1 00:00:02,102 --> 00:02:37,090 ♬~ 2 00:02:40,193 --> 00:02:42,863 <天正20年7月。➡ 3 00:02:42,863 --> 00:02:47,734 九州唐津の名護屋城で 大政所危篤の知らせを受けた秀吉は➡ 4 00:02:47,734 --> 00:02:50,737 急きょ 大坂へ向かった> 5 00:02:55,208 --> 00:02:57,210 (秀吉)容体は!? 6 00:03:01,481 --> 00:03:03,784 おかか! 7 00:03:12,125 --> 00:03:15,128 間に合わなんだのか…。 8 00:03:18,498 --> 00:03:21,168 間に合わなんだのか!? 9 00:03:21,168 --> 00:03:28,508 ♬~ 10 00:03:28,508 --> 00:03:32,179 殿下! (秀次)殿下! 11 00:03:32,179 --> 00:03:51,865 ♬~ 12 00:03:51,865 --> 00:03:54,568 秀次…。 13 00:03:56,737 --> 00:04:01,475 何故 早う知らせなんだ。 14 00:04:01,475 --> 00:04:07,647 (秀次)朝鮮出兵の大事な折から お心を煩わせてはと配慮いたしまして…。 15 00:04:07,647 --> 00:04:10,484 たわけ! 16 00:04:10,484 --> 00:04:18,158 おっ母様はのう わしにとって 唐入りよりも何よりも 大事なお方じゃ。 17 00:04:18,158 --> 00:04:27,167 それも分からぬようで わしの代わりが つとまるか! 18 00:04:27,167 --> 00:04:31,037 おぬしの顔も見とうないわ。 19 00:04:31,037 --> 00:04:34,841 出ていけ。 20 00:04:34,841 --> 00:04:36,843 出ていけ! 21 00:04:53,193 --> 00:05:03,003 ♬~ 22 00:05:03,003 --> 00:05:11,711 おかか… いつじゃ 亡くなられたのは。 23 00:05:21,822 --> 00:05:29,496 (ねね)7月の22日でございます。 24 00:05:29,496 --> 00:05:36,837 ならば わしが名護屋をたった時には もう…。 25 00:05:36,837 --> 00:05:42,709 私も このように急とは…。 26 00:05:42,709 --> 00:05:50,016 この前 患われたように 必ず ようなられると思っておりました…。 27 00:05:52,185 --> 00:05:59,192 何か わしに言い残されたことは…。 28 00:06:02,462 --> 00:06:04,764 はい。 29 00:06:27,153 --> 00:06:30,056 「たわけ」と…。 30 00:06:30,056 --> 00:06:32,058 うん? 31 00:06:34,027 --> 00:06:43,036 いまわの際までも うわごとのように 「たわけ たわけ」と…。 32 00:06:46,840 --> 00:06:54,147 最後まで お前様のことを案じられておりました。 33 00:07:01,788 --> 00:07:10,130 (泣き声) 34 00:07:10,130 --> 00:07:18,805 わしが… わしがのう おっ母様の命を縮めてしもうた。 35 00:07:18,805 --> 00:07:23,476 わしが殺したも同然よ。 36 00:07:23,476 --> 00:07:27,347 わしが 名護屋へなど 行っておらなんだら…。 37 00:07:27,347 --> 00:07:32,352 わしが 朝鮮へ 渡ろうなどとしたばかりに…。 38 00:07:34,120 --> 00:07:36,823 わしは 親不孝者じゃ。 39 00:07:36,823 --> 00:07:41,161 おっ母様に どのように詫びても 許されぬわ。 40 00:07:41,161 --> 00:07:49,502 (泣き声) 41 00:07:49,502 --> 00:07:56,176 お義母様も 76でした。 42 00:07:56,176 --> 00:07:59,846 天寿を全うなされたのじゃ。 43 00:07:59,846 --> 00:08:03,717 いつかは こういう時も…。 44 00:08:03,717 --> 00:08:12,425 わしはのう 100までも生きていただきたかったわ。 45 00:08:12,425 --> 00:08:20,133 わしが心配をおかけせなんだら まだまだ息災でおられたものを…。 46 00:08:20,133 --> 00:08:22,469 それがお分かりなら➡ 47 00:08:22,469 --> 00:08:27,140 唐入りなど 無益な戦は おやめくださいませ。 48 00:08:27,140 --> 00:08:30,810 それが 亡くなられたお義母様への➡ 49 00:08:30,810 --> 00:08:34,481 何よりの供養でございます。 50 00:08:34,481 --> 00:08:38,351 わしは もう 何も望まぬわ。 51 00:08:38,351 --> 00:08:41,821 何も欲しゅうない。 52 00:08:41,821 --> 00:08:44,524 張り合いがのうなった。 53 00:08:46,493 --> 00:08:51,364 ⚟(侍女)淀の方様が お見舞いに お越しなされましてございます。 54 00:08:51,364 --> 00:08:54,367 誰にも会いとうない。 お前様…。 55 00:08:54,367 --> 00:08:56,503 (泣き声) 56 00:08:56,503 --> 00:09:07,113 (虫の声) 57 00:09:07,113 --> 00:09:09,449 おかか…。 58 00:09:09,449 --> 00:09:16,122 わしに代わって よう おっ母様に尽くしてくれた。 59 00:09:16,122 --> 00:09:22,462 おっ母様ものう 喜んでおられた。 60 00:09:22,462 --> 00:09:27,467 それだけが せめてもの慰めよ。 61 00:09:29,135 --> 00:09:37,010 私とて お義母様に かわいがっていただきました。 62 00:09:37,010 --> 00:09:44,484 おっ母様の思い出話ができるのも おかかだけじゃ。 63 00:09:44,484 --> 00:09:51,825 中村で 初めて お義母様に お目にかかった時のこと…➡ 64 00:09:51,825 --> 00:09:55,495 今でも忘れませぬ。 65 00:09:55,495 --> 00:10:05,505 雨の降る日 みのを着て あさひ殿と畑を耕しておいでじゃった。 66 00:10:05,505 --> 00:10:12,178 人は 土と離れては生きられぬと…。 