1 00:00:38,461 --> 00:00:42,761 ≪(松平)上様のおなーりー 2 00:00:46,286 --> 00:00:48,571 (家光)よう聞け 3 00:00:48,571 --> 00:00:52,671 父 三代将軍・家光は 4 00:00:55,678 --> 00:00:58,678 十年前 すでにこの世を去られた 5 00:01:02,285 --> 00:01:05,622 わしは徳川の世を支えるため 6 00:01:05,622 --> 00:01:08,124 その父上の名代として 7 00:01:08,124 --> 00:01:11,724 いっとき この将軍の名を 借りているにすぎぬ 8 00:01:14,998 --> 00:01:17,300 あくまでも これは 9 00:01:17,300 --> 00:01:22,138 いつの日か また男子の人口が増え 10 00:01:22,138 --> 00:01:26,938 男子が家督を継ぐようになる その日までの仮の措置 11 00:01:28,311 --> 00:01:31,798 よって わしは 12 00:01:31,798 --> 00:01:37,136 父上の名である 三代・家光を名乗ることとする 13 00:01:37,136 --> 00:01:41,958 わしは この徳川の世を永久に つなげるために生まれてきた 14 00:01:41,958 --> 00:01:44,794 将軍という名の人柱である! 15 00:01:44,794 --> 00:01:48,394 わしが女将軍となることに 異存があるかえ!? 16 00:01:57,307 --> 00:02:01,294 <(村瀬)声を上げる者は 一人とていなかった> 17 00:02:01,294 --> 00:02:06,466 <有史以来 初の女将軍の ご誕生であると同時に> 18 00:02:06,466 --> 00:02:11,471 <御公儀が 女大名の跡継ぎを認めたという> 19 00:02:11,471 --> 00:02:13,771 <記念すべき日であった> 20 00:02:19,045 --> 00:02:22,799 <これは男子の跡継ぎを 立てられぬがゆえに> 21 00:02:22,799 --> 00:02:25,952 <お家断絶となり 結果> 22 00:02:25,952 --> 00:02:30,752 <市中に浪人があふれる事態を 食い止める策ともなろう> 23 00:02:31,791 --> 00:02:34,143 おい聞いたか 上様の話 24 00:02:34,143 --> 00:02:39,632 <女公方様ご誕生は その日のうちに大奥にも伝わった> 25 00:02:39,632 --> 00:02:42,302 <大奥の誰にとっても> 26 00:02:42,302 --> 00:02:46,402 <それは驚天動地とも言うべき 事実であったろう> 27 00:02:59,952 --> 00:03:03,956 (有功)失礼つかまつります 正勝殿 28 00:03:03,956 --> 00:03:05,956 (稲葉)有功殿 29 00:03:12,298 --> 00:03:14,634 上様は高らかに 30 00:03:14,634 --> 00:03:17,136 女公方様として立つことを 31 00:03:17,136 --> 00:03:19,972 宣言されたようでございます 32 00:03:19,972 --> 00:03:22,475 左様でございますか 33 00:03:22,475 --> 00:03:26,275 無論 異を唱える者もなく 34 00:03:32,618 --> 00:03:36,139 これで某の役目は終わった 35 00:03:36,139 --> 00:03:39,139 ということでございますな 36 00:03:48,634 --> 00:03:54,957 <しかし誰よりも その生活が 激変することとなったのは> 37 00:03:54,957 --> 00:04:00,480 <公の存在となった 家光公 ご自身であったに違いない> 38 00:04:00,480 --> 00:04:04,480 ≪(小姓)お目覚めになっても よろしゅうございます 39 00:04:12,792 --> 00:04:17,130 <影の存在ではなくなられた 家光公には> 40 00:04:17,130 --> 00:04:22,468 <連日のように 「表」でのご政務があった> 41 00:04:22,468 --> 00:04:27,290 <それは今まで 稲葉正勝様が頭巾をかぶり> 42 00:04:27,290 --> 00:04:31,590 <十年の長きに渡って こなしてきたものである> 43 00:04:52,298 --> 00:04:54,300 (澤村)失礼つかまつる 44 00:04:54,300 --> 00:04:56,469 伝右衛門殿 45 00:04:56,469 --> 00:05:01,769 伏見の上等が手に入りましたゆえ ご一緒にいかがかと 46 00:05:10,299 --> 00:05:13,803 亡き家光公のお衣装にござるか 47 00:05:13,803 --> 00:05:16,139 左様 48 00:05:16,139 --> 00:05:21,239 もう某が袖を通すこともないゆえ お返しいたそうと思ってな 49 00:05:24,480 --> 00:05:29,135 某が述べるのも せん越であるが 50 