1 00:00:31,766 --> 00:00:33,267 2 00:00:33,267 --> 00:00:35,269 (隠館厄介) <人と人がいれば➡ 3 00:00:35,269 --> 00:00:39,257 おのずと関係性というものが 生まれる> 4 00:00:39,257 --> 00:00:44,257 <特に男と女の場合 関係性は 目まぐるしく変化する> 5 00:00:45,780 --> 00:00:49,851 <例えば どちらか1人が 死んでしまったら➡ 6 00:00:49,851 --> 00:00:53,271 残された者は 忘れがたい その記憶は➡ 7 00:00:53,271 --> 00:00:55,771 どうなるのだろう> 8 00:00:57,258 --> 00:00:59,277 <今日子さんは卑怯だ> 9 00:00:59,277 --> 00:01:03,264 <自分だけは すぐにでも 忘れられるのだから> 10 00:01:03,264 --> 00:01:06,267 <それだけに 今日子さんは➡ 11 00:01:06,267 --> 00:01:08,767 脆く 儚い> 12 00:01:17,762 --> 00:01:19,262 (絆井法郎) あぁ~。 13 00:01:29,757 --> 00:01:31,759 (鳴き声) ん? 14 00:01:31,759 --> 00:01:33,259 おっ? (まくる) えっ? 15 00:01:34,312 --> 00:01:36,764 おいおい… 何? (まくる) おっ… えっ? えっ? 16 00:01:36,764 --> 00:01:39,250 何? 何だ? どうした? 17 00:01:39,250 --> 00:01:41,269 ん? 18 00:01:41,269 --> 00:01:43,269 何? それ。 (ドアが閉まる音) 19 00:01:45,256 --> 00:01:48,292 (猫の鳴き声) 気のせいか? 20 00:01:48,292 --> 00:01:51,863 《今 僕は 怪しい不法侵入者だ》 21 00:01:51,863 --> 00:01:54,265 《災厄まみれの厄介だからこそ➡ 22 00:01:54,265 --> 00:01:57,251 今日まで 清廉潔白に 生きて来たというのに…》 23 00:01:57,251 --> 00:01:58,753 ん~? 24 00:01:58,753 --> 00:02:01,255 [TEL](ベル) 25 00:02:01,255 --> 00:02:03,257 [TEL](ベル) はい。 26 00:02:03,257 --> 00:02:05,276 はい サンドグラス。 27 00:02:05,276 --> 00:02:08,262 あっ 今日子さん 絆井法郎です。 28 00:02:08,262 --> 00:02:11,332 あぁ うん… 表に? 29 00:02:11,332 --> 00:02:13,832 怪しい人影? 30 00:02:14,752 --> 00:02:16,754 それで? 31 00:02:16,754 --> 00:02:18,256 うん。 32 00:02:18,256 --> 00:02:19,757 男。 33 00:02:19,757 --> 00:02:22,243 大きなリュックを背負った…。 34 00:02:22,243 --> 00:02:23,743 (猫の鳴き声) 35 00:02:28,249 --> 00:02:30,284 (掟上今日子) 誰もいない? 36 00:02:30,284 --> 00:02:33,855 そうですか お騒がせしました。 37 00:02:33,855 --> 00:02:36,257 <これまで何度も やってもいない犯罪の➡ 38 00:02:36,257 --> 00:02:38,743 ぬれぎぬを着せられて来た> 39 00:02:38,743 --> 00:02:42,763 <しかし 今度ばかりは 言い訳が立たない> 40 00:02:42,763 --> 00:02:46,767 <みんなの目を欺き こっそりと➡ 41 00:02:46,767 --> 00:02:50,271 今日子さんの部屋に 入ろうというのだから> 42 00:02:50,271 --> 00:02:53,271 <話は 昨日にさかのぼる> 43 00:02:59,263 --> 00:03:01,249 重信さん? (重信) シ~! 44 00:03:01,249 --> 00:03:04,252 お~ ちょっと…。 大声を出すな。 45 00:03:04,252 --> 00:03:06,771 社長直々の極秘ミッションだ これは。 46 00:03:06,771 --> 00:03:09,257 社長って 作創社の? 47 00:03:09,257 --> 00:03:13,311 <作創社とは 都内にある大手出版社であり➡ 48 00:03:13,311 --> 00:03:16,247 重信さんは そこの編集者である> 49 00:03:16,247 --> 00:03:18,766 これって 須永フェスタの時の…。 50 00:03:18,766 --> 00:03:21,269 須永先生の最後の原稿だ。 51 00:03:21,269 --> 00:03:24,288 <推理小説家 須永昼兵衛> 52 00:03:24,288 --> 00:03:28,276 <先月 須永先生の大ファンである 今日子さんと僕は➡ 53 00:03:28,276 --> 00:03:32,296 須永先生の別荘で 須永フェスタに参加した> 54 00:03:32,296 --> 00:03:37,268 <屋敷のどこかに隠された原稿を 捜すというイベントだ> 55 00:03:37,268 --> 00:03:41,255 <ところが その朝 須永先生は心不全で急逝> 56 00:03:41,255 --> 00:03:43,758 <危うく須永先生の遺稿が➡ 57 00:03:43,758 --> 00:03:46,277 行方知れずに なるところだったが➡ 58 00:03:46,277 --> 00:03:49,747 さすが今日子さん 見事 原稿のデータを見つけ出し➡ 59 00:03:49,747 --> 00:03:51,799 事なきを得た> 60 00:03:51,799 --> 00:03:53,317 <…はずだった> 61 00:03:53,317 --> 00:03:55,369 この原稿が何か? 62 00:03:55,369 --> 00:03:58,756 実は 須永先生の死に➡ 63 00:03:58,756 --> 00:04:00,756 自殺の可能性が出て来た。 64 00:04:02,777 --> 00:04:07,281 <重信さんの話によると 心不全で亡くなった須永先生が➡ 65 00:04:07,281 --> 00:04:09,767 自殺だったという可能性が 浮上した> 66 00:04:09,767 --> 00:04:11,769 <というのも 常用していた睡眠薬を➡ 67 00:04:11,769 --> 00:04:14,288 過剰摂取した疑いが 出て来たからだ> 68 00:04:14,288 --> 00:04:16,340 <自殺だったとなれば➡ 69 00:04:16,340 --> 00:04:18,259 センセーショナルな 大ニュースである> 70 00:04:18,259 --> 00:04:21,762 <作創社の宣伝部からは いっそ それを売りに➡ 71 00:04:21,762 --> 00:04:24,765 遺稿を出版しようという 声まで出始めた> 72 00:04:24,765 --> 00:04:26,767 <しかし 小中社長は➡ 73 00:04:26,767 --> 00:04:30,254 須永昼兵衛が自殺したとは 考えにくいという> 74 00:04:30,254 --> 00:04:34,842 <そこで今日子さんに 白羽の矢が立った> 75 00:04:34,842 --> 00:04:37,278 (重信) 今日子さんに 依頼してもらいたい。 76 00:04:37,278 --> 00:04:39,263 早急に 内密に。 77 00:04:39,263 --> 00:04:41,265 直接 依頼すれば いいじゃないですか。 78 00:04:41,265 --> 00:04:44,769 夢にまで見た今日子さんに 再び会ってしまったら➡ 79 00:04:44,769 --> 00:04:48,255 彼女の美しさに どうにか なってしまいそうなんだよ。 80 00:04:48,255 --> 00:04:50,274 いつの間に そこまで…。 81 00:04:50,274 --> 00:04:53,327 <というわけで 僕が今日子さんに➡ 82 00:04:53,327 --> 00:04:55,763 依頼を伝えることになった> 83 00:04:55,763 --> 00:04:58,282 小中社長いわく もし自殺であれば➡ 84 00:04:58,282 --> 00:05:01,752 この中に 何らかのヒントが 隠されているはずだと。 85 00:05:01,752 --> 00:05:03,771 作家人生最後の作品に➡ 86 00:05:03,771 --> 00:05:06,257 あの須永昼兵衛が 何もしないわけはない。 87 00:05:06,257 --> 00:05:08,776 それを確認しないことには➡ 88 00:05:08,776 --> 00:05:11,295 自殺として売り出すことは はばかられる➡ 89 00:05:11,295 --> 00:05:13,848 …という お気持ちのようです。 90 00:05:13,848 --> 00:05:18,252 裏を返せば 自殺ではないという 確証がほしい。 91 00:05:18,252 --> 00:05:20,771 あるものを証明するなら まだしも➡ 92 00:05:20,771 --> 00:05:23,774 ないものを証明するのは 難儀な話です。 93 00:05:23,774 --> 00:05:27,762 ですが 須永先生が自殺をするとは 考えにくい➡ 94 00:05:27,762 --> 00:05:30,264 …という意見には賛成です。 95 00:05:30,264 --> 00:05:34,819 須永先生の作品には 自殺をする人物が出て来ない。 96 00:05:34,819 --> 00:05:37,755 1人も? 例え話ですら出て来ません。 