1 00:00:03,170 --> 00:00:06,406 (鳥が羽ばたく音) (子供)えい! 2 00:00:06,406 --> 00:00:10,277 えい! 3 00:00:10,277 --> 00:00:12,579 えい! 4 00:00:14,781 --> 00:00:16,717 えい!➡ 5 00:00:16,717 --> 00:00:18,652 えい! よし!➡ 6 00:00:18,652 --> 00:00:20,654 当たった! 7 00:00:23,423 --> 00:00:26,126 あ~ 苦しい。 8 00:00:26,126 --> 00:00:29,630 あっ 父上の分まで! 9 00:00:29,630 --> 00:00:32,432 食べて すぐ寝ると 牛になりますよ。 10 00:00:32,432 --> 00:00:35,135 (源次郎) おや 若様 どうかなさいましたか? 11 00:00:35,135 --> 00:00:39,973 若様が 私の作った お団子を 全部…。 12 00:00:39,973 --> 00:00:43,443 ああ ハハッ そりゃまた 随分と頑張りましたな。 13 00:00:43,443 --> 00:00:46,813 それじゃ これは お預けかな。 あら それは何ですか? 14 00:00:46,813 --> 00:00:49,149 幾代餅です。 (3人)わあ! 15 00:00:49,149 --> 00:00:52,452 今 評判の! では早速 お茶の支度を。 16 00:00:52,452 --> 00:00:54,388 あ 私には水を。 17 00:00:54,388 --> 00:00:56,323 はい。 あら 村上さん お具合でも? 18 00:00:56,323 --> 00:00:59,993 いやいや…。 いや ゆうべ 少し やり過ぎまして。 19 00:00:59,993 --> 00:01:01,929 それは いけませんねえ。 20 00:01:01,929 --> 00:01:04,398 いくら好きとはいっても ほどほどにしませんと。 21 00:01:04,398 --> 00:01:08,769 いや いい年しても やはり 欲には勝てませんでな ハハハ…。 22 00:01:08,769 --> 00:01:11,104 分かりますよ 源さん。 23 00:01:11,104 --> 00:01:13,040 求次郎! 24 00:01:13,040 --> 00:01:16,977 (笑い声) 25 00:01:16,977 --> 00:01:20,280 今から あんなに欲張りで どうするのかしら。 26 00:01:20,280 --> 00:01:23,784 (忠相)まっ 欲の全くない人生も つまらんだろう。 27 00:01:23,784 --> 00:01:26,420 でも 欲に流されるようでは 困ります。 28 00:01:26,420 --> 00:01:30,290 ああ 耳が痛い。 ハハハ…。 源さん 今日は どうした? 29 00:01:30,290 --> 00:01:34,995 いや 欲といえば こんなものを拾いましてな。 30 00:01:48,141 --> 00:02:02,089 (読経) 31 00:02:02,089 --> 00:02:05,125 惜しい人を亡くしたね。 (鈴の音) 32 00:02:05,125 --> 00:02:09,763 いい人だったのに…。 ああ…。 33 00:02:09,763 --> 00:02:12,099 あんな いい人…。 優しい人だったのに…。 34 00:02:12,099 --> 00:02:14,601 喜兵衛の人徳が しのばれるな。 35 00:02:17,404 --> 00:02:21,208 心も体も 疲れが出る時だ。 無理は するなよ。 36 00:02:23,110 --> 00:02:25,779 (おせんの母親)おせん 金兵衛さんが…。 (おせん)えっ…。 37 00:02:25,779 --> 00:02:28,115 あ…。 38 00:02:28,115 --> 00:02:32,953 すみません。 忌明けに 改めて ご挨拶に伺います。 39 00:02:32,953 --> 00:02:36,823 (金兵衛) だから もう待てないと言ってるだろ。 40 00:02:36,823 --> 00:02:39,726 え… でも 今日は お父っつぁんの…。 41 00:02:39,726 --> 00:02:45,132 別に 弔いの邪魔を しに来たわけじゃ…。 42 00:02:45,132 --> 00:02:48,435 これを もらえば すぐ帰る。 それは…。 43 00:02:48,435 --> 00:02:53,273 あとは… このお布施も…。 44 00:02:53,273 --> 00:02:56,176 そ そ それだけは どうか ご勘弁を! 45 00:02:56,176 --> 00:03:01,915 坊主に くれてやる銭があるなら こっちが先だろ。 46 00:03:01,915 --> 00:03:05,252 (おせん)お父っつぁんの… お父っつぁんへの ご供養ですんで…。 47 00:03:05,252 --> 00:03:08,088 ちょっと あんた もう およしよ。 おいおい。 48 00:03:08,088 --> 00:03:10,123 人の話に 首突っ込むんじゃねえ! 49 00:03:10,123 --> 00:03:13,260 人の懐に 手を突っ込んでるのは あんたの方でしょ! 50 00:03:13,260 --> 00:03:16,096 これを 返し…。 やめろっつうんだ。 これは わしの金じゃ。 51 00:03:16,096 --> 00:03:18,598 でもね…。 やめろっつうんだよ! 52 00:03:18,598 --> 00:03:20,934 あっ! もう よさんか!でも…。 53 00:03:20,934 --> 00:03:23,837 こちらさんには こちらさんの事情 ってものがあるんだろう。 54 00:03:23,837 --> 00:03:27,274 いや 当方の者が とんだ失礼を…。 55 00:03:27,274 --> 00:03:30,777 …ったく なんて女だ。 56 00:03:30,777 --> 00:03:33,680 (せきこみ) 57 00:03:33,680 --> 00:03:35,649 あれ? 58 00:03:35,649 --> 00:03:38,285 何だよ。 59 00:03:38,285 --> 00:03:40,220 先生 どうしました? 60 00:03:40,220 --> 00:03:44,791 先生? (おいね)この方は 江戸で一番の名医です。 61 00:03:44,791 --> 00:03:47,294 名医? 62 00:03:49,963 --> 00:03:52,999 ど ど どこか悪いのか? 63 00:03:52,999 --> 00:03:55,502 (鈴の音) 64 00:03:58,638 --> 00:05:13,446 ♬~ 65 00:05:15,081 --> 00:05:19,953 何が何でも 取り立ててこいよ。 66 00:05:19,953 --> 00:05:21,955 (長吉)へい。 67 00:05:36,469 --> 00:05:40,473 やはり 相当重症のようだな。 68 00:05:43,143 --> 00:05:45,946 (せきこみ) 69 00:05:47,948 --> 00:05:52,118 う~ん…。 どうした? 70 00:05:52,118 --> 00:05:54,955 それ相応の金がかかるが いいか? 71 00:05:54,955 --> 00:05:58,825 えっ 養生所で 金取るなんて聞いたこと…。 72 00:05:58,825 --> 00:06:02,062 普通なら さじを投げ出すほど 重篤な病状を➡ 73 00:06:02,062 --> 00:06:04,731 先生が なんとかしてくださるんですよ。 