1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:08,028 ♬~ 3 00:02:08,028 --> 00:02:10,163 おい おい おい スリだよ。 4 00:02:10,163 --> 00:02:13,500 スリ スリ。スリ? 行ってみようぜ。 5 00:02:13,500 --> 00:02:15,435 女だよ。 6 00:02:15,435 --> 00:02:19,306 さあ 見ておくれ➡ 7 00:02:19,306 --> 00:02:22,609 すった財布が どこにあるんだよ! 8 00:02:25,846 --> 00:02:27,781 ⚟どこにあるんだろう。 9 00:02:27,781 --> 00:02:30,317 ⚟たもとじゃねえか? ⚟たもとだよ。 10 00:02:30,317 --> 00:02:32,853 寒い 寒い。 ねえ ちょい ちょいと にいさん➡ 11 00:02:32,853 --> 00:02:36,556 はんてん 貸しておくれなよ。 ⚟おお… へいへい。 12 00:02:38,659 --> 00:02:41,528 (東吾)どうだ? おい。 ございません。 13 00:02:41,528 --> 00:02:45,198 盗られた財布は どこにも…。 14 00:02:45,198 --> 00:02:49,536 どうしてくれんだよ。 ⚟どうなんだよ? これ。 15 00:02:49,536 --> 00:02:52,873 (るい)じゃあ 見間違いだったんですか? 16 00:02:52,873 --> 00:02:54,808 いや 見間違うはずはねえ。 17 00:02:54,808 --> 00:02:59,046 怪しい女と気が付いて 永代橋の先から ず~っと後をつけていたんだ。 18 00:02:59,046 --> 00:03:03,483 案の定 橋を渡ると 向こうから来た 商人風の男に 女が と~んとぶつかった。 19 00:03:03,483 --> 00:03:07,287 「待て!」と男が呼び止め 同時に 女の手首を押さえて➡ 20 00:03:07,287 --> 00:03:10,657 「懐のものを調べてみろ」 そう言ってやるとな➡ 21 00:03:10,657 --> 00:03:14,161 「持って出た財布がなくなっている!」と 男は青くなった。 22 00:03:14,161 --> 00:03:16,163 「盗ったものを出せ!」 女に言ったんだが➡ 23 00:03:16,163 --> 00:03:19,966 「おかしなことを言わないでください」と 女は笑ってるんだよ。 24 00:03:19,966 --> 00:03:23,170 (お吉)まあ ずうずうしい。 「そんなに言うんなら 裸になるから➡ 25 00:03:23,170 --> 00:03:26,073 調べてくれ」と 往来の真ん中で 帯を解いて…。 26 00:03:26,073 --> 00:03:28,308 本当に裸になったんですか!? 27 00:03:28,308 --> 00:03:33,146 ああ 見事な滝夜叉の刺青 筑波おろしの空っ風にさらしてさ。 28 00:03:33,146 --> 00:03:35,682 (お吉)で そのお財布は 出てこなかったんですか? 29 00:03:35,682 --> 00:03:37,617 うん。 30 00:03:37,617 --> 00:03:41,188 仲間に素早く 渡してしまったんじゃないんですか? 31 00:03:41,188 --> 00:03:45,192 そんな隙があるか。 俺は いっときも 女から目を離さなかったんだ。 32 00:03:48,061 --> 00:03:50,864 裸に ぼ~っと見とれて➡ 33 00:03:50,864 --> 00:03:53,900 スリが仲間に財布を渡すのを 見落としてしまったんじゃありませんか? 34 00:03:53,900 --> 00:03:57,204 ばかを言え。 で その女は どうしたんです? 35 00:03:57,204 --> 00:04:01,808 うん 折よく 深川の八造が来合わしたから 八造に後をつけるように頼んでみた。 36 00:04:01,808 --> 00:04:05,679 それにしても 女だてらに 滝夜叉姫の刺青とはねえ。 37 00:04:05,679 --> 00:04:08,148 いい女でした? うむ? 38 00:04:08,148 --> 00:04:11,151 その女ですよ。 どんな顔してました? 39 00:04:13,954 --> 00:04:15,956 はて…? 40 00:04:29,302 --> 00:04:31,505 う~む…。 41 00:04:33,173 --> 00:04:36,076 どうなすったんです? 東吾様。 42 00:04:36,076 --> 00:04:41,882 言われてみると どんな顔の女だったか はっきり覚えてねえな。 43 00:04:41,882 --> 00:04:43,884 ええ~! 44 00:04:43,884 --> 00:04:45,886 ほら ご覧なさい。 45 00:04:45,886 --> 00:04:49,189 裸に見とれて 顔も覚えてないんじゃありませんか。 46 00:04:49,189 --> 00:04:51,124 痛てっ! 47 00:04:51,124 --> 00:04:54,327 (笑い声) 48 00:04:59,533 --> 00:05:02,435 おお! (源三郎)あっ 東吾さん いらっしゃい。 49 00:05:02,435 --> 00:05:04,371 来てたのか。 (源三郎)いや これから 八造と一緒に➡ 50 00:05:04,371 --> 00:05:06,339 かわせみ 行こうかって 言ってたところですよ。 51 00:05:06,339 --> 00:05:08,341 (八造)すいません 若旦那 このとおりだ。 52 00:05:08,341 --> 00:05:10,810 逃げられたのか? へえ。 53 00:05:10,810 --> 00:05:14,648 (お花)ねえ… まったく ドジったらありゃしないよ。 54 00:05:14,648 --> 00:05:16,583 まあ そう叱るな。 55 00:05:16,583 --> 00:05:19,152 俺も さんざん笑われて 逃げ出してきたんだ。 56 00:05:19,152 --> 00:05:22,489 八造がじゃなく てめえが言われてるようで 耳が痛えや。 57 00:05:22,489 --> 00:05:26,293 若旦那に言われて こっそり 後をつけたんですがね➡ 58 00:05:26,293 --> 00:05:29,496 若旦那から あの女 引き継いで ずっとね➡ 59 00:05:29,496 --> 00:05:34,367 女の少し前を 若え男が歩いてたんですよ。➡ 60 00:05:34,367 --> 00:05:37,370 で 女は そいつについて佐賀町を抜けて➡ 61 00:05:37,370 --> 00:05:39,839 下の橋 中の橋 上の橋➡ 62 00:05:39,839 --> 00:05:42,175 霊雲院の塀外を通って➡ 63 00:05:42,175 --> 00:05:44,511 小名木川に架かってる万年橋の➡ 64 00:05:44,511 --> 00:05:47,180 橋だもとまで行ったん。 うん。 65 00:05:47,180 --> 00:06:07,133 ♬~ 66 00:06:07,133 --> 00:06:10,136 あっ ちくしょう! 待ちやがれ! 67 00:06:11,805 --> 00:06:14,708 置いてけ堀か…。 申し訳ありません。 68 00:06:14,708 --> 00:06:18,278 そもそもは 俺がドジだったんだ。 おめえのせいじゃねえや。 69 00:06:18,278 --> 00:06:20,213 ほら 飲め。 へい? あっ➡ 70 00:06:20,213 --> 00:06:25,051 こりゃ どうも 恐れ入ります。 へい。 71 00:06:25,051 --> 00:06:27,954 待てよ。へい? 何です? 72 00:06:27,954 --> 00:06:30,857 「若い男」と言ったな? 職人か? 73 00:06:30,857 --> 00:06:33,493 へえ。 よくお分かりで。 74 00:06:33,493 --> 00:06:35,996 ちくしょうめ! やられたよ…。 75 00:06:35,996 --> 00:06:38,498 東吾さん? そいつは 恐らく➡ 76 00:06:38,498 --> 00:06:41,001 女が「はんてんを貸してくれろ」と言った 相手だ。 77 00:06:41,001 --> 00:06:43,670 (八造)えっ!? はんてんを受け渡すと見せて➡ 78 00:06:43,670 --> 00:06:45,705 陰で財布を…! 79 00:06:45,705 --> 00:06:48,308 あっ! アハハハハッ! 80 00:06:48,308 --> 00:06:51,678 やっぱり 若い女に ずばっと裸になられたら➡ 81 00:06:51,678 --> 00:06:53,613 誰しも 思わず目をそらす。 82 00:06:53,613 --> 00:06:55,548 そこが やつらの つけめさね。 83 00:06:55,548 --> 00:06:58,318 まんまと 財布を仲間に渡した。 84 00:06:58,318 --> 00:07:01,788 手品のタネは はんてんでしたか…。 85 00:07:01,788 --> 00:07:04,491 うん… ちきしょう! 