1 00:00:02,135 --> 00:02:36,123 ♬~ 2 00:02:49,536 --> 00:02:52,439 <天正14年1月。➡ 3 00:02:52,439 --> 00:02:57,911 関白になり 名実ともに 天下統一を果たそうと志す秀吉の前に➡ 4 00:02:57,911 --> 00:03:01,181 大きく立ち塞がる者がいた。➡ 5 00:03:01,181 --> 00:03:04,851 徳川家康である。➡ 6 00:03:04,851 --> 00:03:08,188 秀吉は なんとか 穏便に家康を上洛させ➡ 7 00:03:08,188 --> 00:03:11,858 臣従の礼をとらせようと腐心していた。➡ 8 00:03:11,858 --> 00:03:15,195 そして 窮余の一策に思いついたのが➡ 9 00:03:15,195 --> 00:03:18,865 妹のあさひを 夫 副田甚兵衛と離別させ➡ 10 00:03:18,865 --> 00:03:23,170 家康の正妻として嫁がせることであった> 11 00:03:25,739 --> 00:03:31,044 (ねね)まあ… 秀吉殿は 本気で そのようなことを? 12 00:03:34,214 --> 00:03:38,885 まして 身内は大事になされるお方…。 13 00:03:38,885 --> 00:03:45,759 殊に あさひ殿は 目にかけておられる かわいい妹御じゃ。 14 00:03:45,759 --> 00:03:52,899 それに 甚兵衛殿とあさひ殿は 仲むつまじいことも ご存じのはずじゃ。 15 00:03:52,899 --> 00:03:57,771 離別など…。 信じられぬことじゃ。 16 00:03:57,771 --> 00:04:00,507 (秀長) まさしく 正気の沙汰ではありませぬ。 17 00:04:00,507 --> 00:04:02,843 じゃが 兄者は 大真面目じゃ。 18 00:04:02,843 --> 00:04:06,713 戦をせずに 家康に頭を下げさせるためには➡ 19 00:04:06,713 --> 00:04:09,716 あさひを 家康の正室にするよりほかないと…。 20 00:04:09,716 --> 00:04:16,189 なぜ それまでして 家康殿を上洛させたいのか…。 21 00:04:16,189 --> 00:04:22,062 家康殿は 私たちに 於義伊様を養子として下された。 22 00:04:22,062 --> 00:04:25,532 それで 和睦も十分ではありませぬか。 23 00:04:25,532 --> 00:04:31,204 それが このままでは 兄者も家康も対等。 それでは 天下の統一もならず➡ 24 00:04:31,204 --> 00:04:36,076 また 家康を家臣にできぬとならば 諸大名への信用にも関わります。 25 00:04:36,076 --> 00:04:39,079 ひいては 謀反のもとにもなりかねぬと…。 26 00:04:39,079 --> 00:04:43,784 まあ… それで あさひ殿を? 27 00:04:43,784 --> 00:04:48,221 (秀長)妹を家康に嫁がせれば 家康は 兄者の義弟となる。➡ 28 00:04:48,221 --> 00:04:51,892 さすれば 義兄への礼として 挨拶にくらい来るじゃろうと…。 29 00:04:51,892 --> 00:04:56,196 よう そないな ばかばかしいことを…! 30 00:04:57,764 --> 00:05:05,772 秀吉殿が そう思われていても 家康殿がお受けになる道理がないわ。 31 00:05:07,841 --> 00:05:15,182 家康殿は ご正室 築山殿を不幸にして亡くされて➡ 32 00:05:15,182 --> 00:05:19,052 二度と 正室を娶ることはなさいませんでした。 33 00:05:19,052 --> 00:05:21,855 それを 今になって…。 34 00:05:21,855 --> 00:05:27,194 秀吉殿とて 家康殿のお気持ちを ようご存じのはずじゃ。 35 00:05:27,194 --> 00:05:29,129 わしも そう思っておりました。 36 00:05:29,129 --> 00:05:34,834 じゃが 家康からは 喜んで あさひを正室に迎えたいと…。 37 00:05:36,870 --> 00:05:38,805 秀長殿…! 38 00:05:38,805 --> 00:05:41,541 家康とて 世に聞こえた狸おやじ。 39 00:05:41,541 --> 00:05:45,879 あさひを娶れば この上ない人質じゃ。 また 断れば 戦は避けられませぬ。 40 00:05:45,879 --> 00:05:49,749 兄者とて そのお覚悟。 それを承知ゆえ…。 41 00:05:49,749 --> 00:05:53,553 そこまで 話が進んでいたのですか!? 42 00:05:53,553 --> 00:05:56,223 義姉様には内密にと言われましたが➡ 43 00:05:56,223 --> 00:05:59,893 わしとて まさか 家康が応じるとは…。 44 00:05:59,893 --> 00:06:02,596 不覚にございました。 45 00:06:07,701 --> 00:06:09,703 義姉様! 46 00:06:09,703 --> 00:06:13,440 そのようなむごいことは させられませぬ。 47 00:06:13,440 --> 00:06:21,181 まことなら 私の命に懸けても あさひ殿をお守りいたします。 48 00:06:21,181 --> 00:06:25,485 (秀吉)ああ… うん。 49 00:06:28,521 --> 00:06:31,858 わざわざ呼びつけて すまなんだのう。 50 00:06:31,858 --> 00:06:34,761 (あさひ)兄様が わしら夫婦に用があると聞いて➡ 51 00:06:34,761 --> 00:06:37,731 何事かと思うて…。 うん。 52 00:06:37,731 --> 00:06:41,868 いや 大したことではないがのう➡ 53 00:06:41,868 --> 00:06:46,740 甚兵衛に 5百石ほど加増しようと思うてのう。 54 00:06:46,740 --> 00:06:52,512 わしの思ってたとおりじゃ! 兄様は 甚兵衛殿のことを考えててくだされた! 55 00:06:52,512 --> 00:06:57,417 兄様! わしは よい兄さを持って 果報者じゃ。 のう? 56 00:06:57,417 --> 00:07:02,822 ただし これには訳があってな。 57 00:07:02,822 --> 00:07:05,725 2人に 聞いてもらわねばならぬことがある。 58 00:07:05,725 --> 00:07:09,696 兄様の言うことなら 何なりと。 のう? 59 00:07:09,696 --> 00:07:14,434 (甚兵衛)あ…。 はっ! 我らで お役に立つことがあれば➡ 60 00:07:14,434 --> 00:07:18,371 これ以上の喜びはござりません。 何なりと。 61 00:07:18,371 --> 00:07:20,373 うん…。 