1 00:00:03,036 --> 00:00:08,008 ♬~ (テ-マ音楽) 2 00:00:08,008 --> 00:02:10,697 ♬~ 3 00:02:12,466 --> 00:02:14,468 ⚟(半鐘の音) 4 00:02:16,336 --> 00:02:19,139 (侍)追え! (侍)逃がすな! 5 00:02:19,139 --> 00:02:21,141 (侍)待て! 6 00:02:25,479 --> 00:02:27,981 (侍)待て~! (侍)待て~! 7 00:02:27,981 --> 00:02:32,152 ⚟(侍)待て~! ⚟(半鐘の音) 8 00:02:32,152 --> 00:02:35,455 くそっ どこ行きおった! こっちには おりません。 9 00:02:40,661 --> 00:02:43,163 (源三郎)いずれの御家中ですかな。➡ 10 00:02:43,163 --> 00:02:46,500 もしや お屋敷に賊が忍び入った というのではございますまいな? 11 00:02:46,500 --> 00:02:48,435 いや。 おい 行こう! 12 00:02:48,435 --> 00:02:51,238 お待ちください。 町方の支配は受けぬわ。 13 00:02:54,374 --> 00:02:57,177 (伝次)ちえっ… 何てえ言いぐさでえ! 14 00:02:57,177 --> 00:02:59,679 やられたんですぜ ありゃあ。 恐らくな…。 15 00:02:59,679 --> 00:03:01,615 盗っ人に入られても➡ 16 00:03:01,615 --> 00:03:04,251 ああやって届けようともしねえんだから まったく…。 17 00:03:04,251 --> 00:03:07,788 盗られた品よりも 屋敷の名前が出る方が怖いんだろうさ。 18 00:03:07,788 --> 00:03:12,259 これじゃ 盗っ人は捕まりませんぜ。 19 00:03:12,259 --> 00:03:15,128 困ったもんだい…。 20 00:03:15,128 --> 00:03:18,632 ⚟(半鐘の音) 21 00:03:22,803 --> 00:03:25,272 (通之進)東吾。➡ 22 00:03:25,272 --> 00:03:30,110 おめえ 明日な 本所の おやじ殿の所まで 行ってきてくれ。 23 00:03:30,110 --> 00:03:33,113 (東吾)麻生殿のお屋敷へですか? (通之進)ああ。 24 00:03:35,816 --> 00:03:38,285 一体 何の御用でしょうか? 25 00:03:38,285 --> 00:03:42,489 ん? 行きゃあ 分かるよ。 26 00:03:42,489 --> 00:03:44,524 アハハハハ…。 27 00:03:44,524 --> 00:03:48,995 (せみの鳴き声) 28 00:03:48,995 --> 00:03:53,166 義姉上…➡ 29 00:03:53,166 --> 00:03:57,170 麻生殿の御用というのは 七重殿とのことですか? 30 00:03:57,170 --> 00:04:00,240 (香苗)え? 31 00:04:00,240 --> 00:04:04,111 七重と東吾さんを一緒にするという あの お話は➡ 32 00:04:04,111 --> 00:04:06,947 もう済んだことではございませんか。➡ 33 00:04:06,947 --> 00:04:10,784 七重にも 東吾さんには るいさん という方がいるということを➡ 34 00:04:10,784 --> 00:04:13,620 私から ちゃんと言ってあります。 35 00:04:13,620 --> 00:04:16,256 申し訳ございません。 36 00:04:16,256 --> 00:04:21,461 七重のことではございませんから 安心して 行ってらっしゃい。 37 00:04:23,029 --> 00:04:25,232 はあ…。 38 00:04:40,447 --> 00:04:42,749 行ってらっしゃいませ。 うん…。 39 00:04:45,652 --> 00:04:47,587 はあ~…。 40 00:04:47,587 --> 00:04:51,825 (源三郎)東吾さん! お~ 源さん! 41 00:04:51,825 --> 00:04:54,161 お供します。 えっ? 42 00:04:54,161 --> 00:04:57,831 「御目付役 麻生源右衛門殿 お屋敷へ 東吾と同道するように」➡ 43 00:04:57,831 --> 00:04:59,866 神林様から言いつかりました。 44 00:04:59,866 --> 00:05:02,435 そうかい。 源さんが一緒だというんなら…。 45 00:05:02,435 --> 00:05:04,371 (源三郎)何ですか? えっ…。 46 00:05:04,371 --> 00:05:06,606 えっ いやいや…。 47 00:05:06,606 --> 00:05:09,643 ああ… また 七重さんとの話で 呼び出されると思ったんですね。 48 00:05:09,643 --> 00:05:12,245 あれは もう済んだ話だよ。 49 00:05:12,245 --> 00:05:15,782 しかし 七重殿は 東吾さんが お好きだったんでしょう?➡ 50 00:05:15,782 --> 00:05:17,784 お気の毒に…。 51 00:05:24,491 --> 00:05:27,961 (七重)いらっしゃいませ。➡ 52 00:05:27,961 --> 00:05:30,630 父が お待ち申しておりました。 53 00:05:30,630 --> 00:05:32,566 はあ…。 54 00:05:32,566 --> 00:05:34,568 どうぞ…。 55 00:05:40,340 --> 00:05:44,811 東吾さんも 罪なお人だ。 何? 56 00:05:44,811 --> 00:05:47,113 いえ こっちのことです。 57 00:05:53,486 --> 00:05:55,522 (源右衛門)ああ よく来た よく来た。 58 00:05:55,522 --> 00:05:59,159 いやいや 挨拶などは抜きにせい。 59 00:05:59,159 --> 00:06:01,928 あ~… 早速だがのう➡ 60 00:06:01,928 --> 00:06:08,602 近頃 しきりと 本所界わいの大名屋敷が 盗賊どもに押し入られて➡ 61 00:06:08,602 --> 00:06:11,504 困ったものよ。 62 00:06:11,504 --> 00:06:14,407 いかに天下太平の世とはいいながら➡ 63 00:06:14,407 --> 00:06:18,311 侍どもが腰抜けだから 盗っ人にまで ばかにされておる。➡ 64 00:06:18,311 --> 00:06:24,451 入られた屋敷は 一つや二つではない。 軒並みだ。➡ 65 00:06:24,451 --> 00:06:27,787 もっとも 恥を知っとるらしいから➡ 66 00:06:27,787 --> 00:06:32,659 盗っ人には入られても 届け出る大名は 一つもない。 67 00:06:32,659 --> 00:06:37,264 確たる数は分からんのだが…。 68 00:06:37,264 --> 00:06:39,799 大名も腰抜けだが➡ 69 00:06:39,799 --> 00:06:44,971 盗っ人を いまだに捕まえられずにいる 役人どもも情けない。 70 00:06:44,971 --> 00:06:46,906 お言葉ではございますが➡  71 00:06:46,906 --> 00:06:49,809 大名屋敷は 町方の支配ではありませんので。 72 00:06:49,809 --> 00:06:53,647 そんなことは言われんでも分かっとる。 分かっちゃいるが➡ 73 00:06:53,647 --> 00:06:58,151 おい 東吾 支配違いだからといって➡ 74 00:06:58,151 --> 00:07:02,589 盗っ人どもを野放しにしておいてよい という法はあるまい? 75 00:07:02,589 --> 00:07:05,425 はい。 おっしゃるとおりです。 76 00:07:05,425 --> 00:07:08,328 支配違いを承知だからこそ➡ 77 00:07:08,328 --> 00:07:13,767 通之進ではなくて お前に… お前に こうして頼んでおるのだ。 78 00:07:13,767 --> 00:07:17,470 捕まえてくれ。 はい。 79 00:07:19,639 --> 00:07:21,641 (源三郎)大名屋敷は 入りやすいし➡ 80 00:07:21,641 --> 00:07:25,111 至って 仕事もしやすい。 そう 盗賊どもは言っているそうですよ。 81 00:07:25,111 --> 00:07:28,014 部屋数が多くて 中にいる人間が少ない➡ 82 00:07:28,014 --> 00:07:30,784 おまけに 奥へ 侍は入ってこないし➡ 83 00:07:30,784 --> 00:07:33,620 塀を乗り越え 一旦 屋敷ん中へ 入っちまうと➡ 84 00:07:33,620 --> 00:07:36,456 まあ 思うがままに仕事ができると せせら笑ってる盗っ人を見て➡ 85 00:07:36,456 --> 00:07:38,391 私は知っておりますが…。 86 00:07:38,391 --> 00:07:41,795 (嘉助)へえ~ また お大名の屋敷が 荒らされてるんですかい? 87 00:07:41,795 --> 00:07:44,831 (源三郎)うん…。 (嘉助)あの 畝の旦那が 今おっしゃった➡ 88 00:07:44,831 --> 00:07:47,967 「大名屋敷は仕事がしやすい」 って言ったのは➡ 89 00:07:47,967 --> 00:07:52,138 ねえ ひょっとして それ 野分のさぶの一味じゃございませんか? 90 00:07:52,138 --> 00:07:54,074 (源三郎)ん? 野分のさぶ? 91 00:07:54,074 --> 00:07:59,479 へえ もう 15~16年も昔のこってすが そういう賊がいましたんで。 