1 00:00:33,100 --> 00:00:36,103 おや。 先客か。 2 00:00:36,103 --> 00:00:38,572 (瀧山)これは。 よい。 3 00:00:38,572 --> 00:00:43,243 没日録 近頃は そなたが書いておるのか? 4 00:00:43,243 --> 00:00:48,582 係の者が もうおらぬように なってしまいましたゆえ。 5 00:00:48,582 --> 00:00:50,884 そうか。 6 00:01:00,861 --> 00:01:04,531 改めて お読みに。 7 00:01:04,531 --> 00:01:08,535 せめて とどめておきたいではないか。 8 00:01:10,871 --> 00:01:14,575 私たちの心の中には。 9 00:01:24,418 --> 00:01:27,421 <赤面疱瘡。➡ 10 00:01:27,421 --> 00:01:36,096 高熱を発し 全身に赤い発疹を生じたのち 数日で死に至る恐ろしい病である。➡ 11 00:01:36,096 --> 00:01:41,234 しかも 罹患するのは いかなるわけか 若い男子だけ。➡ 12 00:01:41,234 --> 00:01:46,106 いつごろからか はやりだし 定着した この疫病のせいで➡ 13 00:01:46,106 --> 00:01:51,578 この国の男は 女の4分の1しか おらぬようになった> 14 00:01:51,578 --> 00:01:53,914 (鈴の音) 15 00:01:53,914 --> 00:01:57,784 <そのような世の頂点に立つ将軍も➡ 16 00:01:57,784 --> 00:02:00,087 もちろん女> 17 00:02:05,192 --> 00:02:09,529 <そして 将軍の世継ぎを 生み育てる場であった大奥は➡ 18 00:02:09,529 --> 00:02:13,400 美男3,000人が仕える場となった。➡ 19 00:02:13,400 --> 00:02:17,404 これは その大奥の闇に葬り去られた➡ 20 00:02:17,404 --> 00:02:20,173 まことの姿> 21 00:02:20,173 --> 00:02:33,553 ♬~ 22 00:02:33,553 --> 00:02:37,891 <この国のありさまを変えてしまった 赤面疱瘡。➡ 23 00:02:37,891 --> 00:02:41,762 八代吉宗公は その収束に挑まれたが➡ 24 00:02:41,762 --> 00:02:46,767 悔しいかな 果たすことはかなわず> 25 00:02:52,239 --> 00:02:58,111 (吉宗) 滅びぬ道とやらは どこにあるのだ。➡ 26 00:02:58,111 --> 00:03:01,515 田沼主殿頭意次。 27 00:03:01,515 --> 00:03:06,186 この国から赤面を駆逐してほしい。 28 00:03:06,186 --> 00:03:11,191 <その志は 次代の者に引き継がれた> 29 00:03:15,862 --> 00:03:19,199 <これは その吉宗公の薨去より➡ 30 00:03:19,199 --> 00:03:22,502 およそ20年後の物語> 31 00:03:27,074 --> 00:03:33,213 来たぞ~! 長崎~! 32 00:03:33,213 --> 00:04:18,725 ♬~ 33 00:04:18,725 --> 00:04:23,530 あっ いたいた 吉雄さ~ん! 34 00:04:23,530 --> 00:04:26,867 吉雄さ~ん! 35 00:04:26,867 --> 00:04:29,536 吉雄さ~ん! 36 00:04:29,536 --> 00:04:33,874 ご… 権太夫さん! どげんして出島ん中に!? 37 00:04:33,874 --> 00:04:37,544 まぁ 蛇の道は蛇っていうかさ。 権太夫さん。 38 00:04:37,544 --> 00:04:39,479 何べんでも言いますばってん 蘭語…。 分かってる 分かってる! 39 00:04:39,479 --> 00:04:41,882 1年やそこらで蘭語をおさめるのは 無理だってんでしょ。 40 00:04:41,882 --> 00:04:44,784 分かってる 分かってる! 41 00:04:44,784 --> 00:04:49,756 そげんことじゃのうて 女が…。 