00:05:29,135 --> 00:05:33,735 長い間 ご苦労でございました 51 00:05:40,963 --> 00:05:43,063 (澤村)さッ 52 00:05:53,125 --> 00:05:55,925 うまい酒じゃ 53 00:05:57,630 --> 00:05:59,632 そうでありましょう 54 00:05:59,632 --> 00:06:02,632 今宵は 飲み明かしましょうぞ 55 00:06:13,196 --> 00:06:15,298 某 56 00:06:15,298 --> 00:06:18,968 この頃しきりに あのときのことを思い出します 57 00:06:18,968 --> 00:06:21,470 あのとき? 58 00:06:21,470 --> 00:06:25,970 ≪(澤村)あのお方を… さらった日のことでござる 59 00:06:27,627 --> 00:06:31,130 《(春日) お父上の身代わりになるのです》 60 00:06:31,130 --> 00:06:33,132 今思えば 61 00:06:33,132 --> 00:06:36,732 ようもあのようなことを やってのけたものだ 62 00:06:40,473 --> 00:06:46,629 あの母上… 春日局様でなければ 63 00:06:46,629 --> 00:06:50,429 あのような荒業はやりますまい 64 00:06:54,120 --> 00:06:56,806 さらに家光公の死を隠し 65 00:06:56,806 --> 00:07:00,106 息子に影武者をさせようとは 66 00:07:05,147 --> 00:07:08,447 今宵は 酔いが早う回る 67 00:07:13,956 --> 00:07:16,456 正勝様 68 00:07:17,627 --> 00:07:20,627 有功様からの 伝言がございます 69 00:07:30,957 --> 00:07:33,476 「どうか この先も」 70 00:07:33,476 --> 00:07:36,629 「上様のゆく末を」 71 00:07:36,629 --> 00:07:39,729 「見守ってくださいますよう」 と 72 00:07:45,805 --> 00:07:48,624 死ぬな 73 00:07:48,624 --> 00:07:51,724 ということでございますな 74 00:08:09,962 --> 00:08:12,131 《≪(春日)有功殿》 75 00:08:12,131 --> 00:08:15,431 《上様と大奥のこと》 76 00:08:17,536 --> 00:08:20,836 《お頼み申します》 77 00:08:21,974 --> 00:08:27,274 《あなたこそ それにふさわしい》 78 00:08:30,132 --> 00:08:34,286 《上様… ときが…》 79 00:08:34,286 --> 00:08:37,086 《まいりました…》 80 00:08:38,624 --> 00:08:43,124 《お別れの… ときが》 81 00:11:39,538 --> 00:11:41,538 ≪(大目付)向方へ 82 00:12:06,815 --> 00:12:09,969 (松平)松平甲斐守輝綱 83 00:12:09,969 --> 00:12:13,069 元日のお祝いを申し上げまする 84 00:12:15,975 --> 00:12:19,378 ≪(松平)酒井備後守忠朝→ 85 00:12:19,378 --> 00:12:22,878 元日のお祝いを申し上げまする 86 00:12:24,633 --> 00:12:27,233 めでたい 87 00:12:40,299 --> 00:12:42,835 (輝綱)何でございますか 父上? 88 00:12:42,835 --> 00:12:44,870 ああ? ああいや… 89 00:12:44,870 --> 00:12:49,458 男の成りの方が似合っていると 思うておられるのでございましょ 90 00:12:49,458 --> 00:12:52,144 いやいや… よいのです 91 00:12:52,144 --> 00:12:56,144 自分でも そう思います 皆もそう申します 92 00:13:16,952 --> 00:13:20,472 (野乃)新年あけまして おめでとうございます 93 00:13:20,472 --> 00:13:23,472 稲葉美濃守正則でございます 94 00:13:24,476 --> 00:13:29,048 おお 正勝殿の娘御であったか 95 00:13:29,048 --> 00:13:32,134 ああ… 立派になられた ははッ 96 00:13:32,134 --> 00:13:35,154 兄上に代わり 家督を継がれたと聞いた 97 00:13:35,154 --> 00:13:37,172 はッ 98 00:13:37,172 --> 00:13:41,477 正勝殿も さぞかし… 99 00:13:41,477 --> 00:13:44,813 いや… 亡き正勝殿も 100 00:13:44,813 --> 00:13:48,313 さぞかし草葉の陰で お喜びであろう 101 00:13:57,993 --> 00:14:02,798 父上 正月から 草葉の陰などと 102 00:14:02,798 --> 00:14:04,798 ああ… 103 00:14:12,975 --> 00:14:15,477 ≪(雪)お勤め ご苦労さまでございました→ 104 00:14:15,477 --> 00:14:18,297 上様から何か お言葉がありましたか? 