1 00:00:02,202 --> 00:00:39,907 ♬~ 2 00:00:41,875 --> 00:00:48,148 祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。 3 00:00:48,148 --> 00:00:54,655 時は保延3年 藤原貴族が 専横をほしいままにしていた頃➡ 4 00:00:54,655 --> 00:01:02,095 西暦1137年 すなわち 今から856年の昔のことですが…。 5 00:01:02,095 --> 00:01:04,932 それは ごまかしのきかない➡ 6 00:01:04,932 --> 00:01:10,137 人の心と心が 裸で触れ合う世の中でありました。 7 00:01:14,408 --> 00:01:17,311 (清盛)んっ! 8 00:01:17,311 --> 00:01:22,115 (木工助) お見事! 和子 腕を上げられましたな。 9 00:01:22,115 --> 00:01:26,620 いくら武術の腕を磨いたところで 我ら武士の出世は おぼつかぬ。 10 00:01:26,620 --> 00:01:29,289 藤原一門の世が続く限りはな。 11 00:01:29,289 --> 00:01:32,292 そのように悲観することはございませぬ。 12 00:01:32,292 --> 00:01:36,063 いつかは きっと武士の世が…。 父上を見ていれば分かる! 13 00:01:36,063 --> 00:01:39,299 先年みつきの余もかけて➡ 14 00:01:39,299 --> 00:01:42,135 西国の海賊を 征討してきたにもかかわらず➡ 15 00:01:42,135 --> 00:01:45,806 朝廷からは 恩賞のご沙汰すらないではないか。 16 00:01:45,806 --> 00:01:50,010 ⚟あなたは よくもそれで 夫の顔をしていられますね! 17 00:01:51,979 --> 00:01:54,648 (泰子)黙っていないで 何か おっしゃってくださいまし! 18 00:01:54,648 --> 00:01:58,452 帝から月見の宴への お召しがあったというのに➡ 19 00:01:58,452 --> 00:02:02,322 私には それにふさわしい衣装すら ないのでございますよ!? 20 00:02:02,322 --> 00:02:05,759 (忠盛)泰子 なにも そのために新調などせずとも➡ 21 00:02:05,759 --> 00:02:09,930 そなたの唐びつには 高価な重ねが 満ちあふれているではないか。 22 00:02:09,930 --> 00:02:15,102 そのような栄えあるお席に 着古したものを着て出られますか!? 23 00:02:15,102 --> 00:02:17,404 そんな惨めな思いをするのならば➡ 24 00:02:17,404 --> 00:02:21,274 私は死んだ方が ましでございます! 泰子…。 25 00:02:21,274 --> 00:02:24,778 (泰子)伊勢平氏の 田舎育ちのあなたとは違って➡ 26 00:02:24,778 --> 00:02:27,814 私は れっきとした 藤原氏の出でございます! 27 00:02:27,814 --> 00:02:34,121 その私が 唐衣はおろか うちき一枚 思うように買えぬとは…。 28 00:02:34,121 --> 00:02:39,793 ああ… 私は なんという不幸せな女なのでしょう! 29 00:02:39,793 --> 00:02:43,430 母上 わがままは いいかげんにしてください! 30 00:02:43,430 --> 00:02:45,799 今 母上が衣装をお作りになれば➡ 31 00:02:45,799 --> 00:02:49,970 それが 暮らし向きに どれほど響くか お分かりにならないのですか? 32 00:02:49,970 --> 00:02:54,441 清盛 そなたは母に向かって なんということを! 33 00:02:54,441 --> 00:02:59,312 あなた このような雑言を 許しておくのですか!? 34 00:02:59,312 --> 00:03:01,915 言い過ぎだぞ 清盛。 35 00:03:01,915 --> 00:03:04,818 悪いのは 泰子の望みどおりにしてやれぬ➡ 36 00:03:04,818 --> 00:03:07,788 このわしなのだ。 父上…。 