1 00:00:02,135 --> 00:00:12,212 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:12,212 --> 00:02:09,496 ♬~ 3 00:02:20,540 --> 00:02:22,542 (おきく)いらっしゃいま…。 4 00:02:24,878 --> 00:02:27,180 (お吉)あっ いらっしゃいま…。 5 00:02:31,551 --> 00:02:33,487 (るい)フッ…。 6 00:02:33,487 --> 00:02:42,195 ♬~ 7 00:02:42,195 --> 00:02:44,131 いらっしゃいませ。 8 00:02:44,131 --> 00:02:46,900 (東吾)すまねえが 空いてる部屋はないか? 9 00:02:46,900 --> 00:02:49,569 この人と 少しばかり話があるんだ。 10 00:02:49,569 --> 00:02:54,241 どうぞ 萩の間が 空いとりますから…。うん。 11 00:02:54,241 --> 00:02:56,176 (小声で)お吉さん。 12 00:02:56,176 --> 00:02:58,111 はい… どうぞ。 13 00:02:58,111 --> 00:03:01,515 (嘉助)アハハ…。 いらっしゃいまし。 14 00:03:01,515 --> 00:03:07,854 ♬~ 15 00:03:07,854 --> 00:03:09,856 お嬢さん…。 16 00:03:11,725 --> 00:03:14,194 お嬢さん いいんですか? 17 00:03:14,194 --> 00:03:16,863 いいって… 何が? 18 00:03:16,863 --> 00:03:21,201 (お吉)だって 若様 あんな女の方 お連れになるって…。 19 00:03:21,201 --> 00:03:27,874 お吉さん 余計なこと言うんじゃないよ。 御用の筋だ。 ねえ お嬢さん。 20 00:03:27,874 --> 00:03:31,545 今や 後から 畝の旦那が お見えになる手はずになってんだよ。 21 00:03:31,545 --> 00:03:33,880 ねえ。 エヘヘ…。 22 00:03:33,880 --> 00:03:40,587 ♬~ 23 00:03:45,225 --> 00:03:50,097 嘉助さん 畝の旦那なんか 来やしませんよ? 24 00:03:50,097 --> 00:03:55,235 若様は あの女と萩の間に入ったっきり 出てこないし…。 25 00:03:55,235 --> 00:03:57,170 こりゃ 一体 どうなってんだろうね? 26 00:03:57,170 --> 00:03:59,473 え~い! もう うるせえな! 27 00:04:01,041 --> 00:04:06,513 (おすず)夫婦になって 8年にもなるってのに➡ 28 00:04:06,513 --> 00:04:10,383 子供ができないせいなんでしょうかね? 29 00:04:10,383 --> 00:04:16,389 いまだに うちの人には どこか気が許せないでいるんですよ。 30 00:04:23,530 --> 00:04:30,537 夫婦でいながら こんなのって 本当に切ない…。 31 00:04:33,206 --> 00:04:36,877 分かってはいただけますまいね➡ 32 00:04:36,877 --> 00:04:39,179 東吾様には…。 33 00:04:56,563 --> 00:04:58,865 (突き刺す音) 34 00:05:09,142 --> 00:05:12,045 ⚟(おきく)いらっしゃいまし。 ⚟(お吉)まあ 旦那 お早いお着きで。➡ 35 00:05:12,045 --> 00:05:14,848 お待ち申し上げておりました。 おきくちゃん➡ 36 00:05:14,848 --> 00:05:17,517 柳の間に ご案内してちょうだいね。 ⚟(おきく)はい! 37 00:05:17,517 --> 00:05:19,452 ⚟(お吉)どうぞ。 お疲れさまでございました。➡ 38 00:05:19,452 --> 00:05:21,454 どうぞ どうぞ こちらです。 39 00:05:23,857 --> 00:05:29,196 (鐘の音) 40 00:05:29,196 --> 00:05:39,539 (すすり泣き) 41 00:05:39,539 --> 00:05:44,878 (鐘の音) 42 00:05:44,878 --> 00:05:53,186 (泣き声) 43 00:05:54,888 --> 00:05:58,225 (鐘の音) 44 00:05:58,225 --> 00:06:00,827 (お吉)お嬢さん どうします? 45 00:06:00,827 --> 00:06:04,497 萩の間も 夕げのお膳を出す時刻なんですけどね。 46 00:06:04,497 --> 00:06:07,400 ああ もう そんなになるのねえ。 47 00:06:07,400 --> 00:06:10,170 何のお話をしてらっしゃるんだか 知りませんけど➡ 48 00:06:10,170 --> 00:06:14,040 随分 時間がかかるじゃありませんか。 ねえ。 49 00:06:14,040 --> 00:06:16,042 (鐘の音) 50 00:06:16,042 --> 00:06:19,179 行灯にだって 灯を入れなくちゃいけないっていうのに➡ 51 00:06:19,179 --> 00:06:22,515 私 何か 声をかけにくくって…。 52 00:06:22,515 --> 00:06:25,552 えっ まだ 灯も入れてないの? 53 00:06:25,552 --> 00:06:28,855 若様がね ちょっと お手を 鳴らしてくだされば よろしいんですよ。 54 00:06:28,855 --> 00:06:32,192 あの… あっしが ちょっと お部屋まで行って➡ 55 00:06:32,192 --> 00:06:34,861 なにしてきましょうか? いいえ 私が行きます。 56 00:06:34,861 --> 00:06:37,197 お膳に 何か ご注文がおありかもしれないし➡ 57 00:06:37,197 --> 00:06:40,100 こういうことは 女房の役目…。 58 00:06:40,100 --> 00:06:43,103 ハハ… 女房…。 59 00:06:47,207 --> 00:06:49,542 う~ん…。 はあ~…。 60 00:06:49,542 --> 00:07:20,540 ♬~ 61 00:07:22,175 --> 00:07:25,078 あら お帰りでございますか? 62 00:07:25,078 --> 00:07:28,048 ただいま お膳の用意をと 思っておりましたのに。 63 00:07:28,048 --> 00:07:31,351 出直してくる。 やっかいをかけたな。 64 00:07:42,195 --> 00:08:08,888 ♬~ 65 00:08:12,492 --> 00:08:18,164 ねえ 番頭さん。ああ? どういう女だろうね。何? 66 00:08:18,164 --> 00:08:21,835 この間 若様が お連れになった女ですよ。 67 00:08:21,835 --> 00:08:24,504 まあ どっか 大店の おかみさんってとこだろうな。 68 00:08:24,504 --> 00:08:26,840 そりゃ分かってますけどさ…➡ 69 00:08:26,840 --> 00:08:30,510 人のおかみさんにしちゃあ 随分 大胆すぎやしませんか? 70 00:08:30,510 --> 00:08:33,413 あからさまに 若様のこと 好きって顔で…。➡ 71 00:08:33,413 --> 00:08:35,382 あきれるよ 全く。 72 00:08:35,382 --> 00:08:38,184 お前さんが そこで怒ったって 始まらねえだろう。 73 00:08:38,184 --> 00:08:40,520 でも お嬢さん お気の毒に➡ 74 00:08:40,520 --> 00:08:44,391 あれから ずっと 眠れない晩が続いてるんですよ。 75 00:08:44,391 --> 00:08:49,195 いや 俺も 若様いらしたら 聞いてみようとは思ってるんだがな。 76 00:08:49,195 --> 00:08:52,532 あれきり お見えにならねえから 聞きようもありゃしねえ。 77 00:08:52,532 --> 00:08:57,404 ねえ… だから 私 もう 本当に 気がもめるんだよ。 78 00:08:57,404 --> 00:09:02,142 あらっ 来たよ! ええっ?あの女…。 79 00:09:02,142 --> 00:09:19,692 ♬~ 80 00:09:19,692 --> 00:09:23,163 まことに恐れ入りますが➡ 81 00:09:23,163 --> 00:09:29,836 これを 東吾様に お届けくださいませんでしょうか。 