97 00:05:37,755 --> 00:05:42,259 まるで 自殺という言葉そのものを 避けているかのように。 98 00:05:42,259 --> 00:05:44,261 でも それは…。 99 00:05:44,261 --> 00:05:48,265 ええ 私の記憶の限りでは という話です。 100 00:05:48,265 --> 00:05:50,267 記憶を一日で 失うようになってから➡ 101 00:05:50,267 --> 00:05:52,286 出版された本については➡ 102 00:05:52,286 --> 00:05:54,822 読んだとしても 忘れてしまってますから。 103 00:05:54,822 --> 00:05:57,775 つまり この調査を遂行するには➡ 104 00:05:57,775 --> 00:06:01,245 この1冊を読んだだけでは 足りないということです。 105 00:06:01,245 --> 00:06:04,745 須永先生の全著作の手配を。 106 00:06:06,767 --> 00:06:10,254 <こうして ひと晩明けた今日> 107 00:06:10,254 --> 00:06:11,754 おっ! 108 00:06:14,325 --> 00:06:16,761 あっ… 厄介です。 109 00:06:16,761 --> 00:06:19,246 あっ 厄介さん! はい。 110 00:06:19,246 --> 00:06:21,766 見つかりませんでしたか? はい。 111 00:06:21,766 --> 00:06:24,268 あの… 依頼の内容は? 112 00:06:24,268 --> 00:06:27,254 今朝 起きてから 左の太ももに 残してあったメモを読んだので➡ 113 00:06:27,254 --> 00:06:29,273 大体のことは。 114 00:06:29,273 --> 00:06:32,293 見ますか? あっ いえ それは…。 115 00:06:32,293 --> 00:06:33,793 どうぞ 中へ。 116 00:06:35,746 --> 00:06:37,246 どうぞ? 117 00:06:38,265 --> 00:06:40,251 はい。 118 00:06:40,251 --> 00:06:49,760 ♬~ 119 00:06:49,760 --> 00:07:01,760 ♬~ 120 00:07:17,772 --> 00:07:18,756 121 00:07:18,756 --> 00:07:20,256 よいしょ。 122 00:07:21,258 --> 00:07:24,261 須永先生が 45年間で書き上げた作品は➡ 123 00:07:24,261 --> 00:07:26,781 書籍にして99冊です。 124 00:07:26,781 --> 00:07:29,266 壮観ですね! 125 00:07:29,266 --> 00:07:31,786 ホントに 全部読むんですか? 126 00:07:31,786 --> 00:07:34,839 もちろんです 目的は 自殺に関する表現が➡ 127 00:07:34,839 --> 00:07:37,839 本当にないのかを 確認するだけではありません。 128 00:07:39,260 --> 00:07:41,779 100冊目となる この最後の原稿を➡ 129 00:07:41,779 --> 00:07:44,265 読み解くヒントを得ることが 主眼です。 130 00:07:44,265 --> 00:07:46,267 読んだ記憶のある作品も含めて➡ 131 00:07:46,267 --> 00:07:48,252 年代順に イチから読んで行くことで➡ 132 00:07:48,252 --> 00:07:52,252 須永先生の心の変遷を あらためて 理解する必要があります。 133 00:07:54,291 --> 00:07:58,762 <99冊 普通の人なら 何日かに分けて読めばいい> 134 00:07:58,762 --> 00:08:00,764 <でも今日子さんの場合➡ 135 00:08:00,764 --> 00:08:02,783 一度眠ると 忘れてしまう> 136 00:08:02,783 --> 00:08:04,268 <本来➡ 137 00:08:04,268 --> 00:08:07,271 一日で解決できる依頼しか 引き受けない探偵なのだ> 138 00:08:07,271 --> 00:08:09,773 <だが 須永昼兵衛に 関わる依頼ともなれば➡ 139 00:08:09,773 --> 00:08:11,775 話は別だ> 140 00:08:11,775 --> 00:08:15,312 徹夜で読んで 読んで読んで読み尽くします! 141 00:08:15,312 --> 00:08:19,312 昨日の私が 推薦文を残していました。 142 00:08:21,252 --> 00:08:23,752 一筆 お願いします。 143 00:08:24,772 --> 00:08:26,273 はい。 144 00:08:26,273 --> 00:08:30,273 <昨日 僕は 今日子さんにスカウトされた> 145 00:08:34,281 --> 00:08:39,353 こんな形で 須永先生の遺稿を 読むことになるなんて。 146 00:08:39,353 --> 00:08:43,274 はい… 約束を楽しみにしてたのに…。 147 00:08:43,274 --> 00:08:45,259 約束? 148 00:08:45,259 --> 00:08:46,760 あっ…。 149 00:08:46,760 --> 00:08:49,763 もしかして 私と? 150 00:08:49,763 --> 00:08:53,263 あっ… おっしゃってください 明日には忘れます。 151 00:08:54,251 --> 00:08:57,288 その本が出版されたら 僕が買って➡ 152 00:08:57,288 --> 00:09:00,858 サンドグラスの書棚に 置いておくって約束したんです。 153 00:09:00,858 --> 00:09:03,761 今日子さんが そうしてほしいって。 154 00:09:03,761 --> 00:09:07,281 私が そんなことを あなたに? 155 00:09:07,281 --> 00:09:08,781 はい。 156 00:09:11,785 --> 00:09:15,285 <その話が 信用につながったようで…> 157 00:09:16,257 --> 00:09:18,292 僕が 寝ないよう見張りを? 158 00:09:18,292 --> 00:09:20,327 もちろん 時給もお支払いします。 159 00:09:20,327 --> 00:09:22,246 でも 部屋に泊まるというのは さすがに…。 160 00:09:22,246 --> 00:09:24,265 極秘任務ということですから➡ 161 00:09:24,265 --> 00:09:27,251 情報の拡散は 防がねばなりません。 162 00:09:27,251 --> 00:09:30,771 ご都合が悪ければ 先ほどの重信さんという方に…。 163 00:09:30,771 --> 00:09:33,771 やります! 僕にやらせてください。 164 00:09:36,777 --> 00:09:39,313 <いつも助けられてばかりの この僕が➡ 165 00:09:39,313 --> 00:09:41,365 名実ともにワトソンに> 166 00:09:41,365 --> 00:09:43,250 <探偵と依頼人から➡ 167 00:09:43,250 --> 00:09:45,769 探偵と助手に昇格だ> 168 00:09:45,769 --> 00:09:47,269 では。 169 00:09:49,757 --> 00:09:51,775 よろしくお願いします。 170 00:09:51,775 --> 00:09:54,261 こちらこそ よろしくお願いします。 171 00:09:54,261 --> 00:09:56,261 早速ですが。 172 00:09:59,300 --> 00:10:01,852 これを。 173 00:10:01,852 --> 00:10:03,253 書籍リストです。 174 00:10:03,253 --> 00:10:05,756 発行年月日とタイトルを まとめてもらいました。 175 00:10:05,756 --> 00:10:08,275 これで 順番通りに読むことができます。 176 00:10:08,275 --> 00:10:10,244 小中…。 177 00:10:10,244 --> 00:10:13,247 確か 須永先生の最初の担当編集者。 178 00:10:13,247 --> 00:10:14,748 今や 社長です。 179 00:10:14,748 --> 00:10:17,785 元編集者だからこそ この件にも熱心なんだろうと➡ 180 00:10:17,785 --> 00:10:20,337 昨日の今日子さんが。 なるほど。 181 00:10:20,337 --> 00:10:22,256 社長さんとは お話が合いそうです。 182 00:10:22,256 --> 00:10:26,744 実は今朝 厄介さんが来る前に 最後の原稿を読んだんですけど➡ 183 00:10:26,744 --> 00:10:30,264 はっきり言って 凡作でした。 凡作? 184 00:10:30,264 --> 00:10:32,750 鬼気迫るものもなく➡ 185 00:10:32,750 --> 00:10:35,786 良くも悪くも いつも通りの須永昼兵衛。 186 00:10:35,786 --> 00:10:38,786 厳しいですね。 ファンだからこそです。 187 00:10:41,275 --> 00:10:44,278 これを最後の作品にしようとした とは思えません。 188 00:10:44,278 --> 00:10:47,748 うっかり最後になってしまった というほうが ぴったり来ます。 189 00:10:47,748 --> 00:10:50,751 社長さんが自殺を認めないのも 無理はない。 190 00:10:50,751 --> 00:10:55,289 はい ですが 現時点では ファンの心証にすぎません。 191 00:10:55,289 --> 00:10:57,789 全部読んでみないことには。 192 00:10:59,360 --> 00:11:01,261 1冊目。 