1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:09,229 ♬~ 3 00:02:30,183 --> 00:02:32,185 (東吾)るい。 4 00:02:32,185 --> 00:02:34,521 (るい)あら すいません。 5 00:02:34,521 --> 00:02:36,456 お帰りなさいまし。 6 00:02:36,456 --> 00:02:39,026 目の具合は… えっ? どうだい? 7 00:02:39,026 --> 00:02:42,696 もう 痛みは すっかり 取れたんですけどね…。 8 00:02:42,696 --> 00:02:44,631 うん…。 9 00:02:44,631 --> 00:02:48,335 ほら。 うわ~。 10 00:02:48,335 --> 00:02:50,404 先生は 4~5日は こうして時々 冷やすようにって➡ 11 00:02:50,404 --> 00:02:52,539 おっしゃるもんですから。 12 00:02:52,539 --> 00:02:54,574 アハッ おかしいでしょう? 13 00:02:54,574 --> 00:02:56,710 おかしくなんかあるものか。 14 00:02:56,710 --> 00:02:59,746 「目病み女に風邪ひき男」 2割方 器量が上がると➡ 15 00:02:59,746 --> 00:03:03,283 言うくれえのもんだぜ。 (笑い声) 16 00:03:03,283 --> 00:03:07,487 ところで ゆんべ 首つりを助けたとな? 17 00:03:07,487 --> 00:03:10,157 おや もう お耳に入りましたか? 18 00:03:10,157 --> 00:03:12,993 うん。 そのことで 話が聞きたいと 源さんが伝次を連れてくるから➡ 19 00:03:12,993 --> 00:03:14,928 聞かしてやってくんな。 20 00:03:14,928 --> 00:03:18,665 じゃあ お吉さんも呼びましょうね。 うん。 21 00:03:18,665 --> 00:03:23,503 (お吉)夕方になってから お嬢さんの左の目が痛みだしましてね➡ 22 00:03:23,503 --> 00:03:26,406 手遅れになっちゃ 大変だからって 私が お供をして➡ 23 00:03:26,406 --> 00:03:29,843 神田の井上先生に 見てもらいに参ったんですよ。 24 00:03:29,843 --> 00:03:32,879 下まぶたの裏側に 小さな腫れ物ができていて➡ 25 00:03:32,879 --> 00:03:35,649 すぐに先生が メスを入れて 取ってくだすって➡ 26 00:03:35,649 --> 00:03:38,552 それで 痛みは治まったんですけどね。 うん…。 27 00:03:38,552 --> 00:03:43,323 井上先生のおうちを出て 辻まで行けば 駕籠は拾えましょうからと➡ 28 00:03:43,323 --> 00:03:47,194 近道をして お宮の境内 斜めに突っ切って➡ 29 00:03:47,194 --> 00:03:49,196 急いで行きますとね…。 30 00:03:49,196 --> 00:03:53,200 (風の音) 31 00:03:56,203 --> 00:04:00,807 お嬢さん お寒くありませんか? ええ 大丈夫よ。 32 00:04:00,807 --> 00:04:02,743 あっ! あっ! 気を付けてくださいまし。 33 00:04:02,743 --> 00:04:04,678 嫌ね…。 大丈夫?ええ。 34 00:04:04,678 --> 00:04:07,981 ⚟(枝が折れて 何かが落ちる音) 35 00:04:07,981 --> 00:04:09,983 何でしょう? 36 00:04:16,990 --> 00:04:19,292 人ですよ。 えっ!? 37 00:04:19,292 --> 00:04:21,495 (お吉)人が倒れてます。 38 00:04:25,999 --> 00:04:29,836 もし… もし しっかりしてくださいな。 39 00:04:29,836 --> 00:04:33,306 んっ ん~…。 40 00:04:33,306 --> 00:04:36,176 (お吉)お嬢さん…。えっ!? こんなものが。 41 00:04:36,176 --> 00:04:40,847 首をつろうとして 枝が折れたんですよ。➡ 42 00:04:40,847 --> 00:04:43,750 ほら 枯れてたもんだから。 43 00:04:43,750 --> 00:04:46,720 お吉さん 番屋に行って 誰かに来てもらってちょうだいな! 44 00:04:46,720 --> 00:04:48,922 は… はい! 45 00:04:55,328 --> 00:04:58,198 (伝次)ばあさんが 首をくくった木の➡ 46 00:04:58,198 --> 00:05:01,134 枝の折れる音 確かに聞いたんだね? 47 00:05:01,134 --> 00:05:03,970 はい 聞きました。 (伝次)お嬢さんもですか? 48 00:05:03,970 --> 00:05:06,807 ええ。 枝の折れる ピシッて音と➡ 49 00:05:06,807 --> 00:05:10,644 ドスンって おばあさんの落ちる音 はっきり 私も聞きましたよ。 50 00:05:10,644 --> 00:05:13,280 で すぐ ばあさんのとこへ 駆けつけた。 (お吉)はい。 51 00:05:13,280 --> 00:05:17,150 そん時に 誰か逃げていく者を ご覧になりませんでしたか? 52 00:05:17,150 --> 00:05:20,487 いいえ。 いませんよ ほかには誰も。 53 00:05:20,487 --> 00:05:22,422 でも どういうわけなんですの? 54 00:05:22,422 --> 00:05:24,357 あの おばあさんは 首をくくろうとしてたんですよ。 55 00:05:24,357 --> 00:05:26,359 そうですよ。 首っつりに連れがいるわけなんぞ➡ 56 00:05:26,359 --> 00:05:28,361 ないじゃありませんか ねえ お嬢さん? うん。 57 00:05:28,361 --> 00:05:30,664 いえ… あの それが… んんっ! (源三郎)いや あの人はね➡ 58 00:05:30,664 --> 00:05:35,001 神田の質屋の能登屋半兵衛という者の 母親で おかねというんですが➡ 59 00:05:35,001 --> 00:05:39,839 どう調べても 首 くくって 死ななきゃ ならないような訳がね ないんですよ。 60 00:05:39,839 --> 00:05:42,175 え? 61 00:05:42,175 --> 00:05:45,178 (伝次)能登屋は 土地で 3代続いた質屋で 金もあります。➡ 62 00:05:45,178 --> 00:05:49,683 地所も家作も かなり持っていて 商いも繁盛しております。 63 00:05:49,683 --> 00:05:52,719 (源三郎)おかねの亭主 能登屋の先代 藤兵衛というのは➡ 64 00:05:52,719 --> 00:05:54,854 10年前に 卒中で死んでるんですが➡ 65 00:05:54,854 --> 00:05:58,191 息子の半兵衛は 町内でも 評判の孝行息子で➡ 66 00:05:58,191 --> 00:06:01,461 まあ おかねに 不足は何もないはずだといいます。 67 00:06:01,461 --> 00:06:04,965 (伝次)月に一度は 必ず 目黒のお不動様へ お参りに行って➡ 68 00:06:04,965 --> 00:06:09,469 寄席へも芝居へも好きな時に出かけられる 結構な ご隠居様なんですから。 69 00:06:09,469 --> 00:06:12,973 そりゃ はた目には 結構な ご隠居様かもしれないけど➡ 70 00:06:12,973 --> 00:06:16,476 人それぞれに いろんな事情は あるってもんじゃございませんか。 71 00:06:16,476 --> 00:06:19,512 そうですよ。 お金があっても 体が弱いだとか➡ 72 00:06:19,512 --> 00:06:22,282 お医者様に「お前の病気は もう治らない」と言われたとか➡ 73 00:06:22,282 --> 00:06:24,217 死にたい理由は いろいろ…。 74 00:06:24,217 --> 00:06:26,486 あっ いやいや! そいつも聞いてみたんだよ。 75 00:06:26,486 --> 00:06:28,822 ばあさんの 掛かりつけの医者に会って 聞いてみたんだがな➡ 76 00:06:28,822 --> 00:06:31,858 すこぶるつきの丈夫なたちで めったに 風邪もひかねえってんだい。 77 00:06:31,858 --> 00:06:35,495 え~? お年寄りが元気だっていうのは おめでたい話ですけど➡ 78 00:06:35,495 --> 00:06:39,666 でも お嫁さんにとっちゃ たまりませんでしょうね? 79 00:06:39,666 --> 00:06:41,701 さすがだな。 へ? 80 00:06:41,701 --> 00:06:43,837 (源三郎)いや~ さすが お吉 いいところに気が付いた。 81 00:06:43,837 --> 00:06:45,772 じゃあ やっぱり? 82 00:06:45,772 --> 00:06:49,175 そう。 