1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:08,829 ♬~ 3 00:02:11,498 --> 00:02:15,369 (おきみ)あっ…。 すいません。 4 00:02:15,369 --> 00:02:19,373 (新吉)ごめんくださいまし。 (おきみ)あら 新吉さん。 5 00:02:19,373 --> 00:02:21,508 (お吉)おや どうしたんです? 今時分。 6 00:02:21,508 --> 00:02:24,411 油なら 昨日 市之助さんが 届けてくれましたよ。 7 00:02:24,411 --> 00:02:27,180 (新吉)いえ あの 油をお届けに上がったんじゃないんで。 8 00:02:27,180 --> 00:02:31,051 実は 嘉助さんに ちょっと お聞き願いたいことがございまして。 9 00:02:31,051 --> 00:02:33,053 (お吉)嘉助さんに? はい。 10 00:02:33,053 --> 00:02:35,055 おもんちゃん 嘉助さん。 (おもん)あっ はい。 11 00:02:44,531 --> 00:02:48,402 ⚟(嘉助)失礼します。 (るい)な~に? 12 00:02:48,402 --> 00:02:50,871 (嘉助)ヘヘヘッ。 ああ…。 13 00:02:50,871 --> 00:02:53,707 山崎屋の新吉っつぁんが あっしにね➡ 14 00:02:53,707 --> 00:02:56,343 相談事を持ち込んできなすったんですが➡ 15 00:02:56,343 --> 00:02:59,246 どうも あっし一人の了見じゃ 扱いかねますんで➡ 16 00:02:59,246 --> 00:03:01,181 相すいません お嬢さん➡ 17 00:03:01,181 --> 00:03:03,984 新吉っつぁんの話を 聞いてやっていただけませんか? 18 00:03:03,984 --> 00:03:08,488 さあ 私に分かるかどうか…。 とにかく 聞くだけでよかったら。 19 00:03:08,488 --> 00:03:10,424 さようですか。 ありがとう存じます。 20 00:03:10,424 --> 00:03:12,359 じゃあ 新吉っつぁん。 はい。 21 00:03:12,359 --> 00:03:15,162 どうぞ お入んなさいな。 あっ… 申し訳ございません。 22 00:03:17,197 --> 00:03:20,200 さあさあ 寒いから 火のそばへ…。 あっ ありがとうございます。 23 00:03:23,970 --> 00:03:28,308 日ごろ ごひいきいただいております上に とんだ ご迷惑な お願いで➡ 24 00:03:28,308 --> 00:03:31,678 申し訳ございません。 どういたしまして。 25 00:03:31,678 --> 00:03:34,314 山崎屋さんには 随分 油を安く分けてもらって。 26 00:03:34,314 --> 00:03:36,249 ねえ? 嘉助さん。 ええ。 27 00:03:36,249 --> 00:03:38,185 うちじゃ 大助かりなんだもの➡ 28 00:03:38,185 --> 00:03:41,855 お役に立つことがあるんなら どうか 遠慮なく言ってくださいよ。 29 00:03:41,855 --> 00:03:43,790 (新吉)ありがとう存じます。 30 00:03:43,790 --> 00:03:46,326 で どういうことなの? 31 00:03:46,326 --> 00:03:48,261 はあ…。 32 00:03:48,261 --> 00:03:54,701 いえ… 近頃 山崎屋さんとこでね 妙なことが起こってるってんですよ。 33 00:03:54,701 --> 00:03:58,038 妙なこと? はい。 34 00:03:58,038 --> 00:04:02,642 最初は 今月の12日… だったね? はい。 35 00:04:02,642 --> 00:04:07,347 12日の朝 主人の彦兵衛が 朝げを頂いておりまして…。 36 00:04:41,848 --> 00:04:44,184 (彦兵衛)うっ! あっ…。 37 00:04:44,184 --> 00:04:47,020 (お小夜)まあ どうなさったんですか? 38 00:04:47,020 --> 00:04:49,689 おかしいよ この みそ汁は。 えっ? 39 00:04:49,689 --> 00:04:52,192 (彦兵衛)お前さんも 飲むの およし。➡ 40 00:04:52,192 --> 00:04:54,694 お梅や 台所へ行って➡ 41 00:04:54,694 --> 00:04:57,030 みんなにも 「飲んじゃいけない」って そう言ってきておやり。 42 00:04:57,030 --> 00:04:58,965 (お梅)はい…。 43 00:04:58,965 --> 00:05:00,967 (彦兵衛のせきこみ) 44 00:05:04,838 --> 00:05:07,974 何か 悪いもんでも入ってたんですか? 45 00:05:07,974 --> 00:05:10,644 分かりません。 46 00:05:10,644 --> 00:05:16,283 においを嗅いでみますと 確かに 嫌なにおいが… はい いたしました。 47 00:05:16,283 --> 00:05:19,820 まあ…。で 何が入ってたか 分からなかったのかい? 48 00:05:19,820 --> 00:05:21,855 はあ… 主人の言いつけで➡ 49 00:05:21,855 --> 00:05:25,292 みそ汁は そっくり 裏のどぶへ 流して捨ててしまいましたんで…。 50 00:05:25,292 --> 00:05:29,162 (嘉助)ええい 取っといて 医者に 見せるなり何なりすりゃよかったんだ。 51 00:05:29,162 --> 00:05:33,466 相すいません。 そこまで気が回らず 主人の言いつけどおりに…。 52 00:05:37,037 --> 00:05:40,874 (治助) まことに申し訳ございませぬことで。 53 00:05:40,874 --> 00:05:46,012 まあまあ 番頭さん そんなに謝らなくても… ねえ➡ 54 00:05:46,012 --> 00:05:49,849 何事もなく済んだんですから。 55 00:05:49,849 --> 00:05:52,886 けど お梅や➡ 56 00:05:52,886 --> 00:05:57,591 食べるものですからね 用心の上には用心をしてくださいよ! 57 00:05:57,591 --> 00:06:00,260 (お梅)はい。 すいません! 58 00:06:00,260 --> 00:06:04,130 恐らく つまみ菜に混じって 何か悪いものでも入っていたんでしょう。 59 00:06:04,130 --> 00:06:06,967 あまり騒ぎ立てないように。 いいですね? 番頭さん。 60 00:06:06,967 --> 00:06:10,637 はい。 みんなにも よく言っておいてください。 61 00:06:10,637 --> 00:06:15,141 こんなことが世間に知れたら 山崎屋の のれんに傷がつきます。 62 00:06:15,141 --> 00:06:19,145 店の者にも よく言い聞かせておきます。 63 00:06:19,145 --> 00:06:22,015 じゃ もう下がっていいよ。 64 00:06:22,015 --> 00:06:24,217 ごめんくださいまし。 65 00:06:29,489 --> 00:06:32,525 やれやれ…。 66 00:06:32,525 --> 00:06:36,029 (お小夜)本当に どうしたっていうんでしょうねえ? 67 00:06:40,166 --> 00:06:42,669 (彦兵衛)ねえ お小夜➡ 68 00:06:42,669 --> 00:06:46,840 誰が あんなことをしたのか お前さん 心当たりありませんか? 69 00:06:46,840 --> 00:06:48,842 えっ? 70 00:06:53,179 --> 00:06:57,183 ありゃあね 誰かが あたしを…➡ 71 00:06:57,183 --> 00:07:01,888 このあたしを殺そうと考えて したことだと にらんでいるんだが。 72 00:07:01,888 --> 00:07:06,826 アッハハハハ! だって あなた まさか そんな…。 73 00:07:06,826 --> 00:07:11,031 一体 誰が そんな恐ろしいことをすると おっしゃるんですか? 74 00:07:13,266 --> 00:07:15,201 もし あなた…? 75 00:07:15,201 --> 00:07:19,005 あたしには分からないから お前さんに心当たりを聞いているんです。 76 00:07:26,646 --> 00:07:29,282 2度目は ゆうべでございます。 77 00:07:29,282 --> 00:07:31,651 今度は 何があったってんです? 78 00:07:31,651 --> 00:07:34,688 主人が 川へ…。 