1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:09,329 ♬~ 3 00:02:14,301 --> 00:02:19,106 (お吉)えっ 50両!? (鉄五郎)50両 大金でさあ。 4 00:02:20,841 --> 00:02:23,677 (鉄五郎)ああ…。 店から ふくさへ包んで➡ 5 00:02:23,677 --> 00:02:27,514 奥へ持って入って 違い棚の上へ ちょいと載っけて➡ 6 00:02:27,514 --> 00:02:30,417 手水へ行ったって 旦那は言うんですがね➡ 7 00:02:30,417 --> 00:02:35,022 旦那が手水場から帰ってきたら その50両が消えてたって…。 8 00:02:35,022 --> 00:02:36,957 (お吉)まあ~ まあ まあ…。 ねえ。 9 00:02:36,957 --> 00:02:40,193 女中は青くなって飛んでくるわ 番頭さんが来るわ➡ 10 00:02:40,193 --> 00:02:42,129 もう大騒ぎになりやしたよ。 11 00:02:42,129 --> 00:02:44,865 で 親方 その時 そこにいらしたんですか? 12 00:02:44,865 --> 00:02:47,768 いたんですよ 畳替えで。 13 00:02:47,768 --> 00:02:50,537 いや あっしんとこの 職人ばっかりじゃなくてね➡ 14 00:02:50,537 --> 00:02:53,206 障子も襖も いっぺんに張り替えちゃおうってんで➡ 15 00:02:53,206 --> 00:02:57,077 経師屋の職人は 大勢 来てるしね もう。 16 00:02:57,077 --> 00:02:59,980 となると ふだん そこに めったにいない人が➡ 17 00:02:59,980 --> 00:03:02,816 うたぐられる っていうことになるじゃありませんか。 18 00:03:02,816 --> 00:03:05,652 そうなんでさあ。で 誰が盗ったか 分かったんですか? 19 00:03:05,652 --> 00:03:07,587 ええ それがねえ➡ 20 00:03:07,587 --> 00:03:11,525 誰も 盗った者が いねえんですよ。ええっ!? 21 00:03:11,525 --> 00:03:14,361 (鉄五郎)…ったらね 旦那 すぐ謝っちゃいましたよ。➡ 22 00:03:14,361 --> 00:03:20,167 「私の思い違いだ。 勘違いだ。 すまねえ」 ってな。 23 00:03:20,167 --> 00:03:24,037 冗談じゃない。 10両 盗みゃ 首が飛ぶってえのに➡ 24 00:03:24,037 --> 00:03:27,507 50両 盗られて 思い違いで済まされますか。 25 00:03:27,507 --> 00:03:31,178 その場にいたやつは みんな 嫌~な気持ちになっちゃってね。 26 00:03:31,178 --> 00:03:33,680 そりゃそうでしょうよ。 27 00:03:33,680 --> 00:03:38,518 いや その金が間違いなく出てきた っていうんなら よろしゅうござんすよ。 28 00:03:38,518 --> 00:03:42,189 えっ 思い違いで 別の所から 出てきたんじゃないんですか? 29 00:03:42,189 --> 00:03:44,691 なら いいんですよ。 思い違いでも…。 30 00:03:44,691 --> 00:03:48,328 出てもこないお金を 思い違いで済ましちまったんですか? 31 00:03:48,328 --> 00:03:50,263 おかしいじゃないの。 32 00:03:50,263 --> 00:03:53,033 いくら 大店大家で お金がうなってるか知れないけど➡ 33 00:03:53,033 --> 00:03:56,737 この暮れに来て 50両…。 ねえ。 34 00:03:59,806 --> 00:04:01,808 (吹きかける音) 35 00:04:03,477 --> 00:04:06,279 (るい)一体 どこのおうちの話なの? 36 00:04:06,279 --> 00:04:11,118 馬喰町四丁目の茶問屋 東竜軒って お店での話だそうですよ。 37 00:04:11,118 --> 00:04:15,288 奉公人や出入りの職人たちから 罪人を出したくないと思って➡ 38 00:04:15,288 --> 00:04:17,824 ねっ 旦那が情け深い人で。 39 00:04:17,824 --> 00:04:23,163 (お吉)いくら情け深い旦那だって お嬢さん 50両ですよ? 40 00:04:23,163 --> 00:04:26,500 う~ん 東竜軒の旦那には➡ 41 00:04:26,500 --> 00:04:29,402 お金を盗った人の見当が ついてたんじゃないかな? 42 00:04:29,402 --> 00:04:31,371 えっ? 43 00:04:31,371 --> 00:04:35,675 だから その場は 思い違いで収めといて 後で旦那が…。 44 00:04:35,675 --> 00:04:37,711 なるほど! 45 00:04:37,711 --> 00:04:41,548 盗った人は 職人さんじゃなくて うちの人。 46 00:04:41,548 --> 00:04:44,851 だから 店の恥を外に漏らすまいと考えて。 ねっ? 47 00:04:44,851 --> 00:04:49,189 でも 経師屋や畳屋の職人が 大勢 入ってましたからねえ。 48 00:04:49,189 --> 00:04:52,092 きっと 噂になりますよ。 49 00:04:52,092 --> 00:04:56,062 お吉さん よそから知れんのは しかたないけど➡ 50 00:04:56,062 --> 00:04:59,533 お吉さんが人様に言ったりしないように。 お願いよ。 51 00:04:59,533 --> 00:05:04,538 あたしは言いやしませんよ。 お嬢様だから申し上げたんですよ。 52 00:05:06,139 --> 00:05:09,976 お嬢さん あんころ 召し上がりませんか?➡ 53 00:05:09,976 --> 00:05:12,012 あんころ。 お吉さん➡ 54 00:05:12,012 --> 00:05:15,482 また おなかを痛くするようなもの もらってきたんじゃないでしょうね。 55 00:05:15,482 --> 00:05:19,152 もらったんじゃありませんよ。 買ったんですよ これは。 56 00:05:19,152 --> 00:05:21,154 アハハハ… なら いいけど。 57 00:05:23,156 --> 00:05:26,026 どこで そんなもの買ってきたの? (お吉)浅草です。➡ 58 00:05:26,026 --> 00:05:28,662 伝法院の近くにね よく行くお店がありましてね➡ 59 00:05:28,662 --> 00:05:30,597 おいしいんですよ ここの。 60 00:05:30,597 --> 00:05:33,834 ほら! まあ おいしそう! 61 00:05:33,834 --> 00:05:37,304 お嬢さん ここの甘いもの屋さん なんですけどね➡ 62 00:05:37,304 --> 00:05:39,839 一体 誰がやってると お思いになります? 63 00:05:39,839 --> 00:05:41,875 えっ? 誰って…? 64 00:05:41,875 --> 00:05:46,179 畳屋のね 鉄五郎親方の娘さんで… 「娘さん」っていったって➡ 65 00:05:46,179 --> 00:05:49,082 もう とうに厄は過ぎて 35~36なんですけど➡ 66 00:05:49,082 --> 00:05:51,051 「おたつさん」って人なんですよ。 67 00:05:51,051 --> 00:05:53,320 鉄さんに そんな娘さんがいたの? 68 00:05:53,320 --> 00:05:58,858 その おたつさんって人ね 以前 馬喰町の東竜軒で奉公してて…。 69 00:05:58,858 --> 00:06:01,127 ええっ!? (お吉)10年前に➡ 70 00:06:01,127 --> 00:06:04,631 その東竜軒の旦那で 市右衛門っていう人のお手がついて➡ 71 00:06:04,631 --> 00:06:08,268 それで その旦那がお金を出して 今のお店を始めたんです。 72 00:06:08,268 --> 00:06:10,971 まあ…。 (お吉)驚いたでしょう? 73 00:06:10,971 --> 00:06:15,642 だからなのね 堅い鉄っつぁん そんな訳合いあるもんだから➡ 74 00:06:15,642 --> 00:06:18,278 娘さんのこと 私に言いもしなかった。 75 00:06:18,278 --> 00:06:21,982 それでね お嬢さん…。 まだ何かあるっていうの? 76 00:06:21,982 --> 00:06:25,285 あるんですよ。 例の盗まれた 50両➡ 77 00:06:25,285 --> 00:06:29,489 あれを盗ったのはね その東竜軒のお嬢さんで➡ 78 00:06:29,489 --> 00:06:32,826 「おひでさん」の仕業だっていう話ですよ。 79 00:06:32,826 --> 00:06:34,761 それも おたつさんに聞いてきたの? 