1 00:00:38,353 --> 00:00:43,508 (春日)それでは 武士の頂点に立つ 将軍も女でかまわぬというのかッ 2 00:00:43,508 --> 00:00:46,912 (稲葉)ずっと あの方を おそばで拝見しておりますが→ 3 00:00:46,912 --> 00:00:51,016 先代家光公と同様 いえ それ以上に→ 4 00:00:51,016 --> 00:00:53,518 名君となられる器であられると 5 00:00:53,518 --> 00:00:56,054 (松平)今は常の時にあらず 6 00:00:56,054 --> 00:00:59,854 全ては 徳川家の治世を守るためでござる 7 00:01:06,715 --> 00:01:10,268 (村瀬)春日局様 春日局様ッ→ 8 00:01:10,268 --> 00:01:12,520 有功様→ 9 00:01:12,520 --> 00:01:14,820 有功様ッ 10 00:01:16,191 --> 00:01:18,491 (有功)正資か 11 00:01:20,178 --> 00:01:22,778 赤面疱瘡です 有功様 12 00:01:24,599 --> 00:01:29,371 捨蔵… いえ お楽様のために 雇った若い部屋子が 13 00:01:29,371 --> 00:01:31,523 まず二人 やられました 14 00:01:31,523 --> 00:01:35,360 それから お楽様ご自身も お楽様まで!? 15 00:01:35,360 --> 00:01:38,897 正資 とにかく お楽様と その部屋子達を 16 00:01:38,897 --> 00:01:43,018 大奥の他の男達 特に お夏様と お玉様から 17 00:01:43,018 --> 00:01:45,818 すぐに遠ざけるのだ ですが どこへ? 18 00:01:53,528 --> 00:01:55,513 こちらへ 19 00:01:55,513 --> 00:01:59,517 この春日局様のお部屋の次の間に えッ? 20 00:01:59,517 --> 00:02:03,188 私も その三人と同じ部屋で 寝泊まりをするぞ 21 00:02:03,188 --> 00:02:07,676 万が一のことがあるゆえ 正資も この部屋に一切近づいてはならぬ 22 00:02:07,676 --> 00:02:11,680 食事など必要なものは 女の矢島に持ってきていただく 23 00:02:11,680 --> 00:02:17,535 しかし 有功様自らが ご看病など 上様がお許しにはなりますまい 24 00:02:17,535 --> 00:02:21,523 上様には 私は たちの悪い 風邪にでもかかったと言っておけ 25 00:02:21,523 --> 00:02:24,175 私は この大奥では とうに いらぬ男だ 26 00:02:24,175 --> 00:02:27,475 赤面疱瘡で死んだとて 何の不都合がある? 27 00:02:29,514 --> 00:02:32,067 春日局様 28 00:02:32,067 --> 00:02:34,619 お許しは いただけますでしょうか 29 00:02:34,619 --> 00:02:37,719 何の異存がありましょう 30 00:02:39,507 --> 00:02:43,178 この死にかけの ばばの部屋が 31 00:02:43,178 --> 00:02:45,778 かように役に立つなら 32 00:02:51,353 --> 00:02:55,690 (玉栄)春日局様の部屋に 寝泊まりとは まことですか 33 00:02:55,690 --> 00:02:58,026 何を憤っておるのや? 玉栄 34 00:02:58,026 --> 00:03:00,028 春日の看病など 35 00:03:00,028 --> 00:03:03,365 有功様がなさるべきことでは ございません 36 00:03:03,365 --> 00:03:05,965 それに春日は… 37 00:03:07,936 --> 00:03:10,536 憎い敵やございませんか 38 00:03:11,690 --> 00:03:15,190 そもそも 春日がおらねば 有功様は 今ごろ 39 00:03:16,578 --> 00:03:18,578 今ごろ… 40 00:03:20,532 --> 00:03:24,519 慶光院の院主として まったく違う 有功様であったはずやのに 41 00:03:24,519 --> 00:03:26,521 玉栄 42 00:03:26,521 --> 00:03:30,525 春日局様の看病をするにあたり 43 00:03:30,525 --> 00:03:34,025 私は 自分の心をのぞいてみたのや 44 00:03:35,346 --> 00:03:37,866 しかし 45 00:03:37,866 --> 00:03:40,666 自分の心ほど 分からんもんは ないな 46 00:03:43,354 --> 00:03:46,775 ただ一つだけ言えるのは 47 00:03:46,775 --> 00:03:50,845 この大奥において 無用の者となった私が 48 00:03:50,845 --> 00:03:53,681 誰かの役に立つというのは 49 00:03:53,681 --> 00:03:57,981 ただ それだけで 嬉しい気持ちがあるのや 50 00:04:01,055 --> 00:04:03,091 そなたから見たら 51 00:04:03,091 --> 00:04:06,591 しょうもない お人よしに見えるやろな 52 00:04:12,033 --> 00:04:15,353 あなた様は やはり有功様や 53 00:04:15,353 --> 