1 00:00:34,257 --> 00:00:38,928 彗星のごとく世に出た 稀代の英雄 織田信長は 2 00:00:38,928 --> 00:00:43,266 まさに疾風迅雷 怒濤と化し 炎と燃えて 3 00:00:43,266 --> 00:00:46,766 天下統一への道を ひた走ったのである 4 00:01:24,974 --> 00:01:27,877 尾張の大うつけ 大アホと 5 00:01:27,877 --> 00:01:32,148 内外に悪評を振りまいた野生児 織田信長だが 6 00:01:32,148 --> 00:01:36,820 父 信秀 忠臣 平手政秀の 死を契機に 7 00:01:36,820 --> 00:01:39,222 大きく成長した 8 00:01:39,222 --> 00:01:42,092 道三を後ろ盾に得た信長 9 00:01:42,092 --> 00:01:46,796 いまだ混沌たる尾張の統一に 乗り出した 10 00:01:46,796 --> 00:01:51,334 正室 濃姫との夫唱婦随ぶりも 板につき 11 00:01:51,334 --> 00:01:53,870 天下は大いに栄えた 12 00:01:53,870 --> 00:01:56,806 その人混みの中で信長は 13 00:01:56,806 --> 00:02:00,944 木下藤吉郎という 奇妙な男に出会った 14 00:02:00,944 --> 00:02:05,648 森羅万象に通ずと大言壮語する この男の才能を 15 00:02:05,648 --> 00:02:07,717 信長は買った 16 00:02:07,717 --> 00:02:09,752 その頃 美濃では 17 00:02:09,752 --> 00:02:13,890 道三と嫡男 義竜の不和は 決定的になり 18 00:02:13,890 --> 00:02:16,626 長良川を挟んで対決した 19 00:02:16,626 --> 00:02:18,628 信長は急きょ 20 00:02:18,628 --> 00:02:22,132 道三救援の軍勢を従え 馳せ参ずるが 21 00:02:22,132 --> 00:02:27,070 道三は今 尾張の兵 一人たりとも犠牲にできぬと 22 00:02:27,070 --> 00:02:30,006 自ら死地へ飛び込んでいった 23 00:02:30,006 --> 00:02:32,275 舅の義侠心に涙し 24 00:02:32,275 --> 00:02:37,075 戦うことなく 引き返す信長であった 25 00:02:42,418 --> 00:02:44,821 この時 末森城では 26 00:02:44,821 --> 00:02:48,791 反信長の反旗を掲げる 弟 信行の一派が 27 00:02:48,791 --> 00:02:51,528 にわかに色めき立っていた 28 00:02:51,528 --> 00:02:55,932 美濃より帰国する信長軍を 急襲 壊滅すべく 29 00:02:55,932 --> 00:03:01,032 信行は一兵残らず 非常呼集の触れを発した 30 00:03:05,608 --> 00:03:09,112 方々 31 00:03:09,112 --> 00:03:11,881 いよいよ決起の時が まいりましたぞ 32 00:03:11,881 --> 00:03:14,150 おう おう 33 00:03:14,150 --> 00:03:17,353 ご承知のごとく信長の殿は 34 00:03:17,353 --> 00:03:20,323 美濃に兵を挙げたはいいが 35 00:03:20,323 --> 00:03:24,427 道三が死んだと知ると 一戦も交えず 36 00:03:24,427 --> 00:03:27,096 尻尾を巻いて 逃げ帰ってくるそうな 37 00:03:27,096 --> 00:03:30,300 もはや 尾張の太守たる資格なしと見た 38 00:03:30,300 --> 00:03:34,904 だが帰路を待ち伏せして 討ち果たすとは 39 00:03:34,904 --> 00:03:38,007 いささか卑怯と世間の誹りをのう 40 00:03:38,007 --> 00:03:40,944 謀反に卑怯はござるまいがのう 41 00:03:40,944 --> 00:03:44,480 この機を逃しては 今になって気後れしたと 42 00:03:44,480 --> 00:03:47,217 我らこそ世間の物笑いの種じゃ しかしのう… 43 00:03:47,217 --> 00:03:50,687 佐久間! 思案の余地はござりません 44 00:03:50,687 --> 00:03:55,487 後になると新しく生まれる子まで 斬らねばならん 45 00:03:57,460 --> 00:04:00,163 ご決断なさいませ 殿! 46 00:04:00,163 --> 00:04:02,398 殿! 殿 47 00:04:02,398 --> 00:04:04,801 殿! 48 00:04:04,801 --> 00:04:07,101 ご決断の程を 49 00:04:09,872 --> 00:04:12,472 泣いて斬ろう 50 00:04:16,879 --> 00:04:22,385 一族のために 尾張のために 51 00:04:22,385 --> 00:04:24,721 わしは信長を斬る 52 00:04:24,721 --> 00:04:28,291 これで決定じゃ おう! 53 00:04:28,291 --> 00:04:30,893 申し上げます 美作 54 00:04:30,893 --> 00:04:32,996 信長の軍勢は今 どこじゃ 55 00:04:32,996 --> 00:04:34,998 それが… 56 00:04:34,998 --> 00:04:37,900 こつ然と 姿をくらましてござります 57 00:04:37,900 --> 00:04:40,336 なんと 申し上げます 58 00:04:40,336 --> 00:04:43,806 信長… 信長の殿が 59 00:04:43,806 --> 00:04:46,542 信長がどうした 既に… 60 00:04:46,542 --> 00:04:49,445 既に清洲の城下に 入ってござりまする 61 00:04:49,445 --> 00:04:51,447 バカな そのようなことが… 62 00:04:51,447 --> 00:04:53,950 それがあるのだ な… なんと! 63 00:04:53,950 --> 00:04:56,886 恐らく危険を察知し 国境から大きく迂回し 64 00:04:56,886 --> 00:04:59,322 萩原川の水路を下ったと 思われまする 65 00:04:59,322 --> 00:05:03,760 おのれ 信長 うつけに してやられたか 66 00:05:03,760 --> 00:05:07,363 向こうが一枚上でござったのう 感心しておる場合ではない 67 00:05:07,363 --> 00:05:09,365 どうする 勝家 68 00:05:09,365 --> 00:05:11,701 このまま清洲へ攻め込む気か 69 00:05:11,701 --> 00:05:13,703 いや 70 00:05:13,703 --> 00:05:17,106 それでは勝敗は五分と五分 71 00:05:17,106 --> 00:05:20,106 かくなっては戦略を練り直すまで 72 00:05:22,145 --> 00:05:24,881 この勝家 73 00:05:24,881 --> 00:05:28,017 殿のためにも 74 00:05:28,017 --> 00:05:32,755 絶対に勝てる戦しか せぬつもりでござる 75 00:05:32,755 --> 00:05:36,326 勝たねばならぬ 76 00:05:36,326 --> 