37 00:03:07,788 --> 00:03:14,094 清盛 そなたも武術などは捨てて 学問にいそしむことですね。 38 00:03:14,094 --> 00:03:17,597 さもなくば あなたも 忠盛殿と同様に➡ 39 00:03:17,597 --> 00:03:21,268 一生 ろくな出世もできぬ身で 過ごすことになりますよ。 40 00:03:21,268 --> 00:03:24,938 母上…。 41 00:03:24,938 --> 00:03:27,841 いつか きっと武士の時代が来ます。 42 00:03:27,841 --> 00:03:33,613 そして その時代をつくるのは この私です! 43 00:03:33,613 --> 00:03:42,956 ♬~(雅楽) 44 00:03:42,956 --> 00:03:48,428 当時の朝廷政治には「院政」という 不思議な制度がありました。 45 00:03:48,428 --> 00:03:53,300 帝を退位なさった上皇 出家なさった法皇が➡ 46 00:03:53,300 --> 00:03:57,304 帝以上の実権を振るったのです。 47 00:04:02,109 --> 00:04:06,379 お気付きですか? 検非違使殿。 (綾麿)ん? 48 00:04:06,379 --> 00:04:08,915 帝と上皇様でおじゃる。 49 00:04:08,915 --> 00:04:12,786 最前から ひと言も 口をおききにならぬ。 50 00:04:12,786 --> 00:04:18,258 知らんのか? それには れっきとした訳があるのじゃ。 51 00:04:18,258 --> 00:04:21,762 訳が? 上皇様はな➡ 52 00:04:21,762 --> 00:04:27,267 帝の ご出生を疑っておられるのじゃ。➡ 53 00:04:27,267 --> 00:04:31,938 母の璋子様は上皇様に入内なされる前に➡ 54 00:04:31,938 --> 00:04:37,410 今は亡き白河法皇様のご寵愛を 受けておられた。 55 00:04:37,410 --> 00:04:42,949 妃に迎えられて すぐ璋子様は みごもられた。 56 00:04:42,949 --> 00:04:48,288 お生まれになった帝は 白河様のお子ではないかと➡ 57 00:04:48,288 --> 00:04:52,292 上皇様は疑っておられるのじゃ。 58 00:04:52,292 --> 00:04:56,630 そうか それで…。 うん。 59 00:04:56,630 --> 00:05:01,067 思えば白河様も罪作りなお方よ。 60 00:05:01,067 --> 00:05:08,074 お手つきで誰やらに下げ渡された女性は 数人ではきかぬそうな。 61 00:05:09,776 --> 00:05:15,248 この父と子の確執 ひいては 院と朝廷の対立が➡ 62 00:05:15,248 --> 00:05:20,453 後年の 保元・平治の乱を生むことになります。 63 00:05:23,590 --> 00:05:27,761 なにが藤原だ なにが月見の宴だ! 64 00:05:27,761 --> 00:05:32,399 おい盛遠 己の母のことを あしざまに言いたくはないがな➡ 65 00:05:32,399 --> 00:05:36,603 母は 元はと言えば ここの女どもと大差のない➡ 66 00:05:36,603 --> 00:05:38,538 白拍子だったのだぞ! 67 00:05:38,538 --> 00:05:42,108 たまたま 白河の帝のお目に留まって寵愛を受け➡ 68 00:05:42,108 --> 00:05:45,412 藤原一門に預けられたにすぎんのだ。 69 00:05:45,412 --> 00:05:48,615 氏素性から言えば格上の父上が➡ 70 00:05:48,615 --> 00:05:51,418 なぜ あのような辱めを 受けねばならんのだ!? 71 00:05:51,418 --> 00:05:53,787 清盛 繰り言はよせ! 72 00:05:53,787 --> 00:05:55,722 それよりも酒だ 女だ! 73 00:05:55,722 --> 00:06:01,061 (千草)清盛様 お久しぶり。 おう 千草か。 74 00:06:01,061 --> 00:06:03,096 こよいの清盛は いささか荒れておる。 75 00:06:03,096 --> 00:06:05,565 心して慰めてやれよ。 76 00:06:05,565 --> 00:06:11,738 その白拍子 麿が買った! 