1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:08,829 ♬~ 3 00:02:22,175 --> 00:02:27,314 (るい)「狐の嫁入り」って 本当にあるもんなんでしょうかね? 4 00:02:27,314 --> 00:02:31,184 (東吾)何? 狐の嫁入りだと? ええ。 5 00:02:31,184 --> 00:02:34,521 伝次親分が嘉助さんに話してたんです。 6 00:02:34,521 --> 00:02:40,027 ここんところ 本所亀戸村に 毎晩のように出るんですって。 7 00:02:40,027 --> 00:02:44,531 あいにく 俺は まだ見たことがねえよ。 8 00:02:44,531 --> 00:02:48,869 そりゃ あたしだって 実際には知りませんよ。 9 00:02:48,869 --> 00:02:55,542 でも 青い狐火の燃えている中を 花嫁さんを乗せた駕籠が宙を飛んで➡ 10 00:02:55,542 --> 00:02:58,045 お婿さんのとこへ走っていく って話ですよ。 11 00:02:58,045 --> 00:03:01,648 ほう 花婿は よっぽど男前なんだな。 12 00:03:01,648 --> 00:03:03,984 あら? どうして。 13 00:03:03,984 --> 00:03:08,655 花嫁が歩いていたんじゃ 間に合わねえで 宙を飛んでくってんだもの➡ 14 00:03:08,655 --> 00:03:13,827 芝居の八重垣姫が恋い焦がれる勝頼様 みたような色男。 15 00:03:13,827 --> 00:03:18,165 もう ばかばかしいって…。 本気にしてくれないのね。 16 00:03:18,165 --> 00:03:20,867 ほれ。ああ…。 アハハハッ…。 17 00:03:32,012 --> 00:03:33,947 よっ! 18 00:03:33,947 --> 00:03:36,183 (嘉助)おはようございます。 おう おはよう。 19 00:03:36,183 --> 00:03:39,686 若旦那… 若旦那が まきを割ってくだすってるって➡ 20 00:03:39,686 --> 00:03:41,621 おきみたちが言うもんだから…。 21 00:03:41,621 --> 00:03:43,557 若旦那に そんなことしていただいたんじゃ➡ 22 00:03:43,557 --> 00:03:45,559 こっちは 身の置きどころがありやせんよ。 23 00:03:45,559 --> 00:03:49,329 なにも おめえが恐縮することはねえやな。 俺だって男だ➡ 24 00:03:49,329 --> 00:03:51,631 このぐれえの仕事をやって 当たりめえだよ。 25 00:03:53,700 --> 00:03:55,635 おい 嘉助。 へい。 26 00:03:55,635 --> 00:03:59,039 伝次が 狐の嫁入りの話をしてた っていうじゃねえか。 27 00:03:59,039 --> 00:04:00,974 へえへえ 狐の嫁入りね。 28 00:04:00,974 --> 00:04:03,877 あっしら ガキの時分にゃあ よく聞いた話ですがね➡ 29 00:04:03,877 --> 00:04:06,847 近頃は とんと聞かなくなったもんだから➡ 30 00:04:06,847 --> 00:04:10,150 伝次親分も珍しがって 話してきやしたが➡ 31 00:04:10,150 --> 00:04:13,487 女どもは みんな 目ぇ丸くして聞いてやしたよ。 32 00:04:13,487 --> 00:04:16,156 あったかくなるってえと 待ちかねたように➡ 33 00:04:16,156 --> 00:04:19,059 妖怪変化の噂が立つなあ…。 ハハハッ。 34 00:04:19,059 --> 00:04:21,862 冬に飽き飽きしたってこってしょうね。 35 00:04:23,663 --> 00:04:25,599 あなた! おう。 36 00:04:25,599 --> 00:04:28,301 畝様が お見えになりましたよ。 おお そうかい。 37 00:04:28,301 --> 00:04:30,303 おい 嘉助。 (嘉助)へい へい。 38 00:04:32,172 --> 00:04:35,675 (源三郎)ゆうべ辺り 狸穴から お帰りだろうと思いましてね。 39 00:04:35,675 --> 00:04:39,312 また 何かあったっていうのか? いや さしたることはありませんが➡ 40 00:04:39,312 --> 00:04:41,815 本所の狐の噂 お耳に入ってませんか? 41 00:04:43,517 --> 00:04:45,452 おいおい 源さん➡ 42 00:04:45,452 --> 00:04:47,687 いくら 八丁堀が 近頃 暇だからって➡ 43 00:04:47,687 --> 00:04:50,724 まさか 狐の嫁入り とっ捕まえよう ってんじゃねえだろうな? 44 00:04:50,724 --> 00:04:52,859 ハッハッハッ。 (お吉)まあまあ➡ 45 00:04:52,859 --> 00:04:57,531 八丁堀の皆様で 狐狩りをなさるんですか。 いや そうじゃねえんだけれどもさ。 46 00:04:57,531 --> 00:04:59,566 あっ こりゃ どうも。 どうぞ。 47 00:04:59,566 --> 00:05:04,337 いや 狐の嫁入りの噂が 江戸中に ぱあっと広まりましたらね➡ 48 00:05:04,337 --> 00:05:07,140 本所辺りに住む旗本衆から➡ 49 00:05:07,140 --> 00:05:11,812 「上様ご治世に 狐狸の騒ぎなど 不届き千万 けしからぬ」➡ 50 00:05:11,812 --> 00:05:14,147 お奉行が ねじ込まれたらしいんですよ。 51 00:05:14,147 --> 00:05:17,984 何を言ってやがる。 町奉行所で 狐の面倒まで見きれるかってんだ。 52 00:05:17,984 --> 00:05:19,920 なあ? 本当ですよ。 ねえ。 53 00:05:19,920 --> 00:05:23,290 おい 源さん 本所まで お出ましになるってんなら➡ 54 00:05:23,290 --> 00:05:25,659 俺も一緒に行こうじゃねえか。 ええっ? 55 00:05:25,659 --> 00:05:29,996 どこの狐だか知らねえが とっ捕まえて 狐汁にしてやろうじゃねえか。 56 00:05:29,996 --> 00:05:34,868 まあ… 狸汁だけじゃなくて 狐汁もあるんですか? 57 00:05:34,868 --> 00:05:37,304 楽しみに待ってろ。 58 00:05:37,304 --> 00:05:39,306 お吉さん。 59 00:05:41,007 --> 00:05:43,677 おや… るいさんも 古いことをご存じですな。 60 00:05:43,677 --> 00:05:47,314 ああ これ? 知ってますよ そのくらい。 ねえ? 61 00:05:47,314 --> 00:05:52,018 それじゃ なぜ 眉毛に唾をつけるか そいつも知ってるか? 62 00:05:52,018 --> 00:05:55,322 あら… なぜなんでしょうかね? 63 00:05:55,322 --> 00:06:00,627 狐は 人を化かす時にな その人の眉毛の数を読むんだそうだ。 64 00:06:02,796 --> 00:06:04,731 (手をたたく音) ああ! 65 00:06:04,731 --> 00:06:10,270 眉に唾をつけて 眉毛がくっついて 数は数えられないようにするんですね。 66 00:06:10,270 --> 00:06:13,473 そのとおり! (笑い声) 67 00:06:15,475 --> 00:06:17,410 よう。 (八造)いらっしゃいまし。 68 00:06:17,410 --> 00:06:19,813 (伝次)ゆんべは とうとう 狐の野郎 出ませんでしたよ。 69 00:06:19,813 --> 00:06:21,748 おうおう 出なかったかい。 へい。 70 00:06:21,748 --> 00:06:25,685 本所 亀戸 石原辺りまで 大がかりに こう網張って 張り込みましたがね➡ 71 00:06:25,685 --> 00:06:28,288 まあ 幾組か 夜回りも出してみたんですけどもね。 72 00:06:28,288 --> 00:06:30,357 そう大勢に見張られていたんじゃ➡ 73 00:06:30,357 --> 00:06:33,159 花嫁さんも 決まりが悪くて 出ちゃこられめえ。 74 00:06:33,159 --> 00:06:35,996 (笑い声) (お花)いらっしゃいませ。 75 00:06:35,996 --> 00:06:40,867 けど おい その狐の嫁入りってのは みんなで何回ぐらい出たんだい? 76 00:06:40,867 --> 00:06:43,870 都合4回ってことですが…。 