92 00:07:59,479 --> 00:08:01,748 聞かしてくれ そいつの話を。 へえ…。 93 00:08:01,748 --> 00:08:05,919 まだ 庄司の旦那が バリバリしてらっしゃる頃の話だから➡ 94 00:08:05,919 --> 00:08:08,755 若旦那が 覚えていらっしゃるかどうか…。 95 00:08:08,755 --> 00:08:11,224 いや… 名前も聞いたことがねえな。 96 00:08:11,224 --> 00:08:13,593 おう。 どんな賊だったんだ? へえ。 97 00:08:13,593 --> 00:08:15,528 いつも 5~6人の仲間がいまして➡ 98 00:08:15,528 --> 00:08:17,764 手引きをするのは お小姓 吉って野郎です。 99 00:08:17,764 --> 00:08:19,699 (るい)「お小姓 吉」? 100 00:08:19,699 --> 00:08:22,635 へえ。 お小姓に化けたり 時には 腰元に化けたりして➡ 101 00:08:22,635 --> 00:08:25,505 大名屋敷に潜り込みますんでね。➡ 102 00:08:25,505 --> 00:08:27,774 そして やつらは仕事をいたしますんで。 103 00:08:27,774 --> 00:08:38,485 ♬~ 104 00:08:38,485 --> 00:08:40,787 お小姓 吉か…。 105 00:08:40,787 --> 00:08:44,624 女みてえな野郎だったんでしょうね。 捕まえたんじゃなかったの? 106 00:08:44,624 --> 00:08:47,460 ええ 吉のやつには 逃げられちまいましたよ。 107 00:08:47,460 --> 00:08:49,796 吉の手引きで盗みに入ったのは➡ 108 00:08:49,796 --> 00:08:52,465 野分のさぶと もう一人 源八。 109 00:08:52,465 --> 00:08:55,268 この源八ってのは 侍上がりで腕が立ちます。 110 00:08:55,268 --> 00:08:58,471 それから 伊之助に松吉 こいつが見張り役で➡ 111 00:08:58,471 --> 00:09:03,910 盗んだ品物を金に換える役してたのが 辰三郎… これが一味です。 112 00:09:03,910 --> 00:09:06,212 そのうち 誰々が捕まったんだい? 113 00:09:06,212 --> 00:09:11,051 (嘉助)ええ。 頭分のさぶと… それから 伊之助に松吉です。 114 00:09:11,051 --> 00:09:12,986 やつらが御用になったのは➡ 115 00:09:12,986 --> 00:09:16,956 御老中 青山下野守様の屋敷へ 盗みに入った時のこって➡ 116 00:09:16,956 --> 00:09:19,592 捕り親は 庄司の旦那でした。 117 00:09:19,592 --> 00:09:22,095 まあ 父上が…。 (嘉助)ハハハハハ…。 118 00:09:22,095 --> 00:09:24,030 (お吉)捕まった3人は どうなったんです? 119 00:09:24,030 --> 00:09:26,933 ああ… まあ 小塚っ原へ ずらっと 首 並べて。 120 00:09:26,933 --> 00:09:30,804 お仕置き…。 逃げた3人は どうしたんだ? 121 00:09:30,804 --> 00:09:33,807 さあ… それから どうなったものか。➡ 122 00:09:33,807 --> 00:09:36,643 いまだに捕まったったい話は 聞いてませんから。 123 00:09:36,643 --> 00:09:38,945 源さん…。 124 00:09:38,945 --> 00:09:40,980 これは 事によったら その3人が…。 125 00:09:40,980 --> 00:09:43,783 うん 今度の大名荒らしの盗賊かな。 126 00:09:43,783 --> 00:09:47,787 …とすりゃ 手引きは お小姓 吉だ。 127 00:09:54,127 --> 00:09:57,464 (通之進)確かに 手引きは お小姓 吉。 128 00:09:57,464 --> 00:09:59,799 嘉助の言った そいつだろう。 129 00:09:59,799 --> 00:10:04,471 被害に遭った屋敷じゃ 判で押したように 新参の女中が1人➡ 130 00:10:04,471 --> 00:10:06,406 姿を消してるって話だ。 131 00:10:06,406 --> 00:10:08,808 そうですか。 やっぱり…。 132 00:10:08,808 --> 00:10:15,148 で 15年前に 野分の一味が荒らし回った 大名屋敷 洗い出してみたんだが…。 133 00:10:15,148 --> 00:10:17,083 ふ~ん…。 134 00:10:17,083 --> 00:10:19,385 あ… これでえ。 135 00:10:22,822 --> 00:10:31,531 荒らされているのは 神田橋内 桜田 霞が関 小石川…。 136 00:10:31,531 --> 00:10:36,002 今度の賊が 仕事場にしている 本所深川の… 屋敷は➡ 137 00:10:36,002 --> 00:10:37,937 一つもありません。 138 00:10:37,937 --> 00:10:40,874 ああ それだよ。 一度 入った屋敷では➡ 139 00:10:40,874 --> 00:10:44,310 手引き役の お小姓 吉 顔を知られているから➡ 140 00:10:44,310 --> 00:10:46,246 もう 役には立たねえやな。 141 00:10:46,246 --> 00:10:49,516 それで今度は 本所深川へ くら替えしたってわけですか? 142 00:10:49,516 --> 00:10:56,389 うん…。 不用意に そう決め込むのは危ねえが➡ 143 00:10:56,389 --> 00:11:02,095 まあ 恐らくは その見当だろうと 俺も目星は つけていたんでい。 144 00:11:02,095 --> 00:11:07,901 では 狙う屋敷は 本所深川と 的を絞って 見回ることにいたします。 145 00:11:07,901 --> 00:11:10,103 おう そうしてみてくれ。 146 00:11:24,984 --> 00:11:26,920 うっ…。 147 00:11:26,920 --> 00:11:28,855 おい 源さん! 148 00:11:28,855 --> 00:11:33,159 だ… 大丈夫です…。 無理しちゃいけねえ。 どうしたんだい? 149 00:11:33,159 --> 00:11:35,995 少し さしこんできやがって…。 ああ そりゃいけません。 150 00:11:35,995 --> 00:11:37,931 なに 大したことはねえ…。 駄目だ 駄目だ! 151 00:11:37,931 --> 00:11:39,866 おい 伝次 医者を呼んできてくれ。 (伝次)へえ。 152 00:11:39,866 --> 00:11:41,868 俺は 源さんを そこの番屋へ 連れていって 寝かしとくから。 153 00:11:41,868 --> 00:11:43,870 (伝次)お一人で ようござんすか? 大丈夫だ。 154 00:11:43,870 --> 00:11:46,005 おめえは 早く医者を。 (伝次)行ってきます。 155 00:11:46,005 --> 00:11:50,310 えっ 畝様が? (お花)ええ。 ひどい熱 出して…。➡ 156 00:11:50,310 --> 00:11:52,245 「う~ う~」 うなって 寝てらっしゃる。 157 00:11:52,245 --> 00:11:56,015 神林の若旦那が 付きっきりで看病をね。 まあ…。 158 00:11:56,015 --> 00:12:00,253 まあ そういうわけだから 当分 来られないからって お言づけ。 159 00:12:00,253 --> 00:12:03,456 どうもありがとう。 いいえ。 アハハハ。 160 00:12:03,456 --> 00:12:07,260 まあね 好きでもないのに 鯖のみそ煮なんか➡ 161 00:12:07,260 --> 00:12:09,195 召し上がるからいけないんですよ。 162 00:12:09,195 --> 00:12:11,464 畝の旦那は ああいう 気のいい お方だから➡ 163 00:12:11,464 --> 00:12:14,801 出されたら 食べなきゃ悪いと思って 無理して食べたってんですけどね。 164 00:12:14,801 --> 00:12:18,271 あっ あっ… ここで お出しになったんじゃ…。 165 00:12:18,271 --> 00:12:20,807 うちじゃ あたるようなもの お出しいたしません。 166 00:12:20,807 --> 00:12:22,742 ああ そう。 そりゃ… ええ! 167 00:12:22,742 --> 00:12:26,279 そりゃ もう こちらじゃないって 私もね はなっから そう思ってましたよ。 168 00:12:26,279 --> 00:12:32,085 あっ! きっと 畝様んとこの ばあやさん あの人が煮たんだ。 ねっ? 169 00:12:38,024 --> 00:12:41,160 嘉助さん! あっ お出かけですか。 170 00:12:41,160 --> 00:12:43,997 ええ 畝様のお見舞いにね ちょっと…。 171 00:12:43,997 --> 00:12:46,299 (嘉助)どうぞ お気を付けなすって。 172 00:12:46,299 --> 00:12:49,669 (おきみ)行ってらっしゃいまし! 行ってらっしゃいまし! 173 00:12:49,669 --> 00:12:51,604 鯖って あたると怖いんですよね。 174 00:12:51,604 --> 00:12:53,539 ほら 余計なこと言ってねえで 早いとこ 支度しねえか。 175 00:12:53,539 --> 00:12:55,541 は~い。 176 00:13:05,151 --> 00:13:07,153 (孝助)ごめんくださいまし! 