1 00:00:01,268 --> 00:00:06,206 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:06,206 --> 00:02:07,894 ♬~ 3 00:07:45,465 --> 00:07:48,835 「まんじゅう」だと おっしゃいましたな? 4 00:07:48,835 --> 00:07:51,171 そうよ。 紅白の まんじゅうだ。 5 00:07:51,171 --> 00:07:54,207 では 手前どもの店の者では ございません。 6 00:07:54,207 --> 00:07:56,476 何だと? 7 00:07:56,476 --> 00:08:00,480 ご覧のとおり 手前どもでは 打菓子ばかりを商っておりますんで➡ 8 00:08:00,480 --> 00:08:04,784 まんじゅうのような蒸しものは… はい 取り扱っておりません。 9 00:08:06,619 --> 00:08:10,957 三春屋でなきゃ 一体 誰が そんな悪さをしたっていうんです? 10 00:08:10,957 --> 00:08:13,860 坂本町っていえば 八丁堀の お膝元でしょう? 11 00:08:13,860 --> 00:08:16,429 ハハッ 偉そうな口 たたいてやがる。 12 00:08:16,429 --> 00:08:20,300 まんじゅう もらってきた本人の お前さんが顔も覚えてねえんだ。 13 00:08:20,300 --> 00:08:24,804 畝の旦那だって どこの誰の仕業だか 分かるわけねえじゃねえか。 14 00:08:24,804 --> 00:08:27,140 ねえ 本当に顔は見なかったの? 15 00:08:27,140 --> 00:08:30,043 だって 見ようと思っても 後ろから ぐいぐい押されたんですもの。 16 00:08:30,043 --> 00:08:32,011 それじゃ おい… 手は どうだ? 17 00:08:32,011 --> 00:08:34,014 (お吉)手ですか? 18 00:08:34,014 --> 00:08:36,850 そうよ。 おめえに まんじゅうを渡した 手だ。 19 00:08:36,850 --> 00:08:40,653 手… ああ 手は見ましたよ。 20 00:08:40,653 --> 00:08:43,456 見たら分かるだろう。 男の手か女の手かぐらい。 21 00:08:43,456 --> 00:08:45,392 男です。 男の手でした。 22 00:08:45,392 --> 00:08:48,328 うん…。 男の節くれ立った ゴツい手だったか? 23 00:08:48,328 --> 00:08:51,331 いえ 男の手にしちゃ 随分 優しい➡ 24 00:08:51,331 --> 00:08:55,068 「なるほど。 お菓子を作る人らしい やわらかい手だな」って➡ 25 00:08:55,068 --> 00:08:57,837 そう思ったのを 覚えてます。 26 00:08:57,837 --> 00:09:00,407 源さん…。 よく思い出してくれたな。 27 00:09:00,407 --> 00:09:02,342 ほかの病人たちにも 当たってみましょう。 28 00:09:02,342 --> 00:09:04,778 手から手へ まんじゅうは渡されたんだ。 29 00:09:04,778 --> 00:09:07,614 ほかの連中だって 手ぐらい 覚えてるでしょう。 30 00:09:07,614 --> 00:09:09,549 うん…。 31 00:09:09,549 --> 00:09:11,951 (伝次)今のところ まんじゅうを配っていたのは➡ 32 00:09:11,951 --> 00:09:13,887 3人ってとこらしゅうござんす。 33 00:09:13,887 --> 00:09:15,822 3人? (徳松)へい。 34 00:09:15,822 --> 00:09:18,425 まんじゅうをもらってきた連中の言う 手は3つ。 35 00:09:18,425 --> 00:09:20,360 お吉さんが言った➡ 36 00:09:20,360 --> 00:09:25,131 「菓子屋の職人らしい 男にしては やわらけえ 優しい手」と。 37 00:09:25,131 --> 00:09:27,167 「水仕事で荒れた 女の手」。 38 00:09:27,167 --> 00:09:31,438 それに もう一つは「色の黒い節くれ立った 大きな手だった」って言ってます。 39 00:09:31,438 --> 00:09:35,308 ふん…。 取り合わせが 何か妙だと思いませんか? 40 00:09:35,308 --> 00:09:37,243 妙だ!? 41 00:09:37,243 --> 00:09:40,647 (源三郎)節くれ立った男の手と…➡ 42 00:09:40,647 --> 00:09:43,450 荒れた女の手。 43 00:09:43,450 --> 00:09:48,154 そして もう一つは 優しい手か…。 44 00:09:48,154 --> 00:09:51,658 なるほど そう言やあ 妙な取り合わせだ。 45 00:09:51,658 --> 00:09:54,694 (伝次)かわいそうに 三春屋じゃ 店 閉めちまいましたよ。 46 00:09:54,694 --> 00:09:57,464 三春屋は 名を騙られただけだと分かってても➡ 47 00:09:57,464 --> 00:09:59,532 何となく 気味が悪いって➡ 48 00:09:59,532 --> 00:10:01,668 客が寄りつかなくなっちまったんでさあ。 49 00:10:01,668 --> 00:10:04,003 そいつは 気の毒な話だなあ。 50 00:10:04,003 --> 00:10:07,040 近所でも 至って評判のいい 実直な男なんですがね…。 51 00:10:07,040 --> 00:10:09,809 主人の長兵衛も それから かみさんの方も。 52 00:10:09,809 --> 00:10:11,744 うん…。 53 00:10:11,744 --> 00:10:15,181 三春屋は ここへ お参りに来たことはあるのか? 54 00:10:15,181 --> 00:10:17,217 (堂守)いいえ ございません。 55 00:10:17,217 --> 00:10:21,354 今のご主人の長兵衛さんという お方も おかみさんも➡ 56 00:10:21,354 --> 00:10:25,024 ここのご信者ではないと存じますが。➡ 57 00:10:25,024 --> 00:10:27,494 それから まんじゅうを配った者が➡ 58 00:10:27,494 --> 00:10:30,697 「心願成就のお礼だ」と 言っていたということで➡ 59 00:10:30,697 --> 00:10:33,032 ご祈とうの ご信者の中に➡ 60 00:10:33,032 --> 00:10:36,069 三春屋という名前があるかと 調べたんでございますが…。 61 00:10:36,069 --> 00:10:38,505 なかった? はい。 62 00:10:38,505 --> 00:10:40,507 うん…。 63 00:11:06,699 --> 00:11:08,701 あらっ? 64 00:11:12,172 --> 00:11:14,173 ⚟(嘉助)失礼いたします。 65 00:11:21,481 --> 00:11:24,851 いらっしゃいまし。 66 00:11:24,851 --> 00:11:27,187 相すみません。 お宿帳をお願いいたします。 67 00:11:27,187 --> 00:11:31,491 (伊之助)あっ いえ! 私は…➡ 68 00:11:31,491 --> 00:11:35,361 神田の三春屋の手代で 伊之助と申します。 69 00:11:35,361 --> 00:11:37,363 三春屋!? 70 00:11:37,363 --> 00:11:40,700 はい。 こちら様でも➡ 71 00:11:40,700 --> 00:11:43,036 どなたか お薬師様の まんじゅうで➡ 72 00:11:43,036 --> 00:11:47,207 とんだ ご災難にお遭いなすったと 聞いて参りました。 73 00:11:47,207 --> 00:11:50,243 まことに申し訳ございません。 74 00:11:50,243 --> 00:11:52,545 遅ればせながら お詫びを申し上げたくて…。 75 00:11:54,380 --> 00:11:59,586 あの… こちらのご主人様に お目にかかれませんでしょうか? 76 00:12:01,988 --> 00:12:03,990 ふう…。 どうします? 77 00:12:05,858 --> 00:12:09,562 とにかく… 会ってみましょう。 