1 00:02:47,847 --> 00:02:51,685 薊様 ご無礼の段 平に 2 00:02:51,685 --> 00:02:54,554 根来くノ一 霞と申します 3 00:02:54,554 --> 00:02:59,454 では私を呼び寄せた? 4 00:03:33,927 --> 00:03:37,627 薊殿 待ちかねていた 早う これへ 5 00:03:49,776 --> 00:03:52,412 薊殿が非凡な技の 持ち主であることは 6 00:03:52,412 --> 00:03:54,414 よう聞いていながら 7 00:03:54,414 --> 00:03:57,617 一応 試してみねば 気が済まなかったのも 8 00:03:57,617 --> 00:04:03,022 女心の了見の狭さとお許しなされ 9 00:04:03,022 --> 00:04:05,122 あなたがお頭様? 10 00:04:07,127 --> 00:04:10,427 根来忍者 夜叉丸の妻 しぶき 11 00:04:12,432 --> 00:04:14,868 同じく霞 12 00:04:14,868 --> 00:04:16,870 茜 13 00:04:16,870 --> 00:04:19,870 三日月 梢 14 00:04:33,286 --> 00:04:39,125 薊殿 そなたの到着を どれほど待ったことか 15 00:04:39,125 --> 00:04:42,328 これでいよいよ 目に物見せてやれる 16 00:04:42,328 --> 00:04:44,330 回し文には 17 00:04:44,330 --> 00:04:49,836 「根来忍者と風魔一族の 共同の敵を倒す」とありましたが 18 00:04:49,836 --> 00:04:53,306 風魔も根来も家康以来 19 00:04:53,306 --> 00:04:56,276 徳川の執拗な忍者狩りによって 20 00:04:56,276 --> 00:04:59,212 ほとんど壊滅してしもうた 21 00:04:59,212 --> 00:05:03,349 我が夫 夜叉丸は 柳生十兵衛に討たれ 22 00:05:03,349 --> 00:05:06,719 風魔の手練れも 不知火党の鷹の手によって 23 00:05:06,719 --> 00:05:08,719 相果てたと聞いている 24 00:05:13,059 --> 00:05:18,798 柳生十兵衛は徳川家の御流儀 柳生家の嫡男 25 00:05:18,798 --> 00:05:24,537 鷹は家光の懐刀 松平信綱のイヌ 26 00:05:24,537 --> 00:05:29,742 この2人を斬ることこそ 我らの悲願であることは 27 00:05:29,742 --> 00:05:32,742 薊殿も しかと 納得してもらえるはず 28 00:05:35,615 --> 00:05:38,017 のう 薊殿 29 00:05:38,017 --> 00:05:41,821 くノ一の執念が どのように燃えさかるか 30 00:05:41,821 --> 00:05:44,321 目に物見せてやろうではないか 31 00:05:52,432 --> 00:05:55,201 たとえ どれほどの技を 持っていようとも 32 00:05:55,201 --> 00:06:00,139 風魔の残党に お頭様が あれほど しっぽを振るとは 33 00:06:00,139 --> 00:06:03,676 根来忍者の誇りを 自ら捨てたも等しい 34 00:06:03,676 --> 00:06:08,114 私は元々 薊を招くのには 納得できなかった 35 00:06:08,114 --> 00:06:10,416 論より証拠 36 00:06:10,416 --> 00:06:13,686 技の上で きっと勝ってみせる 37 00:06:13,686 --> 00:06:17,156 風魔なんかに負けるもんか 38 00:06:17,156 --> 00:06:20,159 十兵衛が10日ほど前 柳生の里を発った由 39 00:06:20,159 --> 00:06:23,530 何?早速 お頭様に 40 00:06:23,530 --> 00:06:27,066 で 行き先は? 分かりませぬ 41 00:06:27,066 --> 00:06:29,869 ただ 昨日 箱根の山中にて 42 00:06:29,869 --> 00:06:33,172 十兵衛らしき侍を 見かけたとのこと 43 00:06:33,172 --> 00:06:35,172 箱根の山中で? 