嫁と姑の仲 あんまり うまくいってなかったんだい。 83 00:06:49,175 --> 00:06:53,046 去年の冬 半兵衛の嫁は 離縁になって 今は いないんです。 84 00:06:53,046 --> 00:06:56,916 では あのご隠居さんがもとで 夫婦別れをしたっていうんですか? 85 00:06:56,916 --> 00:06:58,885 (伝次)世間じゃ まあ そう言ってます。➡ 86 00:06:58,885 --> 00:07:01,755 それと…。 えっ 何でしょう? 87 00:07:01,755 --> 00:07:05,458 これも 世間じゃ あの姑のせいだと言うんでしょうが➡ 88 00:07:05,458 --> 00:07:07,794 半兵衛の女房が 離縁になったのは➡ 89 00:07:07,794 --> 00:07:12,132 女房の お柳っていうのが 男と駆け落ちをしたからなんですよ。 90 00:07:12,132 --> 00:07:14,134 駆け落ち!? 91 00:07:14,134 --> 00:07:17,270 まあ… 駆け落ちですか。 92 00:07:17,270 --> 00:07:20,140 甘い 甘い~。 93 00:07:20,140 --> 00:07:23,943 甘い 甘酒~。 94 00:07:30,850 --> 00:07:33,286 お嬢さん…。 95 00:07:33,286 --> 00:07:36,823 能登屋の おかみさん 駆け落ちをした お柳さん…。 96 00:07:36,823 --> 00:07:38,758 それが どうしたの? 97 00:07:38,758 --> 00:07:41,494 相手はね 能登屋の奉公人で喜三郎。 98 00:07:41,494 --> 00:07:43,530 おかみさんよりも 1つ年下で➡ 99 00:07:43,530 --> 00:07:47,367 色は黒いけど なかなかの男前だったそうですよ! 100 00:07:47,367 --> 00:07:50,503 お吉さんったら! どこで そんなこと 聞いてきたの? 101 00:07:50,503 --> 00:07:52,539 あら… だって もう 近所じゃ みんな 知ってますもの。 102 00:07:52,539 --> 00:07:55,308 駆け落ちをする だいぶ前からね➡ 103 00:07:55,308 --> 00:07:58,011 お姑さんに いじめられて 泣いてる おかみさんを➡ 104 00:07:58,011 --> 00:08:01,247 その喜三郎っていうのが 何だかんだって 慰めてやってんの 見たって。 105 00:08:01,247 --> 00:08:03,249 ふ~ん…。 106 00:08:11,891 --> 00:08:14,394 ⚟(嘉助)お嬢さん。 うん? 107 00:08:17,697 --> 00:08:20,133 (嘉助)能登屋の旦那が お見えになりましたが…。 108 00:08:20,133 --> 00:08:23,036 えっ 能登屋さんの? (嘉助)へえ。 109 00:08:23,036 --> 00:08:25,638 半兵衛って人です。 110 00:08:25,638 --> 00:08:27,574 何かしら? 111 00:08:27,574 --> 00:08:30,510 (半兵衛)これは ごく つまらないものでございますが➡ 112 00:08:30,510 --> 00:08:33,146 私どもの気持ちだけ。➡ 113 00:08:33,146 --> 00:08:36,049 どうか お納めくださいますように。 114 00:08:36,049 --> 00:08:40,820 めいめいに まあ ご丁寧なことで 痛み入ります。 115 00:08:40,820 --> 00:08:45,992 それで ご隠居様のご容体は いかがでいらっしゃいますんですか? 116 00:08:45,992 --> 00:08:48,895 おかげさまで 今朝は もう すっかり 熱も下がりまして➡ 117 00:08:48,895 --> 00:08:52,298 「打ち身の方も心配がないから」と お医者様も…。 118 00:08:52,298 --> 00:08:54,667 それは よろしゅうございましたねえ。 119 00:08:54,667 --> 00:08:56,669 あ…。 120 00:08:58,505 --> 00:09:03,476 ただ… 母が なぜ 死のうだなどという 気を起こしましたものか➡ 121 00:09:03,476 --> 00:09:08,181 その訳が 今もって分かりませんのが 心配で…。 122 00:09:08,181 --> 00:09:11,084 ご隠居様は 何も おっしゃいませんか? 123 00:09:11,084 --> 00:09:13,987 はい。 124 00:09:13,987 --> 00:09:18,458 手前の未熟ゆえに 家内を離別いたしましたことを➡ 125 00:09:18,458 --> 00:09:23,630 母が そこまで 心を痛めていた というのでございましょうか。 126 00:09:23,630 --> 00:09:27,967 世間様では 「あれもこれも 気性のきつい 母のせいだ」と おっしゃるが➡ 127 00:09:27,967 --> 00:09:34,274 死のうとするほど 母も心を 傷つけていたのかと思いますと 私は…。 128 00:09:39,145 --> 00:09:41,981 い… いや これは どうも➡ 129 00:09:41,981 --> 00:09:44,484 お礼に伺いながら とんだ愚痴を お聞かせしたりして➡ 130 00:09:44,484 --> 00:09:47,287 お恥ずかしいことでございました。 131 00:09:54,160 --> 00:09:58,164 よくできた旦那じゃございませんかね。➡ 132 00:09:58,164 --> 00:10:00,867 お若いのに…。 133 00:10:03,670 --> 00:10:07,841 それに… いい男。 ウフフフ。 134 00:10:07,841 --> 00:10:10,343 ねえ… あら? 135 00:10:22,322 --> 00:10:26,192 へえ~ あの色男 かわせみへ来やがったかい。 136 00:10:26,192 --> 00:10:31,030 色男? 半兵衛さん ご存じなんですか? 137 00:10:31,030 --> 00:10:33,066 源さんと伝次に誘われて➡ 138 00:10:33,066 --> 00:10:35,902 それとなく 能登屋へ首実検に行ってみた。 139 00:10:35,902 --> 00:10:39,205 畝様 まだ 何か…? 140 00:10:39,205 --> 00:10:41,140 うん。 伝次が どうしても➡ 141 00:10:41,140 --> 00:10:43,710 腑に落ちねえと言ってな。 142 00:10:43,710 --> 00:10:46,546 まあ 岡っ引きの勘ってやつかな。 143 00:10:46,546 --> 00:10:50,416 「首をくくって 死ぬ理由がない」という あれに引っ掛かってるんですね。 144 00:10:50,416 --> 00:10:54,220 そういうことよ。 145 00:10:54,220 --> 00:10:57,557 でも それなら 半兵衛さんも言ってましたよ。 146 00:10:57,557 --> 00:11:00,059 「おかみさんと離縁したことを 世間では お姑さんのせいだ」と➡ 147 00:11:00,059 --> 00:11:01,995 うわさしている。 148 00:11:01,995 --> 00:11:06,199 それが悩みで ご隠居様 死のうとまで 思い詰めていたんだろうって。 149 00:11:11,004 --> 00:11:14,841 おっ母さんが 死ぬ覚悟までしていたのかと➡ 150 00:11:14,841 --> 00:11:18,178 半兵衛さん 身も世もないって顔で…。 151 00:11:18,178 --> 00:11:20,513 お前に言ったってえのか? 152 00:11:20,513 --> 00:11:22,448 ええ。 153 00:11:22,448 --> 00:11:25,184 ふ~ん。 フフフ…。 154 00:11:25,184 --> 00:11:28,188 あら 何ですか? 155 00:11:28,188 --> 00:11:33,192 男でも女でも 身の上話を始めた時は…。 156 00:11:35,328 --> 00:11:37,864 どうだっていうんです? 157 00:11:37,864 --> 00:11:40,767 相手に気がある証拠だっていうぜ。 158 00:11:40,767 --> 00:11:43,336 まあ ばかばっかし 言って。 159 00:11:43,336 --> 00:11:48,174 (笑い声) 160 00:11:48,174 --> 00:11:52,545 そうやって 紅絹の布で 目を拭いてるさまなんてものは➡ 161 00:11:52,545 --> 00:11:54,480 なるほど 色っぽい。 162 00:11:54,480 --> 00:11:58,217 俺でさえ 今更ながらに ほれ直そうってぐれえのものだ。 163 00:11:58,217 --> 00:12:04,157 女房に逃げられた半兵衛が ムラムラッとしても無理はなかろう。 164 00:12:04,157 --> 00:12:08,294 これは おまじないなんですよ。 