女に 蘭学 教えると➡ 42 00:04:49,756 --> 00:04:52,526 後ろに手が回っちゃうんでしょ? 分かってる それも分かってる! 43 00:04:52,526 --> 00:04:55,428 聞いて! 吉雄さん! 今日 私が ここに来たのはね! 44 00:04:55,428 --> 00:04:57,430 ん? 45 00:04:57,430 --> 00:05:01,368 (吾作)貴様 吉雄先生に何しよっと!? 46 00:05:01,368 --> 00:05:04,838 吾作! こいは違う 違うとたい! 47 00:05:04,838 --> 00:05:08,708 権太夫さん 大事なかか。 吉雄さん。 48 00:05:08,708 --> 00:05:11,511 私んだって できんじゃない? は? 49 00:05:11,511 --> 00:05:13,847 異人だって こんなに ペラペラ日本語が話せるんなら➡ 50 00:05:13,847 --> 00:05:16,550 やっぱり私だって 1年もあれば 蘭語をペラペラっと! 51 00:05:19,719 --> 00:05:23,523 (吾作)女子…。 (耕牛)声を聞けば分かろう。 52 00:05:23,523 --> 00:05:29,863 早口がすぎ 声にまで気が回らず。 申し訳なか! 53 00:05:29,863 --> 00:05:31,798 いや いいのよ いいのよ! 54 00:05:31,798 --> 00:05:33,733 私ゃ 口さがないもんで こんなこた しょっちゅうだし。 55 00:05:33,733 --> 00:05:36,203 ほんに 私の目も行き届かず。 56 00:05:36,203 --> 00:05:40,073 こっちも悪かったんだから もうやめて! これじゃ 話もできないよ! 57 00:05:40,073 --> 00:05:44,544 そうだ。 権太夫さん 蘭語ば習いに来たとじゃなかなら➡ 58 00:05:44,544 --> 00:05:46,880 何しに ここへ。 59 00:05:46,880 --> 00:05:50,750 実はね 吉雄さん。 今回 私がここに来たのは➡ 60 00:05:50,750 --> 00:05:55,889 さる身分あるお方の 内命ってやつでしてね。内命? 61 00:05:55,889 --> 00:05:59,226 私が出島に すんなり入れたのも その方のお計らいでね。 62 00:05:59,226 --> 00:06:02,128 (耕牛)え… で その内命の中身ってのは。 それがね! 63 00:06:02,128 --> 00:06:04,831 大奥で蘭語や蘭学を教えてくれる 優れた学者を➡ 64 00:06:04,831 --> 00:06:08,168 連れてこいって話なんですよ! 大通詞でもあり蘭学者 蘭方医でもある➡ 65 00:06:08,168 --> 00:06:11,071 吉雄耕牛先生に どなたか お弟子さんでも紹介して頂けないか➡ 66 00:06:11,071 --> 00:06:15,508 と まぁ そういう寸法で! お… 大奥で? 67 00:06:15,508 --> 00:06:18,411 吾作さん どう!? 68 00:06:18,411 --> 00:06:22,182 あそこにいたよね! 蘭語できるでしょ? 使えるよね? ね! 69 00:06:22,182 --> 00:06:24,851 おいが江戸に? (耕牛)あの 吾作は。 70 00:06:24,851 --> 00:06:26,786 もちろん タダでとは言わないよ! 71 00:06:26,786 --> 00:06:29,723 待遇だって それ相応のものを 用意させてもらうし どう? 72 00:06:29,723 --> 00:06:31,725 悪い話じゃないでしょう!? 73 00:06:31,725 --> 00:06:35,195 (吾作)はっ! バカらしか! 74 00:06:35,195 --> 00:06:39,065 大奥っちゃあ 一生お城の外へも出られんで➡ 75 00:06:39,065 --> 00:06:42,068 誰が公方様に 気に入られる気に入られんて➡ 76 00:06:42,068 --> 00:06:45,538 頭ん中は そいばっかりの男どもたい!➡ 77 00:06:45,538 --> 00:06:49,209 そげんやつらに 蘭学ができるわけはなかと! 