77 00:06:11,738 --> 00:06:15,075 (盛遠)これは 綾麿様…。 78 00:06:15,075 --> 00:06:20,380 (綾麿)フフフ… 麿の好みの美形じゃ。➡ 79 00:06:20,380 --> 00:06:23,283 文句はあるまいの 清盛。 80 00:06:23,283 --> 00:06:26,186 せっかくですが…。 (せきばらい) 81 00:06:26,186 --> 00:06:33,593 (綾麿)一緒に来るのじゃ。 よいな? ハハハハハ…。 82 00:06:33,593 --> 00:06:36,396 おのれ! やめとけ 清盛。 83 00:06:36,396 --> 00:06:41,901 綾麿は二条様の息子 検非違使の別当だ。 相手が悪い。 84 00:06:49,776 --> 00:06:51,811 (石を投げる音) 85 00:06:51,811 --> 00:06:55,949 俺はな 清盛 武士が バカにされようがどうしようが➡ 86 00:06:55,949 --> 00:06:57,884 そんなことは気にも留めぬ。 87 00:06:57,884 --> 00:07:00,921 そういう世の中なら それなりに勝手に生きるだけだ。 88 00:07:00,921 --> 00:07:05,759 ハハハ… それにしても皮肉なものだ。 89 00:07:05,759 --> 00:07:11,731 本来なら あの綾麿がごとき お前の前に ひれ伏すべきなのだからな。 90 00:07:11,731 --> 00:07:14,768 む? どういう意味だ。 91 00:07:14,768 --> 00:07:18,371 お前 知らんのか? ひょっとすると お前は➡ 92 00:07:18,371 --> 00:07:21,908 高貴なお方のお子かもしれんのだ。 93 00:07:21,908 --> 00:07:23,843 盛遠 一体それは…。 94 00:07:23,843 --> 00:07:27,380 お前のまことの父親は 忠盛殿ではない! 95 00:07:27,380 --> 00:07:32,752 先の帝 白河法皇こそ お前の父親なのだ!➡ 96 00:07:32,752 --> 00:07:36,089 …というのが世間のうわさだ。 フハハハハ! 97 00:07:36,089 --> 00:07:38,591 なんと…! 98 00:07:38,591 --> 00:07:44,764 木工助 俺が 平 忠盛の子ではない というのは 本当のことか? 99 00:07:44,764 --> 00:07:48,101 和子… ど… どこでそれを? 100 00:07:48,101 --> 00:07:54,274 しかも まことの父親とは 恐れ多くも白河法皇様だと聞いた。 101 00:07:54,274 --> 00:07:58,278 木工助 教えてくれ。 そのうわさは まことなのか? 102 00:07:58,278 --> 00:08:00,213 う…。 103 00:08:00,213 --> 00:08:03,950 木工助 なぜ黙っている? 104 00:08:03,950 --> 00:08:06,353 黙ってるのは そのとおりだということか!? 105 00:08:06,353 --> 00:08:11,224 和子… 私の口からは何も申せませぬ。 106 00:08:11,224 --> 00:08:16,096 どうか… どうか それだけは お察しくださいまし。 107 00:08:16,096 --> 00:08:18,732 待て! 木工助! 108 00:08:18,732 --> 00:08:23,069 清盛 どうです? この衣装。 109 00:08:23,069 --> 00:08:26,573 忠盛殿が とうとう買うてくれたのです。 110 00:08:26,573 --> 00:08:30,744 これで心おきなく 月見の宴に出ることができます。 111 00:08:30,744 --> 00:08:34,614 ハハ… それは ようございました。 112 00:08:34,614 --> 00:08:40,320 それはそうと 母上。 え? 何です? 113 00:08:42,255 --> 00:08:45,258 いえ… 何でもございませぬ。 114 00:08:45,258 --> 00:08:52,465 フッ… おかしな子だこと。 それでは清盛 行ってまいりますよ。 115 00:08:55,602 --> 00:08:59,406 駄目だ… 俺には聞けぬ。 