105 00:14:18,297 --> 00:14:22,868 いいえ 母上 そなたの父上に関して何か? 106 00:14:22,868 --> 00:14:25,954 松平伊豆守信綱様が 107 00:14:25,954 --> 00:14:29,124 亡き父上も喜んでいるであろうと 108 00:14:29,124 --> 00:14:31,143 まだそのようなことをッ 109 00:14:31,143 --> 00:14:33,545 女の公方様となった今 110 00:14:33,545 --> 00:14:36,298 正勝様が家光公の 影武者であったことは 111 00:14:36,298 --> 00:14:39,301 誰の目から見ても 明らかであるのに 112 00:14:39,301 --> 00:14:43,972 正勝様は 城のどこかに 今もおいでのはず 113 00:14:43,972 --> 00:14:47,643 いつかきっと そなたと会えます 114 00:14:47,643 --> 00:14:50,295 でも母上→ 115 00:14:50,295 --> 00:14:54,095 私は父上のお顔を 覚えてはおりませぬ 116 00:14:55,801 --> 00:15:00,101 名乗ってくださらぬかぎり 父上とは分かりませぬ 117 00:15:04,143 --> 00:15:06,295 母上 118 00:15:06,295 --> 00:15:10,816 もう父上のことは お忘れなさいませ 119 00:15:10,816 --> 00:15:12,816 そなたッ 120 00:15:18,140 --> 00:15:21,810 父上は おばば様 121 00:15:21,810 --> 00:15:24,630 春日局様に無理強いされ 122 00:15:24,630 --> 00:15:27,966 そのような道を選んだのではなく 123 00:15:27,966 --> 00:15:30,636 徳川家のおんため 124 00:15:30,636 --> 00:15:34,736 喜んで上様の影となられたのでは ございませぬか? 125 00:15:53,142 --> 00:15:56,145 分かりました 126 00:15:56,145 --> 00:16:01,145 当主であるそなたが そう思うのなら… 127 00:16:02,634 --> 00:16:04,820 ≪(雪)ただ母は… 128 00:16:04,820 --> 00:16:09,975 あのような別れ方をしたことが 129 00:16:09,975 --> 00:16:13,075 悔やまれてならないのです 130 00:16:30,145 --> 00:16:32,245 あの朝 131 00:16:34,299 --> 00:16:38,303 つまらぬことで 私は 132 00:16:38,303 --> 00:16:42,603 そなたの父上の機嫌を 損ねてしまい 133 00:16:46,411 --> 00:16:51,633 私も 素直に謝ればよいものを 134 00:16:51,633 --> 00:16:57,433 それが… 永久の別れになるとは 135 00:17:01,193 --> 00:17:04,313 もしも… 136 00:17:04,313 --> 00:17:06,465 もしも殿が 137 00:17:06,465 --> 00:17:11,470 「わしは徳川家のおんため 上様の影となるぞ」と 138 00:17:11,470 --> 00:17:15,140 打ち明けてくださったのなら 139 00:17:15,140 --> 00:17:20,562 私は決して 「おやめください」とは 申しませなんだ 140 00:17:20,562 --> 00:17:23,862 「どうぞ いってらっしゃいませ」と 141 00:17:27,803 --> 00:17:33,403 笑顔で お別れしたものを… 142 00:19:13,992 --> 00:19:17,829 百姓の暮らしに まだまだ締めつけが足らぬ 143 00:19:17,829 --> 00:19:21,483 米を食べることは 引き続き禁止せよ 144 00:19:21,483 --> 00:19:23,483 (六人衆)ははッ 145 00:19:25,921 --> 00:19:31,510 <次に将軍となられた家光公が 着手されたのは> 146 00:19:31,510 --> 00:19:34,563 <ふくれあがった大奥の人員の> 147 00:19:34,563 --> 00:19:36,999 <いわば口減らしであった> 148 00:19:36,999 --> 00:19:40,152 百名の者に 暇をでございますか? 149 00:19:40,152 --> 00:19:43,322 人選は そなたに任すゆえ 150 00:19:43,322 --> 00:19:48,160 そうだのう… なるべく若くて 151 00:19:48,160 --> 00:19:50,979 武道は苦手な方がよい 152 00:19:50,979 --> 00:19:54,333 大奥の中での 仕事に能がない者達も 153 00:19:54,333 --> 00:19:57,986 この際じゃ やっかい払いいたそう 154 00:19:57,986 --> 00:20:00,972 はッ ではその者らには 155 00:20:00,972 --> 00:20:03,772 十分な暇金を… ならぬッ 156 00:20:04,826 --> 00:20:07,926 今 幕府に余分な金はないのじゃ 157 00:20:09,815 --> 00:20:13,815 何も与えずに 里へ帰すのでございますか? 