1 00:02:07,153 --> 00:02:08,020 2 00:02:08,020 --> 00:02:11,023 (ナレーター)<西暦645年> 3 00:02:11,023 --> 00:02:14,026 <中大兄皇子は 中臣鎌足と共に・ 4 00:02:14,026 --> 00:02:18,030 母親 斉明帝の愛人 蘇我入鹿の首をはね・ 5 00:02:18,030 --> 00:02:21,033 「大化の改新」を断行した> 6 00:02:21,033 --> 00:02:26,038 <皇子は 実の妹である間人皇女を 愛しながらも・ 7 00:02:26,038 --> 00:02:31,043 弟君 大海人皇子と ひとりの美しい女を争う> 8 00:02:31,043 --> 00:02:35,047 <女の名は 額田女王> 9 00:02:35,047 --> 00:02:39,051 <神に仕える女官であり 一流の歌人である彼女は・ 10 00:02:39,051 --> 00:02:41,053 2人の間を揺れ動きながらも・ 11 00:02:41,053 --> 00:02:47,059 心は別のものとして どちらにも許そうとしない> 12 00:02:47,059 --> 00:02:49,061 <彼女が その心を許した・ 13 00:02:49,061 --> 00:02:52,064 ただひとりの男性である 有間皇子は・ 14 00:02:52,064 --> 00:02:56,068 中大兄皇子らの 権力争いの犠牲となって・ 15 00:02:56,068 --> 00:03:02,074 磐代の松で その若い命を散らしてしまった> 16 00:03:02,074 --> 00:03:07,074 <時代は 更に 激しく揺れ動こうとしていた> 17 00:03:10,015 --> 00:03:30,035 ・~ 18 00:03:30,035 --> 00:03:50,055 ・~ 19 00:03:50,055 --> 00:04:10,009 ・~ 20 00:04:10,009 --> 00:04:30,029 ・~ 21 00:04:30,029 --> 00:04:48,047 ・~ 22 00:04:48,047 --> 00:05:07,047 ・~ 23 00:05:10,002 --> 00:05:26,018 ・~ 24 00:05:26,018 --> 00:05:42,034 ・~ 25 00:05:42,034 --> 00:05:47,039 (額田女王) まあ 日嗣の御子さま ひどい雪 26 00:05:47,039 --> 00:05:52,039 (中大兄皇子)アア… 外は吹雪だ いやぁ 凍えそうだ 27 00:05:54,046 --> 00:05:56,048 額田 28 00:05:56,048 --> 00:06:02,054 この館 気に入ったか? 29 00:06:02,054 --> 00:06:04,990 まだ仕上がっていないと 思っておりましたのに・ 30 00:06:04,990 --> 00:06:07,993 いつの間に… いや そなたのためにな 31 00:06:07,993 --> 00:06:09,995 匠どもをせかせた 32 00:06:09,995 --> 00:06:12,998 お気持ちは とても うれしゅうございます 33 00:06:12,998 --> 00:06:17,002 でも 私は神に仕える身 このような館は… 34 00:06:17,002 --> 00:06:21,006 ただ ひと夜だけだぞ 35 00:06:21,006 --> 00:06:24,009 ひと夜だけ? そうだ 36 00:06:24,009 --> 00:06:27,012 今宵 ひと夜だけだ 37 00:06:27,012 --> 00:06:30,015 そなたが本当に この館に住めるようになるのは・ 38 00:06:30,015 --> 00:06:33,018 いつの日かは分からぬ 39 00:06:33,018 --> 00:06:40,025 3日後には 半島出兵のために 筑紫に出向かねばならん 40 00:06:40,025 --> 00:06:45,030 せめて… せめて ひと夜だけ・ 41 00:06:45,030 --> 00:06:48,033 そなたを ここに住まわせたいと思うた 42 00:06:48,033 --> 00:06:51,036 そのために 匠どもをせかせ・ 43 00:06:51,036 --> 00:06:55,040 こうして… こうして 調度を入れてみた 44 00:06:55,040 --> 00:07:01,046 ひと夜だけ… ひと夜だけの私の館 45 00:07:01,046 --> 00:07:07,986 日嗣の御子さま… うれしゅうございます! 46 00:07:07,986 --> 00:07:09,986 冷たいぞ 47 00:07:11,990 --> 00:07:15,994 余の体は冷たいぞ 48 00:07:15,994 --> 00:07:18,997 私が温めてさし上げます 49 00:07:18,997 --> 00:07:22,000 私が温めて… 50 00:07:22,000 --> 00:07:25,003 アア… 額田 51 00:07:25,003 --> 00:07:28,006 余を助けてくれ 52 00:07:28,006 --> 00:07:32,010 この度の戦でも そなたの助けが必要だ 53 00:07:32,010 --> 00:07:37,015 祈ってくれるか? そなたの神に祈ってくれるか? 54 00:07:37,015 --> 00:07:41,015 日嗣の御子さま お祈りいたします 55 00:07:43,021 --> 00:07:48,026 アア… 冷たい アア… 56 00:07:48,026 --> 00:07:52,030 温めてくれ 57 00:07:52,030 --> 00:07:55,033 温めてくれ 額田 さあ… 58 00:07:55,033 --> 00:08:00,033 温めてさし上げます 私が温めてさし上げます 59 00:08:05,978 --> 00:08:08,981 <斉明6年12月24日> 60 00:08:08,981 --> 00:08:12,985 <斉明帝をはじめとする 中大兄ら一行は・ 61 00:08:12,985 --> 00:08:16,989 都を挙げて 大和をあとにした> 62 00:08:16,989 --> 00:08:22,995 <難波から瀬戸内海を経て 九州 筑紫へ渡るためである> 63 00:08:22,995 --> 00:08:25,998 <当時 朝廷と友好国であった百済は・ 64 00:08:25,998 --> 00:08:29,001 唐と手を結んだ新羅に 攻め滅ぼされ・ 65 00:08:29,001 --> 00:08:33,005 救援を 我が国に求めていたのである> 66 00:08:33,005 --> 00:08:37,009 <この大移動は その出兵のための臨時政府を・ 67 00:08:37,009 --> 00:08:40,012 筑紫に設けるためであった> 68 00:08:40,012 --> 00:08:43,015 (間人皇女) 母上! 母上 しっかりなさって! 69 00:08:43,015 --> 00:08:45,017 お母さま どうしたの・ 70 00:08:45,017 --> 00:08:48,020 お母さま! お母さま 71 00:08:48,020 --> 00:08:51,023 (斉明帝)ウウ… (間人皇女)お母さま 72 00:08:51,023 --> 00:08:56,028 (間人皇女)遅いわね… 額田! 額田は何をしているの? 73 00:08:56,028 --> 00:08:59,031 (官人)ひょっとしたら まだ 届いていないのかもしれませんが 74 00:08:59,031 --> 00:09:01,033 どうしましょう… 75 00:09:01,033 --> 00:09:03,035 母上 あの薬草がないと いつも錯乱しておしまいになる 76 00:09:03,035 --> 00:09:05,971 おまけに今は ご病気の際 77 00:09:05,971 --> 00:09:08,974 額田! どうでした? 78 00:09:08,974 --> 00:09:10,976 くり屋には まだ… (間人皇女)そう… 79 00:09:10,976 --> 00:09:13,979 何しろ この筑紫へまいりましてから・ 80 00:09:13,979 --> 00:09:16,982 手に入りにくくなりましたもので 81 00:09:16,982 --> 00:09:19,985 アア… アア… 82 00:09:19,985 --> 00:09:22,988 (間人皇女)お母さま! お母さま! 帝! 83 00:09:22,988 --> 00:09:26,992 お母さま どうなさいました? (斉明帝)しっ! 84 00:09:26,992 --> 00:09:29,995 しっ! しっ! 85 00:09:29,995 --> 00:09:31,997 (間人皇女)お母さま 帝! 86 00:09:31,997 --> 00:09:35,000 しっ! (間人皇女)お母さま? 87 00:09:35,000 --> 00:09:40,000 私が… 私が悪いんじゃないんだよ 88 00:09:42,007 --> 00:09:45,007 お母さま しっかりなさって 89 00:09:48,013 --> 00:09:55,020 私は… 私は お前が好きだったんだよ 90 00:09:55,020 --> 00:09:59,024 好きだったんだよ! だけど あの子が… 91 00:09:59,024 --> 00:10:03,028 アア… (間人皇女)お母さま… 92 00:10:03,028 --> 00:10:05,964 お母さまは 幻を見ていらっしゃる 93 00:10:05,964 --> 00:10:08,964 あの薬が切れると いつも そう 94 00:10:11,970 --> 00:10:15,974 蘇我入鹿どのが来ているのです 95 00:10:15,974 --> 00:10:22,981 大化の改新でお亡くなりになった 蘇我入鹿どのが そこに 96 00:10:22,981 --> 00:10:25,984 額田 そなたに見えるの? 97 00:10:25,984 --> 00:10:30,989 ええ 見えます 蘇我入鹿どのが… 98 00:10:30,989 --> 00:10:35,994 来ないで 来ないで 来ないで… 99 00:10:35,994 --> 00:10:40,999 (入鹿)大化の改新で 中大兄や 鎌足がしたことは 何だ? 100 00:10:40,999 --> 00:10:44,002 帝や日嗣の御子の 地位ばかり高く・ 101 00:10:44,002 --> 00:10:46,004 この世の神となり・ 102 00:10:46,004 --> 00:10:51,009 多くの豪族は ただ頭を押さえつけられるだけ 103 00:10:51,009 --> 00:10:53,011 民は幸せどころか・ 104 00:10:53,011 --> 00:10:56,014 帝の私有民になったに すぎないではないか 105 00:10:56,014 --> 00:11:01,019 まして 帝の威光を示すためと称して・ 106 00:11:01,019 --> 00:11:03,955 次から次への大工事 107 00:11:03,955 --> 00:11:10,962 その度に使役に駆り出される 民の血と汗を思ってみよ! 108 00:11:10,962 --> 00:11:14,966 この国は 怨嗟の声にあふれるが道理 109 00:11:14,966 --> 00:11:18,970 まして 国力をわきまえぬ 半島出兵だと? 110 00:11:18,970 --> 00:11:21,973 無謀なことよ 新羅には かなうまい! 111 00:11:21,973 --> 00:11:24,976 お黙り お黙り! 112 00:11:24,976 --> 00:11:27,976 我が国は負ける 113 00:11:29,981 --> 00:11:32,984 この戦には 必ず負ける! 114 00:11:32,984 --> 00:11:34,986 ヤーッ! 115 00:11:34,986 --> 00:11:54,005 ・~ 116 00:11:54,005 --> 00:11:56,007 帝… 117 00:11:56,007 --> 00:11:58,009 <斉明7年7月> 118 00:11:58,009 --> 00:12:04,015 <斉明帝は ここ筑紫 朝倉の仮宮で 身まかった> 119 00:12:04,015 --> 00:12:08,019 <御年68歳であった> 120 00:12:08,019 --> 00:12:14,025 ・~ 121 00:12:14,025 --> 00:12:16,027 <天智2年> 122 00:12:16,027 --> 00:12:19,030 <阿倍比羅夫らの率いる水軍は・ 123 00:12:19,030 --> 00:12:25,036 白村江において 唐 新羅軍に惨敗した> 124 00:12:25,036 --> 00:12:33,044 <この敗戦で 我が国の百済への 足がかりは 全く失われた> 125 00:12:33,044 --> 00:12:35,046 <それだけではない> 126 00:12:35,046 --> 00:12:40,051 <唐 新羅軍が 百済征服の余勢を駆って・ 127 00:12:40,051 --> 00:12:45,051 日本に来襲するかもしれない 危険も生じたのである> 128 00:12:49,060 --> 00:12:54,065 <過大の公租や労役の徴収 人馬の徴発で・ 129 00:12:54,065 --> 00:12:56,067 国土は荒れ果てていた> 130 00:12:56,067 --> 00:13:01,072 <外征の失敗を責める声が 中大兄に向けられるのは・ 131 00:13:01,072 --> 00:13:05,010 当然の成り行きであった> 132 00:13:05,010 --> 00:13:08,013 俺に どうしろというのだ? 133 00:13:08,013 --> 00:13:14,019 敗戦の責任を負って 死んで民に わびろとでもいうのか 134 00:13:14,019 --> 00:13:17,022 (鎌足の ため息) 135 00:13:17,022 --> 00:13:22,027 筑紫から 大海人皇子を・ 136 00:13:22,027 --> 00:13:25,027 お呼び戻しになることです 137 00:13:28,033 --> 00:13:32,037 弟を? さよう 138 00:13:32,037 --> 00:13:38,043 殿下は この際 表の政から お退きになることです 139 00:13:38,043 --> 00:13:43,048 いや それが 時宜に適しているというものです 140 00:13:43,048 --> 00:13:48,053 なるほど 弟をな 141 00:13:48,053 --> 00:13:55,060 特に 豪族たちの折衝は 大海人皇子に任せるのです 142 00:13:55,060 --> 00:13:58,063 俺には できぬが 大海人なら・ 143 00:13:58,063 --> 00:14:01,066 それができると申すか いやいや… 144 00:14:01,066 --> 00:14:08,066 そのほうが あなたの器量が ひと回り大きく見えるのですよ 145 00:14:16,014 --> 00:14:24,014 鎌足 そなた 確か 娘を2人 大海人の後宮に入れていたな 146 00:14:26,024 --> 00:14:30,028 大海人が 俺のあとを継いで 帝の位に就けば・ 147 00:14:30,028 --> 00:14:36,034 そなたの娘の産んだ皇子のうちの 誰かが皇位後継者となる 148 00:14:36,034 --> 00:14:41,034 すれば そなた 帝の外祖父というわけか 149 00:14:50,048 --> 00:14:58,048 今のお言葉 殿下の誠のご意思ですか? 150 00:15:00,058 --> 00:15:04,996 (笑い声) 151 00:15:04,996 --> 00:15:09,000 そなたが 俺の即位に あまりに反対するものだから・ 152 00:15:09,000 --> 00:15:11,002 つい 勘ぐりたくもなる 153 00:15:11,002 --> 00:15:18,002 だとすれば 鎌足 あきれ果てて 返す言葉もありません! 154 00:15:23,014 --> 00:15:25,014 (簪を捨てる音) 155 00:15:28,019 --> 00:15:31,022 20年… 156 00:15:31,022 --> 00:15:36,027 身も心もささげて 仕えてきた この鎌足に・ 157 00:15:36,027 --> 00:15:42,033 それが… それが この私に対するお言葉ですか? 158 00:15:42,033 --> 00:15:48,039 ・~ 159 00:15:48,039 --> 00:15:52,043 間人皇女のことさえなければ・ 160 00:15:52,043 --> 00:15:56,047 殿下は これまで 再々 ご即位ができたはず 161 00:15:56,047 --> 00:15:59,050 言うな 鎌足 162 00:15:59,050 --> 00:16:02,053 妹が 俺の后であろうとなかろうと・ 163 00:16:02,053 --> 00:16:05,053 そんなことは問題にならん 164 00:16:07,993 --> 00:16:11,997 俺は即位するぞ 俺は帝になる 165 00:16:11,997 --> 00:16:15,997 誰が何と言っても 帝になってみせる! 166 00:16:23,008 --> 00:16:26,011 間人 167 00:16:26,011 --> 00:16:30,015 どうかなさいました? お兄さま 168 00:16:30,015 --> 00:16:34,019 何を飲んでいるんだ? 牛の乳ですわ 169 00:16:34,019 --> 00:16:38,023 私 うんと栄養をつけなければ 170 00:16:38,023 --> 00:16:40,023 間人 171 00:16:43,028 --> 00:16:47,032 そなたに 話しておきたいことがある 172 00:16:47,032 --> 00:16:50,035 いや 怖いお顔 173 00:16:50,035 --> 00:16:54,035 お兄さまが そういうお顔なさると ろくなことがないんですもの 174 00:17:00,045 --> 00:17:03,048 真面目に聞いてくれ 175 00:17:03,048 --> 00:17:08,987 のう 間人 俺は即位するぞ 176 00:17:08,987 --> 00:17:10,989 まあ… 177 00:17:10,989 --> 00:17:16,995 ただ そなたを太后にすることはできん 178 00:17:16,995 --> 00:17:20,999 分かるな? 実の妹のそなたを太后には 179 00:17:20,999 --> 00:17:26,004 分かります ご心配なさらずとも 180 00:17:26,004 --> 00:17:28,004 そうか 181 00:17:34,012 --> 00:17:41,019 俺も そろそろ 40に手の届く年になった 182 00:17:41,019 --> 00:17:43,021 待ち過ぎた 183 00:17:43,021 --> 00:17:46,024 帝の位が空位の今・ 184 00:17:46,024 --> 00:17:50,028 日嗣の御子の俺が その位を継いで 悪いことがあるか? 185 00:17:50,028 --> 00:17:52,030 のう? 間人 186 00:17:52,030 --> 00:17:58,036 ええ 本当に おめでたいこと 187 00:17:58,036 --> 00:18:01,039 いいお后をお立てになれば? 