82 00:09:29,836 --> 00:09:36,543 お屋敷へは 私 伺いかねますので。 すいませんが…。 83 00:09:38,511 --> 00:09:41,848 失礼ですが… どなた様で? 84 00:09:41,848 --> 00:09:46,519 これをお届けくだされば 東吾様には お分かりになると思います。 85 00:09:46,519 --> 00:09:48,855 さいですか…。 86 00:09:48,855 --> 00:09:53,560 くれぐれも よろしく申し上げてくださいまし。 87 00:09:59,199 --> 00:10:03,503 かしこまりました。 すぐに お届け申します。 88 00:10:13,213 --> 00:10:16,549 お嬢さん 人がよすぎますよ。 89 00:10:16,549 --> 00:10:20,420 何ですか こんな手紙! 恋文か 呼び出し状か。 90 00:10:20,420 --> 00:10:22,889 こんなものをね 若様に届けるなんて…。 91 00:10:22,889 --> 00:10:24,824 いけませんよ。 92 00:10:24,824 --> 00:10:30,230 いいから 嘉助に言って 届けてもらってちょうだい。 93 00:10:30,230 --> 00:10:32,532 そうですか…? 94 00:10:38,104 --> 00:10:40,106 嘉助さん…。 95 00:10:43,243 --> 00:10:45,578 (男)痛ぇ! 離せ! 痛ぇ…。➡ 96 00:10:45,578 --> 00:10:47,914 この~ いっ…! 97 00:10:47,914 --> 00:10:51,584 (嘉助)おい! 誰に頼まれたんだ! (男)苦しいよ! 98 00:10:51,584 --> 00:10:53,520 苦しかったら 早いとこ吐いちまえ! 99 00:10:53,520 --> 00:10:56,456 誰に あのおかみさんの後をつけろと 頼まれた? 100 00:10:56,456 --> 00:11:00,193 うっ! ご亭主に頼まれたのだ。 101 00:11:00,193 --> 00:11:04,063 ご亭主だと!? あのおかみさんのか? 102 00:11:04,063 --> 00:11:08,067 役者だの芸人だのと まあ いろいろと つきあいの多い人だから➡ 103 00:11:08,067 --> 00:11:12,205 ご亭主の大和屋伊平さんが やきもち やいて…。 ヒヒッ…。 104 00:11:12,205 --> 00:11:17,076 「後をつけてみて」と そう言ったのよ! 105 00:11:17,076 --> 00:11:21,548 だんまりで抜け出しちまって 相すいません。 106 00:11:21,548 --> 00:11:25,418 あの人の後をつけてったのね。 へい。 107 00:11:25,418 --> 00:11:28,421 どこの誰だか 分かった? へい。 108 00:11:28,421 --> 00:11:34,127 蔵前の札差で大和屋伊平って人の おかみさんで おすずさんってえ方です。 109 00:11:34,127 --> 00:11:36,896 札差のおかみさん? へい。 110 00:11:36,896 --> 00:11:41,568 おすずさんは 大和屋の 家付きのお嬢さんだった人で➡ 111 00:11:41,568 --> 00:11:47,440 旦那の伊平さんは お旗本のご次男が 養子にいらしたんだって話でした。 112 00:11:47,440 --> 00:11:54,147 ♬~ 113 00:11:54,147 --> 00:11:57,116 (伊平)お帰り。 ただいま。 114 00:11:57,116 --> 00:11:59,586 (伊平)今日は早かったな。 115 00:11:59,586 --> 00:12:09,195 ♬~ 116 00:12:09,195 --> 00:12:13,533 それで おすずさんと東吾様とは どういう? 117 00:12:13,533 --> 00:12:16,869 さあ そいつまでは ちょっと…。 118 00:12:16,869 --> 00:12:18,871 そう…。 119 00:12:22,542 --> 00:12:24,477 ⚟(善助)若先生。 120 00:12:24,477 --> 00:12:27,880 おう 何だい 善さん。 (善助)あの~ 八丁堀の旦那が➡ 121 00:12:27,880 --> 00:12:30,783 若先生に会いたいと言って…。 ああ 源さんだな。 122 00:12:30,783 --> 00:12:33,753 いや 違います。 違う?ええ。 123 00:12:33,753 --> 00:12:39,225 八代十兵衛とか おっしゃって 初めて お顔を見る旦那ですよ。 124 00:12:39,225 --> 00:12:42,128 何だろうな? 125 00:12:42,128 --> 00:12:44,097 神林東吾ですが…。 126 00:12:44,097 --> 00:12:48,101 八代です。 藤吉と申します。 127 00:12:49,869 --> 00:12:52,238 こんな所まで 何ですか? 128 00:12:52,238 --> 00:12:58,911 早速ですが 昨夜は どこにおいでだったか お答えいただけませんでしょうか。 129 00:12:58,911 --> 00:13:01,114 うん? 130 00:13:08,521 --> 00:13:11,424 一体 何のお調べなんですか? 131 00:13:11,424 --> 00:13:14,394 ともかく お答え願えませんか。 132 00:13:14,394 --> 00:13:17,864 ゆうべは 兄が 夏風邪で伏せっておりましたので➡ 133 00:13:17,864 --> 00:13:21,534 どこへも行かずに 八丁堀におりました。 134 00:13:21,534 --> 00:13:23,469 間違いはありますまいな? 135 00:13:23,469 --> 00:13:29,876 吟味与力 神林通之進が証人だから ハッハッハ… 間違いはありませんよ。 136 00:13:29,876 --> 00:13:33,546 そうですか。 いや 失礼しました。 137 00:13:33,546 --> 00:13:37,216 しかし 何なんですか? 138 00:13:37,216 --> 00:13:42,889 蔵前の大和屋伊平の女房 おすずというのを ご存じですな? 139 00:13:42,889 --> 00:13:48,227 ええ 知っておりますが… おすず殿に 何かあったんですか? 140 00:13:48,227 --> 00:13:53,099 昨夜 王子で殺されたんです。 141 00:13:53,099 --> 00:14:05,511 ♬~ 142 00:14:05,511 --> 00:14:07,447 (長助)若様! ちょ… ちょっと待っておくんなはれ。 143 00:14:07,447 --> 00:14:09,382 おう 長助か。 王子 行きはりまんねやろ? 144 00:14:09,382 --> 00:14:11,384 お供させてもらいます。 源さんの言いつけか? 145 00:14:11,384 --> 00:14:13,853 へえ そうだんねや。 畝の旦那はね➡ 146 00:14:13,853 --> 00:14:16,522 若様が関わり合いのある人が 殺されたちゅうことでね➡ 147 00:14:16,522 --> 00:14:21,194 神林の旦那に「遠慮してくれ」ちゅうことで 外されはった。 148 00:14:21,194 --> 00:14:23,129 もう 兄上のお耳にも…。 149 00:14:23,129 --> 00:14:25,064 へえ。 で 代わりに このわてが お供させてもらいます。 150 00:14:25,064 --> 00:14:27,066 頼む。 はい! 151 00:14:42,482 --> 00:14:44,417 (徳松)来た。 152 00:14:44,417 --> 00:14:47,420 おっ 徳松! お前 何や? 153 00:14:47,420 --> 00:14:49,555 (徳松)親父の言いつけで お出迎えに…。 154 00:14:49,555 --> 00:14:51,491 あっ ご苦労さん。 誰だい? 155 00:14:51,491 --> 00:14:54,427 あの~ 八代の旦那と 狸穴の道場の方へ➡ 156 00:14:54,427 --> 00:14:57,230 藤吉っちゅう わしらと同業のが行っとりまっしゃろ。 157 00:14:57,230 --> 00:14:59,899 そこのせがれで 徳松ち言いますねん。 158 00:14:59,899 --> 00:15:02,168 そうか 神林だ。 159 00:15:02,168 --> 00:15:04,504 ねえ 旦那 一服していきまひょな。 