1 00:00:07,140 --> 00:00:10,777 (妙)ほら。 (一同)わあっ! 2 00:00:10,777 --> 00:00:13,413 桔梗屋の求肥餅って➡ 3 00:00:13,413 --> 00:00:16,283 今 江戸で一番売れてる お菓子なんですって。 4 00:00:16,283 --> 00:00:18,952 はい どうぞ。 あっ。 5 00:00:18,952 --> 00:00:23,290 これは 確かに うまそうだな~。 6 00:00:23,290 --> 00:00:25,292 お義母様が 半刻も並んで➡ 7 00:00:25,292 --> 00:00:27,294 買ってきてくださったそうですよ。 8 00:00:27,294 --> 00:00:30,163 それは ありがたい。 頂こうか 求次郎。 9 00:00:30,163 --> 00:00:32,165 はい! 10 00:00:33,934 --> 00:00:35,936 ん~! 11 00:00:39,306 --> 00:00:41,808 お花も 遠慮せずに お食べ。 12 00:00:41,808 --> 00:00:43,744 (お花)いいんですか? 13 00:00:43,744 --> 00:00:45,979 (雪絵)ウフフフ…。 14 00:00:45,979 --> 00:00:49,650 う~ん! 15 00:00:49,650 --> 00:00:52,553 この もちもちが たまりません! 16 00:00:52,553 --> 00:00:56,823 (雪絵)まあ。 (笑い声) 17 00:00:56,823 --> 00:01:01,595 (伊生)これより 裁きを申し渡す。➡ 18 00:01:01,595 --> 00:01:04,097 錺職 弥之吉。 (弥之吉)へい。 19 00:01:04,097 --> 00:01:08,769 今を去ること3年前 酒に酔った その方は➡ 20 00:01:08,769 --> 00:01:14,274 夜鳴きそば屋の主を さんざんに殴りつけ 売り上げを奪った。 21 00:01:14,274 --> 00:01:17,611 覚えてねえんです 何一つ。 22 00:01:17,611 --> 00:01:21,949 当のそば屋と居合わせた客が 間違いないと申しておる。 23 00:01:21,949 --> 00:01:24,851 あいつです! 間違えねえ! 24 00:01:24,851 --> 00:01:27,821 けど あっしは本当に…。 25 00:01:27,821 --> 00:01:32,593 三年もの長きにわたり 世を欺いて ようも逃げおった。 26 00:01:32,593 --> 00:01:37,497 その罪重きにより 直ちに 遠島を申しつける。 27 00:01:37,497 --> 00:01:41,635 いや あんまりです! お奉行様 どうか お情けを! 28 00:01:41,635 --> 00:01:43,570 引っ立てい! (役人たち)はっ! 29 00:01:43,570 --> 00:01:45,505 お奉行様… ああっ! 30 00:01:45,505 --> 00:01:49,977 うわっ わっ… あっ お奉行様~! 31 00:01:49,977 --> 00:01:55,849 そうか やはり 伊生殿は 遠島を申し渡されたか。 32 00:01:55,849 --> 00:01:59,686 若が案じられたとおりでございました。 33 00:01:59,686 --> 00:02:02,389 あの一件 本人は おろか➡ 34 00:02:02,389 --> 00:02:07,227 襲われた そば屋も 客も どこか言い分が あやふやだったと聞いた。 35 00:02:07,227 --> 00:02:09,162 どうでしたかね? 36 00:02:09,162 --> 00:02:15,602 <当時の犯罪捜査は 事実確認を人の記憶に頼っていたため➡ 37 00:02:15,602 --> 00:02:18,939 時として 冤罪を生むこともあった。➡ 38 00:02:18,939 --> 00:02:22,776 罰せられるべきか 許されるべきか。➡ 39 00:02:22,776 --> 00:02:29,116 忠相は その基準の曖昧さを憂えていたのである> 40 00:02:29,116 --> 00:02:31,618 (伊生)では 大岡殿は➡ 41 00:02:31,618 --> 00:02:35,489 みどもの裁きに不備があったと 申されるのですか? 42 00:02:35,489 --> 00:02:38,792 そば屋が襲われたという 3年前の一件につき➡ 43 00:02:38,792 --> 00:02:45,132 疑わしきをもって罪ありと断ずるのは いささか 早計ではないかと思ったまで。 44 00:02:45,132 --> 00:02:49,803 南は南 北には北のやり方がござる。 45 00:02:49,803 --> 00:02:51,738 それでは 公平を欠き➡ 46 00:02:51,738 --> 00:02:55,142 民の不安をあおることにも なりかねません。 47 00:02:55,142 --> 00:02:59,312 殊に 長き年月を経て 裁きにかける場合には➡ 48 00:02:59,312 --> 00:03:01,915 慎重の上にも慎重を期してかからねば。 49 00:03:01,915 --> 00:03:04,751 (扇子を閉じる音) ふう…。 50 00:03:04,751 --> 00:03:10,257 罪を犯しながら 知らぬ存ぜぬを通そうとするは 人の常。 51 00:03:10,257 --> 00:03:13,093 町の者たちは そなたの白洲を➡ 52 00:03:13,093 --> 00:03:17,964 人情裁きなどと申して もてはやしておるそうじゃな。 53 00:03:17,964 --> 00:03:21,401 だが わしから見れば この下野こそ➡ 54 00:03:21,401 --> 00:03:27,107 甘んじて憎まれ役を請け合うて よう務めておると思うがの。 55 00:03:27,107 --> 00:03:29,776 恐れ入ります。 56 00:03:29,776 --> 00:03:36,950 越前 衆望に溺れて あまり増長するでないぞ。 57 00:03:36,950 --> 00:03:38,952 はっ。 58 00:03:42,622 --> 00:03:45,325 人払いを。 (近習たち)はっ。 59 00:03:47,294 --> 00:03:49,296 聞いたぞ 忠相。 60 00:03:49,296 --> 00:03:54,801 左近が 目を三角につり上げて お主を あしざまに言うておった。 61 00:03:54,801 --> 00:03:57,304 さようでしたか。 62 00:03:57,304 --> 00:04:01,174 されど あのおやじの言い分にも もっともなところはある。 63 00:04:01,174 --> 00:04:06,913 犯した罪が明らかならば もちろん 厳しく裁くべきでしょう。 64 00:04:06,913 --> 00:04:10,584 しかし…。 焦るな 忠相。 65 00:04:10,584 --> 00:04:15,455 気持ちは分かるが こたびのことは さすがに勇み足じゃ。 66 00:04:15,455 --> 00:04:17,457 勇み足? 67 00:04:17,457 --> 00:04:20,093 器用にやれとは言わん。 68 00:04:20,093 --> 00:04:22,395 だが 持論を通したくば➡ 69 00:04:22,395 --> 00:04:26,600 それなりの手はずや思案は 必要だということじゃ。 70 00:04:29,169 --> 00:05:37,871 ♬~ 71 00:05:37,871 --> 00:05:42,576 ♬~ 72 00:05:45,278 --> 00:05:48,181 (子吉)う~ さぶっ。 やっぱり 夜は 冷えやすね。 73 00:05:48,181 --> 00:05:50,784 (辰三)何だ これしき いい若え者が。 