158 00:20:14,820 --> 00:20:17,973 いいや 159 00:20:17,973 --> 00:20:23,161 その百名の者には 次の新たな役目がある 160 00:20:23,161 --> 00:20:26,761 とてもとても大事なお役目がな 161 00:20:30,035 --> 00:20:32,137 以前 わしは 162 00:20:32,137 --> 00:20:36,324 伝右衛門と 江戸の町を視察したことがある 163 00:20:36,324 --> 00:20:38,810 《≪(女)どいたどいたー!》 164 00:20:38,810 --> 00:20:41,646 赤面疱瘡の流行により 165 00:20:41,646 --> 00:20:45,317 若い男は町じゅうから姿を消し 166 00:20:45,317 --> 00:20:49,988 女達は子が欲しくても 相手に事欠き 167 00:20:49,988 --> 00:20:52,991 若い息子がある家は 168 00:20:52,991 --> 00:20:56,991 信じられぬ高値で 女達に息子の体を売る有様 169 00:20:59,398 --> 00:21:03,151 しかし… 頼りの吉原の町には 170 00:21:03,151 --> 00:21:07,055 健康な若い男は 一人もいないのだ 171 00:21:07,055 --> 00:21:11,643 あれでは女達は 子供を産むこともできず 172 00:21:11,643 --> 00:21:16,143 やがて我が国は衰退し 滅びるであろう 173 00:21:27,642 --> 00:21:33,148 <家光公は 大奥で腕の立つ男達に 俸禄を与え> 174 00:21:33,148 --> 00:21:35,150 <監視役とさせ> 175 00:21:35,150 --> 00:21:38,153 <相場よりも はるかに安い値で> 176 00:21:38,153 --> 00:21:44,159 <健康な男の体を提供できる 吉原をつくりあげられた> 177 00:21:44,159 --> 00:21:46,978 <そして もう一つ> 178 00:21:46,978 --> 00:21:51,016 これから先 また女将軍が立つことがあれば 179 00:21:51,016 --> 00:21:54,152 女将軍と契る最初の男は 180 00:21:54,152 --> 00:21:57,472 大奥の中から選ぶこと 181 00:21:57,472 --> 00:22:00,475 そして その男は必ず 182 00:22:00,475 --> 00:22:03,478 内々に死罪といたせ 183 00:22:03,478 --> 00:22:07,399 死罪… でございますか? 184 00:22:07,399 --> 00:22:09,317 当然ではないか 185 00:22:09,317 --> 00:22:13,321 その男は将軍の体に 傷をつけるのだ 186 00:22:13,321 --> 00:22:18,321 一瞬たりとも 何者かが 将軍の上に立つことは許さぬ 187 00:22:22,664 --> 00:22:25,467 ひいては将軍の 188 00:22:25,467 --> 00:22:29,567 徳川の威光を守ることにもなろう 189 00:22:36,311 --> 00:22:38,830 仰せのままに 190 00:22:38,830 --> 00:22:40,816 では その者を 191 00:22:40,816 --> 00:22:44,816 「御内証の方」と 呼ぶことにいたしましょう 192 00:22:52,360 --> 00:22:55,480 そなた… 193 00:22:55,480 --> 00:22:57,580 変わったな 194 00:23:01,820 --> 00:23:04,322 《おい お万》 195 00:23:04,322 --> 00:23:06,308 《有功という名》 196 00:23:06,308 --> 00:23:09,477 《それほどお気に 召しませんでしたでしょうか》 197 00:23:09,477 --> 00:23:11,813 《おやめくださいませ 上様ッ》 198 00:23:11,813 --> 00:23:15,317 《のけ》 《いいえ のきませぬ》 199 00:23:15,317 --> 00:23:18,987 《ご自分だけが つらい思いを しているとお思いなら》 200 00:23:18,987 --> 00:23:21,087 《それは大間違いや!》 201 00:23:25,010 --> 00:23:27,646 六人衆と同じく 202 00:23:27,646 --> 00:23:32,246 もはや将軍のわしを いさめることはできぬというか 203 00:23:34,819 --> 00:23:37,489 皆 わしの言うことに「御意」 204 00:23:37,489 --> 00:23:40,489 「仰せのままに」などと答える 205 00:23:42,861 --> 00:23:48,316 有功 将軍とは つまらぬものだなあ 206 00:23:48,316 --> 00:23:50,316 それは… 207 00:23:52,821 --> 00:23:57,121 異を唱える必要がないからでは ございませぬか? 