1 00:00:02,102 --> 00:00:11,178 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:11,178 --> 00:02:08,462 ♬~ 3 00:02:11,665 --> 00:02:16,670 (雨の音) 4 00:02:27,147 --> 00:02:30,017 ⚟(戸をたたく音) 5 00:02:30,017 --> 00:02:32,052 (お吉)はい! 6 00:02:32,052 --> 00:02:34,554 はい ただいま。 ⚟(戸をたたく音) 7 00:02:38,525 --> 00:02:41,561 (喜三)はあ… あ~ 夜遅く すいません。 8 00:02:41,561 --> 00:02:44,031 泊めてもらえませんでしょうか? (お鹿)お願いします。 9 00:02:44,031 --> 00:02:45,966 (嘉助)申し訳ござんせんが 手前どもは…。 10 00:02:45,966 --> 00:02:49,202 (るい)楓が空いてたろ? 泊めておあげよ。 11 00:02:49,202 --> 00:02:51,204 お願いします。 助かります。 12 00:02:51,204 --> 00:02:54,708 よかったな お前。 じゃあ すすぎ お持ちいたしますから。 13 00:02:54,708 --> 00:02:57,511 おきくちゃん おもよちゃん! ⚟(おきく おもよ)は~い! 14 00:03:10,824 --> 00:03:13,827 ⚟(嘉助)失礼いたします。 (戸が開く音) 15 00:03:15,495 --> 00:03:17,831 ねえ 余計なこと 言っちゃったかしら? 16 00:03:17,831 --> 00:03:19,766 いえ… そんなことはござんせんが➡ 17 00:03:19,766 --> 00:03:23,503 宿帳では 郡山のお百姓で喜三 そう書いてあります。 18 00:03:23,503 --> 00:03:26,840 お百姓さん? ええ そうは見えませんがね。 19 00:03:26,840 --> 00:03:29,309 あっしの にらんだところでは➡ 20 00:03:29,309 --> 00:03:33,013 ドサ回りの芸人崩れ ってとこでしょうかね。 21 00:03:33,013 --> 00:03:36,049 女の人も お百姓さんの おかみさんには 見えなかった…。 22 00:03:36,049 --> 00:03:40,187 ええ。 こしらえといい あの 色の生っちょろいところといい➡ 23 00:03:40,187 --> 00:03:44,057 まあ どっかの料理屋で 酌婦でもしてたんじゃねえですか? 24 00:03:44,057 --> 00:03:48,061 だから 番頭さんも私も 断ろうと思ったんですけどね。 25 00:03:48,061 --> 00:03:53,533 だって このどしゃ降りだし 背中で女の子が眠っていたじゃないの。 26 00:03:53,533 --> 00:03:57,871 早くお布団に寝かしてあげなきゃって そう思ったのよ。 27 00:03:57,871 --> 00:03:59,806 まあ 今夜一晩のことなら➡ 28 00:03:59,806 --> 00:04:03,643 寝ずに番してたって ほかのお客さんに 迷惑かけることもねえでしょ。 29 00:04:03,643 --> 00:04:06,680 はいはい。 以後 気を付けるといたしましょう。 30 00:04:06,680 --> 00:04:08,682 ハハハハハハハ…。 31 00:04:16,156 --> 00:04:18,492 (通之進)お~ 来たな。 32 00:04:18,492 --> 00:04:22,362 明日 麻生へ行ってくれるかい? 33 00:04:22,362 --> 00:04:24,664 (東吾)本所の義姉上の御実家へですか? 34 00:04:24,664 --> 00:04:29,469 (通之進)うん。 まあ たまにはな 年寄りの話し相手にもなってやれ。 35 00:04:40,680 --> 00:04:47,020 (源左衛門)いや~… 今か今かと 首を長うして待っておるのだが➡ 36 00:04:47,020 --> 00:04:51,191 香苗のやつ 待てど暮らせど みごもらん。 37 00:04:51,191 --> 00:04:53,193 え~い! もう ままよと! 38 00:04:53,193 --> 00:04:55,529 ハハハハハハ! 39 00:04:55,529 --> 00:04:58,431 年寄りは気が短いでな わしは腹を決めた。 40 00:04:58,431 --> 00:05:01,635 おう。 香苗が産めぬというのなら➡ 41 00:05:01,635 --> 00:05:05,972 妹の七重に 見事 産ましてみせましょうとな。➡ 42 00:05:05,972 --> 00:05:08,475 ハハハハ ハハハハ! 43 00:05:08,475 --> 00:05:11,511 はあ…。 (源左衛門)ハ~ハハハハ…。 44 00:05:11,511 --> 00:05:18,151 ♬~ 45 00:05:18,151 --> 00:05:20,487 神林の先代と わしはな➡ 46 00:05:20,487 --> 00:05:24,157 もう こんな小さい頃からの 大の仲良しじゃ。 47 00:05:24,157 --> 00:05:27,661 おう。 「孫ができたぞ~!」と 言うてやらんことにゃ➡ 48 00:05:27,661 --> 00:05:31,531 わしゃ あの世へ行って やつに合わせる顔もない。➡ 49 00:05:31,531 --> 00:05:34,534 アハハハハハハハハハ…。➡ 50 00:05:34,534 --> 00:05:38,672 ハ~ハハハハハハハ…。➡ 51 00:05:38,672 --> 00:05:40,874 ハハハハハハ…。 52 00:05:44,544 --> 00:05:47,180 (カラスの鳴き声) 53 00:05:47,180 --> 00:05:50,984 (鐘の音) 54 00:05:53,320 --> 00:05:58,158 こっち来て ほら…。 55 00:05:58,158 --> 00:06:00,093 ん~ いいにおいね。 56 00:06:00,093 --> 00:06:02,796 おや いらっしゃいまし。 うん…。 57 00:06:04,464 --> 00:06:07,500 あら いらしてたんですか? 58 00:06:07,500 --> 00:06:11,137 どこの子だい? 楓の間のお客様の…。 59 00:06:11,137 --> 00:06:13,073 あっ お文ちゃん いらっしゃい。 60 00:06:13,073 --> 00:06:15,141 今度はね おばちゃんと一緒に遊びましょう。➡ 61 00:06:15,141 --> 00:06:17,344 ねっ おいで~。 62 00:06:21,281 --> 00:06:24,484 はあ…。 まるで 親子のようだった。 63 00:06:24,484 --> 00:06:28,989 えっ? お文ちゃんと私が ですか? 64 00:06:28,989 --> 00:06:36,162 うん。 あのくらいの娘があっても 決して おかしくはないのだからな。 65 00:06:36,162 --> 00:06:39,100 ウッフ…。 ハハ…。 66 00:06:39,100 --> 00:06:43,870 (おきく)お吉さん! 67 00:06:43,870 --> 00:06:46,172 (せきばらい) アッハハハ。フフッ…。 68 00:06:53,179 --> 00:06:55,181 いいんですか? こんな時刻に…。 69 00:06:55,181 --> 00:06:57,851 昼間 来ちゃいけない ってこともないだろう。 70 00:06:57,851 --> 00:07:00,754 それとも 何か まずいことでもあるのか? 71 00:07:00,754 --> 00:07:03,957 私は お屋敷のこと ご案じ申し上げておりますのに…。 72 00:07:03,957 --> 00:07:05,959 心配するな。 73 00:07:09,629 --> 00:07:12,465 今日は どちらへ お出かけだったんですか? 74 00:07:12,465 --> 00:07:18,271 本所までな。 兄上のお言いつけで 麻生へ行った帰りだ。 75 00:07:22,142 --> 00:07:24,077 麻生様へ? 76 00:07:24,077 --> 00:07:26,980 本所も すっかり変わったな…。 77 00:07:26,980 --> 00:07:31,284 以前は 空き地だった所に 新しい家が たっていたりして➡ 78 00:07:31,284 --> 00:07:34,154 うっかりすると 道に迷うほどだ。 79 00:07:34,154 --> 00:07:38,992 麻生様は 皆様 お変わりございませんか? 80 00:07:38,992 --> 00:07:41,494 ああ 老人などは いよいよ元気で➡ 81 00:07:41,494 --> 00:07:45,699 今でも毎朝 素振りを1,000回は 欠かさないそうだ。 82 00:07:50,837 --> 00:07:52,839 (せきばらい) 83 00:07:54,507 --> 00:07:58,678 七重様は まだ お独りでございますか? 