1 00:00:02,135 --> 00:02:37,557 ♬~ 2 00:02:37,557 --> 00:02:39,493 (いななき) 3 00:02:39,493 --> 00:02:42,796 (秀吉)進め~! 4 00:02:45,232 --> 00:02:47,567 <天正5年10月。➡ 5 00:02:47,567 --> 00:02:53,907 松永久秀を 大和 信貴山城に滅ぼして 一応 畿内の情勢が安定すると➡ 6 00:02:53,907 --> 00:02:58,779 秀吉は 信長の命令で 息つく暇もなく 播磨へ入った。➡ 7 00:02:58,779 --> 00:03:01,715 いよいよ 中国攻めである。➡ 8 00:03:01,715 --> 00:03:07,421 その資金調達の任を負って 秀長は 堺へ向かった> 9 00:03:09,389 --> 00:03:13,193 <千 宗易に 借金してこいというのである> 10 00:03:13,193 --> 00:03:19,066 (ねね)千 宗易というお方は どのような方でございましょう。 11 00:03:19,066 --> 00:03:21,868 (家次)堺の納屋衆にて➡ 12 00:03:21,868 --> 00:03:26,540 南蛮辺りと手広う商いをいたしておる 豪商と聞いております。 13 00:03:26,540 --> 00:03:32,212 また 茶の湯の道を究め 信長様のご信頼を受けておられると➡ 14 00:03:32,212 --> 00:03:34,147 聞き及んでおります。 15 00:03:34,147 --> 00:03:39,553 信長様が 茶の湯とやらを 深く愛しておられることは➡ 16 00:03:39,553 --> 00:03:41,888 私も伺っております。 17 00:03:41,888 --> 00:03:47,761 でも そのような方が 秀吉殿に ご用立てくださるのでございましょうか。 18 00:03:47,761 --> 00:03:53,500 さあ 私も 秀吉殿と宗易殿が どのような おつきあいをなされているのか➡ 19 00:03:53,500 --> 00:03:56,203 その辺のところは さっぱり…。 20 00:03:58,238 --> 00:04:04,544 秀長殿は もう 堺へ着かれた頃であろうか。 21 00:04:07,514 --> 00:04:13,520 早う首尾を伺わねば 生きた心地がいたしませぬ。 22 00:04:20,093 --> 00:04:25,532 (秀長)本来ならば 兄 筑前が 参上いたすべきところではございますが➡ 23 00:04:25,532 --> 00:04:30,871 播磨出陣中ゆえ 私が名代にて お願いに上がりました。 24 00:04:30,871 --> 00:04:34,741 何とぞ よろしゅう お計らいくださいますよう。 25 00:04:34,741 --> 00:04:41,214 筑前殿とは 信長様のご使者として 何度も お目にかかっております。 26 00:04:41,214 --> 00:04:43,150 お人柄も よう…。 27 00:04:43,150 --> 00:04:49,890 まことに申し上げ難きことながら 先般 筑前 信長様のご勘気に触れ➡ 28 00:04:49,890 --> 00:04:53,226 蟄居申しつけられてございます。 29 00:04:53,226 --> 00:04:58,098 その間 信長様に謀反の心なき証しにと➡ 30 00:04:58,098 --> 00:05:01,835 蓄えておりましたものを 全て使い果たしてございます。 31 00:05:01,835 --> 00:05:09,176 なるほど。 銭がのうては 謀反の戦も起こせぬ道理。 32 00:05:09,176 --> 00:05:13,847 信長様も ご納得なされたでございましょう。 33 00:05:13,847 --> 00:05:18,185 おかげをもちまして 信長様のご勘気も解け➡ 34 00:05:18,185 --> 00:05:21,087 播磨出陣と相なりましたが➡ 35 00:05:21,087 --> 00:05:25,058 さしあたって 備えに入り用なものにも 事欠く始末…。 36 00:05:25,058 --> 00:05:30,764 ご迷惑とは承知 こうやって お願いに上がった仕儀にございます。 37 00:05:30,764 --> 00:05:36,870 なるほど。 さすがの筑前殿も お困りでございましょう。 38 00:05:36,870 --> 00:05:41,208 こたびの出陣には 播磨一国 切り取り勝手とのお許しを➡ 39 00:05:41,208 --> 00:05:43,543 信長様より頂いております。 40 00:05:43,543 --> 00:05:50,417 ほう。 それでは 筑前殿は 北近江のほかに 播磨をも領せられる➡ 41 00:05:50,417 --> 00:05:53,887 大大名に おなりなされるのでございますな。 42 00:05:53,887 --> 00:05:57,757 とはいうても 後ろに 毛利の控えておること。 43 00:05:57,757 --> 00:06:01,695 先のことは どうなることやら 分かりませぬ。 44 00:06:01,695 --> 00:06:07,434 もしもの場合 返済おぼつかぬ仕儀になりかねませぬ。 45 00:06:07,434 --> 00:06:13,440 その時のために これを持参いたしました。 46 00:06:18,845 --> 00:06:22,716 商人の間では 貸し借りの折➡ 47 00:06:22,716 --> 00:06:27,854 必ず それに見合う抵当というものを 入れるのが習わしと聞いておりますが➡ 48 00:06:27,854 --> 00:06:33,727 長浜12万石というても 信長様より おあずかりしておりますもの。 49 00:06:33,727 --> 00:06:36,529 播磨とて 見通しはつかず➡ 50 00:06:36,529 --> 00:06:41,868 今の筑前は 裸同様 めぼしいものとて ございませぬ。➡ 51 00:06:41,868 --> 00:06:48,208 それゆえ 思いあぐねまして…。 52 00:06:48,208 --> 00:06:56,082 あなた様のお命を 借金の抵当になさると おっしゃいますか…。 53 00:06:56,082 --> 00:06:58,852 はい。 54 00:06:58,852 --> 00:07:02,489 お返しできぬ仕儀に 相なりました時には➡ 55 00:07:02,489 --> 00:07:08,795 せめて お詫びに 腹かき切って 相果てる所存にございます。 56 00:07:16,036 --> 00:07:19,506 よろしゅうございましょう。 57 00:07:19,506 --> 00:07:23,376 あなた様のお命と引き換えなれば➡ 58 00:07:23,376 --> 00:07:26,846 宗易 これほどの銭 惜しいとは思いませぬ。 59 00:07:26,846 --> 00:07:28,782 それでは…! 60 00:07:28,782 --> 00:07:32,519 銭は惜しゅうはございませぬ。 61 00:07:32,519 --> 00:07:39,859 しかし あなた様のお命を頂くのは まことに 惜しゅうございます。 62 00:07:39,859 --> 00:07:44,731 あなた様には 末永う生きていただいて➡ 63 00:07:44,731 --> 00:07:50,503 宗易 親しく おつきあいを させていただきとうございますな。