00:04:18,853 昔と ちっとも変わったはらへん 54 00:04:19,924 --> 00:04:22,026 手伝います 55 00:04:22,026 --> 00:04:24,026 うん 56 00:04:30,185 --> 00:04:33,021 <(村瀬)有功様の言葉どおりに> 57 00:04:33,021 --> 00:04:37,859 <すぐさま 春日局様の居室に 病人が運ばれた> 58 00:04:37,859 --> 00:04:42,447 <しかし 先に発症した 若い部屋子二人は> 59 00:04:42,447 --> 00:04:45,547 <二日後に 相次いで亡くなった> 60 00:04:49,604 --> 00:04:52,904 (矢島)有功様 有功様 61 00:04:57,862 --> 00:05:00,162 昼餉を お持ちいたしました 62 00:05:07,021 --> 00:05:11,526 矢島殿 案ずるな そなたには うつらぬゆえ 63 00:05:11,526 --> 00:05:14,345 いえ 別に そのようなことでは… 64 00:05:14,345 --> 00:05:16,645 ≪(捨蔵)ああ… 65 00:05:17,682 --> 00:05:21,982 ≪(捨蔵)ああ 痛え 66 00:05:23,021 --> 00:05:26,321 失礼いたします ≪(捨蔵)痛え 67 00:05:30,912 --> 00:05:33,212 (捨蔵)ああ… 68 00:05:38,186 --> 00:05:43,686 ああ 痛えよう 69 00:05:45,844 --> 00:05:48,444 おっ母さん 70 00:05:50,515 --> 00:05:52,515 ああ 71 00:05:55,186 --> 00:05:58,186 痛えよう 72 00:06:01,025 --> 00:06:04,825 お楽殿 昼餉をお持ちしましたぞ 73 00:06:15,690 --> 00:06:21,362 御膳所の者に 口に入れやすいよう 小さく刻むよう 言いつけました 74 00:06:21,362 --> 00:06:23,662 さあ お楽殿 75 00:06:36,878 --> 00:06:38,930 お楽殿 76 00:06:38,930 --> 00:06:44,018 せめて かゆの一口なりとも すすらねば 力が出ぬぞ 77 00:06:44,018 --> 00:06:46,118 さあ 78 00:06:47,188 --> 00:06:49,788 (捨蔵が せきこむ) 79 00:06:51,509 --> 00:06:55,609 ≪(捨蔵)駄目だ 食えねえ 80 00:06:57,181 --> 00:06:59,851 よいよい お楽殿 81 00:06:59,851 --> 00:07:03,187 少し お休みになられるといい 82 00:07:03,187 --> 00:07:06,787 また後ほど 参りますゆえ 83 00:07:33,868 --> 00:07:37,868 春日局様 昼餉をお持ちいたしましたぞ 84 00:07:40,375 --> 00:07:44,875 春日局様 いけませぬ 起き上がったりなさっては 85 00:07:47,015 --> 00:07:52,687 私なら 一人で食事をとることが できますゆえ 86 00:07:52,687 --> 00:07:57,025 どうぞ お楽様に ついて差し上げなされ 87 00:07:57,025 --> 00:08:01,125 春日局様 今の時季なら 88 00:08:04,682 --> 00:08:08,519 柿など持って行って差し上げては いかがじゃ? 89 00:08:08,519 --> 00:08:13,519 水菓子なら 召し上がる気に なるやもしれませぬ 90 00:08:42,520 --> 00:08:44,520 うめえ 91 00:08:45,523 --> 00:08:47,525 さようか 92 00:08:47,525 --> 00:08:50,525 今まで食った中で 93 00:08:52,430 --> 00:08:54,730 一番うめえ 94 00:08:58,553 --> 00:09:00,653 ≪(捨蔵)有功様 95 00:09:03,341 --> 00:09:05,441 どうして 96 00:09:09,847 --> 00:09:12,147 こんなに 97 00:09:13,367 --> 00:09:15,467 おいらに 98 00:09:17,188 --> 00:09:20,288 よくしてくださるんで? 99 00:09:24,846 --> 00:09:28,850 お楽殿は 千代姫様のお父上 100 00:09:28,850 --> 00:09:31,950 大事に かしずかれて 当然ではござらぬか 101 00:09:33,020 --> 00:09:35,020 けど 102 00:09:39,026 --> 00:09:42,326 有功様にとっては 103 00:09:46,851 --> 00:09:50,151 憎い恋敵のはずなのに 104 00:09:55,243 --> 00:09:57,743 ≪(捨蔵)何で 105 00:10:00,364 --> 00:10:04,464 ≪(捨蔵)ここまで優しく できるんで? 