86 00:07:06,259 --> 00:07:09,629 ああ おもんちゃん 萩の間 お膳 急いで。 (おもん)はい! 87 00:07:09,629 --> 00:07:12,465 (嘉助)ああ お帰りなさいまし。 よう! 88 00:07:12,465 --> 00:07:16,269 まあ… お帰りなさいまし。 89 00:07:16,269 --> 00:07:19,172 (源三郎)実は 東吾さん そのスリのことなんですが…。 90 00:07:19,172 --> 00:07:22,475 おいおい 源さん せっかく 忘れかけているものを➡ 91 00:07:22,475 --> 00:07:24,511 またぞろ蒸し返すことはねえだろう。 92 00:07:24,511 --> 00:07:27,147 いえ ちょいと気になる噂がありまして。 93 00:07:27,147 --> 00:07:30,050 おお 何だい? ⚟(嘉助)失礼します。 94 00:07:30,050 --> 00:07:32,018 去年の暮れから 今年にかけて➡ 95 00:07:32,018 --> 00:07:34,888 スリにやられたってのが ひどく多くなってるんですよ。 96 00:07:34,888 --> 00:07:38,291 暮れから 正月にかけて? スリの稼ぎ時だろう。 97 00:07:38,291 --> 00:07:42,495 ところが 今度のは どうにも嫌な連中でしてね。 98 00:07:42,495 --> 00:07:47,367 やられた相手が気が付いて 「泥棒! 財布 返せ!」って言うと➡ 99 00:07:47,367 --> 00:07:50,670 仲間がいて いきなり ずぶりって やるってんです。 100 00:07:50,670 --> 00:07:54,507 まあ…!(嘉助)スリの風上にも 置けねえやつらですね。 101 00:07:54,507 --> 00:07:58,178 昔は スリは職人だって 誇りがありやしたからね。 102 00:07:58,178 --> 00:08:01,448 刃物なんざあ 間違っても使ったもんじゃありません。 103 00:08:01,448 --> 00:08:05,251 相手 傷つけねえばかりか 着物にだって刃物は当てず➡ 104 00:08:05,251 --> 00:08:08,788 てめえの指一本で いい仕事する連中が いたもんですよ。➡ 105 00:08:08,788 --> 00:08:12,459 財布ん中に 大事な書きつけでも 入っていようもんなら➡ 106 00:08:12,459 --> 00:08:16,796 金だけ抜いて 書きつけの入った財布 元の持ち主の懐へ➡ 107 00:08:16,796 --> 00:08:20,967 ちょっとも気付かれずに戻しといた ってくれえなもんですから。 108 00:08:20,967 --> 00:08:25,138 そうでなきゃ 職人とは言えませんよね。 (嘉助)アハハッ。 109 00:08:25,138 --> 00:08:29,009 いや 待ってくださいよ…。 110 00:08:29,009 --> 00:08:35,148 若旦那が捕まえた女スリの背中の刺青 滝夜叉姫だって言いましたね。 111 00:08:35,148 --> 00:08:39,152 また 刺青の話か…。 もう いじめませんよ。 112 00:08:39,152 --> 00:08:43,857 いえいえ 昔 将門の彦六っていう スリがいやしてね。 113 00:08:43,857 --> 00:08:47,293 将門の彦六? へえ。 こいつは名人でしたね。 114 00:08:47,293 --> 00:08:50,163 名人中の名人でしたよ。 ふむ。 115 00:08:50,163 --> 00:08:52,499 彦六が財布をすりましょ➡ 116 00:08:52,499 --> 00:08:55,535 すると 中から小判一枚だけ抜いて➡ 117 00:08:55,535 --> 00:08:58,838 あとは 元の持ち主に すっと返しといたってんですから。 118 00:08:58,838 --> 00:09:01,441 まあ… 随分 妙なスリじゃないの。 119 00:09:01,441 --> 00:09:05,111 ええ それでね 彦六の狙う財布ってのは➡ 120 00:09:05,111 --> 00:09:08,114 十両 二十両と入ってる 金持ちの財布ばっかり。 121 00:09:08,114 --> 00:09:10,784 だから 一枚ぐらい抜かれたって 気が付かねえ人がいる。 122 00:09:10,784 --> 00:09:15,455 そこで 彦六と書いた紙切れを 財布ん中へ入れて➡ 123 00:09:15,455 --> 00:09:19,325 すられたことを知らしてやった ってんですから。 アハハハッ。➡ 124 00:09:19,325 --> 00:09:23,630 キザっていやキザ。 粋ってば粋とも言えるな。 125 00:09:23,630 --> 00:09:26,266 ですからね すられた方も うれしがって➡ 126 00:09:26,266 --> 00:09:29,469 彦六って書いた紙切れを みんなに見せびらかしたりしてね➡ 127 00:09:29,469 --> 00:09:31,504 いっとき 人気があったもんですよ。 128 00:09:31,504 --> 00:09:34,808 スリに人気は アハハハッ おかしな話ね。 (笑い声) 129 00:09:34,808 --> 00:09:38,144 で 嘉助 その彦六は お召し捕りになったのか? 130 00:09:38,144 --> 00:09:41,147 いいえ 殺されちまいましたよ。 131 00:09:41,147 --> 00:09:45,018 殺された…!? (嘉助)へえ。 所もあろうに➡ 132 00:09:45,018 --> 00:09:50,290 平 将門を祭ってあるといわれる 神田明神の境内で➡ 133 00:09:50,290 --> 00:09:55,128 匕首で ぐさっとやられた 彦六の死骸が見つかったんです。 134 00:09:55,128 --> 00:09:58,031 で 下手人は? 分かりません。 135 00:09:58,031 --> 00:10:03,303 まあ スリ同士の仲間割れじゃねえかって 噂は聞きやしたがね それっきりです。 136 00:10:03,303 --> 00:10:06,172 将門の彦六なあ…。 137 00:10:06,172 --> 00:10:08,174 (嘉助)あっしが こんな話するのはね➡ 138 00:10:08,174 --> 00:10:13,046 彦六には 確か 娘が1人いたっていう噂 聞いたのを思い出したもんですからね。➡ 139 00:10:13,046 --> 00:10:16,182 だって ほら 滝夜叉姫ってのは…。 140 00:10:16,182 --> 00:10:19,185 うん 平 将門の娘だ。 141 00:10:19,185 --> 00:10:21,321 本当。 142 00:10:21,321 --> 00:10:29,062 「我こそは 平親王将門が娘 滝夜叉なるわ」 ってね➡ 143 00:10:29,062 --> 00:10:31,531 言うじゃないの 芝居でも。 144 00:10:31,531 --> 00:10:35,235 いいとこですよ お嬢さん。 思わず 声がかけたくなる。 145 00:10:46,079 --> 00:10:48,381 (方斎)おとせさん。 (おとせ)はい。 146 00:10:50,884 --> 00:10:54,554 (方斎)東吾が 来てくれたらしいが。はい。 147 00:10:54,554 --> 00:10:57,056 (方斎)稽古が済んだら 呼んでくれませんか。 148 00:10:57,056 --> 00:11:00,927 この間のわびに 飯倉の観月亭へでも連れてって➡ 149 00:11:00,927 --> 00:11:03,296 飯を食わしたい。 はい。 150 00:11:03,296 --> 00:11:05,365 (善助)おやおや それじゃあ➡ 151 00:11:05,365 --> 00:11:08,168 おとせさんが せっかく 腕によりをかけて作った おかずが➡ 152 00:11:08,168 --> 00:11:11,504 無駄になっちまいましたね。 153 00:11:11,504 --> 00:11:13,840 おかずは 明日 食べていただきます。➡ 154 00:11:13,840 --> 00:11:16,743 せっかく 松浦先生が ああ おっしゃって いらっしゃるんですもの➡ 155 00:11:16,743 --> 00:11:20,513 ねえ 神林様 お出かけくださいましよ。 156 00:11:20,513 --> 00:11:23,016 ええ ごちそうになってきましょう。 157 00:11:23,016 --> 00:11:25,518 ああ よかった。 158 00:11:28,521 --> 00:11:31,858 心配だったんです おとせさん。 うん? 159 00:11:31,858 --> 00:11:36,029 いえ 若先生が もう怒って ここへは いらっしゃらないんじゃないかって。 160 00:11:36,029 --> 00:11:37,964 アハハハッ。 161 00:11:37,964 --> 00:11:39,899 (おとせ)あら おまささん…。 162 00:11:39,899 --> 00:11:43,336 (おまさ)こんにちは。 (おとせ)いらっしゃい。 163 00:11:43,336 --> 00:11:45,271 どうぞ 召し上がってください。 164 00:11:45,271 --> 00:11:48,207 (おとせ)まあ… いいんですか? はい。 