1 00:00:01,935 --> 00:00:03,871 (求次郎 作左ヱ門)やあっ! 2 00:00:03,871 --> 00:00:06,273 (作左ヱ門)よ~し そうだ 求次郎。 3 00:00:06,273 --> 00:00:10,143 ではな もう一度 おじじ様にかかってきてごらん。 4 00:00:10,143 --> 00:00:12,145 (お花)若様 しっかり! 5 00:00:12,145 --> 00:00:14,147 (求次郎)参ります。 6 00:00:14,147 --> 00:00:17,985 はっ! ちょ ちょ… ちょっと…。 7 00:00:17,985 --> 00:00:20,120 たあっ! はくしょん! 8 00:00:20,120 --> 00:00:23,624 (雪絵)求次郎! (妙)早く こちらへいらっしゃい。 9 00:00:23,624 --> 00:00:26,526 おいおい くしゃみをしたのは わしだぞ。 10 00:00:26,526 --> 00:00:29,296 どうして わしのことを案じてくれないんだ。 11 00:00:29,296 --> 00:00:32,633 父上 まさか はやり風邪ではございますまいね。 12 00:00:32,633 --> 00:00:35,302 (妙)この冬は たちの悪い はやり風邪が➡ 13 00:00:35,302 --> 00:00:37,638 大変な勢いなんですって。 14 00:00:37,638 --> 00:00:40,440 求次郎にうつったら大ごとだわ。 15 00:00:40,440 --> 00:00:46,813 <はやり風邪とは 今でいう インフルエンザのことである> 16 00:00:46,813 --> 00:00:49,650 人のことを案じている場合ですか? 17 00:00:49,650 --> 00:00:52,986 噂では むしろ お年寄りが危ないとか。 18 00:00:52,986 --> 00:00:59,326 私より おじじ様や おばあ様が 気を付けた方がよいと思います。 19 00:00:59,326 --> 00:01:04,765 フッ この子ったら まるで 亡くなった おとうさんみたい。 20 00:01:04,765 --> 00:01:06,700 (求次郎)あっ 父上! 21 00:01:06,700 --> 00:01:09,636 ほう これは勇ましいな。 22 00:01:09,636 --> 00:01:13,473 求次郎 もう一太刀 おじじ様をやっつけているところを➡ 23 00:01:13,473 --> 00:01:16,777 お父上に見せてさしあげなさい。 はい! 24 00:01:16,777 --> 00:01:20,480 よし。 では かかってまいれ。 25 00:01:22,115 --> 00:01:24,051 お~い 付木がねえぞ。 26 00:01:24,051 --> 00:01:25,986 これじゃ 種火が移せねえや。 27 00:01:25,986 --> 00:01:28,622 あ~ いっけない。 28 00:01:28,622 --> 00:01:32,426 こんにちは。 (お秀)あっ おけいちゃん いいとこへ! 29 00:01:32,426 --> 00:01:34,494 やれやれ これで やっと仕込みができらあ。 30 00:01:34,494 --> 00:01:37,264 すみません もっと早く来るつもりだったんですけど。 31 00:01:37,264 --> 00:01:39,266 ありがとよ。 32 00:01:44,171 --> 00:01:47,174 おっ母さん 具合よくねえのかい? 33 00:01:50,811 --> 00:01:56,817 おけいちゃんも顔色がよくないけど もしかして 寝てないんじゃないの? 34 00:01:58,452 --> 00:02:00,921 また一晩中 おっ母さんの看病を。 35 00:02:00,921 --> 00:02:03,256 私は なんともありません。 36 00:02:03,256 --> 00:02:06,259 今日は 商売に精を出して➡ 37 00:02:06,259 --> 00:02:12,399 何か おっ母さんに滋養のあるものでも…。 38 00:02:12,399 --> 00:02:15,769 お… おけいちゃん! おけいちゃん! おい おい おけいちゃん!➡ 39 00:02:15,769 --> 00:02:18,672 大丈夫か おい しっかりしろ! おけいちゃん しっかり おけいちゃん! 40 00:02:18,672 --> 00:02:21,108 はい どいて。 どいて どいて。 よいしょ。 41 00:02:21,108 --> 00:02:25,812 あ~ どいて どいて。 はあ はあ… どいて どいて。 42 00:02:30,617 --> 00:02:32,953 なんとかしてやりたいのは やまやまだが➡ 43 00:02:32,953 --> 00:02:35,989 はやり風邪の患者が多くて 部屋の空きがないのだよ。 44 00:02:35,989 --> 00:02:39,292 だったら せめて お薬だけでも。 あ~ そういうわけにはいかんのだ。 45 00:02:39,292 --> 00:02:42,963 お願いいたしやす この子を診てやっておくんなせえ。 46 00:02:42,963 --> 00:02:47,834 見てのとおりの行列だ。 先生方も朝から晩まで手いっぱいでな。 47 00:02:47,834 --> 00:02:49,836 じゃあ こちらで待たせてもらいやす。 48 00:02:49,836 --> 00:02:52,639 おけいちゃん 辛抱できるかい? 49 00:02:54,441 --> 00:02:57,144 (吉村)待ったところで手当てはできん。➡ 50 00:02:57,144 --> 00:03:00,380 はっきり そう言ってやったら どうです 南の方々。 51 00:03:00,380 --> 00:03:02,315 北の…。 52 00:03:02,315 --> 00:03:06,586 <養生所を運営 監督する 養生所見廻りは➡ 53 00:03:06,586 --> 00:03:09,389 はやり風邪による緊急事態とあって➡ 54 00:03:09,389 --> 00:03:15,595 両町奉行所が そろって養生所に詰め 対応に当たっていた> 55 00:03:15,595 --> 00:03:17,931 (遠藤)これだけの病人の数だ。 56 00:03:17,931 --> 00:03:20,967 下手な望みは持たせぬのが かえって慈悲だろう。 57 00:03:20,967 --> 00:03:23,270 ひどい熱なんですよ。 58 00:03:23,270 --> 00:03:25,772 はやり風邪を こじらせてるかもしれねえんで。 59 00:03:25,772 --> 00:03:28,408 名主からの判を もらってきているのだろうな? 60 00:03:28,408 --> 00:03:30,777 えっ? 61 00:03:30,777 --> 00:03:34,948 判がなければ 療治はできん。 ほかの医者へ当たることだ。 62 00:03:34,948 --> 00:03:37,784 おあしを払って ほかの医者へ行くゆとりがありゃあ➡ 63 00:03:37,784 --> 00:03:39,720 みんな とっくに行ってますよ! 64 00:03:39,720 --> 00:03:42,656 養生所は 貧乏人を助けてくれるんじゃ ねえんですかい! 65 00:03:42,656 --> 00:03:45,292 (町人たち)そうだ そうだ! (新三郎)やめないか。 66 00:03:45,292 --> 00:03:48,962 何の騒ぎだ! (三次)結城先生。 