84 00:07:58,678 --> 00:08:00,680 うん。 85 00:08:03,450 --> 00:08:06,119 ⚟(お吉)お嬢様…。➡ 86 00:08:06,119 --> 00:08:09,022 お膳の支度ができましたが…。 87 00:08:09,022 --> 00:08:11,925 東吾様なら 本所の麻生様で➡ 88 00:08:11,925 --> 00:08:15,462 大層な おもてなしを 頂いておみえのようだから。 89 00:08:15,462 --> 00:08:19,132 そうですか…。 ハハッ…。 90 00:08:19,132 --> 00:08:24,003 あっ あの~ 楓の間のお客様が まだお戻りにならないんですけど➡ 91 00:08:24,003 --> 00:08:26,272 どういたしましょう?➡ 92 00:08:26,272 --> 00:08:32,645 お文ちゃんにだけでも お膳を出してよろしいでしょうかね? 93 00:08:32,645 --> 00:09:11,351 ♬~(子守唄) 94 00:09:11,351 --> 00:09:16,189 寝たか? ♬~(子守唄) 95 00:09:16,189 --> 00:09:18,792 おうおう… かわいそうに。 96 00:09:18,792 --> 00:09:23,263 ♬~(子守唄) ほっぺたに涙がついてらあ。 97 00:09:23,263 --> 00:09:26,966 ♬~(子守唄) 98 00:09:26,966 --> 00:09:29,803 お~… 寝かしてきましょう あちらへ。 99 00:09:29,803 --> 00:09:33,273 よっ… よしよし よしよし…。 (お吉)よしよしよし…。 100 00:09:33,273 --> 00:09:35,341 本当に どういうつもりなんでしょうね? 101 00:09:35,341 --> 00:09:38,478 あんな小さな子供 ほったらかして ほっつき歩いて。 102 00:09:38,478 --> 00:09:41,815 逃げたんじゃねえのか? まさか…。 103 00:09:41,815 --> 00:09:43,750 逃げたわけじゃないでしょう。 104 00:09:43,750 --> 00:09:46,152 だって お部屋に荷物がありますもの。 105 00:09:46,152 --> 00:09:48,087 ⚟(男女の話し声) あら? 106 00:09:48,087 --> 00:09:51,491 おい…。 おおっ…。 ただいま。 107 00:09:51,491 --> 00:09:53,827 あっ…。 お~ お鹿 しっかりしろ! お前。 108 00:09:53,827 --> 00:09:56,296 (お鹿)大丈夫だよ… あっ! お静かに願いますよ。 109 00:09:56,296 --> 00:09:58,998 今 お文ちゃん 寝ついたとこなんですから。 110 00:09:58,998 --> 00:10:00,934 (お鹿)あら そう。ああ そう。 111 00:10:00,934 --> 00:10:03,670 じゃあ 風呂 入って 俺たちも寝るとしよう。 112 00:10:03,670 --> 00:10:08,508 (お鹿)ああ! ああ。 ほら しっかりして! ほら! 113 00:10:08,508 --> 00:10:13,012 (お鹿)あっあっ… 痛てて…。 (喜三)大丈夫か お前。 114 00:10:13,012 --> 00:10:16,049 あれか? かたぎじゃありませんよ どう見たって。 115 00:10:16,049 --> 00:10:19,319 「お世話さま」ぐらい言ったって 罰が当たらないだろうに! 116 00:10:19,319 --> 00:10:23,189 お文ちゃんって子は 素直で かわいい子なんですけどね。 117 00:10:23,189 --> 00:10:25,692 とにかく できるだけ早く たってもらうことだな。 118 00:10:25,692 --> 00:10:27,694 はい そうします。 119 00:10:29,863 --> 00:10:36,069 麻生様の所から まっすぐ来てしまって お帰りにならなくてもいいんですか? 120 00:10:38,872 --> 00:10:41,708 いちいち 余計な心配をするなよ。 121 00:10:41,708 --> 00:10:43,643 だって…。 122 00:10:43,643 --> 00:10:49,582 子供が好きなら 人の子をかわいがるより…➡ 123 00:10:49,582 --> 00:10:53,419 自分の子を産むことを考えるんだな。 124 00:10:53,419 --> 00:10:55,722 まあ…。 125 00:10:55,722 --> 00:11:13,840 ♬~ 126 00:11:13,840 --> 00:11:24,317 (売り声) 127 00:11:24,317 --> 00:11:27,020 (おもよ)おはよう。 128 00:11:27,020 --> 00:11:29,522 (おきく)ありがとうございました。 お気を付けてどうぞ。 129 00:11:29,522 --> 00:11:33,693 お忘れ物ございませんね? (おきく)お気を付けて! 130 00:11:33,693 --> 00:11:36,529 おっ これは 畝の旦那➡ 131 00:11:36,529 --> 00:11:39,866 随分 お早いじゃござんせんか。 どうかなさいましたか? 132 00:11:39,866 --> 00:11:42,202 (源三郎)東吾さん いるな? へい! 133 00:11:42,202 --> 00:11:44,704 あっ じゃあ すぐ起こしてまいりやすから。 134 00:11:52,712 --> 00:11:54,914 ⚟(戸が開く音) おはよう。 135 00:12:01,287 --> 00:12:06,159 あの 今すぐ 朝ごはんを なにしますから 畝様も ご一緒に… ねっ? 136 00:12:06,159 --> 00:12:08,861 うん。 あがってってくださいましね。 アハッ。 137 00:12:12,031 --> 00:12:16,669 実は 今朝早く 本所の麻生様の七重さんが➡ 138 00:12:16,669 --> 00:12:18,605 手前どもを お訪ねくださいまして…。 139 00:12:18,605 --> 00:12:21,507 七重殿が? 140 00:12:21,507 --> 00:12:24,544 朝っぱらから 不粋な話で どうも…。 141 00:12:24,544 --> 00:12:31,017 その 昨夜 八丁堀のお兄上から 本所へ お使いが見えたんだそうです。 142 00:12:31,017 --> 00:12:34,320 「東吾さんは 麻生様に御酒を無理強いされて➡ 143 00:12:34,320 --> 00:12:37,190 酔って寝てしまわれた。 今夜は こちらへ泊める」➡ 144 00:12:37,190 --> 00:12:39,692 七重さんは お使いに そのように答えられたから➡ 145 00:12:39,692 --> 00:12:42,195 御承知おきくださいますように とのことです。 146 00:12:42,195 --> 00:12:45,698 俺が かわせみじゃなくて 麻生に 泊まったことにしろっていうのかい? 147 00:12:45,698 --> 00:12:47,734 (源三郎)はい。 148 00:12:47,734 --> 00:12:51,337 差し出たことをする人だ。 東吾さん! 149 00:12:51,337 --> 00:12:54,240 女の小利口っていうのは どうも好きになれねえ。 150 00:12:54,240 --> 00:12:57,243 そのように言っちまっちゃ 七重さんが お気の毒でしょう。 151 00:13:00,146 --> 00:13:02,482 本所から八丁堀まで一里➡ 152 00:13:02,482 --> 00:13:05,985 夜明けの道を走って 手前どもをお訪ねくだされたのは➡ 153 00:13:05,985 --> 00:13:08,821 七重さんのような 世間知らずのお嬢様にしちゃ➡ 154 00:13:08,821 --> 00:13:12,659 よくせき 思い詰めてのことじゃありませんか? 155 00:13:12,659 --> 00:13:14,594 うん。 ⚟若様! 156 00:13:14,594 --> 00:13:16,529 何だ? (お吉)若様➡ 157 00:13:16,529 --> 00:13:18,531 楓の間のお客様が いなくなっちゃったんです➡ 158 00:13:18,531 --> 00:13:21,668 ゆうべのうちに お文ちゃんだけ置いて…。 何!? 159 00:13:21,668 --> 00:13:25,505 ♬~ 160 00:13:25,505 --> 00:13:28,007 まさか かわせみに泊まるほどの客が➡ 161 00:13:28,007 --> 00:13:32,512 屋根伝いに夜逃げするとは 思ってもいませんからね。 162 00:13:32,512 --> 00:13:35,415 しょうがない 諦めましょう。 どうも…。 