177 00:13:14,827 --> 00:13:18,264  心の声 義姉上様が お見舞いに…。 178 00:13:18,264 --> 00:13:37,684 ♬~ 179 00:13:37,684 --> 00:13:42,288 (おもん)あっ… お帰りなさいまし。 180 00:13:42,288 --> 00:13:45,992 お帰りなさいまし。 いかがでした? 181 00:13:45,992 --> 00:13:47,927 あ… 若旦那には➡ 182 00:13:47,927 --> 00:13:49,929 お目にかかれなかったんで? 183 00:13:57,170 --> 00:13:59,105 嘉助さん…。 184 00:13:59,105 --> 00:14:38,478 ♬~ 185 00:14:38,478 --> 00:14:41,814 ⚟(八造)ごめんくださいまし。 八造でございますが。入るんじゃねえ。 186 00:14:41,814 --> 00:14:44,283 えっ? あの 八造でございますよ。 187 00:14:44,283 --> 00:14:46,819 ⚟八造は分かっているが 入っちゃいけねえ。 188 00:14:46,819 --> 00:14:49,155 けど 若旦那 もう3日も ず~っと そうやって➡ 189 00:14:49,155 --> 00:14:51,090 詰めてらっしゃるんでしょ。 190 00:14:51,090 --> 00:14:54,894 毒ですよ。 若旦那まで 体 壊しちまったんじゃ…。 191 00:14:56,662 --> 00:14:59,298 俺のことは 心配いらねえから 帰ってくれ。 192 00:14:59,298 --> 00:15:03,302 源さんの病気 たちのよくねえ病気かもしれねえから➡ 193 00:15:03,302 --> 00:15:06,072 食い物商売の おめえに うつった日には 大ごとだ。 194 00:15:06,072 --> 00:15:09,776 え~? ⚟それより 例の盗っ人の方は どうした? 195 00:15:09,776 --> 00:15:14,247 ええ。 そのことなんでございますがね 妙な あんばい式でござんして➡ 196 00:15:14,247 --> 00:15:17,950 畝の旦那が患ったと同時にね ぴたっと…。 197 00:15:17,950 --> 00:15:20,987 どこからも 盗っ人に入られたって お大名方の うわさ➡ 198 00:15:20,987 --> 00:15:23,122 聞かなくなっちまったんでさあ。 199 00:15:23,122 --> 00:15:25,124 なに? 200 00:15:28,928 --> 00:15:32,799 ⚟(子供たち)わあ~! 201 00:15:32,799 --> 00:15:35,001 (風鈴の音) 202 00:16:02,595 --> 00:16:06,098 おい! 源さんの床上げだ! 203 00:16:06,098 --> 00:16:09,435 まあ 東吾様… 畝様も いらっしゃいまし!➡ 204 00:16:09,435 --> 00:16:11,370 お嬢様~! 205 00:16:11,370 --> 00:16:13,773 わあっ! お嬢様! 206 00:16:13,773 --> 00:16:17,109 若旦那… 畝の旦那 もう すっかり およろしいんですか? 207 00:16:17,109 --> 00:16:19,045 心配かけて すまなかったな。 208 00:16:19,045 --> 00:16:21,981 八造も伝次も徳松も おっつけ来る手はずになってるからな。 209 00:16:21,981 --> 00:16:23,983 へえ へえ。 お~ るい! 快気祝だ! 210 00:16:23,983 --> 00:16:26,118 盛大に やってやってくれ。 はい。 211 00:16:26,118 --> 00:16:29,121 (嘉助)へいへい。 や~い! (お吉)おきみちゃん! 212 00:16:29,121 --> 00:16:31,624 (笑い声) 213 00:16:36,128 --> 00:16:38,631 しかし 不思議です。 あら 何が? 214 00:16:38,631 --> 00:16:40,967 私が倒れてから 大名荒らしが 鳴りを潜めてるっていうのが➡ 215 00:16:40,967 --> 00:16:42,902 どうも げせません。 216 00:16:42,902 --> 00:16:47,273 いやいや それは きっとね 旦那に義理立てしたんですぜ。 217 00:16:47,273 --> 00:16:50,176 じゃあ 旦那のご病気が治った っていうを聞いて 今夜辺り…。 218 00:16:50,176 --> 00:16:52,812 え~? ばかなことを…! 219 00:16:52,812 --> 00:16:54,747 (笑い声) 220 00:16:54,747 --> 00:16:56,682 あのね ばかなことっていやあ➡ 221 00:16:56,682 --> 00:17:00,219 世の中に これほど ばかなことは ねえだろうっていう話があるんですがね。 222 00:17:00,219 --> 00:17:02,288 おや どんな話? 223 00:17:02,288 --> 00:17:06,025 実はね 幽霊が殺されたって話なんで…。 224 00:17:06,025 --> 00:17:07,960 よしてくださいよ 親分。 225 00:17:07,960 --> 00:17:10,863 人が殺されて幽霊になったって話なら 分かりますけど➡ 226 00:17:10,863 --> 00:17:13,432 何で幽霊が 殺されなきゃいけないんですか? 227 00:17:13,432 --> 00:17:16,335 そこなんだよ お吉さん ばかな話だってえのはさ。 228 00:17:16,335 --> 00:17:18,304 聞こうじゃねえか その話を。 229 00:17:18,304 --> 00:17:21,607 はい。 では お求めに応じまして…。 230 00:17:21,607 --> 00:17:23,543 (せきばらい) 231 00:17:23,543 --> 00:17:26,779 一席 申し上げます。 よお よお 待ってました! 232 00:17:26,779 --> 00:17:28,714 (拍手) 233 00:17:28,714 --> 00:17:34,654 え~… 浅草の橋場に 一軒の 乙りきな寮があったと おぼし召せ。 234 00:17:34,654 --> 00:17:37,423 橋場の寮とくりゃあ さしずめ 吉原の花魁が➡ 235 00:17:37,423 --> 00:17:39,358 出養生にでも来そうな道具立てだな。 236 00:17:39,358 --> 00:17:42,128 源さんが腹っ下しで寝ついてたんじゃ 似合わねえや。 237 00:17:42,128 --> 00:17:44,630 (笑い声) 混ぜっ返しちゃいけませんよ。 238 00:17:44,630 --> 00:17:46,565 謹聴 謹聴…。 239 00:17:46,565 --> 00:17:48,968 花魁じゃごわせんがね 若旦那の おっしゃるとおり➡ 240 00:17:48,968 --> 00:17:52,271 病気がちの おかみさんの 養生のためにもとね➡ 241 00:17:52,271 --> 00:17:57,476 深川の貸席で やなぎってぇうちの 旦那がこしらえたもんなんですがね。 242 00:17:57,476 --> 00:17:59,412 それで? それで どうしたんです? 243 00:17:59,412 --> 00:18:02,214 ええ 畝の旦那が倒れなさった 先月の末➡ 244 00:18:02,214 --> 00:18:07,920 おかみさんの おれんさんって方が 亡くなったん…。 245 00:18:07,920 --> 00:18:10,423 深川の店は 客商売ってこともあり➡ 246 00:18:10,423 --> 00:18:14,760 通夜も弔いも 橋場の寮で 丁重に営んだあと➡ 247 00:18:14,760 --> 00:18:19,231 二七日の晩に 旦那の枕元へ➡ 248 00:18:19,231 --> 00:18:26,605 ヒュ~ ドロドロ ドロドロ ドロドロ…。 249 00:18:26,605 --> 00:18:28,641 出たのかい 幽霊が? 250 00:18:28,641 --> 00:18:30,943 出ました。 分かった。 251 00:18:30,943 --> 00:18:34,246 旦那さんに おめかけさんがいて 悔しいってんで おかみさんが…。 252 00:18:34,246 --> 00:18:36,616 違う 違う。 そうじゃないんですか? 253 00:18:36,616 --> 00:18:39,652 じゃあ 何しに出てきたんです? おかみさんの幽霊は? 254 00:18:39,652 --> 00:18:44,357 無心にね 来たの…。 え? 無心? 255 00:18:44,357 --> 00:18:47,326 幽霊が旦那の所へ 無心に来たっていうんですよ。 256 00:18:47,326 --> 00:18:49,328 (伝次)何の無心だい? 257 00:18:49,328 --> 00:18:54,033 (八造)生前 大切にしていた 露芝模様の小袖…。➡ 258 00:18:54,033 --> 00:18:57,903 「あれに未練が残って 行く所へ行かれませんから➡ 259 00:18:57,903 --> 00:19:03,909 あの小袖を ねえ… 旦那 出しておくれな…」。 260 00:19:06,212 --> 00:19:09,415 (八造)旦那が 恐る恐る その着物を出してやるってえと➡ 261 00:19:09,415 --> 00:19:13,753 幽霊は さも うれしげに そいつを持つってえと➡ 262 00:19:13,753 --> 00:19:16,789 ドロドロ ドロドロ ドロドロドロ…。 263 00:19:16,789 --> 00:19:19,925 かき消すように いなくなっちまったってんですがね。 264 00:19:19,925 --> 00:19:23,229 ふ~ん… 女ってのは 欲が深えな。 