165 00:12:08,294 --> 00:12:10,230 うん! いてっ! 166 00:12:10,230 --> 00:12:44,530 ♬~ 167 00:12:44,530 --> 00:12:50,536 (風の音) 168 00:13:15,528 --> 00:13:17,997 (おくみ)あの…。 169 00:13:17,997 --> 00:13:21,000 はい。 いらっしゃいまし…。 170 00:13:24,303 --> 00:13:27,507 あの… 泊めていただけますか? 171 00:13:32,512 --> 00:13:34,447 (嘉助)どういたしましょう? お嬢さん。 172 00:13:34,447 --> 00:13:36,382 もし お宿 願えるんなら➡ 173 00:13:36,382 --> 00:13:39,852 お嬢さんに お聞きしてえことがあるって その娘さん 言ってるんですが。 174 00:13:39,852 --> 00:13:41,888 私に? (嘉助)へい。 175 00:13:41,888 --> 00:13:43,890 聞きたいことが? 176 00:13:54,200 --> 00:13:57,537 お一人で 岩槻から おいでになったんですか? 177 00:13:57,537 --> 00:14:04,143 はい。 あの… あたしは田舎者で うまく話せません。 178 00:14:04,143 --> 00:14:11,017 初めて お目にかかる おかみさんに ぶしつけだとは思いますが➡ 179 00:14:11,017 --> 00:14:18,658 私 神田の能登屋さんに奉公していた 喜三郎の 身寄りでございます。 180 00:14:18,658 --> 00:14:20,660 えっ!? 181 00:14:22,829 --> 00:14:27,500 喜三郎さんの 身寄りの方と おっしゃいますと? 182 00:14:27,500 --> 00:14:35,842 あの… 小さい時に 親たちが 末は夫婦と約束をした…。 183 00:14:35,842 --> 00:14:38,511 許婚? (おくみ)はい。 184 00:14:38,511 --> 00:14:41,848 まあ…。 185 00:14:41,848 --> 00:14:46,719 それは まあ… どう申したらいいんでしょうね。 186 00:14:46,719 --> 00:14:49,589 いいえ あたし…➡ 187 00:14:49,589 --> 00:14:54,594 私 喜三郎さんを探しに 江戸へ参りました。 188 00:14:56,395 --> 00:14:59,699 あの人 もしかしたら➡ 189 00:14:59,699 --> 00:15:01,634 殺されたんじゃないかと。 190 00:15:01,634 --> 00:15:04,670 えっ 喜三郎さんが殺された!? 191 00:15:04,670 --> 00:15:06,973 そう思って あたし…。 192 00:15:06,973 --> 00:15:27,360 ♬~ 193 00:15:27,360 --> 00:15:29,362 いらっしゃい。 うん。さあ…。 194 00:15:29,362 --> 00:15:31,998 すいません お呼び立てしたりして。 195 00:15:31,998 --> 00:15:36,669 な~に それより 妙な娘が飛び込んできたんだとな? 196 00:15:36,669 --> 00:15:41,007 ええ そうなんです。 あの… これを 見てくださいまし。 197 00:15:41,007 --> 00:15:42,942 何だい? 198 00:15:42,942 --> 00:15:46,179 喜三郎さんから その おくみさんって子に来た手紙です。 199 00:15:46,179 --> 00:15:48,114 うん 読んだんだね? 200 00:15:48,114 --> 00:15:51,851 はい。 文面は 別れ話と考えていいようですが。 201 00:15:51,851 --> 00:15:54,187 別れ話? ええ。 202 00:15:54,187 --> 00:15:56,122 小さい頃からの許婚だが➡ 203 00:15:56,122 --> 00:15:58,858 これまでの縁は なかったものと 諦めてほしい。 204 00:15:58,858 --> 00:16:01,260 うん…。 205 00:16:01,260 --> 00:16:04,463 「この道が たとえ 地獄に続いていようとも➡ 206 00:16:04,463 --> 00:16:08,634 もはや 引き返すことはできまじく候…」。 207 00:16:08,634 --> 00:16:11,337 ばかに思い詰めた文面じゃねえか。 えっ? 208 00:16:13,472 --> 00:16:18,144 ん~… ところで おくみという娘が➡ 209 00:16:18,144 --> 00:16:21,814 どうして るいの所へ来たっていうんだい? 210 00:16:21,814 --> 00:16:25,151 (源三郎)ああ 能登屋の手代に 定吉というのがいます。うん。 211 00:16:25,151 --> 00:16:31,023 (源三郎)その定吉が 首くくりの一件 おくみに知らせてやったんだそうですよ。 212 00:16:31,023 --> 00:16:33,826 助けたのが るいだってか? (源三郎)はあ。 213 00:16:33,826 --> 00:16:35,761 ばかに親切な男がいたもんじゃねえか。 214 00:16:35,761 --> 00:16:39,165 えっ? なんだって そんなこと わざわざ 知らせに来たんだい? 215 00:16:39,165 --> 00:16:42,001 定吉と喜三郎は 同じ在所の者同士。 216 00:16:42,001 --> 00:16:45,838 まあ 駆け落ちのことも それからあとのことも➡ 217 00:16:45,838 --> 00:16:50,510 こまごまと 喜三郎の母親に 知らせてやっていたそうです。 218 00:16:50,510 --> 00:16:52,511 なるほど…。 219 00:16:54,847 --> 00:16:57,683 とにかく その おくみという娘に 会ってみようか? 220 00:16:57,683 --> 00:17:00,987 はあ… そうしてやってくださいまし。 221 00:17:05,124 --> 00:17:07,126 ⚟おくみさん。 222 00:17:12,798 --> 00:17:17,270 喜三郎さんの おっ母さんの お位牌なんです。 223 00:17:17,270 --> 00:17:21,474 喜三郎さんの おっ母さん 亡くなったんですか? 224 00:17:23,976 --> 00:17:26,279 (源三郎)お前は 喜三郎が殺されたと思っていると➡ 225 00:17:26,279 --> 00:17:28,214 言ったそうだが➡ 226 00:17:28,214 --> 00:17:31,651 なぜ そう思ったのか 話してくれないか? 227 00:17:31,651 --> 00:17:35,821 それは… この1年➡ 228 00:17:35,821 --> 00:17:39,659 待っても待っても 喜三郎さんから 便りが なかったからです。 229 00:17:39,659 --> 00:17:41,594 しかし それは…。 (おくみ)いいえ。 230 00:17:41,594 --> 00:17:48,301 そりゃ あたしには 前に縁切りの手紙も もらってますし➡ 231 00:17:48,301 --> 00:17:51,671 ほかの人と 駆け落ちしたっていうんですから➡ 232 00:17:51,671 --> 00:17:55,174 便りがなくても 当たり前だと思いますが➡ 233 00:17:55,174 --> 00:17:58,678 でも あの親思いの喜三郎さんが➡ 234 00:17:58,678 --> 00:18:00,613 おっ母さんの所へも➡ 235 00:18:00,613 --> 00:18:04,483 1年もの間 まるで 音沙汰なしでいるっていうのが➡ 236 00:18:04,483 --> 00:18:06,485 おかしいと思って…。 237 00:18:06,485 --> 00:18:09,789 おめえに ないしょにしていたんじゃないのか? 238 00:18:09,789 --> 00:18:12,124 駆け落ちして お前を裏切った息子だ。 239 00:18:12,124 --> 00:18:14,460 手紙が来たとは 言いにくくて➡ 240 00:18:14,460 --> 00:18:16,395 おっ母さんが おめえに隠していたんだとは…。 241 00:18:16,395 --> 00:18:18,397 そんなことありません! 242 00:18:20,967 --> 00:18:25,137 おっ母さんは かわいそうに…➡ 243 00:18:25,137 --> 00:18:28,808 毎日 毎日 喜三郎さんのことを案じて➡ 244 00:18:28,808 --> 00:18:31,811 それで病気になってしまったんです。 245 00:18:34,480 --> 00:18:37,283 喜三郎さんのことが心配で➡ 246 00:18:37,283 --> 00:18:40,086 食べるものも 食べられなくなって それで…。 247 00:18:43,155 --> 00:18:45,825 うん…。 