67 00:03:48,962 --> 00:03:51,865 症状の重い者から順に診る。 68 00:03:51,865 --> 00:03:53,834 1人ずつ 容体を聞き取ってくれ。 69 00:03:53,834 --> 00:03:56,136 はい。 (吉村)待たれよ。 70 00:03:56,136 --> 00:03:59,639 患者の聞き取りは 我ら養生所見廻りの務めぞ。 71 00:03:59,639 --> 00:04:02,342 素人に患者の何が分かる。 72 00:04:04,244 --> 00:04:06,246 三次 この娘さんは? 73 00:04:06,246 --> 00:04:09,750 うちに出入りしている 付木売りの娘です。 74 00:04:09,750 --> 00:04:12,252 いかんな。 中へ運んでくれ。 75 00:04:12,252 --> 00:04:14,187 おいねさん 手を貸して。 (おいね)はい。 76 00:04:14,187 --> 00:04:16,757 ゆっくりな ゆっくりな おけいちゃん。 77 00:04:16,757 --> 00:04:18,692 しっかり…。 その部屋に。 78 00:04:18,692 --> 00:04:20,894 (おいね)はい。 (三次)ありがとうございます。 79 00:04:22,562 --> 00:05:36,269 ♬~ 80 00:05:39,940 --> 00:05:41,875 三次 入っていいぞ。 81 00:05:41,875 --> 00:05:44,611 (三次)へい。 82 00:05:44,611 --> 00:05:48,114 結城先生 どうですか。 やっぱり はやり風邪か何かで…。 83 00:05:48,114 --> 00:05:50,617 労咳だ。 84 00:05:50,617 --> 00:05:53,119 (三次)労咳? 85 00:05:53,119 --> 00:05:57,290 (おいね)よっぽど 無理をしたんじゃありませんか。 86 00:05:57,290 --> 00:06:00,126 とにかく 体を休めるのが一番だ。 87 00:06:00,126 --> 00:06:02,562 おいねさん すぐに入所の手続きを。 はい。 88 00:06:02,562 --> 00:06:04,497 お… おい…。 89 00:06:04,497 --> 00:06:07,434 いいんです 私のことは構わないでください。 90 00:06:07,434 --> 00:06:09,903 構わないでって そうはいかねえや。 91 00:06:09,903 --> 00:06:14,241 何か 子細がありそうだな。 92 00:06:14,241 --> 00:06:19,112 おっ母さんのことだ。 そうなんだろう? 93 00:06:19,112 --> 00:06:25,585 先生 おけいちゃんには 長患いで 寝たっきりのおっ母さんがいるんですよ。 94 00:06:25,585 --> 00:06:29,456 待ってるんです おっ母さんが。 95 00:06:29,456 --> 00:06:36,229 一人っきりで 長屋でふせって 心細い思いをしてるんです。 96 00:06:36,229 --> 00:06:39,933 早く帰って 安心させてあげなけりゃ。 97 00:06:39,933 --> 00:06:42,636 (三次)おい おけいちゃん! ちょっと…。 98 00:06:44,771 --> 00:06:49,409 結城新三郎が 身内の患者をひいきしていると? 99 00:06:49,409 --> 00:06:52,279 これだけ 患者があふれ返っているというのに➡ 100 00:06:52,279 --> 00:06:55,615 他を押しのけ 知り合いを 入所させようというのですから。 101 00:06:55,615 --> 00:06:59,119 そもそも あの男は 南の奉行が➡ 102 00:06:59,119 --> 00:07:02,889 どこの馬の骨とも分からぬ 町医者を連れてきて➡ 103 00:07:02,889 --> 00:07:05,725 養生所を任せたのだったな。 104 00:07:05,725 --> 00:07:07,661 この小石川養生所は➡ 105 00:07:07,661 --> 00:07:11,598 上様より 大岡様へのお声がかりにて 創設されたもの。 106 00:07:11,598 --> 00:07:16,369 それがため いつまでも 南の連中が幅を利かせ 大きな顔を。 107 00:07:16,369 --> 00:07:19,572 さような偏りは 是非にも改めていただかねば。 108 00:07:19,572 --> 00:07:25,745 水島様 何とぞ 伊生様へ ご進言をお願いいたします。 109 00:07:25,745 --> 00:07:27,747 うむ。 110 00:07:33,920 --> 00:07:36,756 何かの間違いではありませんか。 111 00:07:36,756 --> 00:07:38,692 結城新三郎に限って➡ 112 00:07:38,692 --> 00:07:43,396 養生所の秩序を乱すような振る舞いを するとは思えません。 113 00:07:43,396 --> 00:07:46,766 そういう大岡殿の信頼をこそ かさに着て➡ 114 00:07:46,766 --> 00:07:50,603 養生所を牛耳ろうとしているのでは ありませんかな。 115 00:07:50,603 --> 00:07:57,377 恐らくは 人手が足りぬゆえに 混乱が起こっているのでしょう。 116 00:07:57,377 --> 00:08:01,247 開設以来 患者の数は増加の一途。 117 00:08:01,247 --> 00:08:05,885 そこへ はやり風邪が 猛威を振るって蔓延すれば➡ 118 00:08:05,885 --> 00:08:08,788 混乱を来すは必定。 119 00:08:08,788 --> 00:08:11,758 さすれば それがし 結城とも話し合い➡ 120 00:08:11,758 --> 00:08:17,897 かねてより 上様に 養生所の拡幅を願い出ているのです。 121 00:08:17,897 --> 00:08:21,234 ほう それは初耳。 122 00:08:21,234 --> 00:08:24,738 お考えは結構ですが ご老中に諮らず➡ 123 00:08:24,738 --> 00:08:30,910 じかに上様に言上されるというのは いかがでございましょうな 大岡殿。 124 00:08:30,910 --> 00:08:35,782 折々に ご相談申し上げていたことですので。 125 00:08:35,782 --> 00:08:40,086 結城新三郎は やりたい放題に我を通し➡ 126 00:08:40,086 --> 00:08:44,391 大岡殿のご配下の南の者たちは 見て見ぬふり。 127 00:08:44,391 --> 00:08:47,594 みどもの配下が苦言を呈しても 聞く耳を持たず➡ 128 00:08:47,594 --> 00:08:52,899 まるで よそ者扱いだとか。 129 00:08:55,468 --> 00:09:02,475 どうやら 悶着のもとは ご貴殿にもありそうだ。 130 00:09:06,079 --> 00:09:17,557 ♬~ 131 00:09:17,557 --> 00:09:19,893 おっ母さん。 132 00:09:19,893 --> 00:09:39,746 ♬~ 133 00:09:39,746 --> 00:09:55,962 (患者たちのせきこみ) 134 00:09:59,766 --> 00:10:01,801 よし。 135 00:10:01,801 --> 00:10:04,604 先生 お奉行様が。 