44 00:06:44,384 --> 00:06:47,820 柳生の里に閉じこもって6年間 45 00:06:47,820 --> 00:06:52,325 剣一筋に時を過ごしてきた 柳生十兵衛 46 00:06:52,325 --> 00:06:57,630 5年前に心の支えとも言うべき 沢庵禅師を失い 47 00:06:57,630 --> 00:07:01,067 次の年の父 宗矩死去の 知らせにさえ 48 00:07:01,067 --> 00:07:04,537 頑なに動く気配すら 見せなかったが 49 00:07:04,537 --> 00:07:09,037 ある日突然 柳生を後にしたのであった 50 00:07:43,710 --> 00:07:48,615 柳生十兵衛に間違いないこと しかと確かめ 51 00:07:48,615 --> 00:07:51,918 明日の小田原泊まりを狙って 仕留めるのじゃ 52 00:07:51,918 --> 00:07:54,520 どのような手立てで? 53 00:07:54,520 --> 00:07:57,023 今更 何を言う 54 00:07:57,023 --> 00:07:59,726 くノ一の手立ては ただ一つ 55 00:07:59,726 --> 00:08:02,726 女の最大の武器を駆使するにある 56 00:08:05,198 --> 00:08:08,868 差し出がましいようで ございますが 57 00:08:08,868 --> 00:08:13,106 十兵衛は当代随一の剣の 持ち主であると同時に 58 00:08:13,106 --> 00:08:16,709 深く禅にも傾倒した人物 59 00:08:16,709 --> 00:08:21,748 やすやすと くノ一の術中に 陥るとは思われません 60 00:08:21,748 --> 00:08:25,618 根来くノ一では歯が立たぬと 言われるのか? 61 00:08:25,618 --> 00:08:30,056 歯をどう立てるかは相手によって 変えねばなりません 62 00:08:30,056 --> 00:08:32,425 一つ間違えば 63 00:08:32,425 --> 00:08:36,696 自分自身に歯を立てる結果を 招くことにもなりましょう 64 00:08:36,696 --> 00:08:38,698 口幅ったいことを 65 00:08:38,698 --> 00:08:43,269 待て 十兵衛を倒すか倒せぬかは 66 00:08:43,269 --> 00:08:47,507 我らの前途を定める第一の関門 67 00:08:47,507 --> 00:08:50,743 まずは薊殿に任せることにする 68 00:08:50,743 --> 00:08:52,743 よいな? 69 00:09:02,321 --> 00:09:05,421 銭 ここ置くよ へい ありがとうございました 70 00:09:18,371 --> 00:09:21,240 いらっしゃいまし 71 00:09:21,240 --> 00:09:26,112 柳生先生 久しぶりでございますな 72 00:09:26,112 --> 00:09:30,349 こっちは このとおり 看板を掲げているのだ 73 00:09:30,349 --> 00:09:35,488 思い出せぬな どこで会ったかな 74 00:09:35,488 --> 00:09:39,892 確か6~7年前 松平信綱の… 75 00:09:39,892 --> 00:09:45,098 おー 鷹 思い出したぞ 76 00:09:45,098 --> 00:09:48,868 伊豆は おぬしに 手ひどい ひじ鉄砲を食らった由 77 00:09:48,868 --> 00:09:51,871 すっかり しょげきっていた 78 00:09:51,871 --> 00:09:54,671 亭主 酒 持ってこい へい 79 00:09:57,310 --> 00:09:59,345 ひどく会いたがっていたが 80 00:09:59,345 --> 00:10:04,117 恐らく二度と 舞い降りてやる鷹ではあるまい 81 00:10:04,117 --> 00:10:06,117 へい お待ちどおさまで 82 00:10:13,359 --> 00:10:16,763 こんな所で わしと出会ったのも何かの縁 83 00:10:16,763 --> 00:10:20,263 どうだ 伊豆に会ってやらぬか? 