265 00:19:23,229 --> 00:19:27,933 たかが 小袖一枚のために 十万億土から 舞い戻ってくるってんだから。 ハハハ…。 266 00:19:27,933 --> 00:19:29,869 そんなに お気に入りの小袖なら➡ 267 00:19:29,869 --> 00:19:32,238 お棺の中に入れてやれば よかったじゃありませんか。 268 00:19:32,238 --> 00:19:36,609 んっ それで なんだろ? 明くる朝 菩提寺へ行ってみるってえと➡ 269 00:19:36,609 --> 00:19:39,245 おかみさんの白木の墓標に➡ 270 00:19:39,245 --> 00:19:41,781 フワ~ッと そいつが掛かっていた。 271 00:19:41,781 --> 00:19:44,817 嘉助さんには悪いけどね 墓に 着物は掛かってなかったの。 272 00:19:44,817 --> 00:19:48,120 そのかわりね 3日たって また幽霊が出たっていうんですよ。 273 00:19:48,120 --> 00:19:50,790 (おきみ)え~ また? (おもん)おかみさんの幽霊ですか? 274 00:19:50,790 --> 00:19:53,125 今度は 何しに来たんです? 275 00:19:53,125 --> 00:19:56,128 (八造)やっぱり 無心に来たんだ。 (嘉助)何を無心に来たんだい? 276 00:19:56,128 --> 00:19:58,798 べっ甲の くしと あの さんご珠の かんざしね。 277 00:19:58,798 --> 00:20:00,733 出してあげたの? いえいえ…。 278 00:20:00,733 --> 00:20:04,470 まあ さすがの旦那も 今度は ちょいと おかしいなと気が付いてね➡ 279 00:20:04,470 --> 00:20:09,642 「よしよし 今 出してやるから 待っておいで」と言いながら➡ 280 00:20:09,642 --> 00:20:15,981 幽霊の影が うっすらと映っている障子の そばへ寄ってって…。 281 00:20:15,981 --> 00:20:20,152 「やあ~っ!」と障子の奥へ 脇差しを突っ込んだんだ。 282 00:20:20,152 --> 00:20:22,154 幽霊が悲鳴を上げて ぶっ倒れたか? 283 00:20:22,154 --> 00:20:25,291 悲鳴は どうだか分かりませんがね 廊下へ どたっと 人が倒れて➡ 284 00:20:25,291 --> 00:20:27,660 障子を開けて 明かりをつけて 見るってえと➡ 285 00:20:27,660 --> 00:20:29,595 奉公人で おきくってえ娘が➡ 286 00:20:29,595 --> 00:20:32,498 脇差しに突かれて 死んでましたよ。 287 00:20:32,498 --> 00:20:35,401 おきくって人が おかみさんの幽霊に化けて➡ 288 00:20:35,401 --> 00:20:39,839 小袖だの くしだの かんざしだのを ねだったっていうわけですか。 289 00:20:39,839 --> 00:20:44,677 「幽霊の正体 見たり 枯れ尾花」さ…。 ハハハハハハ。 290 00:20:44,677 --> 00:20:47,513 なあ 八造。 へえ。 何です? 291 00:20:47,513 --> 00:20:50,182 おきくは 一突きで殺されたのか? 292 00:20:50,182 --> 00:20:53,853 ええ。 一突きで死んだって聞きましたよ。 293 00:20:53,853 --> 00:20:58,324 何か 気になるってのかい? 源さん。 アハハ…。 294 00:20:58,324 --> 00:21:01,327 何だったら 明日 橋場へ行ってみるか? 295 00:21:13,839 --> 00:21:17,276 いい気持ちだなあ。 296 00:21:17,276 --> 00:21:23,482 暑い暑いといっても 夏も終わりですなあ。 297 00:21:23,482 --> 00:21:28,487 この分だと今年は 秋が来るのが 早いかもしれませんね。 298 00:21:31,357 --> 00:21:36,495 (お花)神林の若旦那 いい方でございますねえ。 299 00:21:36,495 --> 00:21:39,532 まあ 口じゃ 「好きでもない 鯖のみそ煮なんぞ➡ 300 00:21:39,532 --> 00:21:42,168 食べて あたるだなんて ドジだ まぬけだ」なんて➡ 301 00:21:42,168 --> 00:21:44,837 ひどいこと おっしゃってますけどさあ➡ 302 00:21:44,837 --> 00:21:47,506 畝の旦那が寝ついてらした 10日もの間➡ 303 00:21:47,506 --> 00:21:49,441 ず~っと付きっきりで…。 304 00:21:49,441 --> 00:21:52,011 ねえ できませんよ! 305 00:21:52,011 --> 00:21:55,047 ええ。 兄弟だって ああまでは できるかどうか。 306 00:21:55,047 --> 00:21:57,049 根は優しい人だから…。 307 00:21:58,784 --> 00:22:00,719 お医者様が来ましてね➡ 308 00:22:00,719 --> 00:22:03,455 「あらっ こりゃ ひょっとすると 悪い病気かもしれない」って➡ 309 00:22:03,455 --> 00:22:05,391 そう言ったら 「悪い病気で うつるといけないから」って➡ 310 00:22:05,391 --> 00:22:08,794 若旦那が おっしゃいましてね まあ ばあやさんも じいやさんも➡ 311 00:22:08,794 --> 00:22:11,697 いいえ… わざわざ 深川から飛んでった私たちまで➡ 312 00:22:11,697 --> 00:22:16,135 旦那の部屋から 追ん出して 旦那の体を こう抱えるようにして➡ 313 00:22:16,135 --> 00:22:18,804 何度も何度も あなた…➡ 314 00:22:18,804 --> 00:22:22,975 厠へ連れてってあげなすったんですよ 若旦那が…。 315 00:22:22,975 --> 00:22:27,479 病気の時には ええ… 私にも いつも優しくしてくれる。 316 00:22:27,479 --> 00:22:30,983 ねえ! 神林の奥様がね 若旦那まで病気になりはしないかと➡ 317 00:22:30,983 --> 00:22:32,918 ご心配あそばして➡ 318 00:22:32,918 --> 00:22:36,855 あのお屋敷からね 代わりの人を 差し向けなさったんですよ。➡ 319 00:22:36,855 --> 00:22:38,858 でも 若旦那は➡ 320 00:22:38,858 --> 00:22:40,993 「源さんは この私が そばに付いててやるのが➡ 321 00:22:40,993 --> 00:22:42,928 一番 気兼ねがないんだから」って➡ 322 00:22:42,928 --> 00:22:47,166 あなた とうとう 帯も解かずに 夜も寝ないで ず~っと…。 323 00:22:47,166 --> 00:22:51,036 ええ。 はあ~ 「畝の旦那には➡ 324 00:22:51,036 --> 00:22:54,506 あんな いいお友達が いらっしゃるんだな」って➡ 325 00:22:54,506 --> 00:22:57,843 うちの人まで 目ぇ赤くして 喜んでましたよ。 326 00:22:57,843 --> 00:22:59,845 (嘉助)失礼します。 327 00:23:02,114 --> 00:23:04,049 おい お花さん…。 えっ? 328 00:23:04,049 --> 00:23:06,952 こんな所で 油 売ってていいのかい? 店の方は どうしてるんだい? 329 00:23:06,952 --> 00:23:09,455 あっ 店? 今日は お休み。 330 00:23:09,455 --> 00:23:11,490 釜 直してもらってるから。 アハハハハ…。 331 00:23:11,490 --> 00:23:14,627 じゃ…。 332 00:23:14,627 --> 00:23:17,529 うん…。 ご心配なく。 333 00:23:17,529 --> 00:23:19,832 (嘉助)ハハハハ…。 334 00:23:25,638 --> 00:23:32,978 (安兵衛)これは…。 貸席 やなぎの主 安兵衛でございます。➡ 335 00:23:32,978 --> 00:23:38,784 この度は とんだことで お騒がせ申しまして 相すみません。 336 00:23:38,784 --> 00:23:42,688 うちの奉公人の仕業と 分かっておりましたら➡ 337 00:23:42,688 --> 00:23:47,526 決して 脇差しで突くような まねは しなかったんでございますが➡ 338 00:23:47,526 --> 00:23:49,995 ご承知と存じますが➡ 339 00:23:49,995 --> 00:23:53,832 近頃 この辺りには たちのよくない 盗っ人が出ると➡ 340 00:23:53,832 --> 00:23:55,768 聞かされておりましたもので。 341 00:23:55,768 --> 00:24:00,606 うん…。 死んだ おきくの 始末は どうしました? 342 00:24:00,606 --> 00:24:05,444 はい。 身寄りの者が参りまして 遺骨を引き取っていきました。 343 00:24:05,444 --> 00:24:09,315 まあ 金で済むことではございますまいが➡ 344 00:24:09,315 --> 00:24:13,118 供養のために 応分のことはいたしまして…。 345 00:24:13,118 --> 00:24:16,021 そいつは ちと おかしかねえかい? 346 00:24:16,021 --> 00:24:19,892 何が おかしいんでございましょうか? 