1 00:00:31,684 --> 00:00:36,289 彗星のごとく世に出た 稀代の英雄 織田信長は 2 00:00:36,289 --> 00:00:40,760 まさに疾風迅雷 怒濤と化し 炎と燃えて 3 00:00:40,760 --> 00:00:44,260 天下統一への道を ひた走ったのである 4 00:01:21,000 --> 00:01:24,003 時まさに戦国乱世 5 00:01:24,003 --> 00:01:29,709 尾張の武将 織田信秀は 一円を掌中に収めつつあったが 6 00:01:29,709 --> 00:01:33,780 悩みの種は嫡男の吉法師信長 7 00:01:33,780 --> 00:01:36,716 異様な風体で山野を駆け巡り 8 00:01:36,716 --> 00:01:40,987 織田の大うつけと ひんしゅくを買う異端児である 9 00:01:40,987 --> 00:01:45,591 その信長に美濃の梟雄 斉藤道三の娘 10 00:01:45,591 --> 00:01:48,428 濃姫が輿入れした 11 00:01:48,428 --> 00:01:53,466 才色兼備ながら気丈な濃姫と 信長の新婚生活は 12 00:01:53,466 --> 00:01:58,838 感情のぶつかり合う まるで 戦いのような日々であった 13 00:01:58,838 --> 00:02:03,242 信長に引き換え 次男の信行は文武に優れ 14 00:02:03,242 --> 00:02:05,912 礼節を重んじる貴公子である 15 00:02:05,912 --> 00:02:09,482 生母の土田御前や 重臣たちの期待は 16 00:02:09,482 --> 00:02:12,051 否が応でも信行に集まり 17 00:02:12,051 --> 00:02:16,189 信長廃嫡の動きが急になってゆく 18 00:02:16,189 --> 00:02:18,558 折も折 父 信秀は 19 00:02:18,558 --> 00:02:21,861 家督相続に苦慮しながら 急病に倒れ 20 00:02:21,861 --> 00:02:25,164 あっけなく他界したのである 21 00:02:25,164 --> 00:02:27,600 織田家のこうした混乱ぶりに 22 00:02:27,600 --> 00:02:31,738 まむしの斉藤道三が 鎌首をもたげる 23 00:02:31,738 --> 00:02:35,775 もともと 信長に濃姫を嫁がせたのは 24 00:02:35,775 --> 00:02:39,345 いずれ 尾張を奪取する野望からである 25 00:02:39,345 --> 00:02:41,647 それぞれの思惑を胸に 26 00:02:41,647 --> 00:02:45,585 信長と道三の対面の日が迫る 27 00:02:45,585 --> 00:02:49,455 織田信長と斉藤道三の対面の場は 28 00:02:49,455 --> 00:02:55,755 尾張 美濃の国境にある 冨田の正徳寺と定められていた 29 00:03:03,236 --> 00:03:05,338 うつけの婿はまだか? 30 00:03:05,338 --> 00:03:08,074 そろそろ この冨田に かかる時分にござりまする 31 00:03:08,074 --> 00:03:11,077 ちょっと出てみるか はっ 32 00:03:11,077 --> 00:03:14,947 お館様が婿殿を 出迎えるのでございまするか? 33 00:03:14,947 --> 00:03:19,852 そんなとこだ およしなされたがよろしかろう 34 00:03:19,852 --> 00:03:22,522 父上は美濃の太守でござる 35 00:03:22,522 --> 00:03:26,058 舅が婿を出迎えるなど 世間で聞いたことがない 36 00:03:26,058 --> 00:03:30,229 案ずるな 大たわけの顔を 見覚えておくまでのことよ 37 00:03:30,229 --> 00:03:32,929 兵助 支度せい 38 00:03:52,518 --> 00:03:55,218 おっ 参りました 39 00:03:59,192 --> 00:04:02,762 先頭が向こうの森陰から 出てきました 40 00:04:02,762 --> 00:04:04,764 それで? 41 00:04:04,764 --> 00:04:10,069 まずは従士の若者どもに ござりまする 42 00:04:10,069 --> 00:04:13,840 続いて これも 若く たくましい弓隊 43 00:04:13,840 --> 00:04:17,176 うつけ自慢の子供隊だな どれほどおる 44 00:04:17,176 --> 00:04:20,446 はっ ざっと100人ほど ハハハーハッ 45 00:04:20,446 --> 00:04:22,448 100人のガキ大将か 46 00:04:22,448 --> 00:04:25,017 次は鉄砲隊にござりまする 47 00:04:25,017 --> 00:04:27,487 何?鉄砲 48 00:04:27,487 --> 00:04:29,689 ご覧くださいませ 49 00:04:29,689 --> 00:04:33,226 鉄砲のことは 濃も手紙には書いてきておったわ 50 00:04:33,226 --> 00:04:35,228 20~30丁も持ってきたか? 51 00:04:35,228 --> 00:04:37,597 とてもそんな数では… 52 00:04:37,597 --> 00:04:40,132 100丁はござりましょう 53 00:04:40,132 --> 00:04:44,170 100丁? 54 00:04:44,170 --> 00:04:47,073 今度は槍隊にござりまする 55 00:04:47,073 --> 00:04:49,876 三間柄の長槍か 56 00:04:49,876 --> 00:04:52,311 槍隊はもっと多うござります 57 00:04:52,311 --> 00:04:54,847 あっ 中央に馬が見えました 58 00:04:54,847 --> 00:04:56,847 もうよい! 59 00:05:25,378 --> 00:05:28,581 信長は何人の供を従え 列席すると申しておる 60 00:05:28,581 --> 00:05:31,117 はっ 太刀持ち1人とのこと 61 00:05:31,117 --> 00:05:35,054 フッフフ… うつけめ 62 00:05:35,054 --> 00:05:38,925 よいか 真っ先に この義竜が刃を浴びせるゆえ 63 00:05:38,925 --> 00:05:42,425 皆は機を逃さず信長を押し包め 64 00:05:48,134 --> 00:05:50,603 婿殿はまだか 65 00:05:50,603 --> 00:05:53,139 あ… んっ の… 66 00:05:53,139 --> 00:05:56,339 信長殿 見えられました 67 00:06:18,464 --> 00:06:21,534 織田の殿にござりまするか 68 00:06:21,534 --> 00:06:24,437 上総介信長じゃ そこもとは? 