1 00:00:38,640 --> 00:00:43,094 (家光)わしと そなたは 何も変わらぬな? 2 00:00:43,094 --> 00:00:45,394 (有功)はい 3 00:00:48,766 --> 00:00:54,105 (捨蔵)上様 怖がることは ございませんよ 4 00:00:54,105 --> 00:00:59,105 すべて あっしに お任せくださりゃよろしいんです 5 00:01:00,928 --> 00:01:04,782 ささほら 硬くならねえで こっちへ 6 00:01:04,782 --> 00:01:06,834 無礼者! 7 00:01:06,834 --> 00:01:08,934 頭が高い! 8 00:01:10,922 --> 00:01:12,922 ははッ はッ! 9 00:01:15,093 --> 00:01:17,595 よいか 10 00:01:17,595 --> 00:01:21,933 お前がわしを抱くのではない 11 00:01:21,933 --> 00:01:24,733 わしがお前を抱くのだ 12 00:01:49,677 --> 00:01:52,430 見栄っ張りやろ 13 00:01:52,430 --> 00:01:57,602 廊下側の障子には 斬りつけられへんかったんや 14 00:01:57,602 --> 00:02:00,702 私は ただの嘘つきや 15 00:02:05,476 --> 00:02:08,763 <(村瀬)寛永19年の8月3日> 16 00:02:08,763 --> 00:02:11,363 <姫君が誕生された> 17 00:02:32,253 --> 00:02:35,590 <生まれたのが 男子のお世継ぎでなく> 18 00:02:35,590 --> 00:02:38,259 <事情が事情であるため> 19 00:02:38,259 --> 00:02:42,430 <お七夜の祝いも すべての大名家でなく> 20 00:02:42,430 --> 00:02:45,430 <重臣のみの出仕となった> 21 00:02:49,921 --> 00:02:52,440 祝いの膳は万事 滞りないか? 22 00:02:52,440 --> 00:02:55,943 へい お言いつけどおり 上様の御膳を十人前 23 00:02:55,943 --> 00:02:59,096 お作りいたしました それでよいのだ 24 00:02:59,096 --> 00:03:02,696 まず一人前は 和田様に 毒見していただこう 25 00:03:09,273 --> 00:03:11,273 (和田)うん 26 00:03:12,426 --> 00:03:15,930 膳の物 すべて よろしゅうございましょう 27 00:03:15,930 --> 00:03:18,933 (勝田)有功殿 28 00:03:18,933 --> 00:03:21,769 毒見に一膳 29 00:03:21,769 --> 00:03:24,038 上様に一膳 30 00:03:24,038 --> 00:03:26,774 八人前が… 余りまするが? 31 00:03:26,774 --> 00:03:32,914 ああ これは いつも膳の用意を してくれる七人の中居と 32 00:03:32,914 --> 00:03:35,583 勝田殿で お召し上がりくださいませ 33 00:03:35,583 --> 00:03:38,252 なんと! 祝いの席とはいえ 34 00:03:38,252 --> 00:03:40,538 大奥の男達のほとんどが 35 00:03:40,538 --> 00:03:43,591 上様のお顔を 拝することもかないません 36 00:03:43,591 --> 00:03:45,643 それゆえ 食事だけでも 37 00:03:45,643 --> 00:03:48,696 晴れの気持ちを分かちおうて いただきたいと思いましてな 38 00:03:48,696 --> 00:03:51,933 それは 有難い 皆も喜びましょう 39 00:03:51,933 --> 00:03:55,086 それから 大奥すべての者に 40 00:03:55,086 --> 00:03:58,272 後ほど上様から 餅や酒が振る舞われるそうだ 41 00:03:58,272 --> 00:04:01,272 おお~! 餅だ! 42 00:04:02,593 --> 00:04:05,263 手を休めるでないぞ 膳の準備じゃ 43 00:04:05,263 --> 00:04:07,363 ≪(一同)はいッ 44 00:04:23,598 --> 00:04:27,952 (松平)このたびは姫君のご誕生 真におめでとうございます→ 45 00:04:27,952 --> 00:04:30,104 祝着至極に存じます 46 00:04:30,104 --> 00:04:32,590 うむ 47 00:04:32,590 --> 00:04:36,090 皆の者 大義であったのう 48 00:04:40,431 --> 00:04:43,434 ところで信綱 49 00:04:43,434 --> 00:04:46,437 赤面疱瘡は まだ収まらぬか? 50 00:04:46,437 --> 00:04:49,590 (松平)はッ… 残念ながら一向に 51 00:04:49,590 --> 00:04:56,097 男手がなくなると 百姓は年貢も納められぬであろう 52 00:04:56,097 --> 00:04:59,083 逃げ出す者も 出ておるのではないか? 