1 00:00:30,841 --> 00:00:35,345 彗星のごとく世に出た 稀代の英雄 織田信長は 2 00:00:35,345 --> 00:00:39,816 まさに疾風迅雷 怒濤と化し 炎と燃えて 3 00:00:39,816 --> 00:00:42,816 天下統一のへの道を ひた走ったのである 4 00:01:20,891 --> 00:01:25,262 時の将軍 足利義輝と 対面を果たした信長は 5 00:01:25,262 --> 00:01:29,833 将軍に天下のために 力を合わすことを約束する 6 00:01:29,833 --> 00:01:33,437 宿敵 美濃の斉藤義竜が病で倒れ 7 00:01:33,437 --> 00:01:37,240 信長の天下取りの前哨戦が 開始された 8 00:01:37,240 --> 00:01:41,845 伊勢桑名を攻めて 伊勢への足場を確保した織田軍は 9 00:01:41,845 --> 00:01:46,083 父 義竜の死でいら立っている 嫡子 竜興を攻め 10 00:01:46,083 --> 00:01:48,583 美濃平定に乗り出した 11 00:02:00,464 --> 00:02:02,499 急げ 12 00:02:02,499 --> 00:02:06,699 何としても墨俣に 砦を築かせてはならぬぞ 13 00:02:14,211 --> 00:02:17,380 何だ あれは? 敵の城塞だ 14 00:02:17,380 --> 00:02:19,380 いつの間に あんなものを 15 00:02:22,786 --> 00:02:24,886 撃て! 16 00:02:28,992 --> 00:02:30,994 おっ 17 00:02:30,994 --> 00:02:32,994 引け 引け! 18 00:02:54,951 --> 00:03:00,390 木下藤吉郎は ついに 墨俣の築城に成功したばかりか 19 00:03:00,390 --> 00:03:04,060 この戦いで相手に 殲滅的な打撃を与え 20 00:03:04,060 --> 00:03:06,560 領地を拡張していった 21 00:03:09,332 --> 00:03:13,303 折も折 信長の矢のような催促に 22 00:03:13,303 --> 00:03:18,203 家康も重い腰を上げ 岡崎から清洲へ向かった 23 00:03:21,278 --> 00:03:25,178 家康にとっては 命懸けの訪問である 24 00:03:35,592 --> 00:03:38,261 太刀持ちは引かれい 25 00:03:38,261 --> 00:03:40,630 当清洲のしきたり 26 00:03:40,630 --> 00:03:44,100 御前への太刀持ちは まかりならん 無礼であろう 27 00:03:44,100 --> 00:03:46,436 下がられい! 下がらん! 28 00:03:46,436 --> 00:03:49,739 主君の太刀を持って 主君の行く所に従う 29 00:03:49,739 --> 00:03:52,909 何の不都合やある! 黙れ! 30 00:03:52,909 --> 00:03:56,780 ここは岡崎ではない 清洲の城中ぞ 31 00:03:56,780 --> 00:04:00,817 いずれの城中でも 主君の赴く所 太刀持ちはついていく 32 00:04:00,817 --> 00:04:03,854 おのおのは なぜ そのように 太刀持ちを恐れる? 33 00:04:03,854 --> 00:04:07,791 我ら 生あるうちに主君のそばを 離れるものと思し召すか! 34 00:04:07,791 --> 00:04:10,760 ええい 無礼な! 控えい! 35 00:04:10,760 --> 00:04:13,463 威勢がよいのう 36 00:04:13,463 --> 00:04:15,832 名は何と申す? 37 00:04:15,832 --> 00:04:20,103 はっ 本多平八郎忠勝に ござりまする 38 00:04:20,103 --> 00:04:23,540 聞いておるぞ 三河の暴れん坊じゃな 39 00:04:23,540 --> 00:04:25,940 構わん 一緒に近う 40 00:04:28,945 --> 00:04:33,350 一別以来13年 お懐かしゅうござる 41 00:04:33,350 --> 00:04:36,887 おう あるぞあるぞ 幼顔が 42 00:04:36,887 --> 00:04:41,324 元康… いや 徳川家康と 名を変えたのであったな 43 00:04:41,324 --> 00:04:47,497 はい 元康の「元」の字は 人質の頃 義元公より頂戴したもの 44 00:04:47,497 --> 00:04:50,700 されば この度 きれいさっぱり 返上いたしました 45 00:04:50,700 --> 00:04:55,572 うん つらかったであろうな 46 00:04:55,572 --> 00:04:58,875 妻子は まだ駿府に 捕らわれておるそうな 47 00:04:58,875 --> 00:05:03,813 戦国の定めでござる お案じくだされますな 48 00:05:03,813 --> 00:05:06,116 その戦国の世を 終わらせたいのじゃ 49 00:05:06,116 --> 00:05:08,818 その時期が近づきました 50 00:05:08,818 --> 00:05:13,456 信長殿 早く美濃から京へ お働きなさいませ 51 00:05:13,456 --> 00:05:17,827 誰かが天下を取らぬうちは 民百姓が かわいそうでなりません 52 00:05:17,827 --> 00:05:21,531 言うことないわ 家康殿 は? 53 00:05:21,531 --> 00:05:24,601 俺のほうから先に それを言う気であった 54 00:05:24,601 --> 00:05:29,439 尾張の織田と三河の徳川が しっかりと手を結んでいくと 55 00:05:29,439 --> 00:05:31,675 これは天下で一番強いぞ 56 00:05:31,675 --> 00:05:37,180 心得てござりまする それゆえ清洲へ出てきました 57 00:05:37,180 --> 00:05:40,116 よし これで決まりじゃ 58 00:05:40,116 --> 00:05:43,753 織田 徳川の同盟が成立した 59 00:05:43,753 --> 00:05:47,824 これで信長は徳川を 東方への押さえとなし 60 00:05:47,824 --> 00:05:52,128 心置きなく 美濃を攻め 京へ向かうことができる 61 00:05:52,128 --> 00:05:54,464 しかし 62 00:05:54,464 --> 00:05:59,264 その京の都では 思いもかけぬ事件が起こっていた 63 00:06:07,177 --> 00:06:10,981 近畿一円の実権を握る松永弾正が 64 00:06:10,981 --> 