193 00:11:01,261 --> 00:11:04,248 デビュー作の『水底の殺人』から 始めます。 194 00:11:04,248 --> 00:11:06,266 はい。 195 00:11:06,266 --> 00:11:11,766 ♬~ 196 00:11:12,773 --> 00:11:22,766 ♬~ 197 00:11:22,766 --> 00:11:25,769 《30分で長編1冊とは 驚異のペース》 198 00:11:25,769 --> 00:11:28,269 《読むのが速いと 言うだけのことはある》 199 00:11:29,757 --> 00:11:33,260 《99冊×30分=2970分➡ 200 00:11:33,260 --> 00:11:36,263 =49.5時間》 201 00:11:36,263 --> 00:11:38,298 《2日ちょっとで読み終わる》 202 00:11:38,298 --> 00:11:41,368 《2日の徹夜くらい余裕だ》 203 00:11:41,368 --> 00:11:44,271 《今日子さんを ただ見守るだけの この仕事》 204 00:11:44,271 --> 00:11:47,271 《退屈で 眠くなるかと思ったが…》 205 00:11:48,776 --> 00:11:51,779 《全くならない! 楽しくて仕方ない!》 206 00:11:51,779 --> 00:11:55,249 《今日子さんを見ているだけで 時給が発生する》 207 00:11:55,249 --> 00:11:58,802 《この世に こんな幸せな仕事があったとは》 208 00:11:58,802 --> 00:12:00,320 《待てよ》 209 00:12:00,320 --> 00:12:02,756 《もし僕と今日子さんが結婚し➡ 210 00:12:02,756 --> 00:12:06,256 妻と夫という関係に なったとしたら…》 211 00:12:08,762 --> 00:12:11,762 ⦅おかえりなさい⦆ ⦅ただいま⦆ 212 00:12:13,250 --> 00:12:15,769 《今日子さんを毎日見られる》 213 00:12:15,769 --> 00:12:18,806 《リラックスした姿や➡ 214 00:12:18,806 --> 00:12:20,806 寝顔でさえも》 215 00:12:22,760 --> 00:12:25,262 《いや 待て待て 今日子さんは眠るたびに➡ 216 00:12:25,262 --> 00:12:27,762 僕のことを 忘れてしまうわけだから…》 217 00:12:31,769 --> 00:12:34,254 ⦅誰?⦆ ⦅僕は君の夫で…⦆ 218 00:12:34,254 --> 00:12:38,308 ⦅不審者が私の部屋に!⦆ ⦅毎朝毎朝 通報しないでくれ!⦆ 219 00:12:38,308 --> 00:12:40,861 ⦅助けてください!⦆ 220 00:12:40,861 --> 00:12:42,262 《ダメだ》 221 00:12:42,262 --> 00:12:44,765 《なまじ不運な人生を 送って来たせいで➡ 222 00:12:44,765 --> 00:12:47,751 妄想ですら 幸せな想像ができない》 223 00:12:47,751 --> 00:12:50,254 厄介さんは ご結婚は? 224 00:12:50,254 --> 00:12:52,254 結婚の妄想なんてしてません! 225 00:12:53,757 --> 00:12:55,776 してたんですか? 226 00:12:55,776 --> 00:12:59,346 あっ いや… 結婚は してません。 227 00:12:59,346 --> 00:13:01,265 するご予定は? 全く。 228 00:13:01,265 --> 00:13:03,267 彼女は? 残念ながら。 229 00:13:03,267 --> 00:13:06,753 よかった。 えっ? 230 00:13:06,753 --> 00:13:10,774 彼女がいたら この状況は 申し訳ないなぁと。 231 00:13:10,774 --> 00:13:12,276 あぁ…。 232 00:13:12,276 --> 00:13:14,244 結婚願望は? 233 00:13:14,244 --> 00:13:17,815 なくは ないですが…。 234 00:13:17,815 --> 00:13:20,250 男と女の関係性のゴールが➡ 235 00:13:20,250 --> 00:13:23,253 必ずしも結婚である必要は ないとも思います。 236 00:13:23,253 --> 00:13:24,755 確かに。 237 00:13:24,755 --> 00:13:28,255 お互いにとって ベストな選択ができれば それで。 238 00:13:29,760 --> 00:13:32,260 何か想定している相手が いるような…。 239 00:13:33,747 --> 00:13:37,317 気にしないでください サ~っと流してください。 240 00:13:37,317 --> 00:13:39,317 流して。 241 00:13:42,272 --> 00:13:45,759 須永先生も 私が記憶している限り お独りでした。 242 00:13:45,759 --> 00:13:48,278 あぁ 生涯 独身だったみたいです。 243 00:13:48,278 --> 00:13:51,748 遺産は 遠い親戚が受け取ると。 244 00:13:51,748 --> 00:13:54,751 その方達は 須永先生の死について何と? 245 00:13:54,751 --> 00:13:57,304 自殺として売り出すことで 本が売れるなら➡ 246 00:13:57,304 --> 00:14:00,304 そうしてほしいって スタンスのようです。 247 00:14:01,775 --> 00:14:05,245 須永先生を 何だと思ってるんでしょう。 248 00:14:05,245 --> 00:14:08,765 須永先生は 命と向き合って来られた作家です。 249 00:14:08,765 --> 00:14:12,269 推理小説家ですから 作品の中で人は死にますけど➡ 250 00:14:12,269 --> 00:14:16,269 決して 死を粗雑には扱わなかった。 251 00:14:19,359 --> 00:14:23,359 須永先生の名誉のためにも 頑張らなくては。 252 00:14:24,748 --> 00:14:27,751 《ふと心配になった》 253 00:14:27,751 --> 00:14:30,754 《須永先生への強い思い入れが➡ 254 00:14:30,754 --> 00:14:34,254 判断を誤らせることも あるのではないか…》 255 00:16:37,681 --> 00:16:40,183 (也川) 今日 今日子さん見た? 256 00:16:40,183 --> 00:16:42,683 見てないね。 257 00:16:46,690 --> 00:16:48,190 いただきます。 258 00:16:52,245 --> 00:16:55,182 う~ん! とってもおいしいです! 259 00:16:55,182 --> 00:16:57,184 お口に合って よかったです。 うん! 260 00:16:57,184 --> 00:16:59,169 これも おいしいです! 261 00:16:59,169 --> 00:17:00,669 ぜひ サラダも。 262 00:17:01,688 --> 00:17:04,691 ビーフストロガノフって 作れるんですね。 263 00:17:04,691 --> 00:17:07,694 意外と簡単なんです 安い食材で代用利くし。 264 00:17:07,694 --> 00:17:09,196 へぇ~。 265 00:17:09,196 --> 00:17:12,766 《このシチュエーションは まるで 同棲したてのカップル》 266 00:17:12,766 --> 00:17:14,766 《同棲したことないけど》 267 00:17:17,687 --> 00:17:19,187 あら ごめんなさい。 268 00:17:20,690 --> 00:17:24,678 《いかん 意識しているのは 明らかに僕のほうだけだ》 269 00:17:24,678 --> 00:17:28,178 《冷静に 助手という任務に 徹しなければ》 270 00:17:34,671 --> 00:17:38,692 <須永先生は並行して いくつもの シリーズを手掛けていた> 271 00:17:38,692 --> 00:17:41,178 <作品をシリーズ別に分けると➡ 272 00:17:41,178 --> 00:17:44,181 ほとんどの作品が 何かしらのシリーズもので➡ 273 00:17:44,181 --> 00:17:47,184 計22のシリーズが存在する> 274 00:17:47,184 --> 00:17:51,271 <そして どのシリーズも きちんと完結している> 275 00:17:51,271 --> 00:17:53,190 <読者が 1人でもいる限り➡ 276 00:17:53,190 --> 00:17:56,176 何年かかろうとも 作品を完結させる> 277 00:17:56,176 --> 00:17:59,696 <それが須永先生の 矜持だったようだ> 278 00:17:59,696 --> 00:18:02,182 あれ? 279 00:18:02,182 --> 00:18:03,683 何か? 280 00:18:03,683 --> 00:18:07,704 この数年 須永先生は新しい シリーズを始めていないんです。 281 00:18:07,704 --> 00:18:11,274 一方で 続いていたシリーズを 全て終わらせている。 282 00:18:11,274 --> 00:18:14,177 これって ご自身の 作家人生を➡ 283 00:18:14,177 --> 00:18:17,180 締めくくろうとしていたようにも 見えませんか? 284 00:18:17,180 --> 00:18:20,183 それは 須永先生の素人の発想です。 285 00:18:20,183 --> 00:18:22,669 須永先生の素人? 286 00:18:22,669 --> 00:18:25,188 その現象は 珍しいことではないんです。 