53 00:04:59,083 --> 00:05:04,422 (松平)今はそれほどに 今年は おおかた豊作でありましたゆえ 54 00:05:04,422 --> 00:05:08,926 しかし 今のうちから百姓どもの 暮らしを贅沢にさせぬよう 55 00:05:08,926 --> 00:05:11,796 触れ書きを出すつもりでは おります 56 00:05:11,796 --> 00:05:15,796 うむ 正勝も そう申しておったのう 57 00:05:18,936 --> 00:05:23,236 田畑の売買を禁ずるのも 一つの手か… 58 00:05:25,610 --> 00:05:30,210 百姓どもが貧しさゆえに 田畑を売って逃げ出さぬようにな 59 00:05:34,435 --> 00:05:38,589 いや… こざかしいことを 申したのう 60 00:05:38,589 --> 00:05:41,926 わしは黙って 世継ぎを産めばいいのだな 61 00:05:41,926 --> 00:05:44,762 許せよ 信綱 62 00:05:44,762 --> 00:05:47,762 いいえ そのような… 63 00:05:49,583 --> 00:05:52,653 子を持つと 64 00:05:52,653 --> 00:05:55,923 我が子が長じたときのことが 65 00:05:55,923 --> 00:05:59,423 どうにも 気になってくるものなのだ 66 00:06:00,811 --> 00:06:03,431 (松平)しかし お変わりになられたのう→ 67 00:06:03,431 --> 00:06:05,599 臣下に「大義であった 許せよ」 などと 68 00:06:05,599 --> 00:06:08,602 口にされる方ではなかったが (忠秋)確かに 69 00:06:08,602 --> 00:06:11,272 あの百姓逃散に関するご見識 70 00:06:11,272 --> 00:06:14,425 器の大きい底知れぬものを 感じましたぞ 71 00:06:14,425 --> 00:06:17,595 (重次)さすが お血筋じゃ うん 72 00:06:17,595 --> 00:06:21,599 (堀田)上様とお呼びするのに 違和感は少のうなってますな 73 00:06:21,599 --> 00:06:24,468 (太田) 今の上様が男であられたらな→ 74 00:06:24,468 --> 00:06:26,604 真に惜しいことじゃ 75 00:06:26,604 --> 00:06:29,423 とにかく こたびは姫君であったが 76 00:06:29,423 --> 00:06:33,761 上様がお子をお生みあそばすこと ができると分かっただけでも 77 00:06:33,761 --> 00:06:38,432 (三浦)左様 左様 しかし 若君であってもお一人では… 78 00:06:38,432 --> 00:06:42,436 なんというても 赤面疱瘡 79 00:06:42,436 --> 00:06:45,589 某も… 80 00:06:45,589 --> 00:06:49,093 こないだ三男坊を亡くしましての 81 00:06:49,093 --> 00:06:55,433 ≪(重次)このままでは お取り潰し になるお家も多くなろうなあ 82 00:06:55,433 --> 00:06:58,102 近頃の町人らのように 83 00:06:58,102 --> 00:07:02,440 女を跡取りにするわけにも ゆかぬしのう 84 00:07:02,440 --> 00:07:05,540 ≪(重次)まったくじゃ 85 00:07:08,746 --> 00:07:11,546 ≪(和)お帰りなさいませ 86 00:07:13,934 --> 00:07:17,088 今日は疲れたゆえ 早く休む 87 00:07:17,088 --> 00:07:19,423 わしはもう年じゃ 88 00:07:19,423 --> 00:07:22,223 (和)では すぐにお床を 89 00:07:26,497 --> 00:07:28,997 ≪(輝綱)父上! 90 00:07:31,419 --> 00:07:34,088 (輝綱)お帰りなさいませ 父上 91 00:07:34,088 --> 00:07:36,088 うむ 92 00:07:40,761 --> 00:07:46,417 ≪(信綱)日に日に 男か女か 分からなくなっていくのう 93 00:07:46,417 --> 00:07:50,755 しずでございますか? ああ… 94 00:07:50,755 --> 00:07:53,555 困ったものだ 95 00:07:56,861 --> 00:07:59,961 (和が枕元に座る) 96 00:08:01,749 --> 00:08:05,753 しずを 亡き輝綱の身代わりとされたのは 97 00:08:05,753 --> 00:08:09,640 他ならぬ殿様ではございませぬか 98 00:08:09,640 --> 00:08:13,944 私はもう しずが哀れで哀れで 99 00:08:13,944 --> 00:08:17,932 やむをえまい 他に道はなかったのじゃ 100 00:08:17,932 --> 00:08:23,232 しずときたら 先日など こう申すのです 101 00:08:27,992 --> 00:08:30,427 《ご心配めされるな 母上》 102 00:08:30,427 --> 00:08:34,915 《どうやら私には この生活の方が 