どうぞ。 165 00:11:48,207 --> 00:11:51,878 (正吉)おまささんだよ 先生。 166 00:11:51,878 --> 00:11:53,813 うん? あっ こら こら。 167 00:11:53,813 --> 00:11:55,748 よそ見をしてはいけないぞ。 168 00:11:55,748 --> 00:11:59,552 (正吉)先生がしてんじゃないか よそ見。 169 00:11:59,552 --> 00:12:02,455 おっ アハハハッ…。 (おとせ)善助さん➡ 170 00:12:02,455 --> 00:12:05,158 おまささんが こんなにたくさん 卵を下すって…➡ 171 00:12:05,158 --> 00:12:08,828 茶わん蒸しでも作りましょうかね。 (善助)いや こりゃあ いい卵だ。➡ 172 00:12:08,828 --> 00:12:11,030 アハハハッ… へえ。 173 00:12:13,299 --> 00:12:15,235 若先生。 うん? 174 00:12:15,235 --> 00:12:18,171 観月亭へいらしたら また おまささんに会えるかもしれませんよ。 175 00:12:18,171 --> 00:12:20,673 観月亭の うちの者か? 176 00:12:20,673 --> 00:12:22,609 いえ 働いてるんです。 177 00:12:22,609 --> 00:12:26,012 (おとせ)ご亭主が 観月亭の板前さんだったんですけどね➡ 178 00:12:26,012 --> 00:12:30,683 気の毒に 去年の春 風邪をこじらせて 亡くなって…。 179 00:12:30,683 --> 00:12:34,187 おまささんが 死んだ亭主のご両親の面倒を見ながら➡ 180 00:12:34,187 --> 00:12:36,122 観月亭で働いてるんですよ。 181 00:12:36,122 --> 00:12:38,858 子供は いないのか? (おとせ)ええ いません。 182 00:12:38,858 --> 00:12:46,199 いや まだ子供ができないうちに… 亭主に死なれて 運の悪い人です。 183 00:12:46,199 --> 00:12:50,036 地つきの者か? いえ 目黒村の人です。 184 00:12:50,036 --> 00:12:52,538 目黒村にしては あか抜けている。 185 00:12:52,538 --> 00:12:56,042 もともとは 江戸の人だと聞きましたよ。 186 00:12:56,042 --> 00:13:01,814 江戸に奉公に行ってた 吉二郎って その死んだ亭主と一緒になる時に➡ 187 00:13:01,814 --> 00:13:06,319 親の在所の目黒村へ戻ってきた という話です。 188 00:13:15,294 --> 00:13:17,230 (方斎)東吾➡ 189 00:13:17,230 --> 00:13:21,668 近頃 何か 江戸に珍しい話はないか? 190 00:13:21,668 --> 00:13:24,003 珍しい話ではありませんが➡ 191 00:13:24,003 --> 00:13:28,508 先日 私が しくじりをやらかしましてね。 何をしくじった? 192 00:13:28,508 --> 00:13:31,844 女スリを捕まえながら まんまと逃げられました。 193 00:13:31,844 --> 00:13:33,880 (笑い声) 194 00:13:33,880 --> 00:13:36,683 上手の手から水が漏ったか。 195 00:13:36,683 --> 00:13:40,319 るいに 「背中の刺青に目がくらんだためだ」➡ 196 00:13:40,319 --> 00:13:43,022 アハハハッ! ひどくいじめられましてね。 197 00:13:43,022 --> 00:13:47,193 あの… 背中に刺青をした女のスリなんですか? 198 00:13:47,193 --> 00:13:51,864 うん 滝夜叉姫の刺青でね そりゃ 見事なものでしたよ。 199 00:13:51,864 --> 00:13:55,702 (方斎)わしも 一度 見てみたいもんだな。 アハハハッ。 200 00:13:55,702 --> 00:13:59,338 将門の彦六という スリの名人がおりましてね➡ 201 00:13:59,338 --> 00:14:04,477 それの忘れ形見… 娘ではないかと 源さんとも話していたんです。 202 00:14:04,477 --> 00:14:07,780 (方斎)将門の彦六か…。 はい。 203 00:14:19,959 --> 00:14:22,161 東吾さん! 204 00:14:24,797 --> 00:14:26,733 おお 源さん ちょうどいい。 205 00:14:26,733 --> 00:14:29,702 たった今 狸穴から帰ってきたところだ。 (源三郎)ああ。➡ 206 00:14:29,702 --> 00:14:32,305 せっかくお帰りになったところへ 現れたんじゃ➡ 207 00:14:32,305 --> 00:14:35,842 るいさんに 叱られますかな。 まあ 畝様ったら 人聞きの悪い。 208 00:14:35,842 --> 00:14:37,777 叱りませんから さあ どうぞ➡ 209 00:14:37,777 --> 00:14:39,712 お上がりくださいまし。 さあ 上がれ 上がれ! 210 00:14:39,712 --> 00:14:44,550 それじゃあ ちょいとだけ。 いや 嘉助に 見てもらいたいもんがありましてね。 211 00:14:44,550 --> 00:14:47,453 あっ それじゃ。 212 00:14:47,453 --> 00:14:50,389 何です? あっしに見ろって代物は? 213 00:14:50,389 --> 00:14:54,193 うん… これだ。 214 00:14:54,193 --> 00:14:56,129 (嘉助)おっ これは! 215 00:14:56,129 --> 00:14:59,866 (源三郎)将門の彦六がすった財布に入れて 返しておいたのと同じだな? 216 00:14:59,866 --> 00:15:02,135 ええ そっくり同じやり口ですが。 217 00:15:02,135 --> 00:15:05,471 旦那 どうしてまた これが 旦那のお手に? 218 00:15:05,471 --> 00:15:10,643 この2~3日 すられた財布から 1両だけ金を抜いて➡ 219 00:15:10,643 --> 00:15:13,479 それを入れて また懐へ。 220 00:15:13,479 --> 00:15:18,351 知らぬ間に返しておいたという届けが あちこちから出てきましてね。 221 00:15:18,351 --> 00:15:20,987 まるで 将門の彦六の幽霊だな。 222 00:15:20,987 --> 00:15:23,890 いえ 娘の仕業ですな。 (嘉助)えっ? 223 00:15:23,890 --> 00:15:27,160 彦六と書いたそれは 女の筆…。 224 00:15:27,160 --> 00:15:30,163 じゃあ 例の女スリが…? 225 00:15:30,163 --> 00:15:32,298 嘉助。 へい。 226 00:15:32,298 --> 00:15:35,501 彦六の娘 どこにいて どこへ行ったか 知らねえか? 227 00:15:35,501 --> 00:15:38,004 さあ それが 彦六のやつは➡ 228 00:15:38,004 --> 00:15:41,841 スリ仲間にも決して 自分の居所を言わなかったそうですから。 229 00:15:41,841 --> 00:15:45,511 彦六の娘は 今 いくつぐらいかも 分からねえか? 230 00:15:45,511 --> 00:15:50,316 そうですね… 彦六が殺された時が 50そこそこですから➡ 231 00:15:50,316 --> 00:15:55,021 娘も 二十歳前後ってところじゃ なかったでしょうか。 232 00:15:55,021 --> 00:15:58,324 彦六が殺されたのは6年前…。 うむ。 233 00:15:58,324 --> 00:16:03,462 娘は 今 24~25から30の間と見て 間違いなさそうだな。 234 00:16:03,462 --> 00:16:06,499 (源三郎)ああ。 彦六の女房は どうしたか知らねえか? 235 00:16:06,499 --> 00:16:09,135 こりゃあ もう 当時から いませんでした。 236 00:16:09,135 --> 00:16:13,005 彦六は 娘と2人っきりで暮らしてるって 聞いてますから。 237 00:16:13,005 --> 00:16:18,477 …とすりゃ これは彦六の娘の仕業。 そう考えて 間違いはなさそうですな。 238 00:16:18,477 --> 00:16:20,513 うん…。 239 00:16:20,513 --> 00:16:25,251 (源三郎)とはいって…➡ 240 00:16:25,251 --> 00:16:30,490 その娘が どこにいるのやら まるで 雲をつかむような話ですな。 241 00:16:30,490 --> 00:16:32,825 うん…。 242 00:16:32,825 --> 00:16:34,760 おお 源さん。 はっ。 243 00:16:34,760 --> 00:16:37,496 例の 人を殺して金を奪ってく 荒っぽいスリの方は➡ 244 00:16:37,496 --> 00:16:40,166 その後 どうなってるんだい? 