80 00:06:34,761 --> 00:06:37,697 ええ 東竜軒のことならね➡ 81 00:06:37,697 --> 00:06:41,534 おたつさんには 何でも筒抜けですからね。 82 00:06:41,534 --> 00:06:46,006 それが聞きたくて おたつさんの所へ あんころを買いに出かけたのね。 83 00:06:46,006 --> 00:06:49,309 フフフフッ…。 アッハハ… あきれた人。 84 00:06:56,182 --> 00:06:58,118 (おきみ)寒い。 85 00:06:58,118 --> 00:07:01,788 (東吾)大店の一人娘が 親の金 盗んだってのは どういう訳だ? 86 00:07:01,788 --> 00:07:06,626 金に不自由しているわけでもあるまい。 (お吉)そこなんですよ。 87 00:07:06,626 --> 00:07:11,498 悪い男がね ついてるんですって。 おお~ どんな男だい? 88 00:07:11,498 --> 00:07:15,135 柳橋の舟宿でね 和泉屋って店の船頭なんですけど➡ 89 00:07:15,135 --> 00:07:18,138 新三って男につかまって 親の意見も どこ吹く風➡ 90 00:07:18,138 --> 00:07:21,007 東竜軒でも ほとほと手を焼いてるって話ですよ。 91 00:07:21,007 --> 00:07:25,278 出来の悪い娘を持つと 親は苦労が絶えねえなあ。 92 00:07:25,278 --> 00:07:28,148 そうですよねえ…。 ⚟(おもん)お吉さん➡ 93 00:07:28,148 --> 00:07:30,483 お吉さん。 はい…。 94 00:07:30,483 --> 00:07:34,154 (おもん)すいませんが ちょっと。 (お吉)う~ん…。 95 00:07:34,154 --> 00:07:36,089 すいません ちょっと失礼します。➡ 96 00:07:36,089 --> 00:07:39,025 何なんだい? いちいち いちいち…。 97 00:07:39,025 --> 00:07:41,294 (笑い声) 98 00:07:41,294 --> 00:07:44,664 暮れで忙しいっていうのに お吉さんったら➡ 99 00:07:44,664 --> 00:07:48,001 わざわざ 浅草まで あんころ餅を買いに行ったんですよ。 100 00:07:48,001 --> 00:07:50,303 話が聞きたいばっかりに…。 101 00:07:50,303 --> 00:07:53,173 八丁堀で育ったやつは みんな そうだい。 102 00:07:53,173 --> 00:07:57,844 俺だって 頼まれもしねえのに いつも源さんと つるんでさ。 アハハハ。 103 00:07:57,844 --> 00:08:01,614 ここに じっと 落ち着いていてくださればいいのに…。 104 00:08:01,614 --> 00:08:04,317 おっ 飲むか? はい。 105 00:08:19,032 --> 00:08:22,002 ⚟(悲鳴) (伝次)旦那! 106 00:08:22,002 --> 00:08:24,003 (新三)あ~… 旦那 助けてくだせえよ! 107 00:08:25,839 --> 00:08:27,841 (新三)あ~…! 108 00:08:27,841 --> 00:08:29,976 (市右衛門)どいてください! 109 00:08:29,976 --> 00:08:31,911 (源三郎)落ち着け! (市右衛門)うわ~➡ 110 00:08:31,911 --> 00:08:33,847 痛い… 何をなさいますか! 111 00:08:33,847 --> 00:08:36,850 (源三郎)伝次 そいつも連れていけ。 (伝次)へい!➡ 112 00:08:36,850 --> 00:08:38,852 おう 来るんだ。 いや…。 113 00:08:41,488 --> 00:08:43,423 (徳松)どいた! どいた! どいた! どいた! ほら! 114 00:08:43,423 --> 00:08:45,425 いいから いいから。 115 00:08:52,999 --> 00:08:55,835 一体 どうしたってんだい。 えっ? 116 00:08:55,835 --> 00:09:00,640 分別盛りの旦那が 昼日中から 脇差しなんぞ 持ち出して…。 117 00:09:02,242 --> 00:09:06,946 申し訳ございません。 お手数をかけまして まことに…。 118 00:09:06,946 --> 00:09:08,982 まず 名前から聞こうか。 119 00:09:08,982 --> 00:09:14,120 はい。 手前は 馬喰町四丁目…➡ 120 00:09:14,120 --> 00:09:17,624 茶問屋 東竜軒の主人で 市右衛門と申します。 121 00:09:17,624 --> 00:09:21,261 東竜軒の主人かい? はい。 122 00:09:21,261 --> 00:09:23,630 それだけの大店の主が➡ 123 00:09:23,630 --> 00:09:26,466 年から言ったって 人には意見もしようってお人が➡ 124 00:09:26,466 --> 00:09:28,501 何を血迷ったんだ。 125 00:09:28,501 --> 00:09:32,806 こいつは 悪党でございます!➡ 126 00:09:32,806 --> 00:09:35,842 娘をだまし たぶらかし 金を盗み➡ 127 00:09:35,842 --> 00:09:39,145 殺しても飽き足らない 極悪人でございます! 128 00:09:39,145 --> 00:09:42,816 よせやい… もう さっきから 何べんも言ってるだろう。 129 00:09:42,816 --> 00:09:45,852 おいら ただの一度でも おひでちゃんに 金くれなんて言った覚えはねえの。 130 00:09:45,852 --> 00:09:50,156 言うな 悪党! (伝次)いけません! いけません…! 131 00:09:50,156 --> 00:09:52,091 ⚟(おひで)どいてください。 どいて…。 132 00:09:52,091 --> 00:09:54,027 ⚟(徳松)こら! 寄るんじゃねえって 言ってんだろうが こら!➡ 133 00:09:54,027 --> 00:09:56,029 寄るんじゃねえよ こら! (おひで)お願いです! 134 00:09:56,029 --> 00:09:59,165 新さんに… 新さんに会わしてください。 お願いです。 135 00:09:59,165 --> 00:10:02,168 おい 徳松! 入れてやれ。 136 00:10:02,168 --> 00:10:05,672 新さん! 137 00:10:05,672 --> 00:10:07,607 おひで! 138 00:10:07,607 --> 00:10:11,311 お父っつぁん… お父っつぁん 新さんに何したんですか? 139 00:10:11,311 --> 00:10:13,246 えっ? 140 00:10:13,246 --> 00:10:15,181 新さんに けがでもさしたら➡ 141 00:10:15,181 --> 00:10:18,384 私 お父っつぁんでも許しませんよ! 142 00:10:24,891 --> 00:10:29,195 娘なんか持つもんじゃねえ… つくづく そう思いましたね。 143 00:10:29,195 --> 00:10:34,200 アハハハ… 女房もいねえくせして 一丁前の口をきくぜ。 144 00:10:35,869 --> 00:10:40,540 だってね 血を分けた実の娘に そんなことを言われたら➡ 145 00:10:40,540 --> 00:10:44,878 東竜軒のご主人も どんなにか おつらかったでしょうよねえ。 146 00:10:44,878 --> 00:10:47,347 つらいにも 悔しいにも➡ 147 00:10:47,347 --> 00:10:51,718 市右衛門は ものも言えず 男泣きに泣いてましたよ。 148 00:10:51,718 --> 00:10:54,554 新三の方は どうしたい? 149 00:10:54,554 --> 00:10:56,489 新三ですか➡ 150 00:10:56,489 --> 00:11:01,661 これが もう 憎らしいぐらい 落ち着いてましてね。 151 00:11:01,661 --> 00:11:04,497 ほら 帰ろう。 (久次郎)さあ 旦那様。 152 00:11:04,497 --> 00:11:06,533 うん…。 153 00:11:06,533 --> 00:11:08,835 (久次郎)お嬢さんも ご一緒に帰りましょう。 154 00:11:08,835 --> 00:11:11,871 いや! (久次郎)お嬢さん…。 155 00:11:11,871 --> 00:11:14,874 お父っつぁんとなんか 帰りません。 156 00:11:19,312 --> 00:11:22,849 おひでちゃん おめえが ここで ぎゃあつくわめいてたんじゃ➡ 157 00:11:22,849 --> 00:11:24,784 俺の立場が悪くなる。 今日のところは➡ 158 00:11:24,784 --> 00:11:26,786 おとなしく お父っつぁんと一緒に うち帰ってくんな。 159 00:11:29,622 --> 00:11:33,192 なっ 帰るんだ。 