67 00:10:12,178 --> 00:10:17,517 それが口癖じゃったのう。 68 00:10:17,517 --> 00:10:28,161 怖いお方と思っておりましたが 嫁として優しゅう迎えてくださいました。 69 00:10:28,161 --> 00:10:33,867 どれほど うれしゅう思ったことか…。 70 00:10:37,537 --> 00:10:47,213 そうじゃ その時じゃ 秀長殿とお目にかかったのも。 71 00:10:47,213 --> 00:10:58,224 その秀長も あさひも 今は おらぬわ。 72 00:10:58,224 --> 00:11:04,497 おっ母様も 秀長も あさひも➡ 73 00:11:04,497 --> 00:11:08,501 わしのことを恨んでおろうのう。 74 00:11:10,837 --> 00:11:19,846 足軽から関白になるまで 皆に苦労をかけた。 75 00:11:21,481 --> 00:11:30,189 天下人になったばかりに 皆を不幸せにしてしもうた。 76 00:11:32,525 --> 00:11:43,536 皆 中村で百姓をしておった方が よかったかもしれんのう。 77 00:11:46,539 --> 00:11:54,414 わしはのう 何もかも嫌になってしもうた。 78 00:11:54,414 --> 00:11:58,551 わしも もう56じゃ。 79 00:11:58,551 --> 00:12:04,857 年よ…。 隠居しとうなった。 80 00:12:06,359 --> 00:12:14,500 では 朝鮮から 兵を引かれるご所存でございますか? 81 00:12:14,500 --> 00:12:18,371 唐入りのことはのう➡ 82 00:12:18,371 --> 00:12:24,077 家康と利家に任せておる…。 83 00:12:32,518 --> 00:12:41,527 <8月2日 秀吉は 母 大政所の葬儀を 京都紫野の大徳寺で 盛大に行った。➡ 84 00:12:41,527 --> 00:12:45,865 また 4日には 高野山に1万石を寄進し➡ 85 00:12:45,865 --> 00:12:51,537 大政所追善のために 青巌寺建立を命じている> 86 00:12:51,537 --> 00:12:57,410 (まつ)大政所様のこと さぞ お力落としでございましょう。 87 00:12:57,410 --> 00:13:00,346 寂しゅうなりました。 88 00:13:00,346 --> 00:13:05,485 いつも 私の味方になってくだすった方を 失って➡ 89 00:13:05,485 --> 00:13:08,154 何やら 心細うて…。 90 00:13:08,154 --> 00:13:12,025 (まつ)太閤殿下も こたえられたのではございませぬか? 91 00:13:12,025 --> 00:13:17,497 さあ 何をお考えなのか…。 92 00:13:17,497 --> 00:13:21,834 伏見に 隠居所の城を建てると おっしゃられて➡ 93 00:13:21,834 --> 00:13:24,837 今日も 伏見の方に。 94 00:13:27,173 --> 00:13:33,513 このようなことを 政所様のお耳に入れてはと迷いましたが➡ 95 00:13:33,513 --> 00:13:38,184 お心得なされていた方がよいかと 存じまして…。 96 00:13:38,184 --> 00:13:42,055 九州名護屋におります 利家殿の文によりますと➡ 97 00:13:42,055 --> 00:13:46,526 朝鮮の様子が思わしくないとか…。 98 00:13:46,526 --> 00:13:49,862 勝ち戦と伺っておりましたが…。 99 00:13:49,862 --> 00:13:52,532 それは 初めのうちのこと。 100 00:13:52,532 --> 00:13:55,435 日本の水軍が 朝鮮の水軍に敗れ➡ 101 00:13:55,435 --> 00:14:00,807 今では 朝鮮へ兵糧を送るのも ままならぬとか…。 102 00:14:00,807 --> 00:14:04,477 まことでございますか? はい。 103 00:14:04,477 --> 00:14:09,348 味方の補給を断たれ 武器も食糧も乏しくなっては➡ 104 00:14:09,348 --> 00:14:13,820 たとえ 強い将兵を送っていたとて 勝ち目はございませぬ。 105 00:14:13,820 --> 00:14:18,491 早く和議をして 手を引かねばと 利家殿も 深く憂えておられます。 106 00:14:18,491 --> 00:14:24,163 まあ そのようなことになっておろうとは…。 107 00:14:24,163 --> 00:14:28,034 政所様のお心を煩わせてはと 思いましたが➡ 108 00:14:28,034 --> 00:14:33,840 太閤殿下に思いとどまっていただくには 政所様のお力よりほかにないと➡ 109 00:14:33,840 --> 00:14:36,175 思い切って お話しいたしました。 110 00:14:36,175 --> 00:14:39,479 よう話してくださいました。 111 00:14:41,047 --> 00:14:45,852 今の秀吉殿は ご自分のお力を過信なされておる。 112 00:14:45,852 --> 00:14:49,188 おごっておられるのじゃ。 113 00:14:49,188 --> 00:14:55,061 はあ… このままでは 身を滅ぼすばかりじゃ。 114 00:14:55,061 --> 00:14:57,864 何としてでも お止めせねば。 115 00:14:57,864 --> 00:15:03,669 政所様のお見舞いに伺うて このようなことを…。 116 00:15:03,669 --> 00:15:07,673 今は北政所様のねね様に➡ 117 00:15:07,673 --> 00:15:13,146 つい 昔のままのおまつに なってしもうて…。 118 00:15:13,146 --> 00:15:15,481 お許しくださいまし。 119 00:15:15,481 --> 00:15:22,355 いや… こうして 私に おつきあいくださるのは➡ 120 00:15:22,355 --> 00:15:25,491 おまつ様だけでございます。 121 00:15:25,491 --> 00:15:31,164 どうか いつまでも 私の力になってくださいませ。 122 00:15:31,164 --> 00:15:33,499 お願いいたします。 123 00:15:33,499 --> 00:15:37,370 ⚟(侍女)申し上げます。 ただいま 名護屋よりのお使者にて➡ 124 00:15:37,370 --> 00:15:41,374 羽柴秀勝様 朝鮮唐島において 9月9日➡ 125 00:15:41,374 --> 00:15:44,510 ご病死された由にございます! 