78 00:06:49,209 --> 00:06:54,881 おいたちはよ! 辞書もなか中で 命ば削って 耳ば研ぎ澄まし➡ 79 00:06:54,881 --> 00:06:56,816 オランダ語を話し 医学も学んできたと! 80 00:06:56,816 --> 00:06:59,552 遊び半分で身につくもんではなか! 81 00:06:59,552 --> 00:07:02,455 いいねぇ。 82 00:07:02,455 --> 00:07:04,391 いんや ますます気に入った。 83 00:07:04,391 --> 00:07:06,359 あんた そのたんか 江戸っ子にも引けを取らねえよ。 84 00:07:06,359 --> 00:07:08,361 何言ってっか いまひとつ分かんねえけど。 85 00:07:08,361 --> 00:07:11,831 いや もう ぜひ江戸においでよ! 権太夫さん。 86 00:07:11,831 --> 00:07:17,170 吾作は 長崎ば しょって立つ男なんです! 87 00:07:17,170 --> 00:07:21,841 蘭語も医術も 弟子ん中でも ずばぬけとりまして➡ 88 00:07:21,841 --> 00:07:27,514 ゆくゆくは 私の養子とし 大通詞の役目も こん治療所も➡ 89 00:07:27,514 --> 00:07:31,184 吾作に譲ろうて考えとりますと。 90 00:07:31,184 --> 00:07:34,521 え~ そんなこと言われたら ますます…。 91 00:07:34,521 --> 00:07:37,524 吾作は お断りですけん! 92 00:07:43,863 --> 00:07:49,202 ⚟(耕牛の妻)じゃあ 幸太郎のことは どげんするつもりですか!➡ 93 00:07:49,202 --> 00:07:52,105 定之助は!➡ 94 00:07:52,105 --> 00:07:59,846 血を分けた息子が ちゃんとおるとに 吾作に跡ば譲るて! 95 00:07:59,846 --> 00:08:02,749 才のある者が頭をとる。 96 00:08:02,749 --> 00:08:07,153 そうやっていかんといかんて 前にも言うたろう。 97 00:08:07,153 --> 00:08:11,024 合いの子の大通詞なんて 正直なところ➡ 98 00:08:11,024 --> 00:08:15,829 勘弁してほしかて言うとらすとですよ。 ほかの通詞の人たちは。➡ 99 00:08:15,829 --> 00:08:21,701 お医者方も 本音では 皆 ついてけんって こぼしとるって。 100 00:08:21,701 --> 00:08:24,404 かもしれんけどの。 101 00:08:38,518 --> 00:08:42,188 吾作さん まき割りまでするの? 102 00:08:42,188 --> 00:08:46,526 おいは 元は下男じゃったけん。 下男? 103 00:08:46,526 --> 00:08:50,864 もともと わしの兄ちゃんが こん家の下男ばしとった。 104 00:08:50,864 --> 00:08:57,203 で 兄ちゃんが若うして死んだもんで おいが ここに置いてもらえるごつなって。 105 00:08:57,203 --> 00:09:04,010 隠れて 先生の本ば めくったりしとったら いろいろ教えてもらえるごとなったと。 106 00:09:04,010 --> 00:09:09,149 兄ちゃん 何で死んだの? 赤面たい。 107 00:09:09,149 --> 00:09:12,052 え! 一緒だよ 一緒一緒! 108 00:09:12,052 --> 00:09:15,488 私も赤面で きょうだい! あ… 私の場合は弟だけど! 109 00:09:15,488 --> 00:09:23,163 そっか。 そうなんだ。 何だか 私たち似てるねぇ! 110 00:09:23,163 --> 00:09:28,034 似とるって。 権太夫さんは 立派なお武家さんじゃろ? 111 00:09:28,034 --> 00:09:32,839 え? 私ゃ 武家なんて とうの昔に やめちまったよ。 112 00:09:32,839 --> 00:09:37,710 っていうか あんまり勝手がすぎたのか もう知らねえって追い出されちまった。 