1 00:00:02,102 --> 00:00:07,040 ♬~ (テーマ音楽) 2 00:00:07,040 --> 00:02:07,728 ♬~ 3 00:02:13,300 --> 00:02:17,004 (お吉)妙に 初めから赤ちゃんが絡んだ お話でございまして。 4 00:02:17,004 --> 00:02:21,675 何しろ そもそも 神林の奥様が今頃になって➡ 5 00:02:21,675 --> 00:02:24,311 ご懐妊あそばされたらしいっていうので➡ 6 00:02:24,311 --> 00:02:29,516 旦那様も ご実家の麻生源右衛門様も大喜び。 7 00:02:29,516 --> 00:02:34,855 (源右衛門)やった~ やった~ やってくれた~!➡ 8 00:02:34,855 --> 00:02:36,890 アハハハハッ…! 9 00:02:36,890 --> 00:02:43,563 (お吉)神林の奥様に お子ができたら 次は 東吾様と七重様を…。➡ 10 00:02:43,563 --> 00:02:48,702 それが お嬢様には 手に取るようにお分かりになるから…。➡ 11 00:02:48,702 --> 00:02:53,874 そんな時 植木職人の治兵衛って人の おかみさんが殺されて➡ 12 00:02:53,874 --> 00:02:56,910 赤ちゃんが いなくなった。➡ 13 00:02:56,910 --> 00:02:59,046 いえ それだけじゃないんです。➡ 14 00:02:59,046 --> 00:03:03,650 東吾様と一緒に 深川の八幡様へ 出かけていった正吉っちゃんまでが➡ 15 00:03:03,650 --> 00:03:06,686 いなくなっちまった。➡ 16 00:03:06,686 --> 00:03:08,822 そこへ 畝様がいらして➡ 17 00:03:08,822 --> 00:03:13,493 「また 人が斬られた。 今度は 腕のいい産婆さんだ」と言う。➡ 18 00:03:13,493 --> 00:03:15,429 東吾様が駆けつけてみると➡ 19 00:03:15,429 --> 00:03:20,167 斬り口が 植木屋のおかみさんの時と そっくり同じで…。 20 00:03:20,167 --> 00:03:23,670 (東吾)源さん この仏も産婆。 21 00:03:23,670 --> 00:03:26,173 赤ん坊に絡んでるぜ。 22 00:03:26,173 --> 00:03:28,175 (源三郎)なるほど。 23 00:03:31,845 --> 00:03:33,880 (徳松)若旦那! 24 00:03:33,880 --> 00:03:36,016 今度は どこで誰がやられた? 25 00:03:36,016 --> 00:03:40,187 浅草橋の仏具屋で越前屋のおふくろさんが うちのすぐ近くで斬られたってんです。 26 00:03:40,187 --> 00:03:42,522 また 肩先から ひと太刀か? (徳松)へえ。➡ 27 00:03:42,522 --> 00:03:44,524 だもんで 畝の旦那が若旦那に…。 28 00:03:48,328 --> 00:03:52,866 治兵衛の女房 お妻 産婆のおかや そして この仏。 29 00:03:52,866 --> 00:03:56,203 3人が3人とも同じ斬り口…。 30 00:03:56,203 --> 00:04:01,908 へえ。 同じ犯人の仕業と思われます。 うむ…。 31 00:04:06,279 --> 00:04:08,281 先生…。 32 00:04:15,021 --> 00:04:17,023 東吾さん! 33 00:04:17,023 --> 00:04:27,167 ♬~ 34 00:04:27,167 --> 00:04:31,671 (伝次)殺されたのは 越前屋の主 彦右衛門のおふくろで お元っていいます。 35 00:04:31,671 --> 00:04:34,708 初めて 赤ん坊に関わりのねえ仏が出た っていうわけだな。 36 00:04:34,708 --> 00:04:37,544 いえ 越前屋じゃ ついこの間 男の子が生まれて➡ 37 00:04:37,544 --> 00:04:40,180 お宮参りを済ませたばっかり。 38 00:04:40,180 --> 00:04:42,182 何!? 39 00:04:46,686 --> 00:04:49,322 赤ん坊は? 40 00:04:49,322 --> 00:04:54,694 (彦右衛門)はあ… まだ家内と一緒に 家内の実家におりますが➡ 41 00:04:54,694 --> 00:04:57,197 それが どうかいたしましたんでしょうか? 42 00:04:57,197 --> 00:05:00,967 おかみさんと無事に実家にいる ってんだな?(彦右衛門)はい。 43 00:05:00,967 --> 00:05:04,471 うん それならいい。 44 00:05:04,471 --> 00:05:08,675 殺されたおふくろさんは 一人で出かけてったのか? 45 00:05:10,277 --> 00:05:14,147 はい… 「誰か お供を」と 申し上げたんでございますが➡ 46 00:05:14,147 --> 00:05:17,050 「近いので 供はいらぬ」と おっしゃいまして…。 47 00:05:17,050 --> 00:05:19,820 うむ… どこへ行ったんだ? 48 00:05:19,820 --> 00:05:23,657 あの… お医者様へ参りましたが。 49 00:05:23,657 --> 00:05:26,993 どこか 体が悪かったのか? 50 00:05:26,993 --> 00:05:31,498 いいえ。 「お医者様に お尋ねしたいことがある」と➡ 51 00:05:31,498 --> 00:05:33,500 そう申しまして…。 52 00:05:40,207 --> 00:05:42,842 源さん。 53 00:05:42,842 --> 00:05:46,313 お元の行った 山田丈白に会って➡ 54 00:05:46,313 --> 00:05:50,016 お元が何を聞きに来たか そいつを聞いてきてくれねえか。 55 00:05:50,016 --> 00:05:51,952 東吾さんは? 56 00:05:51,952 --> 00:05:55,322 かわせみへ戻って 少し考えをまとめてみたい。 57 00:05:55,322 --> 00:06:00,460 今度ばかりは 妙に分からねえことばかり 続けて起こるんでな。 58 00:06:00,460 --> 00:06:02,462 はい。 59 00:06:04,130 --> 00:06:06,132 善助。 (善助)へい。 60 00:06:06,132 --> 00:06:11,004 ここへ来る途中 方斎先生は 何か おっしゃってなかったか? 61 00:06:11,004 --> 00:06:14,140 いえ 別に… 何とも。 62 00:06:14,140 --> 00:06:16,076 うん…。 63 00:06:16,076 --> 00:06:18,979 「正坊が いなくなった。➡ 64 00:06:18,979 --> 00:06:21,882 ひょっとして そっちへ帰ってるんじゃないか」と➡ 65 00:06:21,882 --> 00:06:24,484 伝次親分とこの若え人が来たんで➡ 66 00:06:24,484 --> 00:06:29,155 先生 びっくりなさって 出ていらしったんでございますから…。