188 00:18:01,039 --> 00:18:05,977 私は 赤ちゃんを 産めるだけで もう幸せ 189 00:18:05,977 --> 00:18:07,979 なに・ 190 00:18:07,979 --> 00:18:10,982 お兄さまの赤ちゃんですわ 191 00:18:10,982 --> 00:18:15,987 私 お兄さまの子供を 身ごもりました 192 00:18:15,987 --> 00:18:17,987 間人… 193 00:18:19,991 --> 00:18:22,994 本当にうれしい 194 00:18:22,994 --> 00:18:27,999 大好きなお兄さまの子供を 身ごもることができて 195 00:18:27,999 --> 00:18:31,002 うんと栄養をつけなければ 196 00:18:31,002 --> 00:18:35,002 うんと栄養をつけて 丈夫な子を産まなければ 197 00:18:39,010 --> 00:18:42,013 ンンッ! アアッ… 皇子さま… 198 00:18:42,013 --> 00:18:44,013 ンッ… 199 00:18:46,017 --> 00:18:48,017 アア… 200 00:18:52,023 --> 00:18:56,023 アア… アア… 201 00:19:03,034 --> 00:19:04,969 額田! 202 00:19:04,969 --> 00:19:07,972 どうなすったのです? 日嗣の御子さま 203 00:19:07,972 --> 00:19:09,974 いつもの皇子さまと… 204 00:19:09,974 --> 00:19:12,977 アア… 額田 205 00:19:12,977 --> 00:19:17,982 俺は 一生 帝になれぬかもしれぬ なぜです? 206 00:19:17,982 --> 00:19:22,987 このまま 即位もならず 日嗣の御子のままで終わるのか! 207 00:19:22,987 --> 00:19:25,990 (泣き声) 208 00:19:25,990 --> 00:19:27,992 皇子さま 209 00:19:27,992 --> 00:19:30,995 俺の即位を 邪魔しようとする奴がいるんだ! 210 00:19:30,995 --> 00:19:36,000 いいか? 額田 俺はな この国を新しく作り変えてきた 211 00:19:36,000 --> 00:19:41,005 ここで やめるわけにはいかんぞ いかんぞ 額田! 212 00:19:41,005 --> 00:19:44,008 額田! 日嗣の御子さま 213 00:19:44,008 --> 00:19:47,011 皇子さまが 帝の位に お就きになれないなんて そんな… 214 00:19:47,011 --> 00:19:52,016 額田 神に祈ってくれ 215 00:19:52,016 --> 00:19:55,019 そなたの神に祈ってくれ 額田! 216 00:19:55,019 --> 00:19:58,022 皇子さま 217 00:19:58,022 --> 00:20:00,024 (泣き声) 皇子さま 218 00:20:00,024 --> 00:20:03,027 祈れ! 皇子さま 219 00:20:03,027 --> 00:20:05,964 アア… 祈れ! 皇子さま 220 00:20:05,964 --> 00:20:07,966 祈れ! 皇子さま 221 00:20:07,966 --> 00:20:10,966 (泣き声) 222 00:20:15,006 --> 00:20:20,011 (男性)おめでとうございます! おめでとうございます! 223 00:20:20,011 --> 00:20:25,016 (歓声) 224 00:20:25,016 --> 00:20:28,016 (男性)おめでとうございます! 225 00:20:40,031 --> 00:20:44,035 (男依)殿下 おかえりなされ (大海人皇子)男依 今帰ったぞ 226 00:20:44,035 --> 00:20:47,038 (男依)永のお役目 ご苦労でした 227 00:20:47,038 --> 00:20:49,040 覚えていられますか? 228 00:20:49,040 --> 00:20:52,043 鎌足どののご子息 定恵どのです 229 00:20:52,043 --> 00:20:55,046 (定恵) ご帰還 おめでとうございます 230 00:20:55,046 --> 00:20:59,050 おお 定恵 そなた いつ唐から? 231 00:20:59,050 --> 00:21:00,985 つい先ごろ着いたばかりです 232 00:21:00,985 --> 00:21:02,987 それは よく無事だったな 233 00:21:02,987 --> 00:21:07,987 あちらの世情は厳しいのだろう? それは もう… 234 00:21:09,994 --> 00:21:14,999 唐と新羅は 我が国に 攻め込むつもりなのだろうか? 235 00:21:14,999 --> 00:21:18,002 いや 今のところは 高句麗に手を焼いていますので・ 236 00:21:18,002 --> 00:21:21,005 我が国までは… なるほど 237 00:21:21,005 --> 00:21:26,005 ですが 油断はできません 高句麗の次は 必ず 我が国に… 238 00:21:29,013 --> 00:21:31,013 (鵜野皇女) あなた… 239 00:21:35,019 --> 00:21:39,023 定恵 その話は あとで ゆっくり聞かせてもらおう 240 00:21:39,023 --> 00:21:43,027 これからは 俺を助けてくれよ 241 00:21:43,027 --> 00:21:45,029 はい 喜んで! 242 00:21:45,029 --> 00:21:55,039 ・~ 243 00:21:55,039 --> 00:21:58,042 あなた おかえりなさいませ 244 00:21:58,042 --> 00:22:03,047 (歓声) 245 00:22:03,047 --> 00:22:08,052 どういうことだ? この歓迎ぶりは 246 00:22:08,052 --> 00:22:13,057 あなたは この国の希望の星なのですよ 247 00:22:13,057 --> 00:22:15,059 希望の星? 248 00:22:15,059 --> 00:22:17,061 はい 249 00:22:17,061 --> 00:22:19,061 (歓声) 250 00:22:21,065 --> 00:22:26,070 そうか では 軍の固めは そなたがいなくとも… 251 00:22:26,070 --> 00:22:31,075 はい 耽羅とは常に連絡を取り 半島の兵団の動きは・ 252 00:22:31,075 --> 00:22:34,078 逐一 報告されております うむ… 253 00:22:34,078 --> 00:22:38,082 いざというときのために よく統率され 守りは十分ですが・ 254 00:22:38,082 --> 00:22:41,085 まあ 今のところ 半島には何の気配もありません 255 00:22:41,085 --> 00:22:46,085 そうか いやいや 長い間 ご苦労であったな ハハハッ… 256 00:22:48,092 --> 00:22:52,096 ハァ~ッ… ところで 大海人 257 00:22:52,096 --> 00:22:56,100 早速だが この度 新しい政策を・ 258 00:22:56,100 --> 00:22:59,103 そなたの名で 宣布しようと思うのだ 259 00:22:59,103 --> 00:23:03,040 私の名で? うむ… いや ひとつは・ 260 00:23:03,040 --> 00:23:09,046 豪族たちの身分に応じて 太刀 小太刀 盾 弓矢などを与え・ 261 00:23:09,046 --> 00:23:12,049 民部 家部を定めること 262 00:23:12,049 --> 00:23:16,053 これによって 豪族たちは 自分の意思で・ 263 00:23:16,053 --> 00:23:19,056 徴用もできれば 徴税もできる 264 00:23:19,056 --> 00:23:22,059 つまり 私有民を持つことになるのだな 265 00:23:22,059 --> 00:23:27,064 まあ これは 奴らが 以前から いちばん強く望んできたことゆえ 266 00:23:27,064 --> 00:23:30,067 ハハッ… いずれも大喜びするぞ 267 00:23:30,067 --> 00:23:32,069 いや 兄上… もうひとつは・ 268 00:23:32,069 --> 00:23:39,076 これまで 19階に分かれていた 官位を26に広げ… 269 00:23:39,076 --> 00:23:43,080 いや しかし なぜ私の名で? うむ… 270 00:23:43,080 --> 00:23:47,084 兄上が ご自分の政策として どうして宣布なされないんです? 271 00:23:47,084 --> 00:23:54,091 ハハハハッ… いやいや この鎌足が そうしろと言った 272 00:23:54,091 --> 00:24:02,033 人望高き あなたが 新政に参加することによりまして 273 00:24:02,033 --> 00:24:08,039 刷新の意を 広く民の中に 広めることになるわけです 274 00:24:08,039 --> 00:24:11,042 いや しかし… そなた 噂を聞かぬか? 275 00:24:11,042 --> 00:24:14,045 この度の半島出兵についても・ 276 00:24:14,045 --> 00:24:18,049 第一に反対したのは ただ1人 そなたであったとか 277 00:24:18,049 --> 00:24:22,053 もともと新政に対しては 批判的な立場であったとか 278 00:24:22,053 --> 00:24:25,056 いや… あ~ いやいや いやいや 279 00:24:25,056 --> 00:24:27,058 誠 「あばたも えくぼ」じゃ 280 00:24:27,058 --> 00:24:31,062 そなたの人気は うなぎ上りだのぅ 大海人 281 00:24:31,062 --> 00:24:34,065 兄上… うん どうだ? 282 00:24:34,065 --> 00:24:37,068 盃を干せ さあ さあ 干せ 283 00:24:37,068 --> 00:24:39,068 うん? 284 00:24:41,072 --> 00:24:52,083 ・~ 285 00:24:52,083 --> 00:24:56,087 大海人とは会っているのか? 286 00:24:56,087 --> 00:24:59,090 いいえ 287 00:24:59,090 --> 00:25:03,027 会いたくはないのか? 別に 288 00:25:03,027 --> 00:25:08,032 いいのだぞ 会っても 俺に遠慮することは何もない 289 00:25:08,032 --> 00:25:10,034 何を申されます 290 00:25:10,034 --> 00:25:14,038 日嗣の御子さまが お召しに なったから まいったのです 291 00:25:14,038 --> 00:25:21,045 フフッ… 俺が呼ばねば そなたは会いにも来ぬな 292 00:25:21,045 --> 00:25:25,049 お召しにならないのに 参上するわけにはまいりません 293 00:25:25,049 --> 00:25:29,053 大海人とは そうでもなかったであろう 294 00:25:29,053 --> 00:25:35,059 自分から 大海人の腕に抱かれに 行ったときも あるのではないのか 295 00:25:35,059 --> 00:25:42,066 でも 心は どなたにも差し上げておりません 296 00:25:42,066 --> 00:25:45,066 心は誰のものだ? 297 00:25:47,071 --> 00:25:50,074 神のものです 298 00:25:50,074 --> 00:25:54,078 そうか 299 00:25:54,078 --> 00:26:00,078 そなたを神ぐるみ自分のものに できたと思うたときもあったが… 300 00:26:05,022 --> 00:26:07,024 3年前の あのころ・ 301 00:26:07,024 --> 00:26:10,027 日嗣の御子さまと 大海人皇子さまは・ 302 00:26:10,027 --> 00:26:13,030 ご兄弟が お心をひとつにして・ 303 00:26:13,030 --> 00:26:17,034 必死に 国難に立ち向かって いらっしゃいました 304 00:26:17,034 --> 00:26:22,039 そんなお2人を 私 お慕いしておりました 305 00:26:22,039 --> 00:26:29,046 日嗣の御子さまも好きだったし 大海人皇子さまも 306 00:26:29,046 --> 00:26:34,051 2人を 同じだけ好きだったというのか 307 00:26:34,051 --> 00:26:36,053 ええ 308 00:26:36,053 --> 00:26:41,053 今は どうだ? 今でも そうです 309 00:26:45,062 --> 00:26:49,066 俺が好きか? ええ 310 00:26:49,066 --> 00:26:54,071 大海人も好きか? ええ 311 00:26:54,071 --> 00:26:57,074 優れたご兄弟の愛を受けて・ 312 00:26:57,074 --> 00:27:03,014 私は女として 幸せだったと思っております 313 00:27:03,014 --> 00:27:06,014 なるほどな 314 00:27:15,026 --> 00:27:29,040 ・~ 315 00:27:29,040 --> 00:27:34,045 大海人か よいところへ来た 316 00:27:34,045 --> 00:27:37,048 2人そろって 雪見ですか? 317 00:27:37,048 --> 00:27:41,052 ハハハハッ… そなたのことを話していたのだ 318 00:27:41,052 --> 00:27:45,056 ほう… どうせ ろくでもないことでしょう 319 00:27:45,056 --> 00:27:47,058 いやいや そうでもないぞ 320 00:27:47,058 --> 00:27:52,063 額田がな そなたのことを 今でも好いていると 321 00:27:52,063 --> 00:27:55,066 愛を感じていると 322 00:27:55,066 --> 00:27:57,068 日嗣の御子さま 323 00:27:57,068 --> 00:28:12,016 ・~ 324 00:28:12,016 --> 00:28:14,018 額田 325 00:28:14,018 --> 00:28:22,018 ・~ 326 00:28:24,028 --> 00:28:26,028 エイッ! 327 00:28:40,044 --> 00:28:44,048 いや すごい… 刃こぼれひとつ していないじゃないか 328 00:28:44,048 --> 00:28:48,052 定恵 このような業物を どうして隠していたのだ 329 00:28:48,052 --> 00:28:52,056 こちらに帰るとき 身を 守るためにと用意はしたのですが 330 00:28:52,056 --> 00:28:55,059 帰ってしまえば 太刀など不要のものとなり・ 331 00:28:55,059 --> 00:28:57,995 今まで 飛鳥寺に預けてあったのです 332 00:28:57,995 --> 00:29:01,999 しかし これじゃ 武器の差は歴然 333 00:29:01,999 --> 00:29:06,999 我が国が 唐や新羅に負けてしまうはずだ 334 00:29:09,006 --> 00:29:13,010 鉄の硬さが まるきり違うのです 335 00:29:13,010 --> 00:29:18,015 唐では 鉱石から 鉄を 精錬する技術が進んでおります 336 00:29:18,015 --> 00:29:20,017 それに比べて 我が国では・ 337 00:29:20,017 --> 00:29:24,021 あちらから渡ってきた馬具や 釣り鐘 鏡などを鋳つぶして・ 338 00:29:24,021 --> 00:29:27,024 太刀や鎧を作っている始末 339 00:29:27,024 --> 00:29:29,026 到底かないません 340 00:29:29,026 --> 00:29:31,028 定恵 そなた 341 00:29:31,028 --> 00:29:36,033 その鉄の精錬の技術を 学んではこなかったのか? 342 00:29:36,033 --> 00:29:38,035 (定恵)私も興味はありましたが・ 343 00:29:38,035 --> 00:29:41,038 十分に知り尽くすことは できませんでした 344 00:29:41,038 --> 00:29:44,041 しかし ひそかに技術者を・ 345 00:29:44,041 --> 00:29:48,045 我が国に呼び寄せることは できるはずです 346 00:29:48,045 --> 00:29:54,051 そなたの顔で それができるのか? ええ きっとできます 347 00:29:54,051 --> 00:29:57,054 頼もしいな 348 00:29:57,054 --> 00:30:00,991 俺たちの手で そのような剣を 作り出すことができれば・ 349 00:30:00,991 --> 00:30:03,994 天下無敵だ 350 00:30:03,994 --> 00:30:08,999 たとえ相手が唐であろうとも 恐れることはないのだ 351 00:30:08,999 --> 00:30:13,003 ハハハハッ… 352 00:30:13,003 --> 00:30:18,008 間違いないな? 赤兄 (赤兄)はい 間違いございません 353 00:30:18,008 --> 00:30:21,011 留学僧の中で見ていた者があると いうのですから・ 354 00:30:21,011 --> 00:30:24,014 これ以上 確かなことは… 355 00:30:24,014 --> 00:30:29,019 このことは 俺とそなたの 胸の内にだけ収めておこう 356 00:30:29,019 --> 00:30:34,024 誰にも しゃべるでないぞ はい もちろんでございます 357 00:30:34,024 --> 00:30:37,027 では 鎌足をここへ呼べ 358 00:30:37,027 --> 00:30:40,030 はっ! はい 359 00:30:40,030 --> 00:30:57,982 ・~ 360 00:30:57,982 --> 00:31:00,985 鎌足 361 00:31:00,985 --> 00:31:05,990 そなた 定恵のことは聞いておるか? 362 00:31:05,990 --> 00:31:09,994 息子が何か? 知らんのか 363 00:31:09,994 --> 00:31:12,997 ハッハッハッハッ… 364 00:31:12,997 --> 00:31:18,002 そなた 定恵が何を しでかしているか 何も知らんのか 365 00:31:18,002 --> 00:31:22,006 定恵を 大海人皇子に お仕えさせることは・ 366 00:31:22,006 --> 00:31:27,011 あらかじめ お断りしておいたはずです 367 00:31:27,011 --> 00:31:30,014 定恵はな 368 00:31:30,014 --> 00:31:34,018 新羅から遣わされた間諜だ 369 00:31:34,018 --> 00:31:37,021 我が朝廷の様子を探り それを新羅に・ 370 00:31:37,021 --> 00:31:41,025 ひそかに報告する役目を帯びて 帰国しておる 371 00:31:41,025 --> 00:31:44,028 (笑い声) 372 00:31:44,028 --> 00:31:48,032 殿下は ご冗談が過ぎる 373 00:31:48,032 --> 00:31:51,035 何人によらず 留学僧の全ては・ 374 00:31:51,035 --> 00:31:56,040 新羅の国を通らなければ 帰国の手だてがございません 375 00:31:56,040 --> 00:31:58,042 そのとおりだ 376 00:31:58,042 --> 00:32:02,046 ただ定恵は 留学中 唐や新羅の色に染まり… 377 00:32:02,046 --> 00:32:05,049 いやいや 定恵に限って そのような 378 00:32:05,049 --> 00:32:08,052 断じてないとは言い切れまい 379 00:32:08,052 --> 00:32:11,055 これまで 数多くの学生や留学僧たちが・ 380 00:32:11,055 --> 00:32:14,058 戦のために人質となっている 381 00:32:14,058 --> 00:32:17,061 何ゆえ 定恵だけが はやばやと帰国した? 