113 00:09:37,710 --> 00:09:41,714 じゃあ なして 偉い人の命なんか受けてきとるとね。 114 00:09:45,185 --> 00:09:48,087 ありがとう。 115 00:09:48,087 --> 00:09:55,528 あ その人に 「ありがとう」って言われたいからな。 116 00:09:55,528 --> 00:09:59,532 私ゃ ありがとうって言われるのが 何より好きさ。 117 00:10:02,869 --> 00:10:06,539  回想 (吾作の兄) 吾作 おいたちは合いの子たい。 118 00:10:06,539 --> 00:10:11,211 なーんもせんでも 気味悪がられる! 119 00:10:11,211 --> 00:10:18,084 そげなおいたちが 人に好かれるには よかこつばするしかなか。➡ 120 00:10:18,084 --> 00:10:23,223 よかこつばすれば 人に好かれる。 121 00:10:23,223 --> 00:10:35,235 お前は い~っぱい ありがとうって 言うてもらえる人になるとよ。 122 00:10:35,235 --> 00:10:40,106 (吾作)兄ちゃん。 兄ちゃん! 兄ちゃん! 123 00:10:40,106 --> 00:10:43,810 兄ちゃん! 兄ちゃ~ん! 124 00:10:49,782 --> 00:10:54,787 いくら先生のお願いとはいえ 大奥ってのは。 125 00:10:58,925 --> 00:11:03,530 そんなに嫌なもんですかねぇ。 大奥に入るのって。 126 00:11:03,530 --> 00:11:08,868 長崎におると 面白かことも よう起こるし。 127 00:11:08,868 --> 00:11:10,803 ま そっか。 128 00:11:10,803 --> 00:11:15,542 私だって できるなら このまま ここにいたいもんねぇ。 129 00:11:15,542 --> 00:11:19,879 吉雄さん。 ⚟なして こげんいっぱいいると? 130 00:11:19,879 --> 00:11:24,551 (吾作)ちょっと入り用ですけん。 ほ~ ばってん こげんに。 131 00:11:24,551 --> 00:11:26,853 (耕牛)吾作。 132 00:11:28,888 --> 00:11:31,591 サボンの のうなったとか? 133 00:11:37,230 --> 00:11:40,233 先生。 134 00:11:41,901 --> 00:11:45,905 おいば 江戸に行かせて下さい! 135 00:11:47,774 --> 00:11:52,078 (耕牛)いかん。 いかんぞ。 吾作。 136 00:11:58,451 --> 00:12:04,857 私は お前ば養子にして 跡ば とらすつもりで。 137 00:12:04,857 --> 00:12:09,729 先生! もう無理ばせんで下さい! もう十分ですけん。 138 00:12:09,729 --> 00:12:15,201 もう もう これ以上 おいのために 戦わんで下さい。 139 00:12:15,201 --> 00:12:17,136 わしは無理なんぞ。 140 00:12:17,136 --> 00:12:22,842 そんお言葉ば聞けただけで おいは十分ですたい! 141 00:12:25,545 --> 00:12:31,217 (泣き声) 142 00:12:31,217 --> 00:12:38,891 すまんったい 吾作。 守ってやれんで 力足らずで。 143 00:12:38,891 --> 00:12:41,594 何ば おっしゃいますとですか。 144 00:12:44,230 --> 00:12:49,102 吉雄耕牛先生…➡ 145 00:12:49,102 --> 00:12:56,809 今まで… 今まで まこと ありがとうござりました。 146 00:13:03,182 --> 00:13:06,085 まぁねぇ。 いくら吉雄さんが養子にするってもねぇ➡ 147 00:13:06,085 --> 00:13:08,855 吉雄さん 子どもいるしねぇ。 通詞のほうもねぇ。 148 00:13:08,855 --> 00:13:11,758 合いの子のお前さんが 大通詞なんて前代未聞だろうし。 149 00:13:11,758 --> 00:13:15,728 黙っとってくれんか! おいにも気持ちのあるとじゃ! 