208 00:24:01,980 --> 00:24:04,866 六人衆の皆様方も 209 00:24:04,866 --> 00:24:07,866 一目置いておられるので ありましょう 210 00:24:10,155 --> 00:24:15,310 今よりも 大奥の春日殿で息を潜めて 211 00:24:15,310 --> 00:24:19,310 一生お暮らしになられる方が よかったと? 212 00:24:21,316 --> 00:24:24,753 そうではない 213 00:24:24,753 --> 00:24:29,053 そうではないが… しかし 214 00:24:33,812 --> 00:24:37,315 何かを失うた気がするのじゃ 215 00:24:37,315 --> 00:24:39,415 何かとは? 216 00:24:42,203 --> 00:24:46,303 わしにとって かけがえのないものであった… 217 00:24:53,648 --> 00:24:56,248 分からぬか? 218 00:24:59,537 --> 00:25:01,537 そなたじゃ 219 00:25:04,326 --> 00:25:08,813 わしのそばを離れた後も 有功がわしを思い 220 00:25:08,813 --> 00:25:12,817 いつでも共に死んでくれると 思うておればこそ 221 00:25:12,817 --> 00:25:16,655 わしは この大奥の中で いてはならぬ者のまま 222 00:25:16,655 --> 00:25:21,255 子を産み 生きてこれたのだ 223 00:25:24,329 --> 00:25:26,815 けれど今は… 224 00:25:26,815 --> 00:25:30,485 いかに崇め奉られようと 225 00:25:30,485 --> 00:25:34,485 心の支えなく生きねばならぬ 226 00:25:40,979 --> 00:25:43,579 わしは独りじゃ… 227 00:25:46,151 --> 00:25:48,251 独りきりじゃ 228 00:25:49,304 --> 00:25:51,304 上様 229 00:25:56,478 --> 00:26:00,815 今 言うたことは忘れてよい ただの愚痴じゃ 230 00:26:00,815 --> 00:26:03,815 まことのことではない 上様 231 00:26:16,147 --> 00:26:18,747 一つだけ申し上げておきます 232 00:26:21,302 --> 00:26:25,306 上様のお立場が いかに変わられようと 233 00:26:25,306 --> 00:26:28,159 私は… 234 00:26:28,159 --> 00:26:30,659 私の心は 235 00:26:33,998 --> 00:26:36,998 あの頃と少しも変わりませぬ 236 00:26:47,645 --> 00:26:50,815 まことか? 237 00:26:50,815 --> 00:26:53,315 有功 238 00:28:45,280 --> 00:28:48,783 ≪(稲葉)有功殿 失礼つかまつります 239 00:28:48,783 --> 00:28:52,883 正勝殿 しばしお待ちくだされ 240 00:29:04,115 --> 00:29:06,215 しばらくでござった 正勝殿 241 00:29:07,952 --> 00:29:10,121 有功殿 242 00:29:10,121 --> 00:29:16,121 上様が 今宵の夜伽に有功殿を との仰せでございます 243 00:29:57,201 --> 00:29:59,301 失礼つかまつります 244 00:30:01,289 --> 00:30:04,389 申し訳ございませぬ 有功殿 245 00:30:05,843 --> 00:30:10,798 実は上様の体調がすぐれず 今宵の夜伽は… 246 00:30:10,798 --> 00:30:13,284 承知いたしました 正勝殿 247 00:30:13,284 --> 00:30:17,455 くれぐれもお大事になさるよう お伝えくださいませ 248 00:30:17,455 --> 00:30:20,055 申し伝えます 249 00:30:27,131 --> 00:30:30,802 いかがされた? 