62 00:07:23,510 --> 00:07:27,180 (あさひ)義姉様。 兄様に召し出されてのう➡ 63 00:07:27,180 --> 00:07:32,052 何事かと思って来たら 甚兵衛殿に 5百石も加増してくだされた。➡ 64 00:07:32,052 --> 00:07:37,524 小一郎兄さの45万石には 雀の涙じゃが わしらには 分相応よのう。 65 00:07:37,524 --> 00:07:42,195 (甚兵衛)いや わしは 大した手柄もない。 5百石は 分不相応よ。➡ 66 00:07:42,195 --> 00:07:46,066 これも皆 関白殿のお情けじゃ。 67 00:07:46,066 --> 00:07:50,537 甚兵衛殿 あさひ殿 すぐ お下がりなさいませ。 68 00:07:50,537 --> 00:07:53,206 早う! 猶予はなりませぬ。 69 00:07:53,206 --> 00:07:57,877 あさひ。 義姉様の言うとおりに…。 さあ! 70 00:07:57,877 --> 00:08:00,480 2人とも どうなされたのじゃ? 71 00:08:00,480 --> 00:08:03,383 何も聞かずと 早う! おっ。 72 00:08:03,383 --> 00:08:06,353 話は これからぞ。 73 00:08:06,353 --> 00:08:08,355 お前様! 74 00:08:08,355 --> 00:08:10,490 おかかも 秀長も 呼んだ覚えはない。 下がれ。 75 00:08:10,490 --> 00:08:15,362 お前様に用はなくても 私は お前様に お話ししたいことがございます。 76 00:08:15,362 --> 00:08:18,164 黙らぬか! 下がれというのが分からぬか。 77 00:08:18,164 --> 00:08:21,501 関白 秀吉の命令じゃ! 関白が何じゃ! 78 00:08:21,501 --> 00:08:24,170 私には そのようなことは通じませぬ! 79 00:08:24,170 --> 00:08:27,474 兄様も 義姉様も どうなされたのじゃ? 80 00:08:29,509 --> 00:08:34,381 さあ お二人とも。 秀長殿。 さあ さあ…。 81 00:08:34,381 --> 00:08:36,383 副田甚兵衛! 82 00:08:38,184 --> 00:08:41,187 あさひと離別を申しつける。 83 00:08:43,857 --> 00:08:46,760 離別の暁には 5百石を与えよう。 84 00:08:46,760 --> 00:08:50,730 今日より あさひは 副田甚兵衛の妻ではない。 85 00:08:50,730 --> 00:08:55,201 関白 秀吉の妹として 大坂城に戻ったのじゃ。 86 00:08:55,201 --> 00:08:58,872 しかと 2人に申し渡した。 87 00:08:58,872 --> 00:09:00,807 お前様!えいっ! 兄者! 88 00:09:00,807 --> 00:09:04,477 兄様! 離別というのは どういうことじゃ? 89 00:09:04,477 --> 00:09:07,814 兄様から そのようなことを 言われる筋合いはないわ! 90 00:09:07,814 --> 00:09:12,485 わしと甚兵衛殿は 好きで夫婦になった。 別れようが 一緒にいようが➡ 91 00:09:12,485 --> 00:09:16,823 兄様から そのようなこと 言われる筋合いはないわ! 92 00:09:16,823 --> 00:09:21,694 甚兵衛さ 長居は無用じゃ。 早く去のう。 あさひ…。 93 00:09:21,694 --> 00:09:24,497 兄様は ここが おかしゅうなったと見えるわ。 94 00:09:24,497 --> 00:09:27,400 兄さの言うことなど 気にすることはない。 じゃが…。 95 00:09:27,400 --> 00:09:29,369 兄さなど 怖いことはないわ。 96 00:09:29,369 --> 00:09:33,173 甚兵衛さと わしは 離別させられるようなことはしておらぬ! 97 00:09:33,173 --> 00:09:35,508 兄さの言うことなど 知らん顔をしておればいいのよ。 98 00:09:35,508 --> 00:09:37,844 そのとおりじゃ。 99 00:09:37,844 --> 00:09:42,182 秀吉殿の言うことなど お聞きになることはありませぬ。 100 00:09:42,182 --> 00:09:44,184 おかか。 101 00:09:46,519 --> 00:09:50,190 どうなることかと案じておりましたが➡ 102 00:09:50,190 --> 00:09:54,861 あさひ殿がしっかりしておられるゆえ 安堵いたしました。 103 00:09:54,861 --> 00:09:58,731 あとのことは 私にお任せくださいませ。 104 00:09:58,731 --> 00:10:01,734 今日のことは 忘れて…。 義姉様。 105 00:10:01,734 --> 00:10:05,738 さあ 気を付けてお帰りなされ。 なあ。 106 00:10:11,411 --> 00:10:15,882 甚兵衛 あさひ…。 107 00:10:15,882 --> 00:10:19,886 このとおりじゃ。 わしの頼みを聞いてくれ。 108 00:10:21,554 --> 00:10:26,426 わしが 非道なことを言うておるのは 重々承知じゃ。 わしとてのう➡ 109 00:10:26,426 --> 00:10:29,896 そなたたちを離別させるのは 身を切られるように つらいわ。 110 00:10:29,896 --> 00:10:32,799 じゃがのう これよりほかに 道はないのじゃ。 111 00:10:32,799 --> 00:10:36,769 じゃからといって 罪もないお二人を…。 112 00:10:36,769 --> 00:10:39,906 わしのためではないぞ。 113 00:10:39,906 --> 00:10:42,809 天下国家のためじゃ! 114 00:10:42,809 --> 00:10:45,778 あさひが 家康殿に輿入れしてくれなんだら➡ 115 00:10:45,778 --> 00:10:48,915 家康は どこまでも わしに対抗しよう。 116 00:10:48,915 --> 00:10:52,252 わしに 家康を従わせる力がないと知れば➡ 117 00:10:52,252 --> 00:10:56,923 諸大名の中には 家康に同心する者も出てくるは必至。 118 00:10:56,923 --> 00:11:02,195 さすれば 武力をもって家康を討つより ほかにない。 119 00:11:02,195 --> 00:11:06,866 今 戦になれば せっかく わしが ここまで来た苦労が 水の泡じゃ。 120 00:11:06,866 --> 00:11:09,536 戦乱の世に 逆戻りぞ! 121 00:11:09,536 --> 00:11:15,208 あさひが 家康に輿入れしてくれれば 家康とて折れよう。 