136 00:10:04,604 --> 00:10:07,273 悪いが 相手をしてる いとまはない。 137 00:10:07,273 --> 00:10:09,776 おいねさん 後は頼むぞ。 はい。 138 00:10:16,616 --> 00:10:19,953 説教を聞く気はないと言っているんです。 139 00:10:19,953 --> 00:10:22,856 身に覚えはあるというわけか。 140 00:10:22,856 --> 00:10:25,825 どの患者を先に診るかは 医者が決める。 141 00:10:25,825 --> 00:10:29,295 そこを見誤れば はんこが どうこう言っているうちに➡ 142 00:10:29,295 --> 00:10:31,798 おだぶつになる患者だって 出てくるでしょう。 143 00:10:31,798 --> 00:10:33,733 お前の言い分は もっともだ。 144 00:10:33,733 --> 00:10:37,437 しかし これだけ患者が押し寄せるとなれば➡ 145 00:10:37,437 --> 00:10:40,974 医者のできることには限りがある。 146 00:10:40,974 --> 00:10:43,443 むやみに線引きしろというのではない。 147 00:10:43,443 --> 00:10:45,378 養生所見廻りの連中には➡ 148 00:10:45,378 --> 00:10:51,184 容体の重さ 軽さを よくよく見定めるよう伝えておこう。 149 00:10:51,184 --> 00:10:53,820 南北の両奉行所が➡ 150 00:10:53,820 --> 00:10:58,324 手を携え 一つになって 事に当たるよう 私から くれぐれも…。 151 00:10:58,324 --> 00:11:00,760 北だの南だの 知ったこっちゃない。 152 00:11:00,760 --> 00:11:05,265 俺は ただ 一人でも多くの患者を救いたいだけだ。 153 00:11:05,265 --> 00:11:09,269 新三郎 そう気負い込むな。 154 00:11:09,269 --> 00:11:13,940 無理をして お前が倒れでもしたら 目も当てられんぞ。 155 00:11:13,940 --> 00:11:18,111 だったら 上様に頼んで さっさと 人を増やしてください。 156 00:11:18,111 --> 00:11:21,147 そういうことは 一朝一夕にはいかんのだ。 157 00:11:21,147 --> 00:11:25,618 所詮 忠相殿も お役人だ。 何? 158 00:11:25,618 --> 00:11:27,954 病になったり けがをしたり➡ 159 00:11:27,954 --> 00:11:32,425 銭金に困って療治が受けられず 命を落とす者が多すぎる。 160 00:11:32,425 --> 00:11:35,328 そういう者たちを救うことこそ 公儀の務め。 161 00:11:35,328 --> 00:11:40,166 そう言って 養生所を作るよう 上様を口説いたのでしょう? 162 00:11:40,166 --> 00:11:44,037 民 健やかならずして 天下の安寧はない。 163 00:11:44,037 --> 00:11:46,639 要は 「十把一からげ」。 164 00:11:46,639 --> 00:11:53,146 忠相殿が見ているのは 一人一人の顔じゃないのさ。 165 00:11:53,146 --> 00:11:55,648 高い薬代が払えなくたって➡ 166 00:11:55,648 --> 00:11:58,318 ここへ来れば 上様のお慈悲で助けてもらえる。 167 00:11:58,318 --> 00:12:03,590 そう信じて やって来る者を 誰が追い返すことができると思う。 168 00:12:03,590 --> 00:12:05,525 先生 お願いします。 169 00:12:05,525 --> 00:12:08,761 普請場で 大工さんが屋根から落ちたって。 170 00:12:08,761 --> 00:12:11,064 分かった すぐ行く。 171 00:12:20,773 --> 00:12:22,709 (筧)いや~ 参った 参った。 172 00:12:22,709 --> 00:12:25,612 姉貴んとこの子が そろって 熱出しちまって➡ 173 00:12:25,612 --> 00:12:28,514 すわ はやり風邪かと。 (堅太郎)えっ はやり風邪? 174 00:12:28,514 --> 00:12:31,284 (橋田) こ… こりゃ いかん いかん いかん。 175 00:12:31,284 --> 00:12:33,620 何ですか 橋田さんまで大げさな。 176 00:12:33,620 --> 00:12:35,955 一晩で熱は下がりました。 177 00:12:35,955 --> 00:12:40,426 俺にも うつってねえし どうってことない普通の風邪だったよ。 178 00:12:40,426 --> 00:12:43,796 何だ… あ~ よかった。 179 00:12:43,796 --> 00:12:47,967 全く いつになったら 下火になるんでしょうね はやり風邪は。 180 00:12:47,967 --> 00:12:50,637 まだ しばらく かかるだろうな。 181 00:12:50,637 --> 00:12:53,139 養生所は 相変わらずのごった返しだって? 182 00:12:53,139 --> 00:12:56,643 はい。 養生所見廻りの連中が ぶつくさ言ってました。 183 00:12:56,643 --> 00:12:58,578 この くそ忙しいのに➡ 184 00:12:58,578 --> 00:13:00,513 やたらと北のやつらが 張り合ってくるもんだから➡ 185 00:13:00,513 --> 00:13:02,448 やりにくくってしょうがないって。 186 00:13:02,448 --> 00:13:05,451 あ~ うちのお奉行に 負けたくねえもんだから➡ 187 00:13:05,451 --> 00:13:08,254 また 依怙地になってるんだろう 北の奉行が。 188 00:13:08,254 --> 00:13:11,591 結城先生 かっかしてるでしょうね。 189 00:13:11,591 --> 00:13:15,461 あの人 榊原先生と違って 気が短いから。 190 00:13:15,461 --> 00:13:19,098 違いねえ。 (笑い声) 191 00:13:19,098 --> 00:13:22,001 新三郎の言うとおりだ。 192 00:13:22,001 --> 00:13:24,404 私には あいつと違って➡ 193 00:13:24,404 --> 00:13:29,108 江戸の民 一人一人の顔は 見えていなかったのかもしれん。 194 00:13:29,108 --> 00:13:31,778 さようなことはございません。 195 00:13:31,778 --> 00:13:36,416 若は 立派に 町の者たちと 向き合っておられます。 196 00:13:36,416 --> 00:13:39,318 もう 若ではないというのに。 197 00:13:39,318 --> 00:13:41,954 うっ… それがしにとっては➡ 198 00:13:41,954 --> 00:13:45,792 いつまでも 若は若でございます。 199 00:13:45,792 --> 00:13:48,294 (お花)若様~! 200 00:13:48,294 --> 00:13:52,298 はあ はあ… あ~ もう 若様。 201 00:13:52,298 --> 00:13:57,637 困った若様ね。 