106 00:10:07,522 --> 00:10:11,522 体を悪くしてから こっち 107 00:10:15,513 --> 00:10:17,613 誰も 108 00:10:21,869 --> 00:10:24,669 誰も 109 00:10:27,024 --> 00:10:30,324 おいらのことなんか 110 00:10:34,682 --> 00:10:38,182 見向きもしなかったのに 111 00:10:41,522 --> 00:10:43,524 お楽殿 112 00:10:43,524 --> 00:10:45,524 あまりしゃべると… 113 00:11:01,192 --> 00:11:03,292 最後に 114 00:11:08,266 --> 00:11:11,366 もう一度だけ 115 00:11:16,007 --> 00:11:19,507 千代姫様の ほっぺに 116 00:11:22,363 --> 00:11:25,463 触りたかった 117 00:11:32,023 --> 00:11:34,523 あい分かった お楽殿 118 00:11:37,195 --> 00:11:39,295 ただ今 矢島に命じて 119 00:11:40,348 --> 00:11:42,848 千代姫様を 120 00:12:33,184 --> 00:12:35,284 ≪(勝田)有功殿 121 00:12:37,021 --> 00:12:39,021 (和田)有功殿ッ 122 00:12:41,175 --> 00:12:45,029 どうか どうか我らに 何か手伝いをさせてくだされ 123 00:12:45,029 --> 00:12:47,848 (勝田)某にも どうか (男一)有功様 124 00:12:47,848 --> 00:12:52,186 (澤村)某 二人の子を この病にて亡くしましたゆえ 125 00:12:52,186 --> 00:12:54,522 看病なら慣れております 126 00:12:54,522 --> 00:12:57,822 まずは 某に何か 申し付けられませい 127 00:12:58,859 --> 00:13:00,859 伝右衛門殿 128 00:13:02,513 --> 00:13:06,313 皆の心遣いはありがたい が 129 00:13:09,036 --> 00:13:11,536 たった今 息を引き取られた 130 00:13:18,846 --> 00:13:21,515 ご立派な 131 00:13:21,515 --> 00:13:23,515 最期であった 132 00:15:34,014 --> 00:15:36,614 (家光)そうか 死んだか 133 00:15:37,885 --> 00:15:42,840 最期まで 千代姫様のことを 思っておいででした 134 00:15:42,840 --> 00:15:46,343 仮にも千代の父親じゃ 135 00:15:46,343 --> 00:15:49,443 手厚う葬ってやるように 136 00:15:51,515 --> 00:15:53,515 はッ 137 00:15:56,337 --> 00:15:58,837 で 春日は? 138 00:16:00,191 --> 00:16:03,027 春日の容体はどうなのじゃ? 139 00:16:03,027 --> 00:16:06,327 それが あまり芳しくございませぬ 140 00:16:07,665 --> 00:16:10,000 もう 薬断ちは しておらぬな? 141 00:16:10,000 --> 00:16:12,600 はい そのはずでございます 142 00:16:39,180 --> 00:16:41,180 ≪(春日)有功殿 143 00:16:43,684 --> 00:16:46,554 どうか上様には 144 00:16:46,554 --> 00:16:49,054 何も 145 00:16:52,009 --> 00:16:55,996 どうせ薬を飲んだところで 146 00:16:55,996 --> 00:16:59,667 私はもう 147 00:16:59,667 --> 00:17:02,267 長くはありませぬ 148 00:17:05,523 --> 00:17:08,023 薬断ちの誓いは 149 00:17:10,344 --> 00:17:13,144 守らねばならぬのです 150 00:17:22,339 --> 00:17:25,009 何の話でございましょう 151 00:17:25,009 --> 00:17:27,509 私は何も見てはおりませぬ 152 00:17:29,847 --> 00:17:33,347 さあ もう眠られるがよい 153 00:17:56,574 --> 00:17:59,674 私の父は 154 00:18:04,832 --> 00:18:07,432 私の父は 155 00:18:10,187 --> 00:18:13,524 謀反人といわれた 156 00:18:13,524 --> 00:18:17,561 明智光秀様の 157 00:18:17,561 --> 00:18:20,161 重臣でございましての 158 00:18:24,518 --> 00:18:28,505 私の覚えている 159 00:18:28,505 --> 00:18:30,805 唯一の父の姿は 160 00:18:33,160 --> 00:18:37,760 ≪(春日)はりつけ台の上の 遺骸でございました 161 00:18:38,832 --> 00:18:44,355 ≪(春日)私達は 逆賊の身内として→ 162 00:18:44,355 --> 00:18:48,842 羽柴秀吉の追っ手から 逃れるため→ 163 00:18:48,842 --> 00:18:53,142 山中を流浪する身となったのです 164 00:18:57,017 --> 00:19:00,817 《(春日の姉一)母上 足が痛い》 165 00:19:02,172 --> 00:19:04,272 《もう歩くのは嫌》 166 00:19:06,176 --> 00:19:10,180 《(二)ずっと汚れたものを 幾日も着て》 167 00:19:10,180 --> 