肌に合うようでございます》 103 00:08:34,915 --> 00:08:39,086 《やってみたら 裁縫や生花より 剣術や乗馬の方が→》 104 00:08:39,086 --> 00:08:41,255 《よほど性に合っております》 105 00:08:41,255 --> 00:08:46,260 《しかし こうして暮らしてますと 月のものがくるまで》 106 00:08:46,260 --> 00:08:49,930 《己が女だということも 忘れてしまいますな》 107 00:08:49,930 --> 00:08:52,430 《はははは…》 108 00:08:53,417 --> 00:08:55,769 うッ! 109 00:08:55,769 --> 00:08:57,938 はしたない… 110 00:08:57,938 --> 00:09:01,609 女が そのような あけすけな物言いを… 111 00:09:01,609 --> 00:09:05,095 ですから殿が! しずに元服までさせ 112 00:09:05,095 --> 00:09:09,095 男としてお育てになるから このようなことにッ 113 00:09:27,935 --> 00:09:30,604 父上… 114 00:09:30,604 --> 00:09:35,104 そんなふうにでも思わねば やっていられませぬ 115 00:09:41,665 --> 00:09:47,087 ああ~ 赤ん坊が こんなにかわいいなんて もう 116 00:09:47,087 --> 00:09:49,757 おいら ちっとも… 117 00:09:49,757 --> 00:09:53,093 玉のようなとは 本当な よく言ったもんだな 118 00:09:53,093 --> 00:09:56,764 (矢島)これ 汚い手で触っては なりませぬ 119 00:09:56,764 --> 00:09:59,564 捨蔵 へいッ 120 00:10:00,918 --> 00:10:03,437 へい! 121 00:10:03,437 --> 00:10:06,590 そなたは千代姫の父 122 00:10:06,590 --> 00:10:12,090 その父親の名が「捨蔵」とは いかにも縁起が悪い 123 00:10:14,248 --> 00:10:16,848 そうだのう… 124 00:10:19,920 --> 00:10:22,256 「お楽」 125 00:10:22,256 --> 00:10:25,776 今日から そちの名は お楽と改めよう 126 00:10:25,776 --> 00:10:28,376 のんき者のそなたには ふさわしい 127 00:10:32,082 --> 00:10:36,082 なんじゃ 女の名をつけられ 不満か? 128 00:10:38,088 --> 00:10:40,688 いやいやもう とんでもねえ! 129 00:10:42,426 --> 00:10:46,931 おいらみたいな ごろつきを… 130 00:10:46,931 --> 00:10:50,031 お姫様の… 父親… 131 00:10:52,419 --> 00:10:54,419 ≪(捨蔵)恐れ多いや 132 00:10:58,976 --> 00:11:03,247 おいらは このかわいらしい顔を 133 00:11:03,247 --> 00:11:06,250 眺めていられるだけでも 十分なんでえッ 134 00:11:06,250 --> 00:11:10,921 馬鹿な お前がおらねば この姫はここにおらぬ 135 00:11:10,921 --> 00:11:13,924 お前の他に誰が父親だというのだ 136 00:11:13,924 --> 00:11:15,924 へい… 137 00:11:26,503 --> 00:11:29,423 上様 138 00:11:29,423 --> 00:11:32,023 あっしはね 139 00:11:33,594 --> 00:11:36,194 上様を… 140 00:11:37,598 --> 00:11:40,267 上様 有功にございます 141 00:11:40,267 --> 00:11:42,920 有功ッ 142 00:11:42,920 --> 00:11:45,920 そんじゃあの… あっしは これにて 143 00:11:53,931 --> 00:11:55,933 失礼をばいたしました 144 00:11:55,933 --> 00:11:58,268 捨蔵殿 私に気兼ねは無用だ 145 00:11:58,268 --> 00:12:00,921 もっと ゆっくりしていても よいのだぞ 146 00:12:00,921 --> 00:12:04,591 いやいやいや とんでもねえ お暇いたしやす 147 00:12:04,591 --> 00:12:06,691 左様か では 148 00:12:08,262 --> 00:12:11,062 あッ けどね有功様 149 00:12:14,268 --> 00:12:20,758 今日から おいらの名前はね お楽ってんですよ 150 00:12:20,758 --> 00:12:24,058 それはそれは ありがてえことに 151 00:12:27,431 --> 00:12:30,931 上様が つけてくださったんで 152 00:12:34,755 --> 00:12:37,355 ではッ 153 00:13:08,422 --> 00:13:11,422 ほら 有功 見て 154 00:13:12,943 --> 00:13:17,431 なあ? 