160 00:15:04,504 --> 00:15:07,407 王子まで もう 大したことないのやろ? へい。➡ 161 00:15:07,407 --> 00:15:10,409 ところてん2つと お茶2つ。 ⚟は~い。 162 00:15:16,849 --> 00:15:20,186 しかし 不思議だな。 何がだす? 163 00:15:20,186 --> 00:15:24,524 どうして 俺のことが こんなに早く 八丁堀の耳に入ったのか解せない。 164 00:15:24,524 --> 00:15:27,193 そりゃあ 大和屋の旦那が 言ったからだよ。 165 00:15:27,193 --> 00:15:30,096 大和屋伊平が? 何を言ったというんだ? 166 00:15:30,096 --> 00:15:34,534 「このところ ちょくちょく 殺されたおかみさんが 外で会ってた。➡ 167 00:15:34,534 --> 00:15:38,204 手紙のやり取りもあったらしい」って…。 168 00:15:38,204 --> 00:15:41,541 伊平が そんなことを言ったのか。 ほんまでっか? 169 00:15:41,541 --> 00:15:43,876 ハッハ 冗談じゃない。 170 00:15:43,876 --> 00:15:45,812 外で会ったのは 5日前。 171 00:15:45,812 --> 00:15:50,216 8年ぶりに たまたま出会って かわせみへ行った。 172 00:15:50,216 --> 00:15:53,886 どうしても 俺に話したいことがあると おすず殿が言ったから…。 173 00:15:53,886 --> 00:15:55,888 会ったのは それっきりだ。 174 00:15:58,758 --> 00:16:01,494 手紙は これも たったの一通。 175 00:16:01,494 --> 00:16:03,429 おすず殿が 自分で かわせみへ持ってきて➡ 176 00:16:03,429 --> 00:16:06,365 それを お吉が 八丁堀の屋敷へ届けてくれた。 177 00:16:06,365 --> 00:16:08,367 つい3日前のことだ。 178 00:16:08,367 --> 00:16:12,839 それを 前から なんぞあったみたいに 大和屋伊平が言うてるちゅうの➡ 179 00:16:12,839 --> 00:16:15,508 これも おかしな話でおまんな。 180 00:16:15,508 --> 00:16:18,177 (徳松)8年ぶりって言いましたね。 うん。 181 00:16:18,177 --> 00:16:24,183 8年も前から お知り合いなんですか? 若様と 殺された大和屋のおかみさん。 182 00:16:28,821 --> 00:16:31,724 どういう お知り合いなんです? 徳松! 183 00:16:31,724 --> 00:16:35,728 いや 古い話だ。 今更 隠しておくこともねえ。 184 00:16:35,728 --> 00:16:39,866 8年前に 俺は おすず殿に見初められたらしいんだ。 185 00:16:39,866 --> 00:16:42,768 あら また お安くない話でんな。 186 00:16:42,768 --> 00:16:45,538 まだ 先代の大和屋が生きていて➡ 187 00:16:45,538 --> 00:16:48,441 俺を大和屋の養子にくれぬかと 兄上に言ってきたそうだ。 188 00:16:48,441 --> 00:16:53,880 へえ~ それで 若様に断られて 今の旦那さんを お旗本のうちから…。 189 00:16:53,880 --> 00:16:56,215 だろうな。 はあ~。 190 00:16:56,215 --> 00:17:00,086 武部左京ちゅうお方の 弟やそうでおまんな 伊平いうの。 191 00:17:00,086 --> 00:17:03,823 何や あの おかみさんとは 年が一回りも違うちゅうことですけど。 192 00:17:03,823 --> 00:17:07,159 腹の ごっつい実直なお人やと 聞いております。 193 00:17:07,159 --> 00:17:09,095 伊平という人は知らないが➡ 194 00:17:09,095 --> 00:17:13,032 兄の左京とは 九段の斎藤道場で 一度出会ったことがある。 195 00:17:13,032 --> 00:17:16,168 今どきの旗本には珍しい使い手だった。 196 00:17:16,168 --> 00:17:20,039 8年ぶりで会って 何 話したんです? 197 00:17:20,039 --> 00:17:22,508 お前 失礼なこと聞くんやないど! ほんまに もう! 198 00:17:22,508 --> 00:17:24,443 まあ いい。 (長助)このバカ。 199 00:17:24,443 --> 00:17:27,179 おすずが どうしても聞いてほしいと 言ったわりには➡ 200 00:17:27,179 --> 00:17:32,685 とりとめのない話しかしなかった。 親が死んで心細いとか 商売の話とか…。 201 00:17:32,685 --> 00:17:36,188 札差のおかみさんが 商売の話なんかしたんですかい? 202 00:17:36,188 --> 00:17:39,859 あの人は 家付きの娘だ。 先代が死んだあとも➡ 203 00:17:39,859 --> 00:17:43,529 商売は 亭主の伊平に任せないで おすずさんが取りしきっていたらしい。 204 00:17:43,529 --> 00:17:46,832 へえ~ えらい やり手やったわけでんな。 205 00:17:52,538 --> 00:17:56,542 (おすず)あなたに来ていただければ よかったんです。 206 00:18:01,147 --> 00:18:07,853 あなたのほか どんな人も 私は 好きになれなかった…。 207 00:18:12,491 --> 00:18:16,162 (徳松)手紙には どんなことが書いてあったんです? 208 00:18:16,162 --> 00:18:21,033 「妹のお産が近いから 安産のお札を受けに 王子権現に参詣したい。➡ 209 00:18:21,033 --> 00:18:26,505 近頃 評判の不動の滝に打たれて 頭痛や 肩の凝りも治してきたいと思うから➡ 210 00:18:26,505 --> 00:18:30,376 2~3日は 江戸を留守にするが 帰ったら 一度 ゆっくり会って➡ 211 00:18:30,376 --> 00:18:35,514 この前 話しそびれた大事な話も 是非 聞いてもらいたいから」と。 212 00:18:35,514 --> 00:18:37,450 まあ そんなことが書いてあったな。 213 00:18:37,450 --> 00:18:39,385 (徳松)じゃあ おかみさんが 王子へ来るのは知っていたんだ。 214 00:18:39,385 --> 00:18:43,089 お前 何を言うてんねん このガキは。 そうでしょ! 違いますか? 215 00:18:46,158 --> 00:18:51,464 (滝の音) 216 00:18:58,204 --> 00:19:02,074 おすず殿も ああやって滝に打たれていたのか。 217 00:19:02,074 --> 00:19:04,477 (長助)ああ… 2遍も 打たれたそうでございます。➡ 218 00:19:04,477 --> 00:19:08,814 旦那の方は 1度打たれてから 2度目は 「もう わしはええ」ちゅうてね➡ 219 00:19:08,814 --> 00:19:11,484 宿の方で 横になって 休んではったそうでおます。 220 00:19:11,484 --> 00:19:13,419 王子へは 1人で来たんじゃなかったのかい。 221 00:19:13,419 --> 00:19:16,989 (長助)旦那と 店の手代の… おい 名前 何ちゅうた? ほれ。 222 00:19:16,989 --> 00:19:19,492 (徳松)佐吉! (長助)あっ 佐吉。 この3人で➡ 223 00:19:19,492 --> 00:19:21,427 朝 まだ暗いうちに 蔵前をたって➡ 224 00:19:21,427 --> 00:19:24,830 昼過ぎには もう 王子の方へ 着いたっちゅうことでおます。 225 00:19:24,830 --> 00:19:28,501 手代の佐吉は ずっと 大和屋夫婦と一緒だったのか? 226 00:19:28,501 --> 00:19:30,436 (長助)さあ それは…。 227 00:19:30,436 --> 00:19:35,374 権現様へお参りして 安産のお札を 受けるまでは 佐吉も一緒だったけど➡ 228 00:19:35,374 --> 00:19:39,512 2人が滝に打たれに行く時は 別になってたそうですよ。 229 00:19:39,512 --> 00:19:41,447 どこへ行ったと言うんだい? 230 00:19:41,447 --> 00:19:45,184 (徳松)扇屋。 小料理屋ですよ。 