78 00:12:12,165 --> 00:12:14,100 ちょっと待ってくださいな。 79 00:12:14,100 --> 00:12:16,035 そうすると あの おまんじゅうは➡ 80 00:12:16,035 --> 00:12:19,839 やっぱり 三春屋さんで お配りになったものなんですか? 81 00:12:19,839 --> 00:12:23,676 いいえ そうじゃございません。 82 00:12:23,676 --> 00:12:28,348 誰かが 手前どもの店の名を騙ってしたことで。 83 00:12:28,348 --> 00:12:30,350 それなら なにも 三春屋さんが➡ 84 00:12:30,350 --> 00:12:33,019 詫びに いらっしゃることは ないじゃありませんか? 85 00:12:33,019 --> 00:12:35,688 それは そうなんですが➡ 86 00:12:35,688 --> 00:12:38,725 何しろ 手前どもの主人が 大層な律儀者で➡ 87 00:12:38,725 --> 00:12:43,429 いずれ お上が 白い黒いを はっきりさせてくださるだろうが➡ 88 00:12:43,429 --> 00:12:46,032 三春屋の名前が出ている以上➡ 89 00:12:46,032 --> 00:12:48,501 ご災難にお遭いになった皆さんへは➡ 90 00:12:48,501 --> 00:12:50,870 三春屋の のれんにかけても➡ 91 00:12:50,870 --> 00:12:53,506 お詫び申し上げておかなくては いけないと…➡ 92 00:12:53,506 --> 00:12:55,441 そう申しまして。➡ 93 00:12:55,441 --> 00:12:59,212 それで こうして 私が お詫びに 伺いましたのでございます。 94 00:12:59,212 --> 00:13:03,983 まあ… そうでしたか。 95 00:13:03,983 --> 00:13:07,820 聞けば 三春屋さんでは お店も閉めてらっしゃるとか。 96 00:13:07,820 --> 00:13:10,323 迷惑を受けた 本家本元➡ 97 00:13:10,323 --> 00:13:13,326 大概 恨みの一つも おっしゃりたいとこでしょうに。 98 00:13:13,326 --> 00:13:18,064 まあ ほとぼりが冷めるまでは 致し方がございません。 99 00:13:18,064 --> 00:13:20,667 実は私も 店を出まして➡ 100 00:13:20,667 --> 00:13:25,004 今は 葛西の知り合いのうちに 身を寄せておりますようなわけで。 101 00:13:25,004 --> 00:13:27,340 まあ… それで…。 102 00:13:27,340 --> 00:13:31,844 はい。 それで こんな大仰な 旅の支度をして参りました。 103 00:13:31,844 --> 00:13:34,180 あっ 嘉助さん…。 へい。 104 00:13:34,180 --> 00:13:36,115 せっかく こうして お見えくだすったんだから➡ 105 00:13:36,115 --> 00:13:38,818 お吉さん 呼んできてあげてちょうだい。 へい かしこまりました。 106 00:13:43,489 --> 00:13:45,858 お吉さんですか? 出かけましたよ。 107 00:13:45,858 --> 00:13:49,195 出かけたって どこへ? さあ? 何にも言わずに…。 108 00:13:49,195 --> 00:13:51,864 ねえ? うん。しょうがねえな。 109 00:13:51,864 --> 00:13:54,200 じゃあ 帰ってきたら すぐ 萩の間へ来るように そう言ってくれ。 110 00:13:54,200 --> 00:13:59,038 いいか? 忘れず そう言ってくれよ。 (おもん おきみ)はい。 111 00:13:59,038 --> 00:14:01,441 失礼いたします。 112 00:14:01,441 --> 00:14:04,977 相すいません。 あいにく お吉さん 出かけておりまして。 113 00:14:04,977 --> 00:14:06,913 いないの? へえ。 114 00:14:06,913 --> 00:14:10,650 では 申し訳ありませんが 私は これで。 115 00:14:10,650 --> 00:14:13,553 まあ… まだ およろしいじゃございませんか。 116 00:14:13,553 --> 00:14:17,523 いえ 葛西まで 戻らなければなりませんし➡ 117 00:14:17,523 --> 00:14:20,660 それに ちょっと 浅草へ回って➡ 118 00:14:20,660 --> 00:14:23,463 おかみさんの容体も 見舞ってきたいと存じますので。 119 00:14:23,463 --> 00:14:26,666 あ~ そうそう…。 三春屋さんの おかみさん➡ 120 00:14:26,666 --> 00:14:30,536 お加減が お悪いんですってね 聞いてますよ。 121 00:14:30,536 --> 00:14:33,339 何しろ 気の優しい人だもんで➡ 122 00:14:33,339 --> 00:14:37,844 「大勢の人に ご迷惑をかけてしまって すまない すまない」と➡ 123 00:14:37,844 --> 00:14:39,879 すっかり 気を病んで…。 124 00:14:39,879 --> 00:14:43,182 浅草が おかみさんの ご実家なんですってねえ。 125 00:14:43,182 --> 00:14:46,853 (伊之助)はい。 小さなお子を連れて 実家へ戻りましたが➡ 126 00:14:46,853 --> 00:14:48,888 寝たり起きたりで…。 127 00:14:48,888 --> 00:14:52,391 本当に まあ… お気の毒に…。 128 00:14:55,027 --> 00:14:57,063 あの…。 129 00:14:57,063 --> 00:14:59,999 えっ 何でしょう? 130 00:14:59,999 --> 00:15:03,302 まことに厚かましい お願いで ございますが➡ 131 00:15:03,302 --> 00:15:07,640 これは 筋違いと おっしゃられるかもしれませんが➡ 132 00:15:07,640 --> 00:15:11,811 こちら様のお人柄におすがり申して お頼みいたします。 133 00:15:11,811 --> 00:15:16,149 言ってくださいな。 私で できることなら。 134 00:15:16,149 --> 00:15:19,051 私と一緒に浅草へ行って➡ 135 00:15:19,051 --> 00:15:23,456 おかみさんに会って ひと言 励ましてあげていただけませんか?➡ 136 00:15:23,456 --> 00:15:25,992 「病は気から」と申します。 137 00:15:25,992 --> 00:15:27,927 ましては おかみさんの病気は➡ 138 00:15:27,927 --> 00:15:31,798 「ご迷惑をかけた人に申し訳ない」が 高じてなった病気。 139 00:15:31,798 --> 00:15:35,668 「お互いの災難だから 気にしてない」と おっしゃっていただきましたら➡ 140 00:15:35,668 --> 00:15:40,840 きっと… きっと 元気が出てきて よくなってくれるだろうと思うんですが。 141 00:15:40,840 --> 00:15:44,677 分かりました よござんす。 142 00:15:44,677 --> 00:15:48,014 私が行って それで おかみさんが 元気になってくださるんでしたら➡ 143 00:15:48,014 --> 00:15:50,049 お安い御用だ。 行きますよ。 144 00:15:50,049 --> 00:15:52,852 行ってくださいますか? 145 00:15:52,852 --> 00:15:54,787 ありがとう存じます。 ありがとう存じます! 146 00:15:54,787 --> 00:16:00,593 ♬~ 147 00:16:00,593 --> 00:16:02,528 じゃあ ちょっと 行ってきますからね。 148 00:16:02,528 --> 00:16:04,497 あっしも お供しましょうか? 149 00:16:04,497 --> 00:16:06,799 いえ 嘉助さんは お店にいてくださいな。 150 00:16:06,799 --> 00:16:10,436 お吉さんも留守だし 若い人だけじゃ 心もとない。 151 00:16:10,436 --> 00:16:14,307 さいですか。 