00:05:38,761 いいや 77 00:05:38,761 --> 00:05:40,961 必ず勝つ! 78 00:05:45,268 --> 00:05:48,471 信長は謀反一派の裏をかき 79 00:05:48,471 --> 00:05:50,907 美濃より無事 帰還した 80 00:05:50,907 --> 00:05:52,942 出兵も素早ければ 81 00:05:52,942 --> 00:05:57,542 引き返す決意も行動も そのまま電光石火である 82 00:06:10,993 --> 00:06:13,596 末森城のバカどもめ 83 00:06:13,596 --> 00:06:16,599 一杯食わされて ほぞを噛んでおるだろう 84 00:06:16,599 --> 00:06:20,636 しかし このまま引き下がるような 柴田殿ではござりませぬぞ 85 00:06:20,636 --> 00:06:22,772 いっそ このまま軍勢を解かずに 86 00:06:22,772 --> 00:06:25,041 末森城に奇襲をかけては いかがでしょう 87 00:06:25,041 --> 00:06:28,811 妙案にござる どうせ敵は寄せ集めの烏合の衆 88 00:06:28,811 --> 00:06:30,813 不意を食らって総崩れに 89 00:06:30,813 --> 00:06:32,949 そう急ぐな 90 00:06:32,949 --> 00:06:36,486 権六づれが 次にどういう手を打つかぐらい 91 00:06:36,486 --> 00:06:40,123 信長は既に見通しておるわ 92 00:06:40,123 --> 00:06:44,223 そのほうら 今夜は兵どもを 労うてやれ 93 00:06:52,769 --> 00:06:55,405 殿 94 00:06:55,405 --> 00:06:58,341 おかえりなされませ 95 00:06:58,341 --> 00:07:01,744 うん 96 00:07:01,744 --> 00:07:05,415 なぜ このような所にお一人で? 97 00:07:05,415 --> 00:07:08,715 奥に酒席を用意して ござりますのに 98 00:07:11,354 --> 00:07:16,058 そちの顔を見るのが つろうてな 99 00:07:16,058 --> 00:07:18,861 とうとう まむしおやじは 100 00:07:18,861 --> 00:07:21,531 自分から討たれて 死んでしもうたわい 101 00:07:21,531 --> 00:07:25,635 濃はとうに覚悟していたことに ござりまする 102 00:07:25,635 --> 00:07:27,737 でも濃は… 103 00:07:27,737 --> 00:07:30,273 濃は今 あの父に 104 00:07:30,273 --> 00:07:34,073 初めて深い愛情を 抱いておりまする 105 00:07:36,012 --> 00:07:39,148 殿を無事に濃の元に 106 00:07:39,148 --> 00:07:43,186 帰してくだされましたもの 107 00:07:43,186 --> 00:07:45,621 そればかりか 108 00:07:45,621 --> 00:07:49,058 美濃一国を この俺に残してくれたも同然 109 00:07:49,058 --> 00:07:55,364 俺はこれから まむしの おやじの分まで働かねばならん 110 00:07:55,364 --> 00:08:01,037 義竜にしろ 末森の信行にしろ 柴田にしろ 111 00:08:01,037 --> 00:08:04,307 取り逃がした魚が いかに大きかったか 112 00:08:04,307 --> 00:08:06,807 思い知るであろう 113 00:08:34,670 --> 00:08:38,370 母上 お呼びにござりまするか 114 00:08:40,443 --> 00:08:42,578 今もこうして 115 00:08:42,578 --> 00:08:46,478 亡き父上に おすがりしているところです 116 00:08:48,518 --> 00:08:51,621 兄弟 相争わず 117 00:08:51,621 --> 00:08:55,258 お家の安泰を図るわけには まいりませぬか? 118 00:08:55,258 --> 00:08:57,560 母上 119 00:08:57,560 --> 00:09:01,631 この期に及んで何を申されます 120 00:09:01,631 --> 00:09:06,502 殺さねば殺される これが戦国のならいと 121 00:09:06,502 --> 00:09:09,402 亡き父上の口癖 122 00:09:11,440 --> 00:09:13,976 その上 兄上は 123 00:09:13,976 --> 00:09:17,246 帰国後も乱行女色にふけり 124 00:09:17,246 --> 00:09:21,083 織田家の行く末そのものを 危うくしておるのです 125 00:09:21,083 --> 00:09:23,853 でもそれは ただの噂では? 126 00:09:23,853 --> 00:09:28,024 いや 柴田 林の両人をはじめ 127 00:09:28,024 --> 00:09:30,259 家中の者ことごとく 128 00:09:30,259 --> 00:09:33,362 兄上を見放してござる 129 00:09:33,362 --> 00:09:36,866 のう 佐久間 ははーっ 130 00:09:36,866 --> 00:09:42,405 皆 一致結束して 信行様を擁立なさろうと 131 00:09:42,405 --> 00:09:46,309 信行殿 側近の陰謀を抑え 132 00:09:46,309 --> 00:09:49,278 兄弟協力の道を開いていくのが 133 00:09:49,278 --> 00:09:53,349 まことの器量人では ございますまいか 134 00:09:53,349 --> 00:09:56,752 と申されても 135 00:09:56,752 --> 00:09:59,052 もはや遅うござる 136 00:10:01,123 --> 00:10:05,461 我らの一斉蜂起は 来たる20日と決したのです 137 00:10:05,461 --> 00:10:07,461 なんと 138 00:10:09,498 --> 00:10:12,768 母上 ご安堵くだされ 139 00:10:12,768 --> 00:10:16,172 雨降って地固まる 140 00:10:16,172 --> 00:10:20,276 尾張は繁栄の道をたどりましょう 141 00:10:20,276 --> 00:10:26,248 信長殿の乱行は まこと本心からであろうか 142 00:10:26,248 --> 00:10:31,520 側近の陰謀を抑え 兄弟協力の道を開いていくのが 143 00:10:31,520 --> 00:10:36,959 まことの器量人では ござりますまいか 144 00:10:36,959 --> 00:10:39,128 今ではなぜか 145 00:10:39,128 --> 00:10:43,766 天地に通ずる器と思えるのじゃ 146 00:10:43,766 --> 00:10:45,766 あっ 147 00:10:47,770 --> 00:10:49,939 佐久間信盛殿にござりまする 148 00:10:49,939 --> 00:10:51,974 おう 信盛 149 00:10:51,974 --> 00:10:55,044 遠慮は要らん 用を申せ 150 00:10:55,044 --> 00:11:00,383 いや 用とて別段ござりませぬが しばらくご無沙汰いたしたゆえ 151 00:11:00,383 --> 00:11:02,985 ご機嫌伺いに 152 00:11:02,985 --> 00:11:05,685 用がなくて来るか?