1 00:00:02,202 --> 00:00:05,939 (太鼓の音) 2 00:00:05,939 --> 00:00:12,112 ⚟南町奉行 大岡越前守様 ご出座! 3 00:00:12,112 --> 00:00:15,616 (忠相)一同の者 面を上げい。 4 00:00:15,616 --> 00:00:21,121 (お菊)お奉行様に申し上げます。 お春は 私が産み 育ててきた娘です。 5 00:00:21,121 --> 00:00:25,959 (お玉)嘘です! お春は 私が産みました。 ですが 産後の肥立ちが悪く➡ 6 00:00:25,959 --> 00:00:29,630 泣く泣く お菊さんに預けたんです。 それが証拠に➡ 7 00:00:29,630 --> 00:00:33,433 この数年の間 私は お菊さんに 少なくない銭と➡ 8 00:00:33,433 --> 00:00:36,637 お春には お菓子など買い与えてきました。 9 00:00:36,637 --> 00:00:41,141 そうでしょ? お菊さん。 た… 確かに銭は頂きました。 10 00:00:41,141 --> 00:00:46,313 ですが それは 貧乏な私を見かね また お春をかわいがってくださる➡ 11 00:00:46,313 --> 00:00:50,817 お玉さんの優しさだと…。 どこの世界に 自分の娘じゃないのに➡ 12 00:00:50,817 --> 00:00:53,654 金を恵む人がいるもんですか。 13 00:00:53,654 --> 00:00:58,992 お春 いつも お菓子をあげてただろう? おっ母さんのところに おいで。 14 00:00:58,992 --> 00:01:02,262 駄目! お春 行っちゃ駄目。 いいから おいで! 15 00:01:02,262 --> 00:01:04,932 待て! 16 00:01:04,932 --> 00:01:12,406 両名とも 自らが親だと言うのなら 今取っている お春の手を 思い切り➡ 17 00:01:12,406 --> 00:01:14,942 自分の方に引っ張ってみよ。 18 00:01:14,942 --> 00:01:17,411 え? 勝った方を➡ 19 00:01:17,411 --> 00:01:22,616 奉行が母親であると認めよう。 始め! 20 00:01:22,616 --> 00:01:25,519 ああっ! お春…。 21 00:01:25,519 --> 00:01:29,289 ううっ!お春! (お春)痛い 痛い! 22 00:01:29,289 --> 00:01:35,429 わ… 私の勝ちでございますね お奉行様! いや まことの母親は➡ 23 00:01:35,429 --> 00:01:38,632 お菊である。 あ… ご冗談ばかり。 24 00:01:38,632 --> 00:01:41,969 勝った方が母親だと お奉行様が おっしゃったんじゃありませんか。 25 00:01:41,969 --> 00:01:45,272 引き寄せた方が勝ちとは ひと言も申しておらぬぞ。 26 00:01:47,841 --> 00:01:52,312 お菊 お前は 何故 手を離した。 27 00:01:52,312 --> 00:01:55,649 離せば負けると思わなかったのか? 28 00:01:55,649 --> 00:02:01,088 思いました。 ですが こんな争いに巻き込んだ上➡ 29 00:02:01,088 --> 00:02:06,760 痛がって泣く お春が ふびんで つい…。 30 00:02:06,760 --> 00:02:09,262 ごめんよ お春。 31 00:02:09,262 --> 00:02:12,766 うむ。 それこそが母。 32 00:02:12,766 --> 00:02:16,103 (お玉)いいえ! 私が手を離さなかったのは➡ 33 00:02:16,103 --> 00:02:19,606 どんなことがあっても お春を渡したくなかったからです! 34 00:02:19,606 --> 00:02:23,410 それが母親ってもんなんです! では 尋ねる。 35 00:02:23,410 --> 00:02:28,115 お前は 泣きじゃくる子の腕を それでも なお引っ張り➡ 36 00:02:28,115 --> 00:02:32,285 心は少しも痛まぬと申すか? それは…。 37 00:02:32,285 --> 00:02:39,426 子を慈しみ 子の気持ちを思いやってこそ 本当の母。 38 00:02:39,426 --> 00:02:42,796 お奉行様…。 そんな…。 39 00:02:42,796 --> 00:02:49,136 お春。 母のもとで幸せにな。 40 00:02:49,136 --> 00:02:51,171 うん! 41 00:02:51,171 --> 00:02:54,641 おっ母さん! お春…。 42 00:02:54,641 --> 00:03:03,450 <この一件 後々 大岡裁きの一つとして 語り継がれることとなった> 43 00:03:03,450 --> 00:04:12,152 ♬~ 44 00:04:20,260 --> 00:04:25,132 <江戸城 辰ノ口評定所前に置かれた 目安箱は➡ 45 00:04:25,132 --> 00:04:30,437 将軍 吉宗自らの手で開けられた> 46 00:04:35,809 --> 00:04:38,411 (松平左近将監)何か ございましたか? 47 00:04:38,411 --> 00:04:40,614 (吉宗)読んでみよ。 (左近将監)はっ…。 48 00:04:42,616 --> 00:04:49,122 ん? 「六代将軍 家宣様の ご落胤」…? 49 00:04:49,122 --> 00:04:51,057 (讃岐守)何? (一同)ご落胤? 50 00:04:51,057 --> 00:04:54,294 (左近将監)ああ いや… そう慌てめさるな ご一同。 ハハッ。➡ 51 00:04:54,294 --> 00:04:56,963 ご落胤とは申せ 姫だという。➡ 52 00:04:56,963 --> 00:05:02,369 そのご生母を上様の手で捜してほしいと まあ そのようなことをな。 53 00:05:02,369 --> 00:05:09,075 ご生母を…? フフッ らちもない。 のう 下野。 54 00:05:09,075 --> 00:05:12,913 はあ ではありますが…。 読む限り➡ 55 00:05:12,913 --> 00:05:17,751 企みが感じられることはない。 どうだ? 越前。 56 00:05:17,751 --> 00:05:24,090 はい。 娘は死病に取りつかれ ご生母を捜してくれれば➡ 57 00:05:24,090 --> 00:05:26,927 ほかに望むことはないと。 58 00:05:26,927 --> 00:05:32,098 まことであれば 六代将軍の姫であり むげに扱うこともできぬ。 59 00:05:32,098 --> 00:05:34,601 ではないか 左近。 (左近将監)いや~ しかし…。 60 00:05:34,601 --> 00:05:37,938 今月の月番は下野であったな。 はっ。 61 00:05:37,938 --> 00:05:42,108 あ~ いや 上様。 下野は 御用繁多…。 分かっておる。 62 00:05:42,108 --> 00:05:48,782 ならば 非番の越前に頼むしかあるまい。 ひそかに その者に当たってみよ 越前。 63 00:05:48,782 --> 00:05:50,984 はっ! 64 00:05:57,791 --> 00:06:03,563 はてさて 上様の物好きにも 困ったものでござるな。 65 00:06:03,563 --> 00:06:07,367 (左近将監)さよう さよう。 越前 ご苦労じゃのう。 66 00:06:09,369 --> 00:06:13,240 (喬之助)駿介 どうしたんだ? その格好。 67 00:06:13,240 --> 00:06:16,910 しくじって お役御免か? (2人)ハハハハハ…。 68 00:06:16,910 --> 00:06:19,379 そうではありません。 お奉行のお供です。 69 00:06:19,379 --> 00:06:22,082 お奉行の? 何かあったのか? 70 00:06:22,082 --> 00:06:26,786 はい。 それが…。 北島。はい。 71 00:06:29,256 --> 00:06:32,259 駿介の野郎 うまくやりやがったな。 フフ…。 72 00:06:32,259 --> 00:06:35,929 こっちは山積みの書類と にらめっこだ。 73 00:06:35,929 --> 00:06:37,864 おい! 74 00:06:37,864 --> 00:06:44,671 <忠相は 同心 北島駿介を供に 訴状の主が住む目黒へと向かった> 75 00:06:49,109 --> 00:06:54,781 尋ねるが お前が孫市か。 違うのか? 76 00:06:54,781 --> 00:06:57,684 待て 駿介。 77 00:06:57,684 --> 00:07:01,221 安心いたせ 敵ではない。 78 00:07:01,221 --> 00:07:05,558 南町奉行 大岡忠相だ。 79 00:07:05,558 --> 00:07:10,363 大岡様? では 訴状が!? 80 00:07:10,363 --> 00:07:16,236 いかにも。 真偽の程を確かめに 上様の命でまかり越した。 81 00:07:16,236 --> 00:07:22,042 嘘偽りではございません。 姫は あそこに。 82 00:07:25,845 --> 00:07:28,348 お待ちを。 83 00:07:45,198 --> 00:07:48,401 (孫市)証しの品でございます。 84 00:08:02,349 --> 00:08:04,851 「命名 かすみ」! 85 00:08:07,187 --> 00:08:14,361 訴状によれば 18年の昔 家宣様が武蔵野散策の折➡ 86 00:08:14,361 --> 00:08:20,900 祖師谷村 名主の娘 志穂を見初められ 姫が生まれたと。 87 00:08:20,900 --> 00:08:27,674 ところが 大奥お局様の耳には なぜか男子が生まれたと伝わり➡ 88 00:08:27,674 --> 00:08:32,245 時の大目付に 親子を闇に葬るように命じたのです。 89 00:08:32,245 --> 00:08:34,247 えっ!? (孫市)それを知った➡ 90 00:08:34,247 --> 00:08:38,385 家宣様の近習であった我が殿 本田忠四郎は…。 91 00:08:38,385 --> 00:08:42,255 (本田)よいか 一命を賭して 姫をお守りするのだ。 92 00:08:42,255 --> 00:08:48,395 これは わしの命ではない。 家宣様の命だと 肝に銘じろ。➡ 93 00:08:48,395 --> 00:08:50,397 一命を賭すのだ。 94 00:08:54,100 --> 00:08:58,772 (孫市)手前が出向いた時 名主一家は 既に惨殺され➡ 95 00:08:58,772 --> 00:09:05,979 火をつけられた母屋から焼け出された 姫たちを守り 逃げるのが精いっぱい。 96 00:09:09,215 --> 00:09:13,887 これを。 急いで お逃げなされ。 97 00:09:13,887 --> 00:09:17,223 ここは 手前が引き受けた。 (志穂)でも…。 98 00:09:17,223 --> 00:09:22,429 赤子は手前がお守りいたす。 早く! そんな! 99 00:09:26,900 --> 00:09:32,072 (孫市)手前は逃げおおせたものの 志穂殿の行方は分からずじまい。➡ 100 00:09:32,072 --> 00:09:37,944 もしもの時にと伝えておいた手前の菩提寺 音羽の永泉寺で待ってはみたものの➡ 101 00:09:37,944 --> 00:09:42,782 ひとつきたっても現れず…。 永泉寺も火事で焼失➡ 102 00:09:42,782 --> 00:09:47,554 我が殿 本田忠四郎も 急死いたし➡ 103 00:09:47,554 --> 00:09:53,092 この一件を知っている者さえ いなくなり申した。 なれど…。 104 00:09:53,092 --> 00:09:55,028 一命を賭すのだ。 105 00:09:55,028 --> 00:10:03,269 武士として その言葉に従い この地で 百姓 孫市となり➡ 106 00:10:03,269 --> 00:10:07,140 姫を孫のかすみとして 育ててまいりました。 107 00:10:07,140 --> 00:10:09,142 18年もの間…。 108 00:10:09,142 --> 00:10:12,278 して かすみには? 109 00:10:12,278 --> 00:10:19,052 父は死に 母は赤子を預けたまま 行き方知れずになったと。➡ 110 00:10:19,052 --> 00:10:25,825 ところが かすみが2年ほど前 胸を患い➡ 111 00:10:25,825 --> 00:10:30,964 しかも 余命いくばくもないことが 分かったのです。➡ 112 00:10:30,964 --> 00:10:35,802 それを知ってか知らずか ある時 夢を見たと。 113 00:10:35,802 --> 00:10:37,837 夢? 114 00:10:37,837 --> 00:10:41,608 (かすみ) おっ母さんに会った夢を見たんだ。 115 00:10:41,608 --> 00:10:44,978 優しく笑ってた。 116 00:10:44,978 --> 00:10:53,686 爺 会いたいな。 おっ母さんに会いたい。 117 00:10:53,686 --> 00:10:57,157 会いたいんだよ 爺。 