74 00:06:04,731 --> 00:06:07,567 そりゃあ かかるものは かかりますよ。 75 00:06:07,567 --> 00:06:09,502 しかし…。 お父っつぁん! 76 00:06:09,502 --> 00:06:11,905 先生の おっしゃることを 聞いた方がいいよ。 77 00:06:11,905 --> 00:06:14,808 どこも痛くないのに➡ 78 00:06:14,808 --> 00:06:16,776 銭なんか払えん。 79 00:06:16,776 --> 00:06:20,080 嫌なら いいんですよ。 嫌なら別に。 80 00:06:20,080 --> 00:06:24,951 私たちは 診てくれと頼まれたから わざわざ 来てあげただけなんですから。 81 00:06:24,951 --> 00:06:28,255 先生 帰りましょう。 そうだな。 82 00:06:28,255 --> 00:06:30,257 お父っつぁん。 83 00:06:30,257 --> 00:06:34,928 ケチケチしてたら 治るもんも治らんぞ。 いや それにしても…。 84 00:06:34,928 --> 00:06:38,632 放っておいたら 逆に高くつくぞ。 え…。 85 00:06:41,101 --> 00:06:44,938 おい 勘太。 何 そんなに いとおしそうに見とるんだ? 86 00:06:44,938 --> 00:06:47,407 (辰三)富くじですよ。 (源次郎)へえ。➡ 87 00:06:47,407 --> 00:06:49,342 もし当たったら どうするんだ? 88 00:06:49,342 --> 00:06:52,279 そらあ もちろん 吉原に行くに決まってますよ! 89 00:06:52,279 --> 00:06:56,149 (お秀)もちろん? 大門くぐって 仲之町へ繰り出し➡ 90 00:06:56,149 --> 00:06:59,152 引手茶屋で パ~ッと酒かっくらってさ…。 (子吉)よっ! 91 00:06:59,152 --> 00:07:01,721 そんで 「お大尽!」なんて言われちゃったりね。 92 00:07:01,721 --> 00:07:05,592 え~ 憎いね~! そんで そんで そんで 花魁道中では➡ 93 00:07:05,592 --> 00:07:09,362 赤い番傘持った 花魁がさ…。 あれは 長柄傘だ。 94 00:07:09,362 --> 00:07:12,265 え~ やけに詳しい お大尽が…。 95 00:07:12,265 --> 00:07:15,168 お奉行! 随分と楽しそうだな。 96 00:07:15,168 --> 00:07:17,904 いや いや いや あの これから 楽しくなるとこだったんです。 97 00:07:17,904 --> 00:07:21,374 (筧)バカ! …ったく 甘い夢に うつつ抜かしおって! 98 00:07:21,374 --> 00:07:26,212 は~い お大尽! (笑い声) 99 00:07:26,212 --> 00:07:30,383 おお そろってるな。 先生! 100 00:07:30,383 --> 00:07:34,754 (おいね)あ~ 疲れた。 ん? 何だ 今まで 出療治か? 101 00:07:34,754 --> 00:07:37,090 それが やっかいな患者でな。 102 00:07:37,090 --> 00:07:41,594 重い病なんですか? (おいね)そりゃもう 重くて重くて…。 103 00:07:41,594 --> 00:07:44,397 (三次)いや~ そいつは お気の毒に。 どこの誰なんです? 104 00:07:44,397 --> 00:07:47,100 千石屋の金兵衛という男だ。 105 00:07:47,100 --> 00:07:50,770 あの落書の? 知ってるのか? 106 00:07:50,770 --> 00:07:54,607 銭金に目がくらみ 餓鬼道に墜ちた守銭奴だと➡ 107 00:07:54,607 --> 00:07:58,278 もっぱらの噂ですからな。 ひっでえ噂! 108 00:07:58,278 --> 00:08:01,548 (喬之助)それで その金兵衛の病というのは? 109 00:08:01,548 --> 00:08:04,884 それはな 強突く張りの病だ。 110 00:08:04,884 --> 00:08:06,820 (子吉)強突く張り? (おいね)そう。➡ 111 00:08:06,820 --> 00:08:11,558 お金に対する強~い執着が 体をむしばむ病ですよ。 112 00:08:11,558 --> 00:08:15,061 まあ 確かに 金への尽きねえ欲は➡ 113 00:08:15,061 --> 00:08:17,897 重い病のようなもんか。 114 00:08:17,897 --> 00:08:23,570 ああ。 強欲が過ぎると心が病み やがて 体にも その影が及ぶ。 115 00:08:23,570 --> 00:08:28,742 欲を抑えて 心を整えることこそ 養生の肝心な第一歩だ。 116 00:08:28,742 --> 00:08:33,079 (堅太郎) しかし それを どう治すんです? 117 00:08:33,079 --> 00:08:36,950 病の根っこである お金を 取り除いてやる。 118 00:08:36,950 --> 00:08:38,952 (大介)えっ それが 療治? 119 00:08:38,952 --> 00:08:43,390 のんだり塗ったりするだけが 薬でもあるまい。 120 00:08:43,390 --> 00:08:49,195 しかし 守銭奴が ため込んだ金をとなると そう やすやすとは いかんだろうな。 121 00:08:49,195 --> 00:08:53,700 ならば 新三 お主の腕っぷしを 生かしてみたら どうだ? 122 00:08:58,405 --> 00:09:01,207 (せきばらい) (金兵衛)用心棒? 123 00:09:01,207 --> 00:09:07,547 ああ 不安を取り除き 高い安心を得ることも また養生だ。 124 00:09:07,547 --> 00:09:10,216 不安…。 125 00:09:10,216 --> 00:09:12,552 お主も これは知っておろう。 126 00:09:12,552 --> 00:09:17,223 フフフフ… こんなもん。 127 00:09:17,223 --> 00:09:21,728 お父っつぁん 世間様の声には 耳を傾けた方がいいですよ。 128 00:09:21,728 --> 00:09:24,564 それは ただの 貧乏人のひがみだよ。 129 00:09:24,564 --> 00:09:28,902 しかし そのひがみが いつか お主の大切な蔵の財を➡ 130 00:09:28,902 --> 00:09:30,837 脅かすかもしれんぞ。 131 00:09:30,837 --> 00:09:36,376 だから もう… 用心棒 雇っているじゃないか。 132 00:09:36,376 --> 00:09:42,882 安くたたいた用心棒が 果たして 蔵の財に見合うのか? 133 00:09:45,585 --> 00:09:50,090 椿 新三郎殿だ。 試してみるがいい。 134 00:09:54,794 --> 00:09:56,830 きえ~! え~い! 135 00:09:56,830 --> 00:09:59,632 や~! 136 00:09:59,632 --> 00:10:01,668 んっ! おりゃ~!や~! 137 00:10:01,668 --> 00:10:05,138 あっ! おのれ! てや~! 138 00:10:05,138 --> 00:10:07,173 あっ… おおっ! 139 00:10:07,173 --> 00:10:10,810 うあっ! 140 00:10:10,810 --> 00:10:14,481 えい! (用心棒)ううっ…。 