日に日に大きくなるであろう 155 00:13:17,431 --> 00:13:21,431 あっという間に このように肥えて 156 00:13:23,454 --> 00:13:27,524 矢島 お前はしばらく 下がっておれ 157 00:13:27,524 --> 00:13:29,524 はい 158 00:13:34,765 --> 00:13:39,265 真に かわいらしゅうございますな 159 00:13:53,267 --> 00:13:55,936 私には 160 00:13:55,936 --> 00:14:00,736 お前だけじゃ 有功 161 00:14:43,267 --> 00:14:45,367 ふあ~あ 162 00:14:54,278 --> 00:14:56,413 おおっと はッ はッ 163 00:14:56,413 --> 00:15:02,603 (春日)捨蔵様 今まさに お部屋に ご挨拶に伺うところでありました 164 00:15:02,603 --> 00:15:07,925 この度は 真に おめでとうございます 165 00:15:07,925 --> 00:15:10,093 はあ 166 00:15:10,093 --> 00:15:12,763 さすがじゃ~ 167 00:15:12,763 --> 00:15:16,266 私の目に狂いはなかった 168 00:15:16,266 --> 00:15:19,419 あの… 春日局様 春日と 169 00:15:19,419 --> 00:15:22,089 お呼びくださいませ→ 170 00:15:22,089 --> 00:15:27,427 捨蔵様はもう お腹様となられたゆえ 171 00:15:27,427 --> 00:15:29,763 お腹様… 172 00:15:29,763 --> 00:15:33,584 次こそは必ず 173 00:15:33,584 --> 00:15:37,654 姫ではなく 男 174 00:15:37,654 --> 00:15:40,924 お頼み申しますぞ 175 00:15:40,924 --> 00:15:43,024 へいッ 176 00:15:59,760 --> 00:16:04,665 おいらは 将軍家の姫君の… 177 00:16:04,665 --> 00:16:06,583 父上だ 178 00:16:06,583 --> 00:16:09,083 お腹様だ 179 00:16:23,250 --> 00:16:25,250 あらよッ 180 00:18:58,605 --> 00:19:00,590 なぜ捨蔵は そのようなことに!? 181 00:19:00,590 --> 00:19:03,890 (澤村) 何かの実を取ろうとしたとか 182 00:19:05,979 --> 00:19:07,979 愚かな… 183 00:19:10,767 --> 00:19:13,067 なんと愚かな… 184 00:19:14,621 --> 00:19:18,121 次は男と思っていたにッ 185 00:19:19,593 --> 00:19:23,263 して 容体は? 186 00:19:23,263 --> 00:19:27,083 それが どうやら… お匙の話では 187 00:19:27,083 --> 00:19:30,137 半身に麻痺があるゆえ 188 00:19:30,137 --> 00:19:32,923 今後 男として 189 00:19:32,923 --> 00:19:36,223 ものの役には立つまいと 190 00:19:42,582 --> 00:19:46,586 お楽様 具合はいかがでござるか? 191 00:19:46,586 --> 00:19:50,386 甘い物が好物と聞いたゆえ 持参した 192 00:19:54,427 --> 00:19:56,427 ああ… 193 00:20:03,837 --> 00:20:05,837 あー 194 00:20:08,758 --> 00:20:11,761 あッ 195 00:20:11,761 --> 00:20:13,930 ああ… 196 00:20:13,930 --> 00:20:16,930 あ… いただきます… 197 00:20:21,805 --> 00:20:23,905 どうも 198 00:21:03,763 --> 00:21:05,763 また明日も 199 00:21:07,918 --> 00:21:10,718 来てよろしいか? お楽殿 200 00:21:12,923 --> 00:21:15,842 ええ 201 00:21:15,842 --> 00:21:17,942 ええ 202 00:21:20,947 --> 00:21:23,047 もちろん… 203 00:21:25,252 --> 00:21:27,587 ありがとうごぜえやす 204 00:21:27,587 --> 00:21:30,640 真に気の毒なことだ 205 00:21:30,640 --> 00:21:34,077 千代姫様も お生まれになったというのに 206 00:21:34,077 --> 00:21:39,266 正資 お楽様の部屋子を 二人に増やしてやってくれぬか 207 00:21:39,266 --> 00:21:42,936 あの様子では つききりで 世話をする者が必要だ 208 00:21:42,936 --> 00:21:45,755 (村瀬)はッ かしこまりました 209 00:21:45,755 --> 00:21:47,755 なるべく早うにな 210 00:21:49,276 --> 