1 00:00:01,083 --> 00:00:07,223 <自分は 漁師の妻として この人に 一生をささげたのだ。➡ 2 00:00:07,223 --> 00:00:11,560 かをるの背中を 幸福感が走り抜けた> 3 00:00:11,560 --> 00:00:16,760 ♬~ 4 00:00:40,723 --> 00:00:45,394 (千代)天海さん? 天海さん? 5 00:00:45,394 --> 00:00:47,329 天海さん? 6 00:00:47,329 --> 00:00:49,265 どねしてんな! 7 00:00:49,265 --> 00:00:53,265 (辰夫)テルヲらな 夜逃げしくさったんや。 8 00:00:57,740 --> 00:01:06,081 ♬「オレンジのクレヨンで 描いた太陽だけじゃ」 9 00:01:06,081 --> 00:01:13,756 ♬「まだ何か足りない気がした」 10 00:01:13,756 --> 00:01:17,626 ♬「これは夢じゃない(夢みたい)」 11 00:01:17,626 --> 00:01:22,097 ♬「傷つけば痛い(嘘じゃない)」 12 00:01:22,097 --> 00:01:29,772 ♬「どんな今日も愛したいのにな」 13 00:01:29,772 --> 00:01:35,578 ♬「笑顔をあきらめたくないよ」 14 00:01:35,578 --> 00:01:42,718 ♬「転んでも ただでは起きない」 15 00:01:42,718 --> 00:01:46,589 ♬「そう 強くなれる」 16 00:01:46,589 --> 00:01:51,727 ♬「かさぶたが消えたなら」 17 00:01:51,727 --> 00:01:56,599 ♬「聞いてくれるといいな」 18 00:01:56,599 --> 00:02:03,739 ♬「泣き笑いのエピソードを」 19 00:02:03,739 --> 00:02:12,239 ♬~ 20 00:02:14,383 --> 00:02:17,753 大正5年 暮れ。 21 00:02:17,753 --> 00:02:25,453 一平の父 初代 天海天海は 33歳の若さで この世を去りました。 22 00:02:28,097 --> 00:02:32,097 (宗助) ボン… 気落ちしてんのちゃうやろか。 23 00:02:34,703 --> 00:02:40,376 (一平)さんざん俺のこと振り回しといて あっけのう このざまや。 24 00:02:40,376 --> 00:02:44,713 (ハナ)一番無念なんは お父ちゃんだす。➡ 25 00:02:44,713 --> 00:02:51,713 あんたのことも 芝居のことも これからやったさかいな。 26 00:02:54,390 --> 00:03:02,264 葬儀の喪主を務める この男 ここ道頓堀の ほとんどの興行を取りしきる道頓堀の主➡ 27 00:03:02,264 --> 00:03:06,964 鶴亀株式会社創始者 大山鶴蔵です。 28 00:03:08,737 --> 00:03:14,437 彼の意向で この劇場葬が 執り行われることになりました。 29 00:03:16,078 --> 00:03:21,951 (鉦の音) 30 00:03:21,951 --> 00:03:26,422 (ざわめき) 31 00:03:26,422 --> 00:03:38,367 (鉦の音) 32 00:03:38,367 --> 00:03:44,239 あれが あんたのお父ちゃんが 超えようとした男➡ 33 00:03:44,239 --> 00:03:47,539 須賀廼家万太郎さんだす。 34 00:04:03,592 --> 00:04:07,062 ハッハッハッハッハッハッハッ…。 35 00:04:07,062 --> 00:04:09,965 (笑い声) 36 00:04:09,965 --> 00:04:13,402 彼の名は 須賀廼家万太郎。 37 00:04:13,402 --> 00:04:21,076 この後30年 日本の喜劇界に 君臨し続けることになる喜劇の帝王です。 38 00:04:21,076 --> 00:04:26,415 (笑い声) 39 00:04:26,415 --> 00:04:29,415 あ~…。 40 00:04:37,693 --> 00:04:42,564 何よりの手向けやなあ 万太郎はん。 