231 00:19:45,184 --> 00:19:48,854 大和屋… その夫婦は 足だまりにしようと思うてね➡ 232 00:19:48,854 --> 00:19:51,757 そこへ泊まるつもりやったんと 違いますか? 233 00:19:51,757 --> 00:19:55,194 佐吉は 扇屋へ何しに行ったんだい。 234 00:19:55,194 --> 00:19:58,864 「安産のお札 水にぬらしちゃ 罰が当たる」と➡ 235 00:19:58,864 --> 00:20:00,800 大和屋の旦那が言いだして➡ 236 00:20:00,800 --> 00:20:04,203 佐吉が 扇屋へ お札を置きに帰ったんです。 237 00:20:04,203 --> 00:20:14,213 (滝の音) 238 00:20:14,213 --> 00:20:18,084 あっ 若様 あの おすずさんが殺された弁天さん➡ 239 00:20:18,084 --> 00:20:20,386 ご覧になりまっか? うん。 240 00:20:29,061 --> 00:20:39,772 (水の滴る音) 241 00:20:39,772 --> 00:20:44,076 大和屋のおかみさんは ここで殺されてたそうだよ。 242 00:21:00,526 --> 00:21:05,865 あおむけに 足を入り口の方へ向けて 倒れてたってさ。 243 00:21:05,865 --> 00:21:09,568 あおむけに 足を入り口の方か…。 244 00:21:11,737 --> 00:21:14,206 (徳松)大和屋の連中や宿の者が➡ 245 00:21:14,206 --> 00:21:17,877 おかみさんの死骸を運ぶ時に そこら中 踏み散らかしてったから➡ 246 00:21:17,877 --> 00:21:20,546 どう調べても無駄だって➡ 247 00:21:20,546 --> 00:21:22,848 親父が言ってたぜ。 248 00:21:25,885 --> 00:21:29,755 (長助)若様。うん? 何か見つかりました? 249 00:21:29,755 --> 00:21:34,226 いや… 弁天様を拝んでいたんだよ。 250 00:21:34,226 --> 00:21:38,097 かわせみの弁天様も やきもちがきついから➡ 251 00:21:38,097 --> 00:21:41,600 罰の当たらねえようにってね。 ハハハハ…。 252 00:21:48,240 --> 00:21:50,910 お嬢さん ちょっと これ見てください…。 253 00:21:50,910 --> 00:21:53,813 な~に? 瓦版じゃないの。 254 00:21:53,813 --> 00:21:57,583 大和屋のおかみさん おすずさんって方が 殺されたって書いてありますよ。 255 00:21:57,583 --> 00:21:59,919 ええっ!? それだけじゃないんですよ。 256 00:21:59,919 --> 00:22:03,522 おすずさんには間夫がいて その間夫のせいで殺されたんだろうって。 257 00:22:03,522 --> 00:22:06,859 それが 八丁堀の…。 東吾様のお名前が出てるっていうの? 258 00:22:06,859 --> 00:22:08,794 いえいえ そうは書いてはありませんけどね➡ 259 00:22:08,794 --> 00:22:13,098 八丁堀に関わりがあるお方と書いてあれば もしかしたら…。 260 00:22:15,868 --> 00:22:19,205 あ… お嬢さん でたらめですよ。➡ 261 00:22:19,205 --> 00:22:23,075 気… 気にすることはありませんよ。 ねえ お嬢さん あの…。 262 00:22:23,075 --> 00:22:28,347 あっ 若様! こっから 涼しい風が吹いてきまっせ! 263 00:22:28,347 --> 00:22:32,551 ねえ。 あの~ 冷たい麦茶でも もうてきますわ。 264 00:22:32,551 --> 00:22:34,853 俺が行こうか? ああ かまへん かまへん。 265 00:22:36,889 --> 00:22:40,226 徳松。 はい? 266 00:22:40,226 --> 00:22:43,562 殺された おすずは どんな身なりをしていたか➡ 267 00:22:43,562 --> 00:22:45,497 聞いてねえかい? 268 00:22:45,497 --> 00:22:50,436 着ていたのは 今年 江戸ではやった おっこち絞りという大柄の浴衣で➡ 269 00:22:50,436 --> 00:22:55,174 利久茶の帯を締めて ぬれた髪をといて さばいていたっていうから➡ 270 00:22:55,174 --> 00:22:58,577 滝に打たれたあとなんでしょうね。 271 00:22:58,577 --> 00:23:03,849 恐ろしく派手ななりをして 殺されたもんだなあ。えっ? 272 00:23:03,849 --> 00:23:07,720 うそにも お参り信心に来るのに➡ 273 00:23:07,720 --> 00:23:11,023 そんな派手ななりをした人は あんまりいねえよ。 274 00:23:12,858 --> 00:23:17,196 (徳松)家付きの娘で 派手な人だったっていうから…。➡ 275 00:23:17,196 --> 00:23:22,501 ハッ… これは 俺より 若様の方が よくご存じだ。 276 00:23:24,069 --> 00:23:27,206 しかし それだけ人目につくなりをした おすずなら➡ 277 00:23:27,206 --> 00:23:31,076 岩屋へ行って殺されるまでの足取り 分かるだろう。 278 00:23:31,076 --> 00:23:33,879 親父から聞いてることがあったら 教えてくれ。 279 00:23:33,879 --> 00:23:37,583 (長助)はい! よう冷えてますわ。 どうぞ。 280 00:23:44,223 --> 00:23:47,126 大和屋夫婦が ここへ来て➡ 281 00:23:47,126 --> 00:23:49,561 ここと あっちとに別れて 入っていくのを➡ 282 00:23:49,561 --> 00:23:52,464 不動堂の納所坊主が 確かに見たと言ってます。 283 00:23:52,464 --> 00:23:56,235 女の方の宿坊で おっこち絞りを着た人が➡ 284 00:23:56,235 --> 00:24:00,506 隅で髪をといて 行衣に着替えてるのを 見てる者もいました。 285 00:24:00,506 --> 00:24:04,376 (長助)へえ~。 なら 滝に打たれて戻ってきて➡ 286 00:24:04,376 --> 00:24:09,181 で 行衣を絞りの浴衣に着替えてから 弁天さんに行ったことになりまんな。 287 00:24:09,181 --> 00:24:12,084 弁天様の近くじゃ どうなんだい。 おすずを見た者はいるのか? 288 00:24:12,084 --> 00:24:14,787 いえ。 まだ いないそうですよ。 289 00:24:17,056 --> 00:24:19,191  心の声 おっこち絞りか…。➡ 290 00:24:19,191 --> 00:24:23,062 わざと 目につく身なりをしていたとしか 思えねえな。➡ 291 00:24:23,062 --> 00:24:25,364 どうしてだ…? 292 00:24:33,205 --> 00:24:37,076 (通之進)おい 東吾。 あっ… これは 兄上。 293 00:24:37,076 --> 00:24:41,880 (通之進)どうした 色男。 ええ? いやに さえねえ顔してるじゃねえか。 294 00:24:41,880 --> 00:24:44,550 あ…。 ハッハッハッハ。 295 00:24:44,550 --> 00:24:50,889 ところで 源さんにな 内々で調べてもらったんだが…➡ 296 00:24:50,889 --> 00:24:55,561 伊平が大和屋へ養子に行ってから 今日までの ざっと8年間に➡ 297 00:24:55,561 --> 00:25:04,169 数千両もの金をだな 伊平の実家の武部が 大和屋から借り受けてる。 298 00:25:04,169 --> 00:25:07,506 その金 何に要ったんです? 299 00:25:07,506 --> 00:25:13,379 うん… 伊平の兄の武部左京 これは おめえも知ってのとおり➡ 300 00:25:13,379 --> 00:25:19,118 旗本の中でも指折りの使い手だ。 それが いまだに お役に付けねえでいる。 301 00:25:19,118 --> 00:25:22,521 まあ できる男だけに なんとかして 世に出たい➡ 302 00:25:22,521 --> 00:25:25,424 そういう思いも ひとしおなんだろう。 303 00:25:25,424 --> 00:25:31,697 ここ何年もの間 組頭 上役連中に まあ 相当 派手な供応もしてるという。 