00:21:52,412 そのように細やかなお気遣い 211 00:21:52,412 --> 00:21:56,099 あの男も どんなにか 心慰められましょう 212 00:21:56,099 --> 00:21:58,752 何もできてはおらぬよ 213 00:21:58,752 --> 00:22:04,758 あのような体になっても もう 親元に帰してやることもできぬ 214 00:22:04,758 --> 00:22:09,763 それはここにいる者 皆 同じさだめでありましょう 215 00:22:09,763 --> 00:22:15,763 そなたも 病がちの妻女を置いて ここへまいったのであったな 216 00:22:17,420 --> 00:22:23,426 長年お仕えした大名家が お取り潰しになりましてな 217 00:22:23,426 --> 00:22:26,726 金子が必要でした→ 218 00:22:28,598 --> 00:22:35,922 貧しくてもよい 行ってくれるなと 泣いてすがった妻を振り切り… 219 00:22:35,922 --> 00:22:38,441 今にして思えば 220 00:22:38,441 --> 00:22:42,429 妻はもはや この世には おらぬのかもしれませぬ 221 00:22:42,429 --> 00:22:46,729 春日局様のおやりになることです 222 00:22:53,073 --> 00:22:57,073 (玉栄)私は今回のこと 胸がスッとしましたわ 223 00:22:59,262 --> 00:23:04,084 いや… ちょっとはお楽様のことは 気の毒やと思いますけど 224 00:23:04,084 --> 00:23:08,588 春日局が歯ぎしりして 悔しがってると思うと 225 00:23:08,588 --> 00:23:12,092 あの婆もこれで 少しおとなしなりますやろ 226 00:23:12,092 --> 00:23:14,527 そやろか ≪(玉栄)そうです 227 00:23:14,527 --> 00:23:19,327 有功様以外に 上様のお相手は 務まるはずがございませんて 228 00:23:31,594 --> 00:23:33,594 《有功…》 229 00:23:35,265 --> 00:23:37,265 《有功》 230 00:23:39,753 --> 00:23:41,853 《有功》 231 00:23:44,674 --> 00:23:46,774 《有功》 232 00:23:49,929 --> 00:23:52,229 上様? 233 00:24:07,931 --> 00:24:10,031 有功 234 00:24:11,418 --> 00:24:13,518 有功ッ 235 00:24:19,926 --> 00:24:24,526 これは… 夢やろか 236 00:24:27,751 --> 00:24:29,753 春日じゃ 237 00:24:29,753 --> 00:24:32,756 春日がいいと言った 238 00:24:32,756 --> 00:24:36,256 春日局様が? 239 00:24:38,428 --> 00:24:41,915 有功… 240 00:24:41,915 --> 00:24:44,715 会いたかった 241 00:25:00,683 --> 00:25:02,983 有功? 242 00:25:08,842 --> 00:25:12,442 有功… 有功 243 00:27:40,460 --> 00:27:44,060 (稲葉)上様は有功殿から 片時も離れようとなさいません 244 00:27:45,765 --> 00:27:47,765 そうでもあろう 245 00:27:51,955 --> 00:27:55,458 私には春日局様のお心が 分かりません 246 00:27:55,458 --> 00:27:58,558 なぜ一度 生木を裂くように 別れさせたお二人を 247 00:28:04,284 --> 00:28:07,284 お楽様に代わる御中臈を お探しではないのですか!? 248 00:28:08,788 --> 00:28:12,775 無論 探しておるところよ 249 00:28:12,775 --> 00:28:17,447 というか もう目星はついておる 250 00:28:17,447 --> 00:28:19,615 では なぜ!? 251 00:28:19,615 --> 00:28:24,120 町人の捨蔵と違い 少々根回しに手間取る 252 00:28:24,120 --> 00:28:27,120 三月はかかるそうじゃ その間が惜しいッ 253 00:28:28,975 --> 00:28:34,113 万が一 有功殿との間に 子を成すことがあれば 254 00:28:34,113 --> 00:28:37,113 それはそれで めでたいこと 255 00:28:39,452 --> 00:28:41,552 まあ ないとは思うが 256 00:28:45,775 --> 00:28:48,444 (春日)なんじゃ その顔は?→ 257 00:28:48,444 --> 00:28:50,446 そなたらしくもない 258 00:28:50,446 --> 00:28:54,446 何よりもまず お世継ぎが 生まれることが大事であろうが! 