69 00:06:24,437 --> 00:06:28,137 堀田道空にござりまする ささっ 設けの座へ 70 00:06:38,918 --> 00:06:43,723 よう来られた おくつろぎなされ 71 00:06:43,723 --> 00:06:46,392 入道殿 何じゃ 72 00:06:46,392 --> 00:06:49,295 濃姫は よき妻でござるよ 73 00:06:49,295 --> 00:06:51,964 今日の我が身を ひどく案じてくれましてな 74 00:06:51,964 --> 00:06:54,734 何のために? されば入道殿が 75 00:06:54,734 --> 00:06:57,603 何かたくらんでいるとでも 思うたのでござろう 76 00:06:57,603 --> 00:06:59,772 たわけた奴だ 77 00:06:59,772 --> 00:07:03,242 それで?婿殿は何と答えられた? 78 00:07:03,242 --> 00:07:06,379 美濃にも いろいろと込み入った事情がある 79 00:07:06,379 --> 00:07:10,683 こなたの父御は それをよく心得ているゆえ 80 00:07:10,683 --> 00:07:13,552 わざわざ この信長を敵にはせんと 81 00:07:13,552 --> 00:07:18,157 ふーん… それで? 82 00:07:18,157 --> 00:07:22,328 そなたの妻 濃は 納得しましたかのう 83 00:07:22,328 --> 00:07:27,833 いいや 入道殿には 「まむし」というあだ名があるゆえ 84 00:07:27,833 --> 00:07:31,504 油断できぬと チッチッチッチッ 85 00:07:31,504 --> 00:07:36,142 我が娘といえども なんとも ふつつか者よ 86 00:07:36,142 --> 00:07:40,042 されば盃の儀を 87 00:08:01,801 --> 00:08:04,070 うっ 88 00:08:04,070 --> 00:08:08,340 これで美濃と尾張の固めは済んだ 89 00:08:08,340 --> 00:08:12,678 めでたい いや めでたい 90 00:08:12,678 --> 00:08:16,716 ところで舅殿 織田の上総 91 00:08:16,716 --> 00:08:20,619 ここまで出向いてまいった機会に ご子息 義竜殿とも 92 00:08:20,619 --> 00:08:24,423 盃したいと存ずるが 93 00:08:24,423 --> 00:08:27,323 義竜 これへ 94 00:08:29,829 --> 00:08:31,997 若殿! 若殿 95 00:08:31,997 --> 00:08:34,500 若殿 若殿 96 00:08:34,500 --> 00:08:36,502 若殿! しばらく 97 00:08:36,502 --> 00:08:38,871 えーい 放せ! あのような うつけ者と 98 00:08:38,871 --> 00:08:42,274 兄弟の盃など交わしては 末代までの笑いの種じゃ! 99 00:08:42,274 --> 00:08:44,276 しかし お館様は… 100 00:08:44,276 --> 00:08:46,779 美濃のまむしも もうろくしたわ! 101 00:08:46,779 --> 00:08:49,982 信長ごときに ころりと参りおって!止めるな 102 00:08:49,982 --> 00:08:53,252 止めると叩き斬るぞ 103 00:08:53,252 --> 00:08:58,057 まむしの子に似合わず正直者でな 104 00:08:58,057 --> 00:09:02,294 お恥ずかしい限り 許されよ 105 00:09:02,294 --> 00:09:07,399 婿殿の行列の異形に 腰を抜かしたのでござろう 106 00:09:07,399 --> 00:09:10,970 腰を抜かしたのではござらぬ 怒られたのじゃ 入道殿 107 00:09:10,970 --> 00:09:13,305 いや あー いやいや 108 00:09:13,305 --> 00:09:17,576 あやつめ 心の臓に持病がござってな 109 00:09:17,576 --> 00:09:21,180 ああ見えて意外と小心者 110 00:09:21,180 --> 00:09:25,751 いずれにせよ この信長のせい 気の毒なことをいたした 111 00:09:25,751 --> 00:09:28,587 わしはな 112 00:09:28,587 --> 00:09:32,191 強い奴を信じる 113 00:09:32,191 --> 00:09:35,461 かかる戦国の世では 114 00:09:35,461 --> 00:09:40,900 弱いことは罪悪じゃと思うておる 115 00:09:40,900 --> 00:09:45,004 残念ながら せがれどもは この親父が身まかれば 116 00:09:45,004 --> 00:09:49,909 数年を出ずして おぬしの門前にひれ伏そう 117 00:09:49,909 --> 00:09:54,346 美濃一国はそっくり そなたのもの 118 00:09:54,346 --> 00:09:59,885 このこと よく覚えておいてくだされ 119 00:09:59,885 --> 00:10:02,285 入道殿 120 00:10:08,761 --> 00:10:11,130 婿殿 この道三 121 00:10:11,130 --> 00:10:16,302 必要とあらば いつでも援軍を繰り出そう 122 00:10:16,302 --> 00:10:20,105 尾張の固め 今川への備え 123 00:10:20,105 --> 00:10:24,505 十分に力を注がれよ 124 00:10:26,612 --> 00:10:29,148 舅殿 125 00:10:29,148 --> 00:10:32,184 ハハハハハハハ… 126 00:10:32,184 --> 00:10:35,187 信長の居城 那古野城では 127 00:10:35,187 --> 00:10:39,587 正室 濃姫が夫の身を案じていた 128 00:10:45,564 --> 00:10:48,968 お方様 お方様 129 00:10:48,968 --> 00:10:51,604 どうした?各務野 130 00:10:51,604 --> 00:10:57,710 殿が… 殿がお戻りになられました 131 00:10:57,710 --> 00:10:59,879 まあ 132 00:10:59,879 --> 00:11:04,149 それが… それがお方様 133 00:11:04,149 --> 00:11:07,353 殿の御身に何か? 134 00:11:07,353 --> 00:11:13,092 まるで今までの殿とは 別人のようにござりまする 135 00:11:13,092 --> 00:11:15,194 どうした?皆 妙な顔して 136 00:11:15,194 --> 00:11:18,594 俺だ 信長を見忘れたか 137 00:11:20,633 --> 00:11:23,903 濃 今 帰った 138 00:11:23,903 --> 00:11:26,405 舅御はご機嫌だったぞ 139 00:11:26,405 --> 00:11:31,105 やがて婿のこの俺に美濃一国 そっくり進上する腹と見た 140 00:11:33,445 --> 00:11:37,082 濃 なぜ泣くのだ 141 00:11:37,082 --> 00:11:39,685 なかなか面白い食えぬおやじよ 142 00:11:39,685 --> 00:11:45,024 だが正徳寺では残念ながら この信長の独り舞台さ 143 00:11:45,024 --> 00:11:47,459 殿 何だ 144 00:11:47,459 --> 00:11:49,461 俺のこの姿が気に食わぬか? 