122 00:11:15,208 --> 00:11:18,878 家康が上洛し わしに臣従の意を示せば➡ 123 00:11:18,878 --> 00:11:23,183 諸大名たちも納得させることができるで! のう。 124 00:11:25,752 --> 00:11:31,457 わしの権威を示すことこそが 天下を治める道なのじゃ! 125 00:11:31,457 --> 00:11:33,426 戦にしてはならんのじゃ! 126 00:11:33,426 --> 00:11:39,566 あさひ そのための輿入れぞ。 分かってくれ…。 127 00:11:39,566 --> 00:11:45,438 フフッ…。 わしが 家康の奥方になると言うのか。 128 00:11:45,438 --> 00:11:48,908 茶番も いいかげんにしてほしいわ。 わしゃ 嫌じゃ。 断る。 129 00:11:48,908 --> 00:11:51,244 あさひ。 130 00:11:51,244 --> 00:11:56,115 わしゃ 百姓女じゃ。 天下国家など 関わりのないことよ。 131 00:11:56,115 --> 00:11:58,585 まして 奥方など 真っ平じゃ。 132 00:11:58,585 --> 00:12:03,189 後へは引けぬ。 頼む 聞き分けてくれ。 133 00:12:03,189 --> 00:12:07,860 義兄様…。 甚兵衛。 そなた 分かってくれたか! 134 00:12:07,860 --> 00:12:10,763 ならば 戦でも何でも したらええではないか。 135 00:12:10,763 --> 00:12:13,533 わしらの あずかり知らぬことよ。 136 00:12:13,533 --> 00:12:16,436 わしが これほど頼んでもか!? 137 00:12:16,436 --> 00:12:18,404 (あさひ)ああ。 気に入らねば➡ 138 00:12:18,404 --> 00:12:21,207 きょうだいの縁を切ってくだされて 結構じゃ。 139 00:12:21,207 --> 00:12:26,879 わしは どこへ行ってでも 百姓をする。 その方が なんぼ清々するか分からぬ。 140 00:12:26,879 --> 00:12:29,182 甚兵衛さ 去のう。 141 00:12:30,750 --> 00:12:34,754 二度と お城には戻らぬ。 142 00:12:34,754 --> 00:12:40,426 おっ母様に会うていきたいが 顔を見れば つろうなろう。 143 00:12:40,426 --> 00:12:45,565 甚兵衛殿とわしは 侍が嫌で逃げたと おっしゃってくだされ。➡ 144 00:12:45,565 --> 00:12:48,468 案じてくださるなと。 145 00:12:48,468 --> 00:12:53,172 去のう。 あさひ…。 あさひ! 146 00:13:02,048 --> 00:13:08,521 お前様 お諦めなさいませ。 147 00:13:08,521 --> 00:13:17,196 私とて お前様に 人の道に外れたことは していただきとうはございませぬ。 148 00:13:17,196 --> 00:13:25,204 甚兵衛殿と あさひ殿には 私が よう お話しいたしましょう。 149 00:13:27,840 --> 00:13:31,744 おぬしたちに 何が分かる! 150 00:13:31,744 --> 00:13:34,547 兄者。 151 00:13:34,547 --> 00:13:38,551 わしが どのような思いか 知りもせいで! 152 00:13:42,889 --> 00:13:46,559 なにが 弟よ! 153 00:13:46,559 --> 00:13:49,562 なにが おかかよ! 154 00:13:59,138 --> 00:14:01,507 義姉様…。 155 00:14:01,507 --> 00:14:06,846 あの様子では しばらく 手をつけられますまい。 156 00:14:06,846 --> 00:14:09,148 義姉様も おつろうございましょうが…。 157 00:14:10,717 --> 00:14:17,724 私のことは構いませぬ。 このまま 事が済んでくれればよいが…。 158 00:14:19,425 --> 00:14:25,198 どうあっても 戦にだけはしとうございませぬ。 159 00:14:25,198 --> 00:14:28,501 秀吉殿に お願いしなければ…。 160 00:14:36,542 --> 00:14:38,878 甚兵衛さ 手伝ってくだされ。 161 00:14:38,878 --> 00:14:43,549 そんなところで のんびりしてる場合ではないわ! 162 00:14:43,549 --> 00:14:46,452 どうでも 大坂を離れるのか? 163 00:14:46,452 --> 00:14:50,223 こんなところにいたら ろくなことにはならないわ。 164 00:14:50,223 --> 00:14:53,893 どこへ行くというんじゃ? 中村にはな もう 我らの住む家も 田畑もない。 165 00:14:53,893 --> 00:14:56,562 どうして暮らしていく!? 誰ぞ 知り人ぐらいおるわ。 166 00:14:56,562 --> 00:14:58,498 そんなことで 食べていけると思うているのか!? 167 00:14:58,498 --> 00:15:01,167 どうにかなるわ! それより ここにおったら➡ 168 00:15:01,167 --> 00:15:05,471 あの兄さのことじゃ 何をされるか 分かったものではないわ! 169 00:15:19,852 --> 00:15:22,755 秀吉殿とて よくよくのことよ。 170 00:15:22,755 --> 00:15:26,726 恨んではならぬ。 今まで世話になった義兄様ではないか。 171 00:15:26,726 --> 00:15:30,196 甚兵衛さ…。 172 00:15:30,196 --> 00:15:36,068 わしのような男が 侍などなったのが 間違うていたのよ。 173 00:15:36,068 --> 00:15:38,871 あさひが止めるのも聞かずと…。 174 00:15:38,871 --> 00:15:42,742 誰のせいでもない。 皆 わしが悪い。 175 00:15:42,742 --> 00:15:45,444 身から出た錆じゃ。 176 00:15:47,213 --> 00:15:51,551 わしのために あさひまで不幸せにしてしもうた。 177 00:15:51,551 --> 00:15:53,486 許してくれ。 178 00:15:53,486 --> 00:15:58,224 何を言っておるのじゃ。 わしは どんな暮らしをしていても➡ 179 00:15:58,224 --> 00:16:01,494 甚兵衛ささえいてくれれば それでええのじゃ! 180 00:16:01,494 --> 00:16:05,164 どんな苦労もいといはせぬ。 辛抱できる。 181 00:16:05,164 --> 00:16:07,099 じゃが これから先…。 