287 00:18:25,188 --> 00:18:29,209 過去にも何度か 全シリーズが終わる 空白のタイミングが存在し➡ 288 00:18:29,209 --> 00:18:33,180 当時のファンが 「先生は 筆を折る気かもしれない」➡ 289 00:18:33,180 --> 00:18:36,183 …と やきもきしたそうです。 はあ。 290 00:18:36,183 --> 00:18:39,169 そして また 新しいシリーズが始まる。 291 00:18:39,169 --> 00:18:42,689 じゃあ 『とうもろこしの軸』も 新しいシリーズだったんですか? 292 00:18:42,689 --> 00:18:45,192 いえ ノンシリーズでした。 ノンシリーズ? 293 00:18:45,192 --> 00:18:49,229 つまり シリーズものではない 1冊で完結している作品。 294 00:18:49,229 --> 00:18:51,781 はい ごく稀にあるんです。 295 00:18:51,781 --> 00:18:54,701 『瞳悟空』や『天使が通る人生』➡ 296 00:18:54,701 --> 00:18:57,187 『すったもんだの殺人』あたりが そうです。 297 00:18:57,187 --> 00:18:59,189 どれもマイナーですね。 298 00:18:59,189 --> 00:19:01,174 ノンシリーズは あまり売れませんし➡ 299 00:19:01,174 --> 00:19:04,177 ファンの間でも 筆休め的な作品だという認識です。 300 00:19:04,177 --> 00:19:06,179 筆休め? 301 00:19:06,179 --> 00:19:09,733 先生も時には 読者受けや 売り上げを考えない➡ 302 00:19:09,733 --> 00:19:12,233 気楽な小説を 書きたくなるんでしょう。 303 00:19:17,190 --> 00:19:21,194 ハァ~ 本を連続して読むって 案外 疲れますね。 304 00:19:21,194 --> 00:19:23,196 集中力を高める ヨガのポーズ知ってます。 305 00:19:23,196 --> 00:19:25,682 ジムで掃除のバイトしてたら 覚えちゃって。 306 00:19:25,682 --> 00:19:28,185 教えてください! はい。 307 00:19:28,185 --> 00:19:30,704 じゃあ 右足を軸にして➡ 308 00:19:30,704 --> 00:19:33,240 左足をふくらはぎに乗っけます。 309 00:19:33,240 --> 00:19:35,292 はい。 そして 胸に➡ 310 00:19:35,292 --> 00:19:37,694 手を合掌させてください。 はい。 311 00:19:37,694 --> 00:19:42,182 で 鼻で息を吸いながら 手を上に上げて行きます。 312 00:19:42,182 --> 00:19:44,684 ス~。 ス~。 313 00:19:44,684 --> 00:19:46,686 はい。 これで…。 314 00:19:46,686 --> 00:19:51,186 <思えば この時が 和気あいあいのピークだった> 315 00:19:55,779 --> 00:19:59,199 <いや 2日目も楽しかった> 316 00:19:59,199 --> 00:20:03,186 <徹夜ハイとでもいうのか お互いに妙な親近感が生まれ➡ 317 00:20:03,186 --> 00:20:07,674 以前から こうして ずっと2人でいたような…> 318 00:20:07,674 --> 00:20:12,174 <しかし 変わらない関係なんて ないのだ> 319 00:20:20,670 --> 00:20:22,170 あっ! 320 00:20:23,189 --> 00:20:24,689 すいません。 321 00:20:28,678 --> 00:20:30,678 ハァ…。 322 00:20:32,666 --> 00:20:34,167 すいません。 323 00:20:34,167 --> 00:20:37,737 《こらえよう 今日子さんは集中力を使い➡ 324 00:20:37,737 --> 00:20:40,674 頭脳を フル回転させ続けているわけで➡ 325 00:20:40,674 --> 00:20:43,174 僕より疲れているのだから》 326 00:20:44,678 --> 00:20:47,664 《この3日で読書スピードは どんどん落ち込み➡ 327 00:20:47,664 --> 00:20:50,667 今や1冊読むのに 2時間かかっている》 328 00:20:50,667 --> 00:20:53,186 《今後 3時間に スローダウンしたとして➡ 329 00:20:53,186 --> 00:20:55,705 残り あと35冊》 330 00:20:55,705 --> 00:21:01,678 《35冊×3時間=105時間=…》 331 00:21:01,678 --> 00:21:04,178 《あと4日!?》 332 00:21:07,167 --> 00:21:09,167 それは無理だろ。 333 00:21:10,687 --> 00:21:12,687 何ですか? 334 00:21:13,690 --> 00:21:16,710 独り言で。 気が散ります。 335 00:21:16,710 --> 00:21:18,710 申し訳ありません。 336 00:21:22,682 --> 00:21:26,186 《思えば無謀な挑戦だったのだ》 337 00:21:26,186 --> 00:21:29,673 《「とても無鉄砲」だったのだ》 338 00:21:29,673 --> 00:21:33,176 《今日子さんなら もしかしてと 期待した僕が甘かった》 339 00:21:33,176 --> 00:21:37,697 《1人の人間が 寝ずに 99冊もの本を読むなんて➡ 340 00:21:37,697 --> 00:21:40,250 「とりとめのない多重事故」 だったのだ》 341 00:21:40,250 --> 00:21:42,686 《できることなら いつまでも➡ 342 00:21:42,686 --> 00:21:46,189 「嬉し恥ずかし文化祭」で いたかった》 343 00:21:46,189 --> 00:21:48,189 ハァ…。 344 00:21:49,676 --> 00:21:52,195 おわ~‼ 今日子さん ダメです! 345 00:21:52,195 --> 00:21:55,198 大丈夫ですか!? 346 00:21:55,198 --> 00:21:59,753 うるさっ! 大声出さないでください。 347 00:21:59,753 --> 00:22:04,253 《この12時間 今日子さんの 機嫌の悪さはピークに達している》 348 00:22:05,191 --> 00:22:07,691 言われなくても頑張ってます。 349 00:22:10,680 --> 00:22:15,180 ハァ~ 徹夜続きで そんな重いもの食べられません。 350 00:22:17,687 --> 00:22:20,187 厄介さんって 気が利かないんですね。 351 00:22:21,241 --> 00:22:24,741 あ~ 気が散る 気配を消しててください。 352 00:22:26,696 --> 00:22:28,682 《何だ これは…》 353 00:22:28,682 --> 00:22:32,182 《結婚もしていないのに 倦怠期の夫婦か》 354 00:22:33,687 --> 00:22:35,188 水。 355 00:22:35,188 --> 00:22:37,190 《倦怠期の夫婦どころじゃ ない》 356 00:22:37,190 --> 00:22:39,175 《これは 奴隷だ》 357 00:22:39,175 --> 00:22:41,675 《主人と奴隷の関係だ》 358 00:22:46,683 --> 00:22:49,669 《分かってる 全ては眠気と疲労のせいだ》 359 00:22:49,669 --> 00:22:54,174 《この状況のせいであって 今日子さんのせいでは ない》 360 00:22:54,174 --> 00:22:57,694 《問題は 僕が今日子さんを➡ 361 00:22:57,694 --> 00:23:01,197 嫌いになってしまいそうな ことだ》 362 00:23:01,197 --> 00:23:04,768 《今日子さんを 憎々しく思う日が来るなんて…》 363 00:23:04,768 --> 00:23:07,203 《睡眠不足は こうも人から正気を奪うのか》 364 00:23:07,203 --> 00:23:10,190 《いや 僕という人間が➡ 365 00:23:10,190 --> 00:23:13,676 小さい男だから悪いのか》 366 00:23:13,676 --> 00:23:16,679 《そもそも こんな仕事 引き受けなければよかった》 367 00:23:16,679 --> 00:23:19,682 《本はといえば 重信の野郎が こんな依頼を持ち掛けて…》 368 00:23:19,682 --> 00:23:21,735 《いや 本はといえば 須永先生が…》 369 00:23:21,735 --> 00:23:25,235 なぜ 死んだ 須永昼兵衛‼ 370 00:23:29,676 --> 00:23:31,676 すいません…。 371 00:23:33,196 --> 00:23:35,682 静かにします。 372 00:23:35,682 --> 00:23:37,182 チッ! 373 00:23:39,702 --> 00:23:43,173 《いかん 僕も だいぶ壊れて来ている》 374 00:23:43,173 --> 00:23:45,725 《思い出そう かわいかった今日子さんを➡ 375 00:23:45,725 --> 00:23:47,777 愛すべき今日子さんを》 376 00:23:47,777 --> 00:23:49,696 《かわいかった…》 377 00:23:49,696 --> 00:23:54,184 《あの時も この時も あの時…》 378 00:23:54,184 --> 00:23:56,169 ⦅そういうのパスです⦆ 379 00:23:56,169 --> 00:23:57,670 ⦅パ~ス~!