1 00:00:30,511 --> 00:00:35,015 彗星のごとく世に出た 稀代の英雄 織田信長は 2 00:00:35,015 --> 00:00:39,486 まさに疾風迅雷 怒濤と化し 炎と燃えて 3 00:00:39,486 --> 00:00:42,486 天下統一への道を ひた走ったのである 4 00:01:20,794 --> 00:01:26,100 才色兼備ながら気丈な濃姫と 信長の新婚生活は 5 00:01:26,100 --> 00:01:31,271 感情のぶつかり合う まるで 戦いのような日々であった 6 00:01:31,271 --> 00:01:35,809 信長に引き換え 次男の信行は文武に優れ 7 00:01:35,809 --> 00:01:38,979 礼節を重んじる貴公子である 8 00:01:38,979 --> 00:01:42,583 生母の土田御前や 重臣たちの期待は 9 00:01:42,583 --> 00:01:45,119 否が応でも信行に集まり 10 00:01:45,119 --> 00:01:48,719 信長廃嫡の動きが急になっていく 11 00:01:57,898 --> 00:02:03,103 信長の入城とともに 城下は大きく様変わりした 12 00:02:03,103 --> 00:02:06,106 出入り勝手と楽市の布令により 13 00:02:06,106 --> 00:02:08,909 諸国の商人たちが どっと乗り込み 14 00:02:08,909 --> 00:02:11,912 いよいよ賑わいを呈していった 15 00:02:11,912 --> 00:02:14,782 離れろ 今日は1人で歩く 16 00:02:14,782 --> 00:02:16,782 はっ 17 00:02:21,321 --> 00:02:24,725 どうだ 商いはあるか? 18 00:02:24,725 --> 00:02:28,996 まあまあだな いや 他では こう 人が集まらんから 19 00:02:28,996 --> 00:02:31,765 物もねえし 金もねえ 20 00:02:31,765 --> 00:02:34,101 針売り お前 どこの生まれだ? 21 00:02:34,101 --> 00:02:36,670 この近くだ この辺りはな 22 00:02:36,670 --> 00:02:39,373 昔は あんまり いい所ではなかったからのう 23 00:02:39,373 --> 00:02:41,642 旅から旅で多く暮らした 24 00:02:41,642 --> 00:02:46,480 ほう すると今は だんだん よくなっているということか 25 00:02:46,480 --> 00:02:48,482 まあ そういうことだ 26 00:02:48,482 --> 00:02:51,652 人は皆 大うつけだの コンコン馬だのと言うておるが 27 00:02:51,652 --> 00:02:54,755 今の清洲の大将 あの馬好きの馬殿は 28 00:02:54,755 --> 00:02:57,758 なかなか大したものよ 29 00:02:57,758 --> 00:02:59,793 馬殿とは信長のことか? 30 00:02:59,793 --> 00:03:01,795 ハハハ そうよ 31 00:03:01,795 --> 00:03:06,066 あの馬は並の馬ではないぞ 目の付け所がいい 32 00:03:06,066 --> 00:03:08,135 ふうん 33 00:03:08,135 --> 00:03:10,504 針売り お前 いくつだ? 34 00:03:10,504 --> 00:03:12,906 いくつに見えるね お侍には? さあて 35 00:03:12,906 --> 00:03:16,410 年寄りのようでもあるし 若者のようでもある 36 00:03:16,410 --> 00:03:18,612 ここの大将は馬かもしれんが 37 00:03:18,612 --> 00:03:21,648 お前は少し 猿に似ているな 38 00:03:21,648 --> 00:03:24,952 お侍 人のことばかり 言わぬものだ 39 00:03:24,952 --> 00:03:27,721 よし 俺がお前さんの人相 見てやろう 40 00:03:27,721 --> 00:03:29,990 ほう お前は人相も見るのか 41 00:03:29,990 --> 00:03:32,826 そうとも 針を 売り切ってしまった時には 42 00:03:32,826 --> 00:03:35,729 人相ばかりか上は天文 下は地理 43 00:03:35,729 --> 00:03:37,831 大上天下 一切に通じて… 44 00:03:37,831 --> 00:03:40,901 ハハハ お前は口から先に 生まれたのか? 45 00:03:40,901 --> 00:03:42,903 ハハハ そうじゃ 46 00:03:42,903 --> 00:03:45,706 足から先に生まれたら お袋さんが苦しむからのう 47 00:03:45,706 --> 00:03:48,909 ハハッ もういい よく見てみろ 48 00:03:48,909 --> 00:03:50,909 よし 49 00:03:55,282 --> 00:03:57,284 なるほど 50 00:03:57,284 --> 00:04:00,320 お侍は近いうちに いい人と出会うな 51 00:04:00,320 --> 00:04:03,657 それが運の開き始めで とんとん出世する 52 00:04:03,657 --> 00:04:06,693 そうか 俺も近いうちに 禄にありつけるか 53 00:04:06,693 --> 00:04:10,397 そうだな 浪人しているのなら どうだ 54 00:04:10,397 --> 00:04:14,101 いっそ この城の馬殿に 会うてみては? 55 00:04:14,101 --> 00:04:18,005 仕えるならば馬殿がよいぞ この辺りではな 56 00:04:18,005 --> 00:04:20,607 この辺りでなければ 誰がよいのだ? 57 00:04:20,607 --> 00:04:23,010 そうさなあ 58 00:04:23,010 --> 00:04:26,079 美濃のまむし 甲斐の信玄 59 00:04:26,079 --> 00:04:28,715 駿府の義元といったところだが 60 00:04:28,715 --> 00:04:32,386 やめたがよかろう ここはすぐ跡継ぎの代になる 61 00:04:32,386 --> 00:04:36,056 この跡継ぎが皆 出来が悪いときている 62 00:04:36,056 --> 00:04:38,158 跡継ぎか 63 00:04:38,158 --> 00:04:40,894 そこへいくと この城の大将は まだ若い 64 00:04:40,894 --> 00:04:43,964 跡継ぎがなくとも しばらくは持ちこたえる 65 00:04:43,964 --> 00:04:48,635 なるほど では お前は この城の大将に仕える気か? 66 00:04:48,635 --> 00:04:53,507 そのとおり 近いうちに うまく ちょろまかして家来になってやる 67 00:04:53,507 --> 00:04:56,343 人間 踏み台は選ばねばならぬぞ 68 00:04:56,343 --> 00:04:58,779 妙な台に乗ってると 始終ひっくり返って 69 00:04:58,779 --> 00:05:01,648 こっちも転げ回って いなければならぬ 70 00:05:01,648 --> 00:05:05,586 どうだ お侍も ここの馬を 踏み台にしてみては? 71 00:05:05,586 --> 00:05:08,622 踏み台? 主君というは 72 00:05:08,622 --> 00:05:11,124 家来の踏み台よ 73 00:05:11,124 --> 00:05:15,095 針売り! 何だよ いきなり でけえ声で 74 00:05:15,095 --> 00:05:17,965 名は何という? 