1 00:01:37,222 --> 00:01:39,222 2 00:02:07,119 --> 00:02:27,139 ・~ 3 00:02:27,139 --> 00:02:47,092 ・~ 4 00:02:47,092 --> 00:03:07,112 ・~ 5 00:03:07,112 --> 00:03:27,132 ・~ 6 00:03:27,132 --> 00:03:47,086 ・~ 7 00:03:47,086 --> 00:04:07,086 ・~ 8 00:04:12,111 --> 00:04:17,116 (学問僧)いちばん上の箱 これを夜天池といいます 9 00:04:17,116 --> 00:04:21,120 こちらに満たした水は 次々と管を伝って・ 10 00:04:21,120 --> 00:04:27,126 最後の箱 水海に入るのです 11 00:04:27,126 --> 00:04:33,132 (学問僧)水海の矢は これによって 次第に浮上します 12 00:04:33,132 --> 00:04:36,135 矢には このように 刻みをつけてありますれば・ 13 00:04:36,135 --> 00:04:41,073 この刻みによって 時刻を 知ることができるのでございます 14 00:04:41,073 --> 00:04:44,076 (中大兄皇子)ほう… なるほどな 15 00:04:44,076 --> 00:04:50,082 いや 実に便利な物を新羅の使者は 送ってきてくれたものよのぅ 16 00:04:50,082 --> 00:04:56,088 よし 俺も いつか これを真似て 水時計とやらを作ってみたい 17 00:04:56,088 --> 00:05:01,093 (鎌足)殿下 お好みの由 聞き及び このような品を… 18 00:05:01,093 --> 00:05:03,095 そうか 19 00:05:03,095 --> 00:05:07,099 俺たちが時というものを 心に留めるか留めぬかでは・ 20 00:05:07,099 --> 00:05:10,102 大きな違いがある 21 00:05:10,102 --> 00:05:13,105 1日を より有効に 筋書きどおりに運ぶためには・ 22 00:05:13,105 --> 00:05:17,109 このような物が必要なのだ なっ? 23 00:05:17,109 --> 00:05:20,112 (鎌足)さよう フフフフッ… 24 00:05:20,112 --> 00:05:23,115 筋書きどおり 運ぶためには… 25 00:05:23,115 --> 00:05:26,115 フフフフッ… 26 00:05:28,120 --> 00:05:30,122 (大海人皇子)兄上! 27 00:05:30,122 --> 00:05:33,125 どうした? 大海人 28 00:05:33,125 --> 00:05:36,125 (学問僧)では 私は これにて… 29 00:05:40,065 --> 00:05:43,065 どうした? うん? 30 00:05:46,071 --> 00:05:48,073 お話ししたいことが あったのですが… 31 00:05:48,073 --> 00:05:50,073 何だ? 32 00:05:53,078 --> 00:05:57,082 ああ… ハハハハッ… 33 00:05:57,082 --> 00:06:01,082 鎌足に秘密にするようなことは 何もありはしない 言ってみろ 34 00:06:03,088 --> 00:06:08,093 でも… かまわない 35 00:06:08,093 --> 00:06:13,098 この大和の国で 俺が いちばん信用している男なんだ 36 00:06:13,098 --> 00:06:19,104 弟のお前も同じことだ 何があったか言ってみろ 37 00:06:19,104 --> 00:06:25,110 ひどすぎる あまりにひどい! 38 00:06:25,110 --> 00:06:29,114 何が ひどい? 母君のことですよ 39 00:06:29,114 --> 00:06:32,117 母君? 40 00:06:32,117 --> 00:06:37,055 あんな男に母君は… あんな男に しとねを汚されて 41 00:06:37,055 --> 00:06:53,071 ・~ 42 00:06:53,071 --> 00:06:55,073 (皇極帝の あえぎ声) 43 00:06:55,073 --> 00:07:00,078 (入鹿)いいですね? 大王 よろしいですね? 44 00:07:00,078 --> 00:07:06,084 いいですね? 日嗣の御子は古人大兄に… 45 00:07:06,084 --> 00:07:08,086 母君も母君です 46 00:07:08,086 --> 00:07:10,088 父君のことなど・ 47 00:07:10,088 --> 00:07:15,093 もはや 忘れ果ててしまわれたと いうんでしょうか 48 00:07:15,093 --> 00:07:17,095 そんなに悔しいか? 49 00:07:17,095 --> 00:07:21,099 父君の敵だ 殺してやりたい 50 00:07:21,099 --> 00:07:25,103 あいつを斬り殺してやりたい 51 00:07:25,103 --> 00:07:28,106 殺したいんなら殺せば どうだ? 52 00:07:28,106 --> 00:07:32,110 入鹿の首をたたき斬ってやれば えっ? 53 00:07:32,110 --> 00:07:36,114 母上と結んでいる あの男が そんなに憎いのなら・ 54 00:07:36,114 --> 00:07:39,051 しとねを襲って 殺してしまえばいい 55 00:07:39,051 --> 00:07:41,051 兄上… 56 00:07:45,057 --> 00:07:48,060 できないか 57 00:07:48,060 --> 00:07:51,060 口先だけで それほどの勇気がないか 58 00:07:54,066 --> 00:08:00,072 殺したいんだろう? なら殺せばいい 59 00:08:00,072 --> 00:08:08,080 (石川麻呂)諸々の氏姓を代表して 慎んでお喜び申し上げます 60 00:08:08,080 --> 00:08:14,086 (石川麻呂)大王には 清らかに平らかなる徳をもって・ 61 00:08:14,086 --> 00:08:18,090 天の下を治められますがゆえに・ 62 00:08:18,090 --> 00:08:22,094 この度 三韓の使節が海を… 63 00:08:22,094 --> 00:08:25,097 (ナレーター)<皇極4年6月12日> 64 00:08:25,097 --> 00:08:27,099 <そのころ・ 65 00:08:27,099 --> 00:08:31,103 高句麗 百済 新羅3国の使者が 難波に着いたので・ 66 00:08:31,103 --> 00:08:33,105 使者たちの入京の前に・ 67 00:08:33,105 --> 00:08:37,042 その上表文を 帝に取り次ぐ儀式が・ 68 00:08:37,042 --> 00:08:41,042 宮中 大極殿で行われた> 69 00:08:43,048 --> 00:08:47,052 願わくば 親しく その労をねぎらい… 70 00:08:47,052 --> 00:08:52,052 (雷鳴) 71 00:08:56,061 --> 00:08:59,064 ドリャー! 72 00:08:59,064 --> 00:09:01,066 (入鹿)正気か・ 73 00:09:01,066 --> 00:09:03,068 (刺す音) 74 00:09:03,068 --> 00:09:06,071 (騒ぎ声) 75 00:09:06,071 --> 00:09:08,071 ヤーッ! 76 00:09:12,077 --> 00:09:15,080 (叫び声) 77 00:09:15,080 --> 00:09:17,080 (皇極帝)ウワッ! 78 00:09:26,091 --> 00:09:28,093 (悲鳴) 79 00:09:28,093 --> 00:09:35,093 <中大兄 鎌足らの改新の火蓋は 切って落とされた> 80 00:09:39,037 --> 00:09:46,044 <権勢をほしいままにしていた 蘇我蝦夷 入鹿の親子は滅ぼされ・ 81 00:09:46,044 --> 00:09:51,044 翌日 新政府の首脳部人事が決められた> 82 00:09:53,051 --> 00:09:57,055 <帝の位に就いたのは 孝徳帝> 83 00:09:57,055 --> 00:10:04,055 <すなわち 軽皇子と呼ばれた 皇極帝の弟である> 84 00:10:06,064 --> 00:10:12,070 <中大兄皇子は 日嗣の御子となった> 85 00:10:12,070 --> 00:10:15,073 <中臣鎌足は 内臣に> 86 00:10:15,073 --> 00:10:18,076 <阿倍倉梯麻呂を左大臣に> 87 00:10:18,076 --> 00:10:20,078 <蘇我石川麻呂を右大臣に> 88 00:10:20,078 --> 00:10:26,084 <旻法師と高向玄理を 国博士とした> 89 00:10:26,084 --> 00:10:36,094 ・~ 90 00:10:36,094 --> 00:10:43,034 <6月19日 中大兄らは 文臣を大槻の下に集め・ 91 00:10:43,034 --> 00:10:50,041 帝への忠誠と互いの団結を 神に誓った> 92 00:10:50,041 --> 00:10:54,045 <蘇我一族を中心とした 豪族連合の政治は・ 93 00:10:54,045 --> 00:10:57,048 ここに終止符を打たれ・ 94 00:10:57,048 --> 00:11:03,054 帝を中心とする 政治体制が始められたのである> 95 00:11:03,054 --> 00:11:09,054 <つまり これが世にいう 「大化の改新」であった> 96 00:11:17,068 --> 00:11:22,073 (間人皇女)いや いや… 97 00:11:22,073 --> 00:11:25,076 いや… 98 00:11:25,076 --> 00:11:32,083 どんなことがあっても 絶対に いや! 99 00:11:32,083 --> 00:11:37,088 間人 俺だって かわいい そなたを あんな年寄りの所へなど・ 100 00:11:37,088 --> 00:11:42,093 やりたくはないんだよ だったら なぜ? 101 00:11:42,093 --> 00:11:46,097 そなたも いずれ 誰かの后に ならねばならんとしたら・ 102 00:11:46,097 --> 00:11:50,101 太后になったほうがいいだろう いや 嫌です 103 00:11:50,101 --> 00:11:54,105 私 ずっ~とお兄さまのそばがいい 104 00:11:54,105 --> 00:11:59,105 私 どなたのお后にもならない 105 00:12:01,112 --> 00:12:03,112 聞き分けてくれ 106 00:12:05,116 --> 00:12:07,118 この次 いずれ 俺が皇位を継ぐときに・ 107 00:12:07,118 --> 00:12:10,118 そなたが 太后であってくれたほうが… 108 00:12:12,123 --> 00:12:14,123 お兄さま 109 00:12:16,127 --> 00:12:21,132 私 不思議でならなかった 110 00:12:21,132 --> 00:12:24,135 どうして お兄さまは お母さまのあとを継いで・ 111 00:12:24,135 --> 00:12:28,139 皇位をお継ぎにならなかったの? 112 00:12:28,139 --> 00:12:33,144 どうして あんな叔父上などに皇位を? 113 00:12:33,144 --> 00:12:37,082 そういうわけにはいかなかった 114 00:12:37,082 --> 00:12:43,082 俺の手は… 入鹿の血で汚れてしまったから 115 00:12:45,090 --> 00:12:48,093 俺が もし 皇位に就いてみろ 116 00:12:48,093 --> 00:12:52,093 帝の位を狙って 入鹿を倒したと言われかねない 117 00:12:54,099 --> 00:13:00,099 お兄さまが 皇位をお継ぎに なっていたらよかったのに 118 00:13:11,116 --> 00:13:16,116 お兄さまが天皇であったのなら… 119 00:13:18,123 --> 00:13:26,123 私 喜んで お后になったと思うわ 120 00:13:30,135 --> 00:13:32,137 間人… 121 00:13:32,137 --> 00:13:39,077 ・~ 122 00:13:39,077 --> 00:13:41,079 お兄さま 123 00:13:41,079 --> 00:14:01,099 ・~ 124 00:14:01,099 --> 00:14:03,099 なぜ いけない? 125 00:14:07,105 --> 00:14:12,105 実の妹が お兄さまの お后になってはいけないの? 126 00:14:14,112 --> 00:14:17,115 間人! なぜ? 127 00:14:17,115 --> 00:14:19,117 母親の違う きょうだいなら 許されても・ 128 00:14:19,117 --> 00:14:22,120 私とお兄さまでは なぜ いけないの? 129 00:14:22,120 --> 00:14:24,122 こんなにお慕いしてるのに 130 00:14:24,122 --> 00:14:26,122 お兄さま 131 00:14:31,129 --> 00:14:33,131 なぜ? なぜ いけない? 間人! 132 00:14:33,131 --> 00:14:36,131 お兄さま! 間人! 133 00:14:38,069 --> 00:14:41,072 それほどまでに 俺を慕ってくれているんなら・ 134 00:14:41,072 --> 00:14:44,072 俺のために犠牲になってくれ 135 00:14:50,081 --> 00:14:53,081 お兄さまの犠牲? 136 00:14:57,088 --> 00:15:02,088 その身を犠牲にして 太后になってくれ 137 00:15:05,096 --> 00:15:14,105 いや… あんなお年寄りの お后になるなんて いや 138 00:15:14,105 --> 00:15:19,110 でも お兄さまの犠牲だったら… 139 00:15:19,110 --> 00:15:22,110 お兄さまのためだったら… 140 00:15:26,117 --> 00:15:28,117 お兄さま… 141 00:15:36,127 --> 00:15:39,127 お兄さま 間人… 142 00:15:43,067 --> 00:15:45,069 間人! お兄さま 143 00:15:45,069 --> 00:16:00,084 ・~ 144 00:16:00,084 --> 00:16:03,087 アア… 間人 145 00:16:03,087 --> 00:16:06,090 お兄さまの犠牲に… 146 00:16:06,090 --> 00:16:11,095 ・~ 147 00:16:11,095 --> 00:16:14,098 太后になります 太后になり… 148 00:16:14,098 --> 00:16:17,098 もっと! お兄さまの犠牲に… 149 00:16:21,105 --> 00:16:24,108 <その年 年号も大化と改められ・ 150 00:16:24,108 --> 00:16:29,113 人心の一新を図って 都は難波に移された> 151 00:16:29,113 --> 00:16:36,054 <中大兄らの改新の政治は ここに 順調な第一歩を踏み出したが・ 152 00:16:36,054 --> 00:16:41,059 大化5年 右大臣である蘇我石川麻呂の・ 153 00:16:41,059 --> 00:16:44,062 謀反計画が発覚した> 154 00:16:44,062 --> 00:16:53,071 ・~ 155 00:16:53,071 --> 00:16:55,073 ウワッ! 156 00:16:55,073 --> 00:16:58,076 <主謀者 石川麻呂は自害し・ 157 00:16:58,076 --> 00:17:03,081 事件に連座した一味の者は それぞれに処断を受けた> 158 00:17:03,081 --> 00:17:13,091 <流刑15名 絞首刑9名 首を斬られた者14名であった> 159 00:17:13,091 --> 00:17:15,091 行け! 160 00:17:19,097 --> 00:17:21,097 (悲鳴) 161 00:17:23,101 --> 00:17:26,104 <しかし この事件ののち・ 162 00:17:26,104 --> 00:17:31,109 孝徳帝が石川麻呂の私財を 没収して調べさせたところ・ 163 00:17:31,109 --> 00:17:37,048 謀反の事実は なかったことが 判明したのである> 164 00:17:37,048 --> 00:17:43,054 ああ 久しぶりだな こんなに のんびり 狩りに出るなんて 165 00:17:43,054 --> 00:17:45,056 あっ 急がねば 166 00:17:45,056 --> 00:17:48,059 勢子たちが 鹿を追うために 待ってるだろう 167 00:17:48,059 --> 00:17:53,064 うん? おい どうした? 168 00:17:53,064 --> 00:17:55,064 何を考えている? 169 00:17:58,069 --> 00:18:02,073 (男依)蘇我倉山田石川麻呂どのの ことです 170 00:18:02,073 --> 00:18:05,076 えっ? 171 00:18:05,076 --> 00:18:08,079 謀反の事実がなかったと 分かっても・ 172 00:18:08,079 --> 00:18:12,083 死んだ者を 生き返らせるすべはありません 173 00:18:12,083 --> 00:18:18,089 私は あの方に目を かけていただいただけに なおさら 174 00:18:18,089 --> 00:18:22,093 そうだったな 気の毒なことをしたものだ 175 00:18:22,093 --> 00:18:26,097 兄上も どうして 蘇我日向の讒言などを・ 176 00:18:26,097 --> 00:18:29,100 頭から 信じておしまいになったのか 177 00:18:29,100 --> 00:18:35,039 殿下は兄君思いですから こんなことを申し上げては… 178 00:18:35,039 --> 00:18:38,039 何だ? 