➡ 67 00:06:29,155 --> 00:06:32,058 「正吉が どうか 無事にいてくれればいいが」と➡ 68 00:06:32,058 --> 00:06:34,494 ここへ来る道々…。 69 00:06:34,494 --> 00:06:38,665 (すすり泣き) 70 00:06:38,665 --> 00:06:42,302 それは… はい おっしゃっておいででしたが➡ 71 00:06:42,302 --> 00:06:44,671 そのほかには何も。 72 00:06:44,671 --> 00:06:48,008 うむ…。 73 00:06:48,008 --> 00:06:52,812 ただ… ひどく考え込んでいらっしゃいました。 74 00:06:55,682 --> 00:07:01,788 私が何か申し上げても返事もなさらず 「まさか」…。 75 00:07:01,788 --> 00:07:04,124 「まさか」!? 76 00:07:04,124 --> 00:07:07,961 はい。 「まさか まさか」と2度ばかり➡ 77 00:07:07,961 --> 00:07:13,133 独り言をおっしゃっておいでだったのを 覚えております。 78 00:07:13,133 --> 00:07:15,635 「まさか」…!? 79 00:07:17,137 --> 00:07:19,906 (るい)何でしょう? 80 00:07:19,906 --> 00:07:23,843 何が 「まさか」と… ねえ あなた。 81 00:07:23,843 --> 00:07:28,648 うん。 「まさか」…。 82 00:07:39,359 --> 00:07:41,828 (おもん)あっ お帰りなさい。 (嘉助)ああ。 83 00:07:41,828 --> 00:07:43,763 嘉助さん どこへ行ってたんです? 84 00:07:43,763 --> 00:07:46,266 若旦那は? お戻りになってますよ。 85 00:07:48,601 --> 00:07:51,805 若旦那! おう 嘉助か? 86 00:07:56,009 --> 00:07:59,679 「浅草の仏具屋の隠居が殺された」って 聞きましたが➡ 87 00:07:59,679 --> 00:08:02,248 調べてみるってえと➡ 88 00:08:02,248 --> 00:08:06,953 越前屋の孫を取り上げた産婆っていうのが あの殺された おかやなんですよ。 89 00:08:06,953 --> 00:08:08,888 何!? 90 00:08:08,888 --> 00:08:14,461 お宮参りを済ませたばかりだっていうから 事によったら お宮参りは深川八幡。 91 00:08:14,461 --> 00:08:16,496 嘉助さん…。 92 00:08:16,496 --> 00:08:21,134 勘を働かせて行ってみたんですよ 深川八幡へね。 93 00:08:21,134 --> 00:08:24,137 神主に聞いてみると 「間違いねえ」って言うんです。 94 00:08:24,137 --> 00:08:27,807 深川八幡へ 越前屋がお宮参りに…。 95 00:08:27,807 --> 00:08:31,144 「おはらいを済まして 確かに帰った」と そう言ってました。 96 00:08:31,144 --> 00:08:33,079 いつの話だい? 97 00:08:33,079 --> 00:08:37,650 八造が 初孫を連れていった その同じ日だそうです。 98 00:08:37,650 --> 00:08:40,687 ⚟(お吉)お嬢様。 な~に? 99 00:08:40,687 --> 00:08:44,290 (お吉)畝様が お見えになりました。 おお 源さん! 100 00:08:44,290 --> 00:08:49,662 ああ 東吾さん… 山田丈白に聞いてきました。 101 00:08:49,662 --> 00:08:52,699 お元は 丈白に 一体 何を聞きに行ったというんだい? 102 00:08:52,699 --> 00:08:55,001 痣ですな。 痣!? 103 00:08:55,001 --> 00:08:58,838 ええ。 生まれた赤ん坊の足の赤い痣 取れるものかどうか。 104 00:08:58,838 --> 00:09:00,774 (おとせ)あっ…! 105 00:09:00,774 --> 00:09:02,809 おとせさん!? どうしたんだ? 106 00:09:02,809 --> 00:09:07,113 吉松っちゃんにもあるんです 赤い痣! 吉松っていいますと? 107 00:09:07,113 --> 00:09:10,984 へえ 治兵衛のせがれです。 おかみさんが 殺されて いなくなった あの。 108 00:09:10,984 --> 00:09:13,987 本当か? 本当に その赤ん坊の足にも? 109 00:09:13,987 --> 00:09:16,122 はい… はい! 110 00:09:16,122 --> 00:09:18,792 東吾さん。 正吉は!? 111 00:09:18,792 --> 00:09:22,462 うむ。 深川八幡で見たんだ。 112 00:09:22,462 --> 00:09:25,799 お宮参りにやって来た 越前屋の赤ん坊の足にも➡ 113 00:09:25,799 --> 00:09:29,669 吉松のと同じ赤い痣のあるのをな。 114 00:09:29,669 --> 00:09:32,972 そうですよ きっと! はい! 115 00:09:32,972 --> 00:09:36,810 源さん 越前屋の赤ん坊を連れてきて おとせさんに見せてくれねえか。 116 00:09:36,810 --> 00:09:40,980 東吾さん それが…。 何だ? どうしたというんだ? 117 00:09:40,980 --> 00:09:45,652 越前屋のかみさんの実家は 天下の旗本 千五百石。 118 00:09:45,652 --> 00:09:48,555 町方の私には とても手の出せない相手です。 119 00:09:48,555 --> 00:09:51,825 なに 旗本だ!? (源三郎)ええ。➡ 120 00:09:51,825 --> 00:09:55,295 越前屋に帰ってきてならともかく 実家にいるうちは…。 121 00:09:55,295 --> 00:09:58,164 おい 源さん! まさか…➡ 122 00:09:58,164 --> 00:10:02,836 まさか その旗本 磯貝というんじゃあるめえな? 123 00:10:02,836 --> 00:10:05,538 東吾さん どうして ご存じですか? 124 00:10:07,173 --> 00:10:11,010 磯貝求女という旗本の妹の早百合➡ 125 00:10:11,010 --> 00:10:13,713 それが 越前屋彦右衛門の女房です。 126 00:10:17,517 --> 00:10:19,452 東吾さん! 127 00:10:19,452 --> 00:10:21,688 方斎先生のおっしゃった 「まさか」というのは➡ 128 00:10:21,688 --> 00:10:23,723 それだよ 源さん…。 129 00:10:23,723 --> 00:10:27,026 「まさか あの磯貝求女が…」と。 130 00:10:27,026 --> 00:10:31,331 先生が昔 剣の手ほどきをしてやった まな弟子の➡ 131 00:10:31,331 --> 00:10:34,200 恐ろしい所業に気付かれて➡ 132 00:10:34,200 --> 00:10:36,536 胸を痛めていらしたんだ。 