145 00:11:49,461 --> 00:11:52,431 殿 さあ そこへ いつものように腹ばいなされ 146 00:11:52,431 --> 00:11:55,067 何だと? むさい手で鼻をほじりなされ 147 00:11:55,067 --> 00:11:57,303 天井をにらんで爪をお噛みなされ 148 00:11:57,303 --> 00:12:01,740 いいえ この濃のひざを枕にして 高いびきで眠ってごらんなされ 149 00:12:01,740 --> 00:12:03,742 お濃 そなた 150 00:12:03,742 --> 00:12:06,278 惚れた亭主のご帰還で 少しばかり 取りのぼせたと見えるな 151 00:12:06,278 --> 00:12:09,882 さあ いつものようにポンポンと ゴミを落としてお立ちなされ 152 00:12:09,882 --> 00:12:12,151 「飯!」と大声でわめきなされ 153 00:12:12,151 --> 00:12:15,454 なんで そのように澄ました顔で 座っているのです 154 00:12:15,454 --> 00:12:20,225 たかが美濃のまむし1匹 上手にあしらってきたからとて 155 00:12:20,225 --> 00:12:23,325 それが どれほどの手柄だというのです 156 00:12:25,864 --> 00:12:31,737 濃の殿は そのような殿ではなかった 157 00:12:31,737 --> 00:12:34,773 どれだけ大きな器なのか 158 00:12:34,773 --> 00:12:37,876 磨けばどれだけ光るのか 159 00:12:37,876 --> 00:12:42,448 大地のような 空のような 雲のような 160 00:12:42,448 --> 00:12:45,648 激流のようなお方だった 161 00:12:47,820 --> 00:12:51,724 その濃の夫をお返しなされ さあ 殿 162 00:12:51,724 --> 00:12:56,424 この濃のひざの上に 濃の夫をお返しなされ 163 00:12:58,530 --> 00:13:01,100 フハハハハハ 164 00:13:01,100 --> 00:13:04,036 正徳寺では この信長の独り舞台であったが 165 00:13:04,036 --> 00:13:08,636 ここへ戻ると そうはいかぬわ フハハハハハ 166 00:13:13,412 --> 00:13:19,251 人間五十年 167 00:13:19,251 --> 00:13:25,424 下天の内をくらぶれば 168 00:13:25,424 --> 00:13:32,724 夢幻のごとくなり 169 00:13:34,767 --> 00:13:39,605 一度 生を得て 170 00:13:39,605 --> 00:13:43,175 滅せぬ者の 171 00:13:43,175 --> 00:13:47,446 あるべきか 172 00:13:47,446 --> 00:13:52,046 滅せぬ者の 173 00:13:54,119 --> 00:14:02,019 あるべきか 174 00:14:04,063 --> 00:14:07,299 お濃! はい 175 00:14:07,299 --> 00:14:10,903 分かったか 生は死の表 176 00:14:10,903 --> 00:14:13,338 腹ばうは起きんがためじゃ 177 00:14:13,338 --> 00:14:16,041 起きた信長をよう見ておけ 178 00:14:16,041 --> 00:14:18,877 起きた信長を? 179 00:14:18,877 --> 00:14:22,181 されば上総介信長は 180 00:14:22,181 --> 00:14:24,349 1匹のまむしに勝てたとて 181 00:14:24,349 --> 00:14:27,586 わざわざ起き出して 衣服を改めたのではない 182 00:14:27,586 --> 00:14:31,857 待ちに待った立つべき時の到来を 直感したゆえ起きたのだ 183 00:14:31,857 --> 00:14:36,361 起きたら働かねばならん 見ておれ 184 00:14:36,361 --> 00:14:39,731 この信長は お濃に飽かれるほど 185 00:14:39,731 --> 00:14:42,431 他愛のない亭主かどうか 186 00:14:45,571 --> 00:14:49,374 殿 そのお言葉 187 00:14:49,374 --> 00:14:53,274 いずこで 平手の爺が聞いておりましょう 188 00:14:56,014 --> 00:14:58,350 分かったか 189 00:14:58,350 --> 00:15:00,752 濃にも爺の心が 190 00:15:00,752 --> 00:15:05,452 はい それを承って安堵しました 191 00:15:07,726 --> 00:15:12,397 ご無事のご帰還 おめでとう存じまする 192 00:15:12,397 --> 00:15:15,534 うん フハハハハハ 193 00:15:15,534 --> 00:15:20,939 濃がこの俺に二度… いや 三度惚れくさった フハハハハ 194 00:15:20,939 --> 00:15:24,042 よし 約束しよう 何を? 195 00:15:24,042 --> 00:15:27,146 俺はな こなたを生涯 196 00:15:27,146 --> 00:15:30,716 三百三十三度 惚れさせてみせてやる 197 00:15:30,716 --> 00:15:34,016 まあ ハッハハハハハハ 198 00:15:36,021 --> 00:15:39,521 誰かある! はっ これに 199 00:15:41,527 --> 00:15:44,763 何だ 与左衛門か ずっとそこにいたのか? 200 00:15:44,763 --> 00:15:46,765 ははっ 201 00:15:46,765 --> 00:15:50,135 久しぶりに 宿直つかまつろうと思いましてな 202 00:15:50,135 --> 00:15:52,804 話を聞いておったな 203 00:15:52,804 --> 00:15:57,009 滅相もない 与左衛門 近頃 年のせいか 204 00:15:57,009 --> 00:16:00,646 いささか耳が遠なりましてな 205 00:16:00,646 --> 00:16:03,146 お呼びになりましたか? 206 00:16:08,153 --> 00:16:12,024 よいか うつけの吉法師は 死んだと思え 207 00:16:12,024 --> 00:16:15,961 今 ここにあるは 尾張の上総介信長じゃ 208 00:16:15,961 --> 00:16:18,061 はっ ははっ 209 00:16:20,232 --> 00:16:24,803 されば そのほうらも 生まれ変わらねばならぬ 210 00:16:24,803 --> 00:16:29,308 丹羽長秀 ここで まず最初になすべき仕事は? 