⦆ 380 00:23:57,670 --> 00:24:01,670 《余計なことまで 思い出してしまった》 381 00:24:03,193 --> 00:24:04,693 ハァ。 382 00:24:05,745 --> 00:24:09,666 《今 この時のことも 今日子さんは忘れてしまう》 383 00:24:09,666 --> 00:24:14,687 《僕は 忘れられないのに 嫌いになりたくないのに》 384 00:24:14,687 --> 00:24:18,191 《忘れてしまえる今日子さんは 卑怯だ》 385 00:24:18,191 --> 00:24:22,695 今日子さん 部屋で孤独死してたら どうしよう! 386 00:24:22,695 --> 00:24:25,715 えっ? だって 今日で もう…。 387 00:24:25,715 --> 00:24:27,250 4日。 388 00:24:27,250 --> 00:24:30,186 4日も下りて来ないんだよ ねぇ 様子見に行こうよ。 389 00:24:30,186 --> 00:24:32,672 うん。 あぁ~ いやいやいや。 390 00:24:32,672 --> 00:24:34,174 いやいや いや。 391 00:24:34,174 --> 00:24:36,176 今日子さんだって大人なんだし➡ 392 00:24:36,176 --> 00:24:39,179 ただ上に住んでるからってだけで あんまり干渉したら➡ 393 00:24:39,179 --> 00:24:42,679 野暮なんじゃないかな。 そうだけど…。 394 00:24:44,284 --> 00:24:46,169 あっ 法郎さんってさ➡ 395 00:24:46,169 --> 00:24:49,689 今日子さんの部屋 入ったことあるの? 396 00:24:49,689 --> 00:24:51,691 ん? 397 00:24:51,691 --> 00:24:54,191 いや? ないよ。 398 00:24:55,678 --> 00:24:58,178 <そうして 再び日は暮れ…> 399 00:24:59,666 --> 00:25:02,735 <この頃には もう 今日子さんに頼まれるがまま➡ 400 00:25:02,735 --> 00:25:06,735 眠らないための あらゆる方策を 尽くすしかなく…> 401 00:25:11,678 --> 00:25:16,165 はぁ~! まずい。 402 00:25:16,165 --> 00:25:17,667 ごめんなさい。 403 00:25:17,667 --> 00:25:21,688 こんなもの食べさせたいわけじゃ。 はい。 404 00:25:21,688 --> 00:25:23,673 目が覚めます。 405 00:25:23,673 --> 00:25:25,675 《これじゃ拷問だ》 406 00:25:25,675 --> 00:25:28,228 《罪人と拷問の執行人だ》 407 00:25:28,228 --> 00:25:31,728 《なぜ好きな人をここまで 苦しめなくてはならないのか》 408 00:25:37,170 --> 00:25:38,670 今日子さん! 409 00:25:42,191 --> 00:25:45,695 限界です… つねってください。 410 00:25:45,695 --> 00:25:49,682 ほっぺた つねってください 強めに。 411 00:25:49,682 --> 00:25:53,219 いや でも…。 早く。 412 00:25:53,219 --> 00:25:56,673 この眠気を乗り切らにゃいと➡ 413 00:25:56,673 --> 00:26:00,193 ここまでの仕事が無駄になります。 414 00:26:00,193 --> 00:26:04,180 協力してくれている厄介さんに➡ 415 00:26:04,180 --> 00:26:06,699 傲慢無礼にゃ ひどい態度を取っている➡ 416 00:26:06,699 --> 00:26:09,699 自分への罰でもあるんです。 417 00:26:16,175 --> 00:26:18,177 誓約書に 何て書いたか➡ 418 00:26:18,177 --> 00:26:20,196 忘れたんですか? 419 00:26:20,196 --> 00:26:31,240 ♬~ 420 00:26:31,240 --> 00:26:32,740 失礼します。 421 00:26:39,182 --> 00:26:41,182 両手で。 422 00:26:42,702 --> 00:26:44,202 はい。 423 00:26:47,190 --> 00:26:49,690 はい そのままで。 424 00:26:51,194 --> 00:26:54,213 《今日子さんは 以前言っていた》 425 00:26:54,213 --> 00:26:57,283 ⦅知りたいんです 私は⦆ 426 00:26:57,283 --> 00:27:00,703 ⦅掟上今日子が なぜ探偵なのか⦆ 427 00:27:00,703 --> 00:27:04,691 《その真意が何なのか いまだに分からないけれど➡ 428 00:27:04,691 --> 00:27:07,694 謎を解くことが 今日子さんの人生で➡ 429 00:27:07,694 --> 00:27:12,694 望みであるのなら 僕は それに付き合うしかない》 430 00:27:14,701 --> 00:27:16,753 いい感じです。 431 00:27:16,753 --> 00:27:18,788 乗り越えましょう。 はい。 432 00:27:18,788 --> 00:27:20,673 <読書開始から90時間> 433 00:27:20,673 --> 00:27:23,676 <僕と今日子さんは 運動部の チームメートさながらの➡ 434 00:27:23,676 --> 00:27:26,679 スポ根的関係へと移行していた> 435 00:27:26,679 --> 00:27:30,183 <しかし 肝心の推理は置き去りで➡ 436 00:27:30,183 --> 00:27:32,685 とにかく99冊を読み切る➡ 437 00:27:32,685 --> 00:27:37,185 …という見当違いの目標へと 向かっていたようにも思う> 438 00:27:42,695 --> 00:27:44,197 うっ! 439 00:27:44,197 --> 00:27:46,197 くっ…。 440 00:27:49,168 --> 00:27:51,688 もう やめよう。 441 00:27:51,688 --> 00:27:54,173 終わりにしよう。 442 00:27:54,173 --> 00:27:56,693 さっきから4時間➡ 443 00:27:56,693 --> 00:27:59,245 ずっと同じ本 読んでます。 444 00:27:59,245 --> 00:28:03,182 『ことなかれな俺』から 一歩も進んでません。 445 00:28:03,182 --> 00:28:05,184 まだ21冊もあるんですよ。 446 00:28:05,184 --> 00:28:08,187 読むだけじゃなく 推理もしなきゃいけないんです。 447 00:28:08,187 --> 00:28:11,674 一度受けた依頼を 解決したいのは分かるけど。 448 00:28:11,674 --> 00:28:13,176 今 何日ですか? 449 00:28:13,176 --> 00:28:15,178 お昼です。 450 00:28:15,178 --> 00:28:17,178 ん? 451 00:28:18,715 --> 00:28:20,767 5日目。 452 00:28:20,767 --> 00:28:26,267 私としたことが… 5日も お風呂に入ってない…。 453 00:28:29,192 --> 00:28:32,678 シャワー 浴びて来ます…。 454 00:28:32,678 --> 00:28:37,683 お湯浴びて お水浴びれば… 目も覚めると思います…。 455 00:28:37,683 --> 00:28:42,188 まだ続けるんですか? もちろん…。 456 00:28:42,188 --> 00:28:47,276 朝ごはん… 昼? 457 00:28:47,276 --> 00:28:50,276 よろしくお願いしまします…。 458 00:28:52,165 --> 00:28:53,665 あっ。 459 00:28:55,168 --> 00:28:57,687 寝室 入っちゃダメですよ。 460 00:28:57,687 --> 00:29:08,731 ♬~ 461 00:29:08,731 --> 00:29:10,767 食事…。 462 00:29:10,767 --> 00:29:12,702 (シャワーの音) 463 00:29:12,702 --> 00:29:15,688 食材 もうないよ…。 (シャワーの音) 464 00:29:15,688 --> 00:29:21,177 (シャワーの音) 465 00:29:21,177 --> 00:29:24,180 え~…。 466 00:29:24,180 --> 00:29:28,180 今日子さんが シャワーから出たら…。 467 00:29:30,787 --> 00:29:34,287 何か買って…。 468 00:29:44,667 --> 00:29:48,187 (シャワーの音) 469 00:29:48,187 --> 00:29:49,687 あぁ! 470 00:29:51,190 --> 00:29:54,760 今日子さん! 今日子さん 聞こえますか!? 471 00:29:54,760 --> 00:29:56,279 (シャワーの音) 472 00:29:56,279 --> 00:29:58,279 すいません 開けます! (シャワーの音) 473 00:29:59,699 --> 00:30:06,689 ♬~ 474 00:30:06,689 --> 00:30:09,175 ♬~ 今日子さん! 今日子さん! 