そちが 153 00:11:08,257 --> 00:11:11,827 深雪 奈々もお類もここへ来て はい 154 00:11:11,827 --> 00:11:15,498 こやつに酌をしてやれ はい 155 00:11:15,498 --> 00:11:17,800 佐久間はな 156 00:11:17,800 --> 00:11:20,569 そちたちを見届けに やってまいったのじゃ 157 00:11:20,569 --> 00:11:22,638 いや いや 決してそのような儀は… 158 00:11:22,638 --> 00:11:24,940 隠すな ああっ あ… 159 00:11:24,940 --> 00:11:27,910 そちたち 日頃 末森城に集まり 160 00:11:27,910 --> 00:11:33,416 信長は大たわけで困ったものよと あれこれ相談していたはずじゃ 161 00:11:33,416 --> 00:11:35,451 あー ああ… ん… 162 00:11:35,451 --> 00:11:39,151 よし そのほうらは下がれ はい 163 00:11:41,357 --> 00:11:45,161 ハハハハ どうじゃ 佐久間 164 00:11:45,161 --> 00:11:48,798 中身もよいが衣装もよかろう はい 165 00:11:48,798 --> 00:11:52,601 京でもなかなか手に入らん だが この清洲では 166 00:11:52,601 --> 00:11:56,338 こうした物がどんどん集まり ざくざくと金が落ちていく 167 00:11:56,338 --> 00:11:58,607 物や金だけではないぞ 168 00:11:58,607 --> 00:12:01,177 ここにいる滝川一益などは 169 00:12:01,177 --> 00:12:04,146 信長が関所などという けちなものをなくしたゆえ 170 00:12:04,146 --> 00:12:06,282 流れ込んできた知恵者じゃ 171 00:12:06,282 --> 00:12:08,417 知恵者 172 00:12:08,417 --> 00:12:10,917 恐れ入ってござりまする 173 00:12:18,894 --> 00:12:21,330 佐久間 174 00:12:21,330 --> 00:12:25,201 大手門まで送ってとらそう 175 00:12:25,201 --> 00:12:27,670 殿 それではあまりに… 176 00:12:27,670 --> 00:12:31,173 遠慮をいたすな 177 00:12:31,173 --> 00:12:33,909 俺もそのほうに ひと言 言いたいことがある 178 00:12:33,909 --> 00:12:36,045 何事でござりまするか 179 00:12:36,045 --> 00:12:38,914 我らのお袋様を 泣かしてくれるなということだ 180 00:12:38,914 --> 00:12:41,751 土田御前を? そちたちは織田家のことを 181 00:12:41,751 --> 00:12:44,019 案じてくれている といって 182 00:12:44,019 --> 00:12:46,655 斬らねばならぬようなことを すれば 斬らねばならぬ 183 00:12:46,655 --> 00:12:48,655 信行をな 184 00:12:50,726 --> 00:12:56,132 わしが信行を斬ったら お袋様が泣く 185 00:12:56,132 --> 00:12:59,732 それだけだ 気をつけて帰れ 186 00:13:14,817 --> 00:13:17,353 おう 待っていたぞ 187 00:13:17,353 --> 00:13:19,853 さあ はっ 188 00:13:23,259 --> 00:13:27,963 恐れながら 信長の殿にお願いの儀が 189 00:13:27,963 --> 00:13:31,300 勘十郎信行を許してくれと 申すのであろう 190 00:13:31,300 --> 00:13:34,737 御意にござりまする 信行めは 191 00:13:34,737 --> 00:13:38,507 権六や林兄弟に煽動されて 192 00:13:38,507 --> 00:13:42,845 俺と一戦をくわだてる決意を 固めた そうであろう 193 00:13:42,845 --> 00:13:46,382 まこと恐れ入った眼力に ござりまする 194 00:13:46,382 --> 00:13:50,286 ハハハハ たわけたことを 195 00:13:50,286 --> 00:13:53,355 そちの顔に書いてある文字 196 00:13:53,355 --> 00:13:56,358 俺と ここな知恵者とで読んだのだ 197 00:13:56,358 --> 00:13:58,828 佐久間 198 00:13:58,828 --> 00:14:02,898 顔にも文字は書いてあるものと 思うがよいぞ 199 00:14:02,898 --> 00:14:05,234 ははっ 200 00:14:05,234 --> 00:14:07,803 よし 聞こう 201 00:14:07,803 --> 00:14:10,803 いつ どこで兵を挙げる? 202 00:14:12,842 --> 00:14:16,111 時は9月20日 203 00:14:16,111 --> 00:14:18,113 それがしが先鋒にて 204 00:14:18,113 --> 00:14:21,350 そこまで聞けば 205 00:14:21,350 --> 00:14:26,722 どこで兵を挙げるか おおよその見当はつく 206 00:14:26,722 --> 00:14:30,526 頃はちょうど刈り入れ時 207 00:14:30,526 --> 00:14:36,198 篠木三郷の良田に まず兵を繰り出す 208 00:14:36,198 --> 00:14:39,301 すると俺が怒って 詰問のために城を出る 209 00:14:39,301 --> 00:14:42,438 出たところで 別働隊が城を乗っ取り 210 00:14:42,438 --> 00:14:46,842 戻る城をなくして 討ち取ろうというのだろう 211 00:14:46,842 --> 00:14:49,678 はあっ 212 00:14:49,678 --> 00:14:52,114 佐久間 213 00:14:52,114 --> 00:14:57,386 俺が荒縄を帯代わりにして 214 00:14:57,386 --> 00:15:00,356 領内 残るくまなく 暴れ回っていたのは 215 00:15:00,356 --> 00:15:03,125 何のためか分かるか? 216 00:15:03,125 --> 00:15:06,562 では… あの頃から? 