133 00:10:36,536 --> 00:10:53,253 ♬~ 134 00:11:03,630 --> 00:11:10,537 (方斎)通之進殿。 御用繁多のお手前に まことに恐れ入ったお願いでござるが➡ 135 00:11:10,537 --> 00:11:15,842 磯貝求女のこと お調べ願えませぬか? 136 00:11:15,842 --> 00:11:17,777 (通之進)磯貝? 137 00:11:17,777 --> 00:11:23,016 無役なれど 千五百石のおふちを頂く直参旗本。 138 00:11:23,016 --> 00:11:26,886 畝 源三郎の手に負えぬ相手ゆえ➡ 139 00:11:26,886 --> 00:11:32,692 通之進殿のお力 是非に拝借が願いたいのじゃ。 140 00:11:32,692 --> 00:11:34,627 (通之進)なるほど。 141 00:11:34,627 --> 00:11:40,867 して その磯貝求女なる者の 何を調べよとおっしゃいますのか? 142 00:11:40,867 --> 00:11:48,374 (方斎)人柄 心情 懐具合まで 事細かに お調べいただきたい。 143 00:11:50,210 --> 00:12:00,820 お調べ願った結果によっては 覚悟いたさねばなりませんのじゃ。 144 00:12:00,820 --> 00:12:04,991 ほう… 覚悟をな? 145 00:12:04,991 --> 00:12:11,764 さよう… 覚悟でござる。 146 00:12:11,764 --> 00:12:25,178 ♬~ 147 00:12:25,178 --> 00:12:32,919 (赤ん坊の泣き声) 148 00:12:32,919 --> 00:12:39,025 (泣き声) 149 00:12:39,025 --> 00:12:41,928 (磯貝)不思議だ。 150 00:12:41,928 --> 00:12:46,899 (早百合)まあ 兄上様。 何が不思議なんですか? 151 00:12:46,899 --> 00:12:51,037 そうしてると 実の親子としか見えない。 152 00:12:51,037 --> 00:12:54,707 小太郎は 私が産みました子。 153 00:12:54,707 --> 00:13:03,016 実の親子ですもの なにも不思議なことは ねえ ございませんよね。 154 00:13:05,652 --> 00:13:08,688  心の声 女は自分のついたうそを➡ 155 00:13:08,688 --> 00:13:13,993 いつの間にか まことのことと 思い決めてしまう 不思議な性。➡ 156 00:13:13,993 --> 00:13:17,697 生まれた時から 持ち合わせていると見える…。 157 00:13:27,507 --> 00:13:32,178  心の声  妹は これで幸せになれるのか…➡ 158 00:13:32,178 --> 00:13:36,983 罪は 兄が一人で背負っていこう。 159 00:13:38,851 --> 00:13:41,554 (せき) 160 00:13:47,327 --> 00:13:51,531 この中に 正吉がいるかもしれねえ。 161 00:13:51,531 --> 00:13:55,335 源さん なんとかならねえのかい? 162 00:13:55,335 --> 00:14:00,473 正吉が この中にいる限り 町方の私には どうにもなりません。 163 00:14:00,473 --> 00:14:02,475 くそっ! 164 00:14:09,482 --> 00:14:15,288 磯貝求女は 治兵衛の女房を斬り殺して 吉松を盗み出し➡ 165 00:14:15,288 --> 00:14:18,157 妹 早百合の産んだ子と偽ろうために➡ 166 00:14:18,157 --> 00:14:21,994 産婆のおかやを斬って その口を封じたんだ。 167 00:14:21,994 --> 00:14:25,498 越前屋のお元を斬ったのは 何のためでしょうか? 168 00:14:25,498 --> 00:14:30,002 恐らく お元が赤ん坊に 疑いを抱いたからじゃねえだろうか。 169 00:14:30,002 --> 00:14:33,039 疑い!? そうよ。 170 00:14:33,039 --> 00:14:38,711 実の孫かどうか お元は 女の勘で疑うようになった。 171 00:14:38,711 --> 00:14:43,182 そのことを 医者の丈白のところへ聞きに出かけた…。 172 00:14:43,182 --> 00:14:48,054 では 足の赤痣を取ることのほかに…? 173 00:14:48,054 --> 00:14:50,690 きっとな。 174 00:14:50,690 --> 00:14:54,193 きっと お元は聞いたはずだよ。 175 00:14:54,193 --> 00:14:59,065 (お元)ついでに 先生 もう一つ 教えていただけませんでしょうかね。 176 00:14:59,065 --> 00:15:02,869 (丈白)もう一つ… はて 何でござろう? 177 00:15:06,139 --> 00:15:12,011 赤ん坊が まこと せがれの子なのかどうか 知りたいと思いまして…。 178 00:15:12,011 --> 00:15:14,013 うむ!? (お元)そういう時には➡ 179 00:15:14,013 --> 00:15:19,285 どうして調べたらよいのか 教えてくださいませんか 先生。 180 00:15:19,285 --> 00:15:22,989 これは 難題じゃな…。 181 00:15:22,989 --> 00:15:25,491 嫁の産んだ孫➡ 182 00:15:25,491 --> 00:15:32,265 どう眺めても せがれにも 私にも似ておらぬように思えまして。 183 00:15:32,265 --> 00:15:38,171 代々続いた越前屋の身代 うかつな者には譲れませぬ。 184 00:15:38,171 --> 00:15:40,873 どうか 先生…。 185 00:15:43,509 --> 00:15:48,848 目鼻立ち 骨相 ちょっと見には 似ておらぬように見えても➡ 186 00:15:48,848 --> 00:15:51,517 まこと 実の親と子ならば➡ 187 00:15:51,517 --> 00:15:56,022 つくづく見れば 必ず 似通うところがあるものでござる。 188 00:15:56,022 --> 00:15:59,692 殊に 足の親指。 189 00:15:59,692 --> 00:16:02,261 足の親指…!? 190 00:16:02,261 --> 00:16:05,798 俗説とはいえ まことをついていて…➡ 191 00:16:05,798 --> 00:16:11,671 大概 足の親指の形 見比べてみれば分かりましょう。➡ 192 00:16:11,671 --> 00:16:15,875 家へ帰って 一度 よく見てごらんなされ。 193 00:16:20,980 --> 00:16:24,484 3人まで無残に斬り殺した磯貝だ➡ 194 00:16:24,484 --> 00:16:27,820 正吉だとて 無事とは言えまい。 