182 00:16:07,099 --> 00:16:10,036 甚兵衛さ。 183 00:16:10,036 --> 00:16:14,173 わしは もう駄目じゃ。 あさひに 何もしてやることはできぬ。➡ 184 00:16:14,173 --> 00:16:19,512 苦労させるだけじゃ! ええと言っておるではないか!➡ 185 00:16:19,512 --> 00:16:23,182 甚兵衛さが 侍になるのは反対じゃった。 186 00:16:23,182 --> 00:16:27,053 じゃが 甚兵衛さは わしを楽をさせたい一念で➡ 187 00:16:27,053 --> 00:16:30,523 兄さに 骨身を惜しまず仕えてくれた。 188 00:16:30,523 --> 00:16:34,861 そのおかげで わしは 何の不自由のう暮らさせてもろうた。 189 00:16:34,861 --> 00:16:38,531 ありがたいと思っている。 190 00:16:38,531 --> 00:16:42,401 甚兵衛さの気持ちは 忘れはせぬ。 191 00:16:42,401 --> 00:16:46,405 それより あんな男を兄に持った女と 添うたばっかりに➡ 192 00:16:46,405 --> 00:16:49,542 甚兵衛さに こんな思いをさせてしもうて…。➡ 193 00:16:49,542 --> 00:16:53,412 申し訳ないと思っている。 いや それは違う! 194 00:16:53,412 --> 00:16:57,884 あさひ それは違うぞ。 195 00:16:57,884 --> 00:17:04,156 中村の百姓が ひとかどの侍になって 大きな顔をしてこれたのも➡ 196 00:17:04,156 --> 00:17:07,059 秀吉殿のご威光じゃったのよ。 197 00:17:07,059 --> 00:17:12,064 秀吉殿にご恩はあっても 悔いることなどありはせぬ。 198 00:17:16,302 --> 00:17:23,509 あさひ… 長いようで短かったのう。 199 00:17:23,509 --> 00:17:30,383 中村を出て 一人で 墨股の砦に行ったのが 昨日のことのような気がする。 200 00:17:30,383 --> 00:17:33,853 あれから 20年じゃ。 201 00:17:33,853 --> 00:17:41,527 そないになるかのう…。 わしも年を取るはずじゃ。 202 00:17:41,527 --> 00:17:47,199 (甚兵衛)わしは わしなりに 精いっぱい生きてきた。 203 00:17:47,199 --> 00:17:54,540 秀吉殿が 足軽大将から 関白になられるまで この目で見てもきた。 204 00:17:54,540 --> 00:18:03,816 じゃが わしのような男が侍になったのが 間違いだったのよ。 205 00:18:03,816 --> 00:18:10,489 侍を捨てたとて もう 思い残すことはない! 206 00:18:10,489 --> 00:18:16,162 あさひとも 20年連れ添うたのじゃ。 207 00:18:16,162 --> 00:18:20,833 それを思えば わしは 果報者じゃ。 208 00:18:20,833 --> 00:18:26,539 まだまだ これからじゃ。 これから 2人で助け合うて…。 209 00:18:29,175 --> 00:18:34,046 あさひ… 酒にせぬか。 210 00:18:34,046 --> 00:18:36,048 荷物など どうでもええではないか。 211 00:18:36,048 --> 00:18:40,786 明日の朝 ここを出るとなれば この家とも最後の夜じゃ。 212 00:18:40,786 --> 00:18:44,523 別れを惜しんでやろうではないか。 213 00:18:44,523 --> 00:18:48,194 ああ 飲み明かそう。 214 00:18:48,194 --> 00:18:59,205 ♬~ 215 00:19:15,821 --> 00:19:20,693 (こほ)お方様 まだ おやすみになりませぬのか?➡ 216 00:19:20,693 --> 00:19:25,498 もう 夜も更けましてございます。 お体に障りましょう。 217 00:19:25,498 --> 00:19:28,167 私のことは構わぬ。 218 00:19:28,167 --> 00:19:32,505 皆にも 早う やすむように言うてくだされ。 219 00:19:32,505 --> 00:19:38,811 (こほ)殿をお待ちになりましても 今宵は もう こちらへは…。 220 00:20:10,543 --> 00:20:12,878 (龍子)いかがなされました? 221 00:20:12,878 --> 00:20:15,581 ご気分がすぐれませぬか? 222 00:20:25,458 --> 00:20:29,428 (杯をたたきつける音) どいつも こいつも 陰気な顔をしおって! 223 00:20:29,428 --> 00:20:31,897 面白うないわ! 224 00:20:31,897 --> 00:20:33,899 関白様! 225 00:20:44,910 --> 00:20:47,213 お茶々殿! 226 00:20:52,585 --> 00:20:57,456 関白様。 お茶々様も お初様も とうに おやすみでございます。 227 00:20:57,456 --> 00:21:00,392 お茶々殿。 秀吉じゃ! 関白様! 228 00:21:00,392 --> 00:21:03,529 ⚟(茶々)何事じゃ? 騒々しい。 229 00:21:03,529 --> 00:21:06,432 関白様にございます。 230 00:21:06,432 --> 00:21:09,869 ⚟(茶々)この夜更けに 何の御用でございましょう? 231 00:21:09,869 --> 00:21:18,878 いや… どうにも 気が晴れぬゆえ お茶々殿と話がしとうなってのう。 232 00:21:18,878 --> 00:21:23,549 いや… 起こして すまなんだ。 またにしよう。 233 00:21:23,549 --> 00:21:25,851 ⚟(茶々)関白様。 234 00:21:29,889 --> 00:21:36,762 (茶々)関白様ともあろうお方が お話し相手も おられませぬのか? 235 00:21:36,762 --> 00:21:40,900 まだ 起きておられたのか。 236 00:21:40,900 --> 00:21:46,238 眠れぬままに 秀勝殿と お話しいたしておりました。 237 00:21:46,238 --> 00:21:51,243 ほう 羨ましいのう 秀勝が…。 238 00:22:11,197 --> 00:22:18,070 よろしかったら また 昔話など お聞かせくださいませ。 239 00:22:18,070 --> 00:22:20,206 ええのか? 240 00:22:20,206 --> 00:22:23,876 お初も起こして 一緒に伺いましょう。 241 00:22:23,876 --> 00:22:30,749 関白様のお手柄話は 面白うて飽きぬと お初も楽しみにいたしております。 