160 00:11:33,192 --> 00:11:35,194 はい。 161 00:11:42,202 --> 00:11:45,205 (源三郎)親には あんなに逆らっていたくせに➡ 162 00:11:45,205 --> 00:11:48,708 新三に言われたら ああも素直にできるものかと➡ 163 00:11:48,708 --> 00:11:51,611 驚くほど素直にね 帰っていきましたよ。 164 00:11:51,611 --> 00:11:57,050 アハハハ… 女ってものは ほれた男にゃ弱えからな。 165 00:11:57,050 --> 00:12:00,653 新三というのは そんなに悪いやつなんですか? 166 00:12:00,653 --> 00:12:04,490 さあ… 和泉屋へ行って 聞いてみた限りでは➡ 167 00:12:04,490 --> 00:12:07,527 悪いやつとは言えねえんですよね。 168 00:12:07,527 --> 00:12:12,832 いや その 酒もやらず 客の評判は むしろ いいくらいなんだ。 169 00:12:12,832 --> 00:12:15,735 ただ どうも 女癖がよろしくない。➡ 170 00:12:15,735 --> 00:12:18,171 あちこちに 色女がいるらしいし➡ 171 00:12:18,171 --> 00:12:23,042 それに どういうわけですかね 女の方で 新三に のぼせてくるんだそうですよ。 172 00:12:23,042 --> 00:12:25,678 羨ましい野郎だな…。 173 00:12:25,678 --> 00:12:28,715 男から見ると どうってやつじゃねえんですがねえ。 174 00:12:28,715 --> 00:12:32,552 あの あんな頼りない とぼけたやつが いいんでしょうか? 175 00:12:32,552 --> 00:12:36,689 女の人には 案外 そういうのが いいのかもしれませんね。 176 00:12:36,689 --> 00:12:39,192 俺みてえにか? フフフフ…。 177 00:12:39,192 --> 00:12:42,028 あっ… そういえば 似てますな。 178 00:12:42,028 --> 00:12:43,963 何? 179 00:12:43,963 --> 00:12:47,200 東吾さんと どこか一脈通じるものが ありますよ あの新三って男。 180 00:12:47,200 --> 00:12:50,536 よしてくれ 冗談じゃねえよ。 ウフフフッ。 181 00:12:50,536 --> 00:12:53,439 源さんにあっちゃ かなわねえや…。 182 00:12:53,439 --> 00:12:57,210 しかし 親にしてみりゃ たまりますまい。 183 00:12:57,210 --> 00:13:03,816 大事に育てた娘 あんな女たらしに ほれて 親の金まで盗んで貢ぐ。 184 00:13:03,816 --> 00:13:06,853 親の言うことには盾ついて 言うことを聞かない。➡ 185 00:13:06,853 --> 00:13:08,988 みすみす だまされていると 分かっていながら➡ 186 00:13:08,988 --> 00:13:11,658 どうすることもできない。 187 00:13:11,658 --> 00:13:17,463 父親が か~っとして 脇差し 振り回す気持ち➡ 188 00:13:17,463 --> 00:13:19,465 無理とは言えませんな。 189 00:13:35,682 --> 00:13:37,617 なあ おたつ。 190 00:13:37,617 --> 00:13:40,553 (おたつ)えっ… な~に? お父っつぁん。 191 00:13:40,553 --> 00:13:46,025 おめえ 何か嫌なことあったら いつでも うちへ帰ってきていいんだぞ。 192 00:13:46,025 --> 00:13:50,330 おめえにはよ 俺って親がいるんだからな➡ 193 00:13:50,330 --> 00:13:53,533 無理に辛抱して おめえ ここに いねえでも➡ 194 00:13:53,533 --> 00:13:57,704 遠慮のいらねえ 親のうちが ちゃ~んとあるんだからよ。 195 00:13:57,704 --> 00:14:00,506 藪から棒に 一体 何の話? 196 00:14:02,141 --> 00:14:05,978 嫌なことなんて 別に ありゃしないよ。 197 00:14:05,978 --> 00:14:10,149 いや… おう そんならいいんだ。 198 00:14:10,149 --> 00:14:17,657 お前が幸せならよ お父っつぁん 何にも言うことはねえんだが…。 いや…。 199 00:14:17,657 --> 00:14:20,660 (戸が開く音) あらっ。 200 00:14:24,530 --> 00:14:27,834 (おたつ)お帰りなさい。 お父っつぁんが来てるんですよ。 201 00:14:27,834 --> 00:14:30,670 ああ そう。 じゃあ 1本つけておくれ。 202 00:14:30,670 --> 00:14:33,473 (おたつ)はい。 (市右衛門)一緒に飲もうじゃない…。 203 00:14:35,842 --> 00:14:38,745 (おたつ)お父っつぁん 旦那が ああ おっしゃってるんだから➡ 204 00:14:38,745 --> 00:14:41,714 さあ こっちへ おいでな。 どうも…。 205 00:14:41,714 --> 00:14:45,017 こっちへ来て さあ 一緒に飲んでおくれ。 206 00:14:45,017 --> 00:14:48,855 でないと 胸がむしゃくしゃして たまらないんだ。 207 00:14:48,855 --> 00:14:51,524 藪から棒に 一体 どうしたんです? 208 00:14:51,524 --> 00:14:55,394 どうもこうも あるもんか。 あの 新三の悪党め! 209 00:14:55,394 --> 00:14:59,198 人の娘をおもちゃにして 平気な面していやがった。➡ 210 00:14:59,198 --> 00:15:04,637 あいつには 人の親の気持ちっていうのが まるで分かってないんだ。 211 00:15:04,637 --> 00:15:10,443 あんなやつに ばかにされて 黙って… ねえ いられますか? 212 00:15:10,443 --> 00:15:12,378 なあ…。 213 00:15:12,378 --> 00:15:15,681 おい おたつ… おい お父っつぁん いないよ。 214 00:15:17,350 --> 00:15:20,486 お父っつぁん…。 215 00:15:20,486 --> 00:15:24,690 どうしたのかしら? 妙なお父っつぁん。 216 00:15:28,227 --> 00:15:32,498 根っからの職人で 変わってんですよ。 217 00:15:32,498 --> 00:15:35,401 ああ せっかく 酒の相手をしてもらおうと思ったのに…。 218 00:15:35,401 --> 00:15:38,304 私が お相手しますから。 ねっ。 (市右衛門)じゃあ➡ 219 00:15:38,304 --> 00:15:41,507 大きいのを持ってきてくれ。 いいんですか? 220 00:15:41,507 --> 00:15:44,177 飲まずにゃいられないよ。 221 00:15:44,177 --> 00:15:53,519 ♬~ 222 00:15:53,519 --> 00:15:55,555 ⚟(おたつ)おひでさんだって➡ 223 00:15:55,555 --> 00:15:59,392 おっ母さんが死んで 相談する相手もいないから。 224 00:15:59,392 --> 00:16:02,228 ⚟(市右衛門)相談なら 私にすればいいだろう? 225 00:16:02,228 --> 00:16:05,932 ⚟(おたつ)男親には言えないことだって ありますよ。 226 00:16:10,269 --> 00:16:14,473 おひでも年頃… そう思やこそ➡ 227 00:16:14,473 --> 00:16:18,811 女房が死んだ時も お前をうちに入れてやらず➡ 228 00:16:18,811 --> 00:16:20,746 ここで辛抱してもらったんだ。 229 00:16:20,746 --> 00:16:25,284 あたしのことなら… いいんですよ。 230 00:16:25,284 --> 00:16:56,182 ♬~ 231 00:16:56,182 --> 00:16:59,685 (鳥の鳴き声) 232 00:17:02,622 --> 00:17:05,458 源さん 妙なことを言いやがったな…。 233 00:17:05,458 --> 00:17:08,127 えっ… 妙なことって? 234 00:17:08,127 --> 00:17:11,030 俺に似てると そう言ったろ? 235 00:17:11,030 --> 00:17:14,800 ああ… 女たらしの新三がね。 236 00:17:14,800 --> 00:17:17,503 フフフ… 気になりますか? 237 00:17:20,473 --> 00:17:22,475 一度 見てみてえな。 238 00:17:27,146 --> 00:17:32,485 おい ちょいと おせっかいな気もするが 柳橋まで行ってみねえか? 