195 00:16:27,820 --> 00:16:29,856 では どうします? 196 00:16:29,856 --> 00:16:33,292 当たって砕けろだ 源さん! 197 00:16:33,292 --> 00:16:35,661 待ってください…。 離してくれ! 198 00:16:35,661 --> 00:16:39,532 こう言ってるうちにも 正吉は 磯貝に斬られて死ぬかもしれねえんだぜ。 199 00:16:39,532 --> 00:16:41,534 (方斎)東吾! 200 00:16:41,534 --> 00:16:43,536 (源三郎)方斎先生! 201 00:16:45,304 --> 00:16:48,174 わしが行こう。 202 00:16:48,174 --> 00:16:51,077 先生が!? 203 00:16:51,077 --> 00:16:57,516 磯貝求女は わしの弟子だ。 204 00:16:57,516 --> 00:17:06,125 ♬~ 205 00:17:06,125 --> 00:17:08,461 申し上げます。 206 00:17:08,461 --> 00:17:10,463 何だ? 207 00:17:12,265 --> 00:17:15,801 松浦方斎先生 お越しでございます。 208 00:17:15,801 --> 00:17:17,737 松浦先生が? はい。 209 00:17:17,737 --> 00:17:19,972 お一人で見えたのか? いえ。 210 00:17:19,972 --> 00:17:23,643 神林東吾と申す ご門人と ご一緒でございます。 211 00:17:23,643 --> 00:17:25,978 あの男と…? 212 00:17:25,978 --> 00:17:28,281 兄上…。 213 00:17:32,285 --> 00:17:39,058 心配いたすな。 お前は何も知らぬこと。 ここにいなさい。 214 00:17:39,058 --> 00:17:59,178 ♬~ 215 00:17:59,178 --> 00:18:02,381 (せき) 216 00:18:09,822 --> 00:18:13,826 これは 先生 ようこそ お越しくださいました。 217 00:18:13,826 --> 00:18:17,129 神林殿でしたな? その節は…。 218 00:18:17,129 --> 00:18:21,968 今すぐ 酒の支度をさせますので しばらくお待ちを。 219 00:18:21,968 --> 00:18:27,773 酒の馳走になりたくて来たのではない。 話があるのだ。 220 00:18:27,773 --> 00:18:34,480 お話が…? はて どんなお話でございましょうか? 221 00:18:34,480 --> 00:18:39,819 わしは 昔 お前に 剣の手ほどきをしてやった。 222 00:18:39,819 --> 00:18:43,489 はい お教えいただきました。 223 00:18:43,489 --> 00:18:48,694 (方斎)その折 わしが言うたことを 忘れてしまったようだのう。 224 00:18:51,364 --> 00:18:56,669 (方斎)「剣の道は 人を斬るために学ぶものではない。➡ 225 00:18:56,669 --> 00:19:02,942 身を守り 国を守るためにこそ学ぶのだ」と 言うたことを。 226 00:19:02,942 --> 00:19:06,445 はい 覚えておりますとも。 227 00:19:06,445 --> 00:19:12,952 あのころは 先生も盛んで 私も まだ若かった…。 228 00:19:12,952 --> 00:19:15,988 懐かしい。 (方斎)磯貝! 229 00:19:15,988 --> 00:19:18,257 何ですか? 230 00:19:18,257 --> 00:19:24,463 あの時 わしが言うたことを 忘れておらんと申すのなら➡ 231 00:19:24,463 --> 00:19:31,237 なぜ… なぜ 貴様 人を斬った?➡ 232 00:19:31,237 --> 00:19:33,239 言うてみい! 233 00:19:44,850 --> 00:19:52,158 治兵衛の女房 お妻の死骸を見た時 わしは その斬り口に➡ 234 00:19:52,158 --> 00:19:58,864 若い時のお前の太刀筋を見つけて もしかしたらと…。 235 00:20:02,501 --> 00:20:10,176 まさか… まさか お前が そんな人間に成り果てていようとは➡ 236 00:20:10,176 --> 00:20:13,479 思いたくなかったぞ 磯貝! 237 00:20:20,886 --> 00:20:26,625 (方斎)東吾の兄上 神林通之進殿に お調べいただいて➡ 238 00:20:26,625 --> 00:20:31,464 この磯貝の家が 千五百石取りにしては➡ 239 00:20:31,464 --> 00:20:34,700 あまりにも内情が苦しく➡ 240 00:20:34,700 --> 00:20:40,873 代々 かさんだ借銭に お前が苦労し抜いてきたことも聞いた。➡ 241 00:20:40,873 --> 00:20:47,646 妹の早百合殿を 金のために 越前屋という商家に嫁がせ➡ 242 00:20:47,646 --> 00:20:52,351 お前は その金で上役どもに金を使って➡ 243 00:20:52,351 --> 00:20:55,888 役に就こうと奔走したということも 聞いた。 244 00:20:55,888 --> 00:21:16,175 ♬~ 245 00:21:16,175 --> 00:21:19,178 (せき) 246 00:21:22,848 --> 00:21:29,355 (磯貝)それも全て徒労に終わった。 無駄でしたよ。 247 00:21:31,857 --> 00:21:36,529 妹を越前屋へ売って作った金は 無駄に消えてなくなり➡ 248 00:21:36,529 --> 00:21:44,203 ご覧のとおり 私は生涯を無役のままで 病に体をむしばまれ➡ 249 00:21:44,203 --> 00:21:50,910 磯貝の跡を継ぐ者もいないままに 命を終わろうとしている。 250 00:21:53,345 --> 00:21:57,216 (磯貝)三河以来の名家 磯貝の家も➡ 251 00:21:57,216 --> 00:22:03,989 私が死ぬと同時に この世から うせてなくなる。➡ 252 00:22:03,989 --> 00:22:07,293 なんと哀れな…。 253 00:22:07,293 --> 00:22:09,228 磯貝…。 254 00:22:09,228 --> 00:22:12,665 (磯貝)哀れは 私一人でたくさんだ! 255 00:22:12,665 --> 00:22:15,467 早百合まで不幸にさせたくはない! 256 00:22:22,374 --> 00:22:31,183 妹はね 先生… 磯貝の家のために たった一人の兄を世に出そうために➡ 257 00:22:31,183 --> 00:22:37,823 数ある縁談 良縁を断り ばく大な支度金 欲しさに➡ 258 00:22:37,823 --> 00:22:43,529 商人の越前屋へ嫁に行ったのです。 259 00:22:43,529 --> 00:22:54,173 それなのに 今度は 越前屋の方から「離縁する」と言ってきた。 