475 00:30:09,175 --> 00:30:13,675 ♬~ 476 00:32:15,685 --> 00:32:21,173 477 00:32:21,173 --> 00:32:24,677 《冷水を浴びたまま3時間 死んでしまう》 478 00:32:24,677 --> 00:32:27,177 《この人は死んでしまう》 479 00:32:33,686 --> 00:32:36,172 <冷え切った体を 急激に温めると➡ 480 00:32:36,172 --> 00:32:38,691 冷たい血液が心臓に戻り➡ 481 00:32:38,691 --> 00:32:40,691 ショック状態を 起こすことがある> 482 00:32:43,195 --> 00:32:45,181 <スキー場で バイトした時に習った➡ 483 00:32:45,181 --> 00:32:48,200 凍傷のケアと同じだ> 484 00:32:48,200 --> 00:32:51,200 <少しずつ温めないといけない> 485 00:32:59,178 --> 00:33:03,178 <僕はレスキューさながら 患者を温め続けた> 486 00:33:17,697 --> 00:33:19,682 ハァ…。 487 00:33:19,682 --> 00:33:39,685 ♬~ 488 00:33:39,685 --> 00:33:43,189 <この時の僕は 多分かなりイカれていた> 489 00:33:43,189 --> 00:33:45,174 <疲れと寝不足と➡ 490 00:33:45,174 --> 00:33:48,674 今日子さんが無事だったという そのことに> 491 00:33:52,715 --> 00:33:57,169 <だから あんな大胆なことが できたんだと思う> 492 00:33:57,169 --> 00:34:00,669 <僕は今日子さんを裏切る> 493 00:34:02,691 --> 00:34:06,191 <こんな依頼 初めから なかったのだ> 494 00:34:09,181 --> 00:34:11,183 <記憶を奪わなければ➡ 495 00:34:11,183 --> 00:34:14,754 今日子さんは またイチから 同じことを始めてしまう> 496 00:34:14,754 --> 00:34:17,754 <今度こそ 死んでしまう> 497 00:34:24,180 --> 00:34:27,180 <初めて記された 僕への信頼> 498 00:34:31,203 --> 00:34:33,689 <全てを なかったことに> 499 00:34:33,689 --> 00:34:36,689 <跡形もなく 徹底的に> 500 00:34:37,710 --> 00:34:41,280 <忘れていい 全て忘れればいい> 501 00:34:41,280 --> 00:34:45,684 <忘れてしまえば また新しい一日を始められる> 502 00:34:45,684 --> 00:34:56,195 ♬~ 503 00:34:56,195 --> 00:34:58,197 <犯罪だけは犯すまいと➡ 504 00:34:58,197 --> 00:35:01,734 清く正しく生きて来た僕だが➡ 505 00:35:01,734 --> 00:35:06,188 いざとなると さまざまな仕事経験が生かされ➡ 506 00:35:06,188 --> 00:35:10,688 証拠隠滅のための あらゆる知識を 持っていたことに気付く> 507 00:35:12,178 --> 00:35:16,198 <僕は悪党だ 立派な犯罪人だ> 508 00:35:16,198 --> 00:35:18,184 <僕と今日子さんは➡ 509 00:35:18,184 --> 00:35:20,684 加害者と被害者に なってしまった> 510 00:35:22,771 --> 00:35:24,690 <裏切り者の僕は➡ 511 00:35:24,690 --> 00:35:29,690 もう二度と 今日子さんに 助けを求めることはできない> 512 00:35:32,198 --> 00:35:34,200 <それでいい> 513 00:35:34,200 --> 00:35:36,185 <探偵は他に いくらでもいる> 514 00:35:36,185 --> 00:35:38,737 <でも 今日子さんは➡ 515 00:35:38,737 --> 00:35:40,737 1人しかいない> 516 00:35:49,682 --> 00:35:54,687 <その時 僕は何げなく➡ 517 00:35:54,687 --> 00:35:58,674 見てはいけないものを➡ 518 00:35:58,674 --> 00:36:00,674 見てしまった> 519 00:36:03,729 --> 00:36:05,229 どうした? 520 00:36:06,265 --> 00:36:08,667 昨夜 いろいろ…。 521 00:36:08,667 --> 00:36:12,667 あっ いや この6日… あり過ぎまして…。 522 00:36:15,191 --> 00:36:16,675 ハァ。 523 00:36:16,675 --> 00:36:19,678 で… 調査のほうは? 524 00:36:19,678 --> 00:36:22,181 途中で今日子さんが寝ちゃって…。 525 00:36:22,181 --> 00:36:25,234 全部 忘れちまったってことか。 526 00:36:25,234 --> 00:36:27,269 僕のせいです。 527 00:36:27,269 --> 00:36:29,769 手掛かりは何もなしか。 528 00:36:32,191 --> 00:36:36,695 『とうもろこしの軸』の… 発売予定日。 529 00:36:36,695 --> 00:36:38,197 はぁ? 530 00:36:38,197 --> 00:36:41,200 今日子さんの二の腕に 書いてあったんです。 531 00:36:41,200 --> 00:36:45,688 (隠館の声) 多分… 眠ってしまう 直前に書いたものだと。 532 00:36:45,688 --> 00:36:48,757 それ… いつ どうやって見たの? 533 00:36:48,757 --> 00:36:50,676 ハァ…。 534 00:36:50,676 --> 00:36:53,195 いいじゃないですか そんなこと。 535 00:36:53,195 --> 00:36:56,198 確か発売予定は 来年の2月って 言ってましたよね? 536 00:36:56,198 --> 00:36:58,684 ああ それが何だっつうの? 537 00:36:58,684 --> 00:37:00,703 分かりません。 538 00:37:00,703 --> 00:37:05,708 仕方ない 須永先生の死は 自殺ということで。 539 00:37:05,708 --> 00:37:08,761 須永先生は自殺ではありません。 540 00:37:08,761 --> 00:37:10,261 今日子さん! 541 00:37:11,196 --> 00:37:14,683 重信さんと厄介さん。 542 00:37:14,683 --> 00:37:17,202 当たり。 どうして? 543 00:37:17,202 --> 00:37:20,202 早速ですが 証明を開始します。 544 00:37:21,190 --> 00:37:24,693 須永先生は自殺ではなかった という証明です。 545 00:37:24,693 --> 00:37:26,729 証明できるんですか? 546 00:37:26,729 --> 00:37:29,229 はい 僭越ながら。 547 00:39:31,687 --> 00:39:35,708 今朝 目を覚ました私は昨日までの ことを すっかり忘れていました。 548 00:39:35,708 --> 00:39:37,676 でも…。 549 00:39:37,676 --> 00:39:39,695 部屋で このリストを拾った。 550 00:39:39,695 --> 00:39:42,195 えっ? 抜かりましたね。 551 00:39:44,199 --> 00:39:47,770 このリストは何なのか? 疑問に思った私は➡ 552 00:39:47,770 --> 00:39:50,706 ここに書かれていた 小中さんの名前に注目。 553 00:39:50,706 --> 00:39:53,709 朝一番で作創社に 問い合わせたところ➡ 554 00:39:53,709 --> 00:39:56,695 小中社長に直接 お会いすることができ➡ 555 00:39:56,695 --> 00:39:59,698 須永先生の話に花を咲かせつつ➡ 556 00:39:59,698 --> 00:40:02,201 今回の依頼の件を あらためて教えてもらい➡ 557 00:40:02,201 --> 00:40:04,201 状況を把握しました。 558 00:40:05,220 --> 00:40:08,791 昨日までの私は 須永先生の全著作を読むという➡ 559 00:40:08,791 --> 00:40:10,676 無謀な行動に出たようですが➡ 560 00:40:10,676 --> 00:40:13,212 そんな必要は なかったんです。 561 00:40:13,212 --> 00:40:16,682 このリストだけ見れば 事件は ほぼ解決できた。 562 00:40:16,682 --> 00:40:18,183 えっ? 563 00:40:18,183 --> 00:40:20,702 昨日までの私は 仕事に かこつけて➡ 564 00:40:20,702 --> 00:40:23,705 全著作を読みたいという 気持ちも あったんでしょう。 565 00:40:23,705 --> 00:40:25,707 ファン心理とは恐ろしいものです。 566 00:40:25,707 --> 00:40:27,760 リストだけで どうやって? 567 00:40:27,760 --> 00:40:31,213 見て1秒で気付きました。 1秒!? 568 00:40:31,213 --> 00:40:33,699 重要なのは出版年月日。 569 00:40:33,699 --> 00:40:36,702 ある作品群だけ 出版月が同じなんです。 570 00:40:36,702 --> 00:40:39,188 どのシリーズですか? (重信) ちょ… 見せてみろ。 571 00:40:39,188 --> 00:40:42,691 シリーズではない作品群です。 ノンシリーズ。 572 00:40:42,691 --> 00:40:45,727 続きものじゃない1冊読み切りの 作品ってことですか? 573 00:40:45,727 --> 00:40:47,262 はい。 