239 00:17:32,485 --> 00:17:34,487 はい。 240 00:17:47,667 --> 00:17:50,570 ごめんよ。 ⚟(女将)いらっしゃいまし。 241 00:17:50,570 --> 00:17:56,175 大川端までやってくれ。 船頭は 新三ってのがいるだろ。 242 00:17:56,175 --> 00:17:58,477 (女将)はい。 少々 お待ちを。 うむ。 243 00:18:05,985 --> 00:18:08,120 (新三)お待たせ申しました。 244 00:18:08,120 --> 00:18:10,823 あの すぐ支度しますから もうちょっと ここで お待ちを。 245 00:18:14,994 --> 00:18:18,130 別に どうって人じゃありませんよねえ。 246 00:18:18,130 --> 00:18:20,967 ああ… 俺の方が ずっと男前だ。 247 00:18:20,967 --> 00:18:22,902 ウフッ…。 248 00:18:22,902 --> 00:18:27,907 (カラスの鳴き声) 249 00:18:36,515 --> 00:18:38,517 よし…。 250 00:18:41,153 --> 00:18:45,491 (新三)旦那 お話があるってんなら この辺で どうですか? 251 00:18:45,491 --> 00:18:47,493 うむ…。 252 00:18:51,998 --> 00:18:54,900 さすがに うまい場所を知っているな。 253 00:18:54,900 --> 00:19:00,206 東竜軒の娘と あいびきする時も ここへ舟を入れるのか? 254 00:19:16,188 --> 00:19:20,059 八丁堀の旦那とは 気が付かなかった…。 255 00:19:20,059 --> 00:19:23,462 おっと 俺は そんな おっかねえ人じゃねえから 安心しな。 256 00:19:23,462 --> 00:19:27,800 もっとも この間 おめえが やっかいになった畝の旦那は友達だがな。 257 00:19:27,800 --> 00:19:31,137 あっ… さいですか。 258 00:19:31,137 --> 00:19:33,139 (煙管をたたきつける音) 259 00:19:35,808 --> 00:19:40,679 で 旦那 やっぱり 話ってのは おひでちゃんのことですか? 260 00:19:40,679 --> 00:19:45,151 女にモテるのは結構だが この年の瀬に来て 50両ってのは➡ 261 00:19:45,151 --> 00:19:48,654 なあ おい ちょいと派手すぎたな。 262 00:19:48,654 --> 00:19:52,491 俺もね あんなに負けが込んでるとは 思わなかったんですよ。 263 00:19:52,491 --> 00:19:54,427 博打か? 264 00:19:54,427 --> 00:19:58,831 ええ。 それほど 好きってわけじゃないんですけどね➡ 265 00:19:58,831 --> 00:20:02,701 仲間に誘われると こう つい つきあいで 手ぇ出しちまうんですね。 266 00:20:02,701 --> 00:20:05,304 つきあいで 50両は負けすぎだぞ。 267 00:20:05,304 --> 00:20:09,175 だから あっしも びっくらこいてるんですよ。 268 00:20:09,175 --> 00:20:13,512 おめえ… 育ちは悪くなさそうだな。 269 00:20:13,512 --> 00:20:17,316 親のことは勘弁してください。 とうに切れてますんで。 270 00:20:17,316 --> 00:20:19,251 と言うところを見りゃ おめえにも➡ 271 00:20:19,251 --> 00:20:22,455 子を持つ親の気持ち まんざら 分からねえわけでもなさそうだ。 272 00:20:24,090 --> 00:20:28,794 東竜軒のおやじに 脇差し 振り回されて おい どう思ったい? 273 00:20:33,532 --> 00:20:38,037 あんなもんじゃねえんでしょうかね 親の気持ちとしたら…。 274 00:20:46,212 --> 00:20:50,950 (新三)手塩にかけて育てた娘 汚されて➡ 275 00:20:50,950 --> 00:20:53,919 腹 立てねえ 親がいるわけがねえ。 276 00:20:53,919 --> 00:20:58,224 それを承知で 悪い野郎だ。 277 00:20:58,224 --> 00:21:02,428 それとも 素人に手ぇ出したのは 東竜軒のおひでが初めてか? 278 00:21:03,996 --> 00:21:07,500 (新三)そんなこともねえと 思いますけどね。 279 00:21:07,500 --> 00:21:10,402 おひでを おめえ どう思ってるんだ? 280 00:21:10,402 --> 00:21:12,838 (新三)どう思うと おっしゃいやすと? 281 00:21:12,838 --> 00:21:15,508 親が許すと言ったら 晴れて 夫婦になる気が➡ 282 00:21:15,508 --> 00:21:17,443 おめえにあるのかと聞いてるんだよ。 283 00:21:17,443 --> 00:21:21,180 (新三)ハハハッ! 旦那 冗談は言いっこなしにしやしょう。 284 00:21:21,180 --> 00:21:24,183 何が冗談だ! 285 00:21:24,183 --> 00:21:29,522 (新三)おひでちゃんというのは あのとおり 勝ち気で わがままで➡ 286 00:21:29,522 --> 00:21:33,325 それでいて ぞっこん 俺にほれてくれてる かわいい女だ。➡ 287 00:21:33,325 --> 00:21:35,261 今はね…。 288 00:21:35,261 --> 00:21:40,032 でも 所帯持ちとなると あの金持ちのわがままが重荷だよ。 289 00:21:40,032 --> 00:21:42,334 暮らしに びんびん響いてきまさあ。 290 00:21:42,334 --> 00:21:45,538 三日と もちゃしねえ。 先は見えてる。 291 00:21:47,206 --> 00:21:51,877 夫婦になる気もねえのに なぜ 堅気の女に手ぇ出した? 292 00:21:51,877 --> 00:21:55,581 素人の おひで だましたんだ。 言ってみろ! 293 00:21:57,750 --> 00:22:00,586 野暮なお人だね…。 294 00:22:00,586 --> 00:22:05,291 もうちょっと粋なお方かと… 思ったのにね。 295 00:22:08,360 --> 00:22:14,833 おひでと 何で こうなったかって… 分かんねえ 俺には。➡ 296 00:22:14,833 --> 00:22:17,503 神様にでも 聞いてみておくんなさい。 297 00:22:17,503 --> 00:22:19,438 悪い人! 298 00:22:19,438 --> 00:22:21,440 えっ? 299 00:22:23,175 --> 00:22:26,011 悪い人ってのは はなから承知ですよ。 300 00:22:26,011 --> 00:22:29,048 今更 言い訳しようとは思いません。 へい。 301 00:22:29,048 --> 00:22:31,684 新三。 へい。 302 00:22:31,684 --> 00:22:36,021 野暮を言うようだが 末始終添い遂げる気がなかったら➡ 303 00:22:36,021 --> 00:22:38,524 なるべく早く 切れてやれ。 304 00:22:38,524 --> 00:22:41,026 おひでに引導を渡してやんなよ。 305 00:22:41,026 --> 00:22:43,829 50両も巻き上げりゃ 文句はあるまい。 306 00:22:45,531 --> 00:22:48,567 下手をすると 東竜軒のおやじに➡ 307 00:22:48,567 --> 00:22:52,771 暗闇で ばっさり やられるかもしれねえぞ。 308 00:23:04,650 --> 00:23:09,488 あっしもね… 考えちゃいるんですよね。 309 00:23:09,488 --> 00:23:13,292 おひでってのは 怖いもの知らずで育った娘ですから➡ 310 00:23:13,292 --> 00:23:17,162 思い詰めたら 何しでかすか 分かったもんじゃねえ。 おっかねえ。 311 00:23:17,162 --> 00:23:19,832 心中でも持ちかけられるってことか? 312 00:23:19,832 --> 00:23:23,669 いや そんなら 逃げ出すからいいけど…。➡ 313 00:23:23,669 --> 00:23:29,008 まあ これ以上 何か起こらねえうちに いなくなりましょうや。 314 00:23:29,008 --> 00:23:32,678 姿が見えねえのが一番。 315 00:23:32,678 --> 00:23:37,683 人間 どんなに ほれたっつったって 相手が消えちまえば それまで。 316 00:23:41,186 --> 00:23:43,188 よいしょ! 317 00:23:44,857 --> 00:23:48,527 月日がたてば…➡ 318 00:23:48,527 --> 00:23:51,563 思い出ってのも ずんずん薄れていって➡ 319 00:23:51,563 --> 00:23:55,034 やがては 消えてなくなっちまう…。 