260 00:22:54,173 --> 00:22:56,675 離縁…!? 261 00:22:59,712 --> 00:23:07,987 お前も旗本のご息女。 「女大学」ぐらいは そらんじていよう? 262 00:23:07,987 --> 00:23:12,858 「嫁して三年 子なきは去る」。➡ 263 00:23:12,858 --> 00:23:18,163 私は 5年も我慢したんですよ。 264 00:23:18,163 --> 00:23:23,669 彦右衛門には 「早百合さんに 子供ができないのなら しかたがない。➡ 265 00:23:23,669 --> 00:23:30,009 気に入った女をよそへ囲って 子供を作ってきておくれ」と言ったのに➡ 266 00:23:30,009 --> 00:23:33,846 この子は お前がかわいそうだと それも ようできないでいる。➡ 267 00:23:33,846 --> 00:23:36,315 フッフッフッ…。➡ 268 00:23:36,315 --> 00:23:39,184 でもね 早百合さんや➡ 269 00:23:39,184 --> 00:23:45,691 このまま 子供ができずに 越前屋の跡が 絶えるようなことにでもなったら➡ 270 00:23:45,691 --> 00:23:51,563 ご先祖様に申し訳が立ちませんからねえ。 271 00:23:51,563 --> 00:23:54,366 出ていってもらいましょう。 272 00:23:57,303 --> 00:23:59,705 えっ? 273 00:23:59,705 --> 00:24:06,812 (お元)彦右衛門には 子供ができる 丈夫な嫁をもろうてやらねば。 274 00:24:06,812 --> 00:24:09,481 (早百合)あなた…! 275 00:24:09,481 --> 00:24:14,153 私は…➡ 276 00:24:14,153 --> 00:24:16,989 お店に お客が来るから。 277 00:24:16,989 --> 00:24:29,301 ♬~ 278 00:24:29,301 --> 00:24:33,005 (磯貝)「子供が産みたい。➡ 279 00:24:33,005 --> 00:24:37,509 子供が欲しい」と思い暮らして 妹は➡ 280 00:24:37,509 --> 00:24:40,012 去年の夏の初めごろ➡ 281 00:24:40,012 --> 00:24:45,317 私のところへやって来て 「できたらしい」…➡ 282 00:24:45,317 --> 00:24:50,689 目を輝かして うれしそうに言ったのです。 283 00:24:50,689 --> 00:24:57,196 「これで離縁にならずに済む」と。 284 00:24:57,196 --> 00:24:59,498 それなのに…。 285 00:25:04,470 --> 00:25:11,143 秋に入って妹は また ここへやって来た。 286 00:25:11,143 --> 00:25:17,282 「子供ができた」と告げに来た時の 目の輝きは跡形もなく➡ 287 00:25:17,282 --> 00:25:23,155 頬も青ざめ…➡ 288 00:25:23,155 --> 00:25:31,163 「間違いだった」と妹は 私に…。 289 00:25:31,163 --> 00:25:33,665 間違い…。 290 00:25:33,665 --> 00:25:39,471 (泣き声) 291 00:25:39,471 --> 00:25:44,276 間違いだったということを もう彦右衛門には話したのか? 292 00:25:46,845 --> 00:25:51,183 姑殿にも まだ申しておらぬな? 293 00:25:51,183 --> 00:25:55,387 言えば 離縁になりましょう。 294 00:25:57,689 --> 00:26:02,261 それならば 心配はいらぬ。 295 00:26:02,261 --> 00:26:04,329 えっ? 296 00:26:04,329 --> 00:26:08,801 今までどおり みごもっている体を装い➡ 297 00:26:08,801 --> 00:26:11,837 産み月が近くなったら また ここへ来い。  298 00:26:11,837 --> 00:26:16,542 「実家へ帰って産んできます」と さように申せ。 299 00:26:18,477 --> 00:26:20,479 兄上…。 300 00:26:22,147 --> 00:26:28,287 あの時 私は… 私は あといくばくもない命を➡ 301 00:26:28,287 --> 00:26:31,990 妹の幸せのために捨てようと 決めたのです。 302 00:26:33,992 --> 00:26:37,830 神林殿には分かるまい。 303 00:26:37,830 --> 00:26:42,167 その分厚い胸 たくましい かいなの持ち主には➡ 304 00:26:42,167 --> 00:26:49,041 所詮 病弱の身に宿る 捨てばちな生き方…➡ 305 00:26:49,041 --> 00:26:52,678 所詮 理解はできまいが…。 306 00:26:52,678 --> 00:27:02,254 その時 私は 妹のために 「鬼になってやれ…」 決めたのだ。 307 00:27:02,254 --> 00:27:05,457 赤の他人の子を連れてきて➡ 308 00:27:05,457 --> 00:27:09,128 「早百合殿が産んだ」と 越前屋へ押しつけようと? 309 00:27:09,128 --> 00:27:15,634 養生先で知り合った 治兵衛の女房 産み月も合う。 310 00:27:15,634 --> 00:27:19,138 「これだ」と決めて 妹には ないしょ…。 311 00:27:19,138 --> 00:27:24,810 しかし いくら妹のためだからといって 罪もない治兵衛の女房 お妻を殺し➡ 312 00:27:24,810 --> 00:27:28,147 秘密を握る産婆のおかやまでも! 313 00:27:28,147 --> 00:27:37,289 求女 今からでも遅くはない。 昔の むくな お前に立ち戻ってくれ。 314 00:27:37,289 --> 00:27:43,095 昔の私に返れるものなら 私だとて戻りたい…! 315 00:27:43,095 --> 00:27:49,301 だが… だが もう駄目なのです。 316 00:27:49,301 --> 00:27:57,176 病魔は この体を骨の髄まで食い荒らし…➡ 317 00:27:57,176 --> 00:28:02,781 間もなく 私は死んでいく。 318 00:28:02,781 --> 00:28:07,119 これ以上 罪を重ねないでくれ。 319 00:28:07,119 --> 00:28:12,457 正吉を 私に返してもらいたい。 320 00:28:12,457 --> 00:28:15,794 正吉? 321 00:28:15,794 --> 00:28:19,464 ああ あの子供ですか…。 322 00:28:19,464 --> 00:28:23,468 ま… まさか… まさか お前 あの子を? 323 00:28:25,337 --> 00:28:28,473 ご安心ください。 324 00:28:28,473 --> 00:28:34,146 早百合の抱いた小太郎を 「吉松」と呼んで 後をつけてきたので➡ 325 00:28:34,146 --> 00:28:37,482 捕らえて 屋敷に閉じ込めてありますが…➡ 326 00:28:37,482 --> 00:28:42,154 あの子には まだ何もしていません。 