1 00:00:02,135 --> 00:00:11,211 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:11,211 --> 00:02:09,196 ♬~ 3 00:02:24,544 --> 00:02:28,882 (番太)ぎゃ~!➡ 4 00:02:28,882 --> 00:02:32,185 ひっ ひっ… 人殺しだ~! 5 00:02:40,360 --> 00:02:49,903 ♬~ 6 00:02:49,903 --> 00:02:52,239 (藤吉)ご苦労さまです。 7 00:02:52,239 --> 00:02:54,574 (源三郎)殺しだと?(藤吉)へい。 身元は? 8 00:02:54,574 --> 00:02:59,446 割れました。 中洲の井筒屋っていう茶屋の おかみで お節といいます。 9 00:02:59,446 --> 00:03:02,149 そうか。お改めくださいますか。 うん。 10 00:03:05,218 --> 00:03:07,187 (藤吉)あっしが駆けつけました時には➡ 11 00:03:07,187 --> 00:03:09,690 目ん玉が飛び出るぐらいに カ~ッと見開いて➡ 12 00:03:09,690 --> 00:03:13,193 そら ものすごうござんしたんで 目だけ ふさいでやりやした。 13 00:03:13,193 --> 00:03:16,096 絞殺だな。 へい。 力任せに絞め殺されてます。 14 00:03:16,096 --> 00:03:18,065 着物も帯も湿ってるじゃねえか。 15 00:03:18,065 --> 00:03:20,333 最初っから そんな あんばいで➡ 16 00:03:20,333 --> 00:03:23,537 濡れた草むら 左を下にして 転がされてましたから。 17 00:03:23,537 --> 00:03:27,040 う~ん… とすると 雨が上がってから 転がされたってわけか。 18 00:03:27,040 --> 00:03:29,076 だろうと存じますが。 19 00:03:29,076 --> 00:03:33,914 で… 井筒屋のおかみだって知れたのは? 20 00:03:33,914 --> 00:03:36,550 なに 今朝方 井筒屋から➡ 21 00:03:36,550 --> 00:03:39,352 「お節が ゆうべっから戻らねえ」と 届け出がありましたんで➡ 22 00:03:39,352 --> 00:03:41,721 年格好 身なり そうじゃねえかと思って➡ 23 00:03:41,721 --> 00:03:45,592 番頭を呼んで 首実検させやした。 24 00:03:45,592 --> 00:03:48,361 仏が転がってた場所は? 25 00:03:48,361 --> 00:03:50,297 へい 神田 昌平橋の南➡ 26 00:03:50,297 --> 00:03:53,066 阿部伊予守様 お上屋敷の北側にあります➡ 27 00:03:53,066 --> 00:03:55,969 俗に幽霊坂って 呼ばれてる坂の道っ端で➡ 28 00:03:55,969 --> 00:03:57,938 ここの番太が 通りがかって 見つけました。 29 00:03:57,938 --> 00:03:59,940 行ってみよう。 お供します。 30 00:03:59,940 --> 00:04:01,875 (戸の開閉音) 31 00:04:01,875 --> 00:04:04,377 (徳松)ご苦労さんです。 32 00:04:07,180 --> 00:04:09,382 ここです。 33 00:04:14,688 --> 00:04:17,324 ゆうべの嵐で 地べたは 軟らかくなってるんだ。 34 00:04:17,324 --> 00:04:19,259 足跡は残ってなかったか? 35 00:04:19,259 --> 00:04:22,762 死骸を運び出す時にも 十分 気を付けたんですがね。 36 00:04:26,867 --> 00:04:29,536 こりゃ ここで殺されたもんじゃねえな。 37 00:04:29,536 --> 00:04:32,439 どっから運んできたもんでしょうね? 38 00:04:32,439 --> 00:04:34,407 引きずってきた跡もねえようだな。 39 00:04:34,407 --> 00:04:38,545 といって お節は女にしちゃあ あのとおり おっきい方でござんしたから。 40 00:04:38,545 --> 00:04:43,049 男でも 1人で担ぐのは無理だ。 相撲取りなら 別だけどな。 41 00:04:43,049 --> 00:04:45,886 ハッ…。バカ野郎! あっ 痛っ! 42 00:04:45,886 --> 00:04:48,355 (源三郎)井筒屋の番頭 清兵衛だな? 43 00:04:48,355 --> 00:04:50,290 (清兵衛)は… はい! 44 00:04:50,290 --> 00:04:53,193 (源三郎)ゆうべ お節が 家 出たのは 何どきごろだ? 45 00:04:53,193 --> 00:04:56,563 暮れ六つが鳴って 間もなくだったと存じます。 46 00:04:56,563 --> 00:05:01,401 まだ 雨は降りだしておりませんでしたが あの風で…。 47 00:05:01,401 --> 00:05:08,175 (強い風の音) 48 00:05:08,175 --> 00:05:10,510 (お節)番頭さん こんな風だ。 49 00:05:10,510 --> 00:05:13,547 お客様の来るようなこともないだろう。 今日は閉めておくれな。 50 00:05:13,547 --> 00:05:17,184 いいえ。 それが今 2組 お入りになっていらっしゃいますんで➡ 51 00:05:17,184 --> 00:05:21,021 まさかと思っていたもんですから 板場の方では大騒ぎをしております。 52 00:05:21,021 --> 00:05:24,057 おやまあ 物好きなお客様もいるものだね。 53 00:05:24,057 --> 00:05:26,526 え~ 1組は 越後屋さんのご隠居で➡ 54 00:05:26,526 --> 00:05:29,429 ちょいと ご挨拶に行っていただけませんか? 55 00:05:29,429 --> 00:05:32,399 すまないけど 私は出かけたと そう申し上げておくれな。 56 00:05:32,399 --> 00:05:36,870 えっ? こんな荒れもように おかみさん どちらへ? 57 00:05:36,870 --> 00:05:40,340 急用を思い出したんだよ。 堀江町まで行ってくる。 58 00:05:40,340 --> 00:05:42,275 堀江町? 59 00:05:42,275 --> 00:05:45,879 堀江町の茶問屋で 小津屋六兵衛という方ん所へ➡ 60 00:05:45,879 --> 00:05:49,349 おかみさんの妹の おくめさんが 片づいていらっしゃいますんで➡ 61 00:05:49,349 --> 00:05:52,719 てっきり そこへおいでになるんだと ばかり思っておりましたが…。 62 00:05:52,719 --> 00:05:54,754 そうじゃなかったっていうのかい。 63 00:05:54,754 --> 00:05:57,224 はい。 今朝になりまして 小津屋さんから➡ 64 00:05:57,224 --> 00:06:00,060 大雨のお見舞いのお使いが見えました。 65 00:06:00,060 --> 00:06:03,029 聞いてみると おかみさんは行ってない。 66 00:06:03,029 --> 00:06:05,832 びっくりいたしまして 手前が➡ 67 00:06:05,832 --> 00:06:08,301 小津屋さんに 飛んでいってまいりましたが…。 68 00:06:08,301 --> 00:06:10,837 確かにお節は行ってなかったんだな? 69 00:06:10,837 --> 00:06:13,039 はい…。 70 00:06:17,611 --> 00:06:22,315 おめえ 井筒屋に奉公して 何年になる? 71 00:06:22,315 --> 00:06:26,686 亡くなりました旦那様が… 井筒屋をお継ぎになる前からの➡ 72 00:06:26,686 --> 00:06:30,523 つまり ご先代からでございますから 4… 40年近くなります。 73 00:06:30,523 --> 00:06:34,327 (源三郎)女房 子は? 久松町に 女房と伜が… はい。 74 00:06:34,327 --> 00:06:36,396 ゆうべは 家に帰らなかったんだな? 75 00:06:36,396 --> 00:06:38,531 (清兵衛)あ… あの嵐で➡ 76 00:06:38,531 --> 00:06:40,567 お客様が そのまま お泊まりになりまして➡ 77 00:06:40,567 --> 00:06:42,702 おかみさんも留守➡ 78 00:06:42,702 --> 00:06:47,207 で 女中頭のお品さんと 板場の松助と 手前と3人➡ 79 00:06:47,207 --> 00:06:52,345 とうとう 夜明かしをいたしましたんで うちへは帰りませんでした。 80 00:06:52,345 --> 00:06:54,347 ふ~ん…。 81 00:06:56,216 --> 00:06:58,885 (東吾)小津屋へは行ってみたかい? (源三郎)行きました。 82 00:06:58,885 --> 00:07:01,288 六兵衛にも おくめにも 会ってきましたが➡ 83 00:07:01,288 --> 00:07:03,823 お節は これまで一度も小津屋に 泊まったことはないんだそうです。 84 00:07:03,823 --> 00:07:07,661 待ってくれ 源さん。 井筒屋のお節は これまでにも➡ 85 00:07:07,661 --> 00:07:10,697 小津屋へ泊まったと 店の者には言っていた。 そうなのかい? 86 00:07:10,697 --> 00:07:13,833 そうなんですよ。 だから 番頭の清兵衛も➡ 87 00:07:13,833 --> 00:07:15,769 てっきり 小津屋に泊まってるもんだと思って➡ 88 00:07:15,769 --> 00:07:17,704 朝まで騒ぎもしなかったってんですね。 