じゃあ お気を付けなすって。 152 00:16:14,307 --> 00:16:16,809 (一同)行ってらっしゃいまし。 153 00:16:19,645 --> 00:16:22,315 申し訳ございません。 決して お手間は取らせませんから。 154 00:16:22,315 --> 00:16:26,152 いいんですよ。 あの… 舟が待たせてありますので。 155 00:16:26,152 --> 00:16:28,821 おや そう。 (伊之助)はい こちらでございます。 156 00:16:28,821 --> 00:16:57,350 ♬~ 157 00:16:57,350 --> 00:17:02,955 もし… ちょいと 船頭さん どこへ行こうっていうんです? 158 00:17:02,955 --> 00:17:05,958 浅草なら 方角が違いやしませんか? 159 00:17:10,296 --> 00:17:12,999 もし… 船頭さん。 160 00:17:15,635 --> 00:17:18,671 うっ! うっ うっ うっ…。 161 00:17:18,671 --> 00:17:20,673 苦しい…。 うっ うっ…。 162 00:17:30,816 --> 00:17:33,619 ⚟(鐘の音) 163 00:17:42,528 --> 00:17:44,830 ごめんよ。 164 00:17:44,830 --> 00:17:46,866 あっ 旦那 いらっしゃいまし。 165 00:17:46,866 --> 00:17:49,001 (源三郎)お吉が 私に用があるって 聞いてきたんだ。 166 00:17:49,001 --> 00:17:52,838 へいへいへい… お~い お吉さん! 167 00:17:52,838 --> 00:17:55,474 冗談も 休み休み おっしゃってくださいましよ。 168 00:17:55,474 --> 00:17:59,779 私の用じゃない。 旦那が私に お使いを 下すったんじゃございませんか。 169 00:17:59,779 --> 00:18:03,649 使い? (お吉)ええ 15~16の若い…。 170 00:18:03,649 --> 00:18:05,651 私は そんな使いは 出した覚えはないよ。 171 00:18:05,651 --> 00:18:07,653 (嘉助 お吉)ええっ!? 172 00:18:07,653 --> 00:18:10,957 だって 「例の件で 私に聞きたいことがあるから➡ 173 00:18:10,957 --> 00:18:13,793 お屋敷へ すぐ来るように」って…。 174 00:18:13,793 --> 00:18:15,828 使いが来たのは 何時ごろだ? 175 00:18:15,828 --> 00:18:18,130 八つちょっと前でしたかしら…。 176 00:18:18,130 --> 00:18:20,066 嘉助…。 へい。 177 00:18:20,066 --> 00:18:22,435 (源三郎)るいさんは? え… 出かけてますが。➡ 178 00:18:22,435 --> 00:18:26,305 いえね 三春屋の手代の伊之助っていうのが➡ 179 00:18:26,305 --> 00:18:28,307 詫びに来たのは いいんですが➡ 180 00:18:28,307 --> 00:18:31,444 浅草の実家へ帰って 養生してる 三春屋の おかみさんを➡ 181 00:18:31,444 --> 00:18:33,813 見舞ってくれなんて言いだしましてね➡ 182 00:18:33,813 --> 00:18:36,849 それで その伊之助と一緒に…。 183 00:18:36,849 --> 00:18:40,686 「三春屋の手代の伊之助」と言ったんだな? へえ へえ。 184 00:18:40,686 --> 00:18:42,989 (源三郎) 確かに「伊之助」と言ったんだな? え? 185 00:18:42,989 --> 00:18:44,924 畝様…。 186 00:18:44,924 --> 00:18:48,327 (嘉助)…って それ どうかしたんですか? 187 00:18:48,327 --> 00:18:51,230 三春屋には 伊之助という名の 手代は いねえんだ。 188 00:18:51,230 --> 00:18:53,199 えっ!? えっ…。 189 00:18:53,199 --> 00:18:55,201 嘉助! へい!一緒に来てくれ。 190 00:18:55,201 --> 00:18:57,336 はっ! (お吉)番頭さん…。 191 00:18:57,336 --> 00:19:00,940 ああ… おめえさん ここにいて 何かあったら 俺に すぐに知らせてくれ。 192 00:19:00,940 --> 00:19:02,875 はい! (源三郎)いいか? 193 00:19:02,875 --> 00:19:09,615 ♬~ 194 00:19:09,615 --> 00:19:12,952 よく来たな 正吉。 ハハハ…。 195 00:19:12,952 --> 00:19:16,288 (通之進)ああ 東吾… お前さんに頼んだ あの栗な➡ 196 00:19:16,288 --> 00:19:19,291 おとせさんが はやばやと届けてくれた。 197 00:19:19,291 --> 00:19:23,629 狸穴 行ったら 方斉先生に くれぐれも よろしく申し上げてくれよ。 198 00:19:23,629 --> 00:19:26,298 はい。 (香苗)遠い所をねえ…。 199 00:19:26,298 --> 00:19:29,969 (おとせ)いいえ。 植木屋の多平という人の娘さんが➡ 200 00:19:29,969 --> 00:19:32,304 霊厳島銀町に嫁いでおりまして➡ 201 00:19:32,304 --> 00:19:34,807 多平さんが そこへ行くというので➡ 202 00:19:34,807 --> 00:19:37,710 ついでに荷物を 持ってきてもらいましたんですから…。 203 00:19:37,710 --> 00:19:41,313 それで 今夜は? (おとせ)霊厳島に泊めてもらいます。 204 00:19:41,313 --> 00:19:43,649 そりゃあ いけねえよ。 205 00:19:43,649 --> 00:19:47,453 日頃 東吾が ごやっかい かけている 方斉先生のお使いで➡ 206 00:19:47,453 --> 00:19:50,990 土産物を届けてくれた お人を… なあ? おい 香苗。 207 00:19:50,990 --> 00:19:54,860 はい。 是非にも今夜 ここに泊まってってくださいましな。 208 00:19:54,860 --> 00:19:57,329 そうしろ。 なっ 正吉?(正吉)うん! 209 00:19:57,329 --> 00:19:59,331 (通之進)よ~し 話は決まった。➡ 210 00:19:59,331 --> 00:20:01,333 おい 正吉…。 アハハ こっち 来な。 211 00:20:01,333 --> 00:20:06,038 ハ~ハハハ… よ~し よしよし…。 212 00:20:06,038 --> 00:20:10,876 正吉は いくつになる? 五つだよ。 213 00:20:10,876 --> 00:20:13,879 うん…。 五つにしては 大きい方じゃねえかな。 214 00:20:13,879 --> 00:20:17,349 (おとせ)なりばかり 大きくなって やんちゃで 困ります。 215 00:20:17,349 --> 00:20:19,852 あっ いやいや… やんちゃは 大いに結構だ。 216 00:20:19,852 --> 00:20:22,488 なっ? おい! ハッハッハッハ…。 217 00:20:22,488 --> 00:20:25,391 あっ そうだ 香苗… 霊厳島へは 誰か 使いやってな➡ 218 00:20:25,391 --> 00:20:28,194 今夜は ここへ泊まるからって そう言ってくるようにな。 219 00:20:28,194 --> 00:20:33,032 はい そう いたしましょう。 それなら 先様でも安心しましょうから。 220 00:20:33,032 --> 00:20:35,067 ⚟(源三郎)ごめんください! 221 00:20:35,067 --> 00:20:37,203 おお 源さんかい! 222 00:20:37,203 --> 00:20:39,505 ああ…。 (通之進)おう。 223 00:20:39,505 --> 00:20:43,375 東吾さん…。 (通之進)どうしたい? 224 00:20:43,375 --> 00:20:47,880 はっ…。 るいさんが かどわかされたのではないかと…。 225 00:20:47,880 --> 00:20:51,383 なに!? どういうことなんですか? それは。 