242 00:22:30,749 --> 00:22:34,887 ほう それはうれしいのう。 ハッハッハッハ。 243 00:22:34,887 --> 00:22:39,225 お茶々殿とお初殿だけじゃ そのように言うてくださるのは。 244 00:22:39,225 --> 00:22:46,098 わしも そなたたちの顔を見ると 憂さが晴れる。 245 00:22:46,098 --> 00:22:52,238 関白様も お寂しいお人にございますなあ。 246 00:22:52,238 --> 00:22:55,140 フッフッフッフッフ…。 247 00:22:55,140 --> 00:22:57,910 今宵は ここで飲み明かそう。 248 00:22:57,910 --> 00:23:00,212 酒じゃ。 (侍女)はい。 249 00:23:22,101 --> 00:23:37,216 ♬~ 250 00:23:37,216 --> 00:23:39,218 はあ…。 251 00:23:43,555 --> 00:23:45,557 ああ…。 252 00:23:51,897 --> 00:23:56,602 あさひ…。 あさひ。 253 00:23:58,237 --> 00:24:04,543 酔うたわ…。 もう寝よう。 ああ。 254 00:24:07,513 --> 00:24:11,383 かわいい寝顔じゃ。 255 00:24:11,383 --> 00:24:16,855 あさひは 昔と少しも変わらぬ。 256 00:24:16,855 --> 00:24:22,728 わしのような男に ようついてきてくれた。 257 00:24:22,728 --> 00:24:26,865 礼を言うぞ。 258 00:24:26,865 --> 00:24:30,536 甚兵衛さあ…。 259 00:24:30,536 --> 00:24:37,209 ああ これでは 風邪をひく。 寝かせてやろう。 260 00:24:37,209 --> 00:24:39,511 あさひ。 261 00:24:43,082 --> 00:24:45,551 あさひ…。 262 00:24:45,551 --> 00:25:12,544 ♬~ 263 00:25:19,184 --> 00:25:22,087 (こほ)秀長殿がお見えでございます。 264 00:25:22,087 --> 00:25:25,391 お通ししてくだされ。 (こほ)はい。 265 00:25:31,764 --> 00:25:34,199 義姉様 どこぞへ? 266 00:25:34,199 --> 00:25:37,102 あさひ殿を見舞いに。 267 00:25:37,102 --> 00:25:40,072 あのままでは 気になってのう。 268 00:25:40,072 --> 00:25:44,843 秀吉殿の言われたことは 気になさらぬようにと…。 269 00:25:44,843 --> 00:25:48,547 (秀長)義姉様には ご心労をおかけいたします。 270 00:25:48,547 --> 00:25:51,450 これも おかかのつとめじゃ。 271 00:25:51,450 --> 00:25:54,219 秀吉殿は どうしておられる? 272 00:25:54,219 --> 00:25:59,558 いや 兄者は こちらではないのか? 秀長殿は お会いになりませぬのか? 273 00:25:59,558 --> 00:26:03,162 いや 表には出ておりませぬゆえ こちらだとばかり…。 274 00:26:03,162 --> 00:26:06,498 私が 是非お話ししなければと 待っておりましたが…。 275 00:26:06,498 --> 00:26:09,835 このような時に 何をしておられるのじゃ。 276 00:26:09,835 --> 00:26:12,171 私たちを避けておいでなのでしょう。 277 00:26:12,171 --> 00:26:15,841 しかし これから何をなさるのか 早う決めねばならぬ時に…。 278 00:26:15,841 --> 00:26:20,179 私は あさひ殿のところへ…。 279 00:26:20,179 --> 00:26:24,516 昨日のことは お義母様のお耳に入れてはなりませぬ。 280 00:26:24,516 --> 00:26:27,186 余計な心配を おかけしとうありませぬゆえ。 281 00:26:27,186 --> 00:26:29,121 はい。 282 00:26:29,121 --> 00:26:31,857 ⚟(なか)藤吉郎 どこじゃ!?➡ 283 00:26:31,857 --> 00:26:35,527 離せ! 止めるな! 藤吉郎! 出てこい!➡ 284 00:26:35,527 --> 00:26:38,864 藤吉郎! 藤吉郎をたたき斬ってやる! 285 00:26:38,864 --> 00:26:42,201 おっ母様 どうなされた!? 藤吉郎は わしの産んだせがれじゃ! 286 00:26:42,201 --> 00:26:45,103 この手で 藤吉郎を殺してやる! 287 00:26:45,103 --> 00:26:47,539 (あさひ)おっ母様! 288 00:26:47,539 --> 00:26:51,877 おっ母様 もうええ。 手荒なことはやめてくだされ。 289 00:26:51,877 --> 00:26:56,548 何を言う! おみゃあが許せても このわしが許せぬ! 290 00:26:56,548 --> 00:27:00,152 おっ母様…。 あさひ殿…。 291 00:27:00,152 --> 00:27:03,055 甚兵衛殿が…➡ 292 00:27:03,055 --> 00:27:06,825 甚兵衛殿が家を出てしもうた。 えっ!はっ! 293 00:27:06,825 --> 00:27:11,497 今朝 目を覚ましたら 枕元に これが…。 294 00:27:11,497 --> 00:27:14,800 どこを捜しても 見つからなんだ。 295 00:27:19,171 --> 00:27:25,511 (甚兵衛)「あさひ。 わしは もう 何も役に立たぬ男じゃ。➡ 296 00:27:25,511 --> 00:27:28,413 関白殿下より受けたお情けを思えば➡ 297 00:27:28,413 --> 00:27:31,383 黙って消えるのが せめてものご恩返し…。➡ 298 00:27:31,383 --> 00:27:35,854 また わしとて 侍の端くれ。➡ 299 00:27:35,854 --> 00:27:38,524 女房と引き換えに 禄を頂戴し➡ 300 00:27:38,524 --> 00:27:43,195 便々と生き延びたとあっては 面目が立たぬ。➡ 301 00:27:43,195 --> 00:27:48,534 あさひと共に家を出たとて わしには あさひを幸せにしてはやれぬ。➡ 302 00:27:48,534 --> 00:27:50,869 一緒にいても つらいだけじゃ。➡ 303 00:27:50,869 --> 00:27:56,208 じゃが わしには あさひとの思い出がある。➡ 304 00:27:56,208 --> 00:27:59,878 こうなる定めと思うて諦めよう。➡ 305 00:27:59,878 --> 00:28:04,716 わしのことは忘れるのじゃ。 