1 00:00:09,610 --> 00:00:13,113 (おたけ)フフッ… もうすぐだねえ おそのちゃん。 2 00:00:13,113 --> 00:00:16,950 あっ…。 男の子かね? 女の子かね? 3 00:00:16,950 --> 00:00:19,620 もう 待ち遠しいだろう。 4 00:00:19,620 --> 00:00:22,523 (おあき)佐吉さんが商いから 戻ってくるのは いつなんだい? 5 00:00:22,523 --> 00:00:25,959 あ~… あと10日くらい。 6 00:00:25,959 --> 00:00:28,862 間に合うといいね。 7 00:00:28,862 --> 00:00:31,632 うっ…。 どうした? 8 00:00:31,632 --> 00:00:34,935 あっ あたし 頭痛持ちだから。 (戸が開く音) 9 00:00:36,503 --> 00:00:41,642 (おあき)由吉さん 今からかい? (おたけ)気を付けて行っといで! 10 00:00:41,642 --> 00:00:43,644 (せき) 11 00:00:51,151 --> 00:00:56,823 (せき) 客商いだってのに 愛想のない男だよ まったく…。 12 00:00:56,823 --> 00:01:00,394 あれ 何だい どうしたんだい? 13 00:01:00,394 --> 00:01:02,329 ん? 14 00:01:02,329 --> 00:01:05,766 熱いね。 (せき) 15 00:01:05,766 --> 00:01:09,937 うち帰って寝てな。 すぐ治るから。 16 00:01:09,937 --> 00:01:14,241 あたしも うちに帰ります。 (せき) 17 00:01:17,611 --> 00:01:22,482 (せき) 18 00:01:22,482 --> 00:01:26,286 (親方)おい 足元に気を付けろ。 (一同)へい! 19 00:01:31,124 --> 00:01:35,329 (せき) 20 00:01:37,297 --> 00:01:42,169 (親方)重吉 急げ! へえ。 21 00:01:42,169 --> 00:01:44,171 (せき) 22 00:01:49,810 --> 00:01:52,312 (松平左近将監)上様 これは…。 23 00:01:53,981 --> 00:01:57,184 (対馬守)オランダ語の洋書。 24 00:01:59,853 --> 00:02:05,392 (吉宗)中には 奇態な生き物が 数多く描いてある。 25 00:02:05,392 --> 00:02:11,198 もう一冊には さまざまな草木が描かれておる。 26 00:02:11,198 --> 00:02:16,937 四代 家綱公が オランダ商館長から 寄贈されたものと➡ 27 00:02:16,937 --> 00:02:19,973 紅葉山の書物奉行が申しておった。 28 00:02:19,973 --> 00:02:24,678 <紅葉山とは 江戸城内にある小高い丘で➡ 29 00:02:24,678 --> 00:02:31,118 将軍家の書物庫があり 紅葉山御文庫と呼ばれていた> 30 00:02:31,118 --> 00:02:34,621 鼻が長いのは象であろう。 31 00:02:34,621 --> 00:02:39,493 だが この首の長い獣は何じゃ? 32 00:02:39,493 --> 00:02:42,963 人の顔をした鳥もおるぞ。 33 00:02:42,963 --> 00:02:47,434 ほう…。 忠相 お主に これが分かるか? 34 00:02:47,434 --> 00:02:49,503 はあ… あ いえ。 35 00:02:49,503 --> 00:02:52,139 どうじゃ? 下野。 36 00:02:52,139 --> 00:02:55,042 まこと このような獣が おるのでしょうか。 37 00:02:55,042 --> 00:02:58,645 う~ん それが分からぬ。 38 00:02:58,645 --> 00:03:05,252 分からなければ 分かるやつを探し出せばよい。 39 00:03:05,252 --> 00:03:10,123 そこに 何が書いてあるのか 余は知りたい。 40 00:03:10,123 --> 00:03:14,261 ですが 上様 洋書は国禁。 41 00:03:14,261 --> 00:03:19,599 キリシタンと関わりのあるものは 無論のこと 関わりなくとも…。 42 00:03:19,599 --> 00:03:24,938 たとえ 漢訳であっても 洋書の類いは これを一切認めずと。 43 00:03:24,938 --> 00:03:28,608 それが 開闢以来のご定法。 44 00:03:28,608 --> 00:03:31,945 それを上様御自ら お破りになるのは…。 45 00:03:31,945 --> 00:03:34,848 余一人の楽しみじゃ。 46 00:03:34,848 --> 00:03:37,417 目をつぶれ 左近。 47 00:03:37,417 --> 00:03:39,953 はあ…。 48 00:03:39,953 --> 00:03:42,856 忠相 どうじゃ? 49 00:03:42,856 --> 00:03:46,293 オランダ語に通じている者を知らぬか? 50 00:03:46,293 --> 00:03:52,432 この洋書が読めるやもしれぬ者 心当たりがございますが…。 51 00:03:52,432 --> 00:03:56,303 そうか。 どうじゃ 左近。 52 00:03:56,303 --> 00:04:01,241 はっ。 上様お一人の お楽しみならば…。 53 00:04:01,241 --> 00:04:03,577 決まりじゃ。 54 00:04:03,577 --> 00:04:08,081 忠相 その者らに とく伝えよ。 55 00:04:08,081 --> 00:04:10,083 はっ! 56 00:04:16,389 --> 00:05:30,897 ♬~ 57 00:05:45,779 --> 00:05:48,615 (おいね)あっ お奉行様。 ⚟(新三郎)何が悪いのだ! 58 00:05:48,615 --> 00:05:50,550 あっ お二人を止めてください。 59 00:05:50,550 --> 00:05:52,485 ⚟(伊織)ここに書いてあることは めちゃくちゃだ! 60 00:05:52,485 --> 00:05:55,956 このぐらい 声を張り上げねば お上には届かんということぐらい➡ 61 00:05:55,956 --> 00:05:59,626 分からんのか 腰抜けが! 腰抜けとは何だ 腰抜けとは! 62 00:05:59,626 --> 00:06:03,363 おい どうしたというのだ。 おっ 忠相 いいところへ来た。 63 00:06:03,363 --> 00:06:05,865 聞いてくれ。 いえ まず 私の話から。 64 00:06:09,069 --> 00:06:15,742 <その書面は 幕府の鎖国政策 特に 西洋の書物に対して➡ 65 00:06:15,742 --> 00:06:20,247 閉ざされた国禁を撤廃するよう 訴えていた> 66 00:06:26,453 --> 00:06:29,289 いかがですか? お奉行。 ひどいものだろ。 67 00:06:29,289 --> 00:06:33,760 どこが ひどいのだ。 これでは 将軍家に対する糾弾そのもの。 68 00:06:33,760 --> 00:06:36,396 上様を無能扱いして ただで済むと思うか!? 69 00:06:36,396 --> 00:06:39,266 こんなものを目安箱に放り込んでみろ。 