574 00:40:47,262 --> 00:40:49,298 このリストでいうと➡ 575 00:40:49,298 --> 00:40:52,201 1番 25番 48番➡ 576 00:40:52,201 --> 00:40:55,204 51番 66番 79番の➡ 577 00:40:55,204 --> 00:40:57,704 6作品がノンシリーズ。 578 00:40:58,690 --> 00:41:01,710 あっ… 全て出版が2月。 579 00:41:01,710 --> 00:41:04,196 『とうもろこしの軸』も ノンシリーズで➡ 580 00:41:04,196 --> 00:41:06,231 出版予定は2月だ。 581 00:41:06,231 --> 00:41:10,702 これらの作品は 須永先生自らが 企画する原稿捜索イベント➡ 582 00:41:10,702 --> 00:41:14,690 須永フェスタに使われた 作品でもあります。 583 00:41:14,690 --> 00:41:18,210 とても偶然とは思えません。 584 00:41:18,210 --> 00:41:20,195 (今日子の声) そこで 作創社のライブラリーで➡ 585 00:41:20,195 --> 00:41:23,182 これらの作品を 読ませてもらったんです。 586 00:41:23,182 --> 00:41:26,251 すると 意外なことが分かりました。 587 00:41:26,251 --> 00:41:29,188 ノンシリーズだと思われていた この作品群は➡ 588 00:41:29,188 --> 00:41:33,692 ある共通点を持つ 1つのシリーズだったんです。 589 00:41:33,692 --> 00:41:35,694 ん? 全部➡ 590 00:41:35,694 --> 00:41:38,197 ジャンルもテーマもバラバラですが。 はい。 591 00:41:38,197 --> 00:41:40,716 私も この7冊に 特化して読まなければ➡ 592 00:41:40,716 --> 00:41:43,702 そうとは気付きませんでした。 じゃあ 何が? 593 00:41:43,702 --> 00:41:45,754 脇役です。 594 00:41:45,754 --> 00:41:47,789 脇役? 脇役? 595 00:41:47,789 --> 00:41:49,708 共通する1人の人物が➡ 596 00:41:49,708 --> 00:41:53,695 誰にも気付かれないよう さりげなく 目立たず➡ 597 00:41:53,695 --> 00:41:56,695 7作品 全てに登場してるんです。 598 00:41:57,683 --> 00:41:59,701 (今日子の声) ノンシリーズ1作目。 599 00:41:59,701 --> 00:42:01,703 デビュー作の『水底の殺人』。 600 00:42:01,703 --> 00:42:03,722 主人公の妹の クラスメートとして➡ 601 00:42:03,722 --> 00:42:06,275 17歳の女学生が登場します。 602 00:42:06,275 --> 00:42:10,712 妹と出席番号が近い ま行の苗字を持つ少女。 603 00:42:10,712 --> 00:42:12,698 その7年後に出版されたのが➡ 604 00:42:12,698 --> 00:42:14,182 『瞳悟空』。 605 00:42:14,182 --> 00:42:16,718 24歳の桃田という女性が➡ 606 00:42:16,718 --> 00:42:19,204 事件の目撃者として登場します。 607 00:42:19,204 --> 00:42:22,708 その9年後 『天使が通る人生』。 608 00:42:22,708 --> 00:42:25,244 主人公の女性刑事の ペンフレンドとして➡ 609 00:42:25,244 --> 00:42:27,296 三十路を過ぎた桑田さん。 610 00:42:27,296 --> 00:42:29,214 桑田? 桃田じゃないんですか? 611 00:42:29,214 --> 00:42:31,700 結婚したんです。 612 00:42:31,700 --> 00:42:34,703 その翌年 『すったもんだの殺人』。 613 00:42:34,703 --> 00:42:38,707 主婦の朝美さんが 主人公の道案内をしてくれます。 614 00:42:38,707 --> 00:42:41,710 ここで ようやく 下の名前が分かりました。 615 00:42:41,710 --> 00:42:43,729 旧姓 桃田朝美さん。 616 00:42:43,729 --> 00:42:45,764 それから9年後に出版された➡ 617 00:42:45,764 --> 00:42:47,299 『バタ足倶楽部』。 618 00:42:47,299 --> 00:42:51,703 受付の桑っちとして 40歳代半ばの女性が登場。 619 00:42:51,703 --> 00:42:54,189 さらに7年後の『黄緑少年』では➡ 620 00:42:54,189 --> 00:42:56,208 朝ちゃんと名乗る 50歳代の女性に➡ 621 00:42:56,208 --> 00:42:58,694 子供達が落とし物を届けます。 622 00:42:58,694 --> 00:43:02,681 そして12年後 『とうもろこしの軸』。 623 00:43:02,681 --> 00:43:06,218 主人公の一家に とうもろこしを分けてくれる➡ 624 00:43:06,218 --> 00:43:09,218 62歳の農家のおばちゃんが 登場します。 625 00:43:10,689 --> 00:43:13,692 (今日子の声) 出版時期と年齢がぴったりです。 626 00:43:13,692 --> 00:43:16,695 須永先生は ノンシリーズの中で ひそかに➡ 627 00:43:16,695 --> 00:43:19,181 少女から成長し おばちゃんになって行く➡ 628 00:43:19,181 --> 00:43:21,181 1人の女性を描いていた。 629 00:43:22,701 --> 00:43:25,721 では その朝美さんとは誰なのか? 630 00:43:25,721 --> 00:43:28,273 実在するんですか? はい。 631 00:43:28,273 --> 00:43:32,678 小中社長が古い資料を調べて 問い合わせてくれました。 632 00:43:32,678 --> 00:43:36,198 学生時代 須永先生が お付き合いしていた少女。 633 00:43:36,198 --> 00:43:38,684 それが… 朝美さん。 634 00:43:38,684 --> 00:43:43,188 17歳の時 ご病気で亡くなったそうです。 635 00:43:43,188 --> 00:43:52,698 ♬~ 636 00:43:52,698 --> 00:43:57,703 だから須永先生は 命と向き合う作家になった。 637 00:43:57,703 --> 00:44:00,706 生きたくても生きられなかった 彼女を思い➡ 638 00:44:00,706 --> 00:44:04,192 自ら命を絶つ 自殺を忌み嫌って➡ 639 00:44:04,192 --> 00:44:08,747 作中で一度も 言葉ですら使わなかった。 640 00:44:08,747 --> 00:44:11,747 2月は 彼女の誕生月だったそうです。 641 00:44:13,702 --> 00:44:18,707 須永先生にとって ノンシリーズの執筆は筆休め。 642 00:44:18,707 --> 00:44:21,193 ファンは みんな そう思っていましたが➡ 643 00:44:21,193 --> 00:44:23,193 とんでもない。 644 00:44:24,196 --> 00:44:26,198 須永先生にとっては➡ 645 00:44:26,198 --> 00:44:30,198 ノンシリーズこそが 宝物だったんです。 646 00:44:32,304 --> 00:44:36,191 (今日子の声) 物語の片隅で朝美さんは➡ 647 00:44:36,191 --> 00:44:41,191 元気に高校を卒業し 働いて…。 648 00:44:43,181 --> 00:44:46,184 (今日子の声) 結婚して家庭を持って➡ 649 00:44:46,184 --> 00:44:48,704 子供を育て…。 650 00:44:48,704 --> 00:44:53,204 ひっそりと 平穏な人生を生きていた。 651 00:44:56,211 --> 00:44:58,697 (今日子の声) 45年にわたって➡ 652 00:44:58,697 --> 00:45:01,183 須永先生と共に。 653 00:45:01,183 --> 00:45:09,191 ♬~ 654 00:45:09,191 --> 00:45:13,795 『とうもろこしの軸』の中で 朝美さんは まだ お元気です。 655 00:45:13,795 --> 00:45:16,181 1人の人間の人生を 描くのであれば➡ 656 00:45:16,181 --> 00:45:19,681 大往生するまでを描いてこそ人生。 657 00:45:21,203 --> 00:45:24,706 ノンシリーズは まだ完結していません。 658 00:45:24,706 --> 00:45:28,693 そうだ… 志の途中だ。 659 00:45:28,693 --> 00:45:33,193 須永先生が物語を終わらせずに 自殺するはずがない。 660 00:45:34,683 --> 00:45:37,202 社長さんも 納得してくださいました。 661 00:45:37,202 --> 00:45:40,689 自殺ではなく 不慮の死による 最後の作品として➡ 662 00:45:40,689 --> 00:45:44,689 遺稿を出版するよう 部下に厳命するとのことです。 663 00:45:48,196 --> 00:45:51,183 以上で証明を終わります。 664 00:45:51,183 --> 00:45:58,690 ♬~ 665 00:45:58,690 --> 00:46:01,209 (重信) 今日子さん! 666 00:46:01,209 --> 00:46:03,209 また いつか。 