言え 179 00:18:40,044 --> 00:18:45,049 中大兄皇子さまと日向とは・ 180 00:18:45,049 --> 00:18:49,053 最初から ぐるだったという噂が… 181 00:18:49,053 --> 00:18:53,053 ぐるだと? 最初から仕組まれていたんです 182 00:18:55,059 --> 00:18:58,062 殿下の兄君は 大化の改新以降・ 183 00:18:58,062 --> 00:19:01,065 すっかり お変わりになられてしまった 184 00:19:01,065 --> 00:19:03,067 政のためなら・ 185 00:19:03,067 --> 00:19:07,067 どんな冷酷無残なことでも 平気でなさるお方 186 00:19:09,073 --> 00:19:14,078 殿下は 兄君を尊敬されていられる それは結構なことだが・ 187 00:19:14,078 --> 00:19:16,080 少しは 兄君のなされ方というものを… 188 00:19:16,080 --> 00:19:19,083 黙れ! 聞きたくない 黙らんか! 189 00:19:19,083 --> 00:19:22,086 殿下のために 申し上げているんです! 190 00:19:22,086 --> 00:19:24,088 いくら ご兄弟といっても・ 191 00:19:24,088 --> 00:19:28,092 兄君が どのようなお方か はっきりお知りになったうえで… 192 00:19:28,092 --> 00:19:31,095 兄君のことは 貴様などに言われなくたって・ 193 00:19:31,095 --> 00:19:33,097 この俺が いちばん よく知っている 194 00:19:33,097 --> 00:19:36,097 許さん そのような讒言 許さんぞ! 195 00:19:38,036 --> 00:19:41,039 あれは何だ? (男依)はっ! 196 00:19:41,039 --> 00:19:45,043 あの鳥は何だ? 白鷺ではありませんか? 197 00:19:45,043 --> 00:19:50,048 白鷺にしては形が おかしい 足が短すぎるぞ 198 00:19:50,048 --> 00:19:52,050 雉のようにも見えるが… 199 00:19:52,050 --> 00:19:55,053 雉? 白い雉なんて いるんでしょうか? 200 00:19:55,053 --> 00:19:57,055 不思議な鳥だ 201 00:19:57,055 --> 00:20:01,059 ハアッ! ハイヤ! 202 00:20:01,059 --> 00:20:20,078 ・~ 203 00:20:20,078 --> 00:20:26,084 (額田女王の祈祷の声) 204 00:20:26,084 --> 00:20:29,087 (祈祷の声) 205 00:20:29,087 --> 00:20:32,090 (額田女王)竹玉を繁に貫き垂れ 206 00:20:32,090 --> 00:20:36,027 獣じもの膝 折り伏せて 207 00:20:36,027 --> 00:20:39,030 たわや女の襲 取り懸け 208 00:20:39,030 --> 00:20:43,034 かくだにも 我は祈ひなむ 209 00:20:43,034 --> 00:20:46,034 君に逢はじかも 210 00:21:08,059 --> 00:21:11,062 祈りの邪魔をしないでください 211 00:21:11,062 --> 00:21:16,067 分かるかな? 俺のこと 誰だか 212 00:21:16,067 --> 00:21:21,072 この楠の大木に 神が宿るというのか? 213 00:21:21,072 --> 00:21:24,075 だったら この俺が神かもしれんぞ 214 00:21:24,075 --> 00:21:28,079 あなたのおかげで せっかくの 祈りが台なしになりました 215 00:21:28,079 --> 00:21:32,079 真奈手古 まいりましょう 216 00:21:36,087 --> 00:21:38,087 おい 待て 217 00:21:47,098 --> 00:21:50,101 (男依)あの白い鳥は どうしたんですかね? 218 00:21:50,101 --> 00:21:55,106 美しい人だ えっ? 今の? 219 00:21:55,106 --> 00:21:59,110 まるで さっきの 白い鳥の生まれ変わりのような 220 00:21:59,110 --> 00:22:01,112 ご存じでしょう あの女 221 00:22:01,112 --> 00:22:07,118 確か 額田とかいう采女だ 222 00:22:07,118 --> 00:22:11,122 采女といっても 並の采女ではありません 223 00:22:11,122 --> 00:22:14,125 宮廷の神事にも 度々 顔を出してるぐらいですから 224 00:22:14,125 --> 00:22:17,128 神がかりの女です 225 00:22:17,128 --> 00:22:20,131 殿下 あんな女に惚れても無駄ですぞ 226 00:22:20,131 --> 00:22:23,134 そうだろうか? そうに決まってますよ 227 00:22:23,134 --> 00:22:27,138 乙女でなくなった巫女なんて 神も相手にされませんからな 228 00:22:27,138 --> 00:22:31,142 男と通じた巫女は ただの女になるんだろうか? 229 00:22:31,142 --> 00:22:33,142 そうですよ 230 00:22:35,079 --> 00:22:39,083 よし… あの女をただの女にしてやる 231 00:22:39,083 --> 00:22:42,086 殿下 本気で そのようなことを… 232 00:22:42,086 --> 00:22:46,090 ああ 俺は あの女が欲しい 233 00:22:46,090 --> 00:22:52,096 ただの女にしてやるぞ あの額田女王を 234 00:22:52,096 --> 00:23:00,104 ・~ 235 00:23:00,104 --> 00:23:02,106 お姉さま 236 00:23:02,106 --> 00:23:06,110 (鏡女王)あっ まあ 額田 237 00:23:06,110 --> 00:23:09,113 いつもお会いしたいと思いながら なかなか帰る折もなくて 238 00:23:09,113 --> 00:23:13,117 会いたかったわ あなたに 私も 239 00:23:13,117 --> 00:23:16,120 突然 訪ねてきたんで びっくりしたでしょう 240 00:23:16,120 --> 00:23:20,124 よくいらしてくださいました お父さま お元気ですか? 241 00:23:20,124 --> 00:23:23,127 ええ かくしゃくとしてらっしゃるわ 242 00:23:23,127 --> 00:23:28,132 こちらの都は 本当に活気があって よろしいこと 243 00:23:28,132 --> 00:23:31,135 私ね ずっと こちらにいようかと思うの 244 00:23:31,135 --> 00:23:34,071 えっ? ずっと? 245 00:23:34,071 --> 00:23:40,077 こちらでは 私と中大兄皇子さまのこと・ 246 00:23:40,077 --> 00:23:42,079 噂になってない? 247 00:23:42,079 --> 00:23:46,083 お姉さまと 中大兄皇子さまのこと? 248 00:23:46,083 --> 00:23:51,088 ちっとも噂になっていないの? 悔しいわねえ 249 00:23:51,088 --> 00:23:54,091 鏡の里では 大変な評判なのに 250 00:23:54,091 --> 00:23:57,094 じゃ お姉さまは… 251 00:23:57,094 --> 00:24:03,100 去年の秋からなの 時々 訪ねて見えるようになったのは 252 00:24:03,100 --> 00:24:06,103 あの方からいただいたお歌 教えてあげましょうか? 253 00:24:06,103 --> 00:24:09,106 お歌を? 254 00:24:09,106 --> 00:24:14,111 「妹が家も 継ぎて見ましを 大和なる・ 255 00:24:14,111 --> 00:24:18,115 大島の嶺に家もあらましを」 256 00:24:18,115 --> 00:24:23,120 どう? 「あなたの家に 度々 訪ねていきたいけれど・ 257 00:24:23,120 --> 00:24:26,123 あまり遠いので そうもならない」 258 00:24:26,123 --> 00:24:28,125 「せめて 同じ大和でも・ 259 00:24:28,125 --> 00:24:31,128 大島の嶺の辺りに 家があってくれたら・ 260 00:24:31,128 --> 00:24:35,066 もっと しばしば 訪ねることができるのに」って・ 261 00:24:35,066 --> 00:24:40,071 そう歌ってらっしゃるのよ いいお歌でしょう? 262 00:24:40,071 --> 00:24:45,076 あの方の私への愛情 263 00:24:45,076 --> 00:24:51,082 やんわりお伝えになって 本当に心憎いばかり 264 00:24:51,082 --> 00:24:55,086 あの方のおそばに いつも いることができたら・ 265 00:24:55,086 --> 00:24:58,089 どんなに うれしいかしら 266 00:24:58,089 --> 00:25:02,093 (鏡女王)《妹が家も 継ぎて見ましを 大和なる・ 267 00:25:02,093 --> 00:25:06,093 大島の嶺に家もあらましを》 268 00:25:08,099 --> 00:25:28,119 ・~ 269 00:25:28,119 --> 00:25:36,060 ・~ 270 00:25:36,060 --> 00:25:38,062 額田か 271 00:25:38,062 --> 00:25:48,072 ・~ 272 00:25:48,072 --> 00:25:50,074 こちらへ来ぬか? 273 00:25:50,074 --> 00:25:52,076 待て 274 00:25:52,076 --> 00:26:00,084 ・~ 275 00:26:00,084 --> 00:26:04,088 水仙が あまりに 見事に咲き誇っているので・ 276 00:26:04,088 --> 00:26:08,092 つい心奪われてしもうてな 277 00:26:08,092 --> 00:26:12,096 そなたも好きか? はい 278 00:26:12,096 --> 00:26:17,101 ・~ 279 00:26:17,101 --> 00:26:19,103 まあ もったいのうございます 280 00:26:19,103 --> 00:26:22,106 日嗣の御子さまから このような… 281 00:26:22,106 --> 00:26:25,109 そなたも だいぶ見とれていたようだから 282 00:26:25,109 --> 00:26:32,049 私? いえ 私は 水仙に見とれていたのでは… 283 00:26:32,049 --> 00:26:35,052 では 何を見ていた? 284 00:26:35,052 --> 00:26:41,058 恐れながら 皇子さまを拝見しておりました 285 00:26:41,058 --> 00:26:53,070 ・~ 286 00:26:53,070 --> 00:26:59,076 余を見ていたと言った 余の何を見ていた? 287 00:26:59,076 --> 00:27:03,080 ご心労のことが いろいろ多いのではないかと・ 288 00:27:03,080 --> 00:27:10,087 差し出がましく案じながら お顔を拝見しておりました 289 00:27:10,087 --> 00:27:16,087 そうか そのように見えたか 290 00:27:19,096 --> 00:27:24,096 ならば 額田 余のため神に祈ってくれ 291 00:27:26,103 --> 00:27:32,042 神の声を聞き 余の政に 誤りがなきよう道を示してくれ 292 00:27:32,042 --> 00:27:35,045 お信じになりますか? 神の声を 293 00:27:35,045 --> 00:27:38,048 信じる 294 00:27:38,048 --> 00:27:43,053 そなたの心に宿る神ならば なおのこと 295 00:27:43,053 --> 00:27:47,057 私も ここ数日 祈り続けております 296 00:27:47,057 --> 00:27:50,060 世間では 蘇我石川麻呂右大臣の事件で・ 297 00:27:50,060 --> 00:27:53,063 種々 取り沙汰されておりますけれど・ 298 00:27:53,063 --> 00:27:58,063 そのことで 神の声を聞きたいと思い… 299 00:28:00,070 --> 00:28:04,074 それで 神の声は何と? 300 00:28:04,074 --> 00:28:08,078 皇子さまの政は 更につつがなく・ 301 00:28:08,078 --> 00:28:16,086 天皇に 天も人も相応じて 難波の都は いや栄えましょうと 302 00:28:16,086 --> 00:28:22,092 「難波の都は いや栄える」と? 神は そう言ったか 303 00:28:22,092 --> 00:28:24,094 はい 304 00:28:24,094 --> 00:28:31,035 政は正しい道に向かっている この都に暗い影は差していないと 305 00:28:31,035 --> 00:28:37,041 そうか… そのような神託がな 306 00:28:37,041 --> 00:28:42,046 私も そのご神託を聞き うれしゅうございました 307 00:28:42,046 --> 00:28:46,050 額田 これからも頼むぞ 308 00:28:46,050 --> 00:28:49,053 余のために 大いに祈ってくれ 309 00:28:49,053 --> 00:28:53,053 そなたの霊力が頼もしい 310 00:28:56,060 --> 00:28:59,063 今すぐとは言わん 311 00:28:59,063 --> 00:29:04,068 1年待つ いや 2年待ってもいい 312 00:29:04,068 --> 00:29:06,070 余の召しを受けぬか? 313 00:29:06,070 --> 00:29:10,070 めっそうもないことを 私は神に仕える身でございます 314 00:29:12,076 --> 00:29:16,080 そなたのような女を 余のものにできれば・ 315 00:29:16,080 --> 00:29:18,082 神の味方を得たと同じこと 316 00:29:18,082 --> 00:29:22,086 余の政に誤りがなくなる 317 00:29:22,086 --> 00:29:28,086 額田 このこと よ~く心に留めておいてくれ 318 00:29:30,094 --> 00:29:32,029 失礼いたします 319 00:29:32,029 --> 00:29:39,029 ・~ 320 00:29:42,039 --> 00:29:49,046 <その年の3月 穴戸 現在の山口県の国司から・ 321 00:29:49,046 --> 00:29:53,050 白い雉が献上され それを瑞祥として・ 322 00:29:53,050 --> 00:30:00,057 白い雉 すなわち 白雉の儀式が厳かに行われた> 323 00:30:00,057 --> 00:30:04,061 <中大兄 鎌足の目的は・ 324 00:30:04,061 --> 00:30:07,064 この仰々しい 祝賀の儀式を借りて・ 325 00:30:07,064 --> 00:30:10,067 帝の力をよりはっきり・ 326 00:30:10,067 --> 00:30:15,072 形の上に示そうと たくらんだのであった> 327 00:30:15,072 --> 00:30:21,072 <そして このときより 年号も白雉と改められた> 328 00:30:23,080 --> 00:30:25,080 (皇極帝)疲れたのであろう 329 00:30:30,087 --> 00:30:34,087 (皇極帝) おお おお かわいい顔をして 330 00:30:40,030 --> 00:30:45,035 母上 母上もいらっしゃれば? 331 00:30:45,035 --> 00:30:49,039 女たちは皆 白い雉を 見に行っておりまするぞ 332 00:30:49,039 --> 00:30:52,042 奇瑞の兆しであるとか 333 00:30:52,042 --> 00:30:57,047 フッ… なにが奇瑞の兆しなものか 334 00:30:57,047 --> 00:31:00,050 白い雉が めでたい兆しなら・ 335 00:31:00,050 --> 00:31:03,053 この子が ひ弱に生まれたりは しないだろうよ 336 00:31:03,053 --> 00:31:08,058 母上 かわいそうに… のう? 337 00:31:08,058 --> 00:31:11,061 父親の業を そなた 338 00:31:11,061 --> 00:31:17,061 この小さな体一身に背負って 生まれたのだねえ 339 00:31:21,071 --> 00:31:26,076 入鹿を殺し 古人大兄皇子を殺し・ 340 00:31:26,076 --> 00:31:32,082 そして 己の后である遠智娘の父 石川麻呂まで… 341 00:31:32,082 --> 00:31:35,085 そなたの父はのぅ 342 00:31:35,085 --> 00:31:38,088 そなたのおじいさままで 殺してしまったのだよ 343 00:31:38,088 --> 00:31:43,088 母上 もう そのくらいで 勘弁してください 344 00:31:45,095 --> 00:31:47,095 フフフッ… 345 00:31:49,099 --> 00:31:52,102 「勘弁してくれ」? 