捜してはくれるな。➡ 306 00:28:04,716 --> 00:28:09,421 許してくれ。 達者でのう」。 307 00:28:11,156 --> 00:28:13,492 あさひ…。 308 00:28:13,492 --> 00:28:16,828 覚悟の家出じゃ。 309 00:28:16,828 --> 00:28:21,166 いや もう どこぞで 冷とうなってるかもしれぬ。 310 00:28:21,166 --> 00:28:24,503 甚兵衛殿は死ぬつもりじゃ。 そうに違いない。 311 00:28:24,503 --> 00:28:27,839 秀長殿! すぐ人を使って 甚兵衛殿を…! 312 00:28:27,839 --> 00:28:30,742 必ず捜し出してくだされ! はっ! 313 00:28:30,742 --> 00:28:34,513 連れ戻して何になる! 314 00:28:34,513 --> 00:28:37,416 兄さには 余計者じゃ。 315 00:28:37,416 --> 00:28:42,387 疎まれて一生暮らすより 甚兵衛さの好きなようにさせてくだされ。 316 00:28:42,387 --> 00:28:45,524 侍の意地を通させてくだされ。 317 00:28:45,524 --> 00:28:48,427 じゃがのう あさひ…。 318 00:28:48,427 --> 00:28:53,865 これでええんじゃ。 甚兵衛殿と一緒に逃げたとて➡ 319 00:28:53,865 --> 00:28:56,768 わしは 甚兵衛さの足手まといになるだけじゃ。➡ 320 00:28:56,768 --> 00:29:01,473 甚兵衛殿がつらい思いをするだけじゃ。 あさひ殿…! 321 00:29:04,142 --> 00:29:11,817 もし… もし死んでいたら…。 あさひ! 322 00:29:11,817 --> 00:29:17,689 わしは 甚兵衛さの死んだ姿など 見とうはない。 323 00:29:17,689 --> 00:29:22,461 まだ生きている… また いつかきっと会える時が来ると➡ 324 00:29:22,461 --> 00:29:27,833 そういうふうに思っていたい。 だから せめて このまま…➡ 325 00:29:27,833 --> 00:29:32,504 甚兵衛さの思うとおりに させてやってくだされ。 お願いじゃ! 326 00:29:32,504 --> 00:29:36,375 なんという むごいことじゃ! 327 00:29:36,375 --> 00:29:40,178 これが 血を分けた兄のすることか! 328 00:29:40,178 --> 00:29:45,050 小一郎も ねねさも 藤吉郎に天下を取らせたいばっかりに➡ 329 00:29:45,050 --> 00:29:48,053 2人を見殺しにしたのか!? 見損のうたわ! 330 00:29:48,053 --> 00:29:51,523 おっ母様! 小一郎兄さと義姉様は➡ 331 00:29:51,523 --> 00:29:53,859 わしをかばってくだされた。 じゃがのう…。 332 00:29:53,859 --> 00:30:02,868 いいえ。 お義母様に何と責められても 返す言葉がございませぬ。 333 00:30:02,868 --> 00:30:07,539 おかかの私が至らなかったゆえ➡ 334 00:30:07,539 --> 00:30:11,410 秀吉殿をお止めすることは できませなんだ。 335 00:30:11,410 --> 00:30:15,213 申し訳ございませぬ。 336 00:30:15,213 --> 00:30:17,883 とにかく 甚兵衛を捜さねば。 337 00:30:17,883 --> 00:30:24,556 兄様! もうええ…。 もう諦めた。 338 00:30:24,556 --> 00:30:28,894 秀長殿。 関白殿が 御座所で お待ちとのことでございます。 339 00:30:28,894 --> 00:30:31,797 (秀長)おお。 340 00:30:31,797 --> 00:30:34,566 おっ母様! このままでは済まさぬ! 341 00:30:34,566 --> 00:30:37,235 おっ母様! 離せ 秀長! 離せ! 離せ! 342 00:30:37,235 --> 00:30:39,938 ばかなことは おやめなさい! 343 00:30:45,911 --> 00:30:47,913 おっ母様! 344 00:30:52,584 --> 00:30:54,586 どけ! 345 00:31:03,862 --> 00:31:08,200 あさひのことは 無理じゃのう。 346 00:31:08,200 --> 00:31:11,870 これ以上 横車を押すことはできぬわ。 347 00:31:11,870 --> 00:31:13,805 (長政)しかし…。 348 00:31:13,805 --> 00:31:16,541 わしとて あさひはかわいい。 349 00:31:16,541 --> 00:31:21,213 はあ…。 ならば…? 350 00:31:21,213 --> 00:31:28,086 長政。 おぬしには 徳川の使者をつとめてもろうておる。 351 00:31:28,086 --> 00:31:34,392 徳川へ行って なんとか 頭を下げてきてくれぬか。 352 00:31:36,762 --> 00:31:39,231 はあ…。 353 00:31:39,231 --> 00:31:44,102 戦になったらなったで その時のことよ。 のう。 354 00:31:44,102 --> 00:31:47,906 大政所様!大政所様! おやめくだされ! 355 00:31:47,906 --> 00:31:52,244 (長政)大政所様! おっ母様 どうなされた? 356 00:31:52,244 --> 00:31:55,580 (長政)大政所様! 止めるな! 357 00:31:55,580 --> 00:31:59,451 この人でなし! わしが思い知らせてやる! 358 00:31:59,451 --> 00:32:02,387 大政所様! お待ちくだされ! わしが何をしたというのじゃ! 359 00:32:02,387 --> 00:32:05,390 大政所様! おのれが どないな非道をしたのか➡ 360 00:32:05,390 --> 00:32:09,861 それも分からんのか! 甚兵衛とあさひが かわいそうに…! 361 00:32:09,861 --> 00:32:13,732 ああ あれか。 あれなら やめじゃ。 離別はさせぬわ。もう遅いわ! 362 00:32:13,732 --> 00:32:18,203 甚兵衛は家を出た。 今頃は 自害して果ててるかもしれんぞ! 363 00:32:18,203 --> 00:32:20,138 おっ母様 まことか!? 364 00:32:20,138 --> 00:32:22,874 甚兵衛が死んだら お前が殺したのも同然じゃ! 365 00:32:22,874 --> 00:32:27,212 あさひから甚兵衛を取り上げて お前は鬼じゃ~! 366 00:32:27,212 --> 00:32:31,550 わしは お前のような子を産んだのを 情けないと思うておる! 