118 00:10:57,157 --> 00:11:02,595 おっ母さんに… おっ母さんに会いたい。 119 00:11:02,595 --> 00:11:09,936 ならば願え。 母に会いたいと 心の底から願うのだ。 120 00:11:09,936 --> 00:11:14,607 そうすれば 必ず会える。 本当だね 爺。 121 00:11:14,607 --> 00:11:21,114 この子が哀れで つい そのようなことを。 122 00:11:21,114 --> 00:11:24,918 それで目安箱に訴状をな。 123 00:11:27,420 --> 00:11:34,794 爺! どうした? 苦しいか? 124 00:11:34,794 --> 00:11:40,600 ううん おっ母さんの夢を また見た。 125 00:11:40,600 --> 00:11:44,304 そうか。 うん。 126 00:11:48,808 --> 00:11:53,446 駿介 すぐ 村の者に声をかけよ。 127 00:11:53,446 --> 00:11:56,983 姫を養生所へ運ぶ。 はい! 128 00:11:56,983 --> 00:12:01,387 (かすみ)ハア ハア ハア…。 129 00:12:01,387 --> 00:12:04,257 まずは 熱を下げねばな。 130 00:12:04,257 --> 00:12:07,260 おいねさん。 (おいね)はい。 131 00:12:10,129 --> 00:12:12,932 これをのめば 楽になりますよ。 132 00:12:14,901 --> 00:12:19,739 長くは もたぬぞ。 そうか。 133 00:12:19,739 --> 00:12:24,110 お奉行 あの方が このままでは心苦しいので➡ 134 00:12:24,110 --> 00:12:27,413 下働きでも何でもしたいと。 そんな気遣いはいらん。 135 00:12:27,413 --> 00:12:31,951 私も そのように申したのですが…。 136 00:12:31,951 --> 00:12:37,624 いちずな目だ。 今どき珍しい。 137 00:12:37,624 --> 00:12:41,628 好きにしろ 孫市。 138 00:12:46,299 --> 00:12:50,303 おっ おっ お~ お~ お~…。 いよっ! 139 00:12:50,303 --> 00:12:55,008 ハハハハ! どうだ 参ったか ハハハハ! 140 00:12:55,008 --> 00:12:57,810 遅いぞ 忠相。 141 00:12:57,810 --> 00:13:01,581 いつ戻るのか そればかり仰せられて。 142 00:13:01,581 --> 00:13:05,451 求次郎が大きゅうなって 驚いたぞ。 はい。 143 00:13:05,451 --> 00:13:09,455 雪絵 茶をもう一杯頼む。 忠相にもな。 144 00:13:09,455 --> 00:13:11,924 かしこまりました。 お花。 145 00:13:11,924 --> 00:13:14,627 はい 奥様。 146 00:13:18,097 --> 00:13:22,402 そうか 長くはないか。 147 00:13:22,402 --> 00:13:26,272 伊織の手で あるいは しばらくは…。 148 00:13:26,272 --> 00:13:31,110 ならば その間に かすみの母を捜し出さねばな。 149 00:13:31,110 --> 00:13:35,415 ですが 既に18年も昔のこと。 150 00:13:36,983 --> 00:13:44,190 死んだという証しはないのだ。 母は生きておるやもしれぬ。 よいな。 151 00:13:46,292 --> 00:13:50,630 はっ。 しかと申しつけたぞ 忠相。 152 00:13:50,630 --> 00:13:52,932 はっ。 153 00:14:02,742 --> 00:14:05,445 上様! 154 00:14:15,922 --> 00:14:20,593 (雪絵)こたびは いつになく 上様が ご熱心でございますわね。 155 00:14:20,593 --> 00:14:25,264 ハハ…。 そう見えるか? (求次郎)何か おありなのですか? 156 00:14:25,264 --> 00:14:31,070 上様もまた 母を求めた時があったのだよ。 157 00:14:31,070 --> 00:14:37,610 え? 上様のお母上は お紋様と仰せられてな➡ 158 00:14:37,610 --> 00:14:43,950 上様のお父上 紀伊大納言 光貞様の 湯殿番であった時➡ 159 00:14:43,950 --> 00:14:48,621 お手をつけられて 上様をみごもられた。 160 00:14:48,621 --> 00:14:52,291 まあ…。 だが 身分が違い過ぎると➡ 161 00:14:52,291 --> 00:14:56,162 共に暮らすことを許されず 幼い上様は➡ 162 00:14:56,162 --> 00:15:01,968 母恋しさのあまり 手のつけられない 暴れん坊として育ったという。 163 00:15:01,968 --> 00:15:05,371 では ずっと離れ離れだったのですか? 164 00:15:05,371 --> 00:15:09,575 お会いになられたのは それから十数年の後。 165 00:15:09,575 --> 00:15:15,281 上様が紀伊のお城に 呼び戻された折であったそうな。 166 00:15:16,916 --> 00:15:22,388 あの時は 奇跡に恵まれ 巡り巡って将軍になった時よりも…。 167 00:15:22,388 --> 00:15:24,323 母上。 168 00:15:24,323 --> 00:15:31,531  回想 ずっと うれしかったぞ。 将軍になった時よりもな! ハハハハハ。 169 00:15:42,608 --> 00:15:45,278 上様らしい。 170 00:15:45,278 --> 00:15:49,148 誰もが 母は恋しいものだ。 171 00:15:49,148 --> 00:15:54,954 だからこそ あの娘の望みをかなえたいのだ 上様は。 172 00:15:54,954 --> 00:15:59,425 その上様の願いをかなえるのが 父上のお役目なのですね。 173 00:15:59,425 --> 00:16:02,628 そうだな。 174 00:16:08,067 --> 00:16:10,903 <志穂の探索が始まった。➡ 175 00:16:10,903 --> 00:16:16,375 だが 祖師谷村周辺に 志穂が戻った形跡はなく➡ 176 00:16:16,375 --> 00:16:20,746 火事で焼失した音羽の永泉寺は 住職が替わり➡ 177 00:16:20,746 --> 00:16:24,617 志穂に関する噂は 何一つ出なかった> 178 00:16:24,617 --> 00:16:26,919 ありがとよ。 