70 00:06:39,266 --> 00:06:43,937 お前は お上のご威光をおそれぬ 乱心者として捕らえられるのが関の山だ。 71 00:06:43,937 --> 00:06:46,606 これを目安箱へ? 72 00:06:46,606 --> 00:06:49,509 そうです。 オランダの洋書は おろか➡ 73 00:06:49,509 --> 00:06:52,412 清国で訳された書物すら 満足に読めない。 74 00:06:52,412 --> 00:06:55,782 そのせいで 熱冷まし一つとっても 後れを取っている。 75 00:06:55,782 --> 00:06:58,685 こんなありさまでは 日の本は取り残されます。 76 00:06:58,685 --> 00:07:02,055 こんな意見書一つで つむじを曲げる お上など➡ 77 00:07:02,055 --> 00:07:03,990 無能と断じて差し支えない! 78 00:07:03,990 --> 00:07:08,928 では 聞くが お主がつとめておるのは お上がつくった養生所ではないのか? 79 00:07:08,928 --> 00:07:12,232 そのお主が こんなものを書いたことが 分かってみろ。 80 00:07:12,232 --> 00:07:16,069 ここが 立ち行かなくなるおそれがある。 だから 腰抜けだと言っておるのだ。 81 00:07:16,069 --> 00:07:18,972 職を賭してこそ…。 養生所を開いたのは忠相だ! 82 00:07:18,972 --> 00:07:21,741 その忠相に 害が及んでもよいというのか? お主は。 83 00:07:21,741 --> 00:07:25,612 まあ 待て。 これを目安箱へ放り込むのは➡ 84 00:07:25,612 --> 00:07:28,615 しばらく待ってはくれぬか。 いや しかし…。 85 00:07:28,615 --> 00:07:32,385 上様が 紅葉山御文庫で 洋書を見つけられ➡ 86 00:07:32,385 --> 00:07:37,223 ついては 読める者を探しておられる。 上様が? 87 00:07:37,223 --> 00:07:41,928 俺は お前たちの どちらかを 推挙するつもりでいた。 88 00:07:41,928 --> 00:07:44,764 上様は 学問に貪欲なお方だ。 89 00:07:44,764 --> 00:07:50,403 西洋の書が どれだけ大切か お分かりになれば いずれ…。 90 00:07:50,403 --> 00:07:53,940 分かるか 新三郎。 91 00:07:53,940 --> 00:07:56,276 ん…。 92 00:07:56,276 --> 00:08:01,715 いずれ お主の心意気 必ず 通じる時が来る。 93 00:08:01,715 --> 00:08:04,217 いずれな…。 94 00:08:15,562 --> 00:08:18,365 お前がいてくれて よかった。 95 00:08:18,365 --> 00:08:21,067 納得しておればよいのだが…。 96 00:08:32,879 --> 00:08:36,883 いずれでは いかんのだ。 いずれでは…。 97 00:08:45,258 --> 00:08:48,061 (せきこみ) 98 00:08:56,970 --> 00:09:03,543 ああ 皆に蕎麦でも 食べさせておやりなさい。 99 00:09:03,543 --> 00:09:05,545 (手代)へい! 100 00:09:10,417 --> 00:09:14,554 蕎麦を十ばかり。 へい。 101 00:09:14,554 --> 00:09:17,223 あっ ちょっ 蕎麦屋さん!➡ 102 00:09:17,223 --> 00:09:21,528 おい あんた! おい 大丈夫かよ!? おい しっかりしろよ! 103 00:09:23,363 --> 00:09:26,266 (源次郎)やはり 風邪かい? 104 00:09:26,266 --> 00:09:29,736 (町医者)せきが ひどく 熱もありますからなあ。 105 00:09:29,736 --> 00:09:32,772 多分 こじらせたんでしょう。 106 00:09:32,772 --> 00:09:35,608 薬は 後で取りに来てください。 107 00:09:35,608 --> 00:09:38,611 では…。 あっ ご苦労さん。 108 00:09:42,449 --> 00:09:46,252 どこの蕎麦屋だ? (勘太)屋台ですからねえ。➡ 109 00:09:46,252 --> 00:09:48,922 明日 辰三親分と探ってきやす。 110 00:09:48,922 --> 00:09:50,957 頼んだぞ。 へい。 111 00:09:50,957 --> 00:09:53,092 うう…。 112 00:09:53,092 --> 00:09:55,929 (せきこみ) 113 00:09:55,929 --> 00:09:58,231 ハア…。 114 00:10:03,269 --> 00:10:06,940 あ~ すまんが ここに おそのという女は いるか? 115 00:10:06,940 --> 00:10:08,875 ええ いますよ。 116 00:10:08,875 --> 00:10:13,112 あ… 子を産むと 人づてに聞いたのでな 訪ねてきた。 117 00:10:13,112 --> 00:10:19,886 あっ それが 頭が痛いとかで 昨日から 寝たっきりですけどね。 118 00:10:19,886 --> 00:10:22,789 ハッ 相変わらず 頭痛持ちか。 119 00:10:22,789 --> 00:10:27,961 養生所にいる時も 随分と寝込んで 世話を焼かされたものだが フッ…。 120 00:10:27,961 --> 00:10:30,430 養生所の先生ですか。 ああ。 121 00:10:30,430 --> 00:10:34,968 だったら うちの子も ついでに ちょいと診てくれませんかね。 122 00:10:34,968 --> 00:10:37,303 熱出して 寝込んでるんですよ。 123 00:10:37,303 --> 00:10:40,640 あの 後生ですから…。 ああ 分かった。 124 00:10:40,640 --> 00:10:43,143 おその 入るぞ。 (戸が開く音) 125 00:10:43,143 --> 00:10:47,647 (せきこみ) ん? おい おその。 126 00:10:47,647 --> 00:10:51,150 どうした? (せきこみ) 127 00:10:51,150 --> 00:10:54,053 ひどい熱じゃないか。 128 00:10:54,053 --> 00:10:58,658 先生 喉が… 喉が かゆい。 129 00:10:58,658 --> 00:11:00,593 何!? 130 00:11:00,593 --> 00:11:04,097 (せきこみ) 131 00:11:04,097 --> 00:11:06,599 これは もしや!? 132 00:11:06,599 --> 00:11:09,402 おい すぐに家主を呼ぶんだ。 133 00:11:09,402 --> 00:11:12,272 えっ? おそのを養生所に運ぶ。 134 00:11:12,272 --> 00:11:14,941 子供が熱を出してると言ったな。 すぐに診せてくれ。 135 00:11:14,941 --> 00:11:18,278 ええ。 おその しばらくの辛抱だからな。 136 00:11:18,278 --> 00:11:22,115 (おそのの せきこみ) 137 00:11:22,115 --> 00:11:24,784 前 開けるぞ。 