116 00:08:59,406 --> 00:09:05,211 母上にさえ聞けぬことが どうして父上に…。 117 00:09:05,211 --> 00:09:14,421 くそっ この俺は 平 清盛は… 一体 誰の子なのだ!? 118 00:09:19,759 --> 00:09:22,062 (物を投げる音) 119 00:09:35,208 --> 00:09:39,078 (肩が当たる音) ん? おい 謝らずに済ますつもりか? 120 00:09:39,078 --> 00:09:45,752 何? ハハハ。 ぶつかったのはそっちだ。 謝ることなどない! 121 00:09:45,752 --> 00:09:51,558 何!? 無礼なやつ! 構わん たたきのめせ! 122 00:09:56,096 --> 00:09:58,031 (朱鼻)お待ちくださいまし! 123 00:09:58,031 --> 00:10:00,400 このお方は 私のあるじでございます。 124 00:10:00,400 --> 00:10:04,771 いささか 酒癖は悪うございますが 決して悪い人ではございません。 125 00:10:04,771 --> 00:10:08,942 どうか 家来の私に免じ お許しくださいまし。 126 00:10:08,942 --> 00:10:13,112 ならぬ! その酒癖を直すために 半殺しにしてくれる。 127 00:10:13,112 --> 00:10:15,615 お願いでございます。 (おひねりを 袖に入れる音) 128 00:10:15,615 --> 00:10:20,286 どうか これで。 ん? ハハハ…。 129 00:10:20,286 --> 00:10:25,792 よ~し。 お前が そこまで言うなら 我慢してやろう。 130 00:10:31,898 --> 00:10:34,634 おけがは ございませぬか? 131 00:10:34,634 --> 00:10:37,437 あ… ああ。 132 00:10:37,437 --> 00:10:41,140 どうやら 五体無事のようだ。 133 00:10:41,140 --> 00:10:46,646 それにしても… 俺は お前のような 家来を持った覚えはないが? 134 00:10:46,646 --> 00:10:51,150 ハハハハ その場かぎりの 出任せでございますよ。 135 00:10:51,150 --> 00:10:55,989 げせぬな。 見ず知らずのお前が なぜ俺を? 136 00:10:55,989 --> 00:10:58,892 こちらは存じ上げております。 137 00:10:58,892 --> 00:11:04,397 あなた様は 伊勢平氏の棟梁 平 忠盛様の御曹司➡ 138 00:11:04,397 --> 00:11:07,300 清盛様でございましょう。 139 00:11:07,300 --> 00:11:09,936 それにいたしましても 清盛様➡ 140 00:11:09,936 --> 00:11:12,972 やがては天下をお取りになられる あなた様が➡ 141 00:11:12,972 --> 00:11:16,109 酒に酔いしれ ケンカに明け暮れておられるのは➡ 142 00:11:16,109 --> 00:11:19,412 いかがなものでございますかな。 143 00:11:19,412 --> 00:11:23,116 天下を取る? 何だ それは。 144 00:11:23,116 --> 00:11:28,421 こう見えても 私めは相を見るので…。 清盛様 あなた様は➡ 145 00:11:28,421 --> 00:11:34,127 天下をお取りになる相を お持ちでございます。 146 00:11:34,127 --> 00:11:40,800 私めは 五条の伴卜 通称 朱鼻と申す商人にございます。 147 00:11:40,800 --> 00:11:46,973 私の見立てに間違いはございませぬぞ。 148 00:11:46,973 --> 00:11:50,977 以後 お見知りおきを。 149 00:11:57,150 --> 00:12:02,455 ハハハ… おかしなやつだ。 150 00:12:05,592 --> 00:12:11,097 そこのお侍様 どうぞ お立ち寄りなすってくださいまし…。 151 00:12:11,097 --> 00:12:13,032 おう 盛遠か。 152 00:12:13,032 --> 00:12:17,270 清盛 酒をつきあえ。 どうでも見せたいものがある。 153 00:12:17,270 --> 00:12:22,141 当分 酒はやめた。 