相変わらずですな。 245 00:16:40,166 --> 00:16:43,069 相変わらず 人を殺して? ええ。 246 00:16:43,069 --> 00:16:46,038 ひでえ時には 一晩に3人も。 まあ…。 247 00:16:46,038 --> 00:16:50,510 彦六の娘の方もだが まず そっちから 片つけねえと… なあ 源さん➡ 248 00:16:50,510 --> 00:16:52,845 お上のご威光に傷がつくぜ。 249 00:16:52,845 --> 00:16:57,183 はい。 将軍様のお膝元で 金を持っちゃ往来できないとあっては➡ 250 00:16:57,183 --> 00:16:59,118 八丁堀の名折れです。 251 00:16:59,118 --> 00:17:01,120 よし 俺も手伝う! 252 00:17:01,120 --> 00:17:04,257 いえ あの それは…。 うん? 253 00:17:04,257 --> 00:17:09,128 畝様… 私は何にも申しませんよ。 254 00:17:09,128 --> 00:17:11,998 あ… いや るい様が 何も おっしゃらないとありゃあ➡ 255 00:17:11,998 --> 00:17:13,100 これは余計に… なあ 嘉助。 256 00:17:13,100 --> 00:17:16,002 えっ? エヘヘ…。 257 00:17:16,002 --> 00:17:18,004 (笑い声) 258 00:17:19,739 --> 00:17:29,815 ♬~ 259 00:17:29,815 --> 00:17:31,851 ああ… どうもすいやせん。 260 00:17:31,851 --> 00:17:41,427 ♬~ 261 00:17:41,427 --> 00:17:43,362 よう。 (お花)おや いらっしゃいまし。 262 00:17:43,362 --> 00:17:45,364 一本 つけてくれ。 (お花)はい。 263 00:17:45,364 --> 00:17:47,667 お前さん 神林の若旦那 お見えになったよ。 264 00:17:47,667 --> 00:17:49,602 (八造)はいよ。 ああ~ ああ…。 265 00:17:49,602 --> 00:17:51,837 (八造)いらっしゃいまし。 266 00:17:51,837 --> 00:17:54,307 なかなか スリには ぶつからねえもんだなあ。 267 00:17:54,307 --> 00:17:56,242 へい? こうして わざと➡ 268 00:17:56,242 --> 00:17:58,678 懐を膨らまして 歩いてみてるんだが…。 269 00:17:58,678 --> 00:18:02,548 そりゃ 向こうだって商売ですよ。 若旦那の懐が 小判で膨らんでるのか➡ 270 00:18:02,548 --> 00:18:06,118 銅のおもりで ずしんってきてるのか ちゃんと分かりますよ。 271 00:18:06,118 --> 00:18:08,621 駄目か? じゃあ しょうがねえ➡ 272 00:18:08,621 --> 00:18:12,124 明日っからは 義姉上に金を借りて 持って出てみようかな。 273 00:18:12,124 --> 00:18:14,961 (お花)おや まあ! 奥様から借りた本物の小判➡ 274 00:18:14,961 --> 00:18:18,464 まさか すられやしないでしょうけど 落としたりなさったら…➡ 275 00:18:18,464 --> 00:18:20,399 ねえ? お前さん。 そりゃそうだよ。 276 00:18:20,399 --> 00:18:24,637 やれやれ 刺青の女から こっち とんと信用がなくなっちまったらしいな。 277 00:18:24,637 --> 00:18:27,974 ヘヘヘッ…。 そういうつもりはございませんけどね。 278 00:18:27,974 --> 00:18:30,009 (伝次)あっ やっぱり ここに いらっしゃいましたね。➡ 279 00:18:30,009 --> 00:18:33,279 旦那! おや 畝の旦那も ご一緒で? 280 00:18:33,279 --> 00:18:36,148 何だい? 源さん。 いや➡ 281 00:18:36,148 --> 00:18:39,819 今度は 東吾さんに見てもらいてえもんが ありましてね。 282 00:18:39,819 --> 00:18:42,288 うん? いつかの女スリ…。 283 00:18:42,288 --> 00:18:44,223 見つけたのか!? 284 00:18:44,223 --> 00:18:46,158 確かにそうだとは まだ言えませんが➡ 285 00:18:46,158 --> 00:18:49,061 門前仲町で 人混みを さっと くぐり抜けてった女➡ 286 00:18:49,061 --> 00:18:51,964 おや? と思って つけてみたんですがね…。 287 00:18:51,964 --> 00:18:54,500 今度は 東吾さんに 首実検をしていただきたい。 288 00:18:54,500 --> 00:18:56,435 うむ。 あっしも 行きやしょう。 289 00:18:56,435 --> 00:18:58,437 うん。 290 00:19:02,241 --> 00:19:05,444 おい 源さん? 291 00:19:05,444 --> 00:19:07,947 かわせみ…。 はい。 292 00:19:07,947 --> 00:19:12,251 門前仲町から 伝次が女をつけてくると 女は かわせみに入ったってんですよ。 293 00:19:12,251 --> 00:19:15,454 伝次 おめえ まさか るいや お吉が スリだと言うんじゃあるめえな。 294 00:19:15,454 --> 00:19:17,490 いえいえ! 客だって言うんですよ 嘉助さんに聞いたら。 295 00:19:17,490 --> 00:19:19,625 かわせみに泊まってんのか? 296 00:19:19,625 --> 00:19:23,262 ええ 嘉助さんが そう言ってました。 もう5~6日も泊まってるんだそうで。➡ 297 00:19:23,262 --> 00:19:26,799 何でも 江戸へ 人を捜しに来てるんだそうで➡ 298 00:19:26,799 --> 00:19:29,135 毎日 朝から出かけていくって。 299 00:19:29,135 --> 00:19:31,837 とにかく会ってみよう。 八造。 へい。 300 00:19:39,278 --> 00:19:41,213 (嘉助)この お客さんなんですがね…。 301 00:19:41,213 --> 00:19:44,150 「目黒村 まさ」。 302 00:19:44,150 --> 00:19:48,487 うん? おい この女なら知ってるよ! 303 00:19:48,487 --> 00:19:50,823 (るい 嘉助)えっ? いや 方月館でも会い➡ 304 00:19:50,823 --> 00:19:53,492 飯倉の観月亭で 方斎先生に ごちそうになった時にも会っている。 305 00:19:53,492 --> 00:19:56,395 じゃあ 例の女スリじゃねえんですかい…。 306 00:19:56,395 --> 00:19:58,664 うん…。 ふう…。 307 00:19:58,664 --> 00:20:03,002 しかし あの おまさが どうして ここへ宿を取ったというんだろう? 308 00:20:03,002 --> 00:20:04,937 東吾さん…➡ 309 00:20:04,937 --> 00:20:08,808 おまさは いつかの女スリじゃない はっきり 別人だと➡ 310 00:20:08,808 --> 00:20:10,743 東吾さん 断言できますか? 311 00:20:10,743 --> 00:20:12,711 何? 312 00:20:12,711 --> 00:20:15,014 (源三郎)東吾さん 女スリの顔を 見ていなかったとおっしゃったんで➡ 313 00:20:15,014 --> 00:20:18,517 伺うんですが…。 314 00:20:18,517 --> 00:20:23,856 門前仲町で 伝次が おまさが すれ違った相手に➡ 315 00:20:23,856 --> 00:20:28,027 ドンとぶつかった相手 これを見て よく覚えてるんですがね。 316 00:20:28,027 --> 00:20:31,864 へえ。 深川の貸席の主人で 顔を知ってましたからね。 317 00:20:31,864 --> 00:20:34,900 女をつけて ここへ入るの確かめてから 深川へ行ってみました。 318 00:20:34,900 --> 00:20:37,670 貸席の主人は 金をすられていたというのか? 319 00:20:37,670 --> 00:20:40,573 すられたことにも また財布を懐に戻されたことにも➡ 320 00:20:40,573 --> 00:20:42,575 気が付いていねえようでね➡ 321 00:20:42,575 --> 00:20:45,411 あっしが行って 話をして 財布を調べてみるってえと➡ 322 00:20:45,411 --> 00:20:48,881 15両持って出た金が 14両になっていて➡ 323 00:20:48,881 --> 00:20:51,550 彦六って書いた紙切れが 財布の中に入ってたんですよ。 324 00:20:51,550 --> 00:20:53,486 まあ…! 325 00:20:53,486 --> 00:20:55,421 では あの おまさが…? 