347 00:24:19,892 --> 00:24:23,762 おきくは 幽霊に化けて 小袖を盗み くし かんざしを盗ろうとして➡ 348 00:24:23,762 --> 00:24:25,698 殺されたんだ。 349 00:24:25,698 --> 00:24:28,600 いちいち 金をやるには及ばねえと 思うがねえ。 350 00:24:28,600 --> 00:24:31,804 それは まあ さようでございますが➡ 351 00:24:31,804 --> 00:24:35,641 殺さないでも 暇をやれば済みましたこと。 352 00:24:35,641 --> 00:24:40,479 家内の喪中のことではあり おきくのと申しますより➡ 353 00:24:40,479 --> 00:24:43,983 家内の供養にと存じまして… はい。 354 00:24:43,983 --> 00:24:47,820 おきくの親元ってのは? 355 00:24:47,820 --> 00:24:52,324 洲崎の漁師で 多助と申す者の娘と 聞いております。 356 00:24:57,830 --> 00:25:00,232 安兵衛というのは 源さん…➡ 357 00:25:00,232 --> 00:25:03,135 以前 ありゃ 侍じゃねえか? (源三郎)どうしてですか? 358 00:25:03,135 --> 00:25:07,439 堅気の旦那が 脇差しを持ち出して 幽霊を一突きってのは➡ 359 00:25:07,439 --> 00:25:10,342 合点がいかねえよ。 しかし 安兵衛は➡ 360 00:25:10,342 --> 00:25:13,245 「近頃 辺りを荒らし回ってる 盗っ人かもしれないと思った」➡ 361 00:25:13,245 --> 00:25:15,180 そう言ってましたな。 362 00:25:15,180 --> 00:25:17,616 盗っ人が相手なら なおさら 手向かいなんぞ しねえものだ。 363 00:25:17,616 --> 00:25:20,519 品物やって おとなしく 帰ってもらおうとするのが常識だろうぜ。 364 00:25:20,519 --> 00:25:23,255 金がねえわけじゃねえしね。 うん。どうぞ。 365 00:25:23,255 --> 00:25:27,626 どんな高価なものにしろ たかが女の髪の道具だ。 366 00:25:27,626 --> 00:25:32,131 けがをしちゃ つまらねえと まず考えるのが 当たり前だろう。 367 00:25:32,131 --> 00:25:34,066 あっ 思い出した! 368 00:25:34,066 --> 00:25:37,636 確かに あの やなぎの主人ってえ人は 武家の出だって聞きましたよ。 369 00:25:37,636 --> 00:25:40,472 随分 古い話ですがね➡ 370 00:25:40,472 --> 00:25:42,408 先代の主人が死んだあと➡ 371 00:25:42,408 --> 00:25:46,278 今の安兵衛って人が おかみさんの婿に来たんだってね。 372 00:25:46,278 --> 00:25:51,150 10年前の話ですが 浪人だったんじゃありませんかね? 373 00:25:51,150 --> 00:25:53,485 やなぎってえ貸席は はやってんのかい? 374 00:25:53,485 --> 00:25:55,421 まあまあってとこでしょ。➡ 375 00:25:55,421 --> 00:25:57,356 特にいいとも悪いとも 聞いてませんから。 376 00:25:57,356 --> 00:25:59,358 安兵衛が…。 377 00:25:59,358 --> 00:26:01,593 何です? いや…➡ 378 00:26:01,593 --> 00:26:05,230 妙に肝の据わっていたのも 武家の出だというなら 不思議はねえが➡ 379 00:26:05,230 --> 00:26:07,166 それだけ 肝の据わっていた男が➡ 380 00:26:07,166 --> 00:26:10,936 なぜ 幽霊の正体 確かめてから 突かなかったかと。 381 00:26:10,936 --> 00:26:14,440 それだけが ちょっとな…。 なるほど。 382 00:26:14,440 --> 00:26:16,775 前に小袖を だまし盗られて➡ 383 00:26:16,775 --> 00:26:20,646 腹立ち紛れに やったんだと いうんだろうが…。 384 00:26:20,646 --> 00:26:24,950 おきくの親元を 洗ってみましょう。 385 00:26:28,253 --> 00:26:30,189 源さん 大丈夫かい? 386 00:26:30,189 --> 00:26:32,124 (源三郎)いつまでも 病人扱いにしないでください。 387 00:26:32,124 --> 00:26:34,460 ⚟(八造)旦那~! 388 00:26:34,460 --> 00:26:37,796 おっ 八造だな。 (源三郎)ああ 伝次と徳松も一緒ですな。 389 00:26:37,796 --> 00:26:39,731 どうしたい? 390 00:26:39,731 --> 00:26:42,468 殺された おきくの親元 徳松が調べてきてくれました。 391 00:26:42,468 --> 00:26:44,403 (源三郎)あ~ そいつは ご苦労だったな。 (徳松)いえ…。 392 00:26:44,403 --> 00:26:46,638 洲崎の漁師の多助には 会えたかい? 393 00:26:46,638 --> 00:26:49,274 へい。 「間違いなく おきくは 自分の娘だ」って➡ 394 00:26:49,274 --> 00:26:51,210 多助は そう言って➡ 395 00:26:51,210 --> 00:26:53,812 「旦那に斬られて死んだのは 娘の心得違いが もとなんだから➡ 396 00:26:53,812 --> 00:26:56,715 文句は言えねえ。 やなぎの旦那を恨んだりもしていない」。➡ 397 00:26:56,715 --> 00:26:58,684 多助は そう言ってました。 398 00:26:58,684 --> 00:27:04,223 そうかい。 安兵衛の話に うそはなかったかい。 399 00:27:04,223 --> 00:27:08,093 俺の勘も外れたな。 勘が外れたって言いますと? 400 00:27:08,093 --> 00:27:10,095 侍崩れの源八…➡ 401 00:27:10,095 --> 00:27:13,232 もしかしたら あの安兵衛じゃねえかと 考えてみたのさ。えっ…。 402 00:27:13,232 --> 00:27:17,769 安兵衛が源八だとしたら 源さんが患いついたと同時に➡ 403 00:27:17,769 --> 00:27:21,240 大名荒らしが やんだのも 納得がいく。 404 00:27:21,240 --> 00:27:23,175 ちょっ… ちょっと待ってくださいよ 若旦那。➡ 405 00:27:23,175 --> 00:27:27,446 安兵衛が源八だったとしたら どう納得がいくんです? 406 00:27:27,446 --> 00:27:30,249 大名荒らしが やんだのは 源さんが患ったからじゃねえ。 407 00:27:30,249 --> 00:27:33,952 手引き役のお小姓 吉が 死んじまったせいだ。 408 00:27:33,952 --> 00:27:36,788 東吾さん… それじゃあ 東吾さんは➡ 409 00:27:36,788 --> 00:27:39,625 殺された おきくが お小姓 吉だったと? 410 00:27:39,625 --> 00:27:44,796 そう考えてみたんだが 洲崎の漁師の娘に 間違いないってことになっちゃあ➡ 411 00:27:44,796 --> 00:27:48,600 ハハハ… この読み筋は 捨てざあならねえ。 412 00:28:05,117 --> 00:28:07,920 (嘉助)若旦那 よろしゅうございますか。 413 00:28:07,920 --> 00:28:09,855 おう 入ってくれ。 414 00:28:09,855 --> 00:28:11,790 お許しが出たよ 入ってくんな。 415 00:28:11,790 --> 00:28:14,593 へい。 え~ ごめんくださいまし。 416 00:28:14,593 --> 00:28:18,931 何だ 八造親分が見えてたの? ああ… 何か あったのかい? 417 00:28:18,931 --> 00:28:20,866 へえ。 それは その…➡ 418 00:28:20,866 --> 00:28:23,101 どうも 腑に落ちねえ話なもんなんで➡ 419 00:28:23,101 --> 00:28:25,604 若旦那のお耳に入れたもんかどうか➡ 420 00:28:25,604 --> 00:28:27,639 嘉助さんとこへ 相談に来たんでやすがね…。 421 00:28:27,639 --> 00:28:30,475 あっしは まあ 一応… お耳に入れた方がいいんじゃねえかと➡ 422 00:28:30,475 --> 00:28:33,345 そう思いまして。 どんな話か 言ってみてくれ。 423 00:28:33,345 --> 00:28:35,781 実は 本所の麻生源右衛門様…。 424 00:28:35,781 --> 00:28:39,451 ん? 本所のおやじ殿が どうしたってんだ? 425 00:28:39,451 --> 00:28:41,386 (八造) 仏様をお買い求めになったってんで。 426 00:28:41,386 --> 00:28:45,324 何!? (八造)妙な話でげしょう? 427 00:28:45,324 --> 00:28:47,626 こいつは 全く腑に落ちねえや。 428 00:28:47,626 --> 00:28:51,129 年はとっても 信心ごころなんざ 毛ほどもねえ あの じい様が➡ 429 00:28:51,129 --> 00:28:53,632 仏様 買い込むとはな…。 430 00:28:53,632 --> 00:28:55,968 暑さにでも あたったのかな? 431 00:28:55,968 --> 00:28:59,638 しかも その 仏様てえのが ただものじゃねえんだそうで。 432 00:28:59,638 --> 00:29:03,408 金むくの仏様。 