304 00:25:31,697 --> 00:25:36,201 それ おめえ 分不相応な金も要るだろうよ。 305 00:25:36,201 --> 00:25:40,539 上役へ 賂の金ですか…。 306 00:25:40,539 --> 00:25:46,211 「弟が札差の養子になったからこそ あんな派手なまねもできるんだ」。 307 00:25:46,211 --> 00:25:53,886 そう言ってな 小普請組の連中も まあ随分と羨ましがってるそうだ。 308 00:25:53,886 --> 00:25:57,222 しかし…。 ああ 何だい? 309 00:25:57,222 --> 00:26:01,093 大和屋の銭勘定は おすずが 伊平に任せず➡ 310 00:26:01,093 --> 00:26:03,162 自分で 一切やっていたはずですが…。 311 00:26:03,162 --> 00:26:08,500 うん… まあ そこいらをな ちょいと つっつけば…➡ 312 00:26:08,500 --> 00:26:11,503 何か出るかもしれんな。 313 00:26:14,840 --> 00:26:17,176 (嘉助)いらっしゃいまし。 314 00:26:17,176 --> 00:26:19,845 (弥三郎)これはこれは…。 おかみさん おいででしょうか? 315 00:26:19,845 --> 00:26:21,780 へえへえ ただいま。 316 00:26:21,780 --> 00:26:26,185 はい。 何でございましょう? 317 00:26:26,185 --> 00:26:30,189 (お絹)神林様に会わせてくださいまし。 ええ? 318 00:26:31,857 --> 00:26:36,195 (お絹)私 大和屋の殺されました すずの妹 お絹と申します。 319 00:26:36,195 --> 00:26:39,865 夫の大口屋弥三郎と申します。 320 00:26:39,865 --> 00:26:43,735 大和屋とは 同じ蔵前で 札差をやっております。 321 00:26:43,735 --> 00:26:47,739 そうでしたか あなたが…。 では おすずさんは➡ 322 00:26:47,739 --> 00:26:50,876 あなたのおなかのお子さんの 安産のお札を受けに➡ 323 00:26:50,876 --> 00:26:53,212 王子へ行ったんですね。 (お絹)はい。 324 00:26:53,212 --> 00:26:58,083 義姉は 「おなかの子が生まれたら 大和屋の養子にしたい」と➡ 325 00:26:58,083 --> 00:27:00,819 こう申しておりまして…。 はい。 326 00:27:00,819 --> 00:27:06,492 「安産のお札をもらってきてあげる」 そう 自分から言いだして➡ 327 00:27:06,492 --> 00:27:10,362 あんなに元気に 出かけてまいりましたのに…。 328 00:27:10,362 --> 00:27:16,502 これ お絹や さあ 泣いていないで お前の見た夢の話を➡ 329 00:27:16,502 --> 00:27:20,372 神林様に お話し申し上げなさい。 夢の話? 330 00:27:20,372 --> 00:27:25,511 (お絹)私 妙な夢を 2日も続けて見たんです。 331 00:27:25,511 --> 00:27:29,848 死んだ姉が 着物だか帯だか 品物は よく分からないんですが➡ 332 00:27:29,848 --> 00:27:32,184 せっせと糸をほどいているんです。 333 00:27:32,184 --> 00:27:35,087 なるほど そいつは妙な夢だな。 はあ。 334 00:27:35,087 --> 00:27:40,859 その話を これが 義姉の初七日の法事の席でいたしまして➡ 335 00:27:40,859 --> 00:27:43,529 それから2日ばかりたって➡ 336 00:27:43,529 --> 00:27:47,399 いずれ 形見分けということに なるのだろうからと➡ 337 00:27:47,399 --> 00:27:51,870 これが また 大和屋へ出かけていきました。 338 00:27:51,870 --> 00:27:57,743 (お絹)そこは 姉 妹の心安さで 姉さんのたんす 開けてみたんです。 339 00:27:57,743 --> 00:27:59,745 どうしたんです? 340 00:27:59,745 --> 00:28:03,482 (お絹)たんすの中の着物も帯も バラバラに ほどいてあったんです。 341 00:28:03,482 --> 00:28:05,417 ええ…? 342 00:28:05,417 --> 00:28:08,153 (お絹)「義兄さん。 これ どうしたんです?」って聞くと➡ 343 00:28:08,153 --> 00:28:10,822 「いずれ 形見分けっていうことになると思って➡ 344 00:28:10,822 --> 00:28:14,693 洗い張りに出そうと ほどいたんだ」って 義兄さん そう言うんです。➡ 345 00:28:14,693 --> 00:28:16,695 理屈は通ってるようでも➡ 346 00:28:16,695 --> 00:28:19,831 なにも そんなこと 義兄さんが 自分ですることはない。➡ 347 00:28:19,831 --> 00:28:21,767 変だなって思いました。 348 00:28:21,767 --> 00:28:23,702 待ってくれ。 349 00:28:23,702 --> 00:28:27,706 その着物や帯は 伊平が 自分で ほどいたというんですかい? 350 00:28:27,706 --> 00:28:33,378 (お絹)はい 自分で。 変な話でございましょう。 ねえ? 351 00:28:33,378 --> 00:28:38,183 いや… まだ 変なこともございます。 何です? 352 00:28:38,183 --> 00:28:41,520 (弥三郎)いや 大和屋の商売のことは➡ 353 00:28:41,520 --> 00:28:45,390 亡くなった義姉が 一切 取りしきっていたわけでございますが➡ 354 00:28:45,390 --> 00:28:49,394 それを 今度は 伊平さんに 渡すということになるんですが➡ 355 00:28:49,394 --> 00:28:51,863 渡す前に 親類が寄り集まって➡ 356 00:28:51,863 --> 00:28:55,534 大和屋の帳面を 調べようということになりました。 357 00:28:55,534 --> 00:28:57,869 うん。 (弥三郎)それが 調べてみて➡ 358 00:28:57,869 --> 00:29:00,772 どうにも 腑に落ちないことがございました。 359 00:29:00,772 --> 00:29:06,478 伊平さんの実家の武部様へ お貸ししてある金の証文が➡ 360 00:29:06,478 --> 00:29:09,815 ただの一枚も 見つからないんでございますよ。 361 00:29:09,815 --> 00:29:14,486 姉は 私にも 「武部様には 随分 お貸ししてあるんだ」って➡ 362 00:29:14,486 --> 00:29:16,421 よく言っていました。 へえへえ。 363 00:29:16,421 --> 00:29:20,158 手前も その場に立ち会っていたことも ございました。 364 00:29:20,158 --> 00:29:23,495 まあ いくら貸したか 金額までは存じませぬが➡ 365 00:29:23,495 --> 00:29:31,169 ただ 一枚も証文がないというのは こりゃあ どう考えても不思議と…。➡ 366 00:29:31,169 --> 00:29:37,843 いや 同業の手前どもが あまり内情にまで 口出しするのは なんでございますが…。 367 00:29:37,843 --> 00:29:40,178 私が生まれたうちであり➡ 368 00:29:40,178 --> 00:29:43,849 今日まで 姉が大切に守ってきた 大和屋の店だけに…。 369 00:29:43,849 --> 00:29:45,784 そう。 そうなんだよ!➡ 370 00:29:45,784 --> 00:29:48,720 あっ! これはこれは どうも大事いたしまして…。➡ 371 00:29:48,720 --> 00:29:50,722 いや そうなんでございます。➡ 372 00:29:50,722 --> 00:29:53,525 何としても潰したくはない➡ 373 00:29:53,525 --> 00:29:55,861 それだけでございます。➡ 374 00:29:55,861 --> 00:30:00,732 いや 手前どもが 大和屋の身代に 欲を出しているように思われましては➡ 375 00:30:00,732 --> 00:30:04,436 これは心外でございます。 はい。 