➡ 64 00:07:50,503 --> 00:07:52,872 いや~ ハッハ…。 65 00:07:52,872 --> 00:07:57,544 勝ち戦を お祈りいたしております。 66 00:07:57,544 --> 00:07:59,879 宗易殿…。 67 00:07:59,879 --> 00:08:06,486 いや それにしても 筑前殿は 立派な弟御をお持ちじゃ。 68 00:08:06,486 --> 00:08:13,793 筑前殿に あなた様がおいでになる限り ご武運の尽きることはございますまい。 69 00:08:15,495 --> 00:08:21,167 <秀長と 千 宗易との親交は 秀長が世を去るまで続いた。➡ 70 00:08:21,167 --> 00:08:24,838 2人の協力が 秀吉の天下統一に➡ 71 00:08:24,838 --> 00:08:29,843 また その後の治政に 大きな役割を果たすことになるのである> 72 00:08:31,511 --> 00:08:34,414 (とも) それは よろしゅうございましたなあ。➡ 73 00:08:34,414 --> 00:08:38,852 これで 藤吉郎も 心おきなく おつとめに励めましょう。 74 00:08:38,852 --> 00:08:44,190 (なか)人に銭まで借りて 戦をするなど たわけた話よ。 75 00:08:44,190 --> 00:08:48,061 (とも)信長様のご命令じゃ。 背くわけにはいかぬわ。 76 00:08:48,061 --> 00:08:53,533 もし 銭がのうて 戦ができずば 今度こそ 藤吉郎の首が飛ぶわ。 77 00:08:53,533 --> 00:08:57,871 その銭とて いずれは 百姓 商人から召し上げて➡ 78 00:08:57,871 --> 00:09:00,140 返さねばならぬではないか。 79 00:09:00,140 --> 00:09:05,011 なにも 遠い中国まで手を延ばされずとも もう十分じゃ。 80 00:09:05,011 --> 00:09:07,480 私も そう思っとりました。 81 00:09:07,480 --> 00:09:14,354 ただ 中国の毛利は 信長様に盾つく者を 後ろから助けているとか。 82 00:09:14,354 --> 00:09:19,826 今 毛利を押さえねば せっかく 信長様の力で平和になったものを➡ 83 00:09:19,826 --> 00:09:24,497 また 合戦の場になりましょう。 そのための中国攻め。 84 00:09:24,497 --> 00:09:27,834 やっと 私にも分かるようになりました。 85 00:09:27,834 --> 00:09:32,172 どう言うてみたところで 人殺しは 人殺しよのう。 86 00:09:32,172 --> 00:09:35,842 秀吉殿は 無益な殺生はなさいませぬ。 87 00:09:35,842 --> 00:09:40,180 人を斬るのは嫌じゃと いつも言うておられます。 88 00:09:40,180 --> 00:09:43,516 あっ まあ…。 89 00:09:43,516 --> 00:09:48,188 これは お言葉を返すようなことを申しまして➡ 90 00:09:48,188 --> 00:09:51,858 お許しくださいまし。 91 00:09:51,858 --> 00:09:57,730 私とて お義母様と同じ気持ちでおります。 92 00:09:57,730 --> 00:10:03,470 早う戦のない世の中が来てほしい ただ それだけを…。 93 00:10:03,470 --> 00:10:06,406 (あくび) 94 00:10:06,406 --> 00:10:09,876 (きい)小一郎兄さは しの殿に お会いになられたかのう? 95 00:10:09,876 --> 00:10:13,746 しの殿は 播磨のどこやらで 宮仕えをなされたと聞いたが。 96 00:10:13,746 --> 00:10:19,219 (とも)藤吉郎が反対している娘じゃ。 勝手に播磨に帰ったものを➡ 97 00:10:19,219 --> 00:10:21,554 わざわざ追いかけるようなことを せいでも…。 98 00:10:21,554 --> 00:10:28,228 それじゃ 小一郎兄さが かわいそうじゃ。 小一郎は 長浜12万石一の家来じゃ。 99 00:10:28,228 --> 00:10:34,567 小一郎には 小一郎にふさわしい娘がおる。 藤吉郎に任せておけばよいのじゃ。 100 00:10:34,567 --> 00:10:39,906 <ねねの言うとおり 秀吉は できる限り 武力に訴えることを避け➡ 101 00:10:39,906 --> 00:10:45,245 外交手腕で 播磨一国を勢力下に置こうと 努力していた。➡ 102 00:10:45,245 --> 00:10:47,914 前々からの調略が実り➡ 103 00:10:47,914 --> 00:10:51,251 人質を出して 服従を誓った諸将のうちに➡ 104 00:10:51,251 --> 00:10:57,123 播磨で最も力のあった 三木城主 別所長治がいた> 105 00:10:57,123 --> 00:11:01,861 こたびは 長治殿のご尽力により➡ 106 00:11:01,861 --> 00:11:07,200 播磨の諸豪族 ことごとく 信長様のお味方することに相なり申した。 107 00:11:07,200 --> 00:11:11,871 これも 長治殿が 早速に ご同心くだされたおかげじゃ。 108 00:11:11,871 --> 00:11:15,208 身に余るお言葉…。 我ら かねてより➡ 109 00:11:15,208 --> 00:11:18,878 信長殿のご威光に 心服つかまつっておりました。 110 00:11:18,878 --> 00:11:22,215 今後 信長殿には 別所の家名に懸けて➡ 111 00:11:22,215 --> 00:11:26,519 二心なきよう 忠節を尽くす所存にございます。 112 00:11:28,087 --> 00:11:30,890 官兵衛殿。 (官兵衛)はっ。 113 00:11:30,890 --> 00:11:34,761 この三木城は なかなか堅固なものよのう。 114 00:11:34,761 --> 00:11:40,233 もし 長治殿に背かれたら この秀吉 さぞ難渋したであろうのう。 115 00:11:40,233 --> 00:11:46,573 さようでございますな。 いかな筑前殿でも 1年や2年では落ちますまい。 116 00:11:46,573 --> 00:11:48,508 アッハッハッハッハ! 117 00:11:48,508 --> 00:11:53,446 無事 播磨をおさめられた祝いにと 支度いたさせましてございます。 118 00:11:53,446 --> 00:12:02,155 ほう! これはこれは 重ね重ねのご厚志 かたじけのうござる。 119 00:12:03,856 --> 00:12:31,551 ♬~ 120 00:12:35,221 --> 00:12:37,156 いかがなされた。 121 00:12:37,156 --> 00:12:41,894 いや ちと酒を過ごしましたゆえ 風に吹かれておりました。 122 00:12:41,894 --> 00:12:44,897 お気遣いくだされますな。 123 00:12:46,766 --> 00:12:51,237 ご油断召さるな。 