴木たちも これほどの速さは➡ 291 00:27:39,680 --> 00:27:42,199 予想できなかった だろう。 292 00:27:42,199 --> 00:27:45,836 2014年 鈴木は本社を➡ 293 00:27:45,836 --> 00:27:48,205 真新しいビルに 引っ越した。 294 00:27:48,205 --> 00:27:50,358 しかし 今でも➡ 295 00:27:50,358 --> 00:27:53,761 捨てられないものが あるという。 296 00:27:53,761 --> 00:27:57,865 何かというと…。 297 00:27:57,865 --> 00:28:01,686 <苦しんで いたときの 古い卓球台。 298 00:28:01,686 --> 00:28:04,188 あの苦しかった 時代の➡ 299 00:28:04,188 --> 00:28:06,173 証しとして➡ 300 00:28:06,173 --> 00:28:08,173 今でも 保管しているらしい>