382 00:32:17,061 --> 00:32:23,067 殿下 定恵は 亡き孝徳帝の皇子でございます 383 00:32:23,067 --> 00:32:27,071 新羅の将兵も そのことは よく承知のうえで・ 384 00:32:27,071 --> 00:32:30,074 特別な計らいをもって… 385 00:32:30,074 --> 00:32:34,078 亡き孝徳帝の血を 真っ当に継ぎながら・ 386 00:32:34,078 --> 00:32:37,081 僧侶に 甘んじていなければならぬ身 387 00:32:37,081 --> 00:32:44,088 野望を封じられた いまいましさが 敵の間諜を引き受けさせた 388 00:32:44,088 --> 00:32:48,092 いや… 根も葉もないことです 389 00:32:48,092 --> 00:32:51,095 証言した者がいる 390 00:32:51,095 --> 00:32:55,099 定恵が しばしば 新羅の要人と 密議を重ねていたとな 391 00:32:55,099 --> 00:32:57,101 誰が そのような… 392 00:32:57,101 --> 00:33:01,038 誰でもよい 誰でも… 393 00:33:01,038 --> 00:33:07,044 俺が聞いたのだ 俺が この耳で聞いたのだ 394 00:33:07,044 --> 00:33:13,044 殿下は そのことを うのみに信じておられるのですか 395 00:33:18,055 --> 00:33:24,061 信じているか いないか そんなことも どうでもよい 396 00:33:24,061 --> 00:33:27,064 ただ… 397 00:33:27,064 --> 00:33:32,069 そなたが俺に 真実 忠誠を 誓ってくれるというのなら・ 398 00:33:32,069 --> 00:33:36,073 定恵を このままに放ってはおけぬはずだ 399 00:33:36,073 --> 00:33:38,073 違うかな? 400 00:33:41,078 --> 00:33:43,080 鎌足 401 00:33:43,080 --> 00:33:47,084 俺は ただ そなたの美しい忠誠心を・ 402 00:33:47,084 --> 00:33:50,087 この目で見たいだけだ 403 00:33:50,087 --> 00:34:10,040 ・~ 404 00:34:10,040 --> 00:34:13,043 (鎌足)額田どの 405 00:34:13,043 --> 00:34:16,046 例年の厄よけの神事を行いますが 406 00:34:16,046 --> 00:34:22,052 そなた 自分の背後を 振り返ってみるといい 407 00:34:22,052 --> 00:34:26,052 魔神が うじゃうじゃと 踊りまくっておるわ 408 00:34:28,058 --> 00:34:31,061 分からんと見えるな 409 00:34:31,061 --> 00:34:36,061 火と水よ ハハハハッ… 410 00:34:39,069 --> 00:34:43,073 火と水? 411 00:34:43,073 --> 00:34:45,075 火と水? 412 00:34:45,075 --> 00:34:50,080 どういう意味かは知らんが あまり気にするなよ 413 00:34:50,080 --> 00:34:54,084 そなたのことで 俺と兄上の関係が こじれるなんて・ 414 00:34:54,084 --> 00:34:58,021 ありっこないのだ そうだといいんですけれど 415 00:34:58,021 --> 00:35:02,025 鎌足どのが 変なこと おっしゃるものだから 416 00:35:02,025 --> 00:35:04,027 俺たちは共に・ 417 00:35:04,027 --> 00:35:08,031 そなたと知り合えたことを とても喜んでおるのだ 418 00:35:08,031 --> 00:35:14,037 額田は俺たちの共通の宝 共通の心だとな 419 00:35:14,037 --> 00:35:17,040 ハハッ… 兄上だって そうおっしゃっておるのだ 420 00:35:17,040 --> 00:35:19,042 額田を通して・ 421 00:35:19,042 --> 00:35:25,042 俺たち兄弟は より一層 心が ひとつに結ばれたのだとな 422 00:35:27,050 --> 00:35:32,055 もし 俺と兄上の間に しこりがあるとしたら・ 423 00:35:32,055 --> 00:35:35,058 それは 定恵なのだ 424 00:35:35,058 --> 00:35:39,062 定恵どのが? どうして定恵どのが? 425 00:35:39,062 --> 00:35:45,068 兄上は 定恵が 俺の側近として 政の相談相手になってることが・ 426 00:35:45,068 --> 00:35:47,070 お気に召さないのだ 427 00:35:47,070 --> 00:35:51,074 それで 鎌足にも つらく当たってるらしい 428 00:35:51,074 --> 00:35:55,074 そうでしたの 定恵どののことが… 429 00:35:59,016 --> 00:36:03,020 この度の赤兄の 目覚ましい働きに対して・ 430 00:36:03,020 --> 00:36:07,024 何か褒美を与えようと思うてな 431 00:36:07,024 --> 00:36:10,027 わざわざ そのようなことで 私をお呼びになったの? 432 00:36:10,027 --> 00:36:12,029 のう 間人 433 00:36:12,029 --> 00:36:17,034 こうして見ると 赤兄も なかなか男らしいな 434 00:36:17,034 --> 00:36:22,039 堂々とした精悍な風貌が 出ている うん? 435 00:36:22,039 --> 00:36:24,041 そのようなこと 私には よく分かりません 436 00:36:24,041 --> 00:36:28,045 ハハハハッ… まあ そう言わずに よ~く見てやれ 437 00:36:28,045 --> 00:36:33,045 赤兄 もっと そばへ来い あっ はい 438 00:36:37,054 --> 00:36:42,059 さすがは 蘇我一族の長だな 439 00:36:42,059 --> 00:36:44,061 やはり血は争えぬ 440 00:36:44,061 --> 00:36:48,065 かつて 大和で 最も強力な豪族であった血が・ 441 00:36:48,065 --> 00:36:50,067 脈々と流れているな 442 00:36:50,067 --> 00:36:53,070 (間人皇女)お兄さま 私 帰ります 443 00:36:53,070 --> 00:36:56,070 たんと ご褒美でも お与えに… 間人 444 00:36:58,008 --> 00:37:02,008 赤兄に与える褒美とは そなたのことだ 445 00:37:06,016 --> 00:37:11,021 そなたを赤兄に授ける 446 00:37:11,021 --> 00:37:15,021 間人 赤兄の后になれ 447 00:37:19,029 --> 00:37:24,034 フフフフッ… アハハハッ! 448 00:37:24,034 --> 00:37:28,038 お兄さま 真面目な顔して そのようなこと… 449 00:37:28,038 --> 00:37:30,040 おかしい 450 00:37:30,040 --> 00:37:33,043 お兄さま… 451 00:37:33,043 --> 00:37:35,045 間人 452 00:37:35,045 --> 00:37:41,045 俺は 赤兄に約束したのだ そなたを后にやると 453 00:37:44,054 --> 00:37:48,054 お兄さま 本気で? 454 00:37:50,060 --> 00:37:53,063 私に 宮中から出ろとおっしゃるの? 455 00:37:53,063 --> 00:37:57,067 お兄さまのそばにいては いけないと おっしゃるの? 456 00:37:57,067 --> 00:37:59,067 間人 457 00:38:02,005 --> 00:38:05,005 俺は約束したのだ 赤兄に 458 00:38:08,011 --> 00:38:13,016 お兄さま どうかなすったの? 459 00:38:13,016 --> 00:38:17,020 私の気持ちを いちばん よくご存じのはずのお兄さまが・ 460 00:38:17,020 --> 00:38:21,024 まさか… まさか そのようなことを… 461 00:38:21,024 --> 00:38:26,024 これは俺の命令だ 命令だ 462 00:38:29,032 --> 00:38:32,035 よくも… よくも そのようなことが・ 463 00:38:32,035 --> 00:38:34,037 おっしゃれるわね 464 00:38:34,037 --> 00:38:39,042 そのような 皇族でもない そのような男の后になれなどと… 465 00:38:39,042 --> 00:38:48,051 ・~ 466 00:38:48,051 --> 00:38:51,054 いいえ 467 00:38:51,054 --> 00:38:55,058 できるはずがないわ 468 00:38:55,058 --> 00:38:57,058 できるはずがない 469 00:39:00,997 --> 00:39:02,999 赤兄どの 470 00:39:02,999 --> 00:39:13,009 ・~ 471 00:39:13,009 --> 00:39:20,016 私… お兄さまの子供を 身ごもっているんですよ 472 00:39:20,016 --> 00:39:24,016 赤兄は何もかも承知しているぞ 473 00:39:26,022 --> 00:39:29,025 (赤兄) ありがたいことでございます 474 00:39:29,025 --> 00:39:34,030 日嗣の御子の妹皇女を 我が后にいただけるとは 475 00:39:34,030 --> 00:39:37,033 家臣として これ以上の冥利はございません 476 00:39:37,033 --> 00:39:43,039 終生 大事に お慈しみいたす所存にございます 477 00:39:43,039 --> 00:39:47,043 間人 478 00:39:47,043 --> 00:39:50,043 そなたが 俺の子を産むことはならん 479 00:39:53,049 --> 00:39:55,051 赤兄の子を産め 480 00:39:55,051 --> 00:39:57,988 赤兄の后になって 赤兄の子を産むのだ 481 00:39:57,988 --> 00:40:00,991 いや! お兄さま! いや! 482 00:40:00,991 --> 00:40:04,995 なぜ・ いや… お兄さまの子供です! 483 00:40:04,995 --> 00:40:06,997 なぜ・ いや… これは命令だ! 484 00:40:06,997 --> 00:40:08,999 いや! お願い お兄さま! どうして… 485 00:40:08,999 --> 00:40:13,003 命令だ お兄さま… お兄さま! 486 00:40:13,003 --> 00:40:17,007 なぜ・ お兄さま お兄さま! 487 00:40:17,007 --> 00:40:23,013 ・~ 488 00:40:23,013 --> 00:40:25,015 お兄さま… 489 00:40:25,015 --> 00:40:27,017 (泣き声) 490 00:40:27,017 --> 00:40:29,019 お兄さま… 491 00:40:29,019 --> 00:40:36,019 ・~ 492 00:40:39,029 --> 00:40:41,031 去年の雪の日に・ 493 00:40:41,031 --> 00:40:46,036 そなたが 俺と兄上とを同じだけ 愛していると言ったのだったな 494 00:40:46,036 --> 00:40:49,039 ええ 495 00:40:49,039 --> 00:40:53,043 それでいいのだと 俺にも ようやく思えてきたのだよ 496 00:40:53,043 --> 00:40:56,980 それならば うれしいです 497 00:40:56,980 --> 00:41:00,984 俺も年を取ったのかもしれんな 498 00:41:00,984 --> 00:41:06,990 何年か前は そなたを 兄上に 奪い去られたという思いが・ 499 00:41:06,990 --> 00:41:09,993 心の底から拭い去れなかった 500 00:41:09,993 --> 00:41:14,998 だが これでいいのだな 501 00:41:14,998 --> 00:41:19,002 そなたを俺だけのものに しようとさえ思わなければ・ 502 00:41:19,002 --> 00:41:22,002 こんな楽な気持ちになれるのだ 503 00:41:28,011 --> 00:41:30,013 匂わないか? えっ? 504 00:41:30,013 --> 00:41:33,016 梅の香り 505 00:41:33,016 --> 00:41:37,020 ハッ… そこ そこだわ 506 00:41:37,020 --> 00:41:48,031 ・~ 507 00:41:48,031 --> 00:41:55,038 額田 そなたの好きな梅の花だ 508 00:41:55,038 --> 00:41:57,040 思い出します 509 00:41:57,040 --> 00:42:06,049 ・~ 510 00:42:06,049 --> 00:42:10,049 俺は 今でも そなたが好きだ 511 00:42:14,057 --> 00:42:20,063 そなたが 梅の花が好きなように 俺は そなたが好きだ 512 00:42:20,063 --> 00:42:23,066 皇子さま 皇子さま… 513 00:42:23,066 --> 00:42:43,086 ・~ 514 00:42:43,086 --> 00:43:03,039 ・~ 515 00:43:03,039 --> 00:43:21,039 ・~ 516 00:43:26,062 --> 00:43:30,066 (定恵)ハハハハッ… さあ 父上 517 00:43:30,066 --> 00:43:33,069 よいしょ… 518 00:43:33,069 --> 00:43:35,069 (定恵)ハァ… 519 00:43:38,074 --> 00:43:40,076 (定恵)ああ… 520 00:43:40,076 --> 00:43:45,081 畝傍 耳成 香具山 521 00:43:45,081 --> 00:43:50,086 ここから見ると 大和三山が ひと目に見えますね 522 00:43:50,086 --> 00:43:56,026 この多武峰一帯は 大体 中臣家の地盤で・ 523 00:43:56,026 --> 00:44:00,030 そなたにも 一度 見ておいてもらおうと思ってな 524 00:44:00,030 --> 00:44:03,030 ああ… そうですか 525 00:44:05,035 --> 00:44:10,040 それならば… 父上は 私を実の子と? 526 00:44:10,040 --> 00:44:13,043 何をおっしゃるのです 527 00:44:13,043 --> 00:44:16,046 これまでも実の子同様にして… 528 00:44:16,046 --> 00:44:20,050 いいえ 私は 父上の本当の子供ではない 529 00:44:20,050 --> 00:44:22,052 孝徳帝の種なのだと・ 530 00:44:22,052 --> 00:44:25,055 父上からも言われ 人からも言われてきましたけれど 531 00:44:25,055 --> 00:44:29,059 そのようなことは ちっとも うれしいことではなかった 532 00:44:29,059 --> 00:44:34,064 私は 父上を 実の父と思い お慕いしていたかった 533 00:44:34,064 --> 00:44:38,068 そなたが 帝の血さえ 受け継いでいなければ… 534 00:44:38,068 --> 00:44:43,073 でも… でも もう そのことは 忘れてくださるのでしょう? 535 00:44:43,073 --> 00:44:45,075 ここに私を連れてきてくださり・ 536 00:44:45,075 --> 00:44:49,079 中臣家の地盤を見ろと おっしゃるからには… 537 00:44:49,079 --> 00:44:55,018 父上 私を中臣家の長子として… そうですね? 538 00:44:55,018 --> 00:45:00,023 私は 帝の血など 捨ててしまいたいのです 身も心も 539 00:45:00,023 --> 00:45:04,023 身分は低くても 中臣家の子孫でいたいのです! 540 00:45:07,030 --> 00:45:13,036 そなた さぞかし このわしを恨んでおろうな 541 00:45:13,036 --> 00:45:18,041 僅か 13歳かそこらで・ 542 00:45:18,041 --> 00:45:22,045 留学僧として 遠い海の向こうの・ 543 00:45:22,045 --> 00:45:26,049 唐の国に追いやってしまった 544 00:45:26,049 --> 00:45:29,049 いえ 決して そのようなことは 545 00:45:31,054 --> 00:45:34,057 うれしいです 546 00:45:34,057 --> 00:45:38,061 今日 ここに 父上が 連れてきてくださったことは・ 547 00:45:38,061 --> 00:45:41,061 本当に うれしい 548 00:45:47,070 --> 00:45:54,077 ・~ 549 00:45:54,077 --> 00:45:59,015 (定恵)中臣家は 代々 宮中の神事を司る家柄だったとか 550 00:45:59,015 --> 00:46:04,020 こんな山奥に本領があるのも その名残りでしょうか 551 00:46:04,020 --> 00:46:10,020 じゃ 父上は この辺りで 暗殺の計画を練られたのですか? 552 00:46:19,035 --> 00:46:21,037 日嗣の御子と父上が・ 553 00:46:21,037 --> 00:46:26,042 この山の中で 蘇我入鹿の暗殺の 密談をなさったとか 554 00:46:26,042 --> 00:46:29,042 どの辺りなんでしょうか 555 00:46:31,047 --> 00:46:33,047 この辺りが… 556 00:46:35,051 --> 00:46:38,054 父上… 557 00:46:38,054 --> 00:46:42,058 父上! 