00:19:13,280 《いっそこのまま果ててしまえたら どんなに…》 168 00:19:16,337 --> 00:19:19,523 《姉上 泣いてはなりませぬ》 169 00:19:19,523 --> 00:19:22,523 《泣くと もっとおなかがすきます》 170 00:19:23,944 --> 00:19:28,944 ≪(春日)私は そのような 子供でございました 171 00:19:30,834 --> 00:19:34,521 ≪(春日)子供らしゅうない とか→ 172 00:19:34,521 --> 00:19:37,321 かわいげがない とか 173 00:19:39,677 --> 00:19:43,514 ≪(春日)それは 長じて後も→ 174 00:19:43,514 --> 00:19:48,614 夫や 舅からも よう言われたものじゃ 175 00:19:53,173 --> 00:19:56,673 私は いまだに 176 00:19:59,163 --> 00:20:02,263 忘れられぬのかもしれませぬ 177 00:20:03,834 --> 00:20:05,834 腹をすかせ 178 00:20:07,171 --> 00:20:09,840 傷だらけの足で 179 00:20:09,840 --> 00:20:12,940 山中を逃げまわったこと 180 00:20:14,511 --> 00:20:16,511 今でも 181 00:20:17,681 --> 00:20:19,681 夢に見るのです 182 00:20:23,020 --> 00:20:25,839 お話の続きは明日に 183 00:20:25,839 --> 00:20:29,139 さあ お休みなされませ 184 00:22:21,338 --> 00:22:23,838 (ため息をつく) 185 00:22:28,679 --> 00:22:31,679 春日局様でございますか? 186 00:22:34,518 --> 00:22:39,518 春日は このまま 良くはならぬのであろうか? 187 00:22:46,246 --> 00:22:48,498 何じゃ お玉? 188 00:22:48,498 --> 00:22:51,098 何か言いたそうじゃな 189 00:22:52,169 --> 00:22:54,469 あッ いえ 190 00:22:56,840 --> 00:22:59,509 失礼ながら 意外ですわ 191 00:22:59,509 --> 00:23:03,509 そないに上様が 春日局様を ご心配あそばすとは 192 00:23:07,668 --> 00:23:09,668 そうじゃな 193 00:23:11,505 --> 00:23:17,105 母のように慕っている と言ったら 嘘になるのう 194 00:23:19,680 --> 00:23:23,216 ただ 春日がおらねば 195 00:23:23,216 --> 00:23:27,020 父上は 徳川家の跡目争いに敗れ 196 00:23:27,020 --> 00:23:29,506 将軍の座に つけなかったやもしれぬ 197 00:23:29,506 --> 00:23:32,006 というのも確かなこと 198 00:23:39,349 --> 00:23:41,949 勘違いするなよ お玉 199 00:23:43,837 --> 00:23:49,026 もともと武家においては 必ずしも 長子相続というわけではない 200 00:23:49,026 --> 00:23:50,994 跡継ぎの座を巡って 201 00:23:50,994 --> 00:23:54,594 兄弟が争うというのは よくあること 202 00:23:58,168 --> 00:24:01,838 もし父上が 将軍になれなんだら 203 00:24:01,838 --> 00:24:05,438 父上に待っていたのは 大名としての一生ではない 204 00:24:06,510 --> 00:24:09,810 そこで父上は死んでいた ということだ 205 00:24:13,667 --> 00:24:16,186 事実 206 00:24:16,186 --> 00:24:19,986 父上の弟・忠長公は自害させられた 207 00:24:22,676 --> 00:24:24,976 そうでございましたか 208 00:24:27,514 --> 00:24:31,351 父上が生きておればこそ 209 00:24:31,351 --> 00:24:33,951 わしも生まれた 210 00:24:36,189 --> 00:24:40,189 以前のわしなら それがどうしたと 思っていたであろうな 211 00:24:41,678 --> 00:24:46,278 この世に生まれてきたくなど なかったと思っていたのだからな 212 00:24:48,101 --> 00:24:52,101 ほんなら 今は 生まれてきて良かったと? 