211 00:16:29,308 --> 00:16:33,011 一族の和合 力の結集かと存じます 212 00:16:33,011 --> 00:16:35,147 うん… 213 00:16:35,147 --> 00:16:37,783 前田利家 そのためには何とする 214 00:16:37,783 --> 00:16:42,654 真っ先に尾張の中心 清洲を押さえるべきかと 215 00:16:42,654 --> 00:16:47,993 詳しく申せ 今は名ばかりの守護職 斯波義統殿 216 00:16:47,993 --> 00:16:52,598 織田宗家の看板をひけらかす 織田彦五郎殿を取り除けば 217 00:16:52,598 --> 00:16:56,168 信行様を擁立しようとくわだてる 柴田一派も 218 00:16:56,168 --> 00:16:58,337 容易には動けぬと存じまするが 219 00:16:58,337 --> 00:17:00,906 さもあらん 220 00:17:00,906 --> 00:17:03,475 他にないか?池田恒興 221 00:17:03,475 --> 00:17:05,978 はっ それがしは 222 00:17:05,978 --> 00:17:11,583 早急に守山城の織田信光様と 手を組むべきかと 223 00:17:11,583 --> 00:17:13,785 守山の叔父御とな 224 00:17:13,785 --> 00:17:18,991 はい 信光様はご病身ながら 正義を重んずるお方 225 00:17:18,991 --> 00:17:25,030 柴田一派の誘いにも乗らず 中立を守り通してございます 226 00:17:25,030 --> 00:17:27,030 うん… 227 00:17:29,067 --> 00:17:31,403 よし 228 00:17:31,403 --> 00:17:35,603 今の そのほうたちの進言 一挙にやってみようではないか 229 00:17:46,184 --> 00:17:50,789 いいか あくまで 騒ぎを起こすだけでいい 230 00:17:50,789 --> 00:17:53,191 命を狙うな 231 00:17:53,191 --> 00:17:57,591 しくじった時は その場で果てろ 232 00:18:04,736 --> 00:18:08,874 ここには尾張の旧主 斯波義統と 233 00:18:08,874 --> 00:18:13,612 織田宗家を名乗る彦五郎信友が 同居している 234 00:18:13,612 --> 00:18:16,815 表面は友好的だが この2人 235 00:18:16,815 --> 00:18:21,787 決して 心を許し合う仲ではなかった 236 00:18:21,787 --> 00:18:26,258 早う何とかならぬのか 237 00:18:26,258 --> 00:18:31,697 このままでは信長の力は ますます大きゅうなるばかりじゃ 238 00:18:31,697 --> 00:18:36,501 なに あの分家のうつけごときが 239 00:18:36,501 --> 00:18:42,474 この彦五郎の元にある限り 斯波殿は安泰でござる ハハッ 240 00:18:42,474 --> 00:18:45,344 そうかのう? ハアー 241 00:18:45,344 --> 00:18:49,348 信長を頼ったほうが 安泰かもしれぬ 242 00:18:49,348 --> 00:18:51,917 何? 243 00:18:51,917 --> 00:18:55,387 冗談じゃ 244 00:18:55,387 --> 00:18:59,587 さて… もう遅い 245 00:19:03,862 --> 00:19:05,862 フウ… 246 00:19:17,008 --> 00:19:19,978 はあー えーい 居候めが 247 00:19:19,978 --> 00:19:23,482 何の力もないくせに 尊大なことばかり言いおる 248 00:19:23,482 --> 00:19:27,285 殿 油断はなりませぬぞ 249 00:19:27,285 --> 00:19:32,791 ひそかに信長に通じておるという 噂もござりますれば 250 00:19:32,791 --> 00:19:37,028 何?あの役立たずがか 251 00:19:37,028 --> 00:19:41,133 ハハッ それほどの度胸もあるまいに 252 00:19:41,133 --> 00:19:43,133 (矢が刺さる音) はっ 253 00:19:45,137 --> 00:19:48,907 曲者 出合え 出合え!追え 254 00:19:48,907 --> 00:19:52,477 曲者は南曲輪のほうへ逃げたぞ 待てい! 255 00:19:52,477 --> 00:19:55,147 南曲輪へ逃げたか 256 00:19:55,147 --> 00:19:58,583 まさか 斯波の殿が… 257 00:19:58,583 --> 00:20:01,086 言うまでもない 258 00:20:01,086 --> 00:20:04,656 この部屋を出た後 わしらを狙わせたのだ 259 00:20:04,656 --> 00:20:07,656 もはや容赦なりませんぞ 260 00:20:19,037 --> 00:20:21,637 はあっ はっ 261 00:20:24,009 --> 00:20:26,812 はあっ ははあーっ はっ 262 00:20:26,812 --> 00:20:29,848 誰か 誰かある! 263 00:20:29,848 --> 00:20:32,184 殿!いかが召されました 殿 264 00:20:32,184 --> 00:20:35,821 刺客… 刺客じゃ 刺客が床下に忍びおった 265 00:20:35,821 --> 00:20:38,924 なんと 捜せ!逃がすな はっ 266 00:20:38,924 --> 00:20:40,926 彦五郎じゃ 267 00:20:40,926 --> 00:20:44,563 彦五郎の仕業に違いない おのれ 彦五郎め 268 00:20:44,563 --> 00:20:46,565 皆に支度させよ 269 00:20:46,565 --> 00:20:49,665 夜の明けきらぬうちに この城を出る! 270 00:21:00,912 --> 00:21:02,912 おっ おおっ 271 00:21:04,916 --> 00:21:08,887 何のまねだ! 尾張守護職に対し奉り 無礼千万 272 00:21:08,887 --> 00:21:11,790 黙れ!無礼はそっちだ 273 00:21:11,790 --> 00:21:15,260 おのれ 彦五郎 たばかったな 274 00:21:15,260 --> 00:21:19,097 言うな たばかったのはそっちだろ 275 00:21:19,097 --> 00:21:23,768 我が殿 彦五郎様の暗殺を謀り しくじったと見るや 276 00:21:23,768 --> 00:21:26,938 こそこそ逃げ出す おつもりらしいが そうはいかん! 277 00:21:26,938 --> 00:21:30,942 知らぬわ そのようなこと! 殺されかけたのは余のほうじゃ 278 00:21:30,942 --> 00:21:33,842 問答無用 斬り捨てい! 279 00:22:05,944 --> 00:22:08,980 んーっ うわっ 280 00:22:08,980 --> 00:22:11,616 お… 覚えておれ 281 00:22:11,616 --> 00:22:14,219 彦五郎 282 00:22:14,219 --> 00:22:17,389 いずれ己が身にも… 283 00:22:17,389 --> 00:22:19,389 ああっ 284 00:22:23,395 --> 00:22:25,397 ふんっ 285 00:22:25,397 --> 00:22:29,267 その頃 信長は 那古野から北へ向けて 286 00:22:29,267 --> 00:22:32,571 馬を飛ばしていた 287 00:22:32,571 --> 00:22:35,740 (門を叩く音) 那古野の殿がお成りなされた! 