163 00:13:35,415 --> 00:13:38,384 ほかのお客さんの物を盗まれた ってわけでもありませんし➡ 164 00:13:38,384 --> 00:13:40,853 お帳場も用心していたから➡ 165 00:13:40,853 --> 00:13:42,889 何一つ とられたものは なかったんですから。 166 00:13:42,889 --> 00:13:45,591 それにしても お文ちゃん どうします? 167 00:13:49,862 --> 00:13:54,534 (お吉)どういうつもりなんでしょうね 子供を置いて逃げちまうなんて…。 168 00:13:54,534 --> 00:13:56,569 (源三郎)近頃 よくあるんだ。 (お吉)えっ? 169 00:13:56,569 --> 00:13:59,038 本当ですか? 170 00:13:59,038 --> 00:14:00,973 去年の春ごろにゃ➡ 171 00:14:00,973 --> 00:14:04,644 一両で 米が九斗二升 買えたものが 秋には 六斗四升。 172 00:14:04,644 --> 00:14:06,579 今年になってみると➡ 173 00:14:06,579 --> 00:14:11,150 しょうゆ 一たるが 六百文から九百文に ピ~ンと値上がりしてるんだからね。 174 00:14:11,150 --> 00:14:15,488 世の中 不景気で 子供を捨てたり 娘を売ったり…。 175 00:14:15,488 --> 00:14:19,292 嫌な話を 方々で聞かされるようになりましたよ。 176 00:14:19,292 --> 00:14:24,163 それにしても そんな困ったふうには 見えませんでしたよね? 177 00:14:24,163 --> 00:14:29,035 髪の飾りだって 結構 金めの物を挿してましたよ。 178 00:14:29,035 --> 00:14:32,672 お吉さん もう そんな詮索は よしましょうよ。 179 00:14:32,672 --> 00:14:39,011 とにかく 私の目が届かなかった。 間違ってたんだから…。 180 00:14:39,011 --> 00:14:41,047 お文ちゃんは あの人たちが何か言ってくるまで➡ 181 00:14:41,047 --> 00:14:43,883 私が預かることにします。 182 00:14:43,883 --> 00:14:46,185 でも お嬢さん! いいのよ それで…。 183 00:14:48,187 --> 00:14:50,890 ちょ… お嬢さん…。 184 00:15:00,466 --> 00:15:03,803 ♬~ 185 00:15:03,803 --> 00:15:06,139 えい えい えい…。 186 00:15:06,139 --> 00:15:08,641 待て~! 待て~! 187 00:15:08,641 --> 00:15:12,145 とにかく 一度 八丁堀へお帰りください。 188 00:15:12,145 --> 00:15:14,981 よ~し 帰る! 189 00:15:14,981 --> 00:15:18,017 帰って 兄上に るいのことを はっきりと話してやる。 190 00:15:18,017 --> 00:15:20,153 東吾さん…。 191 00:15:20,153 --> 00:15:23,055 そのつもりで 俺は ゆうべ かわせみへ泊まったんだ。 192 00:15:23,055 --> 00:15:27,827 この際 兄上 義姉上に るいのこと はっきりさせようと考えて…➡ 193 00:15:27,827 --> 00:15:30,730 ゆうべ 俺は八丁堀へ帰らなかった。 194 00:15:30,730 --> 00:15:33,299 麻生での話 どうなったかと➡ 195 00:15:33,299 --> 00:15:37,170 兄上 義姉上が 俺の帰りを待ちかねていたのも承知で。 196 00:15:37,170 --> 00:15:39,105 だから…。 東吾さん。 197 00:15:39,105 --> 00:15:41,040 お気持ちは よく分かります。 198 00:15:41,040 --> 00:15:45,044 しかし 今 ここで るいさんのことを 切り出したら どうなると思います? 199 00:15:45,044 --> 00:15:47,313 るいさんのためを思って➡ 200 00:15:47,313 --> 00:15:51,017 もう しばらく 自重なさった方がいいでしょう。 201 00:15:51,017 --> 00:15:54,320 黙っていろというのか? 202 00:15:54,320 --> 00:15:59,158 せっかくの 七重さんのお志も 無になさらぬ方が…。 203 00:15:59,158 --> 00:16:16,476 ♬~ 204 00:16:16,476 --> 00:16:18,411 (セミの声) 205 00:16:18,411 --> 00:16:20,346 ⚟(剣術の掛け声) 206 00:16:20,346 --> 00:16:22,982 ⚟(掛け声) 207 00:16:22,982 --> 00:16:29,155 (掛け声) 208 00:16:29,155 --> 00:16:31,157 次! 209 00:16:31,157 --> 00:16:34,026 (掛け声) 210 00:16:34,026 --> 00:16:36,028 次! お願いします! 211 00:16:36,028 --> 00:16:39,031 (掛け声) 212 00:16:40,867 --> 00:16:45,071 (源三郎)ああ… 毎日 御精が出ますな。 うん。 213 00:16:48,174 --> 00:16:51,677 あれから ひとつきになりますか…。 214 00:16:51,677 --> 00:16:55,181 まあ かわせみの方は 変わりありませんから ご心配なく。 215 00:16:55,181 --> 00:16:57,116 どうしてる? るいは。 216 00:16:57,116 --> 00:17:00,453 あの お文とかいう捨て子に夢中ですよ。 217 00:17:00,453 --> 00:17:03,956 あいつの 子供好きは いささか 度が過ぎているよ。 218 00:17:03,956 --> 00:17:06,993 人間誰しも苦しいものが心にある時は➡ 219 00:17:06,993 --> 00:17:09,829 何かに夢中になって 憂さを晴らすもんですよ。 220 00:17:09,829 --> 00:17:12,131 このひとつきというもの➡ 221 00:17:12,131 --> 00:17:16,002 るいさんは捨て子に 東吾さんは稽古に 夢中じゃありませんか。 222 00:17:16,002 --> 00:17:18,004 源さん だから 俺は…。 223 00:17:18,004 --> 00:17:20,273 ああ そうでした。 うん? 224 00:17:20,273 --> 00:17:23,643 あの子を捨ててった お鹿と喜三の行方が分かりました。 225 00:17:23,643 --> 00:17:26,545 おっ… どこにいる? 226 00:17:26,545 --> 00:17:29,815 (源三郎)浅草は 聖天裏の長屋です。 227 00:17:29,815 --> 00:17:35,154 いや~! ハハッ ハハッ…。 何よ! 228 00:17:35,154 --> 00:17:38,658 雨じゃ。 雨じゃ~。 229 00:17:38,658 --> 00:17:42,161 (笑い声) 230 00:17:44,297 --> 00:17:47,166 そろそろ 参ろうか~。 231 00:17:47,166 --> 00:17:50,002 (源三郎)喜三は 奥山の掛小屋 出て➡ 232 00:17:50,002 --> 00:17:52,038 前芸に出刃打ちかなんか やってるそうですが➡ 233 00:17:52,038 --> 00:17:55,808 なに 大した芸人じゃありません。 234 00:17:55,808 --> 00:17:59,679 居どころが分かったら どうして しょっぴかねえんだ? 源さん。 235 00:17:59,679 --> 00:18:04,517 るいさんがね 「このまま そっとしといてくれ」って言うんですよ。 236 00:18:04,517 --> 00:18:06,819 るいが? 237 00:18:09,956 --> 00:18:18,631 ♬~(お手玉歌) 238 00:18:18,631 --> 00:18:23,135 (源三郎)「あんな親に返してやって お文が幸せなれるわけがあるか?」と➡ 239 00:18:23,135 --> 00:18:26,472 るいさんに言われてしまいましてね。 240 00:18:26,472 --> 00:18:29,141 おう…。 そうそう そうそう 上手 上手。 241 00:18:29,141 --> 00:18:43,289 ♬~ 242 00:18:43,289 --> 00:18:45,224 (長助)どうでおます? 243 00:18:45,224 --> 00:18:47,660 あっ…。 相変わらず いい味だよ。 244 00:18:47,660 --> 00:18:50,162 (長助)おおきに。 お江戸の人は➡ 245 00:18:50,162 --> 00:18:52,665 おそばやないといかんように 言いはりますけど➡ 246 00:18:52,665 --> 00:18:55,568 うどんかて やっぱ 捨てたもんやおまへんで。