226 00:20:51,383 --> 00:20:54,053 詳しく 話してみろ。 227 00:20:54,053 --> 00:20:56,088 はっ…。 228 00:20:56,088 --> 00:21:05,698 ♬~ 229 00:21:05,698 --> 00:21:09,468 あ~… 伊之助のやつは➡ 230 00:21:09,468 --> 00:21:12,171 まんじゅう 配ってる時に 顔を見られてるかもしれねえ➡ 231 00:21:12,171 --> 00:21:17,843 お吉さんを 「畝の旦那の使い」といって かわせみから 連れ出していきやがった。 232 00:21:17,843 --> 00:21:20,346 「お吉さんが出かけた」と聞いた時に➡ 233 00:21:20,346 --> 00:21:23,682 そこに気が付いてなきゃ いけなかったんだい。 くそっ! 234 00:21:23,682 --> 00:21:27,353 (おとせ)あの… よろしゅうございますでしょうか? 235 00:21:27,353 --> 00:21:29,288 何です? 236 00:21:29,288 --> 00:21:32,858 私 今日 おるいさんを お見かけしているんですけど…。 237 00:21:32,858 --> 00:21:34,793 るいを!? どこで? 238 00:21:34,793 --> 00:21:38,197 霊厳島の多平さんの 娘さんのうちに寄って 一休みして➡ 239 00:21:38,197 --> 00:21:42,501 こちらに参ろうと 新川沿いの道へ出た時…。 240 00:21:42,501 --> 00:21:44,436 るいが? (おとせ)はい。➡ 241 00:21:44,436 --> 00:21:47,873 川の向こうを 三の橋の方に向かって。 242 00:21:47,873 --> 00:21:50,376 1人でしたか? 連れは? 243 00:21:50,376 --> 00:21:52,711 はい。 お連れがおいでだったものですから➡ 244 00:21:52,711 --> 00:21:55,614 私 声をおかけしようと思って やめたんです。 245 00:21:55,614 --> 00:22:00,519 かわせみには 明日にでも改めて ご挨拶にあがるつもりでおりましたし…。 246 00:22:00,519 --> 00:22:05,291 連れの顔は? さあ…。 247 00:22:05,291 --> 00:22:07,826 では 身なりは 覚えておりませんか? 248 00:22:07,826 --> 00:22:10,663 旅の支度をしていたように 覚えていますが…。 249 00:22:10,663 --> 00:22:12,698 伊之助です。 うん。 250 00:22:12,698 --> 00:22:15,334 で 三の橋の方へ歩いていって それから どうしたか分かりませんか? 251 00:22:15,334 --> 00:22:17,269 舟に乗りました。 252 00:22:17,269 --> 00:22:19,205 ん? 253 00:22:19,205 --> 00:22:22,675 舟には船頭が 待っていて おるいさんと3人で舟で…。 254 00:22:22,675 --> 00:22:25,578 そう。 舟は猪牙ではなくて あれは➡ 255 00:22:25,578 --> 00:22:28,480 魚を売りに来る漁師の舟だと 思いますが…。 256 00:22:28,480 --> 00:22:30,416 漁師の舟!? 257 00:22:30,416 --> 00:22:32,851 そいつは 何よりの手がかりだ。 258 00:22:32,851 --> 00:22:35,754 おとせさん かたじけない。 よく見てくれた。 259 00:22:35,754 --> 00:22:39,358 舟が出たのは 八つ下がりってことになるな。 260 00:22:39,358 --> 00:22:41,293 見ている者もいるはずだ。➡ 261 00:22:41,293 --> 00:22:44,029 東吾! はい。 源さん…。 262 00:22:44,029 --> 00:22:47,700 行きましょう。 義姉上 正吉をお願いします。 263 00:22:47,700 --> 00:22:50,736 東吾さん…。 はい。 264 00:22:50,736 --> 00:23:26,171 ♬~ 265 00:23:26,171 --> 00:23:28,674 んっ…。 266 00:23:28,674 --> 00:23:31,977 んっ… んっ! はあ…。 267 00:23:41,253 --> 00:23:43,489 臭い…。 268 00:23:43,489 --> 00:23:59,071 ♬~ 269 00:23:59,071 --> 00:24:01,073 どこかしら? 270 00:24:05,444 --> 00:24:08,647 よいしょ…。 んっ! 271 00:24:08,647 --> 00:24:11,950 んっ! はあ…。 272 00:24:21,160 --> 00:24:24,063 あっ…。 273 00:24:24,063 --> 00:24:26,765 はあ…。 274 00:24:32,338 --> 00:24:38,344 ⚟(足音) 275 00:24:43,949 --> 00:24:51,256 ⚟(足音) 276 00:24:55,194 --> 00:24:57,396 (戸が開く音) 277 00:25:29,461 --> 00:25:33,832 「おるいさん」というんだったな。 278 00:25:33,832 --> 00:25:39,638 八丁堀の旦那の娘が 何で また宿屋稼業なんぞしているんだ? 279 00:25:45,344 --> 00:25:51,016 おめえの お父っつぁんは 庄司… そうだろう? 280 00:25:51,016 --> 00:25:54,853 八丁堀の旦那の 庄司の娘だろう? お前。 281 00:25:54,853 --> 00:25:58,056 庄司の娘なら どうだっていうんです? 282 00:26:05,297 --> 00:26:08,967 誰なんです お前は? 一体 何のために…。 283 00:26:08,967 --> 00:26:13,806 俺は… 三春屋の手代の伊之助だよ。 284 00:26:13,806 --> 00:26:15,741 うそ! (伊之助)うそじゃねえ。 285 00:26:15,741 --> 00:26:18,977 ただし 俺の奉公していた 三春屋は➡ 286 00:26:18,977 --> 00:26:22,448 もう 潰れちまって…。➡ 287 00:26:22,448 --> 00:26:25,250 今の三春屋とは 縁も ゆかりもねえ。 288 00:26:44,703 --> 00:26:51,176 ♬~ 289 00:26:51,176 --> 00:26:54,847 そのころの三春屋は➡ 290 00:26:54,847 --> 00:26:59,418 言ってみりゃ 極楽みてえなもんだった…。➡ 291 00:26:59,418 --> 00:27:06,291 旦那も おかみさんも 気立てのいい 優しい人で…➡ 292 00:27:06,291 --> 00:27:14,800 一人娘の お嬢さん… かわいい娘さんだった。➡ 293 00:27:14,800 --> 00:27:19,972 あんなことがなけりゃあ 俺は お嬢さんと夫婦になって➡ 294 00:27:19,972 --> 00:27:27,146 今頃は この腕に子供の2~3人も 抱いていたかもしれねえ。➡ 295 00:27:27,146 --> 00:27:31,450 世の中なんてなあ➡ 296 00:27:31,450 --> 00:27:35,988 「一寸先は闇」って言うが➡ 297 00:27:35,988 --> 00:27:40,459 まったくよ。 298 00:27:40,459 --> 00:27:42,761 本当だあ…。 299 00:27:48,200 --> 00:27:51,203 うっ! (伊之助)もういっぺん 首 絞めてやる! 300 00:27:51,203 --> 00:27:55,941 殺しゃしねえ。 半死半生 何にも分かんなくなったところで➡ 301 00:27:55,941 --> 00:27:57,876 おめえの体 汚してやる! 302 00:27:57,876 --> 00:28:01,747 なぜ… なぜ 私を こんな目に…? 303 00:28:01,747 --> 00:28:04,416 (伊之助)お嬢さんが そうされたんだ。 304 00:28:04,416 --> 00:28:06,485 柳原の土手に呼び出されて➡ 305 00:28:06,485 --> 00:28:09,955 今夜のような いい月の晩に むごたらしく…。 