150 00:13:15,728 --> 00:13:20,733 それは無理! 私をぶっ殺さない限り 無理無理 無理無理… 無理。 151 00:13:28,207 --> 00:13:31,110 でもさ いいの? 本当に。 152 00:13:31,110 --> 00:13:35,548 私もさ 本当は やなのにってのは やなんだよね。 153 00:13:35,548 --> 00:13:42,422 おいも 「ありがとう」って言われたかと。 154 00:13:42,422 --> 00:13:48,127 よかことばして 皆に ありがとうて言われたかと。 155 00:13:48,127 --> 00:13:50,563 江戸では おいのことを待ってくれとる人が➡ 156 00:13:50,563 --> 00:13:57,570 1人はおるとやろ? そん人は ありがとうって思うてくれるとやろ? 157 00:14:01,507 --> 00:14:03,843 ありがとう ありがとう ありがとう 来てくれて ありがとう➡ 158 00:14:03,843 --> 00:14:06,512 吾作さん ありがとう ありがとう。 159 00:14:06,512 --> 00:14:10,383 何ね。 いっぱい言ってみたと! 160 00:14:10,383 --> 00:14:33,072 ♬~ 161 00:14:38,444 --> 00:14:41,447 (意次)面を上げよ。 162 00:14:45,885 --> 00:14:50,223 私は 上様の側用人の田沼です。 163 00:14:50,223 --> 00:14:54,894 あの 田沼主殿頭様でござっとか! 164 00:14:54,894 --> 00:15:01,501 目新しかことば どんどんとなさる。 あ…。 165 00:15:01,501 --> 00:15:04,837 (意次)お国の言葉で大事ないですよ。➡ 166 00:15:04,837 --> 00:15:09,175 便りによると吾作 そなたは蘭語ばかりではなく➡ 167 00:15:09,175 --> 00:15:11,844 吉雄耕牛に跡を望まれるほど➡ 168 00:15:11,844 --> 00:15:15,715 蘭方医としても 優れた腕前を持っておるとか。 169 00:15:15,715 --> 00:15:19,719 私など まだまだ経験も浅く。 170 00:15:19,719 --> 00:15:26,192 やはり オランダの医学というのは 漢方よりも優れておるのですか。 171 00:15:26,192 --> 00:15:31,063 はい! それは確かにござります! どのように? 172 00:15:31,063 --> 00:15:33,533 そうですね。 もうすごいんですよ。 蘭方医ってなぁ。 173 00:15:33,533 --> 00:15:36,436 悪いとこがありゃ 腹かっさばいて 悪いとこ切り取っちまうって寸法で。 174 00:15:36,436 --> 00:15:39,872 (意次)吾作に聞いています。 175 00:15:39,872 --> 00:15:42,775 はい。 権太夫さんの言うとおり➡ 176 00:15:42,775 --> 00:15:45,745 外科においては くらぶべくもありませんし➡ 177 00:15:45,745 --> 00:15:51,217 内科におきましても 蘭方医たちは 人の臓腑がどのような形をし➡ 178 00:15:51,217 --> 00:15:54,554 いかなる役割をしておるか 正しく つかんでおります。 179 00:15:54,554 --> 00:15:57,890 (意次)やはりそうですか。 180 00:15:57,890 --> 00:16:01,494 オランダには 赤面はないのですか? 181 00:16:01,494 --> 00:16:04,163 確かめたわけではありませんが➡ 182 00:16:04,163 --> 00:16:08,501 オランダや その周辺の国々 朝鮮や清などでも➡ 183 00:16:08,501 --> 00:16:12,371 赤面がはやったという話は 耳にしたことがございませぬ。 184 00:16:12,371 --> 00:16:16,843 では 赤面は 我が国だけの病ということに なるのですか?➡ 185 00:16:16,843 --> 00:16:21,180 ほかの国で 既に療法が見つけられている ということは? 