41 00:04:42,564 --> 00:04:49,705 社長はんこそ こない盛大な劇場葬を 催してくれはったら➡ 42 00:04:49,705 --> 00:04:55,044 さぞかし 故人も喜んでますやろ。➡ 43 00:04:55,044 --> 00:04:59,915 ついでに 鶴亀の名も➡ 44 00:04:59,915 --> 00:05:04,053 また 一躍 世に広まる。 45 00:05:04,053 --> 00:05:13,729 ほんに人の世は 笑えん喜劇と 笑える悲劇の よじれ合いや。 46 00:05:13,729 --> 00:05:19,068 よじれんのは 腹だけにしたいもんやなあ。➡ 47 00:05:19,068 --> 00:05:23,068 ハハハハハハハ! 48 00:05:25,407 --> 00:05:28,744 (万太郎)おまはんも 運のない男やなあ。 49 00:05:28,744 --> 00:05:34,016 いつでも うっとこに戻ってきても よろしおまっせ。 50 00:05:34,016 --> 00:05:36,852 この 須賀廼家千之助さんは➡ 51 00:05:36,852 --> 00:05:39,354 もともとは 万太郎一座におりましたが➡ 52 00:05:39,354 --> 00:05:44,654 その後 天海と組み 天海一座を支えた役者の一人です。 53 00:05:47,696 --> 00:05:53,996 (シズ)よろしいな 鰻谷の大野屋さんに お渡しするのやで。 54 00:05:56,038 --> 00:05:57,973 へえ。 55 00:05:57,973 --> 00:06:03,912 何してますのや。 はよ行きなはれ。 56 00:06:03,912 --> 00:06:06,682 へえ。 57 00:06:06,682 --> 00:06:21,730 ♬~ 58 00:06:21,730 --> 00:06:25,601 [ 回想 ] (辰夫)千代ちゃん ほんまに何も知らんのけ? 59 00:06:25,601 --> 00:06:29,605 テルヲらな 夜逃げしくさったんや。 60 00:06:29,605 --> 00:06:32,341 借金膨れ上がったとかで➡ 61 00:06:32,341 --> 00:06:36,211 ヤクザ者みたいなんが 毎日 取り立てに来よってな。➡ 62 00:06:36,211 --> 00:06:42,911 なんとか どこにおるかだけでも 分かれぃんか思て来たんやけど。 63 00:06:44,686 --> 00:06:49,024 何やね それ…。 64 00:06:49,024 --> 00:06:52,895 うち 何のために…。 65 00:06:52,895 --> 00:07:17,052 ♬~ 66 00:07:17,052 --> 00:07:20,923 うっ… う~っ! 67 00:07:20,923 --> 00:07:23,725 う~っ! 死ぬんけ? 68 00:07:23,725 --> 00:07:26,628 あ~っ! (荒い息遣い) 69 00:07:26,628 --> 00:07:32,000 あほ。 何で俺が死ななあかんねん。 70 00:07:32,000 --> 00:07:35,871 お父ちゃんの後 追うのとちゃうんけ? 71 00:07:35,871 --> 00:07:41,009 あんなやつの後なんか 死んでも追いたないわ。 72 00:07:41,009 --> 00:07:45,709 あっ… 死んだら追うことになってまうな。 73 00:07:47,683 --> 00:07:51,553 おやじ よう言うてたんや。 74 00:07:51,553 --> 00:07:59,027 道頓堀は 船でお客さん運んできてくれる ありがたい川やて。 75 00:07:59,027 --> 00:08:03,327 絶対に石なんか投げ込んだりしたら あかんて。 76 00:08:06,702 --> 00:08:11,373 せやさかいな この石 投げ込んだんねん。 77 00:08:11,373 --> 00:08:16,044 おやじに もう何も言われへん。 ざまあみいや。 78 00:08:16,044 --> 00:08:20,716 うりゃあ~! あかん! 重い! 79 00:08:20,716 --> 00:08:25,587 (荒い息遣い) お前も ちょっと手伝え。 80 00:08:25,587 --> 00:08:30,587 はよ。 