00:06:15,581 意のままにならぬ将軍 義輝に 刃を向けたのである 65 00:06:22,892 --> 00:06:25,492 やー! やー! 66 00:06:31,468 --> 00:06:34,168 突っ込め おー! 67 00:06:40,176 --> 00:06:42,576 敵襲だ 敵襲だ 68 00:06:48,385 --> 00:06:52,555 何をしておる 早う公方を捜し出して 斬れ 69 00:06:52,555 --> 00:06:55,155 天下は我のものぞ 70 00:07:09,572 --> 00:07:11,574 上様! 71 00:07:11,574 --> 00:07:16,479 松永勢はすでに 邸内に押し入りましたぞ 72 00:07:16,479 --> 00:07:19,549 たわけめが 73 00:07:19,549 --> 00:07:24,087 身を倒せば 天下を取れると思うておる 74 00:07:24,087 --> 00:07:28,158 松永ごときが どうあがいても 75 00:07:28,158 --> 00:07:31,594 天下は収まるところに 収まるのじゃ 76 00:07:31,594 --> 00:07:35,298 上様 早うお落ちくださりませ 77 00:07:35,298 --> 00:07:39,169 逃げ延びて何とする? 78 00:07:39,169 --> 00:07:44,069 痩せても枯れても 天下に ただ一人の足利将軍ぞ 79 00:08:06,229 --> 00:08:11,901 剣に生き 剣に死ぬる 80 00:08:11,901 --> 00:08:14,101 断じて悔いなし 81 00:08:18,041 --> 00:08:20,041 織田の上総よ 82 00:08:23,413 --> 00:08:25,413 後は頼む 83 00:08:30,453 --> 00:08:32,622 何?まことか? 84 00:08:32,622 --> 00:08:37,193 はっ たった今 京より火急の使者が着き 85 00:08:37,193 --> 00:08:40,797 最期の模様を事細かく 86 00:08:40,797 --> 00:08:42,797 遅かった 87 00:08:45,101 --> 00:08:49,706 美濃を制して 京へ上るのが遅すぎた 88 00:08:49,706 --> 00:08:52,206 俺がいれば むざむざ死なさずとも 89 00:08:54,611 --> 00:08:58,615 将軍とは天下の仕置きのことなど 90 00:08:58,615 --> 00:09:03,853 まだまだ語り合わねば ならぬことが多かった 91 00:09:03,853 --> 00:09:06,723 利家! はっ 92 00:09:06,723 --> 00:09:10,223 すぐさま触れを出せ 美濃攻めだ! 93 00:09:12,595 --> 00:09:15,932 織田軍は墨俣城を足がかりに 94 00:09:15,932 --> 00:09:18,732 一気に美濃領に押し入った 95 00:10:30,240 --> 00:10:33,409 織田軍の怒濤のような総攻撃に 96 00:10:33,409 --> 00:10:36,379 斉藤軍は ひとたまりもなかった 97 00:10:36,379 --> 00:10:41,679 連戦連勝 ついに 稲葉山城も陥落した 98 00:10:49,892 --> 00:10:54,564 これで美濃は俺のものだ 戦ではない 城の引っ越しと思え 99 00:10:54,564 --> 00:10:58,735 はっ では この城を本拠に? 100 00:10:58,735 --> 00:11:02,305 さすが まむしのおやじが 築いただけのことはある 101 00:11:02,305 --> 00:11:04,974 天下をにらむには うってつけの名城だ 102 00:11:04,974 --> 00:11:07,610 稲葉山城に移り住んだ信長は 103 00:11:07,610 --> 00:11:09,946 これを岐阜城と改め 104 00:11:09,946 --> 00:11:13,946 城の大改築と町割りに 取りかかった 105 00:11:27,597 --> 00:11:29,699 殿 106 00:11:29,699 --> 00:11:33,336 ちょっと 会うてやって 頂きたい人があって参りました 107 00:11:33,336 --> 00:11:37,736 誰だ? さあ どうぞ これへ 108 00:11:47,183 --> 00:11:51,487 わらわのいとこの 明智十兵衛殿でござりまする 109 00:11:51,487 --> 00:11:54,390 何?明智? 110 00:11:54,390 --> 00:11:59,796 明智十兵衛光秀 初めて御意を得まする 111 00:11:59,796 --> 00:12:02,498 うん おことのことは 112 00:12:02,498 --> 00:12:06,269 お濃からも 親父のまむし殿からも 聞いておった 113 00:12:06,269 --> 00:12:10,173 類いまれなる秀才じゃそうよのう 恐れ入りまする 114 00:12:10,173 --> 00:12:13,676 今は越前の朝倉家に 身を寄せておるそうだが 115 00:12:13,676 --> 00:12:15,678 どれだけ もろうておる? 116 00:12:15,678 --> 00:12:19,515 はい 2万5000石ばかり 117 00:12:19,515 --> 00:12:22,585 ふうん 2つ半か 118 00:12:22,585 --> 00:12:24,787 それで わしに どれだけ出せというのじゃ? 119 00:12:24,787 --> 00:12:27,323 は?何と仰せで? 120 00:12:27,323 --> 00:12:29,592 おぬし 朝倉義景に 愛想が尽きたゆえ 121 00:12:29,592 --> 00:12:32,929 やって来たのであろう? はっ それはしかし… 122 00:12:32,929 --> 00:12:35,131 飾らずともよい 123 00:12:35,131 --> 00:12:40,770 新将軍 足利義昭が朝倉家を頼って 越前に行っているであろう? 124 00:12:40,770 --> 00:12:44,540 おぬしも それに片棒を担ぎ 朝倉を上洛させ 125 00:12:44,540 --> 00:12:49,846 京から松永弾正を追放し 幕府を再建するつもりであった 126 00:12:49,846 --> 00:12:53,883 ところが朝倉が臆病狐は なかなか立たぬ 127 00:12:53,883 --> 00:12:56,683 そこで この信長に 渡りをつけに来たはずじゃ 128 00:12:58,688 --> 00:13:03,860 どうじゃ わしの推測は 違っていたか?