俺か? 75 00:05:17,965 --> 00:05:21,368 俺は木下藤吉郎というておる 76 00:05:21,368 --> 00:05:26,168 必ず近いうちに出世する名だ 覚えておいてくれ ヘヘヘ 77 00:05:33,313 --> 00:05:36,213 見料だ おっ ハハッ こりゃどうも 78 00:05:51,832 --> 00:05:55,736 来い え?何だ おめえさんたちは 79 00:05:55,736 --> 00:05:59,036 ふざけるなよ 俺は何にも… いいから来るんだ 80 00:06:08,248 --> 00:06:10,384 ちと話がある 81 00:06:10,384 --> 00:06:12,686 何でござりましょう 82 00:06:12,686 --> 00:06:15,589 東の市場にな 俺を踏み台にして 83 00:06:15,589 --> 00:06:18,025 世に出ると言う おかしな猿が1匹いる 84 00:06:18,025 --> 00:06:21,561 は?猿が1匹? 85 00:06:21,561 --> 00:06:25,832 あの猿め 俺がことを 馬だと抜かしくさる 86 00:06:25,832 --> 00:06:28,001 まあ それはいい 87 00:06:28,001 --> 00:06:31,171 そやつが ふと 跡継ぎのことを口にしてな 88 00:06:31,171 --> 00:06:33,941 え?跡継ぎ? 89 00:06:33,941 --> 00:06:36,610 それで俺も心を決めた 90 00:06:36,610 --> 00:06:39,780 どのように お心を? 91 00:06:39,780 --> 00:06:42,749 お濃 俺は妾を持つ 92 00:06:42,749 --> 00:06:45,919 まあ 妬くなよ 93 00:06:45,919 --> 00:06:48,419 信長も子が欲しくなったと 思うがよい 94 00:06:50,657 --> 00:06:55,395 黙っているな 何か言うことはないのか? 95 00:06:55,395 --> 00:06:59,466 この濃が妬きますると 言い切ったら 96 00:06:59,466 --> 00:07:04,037 思い留まりまするか 殿は? 97 00:07:04,037 --> 00:07:06,037 思い留まらぬ 98 00:07:12,846 --> 00:07:16,984 それならば 仰せられ方が ござりましょう 99 00:07:16,984 --> 00:07:19,186 これこれゆえと なぜもっと… 100 00:07:19,186 --> 00:07:21,888 説くのは嫌だ 101 00:07:21,888 --> 00:07:24,257 子をなさぬ そちを 責めているのではない 102 00:07:24,257 --> 00:07:28,729 俺は ここしばらく暇があるゆえ 子供づくりに身を入れよう 103 00:07:28,729 --> 00:07:31,765 それで そなたは分からぬか? 104 00:07:31,765 --> 00:07:35,168 分かりました そうか 105 00:07:35,168 --> 00:07:40,540 この濃は殿の御首級を狙って 嫁いできたおなご 106 00:07:40,540 --> 00:07:45,379 世の常の妻女のように 嫉妬などはいたしませぬ 107 00:07:45,379 --> 00:07:48,982 異存はないと言うのだな? 108 00:07:48,982 --> 00:07:52,682 はい 殿を信じておりますゆえ 109 00:08:02,729 --> 00:08:05,232 何じゃ そちは? それが 110 00:08:05,232 --> 00:08:09,403 いきなり城の侍衆に 連れてこられまして ここで待てと 111 00:08:09,403 --> 00:08:12,472 こっちにも何が何だか さっぱり分からん 112 00:08:12,472 --> 00:08:16,009 無礼者 下がれ ハハハハ 113 00:08:16,009 --> 00:08:20,009 猿だよ そやつが 市場で拾ってきた 114 00:08:22,582 --> 00:08:27,854 お侍!もしかして お侍は… いけね 115 00:08:27,854 --> 00:08:32,192 とぼけるな うぬが この俺を 信長と ちゃんと知っていながら 116 00:08:32,192 --> 00:08:36,797 馬と呼び 踏み台と抜かしくさった 117 00:08:36,797 --> 00:08:40,333 何だ 大将 見抜いてたんですかい そりゃどうも 118 00:08:40,333 --> 00:08:42,402 何が「どうも」だ 119 00:08:42,402 --> 00:08:45,105 もう1つ抜かしたことを 忘れてはいまい 120 00:08:45,105 --> 00:08:48,041 うぬは この信長が 近いうちに よい人に出会い 121 00:08:48,041 --> 00:08:50,644 そのおかげで運が開けるとも 言いくさった 122 00:08:50,644 --> 00:08:55,082 そのよい人とは うぬ自身を指すのであろうが 123 00:08:55,082 --> 00:08:58,018 ハハハ さすが大将 124 00:08:58,018 --> 00:09:01,655 そこまで ちゃんと 見抜いていましたか ハハハ 125 00:09:01,655 --> 00:09:05,826 見抜いたゆえ 試してやる これから俺についてこい 126 00:09:05,826 --> 00:09:07,826 はい 127 00:09:15,102 --> 00:09:17,337 これから どちらへ?御大将様 128 00:09:17,337 --> 00:09:19,339 気味の悪い奴だ 129 00:09:19,339 --> 00:09:21,775 にわかに御大将様などと 抜かしくさる 130 00:09:21,775 --> 00:09:24,678 まだ他人だわい これは手厳しい 131 00:09:24,678 --> 00:09:27,681 さすが この藤吉が 惚れたお方だけのことはある 132 00:09:27,681 --> 00:09:31,751 ハッ それがうぬの ちょろまかす手か とぼけた奴だ 133 00:09:31,751 --> 00:09:35,956 惚れたなどという言葉は 村娘でも ごまかす時に使え 134 00:09:35,956 --> 00:09:38,792 ヘヘヘヘ では 135 00:09:38,792 --> 00:09:42,028 御大将が おなごをたぶらかす時は どうなさるんで? 136 00:09:42,028 --> 00:09:44,828 それをこれから見せてやる え? 137 00:09:48,068 --> 00:09:51,037 出羽 おるか?信長だ 138 00:09:51,037 --> 00:09:54,374 はっ 139 00:09:54,374 --> 00:09:57,010 おっ あー これはこれは 140 00:09:57,010 --> 00:09:59,479 殿には ようこそ いらせられました 141 00:09:59,479 --> 00:10:01,615 挨拶はよい 茶を所望 142 00:10:01,615 --> 00:10:04,851 はっ 早急に支度させまする 143 00:10:04,851 --> 00:10:08,155 茶を持て はい 144 00:10:08,155 --> 00:10:11,558 今しばらく お待ちを 145 00:10:11,558 --> 00:10:15,128 出羽 おぬし 妹がおったな? 146 00:10:15,128 --> 00:10:18,598 ござりまする ふつつか者が 147 00:10:18,598 --> 00:10:21,401 名は何という? お類と申しまするが? 