➡ 247 00:18:55,568 --> 00:18:59,438 へい。 お待っとおさんでおました。 どうぞ。 248 00:18:59,438 --> 00:19:01,374 ところで その喜三ですがね…。 うん。 249 00:19:01,374 --> 00:19:05,111 あの 喜三のことでおますけど 何や あの 2年前に➡ 250 00:19:05,111 --> 00:19:08,014 女のことで えらいけんかがあった 言うてます。 この江戸で。 251 00:19:08,014 --> 00:19:11,617 刃傷沙汰を起こしましてね 相手に けがをさせたもんだから➡ 252 00:19:11,617 --> 00:19:14,653 江戸から逃げ出して ほとぼり冷めんの 待ってたらしいんですよ。 253 00:19:14,653 --> 00:19:16,789 あの どっちもどっちでっせ~。 254 00:19:16,789 --> 00:19:19,692 その 今更 喜三をお縄にせんならんほどの けんかやおまへん。 255 00:19:19,692 --> 00:19:23,129 (源三郎)江戸を追って 奥州くんだり 逃げてるうちに病気になったんですな。 256 00:19:23,129 --> 00:19:25,064 何や その…➡ 257 00:19:25,064 --> 00:19:28,934 「ええ金づるをつかみよって 江戸へ舞い戻ってきたんや」っちゅうて➡ 258 00:19:28,934 --> 00:19:31,003 言うとりました。 喜三の仲間が。 259 00:19:31,003 --> 00:19:34,140 病気をして そこで いい金づるをつかんだというのか? 260 00:19:34,140 --> 00:19:36,075 そうらしいでおます。 さあ… ねえ。 261 00:19:36,075 --> 00:19:38,811 そこまで詳しいことは 喜三も しゃべっちゃいねえんですがね。 262 00:19:38,811 --> 00:19:42,648 うん…。 で お鹿って女の身元は知れたかい? 263 00:19:42,648 --> 00:19:44,583 いやいや… それが まだ分かっとりまへんねん。 264 00:19:44,583 --> 00:19:48,521 まあ どうせ 旅先で拾った女には 違いはねえんですがね。 265 00:19:48,521 --> 00:19:51,157 うん…。 266 00:19:51,157 --> 00:19:56,462 何にしても そんなやつらの子供を しょい込んで… るいも物好きだ。 267 00:19:59,498 --> 00:20:12,845 ♬~(手まり歌) 268 00:20:12,845 --> 00:20:15,181 はい。 269 00:20:15,181 --> 00:20:19,685 ♬~(手まり歌) 270 00:20:19,685 --> 00:20:21,887 (源左衛門)えい! 271 00:20:25,558 --> 00:20:28,360 (七重)父上 お茶が入りました。 えい! 272 00:20:30,196 --> 00:20:36,702 ふん! ふん! ふん! あ~っ! 273 00:20:39,538 --> 00:20:43,876 (源左衛門)何だ? 何を考えておる? 274 00:20:43,876 --> 00:20:46,712 いえ 別に何も。 275 00:20:46,712 --> 00:20:49,748 はい。 うん。 276 00:20:49,748 --> 00:20:54,220 その後 神林からは 何か言ってきたか? 277 00:20:54,220 --> 00:20:56,222 いいえ。 278 00:20:56,222 --> 00:20:59,525 香苗のやつめ 何をしとるんだ! 279 00:21:03,662 --> 00:21:06,165 あ~…。 280 00:21:22,515 --> 00:21:24,517 (香苗)東吾さん。 281 00:21:26,185 --> 00:21:30,022 明日は 東吾さんも 出ていただけますね?明日? 282 00:21:30,022 --> 00:21:34,894 麻生の父の 古希の祝いを 深川の料亭でいたしますの。 283 00:21:34,894 --> 00:21:37,763 あっ はい。 兄上から承っておりました。 284 00:21:37,763 --> 00:21:40,032 御都合もおありでしょうが。 285 00:21:40,032 --> 00:21:43,335 いえ。 ちゃんと そのつもりで 空けてありますから。 はい。 286 00:21:43,335 --> 00:21:48,707 ⚟(話し声と源左衛門の笑い声) 287 00:21:48,707 --> 00:21:54,346 すると 死んだ父も今年が古希という 勘定になりますかな? 288 00:21:54,346 --> 00:21:56,282 そうさ。 生きておれば➡ 289 00:21:56,282 --> 00:22:00,486 今夜一緒に古希を祝って 祝宴が張れたものを➡ 290 00:22:00,486 --> 00:22:03,822 慌てくさって 死におってからに。 291 00:22:03,822 --> 00:22:06,158 「慌てくさって」は ございませんでしょう。 292 00:22:06,158 --> 00:22:08,661 ねえ? アハハハハハハ! 293 00:22:10,663 --> 00:22:13,465 東吾様…。 あっ かたじけない。 294 00:22:18,838 --> 00:22:20,773 おい 東吾! 295 00:22:20,773 --> 00:22:25,578 酔いました。 少し 風に吹かれてきます。 296 00:22:32,685 --> 00:22:34,720 七重さん…。 297 00:22:34,720 --> 00:22:37,423 はい。 298 00:22:41,026 --> 00:22:44,330 ああ~… あっ そうか。 299 00:22:44,330 --> 00:22:47,233 フフフ… あっ 見ぬふり 見ぬふり。 300 00:22:47,233 --> 00:22:49,702 ハハハハハハハハ…。 はい。 301 00:22:49,702 --> 00:22:51,637 さあさあ さあさあ! さあ 今夜は…。 302 00:22:51,637 --> 00:22:55,207 (通之進)かたじけない。➡ 303 00:22:55,207 --> 00:22:57,209 あっ…。 304 00:22:58,878 --> 00:23:08,554 ⚟(宴を楽しむ人々の声) 305 00:23:08,554 --> 00:23:12,524 あなたまで中座をなすっては 父上に悪かろう。 お戻りください。 306 00:23:12,524 --> 00:23:18,330 構いません。 東吾様がお帰りでしたら お供いたします。 307 00:23:28,874 --> 00:23:33,178 (七重)東吾様…。 どちらへ いらっしゃいますの? 308 00:23:33,178 --> 00:23:38,050 かわせみという旅籠へ 行くつもりです。 309 00:23:38,050 --> 00:23:40,853 怒ってらっしゃいますのね いつかのこと。 310 00:23:40,853 --> 00:23:43,188 出されもしない酒に酔って➡ 311 00:23:43,188 --> 00:23:48,027 泊まりもしない うちへ 泊まった と言われれば 誰しも腹は立てましょう。 312 00:23:48,027 --> 00:23:50,329 申し訳ございません。 313 00:23:56,201 --> 00:24:02,207 八丁堀から お使いが見えた時 私 動転してしまって…。 314 00:24:05,010 --> 00:24:12,284 なぜ あんなことを申し上げたのか 自分でも 今になって後悔しております。 315 00:24:12,284 --> 00:24:15,654 私を かばってやろうと 思ったんじゃありませんか? 316 00:24:15,654 --> 00:24:21,527 それも… ございましたけれど➡ 317 00:24:21,527 --> 00:24:24,363 半分は私の願いのようなものだったと 思います。 318 00:24:24,363 --> 00:24:27,366 願い? 319 00:24:27,366 --> 00:24:32,504 東吾様が 本当に御酒をお過ごしになって…➡ 320 00:24:32,504 --> 00:24:38,711 私どもへ お泊まりくださるほど お心を許していただけたら…。 321 00:24:46,685 --> 00:24:50,856 (七重)東吾様は ご存じでしょうか? 322 00:24:50,856 --> 00:24:55,527 「嫁して三年 子なきは去る」ということ。 323 00:24:55,527 --> 00:25:00,366 知っていますが… それがどうかしたのですか? 324 00:25:00,366 --> 00:25:05,971 姉は 義兄上様のもとへ参りまして もう10年になりました。 325 00:25:05,971 --> 00:25:11,276 アッハハハハハ。 兄は そんな男ではありません。 