74 00:05:50,784 --> 00:05:52,819 ちょっと 温まっていきやせんか。 75 00:05:52,819 --> 00:05:56,122 これか。 そうするか。 76 00:05:56,122 --> 00:05:58,959 行きやしょう。 ⚟(おたき)やめてください! 放して! 77 00:05:58,959 --> 00:06:01,361 あっちだ! へい。 78 00:06:01,361 --> 00:06:03,897 やめて 放してください お願いします。 (辰三)おい てめえ 何してやがる! 79 00:06:03,897 --> 00:06:05,832 ちっ! (子吉)おい! 80 00:06:05,832 --> 00:06:07,767 (子吉 辰三)あっ…。 81 00:06:07,767 --> 00:06:09,769 待ちやがれ! いいんです 何でもないんです! 82 00:06:09,769 --> 00:06:12,606 えっ? 何でもねえって… あれ? 83 00:06:12,606 --> 00:06:14,608 桔梗屋の女将さんじゃありやせんか。 84 00:06:14,608 --> 00:06:16,610 親分さん。 85 00:06:16,610 --> 00:06:19,446 今の野郎に 突き飛ばされたんじゃねえんですか? 86 00:06:19,446 --> 00:06:24,751 使いの帰りが遅くなって 急いでいたら ぶつかってしまって。 87 00:06:24,751 --> 00:06:27,754 けど 何だって こんな時分に一人っきりで。 88 00:06:31,091 --> 00:06:33,126 とにかく 店まで送りやしょう。 89 00:06:33,126 --> 00:06:35,262 (子吉)あっ 大丈夫ですか けがはありやせんか。 90 00:06:35,262 --> 00:06:38,098 ありがとうございます。 91 00:06:38,098 --> 00:06:41,134 (勘太)あっ ちょっと ご… ごめんよ ごめん ごめん ごめん ごめんよ。 92 00:06:41,134 --> 00:06:43,603 うわ~ 並んでるな~。 93 00:06:43,603 --> 00:06:47,774 お待たせしました。 はい どうぞ。 94 00:06:47,774 --> 00:06:49,709  回想 (お花)あたしの好物?➡ 95 00:06:49,709 --> 00:06:52,412 そりゃ 桔梗屋の求肥餅よ。 96 00:06:52,412 --> 00:06:58,218 こないだ 初めて頂いたら もう ほっぺたが落ちそうで! 97 00:06:58,218 --> 00:07:00,153 ヘヘヘ。 98 00:07:00,153 --> 00:07:04,024 お花ちゃんのためだ。 よし! 99 00:07:04,024 --> 00:07:08,228 次の方 さあ どうぞ。(2人)わ~! どうぞ。 100 00:07:08,228 --> 00:07:11,731 すみません お待たせしてしまって。 101 00:07:11,731 --> 00:07:14,768 (茂兵衛)毎度ありがとう存じます。 102 00:07:14,768 --> 00:07:16,970 またのお越しを。 103 00:07:19,606 --> 00:07:21,908 あっ 次のお客さん。 104 00:07:21,908 --> 00:07:25,712 わわっ おい ちょいちょい 押すなって! おい 下がれと…。 105 00:07:30,917 --> 00:07:34,254 あれが亭主か。 106 00:07:34,254 --> 00:07:38,091 言ったでしょう お願いだから 店へは来ないでって。 107 00:07:38,091 --> 00:07:40,927 あんな しかつべらしいのに➡ 108 00:07:40,927 --> 00:07:44,597 おめえみてえな あばずれの亭主が 務まるのかい。 109 00:07:44,597 --> 00:07:48,768 これが精いっぱいです。 もう堪忍してください。 110 00:07:48,768 --> 00:07:52,939 けっ これっぱかしか。 111 00:07:52,939 --> 00:07:57,811 娘がいるんだってな。 いくつになった? 112 00:07:57,811 --> 00:08:00,347 金がなけりゃ 娘でもいい。 113 00:08:00,347 --> 00:08:03,550 俺が また おめえのように かわいがって育ててやらあ。 114 00:08:03,550 --> 00:08:05,485 やめて! 115 00:08:05,485 --> 00:08:08,421 俺が どういう男か分かってるはずだ。 116 00:08:08,421 --> 00:08:12,125 次は こんな はした金じゃ許されねえぜ。 117 00:08:16,730 --> 00:08:19,766 ほい ほい おい どけどけ 邪魔だ 邪魔だ 邪魔だ! 118 00:08:19,766 --> 00:08:22,235 (庄太郎)お~ 大丈夫かい。 119 00:08:22,235 --> 00:08:25,138 あいつは…。 (小僧)若旦那さん? 120 00:08:25,138 --> 00:08:27,374 きゃっ! (女性たち)あ~! 121 00:08:27,374 --> 00:08:31,077 間違いない 喜八の野郎だ! 122 00:08:31,077 --> 00:08:34,381 待ちやがれ! (小僧)若旦那さ~ん! 123 00:08:37,250 --> 00:08:39,552 どこ行きやがった! 124 00:08:49,262 --> 00:08:51,931 (おみつ)♬「およねんじょ よんじろべぇ」 125 00:08:51,931 --> 00:08:54,768 ♬「よんじろべぇのかかぁは」 126 00:08:54,768 --> 00:09:00,206 ♬「ゆんべ へやで あかごをうんで」 127 00:09:00,206 --> 00:09:03,109 ♬「あかいべべ きせて」 128 00:09:03,109 --> 00:09:07,113 ♬「およねんじょとおよ」 129 00:09:09,549 --> 00:09:11,551 あらら。 130 00:09:25,365 --> 00:09:28,735 明日から仕込みを増やすことにしたよ。 131 00:09:28,735 --> 00:09:31,571 ひっきりなしに お客さんに来てもらうのは➡ 132 00:09:31,571 --> 00:09:36,443 ありがたいことだ。 遅くまで ご苦労さまです。 133 00:09:36,443 --> 00:09:38,912 おみつは寝てしまったのか。 134 00:09:38,912 --> 00:09:43,082 お父っつぁんを待ってるって 一生懸命 おねむこらえてたんですけど。 135 00:09:43,082 --> 00:09:46,119 (茂兵衛)かわいい顔して。 136 00:09:46,119 --> 00:09:49,389 こんなに穏やかな毎日が過ごせるなんて➡ 137 00:09:49,389 --> 00:09:52,692 今でも 夢かと思うことがあるよ。 138 00:09:55,929 --> 00:09:59,265 (喜八)そんなもん 知るか! (庄太郎)待ちやがれ! 139 00:09:59,265 --> 00:10:01,201 放せ! 140 00:10:01,201 --> 00:10:04,938 ここで会ったが百年目だ。 私の金を返せ! 141 00:10:04,938 --> 00:10:09,109 バカ言うねえ。 あの金は てめえから くれてよこしたんじゃねえか。 142 00:10:09,109 --> 00:10:13,279 来い お奉行所へ突き出してやる! 何だと? 143 00:10:13,279 --> 00:10:15,215 うっ…。 144 00:10:15,215 --> 00:10:17,150 (刺す音) うっ! 145 00:10:17,150 --> 00:10:19,152 うわっ! 146 00:10:24,891 --> 00:10:30,296 胸を一突き。 