「金むく」だと? 433 00:29:03,408 --> 00:29:06,912 へえ。 なりは ちっちぇえんですけど 中まで 金なんですから➡ 434 00:29:06,912 --> 00:29:09,748 はあ… 潰しにしたって いい値でしょう。 435 00:29:09,748 --> 00:29:12,417 おまけに その仏様 入れてある お厨子ってえものが➡ 436 00:29:12,417 --> 00:29:14,353 また これ結構な品物なんだそうで。 437 00:29:14,353 --> 00:29:17,589 (八造)ええ。 何とかいう職人の… 自慢の細工でね➡ 438 00:29:17,589 --> 00:29:20,092 こっちの方だけでも 四~五百両はするって話ですぜ。 439 00:29:20,092 --> 00:29:22,094 本当なのかしらね? 440 00:29:22,094 --> 00:29:24,429 本当にも うそにも お嬢さん➡ 441 00:29:24,429 --> 00:29:28,100 堅えで評判の 御目付役 麻生源右衛門様が➡ 442 00:29:28,100 --> 00:29:32,104 そんなものをお求めになるっていうことが 腑に落ちませんやね。 443 00:29:32,104 --> 00:29:34,239 (八造)しかも 出入りの者に➡ 444 00:29:34,239 --> 00:29:36,174 「御利益あらたかなる仏様であるから➡ 445 00:29:36,174 --> 00:29:39,444 心願の筋のある者は 遠慮なく参詣に参れ」と➡ 446 00:29:39,444 --> 00:29:43,248 お殿様自身 ご吹聴あそばしてる っていうんですからねえ。 447 00:29:43,248 --> 00:29:45,784 日頃の麻生様には似合わねえや。 448 00:29:45,784 --> 00:29:48,120 まあ どういうことになってんだろうと➡ 449 00:29:48,120 --> 00:29:50,956 話を聞いて こっちは もう 狐に つままれたみたいな心持ちでね。 450 00:29:50,956 --> 00:29:53,258 ハハハハハハハハハ! 451 00:29:53,258 --> 00:29:55,193 若旦那…。 な… 何です? 452 00:29:55,193 --> 00:29:57,129 ハハハハハハハ…。 あなたまで 暑さにあたって➡ 453 00:29:57,129 --> 00:29:59,131 頭を どうかしちゃった っていうんじゃないでしょうね? 454 00:29:59,131 --> 00:30:01,133 心配するな 気は確かだ。 455 00:30:01,133 --> 00:30:03,468 じゃあ 何が そんなに おかしいっていうんです? 456 00:30:03,468 --> 00:30:05,804 あれ以来 大名屋敷を荒らし回る盗賊が➡ 457 00:30:05,804 --> 00:30:08,473 鳴りを潜めて 動かねえもんだから➡ 458 00:30:08,473 --> 00:30:11,510 本所のじいさんは しびれ切らして…。 459 00:30:11,510 --> 00:30:16,982 するってえと 金むくの仏様は 盗っ人を おびき寄せるための…。 460 00:30:16,982 --> 00:30:19,651 そうだよ おとりだ! え? 461 00:30:19,651 --> 00:30:22,688 じゃあ 自ら あの うわさを広めといて 賊に盗りに来いって。 462 00:30:22,688 --> 00:30:27,392 そうでなくても あの おやじ殿が 仏様など買い込むものかよ。 463 00:30:27,392 --> 00:30:29,361 でも そうなると…。 464 00:30:29,361 --> 00:30:34,166 そうですよ。 麻生様のお屋敷は 御家来衆も そう多くはねえし。 465 00:30:34,166 --> 00:30:37,502 (八造)お殿様は もう お年ですしね…。 (嘉助)あとは 下のお嬢様の…。 466 00:30:37,502 --> 00:30:39,438 七重様だけ。 467 00:30:39,438 --> 00:30:43,175 盗っ人が誘いに乗って 押し込んできたら えれえことになりますぜ こりゃ…。 468 00:30:43,175 --> 00:30:45,177 八造!へい! すぐに 源さんに知らしてこい! 469 00:30:45,177 --> 00:30:47,979 麻生の屋敷の周り 見張ってくれと! 承知しました! 470 00:30:50,048 --> 00:30:53,318 行ってあげてくださいまし。 471 00:30:53,318 --> 00:30:55,253 さあ! 472 00:30:55,253 --> 00:30:57,189 うん…。 473 00:30:57,189 --> 00:31:08,133 ♬~ 474 00:31:08,133 --> 00:31:10,802 焦るなよ 佐一郎。 475 00:31:10,802 --> 00:31:15,474 焦ってみたところで 賊は いつ現れるか 分かりやしねえんだ。 476 00:31:15,474 --> 00:31:19,978 焦ったら 無駄に疲れて いざという時 存分の働きができなくなるぞ。 477 00:31:19,978 --> 00:31:21,980 (佐一郎)はい。 478 00:31:29,287 --> 00:31:31,289 徳…。 479 00:31:49,307 --> 00:32:03,255 ♬~ 480 00:32:03,255 --> 00:32:10,128 ねえ 番頭さん 本当に仏様を盗みに 現れるんだろうか? 481 00:32:10,128 --> 00:32:14,633 はあ… もう 3日になります。 482 00:32:14,633 --> 00:32:19,137 (嘉助)現れるよ。 ああ 間違いねえ。 483 00:32:19,137 --> 00:32:21,807 だって 向こうも商売人だもの。 484 00:32:21,807 --> 00:32:26,144 こっちが思うように うまく 引っ掛かってきてくれるかどうか…。 485 00:32:26,144 --> 00:32:28,079 商売人だからこそ➡ 486 00:32:28,079 --> 00:32:32,818 わなと知りつつ 盗みに入ってみようって 気になるもんなんだ。 487 00:32:32,818 --> 00:32:36,688 野分のさぶを 御用にした時だって➡ 488 00:32:36,688 --> 00:32:39,491 庄司の旦那と2人で➡ 489 00:32:39,491 --> 00:32:44,996 幾晩 夜っぴて張り込んでいたか 分かりやしねえや。 490 00:32:44,996 --> 00:32:47,032 この先 幾晩も➡ 491 00:32:47,032 --> 00:32:52,037 お嬢様の あの寂しそうなお姿 見てなきゃならないんですかね。 492 00:32:54,506 --> 00:32:56,441 はあ~…。 493 00:32:56,441 --> 00:33:34,946 ♬~ 494 00:33:36,648 --> 00:33:38,650 ⚟(半鐘の音) 495 00:33:41,820 --> 00:33:43,822 徳! 496 00:33:47,993 --> 00:33:49,995 ほらっ…。 (徳松)あいよ。 497 00:33:58,003 --> 00:33:59,938 近くで 通夜があるらしいや。 通夜? 498 00:33:59,938 --> 00:34:02,240 うん。 え? 499 00:34:07,612 --> 00:34:34,472 ♬~ 500 00:34:34,472 --> 00:34:40,345 ⚟(犬の鳴き声) 501 00:34:40,345 --> 00:34:43,148 (中間)麻生様! 麻生様!➡ 502 00:34:43,148 --> 00:34:46,651 もう おやすみでございますか! 起きてくださいませ! 麻生様! 503 00:34:46,651 --> 00:34:50,989 (戸をたたく音) ⚟(小者)今 開ける。 静かにしてくれ。 504 00:34:50,989 --> 00:34:54,292 (小者)騒々しい。 何だというんだ? お屋敷内から 煙が! 505 00:34:54,292 --> 00:34:57,829 いえ! あれ あのように 火が! 506 00:34:57,829 --> 00:34:59,764 ⚟火事だぞ~! 507 00:34:59,764 --> 00:35:02,801 ⚟火事だ! ⚟火事だ! 火事だ! 508 00:35:02,801 --> 00:35:05,937 (喜内) 御前! あっ… 一大事にございまする。 509 00:35:05,937 --> 00:35:07,973 うろたえるな。 すぐに火がかり! はあ! 510 00:35:07,973 --> 00:35:10,442 決して 隣へ燃え移させるなよ。 はい! 511 00:35:10,442 --> 00:35:13,244 七重! ここに おります。 512 00:35:13,244 --> 00:35:15,313 仏間へ。 かしこまりました。 513 00:35:15,313 --> 00:35:18,316 油断いたすな。 気を付けろよ。 はい。 514 00:35:31,129 --> 00:35:39,804 ♬~ 515 00:35:39,804 --> 00:35:41,840 (男)けがをするぞ。 516 00:35:41,840 --> 00:35:43,975 ⚟けがなど させられるか。 517 00:35:43,975 --> 00:36:15,240 ♬~ 518 00:36:15,240 --> 00:36:19,611 貸席 やなぎの主 安兵衛 やっぱり おめえだったな。 519 00:36:19,611 --> 00:36:21,546 なに…。 520 00:36:21,546 --> 00:36:24,482 俺の勘に狂いはなかった。 