306 00:28:09,955 --> 00:28:14,626 誰に… そんなことをされたっていうの? 307 00:28:14,626 --> 00:28:16,662 近所の ドラ息子さ。 308 00:28:16,662 --> 00:28:21,300 近所のドラ息子のしたことを なぜ私が…。 309 00:28:21,300 --> 00:28:23,635 仕返しだよ…。 仕返ししてんのさ! 310 00:28:23,635 --> 00:28:25,971 だから なぜ 私が 仕返しをされなきゃいけないのか➡ 311 00:28:25,971 --> 00:28:28,874 聞いてるのよ! 庄司の娘だからさ。 312 00:28:28,874 --> 00:28:30,842 えっ!? 313 00:28:30,842 --> 00:28:33,312 (伊之助) 八丁堀の同心の庄司の娘だからだ。 314 00:28:33,312 --> 00:28:36,215 分からない。 分かっても分かんなくても➡ 315 00:28:36,215 --> 00:28:38,984 そんなことは いい! うっ… うっ…。 316 00:28:38,984 --> 00:28:41,820 うっ うっ…。 317 00:28:41,820 --> 00:28:44,656 (おいそ)兄ちゃん! 来るな! 向こう 行ってろ! 318 00:28:44,656 --> 00:28:49,161 兄ちゃん やめて! 兄ちゃん 駄目! 319 00:28:49,161 --> 00:28:51,096 (伊之助)向こうへ行ってろ! (おいそ)駄目だって 兄ちゃん! 320 00:28:51,096 --> 00:28:53,465 (伊之助)おいそ 向こうへ行ってろ! (おいそ)兄ちゃん! 兄ちゃん! 321 00:28:53,465 --> 00:28:56,668 (伊之助の せきこみ) 322 00:28:56,668 --> 00:29:02,474 (おいそ)兄ちゃん! 大丈夫? 兄ちゃん! ねっ? 兄ちゃん 兄ちゃん! 323 00:29:02,474 --> 00:29:05,944 (伊之助の せきこみ) 324 00:29:05,944 --> 00:29:08,447 (おいそ) 兄ちゃん しっかりして! 兄ちゃん! 325 00:29:11,116 --> 00:29:14,620 兄ちゃん! (せきこみ) 326 00:29:16,288 --> 00:29:20,158 兄ちゃん…。 (伊之助の せきこみ) 327 00:29:20,158 --> 00:29:26,365 ♬~ 328 00:29:30,802 --> 00:29:32,738 おい 伝次…。 へい。 329 00:29:32,738 --> 00:29:36,141 薬師堂の堂守が言っていたのを 今 思い出した。 330 00:29:36,141 --> 00:29:39,811 三春屋の 今の主人も おかみさんも お参りに来たことがない。 331 00:29:39,811 --> 00:29:42,147 「今の」と断るところを見ると➡ 332 00:29:42,147 --> 00:29:44,082 以前の主人が いたってことになりゃしねえか? 333 00:29:44,082 --> 00:29:46,018 以前の!? 334 00:29:46,018 --> 00:29:48,020 (源三郎)ええ 確かに いましたよ。 以前の三春屋。 335 00:29:48,020 --> 00:29:50,022 やっぱり いたか。 336 00:29:50,022 --> 00:29:52,457 (佐一郎)三春屋は 8年ほど前に 代替わりしたんだそうです。 337 00:29:52,457 --> 00:29:54,393 その前の三春屋は 悪いこと続きで➡ 338 00:29:54,393 --> 00:29:56,328 店 売って 在所へ引っ込んでしまったってことが➡ 339 00:29:56,328 --> 00:30:00,165 調べてみて 分かりました。 源さん 悪いことってのは 何でえ? 340 00:30:00,165 --> 00:30:05,671 娘が 近所の金持ちの息子に 手ごめにされたんです。 341 00:30:05,671 --> 00:30:08,340 手ごめに…。 名前は 確か おくみ。 342 00:30:08,340 --> 00:30:10,842 手ごめにした 金持ちの伜は お召し捕りになりました。 343 00:30:10,842 --> 00:30:14,179 召し捕ったのは るいさんの父上。 何だって!? 344 00:30:14,179 --> 00:30:16,481 (源三郎)庄司さんだったってことが 知れたとこです。 345 00:30:16,481 --> 00:30:19,351 源さん… じゃあ それとこれと 何か つながりが? 346 00:30:19,351 --> 00:30:22,688 なけりゃ るいさんの かどわかしが 分からなくなりますよ。 347 00:30:22,688 --> 00:30:26,024 嘉助だ…。 嘉助なら 何か知ってるかもしれねえ。 348 00:30:26,024 --> 00:30:29,861 あっ 確かに そんなことが… ええ ありました。 349 00:30:29,861 --> 00:30:31,797 思い出したかい? 350 00:30:31,797 --> 00:30:35,734 ええ。 けど あの金持ちのドラ息子に 手ごめに遭ったのは➡ 351 00:30:35,734 --> 00:30:37,736 1人や2人じゃありません。 352 00:30:37,736 --> 00:30:40,038 それが どこの何ていう娘だったかは➡ 353 00:30:40,038 --> 00:30:42,874 庄司の旦那が ご自分の胸一つに収めて➡ 354 00:30:42,874 --> 00:30:46,511 世間には知れねえように お心配り なすっていらっしゃいましたから➡ 355 00:30:46,511 --> 00:30:51,383 あっしでも… 娘の名前 全部が全部は 覚えちゃおりやせん。 356 00:30:51,383 --> 00:30:54,052 庄司さんらしい配慮だ…。 357 00:30:54,052 --> 00:30:57,089 その 庄司さんの気配りも おくみには 通じなかったんですな。 358 00:30:57,089 --> 00:30:59,224 通じなかった? 359 00:30:59,224 --> 00:31:01,159 おくみは 首くくって死にました。 360 00:31:01,159 --> 00:31:03,995 首を くくって死んだ!? 361 00:31:03,995 --> 00:31:06,665 ああ… あれが おくみでしたか。 362 00:31:06,665 --> 00:31:08,600 隠しても隠しても➡ 363 00:31:08,600 --> 00:31:11,470 そういう うわさは どこからともなく 世間に知れて…。 364 00:31:11,470 --> 00:31:13,839 (嘉助)かわいそうに…。 365 00:31:13,839 --> 00:31:16,475 思い詰めて おくみが死んで 1年も たたないうちに➡ 366 00:31:16,475 --> 00:31:19,378 気落ちをした三春屋の主も 病気で死にました。 367 00:31:19,378 --> 00:31:22,013 (嘉助)なんてこったい…。 後に残った おかみさんは➡ 368 00:31:22,013 --> 00:31:23,949 葛西の方へ 引っ込んでいったということです。 369 00:31:23,949 --> 00:31:26,485 葛西!? 370 00:31:26,485 --> 00:31:29,688 あの… 伊之助は「葛西から来た」って そう言ってましたが…。 371 00:31:29,688 --> 00:31:32,491 それだな。 その線に 狂いは なさそうだ。 372 00:31:32,491 --> 00:31:36,194 源さん 手代は… 三春屋に伊之助という 手代がいたかどうか 分からねえのかい? 373 00:31:36,194 --> 00:31:38,130 そこまでは まだ…。 いや しかし➡ 374 00:31:38,130 --> 00:31:41,066 おくみの婿になる約束の手代が いたということまでは 分かっています。 375 00:31:41,066 --> 00:31:43,068 うん。 そいつの身元を洗ってみてくれ。 376 00:31:43,068 --> 00:31:45,203 へい! 377 00:31:45,203 --> 00:31:48,707 ♬~ 378 00:31:48,707 --> 00:31:51,042 ⚟(おいそ)兄ちゃん! 