138 00:11:24,784 --> 00:11:26,719 この吹き出物は いつ出た? 139 00:11:26,719 --> 00:11:28,721 今朝 急に…。 140 00:11:30,590 --> 00:11:34,127 ん…。 はあ…。 141 00:11:34,127 --> 00:11:36,429 どうした? ん? 142 00:11:36,429 --> 00:11:39,299 はあ…。 お前も 熱があるじゃないか! 143 00:11:39,299 --> 00:11:41,234 ほかに 熱のある者は? 144 00:11:41,234 --> 00:11:45,104 そういえば 長屋の子供たちが何人か…。 145 00:11:45,104 --> 00:11:48,908 (太吉のせきこみ) よし 待ってろ。 146 00:11:52,312 --> 00:11:55,648 結城先生じゃありやせんか。 あ~ 辰っつぁん! 子吉! 147 00:11:55,648 --> 00:11:58,685 (おあき)先生 家主さんだよ。 ああ。 148 00:11:58,685 --> 00:12:01,921 (長兵衛)い… 一体 何事ですか? 149 00:12:01,921 --> 00:12:06,759 この長屋に 高熱が出たり 体に 吹き出物が出ている者がいる。 150 00:12:06,759 --> 00:12:10,396 恐らく 疫病だ。 疫病!? 151 00:12:10,396 --> 00:12:13,766 吹き出物に熱ですって? ああ。 それが どうした? 152 00:12:13,766 --> 00:12:16,269 実は ゆんべ 屋台の蕎麦屋が 一人 ぶっ倒れて➡ 153 00:12:16,269 --> 00:12:19,272 番屋に運ばれてきまして そいつの首筋にも吹き出物があって。 154 00:12:19,272 --> 00:12:21,407 ん? そいつが ここに住んでる➡ 155 00:12:21,407 --> 00:12:23,776 由吉ってやつじゃねえかって それで ここへ。 156 00:12:23,776 --> 00:12:26,279 そういや 由吉さん 帰ってないみたいだよ。 157 00:12:26,279 --> 00:12:29,115 こりゃ間違いねえな。 その蕎麦屋は どうした? 158 00:12:29,115 --> 00:12:31,784 村上の旦那が 養生所へ運んでるはずです。 159 00:12:31,784 --> 00:12:36,289 で 先生 その疫病って 一体 何ですか? 160 00:12:36,289 --> 00:12:40,126 麻疹だ。 (長兵衛)麻疹!? 161 00:12:40,126 --> 00:12:42,161 お前たち 麻疹に かかったことは? 162 00:12:42,161 --> 00:12:44,297 ガキの時分に多分。 おいらも。 163 00:12:44,297 --> 00:12:46,299 よし 手伝ってくれ。 (2人)へい。 164 00:12:47,967 --> 00:12:50,637 (辰三)先生 麻疹って 子供が かかる病でしょう? 165 00:12:50,637 --> 00:12:54,807 あ~ 確かに 子供の頃 一度かかれば もう かかることはない。 166 00:12:54,807 --> 00:12:58,645 だが 子供も大人も 命取りになる場合が ままある。 167 00:12:58,645 --> 00:13:02,849 その上 人から人へと 次々にうつる やっかいな病だ。 168 00:13:04,384 --> 00:13:09,255 麻疹?蕎麦屋に付き添ってた大介も 熱が出まして…。 169 00:13:09,255 --> 00:13:14,127 (橋田)何? 本当か!? はい。 一緒にいた勘太まで。 170 00:13:14,127 --> 00:13:16,763 「麻疹は命定め」の病。 171 00:13:16,763 --> 00:13:22,935 以前 はやった時は 大人や子供を含め 何万という者が死んでいるはずだ。 172 00:13:22,935 --> 00:13:25,972 (堅太郎)何万!? (喬之助)そりゃ大変ですね。 173 00:13:25,972 --> 00:13:30,410 養生所で 伊織の指図を受け 我らに できることをするのだ。 174 00:13:30,410 --> 00:13:32,612 はっ。 (一同)はっ! 175 00:13:34,947 --> 00:13:40,453 ハアハア ハアハア…。 176 00:13:42,121 --> 00:13:44,624 (せきこみ) 177 00:13:48,795 --> 00:13:51,698 (せきこみ)とりあえず 麻疹の患者を 外と隔てるしかあるまい。 178 00:13:51,698 --> 00:13:54,667 うむ。別棟に移そう。 ああ。 179 00:13:54,667 --> 00:13:57,804 (伊織)源さん 頼まれてくれるか。 はい。 180 00:13:57,804 --> 00:14:02,775 お奉行にも そう言われていますので。 何でも おっしゃってください。 181 00:14:02,775 --> 00:14:05,478 (伊織)女は ここで 男は こっちだ! はい! 182 00:14:09,082 --> 00:14:11,918 (伊織)この者たちの ここ何日かの足取りを追ってくれ。 183 00:14:11,918 --> 00:14:15,755 誰と会ったのか 誰と話をしたのか その中で 麻疹に かかっている者は➡ 184 00:14:15,755 --> 00:14:18,091 すぐに ここに連れてくるんだ! (同心たち)はい。 185 00:14:18,091 --> 00:14:21,394 恐らく 長屋周辺にも うつってる者が 既にいるはずだ。 186 00:14:21,394 --> 00:14:24,931 一人残らず ここで隔てねばならん。 はい。 187 00:14:24,931 --> 00:14:28,601 大変な話ですね。ああ。 人手が足りませんよ。 188 00:14:28,601 --> 00:14:32,271 申し訳ありません…。 大丈夫だ。 189 00:14:32,271 --> 00:14:35,608 大変な時に…。 心配するな。 190 00:14:35,608 --> 00:14:39,779 先生 麻疹の薬は ないんですか? 191 00:14:39,779 --> 00:14:43,116 オランダの よく効く熱冷ましの薬なら 多少はある。 192 00:14:43,116 --> 00:14:46,152 せきや 吹き出物の薬もな。 だが…。 193 00:14:46,152 --> 00:14:48,988 麻疹そのものに効く薬は ない。 194 00:14:48,988 --> 00:14:51,624 (おいね)先生! 先生! 195 00:14:51,624 --> 00:14:55,428 おい! おい! 大丈夫か? おい おい しっかりしろ。 196 00:14:55,428 --> 00:14:57,497 うっ うっ…。 197 00:14:57,497 --> 00:15:00,266 何だ? どうした? ん? 198 00:15:00,266 --> 00:15:05,738 えっ? おい… ど… ど…。 199 00:15:05,738 --> 00:15:07,673 おい…。 200 00:15:07,673 --> 00:15:09,675 おい! 201 00:15:21,921 --> 00:15:23,923 (せきこみ) 202 00:15:26,092 --> 00:15:28,094 (せきこみ) 203 00:15:35,101 --> 00:15:38,104 おい ボヤボヤするねえ! (3人)はい! 204 00:15:40,273 --> 00:15:42,775 (手代)店は ここに。 