77 00:06:43,870 --> 00:06:49,509 最初に出たのは この月の初めで 場所は 亀戸村の中川に近い…。 78 00:06:49,509 --> 00:06:51,811 五百羅漢寺の門前。 79 00:06:56,383 --> 00:07:01,121 (八造)寺のすぐ隣の榊原式部様の お屋敷の中間が➡ 80 00:07:01,121 --> 00:07:05,792 夜遊びに出かけた帰りに見て 肝を潰したってんですがね。 81 00:07:05,792 --> 00:07:19,339 ♬~ 82 00:07:19,339 --> 00:07:21,341 ええ…!? 83 00:07:21,341 --> 00:07:33,019 ♬~ 84 00:07:33,019 --> 00:07:35,655 ふ~む。 85 00:07:35,655 --> 00:07:38,291 2度目は その4日ばかりあとで➡ 86 00:07:38,291 --> 00:07:42,162 本所の横川に架かった 法恩寺橋のところです。 87 00:07:42,162 --> 00:07:44,831 見たのは 法恩寺の納所坊主でね➡ 88 00:07:44,831 --> 00:07:49,002 川の向こう岸を業平橋の方へ行列がね…。 89 00:07:49,002 --> 00:07:59,312 ♬~ 90 00:07:59,312 --> 00:08:02,315 (伝次)「へえ~ 今時分 嫁入りかい」と➡ 91 00:08:02,315 --> 00:08:05,952 納所坊主は 行列を眺めていたって言ってましたが…。 92 00:08:05,952 --> 00:08:12,125 (八造)婚礼にしちゃ 時刻がね いくらなんでも遅すぎる。 93 00:08:12,125 --> 00:08:15,128 (伝次)「妙だぞ こりゃあ」と 気が付いた途端…。 94 00:08:15,128 --> 00:08:28,141 ♬~ 95 00:08:28,141 --> 00:08:31,978 3度目は? 3度目は 北本所の石原町。 96 00:08:31,978 --> 00:08:37,150 俗に「狸堀」と呼ばれる堀割の近くで。 あら~ 狸堀に狐が出たの? 97 00:08:37,150 --> 00:08:42,021 真夜中に 火の番が拍子木鳴らして 狸堀のそばまで来ますとね…。 98 00:08:42,021 --> 00:08:46,326 (拍子木の音) 火の用心! 99 00:08:50,296 --> 00:08:55,602 おい! お前さん方 そこで何してんだい? えっ? 100 00:09:02,609 --> 00:09:06,780 火の番が目ぇ回して いつまでたっても 帰ってこねえもんでやすからね➡ 101 00:09:06,780 --> 00:09:08,715 みんなで捜しに行ったんだが…。 102 00:09:08,715 --> 00:09:12,952 ええ みんなに介抱されて 気が付くまで 火の番はね➡ 103 00:09:12,952 --> 00:09:15,622 その場に 何にも知らねえで寝てたって 言います。 104 00:09:15,622 --> 00:09:18,658 (伝次)朝になって もう一度 みんなで そこを調べに行った。 105 00:09:18,658 --> 00:09:21,261 川の向こうの行列が立ってた辺りにゃあ➡ 106 00:09:21,261 --> 00:09:25,131 狐の毛らしいものが そこら中に落ちてたって話ですよ。 107 00:09:25,131 --> 00:09:27,801 じゃ やっぱり 本物の狐かしらね? 108 00:09:27,801 --> 00:09:29,736 4度目は? 109 00:09:29,736 --> 00:09:33,973 ええ 4度目は つい3日ばかり前の晩ですが➡ 110 00:09:33,973 --> 00:09:39,779 竪川と横川がぶつかる南本所の 北辻之橋の向こう側で狐火が燃えて➡ 111 00:09:39,779 --> 00:09:42,148 花嫁行列が通っていくのを➡ 112 00:09:42,148 --> 00:09:45,819 入江町の岡場所へ遊びに行く 4人連れが見つけましてね➡ 113 00:09:45,819 --> 00:09:50,290 遊びに行った店で しゃべりまくって 大騒ぎになっちまったんですよ。 114 00:09:50,290 --> 00:09:55,161 ふむ 狐のやつ 律儀に本所ばかり歩いてやがるな。 115 00:09:55,161 --> 00:09:57,997 何か 本所に 恨みでもあるってんでしょうかね? 116 00:09:57,997 --> 00:10:02,669 大きにな… 本所辺りは新開地だから うっかり 狐の巣を埋めて➡ 117 00:10:02,669 --> 00:10:05,305 どっかりと うちでも建てたかしれねえ。 あら~➡ 118 00:10:05,305 --> 00:10:09,109 じゃあ 一家けん族 埋められたってんで 仇ぁしてるんですかね? 119 00:10:11,010 --> 00:10:13,046 おい 源さん。 はっ。 120 00:10:13,046 --> 00:10:15,849 狐が出た場所 回ってみますか。 うん。 121 00:10:15,849 --> 00:10:17,784 おい 伝次 案内してくれねえか。 へい。 122 00:10:17,784 --> 00:10:19,786 (源三郎)それじゃあ。 123 00:10:31,197 --> 00:10:34,701 なるほど… 閑静なところだな。 124 00:10:34,701 --> 00:10:37,737 狐狸が住んでいても おかしかないですな。 125 00:10:37,737 --> 00:10:41,341 昼日中でも このとおり 人っ子一人 通らねえんだから➡ 126 00:10:41,341 --> 00:10:43,276 夜なら なおさらのことだ。 127 00:10:43,276 --> 00:10:48,214 寺で 講でもある時にゃあ 参詣の人も集まるらしいんですがね。 128 00:10:48,214 --> 00:10:50,550 (伝次)旦那! おお!➡ 129 00:10:50,550 --> 00:10:52,485 あっ すまねえがな➡ 130 00:10:52,485 --> 00:10:55,889 狐の行列を見たって晩のこと 話してくれねえかな。 131 00:10:55,889 --> 00:11:01,494 へい。 ありゃ 妙に なまあったけえ➡ 132 00:11:01,494 --> 00:11:05,832 なるほど 狐でも出てきそうな晩でしたよ。 133 00:11:05,832 --> 00:11:12,005 モヤは出ていたのか? (中間)へい 出てました。 ぼ~っとね。 134 00:11:12,005 --> 00:11:14,674 駕籠が宙に飛んだというが➡ 135 00:11:14,674 --> 00:11:17,310 どのぐらいの高さまで飛んだか 覚えているかい? 136 00:11:17,310 --> 00:11:22,682 えっと… このぐらいだったかな? 137 00:11:22,682 --> 00:11:25,518 もっと高いようにも思ったが…➡ 138 00:11:25,518 --> 00:11:30,223 本当は このぐらいだったんじゃねえかしらね。 139 00:11:36,029 --> 00:11:40,867 おい 伝次 ここらは 昼でも 女を抱かせてんのか。 140 00:11:40,867 --> 00:11:46,172 ヘヘッ 夜ほどのにぎわいはありませんが ご覧のとおり 昼日中から客は来てます。 141 00:11:50,877 --> 00:11:53,179 ここです 上州屋。 142 00:12:01,487 --> 00:12:05,358 (おとら)私が 上州屋の主人でございますが…。 143 00:12:05,358 --> 00:12:09,229 狐の嫁入りを見たという客の話を 聞かせてもらいてえんだよ。 144 00:12:09,229 --> 00:12:13,100 ああ…! ああ あの時の。 ああ ああ… ちょうど来てますよ。 145 00:12:13,100 --> 00:12:18,838 その時の客がか? ええ あの4人のうちの1人ですけどね。 146 00:12:18,838 --> 00:12:21,174 じゃあ ちょっと お時さん ここへ呼んできておくれよ。 147 00:12:21,174 --> 00:12:24,677 (お時)はい。 まあ… そうですか。 148 00:12:31,184 --> 00:12:33,186 あっ…。 149 00:12:34,854 --> 00:12:40,193 お楽しみの最中 まことに申し訳ねえが あの晩の話 聞かせてくれねえか。 150 00:12:40,193 --> 00:12:42,128 えっ? えっ… へい。 151 00:12:42,128 --> 00:12:46,332 「花嫁は 駕籠には乗っていなかった」 そう聞いたが 間違いねえな? 