正勝殿 250 00:30:30,802 --> 00:30:33,137 はッ 251 00:30:33,137 --> 00:30:38,676 いずれ分かること 申し上げます 252 00:30:38,676 --> 00:30:43,976 お匙によれば おそらく ご懐妊であろうと 253 00:30:51,622 --> 00:30:56,794 <家光公は長子・千代姫様に 遅れること三年> 254 00:30:56,794 --> 00:31:01,632 <お夏様との間に待望のお二人目を 身ごもられたが> 255 00:31:01,632 --> 00:31:04,786 <つわりと難産に苦しまれ> 256 00:31:04,786 --> 00:31:11,386 <翌六月 やっとのことで 姫君・長子様を産み落とされた> 257 00:31:20,485 --> 00:31:23,121 姫君様ご誕生 おめでとうございます 258 00:31:23,121 --> 00:31:25,721 (一同)おめでとうございます 259 00:31:27,291 --> 00:31:31,791 お夏の方様 この度はまことに おめでとうございます 260 00:31:33,448 --> 00:31:37,248 (溝口)ご丁寧にいたみいります 有功様 261 00:31:40,121 --> 00:31:45,276 上様が女公方様となられたのちで 幸いでございました 262 00:31:45,276 --> 00:31:51,783 お世継ぎが男のお子でなければ などと 言われずにすみますゆえ 263 00:31:51,783 --> 00:31:54,685 左様でございますな 264 00:31:54,685 --> 00:32:00,185 では お玉の方様に どうぞよろしゅう 265 00:32:05,963 --> 00:32:11,636 (玉栄)お夏のやつ まるで公方様の 父となったがごときはしゃぎよう 266 00:32:11,636 --> 00:32:15,289 千代姫様の父・お楽様が 亡くなってるのをええことに 267 00:32:15,289 --> 00:32:18,960 先にお生まれになった千代姫様を ないがしろにする気や 268 00:32:18,960 --> 00:32:20,962 そないなことはないやろ 269 00:32:20,962 --> 00:32:23,614 いいえ お夏はそういうやつです 270 00:32:23,614 --> 00:32:28,214 誰か長幼の序を お夏めに 説いてやらねばなりません 271 00:32:30,638 --> 00:32:36,127 ときに 上様のお体の様子は いかがなのやろ? 272 00:32:36,127 --> 00:32:40,281 産後は すっかり元に戻られたと 聞いております 273 00:32:40,281 --> 00:32:43,581 それは何よりや 274 00:32:56,481 --> 00:32:59,300 有功様 275 00:32:59,300 --> 00:33:02,300 何や 改まって 276 00:33:04,305 --> 00:33:06,808 ほんまに… 277 00:33:06,808 --> 00:33:10,808 ほんまにふがいないことで 申し訳ありませんッ 278 00:33:14,315 --> 00:33:19,615 有功様に 上様との間に お子をなしてほしいと言われ 279 00:33:21,806 --> 00:33:27,606 おそばに上がった私ですのに いまだ一人も… 280 00:33:29,297 --> 00:33:33,284 とうとうお夏めに 先を越されてしまいました 281 00:33:33,284 --> 00:33:37,839 いや そなたのせいやない 282 00:33:37,839 --> 00:33:41,626 もともと私の勝手な思いで 言うたことや 283 00:33:41,626 --> 00:33:47,014 今度こそ… 次こそ上様との間に お子をなしてみせますゆえ 284 00:33:47,014 --> 00:33:50,614 今少し… 今少し お待ちくださいませ 285 00:34:02,313 --> 00:34:04,866 有功様… 286 00:34:04,866 --> 00:34:09,303 まさかもう そないなことは 望んでないと言わはりますか? 287 00:34:09,303 --> 00:34:12,123 そうではないが… 288 00:34:12,123 --> 00:34:16,123 今回の上様の苦しまれようを 見ると… 289 00:36:29,310 --> 00:36:32,310 ここにおいででございましたか 290 00:36:36,817 --> 00:36:40,371 上様が今宵の夜伽を 有功殿に 291 00:36:40,371 --> 00:36:42,871 との仰せでございます 292 00:37:08,983 --> 00:37:11,083 有功 293 00:37:13,003 --> 00:37:15,103 有功 294 00:37:19,827 --> 00:37:24,327 やっと… やっとッ 295 00:37:27,151 --> 00:37:29,970 長かった 296 00:37:29,970 --> 00:37:32,970 ずっと この日を夢見て… 297 00:37:35,810 --> 00:37:38,610 もう誰にも邪魔はさせぬ 298 00:37:39,647 --> 00:37:43,984 側室も持った 世継ぎも産んだ 299 00:37:43,984 --> 00:37:48,639 もはや わしのすることに 誰も文句は言うまい 300 00:37:48,639 --> 00:37:51,439 そうであろう? 