148 00:10:21,401 --> 00:10:24,804 うん いくつになった? 17にござりまする 149 00:10:24,804 --> 00:10:28,742 よかろう おなごも 17にならば子は産める 150 00:10:28,742 --> 00:10:32,245 は?あの… 何と仰せられましたので? 151 00:10:32,245 --> 00:10:34,548 お類を俺の側女にする話だ 152 00:10:34,548 --> 00:10:38,752 えっ!いや あの… それは あの… お類の気持ちが… 153 00:10:38,752 --> 00:10:42,752 嫌だと言えば俺も嫌だ つまらぬことは聞くな 154 00:10:59,706 --> 00:11:04,744 お類 そちは子を産みたいか? は? 155 00:11:04,744 --> 00:11:07,347 子が産みたいか 産めるかと 尋ねている 156 00:11:07,347 --> 00:11:09,816 は… はい 157 00:11:09,816 --> 00:11:12,652 でも1人では… 158 00:11:12,652 --> 00:11:15,655 この信長の子だ 159 00:11:15,655 --> 00:11:18,058 殿のお子を? 160 00:11:18,058 --> 00:11:20,058 どうだ 産む気はあるか? 161 00:11:22,395 --> 00:11:26,866 はい 殿の子ならば 162 00:11:26,866 --> 00:11:29,436 よし 出羽 聞くとおりだ 163 00:11:29,436 --> 00:11:31,805 お類を明日 城へ連れてこい さらば 164 00:11:31,805 --> 00:11:33,805 はっ 165 00:11:37,344 --> 00:11:40,480 殿!突然のお成り また何事で? 166 00:11:40,480 --> 00:11:43,483 うん いや 気にするな ははっ 167 00:11:43,483 --> 00:11:47,954 内記 そちの自慢の娘 奈々は 本年 何歳だ? 168 00:11:47,954 --> 00:11:52,726 はっ 奈々にござりまするか 18になりました 169 00:11:52,726 --> 00:11:54,861 実はのう 内記 はい 170 00:11:54,861 --> 00:11:56,997 俺は奈々を口説きに来たのだ 171 00:11:56,997 --> 00:12:00,667 奈々を口説きに? また そのような お戯れを 172 00:12:00,667 --> 00:12:04,671 ハハハハ 173 00:12:04,671 --> 00:12:06,906 奈々 はい 174 00:12:06,906 --> 00:12:09,542 なるほど そなたは 艶やかになったのう 175 00:12:09,542 --> 00:12:15,282 あ… どうぞ お召し上がりくださりませ 176 00:12:15,282 --> 00:12:17,284 あっ 177 00:12:17,284 --> 00:12:19,486 指も白くて かわいいな 178 00:12:19,486 --> 00:12:23,790 よし 明日 父と一緒に城へ参れ 179 00:12:23,790 --> 00:12:27,761 はい?お城で 何かござりまするか? 180 00:12:27,761 --> 00:12:31,998 おう あるとも こなた 子供は好きか? 181 00:12:31,998 --> 00:12:34,501 はい 大好きでござりまする 182 00:12:34,501 --> 00:12:37,704 よし 俺の子供を産んでくれ 183 00:12:37,704 --> 00:12:41,808 は? 内記 明日だ 184 00:12:41,808 --> 00:12:43,808 猿 帰るぞ 185 00:12:50,717 --> 00:12:52,752 柿 2つくれ 186 00:12:52,752 --> 00:12:54,752 ありがとうございます 187 00:12:57,057 --> 00:13:00,894 どう見た 藤吉 面白うござりましたな 188 00:13:00,894 --> 00:13:03,396 もうひと狂言 拝見いたしたいぐらいで 189 00:13:03,396 --> 00:13:05,665 狂言だと? 190 00:13:05,665 --> 00:13:08,868 いえ その… 人生のまこと 191 00:13:08,868 --> 00:13:11,471 まことの人生ぶりにござりまする 192 00:13:11,471 --> 00:13:15,308 とぼけた奴だ 見誤ると首はないぞ 193 00:13:15,308 --> 00:13:19,813 ええ そりゃもう こんな首などは 問題ではござりませぬ 194 00:13:19,813 --> 00:13:23,550 あれほどのものを拝見して 何にも感じないようでしたら 195 00:13:23,550 --> 00:13:26,753 初めから しゃれこうべも 同じことで ヘヘヘ 196 00:13:26,753 --> 00:13:30,290 よいか 猿 うぬは ここから消えてなくなれ 197 00:13:30,290 --> 00:13:33,159 俺が妾どもに うつつを抜かしている間に 198 00:13:33,159 --> 00:13:38,064 美濃から駿河 三河と回ってこい 199 00:13:38,064 --> 00:13:41,568 俺の運が開けるほどの手柄を 立てて戻ってきたら 200 00:13:41,568 --> 00:13:44,838 本物の家臣にしてやろう 201 00:13:44,838 --> 00:13:46,840 ありがたき幸せで 202 00:13:46,840 --> 00:13:48,940 よし では… 消えまする 203 00:14:13,266 --> 00:14:17,837 殿 お気に召した側女は 見つかりましたか? 204 00:14:17,837 --> 00:14:21,975 うーん 2人だけは見つけてきたが もう1人ぐらいは欲しい 205 00:14:21,975 --> 00:14:24,544 こなたの侍女の深雪を ここへ呼んでくれ 206 00:14:24,544 --> 00:14:27,447 深雪を? あとの1人は深雪にする 207 00:14:27,447 --> 00:14:29,449 ここへ呼んで こなたから 208 00:14:29,449 --> 00:14:31,951 俺のことが好きか嫌いか 聞いてくれ 209 00:14:31,951 --> 00:14:34,087 殿… 210 00:14:34,087 --> 00:14:36,856 お断りいたしまする 211 00:14:36,856 --> 00:14:39,692 では俺から言おう 各務野 212 00:14:39,692 --> 00:14:41,895 はい 深雪をここへ呼べ 213 00:14:41,895 --> 00:14:44,230 なりませぬ 214 00:14:44,230 --> 00:14:48,830 殿は なぜ わたくしの 嫌がることをなされます? 215 00:14:55,208 --> 00:14:59,045 深雪は殿の考えているような 216 00:14:59,045 --> 00:15:02,145 浮ついた性根のおなごでは ござりませぬ 217 00:15:04,350 --> 00:15:07,620 殿とわたくしの双方に義理を感じ 218 00:15:07,620 --> 00:15:09,889 どちらにも従えず 219 00:15:09,889 --> 00:15:14,227 自害するに違いございませぬ 220 00:15:14,227 --> 00:15:17,397 たって深雪をと申すなら 221 00:15:17,397 --> 00:15:20,533 その前に さあ 222 00:15:20,533 --> 00:15:23,770 この濃をお斬りなされませ 223 00:15:23,770 --> 00:15:27,974 どうせ ややを産めぬ この身 224 00:15:27,974 --> 00:15:30,543 ひと思いに斬り捨てて 225 00:15:30,543 --> 00:15:33,243 その上で存分になされませ 226 00:15:35,715 --> 00:15:37,717 よくぞ申した! 