179 00:16:38,764 --> 00:16:41,601 (辰三)旦那 こりゃ無理ですぜ。➡ 180 00:16:41,601 --> 00:16:45,471 18年といや一昔 いや 二昔近く前の話だ。 181 00:16:45,471 --> 00:16:49,342 (源次郎)だが頬に刀傷がある女なんてのは めったには いねえ。 182 00:16:49,342 --> 00:16:54,113 ですが 待ち合わせの菩提寺も 再建したとはいえ 代替わりしてますし。 183 00:16:54,113 --> 00:16:57,416 (辰三)だから  土台 無理筋な話だってんだよ なあ 勘太。 184 00:16:57,416 --> 00:17:01,053 村上の旦那から お奉行に おっしゃってくださいませんかねえ。 185 00:17:01,053 --> 00:17:03,556 何だと? (勘太)いや ですからね…。 186 00:17:03,556 --> 00:17:07,059 (机をたたく音) (駿介)お前たちは それでも南の手先か! 187 00:17:07,059 --> 00:17:09,095 ど… どうした 駿介。 188 00:17:09,095 --> 00:17:14,233 あの子は 夜ごと うなされながら それでも母親会いたさに➡ 189 00:17:14,233 --> 00:17:18,905 歯を食いしばって 生きようとしているのです。旦那…。 190 00:17:18,905 --> 00:17:28,614 孫市は… 孫市は侍を捨ててまで あの子のために生きてきたんです! 191 00:17:28,614 --> 00:17:35,454 俺たちは あの子の母親を 見つけ出さねばならんのです。➡ 192 00:17:35,454 --> 00:17:38,457 見つけ出さねば…。 193 00:17:40,192 --> 00:17:44,063 (三次)お秀 北島の旦那に水を。 (お秀)はいよ。 194 00:17:44,063 --> 00:17:49,402 そのとおりだ。 音を上げるのは まだ早い。 そうだな 辰。 195 00:17:49,402 --> 00:17:53,272 へい。 北島の旦那 申し訳ねえ。 つい。 196 00:17:53,272 --> 00:17:56,776 (勘太)愚痴を言っちまった俺らが悪い。 197 00:17:56,776 --> 00:18:00,112 (子吉)よっしゃ! おいら これから ひとっ走り出てきやす! 198 00:18:00,112 --> 00:18:04,550 となりゃ 俺もだ。 (勘太)飲んでる場合じゃねえや! 199 00:18:04,550 --> 00:18:08,421 よし 俺たちも行くか! (2人)はい! 200 00:18:08,421 --> 00:18:13,426 (喬之助)駿介 お前も来い。 はい! 201 00:18:17,563 --> 00:18:22,068 (お秀)いいねえ 南のお方たちは。 あたぼうよ 江戸っ子だ。 202 00:18:22,068 --> 00:18:24,570 ああじゃなきゃよ。 203 00:18:27,373 --> 00:18:32,745 (源次郎)若! それらしき女が 永泉寺から2丁ばかり離れたそば屋に➡ 204 00:18:32,745 --> 00:18:36,916 月の半ば 必ず現れるのを 店の女将が覚えていたと 辰が。 205 00:18:36,916 --> 00:18:38,851 月の半ばに必ず…。 206 00:18:38,851 --> 00:18:42,722 うまい具合に 今日は月半ば。 なので 今 筧たちが。 207 00:18:42,722 --> 00:18:44,657 うむ。 208 00:18:44,657 --> 00:18:56,769 ♬~ 209 00:18:56,769 --> 00:18:58,771 あの女だ。 210 00:19:06,445 --> 00:19:10,750 いらっしゃいまし。 どうぞ奥へ。 211 00:19:14,887 --> 00:19:17,890 お待たせしました。 212 00:19:24,230 --> 00:19:27,566 (お初)ありがとうございました。➡ 213 00:19:27,566 --> 00:19:30,903 あっ おっ母さん お帰り。 お墓参り ご苦労さま。 214 00:19:30,903 --> 00:19:35,574 店は もういいよ。 多一郎さんと約束があるんだろ。 215 00:19:35,574 --> 00:19:38,477 うん。 ゆっくりしといで。 216 00:19:38,477 --> 00:19:43,783 向こうの皆様にも よろしく。 はい。 それじゃ。 217 00:19:48,921 --> 00:19:52,792 (子吉)ちょっと聞きてえんだが。 そこの篠屋だがな…。 218 00:19:52,792 --> 00:20:17,783 ♬~ 219 00:20:19,785 --> 00:20:22,621 小間物屋を営む お悠…。 220 00:20:22,621 --> 00:20:25,291 店を出したのが10年前。 それまでは➡ 221 00:20:25,291 --> 00:20:29,161 行商で小間物を扱っていたって話です。 亭主は? 222 00:20:29,161 --> 00:20:32,431 茂吉といって 5年前に病で死に➡ 223 00:20:32,431 --> 00:20:36,802 今は 娘のお初と女将と2人で 店を切り盛りしています。 224 00:20:36,802 --> 00:20:39,638 (喬之助) その娘の縁談が決まったばかりで➡ 225 00:20:39,638 --> 00:20:43,809 ようやく 肩の荷が下りたと 近所の者に話してたそうです。 226 00:20:43,809 --> 00:20:47,446 縁談の相手は? 太物問屋 伊勢屋の長男で➡ 227 00:20:47,446 --> 00:20:51,317 名は多一郎。 誰もが羨む仲の2人だそうで。 228 00:20:51,317 --> 00:20:55,654 (橋田)そのお悠とやらの左頬には 刀傷があるのだな。 229 00:20:55,654 --> 00:20:59,992 間違いありません。 ただ…。 ん? 何だ? 230 00:20:59,992 --> 00:21:03,262 娘のお初は 今年 二十歳になるんだそうです。 231 00:21:03,262 --> 00:21:06,932 二十歳? かすみは 確か18。 232 00:21:06,932 --> 00:21:09,768 勘定が合わねえじゃねえか。 233 00:21:09,768 --> 00:21:15,107 そのお初は まことの娘なのだろうか。 え? 234 00:21:15,107 --> 00:21:20,613 (堅太郎)ああ… 店を出した時には 既に親子3人だったそうですから➡ 235 00:21:20,613 --> 00:21:24,283 近所の者が そのことを疑った節もありません。 