89 00:07:17,704 --> 00:07:19,706 (るい)妹さんの嫁ぎ先に泊まらないで➡ 90 00:07:19,706 --> 00:07:22,509 じゃあ どこに泊まっていたんです? そのおかみさん。 91 00:07:22,509 --> 00:07:24,544 さあ そいつは分かりませんな。 92 00:07:24,544 --> 00:07:26,680 いつごろからなんだい? 93 00:07:26,680 --> 00:07:29,516 妹の所へ泊まると称して うちを空けるようになったのは? 94 00:07:29,516 --> 00:07:31,851 ごく最近のことだと 番頭は言っておりました。 95 00:07:31,851 --> 00:07:36,323 先月の初めに1度 月末に2~3度…➡ 96 00:07:36,323 --> 00:07:39,693 今月になってからは ゆうべで2度目だと申しております。 97 00:07:39,693 --> 00:07:43,029 それ以前には なかったことなんですか?はい。 98 00:07:43,029 --> 00:07:45,532 男が できたんだよ そりゃ。 99 00:07:45,532 --> 00:07:47,567 50近くになってからですか? 100 00:07:47,567 --> 00:07:49,869 その年になってからの色恋だから➡ 101 00:07:49,869 --> 00:07:53,740 店の者に うそをついて 嵐ん中 男に会いに出かけていった。 102 00:07:53,740 --> 00:07:55,742 そうだろう? 源さん。 103 00:07:55,742 --> 00:07:59,212 私も そう考えて 番頭に問いただしてみたんですがね。 104 00:07:59,212 --> 00:08:04,484 すると 「男は確かにいたらしいが 相手は 誰だか分からない」って言うんです。 105 00:08:04,484 --> 00:08:06,820 お節の亭主が死んだのは いつだい? 106 00:08:06,820 --> 00:08:09,723 (源三郎)12年前ですね。 それ以来 ずっと後家を通してきたんです。 107 00:08:09,723 --> 00:08:12,158 まあ 多少の男出入りは あったらしいんですが➡ 108 00:08:12,158 --> 00:08:16,830 この5年は 男っ気なしだったといいます。 器量は いい方かい? 109 00:08:16,830 --> 00:08:19,666 (源三郎)あっ いやいや… そう いいとは言えますまい。 110 00:08:19,666 --> 00:08:21,701 まあ それだけに 男には金を貢いできたんですが➡ 111 00:08:21,701 --> 00:08:23,837 今になって考えますとね➡ 112 00:08:23,837 --> 00:08:26,873 「どうして あんなに無駄遣いをしたのか 悔しくて夜も眠れねえ」って➡ 113 00:08:26,873 --> 00:08:29,009 自分で言ってたっていうんですね。 114 00:08:29,009 --> 00:08:31,845 それほど懲りていたはずの男狂いを➡ 115 00:08:31,845 --> 00:08:35,715 50近くなってから また始めたというんでしょうかね? 116 00:08:35,715 --> 00:08:37,717 ええ…。➡ 117 00:08:37,717 --> 00:08:41,855 間違いなく5年ばかりは 男には振り向いてもみようとしないで➡ 118 00:08:41,855 --> 00:08:44,324 なりふり構わず 家業に 精 出していた お節が➡ 119 00:08:44,324 --> 00:08:48,194 急に身なりも派手に若作りになって 化粧も濃くなったと申します。 120 00:08:48,194 --> 00:08:52,198 は~あ…。 121 00:08:52,198 --> 00:08:54,701 どうかなさいましたか? 122 00:08:54,701 --> 00:08:57,203 どうして こう ぶくぶく太るのかと思ってさ➡ 123 00:08:57,203 --> 00:08:59,906 我ながら嫌になるよ。 124 00:09:04,477 --> 00:09:07,280 は~あ…。 125 00:09:07,280 --> 00:09:10,817 (お吉)そりゃ 好きな人ができたに 決まってますよ。 126 00:09:10,817 --> 00:09:13,486 嫌ですね。 いい年をして。 127 00:09:13,486 --> 00:09:17,657 常連のお客様とか 番頭さんとか板前さんとか? 128 00:09:17,657 --> 00:09:21,294 まあ そんな見当でしょうけどね。 ねえ 畝様? 129 00:09:21,294 --> 00:09:23,830 いや~ それがね➡ 130 00:09:23,830 --> 00:09:27,300 客は ともかく 店の男たちは 一応 当たってみたんですが➡ 131 00:09:27,300 --> 00:09:29,836 それらしいのは見当たりませんな。 132 00:09:29,836 --> 00:09:35,642 お節が死んで… なあ? 一番 得をするのは誰だい? 133 00:09:37,310 --> 00:09:40,513 一番 得をする者ですか? うん。 134 00:09:40,513 --> 00:09:42,449 小津屋六兵衛だろう。 135 00:09:42,449 --> 00:09:45,385 お節には子供がねえんだ。 死んだ亭主も一人っ子だ。 136 00:09:45,385 --> 00:09:47,387 ほかに これって親類もねえんだもん。 137 00:09:47,387 --> 00:09:49,522 井筒屋は 六兵衛と おくめ夫婦のものにならあ。 138 00:09:49,522 --> 00:09:53,326 なるほど… 一番 得をするのは 確かに 小津屋六兵衛だが➡ 139 00:09:53,326 --> 00:09:56,229 六兵衛は あの晩 家 出なかったんだよ。 140 00:09:56,229 --> 00:10:02,035 そりゃ 奉公人も間違いねえと言ってる。 ええ。 141 00:10:02,035 --> 00:10:05,538 それに堀江町の小津屋からじゃ 遠すぎらあ。 142 00:10:05,538 --> 00:10:10,043 男の足でも 行って帰って 一刻は 十分かかりやしょう。 143 00:10:10,043 --> 00:10:12,712 うん…。 ましてや 嵐の夜だもんな。 144 00:10:12,712 --> 00:10:16,349 奉公人に気付かれぬ間にってのは 無理だよな。 145 00:10:16,349 --> 00:10:18,852 じゃあ 一体 誰が下手人だってんですよ? 146 00:10:20,553 --> 00:10:24,257 誰とも知れねえ お節の色恋の相手…。 147 00:10:28,294 --> 00:10:30,563 それしか考えようがねえじゃねえか。 148 00:10:30,563 --> 00:10:33,266 それじゃ まるで見当もつかねえや。 149 00:10:43,743 --> 00:10:46,946 ねえ…。 うん? 150 00:10:48,581 --> 00:10:53,386 最初から殺す気で そんな深い仲に なったっていうんでしょうか。 151 00:10:55,088 --> 00:10:59,259 井筒屋の お節殺しか? ええ…。 152 00:10:59,259 --> 00:11:02,529 最初っから殺すつもりで そうなったんだとすれば➡ 153 00:11:02,529 --> 00:11:09,035 店の者にも お節の相手が 誰だか知れねえように用心してかかる。 154 00:11:09,035 --> 00:11:14,040 なるほど。 こりゃ 源さん… 手を焼くぜ。 155 00:11:15,708 --> 00:11:19,345 だけど もし そうだとしたら…➡ 156 00:11:19,345 --> 00:11:23,883 ねえ 何を目当てに? うん? 157 00:11:23,883 --> 00:11:26,920 何を目当てに お節さん 殺したのか➡ 158 00:11:26,920 --> 00:11:30,557 それを調べりゃ 下手人も分かるんじゃありませんか? 159 00:11:30,557 --> 00:11:34,260 それが分からねえから 源さん 苦労してるんだよ…。 160 00:11:36,429 --> 00:11:38,731 商売人に見当がつかねえものを➡ 161 00:11:38,731 --> 00:11:42,235 何も おめえが そう考え込むことはねえだろう。 162 00:11:42,235 --> 00:11:45,572 ほかにすることが ねえわけじゃなし。 ああっ。 163 00:11:45,572 --> 00:11:47,607 大きな声 出すない。 164 00:11:47,607 --> 00:12:02,121 ♬~ 165 00:12:14,334 --> 00:12:17,236 何だ? あの舟は…。 166 00:12:17,236 --> 00:12:19,539 船頭が いねえな。 167 00:12:19,539 --> 00:12:23,042 妙だぜ ありゃあ。 おい とっつぁん ちょいと見てくれ。 168 00:12:23,042 --> 00:12:25,044 よいしょ…。 169 00:12:49,569 --> 00:12:51,904 はっ あっ…。 170 00:12:51,904 --> 00:12:54,374 どうしたい? 死んでる…。 171 00:12:54,374 --> 00:12:56,576 何!? 172 00:13:05,018 --> 00:13:08,888 (男たち)うわ~! 173 00:13:08,888 --> 00:13:11,691 誰だい? 今度は。 174 00:13:11,691 --> 00:13:15,194 下柳原同朋町 舟宿の女主 お峯です。 175 00:13:15,194 --> 00:13:17,130 また 女主か…。 176 00:13:17,130 --> 00:13:20,333 嫌ですね 立て続けに 女ばっかり殺されるなんて。 