126 00:15:44,510 --> 00:15:47,847 秀勝殿が病死…!? 127 00:15:47,847 --> 00:15:49,782 ねね様! 128 00:15:49,782 --> 00:15:58,491 ♬~ 129 00:15:58,491 --> 00:16:00,793 (とも)藤吉郎! 130 00:16:00,793 --> 00:16:04,797 小吉が… 小吉が死んだわ。 131 00:16:07,667 --> 00:16:11,437 聞いた…。 132 00:16:11,437 --> 00:16:22,081 姉様 吉房殿 小督殿…➡ 133 00:16:22,081 --> 00:16:25,485 とんだことになってしもうた。 134 00:16:25,485 --> 00:16:30,356 (吉房)病を得て 異境に果てたとはいえ 戦場での死じゃ。 135 00:16:30,356 --> 00:16:33,359 武門に生まれた者の誉れ…。 136 00:16:33,359 --> 00:16:36,128 秀勝も悔いはございますまい。 137 00:16:36,128 --> 00:16:39,031 (とも)なにが 武門の誉れじゃ。 138 00:16:39,031 --> 00:16:44,504 藤吉郎が つまらぬ戦などするからじゃ。 (吉房)とも! 139 00:16:44,504 --> 00:16:50,843 朝鮮へなど行ってなければ 命を落とすこともあるまい。 140 00:16:50,843 --> 00:16:58,718 藤吉郎 こたびの戦で そなたは おっ母様の命を縮めた。➡ 141 00:16:58,718 --> 00:17:02,788 それでも足りずに 小吉まで…! 142 00:17:02,788 --> 00:17:07,660 藤吉郎! そなたが殺したのじゃ! そなたが!➡ 143 00:17:07,660 --> 00:17:11,797 秀勝などという名を継がせて…! 秀勝は 縁起の悪い名じゃ。 144 00:17:11,797 --> 00:17:16,135 2人とも若死にしておる。 わしは あれほど反対したのに…。 145 00:17:16,135 --> 00:17:21,007 やっぱり 早死にしてしもうたわ。 146 00:17:21,007 --> 00:17:23,009 みんな お前のせいじゃ。 147 00:17:23,009 --> 00:17:25,478 お前が殺したのじゃ! お前が殺したのじゃ! 148 00:17:25,478 --> 00:17:31,350 小督殿と祝言を挙げたばかりで もぎ取るように 朝鮮に出兵させて…。➡ 149 00:17:31,350 --> 00:17:35,154 これからじゃというのに➡ 150 00:17:35,154 --> 00:17:40,826 何も いい目にあわずに 二十歳過ぎたばかり…。➡ 151 00:17:40,826 --> 00:17:44,163 秀勝が哀れじゃ…。 152 00:17:44,163 --> 00:17:49,502 とも! 戦に行くは 武門に生まれた者のつとめじゃ。 153 00:17:49,502 --> 00:17:54,373 また 戦場で死すも 武門の定め。 154 00:17:54,373 --> 00:17:59,845 責めるなら 我らが侍になったことを…。 155 00:17:59,845 --> 00:18:03,115 ならば… ならば お前様は➡ 156 00:18:03,115 --> 00:18:07,453 わしが お前様を侍にしたことを 恨んでおられるのか? うん? 157 00:18:07,453 --> 00:18:12,325 のう 侍になったばっかりに 小吉が殺されたと言われるのか? のう。 158 00:18:12,325 --> 00:18:14,327 わしらが百姓をしておれば➡ 159 00:18:14,327 --> 00:18:17,129 このような目に遭わずとも済んだと 言われるのか!? のう!? 160 00:18:17,129 --> 00:18:19,065 (秀次)母上! 161 00:18:19,065 --> 00:18:21,467 そのとおりかもしれませぬ。 162 00:18:21,467 --> 00:18:24,136 秀勝殿だけではないわ。 163 00:18:24,136 --> 00:18:31,010 中村におったら あさひ殿も 甚兵衛殿も 幸せに暮らせられたものを…。 164 00:18:31,010 --> 00:18:38,150 おかか。 今になって そのようなことを言うても遅いわ! 165 00:18:38,150 --> 00:18:46,826 姉様。 秀勝の敵はのう 必ず このわしが討ってみせましょうのう。 166 00:18:46,826 --> 00:18:52,698 秀次。 わしは 直ちに 名護屋へ下向してのう 朝鮮へ渡る。 167 00:18:52,698 --> 00:18:55,835 渡海の準備も 万端遺漏なきよう 急ぎ手配せえ! 168 00:18:55,835 --> 00:18:57,770 (秀次)はっ。 なりませぬ! 169 00:18:57,770 --> 00:18:59,705 朝鮮に お渡りになることだけは! 170 00:18:59,705 --> 00:19:01,640 秀勝の弔い合戦じゃ! 171 00:19:01,640 --> 00:19:06,779 朝鮮の戦は 断念なさいませ。 お味方の軍勢は 難渋なされております。 172 00:19:06,779 --> 00:19:09,682 このまま戦を続けては 不利になるばかりでございます! 173 00:19:09,682 --> 00:19:11,650 おかか…。 174 00:19:11,650 --> 00:19:15,454 亡くなられたお義母様も それを案じられて。 175 00:19:15,454 --> 00:19:20,326 お義母様のためにも 無益な戦は おやめくださいませ! 176 00:19:20,326 --> 00:19:29,468 ならば 秀勝を失うたまま むざむざ 兵を引けと言うか!? 177 00:19:29,468 --> 00:19:32,138 それでは 秀勝は浮かばれぬわ! 178 00:19:32,138 --> 00:19:35,808 あの子のためなら 戦など やめてくだされ。 179 00:19:35,808 --> 00:19:39,478 勝ったとて 負けたとて 小吉は もう戻ってはこぬ。 180 00:19:39,478 --> 00:19:42,381 朝鮮など どうでもええことではないか! 181 00:19:42,381 --> 00:19:48,154 姉様。 わしが朝鮮へ渡って 先陣に立てば➡ 182 00:19:48,154 --> 00:19:50,823 将兵たちの士気も上がりましょう。 183 00:19:50,823 --> 00:19:53,492 皆も それを待っておるのよ! どうでも行かねばならぬわ! 