152 00:12:46,332 --> 00:12:50,036 ええ 乗ってませんでしたよ。 そりゃ 間違いございません。 153 00:12:50,036 --> 00:12:52,538 狐を見て びっくりして➡ 154 00:12:52,538 --> 00:12:55,441 この店へ駆け込んできて それから どうしたんだい? 155 00:12:55,441 --> 00:13:00,046 ここの店の者に 話をね したんです。 面白がって うちの連中が➡ 156 00:13:00,046 --> 00:13:03,016 こちらのおっしゃる その横川の 川っぷちへ飛んでったんですよ。 157 00:13:03,016 --> 00:13:07,153 けど もう何にもいなかったって。 けど 私ら 確かに見た! 158 00:13:07,153 --> 00:13:11,991 狐の面 はっきりと見たんでやすから。 ええ うそじゃありません! 159 00:13:11,991 --> 00:13:14,494 この人たちが そうおっしゃるもんですからね➡ 160 00:13:14,494 --> 00:13:19,832 明くる朝 うちの若いのが何人か もう一度 横川へ行ってみたんですけどね➡ 161 00:13:19,832 --> 00:13:23,836 狐の毛なんざ 何にも落ちてなかったそうですよ。 162 00:13:25,505 --> 00:13:27,507 ふ~む。 163 00:13:29,842 --> 00:13:35,515 上州屋っていうのは 入江町でも あんまり上見世じゃなさそうだな。 164 00:13:35,515 --> 00:13:39,185 おっしゃるとおり あんまり評判はよくありません。 165 00:13:39,185 --> 00:13:44,023 女主人の おとらってのも 岡場所の女郎上がりとかで…。 166 00:13:44,023 --> 00:13:46,526 なるほど… そんな感じだな。 167 00:13:46,526 --> 00:13:50,697 亭主ってのが 「空っ風の検校」といいましてね。 168 00:13:50,697 --> 00:13:53,332 空っ風の検校? (伝次)へい。➡ 169 00:13:53,332 --> 00:13:58,037 「あんま上下16文」と 笛ぇ吹いて 町ぃ流してた男なんですがね。➡ 170 00:13:58,037 --> 00:14:02,008 どこで そんな金ためたのか 金貸し 始めまして…。 171 00:14:02,008 --> 00:14:04,143 ほう。 172 00:14:04,143 --> 00:14:07,647 人を泣かせた高利の金で 検校の位を買った。 173 00:14:07,647 --> 00:14:11,484 「智念」て名がありますが 誰も そんな名前 呼んじゃいません。 174 00:14:11,484 --> 00:14:15,154 空っ風の検校か…。 (伝次)へい。➡ 175 00:14:15,154 --> 00:14:18,491 泣く子も黙るって噂です。 176 00:14:18,491 --> 00:14:20,426 住まいは どこだい? 177 00:14:20,426 --> 00:14:22,829 本所の緑町に住んでますが➡ 178 00:14:22,829 --> 00:14:26,499 おとらが産んだ「鶴松」って せがれが1人いるんですがね➡ 179 00:14:26,499 --> 00:14:32,004 これが まあ 年は25か26になるんですが どうにも一人前じゃねえやつで➡ 180 00:14:32,004 --> 00:14:33,940 まあ 智念にしても おとらにしても➡ 181 00:14:33,940 --> 00:14:38,177 その せがれのことだけが苦だろうと 近所のみんなは言ってますが。 182 00:14:38,177 --> 00:14:42,014 世の中 金の力だけじゃ どうにもならねえものが➡ 183 00:14:42,014 --> 00:14:44,851 2つや3つはあるものだな。 184 00:14:44,851 --> 00:14:47,153 はあ。 さあ…。 185 00:14:57,330 --> 00:15:00,967 (通之進)で 例の狐の一件は どうなったい? 186 00:15:00,967 --> 00:15:04,804 狐の出たという4か所 源さんと見て回ったら➡ 187 00:15:04,804 --> 00:15:09,275 2~3 面白いことが分かりました。 (通之進)ほう 面白いことが? 188 00:15:09,275 --> 00:15:13,646 4回出た狐の花嫁 2回は 駕籠に乗って現れておりますが➡ 189 00:15:13,646 --> 00:15:17,984 人家の立て込む入江町と狸堀では 駕籠には乗らずに歩いております。 190 00:15:17,984 --> 00:15:21,654 これは つまり 向こうっ気の強い やじ馬が追いかけた時に➡ 191 00:15:21,654 --> 00:15:24,557 駕籠のような大きなものを 持っていたのでは 逃げるのに邪魔。 192 00:15:24,557 --> 00:15:28,528 そう考えて 用心していたのでしょう。 なるほどな。 193 00:15:28,528 --> 00:15:31,664 また 回を重ねるにつれて➡ 194 00:15:31,664 --> 00:15:35,501 手の込んだ見せ方を きゃつら 致しております。うん? 195 00:15:35,501 --> 00:15:39,305 石原町の火の番には 狐の顔をはっきりと見せておりますが➡ 196 00:15:39,305 --> 00:15:43,009 目は金色に輝き 口は耳まで裂けていて➡ 197 00:15:43,009 --> 00:15:46,312 お神楽の狐のようだったと 火の番は申しております。 198 00:15:46,312 --> 00:15:50,516 ほう お神楽の? はい。へえ~。 199 00:15:50,516 --> 00:15:53,853 五百羅漢寺門前で 駕籠が宙に飛んだのを見た➡ 200 00:15:53,853 --> 00:15:55,888 榊原家の中間に聞くと➡ 201 00:15:55,888 --> 00:16:01,461 「駕籠は 人が両手をさし上げた高さに 浮いていた」と証言いたしました。 202 00:16:01,461 --> 00:16:05,331 証言のとおり 何者かが両手を高くさし上げて➡ 203 00:16:05,331 --> 00:16:09,802 駕籠を支えていたのでしょう。 ほう 面白いな。 204 00:16:09,802 --> 00:16:13,139 (香苗)では 狐の仕業と申そうより➡ 205 00:16:13,139 --> 00:16:17,643 何人かの いたずらだと 東吾さんは お考えなのですね? 206 00:16:17,643 --> 00:16:19,579 恐らく…。 207 00:16:19,579 --> 00:16:24,517 では 誰が 何のために そのような いたずらをしていたというのでしょうか。 208 00:16:24,517 --> 00:16:27,987 それは まだ分かりませんが…。 209 00:16:27,987 --> 00:16:30,890 うん…。 なあ 東吾。 はい。 210 00:16:30,890 --> 00:16:33,793 寂しい場所から 町ん中へ➡ 211 00:16:33,793 --> 00:16:37,663 誰かに追いかけられっかもしれねえ 危険を冒して➡ 212 00:16:37,663 --> 00:16:43,302 連中は だんだんに近づいてきている。 はい。 213 00:16:43,302 --> 00:16:47,006 やつらの狙いは 入江町…➡ 214 00:16:47,006 --> 00:16:50,042 なあ おい その辺りにあるんじゃねえのかい? 215 00:16:50,042 --> 00:16:52,311 私も さように考えております。 216 00:16:52,311 --> 00:16:55,681 うむ 入江町の辺り 十分 気を付けるように➡ 217 00:16:55,681 --> 00:16:57,717 おめえさんから 源さんに そう言ってやれ。 218 00:16:57,717 --> 00:16:59,852 はい。 219 00:16:59,852 --> 00:17:02,622 (通之進)ああ… おい お前 もう出かけるのかい? 220 00:17:02,622 --> 00:17:05,825 はい。 「善は急げ」と申しますから。 221 00:17:07,460 --> 00:17:10,796 (笑い声) 何のこたあねえやな おい。 222 00:17:10,796 --> 00:17:13,833 屋敷を抜け出す いい口実 くれてやったようなもんだ。 223 00:17:13,833 --> 00:17:17,970 何が 「善は急げ」だ。 やつも てえした狐だよ。 224 00:17:17,970 --> 00:17:20,673 ハハハッ! コ~ンでい。 (笑い声) 225 00:17:22,275 --> 00:17:25,645 (お吉)相すみませんね。 せっかくお帰りになりましたのに…。 226 00:17:25,645 --> 00:17:27,580 留守かい? 227 00:17:27,580 --> 00:17:32,418 番頭さんとね お客様のお部屋に ご挨拶に…。 228 00:17:32,418 --> 00:17:35,354 おう それじゃあ しょうがねえや 商売だ。 229 00:17:35,354 --> 00:17:38,157 もうじき お戻りになりますから。 230 00:17:38,157 --> 00:17:40,660 わざわざ るいが 挨拶に行くところを見ると➡ 231 00:17:40,660 --> 00:17:42,595 長いなじみの客かい? 232 00:17:42,595 --> 00:17:46,832 はい。 木曽のお材木問屋の栗駒屋さんって おっしゃるんですけどね➡ 233 00:17:46,832 --> 00:17:51,304 毎年 この季節には 商用で江戸に出ていらっしゃるんですよ。 234 00:17:51,304 --> 00:17:54,840 若いのか? えっ? 235 00:17:54,840 --> 00:18:00,246 あっ… いいえ! もう57~58 いや 60には おなりになりますから➡ 236 00:18:00,246 --> 00:18:02,181 どうぞ ご心配なく。 237 00:18:02,181 --> 00:18:07,019 けっ 誰も心配なんぞしてねえよ。 おや? さいですか。 238 00:18:07,019 --> 00:18:11,791 お供の手代さんの方は 東吾さんと いくらも違いませんよ。 239 00:18:11,791 --> 00:18:14,694 ばかっ! フフフッ! 240 00:18:14,694 --> 00:18:18,564 よう! いやだ。 いらしてたんですか? 241 00:18:18,564 --> 00:18:21,467 ねえ 声をかけてくれればいいのに…。 それがね お嬢様➡ 242 00:18:21,467 --> 00:18:25,271 東吾様ったらね…。 おいおい つまらねえこと言うな。 243 00:18:25,271 --> 00:18:27,340 まあ 何よ。 ねえ お吉さん 何だっていうの? 244 00:18:27,340 --> 00:18:30,476 栗駒屋さんのことね 若い方かって…。 245 00:18:30,476 --> 00:18:32,511 (笑い声) はあ…。 246 00:18:32,511 --> 00:18:34,714 あっ 失礼します。 ありがとう。 247 00:18:36,349 --> 00:18:39,185 ちぇっ 人の冗談 真に受けやがって。 248 00:18:39,185 --> 00:18:43,489 いいじゃありませんか… 分かってますよ。 249 00:18:43,489 --> 00:18:46,392 でも いいお客様なんですよ。 250 00:18:46,392 --> 00:18:50,162 お人柄といい うちには大事なお客様。 251 00:18:50,162 --> 00:18:53,666 お話し好きなもんで ついつい お相手が長くなってしまって➡ 252 00:18:53,666 --> 00:18:57,837 ごめんなさいね。 何の話をしていたんだ? 木曽の話か? 253 00:18:57,837 --> 00:19:02,675 いいえ… 今日は 深川の材木屋さんの話なんですがね➡ 254 00:19:02,675 --> 00:19:06,112 あんまりいいお話じゃありませんでした。 255 00:19:06,112 --> 00:19:08,447 うむ…。 256 00:19:08,447 --> 00:19:13,252 木曽万さんて 栗駒屋さんの 取引先のお店なんですけどね➡ 257 00:19:13,252 --> 00:19:17,123 どうも 近頃 いけないらしい。 ほう。 258 00:19:17,123 --> 00:19:21,127 いけなくなったのは 昨年の秋 ご主人の万兵衛さんが➡ 259 00:19:21,127 --> 00:19:24,864 急に卒中で亡くなってからだ っていうんですけどね➡ 260 00:19:24,864 --> 00:19:28,267 まだ21の若い息子さんが跡を継いで➡ 261 00:19:28,267 --> 00:19:32,138 3代目 万兵衛を襲名して やってるらしいんですが➡ 262 00:19:32,138 --> 00:19:35,041 まだ年も若いし 商売にも慣れていないから➡ 263 00:19:35,041 --> 00:19:39,011 お得意先 よそに取られたり 売掛金 取りはぐれたりで…。 264 00:19:39,011 --> 00:19:43,282 商いが大きいだけに 若い者には無理かもしれねえな。 265 00:19:43,282 --> 00:19:45,351 そうなんですって。 266 00:19:45,351 --> 00:19:50,489 それに 人の弱みにつけ込んで 悪いことをする人もいるから。 267 00:19:50,489 --> 00:19:53,526 世の中 善人ばかりじゃねえさ。 268 00:19:53,526 --> 00:19:57,830 この せちがらい世の中に お人よしばっかりが集まって➡ 269 00:19:57,830 --> 00:20:02,668 よく かわせみは潰れねえもんだと おいら いつも感心してるんだぜ。 270 00:20:02,668 --> 00:20:07,306 お人よしだって 商売のことは これでも ちゃんとしてるんですからね。 271 00:20:07,306 --> 00:20:10,843 あなたとは違います。 アハハハッ そうかい。 272 00:20:10,843 --> 00:20:15,314 それで 栗駒屋は どうすると言ってるんだい。 273 00:20:15,314 --> 00:20:18,684 迷ってらっしゃるんです。 274 00:20:18,684 --> 00:20:22,521 今までどおりの取り引きは よした方がいいんじゃねえかと? 275 00:20:22,521 --> 00:20:26,859 ええ… これまでの つきあいもあるから➡ 276 00:20:26,859 --> 00:20:29,895 手の裏を返すような 薄情なこともできないが…➡ 277 00:20:29,895 --> 00:20:34,200 といって 木曽万さんが潰れれば 損のするのは 目に見えている。 278 00:20:34,200 --> 00:20:36,202 なるほどな…。 279 00:20:36,202 --> 00:20:40,005 けど その木曽万というのは 本当に潰れるのか? 280 00:20:40,005 --> 00:20:42,875 さあ…? 281 00:20:42,875 --> 00:20:47,046 ねえ 八造親分にでも 聞いてみてくださいませんか? 282 00:20:47,046 --> 00:20:49,949 木場のことなら 八造親分 よくご存じでしょうから。 283 00:20:49,949 --> 00:20:51,951 うん! 284 00:20:54,720 --> 00:20:58,057 あらっ いらっしゃいまし。 伝次も来てたのか。 285 00:20:58,057 --> 00:20:59,992 ちょいと頼まれましたんでね。 ん? 286 00:20:59,992 --> 00:21:06,165 実は 木場のお店に婚礼がありましてね そのことで 私が頼んだんですよ。 287 00:21:06,165 --> 00:21:09,502 めでたい話の頼まれ事なら結構だ。 なあ? 伝次。 288 00:21:09,502 --> 00:21:14,006 いえね それが あんまりめでたくもない話でしてね。 289 00:21:14,006 --> 00:21:17,510 うむ? めでたくねえ婚礼だと? どういうことだ? そりゃあ。 290 00:21:17,510 --> 00:21:21,013 木場に 木曽万て材木屋がござんしょ。 291 00:21:21,013 --> 00:21:25,851 何? 木曽万? 木曽万は 先代が死んで まだ喪中のはずじゃなかったのかい。 292 00:21:25,851 --> 00:21:28,320 こりゃあ よくご存じで…。 293 00:21:28,320 --> 00:21:31,190 3代目の万兵衛が 嫁をもらうっていうのか? 294 00:21:31,190 --> 00:21:34,026 いえ あの お嬢さんが お嫁に行くってんです。 295 00:21:34,026 --> 00:21:36,695 木曽万の娘が嫁入りだ? 296 00:21:36,695 --> 00:21:40,332 えっ ええ… 何ですか 急に話がまとまったとかで 明日。 297 00:21:40,332 --> 00:21:42,268 明日。 