326 00:25:11,276 --> 00:25:16,148 それに 義姉上とは 至って 仲むつまじい夫婦だし…➡ 327 00:25:16,148 --> 00:25:19,985 世の中には 10年 20年 連れ添って 子供のない夫婦が➡ 328 00:25:19,985 --> 00:25:22,821 めでとう添いとげる例も いくらでもある。 329 00:25:22,821 --> 00:25:27,693 また 10年 20年たっても 子供のできなかった夫婦に➡ 330 00:25:27,693 --> 00:25:30,996 思いがけず子宝の授かることもあります。 331 00:25:30,996 --> 00:25:37,669 でも 父は「神林の家に申し訳がない」と 申しまして…。 332 00:25:37,669 --> 00:25:42,307 義兄上様に 女子を世話するよう 人に頼んだと聞いております。 333 00:25:42,307 --> 00:25:47,312 そりゃ初耳だ…。 世間には よくある話だろうが。 334 00:25:50,049 --> 00:25:53,519 兄上は 「うん」とは言いますまい? 335 00:25:53,519 --> 00:25:58,023 きっぱりと お断りくださったそうでございます。 336 00:25:58,023 --> 00:26:01,260 アハハハ… あの夫婦は 仲がよすぎるから➡ 337 00:26:01,260 --> 00:26:06,965 俗に言う 「仲のよすぎる夫婦には 子のできる暇がない」という➡ 338 00:26:06,965 --> 00:26:09,268 あれですよ。 ハハハハ…。 339 00:26:09,268 --> 00:26:17,142 父にしてみれば 義兄上様のお心 有り難いと思えば思うだけ 一層…。 340 00:26:17,142 --> 00:26:22,147 神林のお血筋 なんとしてでも絶やすまいと…。 341 00:26:24,283 --> 00:26:26,652 私を東吾様と…。 342 00:26:26,652 --> 00:26:29,488 いや 七重殿 それについて…。いえ…。 343 00:26:29,488 --> 00:26:36,261 私 父から そのお話を聞きまして すぐに 姉に呼ばれましたの。 344 00:26:36,261 --> 00:26:38,664 義姉上に? 345 00:26:38,664 --> 00:26:45,304 姉は「父が 何と申しましょうと 東吾様とのことは承知してはならぬ。➡ 346 00:26:45,304 --> 00:26:50,676 東吾様には るい様とおっしゃる お方がおいでなのだから…。➡ 347 00:26:50,676 --> 00:26:54,546 お二人の邪魔をしてはならない」と…。 348 00:26:54,546 --> 00:26:57,549 義姉上が…? 349 00:26:57,549 --> 00:27:01,053 はい。 申しました。 350 00:27:05,190 --> 00:27:08,961 ♬~ 351 00:27:08,961 --> 00:27:13,832 姉が 羨ましゅうございました。➡ 352 00:27:13,832 --> 00:27:16,835 自分ばかり 好きなお方のそばにいて…➡ 353 00:27:16,835 --> 00:27:21,139 妹の私には「諦めよ」と言う➡ 354 00:27:21,139 --> 00:27:23,442 むごい姉だと…。 355 00:27:26,011 --> 00:27:29,815 私は…➡ 356 00:27:29,815 --> 00:27:32,718 どんなに傷ついてもいいから➡ 357 00:27:32,718 --> 00:27:38,157 東吾様のお嫁さんになりたいと 思いました。 358 00:27:38,157 --> 00:27:40,993 でも姉は…➡ 359 00:27:40,993 --> 00:27:47,299 「傷つくのは るい様と東吾様なのだ」と 申しました。 360 00:27:47,299 --> 00:27:51,837 自分が傷つくのは耐えられましても➡ 361 00:27:51,837 --> 00:27:55,507 ひ… 人を傷つけるのは…。 362 00:27:55,507 --> 00:27:57,442 (泣き声) 363 00:27:57,442 --> 00:27:59,845 七重殿…。 364 00:27:59,845 --> 00:28:04,683 (七重)お寄りくださいますな。 後ろに るい様がいらっしゃいます。 365 00:28:04,683 --> 00:28:07,186 るいが? 366 00:28:12,791 --> 00:28:20,265 私が るい様を ここへお呼びしました。 367 00:28:20,265 --> 00:28:24,970 「もし るい様が おいでくださらぬ時には…➡ 368 00:28:24,970 --> 00:28:31,476 七重が 東吾様を頂戴いたします」と➡ 369 00:28:31,476 --> 00:28:34,680 そう申し上げて…。 370 00:28:38,984 --> 00:28:45,857 小娘が賢しらぶってと また しかられますね…。 371 00:28:45,857 --> 00:28:48,560 戻ります 私。 372 00:28:57,369 --> 00:28:59,671 るい…。 373 00:29:05,110 --> 00:29:07,946 るい。 374 00:29:07,946 --> 00:29:20,659 (泣き声) 375 00:29:22,461 --> 00:29:25,130 すまない…。 376 00:29:25,130 --> 00:29:31,470 るいだけではなく お吉にも… 許してくれ。 377 00:29:31,470 --> 00:29:38,243 つまらない意地を張って ひとつきもの間 心配をかけたな。 378 00:29:38,243 --> 00:29:41,747 もう 二度としないから…。 379 00:29:45,651 --> 00:29:48,286 私の方こそ…。 380 00:29:48,286 --> 00:29:51,823 堪忍してください。 381 00:29:51,823 --> 00:29:59,698 麻生様のお嬢様に言われて… 私 行かないつもりでした。 382 00:29:59,698 --> 00:30:04,403 行くまいと… 必死になってました。 383 00:30:06,371 --> 00:30:08,373 ばか。 384 00:30:10,175 --> 00:30:15,013 お前が来なくたって 俺は きっと ここへ来たはずだ。 385 00:30:15,013 --> 00:30:18,316 つまらないこと 考えるな。 386 00:30:24,690 --> 00:30:30,195 るい…。 子供は… 子供は どうしたんだ? 387 00:30:30,195 --> 00:30:34,700 お文ちゃんですか? うん。 388 00:30:34,700 --> 00:30:39,871 今夜は お吉が預かってくれてます。 389 00:30:39,871 --> 00:30:57,289 ♬~ 390 00:30:57,289 --> 00:31:00,058 (セミの声) 391 00:31:00,058 --> 00:31:02,494 おい るい! 392 00:31:02,494 --> 00:31:06,164 尾張町の蛭子屋へでも行かねえか? まあ どうしたっていうんです? 393 00:31:06,164 --> 00:31:09,067 方月館道場から 代稽古の謝礼をもらったのでな➡ 394 00:31:09,067 --> 00:31:12,037 お前に着物でも買ってやりたい。 うわ~! 395 00:31:12,037 --> 00:31:16,308 おい お文を連れて 早く出かけよう。 おい お文ちゃ~ん! 396 00:31:16,308 --> 00:31:20,178 ⚟(お吉)は~い! お~ いた! さあさあ さあ おいで。 397 00:31:20,178 --> 00:31:22,114 それ! よいしょ~! 398 00:31:22,114 --> 00:31:25,317 まあ まあ 若様も 立派なお父様でいらっしゃいますね~。 399 00:31:25,317 --> 00:31:28,186 えっ? (東吾 るい)ハハハハハハ…。 400 00:31:28,186 --> 00:31:34,526 ♬~(手まり歌) 401 00:31:34,526 --> 00:31:36,461 こんにちは。 402 00:31:36,461 --> 00:31:38,397 (番頭)あ~ どうも 神林様。➡ 403 00:31:38,397 --> 00:31:41,032 いつも いつも ごひいきをいただきまして ありがとう存じます。 404 00:31:41,032 --> 00:31:43,335 おいおい 妙な挨拶をしてくれるな。 405 00:31:43,335 --> 00:31:46,037 ひいきにしてるのは 義姉上だ 俺じゃねえ。 ハハッ。 406 00:31:46,037 --> 00:31:48,874 とにかく これに似合いそうな物を 出してみてくれ。 407 00:31:48,874 --> 00:31:50,809 帯でも着物でもいい。 408 00:31:50,809 --> 00:31:52,744 いいものを できるだけ ゆっくり 見せてやってくれ。 