84 00:10:24,070 --> 00:10:26,706 せっかくながら 85 00:10:26,706 --> 00:10:32,011 もはや 全く無縁と存じております 86 00:10:32,011 --> 00:10:34,011 無縁? 87 00:10:36,149 --> 00:10:38,951 そうだな 88 00:10:38,951 --> 00:10:42,255 そうかもしれん 89 00:10:42,255 --> 00:10:46,826 ところで先生は江戸に お帰りでございますか 90 00:10:46,826 --> 00:10:50,363 さあ どうなるかな 91 00:10:50,363 --> 00:10:54,801 わしを江戸へ引き寄せるものは 今や何一つない 92 00:10:54,801 --> 00:10:56,801 これだけは確かだ 93 00:11:09,515 --> 00:11:13,319 おぬしに会えてよかった 94 00:11:13,319 --> 00:11:16,419 では堅固でな 95 00:11:57,930 --> 00:12:00,833 手出し無用 96 00:12:00,833 --> 00:12:06,138 我ら 小野次郎右衛門先生の門に 学んだ者 97 00:12:06,138 --> 00:12:09,175 柳生宗矩の政治力に蹴落とされ 98 00:12:09,175 --> 00:12:12,845 上様の指南役を追われた恩師に 成り代わり 99 00:12:12,845 --> 00:12:14,847 柳生流と対決する 100 00:12:14,847 --> 00:12:18,284 理屈のみ こね回し 心しないで 101 00:12:18,284 --> 00:12:22,655 さながら女子供同然の 稽古をする柳生流と 102 00:12:22,655 --> 00:12:25,224 刃引きの新刀で討ち合う 103 00:12:25,224 --> 00:12:30,424 小野派一刀流との相違を しかと確かめろ 104 00:12:43,843 --> 00:12:47,743 アー… 105 00:13:11,704 --> 00:13:14,204 あたら有能な剣士たちを 106 00:13:17,209 --> 00:13:21,714 噂にのみ聞いていた柳生流の秘剣 107 00:13:21,714 --> 00:13:25,318 猿飛と燕廻し 108 00:13:25,318 --> 00:13:30,389 目の当たり しかと 拝見いたしました 109 00:13:30,389 --> 00:13:33,689 わしも おぬしに見てもらうために 他ならなかった 110 00:13:36,295 --> 00:13:40,295 おぬしを最後に 二度と秘剣を見る者はおるまい 111 00:13:52,378 --> 00:13:55,081 うん この鍔か 112 00:13:55,081 --> 00:13:58,017 10年ほど前 九州で短筒で撃たれ 113 00:13:58,017 --> 00:14:02,555 この鍔のおかげで危うく 命拾いしたことがあってな 114 00:14:02,555 --> 00:14:07,455 以来 わしの分身のような気がして あえて取り替えずにいるんだ 115 00:14:14,700 --> 00:14:17,770 先生 おわび申し上げたいことが ございます 116 00:14:17,770 --> 00:14:20,106 うん? 私も今まで 117 00:14:20,106 --> 00:14:22,141 小野派の剣士たちと同様 118 00:14:22,141 --> 00:14:24,910 柳生流は単なる上様のお手直し 119 00:14:24,910 --> 00:14:28,481 所詮は御流儀と侮っておりました お許しください 120 00:14:28,481 --> 00:14:33,619 なんの おぬしの言うとおり わし自身 ここ数年来 121 00:14:33,619 --> 00:14:37,419 剣法としての柳生流に 疑念を持ち始めていたのだ 122 00:14:39,558 --> 00:14:44,430 猿飛 燕廻しの秘剣を おぬしに披露できたことは 123 00:14:44,430 --> 00:14:46,630 むしろ喜びと言えよう 124 00:15:02,581 --> 00:15:04,884 あっ 125 00:15:04,884 --> 00:15:08,184 どうしたのだ 何を驚いてる? 126 00:15:11,157 --> 00:15:15,394 すいません あんまり似てたもんですから 127 00:15:15,394 --> 00:15:19,365 似ている?誰に? 128 00:15:19,365 --> 00:15:22,034 おとっつぁんです 129 00:15:22,034 --> 00:15:25,704 ほう そうだったのか 130 00:15:25,704 --> 00:15:28,841 お侍さんに向かって 堪忍してくださいまし 131 00:15:28,841 --> 00:15:31,177 いやあ 気にするな 132 00:15:31,177 --> 00:15:34,180 わしにも2人の娘がいてな 133 00:15:34,180 --> 00:15:37,480 姉の方は ちょうど お前と同じぐらいの年だ 134 00:15:47,693 --> 00:15:50,362 親父殿はいつ? 