124 00:12:51,237 --> 00:12:55,908 たとえ 臣従したというても ここは 敵中も同じ。 125 00:12:55,908 --> 00:12:59,779 心を許してはなりませんぞ。 126 00:12:59,779 --> 00:13:05,518 いや 秀吉殿は 肝の太い御仁よ。 127 00:13:05,518 --> 00:13:11,391 人質を取ったとはいえ この三木城では いつ首を取られても 不思議はない。 128 00:13:11,391 --> 00:13:15,194 酒に酔うてなどおられる時では ないものを…。 129 00:13:15,194 --> 00:13:18,865 フッフッフ…。 それが 兄者の手よ。 130 00:13:18,865 --> 00:13:24,537 相手に心を許したところを見せねば 相手とて 心を許しはしますまい。 131 00:13:24,537 --> 00:13:32,211 いかにも 人の心を捉えることに巧みな 秀吉殿らしい なされようじゃ。 132 00:13:32,211 --> 00:13:36,516 が 周りは 肝を潰すわ。 133 00:13:51,564 --> 00:13:54,567 捜したぞ しの殿。 134 00:13:56,436 --> 00:14:01,374 長治殿のご内室に 侍女として上がったのは聞いたが➡ 135 00:14:01,374 --> 00:14:04,844 この城の中で会うこともかなわず…。 136 00:14:04,844 --> 00:14:09,515 (しの)しのは もう お目にかからぬと 心に決めておりました。 137 00:14:09,515 --> 00:14:11,851 失礼いたします。 138 00:14:11,851 --> 00:14:15,521 しの殿! 139 00:14:15,521 --> 00:14:18,858 必ず迎えに来る。 140 00:14:18,858 --> 00:14:26,532 誰に 心を遣うこともない。 その時は わしのところへ来てくれ。 141 00:14:26,532 --> 00:14:32,405 こうして巡り会えたのも わしの思いが通じたからじゃ。 142 00:14:32,405 --> 00:14:35,875 わしは諦めぬ。 143 00:14:35,875 --> 00:14:38,878 それだけは忘れずにいてほしい。 144 00:14:44,217 --> 00:14:51,557 長浜では 義姉様や おっ母様が しの殿を迎えに行ってくだされた。 145 00:14:51,557 --> 00:14:58,231 しかし その時は しの殿は もう 播磨へ たったあとじゃった。 146 00:14:58,231 --> 00:15:04,937 義姉様の その心を無にしてはならん。 それも伝えたかった。 147 00:15:08,841 --> 00:15:14,547 必ず… 必ず待っていてくれ。 148 00:15:22,855 --> 00:15:24,857 秀長。 149 00:15:28,728 --> 00:15:31,864 座を外しまして…。 150 00:15:31,864 --> 00:15:36,169 ようやく 酔いが覚めました。 151 00:15:45,211 --> 00:15:51,551 <播磨を手中に入れると 秀吉は 但馬にも兵を進めて 岩州城を攻め➡ 152 00:15:51,551 --> 00:15:57,223 更に 竹田城をも攻略して 秀長を 竹田城の城代として守らせた。➡ 153 00:15:57,223 --> 00:16:02,495 一城をあずかった秀長は また しのと会う機会を失ってしまった。➡ 154 00:16:02,495 --> 00:16:07,366 それは まるで しのとのことを察した 秀吉のたくらみのように➡ 155 00:16:07,366 --> 00:16:10,369 秀長には思えた> 156 00:16:10,369 --> 00:16:12,839 放て~! (銃声) 157 00:16:12,839 --> 00:16:15,508 <その年の暮れも押し詰まった頃➡ 158 00:16:15,508 --> 00:16:18,811 突然 秀吉が長浜へ帰ってきた> 159 00:16:20,379 --> 00:16:23,182 ああ 皆 そろうておるのう。 息災で何よりじゃ。 160 00:16:23,182 --> 00:16:25,852 お帰りなさいませ。 なんぞ… なんぞあったのか? 161 00:16:25,852 --> 00:16:29,522 いや 安土でのう 信長様に お目にかかる。 162 00:16:29,522 --> 00:16:32,859 播磨のことをご報告がてら お祝いに参上する。 163 00:16:32,859 --> 00:16:36,729 信長様がのう 右大臣になられてのう。 めでたいことよのう。 164 00:16:36,729 --> 00:16:41,534 おっ母様 たんと土産を持ってきたぞ。 姉様も それから きいにものう。 165 00:16:41,534 --> 00:16:45,204 なにが 土産じゃ。 戦をする銭もないくせしおって。 166 00:16:45,204 --> 00:16:49,876 いやいやいや… わしはのう 信長様より 播磨を頂いた。 167 00:16:49,876 --> 00:16:53,546 もう 銭の心配をすることはないわ。 ハハッ 安心してくだされ。 168 00:16:53,546 --> 00:16:55,481 では 戦は もうおしまいか? 169 00:16:55,481 --> 00:16:58,417 なんの なんの これからよ。 つい こないだものう➡ 170 00:16:58,417 --> 00:17:03,356 毛利方の上月城を陥れた。 皆 官兵衛殿の手柄よ。 171 00:17:03,356 --> 00:17:07,827 まあ それはそれは…。 では 早速 松寿丸殿に➡ 172 00:17:07,827 --> 00:17:11,497 お父上のお働きを 話してさしあげましょう。 173 00:17:11,497 --> 00:17:15,167 これで 播磨にある毛利勢の拠点は あらかた潰した。 174 00:17:15,167 --> 00:17:18,838 但馬にも手を延ばしてのう 秀長に守らせておる。 175 00:17:18,838 --> 00:17:20,773 まあ 一段落というところじゃのう。 176 00:17:20,773 --> 00:17:24,176 で 安土へは いつ? 明日じゃ。 177 00:17:24,176 --> 00:17:27,079 まあ 慌ただしいことでございますな。 178 00:17:27,079 --> 00:17:29,849 おかかも一緒じゃぞ。 へっ? 179 00:17:29,849 --> 00:17:34,720 信長様がのう おかかも一緒にと仰せられてのう。 180 00:17:34,720 --> 00:17:39,191 アッハッハッハ。 おお やや殿。 (やや)お久しゅうございます。 181 00:17:39,191 --> 00:17:41,527 ちと所用がありまして 伺うとりました。 182 00:17:41,527 --> 00:17:44,864 ああ ちょうどよかった。 使いをやるところじゃった。 183 00:17:44,864 --> 00:17:47,767 やや殿ものう 一緒に安土へおじゃれ。 184 00:17:47,767 --> 00:17:51,537 長政が 安土に来ておる。 まことでございますか!? 185 00:17:51,537 --> 00:17:54,206 安土で ゆっくりと お正月を過ごされたらよかろう。 