320 00:23:55,034 --> 00:23:57,336 ねっ そういうもんでしょ。 321 00:23:57,336 --> 00:24:06,812 ♬~ 322 00:24:06,812 --> 00:24:08,747 よしっ! 323 00:24:08,747 --> 00:24:25,497 ♬~ 324 00:24:25,497 --> 00:24:41,313 (掛け声) 325 00:24:41,313 --> 00:24:44,516 よいしょ! よいしょ! 326 00:24:46,185 --> 00:24:50,055 どれ 俺が代わろう。 (正吉)わ~い! 327 00:24:50,055 --> 00:24:53,058 (方斎) しっかり ついてくれ。 正吉が見てるぞ。 328 00:24:53,058 --> 00:24:56,328 えい! いくぞ それっ! 329 00:24:56,328 --> 00:25:18,984 (掛け声) 330 00:25:18,984 --> 00:25:22,855 どうだ? やってみるか? えっ? ハハハハハ。 331 00:25:22,855 --> 00:25:25,157 (拍手) 332 00:25:25,157 --> 00:25:28,494 そ~れ よいしょ! 333 00:25:28,494 --> 00:25:40,506 (掛け声) 334 00:25:43,308 --> 00:25:45,677 (方斎)どうだ? うまいか? 335 00:25:45,677 --> 00:25:47,679 うん。 ハハハハ…。 336 00:25:49,548 --> 00:25:51,550 あっ ありがとう。 337 00:25:56,021 --> 00:25:59,892 おっ… ありがとう。 はい はい はい。 338 00:25:59,892 --> 00:26:02,795 (善助)若先生! おう。 339 00:26:02,795 --> 00:26:04,730 (善助)八丁堀からのお使いです。 340 00:26:04,730 --> 00:26:06,665 どうしました? 寺川さん。 341 00:26:06,665 --> 00:26:09,668 (寺川)東竜軒の主人の市右衛門が…。 市右衛門が どうしました? 342 00:26:09,668 --> 00:26:12,137 やられました! 343 00:26:12,137 --> 00:26:14,072 何…!? 344 00:26:14,072 --> 00:26:27,152 ♬~ 345 00:26:27,152 --> 00:26:31,490 お~い 開けてくれ! 開けてくれ! 346 00:26:31,490 --> 00:26:34,526 どうも ご苦労さまでございます。 市右衛門は? 347 00:26:34,526 --> 00:26:38,664 幸い 命は取り留めましたが かなり深手で安心はできねえって➡ 348 00:26:38,664 --> 00:26:40,599 今 医者が付きっきりで 看病してます。 (戸が開く音) 349 00:26:40,599 --> 00:26:42,835 (源三郎)東吾さん。 おお 源さん! 350 00:26:42,835 --> 00:26:46,505 わざわざ お出まし願うほどのことはねえ と思ったんですがね➡ 351 00:26:46,505 --> 00:26:50,175 新三のやつが 何日か前に 東吾さんに 話を聞いてもらったって申しますんで。 352 00:26:50,175 --> 00:26:54,847 新三がやったのか? 当人は違うって言ってますが。 353 00:26:54,847 --> 00:26:56,782 うん…。 354 00:26:56,782 --> 00:27:00,953 とにかく 市右衛門に話が聞きたいが 会えるのか? 355 00:27:00,953 --> 00:27:06,758 今は ちょっと 無理でしょうな。 薬が効いて よく眠っておりますから。 356 00:27:06,758 --> 00:27:09,661 私が駆けつけた時には 襲われた時の様子なんぞ➡ 357 00:27:09,661 --> 00:27:11,964 はっきりした声で 話してくれたんですがね。 358 00:27:11,964 --> 00:27:13,899 襲われたのは いつなんだい? 359 00:27:13,899 --> 00:27:17,636 ゆうべ… と言うよりは 今朝と言った方がいいかもしれませんな。 360 00:27:17,636 --> 00:27:20,272 もう夜が明けようって時刻でしたから。 361 00:27:20,272 --> 00:27:22,207 それにしても まだ辺りは暗くて➡ 362 00:27:22,207 --> 00:27:25,644 暗闇の中で 後ろから いきなり突っかけられたので➡ 363 00:27:25,644 --> 00:27:28,280 襲ったやつの顔は見てない と言っております。 364 00:27:28,280 --> 00:27:30,215 何だって また そんな時刻に…。 365 00:27:30,215 --> 00:27:32,150 一体 どこで やられたってんだ? 366 00:27:32,150 --> 00:27:36,021 場所は 柳橋を渡って 両国の広小路へ出ようって辺りです。 367 00:27:36,021 --> 00:27:38,490 市右衛門は 娘のおひでを捜しに行って➡ 368 00:27:38,490 --> 00:27:41,527 新三と話し合っての帰りだったって いうんですがね…。 369 00:27:41,527 --> 00:27:44,663 おい おひでに話は聞けねえか? 370 00:27:44,663 --> 00:27:46,665 (佐兵衛)は はい…。 371 00:28:06,251 --> 00:28:09,788 どうだ? 市右衛門の容体は。 (おひで)はい。 372 00:28:09,788 --> 00:28:12,257 おかげさまで どうやら落ち着きました。 373 00:28:12,257 --> 00:28:16,061 うむ そりゃあ よかった。 (おひで)ありがとう存じます。 374 00:28:17,963 --> 00:28:19,898 あの…➡ 375 00:28:19,898 --> 00:28:24,136 お役人様に お伺い申します。 (源三郎)何だね? 376 00:28:24,136 --> 00:28:26,471 お父っつぁんを刺した下手人➡ 377 00:28:26,471 --> 00:28:32,344 新さんでないかと疑いをかけられている というのは 本当でございましょうか? 378 00:28:32,344 --> 00:28:37,115 ゆうべのことは 新三から聞いたが まだ 新三がやったとは…。 379 00:28:37,115 --> 00:28:39,051 あの人じゃございません! 380 00:28:39,051 --> 00:28:41,019 あの人が お父っつぁん 刺すわけないんです! 381 00:28:41,019 --> 00:28:43,021 では 落ち着いて➡ 382 00:28:43,021 --> 00:28:46,024 これから 私が聞くことに答えるんだ。 いいな? 383 00:28:48,660 --> 00:28:51,296 はい。 384 00:28:51,296 --> 00:28:54,833 (源三郎)ゆうべ おめえが新三に会いに行ったのは➡ 385 00:28:54,833 --> 00:28:59,671 あらかじめ 新三と約束が できていたからなのか それとも…➡ 386 00:28:59,671 --> 00:29:04,109 新三から呼び出しがあって出かけたのか どっちだ? 387 00:29:04,109 --> 00:29:07,446 どちらでもございません。 388 00:29:07,446 --> 00:29:12,317 私が 新さんに会いたくなって… それで 和泉屋に参りました。 389 00:29:12,317 --> 00:29:14,319 (源三郎)うん…。 390 00:29:14,319 --> 00:29:18,790 和泉屋に参りますと ちょうど 新さんが舟で帰ってきたところで➡ 391 00:29:18,790 --> 00:29:20,726 その舟に乗って…。 392 00:29:20,726 --> 00:29:25,430 薬研堀に近い 枯れ葉の茂った中州に 舟をとめて…。 393 00:29:27,499 --> 00:29:29,501 そうだな? 394 00:29:31,270 --> 00:29:33,272 はい。 395 00:29:35,474 --> 00:29:37,809 市右衛門の話では➡ 396 00:29:37,809 --> 00:29:41,480 おめえが 家を抜け出したのに気が付いて 和泉屋へ行き➡ 397 00:29:41,480 --> 00:29:43,415 舟を出させたそうだが➡ 398 00:29:43,415 --> 00:29:46,284 それから 先の話を聞かしてくれ。 はい。 399 00:29:46,284 --> 00:29:51,123 お父っつぁんが舟で来て こっちの舟に乗り移ってきて➡ 400 00:29:51,123 --> 00:29:55,661 新さんと話を… したんです。 