521 00:36:24,482 --> 00:36:27,252 ええ そうだろう 源八! 522 00:36:27,252 --> 00:36:29,554 死ね~! たあ~っ! 523 00:36:32,624 --> 00:36:36,261 野分のさぶの手下で 侍上がりの源八は➡ 524 00:36:36,261 --> 00:36:39,798 なかなかの使い手と聞いていたが➡ 525 00:36:39,798 --> 00:36:42,600 うわさほどでは ないようだのう。 526 00:36:45,970 --> 00:36:48,273 くそ~! やあ~! 527 00:36:50,141 --> 00:36:52,077 東吾様! 528 00:36:52,077 --> 00:37:03,588 ♬~ 529 00:37:05,223 --> 00:37:08,927 寺川! 出てくるぞ 油断するな! はい! 530 00:37:08,927 --> 00:37:10,862 八造…。 へい! 531 00:37:10,862 --> 00:37:14,733 ⚟(盗賊たちの話し声) 532 00:37:14,733 --> 00:37:16,668 (盗賊)こっちだ こっちだ! 533 00:37:16,668 --> 00:37:23,374 (斬り合う音) 534 00:37:25,110 --> 00:37:28,113 東吾 これで全部か? 535 00:37:28,113 --> 00:37:31,249 逃げた3人は 源さんが捕まえてくれました。 536 00:37:31,249 --> 00:37:34,786 (源右衛門)そうか。 そうか そうか…。➡ 537 00:37:34,786 --> 00:37:36,721 喜内。 はい! 538 00:37:36,721 --> 00:37:39,958 奉行所に使いを走らせ 通之進に言うてこい。➡ 539 00:37:39,958 --> 00:37:45,263 「賊は 当方で取り押さえたによって お手数ながら お出張りが願いたい。➡ 540 00:37:45,263 --> 00:37:49,134 人数到着次第 門内より解き放す」。 541 00:37:49,134 --> 00:37:51,469 (喜内)門前捕りでございますな。 こりゃ 勇ましい。 542 00:37:51,469 --> 00:37:53,671 はよ 行け。 (喜内)はあ! 543 00:37:55,273 --> 00:38:03,748 ♬~ 544 00:38:03,748 --> 00:38:08,920 北町奉行所 神林通之進殿 ただいま着到! 545 00:38:08,920 --> 00:38:10,855 開門 願いましょう! 546 00:38:10,855 --> 00:38:22,934 ♬~ 547 00:38:22,934 --> 00:38:29,440 神林通之進 狼藉者を 召し捕りに参上つかまつった。 548 00:38:29,440 --> 00:38:32,343 ご苦労でござる。 549 00:38:32,343 --> 00:38:35,313 放せ。 (喜内)はい。 550 00:38:35,313 --> 00:38:37,315 立て! 551 00:38:37,315 --> 00:38:54,599 ♬~ 552 00:38:54,599 --> 00:38:57,101 (安兵衛)ああ…。 553 00:39:02,907 --> 00:39:05,743 ああ…。 あ~…。 554 00:39:05,743 --> 00:39:09,914 何だ? (安兵衛)ああ~…。 555 00:39:09,914 --> 00:39:14,219 んっ! たわけっ! (同心)神妙にせえ! 556 00:39:14,219 --> 00:39:16,154 お見事…。 557 00:39:16,154 --> 00:39:29,601 ♬~ 558 00:39:29,601 --> 00:39:33,771 そりゃもう 下手な芝居を見るより よっぽど見物でござんしたよ。 559 00:39:33,771 --> 00:39:37,442 なんたって 神林のお殿様ご自身 おじきじきに お出ましあそばして➡ 560 00:39:37,442 --> 00:39:40,778 「たわけっ」と源八を 一打ちに打ち据えなすった あん時ゃ➡ 561 00:39:40,778 --> 00:39:44,949 「日本一 成田屋!」 思わず 声をかけたくなるようなね 男っぷり。 562 00:39:44,949 --> 00:39:47,252 そう。 そりゃ うそじゃねんだ。 絵草紙屋のおやじが言ってましたよ。 563 00:39:47,252 --> 00:39:50,154 何て? えっ これがね 八丁堀の旦那でなけりゃ➡ 564 00:39:50,154 --> 00:39:53,625 似顔絵が飛ぶように売れただろうに 惜しい 惜しいってね。 565 00:39:53,625 --> 00:39:57,962 兄上の似顔絵か… そりゃ 是非一枚 俺も買いたかったな。 566 00:39:57,962 --> 00:40:00,465 それにしても 一つだけ 私 分からないことがあるんですけどね。 567 00:40:00,465 --> 00:40:02,400 ん? 何だい? 568 00:40:02,400 --> 00:40:07,338 安兵衛… じゃなくて 源八は なぜ お小姓 吉を殺したんでしょうか? 569 00:40:07,338 --> 00:40:09,807 やきもちですよ。 やきもち? 570 00:40:09,807 --> 00:40:11,743 うん…。 そうよ。 やきもちを やくのは➡ 571 00:40:11,743 --> 00:40:13,678 なにも 女とばかり 決まったもんじゃねえ。 572 00:40:13,678 --> 00:40:15,680 男だって やきもちは やくし➡ 573 00:40:15,680 --> 00:40:18,516 時によっては 女より根深いともいえる。 574 00:40:18,516 --> 00:40:21,419 まあ 運よく 15年前に お縄 免れた➡ 575 00:40:21,419 --> 00:40:24,155 源八と辰三郎と それから お小姓 吉の3人は➡ 576 00:40:24,155 --> 00:40:28,026 いつか 江戸で会うと 約束をしていたんでしょうな。 577 00:40:28,026 --> 00:40:30,295 まず 源八が やなぎの婿に納まり➡ 578 00:40:30,295 --> 00:40:32,230 甲州に逃げていた 辰三郎➡ 579 00:40:32,230 --> 00:40:35,133 それから 房州に逃げていた お小姓 吉が➡ 580 00:40:35,133 --> 00:40:37,168 江戸へ舞い戻ってきた。 581 00:40:37,168 --> 00:40:40,838 (八造)辰三郎は うまく やなぎの手代に納まったんでやすがね➡ 582 00:40:40,838 --> 00:40:44,175 吉の野郎は 陰間あがりで 妙に なよなよしてやがるもんですから➡ 583 00:40:44,175 --> 00:40:46,110 目立っていけねえってんで➡ 584 00:40:46,110 --> 00:40:49,981 橋場の寮に 女として 隠しておくことにしたと。 585 00:40:49,981 --> 00:40:53,885 それが おきくなんですね? これは 若旦那の にらんだとおりで。 586 00:40:53,885 --> 00:40:57,722 しかしね 一つ屋根の下に住んでりゃ 男か女か分かりますよ。 587 00:40:57,722 --> 00:41:00,158 おかみさんが気が付いた? ええ。 588 00:41:00,158 --> 00:41:02,126 (八造)こいつは いけねえってんで 吉の野郎➡ 589 00:41:02,126 --> 00:41:05,129 口封じに おれんさんを手込めにした。 590 00:41:05,129 --> 00:41:08,466 葭町辺りで 陰間稼業をしてたやつですからね➡ 591 00:41:08,466 --> 00:41:12,804 女をあやす手練手管に もう したたかだって話ですがね。➡ 592 00:41:12,804 --> 00:41:15,139 それで おれんさんは黙らせたものの➡ 593 00:41:15,139 --> 00:41:18,643 こいつが いつか 安兵衛の源八に知れましてね…。 594 00:41:18,643 --> 00:41:22,146 おれんも お小姓 吉も 源八に殺された。 595 00:41:22,146 --> 00:41:25,817 腹立ち紛れに 姦夫姦婦を重ねて 成敗したまではいいが➡ 596 00:41:25,817 --> 00:41:30,154 女同士が密通したから たたき斬ったと 届けるわけにはいかねえ。 597 00:41:30,154 --> 00:41:32,657 といって おきくが 男だと申し出れば➡ 598 00:41:32,657 --> 00:41:35,560 てめえたちの素性まで 世間に知れてしまう。 599 00:41:35,560 --> 00:41:39,997 ハハハ。 こいつには 源八も困ったでしょうね。 600 00:41:39,997 --> 00:41:41,933 仲間の一人を医者に仕立てて➡ 601 00:41:41,933 --> 00:41:45,870 まあ おれんの方は 病死ということで始末をしたんだ。 602 00:41:45,870 --> 00:41:48,172 もう一つの死骸の始末に困って➡ 603 00:41:48,172 --> 00:41:51,509 ほら 夏向きの怪談話に仕立てたってわけだ。 604 00:41:51,509 --> 00:41:53,845 (八造)あっしが しゃべった 幽霊殺しの一席で➡ 605 00:41:53,845 --> 00:41:57,515 若旦那が ピンと来たんだから ねえ 悪いことはできねえね。 606 00:41:57,515 --> 00:41:59,550 でも 怪談話で ピンと来たなら➡ 607 00:41:59,550 --> 00:42:02,353 ねえ なぜ すぐに安兵衛を捕まえなかったんです? 608 00:42:02,353 --> 00:42:04,956 ああ… あれは 俺のしくじりよ。 