259 00:29:28,117 --> 00:29:32,488 とうとう この日が来たの はッ 260 00:29:32,488 --> 00:29:34,788 これで稲葉家は安泰じゃ 261 00:29:36,042 --> 00:29:39,342 まさかとは思うが 正勝 262 00:29:43,783 --> 00:29:47,286 久々に鶴千代に対面しても 263 00:29:47,286 --> 00:29:50,086 動揺することのなきよう 264 00:29:52,108 --> 00:29:54,908 承知いたしております 265 00:30:06,622 --> 00:30:09,122 では まいろう はッ 266 00:30:39,789 --> 00:30:43,389 ≪(小姓達)上様のおなり~ 267 00:31:18,444 --> 00:31:22,949 (堀田)上様 この者 稲葉美濃守にございます 268 00:31:22,949 --> 00:31:27,620 (正則)はッ 亡き父・稲葉丹後守 正勝の跡を継ぎ 269 00:31:27,620 --> 00:31:30,289 元服をいたしました 270 00:31:30,289 --> 00:31:33,943 稲葉美濃守正則にございます 271 00:31:33,943 --> 00:31:37,613 この度 上様への御拝謁 272 00:31:37,613 --> 00:31:40,713 真に恐悦至極に存じまする 273 00:31:48,124 --> 00:31:51,611 苦しゅうない 面を上げよ 274 00:31:51,611 --> 00:31:53,911 はッ 275 00:31:55,781 --> 00:31:59,952 (稲葉)その年で 八万五千石の 家督を相続し→ 276 00:31:59,952 --> 00:32:02,788 肩に背負うていくのは 並のことではあるまい 277 00:32:02,788 --> 00:32:04,957 はッ 278 00:32:04,957 --> 00:32:09,328 周囲の助言 諫言にも耳を傾け 279 00:32:09,328 --> 00:32:12,381 いつの日か臣下や 280 00:32:12,381 --> 00:32:15,618 郷の民に良しとされるよう 精進いたせ 281 00:32:15,618 --> 00:32:18,918 はッ 肝に銘じまする 282 00:32:22,108 --> 00:32:26,946 これにてめでたく 元服の儀 相済みまして… 283 00:32:26,946 --> 00:32:28,946 近う寄れ! 284 00:34:21,744 --> 00:34:24,814 元服の儀 相済みまして… 285 00:34:24,814 --> 00:34:26,914 近う寄れ! 286 00:34:43,265 --> 00:34:45,865 ≪(稲葉)苦しゅうない 近う 287 00:34:48,254 --> 00:34:50,254 はッ 288 00:34:57,430 --> 00:34:59,730 近う寄れ 289 00:35:04,754 --> 00:35:07,054 もっと近う 290 00:35:12,111 --> 00:35:15,111 御簾を上げい (小姓)はッ 291 00:35:34,784 --> 00:35:37,084 面を上げよ 292 00:35:49,448 --> 00:35:51,948 大きゅうなられた 293 00:35:56,105 --> 00:35:58,924 そなたの父は よう知っておる 294 00:35:58,924 --> 00:36:01,524 竹馬の友であった 295 00:36:06,766 --> 00:36:10,436 苦しゅうない 美濃守 296 00:36:10,436 --> 00:36:12,936 そこに立ってみよ 297 00:36:25,618 --> 00:36:27,618 苦しゅうないと申しておる! 298 00:36:47,273 --> 00:36:50,609 どこから見ても 299 00:36:50,609 --> 00:36:53,209 りっぱな若武者じゃ 300 00:37:02,271 --> 00:37:04,773 父はどこからか 301 00:37:04,773 --> 00:37:06,942 そなたの姿を見 302 00:37:06,942 --> 00:37:10,242 さぞかし 満足しておることであろう 303 00:37:12,781 --> 00:37:15,381 ≪(稲葉)誇りに思うことであろう 304 00:37:18,587 --> 00:37:20,587 ははッ! 305 00:37:23,259 --> 00:37:26,045 母上を大事にするのだぞ 306 00:37:26,045 --> 00:37:28,045 ≪(正則)はいッ 307 00:37:31,267 --> 00:37:33,919 兄弟仲よう暮らせ 308 00:37:33,919 --> 00:37:38,107 はッ 必ず 309 00:37:38,107 --> 00:37:40,109 必ず 310 00:37:40,109 --> 00:37:42,409 心得ましてございます! 311 00:39:30,803 --> 00:39:33,422 母上 母上! 312 00:39:33,422 --> 00:39:37,242 (雪)どうしたのです正則? 