十兵衛 129 00:13:03,860 --> 00:13:07,230 いえ 恐れ入りました 130 00:13:07,230 --> 00:13:09,832 さすがに お見事でござりまする 131 00:13:09,832 --> 00:13:13,102 ところで朝倉は… 132 00:13:13,102 --> 00:13:15,571 そちの旧主 朝倉は何とするぞ? 133 00:13:15,571 --> 00:13:19,909 将軍 義昭公を奉じ 松永の徒を討ち払い 134 00:13:19,909 --> 00:13:23,546 その後で朝倉義景に入洛せよと 135 00:13:23,546 --> 00:13:26,883 将軍の名で お命じなさるのが よろしかろうと 136 00:13:26,883 --> 00:13:29,352 素直に朝倉が出てくると思うか? 137 00:13:29,352 --> 00:13:33,156 恐らくは出てはまいりますまい 138 00:13:33,156 --> 00:13:35,658 出てこぬことを口実に 139 00:13:35,658 --> 00:13:39,629 ここで朝倉を ご成敗なさるのでござりまする 140 00:13:39,629 --> 00:13:43,966 くせ者めが これはまた思いがけないことを 141 00:13:43,966 --> 00:13:46,035 褒めているのじゃ 142 00:13:46,035 --> 00:13:49,772 おぬしは近江の浅井家に わしの妹 お市が嫁いでいるのを 143 00:13:49,772 --> 00:13:52,742 十分 計算しておるな 144 00:13:52,742 --> 00:13:54,744 はい 145 00:13:54,744 --> 00:13:59,549 浅井親子を味方にすれば 朝倉を攻め落とすことなど 146 00:13:59,549 --> 00:14:02,051 赤子の手をひねるようなもの 147 00:14:02,051 --> 00:14:05,221 分かった おぬしの献策を取ろう 148 00:14:05,221 --> 00:14:09,759 公方を… いや 天下を 手土産の仕官じゃ 149 00:14:09,759 --> 00:14:13,229 5万石 出そう 5万石? 150 00:14:13,229 --> 00:14:15,498 ありがたき仰せにござりまする 151 00:14:15,498 --> 00:14:19,498 お濃 酒じゃ 手打ちの酒の支度をさせい 152 00:14:22,305 --> 00:14:25,608 どうした 不足たらしい顔をして 153 00:14:25,608 --> 00:14:29,111 はい お市様のことを思うと 154 00:14:29,111 --> 00:14:31,647 手放しで喜べぬような気が 155 00:14:31,647 --> 00:14:33,683 心配要らぬ お市は 156 00:14:33,683 --> 00:14:36,752 婿の浅井長政と 仲睦まじゅうやっておる 157 00:14:36,752 --> 00:14:40,289 と仰せられますが 浅井家と朝倉家とは 158 00:14:40,289 --> 00:14:43,092 代々 切っても切れぬ仲 159 00:14:43,092 --> 00:14:46,996 殿が朝倉を攻めるとなれば お市様のお立場が… 160 00:14:46,996 --> 00:14:49,098 悪くなると言うのか? 161 00:14:49,098 --> 00:14:51,434 それが戦国の倣いじゃ 162 00:14:51,434 --> 00:14:55,738 お市とて武将の娘 武将の妻 163 00:14:55,738 --> 00:14:58,238 常日頃 覚悟はできておる 164 00:15:03,079 --> 00:15:06,549 浅井家は代々 近江湖北のこの地に 165 00:15:06,549 --> 00:15:10,219 勢力を誇っていた 166 00:15:10,219 --> 00:15:12,955 信長の妹 お市の方は 167 00:15:12,955 --> 00:15:15,691 城主 浅井長政に嫁ぎ 168 00:15:15,691 --> 00:15:20,091 ここ 小谷の城に暮らして 早5年になる 169 00:15:41,751 --> 00:15:46,656 織田 浅井の同盟を図る 政略上の縁組みであったが 170 00:15:46,656 --> 00:15:51,156 夫婦仲はよく すでに 3人の子をなしていた 171 00:15:54,630 --> 00:15:57,733 お父上様じゃ お父上様が来ておられる 172 00:15:57,733 --> 00:16:00,603 お父上様 お父上様 173 00:16:00,603 --> 00:16:02,605 おー 遊ぼう お父上様 174 00:16:02,605 --> 00:16:04,874 さあさあさあさあ あー 175 00:16:04,874 --> 00:16:07,977 おー よい子らじゃ 176 00:16:07,977 --> 00:16:11,180 皆 母上に似て美しく育つぞ 177 00:16:11,180 --> 00:16:14,150 これこれ お父上はお忙しいのです 178 00:16:14,150 --> 00:16:17,019 一服なされたら すぐ 表にお戻りになられます 179 00:16:17,019 --> 00:16:20,256 嫌じゃ 遊ぼう お父上様 遊ぼう 180 00:16:20,256 --> 00:16:22,758 遊ぼう お茶々も お高もお達も 181 00:16:22,758 --> 00:16:25,194 おやめなされ 構わぬ 182 00:16:25,194 --> 00:16:28,764 今日は遊んでやろう わあ 183 00:16:28,764 --> 00:16:32,368 お方様に申し上げます 184 00:16:32,368 --> 00:16:36,772 岐阜の濃姫様よりのお使者が お見えでござりまする 185 00:16:36,772 --> 00:16:40,042 ほんに お懐かしゅう存じまする 186 00:16:40,042 --> 00:16:44,113 兄上も お濃様も お変わりございませぬか? 187 00:16:44,113 --> 00:16:47,783 はい 濃姫様はことのほか 188 00:16:47,783 --> 00:16:51,621 お市の方様のお身を 案じてござりまする 189 00:16:51,621 --> 00:16:55,091 何もご心配なきようと 伝えてくりゃれ 190 00:16:55,091 --> 00:16:59,629 お市は このとおり幸せじゃと 191 00:16:59,629 --> 00:17:01,629 はい 192 00:17:04,467 --> 00:17:06,502 何じゃ 何かあったのか? 