288 00:22:35,740 --> 00:22:38,043 お取り次ぎなされよ 289 00:22:38,043 --> 00:22:42,047 守山城の城主 織田孫三郎信光は 290 00:22:42,047 --> 00:22:46,647 信秀の末弟で 信長にとって叔父に当たる 291 00:22:49,654 --> 00:22:52,023 おお 急なお越しゆえ 292 00:22:52,023 --> 00:22:54,693 お出迎えもいたさず 失礼つかまつった 293 00:22:54,693 --> 00:22:59,698 承れば この信光に 直々に申し聞かすことのある由 294 00:22:59,698 --> 00:23:04,269 事によっては従い申すが 事によっては聞き申さぬ 295 00:23:04,269 --> 00:23:08,073 たわけども!直々に2人でと 申しているのが分からんのか! 296 00:23:08,073 --> 00:23:11,443 下がれい! はっ 297 00:23:11,443 --> 00:23:15,447 はあー 大きな声だのう 信長殿は 298 00:23:15,447 --> 00:23:20,619 だが申し上げておくが この信光 大声に驚くような 299 00:23:20,619 --> 00:23:23,955 生まれつきではござりませんぞ 300 00:23:23,955 --> 00:23:26,324 叔父御 何でござる 301 00:23:26,324 --> 00:23:30,095 叔父御は今 この信長の申すこと 302 00:23:30,095 --> 00:23:34,132 舌にのせて玩味できる余裕が 心におありかどうか 303 00:23:34,132 --> 00:23:36,134 まずそれを承ろう 304 00:23:36,134 --> 00:23:42,807 何?この信光に 心のゆとりがあるかないか? 305 00:23:42,807 --> 00:23:46,077 よし 仰せられよ 306 00:23:46,077 --> 00:23:50,115 この信光の了見 さほど狭くはござらん 307 00:23:50,115 --> 00:23:52,684 相分かった 308 00:23:52,684 --> 00:23:55,186 よく玩味いたされよ 309 00:23:55,186 --> 00:23:59,958 玩味料には 河東の二郡をつけ申そう 310 00:23:59,958 --> 00:24:03,662 河東の二郡? 311 00:24:03,662 --> 00:24:07,132 味わい料に? よいかな 312 00:24:07,132 --> 00:24:11,736 駿河の今川義元 上洛の志 あること今や疑うべからず 313 00:24:11,736 --> 00:24:14,439 この上洛を前に 314 00:24:14,439 --> 00:24:20,278 尾張の団結 ぜひとも なさねばならぬ仕事の第一なり 315 00:24:20,278 --> 00:24:24,382 よって この信長 父 信秀の遺命により 316 00:24:24,382 --> 00:24:27,986 ここに厳しく家風を正し 団結せんと志す 317 00:24:27,986 --> 00:24:30,922 なるほど 318 00:24:30,922 --> 00:24:35,022 叔父御 仰せられよ 何なりと 319 00:24:38,596 --> 00:24:42,333 そのほうこと 病弱にて 320 00:24:42,333 --> 00:24:44,903 この地の守り 思いよらず 321 00:24:44,903 --> 00:24:48,440 よって本日限り この領地は召し上げる 322 00:24:48,440 --> 00:24:50,440 なんと 323 00:24:56,781 --> 00:24:58,783 相分かったか 324 00:24:58,783 --> 00:25:02,887 で この信光に いずちへ参れと言われるのじゃ 325 00:25:02,887 --> 00:25:05,824 知らぬ 知らぬ? 326 00:25:05,824 --> 00:25:09,461 知らぬと言うは 替え地もくれぬと言われるのか 327 00:25:09,461 --> 00:25:14,566 無論のこと 明日からは 家臣 家族を引き連れて宿なしじゃ 328 00:25:14,566 --> 00:25:19,871 それとも この信長の命に背いて 329 00:25:19,871 --> 00:25:23,775 美濃のまむしが度肝を抜いた 俺が精鋭と一戦するか 330 00:25:23,775 --> 00:25:28,713 んー これは なかなか苦い風味じゃ 331 00:25:28,713 --> 00:25:32,917 一戦の決断なくば 早々に立ち退く用意をなされい 332 00:25:32,917 --> 00:25:36,921 立ち退く用意? 家臣 家族を引き連れて 333 00:25:36,921 --> 00:25:41,926 さて 居候もならず いきなり切り取り強盗もならず 334 00:25:41,926 --> 00:25:46,631 強盗などしてみよ この信長の威信に関わる 335 00:25:46,631 --> 00:25:50,235 即座に300丁の種子島を 見舞ってくれよう 336 00:25:50,235 --> 00:25:52,370 とすれば この信光 337 00:25:52,370 --> 00:25:56,441 誰かの袖にすがって しばしの時を稼ぎ 338 00:25:56,441 --> 00:25:59,641 次の分別を つけねばならぬことになるが 339 00:26:02,413 --> 00:26:05,450 そうなったら なぜそうせぬ 340 00:26:05,450 --> 00:26:10,822 と 簡単に言われても 多勢の居候を入れ得る城は 341 00:26:10,822 --> 00:26:14,726 そうたやすくは ござるまいて 342 00:26:14,726 --> 00:26:17,226 そうかの 343 00:26:21,566 --> 00:26:26,004 ほう あった 344 00:26:26,004 --> 00:26:29,574 味わい料は河東二郡 345 00:26:29,574 --> 00:26:33,478 うん 河東の二郡といえば 346 00:26:33,478 --> 00:26:36,478 清洲の城 347 00:26:38,516 --> 00:26:41,016 清洲 348 00:26:43,254 --> 00:26:46,254 者ども これへ! 349 00:26:52,130 --> 00:26:56,968 叔父御 3日のうちに必ず立ち退け 350 00:26:56,968 --> 00:26:59,968 立ち退かざれば謀反と見るぞ 351 00:27:03,007 --> 00:27:06,107 と… 殿 殿! 352 00:27:14,319 --> 00:27:19,624 この日 清洲城の警備は 異常なまでに厳重であった 353 00:27:19,624 --> 00:27:21,926 尾張のぬしに あくまでも 354 00:27:21,926 --> 00:27:26,531 弟 勘十郎信行を擁立する 反信長派の密談が 355 00:27:26,531 --> 00:27:29,300 既に長時間にわたっている 