326 00:20:55,421 --> 00:20:58,057 あっしが ねえ 若旦那 面 見てみまさあ。 327 00:20:58,057 --> 00:20:59,992 だって 八っつぁん➡ 328 00:20:59,992 --> 00:21:02,895 若旦那が 2度もご覧になって お気付きにならねえものを➡ 329 00:21:02,895 --> 00:21:05,798 お前さんが見たって。 うん それは… そりゃ まあ…。 330 00:21:05,798 --> 00:21:10,302 女は 化粧で まるっきり 違って見えることがあるからな…。 331 00:21:10,302 --> 00:21:14,173 若旦那 顔は化粧で変わりますが➡ 332 00:21:14,173 --> 00:21:19,044 背中の刺青 こいつは どうやったって 変えられませんぜ。 333 00:21:19,044 --> 00:21:22,681 そうか 刺青か… うん! 334 00:21:22,681 --> 00:21:25,718 どうやって 刺青を あらためようっていうんです? 335 00:21:25,718 --> 00:21:28,554 湯へ入る時 そ~っと見てみりゃ分かるさ。 336 00:21:28,554 --> 00:21:32,691 まあ…! 女の人が お風呂に入るのを のぞこうって おっしゃるんですか!? 337 00:21:32,691 --> 00:21:34,627 いや なにも 俺が のぞこうというんじゃねえよ。 338 00:21:34,627 --> 00:21:37,863 るいが見てくれればいいさ。 なあ 源さん。 339 00:21:37,863 --> 00:21:42,334 そりゃ まあ 誰が見たって 刺青が彫ってありゃ… 分かりますがね。 340 00:21:42,334 --> 00:21:44,403 ⚟(お吉)ごめんくださいまし。 341 00:21:44,403 --> 00:21:46,705 お帰りになりましたよ。 342 00:21:46,705 --> 00:21:48,641 おまさが? はい。 343 00:21:48,641 --> 00:21:50,576 ちょいと 顔だけ…。 (嘉助)おい お吉っつぁん➡ 344 00:21:50,576 --> 00:21:53,479 「お湯が空いてますから」って そう言ってみてくれ。 345 00:21:53,479 --> 00:21:55,414 (お吉)はい。 346 00:21:55,414 --> 00:22:07,159 ♬~ 347 00:22:07,159 --> 00:22:09,295 ⚟どうぞ。 ⚟(おまさ)はい。 348 00:22:09,295 --> 00:22:12,198 (嘉助)八っつぁん 来るよ。 あれだ…。 349 00:22:12,198 --> 00:22:20,840 ♬~ 350 00:22:20,840 --> 00:22:23,642 (嘉助)どうだい? (八造)ふ~ん…。 351 00:22:25,511 --> 00:22:28,547 やっぱり あん時の女スリとは 違うようですね。 352 00:22:28,547 --> 00:22:30,683 うん…。 353 00:22:30,683 --> 00:22:33,519 とにかく るい 湯殿をのぞいてみてきてくれ。 354 00:22:33,519 --> 00:22:36,021 はい…。 355 00:22:44,163 --> 00:22:49,702 あの… お加減は いかがでございますか? 356 00:22:49,702 --> 00:22:54,707 ⚟(おまさ)はい。 ありがとう存じます。 いいお湯で…。 357 00:23:31,377 --> 00:23:36,148 白い きれいな肌で あなたにも 見せてあげたいくらいでしたよ。 358 00:23:36,148 --> 00:23:39,685 るい… これを見てごらん。 359 00:23:39,685 --> 00:23:44,023 お湯へいらしたあと 鏡台の所に落ちてたんですよ。 360 00:23:44,023 --> 00:23:49,695 「おとっつぁんを殺した下手人が 知りたければ あす みょうじんさまへ」。 361 00:23:49,695 --> 00:23:51,630 これは…。 362 00:23:51,630 --> 00:23:57,569 やっぱり おまさは 将門の彦六の娘… ということだろう。 363 00:23:57,569 --> 00:24:01,373 でも 刺青はありませんでしたよ。 364 00:24:06,145 --> 00:24:09,448 とにかく それ 元へ戻しておいてください。 365 00:24:19,158 --> 00:24:21,994 すいません。 (嘉助)へえ 何でしょう? 366 00:24:21,994 --> 00:24:27,299 あの… 明日 神田の明神様に お参りに参りたいと存じます。 367 00:24:27,299 --> 00:24:29,835 舟をお願いしたいのですが…。 368 00:24:29,835 --> 00:24:33,539 へえへえ 舟… ええ かしこまりやした。 369 00:24:39,311 --> 00:24:43,515 そうかい おまさは 明日 明神様へ出かけるつもりかい。 370 00:24:43,515 --> 00:24:48,187 では 彦六の…? 間違いなく娘ってことだろう。 371 00:24:48,187 --> 00:24:52,524 じゃあ 滝夜叉姫の刺青 彫った女スリは どういうことになりますんで? 372 00:24:52,524 --> 00:24:56,195 そいつは まだ 俺にも分からねえ…。 373 00:24:56,195 --> 00:25:00,065 とにかく 神田明神の境内 それとなく手配りしておきましょう。 374 00:25:00,065 --> 00:25:02,634 うん。 おまさを呼び出した相手➡ 375 00:25:02,634 --> 00:25:06,271 彦六を殺した下手人か 下手人の仲間だろうからな。 376 00:25:06,271 --> 00:25:08,273 はっ。 377 00:25:10,976 --> 00:26:07,966 ♬~ 378 00:26:10,803 --> 00:26:13,605 (おきみ)行ってらっしゃいませ。 お気を付けて。 379 00:26:15,641 --> 00:26:18,544 あの 舟は…? ええ こちらでございます。 380 00:26:18,544 --> 00:26:20,746 行ってらっしゃいまし。 381 00:26:30,989 --> 00:26:33,492 (嘉助)こちらでございます。 382 00:26:38,297 --> 00:26:41,300 ささっ どうぞ お召しになって。 383 00:27:03,956 --> 00:27:07,259 おめえ 彦六の娘だったのか? 384 00:27:10,629 --> 00:27:16,134 江戸へ出てきたのは 観月亭で俺の話を聞いたから… だな? 385 00:27:16,134 --> 00:27:19,838 はい。 何のためだ? 386 00:27:22,274 --> 00:27:26,812 お父っつぁんの敵が 討ちたかったからでございます。 387 00:27:26,812 --> 00:27:42,661 ♬~ 388 00:27:42,661 --> 00:27:47,499 将門の彦六を殺した相手 誰だか 分かっているのか? 389 00:27:47,499 --> 00:27:51,003 (おまさ)見当だけはついてます。 誰だ? 390 00:27:51,003 --> 00:27:56,208 (おまさ)仲間の丑松だと思います。 丑松…? 391 00:27:58,877 --> 00:28:04,249 丑松ではないかと思った訳は? 392 00:28:04,249 --> 00:28:11,123 丑松は あたしと夫婦になりたいって お父っつぁんに言ってきたんです。 393 00:28:11,123 --> 00:28:15,861 けど あたしには もう約束した人がありましたから➡ 394 00:28:15,861 --> 00:28:22,134 お父っつぁんが突っぱねてくれて… いえ 約束した人がなかったにしても➡ 395 00:28:22,134 --> 00:28:26,805 丑松ってやつは スリのくせに すぐに刃物を使う。 396 00:28:26,805 --> 00:28:29,708 お父っつぁんは それをひどく嫌ってましたから。 397 00:28:29,708 --> 00:28:33,478 丑松は それを恨んで 彦六を…? 398 00:28:33,478 --> 00:28:37,349 はい。 そうだと すぐ思いました。 399 00:28:37,349 --> 00:28:40,852 けど 証拠がありません。 400 00:28:43,655 --> 00:28:49,995 しかし 丑松は 彦六を殺しただけで おめえには 何にもしてこなかったのか? 401 00:28:49,995 --> 00:28:54,299 あたしは お父っつぁんが殺されると すぐに江戸を逃げましたから。 402 00:28:56,768 --> 00:29:00,606 お父っつぁんに 前々から言われてたんです。 403 00:29:00,606 --> 00:29:05,944 「俺に万一のことがあったら 何はさておいて 江戸を出ろ」って。 404 00:29:05,944 --> 00:29:10,616 吉二郎と一緒に江戸を出たんだな? はい。 405 00:29:10,616 --> 00:29:13,252 吉二郎は 板前だと聞いているが➡ 406 00:29:13,252 --> 00:29:15,320 板前のほかに スリの仕事もしていたのか? 