327 00:28:42,154 --> 00:28:45,057 (方斎)そうか よかった…。 328 00:28:45,057 --> 00:28:48,660 せめてもの救いだ。➡ 329 00:28:48,660 --> 00:28:55,167 わしが このとおり 頭を下げて頼むから➡ 330 00:28:55,167 --> 00:28:58,870 あの子を東吾に渡してやってくれ。 331 00:29:03,775 --> 00:29:11,116 先生のお頼みとあらば…。 332 00:29:11,116 --> 00:29:13,418 暫時 お待ちを。 333 00:29:40,979 --> 00:29:42,981 正吉! (正吉)先生! 334 00:29:44,650 --> 00:29:46,685 (方斎)な… 何をする!? 335 00:29:46,685 --> 00:29:50,522 お二人とも 刀を捨てていただきましょうか。 336 00:29:50,522 --> 00:29:52,824 何? 337 00:29:52,824 --> 00:29:55,661 私に罪を重ねさせたくないと おっしゃるなら➡ 338 00:29:55,661 --> 00:30:01,166 いや… この子の命を助けたいと お思いならば➡ 339 00:30:01,166 --> 00:30:05,370 さあ 早く刀を…。 340 00:30:09,875 --> 00:30:11,877 東吾…。 341 00:30:11,877 --> 00:30:22,020 ♬~ 342 00:30:22,020 --> 00:30:24,056 神林殿…。 343 00:30:24,056 --> 00:30:54,553 ♬~ 344 00:30:54,553 --> 00:30:56,555 やあ! 345 00:31:01,360 --> 00:31:03,361 兄上! 346 00:31:09,501 --> 00:31:11,503 ああっ…! 347 00:31:14,840 --> 00:31:16,875 あっ…。 348 00:31:16,875 --> 00:31:20,379 さ… さ… 早百合! 349 00:31:30,322 --> 00:31:32,324 あっ…。 350 00:31:41,333 --> 00:31:45,537 小… 小太郎…。 351 00:31:50,041 --> 00:31:53,912 さ… さ… 早百合~! 352 00:31:53,912 --> 00:31:55,914 (方斎)求女! 353 00:32:01,653 --> 00:32:03,655 はっ! 354 00:32:13,165 --> 00:32:19,504 ♬~ 355 00:32:19,504 --> 00:32:27,012 (赤ん坊の泣き声) 356 00:32:27,012 --> 00:32:29,514 正吉…。 (泣き声) 357 00:32:29,514 --> 00:32:32,851 (泣き声) 358 00:32:32,851 --> 00:32:44,329 (赤ん坊の泣き声) 359 00:32:44,329 --> 00:33:03,482 ♬~ 360 00:33:03,482 --> 00:33:06,151 (正吉)おっ母ちゃ~ん! 361 00:33:06,151 --> 00:33:08,954 正吉… 正吉! えっ? 362 00:33:11,656 --> 00:33:14,292 正吉~!➡ 363 00:33:14,292 --> 00:33:18,830 よかった… 正吉…。 364 00:33:18,830 --> 00:33:23,502 (泣き声) 365 00:33:23,502 --> 00:33:56,201 ♬~ 366 00:34:25,830 --> 00:34:31,503 (嘉助)若旦那… ねえ お嬢さん どこ いらしったんです? 367 00:34:31,503 --> 00:34:33,538 麻生様へ。 368 00:34:33,538 --> 00:34:37,175 (嘉助)えっ…!? (お吉)麻生様へ? 369 00:34:37,175 --> 00:34:44,849 「直参 千五百石 磯貝求女殿を 討ち果たした罪 軽からず。➡ 370 00:34:44,849 --> 00:34:47,052 名乗って出る」と…。 371 00:34:50,655 --> 00:34:52,590 (お吉)お嬢さん…➡ 372 00:34:52,590 --> 00:34:56,328 東吾様 まさか 罪になるようなことは ございませんでしょうね? 373 00:34:56,328 --> 00:34:58,863 (嘉助)そんなことがあって たまるかよ! 374 00:34:58,863 --> 00:35:01,833 相手は 罪もねえ人間を 3人も斬り殺してるんだぞ。 375 00:35:01,833 --> 00:35:05,136 そうですよね。 正吉っちゃんを殺そうと思って➡ 376 00:35:05,136 --> 00:35:07,806 松浦先生にも 斬りかかってきたんですものね。 377 00:35:07,806 --> 00:35:11,142 ああ 殺されたって しょうのねえ相手だ。 378 00:35:11,142 --> 00:35:15,981 それに お目付け役の麻生様も ついていてくださるんですから➡ 379 00:35:15,981 --> 00:35:17,983 心配は…。 380 00:35:20,285 --> 00:35:22,220 お嬢さん? 381 00:35:22,220 --> 00:35:42,540 ♬~ 382 00:35:42,540 --> 00:35:48,680 麻生殿は 理非善悪 決して誤らぬお方 と聞いておる。 383 00:35:48,680 --> 00:35:55,453 東吾のこと 麻生殿にお任せしておけば 心配はいらん。 384 00:35:55,453 --> 00:35:57,389 はい。 385 00:35:57,389 --> 00:36:02,794 麻生様は 若先生を お嬢様のお婿さんに とまで おっしゃってるんですから➡ 386 00:36:02,794 --> 00:36:05,830 決して悪いようにはなさいませんよ。 387 00:36:05,830 --> 00:36:13,271 でも それが かえって おるいさんには ご心配なんでございましょう。 388 00:36:13,271 --> 00:36:15,807 うむ…。 389 00:36:15,807 --> 00:37:25,610 ♬~ 390 00:37:32,817 --> 00:37:35,520 今 戻った。 391 00:37:41,493 --> 00:37:45,163 東吾 安心せい。 392 00:37:45,163 --> 00:37:49,501 「磯貝求女は 乱心いたして 妹 早百合を斬り殺し➡ 393 00:37:49,501 --> 00:37:52,837 自らも腹切って死んだ」と。 394 00:37:52,837 --> 00:37:57,008 お上ではな 「磯貝の家 お取り潰し。➡ 395 00:37:57,008 --> 00:38:01,613 ほかには一切 おとがめはなし」と お沙汰が出たぞ。 396 00:38:01,613 --> 00:38:04,516 (七重)まあ…。 では 私は…。 