193 00:17:06,502 --> 00:17:09,271 はっ 朝倉家より火急の使者が 194 00:17:09,271 --> 00:17:13,843 なんでも岐阜の織田殿が 公方様を擁して上洛なされるとか 195 00:17:13,843 --> 00:17:16,779 え?兄上が? はい 196 00:17:16,779 --> 00:17:20,116 途中 この地に立ち寄り 殿とご対面なされるとか 197 00:17:20,116 --> 00:17:23,519 まあ 兄上が この小谷へ? 198 00:17:23,519 --> 00:17:27,456 信長は上洛の途上 本隊を離れ 199 00:17:27,456 --> 00:17:31,156 わずかな友を従えて小谷を訪れた 200 00:17:36,699 --> 00:17:41,804 浅井殿か これは織田殿 ようこそ 遠路を 201 00:17:41,804 --> 00:17:46,275 さすがは浅井のつわものども 美々しい軍装でござるのう 202 00:17:46,275 --> 00:17:49,045 いや かえって 恥ずかしく存じまする 203 00:17:49,045 --> 00:17:52,682 むろん 織田殿も武装なされて おいでのことと存じたゆえ 204 00:17:52,682 --> 00:17:57,119 いかさま 我らも 武装をと思うたなれど 205 00:17:57,119 --> 00:18:00,723 縁あって結ばれた弟の お身を訪ねるのに 206 00:18:00,723 --> 00:18:03,526 物々しい出で立ちではと 遠慮いたした 207 00:18:03,526 --> 00:18:05,828 しかし 208 00:18:05,828 --> 00:18:08,431 これは我らが手抜かりでござった 209 00:18:08,431 --> 00:18:13,235 手抜かりとは? ご覧ぜられよ 210 00:18:13,235 --> 00:18:16,272 あちこちに 怪しい殺気の動きが見える 211 00:18:16,272 --> 00:18:18,974 あの森陰 あの丘 212 00:18:18,974 --> 00:18:24,714 あれは多分 この信長を狙う 六角 佐々木辺りの伏兵であろうか 213 00:18:24,714 --> 00:18:27,016 ご安心くだされ 214 00:18:27,016 --> 00:18:30,886 我らが警護の上 城へお供つかまつりまする 215 00:18:30,886 --> 00:18:35,024 いや それでは お身が 側杖を食うやもしれん 216 00:18:35,024 --> 00:18:38,627 我らは近江の風景を ゆっくりと楽しみながら帰るゆえ 217 00:18:38,627 --> 00:18:40,629 このまま別れようぞ 218 00:18:40,629 --> 00:18:43,265 しかし… なんの 219 00:18:43,265 --> 00:18:45,801 兄と弟ではないか 220 00:18:45,801 --> 00:18:49,205 こうして会うだけで ことさら言葉も要るまい 221 00:18:49,205 --> 00:18:52,041 お市には会うていかれませぬか? 222 00:18:52,041 --> 00:18:57,713 会うまい 戦国のおなごに 里心は禁物でござる 223 00:18:57,713 --> 00:18:59,813 では 浅井殿 224 00:19:12,795 --> 00:19:15,464 喜右衛門 喜右衛門はおるか? 225 00:19:15,464 --> 00:19:19,969 はっ 何でござりまする? 226 00:19:19,969 --> 00:19:24,140 こなたは今日は この長政に恥をかかしたぞ 227 00:19:24,140 --> 00:19:26,709 これは異なことを 228 00:19:26,709 --> 00:19:29,378 伏兵はこなたであろう? 229 00:19:29,378 --> 00:19:31,680 おかげで織田殿に借りができたわ 230 00:19:31,680 --> 00:19:34,950 それがしは信長めが 231 00:19:34,950 --> 00:19:38,821 道中で もし殿に害心を示してはと 232 00:19:38,821 --> 00:19:41,090 万一に備えたまで 233 00:19:41,090 --> 00:19:44,059 たわけめ! 234 00:19:44,059 --> 00:19:48,831 気に食わぬゆえ 謀殺などという 時勢の見えぬ妄動は企むな 235 00:19:48,831 --> 00:19:51,867 そのようなことで 天下は どうなるものでもないわ 236 00:19:51,867 --> 00:19:55,567 たわけめが! 待て 長政殿 237 00:19:58,340 --> 00:20:01,410 父上 238 00:20:01,410 --> 00:20:04,914 すべては この父の差し金じゃ 239 00:20:04,914 --> 00:20:07,183 隙あらば信長を 倒しておいたほうが 240 00:20:07,183 --> 00:20:10,019 将来に禍根を残さぬと思うたが 241 00:20:10,019 --> 00:20:13,022 父上 なんということを 242 00:20:13,022 --> 00:20:15,257 ハハハハ 243 00:20:15,257 --> 00:20:17,893 しかし さすがよのう 244 00:20:17,893 --> 00:20:19,993 一寸の隙もないわ 245 00:20:27,603 --> 00:20:32,141 浅井長政は 殿のお眼鏡にかないましたか? 246 00:20:32,141 --> 00:20:36,812 長政はよいが 家臣と家中の空気がよくない 247 00:20:36,812 --> 00:20:40,783 空気が悪いと人は育たぬ なるほど 248 00:20:40,783 --> 00:20:43,485 殿 あれを! 249 00:20:43,485 --> 00:20:45,485 お市の方様では? 250 00:20:51,493 --> 00:20:55,497 見るな 市は もはや 浅井家のおなご 251 00:20:55,497 --> 00:20:58,434 なまじ 声をかけて 心を乱してはならぬ 252 00:20:58,434 --> 00:21:00,734 知らぬ気に通り過ぎるのじゃ 253 00:21:07,476 --> 00:21:12,176 兄上様 ご武運 お祈りいたしまする 254 00:21:17,319 --> 00:21:22,291 数日を経ずして信長は 将軍 義昭と合流し 255 00:21:22,291 --> 00:21:26,061 大軍勢をもって入洛していた 256 00:21:26,061 --> 00:21:30,165 しかし これを迎え撃つべき 松永の軍勢は 257 00:21:30,165 --> 00:21:32,434 どこにも見当たらない 258 00:21:32,434 --> 00:21:34,803 宿舎となった東福寺には 259 00:21:34,803 --> 00:21:39,708 恭順を示す近くの大名たちが 次々に訪れた 260 00:21:39,708 --> 00:21:43,078 筒井順慶 荒木村重 261 00:21:43,078 --> 00:21:45,080 伊丹親興 262 00:21:45,080 --> 00:21:47,983 ん?