205 00:15:42,775 --> 00:15:44,710 お前さん 具合 大丈夫かい? へい。 206 00:15:44,710 --> 00:15:46,646 店の者は? おかげさまで。 207 00:15:46,646 --> 00:15:49,282 この長屋で ほかに熱出してる者は いねえかい? 208 00:15:49,282 --> 00:15:51,951 へえ。 今んところは…。 209 00:15:51,951 --> 00:15:54,420 蕎麦屋の由吉の身寄りは? 210 00:15:54,420 --> 00:15:56,422 さあ。 211 00:15:58,958 --> 00:16:00,960 (喬之助)ついてくるな。 212 00:16:04,363 --> 00:16:07,567 (せきこみ)かくな。 我慢しろ。 すいません。 213 00:16:07,567 --> 00:16:11,070 よし ゆっくりな。 (せきこみ)よし…。 214 00:16:11,070 --> 00:16:15,741 おっ ほら 太吉 かいたら駄目なんだ。 215 00:16:15,741 --> 00:16:19,612 <こうして 麻疹が広がりを見せ始めた頃➡ 216 00:16:19,612 --> 00:16:23,616 城内で もう一つの問題が起きていた> 217 00:16:23,616 --> 00:16:35,127 ♬~ 218 00:16:35,127 --> 00:16:39,398 上様は いたく ご立腹じゃ。 219 00:16:39,398 --> 00:16:46,105 追って沙汰するゆえ その方に吟味せよと お申しつけじゃ。 220 00:16:46,105 --> 00:16:49,408 されど…。 何じゃ? 221 00:16:49,408 --> 00:16:53,279 結城新三郎は ちまたで騒ぎになっておる疫病に➡ 222 00:16:53,279 --> 00:16:57,149 苦心さんたんの最中。 吟味どころではございませぬ。 223 00:16:57,149 --> 00:17:03,089 (対馬守)何を言うか 越前! たかが 麻疹ごとき…。 224 00:17:03,089 --> 00:17:09,228 既に ご府内では 多くの死人が出ております。 225 00:17:09,228 --> 00:17:15,568 できうれば 新三郎の吟味を 麻疹を抑えた そののちに! 226 00:17:15,568 --> 00:17:19,238 されど 麻疹を抑える手だては あるのか? 227 00:17:19,238 --> 00:17:25,578 麻疹に かかった者を養生所にて預かり 外と隔てております。 228 00:17:25,578 --> 00:17:28,381 (伊生) それだけでは 手ぬるいと存ずる。 229 00:17:28,381 --> 00:17:30,917 騒ぎが収まるまでの間は➡ 230 00:17:30,917 --> 00:17:34,253 町での人の出入りも 抑えなければなりますまい。 231 00:17:34,253 --> 00:17:39,125 さよう。 麻疹は油断すると 次から次へと 人にうつる病。 232 00:17:39,125 --> 00:17:44,397 人の出入りを抑え込めさえすれば あるいは…。 233 00:17:44,397 --> 00:17:46,699 (讃岐守)人の出入りを抑え込むとは? 234 00:17:48,267 --> 00:17:54,073 芝居小屋 湯屋 髪結いなど 人が集まる場所への出入りを減らし➡ 235 00:17:54,073 --> 00:17:58,277 町から町への往来も また同じく。 236 00:17:58,277 --> 00:18:02,715 それでは 江戸市中の者たちが 無用に混乱する。 237 00:18:02,715 --> 00:18:07,887 しばらく 辛抱してもらうしか 手だてがありませぬ。 238 00:18:07,887 --> 00:18:10,790 麻疹に効く薬は ないのか? 239 00:18:10,790 --> 00:18:13,359 養生所には 熱冷ましに よく効く➡ 240 00:18:13,359 --> 00:18:17,229 オランダの薬が 多少あるそうでございますが➡ 241 00:18:17,229 --> 00:18:20,733 それも いつまで もつか…。 242 00:18:20,733 --> 00:18:22,668 (対馬守)心配はいらぬ。 243 00:18:22,668 --> 00:18:27,373 薬種問屋は この対馬守の支配下。 244 00:18:27,373 --> 00:18:34,580 幕府御用を 鼻にかけるあやつらを叱咤し 薬を間に合わせる。 245 00:18:34,580 --> 00:18:40,920 オランダの熱冷ましの薬ごときに 和薬は負けはせぬ。 246 00:18:40,920 --> 00:18:43,389 ああ よう仰せられた。 247 00:18:43,389 --> 00:18:48,761 では 薬は 対馬守殿に お任せいたそう。 248 00:18:48,761 --> 00:18:51,263 心得申した。 249 00:18:56,636 --> 00:18:59,939 間に合わぬのか。 250 00:18:59,939 --> 00:19:05,544 (境屋) 薬のもととなるものが 今は足りませぬ。 251 00:19:05,544 --> 00:19:08,447 それは困る…。 252 00:19:08,447 --> 00:19:10,716 困ると仰せられましても➡ 253 00:19:10,716 --> 00:19:15,221 何せ こうなるとは 思ってもみませんでしたので➡ 254 00:19:15,221 --> 00:19:20,059 熱冷ましのもとを ほかの薬問屋に 売り渡してしまいまして…。 255 00:19:20,059 --> 00:19:25,231 な なんと! ご公儀の薬のもとを…。 256 00:19:25,231 --> 00:19:33,439 いつものように その金の大半は 対馬守様の懐に…。 257 00:19:35,741 --> 00:19:41,547 対馬守様あっての 境屋でございますからな。 258 00:19:43,249 --> 00:19:47,119 うむ… はあ…。 259 00:19:47,119 --> 00:19:52,925 しかし それでは…。 260 00:19:52,925 --> 00:19:55,394 ご心配あそばしますな。 261 00:19:55,394 --> 00:19:58,764 薬九層倍と申します。 262 00:19:58,764 --> 00:20:02,268 元値の九倍で売るのが薬屋稼業。 263 00:20:02,268 --> 00:20:05,771 どう転がっても もうかる仕組みになっております。 264 00:20:05,771 --> 00:20:07,807 何を言いたいのじゃ! 265 00:20:07,807 --> 00:20:12,111 薬のもとにも さまざまなものがございます。 266 00:20:12,111 --> 00:20:17,917 偽薬でもなければ 本物でもない薬を 作ればよいだけのこと。 267 00:20:19,785 --> 00:20:26,659 たかが麻疹 何人死のうが いつかは収まるでしょう。 268 00:20:26,659 --> 00:20:30,129 はあ…。 269 00:20:30,129 --> 00:20:34,800 だが ほどほどにのう。 