184 00:19:53,492 --> 00:19:57,163 お前様! お前様は 思い上がっておられる。 185 00:19:57,163 --> 00:20:00,833 お前様に 朝鮮や明など滅ぼすお力などないわ! 186 00:20:00,833 --> 00:20:04,704 黙れ! おかかに 何が分かる。 187 00:20:04,704 --> 00:20:07,707 女子が さかしらに 口を出すことではなかろうが! 188 00:20:07,707 --> 00:20:12,178 お前様こそ 何も分かっておられませぬ。 189 00:20:12,178 --> 00:20:19,051 ねねが… ねねが 一生一度のお願いでございます! 190 00:20:19,051 --> 00:20:24,056 どうぞ… どうぞ お聞き届けくださいまし! 191 00:20:26,726 --> 00:20:30,196 お前様! (頬を打つ音) 192 00:20:30,196 --> 00:20:35,534 たとえ おかかとてのう 止めだては許さぬぞ! 193 00:20:35,534 --> 00:20:39,872 以後一切 このことに口出しは無用じゃ! 194 00:20:39,872 --> 00:20:42,208 お前様…。 195 00:20:42,208 --> 00:20:44,510 (小督)政所様…。 196 00:20:47,880 --> 00:20:51,584 (吉房) 秀吉殿は変わられてしもうた…。 197 00:20:53,552 --> 00:20:58,891 (淀殿)秀勝殿とは縁がなかったのじゃ。 198 00:20:58,891 --> 00:21:02,762 夫婦らしい暮らしもせずにのう。 199 00:21:02,762 --> 00:21:06,699 でも 優しいお人でございました。 200 00:21:06,699 --> 00:21:13,706 忘れるのじゃ。 そなたのことは 私が悪いようにはしませぬ。 201 00:21:15,374 --> 00:21:19,178 ⚟(侍女)太閤殿下 お渡りにございます。 202 00:21:19,178 --> 00:21:23,048 では 私は…。 (淀殿)構わぬ。 おじゃれ。 203 00:21:23,048 --> 00:21:26,519 秀吉殿は嫌いじゃ。 204 00:21:26,519 --> 00:21:28,521 小督…。 205 00:21:31,390 --> 00:21:34,393 おお 小督殿。 206 00:21:40,533 --> 00:21:43,435 おお 酒じゃ。 酒をのう。 207 00:21:43,435 --> 00:21:45,437 お茶々。 208 00:21:47,873 --> 00:21:52,745 この度は 秀勝殿のこと…。 ああ。 209 00:21:52,745 --> 00:21:58,884 秀勝にも 小督殿にも 気の毒なことをした。 210 00:21:58,884 --> 00:22:02,154 このようなことになるのであればのう➡ 211 00:22:02,154 --> 00:22:07,826 小督殿を離別させてまで 秀勝に添わせるのではなかったわ。 212 00:22:07,826 --> 00:22:12,698 小督には また ええ運も巡ってまいりましょう。 213 00:22:12,698 --> 00:22:18,470 小督も 持って生まれた定めと 諦めております。 214 00:22:18,470 --> 00:22:22,841 どうぞ お気になされますな。 215 00:22:22,841 --> 00:22:29,515 お茶々だけじゃ わしを慰めてくれるのは。 216 00:22:29,515 --> 00:22:33,185 おかかは わしの胸中など 分かってはくれぬわ。 217 00:22:33,185 --> 00:22:37,857 政所様には 政所様のお立場が…。 218 00:22:37,857 --> 00:22:45,197 茶々。 わしはのう また名護屋へ下り 朝鮮に渡るつもりじゃ。 219 00:22:45,197 --> 00:22:48,868 このまま おめおめと兵を引くことなど できぬわ! 220 00:22:48,868 --> 00:22:52,738 私も お供させていただきとうございます。 221 00:22:52,738 --> 00:22:55,741 茶々。 こたびは 朝鮮じゃ。 何が起こるか分からぬ。 222 00:22:55,741 --> 00:22:58,544 そなたは ここで…。 嫌でございます。 223 00:22:58,544 --> 00:23:01,814 殿下のおそばに おりとうございます。 224 00:23:01,814 --> 00:23:04,717 殿下と生死を共にできるのならば➡ 225 00:23:04,717 --> 00:23:07,486 お茶々 本望にございまする。 226 00:23:07,486 --> 00:23:10,155 どのような所にも いといはしませぬ。 227 00:23:10,155 --> 00:23:14,493 どうぞ お供をお許しくださいませ。 228 00:23:14,493 --> 00:23:17,196 茶々…。 229 00:23:24,169 --> 00:23:27,840 <周りの忠告も ねねの願いも無視して➡ 230 00:23:27,840 --> 00:23:32,177 秀吉は 再び名護屋へ出陣してしまった。➡ 231 00:23:32,177 --> 00:23:38,050 が 朝鮮の戦況の悪化で さすがに お茶々は連れていかなかった。➡ 232 00:23:38,050 --> 00:23:41,520 残されたねねは 孤独であった。➡ 233 00:23:41,520 --> 00:23:47,393 大政所を失い 秀吉とも 心の通い合わぬ夫婦になってしまったと➡ 234 00:23:47,393 --> 00:23:49,695 みじめであった> 235 00:23:55,067 --> 00:24:01,073 (孝蔵主)政所様。 太閤殿下より お文にございます。 236 00:24:02,808 --> 00:24:07,479 <明けて文禄2年 朝鮮の事態は ますます容易ではなく➡ 237 00:24:07,479 --> 00:24:11,817 秀吉は渡海を諦め やがて 和議が持ち上がったが➡ 238 00:24:11,817 --> 00:24:16,155 それも なかなか進まず 5月を迎えていた。➡ 239 00:24:16,155 --> 00:24:22,861 そのころ ねねのもとへ 秀吉から 思いがけない手紙が届いた> 240 00:24:42,181 --> 00:24:47,886 (孝蔵主)政所様 なんぞ お気にかかることでも…? 241 00:24:50,522 --> 00:24:56,395 淀殿が みごもられたそうな。 242 00:24:56,395 --> 00:24:58,397 淀の方が…!? 243 00:24:58,397 --> 00:25:04,470 「淀のもの 懐妊の由 承り候。