177 00:13:20,333 --> 00:13:22,268 立て続けにか…。 178 00:13:22,268 --> 00:13:25,872 源さん 下手人は お節殺しと同じやつかい? 179 00:13:25,872 --> 00:13:28,207 そいつは まだ 何とも言えませんが 手口は全く同じです。 180 00:13:28,207 --> 00:13:30,143 まあ…。 181 00:13:30,143 --> 00:13:32,078 2人とも柔の絞め手で殺されています。 182 00:13:32,078 --> 00:13:34,080 柔? 侍か? 183 00:13:34,080 --> 00:13:36,082 とにかく 下手人は➡ 184 00:13:36,082 --> 00:13:39,719 柔の心得のある者だということだけは 間違いありません。 185 00:13:39,719 --> 00:13:41,654 うん…。 186 00:13:41,654 --> 00:13:46,893 一緒に 松井屋まで ご足労 願えませんか? 187 00:13:46,893 --> 00:13:51,698 嫌とは言わせねえ面構えだな。 アッハハハ… 行くよ! 188 00:13:54,767 --> 00:13:57,370 (嘉助) 松井屋のおかみさんっていうのは➡ 189 00:13:57,370 --> 00:13:59,739 勝ち気が着物を着て歩いてる ようなもんだなんて➡ 190 00:13:59,739 --> 00:14:04,510 近所の人が陰口をきくくらい しっかりもんだそうですがね。 191 00:14:04,510 --> 00:14:07,547 そりゃ 男を男とも 思わないようでなくちゃ➡ 192 00:14:07,547 --> 00:14:10,183 荒くれ船頭を顎で使う 舟宿のおかみさん➡ 193 00:14:10,183 --> 00:14:13,186 務まりっこありませんよね? 194 00:14:13,186 --> 00:14:17,857 ご亭主は?(嘉助)だいぶ前に 亡くなったって話ですよ。 195 00:14:17,857 --> 00:14:19,792 いくつぐらいの人? 196 00:14:19,792 --> 00:14:22,695 38だって言ってましたがね➡ 197 00:14:22,695 --> 00:14:27,200 色の浅黒い 痩せた骨っぽい体つきの➡ 198 00:14:27,200 --> 00:14:30,203 お世辞にも 男好きする女とは言えねえなんて➡ 199 00:14:30,203 --> 00:14:33,873 近所の舟宿の船頭は そう言ってましたがね…。 200 00:14:33,873 --> 00:14:36,776 その人に 男ができたんですか? 201 00:14:36,776 --> 00:14:39,545 いや 後家になってから堅い一方で➡ 202 00:14:39,545 --> 00:14:42,582 浮いた うわさ一つ なかったってんですがね。 203 00:14:42,582 --> 00:14:49,789 それが 井筒屋のおかみさんと同じ手口で 殺されたってことになると… ねえ? 204 00:14:55,027 --> 00:15:00,500 源さん 屋根船っていうのは もう調べたのかい? 205 00:15:00,500 --> 00:15:02,835 お峯の死骸は 片づけちまったあとでしたが➡ 206 00:15:02,835 --> 00:15:05,171 吉原枕が転がっていて➡ 207 00:15:05,171 --> 00:15:09,175 座布団の脇には 軟らかい紙なども 散らばってました。 208 00:15:09,175 --> 00:15:13,846 男と女が忍び会ってたのは 確かだってわけだな。 209 00:15:13,846 --> 00:15:16,516 舟に船頭が乗ってなかったのは なぜだい? 210 00:15:16,516 --> 00:15:21,687 (弥吉)いえ 初めは あっしが… へえ 乗ってお供していたんです。 211 00:15:21,687 --> 00:15:25,024 ゆんべ 四つ過ぎでございました。➡ 212 00:15:25,024 --> 00:15:29,695 おかみさんが「舟を向島まで持ってけ」って そう言うんです。 213 00:15:29,695 --> 00:15:32,198 「向島のどこへやるんです?」って 聞きますと➡ 214 00:15:32,198 --> 00:15:35,034 「私が一緒に乗っていくから」って。➡ 215 00:15:35,034 --> 00:15:37,069 そんなことは めったにねえことですが➡ 216 00:15:37,069 --> 00:15:42,341 おかみさんがそう言うんだから まあいいやってんで。 217 00:15:42,341 --> 00:15:46,546 寺島村まで行きますと 「渡しに舟を着けろ」って…。 218 00:15:46,546 --> 00:15:50,416 お峯が そう言ったのかい? (弥吉)さいです。 219 00:15:50,416 --> 00:15:52,718 それで? どうしたい? 220 00:15:52,718 --> 00:15:56,889 着けましたよ 渡しに舟を。➡ 221 00:15:56,889 --> 00:15:58,825 舟を着けると おかみさんが➡ 222 00:15:58,825 --> 00:16:01,294 「しばらく どっかで一杯やってこい」と➡ 223 00:16:01,294 --> 00:16:03,830 あっしに 一分を握らせておくんなさった。➡ 224 00:16:03,830 --> 00:16:07,500 ご承知のように あの辺りは寂しい所でね➡ 225 00:16:07,500 --> 00:16:10,002 飲む所なんて ありゃしねえと 思ったんですが➡ 226 00:16:10,002 --> 00:16:12,839 うめえ具合に ゆんべは お月見➡ 227 00:16:12,839 --> 00:16:17,310 月見の客を当て込んで そば屋の屋台が出ていましたから➡ 228 00:16:17,310 --> 00:16:22,181 そこへ行って 一杯 引っ掛けて➡ 229 00:16:22,181 --> 00:16:25,852 一刻余りも暇は潰していやしたかね。➡ 230 00:16:25,852 --> 00:16:31,524 渡しへ戻ってみると 舟がねえや びっくりしましてね…。 231 00:16:31,524 --> 00:16:35,027 あちこち 舟を捜してみたんですが どこにも見当たらねえんで➡ 232 00:16:35,027 --> 00:16:39,699 妙な気持ちで 吾妻橋を回って 帰ってきたんでさ。 233 00:16:39,699 --> 00:16:41,634 ふ~ん…。 234 00:16:41,634 --> 00:16:43,569 舟ごと お峯がいなくなったっていうのに➡ 235 00:16:43,569 --> 00:16:46,205 何で ゆうべのうちに 届け出ようとしなかったんだ? 236 00:16:46,205 --> 00:16:50,543 ええ そりゃあ… ヘヘヘヘヘヘ。 237 00:16:50,543 --> 00:16:54,046 お峯に男がいて そいつと 会っていると考えた。 そうだな? 238 00:16:54,046 --> 00:16:56,716 ええ そんなところでございます。 239 00:16:56,716 --> 00:17:00,586 しかし お峯は 堅え女で 浮いたうわさなんぞ なかったはずだぜ? 240 00:17:00,586 --> 00:17:05,291 (喜兵衛)あの そのことにつきまして…。 241 00:17:05,291 --> 00:17:07,827 何か 心当たりでもあるっていうのかい? 242 00:17:07,827 --> 00:17:10,863 (喜兵衛)一度だけ お客さんが 舟に乗って 出てらっしゃるのを➡ 243 00:17:10,863 --> 00:17:12,999 おかみさんが見送って➡ 244 00:17:12,999 --> 00:17:15,301 舟が見えなくなったあとも➡ 245 00:17:15,301 --> 00:17:18,838 桟橋に立ったまま ぼ~っとしてらしたことがございます。 246 00:17:18,838 --> 00:17:20,773 お~…。 247 00:17:20,773 --> 00:17:22,708 言っちゃなんですが➡ 248 00:17:22,708 --> 00:17:26,512 おかみさんも やっぱり 女なんだなと そう思ったもんでございます。 249 00:17:26,512 --> 00:17:29,315 よっぽどいい男のお客だったんだな? 250 00:17:29,315 --> 00:17:34,153 はい。 そりゃあ もう大層な男前のお客様で。 251 00:17:34,153 --> 00:17:36,522 役者かい? それとも芸人か? 252 00:17:36,522 --> 00:17:39,425 (喜兵衛)いいえ お武家様でございます。 253 00:17:39,425 --> 00:17:41,694 侍だと? 254 00:17:41,694 --> 00:17:46,032 おい。 その話 もうちょい 詳しく聞かしてくれねえか? 255 00:17:46,032 --> 00:17:48,034 はい…。 256 00:17:55,207 --> 00:17:58,878 先月の… 3日でございました。 257 00:17:58,878 --> 00:18:02,281 「舟を出してもらいたい」と そう おっしゃいまして➡ 258 00:18:02,281 --> 00:18:07,086 その男前の お武家様が ここへ入っておいでになりました。 259 00:18:09,488 --> 00:18:12,158 (喜兵衛)いらっしゃいまし。 260 00:18:12,158 --> 00:18:14,160 (戸を閉める音) 261 00:18:18,931 --> 00:18:22,802 (喜兵衛) 「まだ昼日中で 川の上でも暑かろう。➡ 262 00:18:22,802 --> 00:18:24,737 日暮れまで 2階で休む」と➡ 263 00:18:24,737 --> 00:18:26,706 そうおっしゃいまして➡ 264 00:18:26,706 --> 00:18:29,008 2階へ上がっておいでになりました。 