298 00:21:42,268 --> 00:21:46,705 まあ あれだけの大店のお嬢さんが まるで 夜逃げでもするみたいに➡ 299 00:21:46,705 --> 00:21:50,876 こそこそと嫁に行くっていうんですからね かわいそうなもんですよ。 300 00:21:50,876 --> 00:21:53,779 木曽万は 商売が思わしくねえと聞いたが おい 八造。 301 00:21:53,779 --> 00:21:57,049 (八造)へい。 今度の婚礼 それ絡みの祝言か? 302 00:21:57,049 --> 00:22:00,653 お察しのとおりで… へい。 それじゃ 嫁入り先は? 303 00:22:00,653 --> 00:22:03,489 本所緑町の…。 おい まさか…➡ 304 00:22:03,489 --> 00:22:06,525 まさか 空っ風の検校のとこだと 言うんじゃねえだろうな? 305 00:22:06,525 --> 00:22:11,997 いえ その空っ風検校のせがれ 一丁前でね 鶴松のところへ嫁に行くってんで➡ 306 00:22:11,997 --> 00:22:15,501 いわば 人身ごくうも同然だって みんな 言ってます。 307 00:22:15,501 --> 00:22:19,672 木曽万さんじゃ 嫁入り先が本所で 狐騒ぎもあることだし➡ 308 00:22:19,672 --> 00:22:23,008 八造どんについていってもらいてえと 言ってきたってんですが。 309 00:22:23,008 --> 00:22:28,180 私はね お嫁さんが こんな小せえ時分から よく知ってますからね➡ 310 00:22:28,180 --> 00:22:30,182 お気の毒で とても…。 311 00:22:30,182 --> 00:22:35,854 それでね まあ 伝次親分に 嫌なお役目を 引き受けてもらったんですよ。 312 00:22:35,854 --> 00:22:38,757 なるほど そうだったのか…。 313 00:22:38,757 --> 00:22:41,727 いい旦那でしたからね 先代の万兵衛さんって方は。 314 00:22:41,727 --> 00:22:44,330 本当にねえ…。 俺たちばっかりじゃねえよ➡ 315 00:22:44,330 --> 00:22:47,233 この土地の者は みんな あの旦那の世話になってますからね。 316 00:22:47,233 --> 00:22:51,103 この先の八幡様の境内で 掛け小屋してる芸人役者も➡ 317 00:22:51,103 --> 00:22:54,006 随分 あの旦那にゃあ ひいきにしてもらって。 318 00:22:54,006 --> 00:22:56,542 (伝次)まあ そんなだから 旦那が死ぬと➡ 319 00:22:56,542 --> 00:23:00,412 店の方も いけなくなったといえるんでしょうが。 320 00:23:00,412 --> 00:23:07,186 金で買われて 木曽万の娘は 鶴松の嫁になるというのか? 321 00:23:07,186 --> 00:23:10,990 木曽万が 商いの金に詰まって 困ってるって噂 耳にすると➡ 322 00:23:10,990 --> 00:23:13,025 すぐに 「金なら いくらでも都合してやる」と➡ 323 00:23:13,025 --> 00:23:15,294 空っ風の検校が そう言ってきたってんでさあ。 324 00:23:15,294 --> 00:23:18,664 できることなら 借りたかねえと 思ったんでしょうが➡ 325 00:23:18,664 --> 00:23:23,002 まあ 背に腹は代えられぬ うかうか借りたが 身の詰まりだ。 326 00:23:23,002 --> 00:23:26,672 ねえ その時 借りた300両のお金が➡ 327 00:23:26,672 --> 00:23:32,011 まあ 本当に 今日まで大切に育てた あのねえ 木場小町と評判の➡ 328 00:23:32,011 --> 00:23:36,515 およねさんを縛りつける 結納になっちまったんですよ。 329 00:23:38,684 --> 00:23:43,322 若旦那 どちらへ? なに 八幡様の境内でやってる芝居➡ 330 00:23:43,322 --> 00:23:45,691 前から 一度 のぞいてみたいと思っていた。 331 00:23:45,691 --> 00:23:49,194 ここまで来たついでだから ちょいと 一幕だけ見ていこうと思ってな。 332 00:23:49,194 --> 00:23:51,130 芝居をですか? うん。 333 00:23:51,130 --> 00:23:53,065 おめえも一緒に連れてってやりてえが➡ 334 00:23:53,065 --> 00:23:56,068 婚礼の付き添いという大役があっちゃ それどころじゃなかろう。 335 00:23:56,068 --> 00:23:59,538 俺一人で行ってくる。 あっ 行ってらっしゃいまし。 336 00:23:59,538 --> 00:24:01,473 あっ…。 337 00:24:01,473 --> 00:24:06,679 なにも こんな時に芝居なんか 見に行かなくたって… ねえ? 338 00:24:08,647 --> 00:25:11,643 ♬~ 339 00:25:19,985 --> 00:25:22,488 (弓之丞)どなた様でございましょう? 340 00:25:22,488 --> 00:25:27,826 弓之丞の「八重垣姫」 なるほど 評判だけのものはあると➡ 341 00:25:27,826 --> 00:25:30,162 感心しながら 見せてもらったよ。 342 00:25:30,162 --> 00:25:33,499 それは まあ ありがとう存じます。 343 00:25:33,499 --> 00:25:38,303 殊に 狐に導かれて 勝頼恋しと飛んでいく あの幕切れ➡ 344 00:25:38,303 --> 00:25:42,841 狐が化けたかと思うほど ぞくっとして美しい。 345 00:25:42,841 --> 00:25:44,843 恐れ入ります。 346 00:25:55,320 --> 00:25:59,525 芝居好きの木曽万の先代が 随分と ひいきにしていたんだろうなあ。 347 00:25:59,525 --> 00:26:01,460 ええっ!? 348 00:26:01,460 --> 00:26:04,963 芝居者は薄情だと よく世間じゃ言うが➡ 349 00:26:04,963 --> 00:26:08,467 薄情な芝居者の中にも おめえさんのように➡ 350 00:26:08,467 --> 00:26:11,970 ひいきになった旦那の恩 忘れずにいてくれる➡ 351 00:26:11,970 --> 00:26:16,975 情の深え者もいると知って 俺は うれしいぜ。 352 00:26:29,154 --> 00:26:32,491 あなたが 一体 何をおっしゃっているのか➡ 353 00:26:32,491 --> 00:26:35,394 皆目 手前には分かりませんが…。 354 00:26:35,394 --> 00:26:37,996 とぼけちゃいけねえよ。 355 00:26:37,996 --> 00:26:40,833 先頃からの狐騒ぎ➡ 356 00:26:40,833 --> 00:26:45,170 狐役者のおめえさんの仕業と目星をつけて おいら 来たんだぜ。 357 00:26:45,170 --> 00:26:47,105 えっ…。 358 00:26:47,105 --> 00:26:52,311 春のおぼろ 夜青白く 光る狐火 駕籠の宙づり。 359 00:26:52,311 --> 00:26:56,014 ハッハッハッ… やることが少し芝居じみてて➡ 360 00:26:56,014 --> 00:27:00,252 こりゃあ 芝居者の仕事だなと そこまでには すぐ気が付いた。 361 00:27:00,252 --> 00:27:04,456 が なぜ そんな いたずらをするのか そこのところが分からねえ。 362 00:27:04,456 --> 00:27:07,126 首をひねってるところへ➡ 363 00:27:07,126 --> 00:27:11,964 木曽万の娘が 空っ風検校のせがれの嫁に という噂。 364 00:27:11,964 --> 00:27:17,636 おまけに 先代の万兵衛は 芸人役者の大のひいきと聞かされて…➡ 365 00:27:17,636 --> 00:27:21,807 なるほど そうだったのかと 納得がいったから➡ 366 00:27:21,807 --> 00:27:24,843 こうやって おめえさんのところへ来たんだよ。 367 00:27:24,843 --> 00:27:28,147 それじゃあ あなた お役人様? 368 00:27:28,147 --> 00:27:31,049 おっと 違うよ! 心配するねえ。 369 00:27:31,049 --> 00:27:35,020 俺も江戸っ子 芝居好き➡ 370 00:27:35,020 --> 00:27:41,660 おめえさんの書いた筋書きに 一番乗る気で やって来たのさ。 371 00:27:41,660 --> 00:27:43,662 ええっ…? 