えっ 川へ? 79 00:07:34,688 --> 00:07:37,824 突き落とされました。 誰に? 80 00:07:37,824 --> 00:07:40,727 いや それが 暗くて分からなかったってんですよ。 81 00:07:40,727 --> 00:07:42,996 あいにく 昨日は雨もよい。 82 00:07:42,996 --> 00:07:45,832 稲荷橋の辺りは 真っ暗闇だったでしょうからねえ。 83 00:07:45,832 --> 00:07:50,670 そんなとこへ 彦兵衛さん 一体 何しに出かけたってんです? 84 00:07:50,670 --> 00:07:54,007 はあ… 鐵砲洲稲荷の近くに➡ 85 00:07:54,007 --> 00:07:57,844 松田源右衛門という もみ療治の先生がいらっしゃいます。 86 00:07:57,844 --> 00:07:59,879 主人は 無類の肩凝らしで➡ 87 00:07:59,879 --> 00:08:04,951 昨年の秋ごろから 松田先生へ 5日おきに通っておりまして…。➡ 88 00:08:04,951 --> 00:08:08,822 ゆうべも 暮れ六つ過ぎてから店を出ました。 89 00:08:08,822 --> 00:08:10,824 そのあとで 雨が降ってまいりまして➡ 90 00:08:10,824 --> 00:08:15,462 おかみさんが 市之助というのに傘を持たせて松田様へ。 91 00:08:15,462 --> 00:08:18,365 小僧さんが迎えに行ったんですか? (新吉)はい。 92 00:08:18,365 --> 00:08:21,334 じゃあ 帰りは 小僧さんも一緒だった? 93 00:08:21,334 --> 00:08:23,636 はあ さようでございます。 (嘉助)お嬢さん➡ 94 00:08:23,636 --> 00:08:27,140 「じゃあ その市之助っていう小僧が 顔を見ていないのか」と➡ 95 00:08:27,140 --> 00:08:29,075 そう おっしゃりたいんでしょう? うん…。 96 00:08:29,075 --> 00:08:31,010 (嘉助)ところが 駄目なんですよ。➡ 97 00:08:31,010 --> 00:08:34,481 体が大きな男だったってことだけ 分かってるんですが➡ 98 00:08:34,481 --> 00:08:36,416 顔までは見ちゃいません。 99 00:08:36,416 --> 00:08:39,285 はあ…。 それで? 100 00:08:39,285 --> 00:08:44,491 はあ 幸い 市之助というのが 石川島の漁師町の生まれで➡ 101 00:08:44,491 --> 00:08:47,160 とっさに川へ飛び込みまして➡ 102 00:08:47,160 --> 00:08:49,162 溺れかかっていた主人を 助け上げたんで…。 103 00:08:49,162 --> 00:08:51,998 そりゃあ よござんしたねえ。 104 00:08:51,998 --> 00:08:53,933 はあ おかげさまで…。 105 00:08:53,933 --> 00:08:59,172 それで まあ 一度ならず 二度までも命を狙われたんだ。 106 00:08:59,172 --> 00:09:01,941 こりゃあ お上へ お届けしなくちゃって この…➡ 107 00:09:01,941 --> 00:09:05,779 この人の父親の 治助さんという番頭さんがね…。 108 00:09:05,779 --> 00:09:08,615 おやじが 旦那様に そう申し上げたんですが…。 109 00:09:08,615 --> 00:09:11,651 ところが 旦那は 「それには及ばねえ」って言うんで…。 110 00:09:11,651 --> 00:09:15,388 あら どうして? 111 00:09:15,388 --> 00:09:18,324 (嘉助)いや…➡ 112 00:09:18,324 --> 00:09:21,194 新吉っつぁんの口からは 言いにくいでしょうが➡ 113 00:09:21,194 --> 00:09:25,131 山崎屋の旦那ってのは 養子なんですよ。 114 00:09:25,131 --> 00:09:28,268 そりゃあ ご養子の彦兵衛さんにしてみれば➡ 115 00:09:28,268 --> 00:09:31,805 店の体面 世間体 気を遣ってのことだろうけど➡ 116 00:09:31,805 --> 00:09:36,276 どっちも 一つ間違えば 命をなくしたかもしれないんですよ。 117 00:09:36,276 --> 00:09:38,812 はい…。 118 00:09:38,812 --> 00:09:44,150 で 治助さんは 何て言ってるんだい? はあ…➡ 119 00:09:44,150 --> 00:09:46,653 ご承知のとおり おやじは➡ 120 00:09:46,653 --> 00:09:50,156 おかみさんのお父っつぁん 先代の旦那様の時分から➡ 121 00:09:50,156 --> 00:09:54,661 お店大事と勤めてきた あのとおり 融通の利かない人間でございますから➡ 122 00:09:54,661 --> 00:09:58,298 「何事も 旦那様のおっしゃりつけのとおりに」と➡ 123 00:09:58,298 --> 00:10:00,233 さよう 申しましたんで…。 124 00:10:00,233 --> 00:10:03,503 そうですか。 125 00:10:03,503 --> 00:10:06,539 とにかく 今日は もう何だから➡ 126 00:10:06,539 --> 00:10:10,677 明日 嘉助さんに 山崎屋さんに行ってもらって ねえ➡ 127 00:10:10,677 --> 00:10:12,712 治助さんとも よく話してもらって。 へい。 128 00:10:12,712 --> 00:10:15,181 何か うまい手を打つように してあげてちょうだい。 129 00:10:15,181 --> 00:10:17,116 かしこまりやした。 130 00:10:17,116 --> 00:10:20,120 どうぞ よろしくお願いいたします。 131 00:10:41,040 --> 00:10:44,077 (彦兵衛)新吉…。 旦那様? 132 00:10:44,077 --> 00:10:46,346 どこへ行ってたんだい? 133 00:10:46,346 --> 00:10:49,048 あっ… 申し訳ございません。 134 00:10:49,048 --> 00:10:51,050 いいから おいで…。 135 00:10:57,223 --> 00:10:59,893 おかみさん!➡ 136 00:10:59,893 --> 00:11:01,861 おかみさん…➡ 137 00:11:01,861 --> 00:11:05,999 おかみさん! しっかりしてください。➡ 138 00:11:05,999 --> 00:11:08,902 旦那様 お医者様を…。 139 00:11:08,902 --> 00:11:11,204 し… しん… 新吉…。 140 00:11:16,709 --> 00:11:19,546 お父っつぁん!? 141 00:11:19,546 --> 00:11:21,848 お父っつぁん…! 142 00:11:27,187 --> 00:11:30,189 番頭さん こっちの方が多いかもしれない つぼみ。 143 00:11:30,189 --> 00:11:32,325 こっちの方が 生きがいいじゃねえか。 144 00:11:32,325 --> 00:11:35,194 これ いくらするんだい? 安く まけときます。 145 00:11:35,194 --> 00:11:37,130 ああっ! これ これ。 146 00:11:37,130 --> 00:11:40,066 (東吾)お小夜も死んだのか? 147 00:11:40,066 --> 00:11:42,335 (伝次)いえ おかみさんの方は 首 絞められて➡ 148 00:11:42,335 --> 00:11:44,270 気ぃ失ってただけでしたから。 149 00:11:44,270 --> 00:11:46,206 助かったんですね。 (伝次)へい。 150 00:11:46,206 --> 00:11:48,207 誰に 首 絞められたんだ? 151 00:11:48,207 --> 00:11:51,344 それがね どうもよく分からねえ。 152 00:11:51,344 --> 00:11:55,215 雨戸をたたく音がしたんで おかみさんが開けてみると 誰もいない。 153 00:11:55,215 --> 00:11:58,217 おかしいなと庭へ下りていったら いきなり 後ろから ぎゅっ。➡ 154 00:11:58,217 --> 00:12:00,153 まあ 不意のことで➡ 155 00:12:00,153 --> 00:12:03,022 「くせ者の顔も姿も見る暇もなく 気ぃ失っちまった」って➡ 156 00:12:03,022 --> 00:12:05,658 おかみさん 言ってますがね。 