そのあと 橋から落ちたらしいな。 147 00:10:30,296 --> 00:10:34,634 なりからすると 商家の若旦那ってとこでしょうか。 148 00:10:34,634 --> 00:10:36,636 ああ。 149 00:10:39,439 --> 00:10:42,976 旦那。 おう 辰 何か分かったか。 150 00:10:42,976 --> 00:10:45,645 日本橋小網町の紙問屋 伊勢屋の跡取り息子が➡ 151 00:10:45,645 --> 00:10:48,448 ゆんべから帰ってねえそうで。 うん? 152 00:10:51,818 --> 00:10:55,154 紙問屋 伊勢屋の若旦那か。 153 00:10:55,154 --> 00:10:58,658 庄太郎といって 年は28だそうです。 154 00:10:58,658 --> 00:11:01,561 して 下手人の見当は? 155 00:11:01,561 --> 00:11:04,931 それなんです。 お供をしてた小僧によると➡ 156 00:11:04,931 --> 00:11:07,967 庄太郎が いきなり 「喜八の野郎」と言って➡ 157 00:11:07,967 --> 00:11:10,803 通りすがりの男の後を 追っかけていったって。 158 00:11:10,803 --> 00:11:13,106 喜八? (筧)はい。 159 00:11:13,106 --> 00:11:19,312 小僧から その話を聞いた途端 伊勢屋の旦那の顔色が変わりましてね。 160 00:11:20,847 --> 00:11:28,121 実は 庄太郎は若い頃 悪い遊び仲間に唆されて➡ 161 00:11:28,121 --> 00:11:31,424 博打に手を染めていたことが ございまして。 162 00:11:31,424 --> 00:11:35,295 もしかして その悪い仲間ってのが…。 163 00:11:35,295 --> 00:11:40,633 喜八という悪党でございました。 164 00:11:40,633 --> 00:11:44,971 当時 庄太郎は 喜八の金づるになってたようで➡ 165 00:11:44,971 --> 00:11:48,641 50両もの金を お店から 持ち出したこともあったそうです。 166 00:11:48,641 --> 00:11:53,980 その時は さすがに 親父さんが見とがめて 訴えを出したそうですよ。 167 00:11:53,980 --> 00:11:57,850 あった あった。 ちょうど10年前ですね。 168 00:11:57,850 --> 00:12:03,256 喜八は 上方を目指して逃げたとかで 捕らえることはできなかったようです。 169 00:12:03,256 --> 00:12:07,760 その喜八が 再び江戸に舞い戻った ということか。 170 00:12:07,760 --> 00:12:12,398 すると 庄太郎は 10年ぶりに喜八を見つけて…。 171 00:12:12,398 --> 00:12:15,935 追っかけていって 逆に やられちまったってとこですね。 172 00:12:15,935 --> 00:12:17,870 それは? 173 00:12:17,870 --> 00:12:20,873 あっ 喜八の人相書きです。 174 00:12:25,645 --> 00:12:28,648 旦那。 おっ 勘太。 175 00:12:28,648 --> 00:12:31,117 よっぽど面変わりしてなけりゃ➡ 176 00:12:31,117 --> 00:12:35,622 これに 10ばかり 年を重ねた顔になってるはずだ。 177 00:12:35,622 --> 00:12:40,493 うわ~ 悪そうな顔してるわね。 178 00:12:40,493 --> 00:12:43,496 三次 お前さん この面に見覚えはないかい? 179 00:12:43,496 --> 00:12:47,300 う~ん 見たことありやせんねえ。 180 00:12:50,970 --> 00:12:53,306 あいつ だよな? 181 00:12:53,306 --> 00:12:56,609 うん あいつです! 間違いなく あの晩の! 182 00:12:58,811 --> 00:13:01,581 (堅太郎 喬之助)えっ? 知ってるのかい 2人そろって。 183 00:13:01,581 --> 00:13:03,516 (2人)ええ。 184 00:13:03,516 --> 00:13:05,451 あっ! 185 00:13:05,451 --> 00:13:09,455 おいらも見ましたぜ よく似た男を桔梗屋の前で。 186 00:13:09,455 --> 00:13:12,458 えっ? (2人)桔梗屋? 187 00:13:14,160 --> 00:13:17,063 旦那 こっち こっち。 おお…。 188 00:13:17,063 --> 00:13:21,901 10年ばかり前 こういう男が住んでいなかったか? 189 00:13:21,901 --> 00:13:23,836 いっぺん 江戸を出て➡ 190 00:13:23,836 --> 00:13:26,739 近頃 また 舞い戻ってるって話なんだがね。 191 00:13:26,739 --> 00:13:28,741 (女性たち)ふ~ん。 192 00:13:33,946 --> 00:13:37,617 まことに申し訳ございません 売り切れでございます。 193 00:13:37,617 --> 00:13:40,953 (客たち)え~! あ~ またのお越しを。 194 00:13:40,953 --> 00:13:43,456 (女性)行きましょう。 ねっ。 195 00:13:45,291 --> 00:13:48,961 おみつ? おみつ どこにいるの? 196 00:13:48,961 --> 00:13:50,897 どうかしたのか? 197 00:13:50,897 --> 00:13:52,832 あっ お武家様。 198 00:13:52,832 --> 00:13:56,836 ちょっと 娘の姿が見当たらないものですから。 199 00:13:59,972 --> 00:14:01,974 これは? 200 00:14:08,581 --> 00:14:11,384 おみつ! 201 00:14:11,384 --> 00:14:13,319 ん? どうした おたき。 202 00:14:13,319 --> 00:14:15,755 おみつが…。 えっ?おみつが…! 203 00:14:15,755 --> 00:14:17,757 私も捜してみよう。 204 00:14:24,263 --> 00:14:26,199 おみつ? 205 00:14:26,199 --> 00:14:45,952 ♬~ 206 00:14:45,952 --> 00:14:48,755 もういいよ! 207 00:14:52,625 --> 00:14:55,294 おみっちゃんかい? し~っ。 208 00:14:55,294 --> 00:14:59,298 おじちゃんと かくれんぼしているの。 209 00:15:16,249 --> 00:15:18,184 おみつ! 210 00:15:18,184 --> 00:15:21,120 ああ おみつ! 211 00:15:21,120 --> 00:15:23,122 どうも。 212 00:15:25,925 --> 00:15:29,262 本当に なんと お礼を申し上げればよいか。 213 00:15:29,262 --> 00:15:32,932 おみつを連れ出したという男 いかにも気味悪い。 214 00:15:32,932 --> 00:15:36,602 やはり 奉行所へ 届けた方がよいのではないか? 215 00:15:36,602 --> 00:15:41,407 とにかく この子が無事でしたので。 216 00:15:41,407 --> 00:15:46,112 先頃 すぐ近くの大川端で 人が あやめられたそうだ。 217 00:15:46,112 --> 00:15:48,614 それは また 物騒な。 218 00:15:48,614 --> 00:15:52,952 それだけで同じ者の仕業と 軽々しく決めつけられぬが➡ 219 00:15:52,952 --> 00:15:55,788 下手人は 喜八とかいう男らしい。 