367 00:32:31,550 --> 00:32:35,420 2人に代わって成敗してやる! 大政所様! おやめくだされ! 368 00:32:35,420 --> 00:32:39,891 大政所様! 藤吉郎!大政所様! 369 00:32:39,891 --> 00:32:42,794 長政 止めるな! 止めるな 長政! 370 00:32:42,794 --> 00:32:45,564 わしは おっ母様に殴り殺されても しかたのない男よ。 371 00:32:45,564 --> 00:32:48,466 おっ母様 気の済むようになされませ! 372 00:32:48,466 --> 00:32:51,236 (なか)藤吉郎! 373 00:32:51,236 --> 00:32:53,572 存分にお打ちなされい! 374 00:32:53,572 --> 00:32:55,907 おっ母様に打ち殺されるのならば➡ 375 00:32:55,907 --> 00:32:57,843 秀吉 悔いはござらぬわ! 376 00:32:57,843 --> 00:33:00,745 おっ母様 存分に!藤吉郎! 377 00:33:00,745 --> 00:33:03,515 貸せ! 貸せ! 大政所様! 378 00:33:03,515 --> 00:33:06,184 おみゃあっていう男は…! 大政所様! 379 00:33:06,184 --> 00:33:09,855 (あさひ)おっ母様! おっ母様 やめてくだされ! おっ母様! 380 00:33:09,855 --> 00:33:12,190 おっ母様 やめてくだされ! 381 00:33:12,190 --> 00:33:14,860 今更 兄さを責めて 何になる!? 382 00:33:14,860 --> 00:33:19,197 兄さを殴り殺したとて 甚兵衛殿は戻ってはこぬわ。 383 00:33:19,197 --> 00:33:23,068 あさひ~! 384 00:33:23,068 --> 00:33:27,873 あさひ…。 おっ母様。 385 00:33:27,873 --> 00:33:31,209 おっ母様を泣かすようなことをして すまなんだな。 386 00:33:31,209 --> 00:33:35,881 あさひ…。 あさひが詫びることではないではないか。 387 00:33:35,881 --> 00:33:39,751 この秀吉が…。 あの話はなかったことにしてくれ。 388 00:33:39,751 --> 00:33:42,554 すぐさま 甚兵衛を捜させい。 連れ戻すゆえ。 389 00:33:42,554 --> 00:33:45,223 甚兵衛さは 帰ってはこぬわ。 390 00:33:45,223 --> 00:33:47,893 甚兵衛さとて 侍じゃ。 391 00:33:47,893 --> 00:33:53,231 一度 兄様の心を知ってしもうたら 帰れと言っても 帰ってはこぬわ。 392 00:33:53,231 --> 00:33:57,569 甚兵衛さは 侍に愛想が尽きたのよ。 393 00:33:57,569 --> 00:34:00,572 捜しても無駄じゃ。 394 00:34:15,053 --> 00:34:22,193 兄様。 わしが 家康殿へ輿入れして済むなら➡ 395 00:34:22,193 --> 00:34:24,195 行ってもええ。 396 00:34:27,866 --> 00:34:35,540 あさひ 何を言う! たわけたこと言うでにゃあ! 397 00:34:35,540 --> 00:34:38,877 わしは死んだも同じじゃ。 398 00:34:38,877 --> 00:34:43,214 甚兵衛さと一緒に死んだのよ。 399 00:34:43,214 --> 00:34:46,885 あさひの一生は終わったのよ。 400 00:34:46,885 --> 00:34:51,756 あとは どうなろうと 死んだ人間には どうでもええことじゃ。 401 00:34:51,756 --> 00:34:56,895 あさひ殿! そのような捨てばちなことを! 402 00:34:56,895 --> 00:35:02,167 わしにも自害する勇気があれば 生きていとうはない。 403 00:35:02,167 --> 00:35:08,506 じゃが できぬ。 わしゃ 不甲斐ない女子じゃ。 404 00:35:08,506 --> 00:35:14,379 どうせ生き恥をさらすなら どうなってもええことじゃ。 405 00:35:14,379 --> 00:35:17,849 家康殿のところへ さっさと行くわ。 406 00:35:17,849 --> 00:35:20,151 あさひ…。 407 00:35:22,721 --> 00:35:26,191 諦めたら 気が楽になった。 408 00:35:26,191 --> 00:35:29,527 死んだ人間には どうでもええことじゃ。 409 00:35:29,527 --> 00:35:33,865 おみゃあ 本気か? 410 00:35:33,865 --> 00:35:38,536 死んだ人間でも 兄様の役に立つことじゃ。 それでええではないか。 411 00:35:38,536 --> 00:35:43,408 あさひ。 敵地へ 一人乗り込んでいくのじゃ。 412 00:35:43,408 --> 00:35:46,411 誰一人 あさひをかわいがってくれる者はおらぬ。 413 00:35:46,411 --> 00:35:50,882 一人寂しゅう耐えねばならぬのじゃ。 414 00:35:50,882 --> 00:35:53,785 あさひを そのような目に遭わせとうはない。 415 00:35:53,785 --> 00:35:58,223 兄者とて もう諦めると言うておる。 それでええではないか! 416 00:35:58,223 --> 00:36:03,061 死んだ人間に つらいも さみしいもないわ。 417 00:36:03,061 --> 00:36:07,365 どこにいても 甚兵衛殿がいないことには 変わりはない。 418 00:36:13,705 --> 00:36:22,847 兄様 体は痛うないか? おっ母様は ばか力があるけのう。 419 00:36:22,847 --> 00:36:25,517 (なかの泣き声) 420 00:36:25,517 --> 00:36:28,420 あさひ! あさひ…。 421 00:36:28,420 --> 00:36:41,533 ♬~ 422 00:36:41,533 --> 00:36:49,207 義姉様。 兄さとて よくよくのことじゃったのよ。 423 00:36:49,207 --> 00:36:56,548 義姉様に見限られたら 兄様は 何をしでかすか 分かったものではない。 424 00:36:56,548 --> 00:36:59,451 許してやってくだされ。 425 00:36:59,451 --> 00:37:02,821 義姉様あっての兄様じゃ。 426 00:37:02,821 --> 00:37:05,824 わしに免じてのう。 427 00:37:07,492 --> 00:37:12,363 あさひ 許せ! 