➡ 244 00:25:04,470 --> 00:25:07,139 めでたく候」…。 245 00:25:07,139 --> 00:25:15,147 知りませなんだ。 淀殿より 政所様へも…。 246 00:25:17,149 --> 00:25:19,485 何も伺ってはおらぬ。 247 00:25:19,485 --> 00:25:24,823 (孝蔵主)それは おかしゅうございます。 政所様がご存じないとは。 248 00:25:24,823 --> 00:25:30,529 政所様をないがしろになされた お仕打ちじゃ。 許されませぬ。 249 00:25:33,165 --> 00:25:39,505 そのようなことは 小さなことじゃ。 250 00:25:39,505 --> 00:25:49,515 これは 豊臣家にとって 何よりも めでたいことじゃ。 251 00:25:49,515 --> 00:25:56,188 このところ 大政所様はじめ 大事な方を失われて➡ 252 00:25:56,188 --> 00:26:01,026 秀吉殿も おつらい思いをなされておる。 253 00:26:01,026 --> 00:26:09,334 はあ… これで 秀吉殿が 昔の秀吉殿に戻ってくだされたら…。 254 00:26:11,136 --> 00:26:18,010 お子が無事に誕生なされたら 朝鮮の戦も お忘れになろう。 255 00:26:18,010 --> 00:26:21,780 (孝蔵主)政所様。 256 00:26:21,780 --> 00:26:25,684 早速に 祝いに伺わねば。 257 00:26:25,684 --> 00:26:31,156 なにも 政所様から出向かれることは ございますまい。 258 00:26:31,156 --> 00:26:37,496 淀殿の方から ご挨拶のあるのが 順序というものでございましょう。 259 00:26:37,496 --> 00:26:44,169 孝蔵主殿… 秀吉殿のお子を産むということは➡ 260 00:26:44,169 --> 00:26:49,041 誰よりも 何よりも 強いことじゃ。 261 00:26:49,041 --> 00:26:56,181 これからとて 淀殿は 私をないがしろになさいましょう。 262 00:26:56,181 --> 00:27:03,789 でも これも お世継ぎのため 豊臣家のためじゃ。 263 00:27:03,789 --> 00:27:07,459 そこのところを目をつぶって…。 264 00:27:07,459 --> 00:27:17,803 ♬~ 265 00:27:17,803 --> 00:27:21,673 (とも)まことに 藤吉郎の子か? 266 00:27:21,673 --> 00:27:24,376 産み月は いつじゃ? 267 00:27:31,149 --> 00:27:34,820 8月と言うておられます。 268 00:27:34,820 --> 00:27:39,491 それでは…。 269 00:27:39,491 --> 00:27:46,832 秀吉殿は 昨年の10月1日に 名護屋に下られました。 270 00:27:46,832 --> 00:27:51,703 まことに 秀吉殿のお子でございましょう。 271 00:27:51,703 --> 00:27:54,506 だまされておるのよ 藤吉郎は。 272 00:27:54,506 --> 00:27:57,409 鶴松の時とて そうじゃった。 273 00:27:57,409 --> 00:28:00,779 今でも いろいろと うわさのある女子じゃ。 274 00:28:00,779 --> 00:28:05,651 それを 藤吉郎は お茶々に迷うてしもうて。 275 00:28:05,651 --> 00:28:13,125 まさか… まさか ねね様まで 信じておるわけではあるまいの。 276 00:28:13,125 --> 00:28:16,795 たとえ どのようなことがありましょうとも➡ 277 00:28:16,795 --> 00:28:22,668 秀吉殿が ご自分の子として認められたのじゃ。 278 00:28:22,668 --> 00:28:26,471 お世継ぎとして…。 279 00:28:26,471 --> 00:28:29,141 ねね様! 280 00:28:29,141 --> 00:28:32,044 それでは 秀次はどうなるのじゃ。 281 00:28:32,044 --> 00:28:34,479 秀次は 赤子の頃より➡ 282 00:28:34,479 --> 00:28:37,382 ねね様にかわいがられて 大きゅうなった子じゃ。 283 00:28:37,382 --> 00:28:41,820 それゆえ ねね様のことを母親のようにも思い➡ 284 00:28:41,820 --> 00:28:44,156 大事にもしておる。 285 00:28:44,156 --> 00:28:46,491 その秀次より➡ 286 00:28:46,491 --> 00:28:49,394 誰が父親かも分からぬような お茶々の子を➡ 287 00:28:49,394 --> 00:28:53,398 世継ぎにしたいと言われるのか! とも様…。 288 00:28:56,168 --> 00:29:04,443 ねね様…。 もしも お茶々に 男子が産まれるようなことになれば➡ 289 00:29:04,443 --> 00:29:08,780 秀次は 関白の座を 追われるようなことになるやもしれぬ。➡ 290 00:29:08,780 --> 00:29:12,451 それでは 今まで 藤吉郎のために働いてきた秀次が➡ 291 00:29:12,451 --> 00:29:14,786 あまりにも哀れじゃ。 292 00:29:14,786 --> 00:29:22,461 もしもの折には ねね様だけでも 秀次の味方になってやってくだされ。 293 00:29:22,461 --> 00:29:31,136 我らが頼みにできるのは ねね様しかおらぬ。 294 00:29:31,136 --> 00:29:33,839 このとおりじゃ。 295 00:29:38,010 --> 00:29:44,483 <文禄2年8月3日 茶々は 大坂城で男の子を産んだ。➡ 296 00:29:44,483 --> 00:29:46,818 後の秀頼である。➡ 297 00:29:46,818 --> 00:29:52,524 秀吉は 朝鮮のことなど ほったらかして 大坂へ飛んで帰ってきた> 298 00:29:54,159 --> 00:29:57,062 お茶々…。 ハッハッハッハ。 299 00:29:57,062 --> 00:30:02,034 でかした でかした でかした! 300 00:30:02,034 --> 00:30:05,771 よう 男子を産んでくれたのう。 301 00:30:05,771 --> 00:30:09,708 これでのう 豊臣家も万々歳よ。 302 00:30:09,708 --> 00:30:12,844 殿下に申し訳が立ちましてございます。 303 00:30:12,844 --> 00:30:14,780 おう。 