じゃあ その物音を聞いて➡ 157 00:12:05,658 --> 00:12:08,494 治助さんが飛んできて やられたんでしょうか? 158 00:12:08,494 --> 00:12:11,998 源さんは 何と言ってるえ? へえ そいつが 知らせが来て➡ 159 00:12:11,998 --> 00:12:15,034 あっしが 下っ引きの平吉を連れて 山崎屋へ行った時にゃあ➡ 160 00:12:15,034 --> 00:12:17,670 彦兵衛と新吉で もう石灯籠をどかして➡ 161 00:12:17,670 --> 00:12:19,706 治助の死骸を 引っ張り出したあとだったし➡ 162 00:12:19,706 --> 00:12:23,176 お小夜の方も 部屋へ運び込んで 医者が手当てしてました。 163 00:12:23,176 --> 00:12:26,012 庭なんぞはね もう みんなで踏み荒らして もう めちゃめちゃでさあ。➡ 164 00:12:26,012 --> 00:12:28,314 何の手がかりもつかめねえ。 165 00:12:28,314 --> 00:12:30,683 畝の旦那は そのあとから おいでになったんですから。 166 00:12:30,683 --> 00:12:34,520 で まあ とにかく 彦兵衛から 話をお聞きになりやしてね。 167 00:12:34,520 --> 00:12:37,724 (源三郎)くれぐれも見落とさねえように 捜してくれよ。 へい! 168 00:12:43,863 --> 00:12:47,333 どこへ 今夜は行ってたんだい? 169 00:12:47,333 --> 00:12:51,871 松田先生の所へ お療治に行っておりました。➡ 170 00:12:51,871 --> 00:12:55,208 いつもは 5日おきに参るんでございますが➡ 171 00:12:55,208 --> 00:12:57,877 川へ落ちたりして 冷えたんでございましょうか➡ 172 00:12:57,877 --> 00:13:03,483 久しく忘れていた胃の痛みが いえ しくしくとではございましたが…➡ 173 00:13:03,483 --> 00:13:06,986 大事になる前に 先生に押していただこうと➡ 174 00:13:06,986 --> 00:13:09,656 いつもより遅い時刻に 家を出まして➡ 175 00:13:09,656 --> 00:13:11,591 戻りましたのは➡ 176 00:13:11,591 --> 00:13:14,293 五つ半を 過ぎておりましたでしょうか…。 177 00:13:16,829 --> 00:13:19,666 (彦兵衛)今夜は 小僧の市之助が➡ 178 00:13:19,666 --> 00:13:23,303 母親が急病だという知らせで 石川島へ帰っておりまして 留守。➡ 179 00:13:23,303 --> 00:13:25,238 それは承知しておりましたが…。 180 00:13:25,238 --> 00:13:27,173 (戸をたたく音) 開けとくれ! 181 00:13:27,173 --> 00:13:30,009 (戸をたたく音) 私だよ。 開けとくれ! 182 00:13:30,009 --> 00:13:31,944 (彦兵衛) 番頭さんも新吉もいるはずですし➡ 183 00:13:31,944 --> 00:13:34,947 お小夜も何をしているのかと 腹を立てまして…。 184 00:13:37,884 --> 00:13:41,587 お帰りなさいまし。 何やってるんだい! えっ? 185 00:13:45,558 --> 00:13:48,394 あたしが出かけてるのは みんな 分かってるんだ。 186 00:13:48,394 --> 00:13:51,030 もう帰ってくる頃だろうと 待っていてくれても➡ 187 00:13:51,030 --> 00:13:52,965 よさそうなもんじゃないか。 188 00:13:52,965 --> 00:13:56,202 待っていてくれても よさそうなもんじゃないか! 189 00:13:56,202 --> 00:13:59,105 すいません…。 番頭さんは? 190 00:13:59,105 --> 00:14:03,943 さあ? もう 休ませていただいてたもんですから…。 191 00:14:03,943 --> 00:14:07,814 おや もう寝てたのかい? そりゃ すまないことしたね。 192 00:14:07,814 --> 00:14:10,616 もういいよ。 戸締まりをして お休み。 193 00:14:18,991 --> 00:14:20,993 お小夜? 194 00:14:25,298 --> 00:14:27,300 (彦兵衛)お小夜? 195 00:14:29,001 --> 00:14:32,672 番頭さん? 新吉! 196 00:14:32,672 --> 00:14:43,015 ♬~ 197 00:14:43,015 --> 00:14:44,951 (猫の鳴き声) 198 00:14:44,951 --> 00:15:01,968 ♬~ 199 00:15:01,968 --> 00:15:04,003 もう びっくりいたしまして➡ 200 00:15:04,003 --> 00:15:06,806 大きな声で お梅を呼んだんでございますが➡ 201 00:15:06,806 --> 00:15:10,143 あの子は 耳が少々遠うございまして 来てくれません。➡ 202 00:15:10,143 --> 00:15:14,013 お小夜を抱き上げてみますと どうやら生きております。 203 00:15:14,013 --> 00:15:16,015 番頭さんは と見ますと➡ 204 00:15:16,015 --> 00:15:20,787 これはもう頭から大層血を流して 既に息が絶えておりました。 205 00:15:20,787 --> 00:15:22,722 お恥ずかしい話ですが➡ 206 00:15:22,722 --> 00:15:27,293 何をどうしたらいいか分からず ぼ~っとしておりました。 207 00:15:27,293 --> 00:15:31,998 そこへ 裏木戸が開く音がして 新吉が戻ってまいりましたので➡ 208 00:15:31,998 --> 00:15:36,169 2人して お小夜を座敷へ上げ お医者様に来ていただいて…。 209 00:15:36,169 --> 00:15:39,505 あっ… お届けは そのあとになってしまいまして。 210 00:15:39,505 --> 00:15:41,707 まことに申し訳ございません。 211 00:15:52,518 --> 00:15:57,690 疑わしい者といえば…➡ 212 00:15:57,690 --> 00:16:02,128 外から戻った 彦兵衛と新吉ってことになるな。 213 00:16:02,128 --> 00:16:05,465 新吉は 「こっから戻った」と そう言ってやすが…。 214 00:16:05,465 --> 00:16:08,801 ええ。 新吉が帰ったあと 俺が来て➡ 215 00:16:08,801 --> 00:16:11,471 山崎屋の話 聞かされていたところよ。 216 00:16:11,471 --> 00:16:15,341 新吉の様子に 何か お気付きになりませんでしたか? 217 00:16:15,341 --> 00:16:17,977 いいえ。 ちょいと 親分➡ 218 00:16:17,977 --> 00:16:21,848 新吉さんが怪しいって言うんですか? とんでもないことですよ。 219 00:16:21,848 --> 00:16:25,718 あんな親孝行者が 何で お父っつぁんを 殺さなきゃいけないんですか。 220 00:16:25,718 --> 00:16:28,621 いやいや 別に その 新吉を うたぐってるってわけじゃねえけどもよ。 221 00:16:28,621 --> 00:16:31,824 若旦那もおっしゃるとおり 外から戻った彦兵衛と新吉➡ 222 00:16:31,824 --> 00:16:34,660 一応は洗ってみなくちゃ…。 ねえ? 223 00:16:34,660 --> 00:16:39,165 かわせみの女連中は 面食いだからな。 えっ? 224 00:16:39,165 --> 00:16:42,001 新吉が もっと不細工なご面相をしていたら➡ 225 00:16:42,001 --> 00:16:46,672 「案外 親も殺しかねねえ」と そう言ったかもしれねえが。 なあ 嘉助。 226 00:16:46,672 --> 00:16:49,008 そうは申しておりませんけども…。 227 00:16:49,008 --> 00:16:52,044 でも あんな仲のいい親子は ないんでございますよ。 228 00:16:52,044 --> 00:16:54,881 おい お吉っつぁん…。 東吾様は じゃあ➡ 229 00:16:54,881 --> 00:16:58,184 神林の兄上様に お刀 お向けになれますか? 230 00:16:58,184 --> 00:17:01,954 これ! よさねえかよ… もう。 ヘヘッ。 231 00:17:01,954 --> 00:17:04,257 フフッ…。 