270 00:20:34,800 --> 00:20:38,604 無論 承知しております。 271 00:20:46,412 --> 00:20:50,983 <南町奉行所の面々は 人の出入りを抑えるため➡ 272 00:20:50,983 --> 00:20:53,018 町を巡ってはみたが…> 273 00:20:53,018 --> 00:20:56,322 閉めろってんですかい? 店を。 いや 閉めろとは言わねえが➡ 274 00:20:56,322 --> 00:21:00,926 麻疹が収まるまで なるべく 人の出入りをだな…。 275 00:21:00,926 --> 00:21:04,263 こっちだってねえ 食ってかなきゃならねえんですよ。 276 00:21:04,263 --> 00:21:06,599 まあ しょうがねえじゃねえか。 なっ! 277 00:21:06,599 --> 00:21:09,635 しょうがねえ? なんて言いぐさだ! ええ? 278 00:21:09,635 --> 00:21:12,404 それじゃあね 麻疹にかかる前に➡ 279 00:21:12,404 --> 00:21:15,908 こっちが食いっぱぐれて 死んじまいまさあ! …ったく! 280 00:21:17,943 --> 00:21:21,413 ⚟(せきこみ) 281 00:21:21,413 --> 00:21:24,950 や~っ! 来るな! 282 00:21:24,950 --> 00:21:27,419 これじゃあ あんまり…。 (筧)おい! おい おい おい! 283 00:21:27,419 --> 00:21:30,289 (三次)いつもなら 旦那たちが来てくれんだがな。 284 00:21:30,289 --> 00:21:34,627 忙しいんですよ。 閉めますよ。➡ 285 00:21:34,627 --> 00:21:36,662 閉めますからね。 286 00:21:36,662 --> 00:21:40,499 う~ん 旦那たちも疲れてんだろうな。 287 00:21:40,499 --> 00:21:44,303 よし 握り飯でも作って持ってってやろう。 (お秀)はい。 288 00:21:46,238 --> 00:21:48,240 (作左ヱ門)王手! 289 00:21:49,975 --> 00:21:51,911 参りました。 290 00:21:51,911 --> 00:21:56,849 ハハハハ! 結構 殊勝である。 291 00:21:56,849 --> 00:21:58,851 ん? 292 00:22:00,586 --> 00:22:02,588 お花! 293 00:22:04,924 --> 00:22:06,859 おじじ様に お茶がないぞ。 294 00:22:06,859 --> 00:22:10,262 あ 申し訳ございません。 ただいま…。 295 00:22:10,262 --> 00:22:15,401 勘太さんが心配だからといって そんなことでは困るぞ お花。 296 00:22:15,401 --> 00:22:19,605 若様! 297 00:22:19,605 --> 00:22:24,109 求次郎 そのような物言いは 許しません。 298 00:22:24,109 --> 00:22:26,412 お花に謝ってきなさい。 299 00:22:26,412 --> 00:22:28,414 はい。 300 00:22:31,784 --> 00:22:34,086 (妙)求次郎…。 301 00:22:37,289 --> 00:22:42,628 何なんだ? あれは。 いつになく いらだっておるの。 302 00:22:42,628 --> 00:22:46,966 麻疹が うつるから 外に出るなと言われているので➡ 303 00:22:46,966 --> 00:22:50,836 気が立っているのでしょう。 なるほどなあ。 304 00:22:50,836 --> 00:22:57,977 わしら年寄りと違って ハハ 子供は外が主戦場ですからな! 305 00:22:57,977 --> 00:23:01,747 …とは言っても 私たちも窮屈ですわね。 306 00:23:01,747 --> 00:23:03,749 (作左ヱ門)う~む…。 307 00:23:09,922 --> 00:23:15,094 いつも できることが できないとなると 心まで…。 308 00:23:15,094 --> 00:23:18,597 お花も いつになく 気もそぞろですし➡ 309 00:23:18,597 --> 00:23:22,101 それで 私 考えましたの。 310 00:23:24,470 --> 00:23:30,276 伊織さんや新三郎さんのところへ お手伝いに出向いてはいけませんか? 311 00:23:30,276 --> 00:23:34,780 お花も 勘太さんを看病できれば…。 312 00:23:34,780 --> 00:23:40,119 お花なら平気です。 子供の頃 麻疹に かかっておりますから。 313 00:23:40,119 --> 00:23:42,421 う~ん…。 314 00:23:44,290 --> 00:23:47,293 横になって。 ⚟(おいね)先生 いらっしゃいました! 315 00:23:47,293 --> 00:23:49,428 分かった。 316 00:23:49,428 --> 00:23:54,133 ああ 助かります。 猫の手も借りたいほどなのです。 317 00:23:54,133 --> 00:23:59,438 よろしくお願いしますね おいねさん。 遠慮なく こき使ってください。 318 00:23:59,438 --> 00:24:01,440 (おいね)はい。 319 00:24:03,075 --> 00:24:05,978 (せきこみ) 勘太さん…。 320 00:24:05,978 --> 00:24:08,580 あ すまねえな。 321 00:24:08,580 --> 00:24:11,250 いいんです。 322 00:24:11,250 --> 00:24:13,752 苦しくないですか? 323 00:24:13,752 --> 00:24:15,788 あ~ しみるなあ! 324 00:24:15,788 --> 00:24:18,590 (せきこみ) お花ちゃん 俺にも! 325 00:24:18,590 --> 00:24:21,093 あ はい。 く 苦しい~。 326 00:24:21,093 --> 00:24:24,296 お花ちゃん 俺にも もう一杯! あ はい。 327 00:24:33,806 --> 00:24:36,308 うん 大丈夫だ。 328 00:24:39,778 --> 00:24:43,649 腹の子が駄目になると 聞いたことがあります。 329 00:24:43,649 --> 00:24:46,952 フッ そんなことはない。 330 00:24:46,952 --> 00:24:51,790 先生… あたし このまま死なないよね? 331 00:24:51,790 --> 00:24:55,961 何を言ってるんだ。 腹の赤ん坊が怒ってるぞ。 332 00:24:55,961 --> 00:24:58,797 母ちゃん しっかりしろってな。 333 00:24:58,797 --> 00:25:02,568 そうだよ おそのちゃん。 334 00:25:02,568 --> 00:25:08,374 けど… けど 麻疹は怖い! 怖いよ 先生! 335 00:25:08,374 --> 00:25:14,747 (泣き声) 336 00:25:14,747 --> 00:25:19,084 代わりましょう。 あ… はっ。 337 00:25:19,084 --> 00:25:24,957 しっかりしてください。 私が こうして 手を握っていますから➡ 338 00:25:24,957 --> 00:25:27,659 まずは ゆっくり眠るのです。 