ハハハハハ。 304 00:30:14,780 --> 00:30:19,718 茶々 のう よう乳が出るよう た~んと食べねばならぬぞ。 305 00:30:19,718 --> 00:30:24,189 ええのう? ややはのう 母親の乳が一番じゃ。 306 00:30:24,189 --> 00:30:28,527 今度こそ 丈夫に育ってもらわねばのう。 307 00:30:28,527 --> 00:30:33,865 アッハッハ…。 ハハハッ おう 笑うた! 笑うた! 308 00:30:33,865 --> 00:30:38,203 茶々。 もっと ずっと ここにおりたいんじゃがのう➡ 309 00:30:38,203 --> 00:30:42,874 わしは 戻って まだ おかかに顔を合わしておらんのよ。 310 00:30:42,874 --> 00:30:46,578 顔だけのう ちとのう。 311 00:30:52,217 --> 00:30:56,521 おかか。 ハッハッハッハ…。 312 00:30:58,890 --> 00:31:01,793 よう戻られました。 313 00:31:01,793 --> 00:31:04,696 もっと遅うおなりと思っておりましたが。 314 00:31:04,696 --> 00:31:10,502 ああ。 明国との和議はのう 小西行長に任せた。 315 00:31:10,502 --> 00:31:13,839 行長はのう 堺の納屋衆のせがれでのう➡ 316 00:31:13,839 --> 00:31:19,177 備前の薬種問屋に養子に行き 立派に商いもつとめた男じゃ。 317 00:31:19,177 --> 00:31:21,847 ハッハッハッハ。 取り引きの才には たけておるわ。 318 00:31:21,847 --> 00:31:23,782 うもうやってくれるじゃろう。 319 00:31:23,782 --> 00:31:27,185 では 朝鮮の戦は…? 320 00:31:27,185 --> 00:31:31,056 休戦じゃ。 まあ…。 321 00:31:31,056 --> 00:31:36,528 それはよろしゅうございました。 安堵いたしました。 322 00:31:36,528 --> 00:31:41,199 ああ。 まあ この辺が 手の打ちどころじゃろうて。 323 00:31:41,199 --> 00:31:45,070 おかかにも 心配かけたのう。 324 00:31:45,070 --> 00:31:50,542 また 淀の出産については いろいろ世話になった。 礼を言うぞ。 325 00:31:50,542 --> 00:31:56,214 本当に おめでとう存じます。 ああ。 326 00:31:56,214 --> 00:32:01,820 豊臣家の子は おかかの子でもある。 立派に育ててくれのう。 327 00:32:01,820 --> 00:32:06,491 はい。 お前様のお文のお申しつけどおり➡ 328 00:32:06,491 --> 00:32:10,362 拾った子は よう育つという お言葉に従いまして➡ 329 00:32:10,362 --> 00:32:13,165 ややを 一度 お捨ていたしまして➡ 330 00:32:13,165 --> 00:32:18,837 御奥付 松浦讃岐守重政殿に 拾っていただきまして➡ 331 00:32:18,837 --> 00:32:22,707 お名も お拾と付けさせていただきました。 332 00:32:22,707 --> 00:32:27,512 おかか。 お拾は いかんぞ。 333 00:32:27,512 --> 00:32:31,383 拾じゃ。 ゆめゆめ 「お」を付けてはならぬぞ。 334 00:32:31,383 --> 00:32:36,188 あ はい…。 拾君でございますな? 335 00:32:36,188 --> 00:32:40,058 そうじゃ。 「お」を付けてはならぬのよ。 ああ ああ…。 336 00:32:40,058 --> 00:32:46,832 おかか ヘッヘッヘッヘ わしは 57じゃ。 ハッハ。 337 00:32:46,832 --> 00:32:55,874 この年になって また 子に恵まれようとは 思うてもみなんだわ。 ハッハッハ。 338 00:32:55,874 --> 00:33:03,181 おっ母様が生きていてくだされたらのう さぞ喜んでくだされたであろうに。 339 00:33:05,150 --> 00:33:11,022 一度だけでも おっ母様に 拾を抱いていただきたかったのう。 340 00:33:11,022 --> 00:33:18,496 いや もしかすると おっ母様が下されたお子やもしれぬぞ。 341 00:33:18,496 --> 00:33:22,367 おう おかかとわしの間に子がないのを 不憫に思うてのう➡ 342 00:33:22,367 --> 00:33:24,836 授けてくだされたのよ。 343 00:33:24,836 --> 00:33:27,505 さようでございますな。 うん。 344 00:33:27,505 --> 00:33:32,177 ならば 豊臣家のさきざきのためになるような➡ 345 00:33:32,177 --> 00:33:34,513 ええお子に お育てせねば。 346 00:33:34,513 --> 00:33:37,182 おう 当たり前じゃ。 ハッハッハッハ。 347 00:33:37,182 --> 00:33:43,855 拾はのう 豊臣家の世継ぎじゃ。 天下を背負うていかねばならぬ子じゃ。 348 00:33:43,855 --> 00:33:46,758 諸大名にも そのことは よう知っておいてもらわねばのう。 349 00:33:46,758 --> 00:33:53,865 ハッハッハッハ…。 それにしても おかか➡ 350 00:33:53,865 --> 00:33:58,203 いささか早まったのう。 ハハハ…。 351 00:33:58,203 --> 00:34:03,041 いや 秀次よ。 このようなことになるのであれば➡ 352 00:34:03,041 --> 00:34:08,013 なにも 慌てて 関白を譲ることは なかったわのう。 ハッハッハ。 353 00:34:08,013 --> 00:34:16,488 お前様。 私が案じているのも そのことでございます。 354 00:34:16,488 --> 00:34:23,828 拾君の誕生で 秀次殿との間に 世継ぎの争いがあっては➡ 355 00:34:23,828 --> 00:34:26,731 豊臣家のために災いになりましょう。 356 00:34:26,731 --> 00:34:31,169 それでは 拾君の誕生が かえって あだになりましょう。 357 00:34:31,169 --> 00:34:34,506 ハハ… 分かっておるて。 ハッハッハッハ。 358 00:34:34,506 --> 00:34:37,175 わしとて 一度 秀次に譲ったものを➡ 359 00:34:37,175 --> 00:34:40,078 秀次に何の落ち度もないのに 拾が産まれたからというて➡ 360 00:34:40,078 --> 00:34:44,049 関白を取り上げるわけには いかんであろうが。 