232 00:17:12,131 --> 00:17:15,134 (通之進)なあ 香苗。 (香苗)はい。 233 00:17:15,134 --> 00:17:20,006 お前なあ 木島んとこの 2番目の娘ってのを知ってるか? 234 00:17:20,006 --> 00:17:22,475 木島様…➡ 235 00:17:22,475 --> 00:17:26,812 綾様ですね。 ええ 存じております。 ふ~ん。 236 00:17:26,812 --> 00:17:29,482 なかなか いい子だっていうじゃねえか。 はい。 237 00:17:29,482 --> 00:17:32,151 実はな 今日➡ 238 00:17:32,151 --> 00:17:36,022 「どっかに いい婿は いねえか」って そう言われたんだが…。 239 00:17:36,022 --> 00:17:41,160 綾様なら そりゃ どなたも 「もらいたい」と そう申されましょう。 240 00:17:41,160 --> 00:17:46,966 いや だからよ そんなに いい子なら 何も よそへ やることはねえやな。 241 00:17:46,966 --> 00:17:50,303 東吾にと 俺は思ったんだが…。 242 00:17:50,303 --> 00:17:52,238 あなた…。➡ 243 00:17:52,238 --> 00:17:56,175 るい様を どうあそばすおつもりですか? 244 00:17:56,175 --> 00:17:59,045 (通之進)それなんだが…➡ 245 00:17:59,045 --> 00:18:03,616 あれだとてな いつまでも ずるずると引っ張っといちゃあ➡ 246 00:18:03,616 --> 00:18:06,252 かえって罪だ。 247 00:18:06,252 --> 00:18:09,789 切るなら 今のうちに…。 あなた! 248 00:18:09,789 --> 00:18:13,259 それが情けというものだと 俺は思うんだが…。 249 00:18:13,259 --> 00:18:17,797 では どうしても家へは入れられぬと おっしゃるのですか? 250 00:18:17,797 --> 00:18:20,466 いいかい 香苗。 251 00:18:20,466 --> 00:18:25,137 東吾のわがままのために 三河以来の この神林の家が➡ 252 00:18:25,137 --> 00:18:30,009 もし 潰れるようなことにでもなってみろ➡ 253 00:18:30,009 --> 00:18:34,847 るいだとて そりゃあ つらい思いをしなくちゃなんねえ。 254 00:18:34,847 --> 00:18:37,850 そいつは ふびんだ。 255 00:18:37,850 --> 00:18:42,555 「情けが仇」ってやつだ。 それこそな…。 256 00:18:49,161 --> 00:18:51,497 畝様➡ 257 00:18:51,497 --> 00:18:54,800 おひとつ いかがですか? あっ… いえ。 258 00:18:56,369 --> 00:19:00,306 彦兵衛と お小夜 だいぶ年が離れてるようだが…。 259 00:19:00,306 --> 00:19:04,076 はい。 家つきのお小夜は 今年で21。 260 00:19:04,076 --> 00:19:07,780 彦兵衛の方は 35と聞いております。 うむ…。 261 00:19:07,780 --> 00:19:12,618 彦兵衛さんの生まれたうちっていうのは 油屋っていっても ごく小さな…➡ 262 00:19:12,618 --> 00:19:14,653 おまけに 三男坊のこってすから➡ 263 00:19:14,653 --> 00:19:18,791 のれん分けして 店を持たせてもらえるか どうかも分からねえ。 264 00:19:18,791 --> 00:19:21,694 それが 山崎屋ほどの店の 主になれたんですから➡ 265 00:19:21,694 --> 00:19:25,464 まあ 一生懸命やったらしゅうござんすよ。 うん。 266 00:19:25,464 --> 00:19:30,136 夫婦の間は うまくいってるのかい? さあ? そっちの方は…。 267 00:19:30,136 --> 00:19:33,639 何しろ 一回りの余も 年が違っておりましたから➡ 268 00:19:33,639 --> 00:19:37,276 しっくりいかないところも あったようでござんすね。 269 00:19:37,276 --> 00:19:43,149 ねえ 治助さんの息子さんの新吉さんが お小夜さんのお婿さんになるんだって➡ 270 00:19:43,149 --> 00:19:45,151 そんな噂があったんじゃなかった? 271 00:19:45,151 --> 00:19:50,156 ええ。 だから 彦兵衛さんが婿に来た時は びっくりしましたよ 私たち…。 272 00:19:50,156 --> 00:19:52,158 ねえ。 273 00:19:54,493 --> 00:19:57,830 新吉さんは お小夜さんの4つ年上➡ 274 00:19:57,830 --> 00:20:01,700 彦兵衛さんよりは ず~っとお似合いの ご夫婦ですもの…。 275 00:20:01,700 --> 00:20:03,903 源さん…。 276 00:20:14,013 --> 00:20:17,516 あっ 若旦那。 おう 伝次。 どうだった? 277 00:20:17,516 --> 00:20:21,854 へえ どうも そいつが 妙な具合になってきたんでさあ。 278 00:20:21,854 --> 00:20:23,789 どう 妙な具合なんだ? 279 00:20:23,789 --> 00:20:28,027 治助がね お小夜の帯揚げを握って 死んでいたらしい…。 280 00:20:28,027 --> 00:20:30,329 (お花)まあ~…。 (八造)どういうことなんだい? そりゃ。 281 00:20:30,329 --> 00:20:34,200 まあ 待て…。 おめえが 山崎屋の知らせで 駆けつけた時にゃあ…。 282 00:20:34,200 --> 00:20:36,535 そんなものは持っちゃいませんでしたよ 治助は。 283 00:20:36,535 --> 00:20:39,205 ところが ついさっきになってですね➡ 284 00:20:39,205 --> 00:20:44,043 平吉が 風呂場のたき口ん所で 燃えかけている帯揚げ 見っけて➡ 285 00:20:44,043 --> 00:20:46,946 そいつを引っ張り出して 火を消して 調べてみる。 ところが➡ 286 00:20:46,946 --> 00:20:50,716 こいつに血がついてる! お梅に 「こりゃ 誰んだ?」って聞くと➡ 287 00:20:50,716 --> 00:20:53,352 「おかみさんが いつもしている帯揚げだ」 って返事。 288 00:20:53,352 --> 00:20:55,287 「おめえが これ くべたのか?」 って聞いたら➡ 289 00:20:55,287 --> 00:20:58,190 「いや 私は知りません。 けど 旦那様が さっき この辺を➡ 290 00:20:58,190 --> 00:21:00,126 うろうろしていらっしゃいまして」って そう言うんだよ。 291 00:21:00,126 --> 00:21:02,061 (お花)あの彦兵衛さんが? (伝次)ああ。 292 00:21:02,061 --> 00:21:04,296 旦那が 風呂のたき口 うろうろしてたってのは➡ 293 00:21:04,296 --> 00:21:06,232 おかしいじゃねえか…。 (伝次)だろう? 294 00:21:06,232 --> 00:21:09,034 だから 畝の旦那が 彦兵衛を問い詰めてみた。 295 00:21:13,005 --> 00:21:15,307 (源三郎)おめえが くべたんだな? 296 00:21:17,843 --> 00:21:19,845 はい…。 297 00:21:22,515 --> 00:21:24,850 何もかも申し上げます。 298 00:21:24,850 --> 00:21:29,722 ですから どうか お小夜につきましては お慈悲を…➡ 299 00:21:29,722 --> 00:21:32,725 お情けをおかけくださいませ。 300 00:21:32,725 --> 00:21:37,029 お上の お慈悲を願うなら 何もかも正直に申し上げることだ。 301 00:21:37,029 --> 00:21:39,031 はい。 302 00:21:41,700 --> 00:21:46,038 実は… 私が戻りました時➡ 303 00:21:46,038 --> 00:21:48,874 番頭の治助は まだ生きておりました。 304 00:21:48,874 --> 00:21:50,810 うむ…。 305 00:21:50,810 --> 00:21:54,213 とても助からぬことは 一目見て分かりましたが➡ 306 00:21:54,213 --> 00:21:58,017 それでも まだ虫の息で うめいておりました。 