油断も隙もあったもんじゃないわ。 202 00:13:57,637 --> 00:14:01,240 (勘太)お花ちゃん。 あら 勘太さん。 203 00:14:01,240 --> 00:14:04,143 旦那方だったら 向こうにいるはずだけど。 204 00:14:04,143 --> 00:14:06,112 いや そうじゃなくて➡ 205 00:14:06,112 --> 00:14:08,915 うまそうな団子があったから お花ちゃんにと思って。 206 00:14:08,915 --> 00:14:12,585 えっ あたしに? うん。 207 00:14:12,585 --> 00:14:14,520 お団子で釣って➡ 208 00:14:14,520 --> 00:14:17,757 やっかいごとでも持ち込もう っていうんじゃないでしょうね。 209 00:14:17,757 --> 00:14:21,260 違うよ おいらは ただ お花ちゃんに…。 210 00:14:23,262 --> 00:14:26,165 (小声で)しっかりしねえな。 211 00:14:26,165 --> 00:14:29,602 若様 何か言いました? 212 00:14:29,602 --> 00:14:31,537 ちぇっ もういいや。 213 00:14:31,537 --> 00:14:34,240 あっ お団子は? 214 00:14:40,246 --> 00:14:43,616 (せきこみ) 215 00:14:43,616 --> 00:14:47,487 おけい。 216 00:14:47,487 --> 00:14:50,389 また せきが…。 217 00:14:50,389 --> 00:14:55,595 何でもないのよ 心配しないで おっ母さん。 218 00:14:57,630 --> 00:15:03,236 どこか… どこか 悪いんじゃないのかい? 219 00:15:03,236 --> 00:15:05,238 ほんとに何でもないったら。 220 00:15:05,238 --> 00:15:09,909 余計なこと考えずに ゆっくり休んで。 221 00:15:09,909 --> 00:15:12,612 ⚟おけいちゃん 夜分にすまん。 222 00:15:14,247 --> 00:15:16,582 先生 どうして ここへ? 223 00:15:16,582 --> 00:15:19,619 ちょっと 容体が気になってな。 224 00:15:19,619 --> 00:15:23,456 先生 あたしのこと おっ母さんには…。 225 00:15:23,456 --> 00:15:25,925 分かってる。 226 00:15:25,925 --> 00:15:28,227 邪魔するよ。 227 00:15:30,263 --> 00:15:32,598 俺は 養生所の医者だ。 228 00:15:32,598 --> 00:15:36,269 ちょいと 脈を見せてもらうよ。 229 00:15:36,269 --> 00:15:43,042 私は お上に助けていただくようなことは➡ 230 00:15:43,042 --> 00:15:47,613 何一つしておりません。 231 00:15:47,613 --> 00:15:52,485 どうか お捨て置きくださいまし。 232 00:15:52,485 --> 00:15:56,322 縁あって この世に生まれてきた者は 皆 お上の宝だ。 233 00:15:56,322 --> 00:15:58,324 遠慮はいらん。 234 00:16:00,126 --> 00:16:07,233 もう とっくに承知してるんです。 235 00:16:07,233 --> 00:16:16,742 すぐ そこまで お迎えが来てるってこと。➡ 236 00:16:16,742 --> 00:16:19,245 どうか 先生➡ 237 00:16:19,245 --> 00:16:26,385 私より この子のことを…。 238 00:16:26,385 --> 00:16:33,159 先生 お願いします。 おっ母さんを助けてください。 239 00:16:33,159 --> 00:16:37,597 体の痛みで 毎日 苦しんでるんです。 240 00:16:37,597 --> 00:16:41,300 少しでも 楽にしてやってください。 241 00:16:45,771 --> 00:16:47,707 それは…。 242 00:16:47,707 --> 00:16:50,409 人参だ。 243 00:16:50,409 --> 00:16:52,478 人参…。 244 00:16:52,478 --> 00:16:55,114 こいつを湯冷ましに溶いてくれ。 245 00:16:55,114 --> 00:16:58,985 のめば 滞った血の流れがよくなって 体が健やかになる。 246 00:16:58,985 --> 00:17:00,987 さあ 起きよう。 247 00:17:14,901 --> 00:17:19,071 もったいない…。 248 00:17:19,071 --> 00:17:23,910 もったいない…。 249 00:17:23,910 --> 00:17:28,381 痛みがひどい時 のませなさい。 250 00:17:28,381 --> 00:17:31,183 また 様子を見に来る。 251 00:17:35,254 --> 00:17:37,390 ありがとうございます。 252 00:17:37,390 --> 00:17:41,193 ご恩は忘れません。 253 00:17:44,764 --> 00:17:52,638 ありがたい… ありがたいね。 254 00:17:52,638 --> 00:18:03,349 まるで 生き仏様のような お人だねえ。 255 00:18:08,354 --> 00:18:13,859 今度は なんとかして 若様がいねえところで お花ちゃんと…。 256 00:18:20,933 --> 00:18:25,571 養生所の先生だね。 何だ お前たちは。 257 00:18:25,571 --> 00:18:28,274 問答無用だ。 やっちまえ! 258 00:18:30,743 --> 00:18:32,678 (呼び子) 259 00:18:32,678 --> 00:18:35,915 (勘太)誰か! 誰か来てくれ! 260 00:18:35,915 --> 00:18:37,917 行くぞ! へい! 261 00:18:39,585 --> 00:18:42,254 (客たち)わ~! わっ わっ わっ…。➡ 262 00:18:42,254 --> 00:18:44,557 何だ? 何だ? 263 00:18:59,605 --> 00:19:01,607 先生! 264 00:19:03,476 --> 00:19:05,411 待ちやがれ! 265 00:19:05,411 --> 00:19:07,413 おい 勘太! へい! 266 00:19:11,217 --> 00:19:13,719 あ~ 畜生! 267 00:19:25,231 --> 00:19:27,233 しくじったか。 268 00:19:27,233 --> 00:19:29,735 相すいやせん。 269 00:19:29,735 --> 00:19:36,242 伊生様の お喜びになるお顔を 見損なったわ。 270 00:19:38,444 --> 00:19:41,914 うせろ! 271 00:19:41,914 --> 00:19:44,250 へい。 272 00:19:44,250 --> 00:19:49,755 なんぞ よき手はないものか…。 273 00:19:52,591 --> 00:19:57,763 あさり~! しじみ~!➡ 274 00:19:57,763 --> 00:20:03,469 あさり~! しじみ~! 