217 00:15:06,562 --> 00:15:09,465 こうなることは 分かりすぎるほど分かっていた 218 00:15:09,465 --> 00:15:15,204 いや 思うたより 遅うなったまででのう 219 00:15:15,204 --> 00:15:19,742 信行など 田のあぜ道 歩いても 迷子になろうし 220 00:15:19,742 --> 00:15:22,544 権六にしても 佐渡にしても 221 00:15:22,544 --> 00:15:26,982 地の利では この俺の足元にも及ばぬ 222 00:15:26,982 --> 00:15:30,819 俺は目をつむっていても 小川の周りから 223 00:15:30,819 --> 00:15:34,356 田の深さまで知り尽くしている 224 00:15:34,356 --> 00:15:38,127 縄帯一本あれば どのような城壁をも 225 00:15:38,127 --> 00:15:41,430 越えることのできる男だ 226 00:15:41,430 --> 00:15:47,169 その俺を領内におびき出して 城と命を取ろうなど フッ 227 00:15:47,169 --> 00:15:51,607 ハハハハ おかしな たわけどもが揃うたものよ 228 00:15:51,607 --> 00:15:55,210 フハハハハハハ 229 00:15:55,210 --> 00:15:57,346 よし 策を授ける 230 00:15:57,346 --> 00:16:00,316 佐久間 寄れ 231 00:16:00,316 --> 00:16:02,551 決戦の日が来た 232 00:16:02,551 --> 00:16:07,051 予定どおり まず佐久間軍が進撃を開始 233 00:16:22,905 --> 00:16:25,975 後方に陣を構えた柴田勝家は 234 00:16:25,975 --> 00:16:28,777 信長の軍が出てくるのを 待ち受けた 235 00:16:28,777 --> 00:16:31,780 申し上げます 佐久間信盛殿の軍勢 236 00:16:31,780 --> 00:16:34,316 手はずどおり 出発いたしました 237 00:16:34,316 --> 00:16:36,318 うん 238 00:16:36,318 --> 00:16:41,357 しかし戦況は思わぬ展開を見せた 239 00:16:41,357 --> 00:16:45,227 我らは謀反の先陣にあらず! 240 00:16:45,227 --> 00:16:50,099 それを平定する信長軍の 先鋒と思え! 241 00:16:50,099 --> 00:16:54,370 とわーっ それ とわーっ 242 00:16:54,370 --> 00:16:57,673 突然 佐久間軍が方向を転じ 243 00:16:57,673 --> 00:17:01,773 後方の柴田軍に 矛先を向けたのである 244 00:17:03,846 --> 00:17:07,916 一大事 一大事 245 00:17:07,916 --> 00:17:10,719 一大事にございまする 何事じゃ 246 00:17:10,719 --> 00:17:13,288 はっ 佐久間信盛殿 247 00:17:13,288 --> 00:17:16,158 謀反にございます! 何? 248 00:17:16,158 --> 00:17:20,058 進軍途中にて兵を引き返し 我が軍へ向け 突撃を開始 249 00:17:22,164 --> 00:17:25,464 おのれ この勝家に刃を向けるとは 250 00:17:27,503 --> 00:17:30,103 信盛が裏切ったのか 251 00:17:33,008 --> 00:17:35,808 構わん 踏み潰せ 252 00:17:37,880 --> 00:17:40,580 わーっ! 253 00:17:49,024 --> 00:17:52,924 裏切りだ!佐久間殿が裏切ったぞ 254 00:18:04,506 --> 00:18:06,675 申し上げます 255 00:18:06,675 --> 00:18:10,512 殿 殿 どけ どけ 殿! 256 00:18:10,512 --> 00:18:12,815 殿!申し上げます 257 00:18:12,815 --> 00:18:14,917 まだ手こずっておるのか はあ 258 00:18:14,917 --> 00:18:19,455 敵は死にものぐるいゆえ 容易に退きませぬ 259 00:18:19,455 --> 00:18:23,092 よし 俺が指揮を執る 260 00:18:23,092 --> 00:18:25,292 柴田権六! 261 00:18:27,496 --> 00:18:29,431 誰だ! 262 00:18:29,431 --> 00:18:31,600 俺だ 263 00:18:31,600 --> 00:18:33,800 まさか 264 00:18:36,905 --> 00:18:39,575 信長 権六 265 00:18:39,575 --> 00:18:42,177 いかに戦熱心でも 前ばかり見ていて 266 00:18:42,177 --> 00:18:44,880 すっかり囲まれても 知らずにいるようでは 267 00:18:44,880 --> 00:18:48,217 指揮は執れん 囲まれた? 268 00:18:48,217 --> 00:18:51,520 後から来るはずの信行の軍勢は 慌てふためいて 269 00:18:51,520 --> 00:18:54,957 末森城へ逃げ戻ったわ なんと 270 00:18:54,957 --> 00:18:57,226 どうだ 戦の仕方 分かったか 271 00:18:57,226 --> 00:18:59,795 分からん! たわけめ 272 00:18:59,795 --> 00:19:03,799 俺が子供の頃から この辺りを 駆け回っていたのを忘れたか 273 00:19:03,799 --> 00:19:07,099 者ども かかれ! 274 00:19:09,404 --> 00:19:13,004 手向かいいたすと ためにならんぞ 275 00:19:23,352 --> 00:19:25,587 殿 殿 276 00:19:25,587 --> 00:19:27,687 はっ 殿 277 00:19:53,348 --> 00:19:55,348 殿! 278 00:20:05,427 --> 00:20:09,198 ハハハハハハ… 279 00:20:09,198 --> 00:20:11,833 俺の運は 280 00:20:11,833 --> 00:20:15,871 大うつけには及ばなかったわ ハハハハハ 281 00:20:15,871 --> 00:20:19,274 そうと悟ったら じたばたするな 282 00:20:19,274 --> 00:20:21,276 潔く討たれてしまえ! 283 00:20:21,276 --> 00:20:24,476 おお いいとも 284 00:20:26,481 --> 00:20:29,718 さあ!斬れ 285 00:20:29,718 --> 00:20:32,955 覚悟! 待てい 286 00:20:32,955 --> 00:20:35,524 権六 287 00:20:35,524 --> 00:20:38,327 俺が何のために うぬの前に現れたか 288 00:20:38,327 --> 00:20:42,130 分かるであろう 分からいでか 289 00:20:42,130 --> 00:20:45,701 なんで今更 卑怯なまねをするものぞ 290 00:20:45,701 --> 00:20:48,503 勘十郎様は何も知らぬ 291 00:20:48,503 --> 00:20:51,440 皆 この権六がたくらんだこと 292 00:20:51,440 --> 00:20:53,542 さあ 293 00:20:53,542 --> 00:20:56,742 権六の死に様をよーく見ろ 294 00:20:58,747 --> 00:21:00,749 斬れ! 295 00:21:00,749 --> 00:21:03,652 うぬがたくらんだ謀反じゃ それゆえ 296 00:21:03,652 --> 00:21:06,488 うぬが収拾しなければならん 297 00:21:06,488 --> 00:21:08,690 それまでは殺さん 298 00:21:08,690 --> 00:21:12,327 殺さん? そうだ 299 00:21:12,327 --> 00:21:15,631 うぬが まこと 織田家のためを思うのならば 300 00:21:15,631 --> 00:21:19,635 これから やらねばならぬことがあろう 301 00:21:19,635 --> 00:21:22,137 広く天下を見よ 302 00:21:22,137 --> 00:21:26,408 今更 家督争いに 明け暮れている時ではないぞ 303 00:21:26,408 --> 00:21:28,908 そのことを信行に言い聞かせい 304 00:21:30,879 --> 00:21:34,479 俺は弟を殺したいとは思わん 305 00:21:36,852 --> 00:21:38,852 たあっ 306 00:21:50,332 --> 00:21:53,268 俺は… 307 00:21:53,268 --> 00:21:57,568 俺は信長の殿を見損のうていた 308 00:21:59,708 --> 00:22:03,308 (読経の声) 309 00:22:18,527 --> 00:22:23,527 内乱はあっけなく 信長軍の勝利に終わった 310 00:22:35,644 --> 00:22:41,216 信行一派は すべてを諦めたわけではなかった 311 00:22:41,216 --> 00:22:43,518 権六の行く方はまだ分からんのか 312 00:22:43,518 --> 00:22:47,622 はっ 勝家殿は 稲生原で信長殿の奇襲に遭い 313 00:22:47,622 --> 00:22:53,095 混乱に紛れて 消息不明のままにござります 314 00:22:53,095 --> 00:22:56,595 (読経の声) 315 00:23:09,378 --> 00:23:11,378 誰だ 316 00:23:18,320 --> 00:23:20,789 勝家殿 317 00:23:20,789 --> 00:23:22,958 何としたのだ それは 318 00:23:22,958 --> 00:23:27,362 皆 この権六めの 319 00:23:27,362 --> 00:23:30,632 不明といたすところに ござりまする 320 00:23:30,632 --> 00:23:35,303 なんだ わずかのつまずきで その体たらく 321 00:23:35,303 --> 00:23:37,305 皆の士気に関わるではないか 322 00:23:37,305 --> 00:23:39,574 これはしたり 323 00:23:39,574 --> 00:23:43,245 すると殿は まだ清洲の殿と 324 00:23:43,245 --> 00:23:46,114 合戦なさるおつもりで ござりまするか 325 00:23:46,114 --> 00:23:51,119 知れたことじゃ 我らにはまだ力がある 326 00:23:51,119 --> 00:23:55,390 美濃の義竜殿に援軍を頼もうと 話し合っておったのじゃ 327 00:23:55,390 --> 00:23:58,059 殿… 328 00:23:58,059 --> 00:24:00,996 まだそのようなことを 329 00:24:00,996 --> 00:24:03,598 何を浮かぬ顔をしておる 330 00:24:03,598 --> 00:24:07,836 まあ 上がれ 験直しに一献やろう 331 00:24:07,836 --> 00:24:10,672 謹慎中ゆえ頂きません 332 00:24:10,672 --> 00:24:13,608 謹慎中? 333 00:24:13,608 --> 00:24:15,844 そちは誰に謹慎しておるのじゃ 334 00:24:15,844 --> 00:24:18,780 まず第一に 335 00:24:18,780 --> 00:24:22,851 殿に申し訳がござりません 336 00:24:22,851 --> 00:24:24,853 わしは別に とがめてはおらぬが? 337 00:24:24,853 --> 00:24:28,753 第二に香林院様に 338 00:24:30,725 --> 00:24:33,625 母上に… そして第三に 339 00:24:36,364 --> 00:24:40,268 信長の殿に 340 00:24:40,268 --> 00:24:42,871 フッハハハハハ 341 00:24:42,871 --> 00:24:47,709 勝家殿はだいぶ清洲のうつけの 毒気に当たりましたな 342 00:24:47,709 --> 00:24:52,314 信長の殿をうつけと呼ぶのはよせ 343 00:24:52,314 --> 00:24:56,418 うつけをよして こんこん馬と言いましょうかのう 344 00:24:56,418 --> 00:24:59,821 かといって こんこんの毒気で 345 00:24:59,821 --> 00:25:02,123 髪の毛が抜けるわけでも ござりますまいが 346 00:25:02,123 --> 00:25:04,125 フッフフハハ ハッハハハハ 347 00:25:04,125 --> 00:25:07,362 美作 348 00:25:07,362 --> 00:25:10,866 言葉が過ぎましょうぞ 349 00:25:10,866 --> 00:25:12,866 これは香林院様 350 00:25:15,103 --> 00:25:19,174 母上 いかが召されました 351 00:25:19,174 --> 00:25:22,544 戦に敗れ これから どうなるやも知れぬのに 352 00:25:22,544 --> 00:25:24,980 じっとはしておられぬ お袋様に 353 00:25:24,980 --> 00:25:27,549 お願いの儀がござりまする 354 00:25:27,549 --> 00:25:31,152 柴田殿 その頭は… 355 00:25:31,152 --> 00:25:34,823 髪を下ろして信長殿に詫びられる 356 00:25:34,823 --> 00:25:37,058 それで済むであろうか 357 00:25:37,058 --> 00:25:39,694 済みますまい 358 00:25:39,694 --> 00:25:43,131 あの激しいご気性の信長様 359 00:25:43,131 --> 00:25:46,902 明日にも この城へ押しかけて まいらぬものでもござりませぬ 360 00:25:46,902 --> 00:25:51,002 それゆえ お願いの儀が 361 00:25:53,542 --> 00:25:57,078 わらわが何をすればよいのじゃ 362 00:25:57,078 --> 00:26:01,983 恐れながら 明朝 お袋様のお名で 363 00:26:01,983 --> 00:26:05,253 清洲へ使者を お遣いくだされまするよう 364 00:26:05,253 --> 00:26:09,558 では この香林院に 取りなせと申されるか? 365 00:26:09,558 --> 00:26:12,360 なんと 権六 366 00:26:12,360 --> 00:26:15,430 決して命を惜しむものでは ござりませぬが 367 00:26:15,430 --> 00:26:17,599 ただ このことから 368 00:26:17,599 --> 00:26:20,936 殿の御身に災いが及んではと 369 00:26:20,936 --> 00:26:23,238 しかし信長殿が 370 00:26:23,238 --> 00:26:27,008 信行は弟のことゆえ差し許すが 371 00:26:27,008 --> 00:26:31,546 権六は許せぬと言われたら 何とします 372 00:26:31,546 --> 00:26:33,915 無論 373 00:26:33,915 --> 00:26:37,552 その時は 374 00:26:37,552 --> 00:26:41,356 殿をお助けするのが我らの役目 375 00:26:41,356 --> 00:26:44,693 ご兄弟の仲が直れば 376 00:26:44,693 --> 00:26:48,930 この権六へのお咎めは 覚悟の上でござりまする 377 00:26:48,930 --> 00:26:51,366 分かりました 378 00:26:51,366 --> 00:26:54,766 信行殿 それでよろしいのですね? 