220 00:15:55,788 --> 00:15:58,991 喜八でございますか。 221 00:16:02,562 --> 00:16:06,232 知り合いに 村上源次郎という南の同心がいる。 222 00:16:06,232 --> 00:16:08,901 何かあったら 訪ねるがいい。 223 00:16:08,901 --> 00:16:11,571 重ね重ね恐れ入ります。 224 00:16:11,571 --> 00:16:14,574 あっ せめて お名前を…。 225 00:16:18,911 --> 00:16:20,913 (堅太郎)お奉行! 226 00:16:22,582 --> 00:16:24,517 あっ 分かりました。 227 00:16:24,517 --> 00:16:28,921 10年前 2人は めおとの触れ込みで 一緒に暮らしていたんです。 228 00:16:28,921 --> 00:16:32,758 2人って 桔梗屋の女将と喜八がか? 229 00:16:32,758 --> 00:16:37,263 (喬之助)はい。 しかも 短い間に あっちこっちの長屋を転々として➡ 230 00:16:37,263 --> 00:16:39,599 正体が ばれないようにしていたようです。 231 00:16:39,599 --> 00:16:42,635 つまり ばれては困る生業を? 232 00:16:42,635 --> 00:16:44,937 (堅太郎)おたきは しょっちゅう 逃げようとして➡ 233 00:16:44,937 --> 00:16:46,873 引き戻されては 殴る 蹴る。 234 00:16:46,873 --> 00:16:49,775 とても見ちゃいられなかったって話です。 235 00:16:49,775 --> 00:16:53,112 喜八が無理強いしていたとなると➡ 236 00:16:53,112 --> 00:16:56,782 体を売らされていたか あるいは…。 237 00:16:56,782 --> 00:16:59,685 もしかして 美人局じゃないですか? 238 00:16:59,685 --> 00:17:01,621 (筧)じゃあ そいつを今になって➡ 239 00:17:01,621 --> 00:17:04,891 まっとうに暮らしている おたきへの ゆすりのネタに。 240 00:17:04,891 --> 00:17:08,761 伊勢屋の跡取りを殺したのが 喜八だとすれば➡ 241 00:17:08,761 --> 00:17:12,231 もはや 江戸で ぐずぐずはしておられんだろう。 242 00:17:12,231 --> 00:17:14,734 逃げるためには まず 金だ。 243 00:17:14,734 --> 00:17:18,371 やっこさん 焦ってるぜ。 うん。 244 00:17:18,371 --> 00:17:23,576 桔梗屋を見張れ。 やつは 必ず現れる。 245 00:17:23,576 --> 00:17:25,578 (一同)はっ! 246 00:17:29,248 --> 00:17:32,151 (おみつ)♬「あかいべべ きせて」 247 00:17:32,151 --> 00:17:36,656 ♬「およねんじょとおよ」 248 00:17:44,797 --> 00:17:48,501 ⚟(戸をたたく音) 249 00:17:52,772 --> 00:17:54,774 お前さん? 250 00:17:56,943 --> 00:18:01,347 金の用意は できてるんだろうな。 251 00:18:01,347 --> 00:18:04,884 さもなきゃ 今度こそ 娘をもらってくぜ。 252 00:18:04,884 --> 00:18:09,722 聞いたわよ あんたが人を殺したって。 253 00:18:09,722 --> 00:18:12,558 その薄汚れた手で よくも おみつを! 254 00:18:12,558 --> 00:18:16,228 知ってるんなら 話が早え。 255 00:18:16,228 --> 00:18:18,898 うちには 余分なお金はないんです。 256 00:18:18,898 --> 00:18:23,235 お願いだから あの人が寄り合いから帰ってくる前に…。 257 00:18:23,235 --> 00:18:25,171 その大事な亭主に➡ 258 00:18:25,171 --> 00:18:28,474 おめえが やってきたことを ばらしてもいいのかい? 259 00:18:32,244 --> 00:18:34,180 ⚟(筧)そこまでだ! 260 00:18:34,180 --> 00:18:37,383 (岡っ引きたち)御用だ! 御用だ! くそ… 野郎! 261 00:18:44,590 --> 00:18:46,592 神妙にしろ! 262 00:18:50,262 --> 00:18:52,932 (喜八)ええ おっしゃるとおりですよ。➡ 263 00:18:52,932 --> 00:18:56,602 今じゃ 澄ました顔で 菓子屋の女将に納まってやすが➡ 264 00:18:56,602 --> 00:18:59,939 あの おたきって女は 元は あっしの女房だったんで。 265 00:18:59,939 --> 00:19:01,874 嘘をつけ! 266 00:19:01,874 --> 00:19:07,747 おたきを女房に仕立て上げて 美人局で荒稼ぎしてたんだろう! 267 00:19:07,747 --> 00:19:11,550 一人で上方へ逃げた お前は 久しぶりに江戸へ戻り➡ 268 00:19:11,550 --> 00:19:14,887 そのころの悪事をネタに おたきをゆすっていたんだな。 269 00:19:14,887 --> 00:19:16,822 バカ言っちゃ困る。 270 00:19:16,822 --> 00:19:20,559 昔のよしみで ちょいと 顔を拝みに行っただけのことでさあ。 271 00:19:20,559 --> 00:19:24,730 百歩譲って そうだとしても 殺しの罪は免れねえ。➡ 272 00:19:24,730 --> 00:19:28,901 正直に吐け。 伊勢屋の庄太郎を殺したのは おめえだな。 273 00:19:28,901 --> 00:19:31,370 知りやせんね そんなやつは。 274 00:19:31,370 --> 00:19:33,305 とぼけるな! 275 00:19:33,305 --> 00:19:37,910 10年前 遊び仲間だった お前に 50両 だまし取られたと➡ 276 00:19:37,910 --> 00:19:39,845 訴えが出てるんだ! 277 00:19:39,845 --> 00:19:43,082 庄太郎が目の色変えて お前を追っかけてったのを➡ 278 00:19:43,082 --> 00:19:45,017 お店の小僧が見てる。 279 00:19:45,017 --> 00:19:46,952 言い逃れは できないぞ! 280 00:19:46,952 --> 00:19:52,091 ふん ガキの言うことなんぞ 当てになるかい。 281 00:19:52,091 --> 00:19:54,026 おう 旦那方! 282 00:19:54,026 --> 00:19:58,264 俺が その何とかっつう野郎をやったって 証しがあるんなら ここへ持ってきな! 283 00:19:58,264 --> 00:20:04,603 その目で見たってやつがいるんなら 俺の目の前へ連れてきねえな! 284 00:20:04,603 --> 00:20:08,774 悪さ一つしてねえのに こんな目に遭わされて。 285 00:20:08,774 --> 00:20:11,977 江戸へなんぞ 帰ってくるんじゃなかったぜ。 286 00:20:13,612 --> 00:20:15,548 (鍵を掛ける音) おい! 287 00:20:15,548 --> 00:20:18,484 おい! 出せ この野郎! 288 00:20:18,484 --> 00:20:23,122 喜八が庄太郎と 金のいざこざを起こしたのは 10年前。 289 00:20:23,122 --> 00:20:26,959 一人で上方へ逃げる間際だった。 