372 00:27:49,168 --> 00:27:56,308 明日 木曽万の娘の嫁入りだ。 明日!? 373 00:27:56,308 --> 00:28:02,114 どうやら 芝居も… 大詰めだよ。 374 00:28:02,114 --> 00:28:14,126 (柝の音) 375 00:28:14,126 --> 00:28:16,929 ⚟栗駒屋さん。 (伝右衛門)はい。 376 00:28:19,798 --> 00:28:21,733 (伝右衛門)あっ…。 ああ。 377 00:28:21,733 --> 00:28:25,470 あの… 木曽万さんのことについて➡ 378 00:28:25,470 --> 00:28:28,507 是非 お聞き願いたいという方が おいでなのですが…。 379 00:28:28,507 --> 00:28:32,344 (伝右衛門)木曽万さんのことなら はいはい お聞かせ願いましょう。 380 00:28:32,344 --> 00:28:34,479 ありがとうございます! 381 00:28:34,479 --> 00:28:37,816 さあ 弓之丞さん どうぞ。 382 00:28:37,816 --> 00:28:40,519 ごめんくださいまし。 383 00:28:51,830 --> 00:28:54,499 (伝右衛門)このお人は…? 384 00:28:54,499 --> 00:28:57,536 尾上弓之丞と申します。 385 00:28:57,536 --> 00:29:03,942 木曽万の先代様には 大層ごひいきに していただいておりました役者。 386 00:29:03,942 --> 00:29:06,612 ああ~ そうでしたか! 387 00:29:06,612 --> 00:29:09,648 木曽万さんが 役者衆に肩入れしていらしたことは➡ 388 00:29:09,648 --> 00:29:12,951 あたしも存じてますよ。 389 00:29:12,951 --> 00:29:15,988 先月の末に旅興行を終えて➡ 390 00:29:15,988 --> 00:29:21,460 久方ぶりに 懐かしいお江戸 深川の八幡様の境内へ➡ 391 00:29:21,460 --> 00:29:24,796 1年ぶりに帰ってまいりました。 ふむ。 392 00:29:24,796 --> 00:29:30,602 早速に 木曽万様へも ご挨拶に伺いました。 393 00:29:30,602 --> 00:29:32,671 ところが…➡ 394 00:29:32,671 --> 00:29:39,978 あの お優しい旦那様が お亡くなりあそばして…。 395 00:29:43,181 --> 00:29:46,818 おまけに その時 木曽万様へ➡ 396 00:29:46,818 --> 00:29:52,491 あの空っ風の検校と 上州屋の おとらが…。 397 00:29:52,491 --> 00:29:55,994 (たたく音) (智念)これさ おかみさん➡ 398 00:29:55,994 --> 00:29:59,831 あたしらは親切で言ってるんだよ。 そうですよ。 399 00:29:59,831 --> 00:30:02,734 貸金の300両 結納代わりにくれてあげるって➡ 400 00:30:02,734 --> 00:30:07,572 こんな親切なことってないですよねえ。 ああ ああ。 401 00:30:07,572 --> 00:30:12,177 それじゃあ 何かい? うちの鶴松じゃ 婿に不足だと こういうわけか? 402 00:30:12,177 --> 00:30:14,112 いえ 決して そんな…! 403 00:30:14,112 --> 00:30:18,517 それじゃあ いいんだな? およねを鶴松の嫁にもらっても。 404 00:30:18,517 --> 00:30:22,187 (万兵衛)待ってください! そのことは 姉の気持ちも聞きました…。 405 00:30:22,187 --> 00:30:24,523 ちょいと 若旦那 ええ? 406 00:30:24,523 --> 00:30:27,192 そんな悠長なこと言ってる暇 ありませんよ。 407 00:30:27,192 --> 00:30:29,127 この貸金の300両はね➡ 408 00:30:29,127 --> 00:30:31,697 利が利を生んで 今じゃ 1,000両にもなってるんだよ。 409 00:30:31,697 --> 00:30:37,202 金も返さない。 嫁にもやるのも嫌だって? 410 00:30:37,202 --> 00:30:41,206 嫌なら嫌で結構ですよ。 411 00:30:41,206 --> 00:30:44,076 上州屋の女郎になってもらうだけで。 412 00:30:44,076 --> 00:30:47,913 (およし)ええっ…!? (およね)おっ母さん! 413 00:30:47,913 --> 00:30:51,717 よし いいな? 414 00:30:51,717 --> 00:31:02,427 (泣き声) 415 00:31:03,995 --> 00:31:06,298 それ以来 弓之丞さんは➡ 416 00:31:06,298 --> 00:31:09,000 木曽万さんに降りかかった災難➡ 417 00:31:09,000 --> 00:31:12,671 なんとか 自分たちの手で 救ってあげられないだろうかと考えて。 418 00:31:12,671 --> 00:31:15,507 ねっ? はい。 419 00:31:15,507 --> 00:31:18,844 お嬢様の婚礼の行列から➡ 420 00:31:18,844 --> 00:31:24,716 花嫁のお嬢様 なんとか お連れ申す 手だての一つにしようと➡ 421 00:31:24,716 --> 00:31:33,692 狐の嫁入り 狐の騒ぎ 一座の者の手を借りて…。 422 00:31:33,692 --> 00:31:36,595 そういうことだったんですか…。 423 00:31:36,595 --> 00:31:38,864 なるほど なるほど! 424 00:31:38,864 --> 00:31:43,335 ついては 明日が およねさんの嫁入りの晩。 425 00:31:43,335 --> 00:31:46,872 どうやって およねさん やつらの手から? 426 00:31:46,872 --> 00:31:52,677 さあ… そのことで栗駒屋さんのお力 是非にも お借りしたいんですがね。 427 00:31:52,677 --> 00:31:57,516 あたしで お役に立つことならやりますよ。 何をすりゃあいいんです? 428 00:31:57,516 --> 00:32:01,987 ええ あの… それは…。 429 00:32:01,987 --> 00:32:05,490 それは 私から申し上げよう。 430 00:32:05,490 --> 00:32:10,362 かわいそうに こんな ご大家のお嬢さんがねえ。 431 00:32:10,362 --> 00:32:13,165 器量のいいのが かえって 仇になったんだよ。 432 00:32:13,165 --> 00:32:17,035 金がねえのは 首がねえのと同じだって うそぶいてる 金貸し検校➡ 433 00:32:17,035 --> 00:32:19,037 憎いじゃありやせんか。 434 00:32:19,037 --> 00:32:21,039 本当だよ。 なんとかなりませんかねえ。 435 00:32:21,039 --> 00:32:24,176 (虎松)やい! 見せもんじゃねえぞ! 436 00:32:24,176 --> 00:32:28,513 (岩吉)向こうへ行け! 向こうへ! (千造)行けってのが分からねえのか! 437 00:32:28,513 --> 00:32:31,550 (物売りの声) 438 00:32:31,550 --> 00:32:33,852 (伝次)乱暴しちゃいけねえ! 439 00:32:35,687 --> 00:32:38,723 こりゃ親分。 どうも ご苦労さまでございます。 440 00:32:38,723 --> 00:32:42,194 おやおや 御用聞きまで味方につけてるよ。 441 00:32:42,194 --> 00:32:45,030 近頃の御用聞きは 金の力にゃ弱いからねえ。 442 00:32:45,030 --> 00:32:46,965 (徳松)お父っつぁん あんなこと言ってるぜ。待ってろい。 443 00:32:46,965 --> 00:32:49,868 だって…。 さあ みんなも散ってくれ 散ってくれ。 444 00:32:49,868 --> 00:32:51,803 さあ 散った! 散った! 445 00:32:51,803 --> 00:32:54,539 余計な騒ぎは起こさねえようにな。 446 00:32:54,539 --> 00:32:57,342 親分が 「散れ」って言ってんのが 分かんねえのか…! 447 00:32:57,342 --> 00:32:59,711 乱暴するんじゃねえって 言ってんだぜ! 