松永? 263 00:21:47,983 --> 00:21:51,921 肝心の松永弾正までが 降参を申し出ておるのか? 264 00:21:51,921 --> 00:21:54,189 世も末にござりまするなあ 265 00:21:54,189 --> 00:21:56,892 先の将軍を殺したる張本人 266 00:21:56,892 --> 00:21:59,929 近畿第一の勢力と見られる 松永までが 267 00:21:59,929 --> 00:22:02,932 一戦も交えず兜を脱ぐとは 268 00:22:02,932 --> 00:22:05,668 注意せよ 269 00:22:05,668 --> 00:22:11,140 松永弾正 決して心からの 帰順ではないぞ 270 00:22:11,140 --> 00:22:13,142 猿 殿 271 00:22:13,142 --> 00:22:15,177 猿は もうそろそろ 272 00:22:15,177 --> 00:22:17,179 やめにせいと申すか? 273 00:22:17,179 --> 00:22:20,849 羽柴筑前守秀吉と 名を改めましたゆえ 274 00:22:20,849 --> 00:22:23,919 つけ上がるな 出世猿め 275 00:22:23,919 --> 00:22:26,855 いいか 光秀もよく聞け 276 00:22:26,855 --> 00:22:30,526 これからが正念場ぞ 次なる朝倉攻めには 277 00:22:30,526 --> 00:22:34,263 そのほうら 2人に存分な働きを してもらわねばならん 278 00:22:34,263 --> 00:22:37,563 ここぞと手柄を競い合え! ははっ 279 00:22:39,969 --> 00:22:45,674 上洛して将軍を警護せよとの 度重なる信長の催促を 280 00:22:45,674 --> 00:22:47,876 無視し続けた朝倉に 281 00:22:47,876 --> 00:22:51,076 信長は ついに決戦を挑んだ 282 00:23:01,156 --> 00:23:03,392 長政殿 283 00:23:03,392 --> 00:23:06,528 浅井の家督は すでに こなたに譲った以上 284 00:23:06,528 --> 00:23:10,499 この隠居が口を出すのは 家風の乱れ 285 00:23:10,499 --> 00:23:13,535 だが お願いじゃ 286 00:23:13,535 --> 00:23:17,335 この隠居だけには 朝倉の味方をさせてはくれまいか 287 00:23:20,175 --> 00:23:23,012 浅井家が今日まで 安泰であり得たは 288 00:23:23,012 --> 00:23:26,081 後ろに朝倉家があればこそ 289 00:23:26,081 --> 00:23:30,386 わし一代は この義を 貫かせてはくれまいか? 290 00:23:30,386 --> 00:23:33,322 父上… こなたには 291 00:23:33,322 --> 00:23:36,592 この父の気持ちが分からぬか? 292 00:23:36,592 --> 00:23:38,892 それは よく分かりまするが 293 00:23:40,963 --> 00:23:45,163 分かったら こなたは 目をつむっていてくれぬか? 294 00:23:48,637 --> 00:23:53,575 この隠居にも まるで時勢が 見えぬわけではない 295 00:23:53,575 --> 00:23:57,179 が わしだけはここで 296 00:23:57,179 --> 00:24:00,749 小さな義理を立てて 死にたいのじゃ 297 00:24:00,749 --> 00:24:02,749 分かりました 298 00:24:04,987 --> 00:24:07,387 お心のままになされませ 299 00:24:09,792 --> 00:24:14,229 この長政も父上に従って 戦いましょう 300 00:24:14,229 --> 00:24:18,801 何?こなたも この父と一緒に 戦うと言われるか? 301 00:24:18,801 --> 00:24:20,936 はい 302 00:24:20,936 --> 00:24:23,136 長政も意地ある武士 303 00:24:25,140 --> 00:24:27,142 妻子の愛に溺れて 304 00:24:27,142 --> 00:24:30,546 父一人を殺しにやったとは 評されたくありませぬ 305 00:24:30,546 --> 00:24:32,546 長政殿 306 00:24:39,788 --> 00:24:42,858 父上 307 00:24:42,858 --> 00:24:46,361 ただ この戦の結果が いかようになりましょうと 308 00:24:46,361 --> 00:24:50,732 お市には何のとがもござりませぬ 309 00:24:50,732 --> 00:24:52,734 お市をお責めくださいますな 310 00:24:52,734 --> 00:24:55,337 おう むろんのこと 311 00:24:55,337 --> 00:24:58,207 嫁してきた者は我が家の者 312 00:24:58,207 --> 00:25:01,307 なんで そのような狭い心を 持とうか? 313 00:25:06,515 --> 00:25:08,515 殿 314 00:25:12,321 --> 00:25:14,321 評定はいかがなりましたか? 315 00:25:16,391 --> 00:25:20,696 わしには信長殿のお志は よく分かる 316 00:25:20,696 --> 00:25:23,732 と仰せられますると? 317 00:25:23,732 --> 00:25:25,901 天下の統一 318 00:25:25,901 --> 00:25:29,401 その目的を妨げる者は 一切 蹴散らすお考え 319 00:25:31,440 --> 00:25:33,709 それはのう お方 320 00:25:33,709 --> 00:25:36,578 並の自信ではない 321 00:25:36,578 --> 00:25:40,978 「我にあらざれば この乱世 救う者なし」と決めておられる 322 00:25:43,218 --> 00:25:46,321 だが そうした大鵬の志は 323 00:25:46,321 --> 00:25:48,821 見る者の目には不遜に映る 324 00:25:51,093 --> 00:25:54,863 お方 はい 325 00:25:54,863 --> 00:25:58,400 何があっても驚くまいぞ 326 00:25:58,400 --> 00:26:03,338 こなたは この長政の妻 姫たちの母なのじゃ 327 00:26:03,338 --> 00:26:05,841 はい 328 00:26:05,841 --> 00:26:10,746 こなたには 夫と兄との戦は 耐えられまいのう 329 00:26:10,746 --> 00:26:15,951 でも それに 耐えねばならぬことになったぞ 330 00:26:15,951 --> 00:26:21,156 では兄上とは敵味方に? 