290 00:20:26,959 --> 00:20:31,630 その時 何があって おたきと別れることになったのか。 291 00:20:31,630 --> 00:20:37,503 つまり 喜八に庄太郎殺しを認めさせる要は➡ 292 00:20:37,503 --> 00:20:39,972 おたきが握ってるということに。 293 00:20:39,972 --> 00:20:43,642 しかし おたきは 今の暮らしを守りたい。 294 00:20:43,642 --> 00:20:47,313 決して 昔の罪をば 口にはすまいと踏んで➡ 295 00:20:47,313 --> 00:20:51,650 喜八は たかをくくっているのだろう。 296 00:20:51,650 --> 00:20:54,687 つまり 亭主に素性を知られる。 297 00:20:54,687 --> 00:21:00,926 そうなれば おたきは 喜八と同じ罪に問われることになる。 298 00:21:00,926 --> 00:21:04,764 色仕掛けで金子を脅し取る美人局は➡ 299 00:21:04,764 --> 00:21:07,666 死罪 または 獄門の重罪。 300 00:21:07,666 --> 00:21:11,871 まこと ずる賢い男でございます。 301 00:21:30,289 --> 00:21:34,293 (茂兵衛)おたき ちょっと あんの味を見てくれないか。 302 00:21:37,163 --> 00:21:39,965 どうした そんな顔して。 303 00:21:39,965 --> 00:21:46,639 去り状を 書いてもらえませんか? 304 00:21:46,639 --> 00:21:49,975 何だって? もう これ以上➡ 305 00:21:49,975 --> 00:21:53,279 お前さんや おみつと 一緒にいることは…。 306 00:21:56,749 --> 00:22:02,254 この間の騒ぎに 何か関わりがあるんだね? 307 00:22:02,254 --> 00:22:07,560 一人で苦しんでないで 私を信じて話しておくれ。 308 00:22:17,269 --> 00:22:19,471 おたき! 309 00:22:24,143 --> 00:22:27,980 父上 何をしているのですか? 310 00:22:27,980 --> 00:22:44,797 ♬~ 311 00:22:44,797 --> 00:22:48,133 まあ 2人して お行儀のよろしいこと。 312 00:22:48,133 --> 00:22:50,069 ウフフ…。 313 00:22:50,069 --> 00:22:53,305 あなた 天井ばかり見ていないで➡ 314 00:22:53,305 --> 00:22:56,308 少し気晴らしに出かけられたら いかがですか? 315 00:22:56,308 --> 00:22:58,444 (伊織)そうしろ そうしろ。 316 00:22:58,444 --> 00:23:00,446 その方が 頭がさえるぞ。 317 00:23:00,446 --> 00:23:04,250 あっ 伊織先生! 新三郎先生! 318 00:23:04,250 --> 00:23:07,052 お~ よし来た! ハハハハ…。 319 00:23:08,921 --> 00:23:10,856 いい子にしてろよ 求次郎。 320 00:23:10,856 --> 00:23:15,394 大丈夫。 ちゃ~んと 私が見てますから。 321 00:23:15,394 --> 00:23:20,232 一口に罪といっても 犯す者の心根は人それぞれ。 322 00:23:20,232 --> 00:23:22,601 許されざる罪もあれば➡ 323 00:23:22,601 --> 00:23:28,774 心を入れ替え もう一度やり直すよう 背中を押してやるべき罪もある。 324 00:23:28,774 --> 00:23:31,410 お主が そうやって背中を押してやることを➡ 325 00:23:31,410 --> 00:23:35,781 人は 大岡裁きというのだろう。 326 00:23:35,781 --> 00:23:40,953 ついでに言えば 逆に お城のお偉方には煙ったがられる。 327 00:23:40,953 --> 00:23:43,989 それぞれ 見合うようにとは思うものの➡ 328 00:23:43,989 --> 00:23:47,426 ご定法にそわぬ裁きを するわけにもゆかぬ。 329 00:23:47,426 --> 00:23:49,361 うん。 330 00:23:49,361 --> 00:23:55,167 その ご定法というのは いつ 誰が作ったのですか? 331 00:23:55,167 --> 00:23:59,638 ご定法が 父上のお裁きに合わないのなら➡ 332 00:23:59,638 --> 00:24:03,242 そっちを変えればよいのでは ありませんか? 333 00:24:03,242 --> 00:24:05,744 おいおい 何だって? 334 00:24:05,744 --> 00:24:09,248 こいつ ご定法を変えてしまえというのか。 335 00:24:09,248 --> 00:24:14,119 だって 神様や仏様が決めたことでは ないのでしょう? 336 00:24:14,119 --> 00:24:16,121 フフフフ…。 そりゃあ 若様➡ 337 00:24:16,121 --> 00:24:19,758 確かに 人が こさえたもんには 違いねえでしょうが…。 338 00:24:19,758 --> 00:24:22,261 (伊織)おい どうした 忠相。 339 00:24:22,261 --> 00:24:24,196 それだ。 340 00:24:24,196 --> 00:24:26,398 でかした 求次郎! 341 00:24:31,937 --> 00:24:37,276 ほう 新たに法度を定めたいと。 342 00:24:37,276 --> 00:24:41,613 いつぞやも申し上げた 旧悪についてでござる。 343 00:24:41,613 --> 00:24:44,283 旧悪? 344 00:24:44,283 --> 00:24:50,155 時を経た 古き悪事について その罪 軽微なるものに限り➡ 345 00:24:50,155 --> 00:24:53,993 処罰を免除する。 346 00:24:53,993 --> 00:24:58,297 特に 確たる罪の裏付けができない場合➡ 347 00:24:58,297 --> 00:25:01,233 今もって 訴えのない場合➡ 348 00:25:01,233 --> 00:25:06,372 既に 心改め 堅実な暮らしを営む者に対しても➡ 349 00:25:06,372 --> 00:25:09,174 旧悪免除が当てはまるものとして…。 350 00:25:10,909 --> 00:25:17,082 そのような法度 北町奉行としては同意いたしかねます。 351 00:25:17,082 --> 00:25:20,119 たとえ 軽き罪に限ったとて➡ 352 00:25:20,119 --> 00:25:24,390 安易に許せば 人は また 罪を重ねるが必定。 353 00:25:24,390 --> 00:25:28,093 二度と悪事は犯さぬと 涙を流して誓った者が➡ 354 00:25:28,093 --> 00:25:30,028 また白洲へ引き出されるを➡ 355 00:25:30,028 --> 00:25:35,768 ご貴殿とて 少なからず 目の当たりにしてこられたはず。 356 00:25:35,768 --> 00:25:40,639 さればこそ 今ある その者の まことの姿を➡ 357 00:25:40,639 --> 00:25:44,476 奉行が しかと見極めねば。 358 00:25:44,476 --> 00:25:47,946 罪を憎んで 人を憎まず。 359 00:25:47,946 --> 00:25:49,882 許されることで立ち直り➡ 360 00:25:49,882 --> 00:25:53,819 その後の生きる望みを得る者も ありましょう。 