356 00:27:29,300 --> 00:27:31,736 彦五郎殿 357 00:27:31,736 --> 00:27:36,574 この重要な時期に 斯波の殿を 殺めたのはまずかったぞ 358 00:27:36,574 --> 00:27:39,143 また そのことでござるか 359 00:27:39,143 --> 00:27:43,948 あ いやいや 名門の看板なぞ もはや無用の長物 360 00:27:43,948 --> 00:27:48,052 しかしのう 腐っても鯛じゃ 361 00:27:48,052 --> 00:27:53,057 主筋に刃を向けたとあっては 世間の聞こえもよくないぞ 362 00:27:53,057 --> 00:27:57,562 世間に気を使っている時でも ござらんぞ 363 00:27:57,562 --> 00:28:00,231 我らも ここでこうして 364 00:28:00,231 --> 00:28:04,402 信長の殿に刃を向ける密謀を 巡らしておる 365 00:28:04,402 --> 00:28:07,705 もはや きれい事は申すまい 366 00:28:07,705 --> 00:28:10,241 これは謀反でござる 367 00:28:10,241 --> 00:28:13,344 そのこと しかと腹にくくり 368 00:28:13,344 --> 00:28:17,582 不退転の覚悟で 事に当たらねばなりません 369 00:28:17,582 --> 00:28:21,019 謀反か 370 00:28:21,019 --> 00:28:24,589 されど謀反に理あり 371 00:28:24,589 --> 00:28:27,989 それが我らの拠り所じゃ 372 00:28:31,763 --> 00:28:34,198 申し上げます どうした 大膳 373 00:28:34,198 --> 00:28:36,868 守山のお城に 何か一大事が起こりました由 374 00:28:36,868 --> 00:28:38,970 ん? 使者は誰じゃ 375 00:28:38,970 --> 00:28:45,443 はあ… ご城主 織田孫三郎信光様 御自ら 376 00:28:45,443 --> 00:28:47,643 叔父御が一人で? 377 00:28:56,721 --> 00:28:59,821 信光殿 いかが召された 378 00:29:02,193 --> 00:29:04,193 叔父御 379 00:29:11,202 --> 00:29:17,342 我らが主君 守山の城を 追われることに相なりました 380 00:29:17,342 --> 00:29:20,144 追われる? 381 00:29:20,144 --> 00:29:22,914 誰に? はっ 382 00:29:22,914 --> 00:29:25,883 那古野の信長様にござりまする 383 00:29:25,883 --> 00:29:29,587 ハッ あの大うつけが 384 00:29:29,587 --> 00:29:32,490 そのようなことを 申していったのか 385 00:29:32,490 --> 00:29:36,327 本日 五つ半頃 疾風のように駆けつけられて 386 00:29:36,327 --> 00:29:38,963 3日以内に城を明け渡せ 387 00:29:38,963 --> 00:29:43,267 嫌と言わば直ちに一戦と ご難題 388 00:29:43,267 --> 00:29:47,905 聞かれたか?おのおの 始めよったぞ 大うつけが 389 00:29:47,905 --> 00:29:49,905 うん… それで? 390 00:29:51,976 --> 00:29:56,076 守山殿は 何とご返事なされましたので? 391 00:29:58,149 --> 00:30:01,786 替え地を賜りたいと申しましたが 392 00:30:01,786 --> 00:30:04,622 病弱にて役に立たぬゆえ 393 00:30:04,622 --> 00:30:07,458 追放する者に寸土も与えられぬと 394 00:30:07,458 --> 00:30:11,262 そのようなことは 聞いてはござらん 395 00:30:11,262 --> 00:30:14,098 一戦なさるか 396 00:30:14,098 --> 00:30:18,836 それとも このまま 城を明け渡されるか 397 00:30:18,836 --> 00:30:21,936 そのことを聞いてござる 398 00:30:26,310 --> 00:30:29,580 叔父御 我が殿は 399 00:30:29,580 --> 00:30:32,450 一戦交えたいのは やまやまなれど 400 00:30:32,450 --> 00:30:36,220 わずかな手勢にて 信長殿に立ち向かうには 401 00:30:36,220 --> 00:30:38,589 到底 勝ち目なく 402 00:30:38,589 --> 00:30:44,262 と申して 家中一同 引き連れて流浪もならぬ 403 00:30:44,262 --> 00:30:48,733 時節を待って この恨み 晴らす日まで 404 00:30:48,733 --> 00:30:52,433 清洲の殿のお袖に ぜひ すがりたいと 405 00:30:55,640 --> 00:30:59,577 なんという無法な兄上じゃ 406 00:30:59,577 --> 00:31:01,679 彦五郎殿 407 00:31:01,679 --> 00:31:04,979 この信行からもお願いいたす 408 00:31:07,051 --> 00:31:11,151 叔父御をしばらく かくまってくださらんか 409 00:31:13,191 --> 00:31:18,696 時節を待って恨みを晴らすと 言われるのじゃな? 410 00:31:18,696 --> 00:31:23,134 いかにも 家中合わせて300余り 411 00:31:23,134 --> 00:31:27,572 それを離散させては 恨みは晴らせず 412 00:31:27,572 --> 00:31:33,578 かといって その日の ねぐらにも困る身の上なれば 413 00:31:33,578 --> 00:31:36,414 ここは恥を忍んで 414 00:31:36,414 --> 00:31:39,951 清洲殿に懇願つかまつる次第 415 00:31:39,951 --> 00:31:43,588 ハハハハ あの大うつけが 416 00:31:43,588 --> 00:31:49,427 中立の守山殿を 自ら敵に回しくさった 417 00:31:49,427 --> 00:31:53,931 300 400という兵数は 事を挙げる時には 418 00:31:53,931 --> 00:31:56,334 得がたい力じゃ 419 00:31:56,334 --> 00:32:01,372 では いよいよ信長攻略の 時機到来にござりまするか 420 00:32:01,372 --> 00:32:04,208 うん その日が近いと思え 421 00:32:04,208 --> 00:32:06,878 して 作戦は? 422 00:32:06,878 --> 00:32:08,913 うん 423 00:32:08,913 --> 00:32:14,252 柴田 林 両人とも練りに練った 424 00:32:14,252 --> 00:32:20,224 ここは南曲輪を貸した守山一党を 利用しない手はない 425 00:32:20,224 --> 00:32:23,961 と申しますと? 