141 00:10:16,449 --> 00:10:18,418 気に入った。 142 00:10:24,657 --> 00:10:27,160 あ…。 143 00:10:27,160 --> 00:10:30,663 番頭の六兵衛さんと その連れ合いの おふきさんです。 144 00:10:30,663 --> 00:10:33,466 あ…。 こちらは 用心棒の…。 145 00:10:33,466 --> 00:10:37,003 あ~ 椿 新三郎でござる。 146 00:10:37,003 --> 00:10:39,472 椿様。 147 00:10:39,472 --> 00:10:41,407 前の お二人は? 148 00:10:41,407 --> 00:10:43,343 (清助)お役御免になりました。 149 00:10:43,343 --> 00:10:45,345 (2人)あ…。 150 00:10:45,345 --> 00:10:47,347 (おとめ)ああ 若旦那。 151 00:10:47,347 --> 00:10:50,216 手代の太助と 女中のおとめです。 152 00:10:50,216 --> 00:10:54,487 こちらは 用心棒…。 椿… 椿 新三郎でござる。 153 00:10:56,489 --> 00:10:58,558 秤を どこへ? 154 00:10:58,558 --> 00:11:04,230 旦那様が もう使わないから 物置に置いておけと。 155 00:11:05,965 --> 00:11:09,235 分かりました。 へい。 156 00:11:14,307 --> 00:11:18,077 しまう前に 手入れをしとかないと。 157 00:11:20,813 --> 00:11:24,984 ⚟(常次) もう少しだけ 待ってください! 158 00:11:24,984 --> 00:11:30,323 だから どんなに頼まれても 番頭の私じゃ どうにもできやしないよ。 159 00:11:30,323 --> 00:11:34,327 (常次)このままだと 娘を身売りすることに…。 160 00:11:34,327 --> 00:11:36,296 後生ですから! 161 00:11:43,036 --> 00:11:45,338 見ていられないね。 162 00:11:45,338 --> 00:11:51,010 これじゃあ ちまたで言われてるとおり 両替屋とは名ばかりの➡ 163 00:11:51,010 --> 00:11:54,480 あくどい高利貸しじゃないのさ…。 164 00:11:56,816 --> 00:11:59,352 結城めを➡ 165 00:11:59,352 --> 00:12:02,956 金貸しの用心棒にか。 はっ。 166 00:12:02,956 --> 00:12:05,858 して 何か考えが? 167 00:12:05,858 --> 00:12:09,128 市中で 守銭奴と噂の商人。 168 00:12:09,128 --> 00:12:15,635 しかし その男を生み出したのが 今の人の世ならば…。 169 00:12:15,635 --> 00:12:20,807 それは 政が負うべき責めと申すか。 170 00:12:20,807 --> 00:12:24,310 西と東で 金品が往来する今➡ 171 00:12:24,310 --> 00:12:27,814 今まで以上に 暮らしには 金が入り用となり➡ 172 00:12:27,814 --> 00:12:33,987 さすらば 金に心を動かされる 金兵衛のような守銭奴が増えるのは➡ 173 00:12:33,987 --> 00:12:35,922 必然かと。 174 00:12:35,922 --> 00:12:43,663 己のことしか考えられぬ 金ばかり追う 欲まみれの世か。 175 00:12:43,663 --> 00:12:46,466 それは もう 人の世とは言えんな。 176 00:12:46,466 --> 00:12:51,671 金兵衛の病とは 人の世の病と同じ。 177 00:12:51,671 --> 00:12:59,412 だが 人が生きるということに 大なり小なり 欲はつきもの。 178 00:12:59,412 --> 00:13:03,116 欲と どう つきあうかが肝要かと。 179 00:13:03,116 --> 00:13:05,885 欲と つきあうか…。 180 00:13:08,621 --> 00:13:11,958 しかし 清助殿。 んっ! 181 00:13:11,958 --> 00:13:14,794 きれいに手入れされましたな! フッ! 182 00:13:14,794 --> 00:13:18,631 大事な商売道具ですからね。 183 00:13:18,631 --> 00:13:23,303 お上が作る金銀の重さが ものの値を上げたり下げたりするから➡ 184 00:13:23,303 --> 00:13:27,640 両替商が この秤を使って 人の暮らしを支えていくんだって➡ 185 00:13:27,640 --> 00:13:30,309 昔 お父っつぁんに教わったんだ。 186 00:13:30,309 --> 00:13:32,245 金兵衛殿に? 187 00:13:32,245 --> 00:13:36,716 はい! もう だいぶ昔の話ですが…。 188 00:13:39,652 --> 00:13:41,587 そこで 何をしてるんだ? 189 00:13:41,587 --> 00:13:45,992 旦那様…。 (金兵衛)何をしてるか聞いてるんだ。 190 00:13:45,992 --> 00:13:50,830 長吉に 商いのしかたを教えていました。 商い? 191 00:13:50,830 --> 00:13:54,467 両替屋が 天秤の仕掛けくらい 知っときませんと。 192 00:13:54,467 --> 00:13:57,170 片づけておけと言ったのに。 いやいや これは…。 193 00:13:57,170 --> 00:14:01,140 私です! 私が若旦那に 商いを習いたいと…。 194 00:14:01,140 --> 00:14:05,611 それなら いつも教えてやってるだろ。 195 00:14:05,611 --> 00:14:12,385 銭を いかに稼ぐかが 商いだよ。➡ 196 00:14:12,385 --> 00:14:15,154 世の中 金の奪い合いだ。 197 00:14:17,623 --> 00:14:23,496 金の奪い合いか。 ええ まさに守銭奴。 198 00:14:23,496 --> 00:14:26,299 (勘太)腹減った~。 199 00:14:26,299 --> 00:14:28,301 あ これは お奉行。 200 00:14:28,301 --> 00:14:31,804 それに 用心棒先生も。 ハハッ からかいおって! 201 00:14:31,804 --> 00:14:34,707 あ そうだ 勘太。 富くじは どうであった? 202 00:14:34,707 --> 00:14:39,145 あ おかげさまで当たりませんでした! 外れたのに うれしそうですね。 203 00:14:39,145 --> 00:14:41,981 そら 強突く張りの病に かかりたくありませんからね。 204 00:14:41,981 --> 00:14:44,884 それに 人様に 守銭奴なんて 言われた日にゃあね。 205 00:14:44,884 --> 00:14:49,155 あっ! ん? 206 00:14:49,155 --> 00:14:53,626 (お秀)高札場にも そんなのが いっぱい貼ってあったよ。 207 00:14:56,662 --> 00:14:59,632 おい 勘太 行くぞ。 へい。 208 00:15:04,270 --> 00:15:07,039 (筧) おいおい ちょっと ちょっと… あ~! 