有功 301 00:37:53,978 --> 00:37:57,314 有功… 302 00:37:57,314 --> 00:38:00,985 もう わしを離すな 303 00:38:00,985 --> 00:38:03,485 二度と離すな 304 00:38:22,973 --> 00:38:25,073 有功? 305 00:38:47,815 --> 00:38:49,815 有功? 306 00:39:04,148 --> 00:39:07,051 上様 307 00:39:07,051 --> 00:39:10,304 どうか 308 00:39:10,304 --> 00:39:13,604 どうか お願いでございます 309 00:39:15,826 --> 00:39:18,813 私めに 310 00:39:18,813 --> 00:39:21,413 どうか お褥を 311 00:39:24,969 --> 00:39:27,469 今後一切のお褥を 312 00:39:29,824 --> 00:39:33,124 ご辞退させてくださいませ 313 00:39:45,856 --> 00:39:48,656 なるほどな 314 00:39:51,979 --> 00:39:56,317 何人もの男で汚れたわしの体は もう抱きとうないと… 315 00:39:56,317 --> 00:39:58,317 違いますッ 316 00:40:03,207 --> 00:40:05,707 違うのや 317 00:40:07,978 --> 00:40:11,649 違う… 318 00:40:11,649 --> 00:40:14,652 違う 319 00:40:14,652 --> 00:40:19,152 私かて どれだけ夢見たことか 320 00:40:22,092 --> 00:40:26,680 今まで どないな気持ちで 321 00:40:26,680 --> 00:40:30,180 あなた様を見てきたことか 322 00:40:32,803 --> 00:40:36,473 けれども 323 00:40:36,473 --> 00:40:39,573 私は怖いのです 324 00:40:41,812 --> 00:40:43,912 怖い? 325 00:40:44,982 --> 00:40:47,482 上様のお心という 326 00:40:49,987 --> 00:40:52,656 いつ変わるともしれぬものに 327 00:40:52,656 --> 00:40:54,956 すがって生きていくのが 328 00:40:58,145 --> 00:41:01,145 何を馬鹿な… 329 00:41:04,802 --> 00:41:08,322 わしを信じられぬのか? 330 00:41:08,322 --> 00:41:11,759 信じてはくれぬのか? 331 00:41:11,759 --> 00:41:13,859 のう 有功? 332 00:41:15,996 --> 00:41:19,984 なあ 頼む有功 333 00:41:19,984 --> 00:41:21,986 わしを悲しませるな 334 00:41:21,986 --> 00:41:25,506 わしに このような思いを させることができるのは 335 00:41:25,506 --> 00:41:28,506 この世でそなただけというに 336 00:41:30,144 --> 00:41:34,648 わしの心は… そなただけのものじゃ 337 00:41:34,648 --> 00:41:37,184 誰の子を産もうと変わらなかった 338 00:41:37,184 --> 00:41:40,487 そなたは 世継ぎのためではなく… 339 00:41:40,487 --> 00:41:43,157 そう 340 00:41:43,157 --> 00:41:45,809 おっしゃるとおり 341 00:41:45,809 --> 00:41:50,909 私は上様との間に 子をなすことができませぬ 342 00:41:53,484 --> 00:41:57,821 それが何だというのだ? ですから上様は 343 00:41:57,821 --> 00:41:59,990 これからも他の男を 344 00:41:59,990 --> 00:42:03,990 おそばにお置きに なることでございましょう 345 00:42:05,913 --> 00:42:07,913 けれど… 346 00:42:10,484 --> 00:42:13,584 けれど私も男ですッ 347 00:42:16,323 --> 00:42:20,144 心だけやない 348 00:42:20,144 --> 00:42:27,744 あなたの体も私だけのものに しなければ我慢できひんのや 349 00:42:34,158 --> 00:42:37,258 あなた様には お子があらしゃる 350 00:42:39,813 --> 00:42:43,317 けど私には 351 00:42:43,317 --> 00:42:46,417 あなた様しかおりませぬ… 352 00:43:12,646 --> 00:43:14,646 お願いでございます 353 00:43:16,984 --> 00:43:20,320 どうか 354 00:43:20,320 --> 00:43:23,920 私を解き放ってくださいませ 355 00:43:26,143 --> 00:43:29,813 このような 356 00:43:29,813 --> 00:43:32,816 男と女の 357 00:43:32,816 --> 00:43:37,116 恐ろしい業から 358 00:43:39,223 --> 00:43:42,223 解き放ってくださいませ… 359 00:43:55,806 --> 00:43:58,106 そうか 360 00:44:17,828 --> 00:44:20,428 