409 00:31:52,744 --> 00:31:55,647 (番頭)はい 承知いたしました。 さあ どうぞ。 410 00:31:55,647 --> 00:31:59,584 さあ お文ちゃん 座って待ってようね。 411 00:31:59,584 --> 00:32:03,989 いらっしゃいませ。 いらっしゃいませ。 412 00:32:03,989 --> 00:32:08,660 まずは…。 ちょっと地味かしらね。 413 00:32:08,660 --> 00:32:11,496 いらっしゃいませ。 あっ ありがとう。 414 00:32:11,496 --> 00:32:13,431 (番頭) これなどは いかがでございましょう? 415 00:32:13,431 --> 00:32:15,434 見せてください。 416 00:32:17,836 --> 00:32:21,506 (番頭)あっ こりゃ… はい。 よくお似合いでございます。➡ 417 00:32:21,506 --> 00:32:25,844 これは 出羽の天童と申す所で 栽培をいたしております➡ 418 00:32:25,844 --> 00:32:28,513 紅花で染めましたもので➡ 419 00:32:28,513 --> 00:32:30,448 紅で染めると申しましても➡ 420 00:32:30,448 --> 00:32:33,852 このように色濃く染まりますのは 最初の染めだけでございまして➡ 421 00:32:33,852 --> 00:32:36,688 後へ行くほど 色が薄くなります。➡ 422 00:32:36,688 --> 00:32:38,723 しまいには 黄色になりましてな➡ 423 00:32:38,723 --> 00:32:43,028 天童の女たちは その染め残りで染めました黄色い布を➡ 424 00:32:43,028 --> 00:32:45,697 下着にして着るんだそうでございますよ。 425 00:32:45,697 --> 00:32:48,533 肌に着けて暖かく 冷えを防いで➡ 426 00:32:48,533 --> 00:32:52,337 体には ごくよいのだなどと申しまして…。 アハハハ! 427 00:32:52,337 --> 00:32:55,540 黄色い肌着? はい。 428 00:32:55,540 --> 00:32:57,742 何だ? どうかしたのか? 429 00:32:59,711 --> 00:33:05,484 番頭さん… もしかしたら それは こんな布じゃありませんか? 430 00:33:05,484 --> 00:33:07,419 あっ これでございます。 431 00:33:07,419 --> 00:33:13,158 これが 今 申しました 紅花染めの下着でございますが➡ 432 00:33:13,158 --> 00:33:20,031 あの… 失礼でございますが このお子は あなた様の? 433 00:33:20,031 --> 00:33:23,668 いいえ。 434 00:33:23,668 --> 00:33:26,705 では あの もしやして➡ 435 00:33:26,705 --> 00:33:29,007 お文様という お名では…。 436 00:33:29,007 --> 00:33:34,312 番頭さん お前さん どうして この子の名前を知ってるんだ? 437 00:33:34,312 --> 00:33:36,681 では お文ちゃんかい? 438 00:33:36,681 --> 00:33:38,617 (お文)はい。 439 00:33:38,617 --> 00:33:42,187 (番頭)おいおい お才さんや。 ちょっと ここへ おいで。 440 00:33:42,187 --> 00:33:44,189 (お才)はい。 441 00:33:47,325 --> 00:33:50,328 あっ…。 442 00:33:54,866 --> 00:34:00,038 おっ母ちゃん! お文! お文…。 443 00:34:00,038 --> 00:34:07,245 お文 お文…。 お文…。 444 00:34:08,847 --> 00:34:15,553 (お才の泣き声) 445 00:34:17,289 --> 00:34:19,658 御苦労さん。 446 00:34:19,658 --> 00:34:23,295 で 分かったかい? はあ 分かりました。 447 00:34:23,295 --> 00:34:26,831 一体 どういう事情なんです? 話してくださいな。 448 00:34:26,831 --> 00:34:29,501 いや~ 世の中には 奇妙な話もあるものですな。 449 00:34:29,501 --> 00:34:34,673 あの女 名前は お才と申しましてね 出羽 天童 紅花屋の嫁でした。 450 00:34:34,673 --> 00:34:36,608 うん それで? 451 00:34:36,608 --> 00:34:40,178 よく世間で言うでしょ。 「嫁して三年 子なきは去る」と。 452 00:34:40,178 --> 00:34:43,014 あ… それは つい この間 聞いたばかりだ。 453 00:34:43,014 --> 00:34:45,684 お才が嫁いでった紅花屋でも➡ 454 00:34:45,684 --> 00:34:50,188 「5年たって 子ができない時には 女房を離縁して 新しい嫁を入れ」…。 455 00:34:50,188 --> 00:34:52,691 まあ そういう決まりが 古くからあったそうです。 456 00:34:52,691 --> 00:34:54,626 まあ…。 457 00:34:54,626 --> 00:34:58,563 (源三郎)お才も 嫁に入って 4年たったが 子宝に恵まれなかった。➡ 458 00:34:58,563 --> 00:35:01,266 そこで 離縁されるんじゃないかと 里の母親に相談したっていうんですな。 459 00:35:01,266 --> 00:35:03,201 なるほど。 460 00:35:03,201 --> 00:35:05,470 この里の母親っていうのが 産婆をしておりましてね。 461 00:35:05,470 --> 00:35:08,807 たまたま 近くの湯治場の宿の女中が 男に だまされて➡ 462 00:35:08,807 --> 00:35:11,710 「子供ができたから なんとかしてくれ」 って相談を受けていたわけですが➡ 463 00:35:11,710 --> 00:35:17,515 「渡りに舟」と その女中の子供を お才の子供に仕立てようとしたわけだ。 464 00:35:17,515 --> 00:35:20,518 分かりました。 その宿の女中っていうのが お鹿…。 465 00:35:20,518 --> 00:35:23,655 (源三郎)そうだ。 466 00:35:23,655 --> 00:35:27,158 子供にするって どうやって子供にするんです? 467 00:35:27,158 --> 00:35:31,162 うん。 お才が「みごもった」と 紅花屋へ告げさせて➡ 468 00:35:31,162 --> 00:35:34,299 お才に つわりのまねをさせたわけだ。 469 00:35:34,299 --> 00:35:37,669 まあ 宿の女中の腹は 大きくなるにつれて➡ 470 00:35:37,669 --> 00:35:39,604 お才の腹にも 布団をこう巻きつけましてね➡ 471 00:35:39,604 --> 00:35:41,539 産み月が近づいてきたから➡ 472 00:35:41,539 --> 00:35:43,541 「里へ行って産んでくる」と そう言わせたわけですよ。 473 00:35:43,541 --> 00:35:47,679 そんなことして 御亭主に知られないもんですかね? 474 00:35:47,679 --> 00:35:50,582 まあ 幸いというか 亭主は商用で 上方へ出かけてましたから➡ 475 00:35:50,582 --> 00:35:52,851 うまくごまかせたんだと思いますがね。➡ 476 00:35:52,851 --> 00:35:55,754 まあ まんまと お鹿が産んだ お文を➡ 477 00:35:55,754 --> 00:35:57,722 その お才が産んだ子供のように仕組んで➡ 478 00:35:57,722 --> 00:36:01,259 その お才が子供を抱いて 紅花屋へ帰ってくる。➡ 479 00:36:01,259 --> 00:36:05,130 で 一方 お鹿の方も相当の金をもらって 宿の方へ戻ってったわけだ。 480 00:36:05,130 --> 00:36:08,633 なるほど。 それで 八方丸く 収まったんですか? 481 00:36:08,633 --> 00:36:12,504 (源三郎)うん。 紅花屋の方じゃ 誰一人 疑う者もなく➡ 482 00:36:12,504 --> 00:36:17,142 お文は お才の手元で すくすくと育ってったんだ。 483 00:36:17,142 --> 00:36:20,145 (お吉) すると お鹿の方で欲が出たんですね? 484 00:36:20,145 --> 00:36:24,816 (源三郎)まあ お鹿より お鹿の働いていた 湯治宿へ湯治に来ていた喜三が➡ 485 00:36:24,816 --> 00:36:26,851 その話を小耳に挟んで➡ 486 00:36:26,851 --> 00:36:29,354 お鹿に知恵をつけたらしいんですな。 