379 00:26:56,771 --> 00:27:01,509 殿もできれば髪を下ろしなされ 380 00:27:01,509 --> 00:27:05,280 何のために? 心底から 381 00:27:05,280 --> 00:27:08,617 信長の殿に詫びるために 382 00:27:08,617 --> 00:27:11,019 たわけたことを! 383 00:27:11,019 --> 00:27:14,189 母上 権六はこの信行に 384 00:27:14,189 --> 00:27:17,125 坊主になれと言いまするぞ 385 00:27:17,125 --> 00:27:21,096 坊主2人 そろわねば 兄上を欺けぬと 386 00:27:21,096 --> 00:27:25,734 信行殿 母はこなたが かわいいゆえ言いまする 387 00:27:25,734 --> 00:27:28,336 信長殿を欺くなど 388 00:27:28,336 --> 00:27:33,341 そのような言葉は 己を滅ぼすものとお悟りなされ 389 00:27:33,341 --> 00:27:36,211 ハッ 何を言われる 390 00:27:36,211 --> 00:27:39,514 では母上まで あの鬼神悪鬼ごとき兄上が 391 00:27:39,514 --> 00:27:42,414 我らをやすやすと許すと お思いなのか! 392 00:27:44,452 --> 00:27:46,452 殿 393 00:27:51,559 --> 00:27:55,259 権六は誤りました 394 00:27:58,466 --> 00:28:02,466 信長の殿を見損のうたばかりか 395 00:28:05,106 --> 00:28:09,806 勘十郎様を育て損ねた 396 00:28:12,947 --> 00:28:15,847 許してくだされ 397 00:28:18,153 --> 00:28:20,953 お許しくだされ 398 00:28:29,230 --> 00:28:31,232 母上 399 00:28:31,232 --> 00:28:36,604 信長も信行と同じ こなたの子でござりまする 400 00:28:36,604 --> 00:28:38,873 はい 401 00:28:38,873 --> 00:28:44,612 同じ兄弟なれば 何ゆえ憎むいわれがありましょう 402 00:28:44,612 --> 00:28:47,082 ご案じなされますな 403 00:28:47,082 --> 00:28:50,151 のう お濃 はい 404 00:28:50,151 --> 00:28:52,487 そのことは いつも殿が 405 00:28:52,487 --> 00:28:56,591 口癖のように 仰せられておりまする 406 00:28:56,591 --> 00:29:00,895 信行は一足遅れて参りまするが 407 00:29:00,895 --> 00:29:03,531 上総介殿 408 00:29:03,531 --> 00:29:08,069 腹の立つこともあろうが この母に免じて 409 00:29:08,069 --> 00:29:11,840 手荒なことは控えてたもれ 410 00:29:11,840 --> 00:29:15,844 フハハハ 手荒なことをしたのは信行 411 00:29:15,844 --> 00:29:20,348 まだ この信長から あやつに仕掛けたことはござらん 412 00:29:20,348 --> 00:29:22,951 幼い頃は 413 00:29:22,951 --> 00:29:28,656 あれほど仲のよい兄弟で ありましたのに 414 00:29:28,656 --> 00:29:33,161 兄上 私も 柿が食べとうございます 415 00:29:33,161 --> 00:29:36,731 そうか よーし 416 00:29:36,731 --> 00:29:39,631 勘十郎 これを食え 417 00:29:41,903 --> 00:29:44,606 うっ 渋い 418 00:29:44,606 --> 00:29:47,375 兄上 渋うございまする 419 00:29:47,375 --> 00:29:52,514 渋いか 俺の柿は渋くなんかないぞ 420 00:29:52,514 --> 00:29:56,551 そう言いながら 吉法師殿は 421 00:29:56,551 --> 00:30:00,051 渋柿を平気で食べておられました 422 00:30:02,090 --> 00:30:07,095 よく噛めば そのうち甘くなってくると 423 00:30:07,095 --> 00:30:10,331 ご兄弟は車の両輪 424 00:30:10,331 --> 00:30:12,801 仲よく力を合わせたら 425 00:30:12,801 --> 00:30:16,604 誰にも侮りを受けぬものをと 426 00:30:16,604 --> 00:30:21,876 殿はいつも御側衆を 歯がゆいものに思われて 427 00:30:21,876 --> 00:30:24,646 面目次第もなく 428 00:30:24,646 --> 00:30:28,349 この度のことは皆 この権六めが くわだてましたること 429 00:30:28,349 --> 00:30:30,518 信行殿は何もご存じござりません 430 00:30:30,518 --> 00:30:32,620 この権六めを 431 00:30:32,620 --> 00:30:37,158 存分にご成敗なされて くださりませ 432 00:30:37,158 --> 00:30:40,295 権六 はっ 433 00:30:40,295 --> 00:30:43,031 もう詫びは済んだ 434 00:30:43,031 --> 00:30:45,466 他ならぬお袋様の頼みゆえ 435 00:30:45,466 --> 00:30:48,770 こたびのことは何も言うまい 436 00:30:48,770 --> 00:30:53,575 ありがたきお言葉にござりまする 437 00:30:53,575 --> 00:30:56,778 それよりもな 権六 438 00:30:56,778 --> 00:31:00,481 おぬしの戦ぶりは まずかったぞ 439 00:31:00,481 --> 00:31:02,483 恐れ入りました 440 00:31:02,483 --> 00:31:07,155 おぬしは猪のように 正面から押しまくった 441 00:31:07,155 --> 00:31:10,024 フハハハ 猪武者の権六め 442 00:31:10,024 --> 00:31:14,329 すべては この信長の思うつぼであったわ 443 00:31:14,329 --> 00:31:16,431 これからもあることじゃ 444 00:31:16,431 --> 00:31:20,735 戦場では 猪武者と見抜かれぬ工夫をいたせ 445 00:31:20,735 --> 00:31:23,938 はあ… 446 00:31:23,938 --> 00:31:28,009 肝に銘じてござりまする 447 00:31:28,009 --> 00:31:30,345 殿 何じゃ 448 00:31:30,345 --> 00:31:32,881 信行が来たのか? はい 449 00:31:32,881 --> 00:31:38,019 林美作殿 佐々蔵人殿 ほか数名の御側衆と共に 450 00:31:38,019 --> 00:31:41,656 楓の間に控えてござりまする 451 00:31:41,656 --> 00:31:45,393 話はついたゆえ安心するがよいと 申して ここへ通せ 452 00:31:45,393 --> 00:31:48,963 はっ 453 00:31:48,963 --> 00:31:52,433 はあ… それが… 454 00:31:52,433 --> 00:31:55,633 どうした 申せ 455 00:32:03,044 --> 00:32:07,044 何? 