339 00:25:31,263 --> 00:25:33,265 はい。 340 00:25:35,601 --> 00:25:37,636 ゆっくり…。 341 00:25:37,636 --> 00:25:49,782 ♬~ 342 00:25:49,782 --> 00:25:53,118 ⚟(重吉)離せ! (おいね)駄目です 行ってはいけません。 343 00:25:53,118 --> 00:25:55,053 離しやがれ! あっ…。 344 00:25:55,053 --> 00:25:59,291 おい 今 起きたら死んでしまうぞ! 345 00:25:59,291 --> 00:26:01,226 ああ… ああ…。 346 00:26:01,226 --> 00:26:05,731 別れた かかあと ガキのとこ 行かなきゃならねえんだ。 347 00:26:05,731 --> 00:26:08,367 こんなとこで 死んでたまるけえ…。 348 00:26:08,367 --> 00:26:11,737 (せきこみ) ほら みろ。 349 00:26:11,737 --> 00:26:14,239 う… うう…。 350 00:26:14,239 --> 00:26:19,912 ご 5年前の大火事 覚えてるかい 先生よ。 351 00:26:19,912 --> 00:26:23,749 あ? 5年前? ああ 大きな火事があったな。 352 00:26:23,749 --> 00:26:29,621 あん時 俺の家は もらい火で燃えちまった。 353 00:26:29,621 --> 00:26:34,927 生まれたばかりのガキ 抱えて にっちもさっちも行かなかった俺は➡ 354 00:26:34,927 --> 00:26:40,099 ハアハア… かかあと ガキから 逃げちまった。 355 00:26:40,099 --> 00:26:45,404 死ぬ前に… 「悪かった」って ひと言 謝りてえんだよ 先生…。 356 00:26:45,404 --> 00:26:47,940 ああ ああ うん…。 357 00:26:47,940 --> 00:26:55,814 うっ… これは 荷 担いで 腰 痛めて ためた金だ…。 358 00:26:55,814 --> 00:27:02,054 これを届けなきゃ 死んでも死にきれねえ…。 359 00:27:02,054 --> 00:27:04,556 どけ! 俺は出ていく! 360 00:27:04,556 --> 00:27:07,059 (せきこみ) 361 00:27:07,059 --> 00:27:10,896 今 出ていったら お前の麻疹が 人に うつる! 362 00:27:10,896 --> 00:27:12,931 ほかの者も 死ぬかもしれないんだ! 363 00:27:12,931 --> 00:27:16,368 俺は医者だ。 断じて そんなことはさせられん! 364 00:27:16,368 --> 00:27:22,174 だったら… 早く治せ! 医者なら治せ… くそっ! 365 00:27:22,174 --> 00:27:25,110 くそっ! (せきこみ) 366 00:27:25,110 --> 00:27:33,385 (せきこみ) 367 00:27:33,385 --> 00:27:43,395 ♬~ 368 00:27:44,997 --> 00:27:48,267 (雪絵) さあ 腹が減っては何とやらですよ。 369 00:27:48,267 --> 00:27:53,105 皆さん 食べられる時に 食べといてください! さあ どうぞ。 370 00:27:53,105 --> 00:27:56,608 おお こりゃうまそうだ。 (辰三)ありがてえ。 371 00:27:56,608 --> 00:27:59,278 新三郎 食おう。 ああ。 372 00:27:59,278 --> 00:28:02,214 あれ? どうかしたんですか? 結城先生。 373 00:28:02,214 --> 00:28:04,716 (伊織)キナキナが とうとう なくなったのでな。 374 00:28:04,716 --> 00:28:07,219 キナキナ? 何ですか? それは。 375 00:28:07,219 --> 00:28:10,889 オランダ渡りの熱冷ましの薬で よく効くのです。 376 00:28:10,889 --> 00:28:13,725 そのキナキナのほかに 薬は ないんですかい? 377 00:28:13,725 --> 00:28:18,230 あるにはあるが さっき届いた 公儀御用達の境屋の薬は➡ 378 00:28:18,230 --> 00:28:20,232 箸にも棒にもかからん。 379 00:28:20,232 --> 00:28:23,735 偽薬ではないが 効くかどうかも分からん。 380 00:28:23,735 --> 00:28:28,240 ほかの薬問屋もあたったが 値をつり上げるために売り惜しむ。 381 00:28:28,240 --> 00:28:31,743 この大変な時に…。 (おいね)あ 結城先生! 382 00:28:31,743 --> 00:28:35,614 さっきの人の姿が見当たりません。 何!? 383 00:28:35,614 --> 00:28:38,250 おい 新三郎! 384 00:28:38,250 --> 00:28:40,185 辰っつぁん 捜してくれ。 へい! 子吉。 385 00:28:40,185 --> 00:28:42,187 ああ はいよ! 386 00:28:44,056 --> 00:28:46,558 お前には いてもらわなきゃならん。 387 00:28:52,264 --> 00:28:55,167 (銭の音) 388 00:28:55,167 --> 00:28:58,937 うっ… 死なねえぞ…。 389 00:28:58,937 --> 00:29:01,707 (せきこみ) 390 00:29:01,707 --> 00:29:04,743 死んでたまるか~! 391 00:29:04,743 --> 00:29:07,446 (せきこみ) 392 00:29:23,962 --> 00:29:25,964 (戸が開く音) 393 00:29:27,733 --> 00:29:29,935 これは上様。 394 00:29:32,571 --> 00:29:36,875 忠相 今すぐ 結城新三郎を ここへ呼べ。 395 00:29:40,078 --> 00:29:43,915 それは… できかねます。 396 00:29:43,915 --> 00:29:45,851 何!? 397 00:29:45,851 --> 00:29:52,591 結城新三郎は 養生所において 病人の中に交じって 立ち働いております。 398 00:29:52,591 --> 00:29:56,261 その者を ここへ連れてまいりましたならば➡ 399 00:29:56,261 --> 00:29:59,164 疫病を持ち込むようなもの。 400 00:29:59,164 --> 00:30:03,468 構わん。 余は 幼き頃に 麻疹を患うておる。 401 00:30:07,606 --> 00:30:12,911 ならば お目にかけたいものがございます。 402 00:30:17,616 --> 00:30:22,621 (カラスの鳴き声) 403 00:30:31,630 --> 00:30:37,436 麻疹で亡くなった 身寄りのない者たちです。 404 00:30:37,436 --> 00:30:43,809 土葬では 人手が足りず 火葬にて埋葬するありさまです。 405 00:30:43,809 --> 00:31:14,406 ♬~ 406 00:31:14,406 --> 00:31:17,609 (辰三)先生! あっ こっちだ! 407 00:31:17,609 --> 00:31:31,623 ♬~ 408 00:31:31,623 --> 00:31:35,127 (子吉)道端で息絶えてやした。 