186 00:16:21,180 --> 00:16:25,852 そこまでは。 187 00:16:25,852 --> 00:16:30,523 やはり しかとは分からぬか…。 188 00:16:30,523 --> 00:16:33,426 (吾作)あの 田沼様➡ 189 00:16:33,426 --> 00:16:39,866 何故 さように 赤面のことを気になさるのですか? 190 00:16:39,866 --> 00:16:47,206 赤面撲滅は 私が吉宗公に託された悲願だからです。 191 00:16:47,206 --> 00:16:49,542 赤面を撲滅? 192 00:16:49,542 --> 00:16:56,883 八代吉宗公は 赤面を撲滅するべく ありとあらゆる試みをなされました。➡ 193 00:16:56,883 --> 00:17:04,690 洋書 および 男子への蘭学の解禁 採薬使。➡ 194 00:17:04,690 --> 00:17:09,462 けれども 赤面の撲滅を見届けるには時が足らず➡ 195 00:17:09,462 --> 00:17:12,164 私に後を託されたのです。 196 00:17:12,164 --> 00:17:14,500  回想 (吉宗)蘭学は すごい。 197 00:17:14,500 --> 00:17:19,372 しかし 肝心の本丸にて成果が出ておらぬ。 198 00:17:19,372 --> 00:17:21,374 本丸? 199 00:17:21,374 --> 00:17:25,511 この国から赤面を駆逐してほしい。➡ 200 00:17:25,511 --> 00:17:27,446 頼む。 201 00:17:27,446 --> 00:17:32,385 吉宗 今生最後の願いである! 202 00:17:32,385 --> 00:17:39,525 (意次)そのころの私は ただの家重様づきの小姓。 203 00:17:39,525 --> 00:17:43,863 にわかには信じてはもらえぬかと 思いますが。 204 00:17:43,863 --> 00:17:49,735 ひょっとして 大奥にて 蘭学の講義を始めるというのは。 205 00:17:49,735 --> 00:17:57,209 はい。 目指すところは 蘭方の医学による赤面疱瘡の撲滅です。 206 00:17:57,209 --> 00:18:04,817 ばってん 何故 大奥でなのですか!? そんなら もっときちんとした形で。 207 00:18:04,817 --> 00:18:09,689 当面は 事を内々に運びたいからです。 208 00:18:09,689 --> 00:18:14,827 老中方は 蘭学嫌いも多く 御殿医らには目の敵です。 209 00:18:14,827 --> 00:18:17,496 表沙汰にし 議論を呼んだあげく➡ 210 00:18:17,496 --> 00:18:23,169 試みが潰れてしまうなどということは 何としても避けたいのです。➡ 211 00:18:23,169 --> 00:18:26,872 さようなわけで 吾作。 はいっ! 212 00:18:34,513 --> 00:18:40,186 私に力を貸してはもらえぬか? 213 00:18:40,186 --> 00:18:45,858 せ… 浅学非才の身ゆえ どこまで お役に立てるかは分かりませぬが! 214 00:18:45,858 --> 00:18:53,199 この身にかえましても 大奥でのお務めを 果たす所存にございます! 215 00:18:53,199 --> 00:18:57,536 ありがとう 吾作。 216 00:18:57,536 --> 00:19:00,139 おい 吾作さん。 ほれるなよ。 217 00:19:00,139 --> 00:19:04,810 お! おいは そげん。 田沼様にほれていいのは 私だけだ。 218 00:19:04,810 --> 00:19:11,484 ぜひ 源内の言うことは話半分で。 219 00:19:11,484 --> 00:19:17,823 源内。 悲しいなぁ。 本気で言ってるのに。 220 00:19:17,823 --> 00:19:20,726 あの 源内って。 あ そうそう。 221 00:19:20,726 --> 00:19:23,496 吉雄さんと初めて会った時は 権太夫って名乗ってたんだけど➡ 222 00:19:23,496 --> 00:19:27,166 今は 平賀源内って呼ぶ人のほうが 多いかもしれないなぁ。 