426 00:32:23,961 --> 00:32:26,797 恨み骨髄の信光殿に 427 00:32:26,797 --> 00:32:30,334 意趣晴らしの兵を挙げさせる 428 00:32:30,334 --> 00:32:35,206 信長は ここぞとばかり 打って出よう 429 00:32:35,206 --> 00:32:37,775 その手薄となった那古野城を 430 00:32:37,775 --> 00:32:41,812 我が清洲の精鋭が どっとばかりに急襲する 431 00:32:41,812 --> 00:32:45,149 なるほど 432 00:32:45,149 --> 00:32:49,020 驚いて引き返そうとした時には 433 00:32:49,020 --> 00:32:54,759 信行殿 柴田 林 佐久間の軍勢が 434 00:32:54,759 --> 00:32:59,163 那古野の城を取り囲んでいる 435 00:32:59,163 --> 00:33:01,499 フフッ 436 00:33:01,499 --> 00:33:05,436 それで信長殿は 437 00:33:05,436 --> 00:33:08,372 城なしの大うつけじゃ 438 00:33:08,372 --> 00:33:11,809 しかし ただ1つ 439 00:33:11,809 --> 00:33:14,412 ん?何じゃ 440 00:33:14,412 --> 00:33:19,083 信光様が果たして 決起なされましょうかな 441 00:33:19,083 --> 00:33:22,086 あれ以来 まるで覇気を失い 442 00:33:22,086 --> 00:33:27,458 南曲輪で終日 腑抜けのように 過ごしておられるとか 443 00:33:27,458 --> 00:33:30,728 申し上げます ただ今 信光様が御家老 444 00:33:30,728 --> 00:33:33,998 矢島四郎左衛門殿が お越しなされました 445 00:33:33,998 --> 00:33:36,298 四郎左がここへ 446 00:33:38,369 --> 00:33:41,739 あー それでどうじゃ?信光殿は 447 00:33:41,739 --> 00:33:44,976 はっ 我ら重臣一同 448 00:33:44,976 --> 00:33:47,078 この機を逃しては 一生 日の目は見られぬと 449 00:33:47,078 --> 00:33:49,680 強く迫りましたが… 450 00:33:49,680 --> 00:33:51,916 殿はいつもの優柔不断 451 00:33:51,916 --> 00:33:54,785 ひどく怖じ気づかれたご様子にて 452 00:33:54,785 --> 00:33:57,655 寝所へ引きこもられて しまわれました 453 00:33:57,655 --> 00:34:00,691 んー そうか 454 00:34:00,691 --> 00:34:05,029 されば それがしにお願いの儀が 何じゃ 455 00:34:05,029 --> 00:34:08,666 明日 南曲輪にて萩見の宴を催し 456 00:34:08,666 --> 00:34:13,804 清洲の殿をはじめ 御家老方を すべてお招きつかまつりまする 457 00:34:13,804 --> 00:34:17,775 はて 一戦あるや否やという時に 458 00:34:17,775 --> 00:34:20,344 異なことを申される 459 00:34:20,344 --> 00:34:23,214 よくのみ込めぬが? 460 00:34:23,214 --> 00:34:26,350 これはまた察しの悪い 461 00:34:26,350 --> 00:34:29,920 こちらの殿をはじめ 皆様にお越しいただいて 462 00:34:29,920 --> 00:34:34,292 我が殿の怖じ気を打ち払い 明日にも軍兵を連ねて 463 00:34:34,292 --> 00:34:37,461 那古野へ押し寄せるよう ご決定願いたいのが 464 00:34:37,461 --> 00:34:40,898 我らの真意でござる 465 00:34:40,898 --> 00:34:44,602 四郎左 よくぞ申してくれた 466 00:34:44,602 --> 00:34:48,472 明日は皆で押しかけようぞ はっ 467 00:34:48,472 --> 00:34:52,510 できれば日のあるうちに 信光を決断させ 468 00:34:52,510 --> 00:34:56,380 明早暁 那古野を 手に入れたいものよのう 469 00:34:56,380 --> 00:34:59,483 仰せのとおり 470 00:34:59,483 --> 00:35:04,322 考えてみれば信長も哀れな奴よ 471 00:35:04,322 --> 00:35:10,494 一族からは ことごとく疎まれ 悪名を一身に背負って果てる 472 00:35:10,494 --> 00:35:12,563 仰せのとおり 473 00:35:12,563 --> 00:35:16,263 ハーッハハハハハ ハハハハハハ 474 00:35:32,116 --> 00:35:34,418 何だ その姿は? 475 00:35:34,418 --> 00:35:38,456 あ… そちは矢島四郎左ではないか 476 00:35:38,456 --> 00:35:41,158 殿の御身を案じての警護か? それは 477 00:35:41,158 --> 00:35:45,062 那古野の殿 信長の命でござる 478 00:35:45,062 --> 00:35:49,367 この彦五郎の城にありながら 「信長の命」とは何事じゃ 479 00:35:49,367 --> 00:35:51,369 慮外いたすと許さんぞ 480 00:35:51,369 --> 00:35:53,369 あいや しばらく 481 00:35:57,708 --> 00:36:00,544 こ… これは何としたことだ 482 00:36:00,544 --> 00:36:05,616 信光殿 一気にこのまま 那古野の城へ押し寄せようと 483 00:36:05,616 --> 00:36:08,519 その武装か? ご自害願いたい 484 00:36:08,519 --> 00:36:13,257 ん… なんと 一族の結束を乱す彦五郎殿 485 00:36:13,257 --> 00:36:17,695 信長の殿の命にて 囲みはしたが討つには忍びぬ 486 00:36:17,695 --> 00:36:20,898 いざ武士らしく ご自害召されい 487 00:36:20,898 --> 00:36:23,534 は… 謀ったな 488 00:36:23,534 --> 00:36:26,303 謀らねば謀る気でござったはず 489 00:36:26,303 --> 00:36:29,006 元は我が身にあったと お諦めなされい 490 00:36:29,006 --> 00:36:33,144 恩を仇で返す気か えーい この謀反人ものめ 491 00:36:33,144 --> 00:36:36,313 清洲殿こそ那古野の謀反人ぞ 492 00:36:36,313 --> 00:36:38,313 討てい! 493 00:36:42,987 --> 00:36:44,987 でやーっ 494 00:36:49,460 --> 00:36:51,460 殿! 殿 495 00:36:55,299 --> 00:36:57,399 討ち漏らすでないぞ! はっ 496 00:36:59,437 --> 00:37:01,939 殿! 