はよ。 81 00:08:35,664 --> 00:08:40,535 う~っ! せ~の! 82 00:08:40,535 --> 00:08:42,537 (掛け声) 83 00:08:42,537 --> 00:08:44,673 (笑い声) 84 00:08:44,673 --> 00:08:49,544 やったった! どや おやじ! 悔しいやろ! 85 00:08:49,544 --> 00:08:56,685 おやじが大嫌いで飲めへんかった牛乳も しこたま飲んだった。 86 00:08:56,685 --> 00:09:03,025 それから…。 あんたのお父ちゃん➡ 87 00:09:03,025 --> 00:09:08,725 ほんまは あんたのこと気ぃもんでたで。 88 00:09:16,571 --> 00:09:22,044 嘘や。 嘘やあれぃん。 89 00:09:22,044 --> 00:09:24,713 あんたに謝っとった。 90 00:09:24,713 --> 00:09:29,013 そんなこと 信じない。 ほんまやて。 91 00:09:31,320 --> 00:09:35,190 うちな あんたが羨ましい。 92 00:09:35,190 --> 00:09:40,662 どこがや! 俺 あいつのせぇで お母ちゃん いてへんのやで。 93 00:09:40,662 --> 00:09:44,333 あいつのせぇで 学校にも行かれへんかった。 94 00:09:44,333 --> 00:09:50,672 友達もでけへんかった。 みんな あいつのせぇや…。 95 00:09:50,672 --> 00:09:57,346 そやのに 何で悲しいねん…。 96 00:09:57,346 --> 00:10:03,218 (泣き声) 97 00:10:03,218 --> 00:10:07,356 何やねん それ! 98 00:10:07,356 --> 00:10:09,691 何やねん! 99 00:10:09,691 --> 00:10:14,991 ええやんか! 最後に お父ちゃんに 気ぃもんでもらえただけで! 100 00:10:19,368 --> 00:10:26,041 うち あんたが羨ましい…。 101 00:10:26,041 --> 00:10:28,377 羨ましい…。 102 00:10:28,377 --> 00:10:42,077 (泣き声) 103 00:10:45,727 --> 00:10:49,398 (天晴)天海天海の名ぁを お前に継がしたい。➡ 104 00:10:49,398 --> 00:10:53,902 それが鶴亀の あの社長はんの意向や。➡ 105 00:10:53,902 --> 00:10:56,938 背けば この道頓堀で芝居を続けんのは無理や。 106 00:10:56,938 --> 00:11:00,075 ふっ…。 107 00:11:00,075 --> 00:11:04,946 (熊田)天海天海の名を ついえさしてはならない。 108 00:11:04,946 --> 00:11:08,750 つまり ボンに 2代目継がせえっちゅうことですか。 109 00:11:08,750 --> 00:11:11,086 正直 あのボンボンには無理でっせ。 110 00:11:11,086 --> 00:11:14,956 せやなあ。 天海はんのこと嫌てはったし➡ 111 00:11:14,956 --> 00:11:17,759 芝居も いやいや やってたさかいなあ。 112 00:11:17,759 --> 00:11:22,431 社長の鶴の一声は 絶対です。 113 00:11:22,431 --> 00:11:29,104 頼む 一平。 わしらと一緒に 芝居 続けてくれへんか。 114 00:11:29,104 --> 00:11:32,007 そないなこと言われても…。 115 00:11:32,007 --> 00:11:35,707 頼む。 このとおりや。 116 00:11:37,379 --> 00:11:43,679 跡継ぐやなんて… 俺には無理や。 117 00:11:45,720 --> 00:11:49,591 どいつもこいつも ほんま邪魔くさいのう。 118 00:11:49,591 --> 00:11:52,594 どこ行くんです? どこって お前 稽古やな。 119 00:11:52,594 --> 00:11:56,064 あの芝居 まだ続ける気ですか? 当たり前や。 