父上! 558 00:46:42,058 --> 00:46:44,058 ハッ・ 559 00:46:46,062 --> 00:46:48,064 (刺す音) 560 00:46:48,064 --> 00:46:50,064 父上ーっ! 561 00:46:52,068 --> 00:46:56,005 ち… 父上… 562 00:46:56,005 --> 00:47:03,012 ・~ 563 00:47:03,012 --> 00:47:06,015 (うなされ声) 564 00:47:06,015 --> 00:47:09,018 アアッ! 565 00:47:09,018 --> 00:47:12,021 定恵が? 定恵が殺された? 566 00:47:12,021 --> 00:47:15,024 (男依)はい それも・ 567 00:47:15,024 --> 00:47:19,028 鎌足どのの命じる 刺客どもの手に かかって… 568 00:47:19,028 --> 00:47:27,036 ええっ? 一体 どういうことだ? 鎌足が? 569 00:47:27,036 --> 00:47:32,036 鎌足が殺させたというのか? そういうことになります 570 00:47:35,044 --> 00:47:37,046 (女官たちの泣き声) 571 00:47:37,046 --> 00:47:39,048 日嗣の御子さまは? 572 00:47:39,048 --> 00:47:41,050 日嗣の御子さまは こちらに いらっしゃるでしょう? 573 00:47:41,050 --> 00:47:43,052 (女官)はい… 574 00:47:43,052 --> 00:47:46,055 どうしたのです? そなたたちまで 575 00:47:46,055 --> 00:47:49,058 明け方に 大騒ぎになりまして・ 576 00:47:49,058 --> 00:47:52,061 みんなで 手分けして捜しましたところ・ 577 00:47:52,061 --> 00:47:55,999 おいたわしや ご自害なされて… 578 00:47:55,999 --> 00:48:01,004 まあ… じゃ 定恵どのは やはり ご自害を 579 00:48:01,004 --> 00:48:03,006 (女官)定恵どのですって? 580 00:48:03,006 --> 00:48:07,010 間人皇女さまが お亡くなりになったのです! 581 00:48:07,010 --> 00:48:14,017 池の中へ 身を投げて 死んでおしまいになったのです! 582 00:48:14,017 --> 00:48:17,020 間人皇女さまが… 583 00:48:17,020 --> 00:48:24,027 ・~ 584 00:48:24,027 --> 00:48:27,030 額田か 585 00:48:27,030 --> 00:48:30,030 見てやってくれ この顔 586 00:48:32,035 --> 00:48:35,038 きれいな顔だ 587 00:48:35,038 --> 00:48:38,041 安らかな顔だ 588 00:48:38,041 --> 00:48:43,046 ・~ 589 00:48:43,046 --> 00:48:47,046 さぞかし 俺を恨んで死んだであろうに 590 00:48:49,052 --> 00:48:53,056 不思議だな 591 00:48:53,056 --> 00:48:55,992 本当に不思議だな 592 00:48:55,992 --> 00:49:00,997 この顔 きれいだ 593 00:49:00,997 --> 00:49:02,997 安らかだ 594 00:49:06,002 --> 00:49:16,012 (泣き声) 595 00:49:16,012 --> 00:49:22,018 は… 間人… 596 00:49:22,018 --> 00:49:29,018 (泣き声) 597 00:49:35,031 --> 00:49:42,038 (泣き声) 598 00:49:42,038 --> 00:50:00,990 ・~ 599 00:50:00,990 --> 00:50:05,995 (鎌足) このようなお姿になろうとは… 600 00:50:05,995 --> 00:50:11,000 俺のために死んでくれた 601 00:50:11,000 --> 00:50:15,004 胸中 お察し申します 602 00:50:15,004 --> 00:50:20,009 定恵のことは聞いた 603 00:50:20,009 --> 00:50:23,012 そなたも さぞかし… 604 00:50:23,012 --> 00:50:29,018 ・~ 605 00:50:29,018 --> 00:50:31,018 皇子 606 00:50:33,022 --> 00:50:41,022 皇子は 遠からず… 遠からず ご即位を 607 00:50:44,033 --> 00:50:48,037 そうだな 608 00:50:48,037 --> 00:50:51,040 これで俺も即位ができる 609 00:50:51,040 --> 00:50:58,040 ・~ 610 00:51:02,985 --> 00:51:08,991 <前年の3月 都は 大和から琵琶湖のほとり・ 611 00:51:08,991 --> 00:51:11,994 近江の大津に移された> 612 00:51:11,994 --> 00:51:14,997 <万一の唐の 侵略に対し・ 613 00:51:14,997 --> 00:51:16,999 近江のほうが 国防上・ 614 00:51:16,999 --> 00:51:19,001 安全であるというのが・ 615 00:51:19,001 --> 00:51:21,003 遷都の理由だったが・ 616 00:51:21,003 --> 00:51:28,010 ほぼ1年が過ぎ 人々の脳裏からも 唐の脅威は薄れていった> 617 00:51:28,010 --> 00:51:33,015 ♪(竪琴の演奏) 618 00:51:33,015 --> 00:51:51,033 ♪~ 619 00:51:51,033 --> 00:51:57,039 <中大兄は この年の1月3日に即位した> 620 00:51:57,039 --> 00:52:01,043 <6年間 空位のままであった 帝の座に就き・ 621 00:52:01,043 --> 00:52:04,043 天智帝となったのである> 622 00:52:08,050 --> 00:52:11,053 (大友皇子) 「天 人と共に合応えて・ 623 00:52:11,053 --> 00:52:15,057 その政 これ新たなり」 624 00:52:15,057 --> 00:52:18,060 「皇明 日月と光り・ 625 00:52:18,060 --> 00:52:20,062 帝徳 天地に載せたもう」 626 00:52:20,062 --> 00:52:22,064 「三才 並 泰昌」 627 00:52:22,064 --> 00:52:26,064 「万国 臣義を表す」 628 00:52:30,072 --> 00:52:35,077 いやぁ お見事 大した名文ですな 629 00:52:35,077 --> 00:52:41,083 お若いのに よく そのような 名文をものにされますな 630 00:52:41,083 --> 00:52:44,086 大友皇子は 生まれながらにして・ 631 00:52:44,086 --> 00:52:48,090 文武の材幹は 持ち合わせておられる 632 00:52:48,090 --> 00:52:50,092 ハハハハッ… 633 00:52:50,092 --> 00:52:54,096 いや 今ひとつ 格調に欠けるところはあるが・ 634 00:52:54,096 --> 00:52:57,033 終わりのほうは ようなったのぅ 635 00:52:57,033 --> 00:53:02,038 はい 父上に言われましたので 何度も手を入れました 636 00:53:02,038 --> 00:53:05,041 うむ… そうか 637 00:53:05,041 --> 00:53:07,043 どうだろうな 638 00:53:07,043 --> 00:53:12,048 この度 発布される律令の前文に… 639 00:53:12,048 --> 00:53:14,050 これをお使いになるんですか? 640 00:53:14,050 --> 00:53:18,054 今少し無駄を省けば それなりの 格調は出てくると思うが 641 00:53:18,054 --> 00:53:22,058 しかし 朝廷が発布する律令の前文は… 642 00:53:22,058 --> 00:53:26,062 いや これは失礼でございますが・ 643 00:53:26,062 --> 00:53:30,066 大友皇子さまが お書きに なったのものでは ちょっと… 644 00:53:30,066 --> 00:53:32,068 これは代筆だ 645 00:53:32,068 --> 00:53:36,072 余は 大友皇子に代筆をさせたのだ 646 00:53:36,072 --> 00:53:43,079 そうですか いや 私は 通常 律令の前文というものは・ 647 00:53:43,079 --> 00:53:45,081 帝が直接… 648 00:53:45,081 --> 00:53:49,085 これまでにも しばしば そなたの 代筆で 勅を済ませたこともある 649 00:53:49,085 --> 00:53:52,088 大友皇子が 文を奏したからというて・ 650 00:53:52,088 --> 00:53:57,026 別に不都合はあるまい のう? 大海人 651 00:53:57,026 --> 00:53:59,028 いい文章です 652 00:53:59,028 --> 00:54:05,034 私に書けと言われましても とても このように うまくは… 653 00:54:05,034 --> 00:54:08,037 そうであろう 654 00:54:08,037 --> 00:54:12,041 十市皇女との縁組みが整えば・ 655 00:54:12,041 --> 00:54:15,044 そなたも 頼りになる婿を持つことになるな 656 00:54:15,044 --> 00:54:22,051 ええ 十市皇女の将来も固まり 額田も喜びましょう 657 00:54:22,051 --> 00:54:26,055 いやぁ 律令に このような文章が加えられれば・ 658 00:54:26,055 --> 00:54:29,058 我々も鼻が高うございます 659 00:54:29,058 --> 00:54:33,062 「錦上 花を添える」とは このことでございますな 大王 660 00:54:33,062 --> 00:54:36,062 ハハハハッ… 661 00:54:40,036 --> 00:54:42,038 <その月の吉日> 662 00:54:42,038 --> 00:54:47,043 <額田と大海人の間に生まれた 十市皇女は・ 663 00:54:47,043 --> 00:54:50,043 大友皇子の后となった> 664 00:54:55,985 --> 00:54:59,989 (鏡女王) あなたも出ればよかったのに 665 00:54:59,989 --> 00:55:02,992 私には母親の資格なんかないわ 666 00:55:02,992 --> 00:55:06,996 あんな晴れの席に出るようなこと 667 00:55:06,996 --> 00:55:08,998 (鏡女王)…なんて・ 668 00:55:08,998 --> 00:55:12,001 自分をわきまえてるようなこと 言ってるけれど・ 669 00:55:12,001 --> 00:55:16,005 結局 あなたの身勝手なのよ 670 00:55:16,005 --> 00:55:22,011 十市皇女は あなたの姿が 見えなくて 寂しかったでしょうよ 671 00:55:22,011 --> 00:55:24,013 そうかもしれない 672 00:55:24,013 --> 00:55:28,017 でも 私が出れば 姫の母親ということで・ 673 00:55:28,017 --> 00:55:30,019 どうしても 大海人皇子さまと・ 674 00:55:30,019 --> 00:55:34,023 肩を並べて 座らなければならないでしょう 675 00:55:34,023 --> 00:55:37,026 しかも 帝の前で 676 00:55:37,026 --> 00:55:40,029 どうせ そんなことだろうと思った 677 00:55:40,029 --> 00:55:45,034 あなたが出れば 私だって 大きな顔して 出席できたのに 678 00:55:45,034 --> 00:55:48,037 帝も周囲の人たちも・ 679 00:55:48,037 --> 00:55:51,974 この縁組みを心から 喜んでくださっているのだし・ 680 00:55:51,974 --> 00:55:58,981 私も 姫さえ幸せになってくれれば それでいいの 681 00:55:58,981 --> 00:56:02,985 きっと これで 姫も幸せに… 682 00:56:02,985 --> 00:56:06,989 あの方は どうして 今日のお式に お出にならなかったのかしら? 683 00:56:06,989 --> 00:56:10,993 うむ… 気になるんでしょう? あなた 684 00:56:10,993 --> 00:56:16,999 別に… 気にしてるのは そなたではないのか 685 00:56:16,999 --> 00:56:22,004 そう 気にしていないと言っては 嘘になります 686 00:56:22,004 --> 00:56:26,008 ほかの后なんか ほとんど 私の敵ではないけれど・ 687 00:56:26,008 --> 00:56:29,011 あのお方だけは別 688 00:56:29,011 --> 00:56:34,016 油断ができない どうして それほどに? 689 00:56:34,016 --> 00:56:39,021 あなたの心が 今でも あの方から離れていないからです 690 00:56:39,021 --> 00:56:42,024 気を回すなよ 691 00:56:42,024 --> 00:56:46,028 近ごろでは 会うことなど めったに ないのだから 692 00:56:46,028 --> 00:56:50,032 あなたのほうでは いつでも お会いになりたいんでしょう? 693 00:56:50,032 --> 00:56:52,968 したたかな女 694 00:56:52,968 --> 00:56:56,972 帝と日嗣の御子のお2人を いいように手玉に取るなんて 695 00:56:56,972 --> 00:57:01,977 よせ おまけに 今度の縁組みで・ 696 00:57:01,977 --> 00:57:05,981 あの方も揺るぎのない立場を 得たことになるわ 697 00:57:05,981 --> 00:57:09,985 ゆくゆく 大友皇子が 日嗣の御子にでもなれば・ 698 00:57:09,985 --> 00:57:12,988 十市皇女は太后 699 00:57:12,988 --> 00:57:14,990 あの方は太后の母 700 00:57:14,990 --> 00:57:16,990 馬鹿な… 701 00:57:19,995 --> 00:57:22,998 なぜ大友が 日嗣の御子になれるのだ 702 00:57:22,998 --> 00:57:27,002 父上は そのおつもりよ きっと 冗談じゃない 703 00:57:27,002 --> 00:57:29,004 私には分かります 704 00:57:29,004 --> 00:57:33,008 いいか? 大友の母親は・ 705 00:57:33,008 --> 00:57:37,012 身分の卑しい伊賀国の国造の娘だ 706 00:57:37,012 --> 00:57:39,014 そんな女が産んだ皇子が・ 707 00:57:39,014 --> 00:57:42,017 日嗣の御子になれるはずは ないじゃないか 708 00:57:42,017 --> 00:57:44,019 でも このごろの父上の・ 709 00:57:44,019 --> 00:57:48,023 あの皇子への傾き方は ただ事ではないわ 710 00:57:48,023 --> 00:57:52,962 たかが 采女ふぜいの産んだ子を まるで なめんばかりに… 711 00:57:52,962 --> 00:57:54,964 そのうちに きっと あなたを差し置いて・ 712 00:57:54,964 --> 00:57:58,968 あの大友皇子を 政の中心に据えようとなさるわ 713 00:57:58,968 --> 00:58:00,970 よせ 714 00:58:00,970 --> 00:58:02,972 (ため息) 715 00:58:02,972 --> 00:58:04,974 帝が どんな方だか・ 716 00:58:04,974 --> 00:58:08,978 お忘れになったわけでは ないでしょう? 717 00:58:08,978 --> 00:58:10,980 一度こうと決めれば・ 718 00:58:10,980 --> 00:58:12,982 これまでの つながりなど・ 719 00:58:12,982 --> 00:58:15,985 全て 壊しておしまいになるわ 720 00:58:15,985 --> 00:58:20,990 あの陰険で残酷な やり口を あなただって… 721 00:58:20,990 --> 00:58:23,993 今のうちに なんとかしなくては… 722 00:58:23,993 --> 00:58:26,996 でなくては あなたに どんなことが降りかかるか 723 00:58:26,996 --> 00:58:28,998 黙れ! 724 00:58:28,998 --> 00:58:32,001 そなた 実の父のことを ちと悪く言い過ぎなのだ 725 00:58:32,001 --> 00:58:36,005 実の父だから 魂胆が分かるんです 726 00:58:36,005 --> 00:58:39,008 あなたは 人がよすぎるのよ 727 00:58:39,008 --> 00:58:43,012 父に騙されているのよ うるさい! 728 00:58:43,012 --> 00:58:48,012 これまで 心をひとつにし この国を支えてきたのだ 729 00:58:50,019 --> 00:58:52,955 俺は兄上のあとを継ぎ・ 730 00:58:52,955 --> 00:58:56,955 いずれ 帝の位に就くのは 周知のこと 731 00:58:58,961 --> 00:59:02,965 今更 兄上が俺を裏切るなど そんなわけはない 732 00:59:02,965 --> 00:59:08,971 そう… 信じて いらっしゃるといいわ 733 00:59:08,971 --> 00:59:12,975 本当に仲がよろしくて いらっしゃる 734 00:59:12,975 --> 00:59:15,978 額田を 取ったり取られたり… 735 00:59:15,978 --> 00:59:17,980 普通なら このことだけでも・ 736 00:59:17,980 --> 00:59:19,982 争いの種に なるはずなのに… 737 00:59:19,982 --> 00:59:21,984 (殴る音) アアッ! 738 00:59:21,984 --> 00:59:25,984 うせろ! 今夜は ひとりで寝る 739 00:59:27,990 --> 00:59:30,990 あなたのために言ってるのに! 740 00:59:39,001 --> 00:59:43,001 《まさか… まさか 兄上が…》 741 00:59:47,009 --> 00:59:49,011 (矢を射る音) 742 00:59:49,011 --> 00:59:51,013 <その年の5月5日> 743 00:59:51,013 --> 00:59:57,953 <天智帝は朝廷を挙げて 蒲生野へ狩りに繰り出した> 744 00:59:57,953 --> 01:00:06,962 ・~ 745 01:00:06,962 --> 01:00:08,964 (矢を射る音) 746 01:00:08,964 --> 01:00:18,974 ・~ 747 01:00:18,974 --> 01:00:23,979 紫草というから 紫色の花かと思ったら白い花 748 01:00:23,979 --> 01:00:28,984 でも 花より根っこ 749 01:00:28,984 --> 01:00:33,984 (女官たちの悲鳴) 750 01:00:35,991 --> 01:00:41,997 (赤兄) ほう… これは実に見事な獲物じゃ 751 01:00:41,997 --> 01:00:49,004 さすがは大友皇子 うむ… なかなかの大物だな 752 01:00:49,004 --> 01:00:52,941 (官人)おお 今日の一番手柄は どなたに? 753 01:00:52,941 --> 01:00:56,945 帝のご褒美は どなたが いただけるかな? 