407 00:29:15,320 --> 00:29:19,057 いいえ! あの人は 素っ堅気の板前でした。 408 00:29:19,057 --> 00:29:21,460 だから あの人に➡ 409 00:29:21,460 --> 00:29:24,496 お父っつぁんがスリだなんてことも 言いませんでしたし➡ 410 00:29:24,496 --> 00:29:28,967 あの人も 死ぬまで知らなかったと思います。➡ 411 00:29:28,967 --> 00:29:34,273 あたしが お父っつぁんを殺した相手 丑松だと確かめもしないで➡ 412 00:29:34,273 --> 00:29:36,208 江戸を逃げ出したのも➡ 413 00:29:36,208 --> 00:29:39,711 堅気のあの人に迷惑をかけたくないと 思ったからです。 414 00:30:07,172 --> 00:30:12,678 あたし… 捨て子だったんです。 415 00:30:18,316 --> 00:30:22,187 (おまさ)この明神様の境内に 捨てられてたのを➡ 416 00:30:22,187 --> 00:30:26,024 お参りに来た お父っつぁんに拾われて…。 417 00:30:26,024 --> 00:30:28,827 そうだったのか…。 418 00:30:33,699 --> 00:30:40,872 お父っつぁんって人は 青梅の生まれで 青梅は 将門様のふるさとだそうで➡ 419 00:30:40,872 --> 00:30:42,808 それで お父っつぁん➡ 420 00:30:42,808 --> 00:30:48,613 将門様を祭った この神田明神を 自分の氏神様だと信じて➡ 421 00:30:48,613 --> 00:30:51,616 毎月欠かさず お参りに来てました。 422 00:30:57,055 --> 00:31:04,296 明神様の境内で拾った あたしを 将門様から授かった子だって…➡ 423 00:31:04,296 --> 00:31:08,500 お父っつぁん あたしに 「おまさ」って名を付けてくれて➡ 424 00:31:08,500 --> 00:31:12,304 男手一つ かわいがって育ててくれました。 425 00:31:15,841 --> 00:31:18,510 あたしは 面白がって➡ 426 00:31:18,510 --> 00:31:21,546 お父っつぁんから スリの業を教えてもらいました。 427 00:31:21,546 --> 00:31:26,251 けど お父っつぁん 決して あたしに仕事はさせませんでした。 428 00:31:26,251 --> 00:31:30,188 「汚れた指は 俺一代で たくさんだ。➡ 429 00:31:30,188 --> 00:31:33,692 お前まで指を汚すことはねえ」って。 430 00:31:37,696 --> 00:31:44,202 あたしのこと そんなに大切に かわいがってくれた お父っつぁんが➡ 431 00:31:44,202 --> 00:31:47,406 あたしのことがもとで殺されて…。 432 00:31:49,341 --> 00:31:53,545 あたしが恨みを晴らせないんじゃ お父っつぁん 浮かばれません! 433 00:31:58,717 --> 00:32:06,224 吉二郎も死んで もう 何の未練もないんですから あたし…。 434 00:32:16,001 --> 00:32:19,838 おめえは 観月亭で 俺の話を聞いて➡ 435 00:32:19,838 --> 00:32:23,708 丑松が また江戸で仕事をしていると 気が付いた。 436 00:32:23,708 --> 00:32:26,511 どこに丑松がいたっていうんだ? 437 00:32:28,313 --> 00:32:31,683 (おまさ) お角に はんてんを渡したって男➡ 438 00:32:31,683 --> 00:32:34,519 あれが丑松だと思いました。 439 00:32:34,519 --> 00:32:39,024 そうか… お角というのか あの女。 440 00:32:39,024 --> 00:32:41,059 アハハハッ…➡ 441 00:32:41,059 --> 00:32:46,198 初め 俺は あれが おめえじゃねえかと 思っていたんだぜ。 442 00:32:46,198 --> 00:32:50,902 よしてください。 人前で裸になんかなれますか…。 443 00:32:52,537 --> 00:32:59,044 「滝夜叉のお角」 昔から 丑松のイロだった女ですよ。 444 00:32:59,044 --> 00:33:02,647 そんな女がいながら おめえと一緒になりてえと➡ 445 00:33:02,647 --> 00:33:05,283 丑松は 彦六に言っていたというのか? 446 00:33:05,283 --> 00:33:09,154 ずうずうしい野郎だな! 447 00:33:09,154 --> 00:33:13,492 人を殺して金を盗る スリ仲間➡ 448 00:33:13,492 --> 00:33:16,995 あれも きっと 丑松の仕業だと思います。 449 00:33:16,995 --> 00:33:21,867 丑松は 御家人くずれの三郎次って男と組んで➡ 450 00:33:21,867 --> 00:33:25,070 前にも そういう荒い仕事をしてましたから。 451 00:33:33,845 --> 00:33:36,181 (かしわ手) 452 00:33:36,181 --> 00:33:38,516 着いたか? おまさ。 453 00:33:38,516 --> 00:33:42,020 若旦那と一緒に もう その先の茶店に…。 454 00:33:42,020 --> 00:33:45,056 で おまさを呼び出したらしいやつの 姿は? 455 00:33:45,056 --> 00:33:47,192 まだのようだぜ。 456 00:33:47,192 --> 00:33:50,028 まあ おっつけ来るだろう。 俺は ここで見張ってるから。 457 00:33:50,028 --> 00:33:51,963 俺は 裏の方 見てこよう。 うん。 458 00:33:51,963 --> 00:33:53,965 (かしわ手) 459 00:33:57,535 --> 00:34:00,972 (おまさ)あたしが江戸へ帰ってきてると 知ったら➡ 460 00:34:00,972 --> 00:34:06,144 丑松は また何か きっと 仕掛けてくるに違いない… そう思って。 461 00:34:06,144 --> 00:34:10,482 思ったとおり 丑松は おめえのたもとに文を投げ込んできた。 462 00:34:10,482 --> 00:34:15,820 「彦六殺しの下手人を教えてやる」とな。 463 00:34:15,820 --> 00:34:19,691 しかし 相手構わず 突き殺して金を盗る 丑松の仲間➡ 464 00:34:19,691 --> 00:34:21,693 何人いるかも分からねえのに➡ 465 00:34:21,693 --> 00:34:25,830 たった一人で敵が討てると 思っているのか? 466 00:34:25,830 --> 00:34:32,504 (おまさ)あたし 方月館の善助さんから聞いたんです。 467 00:34:32,504 --> 00:34:35,840 善助から… 何をだ? 468 00:34:35,840 --> 00:34:42,614 「大川端のかわせみに行けば 先生に お目にかかれるから」って。 469 00:34:42,614 --> 00:34:48,320 それで あの… ひょっとしたら。 470 00:34:50,021 --> 00:34:54,693 ひょっとしたら おせっかいな俺が 助太刀を買って出る。 471 00:34:54,693 --> 00:34:58,530 アハハハハッ! そうだったのか。 472 00:34:58,530 --> 00:35:01,433 わざと 丑松からの誘いの手紙を落として➡ 473 00:35:01,433 --> 00:35:04,970 女中に見つかるように 落としておいたということだったのか。 474 00:35:04,970 --> 00:35:08,840 はい。 475 00:35:08,840 --> 00:35:10,842 しかしな おまさ…。 476 00:35:10,842 --> 00:35:15,680 いえ でも あたし…。 うん? 477 00:35:15,680 --> 00:35:19,517 当てにはしてなかったんです。 478 00:35:19,517 --> 00:35:24,322 だって… 殺されてもいいんですから もう。 479 00:35:31,496 --> 00:35:36,301 お父っつぁんの形見の この匕首…➡ 480 00:35:36,301 --> 00:35:40,005 丑松に せめて 一突き ぶち込んでやれれば…。 481 00:35:40,005 --> 00:35:41,940 彦六の形見…? 482 00:35:41,940 --> 00:35:44,509 いえ お父っつぁんは こんなもの➡ 483 00:35:44,509 --> 00:35:48,313 ただの一度だって 使ったことはありゃしませんよ。 484 00:35:48,313 --> 00:35:51,516 そんなら おめえも そんなもの振り回さねえこった。 485 00:35:53,151 --> 00:35:57,322 丑松たちのことは 俺たちに任しておきな。 486 00:35:57,322 --> 00:36:00,792 一緒に 奉行所に名乗って出て➡ 487 00:36:00,792 --> 00:36:05,296 丑松たちの悪事の証人になってくれ おまさ…。 