331 00:26:21,156 --> 00:26:25,894 朝倉家には 我らが祖父の代より恩義がある 332 00:26:25,894 --> 00:26:29,994 それに殉じようとする父の意思に 逆ろうては孝道にもとる 333 00:26:32,201 --> 00:26:37,573 よいか わしは こなたの夫じゃぞ 334 00:26:37,573 --> 00:26:41,877 はい 夫のわしの命を聞くであろうな? 335 00:26:41,877 --> 00:26:45,981 はい きっと聞きまする 336 00:26:45,981 --> 00:26:47,981 それで安堵 337 00:26:49,985 --> 00:26:52,054 わしも決して 338 00:26:52,054 --> 00:26:55,254 こなたの夫として 恥じ入るような振る舞いはせぬ 339 00:26:57,859 --> 00:27:01,296 「あれは織田のお市が夫」 340 00:27:01,296 --> 00:27:05,300 「あっぱれじゃ」と言われるように 行動する 341 00:27:05,300 --> 00:27:10,772 こなたも 「さすがは浅井長政の 妻であった」と言われてくれ 342 00:27:10,772 --> 00:27:13,976 仰せまでもござりませぬ 343 00:27:13,976 --> 00:27:18,213 殿のお指図ならば いつでも命は 344 00:27:18,213 --> 00:27:21,650 勘違いをするな 345 00:27:21,650 --> 00:27:25,520 わしは こなたに死ねと 言うておるのではない 346 00:27:25,520 --> 00:27:28,657 よいか 万一の時には 347 00:27:28,657 --> 00:27:31,693 わしは武将らしゅう 義に殉ずるゆえ 348 00:27:31,693 --> 00:27:36,098 こなたは生きて 後に残る子たちを 頼むと申しておるのじゃ 349 00:27:36,098 --> 00:27:39,234 あの… 生き残って? 350 00:27:39,234 --> 00:27:41,937 そうじゃ 351 00:27:41,937 --> 00:27:45,240 わしと信長殿との戦いは 352 00:27:45,240 --> 00:27:49,745 男同士のやむないものと 思うてくれ 353 00:27:49,745 --> 00:27:52,247 よいな? 354 00:27:52,247 --> 00:27:54,247 殿 355 00:28:19,975 --> 00:28:22,511 朝倉 浅井の連合軍と 356 00:28:22,511 --> 00:28:26,148 近江姉川に対決する織田軍の元へ 357 00:28:26,148 --> 00:28:28,617 徳川の援軍も駆けつけた 358 00:28:28,617 --> 00:28:33,989 我らは姉川を挟んで 朝倉の本隊と相対しましょう 359 00:28:33,989 --> 00:28:36,825 それでは おぬしに気の毒だ 予備に控え 360 00:28:36,825 --> 00:28:39,328 戦況いかんによっては 出陣してもらおう 361 00:28:39,328 --> 00:28:42,164 それがしは屈強の働き盛り 362 00:28:42,164 --> 00:28:44,366 わざわざ この地に出向いて 363 00:28:44,366 --> 00:28:47,069 年寄りじみた予備戦には 立てませぬ 364 00:28:47,069 --> 00:28:49,438 のう?数正 仰せのとおり 365 00:28:49,438 --> 00:28:52,974 殿が承知でも 家臣どもが聞きますまい 366 00:28:52,974 --> 00:28:54,976 読めたぞ 367 00:28:54,976 --> 00:28:58,013 この俺に三河武士の強さを はっきりと見せつけて 368 00:28:58,013 --> 00:29:01,383 俺の度肝を抜きたいのだろう? 仰せのとおり 369 00:29:01,383 --> 00:29:04,186 ハハハ 押しの強い男だ 370 00:29:04,186 --> 00:29:07,789 分かった 第一陣は おぬしに任せよう 371 00:29:07,789 --> 00:29:11,489 それで家康 家臣にも 面目が立ちまする 372 00:30:02,444 --> 00:30:06,581 なんの 織田 徳川ごとき 373 00:30:06,581 --> 00:30:10,285 我が朝倉 浅井は一心同体 374 00:30:10,285 --> 00:30:13,855 強さにおいても数段 勝る 375 00:30:13,855 --> 00:30:18,093 さあ 参りましょうぞ 朝倉殿 376 00:30:18,093 --> 00:30:20,093 ようし 377 00:30:22,097 --> 00:30:25,567 出陣! わー! 378 00:30:25,567 --> 00:30:30,167 その翌朝 戦いの火ぶたは 切って落とされた 379 00:31:01,770 --> 00:31:03,770 撃て! 380 00:31:17,219 --> 00:31:19,219 おのれ 381 00:31:29,531 --> 00:31:33,368 おのれ 光秀 旧主に刃を向けるか! 382 00:31:33,368 --> 00:31:36,171 天下のため 御免 383 00:31:36,171 --> 00:31:39,271 進めい! おー! 384 00:32:13,174 --> 00:32:15,377 父上! 385 00:32:15,377 --> 00:32:18,547 長政!