許してくれ あさひ! 428 00:37:12,363 --> 00:37:22,674 ♬~ 429 00:37:27,512 --> 00:37:34,385 そうか… 結納の日取りも とうとう決まってしもうたのか。 430 00:37:34,385 --> 00:37:37,188 はい。 431 00:37:37,188 --> 00:37:44,896 私からも 再三 思いとどまるように 申し上げたのですが…。 432 00:37:56,541 --> 00:38:00,411 関白殿がお見えになりました。 通すな。 433 00:38:00,411 --> 00:38:03,148 顔も見とうないで。 434 00:38:03,148 --> 00:38:05,450 追い返せ! 435 00:38:32,510 --> 00:38:35,413 それでは 本当に あさひ姫とやらを➡ 436 00:38:35,413 --> 00:38:37,849 正室にお迎えなされますのか。 437 00:38:37,849 --> 00:38:42,153 (家康)関白が もろうてくれと言うのじゃ。 断ることもあるまい。 438 00:38:43,721 --> 00:38:47,859 殿は 築山殿に懲りたゆえ➡ 439 00:38:47,859 --> 00:38:51,196 正室はもらわぬと 言うておられたではありませぬか。 440 00:38:51,196 --> 00:38:54,532 ああ あの女子はのう➡ 441 00:38:54,532 --> 00:38:59,404 わしが 今川義元のところへ 人質にやられていた折➡ 442 00:38:59,404 --> 00:39:02,340 義元から押しつけられてのう。 443 00:39:02,340 --> 00:39:05,810 義元の姪じゃというのを鼻にかけ➡ 444 00:39:05,810 --> 00:39:09,147 権高い上に 嫉妬深うて…。 445 00:39:09,147 --> 00:39:12,817 いや~ えらい目に遭うたわ。 446 00:39:12,817 --> 00:39:16,688 おまけに 6つも年上でのう…。 447 00:39:16,688 --> 00:39:21,492 はあ~ 身分の高い女子は もう こりごりじゃ。 448 00:39:21,492 --> 00:39:27,165 どうせ 私は 後家で 身分も低うござります。 449 00:39:27,165 --> 00:39:30,501 うん それが一番じゃ。 450 00:39:30,501 --> 00:39:35,173 うるさく言わぬ上 よう仕えてくれるわ。 ハッハッハッハ。 451 00:39:35,173 --> 00:39:38,843 それでは どうして 秀吉殿の妹君などを。 452 00:39:38,843 --> 00:39:42,180 あさひ姫ものう 出戻りじゃ。 453 00:39:42,180 --> 00:39:45,850 その上 大した女子ではないわ。 454 00:39:45,850 --> 00:39:49,721 じゃからというて 今までお仕えした私を差し置き➡ 455 00:39:49,721 --> 00:39:54,192 正室をお迎えなされるとは あまりではございませぬか! 456 00:39:54,192 --> 00:39:57,095 う… う…。 おい 妬くな。 妬くな。 457 00:39:57,095 --> 00:40:02,533 これも方便じゃ。 名ばかりのものよ。 458 00:40:02,533 --> 00:40:08,206 おまけに あさひ姫は 44歳。 459 00:40:08,206 --> 00:40:12,076 阿茶とは比べ物にならぬわ。 460 00:40:12,076 --> 00:40:15,880 44とは まことか!? 461 00:40:15,880 --> 00:40:18,549 それで 花嫁でございますか。 462 00:40:18,549 --> 00:40:21,452 アッハハハハッ! 463 00:40:21,452 --> 00:40:24,889 それでは 子が産まれる心配もありませぬなあ。 464 00:40:24,889 --> 00:40:26,824 アッハハハハッ! 465 00:40:26,824 --> 00:40:31,763 関白には たとえ 子ができようと わしの世継ぎにはせぬと➡ 466 00:40:31,763 --> 00:40:35,533 誓紙を取り交わしてあるがのう。 467 00:40:35,533 --> 00:40:39,437 まあ 殿も お人の悪い…。 468 00:40:39,437 --> 00:40:43,141 それが 駆け引きというものじゃ。 469 00:40:45,209 --> 00:40:48,212 安堵いたしました。 470 00:40:52,116 --> 00:40:57,255 <天正14年5月。➡ 471 00:40:57,255 --> 00:41:02,527 あさひは いよいよ 家康のもとへ旅立つことになった> 472 00:41:02,527 --> 00:41:16,240 ♬~ 473 00:41:25,216 --> 00:41:31,556 こほ殿。 あさひ殿は あちらにいらしたら➡ 474 00:41:31,556 --> 00:41:36,427 さぞ おさみしい思いを なされるでありましょう。 475 00:41:36,427 --> 00:41:41,566 こほ殿だけが頼りじゃ。 くれぐれも頼みます。 476 00:41:41,566 --> 00:41:46,437 はい。 私には 身に余る大役。 477 00:41:46,437 --> 00:41:52,210 浜松に骨をうずめる覚悟で お仕えいたす所存でございます。 478 00:41:52,210 --> 00:41:58,516 そなたも 達者で…。 お方様も…。 479 00:42:05,523 --> 00:42:30,214 ♬~ 480 00:42:30,214 --> 00:42:32,550 あさひ! 481 00:42:32,550 --> 00:42:41,559 ♬~ 482 00:42:41,559 --> 00:42:47,231 許せ! 許してくれ…。 483 00:42:47,231 --> 00:43:03,181 ♬~ 484 00:43:03,181 --> 00:43:06,851 <なかは とうとう見送らなかった。➡ 485 00:43:06,851 --> 00:43:09,754 秀吉の妹として生まれたばかりに➡ 486 00:43:09,754 --> 00:43:15,860 その野心のいけにえにされた あさひが 哀れでならなかった> 487 00:43:15,860 --> 00:43:22,533 ♬~ 488 00:43:22,533 --> 00:43:26,871 <秀吉が身を切られるような思いで 払った犠牲も➡ 489 00:43:26,871 --> 00:43:31,742 家康のしたたかさの前には ついに報われることなく終わり➡ 490 00:43:31,742 --> 00:43:36,881 更に 秀吉一族に 大きな犠牲が待っていようとは➡ 491 00:43:36,881 --> 00:43:39,550 誰も知る由もなかった> 492 00:43:39,550 --> 00:43:46,257 ♬~