361 00:25:53,819 --> 00:26:01,226 伊生殿は 忠実に法度に従っておられる。 362 00:26:01,226 --> 00:26:06,899 しかし その一方で 疑わしきにすぎぬ者を罪人と断じたり➡ 363 00:26:06,899 --> 00:26:10,736 また 許されてしかるべき者を裁き➡ 364 00:26:10,736 --> 00:26:16,375 内心 じくじたる思いを抱かれたことは ござらぬか? 365 00:26:16,375 --> 00:26:21,914 今の法度にそう限り 奉行は 常に その危うさを飲み込んで➡ 366 00:26:21,914 --> 00:26:24,583 白洲に向かわねばならぬ。 367 00:26:24,583 --> 00:26:30,589 果たして 本当に それでよいものかどうか。 368 00:26:39,131 --> 00:26:41,767 (おみつ)♬「およねんじょ よんじろべぇ」 369 00:26:41,767 --> 00:26:44,102 ♬「よんじろべぇのかかぁは」 370 00:26:44,102 --> 00:26:48,607 ♬「ゆんべ へやで あかごをうんで」 371 00:26:48,607 --> 00:26:50,943 ♬「あかいべべ きせて」 372 00:26:50,943 --> 00:26:54,246 ♬「およねんじょとおよ」 373 00:27:04,890 --> 00:27:07,926 どうしたの? おっ母さん。 374 00:27:07,926 --> 00:27:12,631 ううん… 何でもないよ。 375 00:27:12,631 --> 00:27:16,335 ふ~ん。 はい。 376 00:27:22,241 --> 00:27:24,743 おみつ。 377 00:27:33,252 --> 00:27:37,923 南と北 両町奉行の判が そろうておれば まだしも➡ 378 00:27:37,923 --> 00:27:43,395 越前一人の所見では 話にならぬ。 379 00:27:43,395 --> 00:27:45,931 旧悪免除とは また大胆な。 380 00:27:45,931 --> 00:27:49,768 悪事をたくらむ輩が 喜ぶだけではありませぬか。 381 00:27:49,768 --> 00:27:51,703 越前 そなた よもや➡ 382 00:27:51,703 --> 00:27:56,275 裁きを己の思うがままにせんと もくろんでおるのではあるまいな。 383 00:27:56,275 --> 00:27:58,277 思うがまま? 384 00:27:58,277 --> 00:28:04,583 おのが都合で ご定法を改めるなど 上様とて お許しになろうはずがない! 385 00:28:06,885 --> 00:28:10,355 法度改め 結構なことではないか。 386 00:28:10,355 --> 00:28:12,891 上様! (老中たち)上様! 387 00:28:12,891 --> 00:28:16,762 定法なくして民を律することはできぬ。 388 00:28:16,762 --> 00:28:23,368 さりとて 定法に みじんの誤りがないとは言い切れぬ。 389 00:28:23,368 --> 00:28:26,271 世の移ろいに従い 法度も変わる。 390 00:28:26,271 --> 00:28:29,908 折々に見直し 手を入れることがあってしかるべき。 391 00:28:29,908 --> 00:28:33,378 のう 左近。 は… はあ。 392 00:28:33,378 --> 00:28:39,184 下野 その方は どう思う? 393 00:28:39,184 --> 00:28:46,925 むっつり黙っておるが その方にも 何か言いたいことがあろう。 394 00:28:46,925 --> 00:28:51,430 遠慮はいらぬ。 思うままに申してみよ。 395 00:28:53,699 --> 00:28:59,938 旧悪免除 それがしも➡ 396 00:28:59,938 --> 00:29:03,909 この機に定めてしかるべき法度かと 存じます。 397 00:29:03,909 --> 00:29:06,044 (老中たち)えっ? 398 00:29:06,044 --> 00:29:09,081 なんと! まことか 下野。 399 00:29:09,081 --> 00:29:14,219 白洲とは まことに裁かれるべきを 裁く場でなければなりません。 400 00:29:14,219 --> 00:29:17,556 人の心に隠された まことを読み解くため➡ 401 00:29:17,556 --> 00:29:22,361 今後とも 奉行としての度量を 磨く所存でございます。 402 00:29:22,361 --> 00:29:24,296 伊生殿! 403 00:29:24,296 --> 00:29:27,232 よう言うた。 ははっ! 404 00:29:27,232 --> 00:29:29,568 越前と下野➡ 405 00:29:29,568 --> 00:29:35,574 志あつき2人の町奉行を得て 余は うれしいぞ。 406 00:29:38,243 --> 00:29:40,579 ハハハハハ…。 407 00:29:40,579 --> 00:29:46,451 <しかし それで全てが解決したわけではなく…> 408 00:29:46,451 --> 00:29:52,190 明日 白洲に参るよう おたきに差紙を届けさせました。 409 00:29:52,190 --> 00:29:59,197 いや しかし 美人局について 口を開いてくれますかどうか。 410 00:30:02,267 --> 00:30:06,605 (太鼓の音) 411 00:30:06,605 --> 00:30:13,378 南町奉行 大岡越前守様 ご出座~! 412 00:30:13,378 --> 00:30:22,154 (太鼓の音) 413 00:30:22,154 --> 00:30:26,358 一同の者 面を上げよ。 414 00:30:29,294 --> 00:30:36,968 これより 紙問屋 伊勢屋の跡取り 庄太郎殺害の一件につき 詮議をいたす。 415 00:30:36,968 --> 00:30:42,307 調べによれば 庄太郎をあやめ 橋から突き落としたは➡ 416 00:30:42,307 --> 00:30:46,178 そこな喜八と見て間違いがないとある。 417 00:30:46,178 --> 00:30:50,982 喜八 その旨 素直に認めるか。 418 00:30:50,982 --> 00:30:54,019 認めるも何も あっしは そんなやつは知らねえし➡ 419 00:30:54,019 --> 00:30:57,856 訳もなく人をあやめるなんて めっそうもねえことで。 420 00:30:57,856 --> 00:31:03,261 その方は 若かりし頃 庄太郎を唆して 博打に引き入れ➡ 421 00:31:03,261 --> 00:31:07,132 あたかも 金づるがごとき扱いをしていたと聞く。 422 00:31:07,132 --> 00:31:09,134 フッ。 更に➡ 423 00:31:09,134 --> 00:31:14,606 庄太郎から 50両もの金子を巻き上げ 上方へ逃げた。 424 00:31:14,606 --> 00:31:18,477 10年前 伊勢屋より 正式な届けが➡ 425 00:31:18,477 --> 00:31:20,946 こうして出ておる。 426 00:31:20,946 --> 00:31:24,282 10年前とは また 古い話のことで。 427 00:31:24,282 --> 00:31:27,285 もう そのころのことは すっかり忘れちまいました。 428 00:31:27,285 --> 00:31:34,593 では 横におる女のことも覚えてはおらぬか? 429 00:31:36,795 --> 00:31:39,297 (喜八)こいつのことは覚えてまさあ。 430 00:31:39,297 --> 00:31:41,233 何しろ あっしの女房だった女ですから。 