307 00:22:00,653 --> 00:22:05,824 (彦兵衛)治助! しっかりしろ! 治助!➡ 308 00:22:05,824 --> 00:22:07,826 治助…。 309 00:22:16,001 --> 00:22:18,003 治助…。 310 00:22:22,875 --> 00:22:26,712 (彦兵衛)お小夜が息を吹き返してから そっと尋ねますと➡ 311 00:22:26,712 --> 00:22:30,850 「誰かに首を絞められて 気が遠くなりながら➡ 312 00:22:30,850 --> 00:22:33,752 無我夢中で 相手を突き飛ばしたように思う」➡ 313 00:22:33,752 --> 00:22:35,754 そう申しておりました。 314 00:22:39,325 --> 00:22:42,027 (八造)治助さんが おかみさんの首を絞めたから➡ 315 00:22:42,027 --> 00:22:44,530 おかみさんが 夢中で治助さんを突き飛ばした。 316 00:22:44,530 --> 00:22:47,032 それで 治助さんが石灯籠にぶつかった。 317 00:22:47,032 --> 00:22:50,903 その石灯籠の下敷きになって死んだ…。 そう言うんでしょうかねえ? 318 00:22:50,903 --> 00:22:53,706 何だか 話がうますぎるんじゃねえかね。 319 00:22:53,706 --> 00:22:55,641 (伝次)まあ 彦兵衛が言うにはだなあ➡ 320 00:22:55,641 --> 00:22:57,576 「あの石灯籠は 出来が悪くて➡ 321 00:22:57,576 --> 00:23:00,479 いつかの地震で崩れ落ちたのを 店の者が積み上げた。➡ 322 00:23:00,479 --> 00:23:02,414 素人が載っけたもんだから➡ 323 00:23:02,414 --> 00:23:04,650 はずみで倒れることもあったんだろう」と そう言うんだい。 324 00:23:04,650 --> 00:23:07,286 身を守るためでも お小夜が治助を突き飛ばし➡ 325 00:23:07,286 --> 00:23:12,124 それで治助が死んだとなると お小夜は人殺しだ…。 326 00:23:12,124 --> 00:23:14,059 そうなん。 327 00:23:14,059 --> 00:23:17,830 「なんとか お小夜を助けたいと そう考えて 帯揚げを燃した」と➡ 328 00:23:17,830 --> 00:23:20,165 彦兵衛は 畝の旦那に そう言ってるんでやんすがね。 329 00:23:20,165 --> 00:23:22,101 (お花)けど 何だか ちょいと おかしいねえ…。 330 00:23:22,101 --> 00:23:24,036 なんでえ 何が おかしいんだよ? ええ? だって➡ 331 00:23:24,036 --> 00:23:28,040 何だって 番頭の治助さんが おかみさんの首を絞めたりするのさ? 332 00:23:28,040 --> 00:23:31,510 (八造)あっ なるほどな…。 (伝次)治助は 先代からの奉公人だよ。➡ 333 00:23:31,510 --> 00:23:33,846 お小夜が 生まれた頃には もう山崎屋にいて➡ 334 00:23:33,846 --> 00:23:37,182 それこそ おむつの世話からして 育て上げたんだからな。 335 00:23:37,182 --> 00:23:39,685 殺さなきゃならねえ訳は? ありゃしねえやな…。 336 00:23:39,685 --> 00:23:42,321 (戸が開く音) おや? いらっしゃいまし。 337 00:23:42,321 --> 00:23:44,857 (八造)ご苦労さまです。 どうしたい? 源さん。 338 00:23:44,857 --> 00:23:46,792 (源三郎)ああ…➡ 339 00:23:46,792 --> 00:23:49,194 東吾さん 1杯 くれませんか? おう…。 340 00:23:49,194 --> 00:23:52,531 (お花)新しいの つけてきましょう。 ああ 1杯だけでいいんだ。 341 00:23:52,531 --> 00:23:54,733 ああ どうも。 342 00:23:59,305 --> 00:24:04,476 ああ…。 東吾さん➡ 343 00:24:04,476 --> 00:24:08,347 彦兵衛は 「婿に来るんじゃなかった」と そう言って 涙 こぼしてました。 344 00:24:08,347 --> 00:24:11,650 涙? 大の男が 涙をか? ええ。 345 00:24:11,650 --> 00:24:16,488 「山崎屋の婿になりゃあ 油屋の旦那 一軒の主… なれると思って➡ 346 00:24:16,488 --> 00:24:21,994 年の違う お小夜の婿になったのが あたしの誤りだった」と そう言ってね…。 347 00:24:25,164 --> 00:24:27,833 はあ…。 348 00:24:27,833 --> 00:24:34,306 火の用心 さっしゃりやしょう。 349 00:24:34,306 --> 00:24:39,178 (拍子木の音) 350 00:24:39,178 --> 00:24:44,850 ⚟火の用心 さっしゃりやしょう。 351 00:24:44,850 --> 00:24:49,555 あの彦兵衛の涙 うそじゃないと 私はね 思いましたよ。 352 00:24:53,525 --> 00:25:01,633 男と女の仲 疎い疎いと いつも 東吾さんに笑われてる私ですが➡ 353 00:25:01,633 --> 00:25:05,471 夫婦ってものは そろばんずくでなれるもんじゃないと➡ 354 00:25:05,471 --> 00:25:10,342 私にもね 分かるような気がしました。 355 00:25:10,342 --> 00:25:13,846 あの彦兵衛の落とした涙を見ていてね…。 356 00:25:31,163 --> 00:25:34,666 源さんの調べで いろんなことが分かってきた。 357 00:25:34,666 --> 00:25:37,503 何か 出やしたか? うん 出た。 358 00:25:37,503 --> 00:25:40,539 まず第一の不審は 店の帳面。 359 00:25:40,539 --> 00:25:43,675 去年の秋口辺りから 合わせて150両ばかり➡ 360 00:25:43,675 --> 00:25:46,712 使いみちの分からねえ金が出てきて 帳面が合わなくなってる。 361 00:25:46,712 --> 00:25:49,481 まあ…! まさか 治助さんが そのお金を? 362 00:25:49,481 --> 00:25:54,319 治助の荷物 調べてみたら 着物の間から 50両という金が出たそうだよ。 363 00:25:54,319 --> 00:25:57,222 じゃあ やっぱり 治助が? まさか…! 364 00:25:57,222 --> 00:26:00,025 新吉の行李からも…。 ええっ!? 365 00:26:00,025 --> 00:26:01,994 (お吉)お金が出てきたんですか? 366 00:26:01,994 --> 00:26:05,631 いや 金じゃねえ… 恋文だ。 恋文!? 367 00:26:05,631 --> 00:26:08,534 うん。 お小夜が書いた恋文が出てきた。 368 00:26:08,534 --> 00:26:11,136 ああ…。 そのことを彦兵衛さんは➡ 369 00:26:11,136 --> 00:26:13,639 知ってたんですか? 知っていたから➡ 370 00:26:13,639 --> 00:26:18,277 「婿になんぞ 来るんじゃなかった」と 涙を流した。 そうですかえ? 371 00:26:18,277 --> 00:26:20,279 どうかな? 372 00:26:23,482 --> 00:26:27,686 はあ… まあ 見ていな 明日になりゃあ…。 373 00:26:39,031 --> 00:26:41,533 (おもん)行ってらっしゃいまし。 (嘉助)ご苦労さんです。 374 00:26:46,305 --> 00:26:58,317 ♬~ 375 00:26:58,317 --> 00:27:00,619 おっ。 源さん…。 376 00:27:00,619 --> 00:27:02,621 平吉。 (平吉)へい。 377 00:27:04,256 --> 00:27:06,959 (戸をたたく音) (平吉)開けてくれ!➡ 378 00:27:06,959 --> 00:27:08,994 開けてくれ! (戸をたたく音) 379 00:27:08,994 --> 00:27:11,296 (平吉)開けてくれ! 開けてくれ! 380 00:27:13,131 --> 00:27:15,467 あっ…。 381 00:27:15,467 --> 00:27:20,339 彦兵衛は? (新吉)奥に… はい いらっしゃいます。 