上様にお目通りは… 313 00:39:37,242 --> 00:39:40,429 はい 上様は 私をすぐそばまで 314 00:39:40,429 --> 00:39:45,250 本当に息づかいが聞こえるほど 近くまで寄ることをお許しになり 315 00:39:45,250 --> 00:39:48,921 色々と 温かいお言葉をかけてくださり 316 00:39:48,921 --> 00:39:53,926 私は 晴れがましく もったいなく 317 00:39:53,926 --> 00:39:57,262 息が止まりそうでした 318 00:39:57,262 --> 00:40:03,252 上様は何か… 父上については おっしゃっておられましたか? 319 00:40:03,252 --> 00:40:08,590 はい よう知っている 竹馬の友と 320 00:40:08,590 --> 00:40:15,190 死んだ父上は どこからか私を見て 喜んでいるだろうと 321 00:40:18,417 --> 00:40:20,919 そう それから 322 00:40:20,919 --> 00:40:23,255 母上を大事にせよ 323 00:40:23,255 --> 00:40:26,255 兄弟仲よう暮らせと言われました 324 00:40:29,845 --> 00:40:32,748 お気の毒にも上様は 325 00:40:32,748 --> 00:40:35,534 赤面疱瘡の後遺症により 326 00:40:35,534 --> 00:40:39,922 お顔を頭巾で 覆われておりましたが→ 327 00:40:39,922 --> 00:40:44,927 そのお心は そのお声は→ 328 00:40:44,927 --> 00:40:48,597 私を包み込むようで 329 00:40:48,597 --> 00:40:52,251 まるで… まるで… 330 00:40:52,251 --> 00:40:55,351 父上のようでありました 331 00:41:17,259 --> 00:41:20,429 正則… 332 00:41:20,429 --> 00:41:23,029 ようもあのようにりっぱに… 333 00:41:32,591 --> 00:41:36,391 ありがとう 雪 334 00:41:39,014 --> 00:41:40,916 (ふすまがたたかれる) 335 00:41:40,916 --> 00:41:42,918 誰ぞある!? 336 00:41:42,918 --> 00:41:47,589 ≪(春日)二度と今日のような 振る舞いをなさらぬよう→ 337 00:41:47,589 --> 00:41:50,189 分かっておろうな? 338 00:42:47,583 --> 00:42:50,102 <三月がたち> 339 00:42:50,102 --> 00:42:54,202 <やはり お二人の間に お子ができることはなかった> 340 00:42:58,160 --> 00:43:00,596 (春日)左京殿 341 00:43:00,596 --> 00:43:05,250 こちら 御中臈であった 342 00:43:05,250 --> 00:43:08,250 万里小路有功殿じゃ 343 00:43:13,258 --> 00:43:16,595 ≪(春日)こちらは 溝口左京殿 344 00:43:16,595 --> 00:43:20,595 お楽様とは 見るからに違うであろう 345 00:43:23,085 --> 00:43:25,754 ≪(春日)確か左京殿の曽祖父は 346 00:43:25,754 --> 00:43:29,925 関ヶ原の大合戦において 武功著しく 347 00:43:29,925 --> 00:43:34,930 大御所様のおぼえが めでたかったのであったなあ→ 348 00:43:34,930 --> 00:43:38,317 方々に手を回し→ 349 00:43:38,317 --> 00:43:43,939 やっと大奥へお入りいただく ことをご承知いただいたのじゃ 350 00:43:43,939 --> 00:43:46,758 ぜひに 351 00:43:46,758 --> 00:43:50,095 りっぱな武士となるべき男子を 352 00:43:50,095 --> 00:43:53,195 授けてくださいませッ 353 00:43:58,604 --> 00:44:01,240 で あるから有功殿 354 00:44:01,240 --> 00:44:03,242 承知いたした 355 00:44:03,242 --> 00:44:06,842 上様にお伝えしておきましょう 356 00:44:09,264 --> 00:44:12,864 よく分別をなさいました 357 00:44:15,087 --> 00:44:17,087 ≪(春日)ふふッ… 358 00:44:22,594 --> 00:44:25,580 名門溝口家の血を引く 359 00:44:25,580 --> 00:44:29,380 れっきとした武家の出だそうに ございます 360 00:44:46,752 --> 00:44:48,752 よかろう 361 00:44:50,405 --> 00:44:54,505 今度はその男の子を産めと いうなら産んでやろう 362 00:45:00,816 --> 00:45:03,418 考えてみれば 363 00:45:03,418 --> 00:45:06,271 わしがこのような立場でなく 364 00:45:06,271 --> 00:45:10,271 武家の姫であったとしても 同じことよのう 365 00:45:13,245 --> 00:45:16,748 わしのお婆様 お江与の方だとて 366 00:45:16,748 --> 00:45:21,748 戦国の世で四人の男に嫁がされ 