信行殿が何か? 456 00:32:09,050 --> 00:32:11,219 いや 何でもござらん 457 00:32:11,219 --> 00:32:14,322 お濃 母上のお相手を頼む 458 00:32:14,322 --> 00:32:17,125 京より届いた菓子などを ふるもうてな 459 00:32:17,125 --> 00:32:20,825 はい 権六 一緒に来い 460 00:32:58,099 --> 00:33:01,035 早まるな!信行 461 00:33:01,035 --> 00:33:04,973 勘十郎信行が不明 462 00:33:04,973 --> 00:33:09,073 今更 生きて 兄上に合わす顔はござらん 463 00:33:11,279 --> 00:33:13,581 潔う 464 00:33:13,581 --> 00:33:16,884 死を賜りとう 465 00:33:16,884 --> 00:33:19,587 殿 466 00:33:19,587 --> 00:33:22,590 恐れ多くも信長の殿は 467 00:33:22,590 --> 00:33:25,827 ご寛大なる思し召しにより すべてを水に流されて… 468 00:33:25,827 --> 00:33:28,596 言うな! 469 00:33:28,596 --> 00:33:31,833 たとえ許されたとて 470 00:33:31,833 --> 00:33:37,138 甘んじて生き永らえては 武士の一分が立たぬ 471 00:33:37,138 --> 00:33:40,875 信行 その心根 あっぱれ 472 00:33:40,875 --> 00:33:42,877 信長 見直したぞ 473 00:33:42,877 --> 00:33:45,613 その気概で これからは 俺に力を貸してくれ 474 00:33:45,613 --> 00:33:48,483 さあ 刃を捨てい 475 00:33:48,483 --> 00:33:51,052 兄上 476 00:33:51,052 --> 00:33:55,289 お言葉 かたじけのう 477 00:33:55,289 --> 00:34:00,228 されど この信行を 男にしてくだされ 478 00:34:00,228 --> 00:34:02,830 蔵人 介錯 479 00:34:02,830 --> 00:34:05,133 はっ さらば 兄上! 480 00:34:05,133 --> 00:34:07,133 待てい おっ 481 00:34:09,971 --> 00:34:13,271 何事じゃ 戯れにも程があるぞ 482 00:34:15,376 --> 00:34:19,414 戯れで このようなことが できようか 483 00:34:19,414 --> 00:34:22,950 こやつめ 謀りおったな 484 00:34:22,950 --> 00:34:26,154 謀らずば謀られる 485 00:34:26,154 --> 00:34:28,723 これも合戦の一部と思われよ 486 00:34:28,723 --> 00:34:30,723 出合え! 487 00:34:32,727 --> 00:34:34,729 殿 騒ぐな! 488 00:34:34,729 --> 00:34:37,865 みだりに動くと信長の命はないぞ 489 00:34:37,865 --> 00:34:40,068 殿! 権六 490 00:34:40,068 --> 00:34:42,403 してやったぞ 491 00:34:42,403 --> 00:34:45,306 うぬも刃を取れ 492 00:34:45,306 --> 00:34:48,106 なんということを 493 00:34:50,144 --> 00:34:53,744 身の程をわきまえなされ たわけ! 494 00:34:56,751 --> 00:35:00,621 勘十郎様 ああ… 495 00:35:00,621 --> 00:35:03,591 血迷うな 信行 496 00:35:03,591 --> 00:35:07,762 うぬは まだお袋様を泣かす気か 497 00:35:07,762 --> 00:35:12,200 母上は泣いて喜ばれましょうぞ 498 00:35:12,200 --> 00:35:16,504 大うつけの最期を見ればのう 499 00:35:16,504 --> 00:35:19,104 少しは信行を見直されたか 500 00:35:21,175 --> 00:35:24,545 信行が恐ろしさを思い知ったか! 501 00:35:24,545 --> 00:35:26,848 そうか 502 00:35:26,848 --> 00:35:31,452 そこまで言うからには ただならぬ覚悟と見た 503 00:35:31,452 --> 00:35:34,722 言うまでもない 504 00:35:34,722 --> 00:35:36,724 よかろう 505 00:35:36,724 --> 00:35:39,527 何がよいのだ 506 00:35:39,527 --> 00:35:41,727 俺を刺せ 507 00:35:43,798 --> 00:35:46,200 この信長を殺して 508 00:35:46,200 --> 00:35:50,671 織田家の家督を奪うがよい 509 00:35:50,671 --> 00:35:54,175 尾張一国など いつでもくれてやる 510 00:35:54,175 --> 00:35:57,879 だがこの周りには 斉藤 今川 武田などの 511 00:35:57,879 --> 00:36:01,048 外敵が手ぐすねをひいている 512 00:36:01,048 --> 00:36:03,518 織田家の内紛を知れば 513 00:36:03,518 --> 00:36:06,988 彼奴らは 雪崩を打って 攻め寄せてくるぞ 514 00:36:06,988 --> 00:36:12,493 そのこと しかと肝に銘じ この俺を殺せ 515 00:36:12,493 --> 00:36:15,263 俺の屍を乗り越えて 516 00:36:15,263 --> 00:36:18,966 見事 外敵から尾張を守り通し 517 00:36:18,966 --> 00:36:23,571 更には天下を狙うてみよ 518 00:36:23,571 --> 00:36:27,074 何をためらう 519 00:36:27,074 --> 00:36:32,274 その自信あらば さあ 信長を 520 00:36:34,315 --> 00:36:36,617 兄上 521 00:36:36,617 --> 00:36:40,221 殿!何をためらわれる 522 00:36:40,221 --> 00:36:42,223 今だ 信長 覚悟! 523 00:36:42,223 --> 00:36:44,323 (銃声) ああっ 524 00:36:51,933 --> 00:36:54,433 おっ うおっ 525 00:37:00,641 --> 00:37:04,612 うっ ん… ううう… 526 00:37:04,612 --> 00:37:06,614 信行 527 00:37:06,614 --> 00:37:11,285 信行 俺の思いがまだ分からぬか 528 00:37:11,285 --> 00:37:14,355 分かった 529 00:37:14,355 --> 00:37:16,857 兄上の… 530 00:37:16,857 --> 00:37:20,795 尾張安泰を願う胸の内 531 00:37:20,795 --> 00:37:24,332 よう分かり申した 532 00:37:24,332 --> 00:37:28,035 分かったゆえ こうせねば 533 00:37:28,035 --> 00:37:30,838 信行 534 00:37:30,838 --> 00:37:35,910 こ… この信行がいては 535 00:37:35,910 --> 00:37:40,781 尾張から天下に乗り出す… 536 00:37:40,781 --> 00:37:47,255 兄上の妨げになりまする 537 00:37:47,255 --> 00:37:51,455 信行 しかと… しかといたせ! 