248 00:18:45,825 --> 00:18:50,296 もし おっ母さんが 喜三郎さんの行方を知っていて➡ 249 00:18:50,296 --> 00:18:53,199 あたしに隠していたんだとしても➡ 250 00:18:53,199 --> 00:18:57,003 死んでいく時まで うそがつけるとは思いません。 251 00:18:57,003 --> 00:18:59,005 なるほど。 252 00:19:04,110 --> 00:19:10,883 おっ母さんは 何度も 喜三郎さんの夢を見たそうです。 253 00:19:10,883 --> 00:19:14,120 夢の中で 喜三郎さんは➡ 254 00:19:14,120 --> 00:19:17,623 いつもいつも 泣いてたって➡ 255 00:19:17,623 --> 00:19:21,127 おっ母さん 言ってました。 256 00:19:36,976 --> 00:19:42,782 あれだけでは 喜三郎が殺されたとは 考えにくい。 257 00:19:42,782 --> 00:19:44,717 なあ? 源さん。 258 00:19:44,717 --> 00:19:49,488 そうかもしれませんが…。 何だい? 259 00:19:49,488 --> 00:19:51,524 妙なことがあるんです。 260 00:19:51,524 --> 00:19:53,659 妙なこと? 261 00:19:53,659 --> 00:19:57,163 (源三郎)ええ。 今年になってから 能登屋の奉公人が3人も➡ 262 00:19:57,163 --> 00:19:59,665 急に暇を取ってるんです。➡ 263 00:19:59,665 --> 00:20:02,501 しかも その 暇を取った訳というのが➡ 264 00:20:02,501 --> 00:20:07,306 3人とも 倉へ入ると なんとも嫌な心持ちがして 気味が悪い。 265 00:20:07,306 --> 00:20:11,010 気味が悪いですって? 倉へ入るとか? 266 00:20:11,010 --> 00:20:16,315 ええ。 質屋の能登屋に倉があるのは 至極 当たり前の話なんですが➡ 267 00:20:16,315 --> 00:20:19,185 質物の出し入れに 倉へ入ると➡ 268 00:20:19,185 --> 00:20:21,854 なんとも嫌~な気持ちがして➡ 269 00:20:21,854 --> 00:20:26,325 何か こう ゾ~ッとするような 不気味な感じがするって…。 270 00:20:26,325 --> 00:20:28,260 いつごろからだい? 271 00:20:28,260 --> 00:20:32,031 「以前には こんなことは なかった。 今年の冬になってからだ」と➡ 272 00:20:32,031 --> 00:20:34,867 暇を取った奉公人の一人が 言っておりました。 273 00:20:34,867 --> 00:20:37,336 今年の冬からねえ…。 274 00:20:37,336 --> 00:20:40,706 まあ ばかばかしいと言ってしまえば それまでのことなんですが➡ 275 00:20:40,706 --> 00:20:44,343 しかし こんなうわさは 立つには 立つだけの訳があるだろうと。 276 00:20:44,343 --> 00:20:46,278 伝次が 御用の筋と称して➡ 277 00:20:46,278 --> 00:20:49,882 一度 能登屋の倉 調べてみたんだそうです。 278 00:20:49,882 --> 00:20:54,053 それで やっぱり ゾ~ッとしたっていうんですか? 279 00:20:54,053 --> 00:20:55,988 胸が重くなって 気が付いたら➡ 280 00:20:55,988 --> 00:20:58,224 背中に 汗 びっしょり かいていたといいます。 281 00:20:58,224 --> 00:21:01,494 まあ…。 282 00:21:01,494 --> 00:21:04,497 伝次に 一度 おくみの話をしてやるんだな。 283 00:21:06,365 --> 00:21:09,668 喜三郎が殺されたってのは どうも 少し唐突で…。 284 00:21:09,668 --> 00:21:12,705 ピンと来ねえか? 2人が世をはかなんで➡ 285 00:21:12,705 --> 00:21:15,474 心中でも やらかしたってんなら まだ分かりますがね。 286 00:21:15,474 --> 00:21:17,409 (八造)おひとつ…。 あ… ありがとう。 287 00:21:17,409 --> 00:21:20,846 うん…。 ああ…。 288 00:21:20,846 --> 00:21:23,315 駆け落ちをした2人が➡ 289 00:21:23,315 --> 00:21:27,019 去年の 12月15日の晩に 能登屋を出たって言ってますが➡ 290 00:21:27,019 --> 00:21:30,856 近所の誰一人 能登屋から出ていく 2人の姿 見ちゃいねえんですよ。 291 00:21:30,856 --> 00:21:33,759 当たりめえだよ。 物見遊山に行くんじゃねえんだぜ。 292 00:21:33,759 --> 00:21:35,728 「人目を忍ぶ駆け落ち。➡ 293 00:21:35,728 --> 00:21:40,332 見ているやつぁ 十五夜の 凍てつくような月ばっかり」。 294 00:21:40,332 --> 00:21:42,268 そりゃ まあ そうだろうけどさ➡ 295 00:21:42,268 --> 00:21:46,205 それからあとも どこそこで 2人を見たって人が いねえんだ。 296 00:21:46,205 --> 00:21:48,207 息を潜めて 隠れてんだい きっとな。 297 00:21:48,207 --> 00:21:50,342 (お花)ねえ それにしても➡ 298 00:21:50,342 --> 00:21:53,212 ねえ お姑さんが お嫁さんを ひどくいじめたって話じゃありませんか。 299 00:21:53,212 --> 00:21:55,548 ねえ! あっ すいません どうぞ。 300 00:21:55,548 --> 00:21:57,483 何ですか 能登屋の旦那が➡ 301 00:21:57,483 --> 00:21:59,885 おかみさんと 一つ 布団で寝ている部屋へも➡ 302 00:21:59,885 --> 00:22:03,489 ずかずかと入ってったんですってね~! 半兵衛の おふくろがか? 303 00:22:03,489 --> 00:22:06,525 ええ たまりませんよ お嫁さんにしたら。 304 00:22:06,525 --> 00:22:09,161 (伝次)夜の夜中に 半兵衛を 離れの隠居所へ呼びつけて➡ 305 00:22:09,161 --> 00:22:11,497 おかみさんとこには 帰さなかった話も聞いていますが。 306 00:22:11,497 --> 00:22:15,301 (お花)おう やだ やだ! (八造)その半兵衛って旦那がよ➡ 307 00:22:15,301 --> 00:22:17,236 おふくろに ぴしゃって言ってやりゃ いいじゃねえか。 308 00:22:17,236 --> 00:22:19,171 (お花)本当だよ。 (伝次)それができねえ➡ 309 00:22:19,171 --> 00:22:22,074 気の優しい男なんだよ。 (八造)けっ! だらしがねえやつだな。 310 00:22:22,074 --> 00:22:24,843 いや 確かに 半兵衛も だらしがねえが➡ 311 00:22:24,843 --> 00:22:28,514 それより おふくろのおかねっていうのが 強すぎるんだ。 312 00:22:28,514 --> 00:22:32,017 (お花)そんなとこへ嫁に行った おかみさんね そりゃ かないませんよ。 313 00:22:32,017 --> 00:22:34,520 そうだよ。 湯へ入るんだってのは おかみさんと一緒じゃなく➡ 314 00:22:34,520 --> 00:22:37,022 おふくろの おかねと 半兵衛が 一緒だったってね。 315 00:22:37,022 --> 00:22:40,326 えっ!?たまりかねて おかみさんが つい しゃべったっていうんだから➡ 316 00:22:40,326 --> 00:22:42,394 こりゃ うそじゃねえぜ。 317 00:22:42,394 --> 00:22:44,530 それじゃあ 半兵衛だって➡ 318 00:22:44,530 --> 00:22:47,867 なんとも嫌な重たいものを しょわされた思いで いるだろう。 319 00:22:47,867 --> 00:22:50,536 本当にねえ…。 320 00:22:50,536 --> 00:22:52,871 とにかく 去年の12月15日の夜➡ 321 00:22:52,871 --> 00:22:54,807 お柳と喜三郎が駆け落ちをした晩に➡ 322 00:22:54,807 --> 00:22:58,043 能登屋には 誰と誰がいて 誰と誰が外に出ていたか➡ 323 00:22:58,043 --> 00:23:01,013 できるだけ詳しく調べてきてくれ。 かしこまりました。 324 00:23:01,013 --> 00:23:04,650 ♬ かごめかごめ 325 00:23:04,650 --> 00:23:08,487 ♬ 籠の中の鳥は 326 00:23:08,487 --> 00:23:11,991 (おくみ)お金は ございます。