488 00:36:14,339 --> 00:36:17,142 分かりました。 489 00:36:17,142 --> 00:36:19,477 決して 悪いようにはしねえよ。 490 00:36:19,477 --> 00:36:25,283 いいえ。 自分だけ 罪を逃れようつもりはございません。➡ 491 00:36:25,283 --> 00:36:30,488 お父っつぁんが「汚すな」って言った この指…➡ 492 00:36:30,488 --> 00:36:34,159 丑松をおびき出すためとは言え➡ 493 00:36:34,159 --> 00:36:37,162 汚しちまったんですから。 494 00:36:42,667 --> 00:36:45,970 (鳥の鳴き声) 495 00:37:29,114 --> 00:37:32,150 (お角)ちょいと おまささん… フフフッ➡ 496 00:37:32,150 --> 00:37:34,819 今まで どこに隠れていたのさ。 497 00:37:34,819 --> 00:37:40,158 お角さん あんたが あたしのお父っつぁんを殺した憎い敵➡ 498 00:37:40,158 --> 00:37:42,160 教えてくれるっていうから来たのに…。 499 00:37:42,160 --> 00:37:46,931 丑松は どこにいるの? どこにいるの! 500 00:37:46,931 --> 00:37:49,667 (丑松)ここにいるよ。➡ 501 00:37:49,667 --> 00:37:52,170 しばらくだったな おまさ…。 502 00:37:52,170 --> 00:37:55,006 やっぱり お前が お父っつぁんを…! 503 00:37:55,006 --> 00:37:57,041 フフフッ… 殺したよ。 504 00:37:57,041 --> 00:38:02,113 邪魔な おやじだ。 片づけちまえば お前も 俺のものだと思ってな…。 505 00:38:02,113 --> 00:38:04,782 フフフッ… アハハハッ! 506 00:38:04,782 --> 00:38:07,685 ところが お前にゃ 素早く逃げられた。 507 00:38:07,685 --> 00:38:12,257 そうだよな… 親子といっても拾った娘だ。 508 00:38:12,257 --> 00:38:16,461 命を張って かばうことはねえのに アハハハッ… ばかな おやじだ。 509 00:38:16,461 --> 00:38:20,131 お黙り! お前にゃ 人の心は分かるまい。 510 00:38:20,131 --> 00:38:25,470 拾った子でも 拾われた娘でも 親子の間に 実も義理もあるか。 511 00:38:25,470 --> 00:38:28,807 あたしをかばって殺された お父っつぁんの仇は➡ 512 00:38:28,807 --> 00:38:31,009 あたしが きっと討ってあげるよ! 513 00:38:32,677 --> 00:38:39,450 ほう あの じじいのために おめえまで命を捨てるっていうのかい? 514 00:38:39,450 --> 00:38:42,287 (三郎次)そんなに いらねえ命…➡ 515 00:38:42,287 --> 00:38:44,222 もらってやるぜ! 516 00:38:44,222 --> 00:38:47,659 ⚟おめえになんざ やれねえな! 517 00:38:47,659 --> 00:38:49,661 あっ! 518 00:38:51,296 --> 00:38:54,165 (おまさ)若先生! おまさ 下がっていろ。 519 00:38:54,165 --> 00:38:57,168 (三郎次)何だ てめえは! (お角)あっ この間の永代の! 520 00:38:57,168 --> 00:38:59,971 覚えていてくれたかい。 ありがとうよ。 521 00:38:59,971 --> 00:39:04,776 俺の方じゃ 悪いが おめえさんの その顔 忘れていたよ。 522 00:39:04,776 --> 00:39:06,711 やっちまえ! 523 00:39:06,711 --> 00:39:08,913 おらっ! 524 00:39:11,549 --> 00:39:13,484 (お角)お前さん 今のうちだよ。 525 00:39:13,484 --> 00:39:15,486 おお! 526 00:39:17,789 --> 00:39:19,791 野郎…! 527 00:39:28,433 --> 00:39:30,368 何しやがんでえ! 528 00:39:30,368 --> 00:39:33,872 何をだと? お縄にしてやるんだよ。 529 00:39:35,640 --> 00:39:38,142 あっ…! 神妙にしねえか! 530 00:39:38,142 --> 00:39:40,445 御用だ! 御用だ! 531 00:39:49,854 --> 00:39:52,156 ああっ ああ…。 532 00:39:54,492 --> 00:39:56,494 (寺川)早く行け。 533 00:39:58,162 --> 00:40:01,165 源さん。 おお 東吾さん。 534 00:40:01,165 --> 00:40:05,036 うん? おまさは どうした? えっ? 535 00:40:05,036 --> 00:40:07,872 あっ そういえば…。 どこ行ったんだ? おまさは。 536 00:40:07,872 --> 00:40:10,875 あっ 若旦那… 何か懐に入ってやすぜ。 537 00:40:15,313 --> 00:40:19,017 「お父っつぁんの墓参りをしてきます」。 538 00:40:19,017 --> 00:40:20,952 あっ!? 待て。 539 00:40:20,952 --> 00:40:23,888 「明日の今頃 ここで…」と書いてあらあ。 540 00:40:23,888 --> 00:40:26,691 「明日 ここで」…? 541 00:40:26,691 --> 00:40:30,528 会って 一緒に 奉行所へ名乗って出るつもりだろう。 542 00:40:30,528 --> 00:40:34,699 源さん それまで そっとしといてやってくれねえか。 543 00:40:34,699 --> 00:40:36,634 俺からも頼む。 544 00:40:36,634 --> 00:40:40,838 ああ いや しかし…。 545 00:40:42,874 --> 00:40:45,777 けど 本当に来ますかね? 546 00:40:45,777 --> 00:40:49,047 若旦那には申し訳ありませんが…。 547 00:40:49,047 --> 00:40:52,350 何だ 嘉助も おまさは来ねえというのか。 548 00:40:52,350 --> 00:40:55,887 ええ ああいう手合いはね お上と聞いただけで➡ 549 00:40:55,887 --> 00:40:58,356 8里も先に すっ飛んで 逃げるやつですからね。 550 00:40:58,356 --> 00:41:02,160 「罪にはしねえ」と言われても 出ちゃ来にくいだろうからねえ。 551 00:41:02,160 --> 00:41:04,829 逃げようと思や どこへだって逃げられるだけに➡ 552 00:41:04,829 --> 00:41:07,165 来ねえだろうと思いますね あっしも。 553 00:41:07,165 --> 00:41:10,835 源さんは どっちだ? 来るか 来ねえか? 554 00:41:10,835 --> 00:41:16,307 おまさのことは分かりませんが… 来ないことの方が多い。 これは確かです。 555 00:41:16,307 --> 00:41:18,242 ちぇっ。 556 00:41:18,242 --> 00:41:21,145 東吾様は お優しいから➡ 557 00:41:21,145 --> 00:41:24,015 きっと きれいな人は みんな 信用しておしまいになるんですよ。 558 00:41:24,015 --> 00:41:25,950 ねえ? お嬢さん。 ウフフッ。 559 00:41:25,950 --> 00:41:28,186 るいも 来ねえと思ってるのか? 560 00:41:28,186 --> 00:41:32,857 それじゃ あなたが お気の毒ですから 来る方へね 賭けましょ。 561 00:41:32,857 --> 00:41:35,693 そうか! るいは 来る方へ賭けてくれるか。ええ。 562 00:41:35,693 --> 00:41:38,730 まあまあ。こりゃ そろそろ お開きってことに。 563 00:41:38,730 --> 00:41:43,034 お吉さん 膳 向こうへ運んでくんな。 そうしましょう。 564 00:41:43,034 --> 00:41:45,737 じゃあ しょうがねえ でもね。 565 00:41:47,338 --> 00:41:49,640 ハハハハッ。 566 00:42:07,158 --> 00:42:10,828 遅いな…。 567 00:42:10,828 --> 00:42:13,631 来ますよ そのうちに…。 568 00:42:34,052 --> 00:42:37,555 やっぱり 俺は お人よしか…。 569 00:42:42,326 --> 00:42:47,031 あらあら こんなに冷たくなって…。 570 00:42:47,031 --> 00:42:49,867 (カラスの鳴き声) 571 00:42:49,867 --> 00:42:54,572 るい こちとらも ねぐらへ帰るとしようぜ。 