275 00:20:06,472 --> 00:20:11,177 おっ母さん 気分はどう? 276 00:20:13,946 --> 00:20:17,616 おっ母さん? 277 00:20:17,616 --> 00:20:19,652 おっ母さん! 278 00:20:19,652 --> 00:20:23,422 おっ母さん! 279 00:20:23,422 --> 00:20:25,424 おっ母さん! 280 00:20:30,963 --> 00:20:33,999 見当はついてるんですか 先生を襲ったやつらの。 281 00:20:33,999 --> 00:20:36,635 さあな。 さあ…。 282 00:20:36,635 --> 00:20:41,307 お奉行も案じておられます。 子細を話してください。 283 00:20:41,307 --> 00:20:43,242 (三次)先生! 284 00:20:43,242 --> 00:20:45,644 お~ 三次じゃないか。 どうした。 285 00:20:45,644 --> 00:20:51,517 今朝方 おけいちゃんのおっ母さんが 息を引き取りやした。 286 00:20:51,517 --> 00:20:53,986 そうか。 287 00:20:53,986 --> 00:20:55,921 あっしも会ってきやしたが➡ 288 00:20:55,921 --> 00:21:02,261 まるで笑ってるみてえに 安らかな死に顔でした。 289 00:21:02,261 --> 00:21:04,597 娘は どうしてる? 290 00:21:04,597 --> 00:21:07,633 泣きじゃくってやしたがね➡ 291 00:21:07,633 --> 00:21:13,606 おっ母さんの優しい顔が せめてもの救いになったようで➡ 292 00:21:13,606 --> 00:21:16,408 先生に 礼を言っておりやした。 293 00:21:27,153 --> 00:21:29,155 おけいちゃん。 うんうん➡ 294 00:21:29,155 --> 00:21:33,926 孝行してもらって幸せだったよ おつねさんは。 ううっ…。 295 00:21:33,926 --> 00:21:37,296 どけ! 北町奉行所 養生所見廻りだ! 296 00:21:37,296 --> 00:21:39,965 どけどけ 中をあらためる! 297 00:21:39,965 --> 00:21:43,302 どけ!何するんです 仏様の前で! 298 00:21:43,302 --> 00:21:45,237 何だよ もう…。 299 00:21:45,237 --> 00:21:47,973 (遠藤)おい あったぞ。 300 00:21:47,973 --> 00:21:50,676 あっ それは…。 301 00:21:52,311 --> 00:21:54,980 (水島)結城新三郎。 302 00:21:54,980 --> 00:22:00,786 富坂町七軒店方の付木売り おつね毒殺のかどにて召し捕る! 303 00:22:00,786 --> 00:22:02,788 何だって? 304 00:22:02,788 --> 00:22:06,091 縄を打て ひっ捕らえよ! (吉村たち)はっ! 305 00:22:06,091 --> 00:22:09,595 伊生殿 お待ちあれ! 306 00:22:11,764 --> 00:22:17,570 何故 結城新三郎が 患者に毒を盛ったなどと。 307 00:22:17,570 --> 00:22:20,773 どうしても 納得がゆきません。 308 00:22:20,773 --> 00:22:24,476 ならば 子細をお聞かせいたしましょう。 309 00:22:28,514 --> 00:22:35,788 養生所見廻り方与力 水島弥左衛門にござります。 310 00:22:35,788 --> 00:22:39,291 (伊生)事の発端は 件の医者が➡ 311 00:22:39,291 --> 00:22:42,795 不正に人参を扱っていたとの 疑いであったな? 312 00:22:42,795 --> 00:22:45,631 はい。 人参と申せば➡ 313 00:22:45,631 --> 00:22:50,302 ありがたくも 上様が ごじきじきに栽培をお勧めになられた➡ 314 00:22:50,302 --> 00:22:52,638 朝鮮国伝来の妙薬。➡ 315 00:22:52,638 --> 00:22:55,975 その人参を 結城めは➡ 316 00:22:55,975 --> 00:23:01,580 定められた手はずを踏まずに 持ち出しているとの噂があり➡ 317 00:23:01,580 --> 00:23:06,919 調べによって 七軒店のおつねなる女に➡ 318 00:23:06,919 --> 00:23:10,389 無断で与えていたことが分かり申した。 319 00:23:10,389 --> 00:23:15,227 ところが それをのんだ おつねは急死いたし➡ 320 00:23:15,227 --> 00:23:18,264 証拠として取り戻した薬包を➡ 321 00:23:18,264 --> 00:23:23,936 公儀御用の医師 玄斎に 確かめさせましたところ➡ 322 00:23:23,936 --> 00:23:28,774 トリカブトの根からとった毒に相違なし との判が下り申した。 323 00:23:28,774 --> 00:23:30,709 トリカブト…。 324 00:23:30,709 --> 00:23:36,415 結城も 初めは ありえぬと申しておりましたが…。 325 00:23:36,415 --> 00:23:39,785 嘘だ! どうして 人参がトリカブトに。 326 00:23:39,785 --> 00:23:43,789 (玄斎)ならば ご自身で お試しなされ。 327 00:23:47,293 --> 00:23:50,296 うっ これは…。 328 00:23:56,635 --> 00:23:59,972 そんなバカな…。 329 00:23:59,972 --> 00:24:06,378 結城めのしたことは 姨捨山の伝えに等しき所業かと。 330 00:24:06,378 --> 00:24:08,314 姨捨山? 331 00:24:08,314 --> 00:24:16,121 患者の多さに うみ飽きて いらぬ命を奪ったということにござる。 332 00:24:16,121 --> 00:24:20,893 いらぬ命とは聞き捨てならぬ。 333 00:24:20,893 --> 00:24:24,396 先の見えた者に施す手間を惜しみ➡ 334 00:24:24,396 --> 00:24:28,934 命果つるを待たずに 死を与えたということか。 335 00:24:28,934 --> 00:24:35,607 はい。 恐らくは これまでにも余罪があるものと存じます。 336 00:24:35,607 --> 00:24:41,280 結城新三郎は 断じて そのような男ではない。 337 00:24:41,280 --> 00:24:47,953 新三郎は 掛けがえのない宝として 命と向き合っている。 338 00:24:47,953 --> 00:24:52,825 一人一人の命を 等しく尊び いとおしみ➡ 339 00:24:52,825 --> 00:24:58,597 己を捨てても守ろうとする 仁術一筋の男です。 340 00:24:58,597 --> 00:25:03,235 ここに確かな証しもござりまする。 341 00:25:03,235 --> 00:25:09,575 何か 裏があるとしか思えぬ。 342 00:25:09,575 --> 00:25:12,378 私も 結城に倣い➡ 343 00:25:12,378 --> 00:25:18,250 この身を捨ててでも 真実を明かす所存。 