➡ 327 00:23:11,991 --> 00:23:15,294 喜三郎さんが おっ母さんに送ってきた お金を➡ 328 00:23:15,294 --> 00:23:19,665 おっ母さんが 私たちの祝言に使うようにといって➡ 329 00:23:19,665 --> 00:23:22,501 ためておいてくれた お金。 330 00:23:22,501 --> 00:23:28,674 それに あたしも 子供の頃から お名主様へご奉公にあがって➡ 331 00:23:28,674 --> 00:23:31,510 お給金を少しずつ ためておきましたから。 332 00:23:31,510 --> 00:23:35,014 では お金の心配は いらないのね。 333 00:23:35,014 --> 00:23:42,521 でも お金は 喜三郎さんの生き死にを 確かめるためにだけ 使うつもり。 334 00:23:42,521 --> 00:23:46,859 できれば お上のお取り調べの済むまでの間➡ 335 00:23:46,859 --> 00:23:49,895 どこか奉公して働きたいと思うんですが。 336 00:23:49,895 --> 00:23:53,732 分かりました。 心当たりを聞いてみてあげましょう。 337 00:23:53,732 --> 00:23:57,202 もし できたらの話ですけど…。 338 00:23:57,202 --> 00:23:59,204 何でしょう? 339 00:23:59,204 --> 00:24:03,409 大勢 人の集まる所が ありがたいと存じます。 340 00:24:06,011 --> 00:24:10,749 人の集まる所なら ひょっとして➡ 341 00:24:10,749 --> 00:24:14,620 喜三郎さんの消息 聞けるかもしれませんから。 342 00:24:14,620 --> 00:24:24,997 ♬~ 343 00:24:24,997 --> 00:24:30,202 おくみさんの親御さんは どうしておいでなの? 344 00:24:34,306 --> 00:24:38,510 あたしの両親は早くに死んで➡ 345 00:24:38,510 --> 00:24:41,513 きょうだいも親戚も これといって ありませんから。 346 00:24:44,183 --> 00:24:48,854 喜三郎さんの おっ母さんの 亡くなってしまった今となっては➡ 347 00:24:48,854 --> 00:24:52,191 もう岩槻には 何の未練も…。 348 00:24:52,191 --> 00:25:10,476 ♬~ 349 00:25:16,148 --> 00:25:18,083 おう。 350 00:25:18,083 --> 00:25:20,018 (おもん おきみ)おはようございます。 東吾さん 起きてるかい? 351 00:25:20,018 --> 00:25:22,321 (おきみ)はい ご案内します。 あ… いい。 352 00:25:24,023 --> 00:25:26,859 おくみが 八造の所で働くことに なったんだそうですね。 353 00:25:26,859 --> 00:25:28,861 うん。 もう ゆうべから行ってるよ。 ああ…。 354 00:25:28,861 --> 00:25:30,996 畝様 いらっしゃいまし。 おはようございます。 355 00:25:30,996 --> 00:25:33,699 どうぞ お入りくださいまし。 はあ。 356 00:25:36,802 --> 00:25:39,671 どうも。 朝早くから申し訳ありません。 357 00:25:39,671 --> 00:25:43,542 うちは 宿屋ですもの。 早いのは 驚きゃしませんよ。 358 00:25:43,542 --> 00:25:46,311 ところで 何か つかめたかい? 359 00:25:46,311 --> 00:25:50,682 いえ。 お柳の行方も喜三郎の消息も 今もって とんと分かりません。 360 00:25:50,682 --> 00:25:54,853 が… 伝次が お柳の実家から 妙なことを聞き出してきまして。 361 00:25:54,853 --> 00:25:57,322 おう どんなことだい? 362 00:25:57,322 --> 00:26:01,126 お柳の実家では 娘は 喜三郎と一緒に 上方で暮らしていると➡ 363 00:26:01,126 --> 00:26:03,629 固く信じ込んでいるんだそうです。 364 00:26:03,629 --> 00:26:05,664 お柳から 手紙でも来たっていうのかい? 365 00:26:05,664 --> 00:26:07,800 いいえ。 手紙もなけりゃ➡ 366 00:26:07,800 --> 00:26:10,636 前もって お柳が 言い残していったわけでもない。 367 00:26:10,636 --> 00:26:14,139 能登屋半兵衛が そう言ったというんですよ。 368 00:26:14,139 --> 00:26:17,643 能登屋の半兵衛が? (源三郎)はい。 369 00:26:17,643 --> 00:26:19,578 半兵衛が わざわざ そんなことを言いに➡ 370 00:26:19,578 --> 00:26:21,980 かみさんの実家へ 出かけていったっていうのかい? 371 00:26:21,980 --> 00:26:25,184 はい。 あっ これは どうも。 372 00:26:30,489 --> 00:26:33,392 半兵衛は お柳が駆け落ちしたあと➡ 373 00:26:33,392 --> 00:26:35,994 2度 お柳の実家へ 出かけていっています。 374 00:26:35,994 --> 00:26:38,297 うん。 375 00:26:38,297 --> 00:26:40,833 1度は 去年の暮れ➡ 376 00:26:40,833 --> 00:26:44,169 まあ お柳が駆け落ちしたことを 知らせに行った時に➡ 377 00:26:44,169 --> 00:26:48,173 「こうなった以上 世間体もあることだし もし お柳が➡ 378 00:26:48,173 --> 00:26:50,843 晴れて 喜三郎と夫婦になりたいと 言ってきた時➡ 379 00:26:50,843 --> 00:26:52,778 障りがあるといけないから➡ 380 00:26:52,778 --> 00:26:54,713 まあ とりあえず 離縁にするから 承知してくれ」➡ 381 00:26:54,713 --> 00:26:57,616 そう言ってったんだそうですよ。 うん。 382 00:26:57,616 --> 00:27:01,487 2度目は 今年になってからで 3月ごろだと言っておりました。 383 00:27:01,487 --> 00:27:04,256 お柳が 上方にいると 知らせに行ったのかい? 384 00:27:04,256 --> 00:27:07,159 手紙が来たんだそうです。 385 00:27:07,159 --> 00:27:10,462 手紙が? 386 00:27:10,462 --> 00:27:13,966 「上方に落ち着いて 喜三郎と所帯を持ったから➡ 387 00:27:13,966 --> 00:27:16,869 どうか許してもらいたい」 そう言ってきたから➡ 388 00:27:16,869 --> 00:27:20,739 「もし 実家の方で便りをなさりたいなら 居所をお教えしましょう」。 389 00:27:20,739 --> 00:27:22,674 半兵衛に そう言われて➡ 390 00:27:22,674 --> 00:27:25,143 まあ 実家の親も婿への義理➡ 391 00:27:25,143 --> 00:27:27,646 「あのような不始末をしでかした娘➡ 392 00:27:27,646 --> 00:27:30,149 とうに勘当したつもりでおります。➡ 393 00:27:30,149 --> 00:27:32,818 どこで 野たれ死にしようと 知ったことじゃございません。➡ 394 00:27:32,818 --> 00:27:35,153 便りなんぞ するつもりは ございませんから➡ 395 00:27:35,153 --> 00:27:37,990 居所なぞ 教えていただかなくとも 結構でございます」➡ 396 00:27:37,990 --> 00:27:39,925 …と まあ 断ったんだそうですがね。 397 00:27:39,925 --> 00:27:42,861 それで 半兵衛は 何と言ったというんだい? 398 00:27:42,861 --> 00:27:46,298 半兵衛は 「お怒りは ごもっともでございますが➡ 399 00:27:46,298 --> 00:27:50,168 まあ 自分とて いつか 別の嫁を迎える日が来るかもしれない。➡ 400 00:27:50,168 --> 00:27:54,840 その時には お柳の勘当を 解いてやっていただきたい」と➡ 401 00:27:54,840 --> 00:27:57,676 お柳の親に 頭 下げて 頼み➡ 402 00:27:57,676 --> 00:28:00,646 「上方へは ほとぼりが冷めるまで 江戸へは戻ってこないように➡ 403 00:28:00,646 --> 00:28:04,449 手紙を出しておきましょう」 そう言ったんだそうですがね。 404 00:28:04,449 --> 00:28:09,121 随分 できた人なんですね 半兵衛さんって人。 405 00:28:09,121 --> 00:28:11,123 ええ。 まあ 実家の方でも…➡ 406 00:28:11,123 --> 00:28:15,627 ですから お柳は その…➡ 407 00:28:15,627 --> 00:28:19,631 上方で無事に暮らしていると 固く信じている。 