209 00:15:13,946 --> 00:15:15,882 広がるばかりですね。 210 00:15:15,882 --> 00:15:18,618 さすがに 放ってはおけんな。 211 00:15:18,618 --> 00:15:21,287 (女)そのうち きっと罰が当たるよ。 212 00:15:23,956 --> 00:15:25,925 ごめんよ。 213 00:15:27,794 --> 00:15:30,296 親分 これこれ…。 あいよ。 214 00:15:30,296 --> 00:15:32,231 持っててください。 いきますよ…。 215 00:15:32,231 --> 00:15:35,802 おっとっと… おっ…。 気を付けて。 216 00:15:35,802 --> 00:15:39,639 (男)千石屋金兵衛は 人の不幸で 飯を食ってんだ。 ええ? 217 00:15:39,639 --> 00:15:43,810 町を歩けば 金兵衛さんの悪口ばかり。 218 00:15:43,810 --> 00:15:47,680 あんな悪い人を 放っておいてよいのですか? 219 00:15:47,680 --> 00:15:52,318 確かに 金兵衛の行いは 褒められたものではありませんが➡ 220 00:15:52,318 --> 00:15:55,321 罪を犯しているわけでもなし。 221 00:15:55,321 --> 00:15:59,659 それに 噂が全て まことであるとは…。 222 00:15:59,659 --> 00:16:05,398 でも あんな人が世間にいたら…。 怖いですね。 223 00:16:05,398 --> 00:16:09,268 ほら 雪絵さんだって 怖がってるじゃありませんか。 224 00:16:09,268 --> 00:16:15,074 いえ 怖いのは 町の人たちの方です。 225 00:16:15,074 --> 00:16:18,945 聞けば 悪口は ひどいことばかり。 226 00:16:18,945 --> 00:16:23,115 言葉が まるで 刃のよう。 227 00:16:23,115 --> 00:16:30,623 自分の姿が見えないと 人は こうも 非道になれるものなのでしょうか。 228 00:16:30,623 --> 00:16:36,963 人には 誰しも そういう心があって 何か ささいな きっかけで➡ 229 00:16:36,963 --> 00:16:40,633 あふれ出すのかもしれんな。 230 00:16:42,301 --> 00:16:46,305 (投石の音) 231 00:16:46,305 --> 00:16:48,975 誰だ!? 232 00:16:48,975 --> 00:16:52,245 (太助) …ったく どこのどいつが! 233 00:16:57,683 --> 00:17:00,152 たちの悪い いたずらですね。 234 00:17:05,458 --> 00:17:07,426 これは…。 235 00:17:09,929 --> 00:17:13,399 (足音) 236 00:17:13,399 --> 00:17:15,334 何だ? お前たちは。 237 00:17:15,334 --> 00:17:18,237 町の落書も お前らの仕業か!? 238 00:17:18,237 --> 00:17:20,907 いや~! うあ~! 239 00:17:25,011 --> 00:17:28,414 (男)守銭奴の犬め~! 240 00:17:28,414 --> 00:17:30,483 ああっ! 241 00:17:30,483 --> 00:17:34,120 うおっ! あ~! 242 00:17:34,120 --> 00:17:37,990 悪いが ひきょう者に 容赦はせんぞ。 243 00:17:37,990 --> 00:17:41,460 あっ あっ…。 おい おい おい…。 244 00:17:43,429 --> 00:17:46,966 (おふき)一体 どこの悪党だろうねえ。 あ いててて~…。 245 00:17:46,966 --> 00:17:51,137 ただの町人だ。 刀を触ったこともなかろう。 246 00:17:51,137 --> 00:17:53,439 町の人たちが こんな ひどいことを…。 247 00:17:53,439 --> 00:17:58,210 それだけ 世間様から 後ろ指をさされてるってことだろ。 248 00:18:01,914 --> 00:18:04,684 (長吉)清助さん。 ん? 249 00:18:06,385 --> 00:18:10,756 このままじゃ 俺 死んだ親に 会わせる顔がなくなっちまうよ。 250 00:18:10,756 --> 00:18:12,792 お暇を下さい。 251 00:18:12,792 --> 00:18:15,461 えっ? 辞めて どうするんだ? 252 00:18:19,398 --> 00:18:21,367 長吉! 253 00:18:25,938 --> 00:18:30,409 (喬之助)ここまで広まっては 出どころなんか分かりゃしませんね。 254 00:18:30,409 --> 00:18:33,312 (堅太郎)共謀してんなら 根っこまで たどれるが➡ 255 00:18:33,312 --> 00:18:38,150 互いに 知らない者同士が それぞれ 別々に広めてるからな。 256 00:18:38,150 --> 00:18:43,422 しかし 金兵衛という男 なんという評判の悪さだ。 257 00:18:43,422 --> 00:18:46,325 たたく方は 誰はばかることなく➡ 258 00:18:46,325 --> 00:18:53,165 自分が悪人を裁いている気に なっておるのやもしれんな。 259 00:18:53,165 --> 00:18:59,839 (犬の遠ぼえ) 260 00:19:01,574 --> 00:19:04,243 (鍵が開く音) 261 00:19:06,445 --> 00:19:08,414 (蔵の戸が開く音) 262 00:19:12,752 --> 00:19:15,021 この~! 盗人が! 263 00:19:17,923 --> 00:19:19,959 放しやがれ! うっ! 264 00:19:19,959 --> 00:19:21,927 (小判が落ちる音) 265 00:19:23,729 --> 00:19:27,600 その金は… 渡さん! 266 00:19:27,600 --> 00:19:29,935 死んでも渡さん! 267 00:19:29,935 --> 00:19:32,972 (与吉)死ね じじい! あ~! 268 00:19:32,972 --> 00:19:36,609 うっ! くっ… ああ… くっ…。 269 00:19:36,609 --> 00:19:38,944 (与吉)この野郎! 270 00:19:38,944 --> 00:19:41,414 やめろ! 271 00:19:44,750 --> 00:19:48,120 わしの金じゃ わしの金じゃ…。 金兵衛殿! 272 00:19:48,120 --> 00:19:50,423 (金兵衛)わしの金じゃ… わしの…。 273 00:19:50,423 --> 00:19:52,691 わしの…。 274 00:19:54,293 --> 00:19:56,295 (金兵衛)痛い! 275 00:19:56,295 --> 00:19:58,964 わしの人生 ここまでか…。 276 00:19:58,964 --> 00:20:02,802 用心棒の新三郎さんが すぐに 担ぎ込んでくれた おかげで➡ 277 00:20:02,802 --> 00:20:05,438 命には関わりませんよ。 278 00:20:05,438 --> 00:20:10,643 えっ あんなに たくさん 血が出てたのに? 279 00:20:10,643 --> 00:20:13,145 よかったですね 赤い血で。 