265 00:18:32,545 --> 00:18:37,316 (喜兵衛)2階へは とりあえず 手前が ご案内 申し上げましたんですが➡ 266 00:18:37,316 --> 00:18:41,520 2階へ上がると 「酒をくれろ」と おっしゃいます。➡ 267 00:18:41,520 --> 00:18:44,323 それから 「女主人は いるか?」と おっしゃいましたので➡ 268 00:18:44,323 --> 00:18:46,692 「はい おります」と そう言って➡ 269 00:18:46,692 --> 00:18:49,729 おかみさんに お酒を 持っていっていただきましたんで…。 270 00:18:49,729 --> 00:18:52,031 待ってくれ 番頭さん。 271 00:18:52,031 --> 00:18:55,901 その侍は間違いなく 「女主人は いるか?」と言ったんだな? 272 00:18:55,901 --> 00:18:58,804 (喜兵衛) はい。 確かに「女主人が いるか?」と…➡ 273 00:18:58,804 --> 00:19:00,740 ええ おっしゃいました。 274 00:19:00,740 --> 00:19:03,142 「おかみ」とは言わずに「女主人」とな? (喜兵衛)はい。 275 00:19:03,142 --> 00:19:07,647 うん。 客が来た時に お峯は お前と一緒に ここにいた。 276 00:19:07,647 --> 00:19:11,150 にもかからわず その客は 「女主人は いるか?」と尋ねた。 277 00:19:11,150 --> 00:19:14,487 つまり お峯が この松井屋の女主人だ ということを➡ 278 00:19:14,487 --> 00:19:17,156 その客は 知らなかったっていうことになるな。 279 00:19:17,156 --> 00:19:20,826 はい。 その日が初めてのお客様でございます。 280 00:19:20,826 --> 00:19:24,664 うん…。 それで お峯が2階へ酒を運んでいって➡ 281 00:19:24,664 --> 00:19:26,599 それから どうしたい? 282 00:19:26,599 --> 00:19:28,534 2階へ上がっていったきり➡ 283 00:19:28,534 --> 00:19:30,836 おかみさんは なかなか下りてまいりません。 284 00:19:30,836 --> 00:19:33,739 そんなことは いつにねえことだっていうのか? 285 00:19:33,739 --> 00:19:35,708 (喜兵衛)いつもは お酒を置いて➡ 286 00:19:35,708 --> 00:19:40,012 ほんの2~3杯 お酌をしてさしあげりゃ いい方なので…。 287 00:19:40,012 --> 00:19:44,684 その客と味な一幕あったっていうのかな? 288 00:19:44,684 --> 00:19:48,187 まさか そのようなことは…。➡ 289 00:19:48,187 --> 00:19:52,191 いくらなんでも 初めて会った お客様でございますから。 290 00:19:53,859 --> 00:19:55,895 お帰りでございますか? 291 00:19:55,895 --> 00:19:59,732 (源三郎)その後 その侍の客は 店へは 顔 出してねえのかい? 292 00:19:59,732 --> 00:20:02,201 (喜兵衛)一度も お見えになりません。 293 00:20:02,201 --> 00:20:06,205 お峯が 外で その客と会っていたとは 考えられねえか? 294 00:20:06,205 --> 00:20:11,710 (喜兵衛)おかみさんが外へ出ます時には 必ず誰か お供をしてまいりますから…。 295 00:20:11,710 --> 00:20:14,747 それにしても それからの おかみさんというものは➡ 296 00:20:14,747 --> 00:20:17,349 妙にふさぎ込んだり ため息をついたり➡ 297 00:20:17,349 --> 00:20:21,887 まるで若い娘が 恋煩いをしてるような風情なんで…。 298 00:20:21,887 --> 00:20:24,924 その侍の年格好 覚えていたら 詳しく話してくれねえか。 299 00:20:24,924 --> 00:20:32,231 お年の頃は 30そこそこ。 お顔だちは 女のように優しげで。 300 00:20:32,231 --> 00:20:35,234 その客を送った船頭がいたら 会いてえが。 301 00:20:35,234 --> 00:20:41,240 その船頭も偶然 この弥吉でございました。 302 00:20:41,240 --> 00:20:44,076 お前か? へい。 303 00:20:44,076 --> 00:20:46,011 その侍を どこまで送った? 304 00:20:46,011 --> 00:20:48,581 吾妻橋まで送りました。 305 00:20:48,581 --> 00:20:54,253 竹屋の渡しの近くで 岸へ上って 広小路の方へ歩いていきやした。 306 00:20:54,253 --> 00:20:56,755 うん…。 307 00:20:56,755 --> 00:21:00,326 ゆうべのことだがな 番頭…。 (喜兵衛)はい。 308 00:21:00,326 --> 00:21:04,697 お峯が「舟 向島へ回してくれ」と 言ったのは どうしてだか 分かるかい? 309 00:21:04,697 --> 00:21:07,600 (喜兵衛) お客さんから使いが参りましたんで。 310 00:21:07,600 --> 00:21:09,869 使いか…。 311 00:21:09,869 --> 00:21:12,204 (喜兵衛)この子でございます。 312 00:21:12,204 --> 00:21:17,343 松井屋のおかみに 手紙 届けてくれって 頼んだ相手 侍か? 313 00:21:17,343 --> 00:21:20,146 いいえ 女の人です。 女!? 314 00:21:22,882 --> 00:21:26,352 どこの人か見たこともない 女の人が駄賃をくれて➡ 315 00:21:26,352 --> 00:21:30,055 必ず 松井屋のおかみさんに 渡してくれって 手紙を。 316 00:21:30,055 --> 00:21:32,725 そんな手紙のことは まるで存じませんでした。 317 00:21:32,725 --> 00:21:37,029 おかみさんが殺されて 初めて知ったようなわけで… はい。 318 00:21:38,597 --> 00:21:40,599 女か…。 319 00:21:47,740 --> 00:21:50,776 なあ 弥吉。 へい 何です? 320 00:21:50,776 --> 00:21:53,078 屋根船の船頭は➡ 321 00:21:53,078 --> 00:21:59,251 男と女の客が舟に乗る時にゃ 障子を1枚 板子の下に隠すそうだな。 322 00:21:59,251 --> 00:22:02,154 (弥吉)そんなことするんですかね~。 323 00:22:02,154 --> 00:22:05,858 障子が開いていちゃ せっかくの舟の中 味なことができねえ。 324 00:22:05,858 --> 00:22:09,328 客は船頭に祝儀を弾むと聞いてるぜ? 325 00:22:09,328 --> 00:22:12,865 そんなことは昔の話でございますよ。 326 00:22:12,865 --> 00:22:15,701 当節の客ときた日にゃ ヘヘヘ…。 327 00:22:15,701 --> 00:22:20,206 いや~ もう フッ… 誰が見ていようと へっちゃらでね。 328 00:22:20,206 --> 00:22:23,209 ヘッ 舟が川へ出んのを 待ちかねるようにして➡ 329 00:22:23,209 --> 00:22:26,011 帯を解き始めますからね。 330 00:22:26,011 --> 00:22:27,947 ヘッ たまりませんや。➡ 331 00:22:27,947 --> 00:22:31,817 おまけに客が降りてったあとの 舟ん中ときた日にゃ➡ 332 00:22:31,817 --> 00:22:33,752 ヘッ 紙が落ちたりしてますからね。 333 00:22:33,752 --> 00:22:37,356 ヘヘッ ちっとばかりの祝儀を 弾んでもらったところで➡ 334 00:22:37,356 --> 00:22:41,227 頭に上った血を下げるのに 女郎 買いに行きゃ➡ 335 00:22:41,227 --> 00:22:44,063 ヘヘッ 足が出ますよ。 336 00:22:44,063 --> 00:22:46,265 それなら見なきゃいいだろうに。 337 00:22:48,567 --> 00:22:52,071 やい 弥吉! てめえ 見ていやがったろう! 338 00:22:52,071 --> 00:22:54,974 えっ… 何をです? 339 00:22:54,974 --> 00:23:01,180 お峯の待ってる舟に 寺島村の渡しから 男が乗り込むところをよ! 340 00:23:01,180 --> 00:23:03,182 冗談じゃありませんよ。 341 00:23:03,182 --> 00:23:05,184 おりゃい! 342 00:23:05,184 --> 00:23:07,953 お峯から銭をもらって 一旦は 岸へ上がり➡ 343 00:23:07,953 --> 00:23:11,523 一杯やりに行くように見せかけて その実 こっそり戻ってきて➡ 344 00:23:11,523 --> 00:23:15,394 草の陰から のぞいていやがったに 違えねえ! 345 00:23:15,394 --> 00:23:17,396 知りませんよ そんなこと…。 346 00:23:17,396 --> 00:23:21,033 悪く しら切ると 八丁堀の旦那が十手つかんで➡ 347 00:23:21,033 --> 00:23:23,068 うぬを番屋に しょっ引いてくぜ? 348 00:23:23,068 --> 00:23:26,906 …分かってんのかい!? 349 00:23:26,906 --> 00:23:29,541 (弥吉)旦那…。 350 00:23:29,541 --> 00:23:31,577 見たんだな? 