346 00:31:52,102 --> 00:31:57,107 私が許しても この子が許しはしまいよ 347 00:31:57,107 --> 00:32:00,110 遠智娘は悲嘆のあまり・ 348 00:32:00,110 --> 00:32:04,114 出産と同時に死んでしまったのも そなたのせい 349 00:32:04,114 --> 00:32:09,119 そなた この子から 母親まで奪ってしまったのだよ 350 00:32:09,119 --> 00:32:12,122 なんという ひどいことを… 351 00:32:12,122 --> 00:32:15,125 それを 「白い雉が出た めでたい めでたい」と・ 352 00:32:15,125 --> 00:32:20,130 大仰に騒ぎ立て もったいぶった儀式なぞを行わせ 353 00:32:20,130 --> 00:32:24,134 フッ… 片腹痛いとは このことじゃ 354 00:32:24,134 --> 00:32:28,138 母上 いくら母上だからといって・ 355 00:32:28,138 --> 00:32:31,074 言っていいことと 悪いことがあります 356 00:32:31,074 --> 00:32:34,077 少し口を慎んでいただきたい 357 00:32:34,077 --> 00:32:40,083 私はね これでも口を慎んでいるんだよ 358 00:32:40,083 --> 00:32:45,088 私の胸の中には・ 359 00:32:45,088 --> 00:32:49,092 私だけが知っている秘密が あるんだ 360 00:32:49,092 --> 00:32:51,094 (ため息) 361 00:32:51,094 --> 00:32:57,100 本当に 誰かにしゃべってしまえたら・ 362 00:32:57,100 --> 00:33:01,104 どんなに せいせいするだろうと思うけれど 363 00:33:01,104 --> 00:33:05,108 しゃべれないんだよ 364 00:33:05,108 --> 00:33:07,108 何ですか? それは 365 00:33:10,113 --> 00:33:15,118 恐ろしいことだよ 366 00:33:15,118 --> 00:33:18,121 恐ろしくって ばち当たりなことだから・ 367 00:33:18,121 --> 00:33:23,126 口にするだけでも 神の怒りに触れるかもしれん 368 00:33:23,126 --> 00:33:29,126 それほど恐ろしいことなら 母上 二度と口に出されぬがよい 369 00:33:31,068 --> 00:33:35,072 フフッ… 370 00:33:35,072 --> 00:33:40,077 でも 神さまは どんな罰をお下しになるだろうね 371 00:33:40,077 --> 00:33:46,083 いいえ もう罰が下っているんだよ 372 00:33:46,083 --> 00:33:52,089 あの子が なえ衰えているのも その神さまの天罰なのだよ 373 00:33:52,089 --> 00:33:56,093 かわいそう 374 00:33:56,093 --> 00:34:01,098 この子は汚らわしい父親の… 375 00:34:01,098 --> 00:34:04,101 お黙りなさい 母上! 父親の罪まで背負って… 376 00:34:04,101 --> 00:34:09,101 母上 二度と口にされてはいけません 377 00:34:13,110 --> 00:34:17,114 そなたは 私から 入鹿を奪ってしまったけれど・ 378 00:34:17,114 --> 00:34:20,117 そなたたちに比べれば・ 379 00:34:20,117 --> 00:34:22,119 私が入鹿と むつみ合っていたことなど・ 380 00:34:22,119 --> 00:34:26,123 どれほどの 科があるっていうんだい 381 00:34:26,123 --> 00:34:28,125 年こそ隔たっていたけれど・ 382 00:34:28,125 --> 00:34:33,063 入鹿と私は 血のつながった きょうだいなどではない 383 00:34:33,063 --> 00:34:35,065 いとこですらないんだからね! 384 00:34:35,065 --> 00:34:41,071 母上… アア… 汚らわしい 恐ろしい! 385 00:34:41,071 --> 00:34:44,074 汚らわしい! 386 00:34:44,074 --> 00:34:46,074 母上… 387 00:34:48,078 --> 00:34:50,078 間人? 388 00:34:53,083 --> 00:34:56,086 間人だね? 389 00:34:56,086 --> 00:35:02,092 そなた 兄に会いたくって また やって来たのか 390 00:35:02,092 --> 00:35:05,095 (皇極帝) 間人 ここへ来ないでおくれ! 391 00:35:05,095 --> 00:35:09,099 兄とまぐわうのなら どこへでも お行き! 392 00:35:09,099 --> 00:35:13,099 お帰り! お帰り 間人! 母上! 393 00:35:15,105 --> 00:35:18,108 額田! 394 00:35:18,108 --> 00:35:20,108 額田… 395 00:35:27,117 --> 00:35:31,054 <白雉2年12月31日> 396 00:35:31,054 --> 00:35:36,059 <造営中の難波宮の 無事建立を祈願して・ 397 00:35:36,059 --> 00:35:43,059 2100余の僧を集め 地鎮の式典が厳かに営まれた> 398 00:35:48,071 --> 00:35:50,073 壮観だな 399 00:35:50,073 --> 00:35:56,079 まるで難波の海まで この光の帯が続いているようだ 400 00:35:56,079 --> 00:35:59,082 (男依)やがて ここに 新しい宮殿が完成すれば・ 401 00:35:59,082 --> 00:36:03,086 きっと 海を圧するほどの 豪壮なものが出来上がりましょう 402 00:36:03,086 --> 00:36:05,088 うん 403 00:36:05,088 --> 00:36:07,090 しかし 大勢の人だ 404 00:36:07,090 --> 00:36:11,090 宮中の人間が みんな ここへ 出払ってきたんじゃないのか? 405 00:36:52,069 --> 00:36:55,072 大海人 あっ 兄上 406 00:36:55,072 --> 00:37:00,077 そなた あの女に それほど惹かれているのか 407 00:37:00,077 --> 00:37:03,080 不思議な女です まるで俺をからかっているような 408 00:37:03,080 --> 00:37:08,085 よくよく惚れ込んだものだな いやぁ… 409 00:37:08,085 --> 00:37:11,088 近ごろは あの女のことが妙に… 410 00:37:11,088 --> 00:37:13,090 困ったものだ 411 00:37:13,090 --> 00:37:17,094 俺の片腕の そなたが 恋に悩んで 何も手につかぬとはな 412 00:37:17,094 --> 00:37:20,097 大海人 そなたには まだ・ 413 00:37:20,097 --> 00:37:24,097 これから やってもらわねば ならんことが山ほどあるぞ 414 00:37:30,073 --> 00:37:50,093 ・~ 415 00:37:50,093 --> 00:37:54,097 ・~ 416 00:37:54,097 --> 00:37:57,100 こんな所で 観梅の宴を? 417 00:37:57,100 --> 00:38:00,103 (男依) もうまもなくで梅があります 418 00:38:00,103 --> 00:38:05,103 ・~ 419 00:38:14,117 --> 00:38:17,120 額田 美しいぞ 420 00:38:17,120 --> 00:38:20,123 梅は どこに咲いているのでしょう? 421 00:38:20,123 --> 00:38:22,125 ほかの方々は どちらに? 422 00:38:22,125 --> 00:38:26,129 額田 俺の気持ちは分かってるんだろう 423 00:38:26,129 --> 00:38:29,065 その上で 招きに応じてくれたんだろう? 424 00:38:29,065 --> 00:38:32,068 だからこそ そのように美しく装って… 425 00:38:32,068 --> 00:38:35,071 私は 梅の花の下に立つために 装ったのです 426 00:38:35,071 --> 00:38:38,074 皇子さまのために 装ったのではありません 427 00:38:38,074 --> 00:38:41,077 さあ 帰りましょう おい 額田 428 00:38:41,077 --> 00:38:45,081 梅がなければ ここには用はございませんから 429 00:38:45,081 --> 00:38:47,083 失礼いたします 430 00:38:47,083 --> 00:38:50,086 アッ… 何なさるの 俺と一緒に来るんだ 431 00:38:50,086 --> 00:38:52,088 やめてください 432 00:38:52,088 --> 00:38:54,088 (たたく音) アアッ! 433 00:39:00,096 --> 00:39:02,096 ハアッ! 434 00:39:05,101 --> 00:39:07,103 ハアッ! アアッ! 435 00:39:07,103 --> 00:39:25,121 ・~ 436 00:39:25,121 --> 00:39:27,123 ハイ! 437 00:39:27,123 --> 00:39:41,123 ・~ 438 00:39:54,084 --> 00:39:56,084 そなたは俺のものだ 439 00:40:00,090 --> 00:40:02,090 あっ… 440 00:40:07,097 --> 00:40:11,101 俺のものだ 俺だけの女だ! 441 00:40:11,101 --> 00:40:15,101 アア… 梅の花が… 442 00:40:19,109 --> 00:40:25,115 この梅の香り この香りが… 443 00:40:25,115 --> 00:40:28,051 この梅の香り… 444 00:40:28,051 --> 00:40:32,055 この梅の香り… 445 00:40:32,055 --> 00:40:34,057 アア… 446 00:40:34,057 --> 00:40:42,057 ・~ 447 00:40:48,071 --> 00:40:51,074 <朝廷は 遣唐船の派遣を進めていたが・ 448 00:40:51,074 --> 00:40:54,077 いよいよ出発を決定した> 449 00:40:54,077 --> 00:41:03,086 ・~ 450 00:41:03,086 --> 00:41:06,089 <出発を前にして 遣唐船では・ 451 00:41:06,089 --> 00:41:12,089 連日のように航海の無事を祈る 祈祷が行われていた> 452 00:41:14,097 --> 00:41:17,100 (真奈手古)残念です 本当なら・ 453 00:41:17,100 --> 00:41:21,100 額田さまが出港のための祈祷を するはずでしたでしょうに 454 00:41:26,109 --> 00:41:28,111 (女官)巫女のくせして… 455 00:41:28,111 --> 00:41:31,111 (女官) 誰のお子か 分からぬそうですよ 456 00:41:43,126 --> 00:41:45,128 大きい船だこと 457 00:41:45,128 --> 00:41:49,132 学問僧や学生 120人も乗っていくそうよ 458 00:41:49,132 --> 00:41:52,135 ねえ 額田 459 00:41:52,135 --> 00:41:57,140 あなたも これで ほっとしたでしょう 460 00:41:57,140 --> 00:42:00,143 大海人皇子さまのお子を 身ごもるなんて・ 461 00:42:00,143 --> 00:42:03,146 本当に羨ましいかぎり 462 00:42:03,146 --> 00:42:07,150 日嗣の御子さまが 帝の位に お就きになれば・ 463 00:42:07,150 --> 00:42:12,155 間違いなく 大海人皇子さまが次の王位継承者 464 00:42:12,155 --> 00:42:16,159 もし あなたの産む子が皇子であれば・ 465 00:42:16,159 --> 00:42:19,162 ゆくゆくは 帝になるかもしれないのよ 466 00:42:19,162 --> 00:42:21,164 そうかしら? 467 00:42:21,164 --> 00:42:25,168 そうに決まってるじゃないの 468 00:42:25,168 --> 00:42:27,170 だから あなたも・ 469 00:42:27,170 --> 00:42:31,107 大っぴらに おなかの子供の 父の名を明かさなければ 470 00:42:31,107 --> 00:42:37,113 でも そんなことしたら 私 あの方の后になってしまうわ 471 00:42:37,113 --> 00:42:41,117 それが なぜ いけないの? 472 00:42:41,117 --> 00:42:48,124 あの方の后となって 女としての幸せをつかむのです 473 00:42:48,124 --> 00:42:51,127 あなただって あの方の愛を受け入れて・ 474 00:42:51,127 --> 00:42:55,131 本当に良かったと 思ってるのでしょう? 475 00:42:55,131 --> 00:42:59,135 宮中でも 二人といないほど たくましい益荒男でいられる・ 476 00:42:59,135 --> 00:43:02,138 あの方の腕に抱かれて・ 477 00:43:02,138 --> 00:43:09,145 あなたも体の芯から 女としての喜びを感じたはず 478 00:43:09,145 --> 00:43:14,150 だからこそ 身ごもったのじゃない? 479 00:43:14,150 --> 00:43:21,157 だったら何を迷うの? 女としての幸せをつかむのよ 480 00:43:21,157 --> 00:43:26,162 ・~ 481 00:43:26,162 --> 00:43:28,162 (矢を射る音) 482 00:43:30,099 --> 00:43:36,105 (太鼓の音) (読経) 483 00:43:36,105 --> 00:43:41,110 (歓声) 484 00:43:41,110 --> 00:43:59,128 ・~ 485 00:43:59,128 --> 00:44:06,135 なんと きらびやかな なんと立派な… 486 00:44:06,135 --> 00:44:09,138 唐へ着くのは どれぐらい かかるんでしょう? 487 00:44:09,138 --> 00:44:12,138 さぞや 長い旅なんでしょうねえ 488 00:44:15,144 --> 00:44:19,148 あら あなた どうかしたの? 489 00:44:19,148 --> 00:44:22,151 アア… 490 00:44:22,151 --> 00:44:27,156 どうかしたの? あなた ちょっと しっかりしてよ! 491 00:44:27,156 --> 00:44:31,094 誰か! 誰か! 誰か来て! 492 00:44:31,094 --> 00:44:35,098 アア… (鏡女王)ちょっと… 大丈夫? 493 00:44:35,098 --> 00:44:39,102 ねえ ねえ 痛みは激しいの? 494 00:44:39,102 --> 00:44:44,107 違うの… 生まれるんじゃ? 495 00:44:44,107 --> 00:44:48,111 神の声が聞こえたのです 496 00:44:48,111 --> 00:44:52,115 神の声が? ハァハァ… 497 00:44:52,115 --> 00:45:00,115 船を見ていると いきなり 激しい光が目の先にひらめいて… 498 00:45:03,126 --> 00:45:07,126 神の声が… あなた… 499 00:45:10,133 --> 00:45:19,133 でも こんな体に宿る神なんて こんな体に… 500 00:45:22,145 --> 00:45:25,145 何とおっしゃったの? 神の声は 501 00:45:30,086 --> 00:45:33,089 間違っているんだわ 502 00:45:33,089 --> 00:45:35,089 神の声は何と? 503 00:45:37,093 --> 00:45:43,099 ・~ 504 00:45:43,099 --> 00:45:51,099 あの遣唐船は 海のもくずとなって 消えてしまうだろう 505 00:45:54,110 --> 00:45:57,113 嵐に遭い 沈没して・ 506 00:45:57,113 --> 00:46:03,119 乗っている者の命は 皆 助からないだろうって 507 00:46:03,119 --> 00:46:05,121 額田… 508 00:46:05,121 --> 00:46:16,132 ・~ 509 00:46:16,132 --> 00:46:27,143 ・~ 510 00:46:27,143 --> 00:46:31,143 生き残った者 僅か5名か 511 00:46:39,088 --> 00:46:45,094 やはり 沈んだのですね やはり… 512 00:46:45,094 --> 00:46:48,097 どうした? 額田 513 00:46:48,097 --> 00:46:52,101 そなたまでが遣唐船のことを 心配しなくてもいいのだ 514 00:46:52,101 --> 00:46:55,104 腹の子に障るぞ 515 00:46:55,104 --> 00:46:59,108 フフッ… もうそろそろだな 516 00:46:59,108 --> 00:47:02,111 丈夫な子を産んでくれよ 額田 517 00:47:02,111 --> 00:47:06,115 かなうことなら 皇子をな 518 00:47:06,115 --> 00:47:10,119 まあ いずれにしても俺の子だ 元気な子供が生まれるだろう 519 00:47:10,119 --> 00:47:12,119 なっ? 額田 520 00:47:16,125 --> 00:47:22,131 皇子さま このお子は 皇子さまの御子ではございません 521 00:47:22,131 --> 00:47:25,134 なに? 522 00:47:25,134 --> 00:47:29,072 私の体には 皇子さまのお子ではなく・ 523 00:47:29,072 --> 00:47:32,075 あのときの梅の花の精霊が 宿っているのです 524 00:47:32,075 --> 00:47:35,078 梅の花の精霊だと? 