227 00:15:37,717 --> 00:15:41,287 よし こうなったら俺も信長 228 00:15:41,287 --> 00:15:44,624 後へは引けん! 229 00:15:44,624 --> 00:15:46,824 皆の者 遠慮せい 230 00:15:56,970 --> 00:15:59,670 お濃 見事であった 231 00:16:02,141 --> 00:16:07,313 こたびのことはな 敵を欺くための信長の擬態と思え 232 00:16:07,313 --> 00:16:09,782 何と仰せられまする? 233 00:16:09,782 --> 00:16:13,620 天下の雲行きは いよいよ 怪しくなってきおった 234 00:16:13,620 --> 00:16:17,290 駿府の今川義元は 上洛の準備を進めておる 235 00:16:17,290 --> 00:16:21,895 美濃では義竜が舅御を倒し 尾張をも うかがおうとしている 236 00:16:21,895 --> 00:16:25,665 そして この尾張では 末森城の信行と 237 00:16:25,665 --> 00:16:27,734 それを取り巻くバカどもが 238 00:16:27,734 --> 00:16:30,136 義元 義竜と呼応して 239 00:16:30,136 --> 00:16:33,606 この信長に反旗を翻す魂胆と見た 240 00:16:33,606 --> 00:16:35,608 存じております 241 00:16:35,608 --> 00:16:38,311 俺は時が欲しいのだ お濃 242 00:16:38,311 --> 00:16:41,848 ここは一番 是が非でも 信長は 女にうつつを抜かしていると 243 00:16:41,848 --> 00:16:44,117 見せかけてやらねば ならぬところだ 244 00:16:44,117 --> 00:16:46,119 では そのために? 245 00:16:46,119 --> 00:16:50,790 おう よかったぞ お濃 さっきの怒り方は 246 00:16:50,790 --> 00:16:52,959 斬ってくれとは よう言うた 247 00:16:52,959 --> 00:16:56,696 女どもが聞いておったからのう すぐに大きな噂となろう 248 00:16:56,696 --> 00:17:00,300 確かに お話の筋は 通っているような 249 00:17:00,300 --> 00:17:03,169 でも殿のお言葉 250 00:17:03,169 --> 00:17:06,573 大事なことが1つ足らぬ 251 00:17:06,573 --> 00:17:09,042 それでは深雪は呼べませぬ 252 00:17:09,042 --> 00:17:11,344 何? いいえ 253 00:17:11,344 --> 00:17:14,781 濃は殿の妻として 深雪ばかりか 254 00:17:14,781 --> 00:17:17,884 他のお二人も 一切 城には入れませぬ 255 00:17:17,884 --> 00:17:21,087 これだけ言うて まだ分からんのか 分かりませぬ 256 00:17:21,087 --> 00:17:24,257 そのような戦略のためだけの おなごでは 257 00:17:24,257 --> 00:17:28,695 行く末長く 殿も哀れ おなごたちも哀れゆえ 258 00:17:28,695 --> 00:17:32,198 濃は不承知にござりまする 259 00:17:32,198 --> 00:17:34,767 うーん 260 00:17:34,767 --> 00:17:37,203 こなたは恐ろしい女じゃ 261 00:17:37,203 --> 00:17:40,106 もう一度 尋ねまする 262 00:17:40,106 --> 00:17:42,542 他の2人はともかく 263 00:17:42,542 --> 00:17:47,380 深雪に白羽の矢を立てたは 何のためでござりまする? 264 00:17:47,380 --> 00:17:50,450 ん… あれはな ちゃんと こなたを立てて 265 00:17:50,450 --> 00:17:52,452 奥の順序を乱さぬ おなごだ 266 00:17:52,452 --> 00:17:54,721 それだけでござりまするか? 267 00:17:54,721 --> 00:17:59,125 ん?んんっ よい子が欲しいため 268 00:17:59,125 --> 00:18:01,494 他には? いや そ… それ… 269 00:18:01,494 --> 00:18:05,131 いや やれやれ 手厳しい女房殿だ 270 00:18:05,131 --> 00:18:07,400 ホホホホ それはつまり… 271 00:18:07,400 --> 00:18:12,605 なあ 殿 たとえ どのような きっかけから側女にしようと 272 00:18:12,605 --> 00:18:17,710 殿御とおなごの間には 情の絆は きっとあるはず 273 00:18:17,710 --> 00:18:20,246 好きゆえに持とうとしていながら 274 00:18:20,246 --> 00:18:22,448 それを濃に言わそうなど 275 00:18:22,448 --> 00:18:27,053 殿らしゅうもない ずるい嘘はなりませぬ 276 00:18:27,053 --> 00:18:29,856 明日 お目通りさせますゆえ 277 00:18:29,856 --> 00:18:34,256 男らしゅう 思いのままを お告げなされませ 278 00:18:36,462 --> 00:18:39,899 深雪 279 00:18:39,899 --> 00:18:43,099 殿が こなたに大事な話が あるそうな 280 00:18:56,315 --> 00:18:59,218 わたくしも ここで 聞いておりまする 281 00:18:59,218 --> 00:19:02,588 こなたの思うままに 申し上げなされ 282 00:19:02,588 --> 00:19:04,757 はい 283 00:19:04,757 --> 00:19:08,661 殿 どうぞ深雪にお言葉を 284 00:19:08,661 --> 00:19:13,132 ん?う… うん 285 00:19:13,132 --> 00:19:15,435 そのほう… んんっ 286 00:19:15,435 --> 00:19:18,805 そのほう 何歳に相なった? 287 00:19:18,805 --> 00:19:21,507 19になりました 288 00:19:21,507 --> 00:19:24,110 深雪 はい 289 00:19:24,110 --> 00:19:27,380 そのほう 信長のそばに 一生 いたいであろう? 290 00:19:27,380 --> 00:19:29,649 いや いたいに違いない 291 00:19:29,649 --> 00:19:32,952 はい 置いていただきとう 存じまする 292 00:19:32,952 --> 00:19:36,422 そうであろう 信長も置きたいのだ 293 00:19:36,422 --> 00:19:39,559 分かったな? 