む? どうした? 154 00:12:22,141 --> 00:12:25,411 お前は 学問など 蔑んでいたのではなかったのか? 155 00:12:25,411 --> 00:12:29,282 いささか思うところあってな それで酒も断った。 156 00:12:29,282 --> 00:12:33,786 ならば酒は飲まずともよい。 とにかく つきあえ! 157 00:12:38,291 --> 00:12:40,793 ⚟♬~(琴) 158 00:12:40,793 --> 00:12:47,133 盛遠 このような所に何の用があるのだ? まあ 黙って あの琴の音を聴け…。 159 00:12:47,133 --> 00:12:49,168 ⚟♬~(琴) 160 00:12:49,168 --> 00:12:55,008 どうだ? この世のものとは思えぬ たえなる音色であろう。 161 00:12:55,008 --> 00:12:57,143 誰が弾いているのだ? 162 00:12:57,143 --> 00:13:01,114 無論 女性でな 都きっての琴の名手だ。 163 00:13:01,114 --> 00:13:08,755 この盛遠 不覚にもほれた。 心の底より懸想してしもうたのだ! 164 00:13:08,755 --> 00:13:10,690 (ひづめの音) 165 00:13:10,690 --> 00:13:15,261 あれは 源 渡ではないか? 166 00:13:15,261 --> 00:13:20,600 盛遠 まさか お前が 懸想したというのは…! 167 00:13:20,600 --> 00:13:23,636 (袈裟)あなた お帰りなさいまし。 168 00:13:23,636 --> 00:13:28,274 (渡)留守中 変わったことはないな? はい。 169 00:13:28,274 --> 00:13:31,778 でも… 寂しゅうございました。 170 00:13:31,778 --> 00:13:36,416 ハハハ… 袈裟。 そのようなことでは➡ 171 00:13:36,416 --> 00:13:38,951 武士の妻はつとまらぬぞ。 172 00:13:38,951 --> 00:13:41,954 ハハハ…。 173 00:13:43,790 --> 00:13:48,127 盛遠 では あの袈裟御前に…? 174 00:13:48,127 --> 00:13:50,963 人妻とは承知の上だ。 175 00:13:50,963 --> 00:13:55,635 俺は 袈裟殿の あの面影を忘れることができぬ。 176 00:13:55,635 --> 00:13:59,806 寝ても覚めても あの人の顔しか浮かばぬ…。 177 00:13:59,806 --> 00:14:02,575 盛遠…。 清盛 頼む! 178 00:14:02,575 --> 00:14:05,244 恋の橋渡しを頼まれてくれ。 179 00:14:05,244 --> 00:14:08,915 橋渡し? 断られたらどうする? 180 00:14:08,915 --> 00:14:12,251 その時は きっぱりと諦める! 181 00:14:12,251 --> 00:14:17,924 分かった。 それだけの 覚悟があるならば… 引き受けよう。 182 00:14:17,924 --> 00:14:23,129 清盛 すまぬ! 一生 恩に着るぞ! 183 00:14:27,400 --> 00:14:29,702 (盛遠)袈裟殿! 184 00:14:32,105 --> 00:14:36,776 (袈裟)清盛様から あなた様に 会ってくれと言われました。 185 00:14:36,776 --> 00:14:40,780 一体 どのような ご用件でございましょう? 186 00:14:42,648 --> 00:14:45,418 ご用件を おっしゃってくださいまし。 187 00:14:45,418 --> 00:14:51,624 私は人妻。 このようなところを 人に見られては困ります。 188 00:14:51,624 --> 00:14:55,795 (盛遠)その人妻に 俺はほれた。 189 00:14:55,795 --> 00:14:58,297 え? 190 00:14:58,297 --> 00:15:03,069 袈裟殿! それが人の道に 外れていることは➡ 191 00:15:03,069 --> 00:15:06,105 百も承知している。 忘れようと苦しんだ。 192 00:15:06,105 --> 00:15:10,743 だが それができぬ! いかに 諦めようとしても➡ 193 00:15:10,743 --> 00:15:12,678 忘れることができぬのだ! 