525 00:47:35,078 --> 00:47:40,083 ハハハハッ… また そのような埒もないことを 526 00:47:40,083 --> 00:47:44,087 誰が信じるものか 俺の… 俺の子だ 527 00:47:44,087 --> 00:47:48,091 いいえ 私は あのとき 皇子さまに抱かれたのではなく・ 528 00:47:48,091 --> 00:47:52,095 梅の花の霊に 優しく包まれたのです 529 00:47:52,095 --> 00:47:58,101 あのむせるような梅の香りが 私の体の芯まで… 530 00:47:58,101 --> 00:48:00,103 あのときだわ 531 00:48:00,103 --> 00:48:07,110 あのとき 梅の花の精霊が私の体の中に 532 00:48:07,110 --> 00:48:11,114 (笑い声) 533 00:48:11,114 --> 00:48:13,116 だから俺の子だ 534 00:48:13,116 --> 00:48:17,120 あのときも それからのちも そなたは幾度となく俺の腕の中に 535 00:48:17,120 --> 00:48:23,126 いいえ 私は梅の花の精霊を宿したのです 536 00:48:23,126 --> 00:48:25,128 ですから神の子です 537 00:48:25,128 --> 00:48:29,065 馬鹿な… 「神 神」と言うな 538 00:48:29,065 --> 00:48:31,067 そなたは ただの女になったのだ 539 00:48:31,067 --> 00:48:35,067 俺の女になって俺の子を産むのだ 540 00:48:41,077 --> 00:48:43,077 額田 541 00:48:45,081 --> 00:48:51,087 神の子です 皇子さまのお子ではありません 542 00:48:51,087 --> 00:48:56,092 ・~ 543 00:48:56,092 --> 00:49:05,101 <その年の秋 産後の衰えも癒えた 額田女王は里の産屋を出た> 544 00:49:05,101 --> 00:49:08,104 <生まれたのは女の子で・ 545 00:49:08,104 --> 00:49:11,107 十市皇女と名付けられた> 546 00:49:11,107 --> 00:49:31,060 ・~ 547 00:49:31,060 --> 00:49:34,063 もういい お行きなさい 548 00:49:34,063 --> 00:49:40,069 ・~ 549 00:49:40,069 --> 00:49:46,075 <だが 十市皇女は 大海人の 女官のもとに引き取られ・ 550 00:49:46,075 --> 00:49:49,078 養育されることとなった> 551 00:49:49,078 --> 00:49:55,084 <額田は 大海人の后としての 立場を捨てると同時に・ 552 00:49:55,084 --> 00:50:02,091 母として 我が子を養育することも 自ら断念せざるをえなかった> 553 00:50:02,091 --> 00:50:08,091 ・~ 554 00:50:10,099 --> 00:50:12,101 (孝徳帝)そなたたちは正気か? 555 00:50:12,101 --> 00:50:16,105 遣唐船が難船したという知らせが 入って まもないというのに 556 00:50:16,105 --> 00:50:21,110 性懲りもなく また一艘を仕立てていくなどと 557 00:50:21,110 --> 00:50:26,048 どこをたたけば そのような 無謀な意見が飛び出すのだ 558 00:50:26,048 --> 00:50:30,052 余は あきれ果てて 開いた口が塞がらん 559 00:50:30,052 --> 00:50:34,056 この国の前途を背負う 100人以上の有為な人材が・ 560 00:50:34,056 --> 00:50:37,059 海のもくずと消えたというのに 561 00:50:37,059 --> 00:50:41,063 また そのような愚挙を 重ねようというのか 562 00:50:41,063 --> 00:50:45,067 たとえ どのような犠牲を払おうとも・ 563 00:50:45,067 --> 00:50:48,070 もう一度 派遣すべきだと 564 00:50:48,070 --> 00:50:52,074 我が国の政をより新しきものに 作り変えていくためには・ 565 00:50:52,074 --> 00:50:55,077 唐の国に人を送る必要があります 566 00:50:55,077 --> 00:50:59,081 なぜ そのように新しいことばかり 追いかけるのだ? 567 00:50:59,081 --> 00:51:01,083 そんな必要は どこにあるのだ? 568 00:51:01,083 --> 00:51:04,086 それよりも 改新の勅を・ 569 00:51:04,086 --> 00:51:10,092 全国 津々浦々に徹底させることが 急務じゃないのか? 570 00:51:10,092 --> 00:51:14,096 海の向こうの情勢には ただならぬものがあります 571 00:51:14,096 --> 00:51:19,101 我が国が これまでのように 半島三国を抑えていくためには・ 572 00:51:19,101 --> 00:51:22,104 唐の様子を探らねばなりません 573 00:51:22,104 --> 00:51:25,107 だからこそ 遣唐船を派遣したのではないか 574 00:51:25,107 --> 00:51:28,110 資力や人材は無尽蔵ではないのだ 575 00:51:28,110 --> 00:51:34,116 民は泣いているぞ 夫や息子を失って… 576 00:51:34,116 --> 00:51:37,119 そなたには あの嘆きの声が聞こえないのか! 577 00:51:37,119 --> 00:51:40,122 この度の派遣には・ 578 00:51:40,122 --> 00:51:43,125 今までのように 若い学生たちばかりではなく・ 579 00:51:43,125 --> 00:51:51,133 例えば 高向史玄理のような 博識の人物をも選ぶべきかと 580 00:51:51,133 --> 00:51:56,138 余は許さん いいか? この上 遣唐船の派遣なぞ・ 581 00:51:56,138 --> 00:51:58,138 断じて許さんぞ! 582 00:52:04,146 --> 00:52:09,151 このままでは 完全に 帝に押し切られてしまうぞ 583 00:52:09,151 --> 00:52:16,158 ここで俺たちの主張を 何が何でも貫き通しておかねば・ 584 00:52:16,158 --> 00:52:20,162 これから先の政がやりにくくなる 585 00:52:20,162 --> 00:52:25,101 ・~ 586 00:52:25,101 --> 00:52:28,104 鎌足 はい 587 00:52:28,104 --> 00:52:32,108 何か よい思案はないか? 588 00:52:32,108 --> 00:52:37,113 そうですね ひとつだけ あるにはありますが… 589 00:52:37,113 --> 00:52:42,113 何だ? だいぶ荒療治になります 590 00:52:44,120 --> 00:52:46,122 言ってみろ 591 00:52:46,122 --> 00:52:51,127 ・~ 592 00:52:51,127 --> 00:52:57,133 都を また大和に戻すのです 593 00:52:57,133 --> 00:53:03,139 ・~ 594 00:53:03,139 --> 00:53:08,144 遷都をしろというのか そうです 595 00:53:08,144 --> 00:53:13,149 それが今 最高のことです 596 00:53:13,149 --> 00:53:18,154 しかし それは遣唐使を送るよりも もっと大騒ぎになるな 597 00:53:18,154 --> 00:53:24,154 真っ向から反対を受ける 廟堂は真っ二つに割れてしまうぞ 598 00:53:27,096 --> 00:53:32,101 帝を この難波に 置き去りにするしか・ 599 00:53:32,101 --> 00:53:34,103 方法がありません 600 00:53:34,103 --> 00:53:43,112 ・~ 601 00:53:43,112 --> 00:53:49,118 都を難波に移して 既に8年になります 602 00:53:49,118 --> 00:53:53,122 宮殿も官衙も整いました 603 00:53:53,122 --> 00:53:57,126 帝は 殊のほか ここが 気に入っておられるようです 604 00:53:57,126 --> 00:54:02,131 ですから 真正面から 遷都のことを申し入れれば・ 605 00:54:02,131 --> 00:54:07,136 必ず反対されるでしょう 606 00:54:07,136 --> 00:54:10,139 それで? 607 00:54:10,139 --> 00:54:13,139 我々は出ていくのです 608 00:54:15,144 --> 00:54:17,146 帝は残ります 609 00:54:17,146 --> 00:54:22,146 フフフフッ… たったひとりきりで 610 00:54:26,088 --> 00:54:28,090 出ていきたくば どんどん出ていくがよい! 611 00:54:28,090 --> 00:54:30,092 余と太后がいるかぎり・ 612 00:54:30,092 --> 00:54:34,096 この難波は 都であることに変わりはない 613 00:54:34,096 --> 00:54:39,101 のう? 間人 614 00:54:39,101 --> 00:54:41,103 (有間皇子)でも 一体・ 615 00:54:41,103 --> 00:54:44,106 どういうつもりで いられるんでしょう 日嗣の御子は 616 00:54:44,106 --> 00:54:47,109 私は 政のことは よく分からないけど・ 617 00:54:47,109 --> 00:54:50,112 あまりにも無茶な気がいたします 618 00:54:50,112 --> 00:54:53,115 余には分かっている! 619 00:54:53,115 --> 00:54:56,118 あの者たちが 何をたくらんでいるのか 620 00:54:56,118 --> 00:55:00,122 余をここに置き去りにすることで 退位を迫っているのだ 621 00:55:00,122 --> 00:55:04,126 それじゃ 日嗣の御子は 都が大和に移れば・ 622 00:55:04,126 --> 00:55:06,128 ご自分が即位するつもりで? 623 00:55:06,128 --> 00:55:09,131 いや そんなことはできぬはず 624 00:55:09,131 --> 00:55:12,134 第一 余は退位などはしない 誰がするものか 625 00:55:12,134 --> 00:55:15,137 じゃ ここにお残りになる 父上のお立場は? 626 00:55:15,137 --> 00:55:17,139 よいではないか 627 00:55:17,139 --> 00:55:21,143 これからは そなたや間人 628 00:55:21,143 --> 00:55:24,146 そして 気に入りの者たちと 和やかに暮らすのも 629 00:55:24,146 --> 00:55:28,083 うるさい政の務めから解かれて・ 630 00:55:28,083 --> 00:55:32,087 日がな一日 歌を詠んで暮らすのも一興の 631 00:55:32,087 --> 00:55:35,087 のう? 間人 632 00:55:37,092 --> 00:55:42,097 間人 そなたのためには よいのかもしれぬ 633 00:55:42,097 --> 00:55:46,101 兄と離れていることが よいのかも 634 00:55:46,101 --> 00:55:51,106 考えてみれば これは天が与えたもうた慈悲 635 00:55:51,106 --> 00:55:54,109 形ばかりの帝と太后ではなく・ 636 00:55:54,109 --> 00:56:00,115 これからは 心からの 慈しみ合いを示すときが来たのだ 637 00:56:00,115 --> 00:56:03,118 余は そなたの笑顔が見たい 638 00:56:03,118 --> 00:56:06,118 晴れやかな笑顔を見て暮らしたい 639 00:56:08,123 --> 00:56:11,126 いいか? 間人 640 00:56:11,126 --> 00:56:17,132 そなたも この難波にいる以上 余に背いては生きていけぬはず 641 00:56:17,132 --> 00:56:22,137 お互いに これまでのことは 水に流そう 642 00:56:22,137 --> 00:56:27,076 のう? 水に流そう 643 00:56:27,076 --> 00:56:32,081 (孝徳帝)これからは そなたと むつまじゅう 644 00:56:32,081 --> 00:56:36,081 そうだろう? そうなってくれるだろう? 645 00:56:38,087 --> 00:56:40,089 (間人皇女)できることなら 私も 646 00:56:40,089 --> 00:56:45,094 誠か? それなら そなた 身も心も余の前に投げ出して… 647 00:56:45,094 --> 00:56:47,096 誠です 648 00:56:47,096 --> 00:56:51,100 お優しい大王のお情けに どれほど すがりたかったことか 649 00:56:51,100 --> 00:56:53,102 間人… 650 00:56:53,102 --> 00:57:02,111 ・~ 651 00:57:02,111 --> 00:57:05,111 湯あみの時間ですので 失礼します 652 00:57:08,117 --> 00:57:10,119 (有間皇子)母上 653 00:57:10,119 --> 00:57:22,131 ・~ 654 00:57:22,131 --> 00:57:27,069 父上! 母上は父上を捨てて 出ていくおつもりなんだ! 655 00:57:27,069 --> 00:57:29,071 間人が? (有間皇子)侍女たちが・ 656 00:57:29,071 --> 00:57:32,071 母上の荷物を まとめているのですよ! 657 00:57:34,076 --> 00:57:37,076 間人! 間人ーっ! 658 00:57:40,082 --> 00:57:45,087 ・~ 659 00:57:45,087 --> 00:57:47,089 <11月の終わり> 660 00:57:47,089 --> 00:57:50,092 <政府機関は いくつもの集団となって・ 661 00:57:50,092 --> 00:57:54,096 難波の都を離れ 大和へ向かった> 662 00:57:54,096 --> 00:58:04,106 ・~ 663 00:58:04,106 --> 00:58:08,110 新玉の春を迎えたというのに この寂しさ 664 00:58:08,110 --> 00:58:11,113 (有間皇子) 飛鳥へ去った人たちの誰ひとり・ 665 00:58:11,113 --> 00:58:13,115 父上のもとに・ 666 00:58:13,115 --> 00:58:15,117 朝賀にやって来ようとも しないのですから 667 00:58:15,117 --> 00:58:17,119 そなただけです 668 00:58:17,119 --> 00:58:21,123 最後まで 父上を見捨てずに 残っていてくれたのは 669 00:58:21,123 --> 00:58:26,061 私ごときが居残っておりましても 何のお役にも立ちませんけれども 670 00:58:26,061 --> 00:58:28,063 そんなことはない 671 00:58:28,063 --> 00:58:32,067 今日の四方拝や歯固めの儀式が どうにか格好がついたのも・ 672 00:58:32,067 --> 00:58:37,072 皆 そなたが 取りしきってくれたおかげです 673 00:58:37,072 --> 00:58:43,078 それに比べ 間人のお后は 私の義理の母上とはいいながら・ 674 00:58:43,078 --> 00:58:46,081 あの人のなされようは… おやめなさい 皇子さま 675 00:58:46,081 --> 00:58:53,088 でも 父上のお嘆きと ご落胆の様子を見ていると 私は… 676 00:58:53,088 --> 00:58:55,090 有間皇子さま 677 00:58:55,090 --> 00:58:58,093 あなたは 小さいころから ご英邁でいらしたから・ 678 00:58:58,093 --> 00:59:03,098 こういうとき ほかに 心を使うすべをご存じでしょう 679 00:59:03,098 --> 00:59:06,101 いつでしたでしょうか 680 00:59:06,101 --> 00:59:11,106 皇子さまは ご自分の歌を 私に見せてくださいましたわね 681 00:59:11,106 --> 00:59:15,110 確か 大和の香具山を懐かしんで 詠まれた歌 682 00:59:15,110 --> 00:59:18,113 本当に巧みな詠みっぷりで いらっしゃられました 683 00:59:18,113 --> 00:59:20,113 額田… 684 00:59:23,051 --> 00:59:29,057 歌をお作りなさいませ 私も作ります 685 00:59:29,057 --> 00:59:33,061 お互いに歌を見せ合い 慰め合いましょう 686 00:59:33,061 --> 00:59:36,064 私 楽しみにしていたのですよ 687 00:59:36,064 --> 00:59:39,067 皇子さまと こうした慰めの時が持てるのを 688 00:59:39,067 --> 00:59:42,070 ですから 皇子さま 689 00:59:42,070 --> 00:59:47,075 できない できない 歌なんかできない! 690 00:59:47,075 --> 00:59:49,077 そんな気持ちになんか なりゃしない 691 00:59:49,077 --> 00:59:52,080 父上の悔しさを思ったら… 692 00:59:52,080 --> 00:59:59,087 いや 私も悔しい いや 悔しい以上におぞましい! 