401 00:29:55,661 --> 00:29:58,163 どんな話をしたんだ? 402 00:29:58,163 --> 00:30:04,836 新さんは 私と別れるって お父っつぁんに言ったんです。 403 00:30:04,836 --> 00:30:09,007 市右衛門が 新三に別れろと言ったんじゃなく➡ 404 00:30:09,007 --> 00:30:10,942 新三の方が おめえと…。 405 00:30:10,942 --> 00:30:13,178 はい。 406 00:30:13,178 --> 00:30:17,015 もともと 添い遂げられる2人じゃないんだから➡ 407 00:30:17,015 --> 00:30:22,688 別れた方が お互いのためだって 新さんが…➡ 408 00:30:22,688 --> 00:30:25,590 そう お父っつぁんの前で言ったんです。 409 00:30:25,590 --> 00:30:29,561 言い争いもせず 新三が市右衛門にそう言ったのか? 410 00:30:29,561 --> 00:30:33,765 はい…。 新さんは静かにそう言いました。 411 00:30:37,703 --> 00:30:43,341 でも お父っつぁんは 新さんの言うことを あんまり信用してないみたいで。 412 00:30:43,341 --> 00:30:47,713 けど ゆうべは そのことで2人が争うこともなく➡ 413 00:30:47,713 --> 00:30:51,883 新さんが舟を漕いで 和泉屋に戻りました。 414 00:30:51,883 --> 00:30:53,819 それで? 415 00:30:53,819 --> 00:30:56,121 (おひで)和泉屋に 番頭さんが待っていて…。 416 00:30:58,223 --> 00:31:01,660 私は 番頭さんと一緒に帰りました。 417 00:31:01,660 --> 00:31:04,563 市右衛門は一緒じゃなかったのか? 418 00:31:04,563 --> 00:31:08,266 お父っつぁんは まだ 新さんに話があると言って…。 419 00:31:11,837 --> 00:31:13,872 (佐兵衛)あっ はい。 420 00:31:13,872 --> 00:31:16,708 旦那様は あの男の気持ちを➡ 421 00:31:16,708 --> 00:31:20,545 もう一つ 確かめておきたいからと おっしゃいまして➡ 422 00:31:20,545 --> 00:31:24,182 和泉屋へ お残りになりましたんで。 はい。 423 00:31:24,182 --> 00:31:26,118 (源三郎)それで? 424 00:31:26,118 --> 00:31:30,856 それで お嬢さんと ご一緒に うちへ戻ってまいりまして➡ 425 00:31:30,856 --> 00:31:33,892 旦那様のお帰りを お待ち申しておりましたんですが➡ 426 00:31:33,892 --> 00:31:37,629 いつまで待っても お帰りがございません。 427 00:31:37,629 --> 00:31:42,834 心配になって 手代の久次郎をお迎えにやりました。 428 00:31:44,870 --> 00:31:49,207 こっから 柳橋の和泉屋までは ほんのひとっ走り。 429 00:31:49,207 --> 00:31:52,110 提灯をさげて 店出た久次郎が➡ 430 00:31:52,110 --> 00:31:55,080 下柳原同朋町の手前の道端で➡ 431 00:31:55,080 --> 00:31:58,884 倒れて苦しんでる市右衛門を見つけて 大騒ぎになったんですよ。 432 00:32:08,493 --> 00:32:12,297 新三は どう言ってるんだい? 433 00:32:12,297 --> 00:32:14,833 おひでと番頭の佐兵衛が帰ったあと➡ 434 00:32:14,833 --> 00:32:18,670 新三は 市右衛門から 金を10両 もらったんだそうですよ。 435 00:32:18,670 --> 00:32:21,506 うん…。 今後 一切 おひでには手を出さない。 436 00:32:21,506 --> 00:32:24,309 柳橋からも姿を消すと 約束をさせられて。 437 00:32:24,309 --> 00:32:26,378 まあ 手切れ金といったところでしょうか。 438 00:32:26,378 --> 00:32:30,182 新三は 俺にも 別れると言っていた。 439 00:32:30,182 --> 00:32:33,852 自分から姿を消すと そう言っていたよ。 440 00:32:33,852 --> 00:32:37,722 10両でも 手切れ金 もらえたとなりゃ 御の字だ。 441 00:32:37,722 --> 00:32:41,226 やったのは新三じゃねえ。 違うか? 442 00:32:43,528 --> 00:32:47,332 確かに あいつは 女ったらしの甘えん坊だよ。 443 00:32:47,332 --> 00:32:50,635 けど 人を殺すようなやつじゃねえ。 444 00:32:52,871 --> 00:32:55,774 手代の久次郎ってのは 大丈夫なんですか? 445 00:32:55,774 --> 00:32:57,742 久次郎…? ええ。 446 00:32:57,742 --> 00:33:00,612 何かで ご主人を恨んでいて➡ 447 00:33:00,612 --> 00:33:03,281 迎えに行ったついでってのもおかしいけど 久次郎がやった…。 448 00:33:03,281 --> 00:33:05,217 あっ いやいやいや! 449 00:33:05,217 --> 00:33:07,986 東竜軒の奉公人についちゃ 伝次に調べさせているんですが➡ 450 00:33:07,986 --> 00:33:10,021 怪しい者は出てきません。 451 00:33:10,021 --> 00:33:14,860 な~に るいも 新三を下手人にはしたくねえのさ。 452 00:33:14,860 --> 00:33:18,363 人に そう思わせるものを 野郎 持ってやがる…。 453 00:33:20,165 --> 00:33:23,168 妙な野郎だ。 ハハハ。 454 00:33:23,168 --> 00:33:26,304 おい 源さん。 おっ! ああ こりゃ どうも。 455 00:33:26,304 --> 00:33:30,842 男前だって きっぷだって な~に どうってことはねえやつなんだが➡ 456 00:33:30,842 --> 00:33:33,745 あいつばかりが なぜ モテる? 457 00:33:33,745 --> 00:33:37,716 なあ 源さん 俺たちだって もうちっとは モテてもいいのになあ。 458 00:33:37,716 --> 00:33:40,552 まったくですよ! 世の中 狂ってますよ。 459 00:33:40,552 --> 00:33:42,554 (笑い声) 460 00:33:42,554 --> 00:33:44,689 ⚟(嘉助)よろしゅうございますか? 461 00:33:44,689 --> 00:33:47,692 おう 何だい? ⚟(嘉助)失礼します。 462 00:33:51,196 --> 00:33:56,334 いえね… こんな世話場な話➡ 463 00:33:56,334 --> 00:34:00,038 若旦那の前でお伝えするのは どうかと思ったんですけども➡ 464 00:34:00,038 --> 00:34:01,973 この忙しい暮れへ来て➡ 465 00:34:01,973 --> 00:34:05,844 鉄っつぁんが 黙って仕事を休んじまいましてね➡ 466 00:34:05,844 --> 00:34:10,649 畳替えが半分は残ってるんですけども お嬢さん どうします? 467 00:34:10,649 --> 00:34:13,552 何だ まだ済んでなかったのか? いえ。 468 00:34:13,552 --> 00:34:18,156 2階は おおかた済んだんですけどね 下が まだ残ってるんですよ。 469 00:34:18,156 --> 00:34:20,492 病気でもしたのかしら? 鉄っつぁん。 470 00:34:20,492 --> 00:34:22,427 けがだそうですよ。 471 00:34:22,427 --> 00:34:25,830 けが? (嘉助)肘をけがしたっていうんですがね➡ 472 00:34:25,830 --> 00:34:30,502 畳屋が肘やっちまっちゃ こいつは仕事になりませんや。 473 00:34:30,502 --> 00:34:32,437 困ったわね…。 474 00:34:32,437 --> 00:34:34,839 今から ほかの畳屋さんに頼めるかしら? 475 00:34:34,839 --> 00:34:38,710 明日にでもだったら ほかのとこを当たっちゃみますがね➡ 476 00:34:38,710 --> 00:34:42,314 こう押し詰まってしまっちゃあ どうですかね…。 477 00:34:42,314 --> 00:34:44,683 近頃は 腕のいい職人は 少なくなってっからな。 478 00:34:44,683 --> 00:34:47,185 へえへえ それなんですよ。 479 00:34:47,185 --> 00:34:50,522 そうだ! 明日 俺が聞いてみてやるよ。 