344 00:25:18,250 --> 00:25:21,253 御免つかまつる。 345 00:25:24,390 --> 00:25:27,292 とんだ負け惜しみを。 346 00:25:27,292 --> 00:25:30,929 なに ご案じなされまするな。 347 00:25:30,929 --> 00:25:37,269 かくなれば 養生所は 大岡様の手から離れ➡ 348 00:25:37,269 --> 00:25:40,172 伊生様の思うがままにござりまする。 349 00:25:40,172 --> 00:25:43,075 何? 伊生様は 遠からず➡ 350 00:25:43,075 --> 00:25:50,282 大目付 ご老中に ご出世なされるお方。 351 00:25:50,282 --> 00:25:57,623 それがし 身命を賭して お仕え申し上げたく存じまする。 352 00:25:57,623 --> 00:26:01,894 何か お困りのことあらば➡ 353 00:26:01,894 --> 00:26:07,900 何事も この水島に お申しつけくださいますように。 354 00:26:13,372 --> 00:26:15,441 こんな ふざけた話があってたまるか! 355 00:26:15,441 --> 00:26:20,746 むかっ腹立てたって らちが明かねえ。 どうやって 先生の身の潔白を証すかだ。 356 00:26:20,746 --> 00:26:24,383 証すったって 先生の身柄は 北に押さえられてるんですから。 357 00:26:24,383 --> 00:26:27,085 きっと死罪にされちゃいますよ! 358 00:26:27,085 --> 00:26:29,988 新三郎を襲った連中が気にかかる。 359 00:26:29,988 --> 00:26:33,392 辰三たちは 顔を見ているのだな? 360 00:26:33,392 --> 00:26:37,095 はい。 中でも 勘太が はっきり覚えてると言ってました。 361 00:26:37,095 --> 00:26:39,932 (橋田)まずは そこからでございますな。 362 00:26:39,932 --> 00:26:42,835 口より足を動かすのが先だ。 行くぞ。 363 00:26:42,835 --> 00:26:44,837 (喬之助 堅太郎)はい。 364 00:26:47,272 --> 00:26:49,208 いや しかし お奉行。 365 00:26:49,208 --> 00:26:55,614 北のご詮議を受けるとならば 後々覆すことは難しゅうございましょう。 366 00:26:55,614 --> 00:27:00,886 いざとなれば 力ずくでも 新三郎をこっちへ取り返す。 367 00:27:00,886 --> 00:27:02,888 力ずくで? 368 00:27:09,895 --> 00:27:12,231  心の声 何があった 新三郎。➡ 369 00:27:12,231 --> 00:27:16,235 一体 どこで 罠に はめられたのだ。 370 00:27:16,235 --> 00:27:37,923 ♬~ 371 00:27:37,923 --> 00:27:39,925 何者だ! 372 00:27:42,394 --> 00:27:44,696 お主…。 373 00:27:46,932 --> 00:27:51,803 (吉村)水島様 一大事にござりまする! 374 00:27:51,803 --> 00:27:56,108 (水島)これは 大岡様。 375 00:27:56,108 --> 00:27:59,778 結城新三郎の身柄を受け取りに参った。 376 00:27:59,778 --> 00:28:05,350 結城は 我らが捕らえし 咎人にござる。 377 00:28:05,350 --> 00:28:07,719 養生所見廻りが吟味すべきは➡ 378 00:28:07,719 --> 00:28:12,591 結城が 許しを得ずに 人参を持ち出したことに限るはず。 379 00:28:12,591 --> 00:28:16,361 殺しの詮議は 町方に任せていただこう。 380 00:28:16,361 --> 00:28:18,730 おつね毒殺については➡ 381 00:28:18,730 --> 00:28:22,367 お奉行 伊生様が 白洲にて裁かれます。 382 00:28:22,367 --> 00:28:26,905 せん越ながら 大岡様の出る幕はございません。 383 00:28:26,905 --> 00:28:30,242 どっこい 当月の月番は 我々 南でね。 384 00:28:30,242 --> 00:28:34,112 殺しの詮議は こっちがやるのが 筋ってもんでしょう。 385 00:28:34,112 --> 00:28:36,381 さては 南で引き取って➡ 386 00:28:36,381 --> 00:28:42,254 結城の罪を うやむやにしようという お心づもりでござりまするな? 387 00:28:42,254 --> 00:28:44,756 うやむやに? 388 00:28:44,756 --> 00:28:50,562 大岡様と かの者は 気心が知れた間柄。 389 00:28:50,562 --> 00:28:53,265 町奉行ともあろう お方が➡ 390 00:28:53,265 --> 00:28:57,269 身びいきをして 罪を見過ごすおつもりか! 391 00:28:57,269 --> 00:29:01,340 (伊生)控えよ 水島。 392 00:29:01,340 --> 00:29:03,542 伊生様。 393 00:29:08,113 --> 00:29:13,885 南が月番である以上 大岡殿のご言い分に理がある。 394 00:29:13,885 --> 00:29:17,723 結城新三郎の詮議は 南に お任せいたす。 395 00:29:17,723 --> 00:29:21,059 しかし それでは…。 不正のお疑いあらば➡ 396 00:29:21,059 --> 00:29:26,264 与力殿に 白洲のお立ち会いを願いましょう。 397 00:29:31,570 --> 00:29:38,076 (太鼓の音) 398 00:29:38,076 --> 00:29:44,249 南町奉行 大岡越前守様 ご出座~! 399 00:29:44,249 --> 00:29:49,121 (太鼓の音) 400 00:29:49,121 --> 00:29:54,259 これより 北町奉行所 養生所見廻り方与力➡ 401 00:29:54,259 --> 00:29:57,262 水島弥左衛門殿ご同席のもと➡ 402 00:29:57,262 --> 00:30:04,770 富坂町七軒店 付木売り つね毒殺の疑いについて詮議をいたす。 403 00:30:04,770 --> 00:30:08,573 一同の者 面を上げよ。 404 00:30:21,219 --> 00:30:27,959 つねが娘にて 同じく付木売りの けいであるな。 405 00:30:27,959 --> 00:30:29,895 はい。 406 00:30:29,895 --> 00:30:33,432 胸の病と聞いた。 つらくはないか。 407 00:30:33,432 --> 00:30:35,367 はい。 408 00:30:35,367 --> 00:30:38,270 調べによれば おつねは➡ 409 00:30:38,270 --> 00:30:43,642 この結城新三郎が与えた トリカブトによって毒死したとあるが。 410 00:30:43,642 --> 00:30:50,415 あたし 初めは そんなふうに思いませんでした。 411 00:30:50,415 --> 00:30:56,822 おっ母さん 先生が下すった人参を頂いて➡ 412 00:30:56,822 --> 00:31:01,093 涙まで流して喜んでいたんです。 