408 00:28:22,134 --> 00:28:24,836 面白えなあ…。 409 00:28:28,006 --> 00:28:30,275 えっ 何が面白いんです? 410 00:28:30,275 --> 00:28:34,980 いやいや… ほかに 何か分かったことは? 411 00:28:34,980 --> 00:28:40,852 ええ。 駆け落ちの 去年の12月15日➡ 412 00:28:40,852 --> 00:28:43,989 おかねは 目黒の不動尊へ 月参りに行っておりますが…。 413 00:28:43,989 --> 00:28:45,924 なるほど。 414 00:28:45,924 --> 00:28:49,795 供は 手代の定吉と小僧が1人 古くからいる女中がついて➡ 415 00:28:49,795 --> 00:28:52,164 昼過ぎに 神田を出たと言っております。 416 00:28:52,164 --> 00:28:56,501 昼過ぎに神田を出たとすると その晩は 目黒泊まりか? 417 00:28:56,501 --> 00:29:00,372 まあ 日帰り できなくありませんが おかねが年寄りってことで➡ 418 00:29:00,372 --> 00:29:04,109 まあ 向こうで 一晩 泊まることに 決めてあったんだそうです。 419 00:29:04,109 --> 00:29:07,112 帰ってきたのは 翌日の夕方。 420 00:29:07,112 --> 00:29:09,615 と すると あの晩➡ 421 00:29:09,615 --> 00:29:12,651 能登屋に残っていたのは…。 422 00:29:12,651 --> 00:29:17,956 半兵衛 お柳 喜三郎の3人。 423 00:29:17,956 --> 00:29:22,628 まあ それと 12になる 小僧が1人ってことになりますが。 424 00:29:22,628 --> 00:29:24,963 その晩のことを… なあ 源さん? 425 00:29:24,963 --> 00:29:27,633 半兵衛に聞いてみたかい? 426 00:29:27,633 --> 00:29:30,135 はい。 427 00:29:30,135 --> 00:29:32,137 何て言った? 半兵衛は。 428 00:29:32,137 --> 00:29:34,973 その夜 半兵衛は 調べることがあって➡ 429 00:29:34,973 --> 00:29:36,908 倉へ入って…。 430 00:29:36,908 --> 00:29:55,160 ♬~ 431 00:29:55,160 --> 00:29:58,497 (源三郎)夜更けて 居間へ戻ってみると お柳の姿がなく➡ 432 00:29:58,497 --> 00:30:02,000 喜三郎もいないのに気が付いたが➡ 433 00:30:02,000 --> 00:30:07,506 2人の仲については 前々から それとなく気付いていたことでもあり➡ 434 00:30:07,506 --> 00:30:10,309 やがて お柳が帰ってきたら よく話し合って➡ 435 00:30:10,309 --> 00:30:13,011 喜三郎と手を切らせ…。 436 00:30:13,011 --> 00:30:15,914 喜三郎には 暇を出そうと考えながら➡ 437 00:30:15,914 --> 00:30:21,186 つい 昼間の疲れで ぐっすり 朝まで 眠ってしまったと言っておりました。 438 00:30:21,186 --> 00:30:26,525 半兵衛のその話 裏付けするとすりゃ 12の小僧が1人…。 439 00:30:26,525 --> 00:30:28,860 これも 一度 眠ってしまえば➡ 440 00:30:28,860 --> 00:30:32,331 めったなことじゃ 目を覚まさない 子供のことでもありますし…。 441 00:30:32,331 --> 00:30:37,169 半兵衛が その気になりゃ お柳と喜三郎を殺すことも…。 442 00:30:37,169 --> 00:30:39,204 えっ!? 443 00:30:39,204 --> 00:30:43,075 できたわけだ…。 444 00:30:43,075 --> 00:30:45,210 源さん…。 445 00:30:45,210 --> 00:30:47,145 はい。 446 00:30:47,145 --> 00:30:51,717 半兵衛が お柳と喜三郎を殺したとして…➡ 447 00:30:51,717 --> 00:30:55,887 死骸は? えっ? どうなったと思う? 448 00:30:55,887 --> 00:30:58,724 それなんですけれどもね➡ 449 00:30:58,724 --> 00:31:03,295 伝次は 「能登屋の倉が怪しい」と 言っておりますが。 450 00:31:03,295 --> 00:31:05,597 倉? 451 00:31:14,506 --> 00:31:16,541 (八造)あっ 旦那 今 呼びに行こうと 思ったとこなんですよ。 452 00:31:16,541 --> 00:31:19,244 どうしたんだ? いや すいません。 ちょっと…。 453 00:31:23,682 --> 00:31:26,518 おくみに 何かあったのか? そうじゃねえんでえ。 454 00:31:26,518 --> 00:31:29,421 能登屋の半兵衛が 来たんですよ。 455 00:31:29,421 --> 00:31:31,923 半兵衛が? (八造)へえ。 456 00:31:46,204 --> 00:31:51,076 これは これは お役人様 能登屋半兵衛でございます。 457 00:31:51,076 --> 00:31:53,345 神田から深川まで 一体 何の用だい? 458 00:31:53,345 --> 00:31:58,884 実は 手前どもの倉に 幽霊が出るとか 死体が埋めてあるとか➡ 459 00:31:58,884 --> 00:32:02,154 妙なうわさが…。 460 00:32:02,154 --> 00:32:06,024 このままでは 奉公人も いつきませんし 商いにも障ります。 461 00:32:06,024 --> 00:32:09,828 それでなくても 気の弱い母が また 何を考えますかもしれませんので➡ 462 00:32:09,828 --> 00:32:14,533 お上のお手で 手前どもの倉を どうか おあらためくださいまし。 463 00:32:18,837 --> 00:32:22,674 半兵衛と申したな。 はい。 464 00:32:22,674 --> 00:32:24,876 まあ 座んなよ。 465 00:32:28,480 --> 00:32:33,185 おめえさんの離別した かみさんが 上方に いるそうだが…。 466 00:32:33,185 --> 00:32:37,689 かみさんから来たって手紙 今 おめえ 持ってるかい? 467 00:32:37,689 --> 00:32:42,194 いえ 手紙は 焼き捨てました。 焼いた? 468 00:32:42,194 --> 00:32:45,697 母の目に触れましてはと存じ➡ 469 00:32:45,697 --> 00:32:49,034 正直のところ 私も悔しゅうございましたので➡ 470 00:32:49,034 --> 00:32:51,536 焼き捨てまして 今は もうございません。 471 00:32:51,536 --> 00:32:56,241 そうかい。 焼いちまったのかい…。 472 00:32:58,310 --> 00:33:01,646 能登屋が ああ言ってるんだ。 倉をあらためてみちゃあ どうだい? 473 00:33:01,646 --> 00:33:03,582 (源三郎)八造! (八造)へい。 474 00:33:03,582 --> 00:33:05,817 (源三郎)すぐに 人数を集めろい。 床下の土も掘り返すことに➡ 475 00:33:05,817 --> 00:33:08,286 なるだろうから 腕っぷしの強えやつを集めてくんなよ。 476 00:33:08,286 --> 00:33:10,222 (八造)今すぐにですかい? 477 00:33:10,222 --> 00:33:12,491 日を置いたんじゃ あらかじめ 掘り起こして➡ 478 00:33:12,491 --> 00:33:16,361 「よそへ埋め返したんだろう」なんて 言いだすやつが出てくるかもしれねえ。 479 00:33:16,361 --> 00:33:18,663 善は急げだ! なあ 半兵衛。 480 00:33:18,663 --> 00:33:20,665 あ… はい。 481 00:33:22,834 --> 00:33:32,844 (やじ馬たちの声) 482 00:33:41,219 --> 00:33:44,222 おう 今すぐ 始めるぜ。 ⚟(一同)へい! 483 00:33:48,960 --> 00:33:51,263 おめえたち こっち 3人…。 484 00:33:53,198 --> 00:33:56,534 (伝次)若旦那! おう…。 おう 伝次。 485 00:33:56,534 --> 00:34:01,273 へい。 おかねの月参り いつもは 半兵衛が一緒だったそうです。 486 00:34:01,273 --> 00:34:04,809 うん。 それが どうして あの晩だけ 行かなかったんだ? 一緒に。 