135 00:15:50,362 --> 00:15:53,032 5年前です うーん 136 00:15:53,032 --> 00:15:56,402 お袋さんは元気なのか? はい 137 00:15:56,402 --> 00:16:00,739 でも おとっつぁんが死んでから すっかり意気地がなくなって 138 00:16:00,739 --> 00:16:03,609 おう 他にきょうだいは? 139 00:16:03,609 --> 00:16:05,845 いいえ おっかさんと二人きりです 140 00:16:05,845 --> 00:16:08,814 ほう そりゃあ 大変だな 141 00:16:08,814 --> 00:16:11,584 エヘヘ 早く亭主を持つことだな 142 00:16:11,584 --> 00:16:13,586 いや 私なんかとても… 143 00:16:13,586 --> 00:16:15,988 いやあ お前ほどの器量よし 144 00:16:15,988 --> 00:16:18,157 それに気立ても よさそうだ 145 00:16:18,157 --> 00:16:21,257 きっと いい亭主が見つかること 請け合いだぞ 146 00:16:25,731 --> 00:16:28,531 何だ?涙なんぞ浮かべて 147 00:16:30,603 --> 00:16:35,303 何だか おとっつぁんに 会ったような気がして 148 00:16:37,276 --> 00:16:39,276 ごめんくださいまし 149 00:17:11,744 --> 00:17:15,644 先客がある 待っておれ すぐに出る 150 00:17:26,892 --> 00:17:29,492 どうぞ ごゆっくり 151 00:17:35,434 --> 00:17:38,070 何だ お前は? 152 00:17:38,070 --> 00:17:41,574 松の間にお泊まりくださった お客様には 153 00:17:41,574 --> 00:17:46,212 旅の憂さ晴らしに おとぎをさせて いただくことになっております 154 00:17:46,212 --> 00:17:48,214 断る 出ていけ 155 00:17:48,214 --> 00:17:50,649 あっ またそんな… 156 00:17:50,649 --> 00:17:53,249 よろしいじゃございませんか 157 00:17:58,457 --> 00:18:00,457 ウッ 158 00:18:23,415 --> 00:18:25,584 アッ 159 00:18:25,584 --> 00:18:28,984 ア… アイタ 160 00:18:35,194 --> 00:18:37,830 ア… 161 00:18:37,830 --> 00:18:40,599 どうした? あっ 162 00:18:40,599 --> 00:18:44,436 お侍さん この間はどうも 163 00:18:44,436 --> 00:18:47,673 ちょっと つまずいて足を 164 00:18:47,673 --> 00:18:50,073 うん?どれ 165 00:18:55,547 --> 00:19:00,019 筋を違えたらしいな うちは遠いのか? 166 00:19:00,019 --> 00:19:02,021 いえ すぐそこです 167 00:19:02,021 --> 00:19:04,790 うん 肩を貸してやる さあ つかまれ 168 00:19:04,790 --> 00:19:07,793 いえ 大丈夫です 169 00:19:07,793 --> 00:19:11,430 1人でも歩けます ア… アイタッ 170 00:19:11,430 --> 00:19:14,800 ほら それ見ろ 遠慮することはない 171 00:19:14,800 --> 00:19:17,870 さあ その荷物は後でよかろう 172 00:19:17,870 --> 00:19:21,540 はい すいません うちは どっちだ? 173 00:19:21,540 --> 00:19:24,940 もう少し先を 谷の方へ下りた所です 174 00:19:28,514 --> 00:19:33,652 山育ちだけあって見かけによらず なかなか よく鍛えた体だ 175 00:19:33,652 --> 00:19:36,955 わしの娘など 到底及ばん 176 00:19:36,955 --> 00:19:39,692 ハハハ アハハハ 177 00:19:39,692 --> 00:19:41,692 アイタッ 178 00:19:56,442 --> 00:19:58,610 とても お口には合いますまいが 179 00:19:58,610 --> 00:20:01,380 せめて一口なりとも 召し上がってくださりませ 180 00:20:01,380 --> 00:20:03,680 ああ かたじけない はい 181 00:20:11,657 --> 00:20:14,993 うん 足はどうかな? 