754 01:00:56,945 --> 01:01:00,949 う~む… 755 01:01:00,949 --> 01:01:03,952 この2つのうちの どちらかを選ぶとなると・ 756 01:01:03,952 --> 01:01:06,955 これは なかなか難しい 757 01:01:06,955 --> 01:01:10,959 いや しかし 大友皇子の獲物も立派ですが… 758 01:01:10,959 --> 01:01:13,962 しかし 何といっても・ 759 01:01:13,962 --> 01:01:17,966 日嗣の御子の射止めた鹿のほうが のう? 760 01:01:17,966 --> 01:01:19,966 (官人)はぁ… 761 01:01:24,973 --> 01:01:26,975 しかし おのおの方 762 01:01:26,975 --> 01:01:29,978 こちらは若い鹿でござるぞ 763 01:01:29,978 --> 01:01:32,981 逃げ足の早いやつを 射止めてこそ・ 764 01:01:32,981 --> 01:01:35,984 狩りの手柄というのは 褒められるべきもの 765 01:01:35,984 --> 01:01:37,986 いくら図体が大きくても・ 766 01:01:37,986 --> 01:01:40,989 このように よたよたと 年取ったやつを射止めて・ 767 01:01:40,989 --> 01:01:44,993 一番手柄というのは 当たらんのではござらんか? 768 01:01:44,993 --> 01:01:50,999 うん? おのおの方 よくご覧あれ ええ? この毛並みのよさを 769 01:01:50,999 --> 01:01:54,002 うん 本日の一番手柄は大友皇子 770 01:01:54,002 --> 01:01:57,005 これは 誰が見ても明らかじゃ 771 01:01:57,005 --> 01:02:01,009 まあ どっちでもいいではないか 一番手柄など 772 01:02:01,009 --> 01:02:04,012 いや どっちでもいいなどと そんな曖昧な 773 01:02:04,012 --> 01:02:08,016 大友皇子の獲物が 最上なのですから 774 01:02:08,016 --> 01:02:10,018 いいかげんなこと 言ってもらっちゃ 困りますな 775 01:02:10,018 --> 01:02:12,020 (手をたたく音) 776 01:02:12,020 --> 01:02:15,023 赤兄どの 777 01:02:15,023 --> 01:02:20,028 おこと 少し 言葉が多すぎるのではないか? 778 01:02:20,028 --> 01:02:25,033 これは また異なことを承る 恥ずかしながら この赤兄も・ 779 01:02:25,033 --> 01:02:28,036 獲物の品評を委ねられた ひとりでございますぞ 780 01:02:28,036 --> 01:02:32,040 この場合 己の考えを 正直に申し上げるのが・ 781 01:02:32,040 --> 01:02:37,040 この場の礼儀ではござらんか? そうでござろう? おのおの方 782 01:02:39,047 --> 01:02:45,053 父上 私は たまたま いい獲物に 巡り合って 運が良かっただけです 783 01:02:45,053 --> 01:02:48,056 手柄を褒められるほどのことは いたしておりません 784 01:02:48,056 --> 01:02:52,995 大王 お聞きになりましたか? この謙虚さ 785 01:02:52,995 --> 01:02:55,998 実に見事なお心ばえ 786 01:02:55,998 --> 01:02:59,001 ものをお書きになれば たちまちにして 名文をものにされ 787 01:02:59,001 --> 01:03:03,005 狩りにお出になれば このような見事なお腕前 788 01:03:03,005 --> 01:03:08,010 何をなさっても 人よりは 一段と ぬきんでておいでになる 789 01:03:08,010 --> 01:03:11,013 生まれながらにして 人の上に立つ質を・ 790 01:03:11,013 --> 01:03:13,015 お備えになっていらっしゃる 791 01:03:13,015 --> 01:03:17,019 いや この点から いきましても 本日の一番手柄は この大友皇子 792 01:03:17,019 --> 01:03:22,024 大王 さあ 御自ら 褒美の弓矢をお与えなされませ 793 01:03:22,024 --> 01:03:26,028 大王! う~む… 794 01:03:26,028 --> 01:03:31,033 大王 褒美は 大友皇子に お授けになさるがいい 795 01:03:31,033 --> 01:03:36,038 私は もともと 手柄を争う気などないのだ 796 01:03:36,038 --> 01:03:41,038 若い者は 花を持たせておあげなさい 797 01:03:43,045 --> 01:03:46,048 皇子… 798 01:03:46,048 --> 01:03:51,053 何だ? どういうつもりだ あの態度は 799 01:03:51,053 --> 01:03:53,053 (舌打ち) 800 01:03:54,990 --> 01:03:57,993 (男依)今ごろは 褒美の弓矢を・ 801 01:03:57,993 --> 01:04:00,996 大友皇子に 授けられているでしょう 802 01:04:00,996 --> 01:04:05,000 弓矢は武力の象徴 803 01:04:05,000 --> 01:04:11,006 帝 手ずから 朝臣の前で 大友皇子に授けられているのです 804 01:04:11,006 --> 01:04:15,010 深い意味があると お思いになりませんか? 805 01:04:15,010 --> 01:04:17,012 うむ… 806 01:04:17,012 --> 01:04:21,016 実は 嫌な噂を聞いているもので… 807 01:04:21,016 --> 01:04:23,018 何だ? 808 01:04:23,018 --> 01:04:26,021 殿下は まだ? 何があるっていうんだ? 809 01:04:26,021 --> 01:04:33,028 帝は近々 太政大臣という位を お設けになるとのことです 810 01:04:33,028 --> 01:04:36,031 太政大臣? 811 01:04:36,031 --> 01:04:40,035 律令制の太政官を統率する 最高の位です 812 01:04:40,035 --> 01:04:45,040 このような位を設けられると 従来の日嗣の御子の役目は・ 813 01:04:45,040 --> 01:04:50,045 そっくり この太政大臣に移ってしまいます 814 01:04:50,045 --> 01:04:52,981 すると 太政大臣には… 815 01:04:52,981 --> 01:04:56,985 大友皇子を… 816 01:04:56,985 --> 01:04:58,987 なんと… 817 01:04:58,987 --> 01:05:04,993 我が子かわいさに 帝は 目が見えなくなっていられる 818 01:05:04,993 --> 01:05:08,997 本当は すぐにも 日嗣の御子に なさりたいのでしょうが・ 819 01:05:08,997 --> 01:05:13,001 何せ 采女の産んだ皇子 820 01:05:13,001 --> 01:05:18,006 それに 殿下の手前もあって それも ならず・ 821 01:05:18,006 --> 01:05:23,011 窮余の一策として 太政大臣という位を考えたとしか 822 01:05:23,011 --> 01:05:27,015 太政大臣か 823 01:05:27,015 --> 01:05:32,020 もし 大友皇子が 太政大臣の位にお就きになれば・ 824 01:05:32,020 --> 01:05:38,026 殿下は 政の場から 外されておしまいになるのです 825 01:05:38,026 --> 01:05:40,026 う~む… 826 01:05:45,033 --> 01:05:48,036 どうなすったのだ 兄上は 827 01:05:48,036 --> 01:05:51,974 ますます兄上が分からなくなる 828 01:05:51,974 --> 01:05:57,980 20年この方 共に力をひとつにし・ 829 01:05:57,980 --> 01:06:02,980 この国をもり立てていこうと 誓い合い 努力してきたのに 830 01:06:04,987 --> 01:06:10,993 今になって なぜ… なぜ こんな疑いを兄上に 831 01:06:10,993 --> 01:06:14,997 疑いではなく 現実に… 黙れ! 832 01:06:14,997 --> 01:06:16,997 殿下! 833 01:06:20,035 --> 01:06:23,038 (十市皇女)母上から いただきました この晴れ着 834 01:06:23,038 --> 01:06:25,040 とても気に入っています 835 01:06:25,040 --> 01:06:31,046 そなた その着物 大切してくれていたのですね 836 01:06:31,046 --> 01:06:35,050 そなた 幸せに? 837 01:06:35,050 --> 01:06:39,054 母親としては 何もしてあげられなかった 838 01:06:39,054 --> 01:06:43,058 でも いつも そなたのことは… 839 01:06:43,058 --> 01:06:50,999 ええ 遠くにいらしても 私 母上のまなざしを感じていました 840 01:06:50,999 --> 01:06:54,002 まあ… 私のまなざしを? 841 01:06:54,002 --> 01:06:56,004 ええ 842 01:06:56,004 --> 01:07:00,008 母上の美しいまなざしを… 843 01:07:00,008 --> 01:07:05,013 それが 私の心を温かくし・ 844 01:07:05,013 --> 01:07:08,016 誇らかな気持ちに させてくれました 845 01:07:08,016 --> 01:07:10,016 本当に? 846 01:07:14,022 --> 01:07:19,027 毎日が幸せでした あのころは 847 01:07:19,027 --> 01:07:21,029 あのころ? 848 01:07:21,029 --> 01:07:26,034 では 今は幸せではないというの? 849 01:07:26,034 --> 01:07:31,039 いいえ 幸せです 850 01:07:31,039 --> 01:07:37,045 大友皇子さまは 私のことを かわいがってくださいます 851 01:07:37,045 --> 01:07:41,049 りりしく ご聡明で・ 852 01:07:41,049 --> 01:07:45,053 どなたに お聞きしても 評判のいい方なのに・ 853 01:07:45,053 --> 01:07:49,991 私が幸せではないなんて言ったら ばちが当たります 854 01:07:49,991 --> 01:07:51,993 だから幸せなんです 855 01:07:51,993 --> 01:07:54,996 私は しあわ… 856 01:07:54,996 --> 01:07:59,000 (泣き声) 857 01:07:59,000 --> 01:08:05,006 姫… 姫 どうしたのです? 858 01:08:05,006 --> 01:08:10,011 私 父上と大友皇子さまの間に・ 859 01:08:10,011 --> 01:08:14,011 何か起こりはしないかと そればかり… 860 01:08:17,018 --> 01:08:22,023 母上は たぐい稀な霊力を お持ちですのに・ 861 01:08:22,023 --> 01:08:25,023 何も お感じでは? 862 01:08:28,029 --> 01:08:31,032 このところ 毎晩のように・ 863 01:08:31,032 --> 01:08:35,036 赤兄どのが 皇子さまのもとに見えて・ 864 01:08:35,036 --> 01:08:37,038 父上が お聞きになったら・ 865 01:08:37,038 --> 01:08:39,040 ご気分を 害されるようなことばかり… 866 01:08:39,040 --> 01:08:41,042 赤兄どのが? 867 01:08:41,042 --> 01:08:44,045 では 赤兄どのが おっしゃることを・ 868 01:08:44,045 --> 01:08:48,049 皇子さまは お聞きになって いらっしゃるのですね? 869 01:08:48,049 --> 01:08:51,987 好きにはなれません えっ? 870 01:08:51,987 --> 01:08:56,992 あの方が それほど 悪い人でないのは分かっています 871 01:08:56,992 --> 01:08:59,995 でも 好きにはなれません 872 01:08:59,995 --> 01:09:01,997 どうしても好きには… 873 01:09:01,997 --> 01:09:06,001 (泣き声) ・(足音) 874 01:09:06,001 --> 01:09:10,001 姫 涙を… 涙をお拭きなさい 875 01:09:13,008 --> 01:09:15,010 まあ… (大友皇子)おお 義母上 876 01:09:15,010 --> 01:09:17,012 よく おいでくだされた 877 01:09:17,012 --> 01:09:20,015 久しぶりの親子の対面 私は邪魔ではないですかな? 878 01:09:20,015 --> 01:09:22,017 何を申されます 879 01:09:22,017 --> 01:09:26,021 私も そろそろ おいとませねばと 思っていたところでございます 880 01:09:26,021 --> 01:09:31,026 十市は 義母上の前では泣くんですね 881 01:09:31,026 --> 01:09:35,030 一度くらい 私の前でも そのように泣いてくれぬか? 882 01:09:35,030 --> 01:09:37,032 うん? 十市 883 01:09:37,032 --> 01:09:41,036 男というものは 時には そのほうが うれしいものなんだぞ 884 01:09:41,036 --> 01:09:46,041 (大友皇子の笑い声) 885 01:09:46,041 --> 01:09:50,979 どうです? すばらしいでしょう 886 01:09:50,979 --> 01:09:55,984 父親が大切にされていた この弓矢 ありがたく いただきました 887 01:09:55,984 --> 01:09:58,987 まあ じゃ 今日のお手柄は皇子さまが? 888 01:09:58,987 --> 01:10:02,991 ええ! 名だたる勇者たちを出し抜いて・ 889 01:10:02,991 --> 01:10:04,993 帝から ご褒美を 890 01:10:04,993 --> 01:10:10,999 十市 喜んでくれ 今日は大いに面目を施したぞ 891 01:10:10,999 --> 01:10:15,003 本当に よろしかったこと 892 01:10:15,003 --> 01:10:18,006 十市は 義母上の血を受けてるんですね 893 01:10:18,006 --> 01:10:21,009 歌の才も馬鹿にならぬ様子 そうでしょうか? 894 01:10:21,009 --> 01:10:26,014 ほかの姫とは違って 才があるのに隠しているところが 895 01:10:26,014 --> 01:10:28,016 つつましやかで いとしい 896 01:10:28,016 --> 01:10:31,019 本当に 心ばえのいい女です 897 01:10:31,019 --> 01:10:34,022 (鐘の音) 898 01:10:34,022 --> 01:10:38,026 さあ 始まった 武技の披露の始まりだ 899 01:10:38,026 --> 01:10:44,032 十市 見に行こう さあ 一緒に行こう 900 01:10:44,032 --> 01:10:47,035 義母上も いらっしゃいませんか? 901 01:10:47,035 --> 01:10:49,971 いいえ 私は… 902 01:10:49,971 --> 01:10:52,974 じゃ 母上 私… 903 01:10:52,974 --> 01:10:54,976 ええ… 904 01:10:54,976 --> 01:11:05,976 ・~ 905 01:11:12,994 --> 01:11:16,998 あなたは 一体 どちらのお立場なのかしら? 906 01:11:16,998 --> 01:11:20,001 えっ? どういうことですの? 907 01:11:20,001 --> 01:11:23,004 やはり 娘かわいさに… 908 01:11:23,004 --> 01:11:27,008 つまり 大友皇子の味方を なさりたいわけかしら? 909 01:11:27,008 --> 01:11:31,012 …ということは 帝の側に おつきになるわけね 910 01:11:31,012 --> 01:11:33,014 一体 何のことですの? 911 01:11:33,014 --> 01:11:39,020 帝が このところ 大友皇子を政の 正面に押したてようとするのが・ 912 01:11:39,020 --> 01:11:41,022 あまりにも露骨なので・ 913 01:11:41,022 --> 01:11:45,022 日嗣の御子も さすがに 腹に据えかねておりますの 914 01:11:47,028 --> 01:11:53,034 もし 帝と日嗣の御子が 争われるときが来たら・ 915 01:11:53,034 --> 01:11:56,037 あなたは どうなさるおつもりなの? 916 01:11:56,037 --> 01:11:58,037 それをお聞きしたいの 917 01:12:00,041 --> 01:12:02,043 おっしゃいよ! 918 01:12:02,043 --> 01:12:05,043 どうなさるおつもりなのか 早くお言い! 