693 00:59:59,087 --> 01:00:03,091 皇子さま (泣き声) 694 01:00:03,091 --> 01:00:06,094 皇子さま 695 01:00:06,094 --> 01:00:11,099 ♪(琵琶の演奏) 696 01:00:11,099 --> 01:00:21,099 ♪~ 697 01:00:25,047 --> 01:00:27,047 誰です? 698 01:00:30,052 --> 01:00:33,052 まあ… 皇子さま 699 01:00:35,057 --> 01:00:37,057 会いたかった 700 01:00:43,065 --> 01:00:46,065 会いたかった 皇子さま 701 01:00:49,071 --> 01:00:52,074 そなたのことばかり 考えていたのだ 702 01:00:52,074 --> 01:00:54,074 皇子さま… 703 01:00:57,079 --> 01:00:59,079 額田… 704 01:01:01,083 --> 01:01:04,086 馬で飛んできたのだ 705 01:01:04,086 --> 01:01:06,088 寂しかったのだ 706 01:01:06,088 --> 01:01:10,088 俺と離れて そなたも… でも 私… 707 01:01:12,094 --> 01:01:18,100 そなたは 永遠に俺と離れられないはず 708 01:01:18,100 --> 01:01:22,104 いつまでも俺の女だ 皇子さま 709 01:01:22,104 --> 01:01:24,104 額田… 710 01:01:28,110 --> 01:01:32,114 皇子さま 額田 711 01:01:32,114 --> 01:01:34,114 皇子さま… 712 01:01:38,120 --> 01:01:41,123 アア… 713 01:01:41,123 --> 01:01:46,128 アア… 皇子さま 額田… 714 01:01:46,128 --> 01:01:53,135 ・~ 715 01:01:53,135 --> 01:01:58,140 (女官たちの悲鳴) 716 01:01:58,140 --> 01:02:01,143 (有間皇子)どうしたというのだ? 何の騒ぎだ? 717 01:02:01,143 --> 01:02:06,148 (騒ぎ声) 718 01:02:06,148 --> 01:02:08,150 ねずみ? 719 01:02:08,150 --> 01:02:19,161 ・~ 720 01:02:19,161 --> 01:02:29,104 ・~ 721 01:02:29,104 --> 01:02:34,109 もうおしまいだ! ねずみまでが我々を見捨てていく 722 01:02:34,109 --> 01:02:36,111 もうおしまいだ! 723 01:02:36,111 --> 01:02:42,111 ・~ 724 01:02:44,119 --> 01:02:52,119 <その年の夏ごろから 孝徳帝は 病の床に就くようになった> 725 01:03:01,136 --> 01:03:03,136 額田 726 01:03:21,156 --> 01:03:23,091 歌が おできになったのですね 727 01:03:23,091 --> 01:03:28,096 私の歌ではありません 父上の詠まれた歌です 728 01:03:28,096 --> 01:03:33,096 帝のお歌? 読んでください 729 01:03:37,105 --> 01:03:43,111 「鉗着け 吾が飼ふ駒は引き出せず・ 730 01:03:43,111 --> 01:03:48,116 吾が飼ふ駒を 人見つらむか」 731 01:03:48,116 --> 01:03:50,118 お分かりになるでしょう 732 01:03:50,118 --> 01:03:55,123 母上を 駒に例えて歌われたのです 733 01:03:55,123 --> 01:03:59,127 「馬屋の中に首をつないで 引き出すこともせず・ 734 01:03:59,127 --> 01:04:04,132 大切に飼っていた駒を あの人が奪っていった」と… 735 01:04:04,132 --> 01:04:07,135 「あの人」とは… 分かります ええ 736 01:04:07,135 --> 01:04:11,139 でも 父上の悔しさを思うと私も… 737 01:04:11,139 --> 01:04:15,143 おいたわしいこと 738 01:04:15,143 --> 01:04:19,147 天に並ぶ者のいない位に お就きになりながら・ 739 01:04:19,147 --> 01:04:22,084 このようなお歌を… 740 01:04:22,084 --> 01:04:28,090 (有間皇子の泣き声) 741 01:04:28,090 --> 01:04:35,097 《鉗着け》 742 01:04:35,097 --> 01:04:43,105 《吾が飼ふ駒は 引き出せず》 743 01:04:43,105 --> 01:04:46,108 <その年の10月> 744 01:04:46,108 --> 01:04:51,113 <孝徳帝は 深い憤りと悲しみのうちに・ 745 01:04:51,113 --> 01:04:55,117 59歳の生涯を閉じた> 746 01:04:55,117 --> 01:05:02,117 <ここに 難波の都は 名実ともに失われたのであった> 747 01:05:11,133 --> 01:05:13,135 <孝徳帝亡きあと・ 748 01:05:13,135 --> 01:05:17,139 日嗣の御子 中大兄は 意外にも即位せず・ 749 01:05:17,139 --> 01:05:22,077 先の皇極帝が 前例のない重祚を行い・ 750 01:05:22,077 --> 01:05:27,077 再び 帝の位に返り咲いて 斉明帝となった> 751 01:05:31,086 --> 01:05:35,090 <62歳のこの女帝は・ 752 01:05:35,090 --> 01:05:40,090 突然 憑かれたように 大土木工事を慣行した> 753 01:05:47,102 --> 01:05:51,106 (斉明帝)おお… 754 01:05:51,106 --> 01:05:53,108 赤兄 (赤兄)はい 755 01:05:53,108 --> 01:05:55,110 あそこは? (赤兄)はぁ? 756 01:05:55,110 --> 01:05:59,114 あのこんもりと茂った 木立の辺りだけは・ 757 01:05:59,114 --> 01:06:02,117 どうして工事が遅れておる? 758 01:06:02,117 --> 01:06:06,121 あの辺りは 木の根が土の中に… 759 01:06:06,121 --> 01:06:09,124 早くせぬか 760 01:06:09,124 --> 01:06:14,129 あそこさえ通れば 水を引けるではないか 761 01:06:14,129 --> 01:06:23,071 ああ… 早く船を浮かべて 石を運ばせるところが見たい 762 01:06:23,071 --> 01:06:25,073 ウフフフッ… 763 01:06:25,073 --> 01:06:30,078 この溝に 百艘も二百艘もの 船を浮かべれば・ 764 01:06:30,078 --> 01:06:35,083 さぞかし壮大な眺めであろう ハハハハッ… 765 01:06:35,083 --> 01:06:37,085 赤兄 (赤兄)はっ… 766 01:06:37,085 --> 01:06:39,087 早くするのじゃ (赤兄)はっ… 767 01:06:39,087 --> 01:06:43,091 早く早く! (赤兄)はい 768 01:06:43,091 --> 01:06:46,091 アハハハッ… 769 01:06:52,100 --> 01:06:54,102 ああ… うさぎも・ 770 01:06:54,102 --> 01:06:57,105 皇子さんに抱かれて うれしいんでしょうね 771 01:06:57,105 --> 01:07:00,108 皇子さんは 初めて うさぎを ご覧になったんでしょうかね 772 01:07:00,108 --> 01:07:03,111 ハハッ… 773 01:07:03,111 --> 01:07:05,113 (鎌足)おかえりなさいませ 774 01:07:05,113 --> 01:07:10,118 (有間皇子と建王のはしゃぎ声) 775 01:07:10,118 --> 01:07:15,123 おお… ご覧 鎌足 776 01:07:15,123 --> 01:07:19,127 あの2人の仲の良さ 777 01:07:19,127 --> 01:07:25,066 まるで兄弟のようじゃ ハハハハッ… 778 01:07:25,066 --> 01:07:31,072 有間が優しいから 建王が慕うのです 779 01:07:31,072 --> 01:07:37,078 父ともどもに 難波に 置き去りにされた ひどい仕打ちを 780 01:07:37,078 --> 01:07:40,081 あの子は忘れてはいまい 781 01:07:40,081 --> 01:07:45,086 中大兄のことを 恨まぬはずはないのに 782 01:07:45,086 --> 01:07:53,094 その息子の建王を あれ まあ あのように優しく面倒を見て 783 01:07:53,094 --> 01:08:00,101 ホホホッ… 本当に 心温まる眺めじゃ 784 01:08:00,101 --> 01:08:02,103 (有間皇子)ほら! 785 01:08:02,103 --> 01:08:05,103 ハハハハッ… ふぅ~! 786 01:08:11,112 --> 01:08:13,112 アア… 787 01:08:23,058 --> 01:08:27,058 オオ… 苦い 788 01:08:30,065 --> 01:08:33,068 (間人皇女)よく このようなものを お飲みになる 789 01:08:33,068 --> 01:08:36,071 (斉明帝)でも よく効くのだもの 790 01:08:36,071 --> 01:08:39,074 では 母上 よろしいですね? 791 01:08:39,074 --> 01:08:44,079 (斉明帝)アア… 苦いけれど 本当によく効く 792 01:08:44,079 --> 01:08:47,082 では 溝の工事は 一時 中断いたしますゆえ・ 793 01:08:47,082 --> 01:08:49,082 そのおつもりで 794 01:08:51,086 --> 01:08:53,086 (斉明帝)ちょっとお待ち 795 01:08:56,091 --> 01:09:01,096 どういうこと? 今 申し上げました 796 01:09:01,096 --> 01:09:07,102 (斉明帝)ハハッ… おかしな人だね 797 01:09:07,102 --> 01:09:11,106 石上の山から香具山にかけて・ 798 01:09:11,106 --> 01:09:15,110 長い溝を掘らせると言ったのは そなたなんだよ 799 01:09:15,110 --> 01:09:19,114 確かに そういう計画ではありました 800 01:09:19,114 --> 01:09:24,052 しかし この飛鳥に遷都して以来 大きな工事が相次いでおります 801 01:09:24,052 --> 01:09:27,055 民は疲弊しております 802 01:09:27,055 --> 01:09:31,059 田身嶺に天宮は ようやく完成したばかり 803 01:09:31,059 --> 01:09:35,063 岡本の新宮殿も建造中です 804 01:09:35,063 --> 01:09:38,066 何もかも いっときに敢行するのは 無理があります 805 01:09:38,066 --> 01:09:41,069 一部の豪族や連たちの間からも・ 806 01:09:41,069 --> 01:09:45,073 不満の声が上がっております ハハハハッ… 807 01:09:45,073 --> 01:09:50,078 豪族たちの反対は 初めから承知のこと 808 01:09:50,078 --> 01:09:53,081 内乱が起きてもいいように・ 809 01:09:53,081 --> 01:09:56,084 田身嶺に 天宮を作らせたではないか 810 01:09:56,084 --> 01:09:59,087 しかし 無用な混乱は 避けたほうがよろしい 811 01:09:59,087 --> 01:10:03,091 とにかく この際 あの溝の工事は 一時中断いたします 812 01:10:03,091 --> 01:10:05,093 なりませぬ! 813 01:10:05,093 --> 01:10:08,096 そのようなことは この私が許しません! 814 01:10:08,096 --> 01:10:14,102 母上 世間で あの溝のことを 何と呼んでいるか ご存じですか? 815 01:10:14,102 --> 01:10:18,106 戯れ心の溝と呼んでおりまする 816 01:10:18,106 --> 01:10:21,109 (斉明帝)戯れ… (間人皇女)ハハハハッ! 817 01:10:21,109 --> 01:10:24,045 (間人皇女の笑い声) 818 01:10:24,045 --> 01:10:27,048 何が おかしい! (間人皇女)戯れ心… 819 01:10:27,048 --> 01:10:31,052 この私が くるったとでもいうのか (間人皇女)戯れ心の溝… 820 01:10:31,052 --> 01:10:35,056 そなたたちは この母を くるったとでも思っているのか・ 821 01:10:35,056 --> 01:10:37,058 (間人皇女)いえ そのような… 822 01:10:37,058 --> 01:10:40,061 やめます! ばかばかしい 823 01:10:40,061 --> 01:10:45,066 なにも好きで 帝の位に就いてるんじゃないんだ 824 01:10:45,066 --> 01:10:50,071 そなたが面白そうに たくさんの工事の計画を話すから 825 01:10:50,071 --> 01:10:53,074 それを今になって 工事を中止にするなんて… 826 01:10:53,074 --> 01:10:57,078 (間人皇女)アハハハッ… (斉明帝)アアッ! 827 01:10:57,078 --> 01:11:02,083 やめます! ああ 今すぐ すぐ位から下りてもいい! 828 01:11:02,083 --> 01:11:06,083 母上 政は遊びではありませんぞ 829 01:11:08,089 --> 01:11:12,089 そなたが位に就けばいいんだ 830 01:11:15,096 --> 01:11:22,103 本当は… 位に就きたくって しかたがないんだろう? 831 01:11:22,103 --> 01:11:26,103 なぜ そうしないの? なぜ? 832 01:11:28,109 --> 01:11:31,112 分かっているんだよ 833 01:11:31,112 --> 01:11:36,117 帝になれば 太后を決めなければならない 834 01:11:36,117 --> 01:11:40,121 妹を 太后にするわけにはいかないから 835 01:11:40,121 --> 01:11:42,123 即位はしない (間人皇女)やめて お母さま 836 01:11:42,123 --> 01:11:44,125 そうだろう? 837 01:11:44,125 --> 01:11:47,128 フッ… 日嗣の御子の立場にいたほうが・ 838 01:11:47,128 --> 01:11:52,133 政務を執りやすいなどと言っても 私は ごまかされはしない 839 01:11:52,133 --> 01:11:56,133 原因は妹だ (間人皇女)もうやめて お母さま! 840 01:11:58,139 --> 01:12:03,144 ひどい… お母さまのおっしゃり方 ひどすぎます! 841 01:12:03,144 --> 01:12:05,146 何が酷いのさ? 842 01:12:05,146 --> 01:12:08,149 本当のことを 言っているだけじゃないか 843 01:12:08,149 --> 01:12:13,149 そなたが兄のそばから 離れればいいんだよ 844 01:12:16,157 --> 01:12:21,157 (泣き声) ひどい… ひどい! 845 01:12:32,106 --> 01:12:35,109 <その年の暮れも押し迫った深夜> 846 01:12:35,109 --> 01:12:42,109 <突然 新宮殿 後飛鳥岡本宮は 火炎に見舞われた> 847 01:12:48,122 --> 01:12:51,125 皇子さま (有間皇子)これで2度目だ 848 01:12:51,125 --> 01:12:55,129 去年 板蓋宮が焼け 今度は 出来上がったばかりの この宮殿 849 01:12:55,129 --> 01:12:57,131 きっと つけ火だろう つけ火? 850 01:12:57,131 --> 01:12:59,133 アアッ! 851 01:12:59,133 --> 01:13:01,135 民は恨んでいるのだ 852 01:13:01,135 --> 01:13:05,139 4万も5万もの 民を使っての あの大工事 853 01:13:05,139 --> 01:13:07,141 民は疲弊し果て 音を上げているのだ! 854 01:13:07,141 --> 01:13:09,143 皇子さま 巷には・ 855 01:13:09,143 --> 01:13:13,147 帝や日嗣の御子に対する 怨嗟の声が上がっているのです 856 01:13:13,147 --> 01:13:18,152 難波では火が出ることがなかった この飛鳥では 度々 火が出る 857 01:13:18,152 --> 01:13:20,152 皇子さま! 858 01:13:23,091 --> 01:13:27,095 「難波では 火の出ることがなかったのに・ 859 01:13:27,095 --> 01:13:31,099 この飛鳥では度々 火が出る」か 860 01:13:31,099 --> 01:13:33,099 待たれい 皇子! 861 01:13:39,107 --> 01:13:42,110 あの方は悪気があって おっしゃったのではございません 862 01:13:42,110 --> 01:13:44,110 アッ! 863 01:13:46,114 --> 01:13:50,118 額田 好きか? 有間が 864 01:13:50,118 --> 01:13:52,120 いいえ 私は… 865 01:13:52,120 --> 01:13:54,122 では なぜ それほどまでに 有間をかばう? 866 01:13:54,122 --> 01:13:59,122 あの方は 心の純な方でいらっしゃられます 867 01:14:25,086 --> 01:14:29,090 どうだ? すっかり女らしくなったろう? 