376 00:30:06,505 --> 00:30:10,409 お絹さんのご亭主 妙に力んでましたね。 377 00:30:10,409 --> 00:30:14,880 「大和屋の身代に欲を出しているように 思われるのは心外だ」とな。 378 00:30:14,880 --> 00:30:19,217 でも 大口屋弥三郎さんっていえば 蔵前の札差仲間では➡ 379 00:30:19,217 --> 00:30:22,888 大和屋さんに負けないだけのものを 持ってるって お話ですよ。 380 00:30:22,888 --> 00:30:25,791 持ちゃあ持つほど 欲は出るもんだって言うぜ。 381 00:30:25,791 --> 00:30:28,226 じゃあ 嘉助さんは あの2人が おかしいって言うんですか? 382 00:30:28,226 --> 00:30:30,162 そうは言っちゃいねえ。 383 00:30:30,162 --> 00:30:32,097 証文は どうしたんでしょう? 384 00:30:32,097 --> 00:30:34,900 旦那の伊平が隠したんじゃありませんか? えっ? 385 00:30:34,900 --> 00:30:38,236 一枚残らず隠しちまえば かえって 人にうたぐられる…。 386 00:30:38,236 --> 00:30:40,572 そのぐらいのことも 分からねえ男じゃねえよ。 387 00:30:40,572 --> 00:30:44,443 そうですか。 私が言うことに いちいち逆らってればいいわ。 388 00:30:44,443 --> 00:30:47,446 けっ! おすずさんだわ。えっ? 389 00:30:47,446 --> 00:30:52,184 証文を隠したのは おすずさんですよ。 だから それを見つけようと思って➡ 390 00:30:52,184 --> 00:30:55,587 伊平が 自分で着物や帯を バラバラに ほどいてみた。 391 00:30:55,587 --> 00:30:59,458 なるほど。 そんなら 話の筋は通りまさあ。 392 00:30:59,458 --> 00:31:02,194 ⚟(おきく)番頭さん! えっ? 何だ。 393 00:31:02,194 --> 00:31:06,865 長助さんが 若様に。 うん。 394 00:31:06,865 --> 00:31:09,201 お… おりました! おりました! 395 00:31:09,201 --> 00:31:11,536 武部左京に 妾がおりました! 396 00:31:11,536 --> 00:31:13,472 いたか! (長助)はい! 397 00:31:13,472 --> 00:31:15,874 小石川 白山下に 黒板塀 見越しの松➡ 398 00:31:15,874 --> 00:31:18,777 そら おあつらえを絵に描いたような うち 買いましてねえ➡ 399 00:31:18,777 --> 00:31:21,546 おさきっちゅう妾 囲っておりまんねん。 あのガキ! 400 00:31:21,546 --> 00:31:23,882 おすず殺しの段取り いろいろと詰めていくと➡ 401 00:31:23,882 --> 00:31:25,817 どうしても 駒が1枚足りねえのだ。 402 00:31:25,817 --> 00:31:28,754 おすずの身代わりを務める女が 1人いなくちゃならねえ。 403 00:31:28,754 --> 00:31:30,756 そう考えたから 長助に探ってもらったのさ。 404 00:31:30,756 --> 00:31:32,891 (嘉助)身代わりって言いやすと? 405 00:31:32,891 --> 00:31:36,561 その絵解きは あとでするとして…。 おう!(長助)へい! 406 00:31:36,561 --> 00:31:40,899 長助 左京の妾に 子供はいなかったのかい? 407 00:31:40,899 --> 00:31:44,569 それが この5月に 男の子が生まれたそうでおます。 408 00:31:44,569 --> 00:31:49,241 それで おすずは 妹のお絹の子供を 養子にすると言い張ったんだ。 409 00:31:49,241 --> 00:31:51,576 どうでも 妹に いい子を産んでもらわないと➡ 410 00:31:51,576 --> 00:31:56,248 左京の妾の産んだ子に 大和屋の身代 持っていかれると➡ 411 00:31:56,248 --> 00:31:59,918 王子権現へ自分で行って 安産のお札を 受けてくる気になったんだろう。 412 00:31:59,918 --> 00:32:03,188 じゃあ 伊平から 何となく そんな話が出てたんですね。 413 00:32:03,188 --> 00:32:05,857 武部左京の子が 大和屋の跡取りってことになれば➡ 414 00:32:05,857 --> 00:32:09,194 借金が何千両あろうが そんなものは 棒引きだ。 415 00:32:09,194 --> 00:32:13,865 武部にしたら 是が非でも 自分の妾の産んだ男の子を➡ 416 00:32:13,865 --> 00:32:17,202 大和屋へ はめ込みたいと思っただろうよ。 417 00:32:17,202 --> 00:32:22,874 それじゃあ おすずさんが 邪魔者ってことに…? うん…。 418 00:32:22,874 --> 00:32:29,748 でも 仮にも夫婦でいる人が お金のことで 殺すでしょうか? おかみさんを。 419 00:32:29,748 --> 00:32:38,423 ♬~ 420 00:32:38,423 --> 00:32:40,892 (長助)はい お待っとおさん。 (徳松)すみません どうも。 421 00:32:40,892 --> 00:32:46,765 若様 さっきの身代わりの一件 絵解きをしていただけませんか? 422 00:32:46,765 --> 00:32:49,901 あれか? 423 00:32:49,901 --> 00:32:55,774 あれは おすずの殺された時の身なりが 派手すぎたんで考えてみたんだ。 424 00:32:55,774 --> 00:33:00,846 こりゃ わざと 人目につくものを選んで 着せたんじゃねえかとな。 425 00:33:00,846 --> 00:33:03,748 不動の滝へ行くのは おすずも初めてだ。 426 00:33:03,748 --> 00:33:06,184 納所坊主も おすずの顔は知らない。 427 00:33:06,184 --> 00:33:10,055 派手な おっこち絞りの浴衣に 利久茶の帯だけで…➡ 428 00:33:10,055 --> 00:33:14,059 それなら あれが おすずだった ということになる。 429 00:33:14,059 --> 00:33:17,796 伊平が 身代わりの女に おっこち絞りの浴衣を着せて➡ 430 00:33:17,796 --> 00:33:21,533 おすずに見せかけ 滝に打たれに行く。 431 00:33:21,533 --> 00:33:26,204 こうしておけば 伊平は あとで 疑われなくても済む。 432 00:33:26,204 --> 00:33:31,076 そして その間に 兄の左京が おすずを 岩屋弁天に誘い込んで➡ 433 00:33:31,076 --> 00:33:33,078 殺していた…。 434 00:33:34,880 --> 00:33:39,217 身代わりの女さえいりゃ 筋は通るはずだ。 435 00:33:39,217 --> 00:33:42,120 なるほど…。 いやまあ ともかくも その➡ 436 00:33:42,120 --> 00:33:45,891 武部の妾のおさきっちゅうのが 身代わりになったのは 確かでおます。 437 00:33:45,891 --> 00:33:48,560 近所の娘が言うとりましたわ。 438 00:33:48,560 --> 00:33:51,463 お産して 100日もたたん女子がね 青い顔して➡ 439 00:33:51,463 --> 00:33:55,433 赤子せたろうて帰ってきたんが 九ツを過ぎてたっちゅうことでおまっせ。 440 00:33:55,433 --> 00:33:58,904 おまけに そのおさきっちゅうのね➡ 441 00:33:58,904 --> 00:34:02,774 明くる日 血の道やっちゅうて 医者を呼んだようでおます。 442 00:34:02,774 --> 00:34:06,511 その医者が 「体冷やしたから いかんかったんや」っちゅうて。 443 00:34:06,511 --> 00:34:08,847 あっ そうそう。 乳が出んようになったっちゅうてね➡ 444 00:34:08,847 --> 00:34:11,516 乳をもらいに 近所を走り回ってたっちゅうことでっせ。 445 00:34:11,516 --> 00:34:14,419 決まった! 下手人は 伊平と武部左京だ! 