431 00:31:41,233 --> 00:31:43,635 まことのめおとでは あるまい! 432 00:31:43,635 --> 00:31:45,570 おたきに男を引き込ませ➡ 433 00:31:45,570 --> 00:31:49,441 亭主を装った その方が その場へ踏み込んで…。 434 00:31:49,441 --> 00:31:51,376 やい てめえ! 435 00:31:51,376 --> 00:31:53,979 ひい~! ひっ…。 436 00:31:53,979 --> 00:31:56,014 俺の女房に何しやがる。 437 00:31:56,014 --> 00:31:58,150 わ~! 438 00:31:58,150 --> 00:32:00,585 (喜八)おたき。 439 00:32:00,585 --> 00:32:04,790 おめえ そんな でたらめを お奉行所の旦那方にしゃべったのか。 440 00:32:07,459 --> 00:32:12,931 お奉行様 おたきは違うと言ってやすぜ。 441 00:32:12,931 --> 00:32:15,767 桔梗屋女房 たき。 442 00:32:15,767 --> 00:32:18,103 はい。 443 00:32:18,103 --> 00:32:20,038 その方は 今➡ 444 00:32:20,038 --> 00:32:25,844 よき夫と かわいい娘に恵まれ 穏やかな日々を送っておる。 445 00:32:25,844 --> 00:32:33,652 その暮らしを守るためにも 昔の素性は なかったことにしたかろう。 446 00:32:33,652 --> 00:32:40,458 しかし 人の歩いてきた道は 隠しおおせるものではない。 447 00:32:43,962 --> 00:32:47,265 (戸が開く音) 448 00:32:53,972 --> 00:32:57,309 お前さん どうして? 449 00:32:57,309 --> 00:32:59,311 桔梗屋主 茂兵衛。 450 00:32:59,311 --> 00:33:01,246 はい。 451 00:33:01,246 --> 00:33:04,382 その方の知る いきさつを話してみよ。 452 00:33:04,382 --> 00:33:07,085 実は おたきと一緒になってから➡ 453 00:33:07,085 --> 00:33:10,922 店のお客さんに 言われたことがあったんです。➡ 454 00:33:10,922 --> 00:33:18,396 「昔 女将さんによく似た女に引っ掛かって 金をむしり取られたことがある。➡ 455 00:33:18,396 --> 00:33:21,600 あんたも 気を付けた方がいいんじゃないか」って。 456 00:33:21,600 --> 00:33:26,271 その客には 他人のそら似だと言いました。 457 00:33:26,271 --> 00:33:30,942 無論 おたきにも そのことを尋ねませんでした。 458 00:33:30,942 --> 00:33:35,814 何故に あえて問いたださなかった。 459 00:33:35,814 --> 00:33:38,416 (茂兵衛)昔が どうあれ➡ 460 00:33:38,416 --> 00:33:44,422 おたきは 私にとって 二人といない大事な女房だからです。 461 00:33:47,792 --> 00:33:49,828 (茂兵衛)おたきと出会った頃➡ 462 00:33:49,828 --> 00:33:55,300 両親に立て続けに死なれて 店は潰れかかっていました。➡ 463 00:33:55,300 --> 00:33:58,136 やけになって➡ 464 00:33:58,136 --> 00:34:01,907 店を畳んでしまおうかと思っていた その時…。 465 00:34:01,907 --> 00:34:15,387 ♬~ 466 00:34:15,387 --> 00:34:19,891 もう お菓子 作らないんですか? 467 00:34:26,031 --> 00:34:28,767 そのころの おたきは➡ 468 00:34:28,767 --> 00:34:31,269 男連中に交じって➡ 469 00:34:31,269 --> 00:34:36,408 僅かな稼ぎの 賃仕事をしていたそうです。➡ 470 00:34:36,408 --> 00:34:39,778 長いこと つらい目にばかり遭ってきて➡ 471 00:34:39,778 --> 00:34:45,283 今は ひとつきか ふたつきに いっぺん この店の菓子を買うことだけが➡ 472 00:34:45,283 --> 00:34:48,787 たった一つの楽しみだって。 473 00:34:51,423 --> 00:34:53,358 (茂兵衛)それが縁で➡ 474 00:34:53,358 --> 00:34:58,296 ためらっているのを口説き落として 女房になってもらいました。 475 00:34:58,296 --> 00:35:01,099 間もなくして おみつが生まれ➡ 476 00:35:01,099 --> 00:35:07,939 2人で工夫して作った求肥餅が おかげさまで 評判に。➡ 477 00:35:07,939 --> 00:35:13,778 もし あの時 出会わなければ 私も桔梗屋も どうなっていたことか。 478 00:35:13,778 --> 00:35:17,382 おたきには いくら礼を言っても言い足りません。 479 00:35:17,382 --> 00:35:20,752 助けてもらったのは 私の方です! 480 00:35:20,752 --> 00:35:27,258 お奉行様 私は この喜八と 美人局をやっておりました。 481 00:35:29,928 --> 00:35:32,631 おい てめえ! (同心)控えい! 482 00:35:36,267 --> 00:35:39,170 両親を知らずに育った あたしは➡ 483 00:35:39,170 --> 00:35:43,408 15の年に 育ててくれた おじいさんに死に別れ➡ 484 00:35:43,408 --> 00:35:50,181 それから間もなく この男に拾われたんです。 485 00:35:50,181 --> 00:35:56,621 そして お奉行様のおっしゃるように…。 486 00:35:56,621 --> 00:35:58,623 出せえ! うっ うっ…。 487 00:36:01,226 --> 00:36:05,563 うっ ひ… ひいっ! うっ うっ…。 488 00:36:05,563 --> 00:36:09,367 上客だ。 おめえも腕上げたな。 489 00:36:09,367 --> 00:36:11,736 もう嫌。 490 00:36:11,736 --> 00:36:14,372 こんなこと続けるくらいなら➡ 491 00:36:14,372 --> 00:36:17,575 いっそ 自分から お縄にしてもらった方が ましです。 492 00:36:17,575 --> 00:36:21,279 てめえ 俺に逆らう気か! 493 00:36:29,187 --> 00:36:31,756 力でねじ伏せられ➡ 494 00:36:31,756 --> 00:36:38,396 そなたは 喜八に逆らうことができなかったのだな。 495 00:36:38,396 --> 00:36:41,599 寝る時は いつも➡ 496 00:36:41,599 --> 00:36:47,272 逃げないように ひもでつながれていて。➡ 497 00:36:47,272 --> 00:36:53,411 でも ある晩 喜八が酔い潰れていて…。 498 00:36:53,411 --> 00:37:10,228 ♬~ 499 00:37:10,228 --> 00:37:16,735 喜八 その方は おたきが奉行所へ駆け込むのを恐れ➡ 500 00:37:16,735 --> 00:37:22,240 庄太郎から金子をだまし取って 上方へ逃げたのだな。 501 00:37:22,240 --> 00:37:24,175 ちっ! 502 00:37:24,175 --> 00:37:26,111 10年たって 江戸へ戻り➡ 503 00:37:26,111 --> 00:37:31,382 出会った庄太郎から 金子を返すよう迫られた。 