そうか… 361 00:44:51,645 --> 00:44:53,645 分かった 362 00:44:56,683 --> 00:44:58,683 有功 363 00:45:04,658 --> 00:45:06,758 そなたも わしも 364 00:45:11,832 --> 00:45:16,332 何と遠くまで 来てしまったことかのう… 365 00:45:42,813 --> 00:45:45,148 (稲葉)上様ッ 366 00:45:45,148 --> 00:45:47,148 上様 367 00:46:25,389 --> 00:46:27,389 正勝 368 00:46:30,661 --> 00:46:33,461 わしは独りきりじゃ 369 00:46:38,151 --> 00:46:41,251 もはや わしを叱る者もおらぬ 370 00:46:43,740 --> 00:46:48,040 寄り添うて なぐさめてくれる者もおらぬ 371 00:46:52,649 --> 00:46:55,749 将軍とは そのようなものか… 372 00:47:05,479 --> 00:47:07,479 正勝 373 00:47:10,817 --> 00:47:14,417 そなたこそ つらい立場であったのう 374 00:47:17,824 --> 00:47:19,824 上様 375 00:47:23,163 --> 00:47:25,463 すべて さだめでございます 376 00:47:33,156 --> 00:47:35,142 さだめ… 377 00:47:35,142 --> 00:47:37,978 上様は生まれつき 378 00:47:37,978 --> 00:47:41,078 将軍となる器であらせられる 379 00:47:43,550 --> 00:47:46,850 こうなったのは必然なのです 380 00:47:50,307 --> 00:47:54,478 わしが女将軍となったゆえ 381 00:47:54,478 --> 00:47:58,815 そなたの役目は 終わってしもうたではないか 382 00:47:58,815 --> 00:48:02,502 上様のお父上が 亡くなられたときに 383 00:48:02,502 --> 00:48:04,502 死ぬはずの命です 384 00:48:08,992 --> 00:48:11,292 そなたの嫡男 385 00:48:13,647 --> 00:48:16,747 正則が死んだのも さだめか? 386 00:48:18,668 --> 00:48:21,268 さだめにございます 387 00:48:35,152 --> 00:48:39,952 死ぬのは許さぬ 正勝 388 00:48:42,142 --> 00:48:44,978 そなたは出家して僧となり 389 00:48:44,978 --> 00:48:50,834 父上と同じ 赤面疱瘡に倒れた 390 00:48:50,834 --> 00:48:54,334 正則の菩提を弔うのだ 391 00:48:58,492 --> 00:49:01,492 それが そなたのさだめと心得よ 392 00:49:56,967 --> 00:50:02,067 ≪(小姓)上様のおなーりー 393 00:50:15,302 --> 00:50:17,804 本日 394 00:50:17,804 --> 00:50:21,804 皆にこうして 集まってもろうたは他でもない 395 00:50:23,493 --> 00:50:26,646 春日局が亡くなって以来 396 00:50:26,646 --> 00:50:30,650 空席となっておった 大奥総取締の座であるが 397 00:50:30,650 --> 00:50:33,487 このたび 398 00:50:33,487 --> 00:50:36,787 再び この役目を設けることとした 399 00:50:39,809 --> 00:50:42,312 大奥総取締とは 400 00:50:42,312 --> 00:50:48,312 大奥の中にいるすべての男を 束ねる大奥の頭である 401 00:50:49,302 --> 00:50:51,988 大奥の中にいる者は 402 00:50:51,988 --> 00:50:54,307 何事をするにしても 403 00:50:54,307 --> 00:50:57,807 この総取締の指示を 仰がねばならぬ 404 00:50:59,646 --> 00:51:04,968 やつめ… 大奥総取締をねだるとは 405 00:51:04,968 --> 00:51:07,003 何という… 406 00:51:07,003 --> 00:51:10,140 この役目を 407 00:51:10,140 --> 00:51:14,140 万里小路有功に授けることとする 408 00:51:35,649 --> 00:51:38,485 大奥総取締 409 00:51:38,485 --> 00:51:41,085 万里小路有功である 410 00:51:48,812 --> 00:51:51,681 皆 改めて 411 00:51:51,681 --> 00:51:53,981 よろしゅう頼む 412 00:51:55,485 --> 00:51:58,972 <史上二人目の 大奥総取締> 413 00:51:58,972 --> 00:52:00,991 (一同)ははッ 414 00:52:00,991 --> 00:52:04,491 <お万の方の誕生であった>