409 00:31:35,127 --> 00:31:40,432 爪が土だらけで おおかた 必死に土を…。 410 00:31:40,432 --> 00:31:55,647 ♬~ 411 00:31:55,647 --> 00:31:58,150 死んで どうする!? 412 00:31:58,150 --> 00:32:11,096 ♬~ 413 00:32:11,096 --> 00:32:13,398 ⚟行くぞ。 414 00:32:20,272 --> 00:32:22,274 伊織…。 415 00:32:25,110 --> 00:32:30,282 おそれながら 無礼を承知で申し上げます。 416 00:32:30,282 --> 00:32:35,153 共に働く結城新三郎を かばうか? 榊原伊織。 417 00:32:35,153 --> 00:32:39,624 かばうなど めっそうもないことにございます。 418 00:32:39,624 --> 00:32:44,329 されど 新三郎は まことの医師と存じます! 419 00:32:47,799 --> 00:32:51,136 (伊織) その まことの医師が悔しがっております。 420 00:32:51,136 --> 00:32:53,805 麻疹に効く薬がないのです。 421 00:32:53,805 --> 00:32:56,708 熱冷ましに よく効く オランダの薬は とうになくなり➡ 422 00:32:56,708 --> 00:33:00,378 公儀御用達の薬屋の和薬は とんだ まがい物! 423 00:33:00,378 --> 00:33:03,915 このような時 洋書が解禁されておれば➡ 424 00:33:03,915 --> 00:33:08,587 そこに詰まっているオランダ人の知恵を 我が物にできるのです! 425 00:33:08,587 --> 00:33:12,090 洋書国禁の扉を たたいてこそ 互いに切磋琢磨➡ 426 00:33:12,090 --> 00:33:15,594 古今東西の知恵を えりすぐることができます。 427 00:33:15,594 --> 00:33:18,630 分をわきまえぬ申し分では ございましょうが➡ 428 00:33:18,630 --> 00:33:22,934 何とぞ 何とぞ お聞き届けを願います! 429 00:33:22,934 --> 00:33:30,141 お題目は立派だが 軽々しく 開闢以来の定法を破るわけにはいかぬな。 430 00:33:31,643 --> 00:33:35,514 では 将軍家 ただお一人の楽しみであれば➡ 431 00:33:35,514 --> 00:33:39,484 ご定法を お破りになられても 構わんと仰せですか? 432 00:33:39,484 --> 00:33:41,953 新三郎! 433 00:33:41,953 --> 00:33:46,658 時の流れを見定められぬお方は 将軍の器にあらず! 434 00:33:48,627 --> 00:33:51,296 何とぞ 何とぞ お聞き届けを…。 435 00:33:51,296 --> 00:33:57,435 たった今 一人の男が 野たれ死にをいたしました。 436 00:33:57,435 --> 00:34:02,908 先の大火事で 家も身内もなくし こたびは 麻疹にかかり➡ 437 00:34:02,908 --> 00:34:10,582 「医者なら助けろ」と言われても 何もできず…。 438 00:34:10,582 --> 00:34:16,788 この悔しさを お分かりいただきたい! 439 00:34:19,291 --> 00:34:25,597 忠相 聞いたか。 恐れを知らぬ者どもの言い分を。 440 00:34:30,769 --> 00:34:38,410 されど この越前 2人の願いを お取り上げいただきたく存じます。 441 00:34:38,410 --> 00:34:41,780 この命に代えましても…。 442 00:34:41,780 --> 00:34:44,115 お前もか 忠相。 上様。 443 00:34:44,115 --> 00:34:50,789 法とは 政とは 人の命を守るために あるのではございませぬか。 444 00:34:50,789 --> 00:35:04,336 ♬~ 445 00:35:04,336 --> 00:35:07,339 わしの負けだな。 446 00:35:09,574 --> 00:35:15,246 以前 余が作らせた「白牛洞」という 熱に効く薬がある。 447 00:35:15,246 --> 00:35:20,385 かなり値が張るが これを作らせ 与えよう。 448 00:35:20,385 --> 00:35:23,888 ひとまず これで勘弁しろ。 449 00:35:25,590 --> 00:35:29,294 かたじけのう存じます。 ははあ。 450 00:35:32,364 --> 00:35:34,599 あっ そうだ 伊織。 451 00:35:34,599 --> 00:35:39,104 お主が 境屋の薬を まがい物と言ったが それと同じことを➡ 452 00:35:39,104 --> 00:35:41,606 蕎麦屋の由吉が言っていたのを 思い出した。 453 00:35:41,606 --> 00:35:43,541 何だ? どうした? 454 00:35:43,541 --> 00:35:45,944 ま まがい物だ…。 ん? 455 00:35:45,944 --> 00:35:49,614 境屋…。 えっ? ん…。 456 00:35:49,614 --> 00:35:52,283 あ…。 おい。 457 00:35:52,283 --> 00:35:56,121 待て。 今 蕎麦屋の由吉と言うたか。 458 00:35:56,121 --> 00:36:00,358 あ… はい。 麻疹にかかって 亡くなった者ですが。 459 00:36:00,358 --> 00:36:04,562 亡くなった。 何か? 460 00:36:04,562 --> 00:36:10,735 我が庭番に 屋台の蕎麦屋に扮して 薬種問屋を探索していた者がおる。 461 00:36:10,735 --> 00:36:15,073 その者の名が 橋本由吉。 462 00:36:15,073 --> 00:36:17,375 まことでございますか!? 463 00:36:17,375 --> 00:36:22,247 和薬のずさんな乱用と それを許しておる幕閣がおり➡ 464 00:36:22,247 --> 00:36:28,119 近いうちに その証拠を見せると 知らせを受けていたのじゃ。 465 00:36:28,119 --> 00:36:32,824 ならば その者の周りに その証拠が!? 466 00:36:36,394 --> 00:36:38,463 あっ お奉行。 467 00:36:38,463 --> 00:36:42,467 屋台の蕎麦切り箱の蓋に 貼り付いておりました。 468 00:36:45,770 --> 00:36:51,643 うん。 お庭番 橋本由吉が最期のご奉公➡ 469 00:36:51,643 --> 00:36:54,946 見事 本懐遂げてみせよう。 (2人)はっ。 470 00:37:02,220 --> 00:37:04,222 おい。 おい。 471 00:37:04,222 --> 00:37:08,893 <薬種問屋 境屋伝兵衛は お縄にされ…> 472 00:37:08,893 --> 00:37:13,231 その方 公儀御用達の身の上でありながら➡ 473 00:37:13,231 --> 00:37:19,571 企みを持って 薬のもとを売り渡したこと 不届き至極➡ 474 00:37:19,571 --> 00:37:23,875 よって 遠島を申し渡す。 