えっ? 480 00:34:50,522 --> 00:34:53,325 今 うちに畳屋が来て 畳替えをしてるから➡ 481 00:34:53,325 --> 00:34:55,860 あと こっちへ回ってもらえるかどうか 聞いてみてやる。 482 00:34:55,860 --> 00:34:57,796 いけませんよ そんなこと! 483 00:34:57,796 --> 00:35:00,031 兄上のお耳にでも入ったら…。 何を言うんだ。 484 00:35:00,031 --> 00:35:02,634 女房が困ってる時に 亭主が なんとかするのは➡ 485 00:35:02,634 --> 00:35:05,537 当たりめえのことじゃねえか。 なあ? 源さん。 486 00:35:05,537 --> 00:35:08,974 あの… 畳替えってのは 毎年やるもんなんですか? 487 00:35:08,974 --> 00:35:11,276 (東吾 るい 嘉助)ええっ? 当たりめえだよ。 488 00:35:11,276 --> 00:35:13,812 (嘉助)旦那んとこじゃ 毎年やらねえんですか? 489 00:35:13,812 --> 00:35:18,283 やらんなあ。 前に畳替えやったのは… あれは いつだったかなあ? 490 00:35:18,283 --> 00:35:22,821 これだから 「男やもめは蛆がわく」 なんて言われるんだよ。 491 00:35:22,821 --> 00:35:28,159 おい 源さん 今年は まあ無理だが 来年は 必ず嫁さんを探しなよ。 492 00:35:28,159 --> 00:35:30,095 畳ではなく 嫁さんですか? 493 00:35:30,095 --> 00:35:34,933 嫁さん もらえれば その嫁さんが ちゃんと畳替えのことも考えてくれるよ。 494 00:35:34,933 --> 00:35:37,936 こいつは理屈だ。 (笑い声) 495 00:35:43,708 --> 00:35:45,710 ご苦労さまです。 496 00:35:49,447 --> 00:35:51,449 おっ 来てるな。 497 00:35:53,184 --> 00:35:56,187 ああ 若旦那! どうもありがとうございました。 498 00:35:56,187 --> 00:35:59,491 おかげさまで助かりやした。 お嬢さ~ん! 499 00:36:03,795 --> 00:36:08,633 そういやあ 鉄って職人は 何でまた 肘なんぞ けがしたんだ? 500 00:36:08,633 --> 00:36:13,505 ええ 昨日 鉄っつぁんとこの若えのが わびに来ての話なんですがね➡ 501 00:36:13,505 --> 00:36:17,142 刃物で切ったってんですよ。 刃物で…? 502 00:36:17,142 --> 00:36:22,647 ええ 治っても 仕事はできねえだろうって ねっ 医者が そう言ってるそうですが➡ 503 00:36:22,647 --> 00:36:25,684 筋をやっちゃったらしいんですね。 う~ん…。 504 00:36:25,684 --> 00:36:28,820 鉄っつぁん もう年だし いい娘さんがいるから➡ 505 00:36:28,820 --> 00:36:31,289 働かなくたって 暮らしには困りませんよ。 うん…。 506 00:36:31,289 --> 00:36:33,224 ほら いつか お話ししましたでしょ。 507 00:36:33,224 --> 00:36:37,228 東竜軒のお妾さんで 浅草で甘いもの屋を やってるって おたつさん。 508 00:36:40,031 --> 00:36:42,033 お吉っつぁん➡ 509 00:36:42,033 --> 00:36:44,669 人の噂は あんまりするもんじゃないって 言ってるでしょ。 510 00:36:44,669 --> 00:36:48,173 (お吉)はい… すいません。 いや そうじゃねえんだ。 511 00:36:48,173 --> 00:36:53,044 なあ 鉄五郎には ほかに子供はいねえのかい? 512 00:36:53,044 --> 00:36:55,847 いいえ おたつさん 1人。 513 00:36:55,847 --> 00:36:57,882 ねえ? ええ。 514 00:36:57,882 --> 00:37:00,819 それがどうかしやしたか? 515 00:37:00,819 --> 00:37:02,954 うん…。 516 00:37:02,954 --> 00:37:12,263 ♬~ 517 00:37:12,263 --> 00:37:15,633 鉄五郎は律儀な職人だって言ってたな? 518 00:37:15,633 --> 00:37:17,569 ええ。 519 00:37:17,569 --> 00:37:23,508 たった一人の娘が妾でいるのを 鉄五郎は どう思ってるんだろう? 520 00:37:23,508 --> 00:37:25,643 えっ? ⚟(お吉)あの…➡ 521 00:37:25,643 --> 00:37:29,481 噂話をしても… 構いませんか? 522 00:37:29,481 --> 00:37:32,183 おお! 知ってることがあったら 教えてくれ。 523 00:37:33,818 --> 00:37:36,654 鉄っつぁんは 腕のいい職人ですからね➡ 524 00:37:36,654 --> 00:37:39,557 娘を妾なんかにしなくたって ちゃんとやっていける。 525 00:37:39,557 --> 00:37:42,827 東竜軒へ奉公に出したって お給金のためではない。➡ 526 00:37:42,827 --> 00:37:47,165 嫁入り前に 女一とおりのことを 仕込んでもらうつもりだったんですよ。➡ 527 00:37:47,165 --> 00:37:51,169 それが 旦那のお手がついたと話を聞いた時は➡ 528 00:37:51,169 --> 00:37:55,306 随分 腹を立てたっていう話ですよ。 だろうなあ…。 529 00:37:55,306 --> 00:37:58,843 まあ 今じゃ 諦めてるでしょうけどね。 530 00:37:58,843 --> 00:38:04,449 でも おたつさんが お妾さんになって 一生 日陰の身の上➡ 531 00:38:04,449 --> 00:38:08,653 肩身の狭い思いをしてるのは 決して 喜んではいますまい。 532 00:38:10,789 --> 00:38:14,125 鉄五郎のうちは… おい どこだい? 533 00:38:14,125 --> 00:38:16,060 平右衛門町です。 534 00:38:16,060 --> 00:38:18,997 柳橋のすぐ向こうだな。 535 00:38:18,997 --> 00:38:20,999 ええ。 536 00:38:22,834 --> 00:38:26,271 ちょいと 源さんとこ 行ってくる。 537 00:38:26,271 --> 00:38:29,274 (お吉)もう お出かけなんですか? 538 00:38:36,915 --> 00:38:38,850 (久次郎)あっ いらっしゃいませ。 539 00:38:38,850 --> 00:38:42,287 これは どうも 度々 ご苦労さまでございます。 540 00:38:42,287 --> 00:38:44,989 市右衛門に じかに 聞きてえことがあるんだ。 聞けるか? 541 00:38:49,994 --> 00:38:53,865 和泉屋からの帰り 寄り道をしやしなかったかい? 542 00:38:53,865 --> 00:38:59,070 (市右衛門)えっ… はい。 いたしました。 543 00:39:01,940 --> 00:39:05,777 提灯の火が消えてしまいましたので…。 544 00:39:05,777 --> 00:39:09,647 平右衛門町の鉄五郎のうちに寄って 火を借りたか? 545 00:39:09,647 --> 00:39:11,950 へえ さようで。 546 00:39:14,118 --> 00:39:17,455 それが どうかしたんですか? 547 00:39:17,455 --> 00:39:20,658 いや それだけ聞きゃあいいんだ。 548 00:39:24,629 --> 00:39:27,932 鉄五郎に限って まさかと思うんですがねえ。 549 00:39:31,502 --> 00:39:36,708 虫一匹 殺せるやつじゃありませんよ。 ふだんから 信心深い男でしてね。 550 00:39:40,478 --> 00:39:42,413 このうちです。➡ 551 00:39:42,413 --> 00:39:44,716 鉄っつぁん いるかい? 552 00:39:46,985 --> 00:39:48,987 源さん。 553 00:40:07,305 --> 00:40:09,307 あっ…! 554 00:40:12,143 --> 00:40:14,679 ♬~ 555 00:40:14,679 --> 00:40:16,614 (源三郎)東吾さん…! 556 00:40:16,614 --> 00:40:36,934 ♬~ 557 00:40:36,934 --> 00:40:38,903 伝次➡ 558 00:40:38,903 --> 00:40:42,206 下ろしてやれ。 へい…。 559 00:40:42,206 --> 00:41:10,835 ♬~ 560 00:41:10,835 --> 00:41:13,671 死んだかみさんの位牌を抱いています。 