397 00:38:04,516 --> 00:38:08,253 無論 おとがめはなしだ。➡ 398 00:38:08,253 --> 00:38:12,457 そのかわり 今度のことは 手柄にもならん。 399 00:38:12,457 --> 00:38:16,327 まあ くたびれもうけだが しかたがあるまい。 400 00:38:16,327 --> 00:38:18,796 ありがとう存じました。 401 00:38:18,796 --> 00:38:21,466 あっ 七重。 お上に代わって➡ 402 00:38:21,466 --> 00:38:24,802 わしと お前で 東吾の手柄を褒めてやろうではないか。 403 00:38:24,802 --> 00:38:26,738 酒を持て! 酒を。 404 00:38:26,738 --> 00:38:29,474 (七重) お言葉を返して相すみませぬが 父上…。 405 00:38:29,474 --> 00:38:31,809 何だ? 406 00:38:31,809 --> 00:38:35,013 るい様が さぞ お案じなされておいででしょう。 407 00:38:36,681 --> 00:38:40,285 お引き止めいたしましては かえって ご迷惑。 408 00:38:40,285 --> 00:38:43,488 ねえ 東吾様。 409 00:38:43,488 --> 00:38:47,358 お気遣い るいにも きっと伝えましょう。 410 00:38:47,358 --> 00:38:50,161 私どもに お構いなく➡ 411 00:38:50,161 --> 00:38:53,164 どうぞ お引き取りくださいませ。 412 00:38:56,935 --> 00:38:58,870 では。 413 00:38:58,870 --> 00:39:01,439 帰るのか? 414 00:39:01,439 --> 00:39:04,642 夜中 ご苦労をおかけいたしました。 415 00:39:09,180 --> 00:39:11,115 帰るのか…。 416 00:39:11,115 --> 00:39:28,132 ♬~ 417 00:39:28,132 --> 00:39:32,437 どうするつもりなんだ 七重は…。 418 00:39:35,473 --> 00:39:40,278 そうか…。 それは まず よかった。 419 00:39:40,278 --> 00:39:42,580 ご心配をおかけしました。 420 00:39:44,148 --> 00:39:48,653 おやじ殿には 俺からも よく礼を言っておこう。 421 00:39:48,653 --> 00:39:50,688 お願いいたします。 422 00:39:50,688 --> 00:39:54,158 しかしな…➡ 423 00:39:54,158 --> 00:39:57,662 「嫁して三年 子なきは去る」と➡ 424 00:39:57,662 --> 00:40:00,298 離縁を迫られていたとか…。 425 00:40:00,298 --> 00:40:03,835 かわいそうにな…。 426 00:40:03,835 --> 00:40:08,706 子を産み 孫を産ませて 守ろうとする…➡ 427 00:40:08,706 --> 00:40:14,712 家とは何だろうかと 今度は つくづくと考えさせられました。 428 00:40:20,852 --> 00:40:23,321 まあ いいさ。 429 00:40:23,321 --> 00:40:30,094 香苗が丈夫な子を産んでくれれば お前は 家のことからは解き放されて➡ 430 00:40:30,094 --> 00:40:33,865 好きな者と好きに暮らせる。 431 00:40:33,865 --> 00:40:38,703 そうさせていただいて 兄上… よろしいのですね? 432 00:40:38,703 --> 00:40:41,606 勝手にしろい。 433 00:40:41,606 --> 00:40:43,608 ありがとうございます。 434 00:40:45,343 --> 00:40:47,278 こいつ…。 435 00:40:47,278 --> 00:40:51,049 (笑い声) ⚟(香苗)あなた。 436 00:40:51,049 --> 00:40:54,719 あっ 香苗。 お前 もう起きてもよいのか? 437 00:40:54,719 --> 00:40:57,522 (香苗)麻生の父が参りました。 おやじ殿が…!? 438 00:40:59,223 --> 00:41:03,161 おっ… 何だ 東吾 まだ こんなところにおったのか。 439 00:41:03,161 --> 00:41:05,163 七重の申したとおり➡ 440 00:41:05,163 --> 00:41:09,867 さっさと るいのところへ行って 安心させてやれ。 うん? 441 00:41:09,867 --> 00:41:12,770 それより通之進。 ああ… はい。 442 00:41:12,770 --> 00:41:17,709 よい名を付けてきてやったぞ。 では 名前が付きましたか? 443 00:41:17,709 --> 00:41:20,511 ああ… さあ これを見てみろ。 444 00:41:20,511 --> 00:41:23,414 何の名前が付いたのでございます? 445 00:41:23,414 --> 00:41:29,687 「何の名前」だと!? 張り合いのない。 お前の腹の子の名前だ! 446 00:41:29,687 --> 00:41:31,622 ええ~! 447 00:41:31,622 --> 00:41:35,560 実はな わしが おやじ殿にお願い申し上げておいたのだ。 448 00:41:35,560 --> 00:41:38,696 で 何と付きましたかな? お待ちください。 449 00:41:38,696 --> 00:41:40,631 (源右衛門)何だ? 450 00:41:40,631 --> 00:41:44,869 「私のお腹の子」というのは それは どういうことでございます? 451 00:41:44,869 --> 00:41:46,804 アハハハハッ! 452 00:41:46,804 --> 00:41:50,675 わしらが気付かんでいるとでも思うてか。 アハハハハッ! 453 00:41:50,675 --> 00:41:54,212 香苗 みんなな 知っとるのだ。 もう みんななあ…。 454 00:41:54,212 --> 00:41:56,881 義姉上 おめでとうございます。 455 00:41:56,881 --> 00:41:59,784 おかげで 私は 「好きな者と好きなように暮らせ」と➡ 456 00:41:59,784 --> 00:42:03,154 兄上から お許しを頂くことができました。 ありがとうございました。 457 00:42:03,154 --> 00:42:08,493 東吾さん! いえ 父上も あなたも 何をおっしゃってらっしゃるのですか? 458 00:42:08,493 --> 00:42:10,428 私は…➡ 459 00:42:10,428 --> 00:42:13,164 みごもってなどおりません。 460 00:42:13,164 --> 00:42:15,099 何? えっ!? 461 00:42:15,099 --> 00:42:17,101 香苗…!? 462 00:42:20,505 --> 00:42:26,310 誰が一体 そのようなことを 言いだされたのですか? 