男を。 351 00:23:31,577 --> 00:23:34,346 へい。 352 00:23:34,346 --> 00:23:39,551 ♬~ 353 00:23:39,551 --> 00:23:44,223 どんな男だった? 言ってみろい! 354 00:23:44,223 --> 00:23:49,895 侍です。 頭巾をかぶってましたが。 355 00:23:49,895 --> 00:23:52,931  回想  (弥吉)この前の あの侍だ。 間違いねえや。 356 00:23:52,931 --> 00:23:55,367 男が舟に乗り込んで それから どうしたい? 357 00:23:55,367 --> 00:24:00,506 (弥吉)おかみさんが竿を取って 舟を水神の森の方へ やりましたよ。➡ 358 00:24:00,506 --> 00:24:06,178 うちの おかみさん 竿も櫓も そりゃ 達者に使いましたからね。 359 00:24:06,178 --> 00:24:24,530 ♬~ 360 00:24:24,530 --> 00:24:38,210 (雨の音) 361 00:24:38,210 --> 00:24:40,346 おきくちゃん! (おきく)はい! 362 00:24:40,346 --> 00:24:45,050 雨よ 干し物 取り込んできて。 (おきく)あっ はい。 363 00:24:51,357 --> 00:24:56,862 あっ もし… そこでは濡れます。 どうぞ 中へ お入んなさいまし。 364 00:25:06,505 --> 00:25:08,807 どうぞ。 365 00:25:19,852 --> 00:25:22,321 (左門)ここは旅籠か? 366 00:25:22,321 --> 00:25:26,191 はい。 部屋はあるか? 367 00:25:26,191 --> 00:25:30,529 ご身分のある お方のお宿には あまりに むさ苦しゅうございますが➡ 368 00:25:30,529 --> 00:25:35,701 雨が上がるまででございましたら どうぞ おくつろぎくださいまし。 369 00:25:35,701 --> 00:25:37,703 許せ。 370 00:26:01,293 --> 00:26:03,495 ごゆるりと…。 371 00:26:17,676 --> 00:26:20,679 (激しい雨の音) 372 00:26:23,015 --> 00:26:24,950 お嬢様。 えっ? 373 00:26:24,950 --> 00:26:28,320 お侍さんがね お酒をつけてくださいって。お酒? 374 00:26:28,320 --> 00:26:31,523 ええ。 お肴は いらないって おっしゃいますから 私が なにします。 375 00:26:31,523 --> 00:26:33,525 あっ そう。 376 00:26:37,863 --> 00:26:40,699 ねえ お嬢様…。 ん? 377 00:26:40,699 --> 00:26:43,335 あのお侍さん 男前だと思いになりません? 378 00:26:43,335 --> 00:26:46,705 そうかしら? 色男だと思いにならないんですか? 379 00:26:46,705 --> 00:26:50,542 男のくせに 唇が赤くて気持ちが悪い。 380 00:26:50,542 --> 00:26:53,045 東吾様のほかは 目に入らない…。 381 00:26:53,045 --> 00:26:55,547 まあ… ウフフ。 けど ありゃ いい男ですよ。 382 00:26:55,547 --> 00:26:59,885 そんなにいい男かどうか もう一度 確かめてきてあげよう。 383 00:26:59,885 --> 00:27:02,888 すみません…。 (笑い声) 384 00:27:07,693 --> 00:27:11,196 (戸の開閉音) お待たせ申しました。 385 00:27:20,839 --> 00:27:24,676 (左門)当家の主は ご在宅か? 386 00:27:24,676 --> 00:27:28,180 私が 主でございますが。 387 00:27:31,550 --> 00:27:34,186 女主か…。 388 00:27:34,186 --> 00:27:37,990 お肴は 何か見繕って すぐに お持ちいたしますから。 389 00:27:43,328 --> 00:27:45,330 (戸が閉まる音) 390 00:27:47,533 --> 00:27:50,035 お吉っつぁ~ん。 ⚟(お吉)は~い。 391 00:27:51,703 --> 00:27:55,007 駕籠が来たって申し上げとくれ。 あっ はい。 392 00:27:57,509 --> 00:28:00,279 うわっ…。 ああっ これは若様 お帰りなさいまし。 393 00:28:00,279 --> 00:28:03,649 ひでえ雨だぜ。 ああ… ああ ありがとう。 394 00:28:03,649 --> 00:28:06,485 お嬢さん 若様 お帰りになりましたよ! 395 00:28:06,485 --> 00:28:08,687 ⚟は~い! 396 00:28:10,289 --> 00:28:12,824 ああ…。 まあまあ… すぐに着替えてくださいな。 397 00:28:12,824 --> 00:28:15,127 用意してありますから。 うん。 398 00:28:22,167 --> 00:28:25,170 ありがとうございました。 余分に頂いたんですよ。 399 00:28:25,170 --> 00:28:27,472 えっ? あ~ さようですか。 どうも それは…。 400 00:28:30,842 --> 00:28:33,745 (嘉助)ありがとうございました! 401 00:28:33,745 --> 00:28:35,948 ありがとうございました! 402 00:28:38,016 --> 00:28:40,519 何だよ? あの侍。 403 00:28:40,519 --> 00:28:43,322 雨宿りにね。 ふ~ん…。 404 00:28:46,391 --> 00:28:49,194 お寒かったでしょう? おう。 405 00:28:49,194 --> 00:28:52,097 色男は油断がなりませんよ。 うん? 406 00:28:52,097 --> 00:28:54,700 役者にしたらいいような お侍なんですけどね➡ 407 00:28:54,700 --> 00:28:57,603 お嬢様に目をつけたみたい。 408 00:28:57,603 --> 00:28:59,571 あら 何 言うの。 409 00:28:59,571 --> 00:29:03,141 ほ~う…。 (お吉)うそじゃありませんよ。 410 00:29:03,141 --> 00:29:05,077 私は 心得ておりますからね➡ 411 00:29:05,077 --> 00:29:07,479 肝心なことは 何一つ しゃべりませんでしたけどね➡ 412 00:29:07,479 --> 00:29:11,650 しつこく聞くんですよ…。 宿帳は? 413 00:29:11,650 --> 00:29:14,286 いや 初めから お泊まりじゃないことは 分かってましたから。 414 00:29:14,286 --> 00:29:16,221 名前は聞かなかったのかい? はい。 415 00:29:16,221 --> 00:29:20,092 やだ…。 お吉さんは 私たちのこと からかってるんですよ。 416 00:29:20,092 --> 00:29:22,828 いや いや いや… 俺の気にしてるのは別のことだ。 417 00:29:22,828 --> 00:29:26,698 えっ? 舟宿の女主人を誘い出した客…➡ 418 00:29:26,698 --> 00:29:30,702 色男の侍だった。 まあ…。 419 00:29:30,702 --> 00:29:33,171 初めて松井屋に来た時➡ 420 00:29:33,171 --> 00:29:35,507 「女主人は いるか?」と番頭に聞いている。 421 00:29:35,507 --> 00:29:37,542 お峯の顔は知らなかったくせに➡ 422 00:29:37,542 --> 00:29:41,680 松井屋の主が 女だということだけは知っていた…。 423 00:29:41,680 --> 00:29:44,316 どういうことなんでしょう? 424 00:29:44,316 --> 00:29:47,185 ん~ 俺にも まだ よく分からねえんだが…。 425 00:29:47,185 --> 00:29:50,188 「女主か?」って私にも…➡ 426 00:29:50,188 --> 00:29:53,058 いえ… さっきのお客様は そう言ったんですよ。 427 00:29:53,058 --> 00:29:55,527 じゃあ さっきのお客様が あの…。 428 00:29:55,527 --> 00:29:58,330 まさか… ハハハハ。 429 00:29:58,330 --> 00:30:00,699 世の中に色男の侍は いくらでもいる。 430 00:30:00,699 --> 00:30:03,201 現に ここにも。 なあ? るい。 431 00:30:03,201 --> 00:30:05,203 (笑い声) 432 00:30:05,203 --> 00:30:09,207 どうも お邪魔さまって…。 433 00:30:30,228 --> 00:30:32,531 早えな 源さん。 434 00:30:34,099 --> 00:30:37,736 どうやら 3つ目のようですな。 やられたか? 435 00:30:37,736 --> 00:30:41,039 日本橋の両替商 富田屋の女主人 おかじといいます。 436 00:30:43,075 --> 00:30:45,077 また女主人か…。 437 00:30:46,945 --> 00:30:49,448 お気を付けて どうぞ。 ご苦労さんです。 いってらっしゃいませ。 438 00:30:52,384 --> 00:30:54,920 あっ… ご苦労さまです。 439 00:30:54,920 --> 00:30:56,922 手ぇつけずに そのまんまにしておきましたんで。 440 00:31:00,092 --> 00:31:02,694 (藤吉) 見つけたのは お久という小間使いで➡ 441 00:31:02,694 --> 00:31:05,030 いつものように起きてみると➡ 442 00:31:05,030 --> 00:31:06,965 おかじの寝間の廊下に 日がさしている。 