213 00:24:56,743 --> 00:24:58,743 さあな 214 00:25:00,847 --> 00:25:04,847 今だって 生きてることが楽しいと 思ったことも 215 00:25:08,505 --> 00:25:12,305 嬉しいと思ったことも 正直 ないがのう 216 00:25:16,329 --> 00:25:18,329 だが もし 217 00:25:19,850 --> 00:25:25,338 もし わしがここに生まれてきた 意味がどこかにあるというのなら 218 00:25:25,338 --> 00:25:28,438 今は 確かめてみたいのじゃ 219 00:25:31,511 --> 00:25:35,999 そして わしに 果たすべき役割があるのなら 220 00:25:35,999 --> 00:25:38,499 それを果たしたい 221 00:25:39,853 --> 00:25:42,153 今は そう思うておるのじゃ 222 00:25:53,183 --> 00:25:55,183 どうした? 223 00:25:58,338 --> 00:26:00,338 上様 224 00:26:01,508 --> 00:26:04,845 私は 有功様以外 225 00:26:04,845 --> 00:26:08,645 人を偉いと思うたことは ありませんでした 226 00:26:10,167 --> 00:26:14,020 けど もしかしたら私は 227 00:26:14,020 --> 00:26:18,020 すごい女はんと 褥を 共にしてるのかもしれませんな 228 00:28:22,832 --> 00:28:27,237 <この年 さらに男子が減り 町でも農村でも> 229 00:28:27,237 --> 00:28:30,507 <幼子の姿を見ることは まれとなった> 230 00:28:30,507 --> 00:28:32,842 (家臣一)ごめん! 231 00:28:32,842 --> 00:28:34,842 殿ッ 232 00:28:36,162 --> 00:28:38,162 正則様 233 00:28:47,824 --> 00:28:52,124 いつ 息を引き取られたので ございますか? 234 00:28:53,830 --> 00:28:55,830 (雪)昨晩 遅く 235 00:28:57,167 --> 00:28:59,167 (二)これで 236 00:29:00,170 --> 00:29:02,270 稲葉家も終わりじゃ 237 00:29:03,840 --> 00:29:08,161 ≪(一)せっかく 先の殿亡き後 238 00:29:08,161 --> 00:29:11,661 正則様が 家督を継がれたというのに 239 00:29:13,833 --> 00:29:17,833 いいえ これからも 稲葉家は安泰です 240 00:29:20,674 --> 00:29:26,162 しかし 正則様には 男のご兄弟はおられません 241 00:29:26,162 --> 00:29:29,762 今どき ご養子になるべき男子も 242 00:29:31,167 --> 00:29:34,467 私は 昨夜から ずっと考えておりました 243 00:29:36,006 --> 00:29:39,509 稲葉家を守るには これしかありませぬ 244 00:29:39,509 --> 00:29:42,109 どの大名家でも していることです 245 00:29:44,881 --> 00:29:46,881 野乃 246 00:30:09,322 --> 00:30:12,622 これから野乃は 男になります 247 00:30:13,994 --> 00:30:17,494 稲葉美濃守正則として 生きるのです 248 00:30:28,174 --> 00:30:30,827 ≪(重次)駄目だ→ 249 00:30:30,827 --> 00:30:33,830 どうなるのだ? この国は 250 00:30:33,830 --> 00:30:38,501 (太田)わしの嫡男も次男も 赤面疱瘡に やられた 251 00:30:38,501 --> 00:30:41,101 (三浦)もはや手遅れか 252 00:30:46,993 --> 00:30:50,163 滅びるなら 滅びるで よいではないか 253 00:30:50,163 --> 00:30:52,165 ≪(忠秋)上様 254 00:30:52,165 --> 00:30:57,153 この国の最後の一人が死に絶える その日まで 255 00:30:57,153 --> 00:31:02,153 この国の行く末を見守るのが 我らの役目だと思えばよい 256 00:31:09,182 --> 00:31:12,682 皆の者 今かもしれぬ 257 00:31:15,155 --> 00:31:19,342 いや 今こそじゃ そうであろう? 258 00:31:19,342 --> 00:31:21,327 ≪(堀田)伊豆守様→ 259 00:31:21,327 --> 00:31:24,827 某も それしか道はないと ずっと考えておった 260 00:31:45,685 --> 00:31:47,685 正資 261 00:31:49,656 --> 00:31:52,325 そなた 262 00:31:52,325 --> 00:31:56,162 毎日 私に 263 00:31:56,162 --> 00:32:00,166 大奥でのこと 264 00:32:00,166 --> 00:32:03,466 報告するために 265 00:32:05,155 --> 00:32:09,155 覚書を しておったな? 266 00:32:10,493 --> 00:32:12,495 はい 267 00:32:12,495 --> 00:32:15,331 ≪(春日)その日記を 268 00:32:15,331 --> 00:32:19,169 私亡き後も 269 00:32:19,169 --> 00:32:21,169 続けるよう 270 00:32:22,672 --> 00:32:25,672 ≪(春日)このままでは この国は 271 00:32:27,343 --> 00:32:29,643 もうすぐ滅びる 272 00:32:31,347 --> 00:32:34,200 それまで 273 00:32:34,200 --> 00:32:36,200 この国が 274 00:32:37,504 --> 00:32:40,804 徳川家が どうなっていくか 275 00:32:43,993 --> 00:32:46,996 最期まで 276 00:32:46,996 --> 00:32:50,996 見届けてほしいのじゃ 277 00:32:53,069 --> 00:32:54,988 はッ 278 00:32:54,988 --> 00:32:57,841 ≪(春日)日記の名は 279 00:32:57,841 --> 00:33:00,176 そうじゃ 280 00:33:00,176 --> 00:33:04,676 「没日録」とでも しておくがよい 281 00:33:08,668 --> 00:33:11,968 ははッ 承知つかまつりました 282 00:33:13,156 --> 00:33:16,256 必ず 必ず 283 00:33:45,989 --> 00:33:48,289 有功殿 284 00:33:52,178 --> 00:33:54,678 さぞかし 285 00:33:55,999 --> 00:33:59,168 私を 286 00:33:59,168 --> 00:34:01,768 恨んだことでありましょう 287 00:34:02,839 --> 00:34:06,339 もう お休みなさいませ いいえ これだけは 288 00:34:10,513 --> 00:34:14,813 私を恨んだに違いない 289 00:34:15,868 --> 00:34:17,868 そうであろう? 290 00:34:19,439 --> 00:34:21,674 僧侶であった私を 291 00:34:21,674 --> 00:34:25,328 無理やり還俗させたことで ございますか? 292 00:34:25,328 --> 00:34:27,928 のみならず 293 00:34:28,998 --> 00:34:32,335 生木を裂くように 294 00:34:32,335 --> 00:34:35,435 上様から遠ざけた 295 00:34:37,907 --> 00:34:40,994 そなただけではない 296 00:34:40,994 --> 00:34:43,794 少なからぬ人々が 297 00:34:46,165 --> 00:34:48,965 私のために泣き 298 00:34:51,838 --> 00:34:54,838 時には 命さえも 299 00:34:55,842 --> 00:35:00,442 しかし 将軍家が栄えれば 300 00:35:02,665 --> 00:35:05,265 戦が なくなるのです 301 00:35:07,320 --> 00:35:10,320 戦が なくなりさえすれば 302 00:35:12,175 --> 00:35:15,511 誰も泣くことのない→ 303 00:35:15,511 --> 00:35:18,998 平和な世の中になるのです 304 00:35:18,998 --> 00:35:22,168 全ては 305 00:35:22,168 --> 00:35:24,268 平和な 306 00:35:25,672 --> 00:35:27,972 戦のない 307 00:35:33,997 --> 00:35:35,999 そのために 308 00:35:35,999 --> 00:35:38,499 (せきこむ) 309 00:35:40,670 --> 00:35:42,970 春日局様 310 00:35:55,001 --> 00:35:57,001 恨みませぬ 311 00:35:58,338 --> 00:36:00,673 それどころか私は 312 00:36:00,673 --> 00:36:03,273 あなたに感謝しておるのです 313 00:36:07,163 --> 00:36:09,763 もちろん あのときは恨みました 314 00:36:10,833 --> 00:36:14,333 心底 あなたを憎みました 315 00:36:17,223 --> 00:36:21,323 けれど 私は苦しみを知りました 316 00:36:23,496 --> 00:36:26,165 今の私は 317 00:36:26,165 --> 00:36:31,965 病に 貧しさに苦しむ人々の 心が分かります 318 00:36:34,040 --> 00:36:37,493 自分を助けるような気持ちで 319 00:36:37,493 --> 00:36:40,093 寄り添うことができます 320 00:36:41,347 --> 00:36:44,984 もしかすると これこそが 321 00:36:44,984 --> 00:36:49,584 私の求めていた道で あったのかもしれぬ と思うと 322 00:36:50,656 --> 00:36:53,843 春日局様に 323 00:36:53,843 --> 00:36:56,843 感謝したい心地さえするのです 324 00:37:01,718 --> 00:37:03,818 私に 325 00:37:05,338 --> 00:37:07,938 感謝と申されるか 326 00:37:09,659 --> 00:37:11,659 はい 327 00:37:33,166 --> 00:37:35,266 有功殿 328 00:37:39,655 --> 00:37:42,175 私が 329 00:37:42,175 --> 00:37:44,475 死んだ後 330 00:37:48,998 --> 00:37:51,334 上様と 331 00:37:51,334 --> 00:37:54,170 この… 332 00:37:54,170 --> 00:37:56,170 大奥のこと 333 00:37:58,991 --> 00:38:01,291 お頼み申します 334 00:38:08,684 --> 00:38:10,984 あなたこそ 335 00:38:13,339 --> 00:38:15,839 それに ふさわしい 336 