475 00:37:27,745 --> 00:37:29,681 (同心)立ちませえ! 476 00:37:29,681 --> 00:37:48,066 ♬~ 477 00:37:48,066 --> 00:37:51,069 面を上げい。 はっ。 478 00:37:54,839 --> 00:37:57,809 このたわけめが! ははあ~。 479 00:37:57,809 --> 00:38:05,583 <境屋から賄賂を受け取ったことで 吉宗の怒りを買った老中 安藤対馬守は➡ 480 00:38:05,583 --> 00:38:10,421 罷免されたのち 切腹し果てた> 481 00:38:10,421 --> 00:38:12,724 (さえずり) 482 00:38:12,724 --> 00:38:18,062 (おそのの うめき声) 483 00:38:18,062 --> 00:38:21,900 はあ…。 (おそのの うめき声) 484 00:38:21,900 --> 00:38:26,371 んあ~…。 (おそのの うめき声) 485 00:38:26,371 --> 00:38:28,740 (おあき) おそのちゃん 佐吉さんだよ!➡ 486 00:38:28,740 --> 00:38:31,376 亭主が帰ってきたよ! (佐吉)おその~! 487 00:38:31,376 --> 00:38:34,245 旦那さん 来ましたよ。 おそのさん 頑張って! 488 00:38:34,245 --> 00:38:37,081 (息む声) あと少し あと少し! 489 00:38:37,081 --> 00:38:39,584 頑張ってください。 (息む声) 490 00:38:39,584 --> 00:38:45,089 もう少し もう少し。 (息む声) 491 00:38:45,089 --> 00:38:49,260 (息む声) 492 00:38:49,260 --> 00:38:51,262 (赤ん坊の泣き声) 493 00:38:51,262 --> 00:38:54,933 生まれた!やったぞ! ハハハハ…! 494 00:38:54,933 --> 00:38:56,968 (雪絵)佐吉さん! 495 00:38:56,968 --> 00:39:00,538 まるまるとした赤ん坊。 女の子ですよ。 496 00:39:00,538 --> 00:39:03,875 (佐吉)女…。 (笑い声) 497 00:39:03,875 --> 00:39:07,345 おめでとう 佐吉さん! はい。 498 00:39:07,345 --> 00:39:09,414 よしよし。 (伊織)よし よし。 499 00:39:09,414 --> 00:39:13,151 (赤ん坊の泣き声) 500 00:39:13,151 --> 00:39:16,054 (松平左近将監) 洋書国禁を廃止? 501 00:39:16,054 --> 00:39:21,559 キリシタンに関わる書物は除き まこと学問のためのものであれば➡ 502 00:39:21,559 --> 00:39:25,230 これを許そうと思う。 どうじゃ? 忠相。 503 00:39:25,230 --> 00:39:29,100 はっ。 よろしいかと。 504 00:39:29,100 --> 00:39:34,239 上様のご意向とあらば やぶさかではございませぬ。 505 00:39:34,239 --> 00:39:37,442 同時に 下野。 506 00:39:39,577 --> 00:39:45,750 こたびの境屋のようなことがなきよう 薬種問屋を束ねた上で 和薬を類別し➡ 507 00:39:45,750 --> 00:39:51,089 その真偽をつかさどる 和薬改会所を 設けることにしては いかがかと。 508 00:39:51,089 --> 00:39:56,094 和薬強化のためには それがよかろう。 ほかにあるか? 509 00:39:57,762 --> 00:40:04,535 おそれながら 大火事等の折 その日を送れないほど困窮する者➡ 510 00:40:04,535 --> 00:40:08,273 多々 出ることがございますれば その際 僅かでも➡ 511 00:40:08,273 --> 00:40:12,143 銭を渡しては いかがかと。 512 00:40:12,143 --> 00:40:20,618 ならば それに加え 病にて動けない者に 扶持米を出すことも併せて見当せい。 513 00:40:20,618 --> 00:40:23,288 はっ! 514 00:40:23,288 --> 00:40:25,290 忠相。 515 00:40:28,426 --> 00:40:34,932 政とは 民のためのものと 心することだな。 516 00:40:40,038 --> 00:40:44,876 <麻疹の流行は ふたつきほど続き 収まった。➡ 517 00:40:44,876 --> 00:40:46,844 そんな ある夜…> (花火の音) 518 00:40:46,844 --> 00:40:50,682 <大川に突如 花火が あがった> 519 00:40:50,682 --> 00:40:52,684 (にぎわい) 520 00:40:52,684 --> 00:40:54,986 (花火の音) 521 00:40:54,986 --> 00:40:57,322 おお ハッハッハッハ…! 522 00:40:57,322 --> 00:41:01,192 (花火の音) 523 00:41:01,192 --> 00:41:04,929 (歓声) ほら すごいね。 524 00:41:04,929 --> 00:41:06,965 (花火の音) 525 00:41:06,965 --> 00:41:10,802 (歓声) 526 00:41:10,802 --> 00:41:17,275 (花火の音と歓声) 527 00:41:17,275 --> 00:41:20,778 よっ! いよ~っと! 528 00:41:20,778 --> 00:41:24,615 (歓声と笑い声) 529 00:41:24,615 --> 00:41:27,285 おお~! (花火の音) 530 00:41:27,285 --> 00:41:29,787 いよ~っ! (笑い声) 531 00:41:29,787 --> 00:41:36,961 (花火の音と歓声) 532 00:41:36,961 --> 00:41:45,136 (花火の音) 533 00:41:45,136 --> 00:42:06,391 ♬~ 534 00:42:06,391 --> 00:42:11,929 (花火の音) 535 00:42:11,929 --> 00:42:14,966 上様が こたびの麻疹で 亡くなった者たちへの慰霊と➡ 536 00:42:14,966 --> 00:42:20,471 疫病退散を念じて 花火をあげるよう命じられたのだ。 537 00:42:22,640 --> 00:42:27,478 (花火の音) 100年先 200年先➡ 538 00:42:27,478 --> 00:42:34,285 麻疹のような うつる病に効く薬が 出来ていると よろしいですわね。 539 00:42:34,285 --> 00:42:36,421 (花火の音) 540 00:42:36,421 --> 00:42:41,259 <江戸の夜空を花火が明るく覆っていた。➡ 541 00:42:41,259 --> 00:42:46,631 この明るさが あらゆる人の 希望の ともし火となるよう➡ 542 00:42:46,631 --> 00:42:49,967 願う忠相であった> 543 00:42:49,967 --> 00:42:54,972 (花火の音)