868 01:14:29,090 --> 01:14:33,090 はぁ… 見違えるほどに 869 01:14:35,096 --> 01:14:40,101 あの姫の母親は 建王を産むと すぐに死んでしまったが・ 870 01:14:40,101 --> 01:14:45,106 そなたも知ってのとおりの 器量よしだった 871 01:14:45,106 --> 01:14:50,111 あの姫は 大きくなるにつれて 気味が悪いほど母親に似てきた 872 01:14:50,111 --> 01:14:52,111 はぁ… 873 01:14:56,117 --> 01:15:02,123 大海人 そなたに あの姫をくれてやろう 874 01:15:02,123 --> 01:15:07,128 いえ そのお話は どうでしょうか 875 01:15:07,128 --> 01:15:10,131 (大田皇女) お父さま いらっしゃいませ 876 01:15:10,131 --> 01:15:16,137 おお 大田 そなた 元気でおるか? 877 01:15:16,137 --> 01:15:18,139 はい 878 01:15:18,139 --> 01:15:23,077 幸せか? はい 879 01:15:23,077 --> 01:15:28,077 大海人は そなたのことを かわいがってくれておるか? 880 01:15:30,084 --> 01:15:34,084 (大田皇女)はい それは大層 881 01:15:37,091 --> 01:15:42,096 だから 兄上 この上 妹姫まで拝領しては・ 882 01:15:42,096 --> 01:15:46,100 大田の気持ちも 傷つくかもしれませんので 883 01:15:46,100 --> 01:15:48,102 そうかな? 884 01:15:48,102 --> 01:15:54,108 そなた 妹が 大海人の后になるのは嫌か? 885 01:15:54,108 --> 01:15:57,111 いいえ 886 01:15:57,111 --> 01:16:03,117 父君が そうなされたいと おっしゃるのなら 私は一向に 887 01:16:03,117 --> 01:16:05,119 そうであろう 888 01:16:05,119 --> 01:16:11,125 そなたたち姉妹は 同じ母親から生まれた 889 01:16:11,125 --> 01:16:14,128 そなたが大海人の后になって・ 890 01:16:14,128 --> 01:16:16,130 しばらくは別々に暮らしていたが 891 01:16:16,130 --> 01:16:20,067 これでまた 2人仲良く 暮らすことができる 892 01:16:20,067 --> 01:16:28,075 はい 姉妹仲良く 助け合っていきたいと存じます 893 01:16:28,075 --> 01:16:31,078 のう 大田 894 01:16:31,078 --> 01:16:33,080 妹を ここへ連れてまいれ 895 01:16:33,080 --> 01:16:36,083 はい 896 01:16:36,083 --> 01:16:38,083 大田! 大海人 897 01:16:40,087 --> 01:16:44,091 あの姉妹を気遣うことはない 898 01:16:44,091 --> 01:16:49,096 あの者たちは 幼いころに母を亡くしている 899 01:16:49,096 --> 01:16:53,100 姉は 妹の面倒を何くれとなく見・ 900 01:16:53,100 --> 01:16:55,102 妹も姉を慕うておる 901 01:16:55,102 --> 01:16:58,105 しかし… 見ろ 902 01:16:58,105 --> 01:17:03,105 そろいもそろうて器量よしだ 903 01:17:06,113 --> 01:17:10,117 俺が俺の姫たちを そなたの后にしたのは・ 904 01:17:10,117 --> 01:17:16,123 俺とそなたの血が 今以上に濃ゆく混じり合うためだ 905 01:17:16,123 --> 01:17:18,125 頼むぞ 大海人 906 01:17:18,125 --> 01:17:24,065 俺たちは これからも力を合わせて この国を作り上げていく 907 01:17:24,065 --> 01:17:26,065 いいな? 大海人 908 01:17:29,070 --> 01:17:32,073 兄上 909 01:17:32,073 --> 01:17:36,073 兄上のためなら力の限り 910 01:17:49,090 --> 01:17:56,097 ところで そなた 近ごろ 額田とは うまくいっているのかな 911 01:17:56,097 --> 01:17:58,099 はぁ? 912 01:17:58,099 --> 01:18:01,102 今でも足しげく? 913 01:18:01,102 --> 01:18:03,102 いえ… 914 01:18:05,106 --> 01:18:08,109 以前ほどではありません 915 01:18:08,109 --> 01:18:12,113 どうしてです? ハハハハッ… 916 01:18:12,113 --> 01:18:15,116 それは そうだろう 917 01:18:15,116 --> 01:18:19,053 俺は そなたの舅でもあるんだ 918 01:18:19,053 --> 01:18:22,053 姫たちの幸せを 願わずにはおれまい 919 01:18:24,058 --> 01:18:28,062 そなたが ほかの女に あまり血道を上げているのは・ 920 01:18:28,062 --> 01:18:32,062 やはり心配なのだ そうではないか? 921 01:18:35,069 --> 01:18:39,073 額田を俺に譲らぬか? 922 01:18:39,073 --> 01:18:41,073 兄上… 923 01:18:43,077 --> 01:18:47,081 (鵜野皇女)私も 姉君同様 よろしくお願いします 924 01:18:47,081 --> 01:18:57,091 ・~ 925 01:18:57,091 --> 01:19:03,091 ・(笑い声) 926 01:19:09,103 --> 01:19:11,105 いらっしゃいな 927 01:19:11,105 --> 01:19:17,105 こっち いらっしゃい ねっ? 上がってらっしゃいましよ 928 01:19:20,047 --> 01:19:24,051 (付き人の悲鳴) 929 01:19:24,051 --> 01:19:26,053 (間人皇女)フフフフッ… 930 01:19:26,053 --> 01:19:31,058 (笑い声) 931 01:19:31,058 --> 01:19:36,063 ねえ 兄上が そなたを 好いてらっしゃるの ご存じ? 932 01:19:36,063 --> 01:19:38,065 えっ? 933 01:19:38,065 --> 01:19:43,070 兄上は いずれ そなたをお后に お召しになるおつもりらしいわよ 934 01:19:43,070 --> 01:19:46,073 弟から そなたを譲り受けて 935 01:19:46,073 --> 01:19:48,075 まさか そのようなこと… 936 01:19:48,075 --> 01:19:52,075 でも そなたならいい 許せる気がする 937 01:19:54,081 --> 01:19:57,084 ほかの后たちは大っ嫌い 938 01:19:57,084 --> 01:20:01,088 でも そなたは特別な女なんでしょう? 939 01:20:01,088 --> 01:20:05,092 兄上が そなたに惹かれているのも 分かるような気がするし 940 01:20:05,092 --> 01:20:09,092 私も そなたのことは 尊敬しているのよ 941 01:20:11,098 --> 01:20:13,100 ウフフフッ… 942 01:20:13,100 --> 01:20:17,104 だからいい そなたならいい 943 01:20:17,104 --> 01:20:27,048 ・~ 944 01:20:27,048 --> 01:20:29,050 姉上までが そんなことを… 945 01:20:29,050 --> 01:20:33,054 (鏡女王) だって噂では 大海人皇子さまは・ 946 01:20:33,054 --> 01:20:37,058 あなたを 兄上に お譲りになるだろうって 947 01:20:37,058 --> 01:20:40,061 まあ… なんですって・ 948 01:20:40,061 --> 01:20:46,067 あの方は 兄上の姫君を 2人までお召しになったのよ 949 01:20:46,067 --> 01:20:49,070 その代わりって言っては 何だけれど・ 950 01:20:49,070 --> 01:20:53,074 あなたのことは ご兄弟の間で ご相談がついているはず 951 01:20:53,074 --> 01:20:57,078 そんな… いくら日嗣の御子さまでも・ 952 01:20:57,078 --> 01:21:00,081 私 お断りいたします 953 01:21:00,081 --> 01:21:04,085 いいえ 無理よ 本当です 姉上 954 01:21:04,085 --> 01:21:07,088 無理 そんなことも無理よ! 955 01:21:07,088 --> 01:21:11,092 何が無理なの? 現に こうして・ 956 01:21:11,092 --> 01:21:15,096 姉上が日嗣の御子さまの お后でいられるのに・ 957 01:21:15,096 --> 01:21:19,100 妹の私までも 后になるわけがありません 958 01:21:19,100 --> 01:21:23,104 (泣き声) 959 01:21:23,104 --> 01:21:25,106 姉上? 960 01:21:25,106 --> 01:21:27,108 (泣き声) 961 01:21:27,108 --> 01:21:31,112 姉上… 962 01:21:31,112 --> 01:21:33,114 駄目なの… 963 01:21:33,114 --> 01:21:36,117 もう決まってしまった ことなんですもの… 964 01:21:36,117 --> 01:21:43,124 何が駄目なの? 何が決まってしまったことなの? 965 01:21:43,124 --> 01:21:45,126 額田 966 01:21:45,126 --> 01:21:52,133 私ね 私… もう日嗣の御子さまの お后ではないの 967 01:21:52,133 --> 01:21:55,136 えっ? 968 01:21:55,136 --> 01:21:58,139 あの方も さすがに 私たち姉妹2人を・ 969 01:21:58,139 --> 01:22:00,141 ご自分のものになさるのは 気が引けると・ 970 01:22:00,141 --> 01:22:03,144 お感じになったのでしょう 971 01:22:03,144 --> 01:22:10,151 私を鎌足さまに お下しになったのです 972 01:22:10,151 --> 01:22:13,151 (泣き声) 姉上… 973 01:22:17,158 --> 01:22:19,093 <翌年2月> 974 01:22:19,093 --> 01:22:23,097 <百済への使節一行が帰国し・ 975 01:22:23,097 --> 01:22:29,097 らくだ1頭 ろば2頭を 土産として献上した> 976 01:22:31,105 --> 01:22:33,107 おお… 977 01:22:33,107 --> 01:22:35,109 (建王の声) 978 01:22:35,109 --> 01:22:37,111 ああ よしよし 979 01:22:37,111 --> 01:22:39,113 (赤兄)誠に ぶざまな… 980 01:22:39,113 --> 01:22:44,118 あれなら まだ ろばとか申す けだもののほうが ましですな 981 01:22:44,118 --> 01:22:49,123 これが らくだと申す獣か 醜いな 982 01:22:49,123 --> 01:22:54,128 おお 建王 あれが面白いの? フフフフッ… 983 01:22:54,128 --> 01:22:59,133 本当に おかしな格好をしているものね 984 01:22:59,133 --> 01:23:02,136 建 ほら 行ってごらん 985 01:23:02,136 --> 01:23:05,139 はい 向こうへ行って よくご覧 986 01:23:05,139 --> 01:23:09,139 気をつけて ハハハハッ… 987 01:23:15,149 --> 01:23:18,152 比羅夫どの 988 01:23:18,152 --> 01:23:24,152 おこと 蝦夷征伐にひとつ 試してみては? 989 01:23:27,094 --> 01:23:31,098 (比羅夫) おお 大いに結構でござるな 990 01:23:31,098 --> 01:23:35,102 あの獣の異様さに 蝦夷の者たちも恐れをなして・ 991 01:23:35,102 --> 01:23:38,105 逃げ出してしまうかもしれんぞ 992 01:23:38,105 --> 01:23:40,107 のう? ハハハハッ! (一同の笑い) 993 01:23:40,107 --> 01:23:42,109 いや 誠… 994 01:23:42,109 --> 01:23:47,109 (笑い声) 995 01:24:03,130 --> 01:24:05,132 有間皇子さま 996 01:24:05,132 --> 01:24:09,136 (有間皇子) ハハハハッ! アハハハッ! 997 01:24:09,136 --> 01:24:16,143 アハハハッ! ほら どうだ! このこぶを引っ込ませてやるわ! 998 01:24:16,143 --> 01:24:20,080 ほら このこぶめ! (比羅夫)有間皇子! 999 01:24:20,080 --> 01:24:23,083 皇子! 皇子! 1000 01:24:23,083 --> 01:24:26,086 なりません おやめなされ (有間皇子)ほら 引っ込め! 1001 01:24:26,086 --> 01:24:29,089 有間皇子! どうなされましたか・ 1002 01:24:29,089 --> 01:24:35,089 おやめなされ やめるのです! (有間皇子)どうだ! このこぶめ! 1003 01:24:37,097 --> 01:24:44,104 (比羅夫) 有間皇子は 先の孝徳帝の一粒種 1004 01:24:44,104 --> 01:24:50,110 皇位継承者としては 中大兄皇子と同等です 1005 01:24:50,110 --> 01:24:54,114 性格は聡く 頭 鋭く 1006 01:24:54,114 --> 01:24:58,114 中大兄皇子にとっては 目障りとなる存在 1007 01:25:00,120 --> 01:25:06,126 まさか お命まで… いや 分かりませぬ 1008 01:25:06,126 --> 01:25:12,132 それに あの鎌足が 放ってはおきますまい 1009 01:25:12,132 --> 01:25:15,135 有間皇子としては この際・ 1010 01:25:15,135 --> 01:25:18,138 気の触れた真似をなさるより ほかに… 1011 01:25:18,138 --> 01:25:24,138 では あれは 本当に気が くるってしまわれたのではなくて 1012 01:25:27,081 --> 01:25:30,084 額田どの… お願いでござる 1013 01:25:30,084 --> 01:25:35,089 有間皇子は 我が阿倍一族の家から出た皇子 1014 01:25:35,089 --> 01:25:39,093 後見人の私が お守りせねばならぬのですが・ 1015 01:25:39,093 --> 01:25:44,098 私は 帝より 蝦夷征伐を命じられ まもなく出立の身 1016 01:25:44,098 --> 01:25:48,102 いかにも心配でなりませぬ 1017 01:25:48,102 --> 01:25:54,108 額田どの 何とぞ 有間皇子を これまで以上に・ 1018 01:25:54,108 --> 01:25:58,112 お気にかけてくだされ 1019 01:25:58,112 --> 01:26:00,112 比羅夫どの… 1020 01:26:02,116 --> 01:26:05,119 人が… 人が来ます 1021 01:26:05,119 --> 01:26:07,119 頼みます 1022 01:26:09,123 --> 01:26:11,123 頼みますぞ 額田どの 1023 01:26:31,045 --> 01:26:33,047 また神事か? はい 1024 01:26:33,047 --> 01:26:38,052 蝦夷征伐の戦勝祈願のため 神にささげる水を… 1025 01:26:38,052 --> 01:26:42,056 つまり 兄上のために祈ってるんだな? 1026 01:26:42,056 --> 01:26:48,062 いいえ 別に 日嗣の御子さまのためだけでは… 1027 01:26:48,062 --> 01:26:51,065 たまには 十市皇女に 会いに来たら どうなんだ? 1028 01:26:51,065 --> 01:26:54,068 俺の所の女官に 預けっぱなしにして・ 1029 01:26:54,068 --> 01:26:56,070 気にはならないのか? 1030 01:26:56,070 --> 01:27:00,074 どうなさったんですか? 何か 十市皇女に? 1031 01:27:00,074 --> 01:27:03,074 そなたの気持ちが分からんのだ 1032 01:27:05,079 --> 01:27:09,083 自分の子供ですもの かわいくないわけじゃありません 1033 01:27:09,083 --> 01:27:12,086 でも なまじ会うよりも… 1034 01:27:12,086 --> 01:27:15,086 会えば 霊力が衰えるとでもいうのか? 1035 01:27:17,024 --> 01:27:22,029 近ごろのそなたは ますます俺の手の届かない所へ・ 1036 01:27:22,029 --> 01:27:25,029 遠ざかっていくような 気がしてならん 1037 01:27:27,034 --> 01:27:32,039 やはり 兄上が好きなのか? どうなんだ? 1038 01:27:32,039 --> 01:27:39,046 俺が そなたを兄上に譲ると言えば 喜んで譲られていくのか? 