448 00:32:59,711 --> 00:33:03,982 おい 婚礼に不似合いな 荒くれた連中 こんなに集めて➡ 449 00:33:03,982 --> 00:33:07,285 どういうつもりなんだい? どうもこうもありませんや。 450 00:33:07,285 --> 00:33:11,156 お上で狐騒ぎ うっちゃっとくから 検校様が心配なすって➡ 451 00:33:11,156 --> 00:33:14,659 「大事な花嫁 狐にさらわれねえよう➡ 452 00:33:14,659 --> 00:33:17,996 おめえらで しっかり守ってくれ」って ヘヘッ 言いつかってきたんですよ。 453 00:33:17,996 --> 00:33:20,665 フン! おめえらの手は借りねえよ。 454 00:33:20,665 --> 00:33:24,503 花嫁は この俺が ちゃんと守ってやるから 心配するな。 455 00:33:24,503 --> 00:33:28,173 そりゃあね 親分が しっかり 守ってくださりゃあ 安心でしょう。 456 00:33:28,173 --> 00:33:31,076 俺たちは俺たちで 検校様の言われたとおり➡ 457 00:33:31,076 --> 00:33:33,044 やらしておもらい申しますよ。 458 00:33:33,044 --> 00:33:35,347 フン! 勝手にしろい! 459 00:33:39,517 --> 00:33:42,020 まるで 通夜か弔いだな。 460 00:33:44,189 --> 00:33:46,858 とても婚礼だなんて思えねえや。 461 00:33:46,858 --> 00:33:49,694 ごめんくださいまし。 あれっ!? 462 00:33:49,694 --> 00:33:51,630 おるい様!? 463 00:33:51,630 --> 00:33:53,565 (千造)何だ? てめえら。 464 00:33:53,565 --> 00:33:57,335 木曽の栗駒屋の旦那が お祝いに お越しくだすったんですよ。 465 00:33:57,335 --> 00:34:01,339 万兵衛さんに取り次いでおくれ。 (伝次)こりゃ どうも…。 466 00:34:01,339 --> 00:34:04,142 おや 親分 ご苦労さまです。 467 00:34:04,142 --> 00:34:06,811 徳 ご案内 申し上げろ。 へい!➡ 468 00:34:06,811 --> 00:34:09,114 どうぞ こちらです。 469 00:34:10,982 --> 00:34:14,286 まあ まあ 栗駒屋さん…。 470 00:34:14,286 --> 00:34:17,155 どなたにも お知らせはいたしませんでしたのに。 471 00:34:17,155 --> 00:34:20,492 いやいや 事情は聞いて知っています。 472 00:34:20,492 --> 00:34:28,199 何にも言わずに あたしの言うことを いいですか? よ~く聞いてくださいよ。 473 00:34:42,180 --> 00:34:44,115 ええっ!? 474 00:34:44,115 --> 00:35:08,340 ♬~ 475 00:35:08,340 --> 00:35:13,812 はあ~ こりゃ きれいだなあ。 476 00:35:13,812 --> 00:35:17,682 鶴松には もったいねえや。 ばか野郎! 477 00:35:17,682 --> 00:35:19,985 およねや…。 478 00:35:19,985 --> 00:35:46,177 ♬~ 479 00:35:46,177 --> 00:35:50,515 (忠平)では 親分 お願い申します。 かしこまりました。 480 00:35:50,515 --> 00:35:52,550 徳! 出立だ! 481 00:35:52,550 --> 00:36:09,467 ♬~ 482 00:36:09,467 --> 00:36:13,338 おい! みんな 間違いのねえように。 いいか! 483 00:36:13,338 --> 00:36:15,340 おう! 任しとけ! 484 00:36:15,340 --> 00:36:45,003 ♬~ 485 00:36:45,003 --> 00:36:48,039 (源三郎)来ましたね 東吾さん。 うむ。 486 00:36:48,039 --> 00:36:52,510 狐の嫁入りみてえだな 源さん。 487 00:36:52,510 --> 00:37:00,251 花嫁は 泣きの涙の綿帽子… 狐の嫁入りみたいに おぼろで美しい。 488 00:37:00,251 --> 00:37:02,954 いっそ 哀れじゃありませんか…。 489 00:37:08,126 --> 00:37:10,795 深川中の人たちが➡ 490 00:37:10,795 --> 00:37:16,468 「哀れな花嫁 狐の嫁入りと化けて 空へ飛んでいっちまえばいいのに」と…➡ 491 00:37:16,468 --> 00:37:19,971 なあ 源さん 思ってるだろうぜ。 492 00:37:28,480 --> 00:37:30,415 (鶴松)ああ! お… お嫁さんだ! 493 00:37:30,415 --> 00:37:32,984 お… おっ母さん お嫁さん 来たよ! 来た 来た! ほら ほら! 494 00:37:32,984 --> 00:37:37,288 来た 来た 来た! 鶴松 ほら 騒ぐんじゃないよ。 495 00:37:37,288 --> 00:37:42,293 これ 落ち着け 鶴松。 三国一の花婿だぞ。 496 00:37:52,670 --> 00:37:57,008 (智念)ああ これはこれは親分 どうも ご苦労さまでした。➡ 497 00:37:57,008 --> 00:37:59,310 道中 何事もござらなんだか? 498 00:37:59,310 --> 00:38:01,312 木場から本所は 目と鼻の先➡ 499 00:38:01,312 --> 00:38:06,084 おまけに 検校様お差し回しの おっかねえ おあにいさん方 ついてるんだ。 500 00:38:06,084 --> 00:38:09,787 何事の起ころうはずもござんせんやね。 (笑い声) 501 00:38:25,436 --> 00:38:28,139 ヘヘヘヘヘッ…。 502 00:38:30,341 --> 00:39:23,528 ♬~(「高砂」) 503 00:39:27,966 --> 00:39:32,804 鶴松 花嫁さんが じきに 支度して 来るからね。 504 00:39:32,804 --> 00:39:36,274 優しくして 嫌われるんじゃないよ… えっ? 505 00:39:36,274 --> 00:39:39,577 分かってらい! (笑い声) 506 00:39:52,724 --> 00:39:56,594 旦那。 花嫁さんの乗ってきた駕籠があります。 507 00:39:56,594 --> 00:39:59,163 旦那 お乗りになっちゃいかがです? 508 00:39:59,163 --> 00:40:05,837 いえ 私は 母の駕籠に付き添って 道々 慰めてやりたいと存じますので。 509 00:40:05,837 --> 00:40:08,873 ああ さいですか。 それは その方が よござんす。 510 00:40:08,873 --> 00:40:13,378 どんなに おつらいことだろうと あっしらも お察し申しておりやすよ。 511 00:40:32,063 --> 00:40:34,065 えっ… 何だ? 512 00:40:35,833 --> 00:40:38,536 お父っつぁん 見ろよ あれ…! 513 00:40:38,536 --> 00:40:40,471 あっ! 514 00:40:40,471 --> 00:40:52,050 ♬~ 515 00:40:52,050 --> 00:40:58,723 えへっ フフフフッ…➡ 516 00:40:58,723 --> 00:41:02,160 アハハハッ! 517 00:41:02,160 --> 00:41:37,528 ♬~ 518 00:41:37,528 --> 00:41:42,400 さあ 早く… 早く 早く。 こっち こっち。 519 00:41:42,400 --> 00:41:46,204 早く 早く。 フフフフッ…。 520 00:41:46,204 --> 00:41:50,708 まあ こんなもの いつまでも かぶってないで。➡ 521 00:41:50,708 --> 00:41:53,211 ヘヘヘッ…。 522 00:41:57,882 --> 00:42:00,485 コ~ン! 523 00:42:00,485 --> 00:42:03,187 ああ~! 524 00:42:12,497 --> 00:42:16,367 (悲鳴) 525 00:42:16,367 --> 00:42:19,170 (智念)おい これ! どけ どけ! どけ! 526 00:42:19,170 --> 00:42:23,841 おい 鶴松! 鶴松! 鶴松は おらんか~! 527 00:42:23,841 --> 00:42:25,877 何があったんだい? どうした? どうした? 528 00:42:25,877 --> 00:42:29,013 お… 親分 花嫁がいなくなったんだよ! 