殿 497 00:37:01,939 --> 00:37:03,939 殿 殿! 498 00:37:08,112 --> 00:37:10,748 城門を開けよ はっ 499 00:37:10,748 --> 00:37:14,351 ひとまず… ひとまず城を落ちる 500 00:37:14,351 --> 00:37:17,021 構え! 殿 殿 501 00:37:17,021 --> 00:37:19,657 殿 信長の鉄砲隊が! 502 00:37:19,657 --> 00:37:22,259 おおっ 503 00:37:22,259 --> 00:37:25,559 閉めろ 門を閉めろ 504 00:37:41,679 --> 00:37:43,679 仕留めい! 505 00:37:58,028 --> 00:38:00,328 んんっ 506 00:38:04,835 --> 00:38:07,404 彦五郎殿が見当たらん 捜せい! 507 00:38:07,404 --> 00:38:09,404 はっ はっ 508 00:38:21,585 --> 00:38:24,788 見ろ どうやら 清洲は手に入ったぞ 509 00:38:24,788 --> 00:38:28,959 弾1発 無駄にせず 勝敗は決したげにござりまするな 510 00:38:28,959 --> 00:38:32,663 たわけ 勝敗などあるものか 初めから勝った戦だ 511 00:38:32,663 --> 00:38:34,765 はっ 恐れ入りました 512 00:38:34,765 --> 00:38:37,935 フッハハハハハ 513 00:38:37,935 --> 00:38:40,271 んっ いやーっ 514 00:38:40,271 --> 00:38:42,339 どうっ 515 00:38:42,339 --> 00:38:44,639 長秀 急げ はーっ 516 00:39:02,259 --> 00:39:05,963 ううう… ううううっ 517 00:39:05,963 --> 00:39:08,263 うわーっ 518 00:39:17,808 --> 00:39:21,445 はっ 519 00:39:21,445 --> 00:39:23,445 叔父御 520 00:39:26,083 --> 00:39:28,819 信長殿 521 00:39:28,819 --> 00:39:31,889 清洲城 522 00:39:31,889 --> 00:39:35,659 落としましたぞ 523 00:39:35,659 --> 00:39:38,228 見事 524 00:39:38,228 --> 00:39:40,528 かたじけない 525 00:39:42,499 --> 00:39:46,704 尾張の国… 526 00:39:46,704 --> 00:39:48,706 頼む 527 00:39:48,706 --> 00:39:51,675 叔父御 死んではならん 528 00:39:51,675 --> 00:39:56,213 叔父御には この先 信長の片腕となって… 529 00:39:56,213 --> 00:39:58,213 叔父御 530 00:40:03,954 --> 00:40:05,954 叔父御 531 00:40:24,208 --> 00:40:27,044 女たちに手出しはならんぞ! 532 00:40:27,044 --> 00:40:29,613 このまま逃がしてやれい 533 00:40:29,613 --> 00:40:31,613 行け 534 00:40:40,658 --> 00:40:44,595 彦五郎がまだ見つかりません 535 00:40:44,595 --> 00:40:46,595 んー… 536 00:40:51,902 --> 00:40:54,802 ふっ はっ あっ 537 00:40:57,908 --> 00:41:00,444 清洲殿 538 00:41:00,444 --> 00:41:03,947 見苦しいぞ 539 00:41:03,947 --> 00:41:06,583 はあっ キャーッ 540 00:41:06,583 --> 00:41:09,987 気を静めて ご生害なされい 541 00:41:09,987 --> 00:41:12,623 介錯は信長がいたす 542 00:41:12,623 --> 00:41:15,726 み… 見逃してくれ 543 00:41:15,726 --> 00:41:20,397 このとおりじゃ 544 00:41:20,397 --> 00:41:24,535 わしとて生きていれば 再び花の咲くこともあろう 545 00:41:24,535 --> 00:41:29,506 なあ 信長殿とは 同じ織田の一族ではないか 546 00:41:29,506 --> 00:41:33,811 この場だけ… この場だけ 547 00:41:33,811 --> 00:41:37,314 このまま死んでは あまりにも惨めじゃ 548 00:41:37,314 --> 00:41:40,384 彦五郎 549 00:41:40,384 --> 00:41:45,422 生き恥をさらすは もっと惨めでござろう 550 00:41:45,422 --> 00:41:48,225 くっ うわーっ んっ 551 00:41:48,225 --> 00:41:50,825 くっ く… ははっ 552 00:41:52,863 --> 00:41:54,863 ハアッ 553 00:42:04,641 --> 00:42:08,045 よーく見ておけ 554 00:42:08,045 --> 00:42:11,115 この清洲からの眺めを 555 00:42:11,115 --> 00:42:16,553 清洲城は半日も もたずして 信長のものになった 556 00:42:16,553 --> 00:42:18,789 尾張支配の拠点とすべく 557 00:42:18,789 --> 00:42:23,193 信長は直ちにこの城の修築に 取りかかることになるが 558 00:42:23,193 --> 00:42:26,563 その裏に 信光の犠牲があったことは 559 00:42:26,563 --> 00:42:29,763 忘れられぬ出来事でもあった 560 00:42:33,203 --> 00:42:36,173 末森城の反信長派は 561 00:42:36,173 --> 00:42:41,578 決起の機会を失い しばらくは 鳴りを潜めざるを得なかった 562 00:42:41,578 --> 00:42:44,882 信長殿は 563 00:42:44,882 --> 00:42:48,582 清洲を我がものにいたしましたな 564 00:42:50,587 --> 00:42:52,987 聞いておる 565 00:43:00,831 --> 00:43:04,501 なあ 勝家 566 00:43:04,501 --> 00:43:08,038 俺は兄上に勝てるだろうか 567 00:43:08,038 --> 00:43:11,408 それは… 568 00:43:11,408 --> 00:43:15,179 時が来れば決着はつきまする 569 00:43:15,179 --> 00:43:17,481 ただ 570 00:43:17,481 --> 00:43:20,951 今 日の出の勢いの信長殿と 五分に渡り合うは 571 00:43:20,951 --> 00:43:24,521 分が悪すぎまする 572 00:43:24,521 --> 00:43:28,292 この時だけは ただじっと 573 00:43:28,292 --> 00:43:31,292 動静を見ていることが 574 00:43:33,397 --> 00:43:36,597 肝心かと存じます