504 00:37:31,382 --> 00:37:34,686 その あげく…。 505 00:37:36,254 --> 00:37:38,756 (刺す音) うっ! うわっ! 506 00:37:42,927 --> 00:37:48,600 その旨 なおもって認めぬか! 507 00:37:48,600 --> 00:37:51,503 ああ やりやしたよ! 508 00:37:51,503 --> 00:37:54,305 確かに あっしが野郎をね! 509 00:37:58,276 --> 00:38:04,215 あの時 あたしが ちゃんと自訴して出れば➡ 510 00:38:04,215 --> 00:38:07,886 きっと こんなことには…。 511 00:38:07,886 --> 00:38:10,922 そうよ 悪いのは おめえだぜ。 512 00:38:10,922 --> 00:38:15,560 お奉行様 俺に仕置きをしようってんなら この女だって。 513 00:38:15,560 --> 00:38:19,230 確かに 美人局の罪は重い。 514 00:38:19,230 --> 00:38:22,133 打ち首 獄門と定められておる。 515 00:38:22,133 --> 00:38:24,836 獄門…。 516 00:38:26,905 --> 00:38:28,840 ざまあみろ! 517 00:38:28,840 --> 00:38:32,710 どうせ地獄へ落ちるんなら おめえも道連れにしてやらあ! 518 00:38:32,710 --> 00:38:37,382 いいや 獄門となるのは その方一人だ。 519 00:38:37,382 --> 00:38:39,317 何だって? 520 00:38:39,317 --> 00:38:43,922 おたきは その方に強いられ 悪事に加担したにすぎぬ。 521 00:38:43,922 --> 00:38:47,926 よって その罪は 軽きにとどまる。 522 00:38:56,401 --> 00:38:58,336 この度 次第によって➡ 523 00:38:58,336 --> 00:39:03,141 古き罪の仕置きを免除する御法が 定められた。 524 00:39:09,347 --> 00:39:11,349 うっ…。 525 00:39:16,120 --> 00:39:22,560 これに従い 桔梗屋女房 たきを 無罪放免といたす。 526 00:39:22,560 --> 00:39:25,563 それじゃ あたしは…。 527 00:39:27,732 --> 00:39:32,570 ありがとうございます! ありがとうございます! 528 00:39:32,570 --> 00:39:34,906 そんなバカな! 529 00:39:34,906 --> 00:39:38,743 改めて 喜八に申し渡す。 530 00:39:38,743 --> 00:39:43,081 庄太郎殺害ならびに数々の余罪により➡ 531 00:39:43,081 --> 00:39:47,385 追って厳しき沙汰あるを 覚悟いたせ! 532 00:39:47,385 --> 00:39:49,320 畜生! 畜生! 533 00:39:49,320 --> 00:39:52,257 引き立てい! (役人たち)はっ! 534 00:39:52,257 --> 00:39:55,260 (喜八)畜生! 畜生!➡ 535 00:39:55,260 --> 00:39:58,129 くそ~! 汚えぞ! 536 00:39:58,129 --> 00:40:01,266 茂兵衛。 はい。 537 00:40:01,266 --> 00:40:04,936 おたき。 はい。 538 00:40:04,936 --> 00:40:10,108 これからも 2人 手を携え 皆の喜ぶ うまい菓子を作るよう➡ 539 00:40:10,108 --> 00:40:12,410 奉行は願っておるぞ。 540 00:40:12,410 --> 00:40:14,412 はい! 541 00:40:18,216 --> 00:40:22,086 お前さん あたし…。 542 00:40:22,086 --> 00:40:34,666 ♬~ 543 00:40:34,666 --> 00:40:37,368 あなた様は もしや…。 544 00:40:43,508 --> 00:40:45,510 あの時の! 545 00:40:47,245 --> 00:40:50,982 まさか お奉行様とは存じませんで。 546 00:40:50,982 --> 00:40:56,854 一つ一つの菓子に 心を込め 重ねた そなたたちの日々を➡ 547 00:40:56,854 --> 00:41:01,259 奉行は信じたのだ。 548 00:41:01,259 --> 00:41:04,095 ありがとうございます! (茂兵衛)ありがとうございます! 549 00:41:04,095 --> 00:41:06,297 お奉行様! 550 00:41:08,266 --> 00:41:13,938 本日の白洲 これまでといたす。 551 00:41:13,938 --> 00:41:17,275 ごめんよ ごめんよ ごめんよ! ごめんよ! 552 00:41:17,275 --> 00:41:20,278 お花ちゃ~ん。 ヒヒヒヒ。 553 00:41:20,278 --> 00:41:25,783 これ 桔梗屋の求肥餅 いつも売り切れで やっと買えたんだ。 554 00:41:25,783 --> 00:41:27,719 2人で 茶でも飲みながら…。 555 00:41:27,719 --> 00:41:30,955 よかった~! 556 00:41:30,955 --> 00:41:34,826 ちょうど お客様が見えて お茶菓子をどうしようかと思ってたの。 557 00:41:34,826 --> 00:41:36,828 えっ? 558 00:41:36,828 --> 00:41:39,664 これが 例の餅か。 うん。 559 00:41:39,664 --> 00:41:42,667 はい~! 560 00:41:42,667 --> 00:41:46,437 うん こりゃ うまい! 実に うまい! 561 00:41:46,437 --> 00:41:50,808 伊織 お前 食べてる端から 顔が にやついてるぞ。お主こそ。 562 00:41:50,808 --> 00:41:54,645 フフフフ お菓子って いいものですよね。 563 00:41:54,645 --> 00:41:58,516 きれいで甘くて 優しい気持ちになれますね。 564 00:41:58,516 --> 00:42:00,752 1つ 余ってますね。 565 00:42:00,752 --> 00:42:03,087 あ~ では 年の順番で…。 566 00:42:03,087 --> 00:42:07,258 あっ おじじ様 年の順なら 私です。 567 00:42:07,258 --> 00:42:11,929 待った! それは わしが もらった。 568 00:42:11,929 --> 00:42:13,965 (一同)上様! 569 00:42:13,965 --> 00:42:17,101 よいから よいから 楽にしろ。 570 00:42:17,101 --> 00:42:19,604 求次郎 元気でおったか? 571 00:42:19,604 --> 00:42:24,409 はい。 上様は 私と遊ぶのを楽しみにしておられたとか。 572 00:42:24,409 --> 00:42:27,311 何して遊びましょう。 これ 求次郎! 573 00:42:27,311 --> 00:42:29,313 相撲だ。 えっ! 574 00:42:31,182 --> 00:42:34,619 <人が人を裁く難しさ。➡ 575 00:42:34,619 --> 00:42:37,655 常に 厳しさと優しさを併せ持ち➡ 576 00:42:37,655 --> 00:42:42,293 さやけき まなざしで 罪と人とに向かい合う。➡ 577 00:42:42,293 --> 00:42:47,965 それが 江戸の幸いを守る 町奉行の務めであると➡ 578 00:42:47,965 --> 00:42:52,670 改めて心に誓う忠相であった>