413 00:31:01,093 --> 00:31:06,765 朝になったら もう 息をしていなかったんですけど。 414 00:31:06,765 --> 00:31:09,668 まるで笑ってるみたいで。 415 00:31:09,668 --> 00:31:16,875 そこへ 養生所見廻りが現れて 残っていた薬包を持ち帰ったのだな? 416 00:31:19,277 --> 00:31:24,116 そしたら 先生が お縄になって…。 417 00:31:24,116 --> 00:31:30,789 しかも おっ母さんに のませたのは 人参じゃなくて 毒だったって。➡ 418 00:31:30,789 --> 00:31:34,659 あたし 先生に言いました。 419 00:31:34,659 --> 00:31:38,363 おっ母さんを楽にしてやってほしいって。 420 00:31:41,800 --> 00:31:45,971 だからなんですか。 421 00:31:45,971 --> 00:31:51,443 だから 先生が毒を使って おっ母さんの命を…。 422 00:31:51,443 --> 00:31:56,815 結城新三郎 何か 申し開きがあるか。 423 00:31:56,815 --> 00:32:00,152 あれは 間違いなく 人参です。 424 00:32:00,152 --> 00:32:05,757 とはいえ おつねが死んだ責めが 私にあることに変わりはない。 425 00:32:05,757 --> 00:32:08,093 どういうことだ? 426 00:32:08,093 --> 00:32:11,596 容体の急変を読み切れなかった。 427 00:32:11,596 --> 00:32:16,268 医者として油断があったということです。 428 00:32:16,268 --> 00:32:20,939 おつねの死は 薬とは関わりがないと申すのだな? 429 00:32:20,939 --> 00:32:26,111 大岡様 おつねがのんだ薬包に 毒が入っていたことは➡ 430 00:32:26,111 --> 00:32:31,983 そこにおります玄斎が 既に見極めておりまする。 431 00:32:31,983 --> 00:32:34,786 医師 玄斎 さようか? 432 00:32:34,786 --> 00:32:40,659 はい。 結城殿も その目で ご覧になられましたな? 433 00:32:40,659 --> 00:32:46,498 されど それゆえ おつねがのんだ薬も 毒であったとは断言できまい。 434 00:32:46,498 --> 00:32:49,301 残っていたのが トリカブトだったのですから➡ 435 00:32:49,301 --> 00:32:53,305 当然ながら おつねがのんだのも また。 436 00:32:53,305 --> 00:32:56,441 ならば 試してみるまでだ。 437 00:32:56,441 --> 00:33:01,146 はっ? 試すとは 一体 どうやって? 438 00:33:06,918 --> 00:33:08,920 伊織。 439 00:33:10,755 --> 00:33:13,258 この御仁は? 440 00:33:15,260 --> 00:33:18,163 養生所医師 榊原伊織。➡ 441 00:33:18,163 --> 00:33:21,933 長崎での修業を終えて 江戸へ帰ってまいりました。 442 00:33:21,933 --> 00:33:27,272 すぐに養生所へ戻るつもりが 思いがけない騒ぎを耳にして➡ 443 00:33:27,272 --> 00:33:32,277 何か からくりがあるのではないかと 不審に思い…。 444 00:33:36,281 --> 00:33:40,986 それは あたしが お薬の包みで折った…。 445 00:33:50,629 --> 00:33:53,632 おっ母さんが よくなりますように。 446 00:33:56,134 --> 00:34:00,906 これこそが 正真正銘 おつねがのんだ薬の包み。 447 00:34:00,906 --> 00:34:03,375 中身が猛毒のトリカブトであれば➡ 448 00:34:03,375 --> 00:34:09,247 まだ 子ねずみ一匹 小魚一匹ぐらいは 殺せる粉粒が残っているでしょう。 449 00:34:09,247 --> 00:34:13,385 いくら 猛毒とはいえ そのような僅かな量では➡ 450 00:34:13,385 --> 00:34:18,924 子ねずみ 小魚の類いでも 確実に死ぬとは言えませぬ。 451 00:34:18,924 --> 00:34:21,760 では➡ 452 00:34:21,760 --> 00:34:24,663 これならば いかがですかな? 453 00:34:24,663 --> 00:34:27,098 そ… それは…。 454 00:34:27,098 --> 00:34:34,406 結城新三郎 その方が持参した袋には 合わせて 何服の薬が入っていた? 455 00:34:34,406 --> 00:34:36,942 あっ 3服です。 456 00:34:36,942 --> 00:34:40,278 おけい 間違いはないか? 457 00:34:40,278 --> 00:34:44,616 はい。 確かに3つ入ってました。 458 00:34:44,616 --> 00:34:47,285 そのうち 1服を おつねがのみ➡ 459 00:34:47,285 --> 00:34:52,791 翌日 1服が 養生所見廻りによって回収された。 460 00:34:52,791 --> 00:34:56,494 残りの1服が それよ。 461 00:34:58,597 --> 00:35:02,601 そのお薬は 一体どこに…。 462 00:35:02,601 --> 00:35:06,738 折り鶴の横に➡ 463 00:35:06,738 --> 00:35:09,941 この湯飲みが伏せてあった。 464 00:35:11,910 --> 00:35:17,582 その湯飲み いつも そなたが使っていたものではないか? 465 00:35:17,582 --> 00:35:20,485 はい あたしのです。 466 00:35:20,485 --> 00:35:25,457 おっ母さんは そなたが 胸を患っていることに気付いていた。 467 00:35:25,457 --> 00:35:31,930 それゆえ むしろ そなたにこそ 人参をのませたかったのだろう。 468 00:35:31,930 --> 00:36:02,927 ♬~ 469 00:36:02,927 --> 00:36:06,731 おっ母さん➡ 470 00:36:06,731 --> 00:36:13,905 最後の最後に あたしのために…。 471 00:36:13,905 --> 00:36:17,742 これが 毒であれば 新三郎の仕業。 472 00:36:17,742 --> 00:36:21,613 人参であれば 養生所見廻りによって回収された後➡ 473 00:36:21,613 --> 00:36:24,516 毒と入れ替えられたことになる。 474 00:36:24,516 --> 00:36:28,386 それを どうやって。 475 00:36:28,386 --> 00:36:30,455 榊原伊織。 476 00:36:30,455 --> 00:36:36,127 トリカブトとは 苦しまずに 眠るがごとく死ぬ薬であるか? 477 00:36:36,127 --> 00:36:40,398 死に至る量をのめば たちどころに 苦しみ もがき➡ 478 00:36:40,398 --> 00:36:43,768 胸かきむしって 間もなく 息を引き取ります。 