382 00:27:20,339 --> 00:27:30,649 ♬~ 383 00:27:32,651 --> 00:27:34,987 (戸が開く音) 384 00:27:34,987 --> 00:27:37,890 彦兵衛➡ 385 00:27:37,890 --> 00:27:41,660 お小夜の具合… どうだ? 386 00:27:41,660 --> 00:27:43,595 これはどうも恐れ入ります。 387 00:27:43,595 --> 00:27:46,832 まだ寝たきりでございますが…。 388 00:27:46,832 --> 00:27:50,168 若いかみさん 心配だろう? えっ? 389 00:27:50,168 --> 00:27:53,505 あっ… このような所では なんでございます。 390 00:27:53,505 --> 00:27:55,440 どうぞ あちらの部屋の方へ。 391 00:27:55,440 --> 00:27:57,943 どうぞ… さあ どうぞ。 392 00:27:59,678 --> 00:28:01,680 (戸が閉まる音) 393 00:28:11,623 --> 00:28:13,625 向こうへ行ってろ! 394 00:28:26,138 --> 00:28:32,010 若いだけに お小夜には いろいろと艶っぽい話もあるらしいが…。 395 00:28:32,010 --> 00:28:34,813 とんでもないことでございます。 396 00:28:34,813 --> 00:28:37,849 お小夜に 艶聞など あろうはずがございません。 397 00:28:37,849 --> 00:28:40,485 何だ 知らなかったのか? 398 00:28:40,485 --> 00:28:46,158 いえ… どなたが どのようなことを お耳に入れたかは存じませんが➡ 399 00:28:46,158 --> 00:28:48,660 私は お小夜を信じております。 400 00:28:48,660 --> 00:28:53,865 ハハハハ… 知らぬは亭主ばかりなりだ。 401 00:29:00,005 --> 00:29:02,808 新吉! はい…。 402 00:29:05,244 --> 00:29:09,448 おめえ いつから 主人の女房と懇ろにしていた? 403 00:29:11,049 --> 00:29:13,986 新吉!? 隠しても無駄だぞ! 404 00:29:13,986 --> 00:29:18,624 おめえの行李から お小夜の恋文が出てきたんだ。 405 00:29:18,624 --> 00:29:23,495 主家の娘に手をつけて 知らん顔で 奉公してるおめえも いい度胸だが➡ 406 00:29:23,495 --> 00:29:27,265 亭主の甘いのをいいことに 不義密通を重ねていた お小夜も➡ 407 00:29:27,265 --> 00:29:29,334 フンッ 大したもんだぜ! 408 00:29:29,334 --> 00:29:34,973 違います! それは… いえ それは違います。 409 00:29:34,973 --> 00:29:39,144 確かに あのお文 お嬢様から頂戴いたしました。➡ 410 00:29:39,144 --> 00:29:42,814 でも それは 旦那様が 当家へ おいでになります前のこと。➡ 411 00:29:42,814 --> 00:29:46,652 いや 不義密通などと とんでもございません。➡ 412 00:29:46,652 --> 00:29:48,587 お嬢様は 潔白。 413 00:29:48,587 --> 00:29:52,291 きれいな お体で 旦那様をお迎えになりました。 414 00:29:52,291 --> 00:29:56,828 旦那様… それは 旦那様が誰よりもご承知のはず。 415 00:29:56,828 --> 00:29:59,297 それなら おめえは 「誓って 間違いはなかった」と➡ 416 00:29:59,297 --> 00:30:02,200 おい! そう言えるんだな? 417 00:30:02,200 --> 00:30:04,836 はい。 なら どうして あの文を➡ 418 00:30:04,836 --> 00:30:07,039 いつまでも 未練たらしく持っていたんだい? 419 00:30:08,707 --> 00:30:11,610 体 きれいか知らねえが➡ 420 00:30:11,610 --> 00:30:16,314 心の奥では お互いに 忘れられねえ思い出を… やい! 421 00:30:16,314 --> 00:30:18,517 温め合っていたんじゃねえのかい? 422 00:30:20,519 --> 00:30:24,322 申し訳ございません…!➡ 423 00:30:24,322 --> 00:30:29,027 旦那様との縁談 めでたく相調ったと聞かされた時➡ 424 00:30:29,027 --> 00:30:31,697 お嬢様への思いは ぷっつりと断ち切って…➡ 425 00:30:31,697 --> 00:30:35,200 はい! うそじゃございません。 426 00:30:35,200 --> 00:30:37,135 おやじにも きつく意見されました。➡ 427 00:30:37,135 --> 00:30:39,538 「お文は焼いてしまえ」とも 言われました。➡ 428 00:30:39,538 --> 00:30:43,341 それを焼かなかったのは…➡ 429 00:30:43,341 --> 00:30:46,545 神林様のおっしゃるとおり 手前の未練➡ 430 00:30:46,545 --> 00:30:49,581 このとおり おわびいたします!➡ 431 00:30:49,581 --> 00:30:55,253 お嬢様… いえ おかみさんは ご存じないことでございますから➡ 432 00:30:55,253 --> 00:30:57,723 旦那様…。 もういい➡ 433 00:30:57,723 --> 00:30:59,725 あっちへ行っておくれ。 434 00:31:16,174 --> 00:31:19,878 信じられません 私には…。 435 00:31:21,680 --> 00:31:25,016 そうかねえ…➡ 436 00:31:25,016 --> 00:31:30,522 おめえも うすうす知っていて 「婿になんぞ なるのじゃなかった」と➡ 437 00:31:30,522 --> 00:31:37,028 畝の旦那に涙を見せた…。 そうじゃなかったかい? 438 00:31:37,028 --> 00:31:42,534 みそ汁に毒を盛られたり 川へ突き落とされたりしながら➡ 439 00:31:42,534 --> 00:31:45,203 よく辛抱したねえ…。 440 00:31:45,203 --> 00:31:50,075 「小糠三合持ったら養子になるな」と よく言うが➡ 441 00:31:50,075 --> 00:31:52,277 つらいねえ…。 442 00:31:53,912 --> 00:31:57,549 神林様。 何だい? 443 00:31:57,549 --> 00:32:02,154 治助は なぜ お小夜の首を 絞めたんでございましょうか? 444 00:32:02,154 --> 00:32:04,156 何? 445 00:32:04,156 --> 00:32:07,025 みそ汁に毒を入れ 川へ突き落として➡ 446 00:32:07,025 --> 00:32:10,028 この邪魔なあたしを殺そうとしたのは 分かります。 447 00:32:10,028 --> 00:32:16,001 ですが お小夜を殺してしまったら この山崎屋 乗っ取ろうにも…。 448 00:32:16,001 --> 00:32:19,671 (膝をたたく音) おめえにそう言われて 謎が解けたよ。 449 00:32:19,671 --> 00:32:21,606 えっ? 450 00:32:21,606 --> 00:32:25,310 治助が雨戸をたたいて お小夜を誘い出したというのは➡ 451 00:32:25,310 --> 00:32:27,245 ありゃ うそだ。 452 00:32:27,245 --> 00:32:31,850 では あの お小夜がうそをついていたと そう おっしゃるんでございますか? 453 00:32:31,850 --> 00:32:36,188 そうよ。 治助をおびき出したのは お小夜だ。 454 00:32:36,188 --> 00:32:40,025 お小夜が仕組んだことだったのよ…。 455 00:32:40,025 --> 00:32:43,061 いいか お小夜は➡ 456 00:32:43,061 --> 00:32:47,199 新吉の昔の恋文をタネに 治助から金をゆすられていた。 457 00:32:47,199 --> 00:32:50,535 治助が持っていた50両 あれは お小夜がやったもんだ。 458 00:32:50,535 --> 00:32:56,041 が… いつまでも おめえに知られずに 金をやるわけにはいくまいと➡ 459 00:32:56,041 --> 00:33:00,345 お小夜が治助を殺そうと決心した…。 