120 00:11:56,064 --> 00:11:59,401 おやじの役は どないすんの? わしが やるんや。 121 00:11:59,401 --> 00:12:01,336 千さんの役は? それも わしや。 122 00:12:01,336 --> 00:12:03,738 むちゃくちゃや! 123 00:12:03,738 --> 00:12:06,641 むちゃくちゃてかい…。 124 00:12:06,641 --> 00:12:11,079 そうか。 でもな…➡ 125 00:12:11,079 --> 00:12:15,750 お前のお父ちゃんは もっと むちゃくちゃやったわい。➡ 126 00:12:15,750 --> 00:12:18,653 せやさかい 見せつけたんねん。 127 00:12:18,653 --> 00:12:25,427 おい あんたが おらんようになっても やれるんやで!➡ 128 00:12:25,427 --> 00:12:28,330 …ってよ。 129 00:12:28,330 --> 00:12:30,765 クビだす。 130 00:12:30,765 --> 00:12:35,604 千代ちゃん… シズさんに頼まれた届け物 えらい遅なって➡ 131 00:12:35,604 --> 00:12:38,904 相手さんを怒らしてしもたんやそうです。 132 00:12:41,376 --> 00:12:45,247 このキセルはな 大野屋の旦那さんが➡ 133 00:12:45,247 --> 00:12:49,718 長いこと ひいきにしてきはった 役者さんに贈ろ思て➡ 134 00:12:49,718 --> 00:12:54,389 あちこち探し回ってはった 珍しいもんだす。➡ 135 00:12:54,389 --> 00:12:59,060 そやけど 間に合えへんかった。 136 00:12:59,060 --> 00:13:06,401 その役者さんはな 廃業して 今日 遠い田舎へ帰りはった。➡ 137 00:13:06,401 --> 00:13:12,073 もう どこにいてはんのかも よう分かれへんのやそうだす。➡ 138 00:13:12,073 --> 00:13:23,418 大野屋さんはな その役者さんとの別れに 悔い残してしまいはったんや。 139 00:13:23,418 --> 00:13:29,291 その悔いはな ほげた達者な あんたでも➡ 140 00:13:29,291 --> 00:13:33,028 ごまかしきれへんもんだす! 141 00:13:33,028 --> 00:13:40,028 分かったら さっさと 荷物まとめて わての前から消えなはれ! 142 00:13:44,039 --> 00:14:09,064 ♬~ 143 00:14:09,064 --> 00:14:11,733 (かめ)おはようさん。 144 00:14:11,733 --> 00:14:13,668 おはようさんでございます。 145 00:14:13,668 --> 00:14:18,406 お湯 沸かしときました。 そら ご苦労はん。 146 00:14:18,406 --> 00:14:25,280 かめさん ちょっことの間やったけど お世話になりました。 147 00:14:25,280 --> 00:14:28,280 何の世話もしてへんけど。 148 00:14:30,418 --> 00:14:33,688 あっ ほな うち行きます。 149 00:14:33,688 --> 00:14:37,559 ちょちょちょ… 行くって まだ口入れ屋 来てへんのに。 150 00:14:37,559 --> 00:14:42,364 自分の家くらい 一人で帰れます。 そない言うといてください。 151 00:14:42,364 --> 00:14:44,699 ほな さいなら。 152 00:14:44,699 --> 00:14:47,369 ああ ちゃう… ごめんやす。 153 00:14:47,369 --> 00:14:57,379 ♬~ 154 00:14:57,379 --> 00:15:00,048 出ていった? 一人で? 155 00:15:00,048 --> 00:15:05,387 悪いけど 追いかけて 家まで送り届けてくれるか。 156 00:15:05,387 --> 00:15:11,087 それがなあ ご寮人さん 聞いた話なんやけど…。 157 00:15:15,730 --> 00:15:25,030 (雨音と雷鳴)