兄ちゃん! 379 00:31:51,042 --> 00:31:52,978 ⚟(鉄五郎)義兄さん しっかりしてくれ。 380 00:31:52,978 --> 00:31:55,881 (おいそ)兄ちゃん! (鉄五郎)しっかりしてくれ! 381 00:31:55,881 --> 00:31:57,916 (鉄五郎)義兄さん! ねえ 兄ちゃん! 382 00:31:57,916 --> 00:32:00,152 (おいそ)兄ちゃん! (鉄五郎)しっかりしてくれ! 383 00:32:00,152 --> 00:32:03,822 お医者を…。 早く お医者様を呼ばなくては…。 384 00:32:03,822 --> 00:32:07,459 (おいそ)兄ちゃん 兄ちゃん! 近くに お医者は いないんですか? 385 00:32:07,459 --> 00:32:10,362 呼んだって… もう駄目だ。 386 00:32:10,362 --> 00:32:12,364 えっ? 387 00:32:14,166 --> 00:32:19,971 兄ちゃん… 兄ちゃん! 兄ちゃん!➡ 388 00:32:19,971 --> 00:32:23,175 兄ちゃん…。 (おいその泣き声) 389 00:32:23,175 --> 00:32:31,683 ♬~ 390 00:32:31,683 --> 00:32:33,618 あっ 分かりました! 分かったか? 391 00:32:33,618 --> 00:32:35,554 へい。 伊之助の生まれたのは 佃島で➡ 392 00:32:35,554 --> 00:32:38,190 妹夫婦が 佃島で漁師をしてるそうなんです。 393 00:32:38,190 --> 00:32:40,692 源さん おとせの言っていた 漁師の舟というのは➡ 394 00:32:40,692 --> 00:32:42,627 そいつらの舟だ! 395 00:32:42,627 --> 00:32:45,831 寺川! 佃島へ行く。 舟の支度だ! (佐一郎)はい! 396 00:33:07,652 --> 00:33:10,155 (おいそ)兄ちゃんのしたこと…➡ 397 00:33:10,155 --> 00:33:13,458 どうか 許してやってください。 398 00:33:16,661 --> 00:33:19,464 (おいそ)兄ちゃんのしたことは悪い。 399 00:33:19,464 --> 00:33:22,334 それは分かってます。➡ 400 00:33:22,334 --> 00:33:27,339 あなた様にも 申し訳ないことをしました。 401 00:33:30,008 --> 00:33:34,679 でも 兄ちゃんの 悔しい気持ち 悲しい心も➡ 402 00:33:34,679 --> 00:33:36,681 どうか分かってやってください。 403 00:33:45,023 --> 00:33:50,195 兄ちゃん 「そんなことは忘れてしまえ」って…➡ 404 00:33:50,195 --> 00:33:57,002 「おくみさんに 一生懸命 言った」って 言ってました。 405 00:33:59,204 --> 00:34:05,810 「そんなことは忘れて 約束どおり 夫婦になって➡ 406 00:34:05,810 --> 00:34:15,153 子供でも生まれれば 嫌なことなんて 全部 忘れてしまうじゃないか」。 407 00:34:15,153 --> 00:34:19,324 口を酸っぱくして そう言ったって。 408 00:34:19,324 --> 00:34:26,197 だけど… おくみさんは…➡ 409 00:34:26,197 --> 00:34:30,936 首を くくって死んでしまった。➡ 410 00:34:30,936 --> 00:34:35,774 兄ちゃん かわいそうに…。➡ 411 00:34:35,774 --> 00:34:40,478 青い顔して ここに帰ってきて…。 412 00:34:42,480 --> 00:34:46,351 (鉄五郎)魂が… 抜けたみてえだった…。 413 00:34:46,351 --> 00:34:49,020 でも 諦めてたんですよ。 414 00:34:49,020 --> 00:34:54,826 「俺に 運がなかったんだ。 これだけの運だったんだから」。 415 00:34:54,826 --> 00:34:59,664 長いこと そのことは 忘れたように➡ 416 00:34:59,664 --> 00:35:03,301 ここで暮らしてたんです。 417 00:35:03,301 --> 00:35:07,806 (鉄五郎)体 悪くして 血 吐いて➡ 418 00:35:07,806 --> 00:35:12,310 医者に 「もう この病気は治らねえ」と 言われちまって…➡ 419 00:35:12,310 --> 00:35:17,148 義兄さんの気持ちが コロッと変わっちまったんですよ。 420 00:35:17,148 --> 00:35:22,454 (おいそ)兄ちゃん もともと 丈夫じゃなかったから➡ 421 00:35:22,454 --> 00:35:26,825 「漁師のできる体じゃないから」 お父っつぁんも そう言って➡ 422 00:35:26,825 --> 00:35:30,662 それで兄ちゃん お菓子屋さんに奉公に行ったんです。 423 00:35:30,662 --> 00:35:32,998 それだって あんなことさえなけりゃあ…。 424 00:35:32,998 --> 00:35:39,170 ええ… こんな病気にだってならないで 済んだろうと思います。 425 00:35:39,170 --> 00:35:49,481 ♬~ 426 00:35:49,481 --> 00:35:55,687 (おいそ) 「もう 治る病気じゃないから」って➡ 427 00:35:55,687 --> 00:36:01,960 医者が帰ったあとで 私に言ったんです。➡ 428 00:36:01,960 --> 00:36:04,162 思い詰めた顔で…。 429 00:36:05,830 --> 00:36:11,669 おいそ… 俺 お上に恨みを晴らしてやる。 430 00:36:11,669 --> 00:36:14,973 兄ちゃん! 431 00:36:14,973 --> 00:36:18,843 お上が あいつをお縄にして 調べたりしなけりゃ➡ 432 00:36:18,843 --> 00:36:21,312 おくみさんだって 死なねえで済んだ。 433 00:36:21,312 --> 00:36:24,649 兄ちゃん 違うよ それは。 それは違う! 434 00:36:24,649 --> 00:36:27,152 お上が あいつを捕まえたのは あいつを うっちゃっといたら➡ 435 00:36:27,152 --> 00:36:29,821 もっともっと 泣きを見る娘たちが増えると思って➡ 436 00:36:29,821 --> 00:36:33,458 そいで あいつを捕まえたのよ。 437 00:36:33,458 --> 00:36:35,994 お役人だって おくみさんたちの名前が出ないように➡ 438 00:36:35,994 --> 00:36:37,929 気ぃ付けてくれたっていうじゃないか。 439 00:36:37,929 --> 00:36:40,865 いや どんなに気ぃ付けたって➡ 440 00:36:40,865 --> 00:36:44,702 「娘たち 手ごめにしたから 捕まったんだ」と世間に知れりゃ➡ 441 00:36:44,702 --> 00:36:47,706 「手ごめにされたのは どこの誰だ?」➡ 442 00:36:47,706 --> 00:36:54,345 鵜の目鷹の目 あっという間に 娘たちの名前が みんなに知れちまった。 443 00:36:54,345 --> 00:36:57,248 全く あっという間だ。 444 00:36:57,248 --> 00:37:01,953 よくも まあ こんなに早く 知れるもんだと びっくりするよ。 445 00:37:01,953 --> 00:37:04,622 世間ってやつはな➡ 446 00:37:04,622 --> 00:37:06,958 知りたいとなったら 待てしばしがねえ。 447 00:37:06,958 --> 00:37:08,893 知られたくない相手の思いなんぞ➡ 448 00:37:08,893 --> 00:37:11,396 容赦なしに 知りたいことを ほじくり出して…。 449 00:37:13,832 --> 00:37:18,303 おくみさん 死んだ…。 450 00:37:18,303 --> 00:37:23,641 それだって お上 恨んだって しょうがないじゃない。 451 00:37:23,641 --> 00:37:28,313 恨むんだったら 世間だ。 452 00:37:28,313 --> 00:37:32,183 だけど 世間は広すぎて➡ 453 00:37:32,183 --> 00:37:35,453 恨むったって 仕返しするったって しょうがないだろう! 