460 00:33:09,688 --> 00:33:11,690 来てみろ 彦兵衛。 461 00:33:25,003 --> 00:33:30,308 あの晩 お小夜は 「金を渡す」と言って 治助を呼び出し…。 462 00:33:33,712 --> 00:33:38,316 くつ脱ぎへ下りようとして そこで わざと手燭を落とした…。 463 00:33:38,316 --> 00:33:40,318 (お小夜)あっ…。 464 00:33:46,691 --> 00:33:48,693 うっ…! 465 00:33:53,865 --> 00:33:56,701 倒れた治助を ここへ引きずってきて➡ 466 00:33:56,701 --> 00:34:00,472 お小夜は 石灯籠を倒して 治助を殺し➡ 467 00:34:00,472 --> 00:34:06,645 自分は 気を失ったふりをして おめえの帰ってくるのを待っていた…。 468 00:34:06,645 --> 00:34:10,515 お言葉を返すようですが 神林様。 何だい? 469 00:34:10,515 --> 00:34:14,986 非力な お小夜に いくら何でも 石灯籠が倒せましょうか? 470 00:34:14,986 --> 00:34:18,823 フフフッ… 見ていな。 471 00:34:18,823 --> 00:34:21,126 おい 源さん。 (源三郎)ああ。 472 00:34:22,994 --> 00:34:26,665 伝次 「縁の下に丸太が転がってる」と 言ったな。 そいつを出してくれ。 473 00:34:26,665 --> 00:34:28,600 へい。 (平吉)縄も いりますか? 474 00:34:28,600 --> 00:34:30,535 ああ その縄で この松の木に➡ 475 00:34:30,535 --> 00:34:32,737 その丸太 つるしてくれ。 分かりやした。 476 00:34:35,840 --> 00:34:54,526 ♬~ 477 00:34:54,526 --> 00:34:56,528 いいか 彦兵衛。 478 00:35:01,967 --> 00:35:03,969 やいっ! 479 00:35:09,841 --> 00:35:12,677 (石灯籠が崩れる音) 源さん お小夜を早く! 480 00:35:12,677 --> 00:35:14,980 伝次! 平吉! (伝次 平吉)へい! 481 00:35:14,980 --> 00:35:26,291 ♬~ 482 00:35:26,291 --> 00:35:29,160 ⚟(お小夜) あたしが何をしたっていうんですか…。 483 00:35:29,160 --> 00:35:31,096 (新吉)お待ちください。 お願いでございます!➡ 484 00:35:31,096 --> 00:35:33,031 お待ちください。 お願いでございます! 485 00:35:33,031 --> 00:35:36,034 どけ…! ほら! 486 00:35:36,034 --> 00:35:38,670 ⚟(お小夜)あなた! 487 00:35:38,670 --> 00:35:44,009 悪い夢を見たと思って 早く忘れることだ。 488 00:35:44,009 --> 00:35:45,944 なあ 彦兵衛…。 489 00:35:45,944 --> 00:36:01,960 ♬~ 490 00:36:09,634 --> 00:36:12,270 (おもん)ああ お帰りなさいまし。 おう。 491 00:36:12,270 --> 00:36:14,205 お帰りなさいまし。 492 00:36:14,205 --> 00:36:17,642 嘉助さんが 山崎屋の市之助さん 連れてきてくれましたよ。 493 00:36:17,642 --> 00:36:19,644 そうか。 494 00:36:25,383 --> 00:36:27,352 (戸が開く音) 495 00:36:27,352 --> 00:36:29,354 おう 市之助か。 496 00:36:31,656 --> 00:36:34,492 おっ母さんの病気 もういいのか? 497 00:36:34,492 --> 00:36:38,830 (市之助)いえ… 石川島へ帰りましたら おっかあ ぴんぴんしてるんです。 498 00:36:38,830 --> 00:36:41,866 「病気じゃない。 そんな使いは出した覚えがない」って➡ 499 00:36:41,866 --> 00:36:45,170 そう言うんです。 ふ~む…。 500 00:36:45,170 --> 00:36:48,673 そうか… いや 病気でねえなら何よりだ。 501 00:36:48,673 --> 00:36:50,608 ところでな 市之助。 (市之助)はい。 502 00:36:50,608 --> 00:36:55,847 彦兵衛を川へ落っことした男のことを 詳しく話してくれねえか。 503 00:36:55,847 --> 00:36:59,317 暗くて 顔は よく見えませんでした。 504 00:36:59,317 --> 00:37:03,121 けど 「随分 大きい人だなあ」と思いました。 505 00:37:03,121 --> 00:37:06,991 大きい人? うん。 よし ついでに もう一つ➡ 506 00:37:06,991 --> 00:37:12,130 おめえが川へ飛び込んで 旦那を助けた時 旦那は溺れかけていたのか➡ 507 00:37:12,130 --> 00:37:14,966 それとも 泳ごうとしていたのか どっちだ? 508 00:37:14,966 --> 00:37:19,471 泳ぎを知らない者ですと 助けに行った者に しがみついて➡ 509 00:37:19,471 --> 00:37:21,506 こっちまで溺れることが よくあります。 うむ。 510 00:37:21,506 --> 00:37:24,275 だから 用心して行ったんです。 511 00:37:24,275 --> 00:37:28,813 けど 旦那様は 私が帯をつかんで引っ張ると➡ 512 00:37:28,813 --> 00:37:31,483 体を楽に寝かして 浮いてましたから…。 513 00:37:31,483 --> 00:37:34,986 そうか… う~ん。 514 00:37:41,159 --> 00:37:45,029 (嘉助)若旦那 平吉が来ましたが。 515 00:37:45,029 --> 00:37:47,031 おう どうしたい? 516 00:37:48,833 --> 00:37:50,869 じゃあな。 517 00:37:50,869 --> 00:37:54,005 山崎屋から 新吉が暇取りました。 518 00:37:54,005 --> 00:37:57,675 えっ 新吉さんが? そうかい。 519 00:37:57,675 --> 00:38:00,645 新吉は 源さんが預かってくれたな? へい。 520 00:38:00,645 --> 00:38:03,448 よし 山崎屋 見張っていてくれ。 (平吉)へい。 521 00:38:03,448 --> 00:38:05,784 彦兵衛が のこのこ出かけていくか➡ 522 00:38:05,784 --> 00:38:08,686 あるいは 誰か 彦兵衛を訪ねてくるはずだ。 523 00:38:08,686 --> 00:38:11,122 誰か? うん。 524 00:38:11,122 --> 00:38:13,057 誰なんです? 525 00:38:13,057 --> 00:38:16,628 恐らく 体の大きな…。 526 00:38:16,628 --> 00:38:18,563 あっ…! 527 00:38:18,563 --> 00:38:27,805 ♬~ 528 00:38:27,805 --> 00:38:32,510 ありゃ 彦兵衛が療治に通ってる 松田源右衛門ですぜ。 529 00:38:34,979 --> 00:38:40,652 (戸をたたく音) 530 00:38:40,652 --> 00:39:01,606 ♬~ 531 00:39:01,606 --> 00:39:04,943 困りますよ 先生。 役人の目が光っているんです。 532 00:39:04,943 --> 00:39:06,878 (源右衛門) 「治療に来た」と言えば 構わん。 533 00:39:06,878 --> 00:39:13,251 全ては うまく片づいたんだ。 もらうものをなあ 頂きましょうか。 534 00:39:13,251 --> 00:39:15,954 もう少し待ってください。 何!? 535 00:39:15,954 --> 00:39:19,824 お小夜の罪状が決まるまで 役人が 金箱を持っていってしまったんです。 536 00:39:19,824 --> 00:39:21,826 うそを言うな! (戸をたたく音) 537 00:39:21,826 --> 00:39:25,330 うそじゃねえ! 野郎! 御用だ! 538 00:39:31,135 --> 00:39:33,137 御用だ! 539 00:39:36,641 --> 00:39:38,643 ああ…! 540 00:39:41,145 --> 00:39:43,147 ああ~ この野郎! 541 00:39:43,147 --> 00:39:46,284 うっ…! 