919 01:12:07,048 --> 01:12:10,051 フフッ… 920 01:12:10,051 --> 01:12:14,055 そんなことは 起こるはずがございません 921 01:12:14,055 --> 01:12:17,058 あのご兄弟が 争われるなどということは… 922 01:12:17,058 --> 01:12:23,064 私 前から あなたに 言おう言おうと思っていたんです 923 01:12:23,064 --> 01:12:27,068 こういう場合 はっきりしていただきたいの 924 01:12:27,068 --> 01:12:30,071 帝と日嗣の御子を 両方とも好きだなんて 925 01:12:30,071 --> 01:12:34,075 それじゃ まるで 遊女じゃありませんか 926 01:12:34,075 --> 01:12:36,077 鵜野皇女さま… 927 01:12:36,077 --> 01:12:40,081 困るんです とっても困ってしまうのね 928 01:12:40,081 --> 01:12:44,085 ひとりの方に 決めていただかないと 929 01:12:44,085 --> 01:12:50,024 私 もう お召しにならぬようにと 帝に申し上げてございます 930 01:12:50,024 --> 01:12:54,028 中大兄皇子さまが 帝の位にお就きになり・ 931 01:12:54,028 --> 01:12:58,032 大海人皇子さまが日嗣の御子に おなりになってからは・ 932 01:12:58,032 --> 01:13:01,035 私 お2人には 一度もお会いしておりません 933 01:13:01,035 --> 01:13:05,039 そんなこと おっしゃったって駄目 あなたって方は・ 934 01:13:05,039 --> 01:13:10,044 いまだに あのお2人の心の中に 居座っていらっしゃるんですから 935 01:13:10,044 --> 01:13:14,048 だからこそ 私が生きているかぎり・ 936 01:13:14,048 --> 01:13:17,051 あのお2人が 争われるなどということは・ 937 01:13:17,051 --> 01:13:20,054 起こるはずがないのでございます 938 01:13:20,054 --> 01:13:31,054 ・~ 939 01:13:35,069 --> 01:13:38,069 (真奈手古) 入っていいのでしょうか? 940 01:13:41,075 --> 01:13:46,080 「紫野行き 標野行き」… 941 01:13:46,080 --> 01:13:49,080 ・(馬の駆ける音) 942 01:13:53,021 --> 01:13:55,023 野守が来たのだわ 943 01:13:55,023 --> 01:13:58,026 勝手に標野に入って 叱られないかしら? 944 01:13:58,026 --> 01:14:00,026 叱られないでしょう 945 01:14:02,030 --> 01:14:04,030 あっ… 946 01:14:07,035 --> 01:14:09,037 やはり そなただったな 皇子さま 947 01:14:09,037 --> 01:14:12,040 今日の行楽で そなたに会えることを・ 948 01:14:12,040 --> 01:14:15,043 楽しみにしていたのだ 本当に お久しぶり 949 01:14:15,043 --> 01:14:18,046 遠くからでも私と分かりまして? 950 01:14:18,046 --> 01:14:21,049 分かるとも 俺にはすぐ分かる 951 01:14:21,049 --> 01:14:24,052 あの侍女は あなたのことを 野守と間違えましたの 952 01:14:24,052 --> 01:14:29,057 ほう… この俺が それほど 卑しい身分の男に見えたのか? 953 01:14:29,057 --> 01:14:32,060 いいえ しばらくお目にかからないうちに 954 01:14:32,060 --> 01:14:37,065 本当にご立派におなりです からかうのは よせ 955 01:14:37,065 --> 01:14:39,067 しかし こうしていると・ 956 01:14:39,067 --> 01:14:43,071 昔のように この馬の背に 横抱きにして 走りたくなるな 957 01:14:43,071 --> 01:14:45,073 まあ… 958 01:14:45,073 --> 01:14:49,010 だが そなたは人妻 959 01:14:49,010 --> 01:14:53,014 人妻? まあ そんなものに なったことはありません 960 01:14:53,014 --> 01:14:55,016 そうかな? 961 01:14:55,016 --> 01:14:59,016 ・(馬の駆ける音) 962 01:15:02,023 --> 01:15:04,023 では あとでな 963 01:15:06,027 --> 01:15:09,030 ハアッ! 964 01:15:09,030 --> 01:15:11,030 皇子さま… 965 01:15:17,038 --> 01:15:20,041 デイ… 966 01:15:20,041 --> 01:15:25,046 おかしな奴だ どうかなさいまして? 967 01:15:25,046 --> 01:15:27,048 何が? お2人の間で・ 968 01:15:27,048 --> 01:15:29,050 何か気まずいことでも? 969 01:15:29,050 --> 01:15:31,052 そんなことはないぞ 970 01:15:31,052 --> 01:15:34,055 俺と大海人の間は うまくいっている 971 01:15:34,055 --> 01:15:38,059 そうですわね ご兄弟の間に波風が立つなんて 972 01:15:38,059 --> 01:15:42,063 まして 私のことで そんな… そのとおりだ 973 01:15:42,063 --> 01:15:45,066 ところで 額田 今宵の宴席には・ 974 01:15:45,066 --> 01:15:49,003 今日の行楽に材を取って 歌を披露することになっているが 975 01:15:49,003 --> 01:15:54,008 そなた 花を添えてくれるな? はい 詔ならば喜んで 976 01:15:54,008 --> 01:15:59,013 私が詠みます歌に 帝が お返しくださいまし 977 01:15:59,013 --> 01:16:02,016 ほう そなたの歌に余が返しをか 978 01:16:02,016 --> 01:16:05,019 はい 世間の人々は いまだに・ 979 01:16:05,019 --> 01:16:08,022 私と帝 それから 日嗣の御子さまとの関係を・ 980 01:16:08,022 --> 01:16:11,025 生々しく考えていますもの 981 01:16:11,025 --> 01:16:14,028 少し しゃれのめした歌を ご披露いたします 982 01:16:14,028 --> 01:16:17,031 ハハハッ… それは面白い 983 01:16:17,031 --> 01:16:19,033 では せいぜい 余も軽妙に返さねばな 984 01:16:19,033 --> 01:16:22,036 楽しみにしてるぞ きっと ご期待に沿えますように 985 01:16:22,036 --> 01:16:25,039 うむ… 986 01:16:25,039 --> 01:16:27,039 デイヤ! 987 01:16:31,012 --> 01:16:37,018 「長くなりぬ山たづね」 988 01:16:37,018 --> 01:16:44,025 「迎へか行かむ 待ちにか待たむ」 989 01:16:44,025 --> 01:16:49,025 (拍手) 990 01:16:54,969 --> 01:17:02,977 (官人) 「蒲生野に 再び来より 花つみて・ 991 01:17:02,977 --> 01:17:09,984 ひねもす暮れぬ 白き花つみて」 992 01:17:09,984 --> 01:17:14,989 (笑い声) 993 01:17:14,989 --> 01:17:17,992 あんな歌を 作ってさし上げたのは誰なの? 994 01:17:17,992 --> 01:17:21,996 すぐに女の歌だって 分かるじゃないのよね 995 01:17:21,996 --> 01:17:27,001 (男依) 殿下 少し 御酒が過ぎませぬか? 996 01:17:27,001 --> 01:17:34,008 俺はな 酒が入ったくらいのほうが 歌が うまく作れるのだ 997 01:17:34,008 --> 01:17:39,008 「白き花つみて」 (笑い声) 998 01:17:41,015 --> 01:17:46,015 次は 額田どのに お願いつかまつる 999 01:18:10,978 --> 01:18:17,985 「あかねさす」 1000 01:18:17,985 --> 01:18:27,995 「紫野行き 標野行き」 1001 01:18:27,995 --> 01:18:38,005 「野守は見ずや 君が袖振る」 1002 01:18:38,005 --> 01:18:43,005 相変わらず 額田らしい 巧みな歌いっぷり 1003 01:18:45,012 --> 01:18:51,953 でも 誰でしょうか? 「君」というのは 1004 01:18:51,953 --> 01:18:55,957 それより 歌の意味は? 1005 01:18:55,957 --> 01:19:00,962 「あかね色に匂う 紫草の生えている野原」 1006 01:19:00,962 --> 01:19:02,964 「しるしを立てた標野」 1007 01:19:02,964 --> 01:19:07,969 「そこを歩いていくと 遠くで君が袖を振っている」 1008 01:19:07,969 --> 01:19:10,972 「いけないわ そんな大胆なことをなさっては」 1009 01:19:10,972 --> 01:19:14,976 「野守が見てしまいますよ」 1010 01:19:14,976 --> 01:19:17,979 本当に誰でしょうね 袖を振っているのは 1011 01:19:17,979 --> 01:19:19,981 帝かしら? 1012 01:19:19,981 --> 01:19:23,985 それとも 日嗣の御子かしら? 1013 01:19:23,985 --> 01:19:31,993 「あかねさす」 1014 01:19:31,993 --> 01:19:42,003 「紫野行き 標野行き」 1015 01:19:42,003 --> 01:19:51,946 「野守は見ずや 君が袖振る」 1016 01:19:51,946 --> 01:20:02,957 (拍手) 1017 01:20:02,957 --> 01:20:07,962 分かったわ 「君」というのは帝のことです 1018 01:20:07,962 --> 01:20:10,965 それから 「野守」というのは 日嗣の御子さま 1019 01:20:10,965 --> 01:20:13,965 えっ? 本当? 1020 01:20:17,972 --> 01:20:23,978 よし… 俺が返しをいたそう 1021 01:20:23,978 --> 01:20:25,980 大海人 1022 01:20:25,980 --> 01:20:32,980 「紫草の」 1023 01:20:34,989 --> 01:20:43,998 「にほえる妹を 憎くあらば」 1024 01:20:43,998 --> 01:20:51,939 「人妻ゆえに」 1025 01:20:51,939 --> 01:20:59,939 「我が恋ひめやも」 1026 01:21:01,949 --> 01:21:07,949 まあ 大胆なお歌をお詠いあそばすこと 1027 01:21:11,959 --> 01:21:19,967 「紫草の」 1028 01:21:19,967 --> 01:21:30,978 「にほえる妹を 憎くあらば」 1029 01:21:30,978 --> 01:21:38,986 「人妻ゆえに」 1030 01:21:38,986 --> 01:21:48,996 「我が恋ひめやも」 1031 01:21:48,996 --> 01:21:56,003 (鏡女王)「紫草の根から取れる 美しい紫色のように匂うような君」 1032 01:21:56,003 --> 01:21:58,005 それから? 1033 01:21:58,005 --> 01:22:01,008 「そなたを憎く思っていたら・ 1034 01:22:01,008 --> 01:22:06,013 人妻でもあるのだから どうして 恋慕いましょう」 1035 01:22:06,013 --> 01:22:09,016 「恋しいと思うからこそ・ 1036 01:22:09,016 --> 01:22:13,020 人妻であっても このように恋慕っているのです」 1037 01:22:13,020 --> 01:22:15,022 すてき! 1038 01:22:15,022 --> 01:22:19,026 でも 日嗣の御子さまが こんなすてき恋歌を・ 1039 01:22:19,026 --> 01:22:22,029 お作りになるなんて 知らなかったわ 1040 01:22:22,029 --> 01:22:25,032 でも 大丈夫でしょうか? 1041 01:22:25,032 --> 01:22:30,037 帝は 大変 御気色を 損ねていらしたご様子ですけど 1042 01:22:30,037 --> 01:22:35,042 それほど 目に角を立てる歌じゃ ないと思うけど 1043 01:22:35,042 --> 01:22:40,047 紫草の匂える君なんて言うけど 額田は もう35ですよ 1044 01:22:40,047 --> 01:22:44,051 座興の歌として 軽く 聞き流しておしまいにならないと 1045 01:22:44,051 --> 01:22:45,987 でも… 1046 01:22:45,987 --> 01:22:50,992 ♪(楽器の演奏と歌声) 1047 01:22:50,992 --> 01:23:00,001 ♪~ 1048 01:23:00,001 --> 01:23:05,006 どうした? 大海人 余は そなたの歌を褒めているのだ 1049 01:23:05,006 --> 01:23:10,006 さあ この盃を受けよ 1050 01:23:12,013 --> 01:23:17,018 先ほどは 酒を飲み過ぎているから もう飲むなと言われた 1051 01:23:17,018 --> 01:23:23,024 だが 今度は 盃をくださると言われるのですか 1052 01:23:23,024 --> 01:23:29,024 そなた 余の盃が受けられぬというのか? 1053 01:23:31,032 --> 01:23:36,037 「受けぬ」と言ったら なんとする? 1054 01:23:36,037 --> 01:23:38,039 なんと… 1055 01:23:38,039 --> 01:23:51,986 ♪~ 1056 01:23:51,986 --> 01:23:56,991 (拍手) 1057 01:23:56,991 --> 01:24:00,995 よう 舞うた 見事だ 皇子 1058 01:24:00,995 --> 01:24:04,995 まるで 毛虫がうごめいているような… 1059 01:24:07,001 --> 01:24:12,006 毛虫でなければ 羽虫が地を這っているような… 1060 01:24:12,006 --> 01:24:14,006 ハハハハッ… 1061 01:24:17,011 --> 01:24:20,014 日嗣の御子 1062 01:24:20,014 --> 01:24:23,017 お言葉が過ぎまするぞ 1063 01:24:23,017 --> 01:24:27,021 舞の いちばんうまい大友皇子には 1064 01:24:27,021 --> 01:24:33,027 どのような褒美を 授けるおつもりかな? 1065 01:24:33,027 --> 01:24:38,032 さしずめ 太政大臣の重職でも… 1066 01:24:38,032 --> 01:24:40,032 なに? 1067 01:24:43,037 --> 01:24:46,974 (笑い声) 1068 01:24:46,974 --> 01:24:52,980 うじゃら うじゃら言わずに そなたも下手な舞でも舞ってみろ 1069 01:24:52,980 --> 01:24:56,984 ああ 舞ってやる 1070 01:24:56,984 --> 01:24:59,984 舞いましょう! 1071 01:25:03,991 --> 01:25:08,996 いいか? 今 道具を持ってくるから・ 1072 01:25:08,996 --> 01:25:13,000 景気よく鳴らせよ! 景気よく 1073 01:25:13,000 --> 01:25:16,000 泥酔しよって 見苦しい 1074 01:25:20,007 --> 01:25:23,010 日嗣の御子さまは 私の夫 1075 01:25:23,010 --> 01:25:26,010 これ以上 追い回すのは やめていただきます 1076 01:25:28,015 --> 01:25:32,019 では あなたが お止めくださいませ 1077 01:25:32,019 --> 01:25:35,022 こうなったのは あなたのせい 1078 01:25:35,022 --> 01:25:37,024 あなたは さっき・ 1079 01:25:37,024 --> 01:25:40,027 随分 立派なことを おっしゃっていたようだけれど・ 1080 01:25:40,027 --> 01:25:45,032 あなたのふざけた歌が原因で このように こじれてしまったのよ 1081 01:25:45,032 --> 01:25:48,969 2人の間に 争い事が起きるはずがないなんて 1082 01:25:48,969 --> 01:25:50,971 よく言えたもの 1083 01:25:50,971 --> 01:25:54,975 この始末 どうなさるの? どのように弁解なさるの? 1084 01:25:54,975 --> 01:25:57,975 お聞きしたいわね 1085 01:25:59,980 --> 01:26:02,983 (足音) 1086 01:26:02,983 --> 01:26:05,986 (男依)殿下 いけません このような物を持ち込んでは… 1087 01:26:05,986 --> 01:26:08,989 おやめくだされ 殿下! 座興の舞だ 1088 01:26:08,989 --> 01:26:14,995 この長槍で 舞を舞ってやる 1089 01:26:14,995 --> 01:26:16,997 ウッ… 1090 01:26:16,997 --> 01:26:20,000 (官人) おやめなされ おやめなされ! 1091 01:26:20,000 --> 01:26:22,000 ンッ! 1092 01:26:26,006 --> 01:26:29,006 くるうたか 大海人 1093 01:26:33,013 --> 01:26:38,018 狂人め そこへ直れ! 1094 01:26:38,018 --> 01:26:40,020 突き殺してやる 1095 01:26:40,020 --> 01:26:45,960 突け… この俺が突けるものなら 突いてみろ! 1096 01:26:45,960 --> 01:26:47,962 俺を突き殺し・ 1097 01:26:47,962 --> 01:26:51,966 大友皇子を日嗣の御子にすれば ちょうどいいじゃないか! 1098 01:26:51,966 --> 01:26:56,971 20数年前 入鹿が首を斬ったように・ 1099 01:26:56,971 --> 01:27:01,971 この俺の喉を突いてみろ! さあ 突け! 1100 01:27:07,982 --> 01:27:11,986 よう言うた 1101 01:27:11,986 --> 01:27:13,988 ンッ! (鎌足)なりません! 1102 01:27:13,988 --> 01:27:17,992 主上… お鎮まりください 殺せ 1103 01:27:17,992 --> 01:27:21,996 日嗣の御子! どうした? ひと思いに殺せ! 1104 01:27:21,996 --> 01:27:24,999 主上! 1105 01:27:24,999 --> 01:27:27,001 これ以上 ご兄弟で争うなら・ 1106 01:27:27,001 --> 01:27:30,004 この鎌足を… この鎌足の命を先に… 1107 01:27:30,004 --> 01:27:34,008 殺せー! 日嗣の御子! 1108 01:27:34,008 --> 01:27:36,008 ンッ! 