609 00:42:04,956 --> 00:42:08,459 漁師の多助が おきくは間違いなく 自分の娘だと言ったと聞いて➡ 610 00:42:08,459 --> 00:42:11,129 それじゃあ おきくは お小姓 吉じゃねえかっていう➡ 611 00:42:11,129 --> 00:42:13,131 俺の読みは 間違いだったかと➡ 612 00:42:13,131 --> 00:42:16,267 あっさり 安兵衛にかけた疑い 解いちまったのよ。 613 00:42:16,267 --> 00:42:19,971 ええ… ありゃね このばかが へまやったからで➡ 614 00:42:19,971 --> 00:42:23,274 若旦那のせいじゃありませんよ。 すいません。 615 00:42:23,274 --> 00:42:25,209 あら どうしたの? 616 00:42:25,209 --> 00:42:27,812 多助が娘だと言ったにせよだ➡ 617 00:42:27,812 --> 00:42:29,847 近所の連中にあたって 裏を取る気になりゃ➡ 618 00:42:29,847 --> 00:42:32,150 多助に 娘なんぞ いねえことぐらい すぐ分かるんだよ! 619 00:42:32,150 --> 00:42:34,085 それを 多助が言ったことだけ うのみにしやがって➡ 620 00:42:34,085 --> 00:42:36,020 のこのこ 帰ってきやがるから➡ 621 00:42:36,020 --> 00:42:38,289 せっかくの若旦那の読み 狂わしちまったんじゃねえか ばか野郎。 622 00:42:38,289 --> 00:42:40,224 まあ そう叱んなさんな。 623 00:42:40,224 --> 00:42:43,161 そういう しくじりを何度も繰り返して 仕事を覚えてくんだ。 624 00:42:43,161 --> 00:42:46,831 (八造) そう。 「負けて覚える相撲かな」ってな。 625 00:42:46,831 --> 00:42:50,168 徳松 いいおじさんが 何人もいて よかったな。 626 00:42:50,168 --> 00:42:52,670 ありがとうございます。 さあ やれ! 627 00:42:52,670 --> 00:42:55,306 そのかわりな 二度と こんな へましねえように➡ 628 00:42:55,306 --> 00:42:58,676 肝に銘じて 覚えとけ! (徳松)分かったよ。 629 00:42:58,676 --> 00:43:01,245 …ったく 酒ばっかり 強くなりやがって。 このばか野郎。 630 00:43:01,245 --> 00:43:03,948 そんなに言われたんじゃ 飲めなくなるじゃないの。 631 00:43:03,948 --> 00:43:07,752 ねえ かわいそうに。 徳ちゃん どうぞ おひとつ…。 632 00:43:19,497 --> 00:43:23,134 なあ 香苗…。 はい? 633 00:43:23,134 --> 00:43:26,471 東吾のことなんだがな➡ 634 00:43:26,471 --> 00:43:31,142 おやじ殿が 黄金仏のおとりを 考え出されたと聞くと➡ 635 00:43:31,142 --> 00:43:34,479 まあ 大慌てで 麻生の家へ押しかけて➡ 636 00:43:34,479 --> 00:43:37,281 3日も 居候をしていたってえじゃねえか。 637 00:43:37,281 --> 00:43:42,487 方月館の師範代を務めるほどの者が 泊まり込みで いてくれるかと思ったら➡ 638 00:43:42,487 --> 00:43:48,993 いかにも心丈夫でありましたと 父も大層 喜んでおりました。 639 00:43:48,993 --> 00:43:53,831 七重に 万一 けがでもさしたら 一大事と➡ 640 00:43:53,831 --> 00:43:55,766 野郎 そう思ったんじゃねえのかな? 641 00:43:55,766 --> 00:43:59,504 七重のことより 一日も早く賊を捕らえたいと➡ 642 00:43:59,504 --> 00:44:02,406 そう お思いになったんですよ。 643 00:44:02,406 --> 00:44:08,312 いいや… いいや そうじゃ ねえな。 644 00:44:08,312 --> 00:44:12,450 うん…。 いや あれは そうじゃねえ。 645 00:44:12,450 --> 00:44:15,253 七重との話 一度は きっぱり 断ったものの➡ 646 00:44:15,253 --> 00:44:18,623 やっぱり 気になるんだよ あれ 七重のことが。 647 00:44:18,623 --> 00:44:20,658 あなた…。 648 00:44:20,658 --> 00:44:22,660 そうじゃあねえっていうのか? お前。 649 00:44:26,497 --> 00:44:30,134 おやじ殿は 俺たちに 今もって 子ができねえのを➡ 650 00:44:30,134 --> 00:44:33,638 神林の先代に申し訳がないと 常々 言ってくれてる。 651 00:44:33,638 --> 00:44:38,276 いや 口で言うだけじゃなくて 腹から そう思っていてくださる。 652 00:44:38,276 --> 00:44:42,647 だから 七重を東吾の嫁にして 神林の跡継ぎを産み➡ 653 00:44:42,647 --> 00:44:47,151 ほかに もう一人 子ができたら それを 麻生の跡取りに もらいたい➡ 654 00:44:47,151 --> 00:44:50,821 そう言ってな。 その話は もう済みましたよ。 655 00:44:50,821 --> 00:44:53,658 いや だから 俺もな もう済んだと思っていたさ。 656 00:44:53,658 --> 00:44:56,994 が 今度の あの東吾の しようを見ていて➡ 657 00:44:56,994 --> 00:44:59,897 いや 待てよと そう思ったから 言っているんだい。 658 00:44:59,897 --> 00:45:03,801 (香苗)東吾さんには るいさんが いらっしゃるじゃありませんか。➡ 659 00:45:03,801 --> 00:45:06,237 今更 そんなことを あなたが おっしゃっては➡ 660 00:45:06,237 --> 00:45:10,608 るいさんが お気の毒 東吾さんも迷惑➡ 661 00:45:10,608 --> 00:45:13,444 七重だって…。 662 00:45:13,444 --> 00:45:15,780 七重だって…➡ 663 00:45:15,780 --> 00:45:19,617 ほいじゃ あの 七重も迷惑… だっていうのかい? 664 00:45:19,617 --> 00:45:22,253 いえ 七重は…。 665 00:45:22,253 --> 00:45:29,560 そうなったら うれしいものと 一度は考えて 諦めて…。 666 00:45:32,797 --> 00:45:36,968 それだけに また そんな話を持ち出して➡ 667 00:45:36,968 --> 00:45:41,772 あの子の心を乱すのは ふびんでございましょう。 668 00:45:44,642 --> 00:45:50,815 (風鈴の音) 669 00:45:50,815 --> 00:45:56,821 ねえ 来てごらんなさいな。 いい風…。 670 00:46:09,767 --> 00:46:15,640 夜になると 風が すっかり秋らしくなって…。 671 00:46:15,640 --> 00:46:19,944 夏も… もう終わりね。 672 00:46:22,480 --> 00:46:27,184 おい。 冷えると 体に毒だぜ。 673 00:46:38,796 --> 00:46:45,269 何だ? 何を考えているんだ? 674 00:46:45,269 --> 00:46:51,475 あなたが 麻生様へ泊まり込んでらした 3日の間➡ 675 00:46:51,475 --> 00:46:56,981 私 いろいろとね 考えてみたんです。 676 00:46:56,981 --> 00:46:59,016 何を? 677 00:46:59,016 --> 00:47:01,719 七重さん…。 678 00:47:03,421 --> 00:47:07,591 いつか 私に おっしゃいましたのよ。 679 00:47:07,591 --> 00:47:10,928 七重さん あなたのこと 好きだって…。 680 00:47:10,928 --> 00:47:14,231 おい。 過ぎた話を蒸し返して どうしようってんだ? 681 00:47:14,231 --> 00:47:18,102 黙って聞いてくださいまし。 682 00:47:18,102 --> 00:47:20,938 七重さんはね…➡ 683 00:47:20,938 --> 00:47:26,243 好きだけど 姉上から私のことを聞かされて➡ 684 00:47:26,243 --> 00:47:31,949 「諦める」って… そう おっしゃったんですよ。 685 00:47:33,984 --> 00:47:39,123 若い七重さんが あんなに けなげに「諦める」と➡ 686 00:47:39,123 --> 00:47:42,960 そう言ってらしたのに…。 687 00:47:42,960 --> 00:47:48,632 いい年をした私が 諦められないで➡ 688 00:47:48,632 --> 00:47:53,437 こうやって あなたと…。 よせ るい。 よさねえか。 689 00:48:01,579 --> 00:48:03,781 るい…。 690 00:48:06,450 --> 00:48:14,759 神林家の跡取り 神林東吾様の嫁には ふさわしくない私が➡ 691 00:48:14,759 --> 00:48:18,429 いつまでも こうやって未練に…。 692 00:48:18,429 --> 00:48:21,932 つまらねえこと 言うんじゃねえ。 693 00:48:21,932 --> 00:48:29,106 別れられないでいては 兄上様にも 申し訳が…。 694 00:48:29,106 --> 00:48:31,041 もう 言うな…。 695 00:48:31,041 --> 00:48:43,754 ♬~