次々と子を産んだ 367 00:45:24,089 --> 00:45:28,760 この世の数多の女が そうして生きてきた 368 00:45:28,760 --> 00:45:32,560 わしだけが耐えられぬ 道理はあるまい 369 00:45:36,418 --> 00:45:39,518 耐えられぬと思ったのは… 370 00:45:46,578 --> 00:45:50,766 有功 はい 371 00:45:50,766 --> 00:45:55,366 そなたという愛しい男に 会ってしまっていたからだ 372 00:46:00,592 --> 00:46:04,096 そなた以外の男と添うなど 373 00:46:04,096 --> 00:46:07,396 耐えられぬと思った 374 00:46:13,939 --> 00:46:15,939 だが… 375 00:46:19,578 --> 00:46:23,432 子ができれば 子は愛おしい 376 00:46:23,432 --> 00:46:26,935 もはや その子の父のことも 377 00:46:26,935 --> 00:46:29,735 憎いとは思わなんだ 378 00:46:34,259 --> 00:46:37,259 そして そのとき分かったのじゃ 379 00:46:39,915 --> 00:46:42,715 わしは耐えられたではないか 380 00:46:46,271 --> 00:46:49,908 他の男の子を何人産もうが 381 00:46:49,908 --> 00:46:55,208 そなたを愛しく思う気持ちは 変わらなかった 382 00:46:58,266 --> 00:47:00,919 わしとそなたは 383 00:47:00,919 --> 00:47:04,219 真の絆で結ばれている 384 00:47:07,759 --> 00:47:11,830 春日が幾人の男を連れてこようが 385 00:47:11,830 --> 00:47:14,930 そなただけじゃ 386 00:47:21,590 --> 00:47:24,609 わしの心にいるのは 387 00:47:24,609 --> 00:47:28,597 そなただけじゃ 388 00:47:28,597 --> 00:47:30,897 有功 389 00:47:49,584 --> 00:47:52,504 いいえ 390 00:47:52,504 --> 00:47:56,591 あなたは お変わりになられました 391 00:47:56,591 --> 00:47:59,261 有功… 392 00:47:59,261 --> 00:48:02,430 あなたは 393 00:48:02,430 --> 00:48:05,530 強うなられた 394 00:48:08,920 --> 00:48:11,720 美しゅうなられた 395 00:48:15,260 --> 00:48:17,579 それは 396 00:48:17,579 --> 00:48:21,879 あなたが 母におなりになったからです 397 00:49:22,594 --> 00:49:25,394 溝口左京と申します 398 00:49:33,021 --> 00:49:35,821 日焼けをした浅黒い肌じゃ 399 00:49:37,926 --> 00:49:40,926 「お夏」と名づけよう 400 00:49:44,099 --> 00:49:47,919 お前は今日から お夏じゃ 401 00:49:47,919 --> 00:49:50,219 ははッ 402 00:50:29,427 --> 00:50:32,263 玉栄か? 403 00:50:32,263 --> 00:50:37,419 あッ… はい 玉栄でございます 404 00:50:37,419 --> 00:50:39,719 お入り 405 00:50:50,265 --> 00:50:53,251 おはようございます 朝餉を 406 00:50:53,251 --> 00:50:57,551 それはええから ちょっとお座り 407 00:50:59,574 --> 00:51:01,874 はい… 408 00:51:20,679 --> 00:51:24,416 お前に 頼みがあるのや 409 00:51:24,416 --> 00:51:27,516 はい なんなりと 410 00:51:28,586 --> 00:51:30,922 玉栄 411 00:51:30,922 --> 00:51:33,522 はッ… はい 412 00:51:37,078 --> 00:51:40,014 私の代わりに 413 00:51:40,014 --> 00:51:43,614 上様にお世継ぎを 生ませてくれぬか? 414 00:51:49,407 --> 00:51:52,093 今… なんておっしゃいました? 415 00:51:52,093 --> 00:51:58,750 私は 上様を母にして 差し上げることができなかった 416 00:51:58,750 --> 00:52:02,921 お前に 上様のおそばに上がり 417 00:52:02,921 --> 00:52:05,740 お子を成してほしいのや 418 00:52:05,740 --> 00:52:08,093 そんな… 有功様! 419 00:52:08,093 --> 00:52:13,415 頼む お前以外に誰もおらぬ 420 00:52:13,415 --> 00:52:15,967 私の代わりに 421 00:52:15,967 --> 00:52:19,267 上様にお世継ぎを