主上! 1109 01:27:41,015 --> 01:27:44,018 (泣き叫ぶ声) 姫… 1110 01:27:44,018 --> 01:27:46,954 (泣き声) 1111 01:27:46,954 --> 01:27:51,954 (雷鳴) 1112 01:27:55,963 --> 01:27:58,966 <天智8年10月> 1113 01:27:58,966 --> 01:28:05,966 <中臣鎌足は 重い病を得て 病床に伏す身となった> 1114 01:28:07,975 --> 01:28:15,983 お別れに臨みまして… 1115 01:28:15,983 --> 01:28:19,987 ひとつだけ お願いが… 1116 01:28:19,987 --> 01:28:22,990 別れはせぬ 1117 01:28:22,990 --> 01:28:29,997 鎌足 気弱なことを言うな まだ別れはせぬ 1118 01:28:29,997 --> 01:28:35,997 日嗣の御子のことです 1119 01:28:38,005 --> 01:28:40,007 日嗣の御子のこと? 1120 01:28:40,007 --> 01:28:44,011 ハァハァ… 1121 01:28:44,011 --> 01:28:52,953 ご兄弟が… 相争うことは… 1122 01:28:52,953 --> 01:28:58,953 国の滅びるもと 1123 01:29:01,962 --> 01:29:03,962 鎌足… 1124 01:29:05,966 --> 01:29:09,970 (鎌足の声) 1125 01:29:09,970 --> 01:29:25,986 ・~ 1126 01:29:25,986 --> 01:29:33,994 <10月16日 鎌足は56歳の生涯を閉じた> 1127 01:29:33,994 --> 01:29:40,000 ・~ 1128 01:29:40,000 --> 01:29:43,003 <その年も その明くる年も・ 1129 01:29:43,003 --> 01:29:45,005 事なく暮れたが・ 1130 01:29:45,005 --> 01:29:49,943 明けて 天智10年の正月> 1131 01:29:49,943 --> 01:29:52,946 <新年の宴も終わった5日> 1132 01:29:52,946 --> 01:29:58,952 <鎌足亡きあとの重臣たちの 序列の発表があった> 1133 01:29:58,952 --> 01:30:01,955 <大友皇子が太政大臣に> 1134 01:30:01,955 --> 01:30:04,958 <蘇我赤兄が左大臣に> 1135 01:30:04,958 --> 01:30:08,962 <中臣連金が右大臣に> 1136 01:30:08,962 --> 01:30:14,968 <そして 蘇我臣果安 紀臣大人 巨勢臣人が 1137 01:30:14,968 --> 01:30:18,972 それぞれ 御史大夫に任じられたが・ 1138 01:30:18,972 --> 01:30:23,972 大海人は いずれの官職にも 任じられることはなかった> 1139 01:30:26,013 --> 01:30:30,017 よい季節になってきたな そうですね 1140 01:30:30,017 --> 01:30:34,021 今年は どちらへ 狩りに出かけられますか? 1141 01:30:34,021 --> 01:30:37,021 うむ… 今年… 1142 01:30:39,026 --> 01:30:41,028 (盃を落とす音) 1143 01:30:41,028 --> 01:30:43,028 兄上? 1144 01:30:48,969 --> 01:30:52,973 どこか お悪いんですか? 兄上 1145 01:30:52,973 --> 01:30:58,979 悪くない うむ… どこも悪くはない 1146 01:30:58,979 --> 01:31:01,982 薬師を呼べ! 早く いや 呼ぶな 1147 01:31:01,982 --> 01:31:03,984 薬師など呼ぶな 1148 01:31:03,984 --> 01:31:06,987 兄上… 1149 01:31:06,987 --> 01:31:10,991 もう大丈夫だ 1150 01:31:10,991 --> 01:31:12,991 なんということはない 1151 01:31:15,996 --> 01:31:18,999 兄上! 1152 01:31:18,999 --> 01:31:21,001 ハハハハッ… 1153 01:31:21,001 --> 01:31:28,008 大海人 俺は病などではないぞ 1154 01:31:28,008 --> 01:31:31,011 どこにも悪いところなぞない 1155 01:31:31,011 --> 01:31:38,018 ・~ 1156 01:31:38,018 --> 01:31:42,022 (鵜野皇女) 本当? それほど悪いの? 1157 01:31:42,022 --> 01:31:45,025 俺には ひた隠しにしておられたが・ 1158 01:31:45,025 --> 01:31:49,029 采女らに聞くと 今年の2月辺りから胸の病で・ 1159 01:31:49,029 --> 01:31:52,032 時々 卒倒したこともあったとか 1160 01:31:52,032 --> 01:31:54,034 胸の病? 1161 01:31:54,034 --> 01:31:58,038 それに 近ごろでは 飲水病も 重なっていられるらしい 1162 01:31:58,038 --> 01:32:04,044 飲水病? あの 口が渇き 体の力がなくなってしまう? 1163 01:32:04,044 --> 01:32:07,047 あれは治りませんぞ 1164 01:32:07,047 --> 01:32:09,049 そう… 1165 01:32:09,049 --> 01:32:14,054 じゃ あなた 遅かれ早かれ 帝は… 1166 01:32:14,054 --> 01:32:18,058 (男依) 帝が亡くなったあとが問題です 1167 01:32:18,058 --> 01:32:21,061 こちらに味方する者は大勢います 1168 01:32:21,061 --> 01:32:26,066 大友皇子が相手なら 必ず勝てます 1169 01:32:26,066 --> 01:32:31,071 (鵜野皇女)あなたが 帝にお就きになれば 私は太后 1170 01:32:31,071 --> 01:32:33,073 そなた… 1171 01:32:33,073 --> 01:32:39,079 太后になり いずれは 私の産んだ 皇子に皇位を受け継がせたい 1172 01:32:39,079 --> 01:32:42,082 それが 私の いちばんの望み 1173 01:32:42,082 --> 01:32:44,017 お分かりになって いただけますでしょう? 1174 01:32:44,017 --> 01:32:48,021 そんなことより 当面は何気ないふうを装って… 1175 01:32:48,021 --> 01:32:54,021 そう ただひたすら帝の死を待つだけ 1176 01:32:59,032 --> 01:33:02,035 <帝の病は癒えず・ 1177 01:33:02,035 --> 01:33:06,039 その年の10月になって 更に悪化した> 1178 01:33:06,039 --> 01:33:13,046 (読経) 1179 01:33:13,046 --> 01:33:17,050 <病状については ひた隠しにされていたが・ 1180 01:33:17,050 --> 01:33:23,056 帝の病が重いということは 既に知れ渡っていた> 1181 01:33:23,056 --> 01:33:31,056 (読経) 1182 01:33:34,067 --> 01:33:38,071 お召しにより参上いたしました 1183 01:33:38,071 --> 01:33:43,071 ご病状 お案じ申し上げておりました 1184 01:33:46,013 --> 01:33:48,013 (大友皇子)父上が お待ちです 1185 01:33:55,022 --> 01:34:00,027 額田 余のために祈ってくれておるか? 1186 01:34:00,027 --> 01:34:02,029 はい 1187 01:34:02,029 --> 01:34:07,034 夜を日に継いで 神にお祈り申しております 1188 01:34:07,034 --> 01:34:13,040 それにしては 効き目がないのぅ フフッ… 1189 01:34:13,040 --> 01:34:19,046 余の命も あまり長くはないように思える 1190 01:34:19,046 --> 01:34:21,048 何を申されます 1191 01:34:21,048 --> 01:34:24,051 もっと お気をお強くお持ちあそばして 1192 01:34:24,051 --> 01:34:29,056 余の体のことは 余が いちばんよう知っておる 1193 01:34:29,056 --> 01:34:32,059 このような ありさまに なってしまったのでは・ 1194 01:34:32,059 --> 01:34:39,066 そなたが いくら祈ってくれても ようなる気遣いがない 1195 01:34:39,066 --> 01:34:42,069 近ごろはな 1196 01:34:42,069 --> 01:34:48,008 余が身まかったあとの この国のことばかり考えておる 1197 01:34:48,008 --> 01:34:50,010 帝… 1198 01:34:50,010 --> 01:34:57,017 どうせ生き長らえることの かなわぬ命であるなら・ 1199 01:34:57,017 --> 01:35:03,017 今のうちに 皇位を譲ろうと思うのだが… 1200 01:35:05,025 --> 01:35:11,031 額田 どう思う? 1201 01:35:11,031 --> 01:35:16,036 そのような重大なことは 私ごときが承ることでは… 1202 01:35:16,036 --> 01:35:22,042 いいや そなたの口から 直接 伝えてもらいたい 1203 01:35:22,042 --> 01:35:28,048 皇位は 大海人に譲ると 1204 01:35:28,048 --> 01:35:31,051 えっ? 1205 01:35:31,051 --> 01:35:35,055 大海人皇子さまに皇位を? 1206 01:35:35,055 --> 01:35:38,058 そうだ 1207 01:35:38,058 --> 01:35:43,997 弟が俺のあとを継いで 天皇になる 1208 01:35:43,997 --> 01:35:48,001 父上… そ… それは… 1209 01:35:48,001 --> 01:35:54,007 皇子 そなた 心外に思うかもしれぬが・ 1210 01:35:54,007 --> 01:36:05,018 これはな この父が 病の床で 考えに考え抜いたあげくの結論だ 1211 01:36:05,018 --> 01:36:09,022 病で気が弱っていると 思うかもしれぬが・ 1212 01:36:09,022 --> 01:36:13,026 しかし これだけは はっきり言えるぞ 1213 01:36:13,026 --> 01:36:17,030 そなたが 俺のあとを継いで 帝の位に就けば・ 1214 01:36:17,030 --> 01:36:20,033 大海人が黙ってはいまい 1215 01:36:20,033 --> 01:36:23,036 余が身まかったあと・ 1216 01:36:23,036 --> 01:36:28,036 そなたと大海人の間に 必ず戦が起きる 1217 01:36:30,043 --> 01:36:38,051 大海人と戦えば そなたは負けるぞ 1218 01:36:38,051 --> 01:36:40,053 いえ 私は… 1219 01:36:40,053 --> 01:36:43,990 いいや 負ける 1220 01:36:43,990 --> 01:36:47,994 大海人の胸の中にはな 1221 01:36:47,994 --> 01:36:52,999 余への恨みと そなたへの憎しみが渦巻いている 1222 01:36:52,999 --> 01:36:59,005 その心が 余には 手に取るように分かるのだ 1223 01:36:59,005 --> 01:37:03,009 大海人が怒ると恐ろしいぞ 1224 01:37:03,009 --> 01:37:09,015 そなたなぞ ひとたまりもなく殺されてしまう 1225 01:37:09,015 --> 01:37:11,017 しかし… 1226 01:37:11,017 --> 01:37:18,024 父上 しかし… 気持ちに変わりはない 1227 01:37:18,024 --> 01:37:20,024 ただ… 1228 01:37:22,028 --> 01:37:30,036 あの弟を粗略に扱えば この国の滅びのもと 1229 01:37:30,036 --> 01:37:37,043 フッ… 鎌足が死ぬ前に 繰り返し言うていた言葉が・ 1230 01:37:37,043 --> 01:37:44,043 余の命の危ううなった今 この胸に突き刺さりよる 1231 01:37:46,987 --> 01:37:48,987 皇子 1232 01:37:51,992 --> 01:38:02,002 そなた 口惜しいであろうが 皇位を継ぐことは諦めてくれ 1233 01:38:02,002 --> 01:38:05,005 父上… 1234 01:38:05,005 --> 01:38:08,008 よいか? 1235 01:38:08,008 --> 01:38:13,013 構えて 大海人と事を起こすでないぞ 1236 01:38:13,013 --> 01:38:15,015 これだけは誓ってもらう 1237 01:38:15,015 --> 01:38:20,020 それ以外に そなたが生き残る道はない 1238 01:38:20,020 --> 01:38:24,024 父上 父上が そのように… 1239 01:38:24,024 --> 01:38:28,028 そのように おっしゃるのでしたら 私は… 1240 01:38:28,028 --> 01:38:32,032 そうか 1241 01:38:32,032 --> 01:38:36,032 分かってくれたか はい 1242 01:38:40,040 --> 01:38:43,977 額田 帝… 1243 01:38:43,977 --> 01:38:49,977 そなた 早速だが 大海人に このことを伝えてくれぬか? 1244 01:38:51,985 --> 01:38:56,990 そのようなお使いならば 喜んで いたしとうございます 1245 01:38:56,990 --> 01:39:00,994 ただ 帝じきじきに お伝えなさったほうが・ 1246 01:39:00,994 --> 01:39:05,999 大海人皇子さまも どれだけお喜びになるか 1247 01:39:05,999 --> 01:39:09,002 そうかな? 1248 01:39:09,002 --> 01:39:14,007 ここにお呼びなさいませ そして お話しなされば・ 1249 01:39:14,007 --> 01:39:20,013 以前のように また仲むつまじく おなりになれるのです 1250 01:39:20,013 --> 01:39:25,018 アア… そうか 1251 01:39:25,018 --> 01:39:29,018 いや そうかもしれぬな 1252 01:39:31,024 --> 01:39:34,027 本当に良かったこと 1253 01:39:34,027 --> 01:39:39,032 大友皇子さまも ご承知ならば これ以上のことは… 1254 01:39:39,032 --> 01:39:43,970 帝のご病状が 思わしくないのは悲しいけれど・ 1255 01:39:43,970 --> 01:39:46,973 まあ これで ひとまず… 1256 01:39:46,973 --> 01:39:51,978 やはり 帝は 叡慮が 深くていらっしゃるのですね 1257 01:39:51,978 --> 01:39:54,981 いろいろあったけれども・ 1258 01:39:54,981 --> 01:39:58,985 あれほど 仲の良かったご兄弟ですものね 1259 01:39:58,985 --> 01:40:02,989 今ごろは手と手を取り合って… 1260 01:40:02,989 --> 01:40:04,989 ええ 1261 01:40:10,997 --> 01:40:14,000 どうした? 大海人 1262 01:40:14,000 --> 01:40:19,000 余は そなたに 位を譲ると言っているのだぞ 1263 01:40:22,008 --> 01:40:27,013 結構です 私は 帝の位に就く気はありません 1264 01:40:27,013 --> 01:40:32,018 大海人 これは わしの本心だ 1265 01:40:32,018 --> 01:40:37,023 余の偉業を継ぎ それを 更に発展させてくれるのは・ 1266 01:40:37,023 --> 01:40:42,028 そなたをおいて ほかにはない いや とんでもありません 1267 01:40:42,028 --> 01:40:46,966 天下のことは 全て 太后にお任せになられ・ 1268 01:40:46,966 --> 01:40:50,970 政務の万端を 大友皇子に行わさせるのが・ 1269 01:40:50,970 --> 01:40:52,972 いちばん よろしいかと 1270 01:40:52,972 --> 01:40:57,977 大友には その器量がない 1271 01:40:57,977 --> 01:41:04,984 そなたは 人望もある 経験もある 1272 01:41:04,984 --> 01:41:11,991 それに 生まれから言うても 何不足はない 1273 01:41:11,991 --> 01:41:16,996 これまでの慣例どおり そなたを位に就かせたい 1274 01:41:16,996 --> 01:41:22,001 いや 私は 近ごろ 体も弱く… 1275 01:41:22,001 --> 01:41:25,004 到底 その任では… 1276 01:41:25,004 --> 01:41:30,009 大海人 いえ どうか ふた心なきことを… 1277 01:41:30,009 --> 01:41:35,014 いや まして 私の中に王位への野心など・ 1278 01:41:35,014 --> 01:41:37,016 爪の垢ほどもないことを お分かりください 1279 01:41:37,016 --> 01:41:41,020 いいや 違うのだ 大海人 いや その証しとして・ 1280 01:41:41,020 --> 01:41:45,024 私の持っている武器を全て 朝廷に納めます 1281 01:41:45,024 --> 01:41:52,031 そして これより 私は 大王の御ために・ 1282 01:41:52,031 --> 01:41:58,037 出家し 仏道に励みます 1283 01:41:58,037 --> 01:42:01,037 出家だと? 1284 01:42:03,042 --> 01:42:07,046 お信じになりませぬか? では これより早速… 1285 01:42:07,046 --> 01:42:10,049 何を言うのだ 大海人! 1286 01:42:10,049 --> 01:42:14,053 余は そなたに 位を譲りたいと言うておるのだぞ 1287 01:42:14,053 --> 01:42:18,057 位など要りません いいや 譲る そなたに譲る 1288 01:42:18,057 --> 01:42:20,059 要りません いいや 譲ると言っている! 1289 01:42:20,059 --> 01:42:22,059 真っ平だ! 1290 01:42:26,065 --> 01:42:28,067 ウウッ… 1291 01:42:28,067 --> 01:42:33,072 大丈夫ですか? 兄上 大丈夫ですか? 1292 01:42:33,072 --> 01:42:38,077 もう これ以上 お話をなさらぬほうがいい 1293 01:42:38,077 --> 01:42:42,081 私は これで失礼いたします 1294 01:42:42,081 --> 01:42:45,018 そなた… 1295 01:42:45,018 --> 01:42:49,022 それほどまでに信じられぬか? 