分かりました 294 00:19:39,559 --> 00:19:42,862 うん うん 295 00:19:42,862 --> 00:19:47,366 ふつつかながら 奥方様のおそばで 生涯を終えたいと 296 00:19:47,366 --> 00:19:50,069 いや 分かっておらんぞ そちは 297 00:19:50,069 --> 00:19:54,207 いや 俺が言っているのは お濃がそばのことではない 298 00:19:54,207 --> 00:19:57,777 と 仰せられますと 何か深雪に不都合でも? 299 00:19:57,777 --> 00:20:00,947 いや 不都合ではない 分からん女だ 300 00:20:00,947 --> 00:20:03,382 ふつつかな生まれつきゆえ 何か お心に 301 00:20:03,382 --> 00:20:05,451 染まぬことをいたしたのなれば… 302 00:20:05,451 --> 00:20:09,021 いや… もう じれったい女だ 303 00:20:09,021 --> 00:20:11,023 お許しくださいませ これからは… 304 00:20:11,023 --> 00:20:13,593 いや 叱っておるのではない 305 00:20:13,593 --> 00:20:16,929 深雪 はい 306 00:20:16,929 --> 00:20:20,133 そちは なんという 歯切れの悪い女だ 307 00:20:20,133 --> 00:20:22,133 恐れ入ってござりまする 308 00:20:24,771 --> 00:20:26,873 歯切れは悪いがのう 309 00:20:26,873 --> 00:20:31,177 そちは肩の凝らぬ女だ 310 00:20:31,177 --> 00:20:35,815 と 仰せられますと あの… 肩をおもみ… 311 00:20:35,815 --> 00:20:37,815 ハー 312 00:20:42,121 --> 00:20:45,358 お濃 何とかならぬか あの女 313 00:20:45,358 --> 00:20:48,594 さあ… わたくしは存じませぬ 314 00:20:48,594 --> 00:20:51,397 オッホホホホ 315 00:20:51,397 --> 00:20:54,801 その頃 美濃では斉藤道三と 316 00:20:54,801 --> 00:20:59,372 嫡男 斉藤義竜の不和が 決定的になっていた 317 00:20:59,372 --> 00:21:05,111 両者は稲葉山と鷺山 近距離にある2つの城にこもって 318 00:21:05,111 --> 00:21:07,280 にらみ合った 319 00:21:07,280 --> 00:21:09,782 ここ 鷺山城の義竜は 320 00:21:09,782 --> 00:21:13,152 若さと兵力では 道三に勝っているが 321 00:21:13,152 --> 00:21:15,822 1つ 大きな弱点があった 322 00:21:15,822 --> 00:21:18,057 心臓の持病である 323 00:21:18,057 --> 00:21:23,462 開門されい 斉藤喜平次竜元でござる 324 00:21:23,462 --> 00:21:25,832 同じく孫四郎竜之 325 00:21:25,832 --> 00:21:28,835 兄上の病気見舞いに まかり越した 326 00:21:28,835 --> 00:21:32,638 フンッ 因業な親父よ 327 00:21:32,638 --> 00:21:36,309 せがれが死にかけているというに 328 00:21:36,309 --> 00:21:39,212 見舞いに現れるどころか 329 00:21:39,212 --> 00:21:42,312 隙あらば討ち果たそうと 狙っている 330 00:21:44,450 --> 00:21:47,053 何を申される 331 00:21:47,053 --> 00:21:49,053 (せき込み) 332 00:21:51,290 --> 00:21:54,794 それも せんない 333 00:21:54,794 --> 00:22:00,867 おぬしらと違って わしは 親父の血は引いてはおらぬ 334 00:22:00,867 --> 00:22:04,036 親父が殺した旧主 土岐頼芸公の 335 00:22:04,036 --> 00:22:07,573 落とし種なのだ 336 00:22:07,573 --> 00:22:11,677 実の父同様 337 00:22:11,677 --> 00:22:16,482 いずれ あのまむしの手にかかろう 338 00:22:16,482 --> 00:22:18,484 フフフフ 339 00:22:18,484 --> 00:22:22,388 義竜殿の容体はどうだ? 340 00:22:22,388 --> 00:22:24,390 はかばかしくござりませぬ 341 00:22:24,390 --> 00:22:26,859 ということは 342 00:22:26,859 --> 00:22:29,762 まだまだ死なぬという意味か? 343 00:22:29,762 --> 00:22:34,467 いや つまりその… はかばかしく治らぬと申したので 344 00:22:34,467 --> 00:22:37,270 わしはバカ息子の死を待っておる 345 00:22:37,270 --> 00:22:40,072 殿… よいか 346 00:22:40,072 --> 00:22:42,208 刀や剣にしても 347 00:22:42,208 --> 00:22:45,044 優れた逸品に出会うてしまうと 348 00:22:45,044 --> 00:22:48,748 これまで持っていた まがい物が 349 00:22:48,748 --> 00:22:53,686 色あせて 嫌になってしまう 350 00:22:53,686 --> 00:22:55,855 義竜と 351 00:22:55,855 --> 00:22:59,091 尾張の婿殿とは残念ながら 352 00:22:59,091 --> 00:23:02,662 質も格も違う 353 00:23:02,662 --> 00:23:08,534 今さら 愚かなせがれを 鍛え直す意欲も失せた 354 00:23:08,534 --> 00:23:10,836 お濃の婿殿は 355 00:23:10,836 --> 00:23:15,675 天下の逸材ということに なりまするか? 356 00:23:15,675 --> 00:23:18,611 信長が黄金ならば 357 00:23:18,611 --> 00:23:20,746 息子 義竜は… いや 358 00:23:20,746 --> 00:23:24,183 弟どもも 石ころ同然 359 00:23:24,183 --> 00:23:26,185 まあ 360 00:23:26,185 --> 00:23:28,821 あっ あー 361 00:23:28,821 --> 00:23:33,893 喜平次と孫四郎は そのほうの 産んだ子であったな ハハハハ 362 00:23:33,893 --> 00:23:38,531 いや 2人とも若いゆえ 鍛えようで どうにもなろう 363 00:23:38,531 --> 00:23:41,133 ハハハハ 364 00:23:41,133 --> 00:23:46,906 御意 玉 磨かざれば光なしと 申しますゆえ 365 00:23:46,906 --> 00:23:50,977 堀田殿 お二人を ここにお呼びくだされ 366 00:23:50,977 --> 00:23:54,880 殿に久しぶりに ご意見していただきましょう 367 00:23:54,880 --> 00:23:57,650 あっ いや それが実は… 368 00:23:57,650 --> 00:24:00,086 おらぬのか? はっ 369 00:24:00,086 --> 00:24:03,222 鷺山の義竜様より使者があり 370 00:24:03,222 --> 00:24:05,958 喜平次殿と孫四郎殿に 371 00:24:05,958 --> 00:24:08,527 あと幾日 持つか分からぬゆえ 372 00:24:08,527 --> 00:24:11,130 兄弟の別れをしたいと 373 00:24:11,130 --> 00:24:14,133 何と!2人は行ったのか? 