236 00:21:24,283 --> 00:21:30,956 傷はあるが 名が違う。 娘の年の勘定も合わない。 237 00:21:30,956 --> 00:21:36,128 まずは その女が志穂だという 確かな証しをつかむことだ。 238 00:21:36,128 --> 00:21:42,001 お悠は中だな。 へい 娘は…。 あっ 旦那! 旦那! 239 00:21:42,001 --> 00:21:44,303 いらっしゃいまし。 聞きたいことがある。 240 00:21:44,303 --> 00:21:47,640 お前の その頬の傷は刀傷だな。 241 00:21:47,640 --> 00:21:51,310 どうして そのような傷が出来た。 (辰三)旦那。 242 00:21:51,310 --> 00:21:56,982 子供の頃 過って包丁で。 一体 何でございますか? 243 00:21:56,982 --> 00:21:59,018 何でもねえんだ。 旦那 ここは…。 244 00:21:59,018 --> 00:22:04,089 お悠といったな。 まことの名は志穂ではないのか? 245 00:22:04,089 --> 00:22:07,927 やはり そうか。 18年前に武蔵野は祖師谷…。 246 00:22:07,927 --> 00:22:10,262 おやめください! 247 00:22:10,262 --> 00:22:14,767 いくら お町の旦那だって 迷惑です。 お帰りください。 248 00:22:14,767 --> 00:22:17,603 申し訳ねえ 悪かったな。 すまねえ 邪魔したな。 249 00:22:17,603 --> 00:22:22,942 お前の娘が死にそうなんだ。 会いたがってるんだ! 250 00:22:22,942 --> 00:22:27,947 養生所だ 養生所にいる! 親であるなら! 申し訳ねえ。 251 00:22:29,615 --> 00:22:32,117 (お豊)ああ びっくりした。 252 00:22:32,117 --> 00:22:35,621 何だってんだい 一体! さあ…。 253 00:22:35,621 --> 00:22:41,427 (源次郎)この大ばか野郎! 源さん。 よいか 駿介。 254 00:22:41,427 --> 00:22:45,130 お悠は 咎人ではないのだ。 255 00:22:45,130 --> 00:22:52,871 この18年 お悠には お悠の暮らしがあった。 256 00:22:52,871 --> 00:22:57,843 我らの務めは 江戸の民の暮らしを守ることにある。 257 00:22:57,843 --> 00:23:03,515 暮らしを守るということは その者の生きてきた歩みに➡ 258 00:23:03,515 --> 00:23:08,254 寄り添うということだ。 259 00:23:08,254 --> 00:23:14,393 そこに思いが至らぬのなら 町方同心は勤まらん! 260 00:23:14,393 --> 00:23:17,396 申し訳… ございません。 261 00:23:20,099 --> 00:23:25,771 軽挙妄動は慎め。 行け。 262 00:23:25,771 --> 00:23:28,274 はっ。 263 00:23:34,413 --> 00:23:38,117  回想 (駿介)お前の娘が死にそうなんだ。 会いたがってるんだ!➡ 264 00:23:38,117 --> 00:23:43,622 養生所だ 養生所にいる! 親であるなら! 265 00:23:43,622 --> 00:23:49,128 どうしたの おっ母さん。 ああ… 何でもないよ。 266 00:23:49,128 --> 00:23:51,797 花嫁衣装 どうだった? 267 00:23:51,797 --> 00:23:56,635 きれいだったよ。 早く着たいな。 268 00:23:56,635 --> 00:23:59,672 こちらで用意できれば よかったんだけどね。 269 00:23:59,672 --> 00:24:05,244 いいの。 うちの暮らし向きのことは 向こう様も分かってくれてるから。 270 00:24:05,244 --> 00:24:07,947 さっ ごはんにしよう。 271 00:24:13,385 --> 00:24:16,088 養生所…。 272 00:24:27,266 --> 00:24:30,769 あっ! ごめんなさい。 いえ。 273 00:24:33,138 --> 00:24:36,642 そなた… もしや! 274 00:24:38,977 --> 00:24:42,281 赤子は手前が お守りいたす。 早く! 275 00:24:44,283 --> 00:24:46,285 待て! 276 00:24:48,287 --> 00:24:51,056 (孫市)かすみ…。 277 00:24:51,056 --> 00:24:55,995 母親のことは 諦めてくれぬか。 278 00:24:55,995 --> 00:24:59,765 どうして? 279 00:24:59,765 --> 00:25:03,068 爺が言ったんじゃないか。 280 00:25:03,068 --> 00:25:05,971 願えば かなうと言ったんじゃないか! 281 00:25:05,971 --> 00:25:08,874 しかたがないのだ。 282 00:25:08,874 --> 00:25:16,615 嫌だ! 嫌だ… 会いたいよ… 会いたいよ。 283 00:25:16,615 --> 00:25:20,919 お前の母は死んだ! 死んだのだ。 284 00:25:30,095 --> 00:25:36,402 お主… 志穂に会ったな。 285 00:25:39,772 --> 00:25:48,781 かすみの容体が気になり 近くまで…。 やはり 会えぬと。 286 00:25:48,781 --> 00:25:52,284  回想 なぜだ 何故 会えぬ。 287 00:25:52,284 --> 00:25:58,424 ここまで来たのだ。 すぐそこに そなたが産んだ娘が…➡ 288 00:25:58,424 --> 00:26:02,227 その娘が 会いたいと言うておるのだ。 289 00:26:02,227 --> 00:26:06,231 私は一度死んだ女なんです。 何? 290 00:26:06,231 --> 00:26:10,936 森の中をさまよった私は 崖から落ちて…。 291 00:26:10,936 --> 00:26:13,439 あ~っ! キャ~ッ! 292 00:26:21,246 --> 00:26:23,916 (茂吉)おや? 293 00:26:23,916 --> 00:26:28,387 (志穂)死にかけた私を 小間物の行商をしていた➡ 294 00:26:28,387 --> 00:26:31,290 茂吉さんが救ってくれたんです。➡ 295 00:26:31,290 --> 00:26:37,129 お初という かわいい娘を 一人で育てている人で いい人でした。 