443 00:31:06,965 --> 00:31:09,701 雨戸が開いているからだと 気が付いて➡ 444 00:31:09,701 --> 00:31:12,537 庭をのぞいてみると このありさまだった。 445 00:31:12,537 --> 00:31:14,873 ゆうべ おかじに 最後に会ったのは誰だ? 446 00:31:14,873 --> 00:31:21,346 (与兵衛)はい。 多分 それは お久だと お… 思いますが…。 447 00:31:21,346 --> 00:31:24,549 (お久)私が いつも おかみさんの夜具 敷くんです。 448 00:31:24,549 --> 00:31:27,052 ゆうべは いつもより遅くて➡ 449 00:31:27,052 --> 00:31:29,955 四つ過ぎに 寝間のお支度して 下がりました。 450 00:31:29,955 --> 00:31:32,924 ゆうべ この家に いたのは? 451 00:31:32,924 --> 00:31:37,062 はい。 私は通いで 手代が3人 小僧が2人➡ 452 00:31:37,062 --> 00:31:40,365 これは 店の2階に休んでおりまして➡ 453 00:31:40,365 --> 00:31:46,171 母屋には 耳の少し遠い飯炊きと この お久だけです。 454 00:31:46,171 --> 00:31:51,009 ゆうべは どしゃ降りだったな。 雨が上がったのは いつごろだい? 455 00:31:51,009 --> 00:31:55,247 夜明けに 手水に起きた時には もう 月が出てましたからね➡ 456 00:31:55,247 --> 00:31:57,249 夜中のうちに 上がったんじゃありませんか? 457 00:31:57,249 --> 00:32:01,686 すると おかじは 寝る前に庭へ出て 殺された。 458 00:32:01,686 --> 00:32:06,024 そうだろ? はんてんも寝巻きも びしょ濡れだ。 459 00:32:06,024 --> 00:32:11,530 手口は これも同じ 柔の絞め手で殺されています。 460 00:32:11,530 --> 00:32:16,701 番頭さん 富田屋の主人は いつ 何で死んだ? 461 00:32:16,701 --> 00:32:20,572 へい。 ちょうど半年前 脳卒中で亡くなりました。➡ 462 00:32:20,572 --> 00:32:23,475 42の厄年で。 はい。 463 00:32:23,475 --> 00:32:25,710 おかじは いくつだい? 464 00:32:25,710 --> 00:32:27,646 (与兵衛)一回り下の…。 465 00:32:27,646 --> 00:32:29,881 (藤吉)30…。 (与兵衛)はい。 466 00:32:29,881 --> 00:32:32,551 子供は? (与兵衛)ございません。 467 00:32:32,551 --> 00:32:35,587 とすると この店の後継ぎは どうなるんだ? 468 00:32:35,587 --> 00:32:40,225 はい。 今のところは おかみさんが 何もかも おやりでございましたから。 469 00:32:40,225 --> 00:32:42,561 それに おかみさんは➡ 470 00:32:42,561 --> 00:32:47,065 あのとおり この… 若うございましたので 先のことは 誰も…。 471 00:32:47,065 --> 00:32:49,367 なるほどな。 身寄りは? 472 00:32:49,367 --> 00:32:52,904 (与兵衛)亡くなりました主人の弟で➡ 473 00:32:52,904 --> 00:32:56,241 源七さんという人が 1人 いらっしゃいます。 474 00:32:56,241 --> 00:32:59,144 死んだ亭主の弟を おかみさんと一緒にして➡ 475 00:32:59,144 --> 00:33:02,681 後を継がせるというのは よくあることだが? 476 00:33:02,681 --> 00:33:07,319 (与兵衛)おかみさんは まるっきり その気はないのでございまして➡ 477 00:33:07,319 --> 00:33:09,688 源七さんの方でも➡ 478 00:33:09,688 --> 00:33:14,860 まあ こんな堅い家業には向かないと 言っていらっしゃいましたから…。 479 00:33:14,860 --> 00:33:18,196 いくつだい? 源七は。 480 00:33:18,196 --> 00:33:21,099 (与兵衛)ちょうど 39だったと存じます…。 481 00:33:21,099 --> 00:33:26,338 何をしてるんだ? そ… それが その…➡ 482 00:33:26,338 --> 00:33:29,207 役者のようなことをなさっておいでで。 483 00:33:29,207 --> 00:33:31,209 役者だと? (与兵衛)はい。 484 00:33:31,209 --> 00:33:33,879 いえ あの… 大した役者じゃございません。 485 00:33:33,879 --> 00:33:36,548 あっちこっちの小芝居に 出してもらったり➡ 486 00:33:36,548 --> 00:33:41,353 旅回りの一座について ドサを回ったりしているような…。 487 00:33:43,722 --> 00:33:46,558 番頭さん…。 何だい? 488 00:33:46,558 --> 00:33:49,461 源七さんが見えました。 あっ ちょうど よかった。 489 00:33:49,461 --> 00:33:52,764 こっちへ 来てもらっておくれ。 はい。 490 00:34:00,171 --> 00:34:03,975 源七さん 八丁堀の旦那方です。 (源七)はあ~ さいですか。 491 00:34:05,844 --> 00:34:09,848 それは それは どうも ご苦労さまでございます。 492 00:34:11,516 --> 00:34:16,187 おめえさん おかじさんに 最後に会ったのは いつだ? 493 00:34:16,187 --> 00:34:20,191 はい。 ゆうべでございます…。 494 00:34:20,191 --> 00:34:23,929 ゆうべ? (源七)はい。➡ 495 00:34:23,929 --> 00:34:27,532 ゆうべの五つ過ぎた頃に こちらへ参りまして。 496 00:34:27,532 --> 00:34:30,335 何しに来たんだ? 497 00:34:30,335 --> 00:34:33,705 はい。 旅に出ますんで➡ 498 00:34:33,705 --> 00:34:36,341 兄さんのお位はいにお参りをして➡ 499 00:34:36,341 --> 00:34:39,244 義姉さんにも ご挨拶をしようと思って 参りました。 500 00:34:39,244 --> 00:34:43,114 (源三郎)それで? はい。 501 00:34:43,114 --> 00:34:47,719 義姉さんに おせん別を頂戴して こちらを おいとましたのは➡ 502 00:34:47,719 --> 00:34:51,923 四つ少し前だったと覚えております。 503 00:34:55,894 --> 00:34:58,229 あっ 源七さん…➡ 504 00:34:58,229 --> 00:35:02,167 はい。 帰ったのは確か 四つ少し前でした。 なっ? 505 00:35:02,167 --> 00:35:04,169 源七さんが見えた時➡ 506 00:35:04,169 --> 00:35:06,938 声をかけられて 店のくぐりを開けたのも私でしたし➡ 507 00:35:06,938 --> 00:35:09,174 お帰りになる時も おかみさんに言われて➡ 508 00:35:09,174 --> 00:35:12,010 私が くぐりを開けて 送ったんですから 間違いございません。 509 00:35:12,010 --> 00:35:13,945 (お久)私が お茶を持っていった時には➡ 510 00:35:13,945 --> 00:35:16,514 源七さん お仏壇にお線香あげて 拝んでました。 511 00:35:16,514 --> 00:35:18,850 おかみさんが お金を紙に包んでましたから➡ 512 00:35:18,850 --> 00:35:22,187 「あっ おせん別 あげるんだな」って そう思ったのを覚えてます。 513 00:35:22,187 --> 00:35:25,523 夜具の支度をしたのが ゆんべは遅くなったと言ってたが➡ 514 00:35:25,523 --> 00:35:28,026 源七が来てたからなんだな? 515 00:35:28,026 --> 00:35:29,961 はい…。 516 00:35:29,961 --> 00:35:32,864 ん~…。 517 00:35:32,864 --> 00:35:35,200 源七 お前の住まいは どこだ? 518 00:35:35,200 --> 00:35:39,037 (源七) 浅草の聖天様の裏の長屋でございます。 519 00:35:39,037 --> 00:35:41,873 1人か? (源七)はい。 520 00:35:41,873 --> 00:35:44,209 ゆうべは まっすぐ そこへ帰ったんだな? 521 00:35:44,209 --> 00:35:47,879 はい。 まっすぐ そこへ帰りました。 522 00:35:47,879 --> 00:35:51,349 途中 誰か知った者には 会わなかったかい? 523 00:35:51,349 --> 00:35:56,554 あの どしゃ降りで それに もう遅うございましたから➡ 524 00:35:56,554 --> 00:35:59,257 誰にも会いませんでした。 525 00:36:01,526 --> 00:36:04,362 富田屋には ちょいちょい 出入りをしていたのかい? 526 00:36:04,362 --> 00:36:10,101 いえ。 