374 00:24:14,133 --> 00:24:16,635 は… はい つい半刻前 375 00:24:16,635 --> 00:24:19,071 うぬは黙って送り出したのか? 376 00:24:19,071 --> 00:24:24,310 は… はあ ご兄弟の情に鑑みまして 377 00:24:24,310 --> 00:24:27,780 愚か者めが 378 00:24:27,780 --> 00:24:30,249 下がれ 下がれ 下がれ はっ 379 00:24:30,249 --> 00:24:33,449 殿 いかがなされました? 380 00:24:39,091 --> 00:24:42,061 手足をもがれた 381 00:24:42,061 --> 00:24:45,765 わしも もはや余命幾ばくもない 382 00:24:45,765 --> 00:24:50,036 この分では親父の手にかからず 383 00:24:50,036 --> 00:24:52,036 病死できそうじゃ 384 00:24:54,040 --> 00:24:59,145 さあ 兄弟別れの盃をしようぞ 385 00:24:59,145 --> 00:25:01,145 兄上 386 00:25:09,021 --> 00:25:12,858 さあ 飲め 387 00:25:12,858 --> 00:25:14,858 さらばじゃ 388 00:25:26,405 --> 00:25:29,642 いやー! 389 00:25:29,642 --> 00:25:33,913 兄上 謀ったな! 390 00:25:33,913 --> 00:25:36,213 ぬお!お! 391 00:25:41,687 --> 00:25:44,857 あー… 392 00:25:44,857 --> 00:25:47,293 よいか 世間には この2人がまむしの命で 393 00:25:47,293 --> 00:25:50,329 わしを殺しに来たゆえ 返り討ちにしたと触れろ 394 00:25:50,329 --> 00:25:53,799 はっ 395 00:25:53,799 --> 00:25:56,869 これで親父を襲う口実ができたわ 396 00:25:56,869 --> 00:25:59,004 ハハハハ 397 00:25:59,004 --> 00:26:01,373 殿!早く何とか… 398 00:26:01,373 --> 00:26:08,013 遅い!どのみち バカは いずれ誰かに殺される 399 00:26:08,013 --> 00:26:13,686 お濃が男であったならば 400 00:26:13,686 --> 00:26:16,455 この美濃一国も 401 00:26:16,455 --> 00:26:19,625 保てたであろうにのう 402 00:26:19,625 --> 00:26:22,228 お館様! 403 00:26:22,228 --> 00:26:25,364 お館様 御免! 404 00:26:25,364 --> 00:26:28,000 申し上げます! 何だ? 405 00:26:28,000 --> 00:26:31,303 一大事にござりまする 鷺山城で何かあったな? 406 00:26:31,303 --> 00:26:33,906 はっ では もうお館様には… 407 00:26:33,906 --> 00:26:36,876 喜平次と孫四郎は斬られたか? 408 00:26:36,876 --> 00:26:41,714 仰せのとおり! あ… 何と! 409 00:26:41,714 --> 00:26:44,483 ご心中 お察し申しまする 410 00:26:44,483 --> 00:26:49,288 察するに余りあるものがあるな ああー… 411 00:26:49,288 --> 00:26:53,459 で 義竜自身が斬ったのか? 412 00:26:53,459 --> 00:26:57,429 はっ 他に4~5名 寄ってたかって 413 00:26:57,429 --> 00:27:00,666 うー… 414 00:27:00,666 --> 00:27:04,366 お館様 義竜殿が兵を挙げました 415 00:27:07,573 --> 00:27:10,273 アホったれめが 416 00:27:27,026 --> 00:27:29,795 うろたえるな よいか 417 00:27:29,795 --> 00:27:35,167 城を出て 長良川沿いに北上し 本陣を構えろ 418 00:27:35,167 --> 00:27:37,167 はっ 419 00:27:41,440 --> 00:27:43,943 お館様!お方様が… 420 00:27:43,943 --> 00:27:46,643 ご子息お二人の死をはかなんで… 421 00:28:14,807 --> 00:28:20,579 よい覚悟だ わしが惚れただけのことはある 422 00:28:20,579 --> 00:28:22,579 また会おうぞ 423 00:28:39,765 --> 00:28:45,304 数刻後には飛報は 清洲の信長に もたらされた 424 00:28:45,304 --> 00:28:48,274 我らには入道様ご心中を 量りかねまするが 425 00:28:48,274 --> 00:28:51,277 とにかく申されたままを 申し上げまする 426 00:28:51,277 --> 00:28:55,514 それがよい まむしの腹など めったな者には分からぬものだ 427 00:28:55,514 --> 00:28:58,884 「今度はしくじった」と まず そう申されました 428 00:28:58,884 --> 00:29:01,754 確かに そのとおりだのう それで? 429 00:29:01,754 --> 00:29:04,089 「このしくじりは取り返せまい」 430 00:29:04,089 --> 00:29:08,260 「道三も みそを付けたと申せ」との 仰せにござりまする 431 00:29:08,260 --> 00:29:10,262 なるほど 432 00:29:10,262 --> 00:29:12,765 まむしのみそ漬けが できてしもうたか 433 00:29:12,765 --> 00:29:15,334 はっ その後で… 434 00:29:15,334 --> 00:29:18,134 大うつけの尾張の婿殿に伝えろ 435 00:29:20,773 --> 00:29:26,745 「どうだ 援軍をよこすか」 それだけ申せ 436 00:29:26,745 --> 00:29:28,847 はっ あとは何も言うな 437 00:29:28,847 --> 00:29:31,317 大うつけには大うつけの勘がある 438 00:29:31,317 --> 00:29:37,923 余計なことを差し挟んで 婿の勘をくるわせるな 439 00:29:37,923 --> 00:29:40,092 なるほど 440 00:29:40,092 --> 00:29:43,629 ところで この俺が援軍を率いて 駆けつけたら 勝てそうかな? 441 00:29:43,629 --> 00:29:46,565 はっ そのことでも 口上がござりました 442 00:29:46,565 --> 00:29:48,701 何? 