00:38:18,377 --> 00:38:20,377 どうか 337 00:38:21,664 --> 00:38:23,764 どうか 338 00:38:34,177 --> 00:38:37,677 もとより 承知しております 339 00:38:46,155 --> 00:38:48,674 この有功 340 00:38:48,674 --> 00:38:52,028 命果てるまで 341 00:38:52,028 --> 00:38:57,028 大奥で 上様に お仕えいたす所存 342 00:39:07,009 --> 00:39:10,509 さあ 春日局様 343 00:39:15,484 --> 00:39:19,784 お頼み 申します 344 00:39:35,671 --> 00:39:39,171 《よく聞くのですよ 千熊》 345 00:39:41,510 --> 00:39:44,163 《母は》 346 00:39:44,163 --> 00:39:47,263 《将軍家の乳母に なろうと思います》 347 00:39:57,660 --> 00:40:00,460 《お一人で江戸へ?》 348 00:40:05,034 --> 00:40:07,134 《そなたも》 349 00:40:08,487 --> 00:40:12,587 《乳飲み子の そなたの弟も 置いてゆくのです》 350 00:40:18,931 --> 00:40:21,931 《鬼のような母だと お思いかえ?》 351 00:40:27,073 --> 00:40:31,510 《母上 私も江戸へ参ります》 《千熊》 352 00:40:31,510 --> 00:40:33,996 《生まれるお子が お世継ぎなら》 353 00:40:33,996 --> 00:40:37,166 《私が そのお世継ぎの 近習となりましょう》 354 00:40:37,166 --> 00:40:41,766 《さすれば この千熊も少しは 母上のお役に立てましょうか?》 355 00:40:55,518 --> 00:40:58,018 千熊… 356 00:40:59,672 --> 00:41:01,674 はッ 357 00:41:01,674 --> 00:41:04,174 千熊にございます 母上 358 00:41:09,598 --> 00:41:11,598 正勝 359 00:41:12,485 --> 00:41:14,485 ≪(春日)こんな所で 360 00:41:16,155 --> 00:41:19,158 何をしておる 361 00:41:19,158 --> 00:41:22,158 赤面疱瘡が 362 00:41:23,346 --> 00:41:27,846 農村も 江戸の町も 363 00:41:31,003 --> 00:41:35,003 荒れ果てておるであろう 364 00:41:37,843 --> 00:41:40,162 早う 365 00:41:40,162 --> 00:41:42,662 六人衆の 366 00:41:44,500 --> 00:41:47,000 元へ参れ 367 00:41:50,606 --> 00:41:52,606 はい 368 00:41:53,993 --> 00:41:56,662 春日 369 00:41:56,662 --> 00:42:00,462 案じることはない もう何も申すな 370 00:42:02,501 --> 00:42:04,601 上様 371 00:42:06,655 --> 00:42:10,176 時が 372 00:42:10,176 --> 00:42:12,476 参りました 373 00:42:15,247 --> 00:42:19,247 お別れの 時が 374 00:42:21,887 --> 00:42:24,887 いいや 許さぬ 375 00:42:26,325 --> 00:42:29,425 そなたは ずっとわしのそばに 376 00:42:30,663 --> 00:42:33,463 もう このまま 377 00:42:34,483 --> 00:42:38,583 いかせてください 378 00:43:00,509 --> 00:43:02,509 春日… 379 00:43:05,998 --> 00:43:08,384 春日ッ 380 00:43:08,384 --> 00:43:11,984 春日 春日! 381 00:43:14,173 --> 00:43:16,158 起きろ 382 00:43:16,158 --> 00:43:19,829 春日 春日ッ 383 00:43:19,829 --> 00:43:22,164 春日! 384 00:43:22,164 --> 00:43:24,333 <そして ついに> 385 00:43:24,333 --> 00:43:29,338 <家光公と 長子・稲葉正勝様に 見守られながら> 386 00:43:29,338 --> 00:43:34,338 <春日局様は 六十五歳の生涯を閉じた> 387 00:43:36,829 --> 00:43:40,329 春日 春日ッ 388 00:44:08,844 --> 00:44:11,831 《≪(春日)もし まことに》 389 00:44:11,831 --> 00:44:15,331 《私が将軍家の乳母となれば》 390 00:44:16,836 --> 00:44:20,156 《同じ江戸城内にいても》 391 00:44:20,156 --> 00:44:22,825 《そなたは私のことを》 392 00:44:22,825 --> 00:44:27,125 《もう 母と呼ぶことは できなくなるのですよ》 393 00:44:29,014 --> 00:44:31,317 《はい》 394 00:44:31,317 --> 00:44:34,653 《それでも千熊は》 