1039 01:27:39,046 --> 01:27:41,046 皇子さま… 1040 01:27:43,050 --> 01:27:45,050 どうだ? 1041 01:27:47,054 --> 01:27:49,056 皇子さまからも身を引き・ 1042 01:27:49,056 --> 01:27:53,060 中大兄皇子さまのお誘いも お断りいたします 1043 01:27:53,060 --> 01:27:58,060 ・~ 1044 01:28:10,077 --> 01:28:19,077 (建王の声) 1045 01:28:22,022 --> 01:28:24,024 (建王の声) 1046 01:28:24,024 --> 01:28:26,026 (有間皇子)ウワーッ! 1047 01:28:26,026 --> 01:28:30,026 (建王の悲鳴) 1048 01:28:34,034 --> 01:28:36,036 待て 鎌足! 1049 01:28:36,036 --> 01:28:40,040 (有間皇子)皇子 皇子! 1050 01:28:40,040 --> 01:28:43,043 建王! 1051 01:28:43,043 --> 01:28:47,043 皇子 どこだ・ 建王! 1052 01:28:49,049 --> 01:28:54,054 (有間皇子)皇子! 建王! 1053 01:28:54,054 --> 01:28:58,058 皇子! どこだ・ 建王! 1054 01:28:58,058 --> 01:29:00,060 建… 1055 01:29:00,060 --> 01:29:11,071 ・~ 1056 01:29:11,071 --> 01:29:14,074 (斉明帝の泣き声) どうしてなの… 1057 01:29:14,074 --> 01:29:16,074 なぜなの… 1058 01:29:19,012 --> 01:29:25,018 そなたのような 不幸せな生まれ合わせの皇子を・ 1059 01:29:25,018 --> 01:29:28,021 神は どうして このようなことを… 1060 01:29:28,021 --> 01:29:30,021 (泣き声) 1061 01:29:35,028 --> 01:29:42,035 建王 もう一度… もう一度 目を開けておくれ 1062 01:29:42,035 --> 01:29:45,038 ハッ… 1063 01:29:45,038 --> 01:29:50,043 あっ 帝 1064 01:29:50,043 --> 01:29:56,049 大丈夫 私は大丈夫 1065 01:29:56,049 --> 01:29:58,051 それより… 1066 01:29:58,051 --> 01:30:03,056 どうしてこんなことになったのか 訳を話しなさい 1067 01:30:03,056 --> 01:30:08,061 建王が どうして そんな所に1人で? 1068 01:30:08,061 --> 01:30:13,066 お付きの者は 誰も いなかったのか? 1069 01:30:13,066 --> 01:30:18,005 誰ひとり 付き添う者は いなかったというのか? 1070 01:30:18,005 --> 01:30:22,009 私は口を酸っぱくして みんなに申し渡してあるんだよ 1071 01:30:22,009 --> 01:30:28,015 どんなことがあっても 建王をひとりにしてはいけない 1072 01:30:28,015 --> 01:30:33,020 目を離してはいけない 1073 01:30:33,020 --> 01:30:38,025 ろばが 勝手に駆け出したものですから 1074 01:30:38,025 --> 01:30:45,032 女官たちが ついに見失ってしまいました 1075 01:30:45,032 --> 01:30:48,035 見失った? 1076 01:30:48,035 --> 01:30:52,039 見失ったで 事が済むと思うのか! 1077 01:30:52,039 --> 01:30:57,044 建王が死んだのは その者たちの責任! 1078 01:30:57,044 --> 01:31:06,053 即刻 死罪を命じ 処断いたしました 1079 01:31:06,053 --> 01:31:09,056 では 馬めは? 1080 01:31:09,056 --> 01:31:14,061 建王を乗せて走った その唐渡りの馬めを! 1081 01:31:14,061 --> 01:31:18,065 それも その場で… 1082 01:31:18,065 --> 01:31:22,069 獣のぶんざいではございますが・ 1083 01:31:22,069 --> 01:31:28,075 掛けがえのない建王を 振り落としてしまった罪 軽からず 1084 01:31:28,075 --> 01:31:32,075 その場で首をはねました 1085 01:31:34,081 --> 01:31:36,081 (斉明帝)そう… 1086 01:31:41,088 --> 01:31:48,088 いくら処罰したとて 建王 そなたの命は… 1087 01:31:51,098 --> 01:31:57,104 本当に巡り合わせの悪い皇子… 1088 01:31:57,104 --> 01:32:01,108 誰か1人でも そなたのそばに 付き添っていてやってくれれば… 1089 01:32:01,108 --> 01:32:04,108 (鎌足)いや 実は… 1090 01:32:06,113 --> 01:32:10,117 (鎌足)建王のおそばに 1人だけ… 1091 01:32:10,117 --> 01:32:15,122 誰か付き添っていたというのか? 1092 01:32:15,122 --> 01:32:18,122 (鎌足)有間皇子が… 1093 01:32:20,060 --> 01:32:22,060 有間が? 1094 01:32:27,067 --> 01:32:31,071 建王は 有間皇子に ろばから下ろしてくれと・ 1095 01:32:31,071 --> 01:32:36,076 幾度も手を差し出して 助けを求めたのですが・ 1096 01:32:36,076 --> 01:32:40,076 有間皇子は 知らぬ顔で おったそうでございます 1097 01:32:42,082 --> 01:32:45,085 もうよい 1098 01:32:45,085 --> 01:32:51,091 相手が くるっているとあれば 致し方のないこと 1099 01:32:51,091 --> 01:32:57,097 建王には 見分けがつかなかったのであろう 1100 01:32:57,097 --> 01:33:03,103 有間がくるっているとも知らず 助けを求めて… 1101 01:33:03,103 --> 01:33:07,103 アア… かわいそうに 1102 01:33:09,109 --> 01:33:12,112 有間が正常でさえあれば・ 1103 01:33:12,112 --> 01:33:18,112 きっと どんなことをしても そなたを助けてくれたであろう 1104 01:33:25,058 --> 01:33:30,063 有間皇子は くるってなどおりませんでした 1105 01:33:30,063 --> 01:33:32,065 えっ? 1106 01:33:32,065 --> 01:33:35,068 有間は くるってなどいなかった 1107 01:33:35,068 --> 01:33:40,073 ただ 狂人のふりを していただけなのです 1108 01:33:40,073 --> 01:33:42,075 なんと… 1109 01:33:42,075 --> 01:33:47,080 有間が また なぜ そのようなおかしな真似を? 1110 01:33:47,080 --> 01:33:49,082 分かりません 1111 01:33:49,082 --> 01:33:54,087 私も建王が死んで 初めて それを知ったのですから 1112 01:33:54,087 --> 01:33:57,090 有間皇子さまは・ 1113 01:33:57,090 --> 01:34:03,096 建王が川に落ちたあと ようやく 騒ぎ立てたそうです 1114 01:34:03,096 --> 01:34:06,099 いつまでも 狂人の真似を・ 1115 01:34:06,099 --> 01:34:10,103 する場合ではないと 思われたからでしょう 1116 01:34:10,103 --> 01:34:13,106 では… 1117 01:34:13,106 --> 01:34:17,043 有間が最初から 狂人の真似など していなければ… 1118 01:34:17,043 --> 01:34:22,048 もちろん 無事であったはずです 1119 01:34:22,048 --> 01:34:25,048 なんということ… 1120 01:34:28,054 --> 01:34:30,056 くるったふりをしていて・ 1121 01:34:30,056 --> 01:34:34,060 建王を 助けることができなかったとは 1122 01:34:34,060 --> 01:34:40,066 では 建王は 有間が殺したと同じではないか! 1123 01:34:40,066 --> 01:34:45,071 恐ろしい下心が なければよろしいのですが… 1124 01:34:45,071 --> 01:34:48,074 鎌足どの それは あまりに… 1125 01:34:48,074 --> 01:34:53,079 お黙り 額田 そなたの口出しすることではない 1126 01:34:53,079 --> 01:34:57,083 ですが 有間皇子さまは そんな… 1127 01:34:57,083 --> 01:34:59,085 日嗣の御子さま 1128 01:34:59,085 --> 01:35:04,090 皇子さまも そのように… (斉明帝)ええい! もう許さぬ 1129 01:35:04,090 --> 01:35:09,095 建王をかわいがってくれるからと 目をかけてやれば… 1130 01:35:09,095 --> 01:35:14,100 恩を仇で返すような この仕打ち 1131 01:35:14,100 --> 01:35:17,037 許さん! 許さぬ 許さぬ! 1132 01:35:17,037 --> 01:35:21,041 鎌足! あいつを殺しておしまい! 1133 01:35:21,041 --> 01:35:25,045 殺すのです! 即刻 死刑! 1134 01:35:25,045 --> 01:35:30,050 (鎌足) 帝! それでは あまりにも… 1135 01:35:30,050 --> 01:35:33,053 (斉明帝) もう あいつの顔など見たくもない 1136 01:35:33,053 --> 01:35:36,053 殺しておやり! 1137 01:35:38,058 --> 01:35:44,064 母君は 建王のことで 逆上しておいでになるのです 1138 01:35:44,064 --> 01:35:49,069 それは 建王は かわいそうなことをしました 1139 01:35:49,069 --> 01:35:54,074 母親が 深く 嘆き悲しみになることは分かる 1140 01:35:54,074 --> 01:35:57,077 しかし だからといって・ 1141 01:35:57,077 --> 01:36:00,080 何から何まで 有間皇子の罪だというわけには… 1142 01:36:00,080 --> 01:36:04,084 (鎌足) 建王をお助けしようと思えば・ 1143 01:36:04,084 --> 01:36:09,089 助けられる立場にあったはずです 1144 01:36:09,089 --> 01:36:12,092 そのことを どうご説明になるんですか? 1145 01:36:12,092 --> 01:36:18,092 それは… それは なぜだか 俺にもよく分からぬが 1146 01:36:20,033 --> 01:36:25,038 (鎌足)あのように いかがわしい真似をされるのは・ 1147 01:36:25,038 --> 01:36:29,042 何か 後ろ暗い企てを 胸に秘めている証拠です 1148 01:36:29,042 --> 01:36:32,045 いや それ以外には 考えられません 1149 01:36:32,045 --> 01:36:35,048 (赤兄)私も そう思いますな 1150 01:36:35,048 --> 01:36:41,054 ・~ 1151 01:36:41,054 --> 01:36:46,059 (赤兄)我々の目を偽って 虎視眈々と我らが隙をうかがう 1152 01:36:46,059 --> 01:36:49,062 なかなかの曲者ですぞ 1153 01:36:49,062 --> 01:36:51,064 やめろ! 1154 01:36:51,064 --> 01:37:03,064 ・~ 1155 01:37:08,081 --> 01:37:12,085 それじゃ まるで 最初から敵同士みたいじゃないか 1156 01:37:12,085 --> 01:37:15,088 そうだ 1157 01:37:15,088 --> 01:37:19,025 あの皇子とは敵同士だ 1158 01:37:19,025 --> 01:37:23,029 でも 兄上 有間皇子は・ 1159 01:37:23,029 --> 01:37:27,033 亡くなられた先の帝の御子 1160 01:37:27,033 --> 01:37:29,035 我々を蹴落とそうとする奴らが・ 1161 01:37:29,035 --> 01:37:33,039 いつ何どき 有間皇子を担ぎ出して 謀反を企てるかもしれん 1162 01:37:33,039 --> 01:37:37,043 いや これは俺のためではない 1163 01:37:37,043 --> 01:37:40,046 そなたのために必要なことなのだ 1164 01:37:40,046 --> 01:37:44,050 私のために? 俺は日嗣の御子だ 1165 01:37:44,050 --> 01:37:51,057 誰に遠慮もなく帝に就ける立場 有間皇子などは問題にならん 1166 01:37:51,057 --> 01:37:55,061 しかし そなたが・ 1167 01:37:55,061 --> 01:37:59,065 わしのあとを継いで 皇位を狙うときに・ 1168 01:37:59,065 --> 01:38:04,070 あの皇子がいるといないでは 大きく立場が違うと思うが 1169 01:38:04,070 --> 01:38:06,070 でも… 1170 01:38:09,075 --> 01:38:14,080 私と有間皇子とは いとこ同士 1171 01:38:14,080 --> 01:38:16,015 小さいときから かわいがってきたのですから 1172 01:38:16,015 --> 01:38:21,020 額田も あの皇子を憎からず思うている 1173 01:38:21,020 --> 01:38:25,024 いや… 1174 01:38:25,024 --> 01:38:28,027 どうやら惚れているらしい 1175 01:38:28,027 --> 01:38:32,031 それでも そなた 何も思わぬか? 1176 01:38:32,031 --> 01:38:35,034 兄上は どうなんですか? 1177 01:38:35,034 --> 01:38:40,039 だから そなたの手で 有間を討ってもらいたい 1178 01:38:40,039 --> 01:38:42,041 私の手で? 1179 01:38:42,041 --> 01:38:47,046 そなたの手で 有間を亡き者にしてもらいたい 1180 01:38:47,046 --> 01:38:51,046 兄上! 命令だ これは! 1181 01:38:53,052 --> 01:38:55,052 いいな? 1182 01:39:01,060 --> 01:39:07,066 (有間皇子)どこへ行ったのだ~! あの海は 波は… 1183 01:39:07,066 --> 01:39:10,069 難波の海… 1184 01:39:10,069 --> 01:39:12,069 ここは どこだ? 1185 01:39:14,073 --> 01:39:17,010 息が詰まる! アア… 1186 01:39:17,010 --> 01:39:23,016 おやめください 皇子さま 私の前まで そんな… 1187 01:39:23,016 --> 01:39:27,020 皇子さま 額田です お分かりになりませんか? 1188 01:39:27,020 --> 01:39:32,025 そなたは 中大兄とぐるではないか 1189 01:39:32,025 --> 01:39:37,030 あいつのためなら喜んで 何だってしてるんではないか! 1190 01:39:37,030 --> 01:39:40,033 ハァハァハァ… 1191 01:39:40,033 --> 01:39:42,033 皇子さま… 1192 01:39:51,044 --> 01:39:54,047 分かってるんだぞ 1193 01:39:54,047 --> 01:39:59,052 中大兄とくっついて いつも くちゃくちゃ… 1194 01:39:59,052 --> 01:40:02,055 逆臣だ! 死ね! 死ね! 1195 01:40:02,055 --> 01:40:06,059 皇子さま 私のことを そのようにお思いですか 1196 01:40:06,059 --> 01:40:09,062 私は 少なくとも皇子さまのためには… 1197 01:40:09,062 --> 01:40:13,066 分かってる ハハッ… 分かってるよ 1198 01:40:13,066 --> 01:40:16,002 女を 中大兄に差し出せばいいんだろう 1199 01:40:16,002 --> 01:40:23,009 フン… 俺の女が欲しけりゃくれてやるよ 1200 01:40:23,009 --> 01:40:27,013 だが 俺の命は助けてくれるか・ 1201 01:40:27,013 --> 01:40:29,015 皇子さま 1202 01:40:29,015 --> 01:40:33,019 額田です お分かりになりませんか 皇子さま 1203 01:40:33,019 --> 01:40:36,022 皇子さま しっ! 1204 01:40:36,022 --> 01:40:38,022 しっ! 1205 01:40:41,027 --> 01:40:47,033 難波へ連れていけ! 俺を難波へ! 1206 01:40:47,033 --> 01:40:50,033 皇子さま… (有間皇子)難波へ連れていけ! 1207 01:40:52,105 --> 01:41:01,114 ・~ 1208 01:41:01,114 --> 01:41:05,118 <その年の暮れ 斉明帝ら一行は・ 1209 01:41:05,118 --> 01:41:12,125 紀の国 牟婁の湯 現在の白浜温泉に出かけた> 1210 01:41:12,125 --> 01:41:19,132 <孫の建王の死を 忘れられない 老女帝の保養のためであった> 1211 01:41:19,132 --> 01:41:25,138 <この行幸で 都は ほとんど空になってしまった> 1212 01:41:25,138 --> 01:41:38,151 ・~ 1213 01:41:38,151 --> 01:41:50,151 ・~ 1214 01:41:55,168 --> 01:41:57,170 どうした? 