463 00:42:26,310 --> 00:42:28,246 それは… 義父上…。 464 00:42:28,246 --> 00:42:30,848 違う 違う! 違う…。 東吾…。 465 00:42:30,848 --> 00:42:33,751 えっ? そ… そうだ 東吾だ! 466 00:42:33,751 --> 00:42:38,189 あ~… 東吾が 初めに 「つわり」と言いだしたのだ。 467 00:42:38,189 --> 00:42:40,124 なあ? 通之進。 はい そうです。 468 00:42:40,124 --> 00:42:42,860 東吾が言いだしたんだ。 東吾が…。 東吾さん! 469 00:42:42,860 --> 00:42:44,896 あの… るいのところへ行ってまいります! 470 00:42:44,896 --> 00:42:47,031 (通之進)とと… 東吾! 471 00:42:47,031 --> 00:42:50,068 七重殿にも言われてきました。 るいが心配をしているから➡ 472 00:42:50,068 --> 00:42:52,837 麻生殿のおかげで おとがめもなく済んだということ➡ 473 00:42:52,837 --> 00:42:54,772 るいに はい 知らせてまいります! 474 00:42:54,772 --> 00:42:56,774 おい おい…! 475 00:43:00,278 --> 00:43:03,181 あっ 気を付けろ! はい! 476 00:43:03,181 --> 00:43:06,484 ア~ハハハハッ! 477 00:43:06,484 --> 00:43:09,987 ああ… ハ~ハハッ… ハハハハ。➡ 478 00:43:09,987 --> 00:43:14,659 ハハハ…。 フフフッ。 479 00:43:14,659 --> 00:43:18,863 本当に どういう方たちなんでしょうねえ。 480 00:43:21,299 --> 00:43:25,002 フッハッハッハッ…。 481 00:43:25,002 --> 00:43:30,308 アハハハッ。 アハハハ…。 482 00:43:30,308 --> 00:43:32,243 はあ…。 483 00:43:32,243 --> 00:43:42,320 ♬~ 484 00:43:42,320 --> 00:43:44,322 (お花)あっ 旦那! 485 00:43:46,023 --> 00:43:48,059 おとがめなしだ。 486 00:43:48,059 --> 00:43:51,195 (歓声) 487 00:43:51,195 --> 00:44:00,872 ♬~ 488 00:44:00,872 --> 00:44:04,642 (お花)さあさあ さあさあ お祝いだ! みんな 飲んでください。 489 00:44:04,642 --> 00:44:06,978 旦那… いきましょう。 ねっ。➡ 490 00:44:06,978 --> 00:44:09,013 遠慮なく どんどん やってくださいよ。➡ 491 00:44:09,013 --> 00:44:11,148 どんどん つけていくから。 492 00:44:11,148 --> 00:44:14,151 八造 ご苦労だったな。 おっと…。 493 00:44:14,151 --> 00:44:17,021 おっと! おっ ありがとう。 494 00:44:17,021 --> 00:44:19,657 旦那! 今日は あっしにも つがせてください。 495 00:44:19,657 --> 00:44:21,659 おいおい おいおい…。 すいません すいません…。 496 00:44:24,829 --> 00:44:26,764 るい! 497 00:44:26,764 --> 00:44:28,699 若旦那だ! 498 00:44:28,699 --> 00:44:31,502 (お吉)お嬢さ~ん! 499 00:44:31,502 --> 00:44:33,437 (一同)お帰りなさいまし! 500 00:44:33,437 --> 00:44:35,740 よく まあ…。 るいは? 501 00:44:49,687 --> 00:44:51,689 るい。 502 00:44:57,328 --> 00:44:59,330 どうしたんだ? るい。 503 00:45:03,467 --> 00:45:13,477 ♬~ 504 00:45:13,477 --> 00:45:15,413 泣いていたのか? 505 00:45:15,413 --> 00:45:25,656 ♬~ 506 00:45:25,656 --> 00:45:29,160 (すすり泣き) 507 00:45:29,160 --> 00:45:31,095 るい…。 508 00:45:31,095 --> 00:45:40,671 (すすり泣き) 509 00:45:40,671 --> 00:45:58,356 ♬~ 510 00:46:00,024 --> 00:46:08,132 子供ができないって… ただそれだけで離縁だなんて…。 511 00:46:08,132 --> 00:46:15,006 そのために 罪もない人たちが斬られて死んで…。 512 00:46:15,006 --> 00:46:18,476 いくらなんでも ひどすぎます。 513 00:46:18,476 --> 00:46:21,512 うん…。 514 00:46:21,512 --> 00:46:25,816 お姑さんが 「女大学」を盾に そんなことを言ったら➡ 515 00:46:25,816 --> 00:46:29,520 旦那さんが なぜ 突っぱねてあげなかったんでしょう。 516 00:46:32,590 --> 00:46:37,528 好きな人の子供を そりゃ 産みたいと➡ 517 00:46:37,528 --> 00:46:40,531 女なら誰でも思いますよ…。 518 00:46:42,833 --> 00:46:46,303 欲しくて欲しくて たまらない子。 519 00:46:46,303 --> 00:46:50,174 授けてもらえないでいる女なら➡ 520 00:46:50,174 --> 00:46:55,513 誰にも増して 欲しいと…➡ 521 00:46:55,513 --> 00:46:58,182 欲しいと…。 522 00:46:58,182 --> 00:47:00,785 るい…。 523 00:47:00,785 --> 00:47:04,455 思っている女の気持ち➡ 524 00:47:04,455 --> 00:47:07,491 男には分からないんでしょうかねえ…。 525 00:47:07,491 --> 00:47:11,796 分かるさ。 分かる…。 526 00:47:14,131 --> 00:47:18,002 分かっているのなら なぜ? 527 00:47:18,002 --> 00:47:23,274 るい 俺は… 俺はな➡ 528 00:47:23,274 --> 00:47:29,280 女房に子供ができなくたって 去り状なんぞは書かねえぜ。 529 00:47:32,950 --> 00:47:34,952 書くものか。 530 00:47:38,656 --> 00:47:43,661 子供なんぞより 女房の方が ずっと ずっと…。 531 00:47:46,163 --> 00:47:48,099 俺には大事だ! 532 00:47:48,099 --> 00:47:51,836 ああ… 東吾様…。 533 00:47:51,836 --> 00:48:43,821 ♬~