296 00:26:37,129 --> 00:26:39,131 さあ 食べなさい。 297 00:26:39,131 --> 00:26:43,869 かすみのことを忘れたことはありません。 298 00:26:43,869 --> 00:26:47,105 でも 私が この寺に来た時には➡ 299 00:26:47,105 --> 00:26:49,608 もう火事で焼けていて➡ 300 00:26:49,608 --> 00:26:52,511 かすみや あなたのことを知っている人は➡ 301 00:26:52,511 --> 00:26:54,780 誰もいませんでした。 302 00:26:54,780 --> 00:27:02,354 そんな私を励まし 生きる力をくれたのが 茂吉さんと お初です。 303 00:27:02,354 --> 00:27:06,058 3年たって一緒になりました。 304 00:27:06,058 --> 00:27:13,232 汗水たらして 懸命に働いて 江戸で店を出したんです。 305 00:27:13,232 --> 00:27:19,104 月に一度 恩人の墓参りだと言って寺に通う。 306 00:27:19,104 --> 00:27:26,245 そして かすみのことを思うこと それしかできなかった。 307 00:27:26,245 --> 00:27:31,917 それならば なおのこと。 すぐ近くに かすみはおるのだ。 308 00:27:31,917 --> 00:27:37,122 今会ったら 私の心が しぼんでしまう。 309 00:27:39,791 --> 00:27:45,264 お初は 私が本当の母親であると信じています。 310 00:27:45,264 --> 00:27:48,267 そのお初に 縁談があるんです。➡ 311 00:27:48,267 --> 00:27:52,037 お相手は 太物問屋の若旦那。 312 00:27:52,037 --> 00:27:57,609 それでなくても不釣り合いな縁談で。 313 00:27:57,609 --> 00:28:02,047 私がお初の本当の親じゃないと知ったら➡ 314 00:28:02,047 --> 00:28:06,218 昔 お役人に追われたことが分かったら➡ 315 00:28:06,218 --> 00:28:10,088 ほんの小さなことで 破談になるかもしれない。 316 00:28:10,088 --> 00:28:14,560 そうなったら お初にすまない。 317 00:28:14,560 --> 00:28:18,430 死んだ茂吉さんにも 合わせる顔がありません。 318 00:28:18,430 --> 00:28:25,904 黙っておればよい。 誰にも 何も言わず。 319 00:28:25,904 --> 00:28:31,243 許してください。 このとおりです。 320 00:28:31,243 --> 00:28:36,748 嫁入りが終わったら そっとそっと会いに行きます。 だから! 321 00:28:36,748 --> 00:28:40,085 それでは遅い! 遅いのだ! 322 00:28:40,085 --> 00:28:43,589 でも でも…。 323 00:28:43,589 --> 00:28:46,291 ごめんなさい。 324 00:28:47,926 --> 00:28:51,396 (孫市)あの人は あの人なりに➡ 325 00:28:51,396 --> 00:28:56,101 必死なのが分かりました。 326 00:28:56,101 --> 00:29:00,539 かすみと会えば 十数年の間➡ 327 00:29:00,539 --> 00:29:07,312 必死に膨らませて育ててきた娘への思いが しぼんでしまう。 328 00:29:07,312 --> 00:29:11,216 それを恐れておるのでしょう。➡ 329 00:29:11,216 --> 00:29:15,053 あの子は 死にゆく者。 330 00:29:15,053 --> 00:29:18,357 生きている者を足蹴にしてまで➡ 331 00:29:18,357 --> 00:29:22,160 夢をかなえさせるわけには…。 332 00:29:28,900 --> 00:29:35,240 そのお悠さんとやら 体が2つあればと 思っていることでしょう。 333 00:29:35,240 --> 00:29:38,744 (お花)けど 会ってあげるべきです。 334 00:29:38,744 --> 00:29:42,447 その娘さん もうすぐ…。 335 00:29:46,084 --> 00:29:49,921 八丁堀の旦那が? ものすごい剣幕でさあ➡ 336 00:29:49,921 --> 00:29:54,259 わあわあ わめいちゃって もう驚いたのなんの。 337 00:29:54,259 --> 00:29:57,562 お悠さん 平気かい? 338 00:29:59,131 --> 00:30:04,269 かすみ… ごめんよ。 339 00:30:04,269 --> 00:30:07,606 (お初)誰? かすみって。 かすみって…。 340 00:30:07,606 --> 00:30:10,409 ああ 何でもないよ。 341 00:30:10,409 --> 00:30:15,113 そうじゃなくて 聞いたことある。 おっ母さんから その名前。 342 00:30:15,113 --> 00:30:17,115 え? 343 00:30:19,618 --> 00:30:22,287 そうだ あの時だ。 344 00:30:22,287 --> 00:30:27,159 (志穂)お前にはね かすみって名の妹がいるんだよ。 345 00:30:27,159 --> 00:30:30,028 妹? どこに? 346 00:30:30,028 --> 00:30:38,303 遠い所。 だったら会いたい。 会いたいね かすみに。 347 00:30:38,303 --> 00:30:45,644 そうだね いつか会えるといいね。 348 00:30:45,644 --> 00:30:50,148 そうよ あの時言った名前が かすみだった。 349 00:30:50,148 --> 00:30:53,185 もしかして お役人が来たのは その子のことで? 350 00:30:53,185 --> 00:30:59,324 何言ってるのさ。 そんなこと…。 言って。 ちゃんと聞かせて。 351 00:30:59,324 --> 00:31:02,094 何かあったんでしょ? そうよね。 352 00:31:02,094 --> 00:31:05,931 私 もうすぐ このうち出てくんだよ。 353 00:31:05,931 --> 00:31:10,235 だから 言い残しっこ なしにして。 ねっ おっ母さん。 354 00:31:14,940 --> 00:31:21,146 そうだね… ごめんね 気ぃ遣わせて。 