ハッハッハ。 361 00:34:44,049 --> 00:34:48,186 秀次殿は お前様の甥御。 362 00:34:48,186 --> 00:34:52,857 豊臣家にとって 大事なお方でございます。 363 00:34:52,857 --> 00:34:58,730 拾君が成人あそばすまで 秀次殿にお任せくださいませ。 364 00:34:58,730 --> 00:35:02,467 それが 何よりのこと。 365 00:35:02,467 --> 00:35:10,141 じゃがのう 拾が大きゅうなるまで わしは生きておられるじゃろうかのう。 366 00:35:10,141 --> 00:35:12,077 まあ お前様 そん…。 367 00:35:12,077 --> 00:35:16,815 わしに もしものことがあれば…。 368 00:35:16,815 --> 00:35:19,150 秀次とて 人の子じゃ。 369 00:35:19,150 --> 00:35:21,820 一度握った権力の座は 手放しとうないと思うのが…。 370 00:35:21,820 --> 00:35:24,723 秀次殿は そのような方ではございませぬ。 371 00:35:24,723 --> 00:35:28,159 分からぬぞ 人の心は。 372 00:35:28,159 --> 00:35:31,830 わしは 嫌というほど 骨肉の争いを見てきた。 373 00:35:31,830 --> 00:35:34,499 せめて わしの目の黒いうちに➡ 374 00:35:34,499 --> 00:35:39,170 拾の身の立つように 考えておいてやらねばのう。 375 00:35:39,170 --> 00:35:41,106 お前様…。 376 00:35:41,106 --> 00:35:45,510 アッハッハッハ。 おかかの案ずるようなことではないわ。 377 00:35:45,510 --> 00:35:51,383 万一の時のためよ。 わしはのう 近々 秀次を呼んで 話そうと思うておる。 378 00:35:51,383 --> 00:35:54,853 この国をのう 5つに分けてのう➡ 379 00:35:54,853 --> 00:35:59,190 その4を秀次に 残りの1を拾にやろうと思うておる。 380 00:35:59,190 --> 00:36:02,460 そうすれば 秀次とてのう いなやは言えまいて。 381 00:36:02,460 --> 00:36:05,130 世間とて 納得しよう。 お…! 382 00:36:05,130 --> 00:36:10,468 アッハッハッハッハ。 おかか…。 ハッハッハッハ。 383 00:36:10,468 --> 00:36:13,805 この大坂城は 拾の城じゃ。 384 00:36:13,805 --> 00:36:20,145 わしはのう 伏見の築城を急いで おかかと2人っきりで 隠居じゃ。 385 00:36:20,145 --> 00:36:25,483 のう。 ハッハッハ…。 あくせくせずと のんびり➡ 386 00:36:25,483 --> 00:36:31,356 おかかと2人で 拾が大きゅうなるのを 楽しみに見届けようぞ。 おう。 387 00:36:31,356 --> 00:36:34,059 アッハッハッハッハ。 388 00:36:38,063 --> 00:36:42,033 藤吉郎に 伏見に呼びつけられたそうじゃが➡ 389 00:36:42,033 --> 00:36:45,503 何の話だったのじゃ。 390 00:36:45,503 --> 00:36:48,406 はい…。 391 00:36:48,406 --> 00:36:53,178 隠居じゃ隠居じゃと言いながら 関白の秀次を呼びつけて➡ 392 00:36:53,178 --> 00:36:56,848 一体 何を指図しようというのじゃ。 393 00:36:56,848 --> 00:37:02,454 天下を5分し その4を私に 残りの1を拾君に与えると。 394 00:37:02,454 --> 00:37:10,328 お拾に…!? 産まれたばかりの赤子に 天下の5分の1をやってくれというのか。 395 00:37:10,328 --> 00:37:14,466 今 そのようなことをなさらずとも 拾君ご成長の暁には➡ 396 00:37:14,466 --> 00:37:19,337 私とて 関白職を 拾君に お譲りする所存でおります。 397 00:37:19,337 --> 00:37:23,808 それを 何故に…。 太閤殿下のお心が はかりかねてございます。 398 00:37:23,808 --> 00:37:29,481 藤吉郎は 子のかわいさに迷うて 分別を失うておるわ。 399 00:37:29,481 --> 00:37:33,351 太閤殿下は 私を信じておられませぬ。 400 00:37:33,351 --> 00:37:35,820 私に関白を譲ってしもうたことを➡ 401 00:37:35,820 --> 00:37:38,490 後悔なされておられるので ございましょう。 402 00:37:38,490 --> 00:37:41,392 まさか そのような…。 403 00:37:41,392 --> 00:37:46,831 藤吉郎にとって そなたは 他人ではない。 幼い時から まことの子同様に…。 404 00:37:46,831 --> 00:37:48,767 まことの子には かないませぬ。 405 00:37:48,767 --> 00:37:51,069 秀次…? 406 00:37:52,704 --> 00:37:57,175 秀吉殿には 目に入れても痛うないお子じゃ。 407 00:37:57,175 --> 00:38:01,045 拾君のさきざきのことを思い煩うのを 責めては酷じゃ。 408 00:38:01,045 --> 00:38:04,782 天下の5分の1ぐらいと思われるのは 当たり前のこと。 409 00:38:04,782 --> 00:38:09,654 それで 気がお済みになるなら 黙って聞いておくことじゃ。➡ 410 00:38:09,654 --> 00:38:15,126 そなたは そなたが言うたとおり 拾君が成人なされるまで➡ 411 00:38:15,126 --> 00:38:18,796 立派に関白のつとめを果たせばええのよ。 412 00:38:18,796 --> 00:38:21,466 そなたは 豊臣家の人間じゃ。 413 00:38:21,466 --> 00:38:25,803 それが 豊臣家を守る者のつとめでもある。 414 00:38:25,803 --> 00:38:32,677 その覚悟で励めば 秀吉殿とて きっと分かってくだされよう。 415 00:38:32,677 --> 00:38:34,813 はい…。 416 00:38:34,813 --> 00:38:36,748 お前様…。 