487 00:34:04,809 --> 00:34:06,745 急ぎの用で 店を空けらんないからと➡ 488 00:34:06,745 --> 00:34:10,682 おかねをなだめて 代わりに 定吉をつけてやったんだそうです。 489 00:34:10,682 --> 00:34:14,819 う~ん…。 何です? 490 00:34:14,819 --> 00:34:17,856 いや… ご苦労だった。 一緒に みんなと働いてくれ。 491 00:34:17,856 --> 00:34:19,858 へい! 492 00:34:31,836 --> 00:34:34,139 んっ! ん~… ん~っ! 493 00:34:35,707 --> 00:34:38,009 わっせ わっせ…。 494 00:34:40,545 --> 00:34:42,747 わっせ…。 495 00:34:46,384 --> 00:34:49,688 よしっ…。 496 00:34:49,688 --> 00:34:51,990 よしっ…。 497 00:34:58,396 --> 00:35:00,966 (徳松)何にも出てこねえじゃねえか! どうするんだ!? 498 00:35:00,966 --> 00:35:04,469 うるせえ! おい こっち掘ってみろ こっち! こっちだ こっち! 499 00:35:17,983 --> 00:35:23,488 よいしょ…。 よいしょ…。 500 00:35:35,166 --> 00:35:37,168 よいしょ…。 501 00:35:39,004 --> 00:35:43,308 よいしょ…。 502 00:35:43,308 --> 00:35:46,177 よいしょ…。 503 00:35:46,177 --> 00:35:48,880 帰ろう 帰ろう。 504 00:35:50,849 --> 00:35:54,185 ♬~ 505 00:35:54,185 --> 00:35:56,121 (半兵衛)まことに ご苦労でございました。➡ 506 00:35:56,121 --> 00:35:58,923 ごやっかいをおかけして 相すいません。 507 00:36:03,628 --> 00:36:06,264 (半兵衛)おくみさん…。 508 00:36:06,264 --> 00:36:11,102 お前さんも 許婚に ひどい仕打ちをされて なあ? さぞ 悔しかろう。 509 00:36:11,102 --> 00:36:13,638 どうか 私に免じて 許しておくれ。 510 00:36:13,638 --> 00:36:18,343 これから先 私でできることがあれば 何なりと 力になってあげますよ。 511 00:36:20,512 --> 00:36:22,814 (定吉)おくみちゃん。 512 00:36:22,814 --> 00:36:27,652 定吉! お前には 今日限り 暇をやるから 出ておいき! 513 00:36:27,652 --> 00:36:31,289 あること ないこと 言い触らして とんでもないやつだ。 514 00:36:31,289 --> 00:36:34,492 見ただろう? 倉の中には 何もなかった。➡ 515 00:36:34,492 --> 00:36:38,830 死骸なんぞ 出てきやしなかった。 516 00:36:38,830 --> 00:36:50,308 (泣き声) 517 00:36:50,308 --> 00:37:01,619 ♬~ 518 00:37:01,619 --> 00:37:04,255 何にも出てこなかったんですってね? 519 00:37:04,255 --> 00:37:06,191 出るわけがねえ。 520 00:37:06,191 --> 00:37:08,960 倉の床板 めくった途端に それは分かった。 521 00:37:08,960 --> 00:37:11,796 へえ。 あの土は➡ 522 00:37:11,796 --> 00:37:15,266 ここ1年 掘ったことがないってことは 一目で分かりました。 523 00:37:15,266 --> 00:37:18,803 何にもないと分かってんのに 掘ったんですか? 524 00:37:18,803 --> 00:37:21,272 掘らなきゃならねえ訳があったからな。 525 00:37:21,272 --> 00:37:24,476 あら? どんな訳です? 526 00:37:24,476 --> 00:37:26,678 うん…。 527 00:37:32,350 --> 00:37:34,486 おくみさん どうしてます? 528 00:37:34,486 --> 00:37:36,421 (源三郎)あっ おくみですか! 529 00:37:36,421 --> 00:37:40,358 定吉が暇を出されましたんでね 2人で八造の所にいるんだと思いますよ。 530 00:37:40,358 --> 00:37:45,130 え~? 暇を出されたんですか? 定吉さん。 531 00:37:45,130 --> 00:37:47,065 半兵衛は知っていたんだよ。 532 00:37:47,065 --> 00:37:49,667 定吉が おくみの所へ行って➡ 533 00:37:49,667 --> 00:37:52,704 何やかにや 知らせてやっていたことをな。 534 00:37:52,704 --> 00:37:55,006 さあ 源さん いこう。 おお こりゃ どうも。 535 00:37:55,006 --> 00:37:56,941 ああ どうも…。 536 00:37:56,941 --> 00:37:58,877 お~っとっとっと…。 537 00:37:58,877 --> 00:38:02,580 ん~! (源三郎)ああ…。 538 00:38:16,261 --> 00:38:19,964 あら こんな夜中に どこへ いらっしゃるんです? 539 00:38:19,964 --> 00:38:23,468 帰りは 明け方になるだろう。 風呂 熱くしといてくれ。 540 00:38:38,816 --> 00:38:44,489 火の用心! (拍子木の音) 541 00:38:44,489 --> 00:38:48,693 火の用心! (拍子木の音) 542 00:38:51,362 --> 00:38:53,498 ご苦労さまでございます。 出てった者は? 543 00:38:53,498 --> 00:38:55,533 定吉のあと 女中が 暇を出されて 出ていきました。 544 00:38:55,533 --> 00:38:58,169 やはり つまらねえ うわさをまいた っていう理由らしゅうござんす。 545 00:38:58,169 --> 00:39:00,104 うん…。 546 00:39:00,104 --> 00:39:03,007 通いの番頭と飯炊きが いつものように うちへ帰って。 547 00:39:03,007 --> 00:39:06,244 隠居のおかねが 離れから母屋へ 布団を移して。 548 00:39:06,244 --> 00:39:09,147 女中がいなくなって 離れに1人じゃ寂しいだろうって➡ 549 00:39:09,147 --> 00:39:11,783 孝行者の半兵衛が言いだしたんです。 550 00:39:11,783 --> 00:39:17,455 うん… 相変わらず 親孝行な息子だ。 ハハハ。 551 00:39:17,455 --> 00:39:19,958 えっ!? 何が おかしいんです? 552 00:39:19,958 --> 00:39:22,460 いやいや…。 553 00:39:22,460 --> 00:39:42,647 ♬~ 554 00:39:42,647 --> 00:39:44,682 源さん…。 555 00:39:44,682 --> 00:40:46,210 ♬~ 556 00:40:46,210 --> 00:40:51,349 やっぱり 殺されていたんですか? 557 00:40:51,349 --> 00:40:56,054 お柳も喜三郎も あらかた 骨になって出てきた。 558 00:40:56,054 --> 00:40:58,356 初めから 隠居所の床下に 埋められているって➡ 559 00:40:58,356 --> 00:41:00,291 分かってたんですか? 560 00:41:00,291 --> 00:41:03,661 そいつが分からねえから 倉ん中 掘ったんじゃねえか。 561 00:41:03,661 --> 00:41:07,298 でも 倉ん中には ないって 初めから 分かってたんでしょう? 562 00:41:07,298 --> 00:41:10,201 ありゃ 死骸を埋める場所を 作ってやった。 563 00:41:10,201 --> 00:41:14,172 そのために掘った穴さ。 えっ? 564 00:41:14,172 --> 00:41:17,675 半兵衛が殺して埋めた2人の死骸を 埋め直すために➡ 565 00:41:17,675 --> 00:41:22,313 どこか 掘らなきゃならなかった。 あっ…。 566 00:41:22,313 --> 00:41:24,248 一度 掘り起こして 埋めた場所なら➡ 567 00:41:24,248 --> 00:41:26,684 もう お役人に 調べられる気遣いはねえ。 568 00:41:26,684 --> 00:41:28,619 しかも 明日になりゃ 大工が入って➡ 569 00:41:28,619 --> 00:41:31,189 倉の床板 張り直すことになっていたから➡ 570 00:41:31,189 --> 00:41:35,026 死骸を掘り出して 埋め直すのは 今夜だ。 571 00:41:35,026 --> 00:41:40,698 まんまと 半兵衛のやつ 引っ掛かってきてくれた。 