何しろ こんな暮らしをいたしておりますし➡ 527 00:36:10,101 --> 00:36:16,307 兄が生きております時分は 表向き 出入りも かないませんでしたが➡ 528 00:36:16,307 --> 00:36:22,514 陰に回って 義姉さんが いろいろと気を遣ってくれました。 529 00:36:24,049 --> 00:36:27,852 兄の源兵衛が死んでから 出入りをするようになった? 530 00:36:27,852 --> 00:36:31,322 (源七)はい。 おかげさまで。 531 00:36:31,322 --> 00:36:33,691 富田屋の血筋は おめえ 1人なんだ。 532 00:36:33,691 --> 00:36:37,529 役者やめて 両替商 継ぐつもりはあるのかい? 533 00:36:37,529 --> 00:36:40,031 めっそうもございません。 534 00:36:40,031 --> 00:36:44,736 手前のような者に 務まるわけがございませんでしょう。 535 00:36:56,347 --> 00:36:58,283 若様…。 536 00:36:58,283 --> 00:37:00,218 どうしたい? 537 00:37:00,218 --> 00:37:03,154 松井屋 とうとう 店 閉めちまいましたよ。 538 00:37:03,154 --> 00:37:05,824 ふ~ん…。 井筒屋の方は➡ 539 00:37:05,824 --> 00:37:08,159 小津屋六兵衛が 何かと面倒を見て➡ 540 00:37:08,159 --> 00:37:10,995 番頭の清兵衛っていうのを 差し向けて なにしてたんですが➡ 541 00:37:10,995 --> 00:37:15,834 同じ茶屋でも 水茶屋と葉茶屋 お茶屋と茶問屋じゃ➡ 542 00:37:15,834 --> 00:37:17,769 勝手が違いすぎて➡ 543 00:37:17,769 --> 00:37:21,005 これも持て余して 「店 閉めてえ」なんて言ってるそうです。 544 00:37:21,005 --> 00:37:26,878 水商売の女主人が 変な殺され方をしちゃ 客も寄りつかなくなるさ。 545 00:37:26,878 --> 00:37:31,716 それから 富田屋の方は 結局 源七を うちに入れることに決めたそうです。 546 00:37:31,716 --> 00:37:34,552 うん!? 547 00:37:34,552 --> 00:37:37,322 (嘉助)まあ いろいろとあったんですが➡ 548 00:37:37,322 --> 00:37:40,191 結局 たった一人の血筋➡ 549 00:37:40,191 --> 00:37:42,861 そうするしか しょうがねえってことに なったんでしょうね。 550 00:37:42,861 --> 00:37:45,196 そのかわり 源七の方でも➡ 551 00:37:45,196 --> 00:37:50,869 「今後 芸事からは 一切 手を引く。 商売一筋 真面目に働く」っていう➡ 552 00:37:50,869 --> 00:37:53,204 約束をさせられたそうです。 553 00:37:53,204 --> 00:37:55,707 源七が富田屋を継ぐことになったのか…。 554 00:37:55,707 --> 00:37:59,344 へい。 そうと決まりゃ 独り身のこった 変わり身は早い。 555 00:37:59,344 --> 00:38:01,279 もう 早速 富田屋へ乗り込んで➡ 556 00:38:01,279 --> 00:38:04,149 帳場格子ん中へ 神妙に納まってるそうです。 557 00:38:04,149 --> 00:38:08,653 おう すまねえが ひとっ走り 行って 源さん 呼んできてくれ。 558 00:38:08,653 --> 00:38:10,655 えっ? へえ。 559 00:38:17,362 --> 00:38:21,232 若様 畝の旦那 お連れしやした。 おう。 560 00:38:21,232 --> 00:38:23,168 何事ですか? 561 00:38:23,168 --> 00:38:26,004 どうも 気になってならねえ。 源七を もう一度 洗ってみてくれ。 562 00:38:26,004 --> 00:38:27,939 富田屋の源七ですか? 563 00:38:27,939 --> 00:38:30,842 うん。 女主人が 続けて3人 殺されて➡ 564 00:38:30,842 --> 00:38:33,311 やっと 1人 得をしたやつが現れたんだ。 565 00:38:33,311 --> 00:38:35,246 なるほど。 566 00:38:35,246 --> 00:38:37,182 おかじが殺された晩➡ 567 00:38:37,182 --> 00:38:39,184 源七が長屋へ帰ってきたのを 見た者は いねえか? 568 00:38:39,184 --> 00:38:42,020 いたら 源七が戻ったのは何時ごろだったか。 569 00:38:42,020 --> 00:38:45,890 それと もう一つ 源七に侍とのつきあい なかったかも➡ 570 00:38:45,890 --> 00:38:47,892 忘れずに聞いてもらいてえ。 571 00:38:47,892 --> 00:38:49,894 色男の侍ですな。 572 00:38:49,894 --> 00:38:52,030 な~に 侍なら 醜男だって➡ 573 00:38:52,030 --> 00:38:54,532 つながりがあったかどうかだけ 確かめてもらいてえんだ。 574 00:38:54,532 --> 00:38:58,870 分かりました。 ああ それにな 源さん…。 575 00:38:58,870 --> 00:39:01,840 源七に 「お上じゃ てめえを疑ってるんだぞ」と➡ 576 00:39:01,840 --> 00:39:05,677 野郎に 分からせるようにしてもらいてえんだ。 577 00:39:05,677 --> 00:39:08,980 おっ? わざと源七に知らせるんですか? 578 00:39:08,980 --> 00:39:14,686 うん… 徳松にでも吹聴させてくれねえか。 せいぜい派手にな。 579 00:39:19,991 --> 00:39:23,194 あなた…。 うん? 580 00:39:25,296 --> 00:39:30,001 あれから もう3日になりますよ。 それがどうしたい。 581 00:39:30,001 --> 00:39:35,173 一度 お屋敷へ お戻りにならないで よろしいんですか? 582 00:39:35,173 --> 00:39:38,676 何だ おい。 たった5日 いただけで➡ 583 00:39:38,676 --> 00:39:41,312 もう 俺が邪魔になったというのか? 584 00:39:41,312 --> 00:39:44,015 誰も そんなこと言ってませんよ。 585 00:39:44,015 --> 00:39:48,853 それとも 俺が夜昼となく お前のそばに へばりついていて➡ 586 00:39:48,853 --> 00:39:51,890 会いてえ人にも会えないで 困るとでもいうのか? 587 00:39:51,890 --> 00:39:54,192 うん… もう バカばっかし! 588 00:39:54,192 --> 00:39:56,861 おっ そうか! えっ? 589 00:39:56,861 --> 00:39:59,764 大の男が何にもしないで ゴロチャラと寝てばかりいては➡ 590 00:39:59,764 --> 00:40:01,733 世間体が悪い。 591 00:40:01,733 --> 00:40:04,736 よしっ 雨を幸いに 表の塀を洗ってこようか。 592 00:40:04,736 --> 00:40:06,871 みっともないまね しないでくださいよ。 593 00:40:06,871 --> 00:40:10,341 アッハハハ… じゃあ どうしろって言うんだい? 594 00:40:10,341 --> 00:40:12,877 お屋敷の方さえ よろしければ➡ 595 00:40:12,877 --> 00:40:18,082 何もしないで いつまでもいてくださって よろしいんですよ。うん。 596 00:40:24,355 --> 00:40:27,258 ⚟ごめん。 597 00:40:27,258 --> 00:40:30,728 あら 誰もいないのかしらね? 598 00:40:30,728 --> 00:40:33,231 ⚟ごめん! 599 00:40:33,231 --> 00:40:35,233 は~い! 600 00:40:35,233 --> 00:40:37,235 ごめんなさい。 うん。 601 00:40:47,578 --> 00:40:51,082 ♬~ 602 00:40:51,082 --> 00:40:54,385 すまんが 出先で降られて難渋している。 603 00:40:54,385 --> 00:40:57,288 夜まで部屋を貸してもらいたい。 604 00:40:57,288 --> 00:41:00,692 何でしたら お駕籠を呼んでまいりましょうか? 605 00:41:00,692 --> 00:41:03,528 ああ 先日は どうも…。 さあ どうぞ お上がりくださいまし。 606 00:41:03,528 --> 00:41:05,463 部屋 空いておりますから。 アハッ。➡ 607 00:41:05,463 --> 00:41:07,465 おもよちゃ~ん! 608 00:41:11,402 --> 00:41:15,206 あっ 茶はいいからね お酒の支度をしてくんな。 609 00:41:15,206 --> 00:41:17,208 (おもよ)はい。 610 00:41:17,208 --> 00:41:20,345 ご酒が ご所望だと… アハハ おっしゃいますんでね。 611 00:41:20,345 --> 00:41:22,547 そう。 612 00:41:24,882 --> 00:41:28,086 (戸の開閉音) 613 00:41:31,055 --> 00:41:33,257 あら? 614 00:41:40,231 --> 00:41:43,134 お吉さん 若様は? 615 00:41:43,134 --> 00:41:45,937 存じませんよ。 奥に いらっしゃるんじゃないですか? 616 00:42:14,032 --> 00:42:15,967 あの…。 