454 00:37:35,453 --> 00:37:37,822 なあ? 兄ちゃん そうだろう? 455 00:37:37,822 --> 00:37:44,462 ♬~ 456 00:37:44,462 --> 00:37:51,169 (おいそ)何度も… 何度も 兄ちゃんに言ったんです。 457 00:37:51,169 --> 00:37:58,476 うちの人も随分 「よせ」って言ってくれたんだけど➡ 458 00:37:58,476 --> 00:38:01,479 兄ちゃん 聞きませんでした。 459 00:38:01,479 --> 00:38:05,950 (鉄五郎)「どうせ 死ぬ体だ」と 悟っちまってたから…。 460 00:38:05,950 --> 00:38:12,123 「どうすればいい?」 私たち夫婦で相談したんです。 461 00:38:12,123 --> 00:38:14,793 義兄さんも かわいそうな人だ。 462 00:38:14,793 --> 00:38:19,430 もし それで 義兄さんが 安心して 目 つぶれるのならと➡ 463 00:38:19,430 --> 00:38:22,300 俺たちも とうとう…。 464 00:38:22,300 --> 00:38:24,636 (おいそ)手ぇ貸すことに決めました。 465 00:38:24,636 --> 00:38:27,438 (鉄五郎)そのかわり…。 466 00:38:27,438 --> 00:38:34,212 (おいそ)そのかわり 兄ちゃんの犯す罪が 少しでも軽くなるようにって➡ 467 00:38:34,212 --> 00:38:37,448 兄ちゃんが「まんじゅうの中に入れる」って 言ってた➡ 468 00:38:37,448 --> 00:38:40,818 石見銀山ねずみ取りの薬を➡ 469 00:38:40,818 --> 00:38:45,990 この人が 虫下しの薬と取り替えて➡ 470 00:38:45,990 --> 00:38:49,827 死んだりする人が出ないようにって…。 471 00:38:49,827 --> 00:38:54,332 八丁堀の隣り合わせの 坂本町の お薬師様で➡ 472 00:38:54,332 --> 00:38:57,335 毒入りの まんじゅう 配れば➡ 473 00:38:57,335 --> 00:39:02,774 「八丁堀の役人の家の者が食って死ぬ」と 義兄さん 考えた。 474 00:39:02,774 --> 00:39:09,647 けど まんじゅう食って 腹 下したのは 町の人ばかり。 475 00:39:09,647 --> 00:39:13,418 侍は 人に もらったものなんざ 口にはしねえ。➡ 476 00:39:13,418 --> 00:39:17,956 義兄さん がっかりしてましたよ。 477 00:39:17,956 --> 00:39:23,761 それでも兄ちゃん 根気よく 聞いて回って➡ 478 00:39:23,761 --> 00:39:27,632 とうとう おかみさんところの お吉さんが➡ 479 00:39:27,632 --> 00:39:32,437 まんじゅうにあたったってことを 聞いてきた。 480 00:39:32,437 --> 00:39:40,178 おまけに おかみさんが 庄司の旦那の 娘さんだってことまで 聞いてきて…➡ 481 00:39:40,178 --> 00:39:44,816 おかみさんに的を絞って 恨みを晴らす。➡ 482 00:39:44,816 --> 00:39:46,818 そう 思い詰めて…。 483 00:39:48,686 --> 00:39:52,991 私たち 兄ちゃんに 手ぇ貸すふりしながら➡ 484 00:39:52,991 --> 00:39:56,661 兄ちゃんが むちゃなことしないようにって…。 485 00:39:56,661 --> 00:39:59,330 おかみさん 連れに行った時も➡ 486 00:39:59,330 --> 00:40:03,167 この人が一緒に行ったんです。 487 00:40:03,167 --> 00:40:05,470 まったく… おかみさんには➡ 488 00:40:05,470 --> 00:40:08,339 何と言って お詫びをしたらいいか。 489 00:40:08,339 --> 00:40:12,343 すいません… すいません 勘弁してください。 490 00:40:16,080 --> 00:40:19,684 ♬~ 491 00:40:19,684 --> 00:40:21,719 (おいそ)おかみさん…。 492 00:40:21,719 --> 00:40:55,486 ♬~ 493 00:40:55,486 --> 00:40:57,422 おかみさん! 494 00:40:57,422 --> 00:40:59,824 ありがとうごぜえます。 495 00:40:59,824 --> 00:41:03,161 ありがとうごぜえます。 (おいその泣き声) 496 00:41:03,161 --> 00:41:21,646 ♬~ 497 00:41:27,352 --> 00:41:30,688 ♬~ 498 00:41:30,688 --> 00:41:32,623 るい…。 499 00:41:32,623 --> 00:41:54,412 ♬~ 500 00:41:57,915 --> 00:42:00,218 あっ こんにちは。 501 00:42:06,991 --> 00:42:10,661 はあ… よかった…。 502 00:42:10,661 --> 00:42:13,998 もう お痛みになりませんか? うん。 503 00:42:13,998 --> 00:42:16,334 でも 冗談じゃありませんよねえ。 504 00:42:16,334 --> 00:42:18,269 おくみさんが死んだのは➡ 505 00:42:18,269 --> 00:42:21,172 その何とかっていう 金持ちのドラ息子のせいで➡ 506 00:42:21,172 --> 00:42:25,043 それを捕まえて お取り調べになった うちの旦那様のせいじゃない。 507 00:42:25,043 --> 00:42:28,679 そんなことは 誰にだって分かる 理屈じゃありませんか。➡ 508 00:42:28,679 --> 00:42:32,350 それを お嬢様に仕返しをして 恨みを晴らそうだなんて➡ 509 00:42:32,350 --> 00:42:34,352 逆恨みもいいところですよ。 510 00:42:34,352 --> 00:42:37,688 ハハハ… 何度 同じこと 言ってるんだい。 511 00:42:37,688 --> 00:42:39,624 何度だって言いますよ 私は。 512 00:42:39,624 --> 00:42:42,493 何度 言ったって 腹は癒えませんからね。 513 00:42:42,493 --> 00:42:44,562 (嘉助)それより 二度と えたいの知れねえ まんじゅうなんか➡ 514 00:42:44,562 --> 00:42:46,697 もらってこねえでくれよ。 515 00:42:46,697 --> 00:42:49,200 番頭さんも 同じこと 言わないでくださいよ。 516 00:42:49,200 --> 00:42:52,036 私だって懲りてるんだから…。 517 00:42:52,036 --> 00:42:53,971 あの おとせさんが今➡ 518 00:42:53,971 --> 00:42:56,507 松茸を持って お見舞いに見えまして➡ 519 00:42:56,507 --> 00:42:58,576 「まだ お疲れだろうから 帰るが➡ 520 00:42:58,576 --> 00:43:02,647 くれぐれもお大事に」と そう申しておりました。 521 00:43:02,647 --> 00:43:05,316 そう。 522 00:43:05,316 --> 00:43:09,654 おとせさんが狸穴の道場にいるってこと 知ってたの? 嘉助さん。 523 00:43:09,654 --> 00:43:12,323 えっ? ええ 知ってました。 524 00:43:12,323 --> 00:43:14,258 お吉さんも? 525 00:43:14,258 --> 00:43:18,129 いえ 私は… 知ってました。 526 00:43:18,129 --> 00:43:20,198 どうして 私だけ 知らなかったの? 527 00:43:20,198 --> 00:43:24,469 あれ!? お嬢さん ご存じじゃなかったんですか?➡ 528 00:43:24,469 --> 00:43:27,672 妙だなあ…。 529 00:43:27,672 --> 00:43:30,575 フッ…。 