446 00:34:14,419 --> 00:34:18,390 俺 親父に知らせてきます! (嘉助)待ちなよ! 447 00:34:18,390 --> 00:34:21,526 蔵前の藤吉の手柄には できねえっていうのかい!? 448 00:34:21,526 --> 00:34:23,461 そんな ケチなことを言うつもりはねえ。 449 00:34:23,461 --> 00:34:26,865 伊平は ともかくも 武部は お旗本やで…。 450 00:34:26,865 --> 00:34:31,536 ああ…。 町方の手ぇ出る相手やないやないか お前。 451 00:34:31,536 --> 00:34:34,439 第一 話の筋は通っても 証拠がねえんだ。 452 00:34:34,439 --> 00:34:38,209 じゃあ どうしろってんです!? 453 00:34:38,209 --> 00:34:53,224 ⚟(物売りの声) 454 00:34:53,224 --> 00:34:56,895 もう一度 夢を見てもらおうか…。 455 00:34:56,895 --> 00:34:58,897 えっ? 456 00:35:01,166 --> 00:35:07,038 (鈴の音) 457 00:35:07,038 --> 00:35:10,342 (伊平)まあ おひとつ…。 これは これは…。 458 00:35:15,513 --> 00:35:18,416 お絹さん…。 459 00:35:18,416 --> 00:35:21,386 どうした? 顔色が悪いな。 460 00:35:21,386 --> 00:35:25,190 義兄さん…。 私 毎晩 眠れないんです。 461 00:35:25,190 --> 00:35:30,862 そりゃあ いけませんなあ。 おなかの子に障りますよ。 462 00:35:30,862 --> 00:35:36,735 でも 姉さんが 毎晩 夢に出てくるんです。 おすずが? 463 00:35:36,735 --> 00:35:42,207 そういやあ 前にも お絹さんは おすずさんの夢を見たとか言ってたが…。 464 00:35:42,207 --> 00:35:46,878 あっ そうそう。 それで 今度は どんな夢なんだね? 465 00:35:46,878 --> 00:35:53,551 どこだか分からないんですが 暗い所で お堂のような所で➡ 466 00:35:53,551 --> 00:35:57,889 姉さんが そのお堂の床の下 指さして泣くんです。 467 00:35:57,889 --> 00:36:03,495 帯の間から 何か こう 油紙に包んだようなものを取り出して➡ 468 00:36:03,495 --> 00:36:09,167 それを お堂の床の下に投げ入れるような そぶりをもしてみせるんです。 469 00:36:09,167 --> 00:36:13,038 な… 何だい その 油紙に包んだようなものってえのは? 470 00:36:13,038 --> 00:36:17,509 ですから それが分からないから 毎晩 イライラと眠れないんでしょ。 471 00:36:17,509 --> 00:36:19,811 (弥三郎)あ~ そうか…。 472 00:36:21,379 --> 00:36:25,183 (お絹)そうだわ! うん? どうしたい お絹。 473 00:36:25,183 --> 00:36:27,852 姉さんが王子へ行く朝➡ 474 00:36:27,852 --> 00:36:32,724 ねえ 義兄さん 私 ここへ 姉さんを送りに来たんでしたよね。 475 00:36:32,724 --> 00:36:36,528 ああ… そうだった 来てくれたね。 476 00:36:36,528 --> 00:36:38,863 たった2人っきりの姉と妹➡ 477 00:36:38,863 --> 00:36:43,535 虫が知らせて 最後に会いに来たんだろうと➡ 478 00:36:43,535 --> 00:36:46,438 弥三郎さんとも話したってことを 覚えてるよ。 479 00:36:46,438 --> 00:36:50,408 (お絹)その時 姉さん…。 480 00:36:50,408 --> 00:36:53,211 お絹に 何か言ったのかい? 481 00:36:53,211 --> 00:36:59,084 いいえ そうじゃないの。 そうじゃありませんけど…➡ 482 00:36:59,084 --> 00:37:07,492 あの時 姉さん たんすの中から 何か 油紙に包んだようなものを➡ 483 00:37:07,492 --> 00:37:11,162 帯の間に…。 484 00:37:11,162 --> 00:37:15,834 そう 思い出したわ! 「姉さん それ何ですか?」って聞いたら➡ 485 00:37:15,834 --> 00:37:20,705 「これは とっても大事なものだから いつも 肌身離さず持ってるのよ」➡ 486 00:37:20,705 --> 00:37:23,174 そう言ったのよ。 487 00:37:23,174 --> 00:37:26,511 はあ… けど 伊平さん 仏様の体からは➡ 488 00:37:26,511 --> 00:37:30,381 そんなもの 何も出てきやしませんでしたね。 489 00:37:30,381 --> 00:37:32,851 ええ…。 490 00:37:32,851 --> 00:37:38,723 ひょっとすると 殺される時 おすずさんは それを お堂…? 491 00:37:38,723 --> 00:37:40,725 (膝をたたく音) うん! 492 00:37:40,725 --> 00:37:45,864 弁天様のお堂の床下に それを 投げ込んだんじゃありませんかね? 493 00:37:45,864 --> 00:37:50,201 あっ なるほど。 あのお堂の床は 確か こう 高くなってましたから…➡ 494 00:37:50,201 --> 00:37:54,205 ええ 投げ込めますよ 床下へ。 495 00:38:04,482 --> 00:38:06,818 (伊平)ちょっと…。 496 00:38:06,818 --> 00:38:10,155 そうだ 明日にでも…。 497 00:38:10,155 --> 00:38:12,490 ああ… ねえ 皆さん➡ 498 00:38:12,490 --> 00:38:15,293 明日にでも みんなで 王子へ行ってみませんか? 499 00:38:15,293 --> 00:38:18,163 王子へ? 何しに? あ いや…➡ 500 00:38:18,163 --> 00:38:22,834 私は まだ 義姉さんの殺された場所も 見ていないから➡ 501 00:38:22,834 --> 00:38:25,170 行って 供養もしてきたいし…➡ 502 00:38:25,170 --> 00:38:28,072 その弁天様の床下に➡ 503 00:38:28,072 --> 00:38:33,044 もし 姉さんの投げ込んだ油紙の包み というのがあるんだとしたら➡ 504 00:38:33,044 --> 00:38:35,513 是非 取り出してきたいじゃないか。 505 00:38:35,513 --> 00:38:37,849 ねえ 皆さん そう お思いになりませんか? 506 00:38:37,849 --> 00:38:39,784 う~ん そりゃそうだ。 行きましょう! 507 00:38:39,784 --> 00:38:44,189 それなら 私も連れてってくださいな。 私も お供しますよ。 508 00:38:44,189 --> 00:38:46,124 何事も はっきりさせておいた方が…。 509 00:38:46,124 --> 00:38:50,862 油紙… 油紙…。➡ 510 00:38:50,862 --> 00:38:56,201 その油紙に包んだようなものってえのは ひょっとしたら…。➡ 511 00:38:56,201 --> 00:39:02,207 油紙… 油紙… 油紙… 油紙…。 512 00:39:07,812 --> 00:39:54,192 ♬~ 513 00:39:54,192 --> 00:39:56,527 (おすず)出てってください… 出てってください…➡ 514 00:39:56,527 --> 00:39:59,864 このお金 返せないのなら 出てってください。➡ 515 00:39:59,864 --> 00:40:02,200 出てってください… 出てってください…。➡ 516 00:40:02,200 --> 00:40:05,536 出てってください! このお金が返せないのなら➡ 517 00:40:05,536 --> 00:40:07,472 出てってください! 518 00:40:07,472 --> 00:40:11,476 ♬~ 519 00:40:13,411 --> 00:40:24,555 ♬~ 520 00:40:24,555 --> 00:40:28,226 (戸をたたく音) 521 00:40:28,226 --> 00:40:32,530 ⚟(左京)誰だ? 私だよ 兄さん。 522 00:40:34,098 --> 00:40:36,100 (左京)伊平。