479 00:36:43,768 --> 00:36:48,106 しかし おつねは 苦しむ姿を見せなかった。 480 00:36:48,106 --> 00:36:52,977 すなわち 薬は トリカブトではなかった。 481 00:36:52,977 --> 00:36:57,816 おつねは寿命を迎えて あの世へ旅立ったということに。 482 00:36:57,816 --> 00:37:02,554 そのような推測が 証左となるものか! 483 00:37:02,554 --> 00:37:06,257 では その薬をこれへ。 484 00:37:07,892 --> 00:37:11,729 これより 奉行が玩味いたす。 485 00:37:11,729 --> 00:37:15,233 お奉行様が これをおのみになるんですか? 486 00:37:16,901 --> 00:37:18,837 覚えておろう。 487 00:37:18,837 --> 00:37:24,042 奉行は この身を捨てても 真実を明かすと申したはずだ。 488 00:37:26,077 --> 00:37:28,880 忠相殿。 489 00:37:30,582 --> 00:38:03,581 ♬~ 490 00:38:13,725 --> 00:38:16,628 苦しむご様子はありませんな。 491 00:38:16,628 --> 00:38:24,903 うむ。 何やら 体が温まって 爽やかな心持ちだ。 492 00:38:24,903 --> 00:38:29,207 それが 人参の効能でございます。 493 00:38:31,676 --> 00:38:34,579 (湯飲みを置く音) 494 00:38:34,579 --> 00:38:38,917 これにて 結城新三郎の無実は裏付けられた。 495 00:38:38,917 --> 00:38:44,589 人参を毒と入れ替えたは 玄斎 その方であろう。 496 00:38:44,589 --> 00:38:46,925 えっ 私は ただ…。 497 00:38:46,925 --> 00:38:48,860 公儀御用の医師と申すは偽り。 498 00:38:48,860 --> 00:38:54,599 まことは 本所石原町の漢方医である旨 既に調べはついている。 499 00:38:54,599 --> 00:38:57,936 「手を貸せば 肝煎りとして養生所を任せる。➡ 500 00:38:57,936 --> 00:39:01,539 いずれ まことの御用医師の道も開ける」と 水島様が…。 501 00:39:01,539 --> 00:39:04,442 何を申すか! お許しください お許しください! 502 00:39:04,442 --> 00:39:08,213 このとおり 恐れ入りました~! 503 00:39:08,213 --> 00:39:10,148 水島弥左衛門。 504 00:39:10,148 --> 00:39:17,222 その方 伊生殿が この越前や結城新三郎を 邪魔に思っていると申したそうな。 505 00:39:17,222 --> 00:39:21,092 それゆえ まずは 養生所から結城を追い出し➡ 506 00:39:21,092 --> 00:39:27,565 融通の利く玄斎へと首をすげ替えて 伊生殿の歓心を買おうとした。 507 00:39:27,565 --> 00:39:30,368 誰が そのようなことを…。 508 00:39:30,368 --> 00:39:33,571 こいつです。 おい。 509 00:39:37,909 --> 00:39:42,780 水島様に頼まれて 結城新三郎を襲ったと 認めています。 510 00:39:42,780 --> 00:39:45,583 そうまでして取り入ったところで➡ 511 00:39:45,583 --> 00:39:52,757 さて どれほど伊生殿の覚えが めでたくなろうものか。 512 00:39:52,757 --> 00:39:58,263 そこもとの処遇については 改めて 評定所にて合議いたす。 513 00:39:58,263 --> 00:40:02,066 謹慎の上 沙汰を待つがよい。 514 00:40:04,602 --> 00:40:08,273 (橋田)それ! (同心たち)はっ! 515 00:40:08,273 --> 00:40:10,975 立て。 ほれほれ…。 516 00:40:21,419 --> 00:40:25,123 申し訳ありません 結城先生。 517 00:40:25,123 --> 00:40:28,793 たとえ いっときでも 先生を疑ってしまって。 518 00:40:28,793 --> 00:40:31,996 俺は 何もできなかった。 519 00:40:34,432 --> 00:40:37,135 お奉行様。 520 00:40:37,135 --> 00:40:39,804 養生所を頼る者は 確かに増えました。 521 00:40:39,804 --> 00:40:44,642 それでも まだ おつねのように 遠慮のある者も多いのです。 522 00:40:44,642 --> 00:40:51,983 どうか もっと多くの命を助けられるよう ご尽力をお願いします。 523 00:40:51,983 --> 00:40:57,288 お奉行様 私からも お願いいたします。 524 00:41:00,258 --> 00:41:02,260 2人がかりで言われたら➡ 525 00:41:02,260 --> 00:41:06,764 奉行としては 粉骨砕身するしかあるまい。 526 00:41:09,600 --> 00:41:13,304 本日の白洲 これまで。 527 00:41:20,611 --> 00:41:23,815 おいねさん ちょっと。 はい。 528 00:41:26,284 --> 00:41:28,486 ありがとうございます。 529 00:41:38,629 --> 00:41:44,302 こたびは いささか ご迷惑をおかけ申した。 530 00:41:44,302 --> 00:41:49,974 はやり風邪も ようやく 下火になったようで何よりですな。 531 00:41:49,974 --> 00:41:55,847 引き続き 北としても 養生所を怠りなく監督いたす所存。 532 00:41:55,847 --> 00:41:59,317 その方らも 南に負けぬよう 心して励め。 533 00:41:59,317 --> 00:42:01,319 (2人)はっ。 534 00:42:09,961 --> 00:42:12,864 やれやれ。 535 00:42:12,864 --> 00:42:15,600 勝ち負けではなかろうに。 536 00:42:15,600 --> 00:42:18,636 人は そうそう変わらんよ。 537 00:42:18,636 --> 00:42:25,276 <奉行として 医師として 心尽くして 人々の命を守る。➡ 538 00:42:25,276 --> 00:42:28,780 頼もしき2人の友と手を携え➡ 539 00:42:28,780 --> 00:42:35,286 人参の効用ならずとも 力みなぎる忠相であった> 540 00:42:35,286 --> 00:42:37,789 上様のご容体は? 541 00:42:37,789 --> 00:42:40,691 (伊生) 心の臓の病にて かなり お悪いとか。 542 00:42:40,691 --> 00:42:42,660 こ… この書きつけを。 543 00:42:42,660 --> 00:42:45,430 ご嫡男 家重様がおられる。 544 00:42:45,430 --> 00:42:50,635 ここは 弟君である宗武様に譲られるべき という声が ご重役からも。 545 00:42:50,635 --> 00:42:54,939 今 この時も 上様は 病と闘っておられます!