額田 1215 01:41:57,170 --> 01:42:00,173 休むんならば 向こうで 一緒に休んだらいいじゃないか 1216 01:42:00,173 --> 01:42:04,177 皇子さまと兄君の間に挟まって 牟婁の湯などへ行っても・ 1217 01:42:04,177 --> 01:42:06,179 心が安らぎません 1218 01:42:06,179 --> 01:42:09,182 ハァ… うん… 1219 01:42:09,182 --> 01:42:14,120 それに 有間皇子さまのことが心残りで 1220 01:42:14,120 --> 01:42:17,123 有間が? 1221 01:42:17,123 --> 01:42:22,128 あの方 本当に 変わってしまわれたんでしょうか 1222 01:42:22,128 --> 01:42:28,134 それならば いっそ いいのだが… えっ? どうして? 1223 01:42:28,134 --> 01:42:33,139 そのほうが 何事もなく 有間は幸せだっただろうに 1224 01:42:33,139 --> 01:42:38,144 何か あるとおっしゃるのですか? 有間皇子さまの身に何か… 1225 01:42:38,144 --> 01:42:42,148 そなた 有間皇子のことが それほど気になるのか? 1226 01:42:42,148 --> 01:42:46,148 有間皇子さまの身に 何か よくないことが? 1227 01:42:48,154 --> 01:42:53,154 渡すものか そなたは誰にも渡すものか! 1228 01:43:02,168 --> 01:43:04,168 皇子さま… 1229 01:43:16,115 --> 01:43:19,118 (赤兄)いやぁ 殿下 うれしゅうございますぞ 1230 01:43:19,118 --> 01:43:24,123 この赤兄の前では 用心を解かれて そのような正常なお姿を 1231 01:43:24,123 --> 01:43:26,125 (有間皇子) いやぁ 今日は だいぶ気分が… 1232 01:43:26,125 --> 01:43:29,128 (赤兄)さようでございましょう! 1233 01:43:29,128 --> 01:43:35,134 日嗣の御子や鎌足 大海人皇子の 三悪人がいないだけでも・ 1234 01:43:35,134 --> 01:43:38,137 この都が いかに 風通しがよく せいせいすることか 1235 01:43:38,137 --> 01:43:42,141 ハハハハッ… 1236 01:43:42,141 --> 01:43:46,145 殿下 ちと お人払いを… (有間皇子)人払い? 1237 01:43:46,145 --> 01:43:49,148 はい 殿下に内密に お話がいたしたく 1238 01:43:49,148 --> 01:43:53,152 いや しかし この者たちは 私の忠実な腹心 1239 01:43:53,152 --> 01:43:57,156 何も秘密にすることはないのだが 1240 01:43:57,156 --> 01:44:00,159 (鮪)赤兄どの 話してくだされ 1241 01:44:00,159 --> 01:44:04,163 その秘密のご用向きとは 一体… 1242 01:44:04,163 --> 01:44:10,169 (赤兄)殿下も既に お気づきのこととは思いますが 1243 01:44:10,169 --> 01:44:17,110 今や… 廟堂だけではございません 1244 01:44:17,110 --> 01:44:22,115 この巷にも 中大兄や鎌足らの・ 1245 01:44:22,115 --> 01:44:27,120 執政に対する批判と憤りの声が 満ちあふれております 1246 01:44:27,120 --> 01:44:31,124 国力に不相応な大工事は 言うに及ばず・ 1247 01:44:31,124 --> 01:44:38,131 民の財をびしびし取り立て かまわず使役に駆り出す 1248 01:44:38,131 --> 01:44:41,134 私は あのような馬鹿げた大工事の・ 1249 01:44:41,134 --> 01:44:43,136 取り締まりを 仰せつかったおかげで・ 1250 01:44:43,136 --> 01:44:49,142 民の苦しみや悲しみの声を つぶさに見聞いたしております 1251 01:44:49,142 --> 01:44:56,149 殿下 このような悪政を 放っておいてよろしいのですか? 1252 01:44:56,149 --> 01:44:58,149 (有間皇子の ため息) 1253 01:45:05,158 --> 01:45:14,100 殿下 今 お立ちになれば 殿下に従う者は数知れず 1254 01:45:14,100 --> 01:45:16,102 この大和は言うに及ばず・ 1255 01:45:16,102 --> 01:45:22,108 畿内 美濃 尾張 越前の 豪族たちが・ 1256 01:45:22,108 --> 01:45:25,111 ひそかに それを心待ちにしておるのです 1257 01:45:25,111 --> 01:45:30,116 では そなたは この私に兵を挙げろと? 1258 01:45:30,116 --> 01:45:34,120 はい (鮪)いよいよ その時が来たのか 1259 01:45:34,120 --> 01:45:38,124 幸い 中大兄らは 都を留守にして 空っぽ 1260 01:45:38,124 --> 01:45:43,129 殿下 今ならば 僅かの兵で事が足ります 1261 01:45:43,129 --> 01:45:45,131 まず手始めに宮殿を焼き討ちし・ 1262 01:45:45,131 --> 01:45:49,135 兵の五百もを その勢いで差し向ければ・ 1263 01:45:49,135 --> 01:45:52,138 簡単には牟婁津は封鎖できます 1264 01:45:52,138 --> 01:45:58,144 同時に軍団をもって 淡路と牟婁の湯の航路を遮断して 1265 01:45:58,144 --> 01:46:02,144 帝や日嗣の御子を 動けなくするのです 1266 01:46:04,150 --> 01:46:10,156 (赤兄) 殿下 私をお疑いでございますか? 1267 01:46:10,156 --> 01:46:13,092 よもや そのようなことは… 1268 01:46:13,092 --> 01:46:17,096 我が血縁 我が一族の者に対する・ 1269 01:46:17,096 --> 01:46:22,101 日嗣の御子や 鎌足らの仕打ちを思うと… 1270 01:46:22,101 --> 01:46:26,105 無念さに この胸は張り裂けんばかり 1271 01:46:26,105 --> 01:46:29,108 いつか この思いを晴らそうと・ 1272 01:46:29,108 --> 01:46:33,112 その日が来るのを ひたすら待ち続けておったのです 1273 01:46:33,112 --> 01:46:39,118 殿下 私たちと共にお立ちください 1274 01:46:39,118 --> 01:46:44,123 今は亡き孝徳帝のお意志を 引き継がれるのは・ 1275 01:46:44,123 --> 01:46:47,126 殿下をおいて ほかにはございません 1276 01:46:47,126 --> 01:46:49,128 (鮪)そのとおりです 1277 01:46:49,128 --> 01:46:52,131 (鮪・赤兄)殿下! 1278 01:46:52,131 --> 01:46:58,137 この機を失うと 悔いを千載に残されますぞ 1279 01:46:58,137 --> 01:47:07,146 いずれ 殿下のそのお命は 帝によって断たれることは必定 1280 01:47:07,146 --> 01:47:10,149 お分かりでございましょうが 1281 01:47:10,149 --> 01:47:14,086 殿下が ご乱心のふりを なさっていたために・ 1282 01:47:14,086 --> 01:47:19,091 建王を助けようともせず 見殺しにしてしまったと・ 1283 01:47:19,091 --> 01:47:23,095 帝は大変な御気色でおられまする 1284 01:47:23,095 --> 01:47:27,095 ですから いずれ殿下のお命は… 1285 01:47:31,103 --> 01:47:35,107 殿下 ご決心を 1286 01:47:35,107 --> 01:47:39,111 ご猶予はなりませんぞ! ご決断を 殿下! 1287 01:47:39,111 --> 01:47:41,113 (鮪)殿下! 1288 01:47:41,113 --> 01:48:01,133 ・~ 1289 01:48:01,133 --> 01:48:21,087 ・~ 1290 01:48:21,087 --> 01:48:33,099 ・~ 1291 01:48:33,099 --> 01:48:45,099 ・~ 1292 01:48:47,113 --> 01:48:53,119 ハァ~ッ… いい湯だなぁ 1293 01:48:53,119 --> 01:48:58,119 フフッ… 久しぶりだな こんなに のんびりしたのは 1294 01:49:01,127 --> 01:49:07,133 どうした? 大海人 考えているのは 有間のことか? 1295 01:49:07,133 --> 01:49:12,138 それとも 額田のことか? えっ? 1296 01:49:12,138 --> 01:49:15,074 いえ… 1297 01:49:15,074 --> 01:49:20,079 額田にはな この牟婁の湯で・ 1298 01:49:20,079 --> 01:49:25,084 豊作を祝う神事に 仕えてもらうことになっている 1299 01:49:25,084 --> 01:49:28,087 役に立つ女だ 1300 01:49:28,087 --> 01:49:32,091 あの女の霊力は ずば抜けている 1301 01:49:32,091 --> 01:49:37,096 フッ… 鎌足が心配してなぁ ハハハッ… 1302 01:49:37,096 --> 01:49:41,100 あの女のことで 俺たち兄弟が 反目し合うのではないかとな 1303 01:49:41,100 --> 01:49:46,105 ハハハハッ! 馬鹿な奴だ 1304 01:49:46,105 --> 01:49:50,109 なあ? そのようなことに なるはずがない 1305 01:49:50,109 --> 01:49:53,112 のう? 大海人 1306 01:49:53,112 --> 01:50:00,119 俺の政にとって あの女の霊力は 絶対に必要なものだ 1307 01:50:00,119 --> 01:50:05,124 そこで 俺は そなたの手をつけた女を・ 1308 01:50:05,124 --> 01:50:07,126 ありがたく いただこうとしている 1309 01:50:07,126 --> 01:50:10,129 そうすることによって 俺たち兄弟の絆が・ 1310 01:50:10,129 --> 01:50:13,065 これまで以上 一層強く つながれることになる 1311 01:50:13,065 --> 01:50:15,065 そう思わぬか? 1312 01:50:17,069 --> 01:50:21,069 どうした? 大海人 返事は 1313 01:50:23,075 --> 01:50:28,075 やりますとも 何事も兄上の意志のままに 1314 01:50:38,090 --> 01:50:44,090 謀反か… いよいよ その時が来たか 1315 01:50:49,101 --> 01:50:52,101 ・(側近)殿下 大変でございます! 1316 01:50:55,107 --> 01:50:58,110 は… 謀られました 赤兄と鮪に… 1317 01:50:58,110 --> 01:51:03,115 なに・ (側近)さあ 早く… 1318 01:51:03,115 --> 01:51:07,119 ハァハァ ハァハァ… 1319 01:51:07,119 --> 01:51:11,123 アアッ! ハァハァ… 1320 01:51:11,123 --> 01:51:19,131 ・~ 1321 01:51:19,131 --> 01:51:21,133 (側近)アッ! 1322 01:51:21,133 --> 01:51:25,137 ・~ 1323 01:51:25,137 --> 01:51:28,140 (側近)ああっ 殿下! 殿下ーっ! 1324 01:51:28,140 --> 01:51:32,144 (鮪)謀反人め! (側近)殿下ーっ! 1325 01:51:32,144 --> 01:51:36,148 ハァハァハァ… 有間皇子さま! 1326 01:51:36,148 --> 01:51:49,161 ・~ 1327 01:51:49,161 --> 01:52:01,173 (祈祷の声) 1328 01:52:01,173 --> 01:52:03,175 天 知る! 1329 01:52:03,175 --> 01:52:06,178 赤兄 知る! 1330 01:52:06,178 --> 01:52:10,182 我 知らず! 1331 01:52:10,182 --> 01:52:14,119 (祈祷の声) 1332 01:52:14,119 --> 01:52:16,119 ンッ! 1333 01:52:18,123 --> 01:52:21,123 アアーッ! 1334 01:52:31,136 --> 01:52:33,138 (女官)額田さま 1335 01:52:33,138 --> 01:52:36,138 ハッ・ (悲鳴) 1336 01:52:43,148 --> 01:52:47,152 額田 額田! 1337 01:52:47,152 --> 01:52:51,156 額田 どうした? しっかりせい おい! 1338 01:52:51,156 --> 01:52:55,160 「天 知る」… 1339 01:52:55,160 --> 01:52:59,164 「赤兄 知る」… 1340 01:52:59,164 --> 01:53:02,164 「我 知らず」… 1341 01:53:04,169 --> 01:53:07,172 「天 知る」… 1342 01:53:07,172 --> 01:53:09,172 「赤兄」… ンッ… 1343 01:53:11,176 --> 01:53:13,176 兄上 あに… 1344 01:53:15,114 --> 01:53:17,116 何だ? 1345 01:53:17,116 --> 01:53:23,122 いえ 有間皇子の一行が 到着しましたので・ 1346 01:53:23,122 --> 01:53:26,125 兄上は 糾問されませんか? 1347 01:53:26,125 --> 01:53:29,125 有間のことは そなたに任せたはずだ 1348 01:53:42,141 --> 01:53:55,154 ・~ 1349 01:53:55,154 --> 01:54:07,166 ・~ 1350 01:54:07,166 --> 01:54:10,169 ハッ・ 皇子さま 1351 01:54:10,169 --> 01:54:13,105 額田 1352 01:54:13,105 --> 01:54:17,109 そなた 先ほど 何と言うたか 覚えておるか? 1353 01:54:17,109 --> 01:54:22,114 お願い 有間皇子さまをお願い ねえ お願い… 1354 01:54:22,114 --> 01:54:25,117 有間を? お願い! 1355 01:54:25,117 --> 01:54:29,117 お願い 皇子さま! 有間皇子さまをお願い… 1356 01:54:36,128 --> 01:54:39,131 お願い… 額田… 1357 01:54:39,131 --> 01:54:42,134 お願い! 1358 01:54:42,134 --> 01:54:44,136 有間皇子さまをお願い! 1359 01:54:44,136 --> 01:54:49,136 ねえ お願い 有間皇子さまをお願い… 1360 01:54:57,149 --> 01:55:17,102 ・~ 1361 01:55:17,102 --> 01:55:27,112 ・~ 1362 01:55:27,112 --> 01:55:30,112 謀反人を殺せ! 1363 01:55:51,136 --> 01:55:59,144 「磐代の 浜松が枝を引き結び・ 1364 01:55:59,144 --> 01:56:05,150 真幸くあらば また還り見む」 1365 01:56:05,150 --> 01:56:08,153 (比羅夫)あの松で ございます 1366 01:56:08,153 --> 01:56:12,153 あの松の枝を引き結んで 有間皇子は… 1367 01:56:15,093 --> 01:56:21,099 しかし 恐ろしいお方だ 日嗣の御子は 1368 01:56:21,099 --> 01:56:27,105 私 何もできませんでした 1369 01:56:27,105 --> 01:56:33,111 有間皇子さまのために 何も… 1370 01:56:33,111 --> 01:56:37,115 いずれ 有間皇子は遅かれ早かれ・ 1371 01:56:37,115 --> 01:56:42,115 このような運命を お受けになられたかもしれぬが… 1372 01:56:45,123 --> 01:56:48,126 どのようなお気持ちで・ 1373 01:56:48,126 --> 01:56:51,126 このお歌を詠まれたのでしょう 1374 01:56:53,131 --> 01:56:59,137 私 有間皇子さまのことを思うと… 1375 01:56:59,137 --> 01:57:02,140 さぞや ご無念な思い… 1376 01:57:02,140 --> 01:57:13,085 ・~ 1377 01:57:13,085 --> 01:57:22,094 「家にあらば 笥に盛る飯を 草枕」 1378 01:57:22,094 --> 01:57:27,099 「旅にしあれば 椎の葉に盛る」 1379 01:57:27,099 --> 01:57:32,104 ・~ 1380 01:57:32,104 --> 01:57:38,104 《家にあれば》 1381 01:57:40,112 --> 01:57:50,122 《笥に盛る飯を 草枕》 1382 01:57:50,122 --> 01:58:01,122 《旅にしあれば 椎の葉に盛る》