487 00:36:32,290 --> 00:36:35,593 (嘉助)なるほど。 そこへ喜三の野郎が…。 488 00:36:37,162 --> 00:36:39,831 (源三郎)喜三に たきつけられて お鹿は➡ 489 00:36:39,831 --> 00:36:42,167 金をくれなければ 何もかも 洗いざらいぶちまけると➡ 490 00:36:42,167 --> 00:36:44,102 お才を脅かした。➡ 491 00:36:44,102 --> 00:36:47,305 お才は 真っ青になって 金を工面して渡した。 492 00:36:47,305 --> 00:36:50,842 お願いします。 (お吉)かわいそうに。 493 00:36:50,842 --> 00:36:52,877 (源三郎)まあ そのために お才は➡ 494 00:36:52,877 --> 00:36:56,314 死んだ父親が残していってくれた 田地田畑を➡ 495 00:36:56,314 --> 00:36:59,684 そっくり 人手に渡してしまったと 言ってましたね。 496 00:36:59,684 --> 00:37:03,555 けど お金を渡したら もうそれで 事は済んだんじゃないんですか? 497 00:37:03,555 --> 00:37:06,958 一度うまくいったとなると 悪いやつっていうのは➡ 498 00:37:06,958 --> 00:37:09,461 味を占めて 2度3度と同じことをするもんなんです。 499 00:37:09,461 --> 00:37:12,130 じゃあ お鹿は また お才さんをゆすったっていうんですか? 500 00:37:12,130 --> 00:37:14,065 ゆすっただけじゃないんだね。 501 00:37:14,065 --> 00:37:16,968 お鹿と喜三は お文をかっさらって 江戸へ逃げちまった。 502 00:37:16,968 --> 00:37:18,903 ひどいことしやがる。 503 00:37:18,903 --> 00:37:22,774 それとも お鹿が急に 母親らしい心を取り戻して➡ 504 00:37:22,774 --> 00:37:25,143 お文ちゃんを 手元に置いときたくなった➡ 505 00:37:25,143 --> 00:37:28,480 …とでも言うんでしょうかね? (源三郎)さあね そこんところは➡ 506 00:37:28,480 --> 00:37:30,515 あの2人を たたいてみなくちゃ 分かりませんね。 507 00:37:30,515 --> 00:37:34,285 それで お才は どうしたんだ? 源さん。 508 00:37:34,285 --> 00:37:38,156 お才は母親と 天童を 夜逃げ同様に出てきたんだそうですよ。 509 00:37:38,156 --> 00:37:41,659 しかし この広いお江戸で➡ 510 00:37:41,659 --> 00:37:44,496 どこにいるかも分からない お文ちゃんを➡ 511 00:37:44,496 --> 00:37:48,366 紅花染めの下着と名前だけで 捜そうなんて…➡ 512 00:37:48,366 --> 00:37:52,170 やれやれ… さぞ 苦労したこってしょうね。 513 00:37:52,170 --> 00:37:55,507 かわいそうにね。 うん…。 514 00:37:55,507 --> 00:38:01,246 (源三郎)東吾さん 事がここまで 分かったら 放っちゃおけませんな。 515 00:38:01,246 --> 00:38:03,181 お縄にするってんだな? 516 00:38:03,181 --> 00:38:05,884 少しは 痛い目に遭わした方がいいでしょ。 517 00:38:07,952 --> 00:38:09,888 俺に用っていうのは 誰だい? 518 00:38:09,888 --> 00:38:12,090 へい わてでござんす。 わて。 519 00:38:14,259 --> 00:38:17,629 知らねえな。 へえ。 そら あんた 知らんでも➡ 520 00:38:17,629 --> 00:38:20,131 この わては あんさん よう知っとります。 521 00:38:20,131 --> 00:38:22,066 喜三さんでっしゃろ? ああ。 522 00:38:22,066 --> 00:38:27,005 ねえ。 出羽の天童で 紅花屋のおかみを えらい痛めつけたっつって あんた…。➡ 523 00:38:27,005 --> 00:38:30,275 ねえ。 こら 待て! 524 00:38:30,275 --> 00:38:34,145 放しやがれ! この野郎…。 525 00:38:34,145 --> 00:38:38,650 この野郎! この野郎。 526 00:38:38,650 --> 00:38:40,685 旦那! 527 00:38:40,685 --> 00:38:46,291 ♬~ 528 00:38:46,291 --> 00:38:48,827 (源三郎)長助! (長助)うわっ 貴様…。 529 00:38:48,827 --> 00:38:59,537 ♬~ 530 00:38:59,537 --> 00:39:03,241 何が痛いか… この野郎…。 531 00:39:03,241 --> 00:39:06,544 旦那… 押さえました。 532 00:39:11,616 --> 00:39:14,118 急に子供が かわいくなって 連れてきたんだったら➡ 533 00:39:14,118 --> 00:39:16,454 ねえ どうして うちに お文ちゃんを置いて➡ 534 00:39:16,454 --> 00:39:18,389 逃げてったんでしょうね? 535 00:39:18,389 --> 00:39:21,626 無知な母親には 存外 そういうのが多いというよ。 536 00:39:21,626 --> 00:39:24,462 ふ~ん。 537 00:39:24,462 --> 00:39:27,966 ♬~(手まり歌) 538 00:39:27,966 --> 00:39:30,268 ほら…。 539 00:39:34,639 --> 00:39:38,276 お才さんって人も お才さんの おっ母さんっていう人も➡ 540 00:39:38,276 --> 00:39:40,812 紅花屋から離縁になるのが嫌で➡ 541 00:39:40,812 --> 00:39:43,281 お文ちゃん 江戸まで 捜しに来たんでしょうか? 542 00:39:43,281 --> 00:39:46,184 ん~ そいつは 何とも言えねえが…。 543 00:39:46,184 --> 00:39:48,987 まあ お文ちゃんにしたら いくら実の親でも➡ 544 00:39:48,987 --> 00:39:51,656 お鹿なんぞと暮らすよりは 紅花屋 行った方が幸せだろうな。 545 00:39:51,656 --> 00:39:53,992 そりゃそうでしょうけど➡ 546 00:39:53,992 --> 00:39:58,496 育ての親のお才さんに お上じゃ お文ちゃんを渡してくれるんですか? 547 00:39:58,496 --> 00:40:02,300 お鹿みてえな いいかげんな女には お上だって 渡しやしめえ。 548 00:40:02,300 --> 00:40:06,170 渡すとするなら お才だろうが…。 549 00:40:06,170 --> 00:40:08,673 けど… おい。 550 00:40:10,174 --> 00:40:14,846 いずれにせよ お前が お文ちゃん 引き取ろうなどと考えるのは➡ 551 00:40:14,846 --> 00:40:17,181 筋違いだからな。 552 00:40:17,181 --> 00:40:20,084 分かってますよ! そんなこと。 553 00:40:20,084 --> 00:40:22,520 アッハハ…。 554 00:40:22,520 --> 00:40:27,859 親子なんだからって… ねえ 思うじゃない? 555 00:40:27,859 --> 00:40:34,032 親子なんだから 一緒にいるのが 一番幸せだって… 世間じゃさ。 556 00:40:34,032 --> 00:40:37,068 世間にゃ いろんな親子が あらあね。 557 00:40:37,068 --> 00:40:41,539 今度という今度は 私もそう思った。 558 00:40:41,539 --> 00:40:44,342 いろんな親子がいるから 世間の言うとおりに➡ 559 00:40:44,342 --> 00:40:50,548 一緒にいるのが 一番幸せにはならない 親子だって いるんだな~って。 560 00:40:50,548 --> 00:40:54,719 長谷川町の蛭子屋さんの仕事場で➡ 561 00:40:54,719 --> 00:40:58,222 お才さんを見つけた時の お文ちゃん➡ 562 00:40:58,222 --> 00:41:00,158 「お母ちゃん!」って言って➡ 563 00:41:00,158 --> 00:41:03,061 お嬢さんの手 振り切って 走って 行っちまったっていうじゃないか。 564 00:41:03,061 --> 00:41:05,296 いい人なんだよ きっと。 565 00:41:05,296 --> 00:41:07,365 ⚟(源三郎)ごめんよ。 (おきく おもよ)いらっしゃいまし! 566 00:41:07,365 --> 00:41:10,001 畝の旦那だわ。 567 00:41:10,001 --> 00:41:12,303 あら お文ちゃんも一緒! えっ? 568 00:41:12,303 --> 00:41:18,176 お嬢さん! お文ちゃんが 畝の旦那と…。 え~? 569 00:41:18,176 --> 00:41:21,512 おい るい! 忘れるなよ。 うん? 570 00:41:21,512 --> 00:41:24,515 筋違い。 分かってます! 571 00:41:27,318 --> 00:41:31,189 お文は よかったね お母ちゃんと一緒…。 572 00:41:31,189 --> 00:41:35,026 お文ちゃん! 573 00:41:35,026 --> 00:41:37,328 天童へ帰るのかい? 574 00:41:37,328 --> 00:41:41,032 いいえ 二度と国へ戻るつもりはありません。 575 00:41:41,032 --> 00:41:44,535 まあ! 国へ戻らないで どうするっていうんです? 576 00:41:44,535 --> 00:41:46,871 お母さんとも相談しました。 577 00:41:46,871 --> 00:41:53,211 もう 人をだましてまで 紅花屋に居座るのはよそうって。 578 00:41:53,211 --> 00:41:58,349 お文を捜しに江戸へ出てくる道々 ず~っと考えてたんです。 579 00:41:58,349 --> 00:42:04,155 この子が見つかったら 3人で 誰も知らない土地へ行って➡ 580 00:42:04,155 --> 00:42:07,158 一生懸命 働いて暮らそう…。 581 00:42:09,494 --> 00:42:17,235 この子 手渡したくないから 私 かわいいから この子が…。 582 00:42:17,235 --> 00:42:20,138 生まれた土地 捨てたんです。 583 00:42:20,138 --> 00:42:22,073 お才さん…。 584 00:42:22,073 --> 00:42:24,842 お金なんて いりません。 585 00:42:24,842 --> 00:42:27,345 この子が こうして戻ってきてくれれば…。 586 00:42:30,515 --> 00:42:34,185 嫁いで 5年たっても 子ができなかったら➡ 587 00:42:34,185 --> 00:42:38,856 昔からの しきたりを盾に この人を離縁したかもしれない➡ 588 00:42:38,856 --> 00:42:41,859 そんな夫に もう未練はねえと 言ってんですよ。 589 00:42:43,728 --> 00:42:48,032 この子 私の命でございます。 590 00:43:00,144 --> 00:43:03,047 ありがとうございました。 お達者で。 591 00:43:03,047 --> 00:43:05,650 気を付けて…。 気を付けてね。 592 00:43:05,650 --> 00:43:07,952 お文ちゃん 待って! 593 00:43:10,521 --> 00:43:13,991 はい。 ありがとう。 594 00:43:13,991 --> 00:43:18,196 幸せになってね。 (お才)はい。 595 00:43:28,306 --> 00:43:31,209 どこへ 行くのかしらね? 596 00:43:31,209 --> 00:43:36,514 落ち着く先は 源さんが宰領した。 心配をするな。 597 00:43:36,514 --> 00:43:39,851 でも 喜三ってやつ 大丈夫なのかしらね。 598 00:43:39,851 --> 00:43:43,721 大丈夫だよ。 喜三は 畝の旦那が ふん縛って➡ 599 00:43:43,721 --> 00:43:46,324 牢へ ぶち込んでもらったんだよ。 600 00:43:46,324 --> 00:43:48,392 かわせみの宿銭 踏み倒した分だけだって➡ 601 00:43:48,392 --> 00:43:51,195 10日やそこらは出てこられやしねえやな。 602 00:43:51,195 --> 00:43:54,866 その間に ゆっくり 新しい土地へ たどりついて➡ 603 00:43:54,866 --> 00:43:58,536 幸せになれるだろうさ。 あ~ そう願いたいもんですね。 604 00:43:58,536 --> 00:44:00,538 本当…。 605 00:44:04,642 --> 00:44:09,981 おい… いつまで未練たらしく 人の子を見送ってるんだ? 606 00:44:09,981 --> 00:44:12,650 えっ? 607 00:44:12,650 --> 00:44:19,290 人の子より 今年は 自分の子を産めよ。 608 00:44:19,290 --> 00:44:21,592 ウフッ…。 609 00:45:06,837 --> 00:45:10,341 七重。 (七重)はい。 610 00:45:12,143 --> 00:45:14,812 いいのか? 611 00:45:14,812 --> 00:45:18,983 東吾のことだ。 お前…。 612 00:45:18,983 --> 00:45:25,289 父上… もう そのお話は いたしませんように。 613 00:45:49,046 --> 00:45:53,050 東吾のやつは 七重が気に入らねえってのかい? 614 00:45:56,320 --> 00:45:59,690 ふ~ん… ぜいたくな野郎だな。 615 00:45:59,690 --> 00:46:05,262 あれだけの娘 ほかには ちょっと… 見当たらんぞ…。 616 00:46:05,262 --> 00:46:09,467 もう そのお話は… 東吾さんにもなさいませんように。 617 00:46:09,467 --> 00:46:16,641 なぜだ? えっ なぜなんだ? 熱っ! 618 00:46:16,641 --> 00:46:20,278 暑い夏になりそうですね。 619 00:46:20,278 --> 00:46:23,180 あ~ はあ…。 620 00:46:23,180 --> 00:46:28,019 いや 俺たちにな いつまで たっても 子ができねえもんだから➡ 621 00:46:28,019 --> 00:46:31,889 それで おやじ殿 いらだってるんだ。 622 00:46:31,889 --> 00:46:35,860 なあ おい。 本当にできねえのかい? 623 00:46:35,860 --> 00:46:38,162 存じません。 624 00:46:38,162 --> 00:46:40,498 (通之進)いや あの… なあ? 625 00:46:40,498 --> 00:46:44,368 ひょっこり できたって は… 話も…。 626 00:46:44,368 --> 00:46:48,172 何だって そんな… 大きいやつを据えるんだい…。 627 00:46:48,172 --> 00:46:51,976 熱っ… はあ…。フフフフ。 628 00:46:56,847 --> 00:47:02,153 5年たって 子供ができなかったら 離縁ですか? 私。 629 00:47:03,654 --> 00:47:08,125 兄上と義姉上は もう10年になるよ。 630 00:47:08,125 --> 00:47:13,931 でも私は 離縁にしていただかなければ いけないのかもしれませんね。 631 00:47:19,136 --> 00:47:22,039 怒るぞ。 632 00:47:22,039 --> 00:47:24,008 それでなくても 私は…。 633 00:47:24,008 --> 00:47:30,147 私のために あなたを いつまでも 世に出せないでいるのじゃないかと。 634 00:47:30,147 --> 00:47:32,083 るい…。 635 00:47:32,083 --> 00:47:34,151 私が いさえしなければ➡ 636 00:47:34,151 --> 00:47:37,888 あなたは もう とうの昔に しかるべきお家の婿殿で➡ 637 00:47:37,888 --> 00:47:40,791 お役にも 就いていらっしゃったでしょうものを。 638 00:47:40,791 --> 00:47:44,495 言うなよ。 639 00:47:44,495 --> 00:47:48,833 いつでも私は 潔く別れる覚悟でいたはずなのに…。 640 00:47:48,833 --> 00:47:50,835 もういい。 641 00:47:52,503 --> 00:47:54,538 番頭さん。 これ お嬢さんに見せてくださいな。 642 00:47:54,538 --> 00:47:58,008 後にしねえ。 えっ? 643 00:47:58,008 --> 00:48:01,312 あ~ もう! 後にしろってんだい! 644 00:48:05,616 --> 00:48:13,357 俺は お前がお文ちゃんに夢中でいると 源さんから聞いて 不満だった。 645 00:48:13,357 --> 00:48:16,794 赤の他人の子供に夢中で➡ 646 00:48:16,794 --> 00:48:20,631 俺と ひとつき近くも会わずにいても 平気なのかと。 647 00:48:20,631 --> 00:48:54,131 ♬~