280 00:20:13,145 --> 00:20:16,115 何!? 口は達者のようだな。 281 00:20:19,919 --> 00:20:22,154 誰だい? お前さんは。 282 00:20:22,154 --> 00:20:25,057 南のお奉行様だよ。 283 00:20:25,057 --> 00:20:29,328 大岡様? じきじきに 話を聞いてくださるそうだ。 284 00:20:29,328 --> 00:20:33,165 押込みの連中に 心当たりは? 285 00:20:33,165 --> 00:20:39,338 連中のことは知りませんが 身内に手引きした者がいるのは確かです。 286 00:20:39,338 --> 00:20:42,241 ほう それは なぜだ? 287 00:20:42,241 --> 00:20:48,347 ご丁寧に 裏木戸が 内側から開けられておりました。 288 00:20:48,347 --> 00:20:50,850 内側から? 289 00:20:50,850 --> 00:20:53,486 きっと 身内の誰かが➡ 290 00:20:53,486 --> 00:20:57,690 今の落書の連中の仕業と見せかけて➡ 291 00:20:57,690 --> 00:21:03,796 わしの金 狙ったんだ! そうはさせんぞ! 死んでも させんぞ! 292 00:21:03,796 --> 00:21:09,668 死んでもか。 ならば 連中の望みどおり➡ 293 00:21:09,668 --> 00:21:12,972 このまま 一度 死んでもらおうか。 294 00:21:12,972 --> 00:21:15,307 ええ!? 295 00:21:15,307 --> 00:21:28,854 ♬~ 296 00:21:28,854 --> 00:21:32,858 (六兵衛) 旦那 本当に死んじまったんですね。 297 00:21:32,858 --> 00:21:36,595 何か 嘘みたいに あっけないね。 298 00:21:36,595 --> 00:21:40,533 ああ… そうだな。 299 00:21:40,533 --> 00:21:42,535 残念だ。 300 00:21:42,535 --> 00:21:47,673 (六兵衛)でも 本当は こっちで やらなきゃならない弔いの支度を➡ 301 00:21:47,673 --> 00:21:51,343 全部 先生の方で やってもらっちまって…。 302 00:21:51,343 --> 00:21:57,016 待て。 悪党に斬られた ぶざまな顔を 決して人には見せてくれるなと➡ 303 00:21:57,016 --> 00:22:00,886 いまわの際の金兵衛殿に頼まれたんでな。 304 00:22:00,886 --> 00:22:04,423 見えっ張りってのは 死んでも治んないんだねえ。 305 00:22:04,423 --> 00:22:10,196 ああ。 さ さあ 2人も 奥で身支度を。 あ そうですな。 306 00:22:15,067 --> 00:22:17,803 はあ…。 307 00:22:17,803 --> 00:22:19,839 先生も 役者ですなあ。 308 00:22:19,839 --> 00:22:22,675 心の臓に悪いよ。 ヘヘヘ…。 309 00:22:22,675 --> 00:22:25,444 ただいま 戻りやした。 あ 辰! 310 00:22:25,444 --> 00:22:27,980 お前 この忙しい時に どこ行ってたんだ!? 311 00:22:27,980 --> 00:22:30,649 いや お葬式ったら 坊さんだと思いやして…。 312 00:22:30,649 --> 00:22:33,452 坊さん役 連れてきやした。 坊さん役? 313 00:22:33,452 --> 00:22:36,822 このじいさんは あっしと同じ長屋に住んでるんですがね➡ 314 00:22:36,822 --> 00:22:40,326 毎朝毎晩 死んだ ばあさんのために お経あげてるから。 315 00:22:40,326 --> 00:22:43,329 じゃあ 悪いが 頼めるかい? へい。 316 00:22:43,329 --> 00:22:46,198 よし! 座棺を広間へ。 317 00:22:46,198 --> 00:22:48,167 (一同)へい! 318 00:22:50,002 --> 00:22:53,472 (拍子木) ⚟火の用心! 319 00:22:53,472 --> 00:22:56,375 番頭さん そろそろ…。 320 00:22:56,375 --> 00:23:01,947 ⚟(拍子木) 321 00:23:01,947 --> 00:23:06,118 ⚟火の用心! 322 00:23:08,721 --> 00:23:14,426 身内で 様子のおかしな者がいないか よ~く見ておくんだぞ。 323 00:23:14,426 --> 00:23:16,495 分かっとるよ。 324 00:23:16,495 --> 00:23:20,299 どいつが わしの金を狙っているのか➡ 325 00:23:20,299 --> 00:23:26,038 この目で しかと見届けてやるわい。 326 00:23:26,038 --> 00:23:30,442 (鉦の音) お 始まるぞ。 327 00:23:30,442 --> 00:23:36,148 (鉦の音) 328 00:23:36,148 --> 00:23:48,727 (読経) 329 00:23:48,727 --> 00:23:55,167 どうだ? フン どいつもこいつも 怪しいもんだ。 330 00:23:55,167 --> 00:23:58,671 涙の一つも流しとらん。 331 00:23:58,671 --> 00:24:04,109 確かに 清助以外 誰も悲しむ様子は ないな…。 332 00:24:04,109 --> 00:24:08,614 目星も つかんのか? う~ん…。 333 00:24:08,614 --> 00:24:13,953 六兵衛は わしのやり方に 不服そうだったから➡ 334 00:24:13,953 --> 00:24:17,423 店の乗っ取りを企てたのかもしれん。 335 00:24:17,423 --> 00:24:20,125 乗っ取りとは穏やかじゃないな。 336 00:24:20,125 --> 00:24:23,896 きっと あの女の浅知恵だろう。 337 00:24:25,998 --> 00:24:28,834 では あの2人が? 338 00:24:28,834 --> 00:24:33,439 いや… 待てよ。 339 00:24:33,439 --> 00:24:38,644 真面目な男が つい 出来心ってこともある。 340 00:24:38,644 --> 00:24:41,547 (伊織)それは ありえるな。 (金兵衛)しかし➡ 341 00:24:41,547 --> 00:24:46,151 実は まさか おとめが女狐で…。 342 00:24:46,151 --> 00:24:49,455 何だ… 一つも 目星がついておらんではないか。 343 00:24:49,455 --> 00:24:51,523 しかたないだろう。 344 00:24:51,523 --> 00:24:54,994 金の欲しくない者など おらんのだから。 345 00:24:56,995 --> 00:25:00,032 おっ あれは… 長吉か。 346 00:25:00,032 --> 00:25:13,479 (読経) 347 00:25:13,479 --> 00:25:19,251 まさか あいつら みんなで ぐるになって…。 348 00:25:19,251 --> 00:25:21,186 (読経と鉦の音) 349 00:25:21,186 --> 00:25:24,957 (伊織)しかし 誰も弔問に来んな。 