186 00:17:54,206 --> 00:17:56,542 わしも おかかも そのつもりよ。 (やや)まあ! 187 00:17:56,542 --> 00:18:01,814 (きい)嘉助さは?うん? 秀長と共に 竹田城の守備に就いておる。 188 00:18:01,814 --> 00:18:05,484 弥助殿は? 小六殿と 姫路じゃ。 189 00:18:05,484 --> 00:18:13,159 何じゃ 長政殿は 安土へお供で 弥助殿と嘉助さは 播磨へ置き去りか。 190 00:18:13,159 --> 00:18:18,030 長政は わしの側近ぞ。 安土で 何かと 用を足してもらわねばならんのよ。 191 00:18:18,030 --> 00:18:21,500 嘉助さとて 一生懸命 おつとめに励んでおるのじゃ。 192 00:18:21,500 --> 00:18:23,836 兄さのそばに置いてはもらえぬのか? 193 00:18:23,836 --> 00:18:27,707 きいよ 少しは 藤吉郎の身にもなってやれ。 194 00:18:27,707 --> 00:18:31,177 播磨には ほかのご家来衆も 大勢残っていなさる。 195 00:18:31,177 --> 00:18:35,514 藤吉郎とて 我が身内ばかり 連れ戻るわけにはまいらんではないか。 196 00:18:35,514 --> 00:18:40,853 藤吉郎はのう ねねさのお身内が 大事なだけのことじゃ。 197 00:18:40,853 --> 00:18:43,522 姉さ。 そうではないか。 198 00:18:43,522 --> 00:18:50,196 その証拠に 藤吉郎の側近は 皆 ねねさのお身内ばかりではないか。 199 00:18:50,196 --> 00:18:54,867 我らの身内は 小一郎も 嘉助さも 弥助殿も➡ 200 00:18:54,867 --> 00:18:57,536 皆 戦にばかり駆り出されて…。 姉さ! 201 00:18:57,536 --> 00:19:01,140 いくら姉さでも 言うていいことと 悪いことがあろうが。 202 00:19:01,140 --> 00:19:05,478 お前様 さあ 湯につこうておいでなさいませ。 203 00:19:05,478 --> 00:19:08,180 あ…。 チッ! 204 00:19:12,351 --> 00:19:17,056 秀吉殿の支度がございますので…。 やや。 205 00:19:27,733 --> 00:19:31,170 おかか。 何も おっしゃいますな。 206 00:19:31,170 --> 00:19:33,839 お忘れくださいまし。 207 00:19:33,839 --> 00:19:35,775 じゃがのう…。 208 00:19:35,775 --> 00:19:39,712 私たちをかばってくださるのは ありがたいと思いますが➡ 209 00:19:39,712 --> 00:19:46,185 お前様が口を挟まれては まるく収まるものも 収まらなくなります。 210 00:19:46,185 --> 00:19:52,525 おかか…。 奥のことは 私に お任せくださいまし。 211 00:19:52,525 --> 00:19:54,460 おかかも苦労じゃのう。 212 00:19:54,460 --> 00:19:57,863 いいえ。 213 00:19:57,863 --> 00:20:00,766 とも様のお気持ちも よう分かります。 214 00:20:00,766 --> 00:20:07,206 あのようなことを気にしておりましたら 秀吉殿のおかかは つとまりませぬ。 215 00:20:07,206 --> 00:20:11,210 (笑い声) 216 00:20:17,850 --> 00:20:22,555 久しぶりのご帰城じゃ。 腕によりをかけて作らねばのう。 217 00:20:22,555 --> 00:20:26,225 あのようなことを言われて お姉様は よう黙っておられるのう。 218 00:20:26,225 --> 00:20:28,227 やや! 219 00:20:33,566 --> 00:20:37,269 あっ そこは 私がしよう。 220 00:20:47,913 --> 00:20:49,849 やや。 221 00:20:49,849 --> 00:20:54,787 こたびの安土行きは 思いとどまってくれぬか? 222 00:20:54,787 --> 00:20:58,257 むごいことは承知じゃ。 223 00:20:58,257 --> 00:21:02,528 長政殿にも会わせてやりたいことは やまやまじゃ。 224 00:21:02,528 --> 00:21:08,400 じゃが とも様や きい様の手前 それはできぬ。 してはならぬのじゃ。 225 00:21:08,400 --> 00:21:12,204 お姉様も おやめになるのか? 226 00:21:12,204 --> 00:21:16,075 私は おかかとしてのつとめがある。 227 00:21:16,075 --> 00:21:18,077 ならば 私も。 やや! 228 00:21:18,077 --> 00:21:20,880 お姉様は このお城のご内室ではないか。 229 00:21:20,880 --> 00:21:23,215 たとえ 秀吉殿のごきょうだいとて➡ 230 00:21:23,215 --> 00:21:26,886 お姉様が 何を遠慮なさることがあるというのじゃ。 231 00:21:26,886 --> 00:21:31,557 はあ~。 ややは 婿殿をもろうた。 232 00:21:31,557 --> 00:21:36,228 長政殿のお身内への心遣いというものを 知らぬ。 233 00:21:36,228 --> 00:21:41,901 じゃがのう 嫁に来て 連れ合いの身内と一緒に暮らすには➡ 234 00:21:41,901 --> 00:21:46,205 それだけの気配りがのうては おかかとしては つとまらぬ。 235 00:21:47,773 --> 00:21:51,577 このとおりじゃ。 236 00:21:51,577 --> 00:21:59,919 奥で波風が立つようなことがあっては 秀吉殿に申し訳が立たぬ。 237 00:21:59,919 --> 00:22:05,724 弥助殿や嘉助殿が お帰りにならんのに ややだけが 安土へ行ったら➡ 238 00:22:05,724 --> 00:22:09,528 とも様や きい様が面白くないのは 道理じゃ。 239 00:22:09,528 --> 00:22:13,532 ややが行かずとなれば 納得もしよう。 240 00:22:17,203 --> 00:22:21,540 私とて つらい。 腹も立とう。 241 00:22:21,540 --> 00:22:26,412 じゃが 私の立場も考えておくれ。 242 00:22:30,416 --> 00:22:33,319 お姉様は お気の毒なお方じゃ。 243 00:22:33,319 --> 00:22:36,088 12万石のお方様ともなれば➡ 244 00:22:36,088 --> 00:22:40,759 好き気ままに暮らせるものと 思っていたが…。 245 00:22:40,759 --> 00:22:44,096 お姉様のためなら 安土行きも諦めねばなるまい。➡ 246 00:22:44,096 --> 00:22:47,433 フフフッ。 やや…。 247 00:22:47,433 --> 00:22:53,772 (やや)足軽組頭のおかかの頃は よかったのう お姉様。