わしに構うな 386 00:32:18,547 --> 00:32:22,250 残りの兵を従えて小谷城へ逃れよ 387 00:32:22,250 --> 00:32:24,486 父上! 388 00:32:24,486 --> 00:32:28,186 行け わしの最後の頼みじゃ 389 00:32:42,804 --> 00:32:45,704 皆の者 来い! 390 00:32:55,216 --> 00:32:58,520 半日にも及ぶ 熾烈な戦いの末 391 00:32:58,520 --> 00:33:01,156 朝倉 浅井軍は壊滅 392 00:33:01,156 --> 00:33:06,256 姉川の合戦は織田 徳川方の 大勝利となった 393 00:33:08,897 --> 00:33:12,133 浅井長政の立てこもる小谷城を 394 00:33:12,133 --> 00:33:16,633 明智光秀 羽柴秀吉の軍勢が 取り囲んだ 395 00:33:31,886 --> 00:33:36,786 もう お城は十重二十重に 取り囲まれているそうな 396 00:33:39,561 --> 00:33:43,661 各務野 そなたは なぜ この城を去らぬのじゃ? 397 00:33:46,067 --> 00:33:51,606 お濃の方様に 申し付けられてございます 398 00:33:51,606 --> 00:33:54,109 我が身に代わって 399 00:33:54,109 --> 00:33:57,712 お市の方様をお守りするようにと 400 00:33:57,712 --> 00:34:00,015 でも わらわは 401 00:34:00,015 --> 00:34:04,285 この城と運命を共にする定め 402 00:34:04,285 --> 00:34:06,354 そなたまで巻き添えにしては… 403 00:34:06,354 --> 00:34:08,790 その時は 404 00:34:08,790 --> 00:34:12,227 わたくしも お供いたしまする 405 00:34:12,227 --> 00:34:14,227 各務野… 406 00:34:16,865 --> 00:34:20,635 あっ お父上様じゃ 407 00:34:20,635 --> 00:34:23,635 お父上様 お父上様 408 00:34:25,740 --> 00:34:28,410 各務野 姫たちを 409 00:34:28,410 --> 00:34:31,079 はい 410 00:34:31,079 --> 00:34:35,779 さあ 姫様方 向こうで遊びましょう さあ 411 00:34:38,420 --> 00:34:40,420 さあさあ 参りましょう 412 00:34:44,526 --> 00:34:47,295 のう お市 413 00:34:47,295 --> 00:34:50,432 わしは こなたに頼みがある 414 00:34:50,432 --> 00:34:53,802 頼みなどと他人行儀な 415 00:34:53,802 --> 00:34:56,671 信長殿より 416 00:34:56,671 --> 00:34:59,871 再三再四 使者がやって来る 417 00:35:02,744 --> 00:35:06,214 こなた 姫たちを連れて 418 00:35:06,214 --> 00:35:10,318 羽柴 明智勢の中まで 逃れてくれぬか? 419 00:35:10,318 --> 00:35:12,387 こなたや姫たちには何の罪も… 420 00:35:12,387 --> 00:35:14,656 嫌でござりまする 421 00:35:14,656 --> 00:35:17,325 わらわは浅井長政の妻 422 00:35:17,325 --> 00:35:19,325 子たちは舅御の孫 423 00:35:21,596 --> 00:35:24,232 お市 424 00:35:24,232 --> 00:35:26,501 はい 425 00:35:26,501 --> 00:35:29,571 わしと こなたは 426 00:35:29,571 --> 00:35:32,207 よい夫婦であったのう 427 00:35:32,207 --> 00:35:34,275 はい 428 00:35:34,275 --> 00:35:38,780 その思い出をあの世まで 抱かせてやってくださりませ 429 00:35:38,780 --> 00:35:41,780 わしは こなたを こよないものに思うておる 430 00:35:44,886 --> 00:35:48,590 離しとうはない 431 00:35:48,590 --> 00:35:50,590 抱いてゆきたい 432 00:35:53,495 --> 00:35:57,398 しかし… しかし… 433 00:35:57,398 --> 00:36:00,068 もう聞きませぬ 434 00:36:00,068 --> 00:36:04,939 わらわは幸せでござりまする 435 00:36:04,939 --> 00:36:07,575 では どうあっても? 436 00:36:07,575 --> 00:36:10,779 一緒に行きたい 437 00:36:10,779 --> 00:36:13,379 子たちも きっと そう申しまする 438 00:36:26,294 --> 00:36:29,297 申し上げます 439 00:36:29,297 --> 00:36:32,167 ただ今 織田方の軍使が 440 00:36:32,167 --> 00:36:35,970 またしてもか 今度は誰じゃ? 441 00:36:35,970 --> 00:36:39,340 はっ 明智光秀殿にござりまする 442 00:36:39,340 --> 00:36:44,712 何?敵の侍大将 自ら 乗り込んだと申すか? 443 00:36:44,712 --> 00:36:47,749 明智光秀 単身乗り込んだは 444 00:36:47,749 --> 00:36:52,353 命懸けで主君 信長の意を 伝えんがため 445 00:36:52,353 --> 00:36:55,290 誰が来られても同じこと 446 00:36:55,290 --> 00:36:57,892 戦上手な織田の駆け引き 447 00:36:57,892 --> 00:37:01,429 見事であったと肝に銘じて 死んでいく 448 00:37:01,429 --> 00:37:03,798 その死までを妨げては 449 00:37:03,798 --> 00:37:07,936 あまりに情けを知らぬなさり方 450 00:37:07,936 --> 00:37:10,605 そこもとも そうは思わぬか? 451 00:37:10,605 --> 00:37:12,774 長政殿 452 00:37:12,774 --> 00:37:18,580 ご貴殿とて この戦の無理は 初めから お心つきであろう 453 00:37:18,580 --> 00:37:25,153 天下の統一は万民のためを思う 主君 信長の悲願でござる 454 00:37:25,153 --> 00:37:27,755 そのご縁に当たられる浅井氏が 455 00:37:27,755 --> 00:37:30,458 しゃにむに無意味な 抗戦をなされて 456 00:37:30,458 --> 00:37:33,458 婦女子までも道連れにする必要が どこにござろう? 