395 00:44:34,653 --> 00:44:37,153 《母上に ついていきたい》 396 00:44:44,580 --> 00:44:46,680 《千熊》 397 00:44:48,317 --> 00:44:50,317 《母上》 398 00:44:51,720 --> 00:44:53,820 《千熊》 399 00:44:54,990 --> 00:44:57,990 《千熊》 《母上》 400 00:44:59,879 --> 00:45:01,979 《千熊》 401 00:47:29,078 --> 00:47:31,330 村瀬正資 402 00:47:31,330 --> 00:47:35,330 そなたの お役目を 御右筆と名付けよう 403 00:47:37,853 --> 00:47:40,672 これより先 大奥の文書は全て 404 00:47:40,672 --> 00:47:43,175 そなたが書き付けていただく 405 00:47:43,175 --> 00:47:45,160 御意 406 00:47:45,160 --> 00:47:48,680 それから 勝田頼秀殿には 407 00:47:48,680 --> 00:47:52,501 この大奥に必要な種々の日用品 買い物 一切を 408 00:47:52,501 --> 00:47:54,503 取り仕切っていただこう 409 00:47:54,503 --> 00:47:57,840 このお役目を 表使と名付ける 410 00:47:57,840 --> 00:47:59,840 はッ 411 00:48:01,910 --> 00:48:04,012 仁科清成殿には 412 00:48:04,012 --> 00:48:07,166 表御殿と大奥の境の詰め所で 413 00:48:07,166 --> 00:48:09,668 錠口の番をしていただく 414 00:48:09,668 --> 00:48:12,838 これを お錠口と名付けよう 415 00:48:12,838 --> 00:48:14,838 (仁科)ははッ 416 00:48:15,841 --> 00:48:20,279 これで あまねく この大奥に仕える皆全てに 417 00:48:20,279 --> 00:48:23,079 お役目を授けさせていただいた 418 00:48:24,666 --> 00:48:28,837 これからは皆 そのお役目に従って 419 00:48:28,837 --> 00:48:33,937 この大奥で 上様に 共に お仕えいたそう 420 00:48:35,711 --> 00:48:37,711 (一同)はッ 421 00:48:48,173 --> 00:48:50,173 (大目付)向方へ 422 00:49:14,166 --> 00:49:16,666 面を上げい 423 00:49:20,672 --> 00:49:22,841 (松平)本日は 424 00:49:22,841 --> 00:49:26,641 これより上様から皆に お言葉がある 425 00:49:28,514 --> 00:49:30,814 心して聞かれよ 426 00:49:38,507 --> 00:49:42,807 上様の おなーりー 427 00:50:19,831 --> 00:50:21,931 よう聞け 428 00:50:24,169 --> 00:50:28,469 父 三代将軍・家光は 429 00:50:31,677 --> 00:50:35,477 十年前 すでに この世を去られた 430 00:50:38,500 --> 00:50:41,837 わしは 徳川の世を支えるため 431 00:50:41,837 --> 00:50:45,507 その父上の名代として 432 00:50:45,507 --> 00:50:49,107 いっとき この将軍の名を 借りているにすぎぬ 433 00:50:51,847 --> 00:50:54,833 あくまでも これは 434 00:50:54,833 --> 00:50:58,837 いつの日か また男子の人口が増え 435 00:50:58,837 --> 00:51:03,337 男子が家督を継ぐようになる その日までの仮の措置 436 00:51:05,177 --> 00:51:08,513 よって わしは 437 00:51:08,513 --> 00:51:13,313 父上の名である 三代家光を 名乗ることとする 438 00:51:17,506 --> 00:51:19,806 表向きのことは 何も心配いらぬ 439 00:51:21,843 --> 00:51:27,443 優れた幕閣達の補佐により 政は つつがのう進められよう 440 00:51:41,847 --> 00:51:46,518 わしは この徳川の世を永久に つなげるために生まれてきた 441 00:51:46,518 --> 00:51:49,618 将軍という名の人柱である 442 00:51:51,390 --> 00:51:57,179 万が一 このまま男子が減り続け 443 00:51:57,179 --> 00:51:59,979 この世が滅ぶというのなら 444 00:52:02,334 --> 00:52:04,834 わしも共に滅びるまでのこと 445 00:52:09,825 --> 00:52:12,125 誰か 446 00:52:14,346 --> 00:52:18,346 わしが女将軍となることに 異存があるかえ? 447 00:52:25,824 --> 00:52:29,678 <声を上げる者は 一人とて いなかった> 448 00:52:29,678 --> 00:52:33,015 <有史以来 初の女将軍> 449 00:52:33,015 --> 00:52:36,815 <徳川家光公の ご誕生である>