➡ 248 00:22:53,772 --> 00:22:58,110 秀吉殿と2人っきりで…。 249 00:22:58,110 --> 00:23:04,116 安土では 夫婦水入らずじゃ。 うんと秀吉殿に甘えておいでなされ。 250 00:23:10,389 --> 00:23:13,058 姫とも しばらく もう会えぬのう。 251 00:23:13,058 --> 00:23:18,397 今度は 母様と 姫路へ 顔を見せてくだされ。 のう。 ハッハッハ。 252 00:23:18,397 --> 00:23:24,069 孫七郎。 おぬしは 羽柴の家の子たちの柱じゃ。 253 00:23:24,069 --> 00:23:26,739 松寿丸殿や小吉や姫と仲ようにのう。 254 00:23:26,739 --> 00:23:29,642 頼んだぞ。 (孫七郎)はい。 255 00:23:29,642 --> 00:23:32,611 では おっ母様。 さあ おじゃれ。 256 00:23:32,611 --> 00:23:35,748 姉様も きいも 達者でのう。 ハハハッ。 257 00:23:35,748 --> 00:23:40,085 しばらく身勝手をいたしますゆえ 留守をお願いいたします。 258 00:23:40,085 --> 00:23:42,988 ああ。 奥のことは 心配いらぬ。 259 00:23:42,988 --> 00:23:46,959 たまには お城のことも忘れて ゆっくりしてきておじゃれ。 260 00:23:46,959 --> 00:23:49,762 やや殿は行かれぬそうな? 261 00:23:49,762 --> 00:23:55,634 あっ… ややには 子がおります。 この度は 遠慮するそうでございます。 262 00:23:55,634 --> 00:23:58,771 やや殿も 因果なことよのう。 263 00:23:58,771 --> 00:24:02,374 藤吉郎のおかかを 姉さに持ったばっかりに➡ 264 00:24:02,374 --> 00:24:05,277 いらん気を遣わねばならんわ。 265 00:24:05,277 --> 00:24:09,982 それでは 行ってまいります。 ではのう。 266 00:24:15,387 --> 00:24:20,259 (松寿丸)お方様。 早う お戻りくださいませ。 267 00:24:20,259 --> 00:24:26,732 はい。 松寿丸殿に お寂しい思いをさせられませぬな。 268 00:24:26,732 --> 00:24:29,435 早うに戻ってまいります。 269 00:24:31,070 --> 00:24:34,940 <ねねは 秀吉と共に 安土へ向かった。➡ 270 00:24:34,940 --> 00:24:41,413 朝廷から右大臣に任ぜられた信長に その時献上した 祝いの品々の行列は➡ 271 00:24:41,413 --> 00:24:45,084 その先頭が 安土城の玄関に着いても➡ 272 00:24:45,084 --> 00:24:48,954 殿は まだ 城外はるかかなたにあったと 伝えられるほど➡ 273 00:24:48,954 --> 00:24:51,957 希有壮大なものだったという> 274 00:24:54,093 --> 00:24:57,763 <秀吉には よほど 信長の勘気に触れたのが こたえ➡ 275 00:24:57,763 --> 00:25:01,367 それを許してもらえたのが うれしかったのであろう。➡ 276 00:25:01,367 --> 00:25:05,037 電光石火の早業で 播磨を平定したのも➡ 277 00:25:05,037 --> 00:25:09,908 信長の信用を回復したい一念の 頑張りだったといえよう。➡ 278 00:25:09,908 --> 00:25:11,910 この安土参内は➡ 279 00:25:11,910 --> 00:25:17,049 秀吉の人生にとって 大きな一つの節目であった> 280 00:25:17,049 --> 00:25:22,721 (信長)播磨 但馬における筑前の働き 格別であった。 281 00:25:22,721 --> 00:25:24,656 ははっ! 282 00:25:24,656 --> 00:25:30,396 (信長)じゃが 今日の酒宴は 筑前のために催したのではない。➡ 283 00:25:30,396 --> 00:25:35,100 今日は ねね そちの労をねぎらうための酒宴ぞ。 284 00:25:36,735 --> 00:25:42,608 これまでの筑前の数々の働きも 陰で ねねが支えていたからこそ➡ 285 00:25:42,608 --> 00:25:49,314 後顧の憂いものう 存分に つとめを励むこともできたのじゃ。➡ 286 00:25:49,314 --> 00:25:53,318 ねねの力を忘れてはならん。 はっ! 287 00:25:55,421 --> 00:25:58,757 ありがたいお言葉…。 288 00:25:58,757 --> 00:26:05,364 ねね 今までの苦労が 一度に吹き飛びましてございます。 289 00:26:05,364 --> 00:26:08,033 このごろの筑前は どうじゃ? ねねを大事にしておるか。 290 00:26:08,033 --> 00:26:12,905 ああっ! 上様より賜りましたる お文…➡ 291 00:26:12,905 --> 00:26:16,708 剥げ鼠 肝に銘じましてございます。 292 00:26:16,708 --> 00:26:19,611 ハッハッハッハッハッハッハ! 293 00:26:19,611 --> 00:26:24,049 ねねは 筑前には 過ぎたおかかよ。 粗末にしては 罰が当たろうぞ。 294 00:26:24,049 --> 00:26:28,921 私も 上様のお文にて 目が覚めましてございます。 295 00:26:28,921 --> 00:26:32,391 二度と あのような見苦しいことは…。 296 00:26:32,391 --> 00:26:35,294 うむ。 それでこそ ねねじゃ。 297 00:26:35,294 --> 00:26:38,263 於次。 ねね殿に 杯を取らせい。 298 00:26:38,263 --> 00:26:40,966 (於次丸)はい。 299 00:26:47,940 --> 00:26:50,943 (信長)わしの四男坊 於次丸じゃ。 300 00:26:52,711 --> 00:26:55,414 かたじけのうございます。 301 00:27:12,364 --> 00:27:15,033 なんと ご利発そうな…。 302 00:27:15,033 --> 00:27:18,904 よい子であろう。 ハッハッハッハ! 303 00:27:18,904 --> 00:27:20,906 筑前。 はっ! 304 00:27:20,906 --> 00:27:27,045 そなたにも 今度の 播磨 但馬の 計略の褒美として これを遣わそう。➡ 305 00:27:27,045 --> 00:27:30,716 乙御前の釜じゃ。 306 00:27:30,716 --> 00:27:34,019 今後 筑前にも 茶の湯を許そうぞ。 307 00:27:36,388 --> 00:27:43,729 重ね重ねのご厚情… 筑前 身に余る幸せにござります。 308 00:27:43,729 --> 00:27:47,032 (信長)さあ 近う。 ははっ! 309 00:27:57,743 --> 00:27:59,745 はっ。 