457 00:37:35,630 --> 00:37:38,633 1人でも多くの人命を救うのが 458 00:37:38,633 --> 00:37:41,033 大将の務めではござるまいか? 459 00:37:45,106 --> 00:37:47,141 ご存じかな? 460 00:37:47,141 --> 00:37:49,744 お父上 浅井久政殿は 461 00:37:49,744 --> 00:37:52,247 ご無事におわしまするぞ 462 00:37:52,247 --> 00:37:55,817 な… 何?父上が? 463 00:37:55,817 --> 00:37:59,721 手傷を負われ 前田利家の手に降伏 464 00:37:59,721 --> 00:38:02,557 ご保護を受けておられまする 465 00:38:02,557 --> 00:38:04,557 あの父上が… 466 00:38:06,928 --> 00:38:09,030 お方 467 00:38:09,030 --> 00:38:11,466 事情が変わったのだ 急げ 468 00:38:11,466 --> 00:38:15,069 舅御様が捕らわれの身とは まことでござりますか? 469 00:38:15,069 --> 00:38:18,706 うん 不承知は相ならんぞ 470 00:38:18,706 --> 00:38:20,742 こなたたちが参らねば 471 00:38:20,742 --> 00:38:24,078 父は信長殿の手にかかろうぞ 472 00:38:24,078 --> 00:38:28,082 それゆえ 聞き分けて 城を落ちてくれ 473 00:38:28,082 --> 00:38:30,282 この長政もすぐに参る 474 00:38:35,590 --> 00:38:40,328 よい子でな 父も後から参るほどに 475 00:38:40,328 --> 00:38:42,328 はい はい 476 00:38:58,646 --> 00:39:02,483 ご心中 お察し申しまする 477 00:39:02,483 --> 00:39:05,219 明智殿 478 00:39:05,219 --> 00:39:08,022 おことは この長政を 欺いてくれたが 479 00:39:08,022 --> 00:39:10,625 わしは おことを恨まぬつもりじゃ 480 00:39:10,625 --> 00:39:12,860 何と仰せられる? 481 00:39:12,860 --> 00:39:15,797 父が降参したと申したが 482 00:39:15,797 --> 00:39:20,101 そのようなことのできる 父ではない 483 00:39:20,101 --> 00:39:22,737 壮絶に討ち果てたに違いない 484 00:39:22,737 --> 00:39:25,173 すると長政殿は 485 00:39:25,173 --> 00:39:30,144 事情を知りながら 我らの顔を 立ててくれたと仰せられるか? 486 00:39:30,144 --> 00:39:33,381 いや この長政 487 00:39:33,381 --> 00:39:35,981 おことの言葉で考え直したのじゃ 488 00:39:38,319 --> 00:39:41,322 奥や姫たちを 489 00:39:41,322 --> 00:39:44,722 信長殿の手に渡す口実が できたとのう 490 00:39:56,604 --> 00:39:59,774 おいたわしい こなた様は? 491 00:39:59,774 --> 00:40:04,412 羽柴秀吉にござりまする 途中はお案じなく 492 00:40:04,412 --> 00:40:07,015 おー 姫たちも お元気で 493 00:40:07,015 --> 00:40:09,415 さあさ 参りましょうぞ 494 00:40:32,306 --> 00:40:35,643 早まったことを 495 00:40:35,643 --> 00:40:40,481 主君 信長は何としても ご貴殿を救いたかった 496 00:40:40,481 --> 00:40:43,351 信長殿 始め 497 00:40:43,351 --> 00:40:48,356 明智殿にも 羽柴殿にも 498 00:40:48,356 --> 00:40:52,827 長政 お礼を申して逝こう 499 00:40:52,827 --> 00:40:55,630 もはや敵もなし 500 00:40:55,630 --> 00:40:58,099 恨みもなし 501 00:40:58,099 --> 00:41:01,836 悲しみもなし 502 00:41:01,836 --> 00:41:06,007 そうじゃ 墓も要らん 503 00:41:06,007 --> 00:41:08,907 琵琶湖の底にでも沈めてもらおう 504 00:41:13,848 --> 00:41:17,385 殿! 殿! 505 00:41:17,385 --> 00:41:21,322 殿… 殿… うっ… 506 00:41:21,322 --> 00:41:24,992 武門の義理に殉じた浅井長政は 507 00:41:24,992 --> 00:41:27,895 その短い生涯を閉じた 508 00:41:27,895 --> 00:41:30,295 享年29歳 509 00:41:41,843 --> 00:41:43,843 いかがなされました? 510 00:41:46,714 --> 00:41:48,714 いえ 511 00:42:05,099 --> 00:42:07,099 お市 512 00:42:10,905 --> 00:42:12,905 兄上 513 00:42:22,583 --> 00:42:24,883 つらかったであろうのう 514 00:42:26,854 --> 00:42:29,991 戦国のおなごはのう 515 00:42:29,991 --> 00:42:33,561 悲しいもの 516 00:42:33,561 --> 00:42:35,561 いとおしいものだ 517 00:42:41,636 --> 00:42:43,636 生きてくれよ 518 00:42:45,640 --> 00:42:47,640 子たちのためにも 519 00:43:05,226 --> 00:43:07,226 さあ お方様 520 00:43:09,230 --> 00:43:12,400 参りましょう 「そなたのような おなごを」 521 00:43:12,400 --> 00:43:17,505 「つくらぬためにも 戦国の世を変えなければならぬ」 522 00:43:17,505 --> 00:43:20,174 胸の中で そうつぶやきながら 523 00:43:20,174 --> 00:43:25,780 信長は天下統一への 新たな決意を固めていた 524 00:43:25,780 --> 00:43:28,950 しかし この頃 信長にとって 525 00:43:28,950 --> 00:43:32,553 生涯最強の敵が牙をむき出した 526 00:43:32,553 --> 00:43:36,053 甲斐の猛将 武田信玄である