182 00:20:14,993 --> 00:20:18,664 あっ もう痛みは取れました 183 00:20:18,664 --> 00:20:20,666 お侍さんも物好きな 184 00:20:20,666 --> 00:20:22,901 もう少し行けば いい旅籠がありますのに 185 00:20:22,901 --> 00:20:26,372 いやあ 旅籠には こんなにうまい雑炊はあるまい 186 00:20:26,372 --> 00:20:29,272 アハハハ ハハハ 187 00:22:59,358 --> 00:23:02,227 あー 食わなくなったな 188 00:23:02,227 --> 00:23:05,427 1人2匹ずつで 間に合わせるとするか 189 00:23:13,005 --> 00:23:15,805 アハハハ 190 00:23:22,614 --> 00:23:24,683 見事だ 191 00:23:24,683 --> 00:23:26,683 いえ まぐれです 192 00:23:37,162 --> 00:23:41,066 あー さすがに捕りたて うまかったぞ 193 00:23:41,066 --> 00:23:43,066 ハハハ 194 00:24:53,138 --> 00:24:55,607 どうしたのだ? 195 00:24:55,607 --> 00:24:59,011 いえ 別に 196 00:24:59,011 --> 00:25:02,881 手揉みのお茶 どうぞ召し上がってくださりませ 197 00:25:02,881 --> 00:25:06,281 手揉みか なるほど 198 00:25:19,564 --> 00:25:21,564 どうぞ 199 00:26:35,440 --> 00:26:37,440 薊殿 200 00:26:48,386 --> 00:26:51,286 アッ フ… ハー 201 00:27:07,339 --> 00:27:09,339 ウッ 202 00:27:11,343 --> 00:27:14,980 柳生様 203 00:27:14,980 --> 00:27:19,818 やっぱり 柳生十兵衛と 知ってのことだったか 204 00:27:19,818 --> 00:27:22,921 そなたが ただの山の娘でないことは 205 00:27:22,921 --> 00:27:25,824 ゆうべから察していたが 206 00:27:25,824 --> 00:27:29,694 今朝 ヤマメを刺した腕の冴えで 207 00:27:29,694 --> 00:27:32,664 はっきりと分かった 208 00:27:32,664 --> 00:27:36,067 私は風魔一族の… 209 00:27:36,067 --> 00:27:38,069 何も言うな 210 00:27:38,069 --> 00:27:41,006 そなたが茶を飲むなと止めたのを 知りながら 211 00:27:41,006 --> 00:27:43,406 わしは あえて飲んだ 212 00:27:53,552 --> 00:27:56,154 柳生一門の名に懸けて 213 00:27:56,154 --> 00:27:59,891 わしは剣の上では死ねん 214 00:27:59,891 --> 00:28:03,862 といって 老いさらばえて 死んでいくのは 215 00:28:03,862 --> 00:28:07,065 わしの誇りが許さん 216 00:28:07,065 --> 00:28:10,836 むしろ… むしろ 217 00:28:10,836 --> 00:28:13,872 かくも温かい 山の娘の厚意と信じて 218 00:28:13,872 --> 00:28:17,872 死んでいくのが何よりと 考えたからだ 219 00:28:26,251 --> 00:28:28,954 一介の侍として 220 00:28:28,954 --> 00:28:31,590 この世を去る 221 00:28:31,590 --> 00:28:35,260 ウッ 死体は 222 00:28:35,260 --> 00:28:38,060 この川へ流してくれ 223 00:28:44,035 --> 00:28:46,035 頼むぞ 224 00:28:49,407 --> 00:28:51,407 柳生様 225 00:28:57,249 --> 00:29:00,118 ようやった 薊殿 226 00:29:00,118 --> 00:29:04,422 仕留めたぞ 柳生十兵衛を仕留めたぞ 227 00:29:04,422 --> 00:29:06,691 天よ 地よ 聞け 228 00:29:06,691 --> 00:29:10,629 柳生十兵衛は根来忍者 夜叉丸が妻 229 00:29:10,629 --> 00:29:13,798 しぶきが仕留めたぞ 230 00:29:13,798 --> 00:29:16,998 仕留めたぞ! 