本当は 2人とも➡ 530 00:43:30,575 --> 00:43:33,344 キリキリ 糾明してあげるところなんだけど➡ 531 00:43:33,344 --> 00:43:35,847 おとせさんが私を見ていたおかげで➡ 532 00:43:35,847 --> 00:43:42,186 東吾様たち 佃島へ駆けつけてくれたんだ って聞いたから 許してあげましょう。 533 00:43:42,186 --> 00:43:45,022 タハハ! ありがとう存じます。 すいません。 534 00:43:45,022 --> 00:43:47,692 でも…。 へっ? 535 00:43:47,692 --> 00:43:53,364 東吾様 そろそろ 狸穴へ お稽古に お出かけになる頃ね。 536 00:43:53,364 --> 00:43:56,033 おとせさん 送って そのまま 道場へ いらしたのかしら? 537 00:43:56,033 --> 00:43:58,369 いや… とんでもない! 538 00:43:58,369 --> 00:44:00,805 まだ お嬢さんの床上げも 済んでないうちに➡ 539 00:44:00,805 --> 00:44:03,307 どこへも いらっしゃるもんですかい。 540 00:44:03,307 --> 00:44:06,310 そうですとも。 きっと この松茸で 1杯 お飲みになりたいって➡ 541 00:44:06,310 --> 00:44:09,814 おっしゃいますよね? ほい きた! 542 00:44:09,814 --> 00:44:12,850 すぐ焼けるように 下ごしらえしとこうか。 ええ そうしましょう。 543 00:44:12,850 --> 00:44:15,052 じゃあ…。 じゃあ…。 544 00:44:20,525 --> 00:44:23,661 無事で 何より。 545 00:44:23,661 --> 00:44:25,596 さあ 嘉助も飲んでくれ。 546 00:44:25,596 --> 00:44:27,798 へい 頂戴いたします。 547 00:44:30,535 --> 00:44:36,340 でも 今度という今度は つくづく思いましたよ。 548 00:44:36,340 --> 00:44:41,345 お上の仕事って 難しいもんなんですねえ…。 549 00:44:43,681 --> 00:44:45,683 お嬢さん…。 550 00:44:48,352 --> 00:44:52,356 亡くなった旦那のなさったことは 決して間違いじゃありませんよ。 551 00:44:52,356 --> 00:44:55,026 旦那が あの野郎 お縄にしなかったら➡ 552 00:44:55,026 --> 00:44:57,862 あと 何人 おくみさん同様 泣きを見る娘たちが出たか➡ 553 00:44:57,862 --> 00:44:59,797 知りゃしません。➡ 554 00:44:59,797 --> 00:45:01,732 決して 間違いじゃありません。 555 00:45:01,732 --> 00:45:04,669 これは おそばにいた私が 命にかけて申します。 556 00:45:04,669 --> 00:45:06,671 分かってるよ 嘉助。 557 00:45:06,671 --> 00:45:09,974 るいにだって それは ちゃんと分かっている。 558 00:45:09,974 --> 00:45:13,811 …が 理屈では分かっていても➡ 559 00:45:13,811 --> 00:45:15,746 いっぺん 痛めつけられた気持ちは➡ 560 00:45:15,746 --> 00:45:21,319 なあ? そう すぐ急に 元へ戻るもんじゃねえ。 561 00:45:21,319 --> 00:45:25,156 あとは 俺に任せといてくれ。 562 00:45:25,156 --> 00:45:28,459 へい。 じゃあ あとは お任せするとして➡ 563 00:45:28,459 --> 00:45:30,394 お吉さん 俺の膳 持ってきてくれ。 564 00:45:30,394 --> 00:45:34,198 はい。 では あとは お願いいたしましたよ。 565 00:45:40,004 --> 00:45:42,206 (戸が閉まる音) 566 00:45:49,180 --> 00:45:51,382 るい。 567 00:45:55,853 --> 00:45:59,824 伊之助や おくみや 人のことは さておいてだ。 568 00:45:59,824 --> 00:46:05,963 るいは 佃の浜の小屋で 伊之助に おもちゃにされそうになった時➡ 569 00:46:05,963 --> 00:46:11,769 「いざとなったら 舌を噛み切って 死ぬつもりだった」と言ったな。 570 00:46:11,769 --> 00:46:18,309 ええ。 そのつもりでしたもの 私。 571 00:46:18,309 --> 00:46:24,448 俺は 「るいに死なれて たまるものか」と 思っていたんだぞ。 572 00:46:24,448 --> 00:46:28,152 いなくなった るいを 皆と一緒に捜している間中➡ 573 00:46:28,152 --> 00:46:31,989 「死なれてたまるものか」と思っていた。 574 00:46:31,989 --> 00:46:35,693 どんなことがあっても るいに死なれたら 俺は どうなる? 575 00:46:38,162 --> 00:46:41,198 どうもなりは しませんでしょう? んっ? 576 00:46:41,198 --> 00:46:43,467 あっちこっちに ちゃんと いい人が いらっしゃるんですから。 577 00:46:43,467 --> 00:46:48,172 真面目な話をしてるんだぞ。 私だって 真面目に言ってるんです。 578 00:46:48,172 --> 00:46:51,475 俺には るい一人だ。 うそばっかし。 579 00:46:51,475 --> 00:46:53,678 天地神明に誓ってもいい。 580 00:46:55,846 --> 00:46:59,183 「本当だ」と… 思うことにしましょう。 581 00:46:59,183 --> 00:47:03,788 ハハハ…。 582 00:47:03,788 --> 00:47:09,293 人の一生 どこに どんなことが 待ち受けているかもしれねえ。 583 00:47:09,293 --> 00:47:14,799 …が どんなことが もしあっても そいつを乗り越えて生きるのが➡ 584 00:47:14,799 --> 00:47:18,436 夫婦ってもんだ。 585 00:47:18,436 --> 00:47:21,806 死ぬより 苦しくたって 夫婦なら➡ 586 00:47:21,806 --> 00:47:23,741 そうならにゃあならねえ。 587 00:47:23,741 --> 00:47:28,446 嫌だ…。 まるで私が どうかされたみたいじゃありませんか。 588 00:47:28,446 --> 00:47:32,650 いやいや るいのことではなく おくみが…。 589 00:47:32,650 --> 00:47:34,985 おくみさん!? 590 00:47:34,985 --> 00:47:38,856 そう。 おくみという娘が➡ 591 00:47:38,856 --> 00:47:45,629 伊之助を信じて もっと強ければ よかったんだってことさ。 592 00:47:45,629 --> 00:47:52,403 ええ。 それはね おいそさんも言ってましたよ。 593 00:47:52,403 --> 00:47:55,339 「おくみさんと 夫婦になってたら➡ 594 00:47:55,339 --> 00:47:59,009 あんな病気にも ならなかっただろう」って…。 595 00:47:59,009 --> 00:48:02,780 女は 強くなけりゃいけねえんだよ。 596 00:48:02,780 --> 00:48:07,618 せいぜい 強くなりましょう 私は。 597 00:48:07,618 --> 00:48:09,553 どんなに やきもち やかされても…。 598 00:48:09,553 --> 00:48:11,489 んっ? 599 00:48:11,489 --> 00:48:14,392 辛抱できる 強い女に…。 600 00:48:14,392 --> 00:48:17,628 「俺には るい一人だ」と そう言ったじゃねえか…。 601 00:48:17,628 --> 00:48:19,563 いいんですよ もう…。 602 00:48:19,563 --> 00:48:22,800 私は強くなりますから…。 603 00:48:22,800 --> 00:48:26,137 んっ! あ~ いてっ。 いてててて…。 604 00:48:26,137 --> 00:48:43,421 ♬~