538 00:37:55,296 --> 00:37:57,496 兄上 539 00:37:59,634 --> 00:38:04,171 覚えておられまするか 540 00:38:04,171 --> 00:38:07,141 あの柿の実の 541 00:38:07,141 --> 00:38:10,941 渋かったことを 542 00:38:17,084 --> 00:38:21,489 今も その渋さが 543 00:38:21,489 --> 00:38:24,825 のどの奥に… 544 00:38:24,825 --> 00:38:27,695 いつか 545 00:38:27,695 --> 00:38:31,299 甘くなると信じて 546 00:38:31,299 --> 00:38:33,801 はっ… 547 00:38:33,801 --> 00:38:36,901 さ… さらばにござりまする 548 00:38:40,408 --> 00:38:44,278 は… 母上のこと 549 00:38:44,278 --> 00:38:47,481 くれぐれも 550 00:38:47,481 --> 00:38:51,381 よ… よろしくお願いします 551 00:38:54,522 --> 00:38:57,525 信行 552 00:38:57,525 --> 00:38:59,725 はっ… 553 00:39:09,970 --> 00:39:13,341 なんと愚かな 554 00:39:13,341 --> 00:39:17,044 血を分けたご兄弟で 555 00:39:17,044 --> 00:39:20,481 なぜ これほどまでに 争わなければならないのか 556 00:39:20,481 --> 00:39:23,017 いや 557 00:39:23,017 --> 00:39:27,321 これも戦国に生まれた身の定め 558 00:39:27,321 --> 00:39:31,021 衷心より弔うてやれ 559 00:39:52,847 --> 00:39:57,447 どうなされたのです 柴田殿 何事です 560 00:39:59,487 --> 00:40:03,557 お袋様は不孝な子を持たれた 561 00:40:03,557 --> 00:40:06,427 これは信長のことでもあり 562 00:40:06,427 --> 00:40:09,227 信行がことでもある 563 00:40:11,832 --> 00:40:14,332 信行殿に何か? 564 00:40:16,504 --> 00:40:18,904 上総介殿 565 00:40:22,410 --> 00:40:26,080 勘十郎信行は 566 00:40:26,080 --> 00:40:28,315 先ほど 身まかってございます 567 00:40:28,315 --> 00:40:33,053 な… なんと… 568 00:40:33,053 --> 00:40:36,853 それは まことでござりまするか 柴田殿 569 00:40:42,897 --> 00:40:46,233 なんということじゃ 570 00:40:46,233 --> 00:40:49,703 上総介殿 もしや そなたが 571 00:40:49,703 --> 00:40:53,603 信行を手に掛けたのでは? 572 00:40:58,212 --> 00:41:02,650 さてさて そなたは恐ろしいお人じゃ 573 00:41:02,650 --> 00:41:05,953 肉親の弟を罠にかけようとは… 574 00:41:05,953 --> 00:41:09,023 香林院様 575 00:41:09,023 --> 00:41:12,059 違います 576 00:41:12,059 --> 00:41:15,663 罠にかけたのは 577 00:41:15,663 --> 00:41:18,499 信行様のほうでござりまする 578 00:41:18,499 --> 00:41:22,803 切腹なさると見せかけて… 権六 579 00:41:22,803 --> 00:41:25,039 そのほうら 入れ 580 00:41:25,039 --> 00:41:27,039 ははっ はっ 581 00:41:32,146 --> 00:41:37,051 信行の最期の様子 お袋様に つぶさに申し上げろ 582 00:41:37,051 --> 00:41:39,553 はっ 583 00:41:39,553 --> 00:41:41,822 信行様は 584 00:41:41,822 --> 00:41:46,026 我が殿に顔向けできぬゆえ 死んでお詫びいたすと 585 00:41:46,026 --> 00:41:48,562 一室を借り受けて… 586 00:41:48,562 --> 00:41:52,366 腹を切ったか はい 587 00:41:52,366 --> 00:41:55,766 (土田御前の号泣) 588 00:41:59,473 --> 00:42:02,343 お袋様 589 00:42:02,343 --> 00:42:06,881 聞いてのとおり 590 00:42:06,881 --> 00:42:11,886 今日は こなた様の子供が1人 591 00:42:11,886 --> 00:42:15,155 兄か弟が死なねばならぬ 592 00:42:15,155 --> 00:42:19,393 悪い日でござりました 593 00:42:19,393 --> 00:42:21,695 やむないことにござります 594 00:42:21,695 --> 00:42:24,495 (土田御前の泣き声) 595 00:42:26,567 --> 00:42:30,538 権六 はっ 596 00:42:30,538 --> 00:42:35,342 信行が立派に自決したとあらば 597 00:42:35,342 --> 00:42:39,342 あれが子たちには いずれ折を見て城を持たそう 598 00:42:41,448 --> 00:42:44,552 かたじけのうござります 599 00:42:44,552 --> 00:42:47,922 それまで末森の城のあるじは そちじゃ 600 00:42:47,922 --> 00:42:49,990 早々 立ち戻って 601 00:42:49,990 --> 00:42:54,161 家臣たちに その旨 厳しく申し渡せ 602 00:42:54,161 --> 00:42:56,161 御意 603 00:42:58,966 --> 00:43:02,970 さあ 香林院様 604 00:43:02,970 --> 00:43:07,508 母上は この信長が預かる 605 00:43:07,508 --> 00:43:09,743 行け 606 00:43:09,743 --> 00:43:14,843 よいな 心して 精鋭を育てるのじゃぞ 607 00:43:32,199 --> 00:43:37,571 最後はついに 兄弟の間で血を見ることになった 608 00:43:37,571 --> 00:43:40,107 織田家内部の禍根は断たれたが 609 00:43:40,107 --> 00:43:43,807 まさに悲劇的な結果を 迎えたのであった