561 00:41:13,671 --> 00:41:16,174 かわいそうに…。 562 00:41:16,174 --> 00:41:27,785 ♬~ 563 00:41:27,785 --> 00:41:29,721 (源三郎)東吾さん! 564 00:41:29,721 --> 00:41:35,026 ♬~ 565 00:41:48,539 --> 00:41:55,246 東吾さんの推量どおり あの晩 市右衛門は ここへ来た。 566 00:41:56,881 --> 00:41:59,350 何が あったんでしょうかね? 567 00:41:59,350 --> 00:42:04,822 おひでと新三を別れさすことができて➡ 568 00:42:04,822 --> 00:42:10,328 市右衛門は つい 余計なことを 言ってしまったんだろうな。 569 00:42:12,563 --> 00:42:14,999 余計なこと? 570 00:42:14,999 --> 00:42:17,035 言った市右衛門の方じゃ➡ 571 00:42:17,035 --> 00:42:20,805 うれしさのあまり つい 言ったことだったのが➡ 572 00:42:20,805 --> 00:42:23,708 鉄五郎の胸にゃあ…➡ 573 00:42:23,708 --> 00:42:28,513 ずきりと鋭い刃物になって 突き刺さるような➡ 574 00:42:28,513 --> 00:42:30,715 余計なことをな…。 575 00:42:43,694 --> 00:42:45,630 へい… どうぞ。 576 00:42:45,630 --> 00:42:49,333 どうもありがとう。 私もね ほっとしたよ。 577 00:42:49,333 --> 00:42:53,204 新三のやつが はっきり おひでと 手を切るって約束してくれたんだ。 578 00:42:53,204 --> 00:42:56,541 それは よろしゅうござんした。 ああ よかったよ。 うん…。 579 00:42:56,541 --> 00:43:00,144 ハハッ。 これで おひでも 日陰者にならずに済んだよ。➡ 580 00:43:00,144 --> 00:43:02,079 ハハハハハ。➡ 581 00:43:02,079 --> 00:43:04,816 いや~ いずれ折を見て いい婿を見つけてね➡ 582 00:43:04,816 --> 00:43:06,751 幸せに暮らさしてやりたい。➡ 583 00:43:06,751 --> 00:43:09,153 ああ よかった。 本当によかった。➡ 584 00:43:09,153 --> 00:43:12,657 ハハハハハハ…。 (戸の開閉音) 585 00:43:16,294 --> 00:43:21,132 日陰者にならずに済んでよかっただと? 586 00:43:21,132 --> 00:43:25,970 人の娘 日陰者にしておきやがって…。 587 00:43:25,970 --> 00:43:28,039 くそ~っ! 588 00:43:28,039 --> 00:43:45,022 ♬~ 589 00:43:45,022 --> 00:43:48,526 (市右衛門)これで娘も 日陰者にならずに済んだ。 590 00:43:48,526 --> 00:43:52,029 男親には言えないことだってありますよ。 591 00:43:52,029 --> 00:43:53,965 ♬~ 592 00:43:53,965 --> 00:43:59,203 あたしのことなら… いいんですよ。 593 00:43:59,203 --> 00:44:01,973 (市右衛門)日陰者にならずに済んだ。 594 00:44:01,973 --> 00:44:49,020 ♬~ 595 00:44:49,020 --> 00:44:53,191 はあ… はあ… はあ…。 596 00:44:53,191 --> 00:45:03,200 ♬~ 597 00:45:06,637 --> 00:45:08,673 東竜軒のご主人➡ 598 00:45:08,673 --> 00:45:13,511 下手人が鉄っつぁんだってことに まだ 気が付いていないんでしょうか? 599 00:45:13,511 --> 00:45:15,646 恐らくな…。 600 00:45:15,646 --> 00:45:19,150 おたつの世話をしてやって 恩に着ることはあっても➡ 601 00:45:19,150 --> 00:45:22,486 恨まれる覚えはねえと思ってるから➡ 602 00:45:22,486 --> 00:45:26,824 まさか 鉄五郎にやられたとは 気が付いちゃいねえよ。 603 00:45:26,824 --> 00:45:31,696 鉄っつぁんの方では ず~っと恨んで暮らしていたのに…。 604 00:45:31,696 --> 00:45:36,534 市右衛門だけのことじゃねえや…。 金持ちってやつはな➡ 605 00:45:36,534 --> 00:45:40,838 貧乏人にも自分と同じ親の気持ちがある ってことさえ➡ 606 00:45:40,838 --> 00:45:43,641 ついつい忘れているのさ。 607 00:45:46,510 --> 00:45:50,848 おっ… 源さんにはな おたつにも知らすなと言っといた。 608 00:45:50,848 --> 00:45:54,685 えっ おたっつぁんにもですか? うん…。 609 00:45:54,685 --> 00:45:58,856 死んだと聞いて駆けつけた おたつは 言っていたそうだ。 610 00:45:58,856 --> 00:46:01,626 昼間 鉄五郎が浅草に来て おたつに➡ 611 00:46:01,626 --> 00:46:06,264 「おめえにも済まねえことをした」と 青い顔で何度も言うから➡ 612 00:46:06,264 --> 00:46:09,634 てっきり 肘をけがして お出入り先をしくじり➡ 613 00:46:09,634 --> 00:46:12,670 先行きの暮らしの心配をして 言っているんだと思って➡ 614 00:46:12,670 --> 00:46:16,273 心配しないでいいって 慰めてやったんだが➡ 615 00:46:16,273 --> 00:46:19,810 私がいるのに 首なんぞくくって…と➡ 616 00:46:19,810 --> 00:46:26,584 鉄五郎の死骸にすがって 声を上げて 泣いていたそうだ…。 617 00:46:26,584 --> 00:46:30,821 じゃあ おたっつぁんも なぜ 鉄っつぁんが死んだのか➡ 618 00:46:30,821 --> 00:46:33,491 気が付いていないんですね。 619 00:46:33,491 --> 00:46:35,493 うん…。 620 00:46:40,164 --> 00:46:44,835 そうだ! 新三がな 和泉屋から いなくなったそうだぜ。 621 00:46:44,835 --> 00:46:47,305 まあ どこへ行ったんです? 622 00:46:47,305 --> 00:46:52,143 さあ? 誰にも何にも言わずに 消えちまったってえから…➡ 623 00:46:52,143 --> 00:46:54,145 どこへ行ったか…。 624 00:46:56,514 --> 00:46:59,183 おひでさん… どうしてるんです? 625 00:46:59,183 --> 00:47:03,054 ありゃあな 神妙に おやじの看病しているよ。 626 00:47:03,054 --> 00:47:06,924 じゃあ まだ 新三さんがいなくなったこと 知らないんですね。 627 00:47:06,924 --> 00:47:12,129 うん…。 知った当座は 涙をこぼして暮らすんだろうが➡ 628 00:47:12,129 --> 00:47:15,132 そのうち 忘れちまうんだろうなあ。 629 00:47:15,132 --> 00:47:17,935 新三さんも言ってましたね。 630 00:47:19,804 --> 00:47:24,275 月日がたてば 思い出なんて ずんずん薄れて➡ 631 00:47:24,275 --> 00:47:28,145 そのうち きれいさっぱり消えちゃうもんだって。 632 00:47:28,145 --> 00:47:32,483 女ったらしの嫌なやつには違えねえが➡ 633 00:47:32,483 --> 00:47:37,354 もう一つ憎めねえ おかしな野郎だった。 634 00:47:37,354 --> 00:47:39,356 なあ? 635 00:47:39,356 --> 00:47:42,159 (笑い声) 636 00:47:42,159 --> 00:48:02,947 ♬~ 637 00:48:02,947 --> 00:48:05,750 また 年が暮れるなあ…。 638 00:48:07,451 --> 00:48:09,954 新しい年が来たら➡ 639 00:48:09,954 --> 00:48:15,626 嫌な話 悲しい話は 聞かずに済みますように…。 640 00:48:15,626 --> 00:48:21,132 そうだといいが 「苦の娑婆」だからな…。 641 00:48:21,132 --> 00:48:30,274 ♬~ 642 00:48:30,274 --> 00:48:33,811 おい 風邪をひくぜ…。 643 00:48:33,811 --> 00:48:44,121 ♬~