「必ず」 443 00:29:48,701 --> 00:29:51,003 「婿殿は そう尋ねられるに 違いない」 444 00:29:51,003 --> 00:29:54,406 「その時は こう答えよ」と 早く申せ 445 00:29:54,406 --> 00:29:56,608 援軍を送ろうが 446 00:29:56,608 --> 00:29:59,945 信長が駆けつけようが 447 00:29:59,945 --> 00:30:01,945 戦は負ける 448 00:30:06,885 --> 00:30:08,885 うーん 449 00:30:10,923 --> 00:30:12,923 そう言ったか 450 00:30:25,571 --> 00:30:28,474 もし 451 00:30:28,474 --> 00:30:33,178 こたびのご出陣だけは 思い留まってくださりませぬか 452 00:30:33,178 --> 00:30:36,715 たわけめ 俺が考えている時は 黙っていろ 453 00:30:36,715 --> 00:30:40,819 でも父は もう助からぬと 454 00:30:40,819 --> 00:30:42,821 自分で自分の運命を… 455 00:30:42,821 --> 00:30:45,624 うるさいおなごだ 456 00:30:45,624 --> 00:30:50,963 こなたは うぬが母を死なして 口惜しゅうはないのか 457 00:30:50,963 --> 00:30:53,966 弟2人を討たれて 歯がゆうはないのか 458 00:30:53,966 --> 00:30:57,369 いいえ 459 00:30:57,369 --> 00:30:59,638 それゆえ 460 00:30:59,638 --> 00:31:03,008 この上 殿まで討たれてはと 461 00:31:03,008 --> 00:31:06,779 それを案じるのでございます 462 00:31:06,779 --> 00:31:09,348 殿の美濃ご出陣を機に 463 00:31:09,348 --> 00:31:12,985 末森城の信行様一味が 464 00:31:12,985 --> 00:31:15,421 得たりとばかり蜂起して… 465 00:31:15,421 --> 00:31:18,557 お濃 466 00:31:18,557 --> 00:31:20,559 はい 467 00:31:20,559 --> 00:31:24,163 そなた いつから 俺の軍師になった? 468 00:31:24,163 --> 00:31:26,965 無駄口たたく前に仏間へ いんで 469 00:31:26,965 --> 00:31:30,135 母や弟どもの冥福をなぜ祈らん? 470 00:31:30,135 --> 00:31:33,272 では どうあっても 471 00:31:33,272 --> 00:31:35,472 ご出陣なされまするか? 472 00:31:37,476 --> 00:31:40,679 誰だ! 473 00:31:40,679 --> 00:31:44,683 与左衛門 何だ その出で立ちは? 474 00:31:44,683 --> 00:31:48,554 お暇を頂きとう存じまする 何? 475 00:31:48,554 --> 00:31:51,723 何とぞ お暇を 476 00:31:51,723 --> 00:31:53,926 与左衛門 477 00:31:53,926 --> 00:31:56,695 うぬは美濃に戻るつもりじゃな? 478 00:31:56,695 --> 00:31:59,798 ならん ならぬぞ! 479 00:31:59,798 --> 00:32:01,867 以前は美濃衆といえども 今は 480 00:32:01,867 --> 00:32:04,567 この信長の なくてはならぬ家臣じゃ 481 00:32:06,805 --> 00:32:10,605 お言葉 ありがたく存じまする 482 00:32:13,412 --> 00:32:18,917 されど信長の殿は よき家臣に恵まれ 483 00:32:18,917 --> 00:32:21,817 今や押しも押されもせぬ 尾張の太守 484 00:32:24,122 --> 00:32:26,525 それに引き換え 485 00:32:26,525 --> 00:32:29,094 旧主 道三殿は 486 00:32:29,094 --> 00:32:32,494 死に場所を求めて さまよい歩いておられる 487 00:32:34,700 --> 00:32:38,604 殿 お暇が叶わぬなら 488 00:32:38,604 --> 00:32:41,204 それがしを追放してくだされ 489 00:32:43,175 --> 00:32:45,744 与左衛門殿 490 00:32:45,744 --> 00:32:49,348 父上のために そこまで 491 00:32:49,348 --> 00:32:51,717 その言葉だけで 492 00:32:51,717 --> 00:32:55,617 濃は ありがたくて ありがたくて 493 00:32:58,023 --> 00:33:03,328 分かった 与左衛門 行くがよい 494 00:33:03,328 --> 00:33:07,032 後から このわしが大軍を率いて 駆けつけると申しておけ 495 00:33:07,032 --> 00:33:09,032 はっ! 496 00:33:11,537 --> 00:33:13,537 殿 497 00:33:15,908 --> 00:33:19,211 大うつけには大うつけの 仁義があるわい 498 00:33:19,211 --> 00:33:22,011 舅殿に必ず参ると伝えておけ 499 00:33:31,456 --> 00:33:34,593 信長は斉藤道三 救援のために 500 00:33:34,593 --> 00:33:36,593 美濃へ出兵した 501 00:33:53,378 --> 00:33:56,014 斉藤道三 義竜親子は 502 00:33:56,014 --> 00:33:59,114 長良川を挟んで対決した 503 00:34:27,679 --> 00:34:30,315 お館様 504 00:34:30,315 --> 00:34:33,885 与左衛門 尾張の使者で参ったか 505 00:34:33,885 --> 00:34:36,722 いえ 村松与左衛門 506 00:34:36,722 --> 00:34:41,159 ただ今 美濃斉藤家に 帰参つかまつりました 507 00:34:41,159 --> 00:34:44,663 ハハハハ バカ者めが 508 00:34:44,663 --> 00:34:47,099 作戦を承りとうござります 509 00:34:47,099 --> 00:34:50,435 負け戦に作戦などないわ 510 00:34:50,435 --> 00:34:53,572 負け戦を覚悟で… 喜べ 511 00:34:53,572 --> 00:34:57,075 この鬼の入道に抜かりがあった 512 00:34:57,075 --> 00:35:00,612 お館様に手抜かりなど… あるある 513 00:35:00,612 --> 00:35:05,884 これまで殺すべき者はすべて 容赦なく殺してきた が… 514 00:35:05,884 --> 00:35:08,186 たった1人 殺し忘れた 515 00:35:08,186 --> 00:35:10,255 義竜様にござりまするか? 516 00:35:10,255 --> 00:35:14,326 その義竜に あろうことか 517 00:35:14,326 --> 00:35:18,764 親父のわしを殺させるだけの 手勢を与えてしもうた 518 00:35:18,764 --> 00:35:22,734 まして腹違いの弟2人を 519 00:35:22,734 --> 00:35:25,470 奴に むざむざ殺させてしもうた 520 00:35:25,470 --> 00:35:29,174 これで わしの負けは決まった 521 00:35:29,174 --> 00:35:31,677 負けるとは限りませんぞ 522 00:35:31,677 --> 00:35:36,248 いよいよ織田の援軍 尾張を発し 国境に向かっておりまする 523 00:35:36,248 --> 00:35:40,218 信長が到着する前に わしは死なねばならん 524 00:35:40,218 --> 00:35:43,288 お館様!