➡ 523 00:40:36,100 --> 00:40:38,236 どうした? 524 00:40:38,236 --> 00:40:43,541 ♬~ 525 00:40:45,109 --> 00:40:48,579 (左京)酔ってるのか? (伊平)ち… 違う! 526 00:40:48,579 --> 00:40:50,515 (左京)じゃあ どうしたと言うんだ!? 527 00:40:50,515 --> 00:40:53,918 (伊平)あ… もう駄目だ…。 (おさき)えっ? 528 00:40:53,918 --> 00:40:58,790 (伊平)駄目だよ 兄さん! もう おしまいだ…。 529 00:40:58,790 --> 00:41:01,192 (平手打ちの音) (左京)バカ! 530 00:41:01,192 --> 00:41:03,127 (赤子の泣き声) よしよしよし…。 531 00:41:03,127 --> 00:41:08,066 (左京)訳を話してみろ 伊平! はっきり 訳を話してみろ! 532 00:41:08,066 --> 00:41:10,068 (赤子の泣き声) よしよしよし…。 533 00:41:19,544 --> 00:41:23,881 (左京)おさき 心配するな。➡ 534 00:41:23,881 --> 00:41:26,584 また 乳が出なくなるぞ。 535 00:41:28,219 --> 00:41:33,558 (左京)とにかく ひと休みさせたら 伊平を蔵前へ返せ。➡ 536 00:41:33,558 --> 00:41:36,227 「びくびくすると かえって 身の破滅だ」と言ってやれ。 537 00:41:36,227 --> 00:41:39,897 (赤子の泣き声) 538 00:41:39,897 --> 00:41:44,235 坊主 泣くんじゃないぞ。 539 00:41:44,235 --> 00:41:47,138 (おさき)よしよしよし…。 おとなしく待ってろ。 540 00:41:47,138 --> 00:41:49,140 (おさき)いい子ねえ。 541 00:41:52,110 --> 00:41:56,247 (赤子の泣き声) 542 00:41:56,247 --> 00:41:58,950 じゃあ 行ってくる。 543 00:42:06,057 --> 00:42:20,772 ♬~ 544 00:42:28,179 --> 00:42:30,181 はっ! 545 00:42:32,083 --> 00:42:34,085 あった! 546 00:42:40,224 --> 00:42:46,564 ⚟武部左京殿 お探しの証文は見つかりましたかな? 547 00:42:46,564 --> 00:42:50,234 証文は ここにござる。 何!? 548 00:42:50,234 --> 00:42:56,908 10年先の禄米まで抵当にして 利子とも 4千両の借財とは➡ 549 00:42:56,908 --> 00:42:59,577 ちと派手すぎましたな。 550 00:42:59,577 --> 00:43:02,847 貴様… 神林だな。 551 00:43:02,847 --> 00:43:05,750 さよう 神林東吾。 552 00:43:05,750 --> 00:43:10,721 おすず殿が 恋文代わりに 証文を預けていった男…。何!? 553 00:43:10,721 --> 00:43:13,858 虫の知らせか 王子参りの2日前➡ 554 00:43:13,858 --> 00:43:18,529 おすずが お主への貸し金の証文そっくり この文箱に入れて➡ 555 00:43:18,529 --> 00:43:22,200 俺に預けていったってわけさ。 556 00:43:22,200 --> 00:43:24,869 武部左京ともあろう御仁が➡ 557 00:43:24,869 --> 00:43:30,208 女子供の夢物語 まんまとかかったというのは➡ 558 00:43:30,208 --> 00:43:34,545 おすずの恨みで 目がくらんだか!? えい! 559 00:43:34,545 --> 00:43:37,215 御用! 御用だ! 徳松! 560 00:43:37,215 --> 00:43:41,519 手を出すな。 町方は 支配違いだ! 561 00:43:43,087 --> 00:43:45,389 (斬り合う音) 562 00:43:47,725 --> 00:43:53,898 (滝の音) 563 00:43:53,898 --> 00:43:57,568 (斬り合う音) 564 00:43:57,568 --> 00:44:01,439 (滝の音) 565 00:44:01,439 --> 00:44:03,841 (斬り合う音) 566 00:44:03,841 --> 00:44:05,776 やあ~っ! 567 00:44:05,776 --> 00:44:07,712 徳松 危ない! 568 00:44:07,712 --> 00:44:10,181 でやっ! やあ~っ! 569 00:44:10,181 --> 00:44:12,116 (水の音) 570 00:44:12,116 --> 00:44:15,520 (刀の落ちる音) 571 00:44:15,520 --> 00:44:18,189 (通之進)武部左京! 572 00:44:18,189 --> 00:44:22,493 もはや 逃れえんところぞ。 兄上! 573 00:44:28,199 --> 00:44:31,903 武士らしゅう 覚悟をせい! 574 00:44:46,551 --> 00:44:49,587 うっ… あああ~! 575 00:44:49,587 --> 00:45:09,774 (滝の音) 576 00:45:11,509 --> 00:45:13,444 (戸をたたく音) 577 00:45:13,444 --> 00:45:17,381 (伊平)佐吉 私だよ。 開けてくれ。 578 00:45:17,381 --> 00:45:20,084 (戸をたたく音) 佐吉! 579 00:45:24,522 --> 00:45:27,425 (長助)御用だ! 御用だ!➡ 580 00:45:27,425 --> 00:45:30,394 ああ~! (八代)待てい!➡ 581 00:45:30,394 --> 00:45:32,396 神妙にしろい! 582 00:45:38,536 --> 00:45:41,539 (長助)おおきに。 どなたはんも ご苦労はんでおます。 583 00:46:21,512 --> 00:46:25,850 まあ 何を考えてるんです? 584 00:46:25,850 --> 00:46:28,185 ん? 585 00:46:28,185 --> 00:46:30,521 おすずさんのことですか? 586 00:46:30,521 --> 00:46:35,192 そうじゃない。 武部左京のことをな。 587 00:46:35,192 --> 00:46:38,529 惜しい腕を持っていた…。 588 00:46:38,529 --> 00:46:44,869 あれだけの腕があっても 今のご時世 世に出ることも できなかったから➡ 589 00:46:44,869 --> 00:46:52,209 天下の直参 三河以来の名家 金の力に押し潰されて…。 590 00:46:52,209 --> 00:46:54,545 かわいそうに…。 591 00:46:54,545 --> 00:46:58,883 そう。 かわいそうな男だったとも言える。 592 00:46:58,883 --> 00:47:07,158 ううん…。 私の言いましたのは おすずさんのことですよ。 593 00:47:07,158 --> 00:47:13,831 夫婦になっても 結局 心の通うことのなかった人と暮らして➡ 594 00:47:13,831 --> 00:47:16,500 殺されて 死んだ。 595 00:47:16,500 --> 00:47:19,403 かわいそうじゃありませんか…。 596 00:47:19,403 --> 00:47:21,372 うん…。 597 00:47:21,372 --> 00:47:27,144 それとも おすずさんが もっともっと 伊平という人を好きになっていたら➡ 598 00:47:27,144 --> 00:47:29,513 伊平さんも おすずさんのために➡ 599 00:47:29,513 --> 00:47:33,384 兄の左京の言うことを 聞かなかったでしょうか? 600 00:47:33,384 --> 00:47:39,190 侍の家に生まれて 商人の家へ養子に行った伊平が➡ 601 00:47:39,190 --> 00:47:45,062 心のどこかで 実家を重んじ 養家を軽んじていたとしたら➡ 602 00:47:45,062 --> 00:47:49,834 いくら おすずが 伊平に ほれていたとしても➡ 603 00:47:49,834 --> 00:47:54,839 夫の偏った思いを 解くことができたかどうか…。 604 00:47:56,741 --> 00:48:03,147 お侍と町人ですか…。 605 00:48:03,147 --> 00:48:52,663 ♬~