355 00:31:23,415 --> 00:31:32,791 実はね… かすみは あるお武家様との間に生まれた子なの。 356 00:31:32,791 --> 00:31:39,297 訳あって 生まれて間もなく 離れ離れになってしまって。 357 00:31:39,297 --> 00:31:45,103 そんな時 あんたと あんたのお父っつぁんと出会ったの。 358 00:31:45,103 --> 00:31:47,606 え? 359 00:31:54,146 --> 00:31:58,316 今まで黙ってて ごめんね。 360 00:31:58,316 --> 00:32:02,921 じゃあ 私は おっ母さんの本当の子供じゃないんだ。 361 00:32:02,921 --> 00:32:04,956 でも 私は 一度だって あんたのこと そんなふうに…。 362 00:32:04,956 --> 00:32:09,594 分かってる 分かってるよ おっ母さん。 363 00:32:09,594 --> 00:32:12,931 おっ母さんは いつだって私のおっ母さんだったもの。 364 00:32:12,931 --> 00:32:15,600 お初…。 365 00:32:15,600 --> 00:32:22,474 でも そのかすみって子は その子は 今 どうしてるの? 366 00:32:22,474 --> 00:32:29,114 養生所にいるんだって。 そう長くはないって お役人が。 367 00:32:29,114 --> 00:32:33,785 それで 会いに行ったの? 368 00:32:33,785 --> 00:32:40,292 行こうと思ったんだけど… でも 会えなかった。 369 00:32:40,292 --> 00:32:44,629 どうして? だって そんなことして➡ 370 00:32:44,629 --> 00:32:47,132 あんたの縁談が もし 破談にでもなったら…。 371 00:32:47,132 --> 00:32:52,003 何言ってんの おっ母さん! 赤ん坊の頃に別れたっきりなんでしょ。 372 00:32:52,003 --> 00:32:58,643 どんなに その子が会いたいと思ってるか どんなに会いたいか。でも…。 373 00:32:58,643 --> 00:33:04,449 私のことなんかいい。 私は 今まで おっ母さんと一緒だったんだもの。 374 00:33:04,449 --> 00:33:10,255 その子は かすみは ずっと おっ母さんがいなかったんだよ。 375 00:33:10,255 --> 00:33:15,760 行くんだよ おっ母さん。 行ってあげなきゃ駄目! 376 00:33:15,760 --> 00:33:19,931 けど… けど…。 377 00:33:19,931 --> 00:33:26,404 私のことはいいの 私のことは。 378 00:33:26,404 --> 00:33:29,207 お初…。 379 00:33:34,145 --> 00:33:37,148 (荒い息遣い) 380 00:33:37,148 --> 00:33:39,985 今夜が峠だ。 (荒い息遣い) 381 00:33:39,985 --> 00:33:59,137 (荒い息遣い) 382 00:33:59,137 --> 00:34:02,040 頼むぞ。 おい。 383 00:34:02,040 --> 00:34:11,383 ♬~ 384 00:34:11,383 --> 00:34:15,253 (多一郎)離しておくれ! (止める声) 385 00:34:15,253 --> 00:34:20,125 離しておくれ 離しておくれ! 386 00:34:20,125 --> 00:34:23,395 何? お悠の娘が? 387 00:34:23,395 --> 00:34:27,265 (伊勢屋)いきなり 息子との縁談を なかったことにしてほしいと➡ 388 00:34:27,265 --> 00:34:31,136 その一点張りで。 (多一郎)もう 何が何だか。➡ 389 00:34:31,136 --> 00:34:34,773 どうしてなのか!? (伊勢屋)落ち着きなさい!➡ 390 00:34:34,773 --> 00:34:38,109 お奉行様の前です。 391 00:34:38,109 --> 00:34:40,779 よい娘なのです。 392 00:34:40,779 --> 00:34:46,284 三国一の花嫁だと 私どもの方から こうして➡ 393 00:34:46,284 --> 00:34:52,424 花嫁衣装を用意していたぐらいですから。 394 00:34:52,424 --> 00:35:00,732 そうか。 ならば「渡りに船」。 奉行の話 聞いてもらえるか。 395 00:35:00,732 --> 00:35:03,435 はい。 何なりと。 396 00:35:05,070 --> 00:35:07,105 (多一郎)お初ちゃん。➡ 397 00:35:07,105 --> 00:35:11,309 待っておくれ。 話を聞いておくれ。 398 00:35:16,081 --> 00:35:18,016 お初か。 399 00:35:18,016 --> 00:35:20,752 先生 大変です! 400 00:35:20,752 --> 00:35:24,622 篠屋の悠と申します。 娘に会いに参りました。 401 00:35:24,622 --> 00:35:29,094 かすみ 聞こえるか! おっ母さんが来てくれたぞ! 402 00:35:29,094 --> 00:35:33,098 かすみ… かすみ! 403 00:35:34,766 --> 00:35:36,701 え…。 404 00:35:36,701 --> 00:35:41,940 かすみ… おっ母さんだよ。 405 00:35:41,940 --> 00:35:45,810 おっ母さん…。 406 00:35:45,810 --> 00:35:50,615 本当におっ母さん…。 そうだよ。 407 00:35:50,615 --> 00:35:53,651 ごめんね。 408 00:35:53,651 --> 00:36:00,892 長い間 ほっといて。 ごめんなさい。 409 00:36:00,892 --> 00:36:06,231 本当なんだね。 会えた。 410 00:36:06,231 --> 00:36:13,038 ようやく会えた。 おっ母さんに会えた。 411 00:36:20,378 --> 00:36:24,582 かすみ。 (かすみ)おっ母さん…。 412 00:36:26,751 --> 00:36:29,254 (お初)おっ母さん! 413 00:36:29,254 --> 00:36:34,959 忠相。 南のな お奉行様だ。 414 00:36:36,995 --> 00:36:41,833 お奉行様から伺いました。 水くさいですよ おっ義母さん。 415 00:36:41,833 --> 00:36:49,340 伊勢屋はな 全てのみ込み それでも お初を嫁にと申しておる。 416 00:36:51,276 --> 00:36:55,613 あなたが かすみね。 