617 00:42:15,967 --> 00:42:17,902 えっ な~に? 618 00:42:17,902 --> 00:42:21,706 千鳥の間のお客様が おかみさんに 何か お聞きになりたいとかで➡ 619 00:42:21,706 --> 00:42:24,609 ちょっと来ていただけないかと おっしゃってるんですが。 620 00:42:24,609 --> 00:42:27,912 そう… はい。 621 00:42:32,417 --> 00:42:34,719 ⚟ごめんくださいまし。 622 00:42:40,558 --> 00:42:46,064 この軸について尋ねたいと思ってな。 623 00:42:46,064 --> 00:42:51,269 こっちへ入ってくれ。 失礼いたします。 624 00:42:55,740 --> 00:42:58,376 バイガイらしいが。 625 00:42:58,376 --> 00:43:01,379 はい。 そのように承っております。 626 00:43:03,514 --> 00:43:05,817 読んでみてくれぬか。 627 00:43:14,025 --> 00:43:16,060 あっ…。 628 00:43:16,060 --> 00:43:30,341 ♬~ 629 00:43:30,341 --> 00:43:33,044 そこまでだ! 630 00:43:33,044 --> 00:43:36,914 小太刀を持たせたら 3本に1本は 俺でも危ない。 631 00:43:36,914 --> 00:43:42,220 そこらの女主人と同じと思うと 大けがをするぜ。 632 00:43:42,220 --> 00:43:44,155 おのれ! 633 00:43:44,155 --> 00:43:49,961 (やり合う声) 634 00:43:49,961 --> 00:43:52,163 嘉助!⚟(嘉助)へい! 縄! 635 00:44:00,304 --> 00:44:03,841 ♬~ 636 00:44:03,841 --> 00:44:08,179 あなた…。 637 00:44:08,179 --> 00:44:10,681 すまなかったな。 危ない思いをさせて。 638 00:44:10,681 --> 00:44:23,694 ♬~ 639 00:44:25,196 --> 00:44:27,198 番頭さん! 640 00:44:27,198 --> 00:44:31,202 源七! 左門は お縄になった 観念しろい! 641 00:44:35,706 --> 00:44:39,877 源七は おかじを殺して 富田屋の財産 てめえのものにしようと考えた。 642 00:44:39,877 --> 00:44:43,714 まあ おかじだけを殺したら まず 源七に疑いがかかる。 643 00:44:43,714 --> 00:44:48,352 縁もゆかりもねえ 井筒屋のお節 松井屋のお峯 次々に殺して➡ 644 00:44:48,352 --> 00:44:53,558 女主人を狙う変質者がいると 世間に思わせようと考えた。 645 00:44:53,558 --> 00:44:58,062 おのが欲のために 何の関わりも罪もねえ人を平気で殺す➡ 646 00:44:58,062 --> 00:45:01,832 許せねえやつらよ。 647 00:45:01,832 --> 00:45:04,669 でも どこで 源七が怪しいと気が付いたんです? 648 00:45:04,669 --> 00:45:09,840 うん。 松井屋に現れた侍 御家人崩れで 伊勢左門というそうだが➡ 649 00:45:09,840 --> 00:45:12,877 あれが番頭に 「女主人は いるか?」と聞いたろ? 650 00:45:12,877 --> 00:45:16,514 ええ。 女主人に こだわるのが 妙だと思った。 651 00:45:16,514 --> 00:45:19,417 なるほど。 それと 似てるようだが➡ 652 00:45:19,417 --> 00:45:23,187 3つの殺しの中で おかじだけが ほかの2人とは少し違う。 653 00:45:23,187 --> 00:45:25,122 どう違うんですか? 654 00:45:25,122 --> 00:45:28,326 お節もお峯も 男に抱かれたあとに殺されてるのに➡ 655 00:45:28,326 --> 00:45:33,197 おかじは 雨戸を開けて 庭に下りた途端 いきなり 殺されてるんだ。 656 00:45:33,197 --> 00:45:37,535 井筒屋でも松井屋でも 女主人が殺されて 得をした者はいなかった➡ 657 00:45:37,535 --> 00:45:39,570 …が 富田屋に限っては➡ 658 00:45:39,570 --> 00:45:42,707 莫大な財産 手に入れて 源七が得をしている。 659 00:45:42,707 --> 00:45:44,642 これは 源七が侍と組んで➡ 660 00:45:44,642 --> 00:45:47,545 おかじ殺しをたくらんだなと考えたんだ。 661 00:45:47,545 --> 00:45:51,048 ところが 確かに源七がやったという証拠がねえ。 662 00:45:51,048 --> 00:45:53,718 うん。 悪知恵の回るやつらだから➡ 663 00:45:53,718 --> 00:45:56,554 「お上じゃ 源七を疑ってるんだぞ」と 知らせてやれば➡ 664 00:45:56,554 --> 00:45:59,457 4つ目の人殺し 企てるに 違えねえと思ったんだ。 665 00:45:59,457 --> 00:46:02,293 伊勢左門が 偶然 雨宿りに舞い込んだ➡ 666 00:46:02,293 --> 00:46:05,196 かわせみの主が女主人だということを 知っていたから➡ 667 00:46:05,196 --> 00:46:08,499 慌てて狙うとすれば ここだと思った。 668 00:46:08,499 --> 00:46:14,372 じゃあ あのお侍が私を殺しに来ると 初めから 私をおとりに使ったんですか? 669 00:46:14,372 --> 00:46:17,008 うん。 いや そのかわり➡ 670 00:46:17,008 --> 00:46:20,311 屋敷にも帰らず 俺は るいのそばに いたろう? 671 00:46:20,311 --> 00:46:24,849 それにしたって おとりにするならすると そう言ってくださればいいのに。 672 00:46:24,849 --> 00:46:28,719 だけど おかげで 伊勢左門と源七が 御用になったんですから お嬢さん。 673 00:46:28,719 --> 00:46:30,721 若様…。 何だい? 674 00:46:30,721 --> 00:46:33,190 松井屋のおかみさんに 手紙を渡してくれって➡ 675 00:46:33,190 --> 00:46:36,027 酒屋の小僧さんに頼んだ女…➡ 676 00:46:36,027 --> 00:46:38,696 あれ 女じゃなくて 源七じゃないんですか? 677 00:46:38,696 --> 00:46:41,532 偉い! さすが お吉だ。 ハハハハハ。 678 00:46:41,532 --> 00:46:43,467 それにしても➡ 679 00:46:43,467 --> 00:46:46,337 いくら もらう約束だったかは 知りませんが➡ 680 00:46:46,337 --> 00:46:51,542 見ず知らずの お節さんや お峯さん 色仕掛けで だまして殺すなんて➡ 681 00:46:51,542 --> 00:46:55,046 まあ よくも そんな恐ろしいことが できたもんですね~。(嘉助)ええ。 682 00:46:55,046 --> 00:47:01,819 これは 俺の推量だが 源七と左門は 他人じゃなかったんだろうよ。 683 00:47:01,819 --> 00:47:03,754 えっ!? 684 00:47:03,754 --> 00:47:05,690 本当は 兄弟か何かだった っていうんですか? 685 00:47:05,690 --> 00:47:08,159 うん? アッハハハハハ…。 686 00:47:08,159 --> 00:47:10,661 何ですよ。 何がおかしいっていうんです? 687 00:47:10,661 --> 00:47:14,999 いや 源七は 左門の女房だったってことさ。 688 00:47:14,999 --> 00:47:16,934 だって! 689 00:47:16,934 --> 00:47:21,872 男のくせに…。 あっ? あっ…。 690 00:47:21,872 --> 00:47:29,013 男同士の夫婦… 男と女の結び付きより ず~っとずっと情が怖いと言うぜ。 691 00:47:29,013 --> 00:47:31,515 うわっ 嫌だ~! 692 00:47:33,684 --> 00:47:35,720 おい おい…。 693 00:47:35,720 --> 00:47:57,208 ♬~ 694 00:48:01,645 --> 00:48:04,982 おう! 695 00:48:04,982 --> 00:48:08,486 全ては東吾さんの推察どおりでした。 696 00:48:08,486 --> 00:48:11,389 源七は せん別をもらったあと 富田屋を出て➡ 697 00:48:11,389 --> 00:48:13,657 「言い忘れたことがある」と おかじに声をかけ➡ 698 00:48:13,657 --> 00:48:15,993 雨戸を開けさせたんだと 白状しております。 699 00:48:15,993 --> 00:48:19,864 その時 左門も庭にいた。 はい。 700 00:48:19,864 --> 00:48:21,866 なまじ 知恵の回るやつらだから➡ 701 00:48:21,866 --> 00:48:24,668 欲に目がくらむと 何をしでかすか分からねえ。 702 00:48:24,668 --> 00:48:27,571 怖いねえ 源さん。 703 00:48:27,571 --> 00:48:30,541 あっ 怖いっていえば…。 何だ? 704 00:48:30,541 --> 00:48:34,011 八丁堀で神林様が 「東吾は どこ行った?」と怖いお顔で。 705 00:48:34,011 --> 00:48:35,946 おっと… いけねえ! 706 00:48:35,946 --> 00:48:53,130 ♬~