350 00:25:28,627 --> 00:25:35,968 (読経) 351 00:25:35,968 --> 00:25:38,804 (あくび) 352 00:25:38,804 --> 00:25:41,140 旦那! 旦那! 来ましたよ。 353 00:25:41,140 --> 00:25:43,075 (伊織 新三郎)ん? 354 00:25:43,075 --> 00:25:48,814 (弔問客)守銭奴の死に面を 拝みたかったんだがな。 355 00:25:48,814 --> 00:25:52,684 (弔問客)か~っ つまらん 帰るか! おい 行くぞ! 356 00:25:52,684 --> 00:25:55,587 (おふき)ちょっと あんたら お焼香ぐらいしたら どうなのさ! 357 00:25:55,587 --> 00:25:58,056 (弔問客) あ~ もう いらん いらん いらん! 358 00:26:02,261 --> 00:26:04,596 (鉦の音) 359 00:26:04,596 --> 00:26:14,273 ♬~ 360 00:26:14,273 --> 00:26:19,778 金兵衛殿の人生の終わりに 手を合わせる者は おらんのか。 361 00:26:19,778 --> 00:26:26,118 死んじまったあとのことなんか どうでもいいだろ。 362 00:26:26,118 --> 00:26:30,789 それが お主の 生きて この世に残す言葉か? 363 00:26:33,425 --> 00:26:39,631 自分が死んだ そのあとも 残された者たちの一生は続いていくんだ。 364 00:26:39,631 --> 00:26:44,970 金兵衛殿は 清助に何を残された? 365 00:26:44,970 --> 00:26:50,642 蔵いっぱいの財じゃ 足りんか? 366 00:26:56,582 --> 00:26:59,051 (清助)蔵の鍵…。 367 00:27:01,753 --> 00:27:06,592 こんなもののために お父っつぁんは 命を…。 368 00:27:06,592 --> 00:27:08,560 若旦那…。 369 00:27:17,102 --> 00:27:21,974 旦那も 昔は 人のいい商人だったんだがな。 370 00:27:21,974 --> 00:27:25,777 フン! (太助)それが どうして? 371 00:27:25,777 --> 00:27:28,247 (六兵衛)お通夜の晩だ。 372 00:27:30,415 --> 00:27:34,186 故人をしのぶのが 供養か…。 373 00:27:37,189 --> 00:27:42,794 まあ 聞けば あわれな話ではあるんだけどね。 374 00:27:42,794 --> 00:27:48,600 旦那が まだ幼い頃 商いに しくじったとかで➡ 375 00:27:48,600 --> 00:27:51,803 二親が心中しちまってね。 376 00:27:51,803 --> 00:27:54,139 心中…。 377 00:27:54,139 --> 00:27:59,311 たった一人 途方に暮れる旦那の 面倒を見てやったのが➡ 378 00:27:59,311 --> 00:28:02,915 この千石屋の先代だったのさ。➡ 379 00:28:02,915 --> 00:28:06,251 それから 旦那は休まず働いて➡ 380 00:28:06,251 --> 00:28:10,923 真面目な性分もあってか 跡継ぎのなかった先代は➡ 381 00:28:10,923 --> 00:28:13,825 お店を旦那に譲ったんだ。➡ 382 00:28:13,825 --> 00:28:18,397 確か 清助さんが生まれたのも そのころだったね。 383 00:28:18,397 --> 00:28:20,933 (金兵衛)何を考えてんですか? 384 00:28:20,933 --> 00:28:23,835 わ…。 ん? 385 00:28:23,835 --> 00:28:27,606 (六兵衛)ところが 先代から お世話になっていた大店に➡ 386 00:28:27,606 --> 00:28:31,276 だまされちまってな…。 387 00:28:31,276 --> 00:28:35,948 それからというもの 不運続きで➡ 388 00:28:35,948 --> 00:28:39,785 気が付けば 蔵の金は空っぽ。➡ 389 00:28:39,785 --> 00:28:44,456 その上 女房は 心労で亡くなっちまった。 390 00:28:48,126 --> 00:28:52,431 正直者の心が 壊れてしまったというわけだ。 391 00:28:52,431 --> 00:28:56,301 (おふき)旦那の金への執着は ひどくなるばっかりで…。 392 00:28:56,301 --> 00:28:58,971 (長吉)そんなことが…。 393 00:29:04,042 --> 00:29:06,945 (おとめ)若旦那 どちらへ? 394 00:29:06,945 --> 00:29:10,382 奉行所へ 自訴しに…。 395 00:29:10,382 --> 00:29:13,919 じ 自訴? 396 00:29:13,919 --> 00:29:17,389 今回の騒動のもとは 私なんだ。 397 00:29:17,389 --> 00:29:19,758 それは どういう…。 398 00:29:19,758 --> 00:29:23,262 町に貼られた 初めの落書は➡ 399 00:29:23,262 --> 00:29:25,197 私が書いて貼ったもの。 400 00:29:25,197 --> 00:29:27,165 うっ! 401 00:29:29,935 --> 00:29:32,971 な 何で そんなことを? 402 00:29:32,971 --> 00:29:38,410 世間から悪く言われれば お父っつぁんも目が覚めてくれるかと…。 403 00:29:38,410 --> 00:29:42,948 でも 気付いたら知らない落書までが 町じゅうに広がり…。 404 00:29:42,948 --> 00:29:46,785 店の皆にも迷惑がかかるし このままじゃ いけないと➡ 405 00:29:46,785 --> 00:29:51,123 今度は 慌てて 町の落書を剥がして回った。 406 00:29:51,123 --> 00:29:54,092 だが 最初に貼ったところを 見られていたんだ。 407 00:30:02,301 --> 00:30:05,971 (与吉)自分で まいた種だろう! 408 00:30:05,971 --> 00:30:11,777 若旦那の貼った落書が 大変なことになっちまったな。 409 00:30:11,777 --> 00:30:16,448 (鮫造)このことが知れたら あんたも この店も➡ 410 00:30:16,448 --> 00:30:18,617 ただじゃ済まないだろうぜ。 411 00:30:20,819 --> 00:30:26,491 そんなに おやじが憎かったら 手伝ってやってもいいぜ。 412 00:30:29,528 --> 00:30:34,100 執着する金がなければ お父っつぁんが 昔に戻ってくれると思い…。 413 00:30:34,100 --> 00:30:36,968 (鍵が開く音) 414 00:30:38,870 --> 00:30:41,340 (閂を外す音) 415 00:30:46,344 --> 00:30:48,280 (小判が落ちる音) 死ね じじい! 416 00:30:48,280 --> 00:30:51,016 ああっ! やめろ! 417 00:30:51,016 --> 00:30:53,351 (金兵衛)わしの金じゃ。 金兵衛殿! 418 00:30:53,351 --> 00:30:56,354 (金兵衛)わしの金じゃ わしの金じゃ。 419 00:30:56,354 --> 00:31:00,625 あ… わしの… わしの…。 