667 00:46:04,746 --> 00:46:06,798 さて 厄介さん。 668 00:46:06,798 --> 00:46:09,298 大人の話をしましょうか。 669 00:46:13,205 --> 00:46:17,209 何から話しましょうねぇ。 あの…➡ 670 00:46:17,209 --> 00:46:19,694 先に聞いていいですか? どうぞ。 671 00:46:19,694 --> 00:46:21,696 須永先生の作品リスト➡ 672 00:46:21,696 --> 00:46:24,199 リュックの中に しまった記憶があるんですが➡ 673 00:46:24,199 --> 00:46:25,684 部屋に落ちてたっていうのは? 674 00:46:25,684 --> 00:46:28,184 はい ウソです。 じゃあ どうして? 675 00:46:29,271 --> 00:46:32,707 どうしてだと思います? 676 00:46:32,707 --> 00:46:36,194 もしかして… 寝てなかった? 677 00:46:36,194 --> 00:46:38,196 いいえ ぐっすり眠りました。 678 00:46:38,196 --> 00:46:41,199 おかげで事件を解決することが できたんです。 679 00:46:41,199 --> 00:46:43,685 一度寝て さっぱりして➡ 680 00:46:43,685 --> 00:46:46,204 新たな角度から 作品リストを見ることで➡ 681 00:46:46,204 --> 00:46:48,256 パ~っと。 682 00:46:48,256 --> 00:46:52,694 僕が 体のどこかのメモを 消し忘れた? 683 00:46:52,694 --> 00:46:54,194 あっ…。 684 00:46:55,697 --> 00:46:57,199 いいえ。 685 00:46:57,199 --> 00:47:00,185 厄介さんは 見事に消し去ってくれました。 686 00:47:00,185 --> 00:47:02,204 基本データは 残してくれたようですが➡ 687 00:47:02,204 --> 00:47:06,191 須永先生の事件に関することは キレイさっぱり。 688 00:47:06,191 --> 00:47:08,226 太ももまで丁寧に。 689 00:47:08,226 --> 00:47:10,278 すいません 見てません 見ないよう 触れないよう➡ 690 00:47:10,278 --> 00:47:12,197 気を付けて… っていうか それどころじゃなくて…。 691 00:47:12,197 --> 00:47:14,697 はい 泣いてましたもんね。 692 00:47:17,202 --> 00:47:19,688 温かくて いい気持ちで寝てたのに➡ 693 00:47:19,688 --> 00:47:22,691 あんまり泣いてるから 起きてしまいました。 694 00:47:22,691 --> 00:47:24,691 あの時…? 695 00:47:27,229 --> 00:47:31,183 (今日子の声) 驚きました 何が起こったのか全く分からず➡ 696 00:47:31,183 --> 00:47:33,683 ひとまず 寝たふりを。 697 00:47:36,705 --> 00:47:38,705 ⦅ドアが閉まる音⦆ 698 00:47:47,232 --> 00:47:49,784 (今日子の声) 厄介さんに 依頼のメモを消される前に➡ 699 00:47:49,784 --> 00:47:51,784 全て確認し。 700 00:47:53,688 --> 00:47:56,691 (今日子の声) 大体の状況は把握できました。 701 00:47:56,691 --> 00:48:02,681 ♬~ 702 00:48:02,681 --> 00:48:05,684 ♬~ (足音) 703 00:48:05,684 --> 00:48:12,791 ♬~ 704 00:48:12,791 --> 00:48:14,693 (今日子の声) それから眠らず ずっと起きていて➡ 705 00:48:14,693 --> 00:48:16,695 今 この通り。 706 00:48:16,695 --> 00:48:20,215 じゃ 僕が 今日子さんの 体のメモを消してる間も…。 707 00:48:20,215 --> 00:48:22,183 ばっちり起きてました。 708 00:48:22,183 --> 00:48:25,186 信じられない なら 止めてください! 709 00:48:25,186 --> 00:48:29,724 もう メモを見ちゃってたなら 必死に消す必要もなかったわけで。 710 00:48:29,724 --> 00:48:32,777 この人 頑張ってるなぁって 応援したくなって。 711 00:48:32,777 --> 00:48:34,195 はっ? 712 00:48:34,195 --> 00:48:38,195 頑張る男子の姿 大好物なんです。 713 00:48:39,701 --> 00:48:41,686 あの状況で のんきな…。 714 00:48:41,686 --> 00:48:45,186 だって 怖くなかったんです 不思議と。 715 00:48:47,692 --> 00:48:51,263 厄介さんにメモを消されてる間➡ 716 00:48:51,263 --> 00:48:54,199 何だか安心してたんです 私。 717 00:48:54,199 --> 00:48:57,199 この人なら大丈夫 安心できるって。 718 00:49:00,705 --> 00:49:04,693 多分 この人は ずっと前から こうやって➡ 719 00:49:04,693 --> 00:49:08,213 私に優しくしてくれてたん だろうなぁって。 720 00:49:08,213 --> 00:49:10,213 何となく。 721 00:49:14,202 --> 00:49:16,187 お世話になりました。 722 00:49:16,187 --> 00:49:18,206 うちにいた5日間➡ 723 00:49:18,206 --> 00:49:20,692 私 随分ひどい態度も 取ったのでは? 724 00:49:20,692 --> 00:49:22,193 はい かなり。 725 00:49:22,193 --> 00:49:25,693 ハァ お恥ずかしい。 いえ お互いさまです。 726 00:49:27,198 --> 00:49:31,786 そうですね 私なんて 裸見られちゃったし…。 727 00:49:31,786 --> 00:49:33,786 忘れてください。 728 00:49:35,690 --> 00:49:37,192 努力します。 729 00:49:37,192 --> 00:49:39,711 今度 厄介さんのも見せてくださいね。 730 00:49:39,711 --> 00:49:41,212 えっ? 731 00:49:41,212 --> 00:49:42,714 冗談です。 732 00:49:42,714 --> 00:49:44,714 ハァ…。 733 00:49:45,717 --> 00:49:49,187 また ご入り用の際は ご連絡ください。 734 00:49:49,187 --> 00:49:52,257 依頼していいんですか? もちろん。 735 00:49:52,257 --> 00:49:56,757 それと… 寝室の天井のことですが。 736 00:50:00,715 --> 00:50:03,215 決して 口外しないように。 737 00:50:06,204 --> 00:50:07,706 おかえり。 738 00:50:07,706 --> 00:50:10,191 夕飯 食べる? 結構です。 739 00:50:10,191 --> 00:50:13,691 もう寝ます おやすみなさい。 うん。 740 00:50:24,205 --> 00:50:29,177 <あの時 見てしまった 見てはいけないもの> 741 00:50:29,177 --> 00:50:32,697 <朝 ベッドで目覚めた 今日子さんが➡ 742 00:50:32,697 --> 00:50:37,185 一番に目にするであろう メッセージ> 743 00:50:37,185 --> 00:50:39,738 <今日子さんの筆跡ではない➡ 744 00:50:39,738 --> 00:50:41,790 あの文字は?> 745 00:50:41,790 --> 00:50:45,790 誰が あれを? 分かりません。 746 00:50:47,178 --> 00:50:51,178 私は それを知りたくて 探偵をやっているのかも。 747 00:50:52,700 --> 00:50:58,189 でも 自分が探偵であることには しっくり来るんです。 748 00:50:58,189 --> 00:51:01,192 探偵 掟上今日子。 749 00:51:01,192 --> 00:51:03,228 その名前さえあれば➡ 750 00:51:03,228 --> 00:51:06,228 一日を生きて行けるような 気がする。 751 00:51:08,700 --> 00:51:10,700 おかしな話ですね。 752 00:51:14,189 --> 00:51:17,692 <この日 僕は ある決心をした> 753 00:51:17,692 --> 00:51:20,695 <探偵と依頼人という 関係からすれば➡ 754 00:51:20,695 --> 00:51:23,248 出過ぎたまねかもしれない> 755 00:51:23,248 --> 00:51:27,248 <でも僕は そうせずには いられなかった> 756 00:51:28,703 --> 00:51:32,190 <須永先生が朝美さんの人生を➡ 757 00:51:32,190 --> 00:51:35,193 人知れず紡ぎ続けたように> 758 00:51:35,193 --> 00:51:38,179 <今日子さんの儚い人生を➡ 759 00:51:38,179 --> 00:51:40,698 消えてしまう その日々を> 760 00:51:40,698 --> 00:51:42,717 <誰かが➡ 761 00:51:42,717 --> 00:51:44,752 僕が➡ 762 00:51:44,752 --> 00:51:46,287 この手で> 763 00:51:46,287 --> 00:52:04,787 ♬~