223 00:19:27,166 --> 00:19:32,505 ひ… 平賀源内って…? あの 平賀源内!? 近頃評判の本草学者の! 224 00:19:32,505 --> 00:19:38,377 そう。 平賀源内が 女!? 225 00:19:38,377 --> 00:19:40,679 そう! 226 00:19:49,522 --> 00:19:52,858 (黒木)それがしが 御右筆部屋に? 227 00:19:52,858 --> 00:19:57,530 そうじゃ。 何じゃ 不服か。 228 00:19:57,530 --> 00:20:01,867 御目見以上の出世。 まことありがたきお話にございますが➡ 229 00:20:01,867 --> 00:20:07,206 高岳様には それがしの悪筆は ご存じの上でのお話で。 230 00:20:07,206 --> 00:20:10,876 まぁ この際 そこはよいのじゃ。➡ 231 00:20:10,876 --> 00:20:16,749 実は こたび 新参が 御右筆の役目につくことになっての。 232 00:20:16,749 --> 00:20:24,423 そなたに 御右筆助として その新参の世話をしてもらいたいのだ。 233 00:20:24,423 --> 00:20:29,562 それがしが お世話役にございますか。 234 00:20:29,562 --> 00:20:38,904 (高岳)そなたの父御は医者であったの? 確か 蘭学もかじった。 235 00:20:38,904 --> 00:20:42,575 …はい。 (高岳)こたびは多少なりとも➡ 236 00:20:42,575 --> 00:20:46,278 心得のあるものが ありがたいのよ。 237 00:20:55,921 --> 00:20:58,624 (黒木)医者など。 238 00:21:35,895 --> 00:21:40,766 こたび 大奥で 御右筆を務めることになりました➡ 239 00:21:40,766 --> 00:21:43,235 吾作にございます!➡ 240 00:21:43,235 --> 00:21:48,107 新参ゆえ 皆様にも ご迷惑ば おかけすることもあろうかと存じますが➡ 241 00:21:48,107 --> 00:21:54,246 何とぞ よろしうお願い申し上げまする! 242 00:21:54,246 --> 00:21:57,149 異人が言葉を話しとる。 異人にしては しっかりしておる。 243 00:21:57,149 --> 00:22:03,055 (高岳)さて 吾作。 これで そなたは今日から大奥勤めとなるゆえ➡ 244 00:22:03,055 --> 00:22:05,858 新しい名を授ける。 245 00:22:05,858 --> 00:22:12,198 その青い目にちなみ ここでは「青沼」と名乗るがよい。 246 00:22:12,198 --> 00:22:17,069 はい! 青沼にございますね!➡ 247 00:22:17,069 --> 00:22:19,071 心得ました! 248 00:22:19,071 --> 00:22:22,374 あの 皆様! 249 00:22:27,546 --> 00:22:29,481 (高岳)それは? 250 00:22:29,481 --> 00:22:33,886 オランダわたりの「サボン」という 汚れ落としにございます。 251 00:22:33,886 --> 00:22:41,760 水につけ 泡立て これで手や体を洗うと 汚れが まことによく落ちますので➡ 252 00:22:41,760 --> 00:22:44,530 ぜひ使ってみて下さい。 253 00:22:44,530 --> 00:22:50,836 ふ ふむ。 では 一つ頂くとするか。 254 00:22:56,575 --> 00:23:01,280 おお… ははっ。 255 00:23:02,848 --> 00:23:06,185 (高岳)では 黒木。 後は頼んだぞ。 256 00:23:06,185 --> 00:23:08,187 は。 257 00:23:22,735 --> 00:23:25,204 あ! あの。 258 00:23:25,204 --> 00:23:32,077 それがしは青沼様付の御右筆助を務めます 黒木と申します。 259 00:23:32,077 --> 00:23:34,380 黒木様。 