572 00:42:56,207 --> 00:43:00,044 来ませんでしたね とうとう…。 573 00:43:00,044 --> 00:43:03,915 この上 風邪でもひいちまったんじゃ みんなに笑われるぜ。 574 00:43:03,915 --> 00:43:06,217 アハハハハッ…。 575 00:43:17,295 --> 00:43:19,230 (源三郎)東吾さん どうしてる? 576 00:43:19,230 --> 00:43:21,833 お気の毒に すっかり しょげてらっしゃいますよ。 577 00:43:21,833 --> 00:43:24,669 旦那からも 慰めてやっておくんなさいましよ。 578 00:43:24,669 --> 00:43:27,371 フフフッ…。 579 00:43:32,310 --> 00:43:34,245 おお 源さん➡ 580 00:43:34,245 --> 00:43:39,016 俺のは お人よしの上に 「ばか」がつくみたいだな。 ハハハッ。 581 00:43:39,016 --> 00:43:43,688 まったく 今度だけは参ったよ。 (源三郎)「参った」? 何がです? 582 00:43:43,688 --> 00:43:46,023 それを俺に言わそうってのか? 583 00:43:46,023 --> 00:43:48,326 (源三郎)ひょっとしたら おまさのことじゃありませんか? 584 00:43:48,326 --> 00:43:52,196 ああ…! 畝様 もう勘弁してあげてくださいましな。 585 00:43:52,196 --> 00:43:55,199 いえ おまさなら 東吾さんとの約束 守って➡ 586 00:43:55,199 --> 00:43:57,335 奉行所へ自首して出ました。 587 00:43:57,335 --> 00:43:59,704 ええっ!? 本当か? 源さん。 588 00:43:59,704 --> 00:44:03,140 本当です。 まあ まあ まあ! 589 00:44:03,140 --> 00:44:05,977 手前を名指しで自首してきた おまさ➡ 590 00:44:05,977 --> 00:44:09,480 神林様の特別な お計らいで 取り調べも既に終わり➡ 591 00:44:09,480 --> 00:44:13,284 八造をつけて 目黒村の方へ送らせました。 592 00:44:13,284 --> 00:44:16,654 じゃあ おまささんに おとがめは なかったんですね? 593 00:44:16,654 --> 00:44:21,492 はい。 丑松一味 召し捕りに 力を貸したということで➡ 594 00:44:21,492 --> 00:44:24,996 おまさが 彦六をまねて働いたスリの方は➡ 595 00:44:24,996 --> 00:44:26,931 表向きにはなりませんでした。 596 00:44:26,931 --> 00:44:31,302 そうか…。 いや ありがとう 源さん。 よくやってくれた。 597 00:44:31,302 --> 00:44:35,673 いや… 神林様のお計らいですよ。 598 00:44:35,673 --> 00:44:40,511 けど それなら なぜ おまさは 神田明神へ来なかったんだ? 599 00:44:40,511 --> 00:44:43,414 ねえ! こっちは風邪をひきそうになって➡ 600 00:44:43,414 --> 00:44:45,850 日が暮れるまで 立って待ってましたのにねえ。 601 00:44:45,850 --> 00:44:48,653 全くだ。 ばかばかしい 寒いのに…。 602 00:44:50,321 --> 00:44:53,191 あっ あの…。 はい。 603 00:44:53,191 --> 00:44:55,860 嘉助 呼んでいただけませんか? 604 00:44:55,860 --> 00:44:58,663 あっ はい。 はい 嘉助さんですね。 はい。 605 00:45:00,464 --> 00:45:02,400 あっ あの それから…。 606 00:45:02,400 --> 00:45:04,335 はい。 あの これ➡ 607 00:45:04,335 --> 00:45:07,805 うんと熱かんにしたのを3本ばかり いっぺんに つけてきてくれませんかね。 608 00:45:07,805 --> 00:45:09,740 あの…。 えっ あの…➡ 609 00:45:09,740 --> 00:45:12,977 やけに冷えるんですね 今夜。 うん…。 610 00:45:12,977 --> 00:45:15,680 ええ…。 ああ… はい。 611 00:45:22,486 --> 00:45:24,422 (源三郎)東吾さん…。 うむ? 612 00:45:24,422 --> 00:45:26,824 (源三郎)おまさは 東吾さんとの約束を守って➡ 613 00:45:26,824 --> 00:45:29,160 ちゃんと明神様へ来たんですよ。 614 00:45:29,160 --> 00:45:31,162 なら なぜ 出てこなかったんだ? 615 00:45:31,162 --> 00:45:34,498 東吾さんが いけなかったんですよ。 何? 616 00:45:34,498 --> 00:45:37,835 昼日中から るいさんと べちゃべちゃ くっついたりしてるから。 617 00:45:37,835 --> 00:45:39,770 ばか! そんなことするもんか。 618 00:45:39,770 --> 00:45:42,506 いえ 「してた」って おまさは言ってましたよ。➡ 619 00:45:42,506 --> 00:45:45,409 「だから つむじを曲げて 出ていかなかったんだ」と➡ 620 00:45:45,409 --> 00:45:47,378 おまさは そう言ってましたよ。 621 00:45:47,378 --> 00:46:11,969 ♬~ 622 00:46:11,969 --> 00:46:13,904 何だい? こりゃあ。 623 00:46:13,904 --> 00:46:17,141 (源三郎)たった一輪 明神様の境内に 咲いてたのを覚えてませんか? 624 00:46:17,141 --> 00:46:20,044 うん?(源三郎)ちゃんと 若先生との約束どおり➡ 625 00:46:20,044 --> 00:46:24,482 明神様へ出かけた証拠だ。 渡してくれって おまさがね。 626 00:46:24,482 --> 00:46:27,151 ばか! こんなもの ここへ持ってくるやつがあるか! 627 00:46:27,151 --> 00:46:29,086 いい…! ⚟(笑い声) 628 00:46:29,086 --> 00:46:32,490 しまえ! 早く しまえ! ⚟(お吉)お待たせしました。 629 00:46:32,490 --> 00:46:35,293 おお。 さあさあ 畝様➡ 630 00:46:35,293 --> 00:46:37,995 熱いのをどうぞ。 どうぞ。 631 00:46:37,995 --> 00:46:39,930 あなたも熱い方が…。 632 00:46:39,930 --> 00:46:43,501 ああ そうだ! おい おっきいのでもらおう。ああ…。 633 00:46:43,501 --> 00:46:45,536 はい。 ああ すいません。 634 00:46:45,536 --> 00:46:47,738 あっ どうもどうも。 おお…。 635 00:46:49,840 --> 00:46:52,309 あら…? いい匂い。 636 00:46:52,309 --> 00:46:54,679 (源三郎の せきこみ) 637 00:46:54,679 --> 00:46:57,314 ねえ 何の匂いかしら? 638 00:46:57,314 --> 00:46:59,850 梅じゃありませんか? お嬢さん。 639 00:46:59,850 --> 00:47:03,254 あっ そう! 確かに 梅の香りだわ。 640 00:47:03,254 --> 00:47:05,189 でも どうして 梅が匂う…?➡ 641 00:47:05,189 --> 00:47:08,125 もう咲いたのかしら…。 ⚟(嘉助)失礼しやす。そうかしら。 642 00:47:08,125 --> 00:47:10,127 何か ご用ですか? おおっ 嘉助➡ 643 00:47:10,127 --> 00:47:12,263 実は あのな…。 はい はい。 644 00:47:12,263 --> 00:47:14,965 あっ。 おや 梅ですね。 645 00:47:14,965 --> 00:47:18,002 ほら ちょっと! へえ~ もう梅が咲きましたか? 646 00:47:18,002 --> 00:47:20,271 これだったのね。 かわいい。 647 00:47:20,271 --> 00:47:22,206 あら でも 源さん どうして これを? 648 00:47:22,206 --> 00:47:24,208 えっ いや あの…。 649 00:47:26,077 --> 00:47:30,481 どなたか いい方へ。 あらっ 嫌ね そうだったの? 650 00:47:30,481 --> 00:47:34,285 いえいえいえ! とんでもねえ! (笑い声) 651 00:47:34,285 --> 00:47:57,508 ♬~ 652 00:47:57,508 --> 00:48:01,245 あれ? どっかで梅が咲いてんのかな? 653 00:48:01,245 --> 00:48:13,824 ♬~ 654 00:48:13,824 --> 00:48:17,461 行きましょう 親分…。 (八造)ああ。 655 00:48:17,461 --> 00:48:43,454 ♬~