1296 01:42:49,022 --> 01:42:52,022 余が それほどまでに… 1297 01:42:54,027 --> 01:43:01,027 余の心は もはや そなたには伝わらぬのか? 1298 01:43:03,036 --> 01:43:10,043 これまで… 2人で 国を作り上げてきた仲ではないか 1299 01:43:10,043 --> 01:43:15,048 それが… そなたの心は もはや・ 1300 01:43:15,048 --> 01:43:18,051 それほどの不信に・ 1301 01:43:18,051 --> 01:43:21,054 固まってしまったのか? 1302 01:43:21,054 --> 01:43:25,058 そうさせてしまったのは・ 1303 01:43:25,058 --> 01:43:28,061 兄上じゃありませんか 1304 01:43:28,061 --> 01:43:30,061 大海人… 1305 01:43:33,066 --> 01:43:35,068 ウウッ… 1306 01:43:35,068 --> 01:43:39,068 大海人… 大海人… 1307 01:43:42,008 --> 01:43:45,011 なんですって? 出家を? 1308 01:43:45,011 --> 01:43:51,011 ええ たった今 内裏の南の仏殿で髪を落とされて 1309 01:44:08,034 --> 01:44:13,039 額田 そなたとも いよいよ 別れねばならぬときが来たようだ 1310 01:44:13,039 --> 01:44:16,042 なぜ… なぜこのような… 1311 01:44:16,042 --> 01:44:19,045 元気で暮らせよ 額田 1312 01:44:19,045 --> 01:44:23,049 なぜ 帝の申し出を お受けにならないのです? 1313 01:44:23,049 --> 01:44:26,052 うかうかと受けていては・ 1314 01:44:26,052 --> 01:44:29,055 この身に どのような危害が 及ぶかもしれぬと・ 1315 01:44:29,055 --> 01:44:32,058 皆に言われておる 何を申されます 1316 01:44:32,058 --> 01:44:34,060 帝のお心に嘘偽りは… 1317 01:44:34,060 --> 01:44:37,063 大友皇子さまも 既にご承知 1318 01:44:37,063 --> 01:44:41,063 ご本心から皇位を譲りたいと お思いになっていられるのに 1319 01:44:43,002 --> 01:44:48,007 なんという… なんというお姿に… 1320 01:44:48,007 --> 01:44:53,012 どうして… どうして そこまで? 1321 01:44:53,012 --> 01:44:57,016 離せ アア… どうして? 1322 01:44:57,016 --> 01:45:01,020 どうして? 皇子さま 皇子さま! 1323 01:45:01,020 --> 01:45:04,023 こうなるよりほか なかったのだ 1324 01:45:04,023 --> 01:45:07,023 俺たちは こうなるよりほか 1325 01:45:11,030 --> 01:45:13,032 皇子さま! 1326 01:45:13,032 --> 01:45:22,041 ・~ 1327 01:45:22,041 --> 01:45:28,047 <翌日 大海人は 僅かの供回りの者を従えて・ 1328 01:45:28,047 --> 01:45:30,049 吉野へ向かった> 1329 01:45:30,049 --> 01:45:37,056 ・~ 1330 01:45:37,056 --> 01:45:39,992 このままでは済むまい 1331 01:45:39,992 --> 01:45:43,996 虎に翼をつけて 野に放つようなものだ 1332 01:45:43,996 --> 01:45:52,004 ・~ 1333 01:45:52,004 --> 01:45:57,009 今度 あの都に帰るときは必ず… 1334 01:45:57,009 --> 01:46:00,012 必ず あなたは帝 1335 01:46:00,012 --> 01:46:07,019 遠からず その日が… ええ きっと間違いなく 1336 01:46:07,019 --> 01:46:18,030 ・~ 1337 01:46:18,030 --> 01:46:25,030 <12月3日 天智帝は ついに帰らぬ人となった> 1338 01:46:28,040 --> 01:46:35,047 ・~ 1339 01:46:35,047 --> 01:46:39,986 <「大化の改新」以来 激動の時代を生き・ 1340 01:46:39,986 --> 01:46:45,992 帝中心の新しい政治体制を敷いた 天智帝は・ 1341 01:46:45,992 --> 01:46:50,997 46歳の生涯を ここに閉じたのである> 1342 01:46:50,997 --> 01:47:02,008 ・~ 1343 01:47:02,008 --> 01:47:12,018 ・~ 1344 01:47:12,018 --> 01:47:18,024 「かからむの」 1345 01:47:18,024 --> 01:47:27,033 「懐 知りせば 大御船」 1346 01:47:27,033 --> 01:47:37,033 「泊てし泊まりに 標 結はましを」 1347 01:47:39,979 --> 01:47:48,988 ・~ 1348 01:47:48,988 --> 01:47:52,992 <672年 壬申の年> 1349 01:47:52,992 --> 01:47:55,995 <予測された事態は起きた> 1350 01:47:55,995 --> 01:47:59,999 <ひそかに吉野を出て 兵を挙げた大海人の軍と・ 1351 01:47:59,999 --> 01:48:03,002 大友皇子を擁する近江軍は・ 1352 01:48:03,002 --> 01:48:08,002 7月 真っ向から激突したのである> 1353 01:48:10,009 --> 01:48:23,009 (祈祷の声) 1354 01:48:27,026 --> 01:48:30,026 ハァハァ… 1355 01:48:32,031 --> 01:48:37,036 (祈祷の声) 1356 01:48:37,036 --> 01:48:40,973 母上 どうなさったのですか? 1357 01:48:40,973 --> 01:48:42,975 どうしたの? 額田 1358 01:48:42,975 --> 01:48:44,977 戦が これ以上 広まらないように・ 1359 01:48:44,977 --> 01:48:47,980 そなたが神に祈ってくれなければ 1360 01:48:47,980 --> 01:48:50,980 なんだか 私… 1361 01:48:52,985 --> 01:48:55,988 どうしたっていうの? 1362 01:48:55,988 --> 01:48:59,992 何も聞こえてこないのです 1363 01:48:59,992 --> 01:49:02,995 何も見えてこないのです 1364 01:49:02,995 --> 01:49:04,997 なんですって? 1365 01:49:04,997 --> 01:49:10,002 いつも すぐに神がかりする そなたが どうして… 1366 01:49:10,002 --> 01:49:14,006 アア… 分からない 1367 01:49:14,006 --> 01:49:17,006 こんなことが… こんなこと… 1368 01:49:20,012 --> 01:49:24,016 額田さま 楽師が 必要なんじゃありませんか? 1369 01:49:24,016 --> 01:49:26,018 ほかの巫女たちも お呼びになって・ 1370 01:49:26,018 --> 01:49:28,020 神を近くに お招きするようになされば… 1371 01:49:28,020 --> 01:49:30,022 呼んできます 私 1372 01:49:30,022 --> 01:49:32,024 おやめ! そんなことは しても無駄 1373 01:49:32,024 --> 01:49:34,026 額田さま… 1374 01:49:34,026 --> 01:49:39,026 私が恥をかくだけです 恥を? 1375 01:49:41,968 --> 01:49:46,968 この前から 時々 こんなことがあったのです 1376 01:49:48,975 --> 01:49:52,979 魂が私の体から抜けていかない 1377 01:49:52,979 --> 01:49:57,984 いくら祈っても この体が無にならない 1378 01:49:57,984 --> 01:50:02,989 神のお声も聞こえず お姿も見えない 1379 01:50:02,989 --> 01:50:04,991 (鏡女王)それじゃ あなた… 1380 01:50:04,991 --> 01:50:08,995 アアーッ! もう駄目! 1381 01:50:08,995 --> 01:50:11,998 (泣き叫ぶ声) 1382 01:50:11,998 --> 01:50:18,004 帝が… 帝が 私をこのようになされたのです! 1383 01:50:18,004 --> 01:50:21,007 帝が? 先の帝が? 1384 01:50:21,007 --> 01:50:25,011 (泣き声) 1385 01:50:25,011 --> 01:50:30,016 帝… そうでしょう? 1386 01:50:30,016 --> 01:50:35,021 あなたさまが身まかられ 神におなりあそばしてから・ 1387 01:50:35,021 --> 01:50:39,959 私の体から 一切の霊力を 奪っていかれたのですね 帝 1388 01:50:39,959 --> 01:50:44,964 帝! あなたさま以外の神事を 奉ることなど・ 1389 01:50:44,964 --> 01:50:47,967 無用だとお考えなのですね・ 1390 01:50:47,967 --> 01:50:50,970 帝! どこにおられるのです・ 1391 01:50:50,970 --> 01:50:54,974 帝 お答えになってください… 1392 01:50:54,974 --> 01:50:56,976 アアッ! アッ… 1393 01:50:56,976 --> 01:51:00,980 とうとう あなた… 1394 01:51:00,980 --> 01:51:03,980 ただの女になってしまったのね 1395 01:51:05,985 --> 01:51:10,990 私と同じ ただの中年の女に 1396 01:51:10,990 --> 01:51:27,006 (泣き声) 1397 01:51:27,006 --> 01:51:32,011 (鬨の声) 1398 01:51:32,011 --> 01:51:44,023 ・~ 1399 01:51:44,023 --> 01:51:47,026 <戦の勝敗は決した> 1400 01:51:47,026 --> 01:52:00,039 ・~ 1401 01:52:00,039 --> 01:52:06,045 <立ち遅れた近江軍に対し 大海人軍は圧倒的な勝利を収め・ 1402 01:52:06,045 --> 01:52:10,049 大津の都は ついに陥落した> 1403 01:52:10,049 --> 01:52:30,069 ・~ 1404 01:52:30,069 --> 01:52:36,075 <大友皇子は 自ら首をくくって 命を絶った> 1405 01:52:36,075 --> 01:52:40,012 <御年25歳の最期であった> 1406 01:52:40,012 --> 01:52:46,012 ・~ 1407 01:52:48,020 --> 01:52:53,025 ・~ 1408 01:52:53,025 --> 01:53:00,032 <挙兵以来 ひと月 世にいう 「壬申の乱」は終わった> 1409 01:53:00,032 --> 01:53:08,040 <大海人皇子は 都を飛鳥に移し 明くる年の2月に即位した> 1410 01:53:08,040 --> 01:53:13,040 <すなわち 天武帝となったのである> 1411 01:53:16,048 --> 01:53:21,053 私は とうとう帝の位に就いた 1412 01:53:21,053 --> 01:53:29,061 この帝位は 大友皇子から奪ったものではない 1413 01:53:29,061 --> 01:53:31,061 兄上 1414 01:53:33,065 --> 01:53:36,065 あなたから奪ったのだ! 1415 01:53:38,070 --> 01:53:40,005 どうしてです? 1416 01:53:40,005 --> 01:53:45,010 帝が しきりに母上をお召しなのですよ 1417 01:53:45,010 --> 01:53:48,013 行ってさし上げれば いかがですの? 1418 01:53:48,013 --> 01:53:50,015 もうお会いすることはない 1419 01:53:50,015 --> 01:53:53,018 あの方は この国の王者として・ 1420 01:53:53,018 --> 01:53:57,022 ますます 帝位を揺るぎないものに なされるでしょうが・ 1421 01:53:57,022 --> 01:54:02,027 私は もう お手伝いすることは 何もないのです 1422 01:54:02,027 --> 01:54:07,032 霊力も失われ 神の言葉も聞くことのできない・ 1423 01:54:07,032 --> 01:54:11,036 ありきたりの女に なってしまったのですから 1424 01:54:11,036 --> 01:54:15,040 でも ここにいらしては・ 1425 01:54:15,040 --> 01:54:20,045 住む人も だんだん少なくなって 寂れ果てていくばかり 1426 01:54:20,045 --> 01:54:22,047 とにかく飛鳥へ 1427 01:54:22,047 --> 01:54:26,051 いいえ 今しばらくは この地に 1428 01:54:26,051 --> 01:54:33,058 取り残されたこうした場所ほど 今の私には ふさわしいのです 1429 01:54:33,058 --> 01:54:38,063 母上 私 ご一緒に暮らしたいのです 1430 01:54:38,063 --> 01:54:39,999 母上と ご一緒に 1431 01:54:39,999 --> 01:54:45,004 じゃ ここで一緒に暮らしましょう でも… 1432 01:54:45,004 --> 01:54:50,009 亡くなられた大友皇子さまの霊を お慰めするためにも・ 1433 01:54:50,009 --> 01:54:54,013 そなた ここで静かに暮らすのが よいのではありませんか 1434 01:54:54,013 --> 01:54:59,018 私は 飛鳥の都で 1435 01:54:59,018 --> 01:55:03,022 過去の思い出の 染みついた この地には・ 1436 01:55:03,022 --> 01:55:05,024 いたくはないのです 1437 01:55:05,024 --> 01:55:07,026 そう 1438 01:55:07,026 --> 01:55:11,030 でも 不思議 1439 01:55:11,030 --> 01:55:17,036 あの方が生きていられる間は あまり好きにはなれなかったのに 1440 01:55:17,036 --> 01:55:21,040 今では… 今では? 1441 01:55:21,040 --> 01:55:25,044 そう 亡くなられた今では・ 1442 01:55:25,044 --> 01:55:31,050 なにか 懐かしいような 慕わしいような… 1443 01:55:31,050 --> 01:55:34,053 そんな気がしてならないのです 1444 01:55:34,053 --> 01:55:37,056 そういうものかもしれないわね 1445 01:55:37,056 --> 01:55:40,993 でも 母上はお幸せです 1446 01:55:40,993 --> 01:55:42,995 亡くなられた背の君を・ 1447 01:55:42,995 --> 01:55:46,999 今になって 慕わしく思う私なんぞに比べれば 1448 01:55:46,999 --> 01:55:49,999 女として ずっと… 1449 01:55:52,004 --> 01:55:57,009 そう 先の帝と今の帝 1450 01:55:57,009 --> 01:56:00,012 あのお2人との関わりが あればこそ・ 1451 01:56:00,012 --> 01:56:06,018 私の生涯も 彩られたのかもしれないわ 1452 01:56:06,018 --> 01:56:12,024 誠 あのご兄弟は 火と水のような 1453 01:56:12,024 --> 01:56:14,026 火と水? 1454 01:56:14,026 --> 01:56:19,031 そう 鎌足どのが そのように 言われたことがあるけれど・ 1455 01:56:19,031 --> 01:56:24,036 今になって その言葉の意味が 分かるような気がする 1456 01:56:24,036 --> 01:56:28,040 どちらが火で どちらが水でいらっしゃるの? 1457 01:56:28,040 --> 01:56:31,043 フフッ… どちらとも言えないのです 1458 01:56:31,043 --> 01:56:36,048 時によっては 立場が 入れ替わっておしまいになる 1459 01:56:36,048 --> 01:56:41,987 一方が何ものも焼き尽くすほどに 激しく燃え上がったかと思うと・ 1460 01:56:41,987 --> 01:56:44,990 一方が その激しい火をのみ込むほどの・ 1461 01:56:44,990 --> 01:56:47,990 深さと大きさをお示しになる 1462 01:56:49,995 --> 01:56:54,995 本当に火と水とは よく言ったもの 1463 01:56:58,003 --> 01:57:00,005 十市 1464 01:57:00,005 --> 01:57:04,009 先の帝が読まれたお歌を 聞かせてあげましょうか? 1465 01:57:04,009 --> 01:57:08,013 まあ どんなお歌です? 1466 01:57:08,013 --> 01:57:13,018 私と ご自分たちご兄弟の関係を・ 1467 01:57:13,018 --> 01:57:19,024 大和の三山になぞられて お詠みになったお歌 1468 01:57:19,024 --> 01:57:29,034 「香具山は 畝傍を惜しと 耳成と 相争ひき」 1469 01:57:29,034 --> 01:57:33,038 「神代より かくにあるらし」… 1470 01:57:33,038 --> 01:57:38,043 《「香具山」は 先の天智帝》 1471 01:57:38,043 --> 01:57:42,981 《「耳成」は 今の天武帝》 1472 01:57:42,981 --> 01:57:47,981 《そして 「畝傍山」は私》 1473 01:57:49,988 --> 01:57:54,993 《お2人が 私の愛を 奪い合ったというよりも・ 1474 01:57:54,993 --> 01:58:00,993 それが 神代の時代からの 変わらぬ愛の形》 1475 01:58:05,003 --> 01:58:14,012 《「香具山は 畝傍を惜しと 耳成と 相争ひき」》 1476 01:58:14,012 --> 01:58:18,016 《「神代より かくにあるらし」》 1477 01:58:18,016 --> 01:58:22,020 《「古も然にあれこそ」》 1478 01:58:22,020 --> 01:58:26,024 《「うつせみも 妻を争ふらしき」》 1479 01:58:26,024 --> 01:58:38,036 ・~ 1480 01:58:38,036 --> 01:58:49,036 ・~