194 00:15:12,678 --> 00:15:16,916 そんな…。 無体は承知の上だ。 袈裟殿➡ 195 00:15:16,916 --> 00:15:22,722 俺の思いを入れて 渡殿と別れてくれ! 196 00:15:22,722 --> 00:15:25,625 今ここで 返事をくれとは言わぬ。 197 00:15:25,625 --> 00:15:29,495 袈裟殿 よ~く考えてくれ。 198 00:15:29,495 --> 00:15:35,501 3日後の同じ時刻 ここで待っている。 199 00:15:44,944 --> 00:15:50,116 (薪を割る音) あっ…。 200 00:15:50,116 --> 00:15:56,789 (木工助)和子 どうなされました? 嫌な夢を見た…。 201 00:15:56,789 --> 00:16:02,228 木工助 まさか盛遠め 袈裟御前に 狼藉を働くのではあるまいな? 202 00:16:02,228 --> 00:16:07,099 いかな盛遠様とて そのくらいの分別はございましょう。 203 00:16:07,099 --> 00:16:12,371 和子 つまらぬことを お気になさいますな。 204 00:16:12,371 --> 00:16:16,242 うん…。 205 00:16:16,242 --> 00:16:19,579 何 断る!? 206 00:16:19,579 --> 00:16:27,320 はい。 夫と別れるなど 私にはできませぬ。 207 00:16:27,320 --> 00:16:29,755 俺は諦めぬ! 208 00:16:29,755 --> 00:16:33,926 そなたが色よい返事をくれるまで 金輪際 諦めぬぞ! 209 00:16:33,926 --> 00:16:37,396 盛遠様… ご無体は おやめくださいまし! 210 00:16:37,396 --> 00:16:42,201 なぜ分かってくれぬ? この俺の気持ちをなぜ…! 211 00:16:44,270 --> 00:16:48,941 分かりました。 おっしゃるとおりに いたしますから➡ 212 00:16:48,941 --> 00:16:52,411 どうか その手をお離しください。 213 00:16:52,411 --> 00:16:54,480 袈裟殿! 214 00:16:54,480 --> 00:16:59,185 そのかわり 一つだけお願いがございます。 215 00:16:59,185 --> 00:17:04,891 言ってくれ。 何なりと そなたの望むままにするぞ! 216 00:17:04,891 --> 00:17:14,367 夫を… 源 渡を 殺してくださいまし。 217 00:17:14,367 --> 00:17:19,572 あなた様を受け入れるためには それしか手だてがございませぬ。 218 00:17:19,572 --> 00:17:27,280 明日の夜 夫の閨に忍び その太刀で 首を打ち落としてくださいませ。 219 00:17:30,216 --> 00:17:32,418 (雷鳴) 220 00:17:51,938 --> 00:17:53,873 (太刀を振りかぶる音) 221 00:17:53,873 --> 00:17:57,410 渡殿… 許せ! 222 00:17:57,410 --> 00:17:59,912 (太刀を振り下ろす音) 223 00:18:03,549 --> 00:18:05,551 む? 224 00:18:09,221 --> 00:18:11,724 袈裟殿! 225 00:18:11,724 --> 00:18:14,760 一夫多妻が当たり前だった男社会で➡ 226 00:18:14,760 --> 00:18:19,365 命を懸けて操を守り通した 袈裟御前の この死は➡ 227 00:18:19,365 --> 00:18:24,070 当時の世間に 大変な衝撃を与えました。 228 00:18:24,070 --> 00:18:27,573 (経盛)兄上 一大事でございます! 229 00:18:27,573 --> 00:18:32,378 あの盛遠が 源 渡様の妻 袈裟御前を殺し 逐電したそうでございます! 230 00:18:32,378 --> 00:18:34,313 何だと!? 231 00:18:34,313 --> 00:18:40,119 平 清盛 二十歳の春の出来事です。 232 00:18:40,119 --> 00:19:56,128 ♬~