420 00:31:00,625 --> 00:31:06,131 (清助)でも 最期の最期まで お父っつぁんは 金にしがみついて…。➡ 421 00:31:06,131 --> 00:31:08,300 守銭奴とは よく言ったもんです。 422 00:31:10,802 --> 00:31:13,071 (清助)皆さんには 迷惑をかけました。 423 00:31:17,309 --> 00:31:19,244 若旦那! 424 00:31:19,244 --> 00:31:23,715 皆さんは お父っつぁんのそばに いてください。 425 00:31:27,319 --> 00:31:30,489 (足音) 426 00:31:36,828 --> 00:31:42,000 (鮫造)よう 若旦那。 今度こそ 蔵の金を頂きに来たぜ! 427 00:31:42,000 --> 00:31:45,871 人殺しめ。 (与吉)おい 随分だなあ。➡ 428 00:31:45,871 --> 00:31:49,474 俺たちの話に乗ったのは てめえじゃねえか。 429 00:31:49,474 --> 00:31:54,179 本望じゃねえか? 金を枕に死ねたんだからよ! 430 00:31:54,179 --> 00:31:56,114 (鮫造 与吉)ハッハッハ…! 431 00:31:56,114 --> 00:32:00,585 こんなやつらにまで笑われて…。 何だと!? 432 00:32:02,287 --> 00:32:05,123 蔵の鍵だ。 好きなだけ持ってけ。 433 00:32:05,123 --> 00:32:10,295 そりゃ 手間が省けて助かるが おめえは どこに? 434 00:32:10,295 --> 00:32:15,801 奉行所へ自訴しに行く。 へえ~! そいつは殊勝な心掛けだが➡ 435 00:32:15,801 --> 00:32:18,637 それを聞いたら ここは通せねえな。 436 00:32:18,637 --> 00:32:21,306 うっ! ああっ! 437 00:32:21,306 --> 00:32:27,446 (鮫造)自分の罪を悔いたいんだったら 地獄で 勝手にやってくれ。 438 00:32:27,446 --> 00:32:31,983 それが 一番楽になれるか…。 439 00:32:31,983 --> 00:32:34,653 ぶざまな おやじとは大違いだなあ。 440 00:32:34,653 --> 00:32:38,323 じゃあ お望みどおりに…。 清助! 441 00:32:40,158 --> 00:32:44,329 お父っつぁん。 何で おめえが!? 442 00:32:44,329 --> 00:32:46,298 罠か!? 443 00:32:49,668 --> 00:32:51,603 ご明察。 444 00:32:51,603 --> 00:32:53,572 (与吉)くそ~! 445 00:32:55,540 --> 00:32:57,542 うあ~! 446 00:32:57,542 --> 00:33:00,278 お~っ! 447 00:33:00,278 --> 00:33:03,248 (同心)おい! 立て こら! 448 00:33:06,785 --> 00:33:09,754 お父っつぁん 生きてたんですね。 449 00:33:12,591 --> 00:33:16,294 お主まで 偽ることとなり 申し訳なかった。 450 00:33:16,294 --> 00:33:19,297 おかげで 下手人を捕らえることができた。 451 00:33:19,297 --> 00:33:23,068 そういうことですか。 452 00:33:23,068 --> 00:33:25,737 これも 自分で招いたことです。 453 00:33:30,842 --> 00:33:32,811 大丈夫か? 454 00:33:34,980 --> 00:33:37,649 頼んだぞ。 はい。 455 00:33:40,652 --> 00:33:43,154 清助! 456 00:33:43,154 --> 00:33:45,457 先生。 うん。 457 00:33:45,457 --> 00:33:49,327 じゃ 私は これで。 ああ ご苦労さま。 458 00:33:49,327 --> 00:33:54,165 あと これ 清助さんに お布施 頂いちまって…。 459 00:33:54,165 --> 00:33:57,469 取っておくがいい。 とんでもない。 460 00:33:57,469 --> 00:34:01,773 これは 頂くわけにはいきません。 なぜだ? 461 00:34:01,773 --> 00:34:07,746 これは 清助さんの 父親への供養ですから。 462 00:34:15,620 --> 00:34:18,123 (爺さん)お返しします。 463 00:34:18,123 --> 00:34:22,794 (太鼓の音) 464 00:34:22,794 --> 00:34:29,568 南町奉行 大岡越前守様 ご出座~! 465 00:34:29,568 --> 00:34:34,306 (太鼓の音) 466 00:34:34,306 --> 00:34:40,645 これより 千石屋の騒動の一件につき 吟味いたす。 467 00:34:40,645 --> 00:34:43,915 一同の者 面を上げよ。 468 00:34:52,657 --> 00:34:59,831 こたびの一件 親子の間の騒動とはいえ 世間を騒がせた上➡ 469 00:34:59,831 --> 00:35:04,269 お上の手を煩わせしこと 重々 不届きにつき➡ 470 00:35:04,269 --> 00:35:06,538 厳しく吟味いたす。 471 00:35:09,941 --> 00:35:15,747 さて 清助。 その方 鮫造たちに盗みを指図し➡ 472 00:35:15,747 --> 00:35:19,417 屋敷内に導いたことに相違はないか? 473 00:35:21,286 --> 00:35:25,156 はい。 相違ございません。 474 00:35:25,156 --> 00:35:30,628 しかし そのたくらみは 蔵の金を奪うのみならず➡ 475 00:35:30,628 --> 00:35:36,134 成り行きとはいえ 金兵衛の命をも 奪うところであった。 476 00:35:36,134 --> 00:35:42,307 しかるに 清助 その方の科は 親殺しとなる。 477 00:35:42,307 --> 00:35:45,810 (六兵衛)そんな…。 若旦那! 478 00:35:45,810 --> 00:35:49,681 はい。 いかなるお裁きでも…。 清助さん! 479 00:35:49,681 --> 00:35:55,820 清助 親殺しの罪は承知の上か? 480 00:35:55,820 --> 00:35:59,457 もとより 死罪と存じております。 481 00:35:59,457 --> 00:36:02,460 死罪!? あ…。 482 00:36:02,460 --> 00:36:05,930 申し開きはないと申すか。 483 00:36:05,930 --> 00:36:11,603 人の道を失った私めに 何を申し開くことがありましょう。 484 00:36:11,603 --> 00:36:15,407 厳しいお沙汰を お願いいたします。 485 00:36:15,407 --> 00:36:18,610 そうか。 486 00:36:18,610 --> 00:36:21,279 フフッ…。 487 00:36:23,281 --> 00:36:26,251 金兵衛 何がおかしい? 488 00:36:30,789 --> 00:36:33,458 控えよ! 構わぬ。 489 00:36:46,971 --> 00:36:53,445 いつの間にか いい男に育ったもんだ。 