417 00:38:36,748 --> 00:38:41,486 そなたが疑心暗鬼になっては うまくいくものもいかぬ。 418 00:38:41,486 --> 00:38:46,357 そなたの心ばえ一つじゃ。 それを忘れてはならぬぞ。 419 00:38:46,357 --> 00:38:48,827 はい。 420 00:38:48,827 --> 00:38:52,497 のう おかか。 421 00:38:52,497 --> 00:38:58,203 秀次には 3つになる娘がおったのう。 422 00:39:00,104 --> 00:39:06,778 はい。 一の台殿が お産みあそばされた子が…。 423 00:39:06,778 --> 00:39:13,451 その子をのう 拾に娶そうと思うとるんじゃがのう。 424 00:39:13,451 --> 00:39:19,324 拾君に…?おう。 まだ産まれたばかりのお子でございます。 425 00:39:19,324 --> 00:39:27,799 いやいや 成人したらのう 祝言をさせるよう 決めておくだけよ。 426 00:39:27,799 --> 00:39:31,469 何故 そのような…。 427 00:39:31,469 --> 00:39:36,808 秀次にとってのう 拾は邪魔じゃ。 428 00:39:36,808 --> 00:39:40,478 己を守るためには 何を考えておるか分からぬて。 429 00:39:40,478 --> 00:39:45,817 お前様…。 いくら 拾君が大事じゃからというて➡ 430 00:39:45,817 --> 00:39:51,155 それでは まるで お前様が事を壊してしまいましょう。 431 00:39:51,155 --> 00:39:56,027 お前様が 秀次殿を信じてさしあげねば…。 432 00:39:56,027 --> 00:39:59,497 おかかのようなことを 言うておったらのう➡ 433 00:39:59,497 --> 00:40:04,836 後々 悔いを残すようなことにも なりかねぬわ。 434 00:40:04,836 --> 00:40:08,706 いや なにも 秀次をどうしようというのではないぞ。 435 00:40:08,706 --> 00:40:13,511 秀次の娘を 拾の嫁にしようというだけじゃ。 436 00:40:13,511 --> 00:40:20,852 また 秀次とて 拾が娘の婿ともなれば そう ひどい仕打ちもできまいて。 437 00:40:20,852 --> 00:40:24,722 世間に対しても 関白を譲らねばならぬわ。 438 00:40:24,722 --> 00:40:29,027 ハハハッ。 どうじゃ 妙案じゃろうが。 439 00:40:31,496 --> 00:40:34,198 <文禄2年10月1日。➡ 440 00:40:34,198 --> 00:40:40,071 まだ2か月の拾丸と 3歳になる 秀次の娘との婚約が決まった。➡ 441 00:40:40,071 --> 00:40:42,874 ねねは ばかばかしいと思いながら➡ 442 00:40:42,874 --> 00:40:49,747 そのばかばかしさを真面目にやってのける 秀吉の心が恐ろしかった> 443 00:40:49,747 --> 00:40:55,219 これ 拾よ。 ああ よい子じゃ よい子じゃ。 アッハッハッハッハ。 444 00:40:55,219 --> 00:40:58,122 よしよしよし よしよしよし。 445 00:40:58,122 --> 00:41:02,493 のう これで 拾の将来も安泰よのう。 446 00:41:02,493 --> 00:41:04,429 殿下。 うん? 447 00:41:04,429 --> 00:41:09,834 秀次殿の娘御を奥方などに決められて 何になりましょう。 448 00:41:09,834 --> 00:41:15,707 私の母上は 信長様のために 浅井に嫁がれました。 449 00:41:15,707 --> 00:41:24,182 じゃが 信長様は 妹の婿殿を 平気で討たれたではございませぬか。➡ 450 00:41:24,182 --> 00:41:30,855 娘の婿殿と争う戦とて いくつも見てまいりました。➡ 451 00:41:30,855 --> 00:41:38,162 秀次殿の娘御をもろうたとて 私は 秀次殿のお心など信じられませぬ。 452 00:41:40,531 --> 00:41:42,867 (淀殿)拾君は 不憫じゃ…。 453 00:41:42,867 --> 00:41:47,205 殿下 せめて 拾君がご成人なされるまで➡ 454 00:41:47,205 --> 00:41:49,874 どうぞ お達者でいてくださいませ。 455 00:41:49,874 --> 00:41:57,582 でなければ 拾君を守ってくだされる方は どなたもおりませぬ。 456 00:42:02,153 --> 00:42:05,056 (とも)遅うに産まれた子じゃ。 457 00:42:05,056 --> 00:42:13,765 藤吉郎とて 一層 お拾が不憫でもあり 先のことが案ぜられてならぬのであろう。 458 00:42:13,765 --> 00:42:19,170 じゃが 今度の縁組みは どうかしておるわい。 459 00:42:19,170 --> 00:42:23,508 藤吉郎は やっぱり 秀次を信じておらぬ。 その証拠じゃ。 460 00:42:23,508 --> 00:42:26,411 そのようなことは…。 461 00:42:26,411 --> 00:42:33,518 ただ 秀次殿が 拾君を大事に思うてくだされたらと➡ 462 00:42:33,518 --> 00:42:36,421 そのご一念で…。 463 00:42:36,421 --> 00:42:45,129 はあ~ ねね様。 私は 藤吉郎が怖い。 464 00:42:45,129 --> 00:42:50,068 子に迷うと 親は何も見えぬようになる。 465 00:42:50,068 --> 00:42:54,372 天下人の藤吉郎とて ただの親ばかじゃ。 466 00:42:56,207 --> 00:43:03,014 のう ねね様。 秀次に 二心はありはせぬ。 467 00:43:03,014 --> 00:43:07,819 ねね様だけは 秀次を信じてやってくだされ。 468 00:43:07,819 --> 00:43:13,491 ねね様が 藤吉郎にとりなしてくだされたら…。 469 00:43:13,491 --> 00:43:25,102 こうなってしもうては たとえ 姉 弟とて 何の力もありはせぬわ。 470 00:43:25,102 --> 00:43:30,842 はい。 私にできる限りのことは…。 471 00:43:30,842 --> 00:43:33,311 <そう答えながら ねねも➡ 472 00:43:33,311 --> 00:43:38,149 自分にはどうしようもない恐ろしいことが 起きるのではないかという不安で➡ 473 00:43:38,149 --> 00:43:41,152 胸が塞がれていた>