それでは 信長殿が来られても 525 00:35:43,288 --> 00:35:46,725 無駄のように存ぜられまするが 526 00:35:46,725 --> 00:35:50,862 無駄なものか よく聞け 527 00:35:50,862 --> 00:35:55,367 信長という男は 舅との約束を果たし 528 00:35:55,367 --> 00:35:57,369 尾張一国をなげうち 529 00:35:57,369 --> 00:36:01,106 素っ裸になって救援に駆けつけた 530 00:36:01,106 --> 00:36:06,078 これで信長は 鉄壁の信義を持つ武将として 531 00:36:06,078 --> 00:36:10,315 日本中に男を上げることになる 532 00:36:10,315 --> 00:36:12,315 なるほど 533 00:36:20,058 --> 00:36:24,830 間もなく婿殿は この川に たどり着く 534 00:36:24,830 --> 00:36:27,099 その前に 535 00:36:27,099 --> 00:36:30,736 敵陣に攻め込まねばならん 536 00:36:30,736 --> 00:36:32,736 よいな? 537 00:36:34,773 --> 00:36:38,243 はっ 538 00:36:38,243 --> 00:36:43,915 これ以上 この老いぼれが ジタバタすると 539 00:36:43,915 --> 00:36:48,487 せがれ義竜 婿信長 共に 540 00:36:48,487 --> 00:36:53,759 致命的打撃を受け 両軍とも共倒れとなる 541 00:36:53,759 --> 00:36:57,629 せがれのため 婿のため 542 00:36:57,629 --> 00:37:02,768 早う この命を縮め 戦を終わらせねばならん 543 00:37:02,768 --> 00:37:07,305 2人の親としてな 544 00:37:07,305 --> 00:37:10,142 与左衛門 はっ 545 00:37:10,142 --> 00:37:14,146 この道三と共に死ぬこと 546 00:37:14,146 --> 00:37:16,548 相ならん! 547 00:37:16,548 --> 00:37:21,086 わしの最期を見届け 信長に知らせろ 548 00:37:21,086 --> 00:37:25,323 「道三 ただ今 討ち死に」 549 00:37:25,323 --> 00:37:29,227 「戦は終わってござる」 550 00:37:29,227 --> 00:37:32,097 それだけ申せばよい 551 00:37:32,097 --> 00:37:37,397 間違うても「無念」などと そなたの感情を入れてはならん 552 00:37:44,743 --> 00:37:47,112 「ただ今」 553 00:37:47,112 --> 00:37:50,715 「道三 討ち死に」 554 00:37:50,715 --> 00:37:57,115 「戦は終わってござる」 それだけ 555 00:39:08,126 --> 00:39:10,426 お館… 556 00:39:14,766 --> 00:39:17,702 道三殿と覚えたり 覚悟! 557 00:39:17,702 --> 00:39:20,438 覚悟は とうにできておる 558 00:39:20,438 --> 00:39:25,543 うぬらに この鬼の首 取らしてやろう 559 00:39:25,543 --> 00:39:27,712 ああ 560 00:39:27,712 --> 00:39:32,484 手柄は分け合うのだぞ あ? 561 00:39:32,484 --> 00:39:34,484 道三 覚悟! 562 00:39:43,128 --> 00:39:48,266 ただ今 道三 討ち死に 563 00:39:48,266 --> 00:39:52,366 戦は終わってござる! 564 00:39:59,844 --> 00:40:03,815 (馬が近づく音) 565 00:40:03,815 --> 00:40:05,815 義竜 566 00:40:10,288 --> 00:40:12,824 ヌハハハハ 567 00:40:12,824 --> 00:40:15,860 うぬには討たせん 568 00:40:15,860 --> 00:40:17,860 あー! 569 00:40:54,599 --> 00:40:58,737 この日 一代の梟雄 斉藤道三が 570 00:40:58,737 --> 00:41:01,072 ここ 長良川のほとりに 571 00:41:01,072 --> 00:41:05,072 63年の波乱に満ちた生涯を閉じた 572 00:41:10,749 --> 00:41:14,449 待て!待たれい! 573 00:41:19,324 --> 00:41:22,324 与左衛門ではないか いかがいたした? 574 00:41:24,829 --> 00:41:27,298 さあ 575 00:41:27,298 --> 00:41:32,070 ただ今 斉藤山城入道道三 討ち死に 576 00:41:32,070 --> 00:41:35,974 何と 入道が死んだ? 577 00:41:35,974 --> 00:41:39,210 仰せのとおり 578 00:41:39,210 --> 00:41:41,613 戦は終わってござる 579 00:41:41,613 --> 00:41:43,615 亡きがらは? 580 00:41:43,615 --> 00:41:46,885 長良川の清流にそのまま 581 00:41:46,885 --> 00:41:48,887 皆 聞いたか? 582 00:41:48,887 --> 00:41:52,490 信長の舅は 我らに痛手を負わせまいとて 583 00:41:52,490 --> 00:41:57,028 もはや葬礼まで済ませたとよ フハハハハ 584 00:41:57,028 --> 00:41:59,898 改めて申し上げる 585 00:41:59,898 --> 00:42:03,234 すでに入道様 討たれてござれば… 586 00:42:03,234 --> 00:42:05,804 待て 指図は受けぬ 587 00:42:05,804 --> 00:42:08,940 我らは弔い合戦に 駆けつけたのではないわ 588 00:42:08,940 --> 00:42:11,376 仰せのとおり 589 00:42:11,376 --> 00:42:14,112 全軍 道を返して 大良口へ引き返せ! 590 00:42:14,112 --> 00:42:17,215 はっ 助ける相手が討ち死にしては 591 00:42:17,215 --> 00:42:19,350 戦は無意味だ 592 00:42:19,350 --> 00:42:22,454 与左衛門 一緒に参れ いいえ 593 00:42:22,454 --> 00:42:26,491 それがしは ここで 入道殿を弔うてから 594 00:42:26,491 --> 00:42:30,591 よし 尾張で再会しよう はっ 595 00:42:49,147 --> 00:42:52,617 入道様 596 00:42:52,617 --> 00:42:56,187 こなたの引き出物 597 00:42:56,187 --> 00:42:59,287 しかと信長殿にお渡ししました 598 00:43:18,343 --> 00:43:23,548 信長の軍勢は戦わずして 尾張に引き揚げた 599 00:43:23,548 --> 00:43:26,718 織田信秀 平手政秀に続き 600 00:43:26,718 --> 00:43:29,687 斉藤道三を失った信長だが 601 00:43:29,687 --> 00:43:32,991 今は悲しんでいる暇はなかった 602 00:43:32,991 --> 00:43:38,591 留守にした尾張では 大がかりな 謀反の火の手が上がっている