231 00:29:54,773 --> 00:29:57,943 薊自身 柳生十兵衛に対して 232 00:29:57,943 --> 00:30:00,779 恩怨は いささかもなかった 233 00:30:00,779 --> 00:30:04,282 しかし風魔一族として 取るべき道は 234 00:30:04,282 --> 00:30:06,384 これしかなかったのだ 235 00:30:06,384 --> 00:30:12,691 だが そう信じ込もうとする心の 片隅に投影した かすかな陰りは 236 00:30:12,691 --> 00:30:15,291 覆うべくもなかったのである 237 00:31:11,850 --> 00:31:17,188 ようやった 長年の留飲が やっと下がったぞ 238 00:31:17,188 --> 00:31:19,190 さすがは薊 239 00:31:19,190 --> 00:31:21,726 茜は浅はかにも功を焦って 240 00:31:21,726 --> 00:31:25,226 自ら墓穴を掘った たわけ者にござります 241 00:31:27,999 --> 00:31:32,070 うまくたきつけた 小野派一刀流の手練れどもが 242 00:31:32,070 --> 00:31:34,239 逆に十兵衛の剣に屈し 243 00:31:34,239 --> 00:31:37,275 続いて茜も失敗したと聞いた時は 244 00:31:37,275 --> 00:31:40,211 もはや望みが 断ち切られたかと… ハッ 245 00:31:40,211 --> 00:31:42,580 無性に腹が立ってならなかったぞ 246 00:31:42,580 --> 00:31:44,582 まあ そんな 247 00:31:44,582 --> 00:31:49,888 このしぶきにお任せくださいと あれほど申しましたのに 248 00:31:49,888 --> 00:31:53,792 分かった 今こそ そなたの心根が 249 00:31:53,792 --> 00:31:57,328 しみじみと うれしいぞ 250 00:31:57,328 --> 00:31:59,764 これで万斛の恨みを抱いて 251 00:31:59,764 --> 00:32:04,135 泉下にある祖父 坂崎出羽守の霊も 浮かばれる 252 00:32:04,135 --> 00:32:07,572 ともあれ あなた様のため 253 00:32:07,572 --> 00:32:11,509 出羽守様に詰め腹を 切らせた張本人 254 00:32:11,509 --> 00:32:16,309 柳生宗矩のせがれ 十兵衛を 見事 討ち取ったのでございます 255 00:32:19,484 --> 00:32:22,420 坂崎様 256 00:32:22,420 --> 00:32:26,057 十兵衛は ほんの門出の血祭り 257 00:32:26,057 --> 00:32:30,962 しぶきの本当の狙いは 徳川家にござります 258 00:32:30,962 --> 00:32:33,662 何?徳川家? 259 00:32:35,733 --> 00:32:41,806 十兵衛の次は 松平信綱のイヌ 鷹を撃ち落とし 260 00:32:41,806 --> 00:32:44,906 幕閣を根こそぎ揺すぶって ご覧に入れます 261 00:32:52,484 --> 00:32:55,584 お頭様 鷹の居所が分かりました 262 00:33:07,932 --> 00:33:10,668 黙ってたんじゃ分かんないんだよ 263 00:33:10,668 --> 00:33:13,771 一体 誰に断って この近在で稼いでんだい? 264 00:33:13,771 --> 00:33:16,107 別に… どなたにもお断りは 265 00:33:16,107 --> 00:33:18,143 ふざけんじゃないよ 266 00:33:18,143 --> 00:33:23,148 鳥追いにはね ちゃんと 縄張りってものがあるんだよ 267 00:33:23,148 --> 00:33:26,518 申し訳ありません 知らなかったもんですから 268 00:33:26,518 --> 00:33:29,220 フンッ 乙におぼこぶりやがって 269 00:33:29,220 --> 00:33:31,623 いいかい 二度と 三味線が弾けないように 270 00:33:31,623 --> 00:33:34,223 親指 詰めてやるから覚悟おしよ 271 