490 00:36:55,313 --> 00:37:00,752 俺みてえなのが 親じゃなければ➡ 491 00:37:00,752 --> 00:37:07,926 お前には どんな今が あったんだろうな。 492 00:37:07,926 --> 00:37:09,894 お父っつぁん…。 493 00:37:12,097 --> 00:37:18,970 お前に お父っつぁんと言われることを➡ 494 00:37:18,970 --> 00:37:23,108 こんなに うれしく思ったことも➡ 495 00:37:23,108 --> 00:37:27,879 こんなに 恥ずかしく思ったこともねえや。 496 00:37:29,881 --> 00:37:33,551 こんなつもりじゃなかったんだ。 497 00:37:35,620 --> 00:37:38,957 (金兵衛)ただ 俺は➡ 498 00:37:38,957 --> 00:37:44,729 小さかった お前の手を 決して離しちゃなんねえと…。 499 00:37:47,432 --> 00:37:52,137 (金兵衛)俺と おんなじ苦しみだけは…。➡ 500 00:37:52,137 --> 00:37:54,906 そう思っただけなんだ。 501 00:37:57,008 --> 00:38:01,980 親の欲なんて 勝手なもんだな。 502 00:38:04,082 --> 00:38:07,252 恥かかした…。 503 00:38:09,754 --> 00:38:11,723 すまなかった…。 504 00:38:25,236 --> 00:38:33,278 お奉行様 こんな私でも 親は親です。 505 00:38:33,278 --> 00:38:41,786 せめて せがれの責めを 親の私に…。 506 00:38:41,786 --> 00:38:49,060 どうぞ 私めを 死罪にしてください! 507 00:38:53,131 --> 00:38:56,434 (金兵衛)でも…。 508 00:38:56,434 --> 00:39:05,910 でも 許されるのなら もう一度 もう一度…➡ 509 00:39:05,910 --> 00:39:11,082 清助の父親になりてえ! 510 00:39:12,684 --> 00:39:21,459 胸を張って お父っつぁんと 呼んでもらいてえ! 511 00:39:23,761 --> 00:39:26,231 お父っつぁん…。 512 00:39:33,938 --> 00:39:39,210 清助 よくぞ殺したな。 513 00:39:46,284 --> 00:39:52,423 お前が殺したのは 金兵衛の心に巣くう餓鬼だ! 514 00:39:52,423 --> 00:39:57,962 鬼退治 ご苦労であった。 515 00:39:57,962 --> 00:40:00,298 お奉行様…。 516 00:40:00,298 --> 00:40:03,468 ありがとうございます! 517 00:40:15,647 --> 00:40:19,517 お~い! ああ 生きてた 旦那 生きてたぞ! 518 00:40:19,517 --> 00:40:22,820 ああ~! ああ ありがとうございます。 519 00:40:22,820 --> 00:40:27,158 金兵衛さん… 金兵衛さん 本当に生きてた。 520 00:40:27,158 --> 00:40:31,329 ありがとうございます。 ありがとうございます。 521 00:40:31,329 --> 00:40:33,331 ありがとうございます。 驚いた…。 522 00:40:33,331 --> 00:40:39,203 自分のお通夜を 天井からのぞき 弔問客まで 自分で出迎えるとはな。 523 00:40:39,203 --> 00:40:42,040 先生ですか? そう。 524 00:40:42,040 --> 00:40:48,346 実は 金兵衛さんから もらった薬料を 貧しい人たちに施したんですよ。 525 00:40:48,346 --> 00:40:52,350 そんなことを…。 生まれ変わりだな。 526 00:40:52,350 --> 00:40:57,021 どうだ? 人のよい好々爺になった気分は。 527 00:40:57,021 --> 00:41:00,425 本当に本当に…。 (2人)ありがとうございました。 528 00:41:00,425 --> 00:41:02,593 ありがとうございました。 529 00:41:05,129 --> 00:41:10,301 心が 丈夫になるよ! 530 00:41:10,301 --> 00:41:13,271 ハハハ…。ハハハ…。 531 00:41:15,440 --> 00:41:20,278 (妙)親たる者 子が恥じるような生き方は できませんね。 (作左ヱ門)うむ。 532 00:41:20,278 --> 00:41:22,814 恥知らずな落書の人たちも➡ 533 00:41:22,814 --> 00:41:25,717 今回の一件に ならってもらいたいものです。 534 00:41:25,717 --> 00:41:28,686 そのことなら 近く➡ 535 00:41:28,686 --> 00:41:32,523 みだりな悪口は 人の世の障りとなる。 536 00:41:32,523 --> 00:41:38,663 故に 厳科に処すべきものと 触れを出すつもりじゃ。 537 00:41:38,663 --> 00:41:41,833 これは 上様。 538 00:41:44,469 --> 00:41:50,341 (作左ヱ門)お触れなど なくともよい 世の中でありたいものですな。 539 00:41:50,341 --> 00:41:54,679 そういえば 金兵衛さんのお店も すっかり 評判が よろしくなったようで。 540 00:41:54,679 --> 00:41:57,582 近頃は養生所へ 多額の寄進をしてくれてるよ。 541 00:41:57,582 --> 00:41:59,550 まあ それはよかった。 542 00:41:59,550 --> 00:42:04,355 お金というのは 使う方も 使われる方も➡ 543 00:42:04,355 --> 00:42:07,959 喜び合えるのが本当かもしれませんね。 544 00:42:07,959 --> 00:42:09,994 求次郎。 (求次郎)はい。 545 00:42:09,994 --> 00:42:13,297 お前も 銭金なんかに うつつを抜かすなよ。 546 00:42:13,297 --> 00:42:16,801 大丈夫です。 私は 宵越しの金は持ちません。 547 00:42:16,801 --> 00:42:19,704 おっ 粋なやつめ。 548 00:42:19,704 --> 00:42:23,141 フフフフ…。 549 00:42:23,141 --> 00:42:29,013 <いつか迎える臨終の時 いい人生だったと笑えるように➡ 550 00:42:29,013 --> 00:42:35,319 心豊かに生きたいと願う 忠相であった> 551 00:42:35,319 --> 00:42:37,989 お店の者を一人も生かさぬ 残忍な手口。 552 00:42:37,989 --> 00:42:39,924 かつて 江戸を騒がせた盗賊一味。 553 00:42:39,924 --> 00:42:43,461 お前にとって 誰より大切な方たちが 眠ってらっしゃるって。 554 00:42:43,461 --> 00:42:45,530 母親面しやがって 笑わせるぜ。 555 00:42:45,530 --> 00:42:47,665 あの子にだけは 近づかないで! 556 00:42:47,665 --> 00:42:50,334 力を貸してくれるのなら そなたの身は守る。 557 00:42:50,334 --> 00:42:52,837 娘の身に何かあったと思われます。 558 00:42:52,837 --> 00:42:55,006 一人残らず 召し捕れい!