310 00:28:11,290 --> 00:28:17,029 筑前の忠勤 織田の武将多しといえども➡ 311 00:28:17,029 --> 00:28:19,731 右に出る者はおらぬわ。 312 00:28:21,700 --> 00:28:24,603 一同 よう聞け! 313 00:28:24,603 --> 00:28:29,608 侍ほどの者は この筑前に あやかるがよい。 314 00:28:39,251 --> 00:28:41,253 ははっ! 315 00:28:56,401 --> 00:29:02,007 とうとう わしも このような立派なものを 信長様より頂けるようになった。 316 00:29:02,007 --> 00:29:07,346 おかか。 これは おかかが もろうてくれたようなものよのう。 317 00:29:07,346 --> 00:29:10,682 本当に おめでとうございます。 318 00:29:10,682 --> 00:29:14,019 ねねのような おかかを持って わしは 日本一の果報者じゃ。 319 00:29:14,019 --> 00:29:18,690 亭主を生かすも殺すも おかか次第とは よう言うたものよのう。 ハッハッハッハ。 320 00:29:18,690 --> 00:29:22,361 私は お前様に 偉うなっていただきとうとも➡ 321 00:29:22,361 --> 00:29:25,030 栄耀栄華をしたいとも 思っておりませぬ。 322 00:29:25,030 --> 00:29:29,901 ただ お前様には お前様の思うとおりに おつとめに励んでくだされば➡ 323 00:29:29,901 --> 00:29:31,903 それだけでと…。 324 00:29:31,903 --> 00:29:34,373 おかか。 325 00:29:34,373 --> 00:29:40,045 おかかの そのような気持ちがのう わしを 今のわしにしてくれたのじゃ。 326 00:29:40,045 --> 00:29:42,381 礼を言うぞ。 まあ お前様。 327 00:29:42,381 --> 00:29:45,717 でも どうして このような釜が それほど ありがたい…。 328 00:29:45,717 --> 00:29:47,653 触れるな! あっ! えっ…? 329 00:29:47,653 --> 00:29:51,590 いや… 大事に大事に扱わねば。 330 00:29:51,590 --> 00:29:56,061 私には分かりませぬ。 331 00:29:56,061 --> 00:30:00,732 乙御前の茶釜というのはのう 世に聞こえた名器じゃ。 332 00:30:00,732 --> 00:30:03,402 信長様秘蔵の茶釜じゃ。 333 00:30:03,402 --> 00:30:08,740 わしも このようなものを頂いて とうとう 茶の会を催すことができるまでになった。 334 00:30:08,740 --> 00:30:11,643 大したものよのう。 335 00:30:11,643 --> 00:30:16,415 茶の会を開くことが それほど ご出世なのでございますか? 336 00:30:16,415 --> 00:30:21,286 当たり前よ。 お許しいただいている武将も 数えるほどしかおらぬわ。 337 00:30:21,286 --> 00:30:24,089 わしも その一人に加えられたのじゃ。 338 00:30:24,089 --> 00:30:27,959 もう 押しも押されもせぬ 信長様一の家来じゃ。 339 00:30:27,959 --> 00:30:33,765 柴田勝家 丹羽長秀 明智光秀とも 肩を並べる家臣じゃ。 340 00:30:33,765 --> 00:30:37,636 ハッハ 前田利家様とて お許しいただいておらぬものを➡ 341 00:30:37,636 --> 00:30:39,638 わしは とうとう許された。 342 00:30:39,638 --> 00:30:43,108 ただ 茶をたてることがでございますか? 343 00:30:43,108 --> 00:30:45,043 そうじゃ。 344 00:30:45,043 --> 00:30:48,980 どうして 茶の湯が それほど…。 345 00:30:48,980 --> 00:30:52,117 茶の湯というものはのう…。 はい。 346 00:30:52,117 --> 00:30:56,121 つまり… いや おかかに話しても分からぬわ。 347 00:30:57,789 --> 00:31:02,627 実はのう わしも よう 茶の湯のことは分からんのよ。 348 00:31:02,627 --> 00:31:08,066 要は 信長様が大事にされておるものは 我らにとっても大事じゃということじゃ。 349 00:31:08,066 --> 00:31:11,737 それでは…。 あ~ 難しい話は もうやめじゃ! 350 00:31:11,737 --> 00:31:14,639 せっかく おかかと 2人きりになったのではないか。 351 00:31:14,639 --> 00:31:18,610 さあさあ おかかも飲め。 はい。 352 00:31:18,610 --> 00:31:24,316 長浜では こうはいかぬぞ。 周りに うるさいのがおるからのう。 353 00:31:24,316 --> 00:31:31,423 ほんに こうしておりますと 清洲で 足軽長屋にいた頃を思い出しますな。 354 00:31:31,423 --> 00:31:34,092 うん…。 355 00:31:34,092 --> 00:31:38,964 あの時 今日の日があることは 夢にも思いませなんだ。 356 00:31:38,964 --> 00:31:40,966 さあ。 うん。 357 00:31:40,966 --> 00:31:44,736 わしも もう 41じゃ…。 358 00:31:44,736 --> 00:31:49,441 おかかと夫婦になって 早16年か。 359 00:31:49,441 --> 00:31:54,780 ハハハハハッ。 あっという間じゃったのう。 360 00:31:54,780 --> 00:32:02,387 私は 幸せでございました。 ただ 子には恵まれませなんだが…。 361 00:32:02,387 --> 00:32:06,091 本当に申し訳ないと思っております。 362 00:32:07,726 --> 00:32:12,063 わしは ええ。 おかかがおれば それでええ。 363 00:32:12,063 --> 00:32:14,766 それに 豪姫もおる。 364 00:32:18,403 --> 00:32:21,072 おかかは 寂しいか? 365 00:32:21,072 --> 00:32:26,411 いえ。 とも様のお子もいらっしゃいます。 366 00:32:26,411 --> 00:32:32,284 松寿丸とて 懐いてくれれば 愛らしゅうございます。 367 00:32:32,284 --> 00:32:35,754 それに イチや トラも 佐吉も➡ 368 00:32:35,754 --> 00:32:40,091 小姓部屋の子も 我が子と思っております。 369 00:32:40,091 --> 00:32:45,096 ただ お世継ぎのことは…。 370 00:32:47,766 --> 00:32:53,638 お前様に また お子がおできになれば よろしゅうございますが。 371 00:32:53,638 --> 00:32:55,640 おお… おかか おかか おかか! 372 00:32:55,640 --> 00:32:57,776 もう 痛いのう おかかは! 373 00:32:57,776 --> 00:33:00,378 (笑い声) 374 00:33:00,378 --> 00:33:03,048 もう おかかに文句を言われるのは 懲りた。 