417 00:36:55,613 --> 00:36:57,549 私は お初。 418 00:36:57,549 --> 00:36:59,784 お初…。 419 00:36:59,784 --> 00:37:05,056 そうよ。 私は おっ母さんに育てられた娘。 420 00:37:05,056 --> 00:37:08,560 あなたは おっ母さんから産まれた娘。 421 00:37:08,560 --> 00:37:11,896 だから 私たち きょうだいなの。 422 00:37:11,896 --> 00:37:16,768 私は お姉さん あなたは 妹。 423 00:37:16,768 --> 00:37:20,371 お姉さん…? 424 00:37:20,371 --> 00:37:25,176 そう お姉さんよ。 そしてね。 425 00:37:26,911 --> 00:37:31,082 私は多一郎。 今度 お初ちゃんと夫婦になるんだ。 426 00:37:31,082 --> 00:37:33,751 だから お前の義兄さんということになる。 427 00:37:33,751 --> 00:37:36,588 義兄さん? (多一郎)そうさ。 428 00:37:36,588 --> 00:37:39,257 だから元気になってもらわないと困るよ。 429 00:37:39,257 --> 00:37:42,460 祝言には出てもらうんだからさ。 430 00:37:44,395 --> 00:37:54,405 おっ母さん お姉さん お義兄さん…。 431 00:37:54,405 --> 00:38:02,714 うれしい 会えてうれしい。 夢みたいだ。 432 00:38:02,714 --> 00:38:09,888 夢なんかじゃない。 これから みんな一緒だよ。 433 00:38:09,888 --> 00:38:12,357 そうだよ かすみ! 434 00:38:12,357 --> 00:38:18,163 うん… 願えば かなう。 435 00:38:18,163 --> 00:38:24,936 爺 本当だった。 ありがとう 爺。 436 00:38:24,936 --> 00:38:34,078 ♬~ 437 00:38:34,078 --> 00:38:39,250 すまんが この子に 乳を与えてくださらんか。 438 00:38:39,250 --> 00:38:42,153 あっ いいよ おいで。 439 00:38:42,153 --> 00:38:50,595 ♬~ 440 00:38:50,595 --> 00:38:53,498 おっ! ハハハハ…。 441 00:38:53,498 --> 00:39:01,706 ♬~ 442 00:39:01,706 --> 00:39:05,543 爺! お昼だよ! 443 00:39:05,543 --> 00:39:07,478 おう! 444 00:39:07,478 --> 00:39:09,781 ほら! 445 00:39:21,359 --> 00:39:23,661 (志穂)かすみ! 446 00:39:28,066 --> 00:39:30,568 かすみ! 447 00:39:30,568 --> 00:39:55,393 ♬~ 448 00:39:55,393 --> 00:40:00,598 (泣き声) 449 00:40:00,598 --> 00:40:15,146 ♬~ 450 00:40:15,146 --> 00:40:20,285 そうか… 最期に一同そろうたか。 451 00:40:20,285 --> 00:40:22,787 はい。 452 00:40:24,289 --> 00:40:30,795 人には過去があり 過去があることで今があると➡ 453 00:40:30,795 --> 00:40:35,433 今更ながら 忠相 感じ入りました。 454 00:40:35,433 --> 00:40:37,969 うん。 455 00:40:37,969 --> 00:40:40,004 何か? 456 00:40:40,004 --> 00:40:42,840 母も同じようなことを言うておった。 457 00:40:42,840 --> 00:40:49,580 (浄円院)私が お父上の 光貞様の湯殿番だった時➡ 458 00:40:49,580 --> 00:40:55,153 光貞様が ふざけて お湯をかけたのです。 459 00:40:55,153 --> 00:41:01,392 でも そのことがあって 光貞様に気に入られ➡ 460 00:41:01,392 --> 00:41:06,264 こうして 今 あなたは 将軍としていられるわけです。 461 00:41:06,264 --> 00:41:12,937 全て過去があるからこそ 今があるのです。 462 00:41:12,937 --> 00:41:14,972 まことに。 463 00:41:14,972 --> 00:41:18,676 母との思い出だ 忠相。 464 00:41:28,119 --> 00:41:32,990 上様が 武士に戻る気があるのならと…。 465 00:41:32,990 --> 00:41:39,130 めっそうもない。 私は かすみと暮らした あの土地で➡ 466 00:41:39,130 --> 00:41:44,635 百姓 孫市として 生涯 暮らすつもりでおります。 467 00:41:44,635 --> 00:41:50,308 でも おさみしくなりましたね。 468 00:41:50,308 --> 00:41:56,114 なに 1人暮らしも また…。 ハハ。 469 00:41:56,114 --> 00:41:58,116 では。 470 00:42:02,587 --> 00:42:06,891 悲しいでしょうね あのお方も。 471 00:42:09,927 --> 00:42:14,799 悲しみにも いつか終わりは来るよ。 472 00:42:14,799 --> 00:42:19,604 <小さくなる孫市の背中を見つめながら➡ 473 00:42:19,604 --> 00:42:24,108 過酷な運命を受け入れる人であふれる この世の中を➡ 474 00:42:24,108 --> 00:42:31,315 少しでも よくしたいと 心に誓う忠相であった> 475 00:42:35,286 --> 00:42:37,288 どうしても返して礼を言いたい。 476 00:42:37,288 --> 00:42:40,958 二度と来ないでおくれ。 この5年の間に一体何があったのだ。 477 00:42:40,958 --> 00:42:44,796 5年前っていうと…。 3百両で手を打とう。 478 00:42:44,796 --> 00:42:47,131 あんた 金をとったな。 何を言う! 479 00:42:47,131 --> 00:42:49,167 お前らには任せられん。 俺が行く。 480 00:42:49,167 --> 00:42:55,173 悪事を続ければ 必ず 綻びが生ずる。 今が その機と心得 綻びを突く!