529 00:42:29,013 --> 00:42:31,315 ええっ!? なんということだ! 530 00:42:31,315 --> 00:42:33,384 おい おとら! おとら! 531 00:42:33,384 --> 00:42:35,520 どけ! どいてくれ! おい! 532 00:42:35,520 --> 00:42:38,022 おい! 木曽万は? おかみは どうした? 533 00:42:38,022 --> 00:42:39,957 さっき 出ていきやしたよ。 (智念)駕籠は? 534 00:42:39,957 --> 00:42:41,893 ええ 2挺で。 一つは 木曽万のおかみさんが➡ 535 00:42:41,893 --> 00:42:43,895 乗りやしたが もう一つは空のはずです。 536 00:42:43,895 --> 00:42:47,198 おお その駕籠だ! 花嫁 乗っけやがって。 追え! 537 00:42:47,198 --> 00:42:50,868 おい! きっと捕まえてくるんだぞ。 逃がすんじゃねえぞ。 538 00:42:50,868 --> 00:42:52,870 へい! 野郎ども 行け! へい! 539 00:42:54,539 --> 00:42:56,574 徳 来るんだ! 合点だい! 540 00:42:56,574 --> 00:42:59,043 お前さん! えっ? 541 00:42:59,043 --> 00:43:01,946 つ… 鶴松が! だ… 誰か~! 542 00:43:01,946 --> 00:43:06,250 ええ くそっ! ばかにしやがって! 見てろ この野郎! 543 00:43:10,688 --> 00:43:13,191 ⚟待て! ⚟待て~! 544 00:43:15,827 --> 00:43:18,863 万兵衛や…。 心配いりませんよ おっ母さん。 545 00:43:18,863 --> 00:43:21,165 待て 待て この野郎! 546 00:43:21,165 --> 00:43:24,168 どこに隠しやがった… えっ? どこに隠しやがったんだ? 547 00:43:24,168 --> 00:43:26,370 徳 駕籠を調べろ! (徳松)へい。 548 00:43:28,039 --> 00:43:31,509 誰もいねえぜ! (虎松)ちきしょう そんなはずはねえ! 549 00:43:31,509 --> 00:43:33,711 (伝次)みんな 動くな! 550 00:43:38,850 --> 00:43:43,187 兄貴…。 てめえら どこへ隠した? てめえら…! 551 00:43:43,187 --> 00:43:46,691 こら 言え! 静かにしねえか! 552 00:43:46,691 --> 00:43:49,193 下手に騒ぐと承知しねえぞ! 553 00:44:05,142 --> 00:44:10,481 若旦那 春ですねえ。 うむ。 554 00:44:10,481 --> 00:44:16,153 春のおぼろ夜… いい気持ちだ。 555 00:44:16,153 --> 00:44:27,164 (嘉助)♬ エエ 目出た 目出たの エエヤ 556 00:44:27,164 --> 00:44:33,304 ♬ 若松さまよ とくらあ。 557 00:44:33,304 --> 00:44:41,679 ♬~ 558 00:44:41,679 --> 00:44:44,982 くそ! どうなってるんだ? 559 00:44:50,688 --> 00:44:53,524 (智念 おとら)あっ…。 560 00:44:53,524 --> 00:44:57,862 どうかしましたか? (智念)お お… お役人… 花嫁が…。 561 00:44:57,862 --> 00:45:02,633 お待ちなさい。 あなたは智念検校。 そうですな。 562 00:45:02,633 --> 00:45:06,971 ああ いかにも 智念でござるが それよりも 花嫁が逃げました。 563 00:45:06,971 --> 00:45:08,906 捕らえてくだされ。 礼はするから…。 564 00:45:08,906 --> 00:45:10,841 黙らねえかい! 565 00:45:10,841 --> 00:45:13,744 検校という位は 目の不自由な者に与えられる位だ。 566 00:45:13,744 --> 00:45:16,681 目明きが偽って 検校の位を取り 高利の金を貸しゃ➡ 567 00:45:16,681 --> 00:45:18,683 どんな おとがめを受けるか やい➡ 568 00:45:18,683 --> 00:45:21,519 てめえだって 知らねえわけじゃねえだろう。 569 00:45:21,519 --> 00:45:25,356 慌てて目をつぶったって 始まるかよ! ああ…! 570 00:45:25,356 --> 00:45:28,259 お前さん…。 座ってろい! おめえも。 571 00:45:28,259 --> 00:45:30,828 ええ…。 あっ 痛たた…。 572 00:45:30,828 --> 00:45:34,165 おめえだって たたきゃあ ほこりの出る体だな。 573 00:45:34,165 --> 00:45:36,500 夫婦そろって番屋まで道行きだ。 574 00:45:36,500 --> 00:45:39,003 こりゃあ めでてえ晩になるぜ 検校さんよ。 575 00:45:41,305 --> 00:45:47,178 その方儀 偽りをもって 検校の位を受け➡ 576 00:45:47,178 --> 00:45:51,682 あまつさえ 貧しき人に金を貸し➡ 577 00:45:51,682 --> 00:45:57,555 不当の金利を取り立ておったは 不届き至極➡ 578 00:45:57,555 --> 00:46:00,124 家財没収の上➡ 579 00:46:00,124 --> 00:46:05,463 江戸十里四方 お構え申しつくるものなり。 580 00:46:05,463 --> 00:46:07,798 ああ…。 へえ…。 581 00:46:07,798 --> 00:46:13,137 (泣き声) 582 00:46:13,137 --> 00:46:16,140 ざまあみやがれってんだなあ。 (おきみ)そうですよ。 583 00:46:16,140 --> 00:46:19,644 悪いやつが のさばりかえっていたんじゃ この世は闇です。 584 00:46:19,644 --> 00:46:23,514 おや おきみちゃん いいこと言いますね。 (笑い声) 585 00:46:23,514 --> 00:46:27,985 けど 一体 どこへ 消えちまったんでしょうね 花嫁さんは。 586 00:46:27,985 --> 00:46:31,022 (おもん)あらっ 親分 知らないんですか? 587 00:46:31,022 --> 00:46:33,157 ええっ!? 「知らねえんですか?」って➡ 588 00:46:33,157 --> 00:46:35,092 それじゃあ おもんちゃん おめえ 知ってんのか? 589 00:46:35,092 --> 00:46:38,596 すいません 親分。 実は あの…。 590 00:46:40,298 --> 00:46:44,101 ここの2階に…? いるってんですか? 花嫁さん。 591 00:46:50,041 --> 00:46:53,678 じゃあ…。 万兵衛さん➡ 592 00:46:53,678 --> 00:46:56,714 およねさんは あたしが木曽へ連れて帰って➡ 593 00:46:56,714 --> 00:47:00,484 双方とも気に入ったら せがれの嫁になってもらう。 594 00:47:00,484 --> 00:47:02,486 そうなりゃあ 木曽万さんは➡ 595 00:47:02,486 --> 00:47:06,323 嫁の実家 めったに 潰すようなことにゃあさせませんよ。 596 00:47:06,323 --> 00:47:10,127 ありがとう存じます。 ありがとう存じます…。 597 00:47:10,127 --> 00:47:14,131 私も 一生懸命 お父っつぁんをまねて 家業に励みますから。 598 00:47:14,131 --> 00:47:16,267 頼みましたよ。 599 00:47:16,267 --> 00:47:19,637 姉さんも幸せにね。 600 00:47:19,637 --> 00:47:23,140 神林様 これで よろしゅうございますね? 601 00:47:23,140 --> 00:47:25,810 うん… よかった。 602 00:47:25,810 --> 00:47:28,479 さて これから みんなで 江戸の名残に➡ 603 00:47:28,479 --> 00:47:31,382 弓之丞の芝居を 見物に行こうじゃねえか。 604 00:47:31,382 --> 00:47:34,985 これはいい! さあ 参りましょう。 参りましょう。 605 00:47:34,985 --> 00:48:45,790 ♬~