375 00:33:03,048 --> 00:33:07,385 フフッ。 今度は もう 驚きませぬわ。 ハハハッ。 376 00:33:07,385 --> 00:33:09,721 中国攻めが控えておる。 377 00:33:09,721 --> 00:33:12,057 女子どころではないわ。 378 00:33:12,057 --> 00:33:18,730 信長様は 子福者でおられます。 何故 私たちは…。 379 00:33:18,730 --> 00:33:22,067 言うても詮ないことよ。 380 00:33:22,067 --> 00:33:24,769 おお 酒がないわ。 381 00:33:26,404 --> 00:33:29,741 於次丸様の愛らしいこと…。 382 00:33:29,741 --> 00:33:33,745 あのようなお子が 私たちにおりましたら…。 383 00:33:35,614 --> 00:33:42,921 私に杯を下された時の あのお優しいお顔が…。 384 00:33:45,757 --> 00:33:48,093 あ… 言うても詮ないこと。 385 00:33:48,093 --> 00:33:51,763 お酒は 私が申しつけてまいりましょう。 386 00:33:51,763 --> 00:34:11,049 ♬~ 387 00:34:13,051 --> 00:34:18,056 まあ 朝早うから 何をしておられます。 388 00:34:20,725 --> 00:34:23,628 おかか。 はい。 389 00:34:23,628 --> 00:34:29,734 おかかは 於次丸様が気に入ったと見えるのう。 390 00:34:29,734 --> 00:34:33,071 はい。 よいお子でおられます。 391 00:34:33,071 --> 00:34:37,943 ならば 我らに頂けぬかどうか お願いしてみるか。 392 00:34:37,943 --> 00:34:39,945 お前様…! 393 00:34:39,945 --> 00:34:42,414 おかかは 信長様の覚えがめでたい。 394 00:34:42,414 --> 00:34:45,083 おかかが お願いすれば 下さるやもしれぬぞ。 395 00:34:45,083 --> 00:34:47,018 まあ ご冗談にも そのようなことを…。 396 00:34:47,018 --> 00:34:48,954 いや 真面目じゃ。 397 00:34:48,954 --> 00:34:53,758 於次丸様は 名もない側女との間に おできになったお子と聞いておる。 398 00:34:53,758 --> 00:34:57,629 でも あのように いとおしんでおられます。 399 00:34:57,629 --> 00:35:03,568 信長様はのう 次男の信雄様を 伊勢の北畠殿へ➡ 400 00:35:03,568 --> 00:35:08,039 三男の信孝様を 神戸殿へ それぞれ 猶子に出されて➡ 401 00:35:08,039 --> 00:35:10,942 北畠 神戸を継がせておられる。 402 00:35:10,942 --> 00:35:12,911 於次丸様とて…。 403 00:35:12,911 --> 00:35:17,048 北畠様や神戸様は 代々のご城主…。 404 00:35:17,048 --> 00:35:22,387 信長様が お味方につけられるために なさったということを伺っております。 405 00:35:22,387 --> 00:35:27,058 足軽からお仕えなされた お前様とは違います。 406 00:35:27,058 --> 00:35:29,394 それは お願いしてみねば 分からぬではないか。 407 00:35:29,394 --> 00:35:31,329 でも そのようなことになって➡ 408 00:35:31,329 --> 00:35:34,065 お怒りを被るようなことになったら どうなさいます? 409 00:35:34,065 --> 00:35:37,736 お前様がなされたご苦労が 水の泡になってしまいます。 410 00:35:37,736 --> 00:35:41,072 わしがお願いすれば そのようなことがあるやもしれぬ。 411 00:35:41,072 --> 00:35:44,943 じゃが おかかならばのう 信長様も 笑うて済まされよう。 412 00:35:44,943 --> 00:35:47,946 女子とは 得よのう。 413 00:35:47,946 --> 00:35:53,418 安土におるうちに…。 駄目で もともとではないか。 414 00:35:53,418 --> 00:35:55,353 お前様…。 415 00:35:55,353 --> 00:36:03,028 わしものう 於次丸様のような お子が欲しい。 世継ぎに欲しい。 416 00:36:03,028 --> 00:36:08,366 愛らしいお子じゃ。 ええお子じゃ。 のう。 417 00:36:08,366 --> 00:36:13,238 昨日は 信長様が おかかのために 設けてくだされた酒宴じゃ。 418 00:36:13,238 --> 00:36:16,941 そのお礼に伺わねばなるまい。 その折に。 のう。 419 00:36:19,711 --> 00:36:22,047 一世一代の賭けじゃ。 420 00:36:22,047 --> 00:36:25,383 のう お願いしてみい。 421 00:36:25,383 --> 00:36:33,258 ♬~ 422 00:36:33,258 --> 00:36:38,930 <結局 ねねは 再び安土城へ参上した> 423 00:36:38,930 --> 00:36:48,606 ♬~ 424 00:36:48,606 --> 00:36:51,076 長政! 長政! 425 00:36:51,076 --> 00:36:53,745 ⚟(長政)はっ! 426 00:36:53,745 --> 00:36:57,082 おかかは まだか!? (長政)はい。 427 00:36:57,082 --> 00:36:59,017 何をしておるのかのう!? 428 00:36:59,017 --> 00:37:01,920 先ほど お出かけになったばかりでは ございませぬか。 429 00:37:01,920 --> 00:37:05,690 やっと お城へ お着きになられた頃かと 存じますが…。 430 00:37:05,690 --> 00:37:08,593 うるさいわ! そのようなこと 分かっとるわ! 431 00:37:08,593 --> 00:37:10,595 まだかのう!? 432 00:37:15,033 --> 00:37:21,372 おお わざわざ 礼に来てくれたそうな。 大儀じゃ。 433 00:37:21,372 --> 00:37:26,044 於次丸様にも お礼が申し上げとうて…。 434 00:37:26,044 --> 00:37:30,381 これは 私が選びました品でございます。 435 00:37:30,381 --> 00:37:32,717 どうぞ 於次丸様に…。 436 00:37:32,717 --> 00:37:37,388 於次にまで 気を遣うてくれたのか。 ハッハッハッハ。 437 00:37:37,388 --> 00:37:42,060 筑前の子は 大きゅうなったか? 秀勝とかいうたな。 438 00:37:42,060 --> 00:37:47,932 秀勝は 昨年 急な病にて 身まかりましてございます。 