542 00:39:46,284 --> 00:39:49,587 あ~… ああっ! 543 00:39:51,656 --> 00:39:53,992 うわっ…。 544 00:39:53,992 --> 00:39:55,994 うわ~! 545 00:39:58,663 --> 00:40:01,666 野郎! この野郎…! 546 00:40:04,836 --> 00:40:07,839 この野郎! 547 00:40:11,175 --> 00:40:13,478 逃がすな! 548 00:40:17,849 --> 00:40:40,104 ♬~ 549 00:40:40,104 --> 00:40:45,543 好きでも嫌いでもない お小夜のところへ 彦兵衛が婿入りしたのは➡ 550 00:40:45,543 --> 00:40:53,251 山崎屋の主になれる 油屋の旦那で 思うまま生きていけると思ったからだ…。 551 00:40:56,721 --> 00:41:01,159 が… 来てみると 先代からの忠義者の番頭 治助が➡ 552 00:41:01,159 --> 00:41:03,661 しっかりと金箱を押さえて➡ 553 00:41:03,661 --> 00:41:07,999 商売のことも 彦兵衛より治助の方が顔も利き➡ 554 00:41:07,999 --> 00:41:10,001 手を出す隙もねえ…。 555 00:41:11,669 --> 00:41:14,505 ⚟(新吉)はい。 では早速 お梅に言い聞かせておきます。 556 00:41:14,505 --> 00:41:16,507 ⚟(お小夜)お願いね。 ⚟(新吉)はい。 557 00:41:18,309 --> 00:41:20,311 あっ… では。 558 00:41:32,323 --> 00:41:34,859 ねえ お小夜➡ 559 00:41:34,859 --> 00:41:37,895 私は 一体 どうしたらいいんだろうねえ? 560 00:41:37,895 --> 00:41:40,031 どうって? 561 00:41:40,031 --> 00:41:44,869 私はね ここのうちのために 一生懸命 働きたいんだよ。 562 00:41:44,869 --> 00:41:48,206 アハハッ! なにも あなたが働かなくったって➡ 563 00:41:48,206 --> 00:41:50,208 治助だって 新吉だって いるじゃありませんか。 564 00:41:50,208 --> 00:41:52,210 お小夜…。 お父っつぁんだって➡ 565 00:41:52,210 --> 00:41:54,979 商売のことは みんな 治助に任せて 遊んでましたよ。 566 00:41:54,979 --> 00:41:57,915 (彦兵衛)私はねえ…。 (お小夜)ねえ この着物➡ 567 00:41:57,915 --> 00:42:01,285 反物で見るより仕立てたら ずっと よくなったでしょう。 568 00:42:01,285 --> 00:42:03,221 ねえ そう思いません? 569 00:42:03,221 --> 00:42:07,225 そんなこと聞かれたって 私には分かりませんよ。 570 00:42:09,026 --> 00:42:11,329 (お小夜)はあ… 張り合いのない人。 571 00:42:15,166 --> 00:42:17,502 いろいろと暮らしている時に➡ 572 00:42:17,502 --> 00:42:21,005 以前 お小夜と新吉が 恋仲だったらしいという噂も➡ 573 00:42:21,005 --> 00:42:23,041 彦兵衛の耳に入ったろう…。 574 00:42:23,041 --> 00:42:27,879 彦兵衛は 新吉の荷物を調べて お小夜の恋文を見つけた。 575 00:42:27,879 --> 00:42:30,181 恋文を見つけて➡ 576 00:42:30,181 --> 00:42:33,518 おかみさんを 責めようとはしなかったんですか? 577 00:42:33,518 --> 00:42:35,853 男だ 腹も立ったろう。 578 00:42:35,853 --> 00:42:40,525 お小夜を責めて 一切を白状させたい 気持ちにも駆られたろうが…➡ 579 00:42:40,525 --> 00:42:43,194 彦兵衛に お小夜が責められるか? 580 00:42:43,194 --> 00:42:46,030 えっ どうして? 581 00:42:46,030 --> 00:42:48,332 そろばんずくで来た婿を➡ 582 00:42:48,332 --> 00:42:52,703 昔 女房に どんな男がいたところで 文句は言えねえ。 583 00:42:52,703 --> 00:42:57,041 それが 彦兵衛の胸の底 腹の奥に➡ 584 00:42:57,041 --> 00:43:00,845 だんだんと 大きなしこりを こしらえさせていったんだろう…。 585 00:43:02,814 --> 00:43:06,284 こんな辛抱をさせられるくらいならと 彦兵衛は考えた。 586 00:43:06,284 --> 00:43:11,489 邪魔な お小夜や治助や新吉を 山崎屋から追い出す手だてをな。 587 00:43:11,489 --> 00:43:16,160 商いに向ける頭 それ一筋に絞って 考えたんだ。 588 00:43:16,160 --> 00:43:22,834 じゃあ みそ汁に毒を入れたり 川へ投げ込まれたっていうのも…? 589 00:43:22,834 --> 00:43:28,306 うん。 自分が新吉か治助に狙われていると 世間に思わせようと➡ 590 00:43:28,306 --> 00:43:30,241 彦兵衛が仕組んだことさね。 591 00:43:30,241 --> 00:43:32,944 小細工の好きな男だ…。 592 00:43:35,680 --> 00:43:40,017 彦兵衛は 新吉が ここへ相談に来たのを 見すまして➡ 593 00:43:40,017 --> 00:43:44,322 治助殺しをやるなら 今晩だと そう思った…。 594 00:43:51,529 --> 00:43:54,565 行ってらっしゃいまし。 あと 閉めといてくださいよ。 595 00:43:54,565 --> 00:43:57,034 帰ったら 戸をたたきますから。 はい はい。 596 00:43:57,034 --> 00:44:29,033 ♬~ 597 00:44:29,033 --> 00:44:35,239 (戸をたたく音) 598 00:44:44,549 --> 00:44:46,551 誰? 599 00:44:52,857 --> 00:44:54,892 誰なの? 600 00:44:54,892 --> 00:44:57,395 うっ! ああっ…! うっ。 601 00:45:01,566 --> 00:45:03,568 ⚟(治助)おかみさん? 602 00:45:07,972 --> 00:45:10,775 ⚟(治助)どうかなさいましたか? おかみさん。 603 00:45:13,477 --> 00:45:16,380 あっ おかみさん!?➡ 604 00:45:16,380 --> 00:45:18,349 うっ! 605 00:45:18,349 --> 00:45:20,551 あっ… ああっ! 606 00:45:24,655 --> 00:45:27,692 あとは 俺がやってみせたやり方で➡ 607 00:45:27,692 --> 00:45:34,365 石灯籠を治助の死骸の上へ倒して 新吉の帰りを待っていた。 608 00:45:34,365 --> 00:45:41,172 そんな恐ろしいことをする人とも 見えませんでしたのにね…。 609 00:45:41,172 --> 00:45:44,842 彦兵衛だって 腹からの悪人じゃねえ。 610 00:45:44,842 --> 00:45:53,317 源さんに見せた涙… あれだって うそで流した涙じゃなかろう。 611 00:45:53,317 --> 00:45:58,022 無理やり周りがくっつけて こしらえた夫婦…➡ 612 00:45:58,022 --> 00:46:03,794 心の通わねえ女房と亭主が 知らねえうちに はまり込み➡ 613 00:46:03,794 --> 00:46:06,297 落ちていった地獄だろう…。 614 00:46:08,265 --> 00:46:10,468 地獄? 615 00:46:13,104 --> 00:46:20,611 そんな地獄にゃ… なあ るい 落ちたかねえな。 616 00:46:22,280 --> 00:46:30,154 ♬~ 617 00:46:30,154 --> 00:46:34,825 ⚟(寒行の太鼓の音) 618 00:46:34,825 --> 00:46:41,999 (寒行の太鼓の音) 619 00:46:41,999 --> 00:47:46,497 ♬~ 620 00:47:46,497 --> 00:48:00,010 (寒行の太鼓の音) 621 00:48:00,010 --> 00:48:46,023 ♬~