00:33:42,033 --> 00:33:44,733 ウッ アー 272 00:33:46,804 --> 00:33:48,806 アッ 273 00:33:48,806 --> 00:33:51,376 何すんだよ 274 00:33:51,376 --> 00:33:54,279 お侍さんには 関わり合いのないこった 275 00:33:54,279 --> 00:33:56,414 博打打ちでもあるまいし 276 00:33:56,414 --> 00:33:59,050 指を詰めるなど 女のすることではない 277 00:33:59,050 --> 00:34:01,953 フンッ お節介はよしとくれよ 278 00:34:01,953 --> 00:34:05,390 掟を破った奴の仕置きに 男も女もあるもんかい 279 00:34:05,390 --> 00:34:08,790 男か女か試してやる 280 00:34:11,629 --> 00:34:13,629 ハッ 281 00:34:19,771 --> 00:34:22,140 ありがとうございます 282 00:34:22,140 --> 00:34:25,410 女であることを 分からせてやっただけだ 283 00:34:25,410 --> 00:34:27,410 お待ちくだされ 284 00:34:35,019 --> 00:34:38,223 やみそうもないな 285 00:34:38,223 --> 00:34:42,026 大磯の宿場まで もう一息なんだがな 286 00:34:42,026 --> 00:34:44,028 すみません 287 00:34:44,028 --> 00:34:48,600 私のために とんだお手間を 取らせてしまって 288 00:34:48,600 --> 00:34:52,500 でも私にはうれしい雨 289 00:34:54,572 --> 00:34:58,472 ウフッ こうして あなたと ご一緒にいられるんですもの 290 00:35:00,511 --> 00:35:04,515 いっそ今夜一晩中 291 00:35:04,515 --> 00:35:09,515 やまずにいてくれたら もっと うれしいんですけど 292 00:35:22,834 --> 00:35:24,934 アッ 怖い 293 00:35:45,089 --> 00:35:47,089 えいっ 294 00:36:23,061 --> 00:36:26,197 薊 待っていた 295 00:36:26,197 --> 00:36:28,466 どうしても決着をつけるのか 296 00:36:28,466 --> 00:36:30,666 私は風魔一族 297 00:36:32,970 --> 00:36:35,170 鷹は殺さねばならぬ 298 00:36:55,727 --> 00:37:00,732 猿飛 燕廻しの秘剣を おぬしに披露できたことは 299 00:37:00,732 --> 00:37:02,732 むしろ喜びと言えよう 300 00:37:26,190 --> 00:37:28,790 薊 寄るな 301 00:37:38,736 --> 00:37:42,774 情けをかけるぐらいなら 息の根を絶て 302 00:37:42,774 --> 00:37:46,577 風魔とは そんなにも 無様なものなのか 303 00:37:46,577 --> 00:37:49,981 生ある限り目的をあくまで果たす 304 00:37:49,981 --> 00:37:52,581 それが風魔一族の執念であろう 305 00:37:57,188 --> 00:37:59,288 俺はそう信じていた 306 00:38:17,008 --> 00:38:19,508 痛むか? いや 307 00:38:23,047 --> 00:38:25,147 横になった方がいい 308 00:38:32,256 --> 00:38:36,427 体を休ませるのが 何よりの薬だ さあ 309 00:38:36,427 --> 00:38:39,263 出てって 310 00:38:39,263 --> 00:38:43,263 風魔にとって鷹は終生の敵だ 311 00:38:47,505 --> 00:38:49,807 よく言った 312 00:38:49,807 --> 00:38:52,977 傷が治ったら改めて会おう 313 00:38:52,977 --> 00:38:55,880 それまでに柳生流の秘剣 314 00:38:55,880 --> 00:38:59,851 猿飛と燕廻しをどう破るか 315 00:38:59,851 --> 00:39:02,351 しっかりと身に付けておくことだ 316 00:39:09,093 --> 00:39:11,093 待って 317 00:39:35,019 --> 00:39:37,719 柳生様は お亡くなりになりました 