439 00:37:47,932 --> 00:37:54,072 なんと…。 せっかくの世継ぎをのう。 はい。 440 00:37:54,072 --> 00:37:59,410 筑前も さぞ力を落としたことであろう。 はい。 441 00:37:59,410 --> 00:38:02,680 長浜も また寂しゅうなりました。 442 00:38:02,680 --> 00:38:10,021 先日 於次丸様に お目にかかりました折 秀勝のことを思い出しました。 443 00:38:10,021 --> 00:38:12,357 ほかの女子の子供でも➡ 444 00:38:12,357 --> 00:38:16,027 そばにおりましたら 情けの移るものでございます。 445 00:38:16,027 --> 00:38:19,898 さもあろう…。 そちも つらかろう。 446 00:38:19,898 --> 00:38:23,902 於次丸様のような よいお子に恵まれあそばして➡ 447 00:38:23,902 --> 00:38:27,639 上様が羨ましゅうございます。 448 00:38:27,639 --> 00:38:32,577 私どもにも 於次丸様のような よいお子がおりましたら➡ 449 00:38:32,577 --> 00:38:37,315 どれだけ 慰めにも 励みにもなりましょう…。 450 00:38:37,315 --> 00:38:42,053 おかわいらしくて ご利発そうで…。 451 00:38:42,053 --> 00:38:45,356 そちは 於次が気に入ったのか。 452 00:38:47,725 --> 00:38:51,062 上様! 於次丸様を 私に…! 453 00:38:51,062 --> 00:38:52,997 (こほ)お方様! 454 00:38:52,997 --> 00:38:56,734 はっ…! 申し訳ございません! 455 00:38:56,734 --> 00:39:01,573 あまりにも よいお子ゆえ つい 前後の見境ものうて…。 456 00:39:01,573 --> 00:39:07,011 女子の浅はかさ お許しくださいまし! 457 00:39:07,011 --> 00:39:11,349 ハッハッハッハッハ!➡ 458 00:39:11,349 --> 00:39:16,054 ねね。 そちに 於次を遣わそう。 459 00:39:17,689 --> 00:39:23,027 そちなら 於次を いとおしんでくれよう。 460 00:39:23,027 --> 00:39:28,366 於次はのう 母親の愛を知らずに育った子じゃ。 461 00:39:28,366 --> 00:39:34,239 そちを母に持てば 於次も幸せというものよ。 462 00:39:34,239 --> 00:39:36,708 ははあ。 463 00:39:36,708 --> 00:39:48,419 ♬~ 464 00:39:54,058 --> 00:39:56,060 (障子を開ける音) 465 00:39:57,729 --> 00:40:01,733 おかか! お願いしたか!? 466 00:40:04,402 --> 00:40:06,404 おかか! 467 00:40:08,740 --> 00:40:13,077 お願いせなんだのか!? おかか! 468 00:40:13,077 --> 00:40:16,381 おかか! おかか! 469 00:40:42,774 --> 00:40:47,478 そうか 駄目か…。 470 00:40:49,113 --> 00:40:51,115 おかか。 471 00:40:59,457 --> 00:41:03,161 於次丸様を 私どもへ。 472 00:41:05,730 --> 00:41:09,067 下されたのか? はい。 473 00:41:09,067 --> 00:41:16,941 そうか! 下されたか! おかか 手柄じゃ 手柄じゃ! そうか! 474 00:41:16,941 --> 00:41:20,078 これで 羽柴筑前守秀吉の首は 安泰じゃ! 475 00:41:20,078 --> 00:41:23,748 信長様のお子の父御となれば よもや わしを潰すようなことはなさるまい。 476 00:41:23,748 --> 00:41:26,651 ハッハ! 万々歳じゃ! 万々歳じゃ! お前様! 477 00:41:26,651 --> 00:41:29,087 お前様は そのような ご了見で…!? うん? 478 00:41:29,087 --> 00:41:32,957 私は 於次丸様のような方が いてくだされたらと…。 479 00:41:32,957 --> 00:41:39,731 おかか。 わしとて おかかと同じ気持ちよ。 大事に大事に お育てせねばのう。 480 00:41:39,731 --> 00:41:42,433 お前様…!? 信長様ものう➡ 481 00:41:42,433 --> 00:41:45,770 わしに 二心がないことが分かって 下されたのよ。 482 00:41:45,770 --> 00:41:48,673 信長様とて 安堵なされたのよ。 483 00:41:48,673 --> 00:41:52,443 信長様のお子を頂いたわしが 謀反など起こそうはずはない。 484 00:41:52,443 --> 00:41:57,315 また 羽柴家が栄えれば栄えるほど 世継ぎの於次丸様のためにもなるわ。 485 00:41:57,315 --> 00:42:00,051 これほど めでたいことは ないではないか! ハッハッハ! 486 00:42:00,051 --> 00:42:02,954 祝いじゃ! 祝いじゃ! 祝いじゃ! 487 00:42:02,954 --> 00:42:05,390 長政! 長政! 488 00:42:05,390 --> 00:42:10,261 <秀吉にとって 於次丸は 信長から 人質を取ったようなものであった。➡ 489 00:42:10,261 --> 00:42:15,066 また 信長にとっても 似たような意図があってのことである。➡ 490 00:42:15,066 --> 00:42:19,937 秀吉の力量を買っていた信長は それだけに 秀吉を恐れてもいた。➡ 491 00:42:19,937 --> 00:42:26,411 が 於次丸を養子にやることで 完全に 秀吉を支配できるわけである。➡ 492 00:42:26,411 --> 00:42:30,748 それが乱世というものなのかと ねねは おぞましく➡ 493 00:42:30,748 --> 00:42:35,086 於次丸が哀れに思えてならなかった> 494 00:42:35,086 --> 00:42:50,635 ♬~ 495 00:42:50,635 --> 00:42:54,939 父上に ご挨拶をせい。 はい。 496 00:43:05,049 --> 00:43:13,391 父上 母上 ふつつか者ですが よろしくお願い申し上げます。 497 00:43:13,391 --> 00:43:22,733 ♬~ 498 00:43:22,733 --> 00:43:27,605 <ねねは これから 自分の手元で 育てることになる於次丸が➡ 499 00:43:27,605 --> 00:43:30,408 ただただ いとしかった。➡ 500 00:43:30,408 --> 00:43:35,746 と同時に 信長の子をあずかる 責任の重さを思うと➡ 501 00:43:35,746 --> 00:43:41,085 身の縮まるような不安に襲われる ねねでもあった> 502 00:43:41,085 --> 00:43:47,091 ♬~