572 00:41:40,698 --> 00:41:45,570 でも ねえ 死骸が 隠居所の床下に 埋められていたものなら➡ 573 00:41:45,570 --> 00:41:49,874 なぜ 倉の中に入ったら 嫌~な気分がしたんでしょうね? 574 00:41:51,709 --> 00:41:54,345 あの倉ん中で 殺したんだ。 575 00:41:54,345 --> 00:41:56,714 えっ…。 576 00:41:56,714 --> 00:41:58,716 (喜三郎)おかみさん!? 577 00:42:02,520 --> 00:42:04,722 (喜三郎)おかみさん! 578 00:42:06,391 --> 00:42:08,826 お前も一緒に 殺してやる…。 579 00:42:08,826 --> 00:42:11,162 だ… 旦那様! 580 00:42:11,162 --> 00:42:14,665 喜三郎! お柳は…➡ 581 00:42:14,665 --> 00:42:18,836 お柳は お前と一緒に どこへでもついてくと言った。 582 00:42:18,836 --> 00:42:23,508 2人仲よく 地獄へ落ちろ!➡ 583 00:42:23,508 --> 00:42:25,710 あ~! (喜三郎)うっ…。 584 00:42:29,180 --> 00:42:32,016 (喜三郎)うっ… あっ! 585 00:42:32,016 --> 00:42:33,951 うっ…。➡ 586 00:42:33,951 --> 00:42:37,522 あっ! 587 00:42:37,522 --> 00:42:39,724 (半兵衛)はあ はあ…。 588 00:42:42,326 --> 00:42:47,198 半兵衛はな おふくろに邪魔されて➡ 589 00:42:47,198 --> 00:42:50,068 てめえの女房のお柳を➡ 590 00:42:50,068 --> 00:42:54,872 しみじみと 抱いてやったことは なかったと言ってたそうだよ。 591 00:42:57,341 --> 00:43:00,978 目黒へ 月参りに行く時も おかねは半兵衛を連れて➡ 592 00:43:00,978 --> 00:43:04,015 夫婦二人っきりにはさせなかった。 593 00:43:04,015 --> 00:43:08,286 だから あの晩 夫婦になって 5年たって➡ 594 00:43:08,286 --> 00:43:10,655 あの晩 初めて➡ 595 00:43:10,655 --> 00:43:16,527 半兵衛は お柳を ゆっくりと抱いてやったんだと➡ 596 00:43:16,527 --> 00:43:19,363 源さんに言っていたそうだよ。 597 00:43:19,363 --> 00:44:01,472 ♬~ 598 00:44:01,472 --> 00:44:05,810 お柳 なあ やり直そう。 599 00:44:05,810 --> 00:44:10,114 もう一度 本当の夫婦になって… なっ? 600 00:44:13,151 --> 00:44:15,486 嫌なのか? えっ? 601 00:44:15,486 --> 00:44:20,992 お前 私と一緒に やり直す気には なれないというのかい? 602 00:44:20,992 --> 00:44:27,164 (お柳)喜三郎に ついていきます。 603 00:44:27,164 --> 00:44:29,100 何!? 604 00:44:29,100 --> 00:44:33,304 私 やっぱり 喜三郎と…。 605 00:44:33,304 --> 00:44:52,323 ♬~ 606 00:44:52,323 --> 00:44:55,226 (お柳)あっ ああ…。 607 00:44:55,226 --> 00:45:10,641 ♬~ 608 00:45:10,641 --> 00:45:15,146 半兵衛はな お柳を殺す前に➡ 609 00:45:15,146 --> 00:45:19,650 初めて しみじみと お柳を抱いて➡ 610 00:45:19,650 --> 00:45:26,157 「夫婦とは こういうものかと思った」と 泣いていたよ。 611 00:45:28,826 --> 00:45:30,828 やめてください。 612 00:45:33,698 --> 00:45:37,301 もう… 嫌! 613 00:45:37,301 --> 00:45:55,486 ♬~ 614 00:45:57,521 --> 00:46:00,024 東吾さん。 ⚟おう。 615 00:46:04,328 --> 00:46:07,632 おう どうした? 寝なかったのか 源さん。 616 00:46:07,632 --> 00:46:09,967 (源三郎)いや 寝てもいられません。 617 00:46:09,967 --> 00:46:14,472 半兵衛を しょっぴいていったあと 隠居の おかねが 首をくくって…。 618 00:46:14,472 --> 00:46:16,407 何!? 619 00:46:16,407 --> 00:46:18,342 本当ですか? 620 00:46:18,342 --> 00:46:23,981 ええ。 今度は しくじりもせず 死にました。 621 00:46:23,981 --> 00:46:26,017 おかねは もしかしたら➡ 622 00:46:26,017 --> 00:46:29,654 伜の半兵衛が 2人を殺したんじゃねえかと…。 623 00:46:29,654 --> 00:46:32,990 知ってたんですか!? どうなんだい? 源さん。 624 00:46:32,990 --> 00:46:36,494 ええ。 おかねが残した書き置きに そう 書いてありました。 625 00:46:36,494 --> 00:46:40,665 「うすうす 気が付いていた」と。 626 00:46:40,665 --> 00:46:43,300 だから 自分が首をくくって 死んで➡ 627 00:46:43,300 --> 00:46:46,170 姑のために 嫁が駆け落ちして➡ 628 00:46:46,170 --> 00:46:50,174 姑が それを苦にして 死んだと言えば➡ 629 00:46:50,174 --> 00:46:54,845 まあ 半兵衛は 同情こそされ 疑われることはないだろうと➡ 630 00:46:54,845 --> 00:46:57,682 るいさんが助けた あん時も…。 631 00:46:57,682 --> 00:47:02,453 我が身を殺してまで 息子の疑い 解いてやろうと? 632 00:47:02,453 --> 00:47:07,325 生きて 半兵衛のあとを 葬ってやれと言っても➡ 633 00:47:07,325 --> 00:47:10,795 おかねには 無理だったかもしれねえなあ。 634 00:47:10,795 --> 00:47:13,698 (源三郎)それと…。 んっ? 635 00:47:13,698 --> 00:47:17,668 半兵衛が隠居所の床下に お柳と喜三郎の死骸を埋めたと➡ 636 00:47:17,668 --> 00:47:20,471 おかねが知って 悟ったそうですよ。 637 00:47:20,471 --> 00:47:23,174 「息子は 自分を恨んでいたんだ」って。 638 00:47:25,810 --> 00:47:28,479 (源三郎) それが こたえて 死ぬ気になった。➡ 639 00:47:28,479 --> 00:47:31,515 「死んで あの世で お柳と喜三郎に わびを言うつもりだ」➡ 640 00:47:31,515 --> 00:47:35,352 書き置きに そう書いてありましたね。 641 00:47:35,352 --> 00:47:40,157 つらい話だ。 親も子も…。 642 00:47:45,896 --> 00:47:48,666 (源三郎)あっ… あの おくみですがね。 643 00:47:48,666 --> 00:47:51,001 えっ おくみちゃん? 644 00:47:51,001 --> 00:47:55,840 ええ。 あの… 喜三郎の骨 もらいたいと 願い出てきました。 645 00:47:55,840 --> 00:47:59,510 何でも あの 岩槻にある母親の墓に 一緒に埋めてやりたいんだそうです。 646 00:47:59,510 --> 00:48:01,779 おう それじゃあ 兄上に言って 願いの かなうように…。 647 00:48:01,779 --> 00:48:04,615 (源三郎)なに… もう お許しが出ました。 648 00:48:04,615 --> 00:48:08,252 そうかい。 そりゃ…。 よかった。うん。 649 00:48:08,252 --> 00:48:13,090 そうかい そうかい。 ねっ! ウフフ! 650 00:48:13,090 --> 00:48:17,261 あ… あっ いや あの 朝早くから どうも失礼しました。 651 00:48:17,261 --> 00:48:20,631 あの あたしも これから… 帰って ちょっと一寝入りしますから➡ 652 00:48:20,631 --> 00:48:22,967 東吾さんも ねっ… あの どうぞ 休んでください。 653 00:48:22,967 --> 00:48:25,469 ちぇっ 何を言いやがる! 今更 寝られるかい…。 654 00:48:25,469 --> 00:48:27,405 なあ? 655 00:48:27,405 --> 00:48:30,141 ウフフ…。 ん? 656 00:48:30,141 --> 00:48:41,652 ♬~ 657 00:48:41,652 --> 00:48:43,854 (くしゃみ)