318 00:39:43,094 --> 00:39:45,730 本当か? 319 00:39:45,730 --> 00:39:47,830 殺したのは私です 320 00:39:49,867 --> 00:39:52,567 私が毒を入れたお茶を 差し上げました 321 00:39:56,607 --> 00:39:59,510 薊 322 00:39:59,510 --> 00:40:02,480 早く腕を治せ 323 00:40:02,480 --> 00:40:07,151 その時こそ必ず お前を斬る 324 00:40:07,151 --> 00:40:09,151 必ず 325 00:40:15,493 --> 00:40:18,563 薊も所詮 おなごであったか 326 00:40:18,563 --> 00:40:21,866 このまま逃がす所存か? 327 00:40:21,866 --> 00:40:26,166 なんの 鷹は何としても 殺さずにはおきませぬ 328 00:40:28,205 --> 00:40:30,508 即刻 皆を集めい 329 00:40:30,508 --> 00:40:34,445 根来忍法の極意 蜘蛛絡み 330 00:40:34,445 --> 00:40:36,845 とっくりと味わわせてやる 331 00:41:09,347 --> 00:41:11,349 鷹 332 00:41:11,349 --> 00:41:14,885 見たか 根来の秘法 蜘蛛絡み 333 00:41:14,885 --> 00:41:17,088 じわじわと あぶり殺してやるわ 334 00:41:17,088 --> 00:41:19,088 ウー 335 00:41:28,633 --> 00:41:34,438 大阪城の業火に包まれた我が祖父 坂崎出羽守の苦しみが 336 00:41:34,438 --> 00:41:38,175 どんなものか しかと思い知れ 337 00:41:38,175 --> 00:41:40,175 火をかけろ 338 00:42:22,887 --> 00:42:24,987 おのれ 裏切り者 339 00:42:41,939 --> 00:42:43,939 アッ 340 00:42:52,817 --> 00:42:54,817 薊 ヤーッ 341 00:43:10,634 --> 00:43:12,634 ウッ ア… 342 00:43:19,276 --> 00:43:22,379 薊 343 00:43:22,379 --> 00:43:25,679 死ぬなよ 俺を終生の敵と 言ったはずだ 344 00:43:34,125 --> 00:43:36,861 私は 345 00:43:36,861 --> 00:43:41,232 くノ一にはなりきれなかった 346 00:43:41,232 --> 00:43:45,636 今は風魔も捨てた 347 00:43:45,636 --> 00:43:49,306 ただの女として 348 00:43:49,306 --> 00:43:52,476 十兵衛様がおっしゃったように 349 00:43:52,476 --> 00:43:55,176 ただ一人の山の娘として 350 00:43:57,281 --> 00:44:01,952 あなたの腕の中で死んでいきたい 351 00:44:01,952 --> 00:44:05,556 薊 352 00:44:05,556 --> 00:44:08,726 薊は 353 00:44:08,726 --> 00:44:10,726 今日限り 354 00:44:12,863 --> 00:44:18,169 あなた様の心の中だけに 355 00:44:18,169 --> 00:44:20,169 生きていたい 356 00:44:22,373 --> 00:44:25,376 あなたの… 357 00:44:25,376 --> 00:44:27,778 あなただけ… 358 00:44:27,778 --> 00:44:30,047 薊 359 00:44:30,047 --> 00:44:32,783 薊! 360 00:44:32,783 --> 00:44:34,783 薊 361 00:45:10,387 --> 00:45:12,523 名も知らぬ丘の上で 362 00:45:12,523 --> 00:45:16,660 薊は いつの日にか 柳生十兵衛の愛刀と共に 363 00:45:16,660 --> 00:45:19,660 ひっそりと土にかえるであろう 364 00:45:22,733 --> 00:45:27,037 鷹の手には抱き締めた薊の 肌のぬくもりが 365 00:45:27,037 --> 00:45:30,875 そして鷹の耳には か細い薊のささやきが 366 00:45:30,875 --> 00:45:34,375 まざまざと こびりついて 離れなかった