260 00:23:37,549 --> 00:23:40,219 無用にございます。 261 00:23:40,219 --> 00:23:44,890 かつ 青沼様より それがしのほうが 役が低うございますので➡ 262 00:23:44,890 --> 00:23:50,562 それがしのことは黒木と お呼び捨て下さいませ。 263 00:23:50,562 --> 00:23:56,869 はい。では 御右筆の間まで 案内いたします。 264 00:24:07,846 --> 00:24:12,518 黒木さん 私は ここで どのようにして 蘭学を教えるのですか? 265 00:24:12,518 --> 00:24:15,854 上様も肝煎りで 蘭学を学ぶ会を設けます。 266 00:24:15,854 --> 00:24:19,191 青沼様には そこで教えて頂く次第となります。 267 00:24:19,191 --> 00:24:22,528 でも 皆さん ほかの役目もあるのでは? 268 00:24:22,528 --> 00:24:26,865 上様の肝煎り 皆に 蘭学を楽しむようにとの仰せですので➡ 269 00:24:26,865 --> 00:24:29,768 会に出るならば その間の仕事を抜けることは➡ 270 00:24:29,768 --> 00:24:31,737 とがめぬとの取り決めになっております。 271 00:24:31,737 --> 00:24:37,209 なんと そこまで お心遣い頂いて。 272 00:24:37,209 --> 00:24:41,513 (青沼)あ あの~。 (男衆たち)うわああっ。 273 00:24:45,084 --> 00:24:49,788 異人の相貌に慣れておらぬだけなので ご無礼お許し願いたく。 274 00:24:49,788 --> 00:24:52,491 あ… はい。 275 00:25:00,165 --> 00:25:03,068 (青沼)あの 皆様➡ 276 00:25:03,068 --> 00:25:09,842 蘭学の会が始まるまで 何か私に お仕事のお手伝いをさせて頂きたく。 277 00:25:09,842 --> 00:25:17,182 高岳様から そなたには学問に専念させよ と申しつけられておる! 278 00:25:17,182 --> 00:25:20,853 おお そうじゃ! 紀州徳川家への返礼の書状は。 279 00:25:20,853 --> 00:25:23,188 あぁ! 急ぎ したためねば! 何をしておる…! 280 00:25:23,188 --> 00:25:25,491 急がぬか! 281 00:25:33,198 --> 00:25:37,536 ここにあるものは 何でも ご随意にご覧下さいませ。 282 00:25:37,536 --> 00:25:42,241 何かあれば 遠慮なくお申しつけを。 では。 283 00:26:03,162 --> 00:26:16,708 ♬~ 284 00:26:16,708 --> 00:26:22,181 おや。 主殿頭。 285 00:26:22,181 --> 00:26:25,484 これは治済卿。 ごきげん麗しう。 286 00:26:27,052 --> 00:26:29,855 大奥に行っていたの? 287 00:26:29,855 --> 00:26:34,726 ええ。 新しい者が参ったので 様子を伺いに。 288 00:26:34,726 --> 00:26:40,499 例のあのお話? 大奥にて蘭学をという。 289 00:26:40,499 --> 00:26:49,208 はい。 その師範が参ったのですが なじむには 時もかかりそうで。 290 00:26:49,208 --> 00:26:53,545 かちこち頭の方も 多うございましょうからね。 291 00:26:53,545 --> 00:26:58,884 でも 私は応援していますよ。 292 00:26:58,884 --> 00:27:03,489 心強きお言葉 ありがとうございます。 293 00:27:03,489 --> 00:27:23,175 ♬~ 294 00:27:23,175 --> 00:27:26,178 もう しまいの刻限になります。 295 00:27:31,850 --> 00:27:34,520 青沼様! 296 00:27:34,520 --> 00:27:38,857 黒木さん! 黒木さんは これば知っとったとですか! 297 00:27:38,857 --> 00:27:42,728 赤面が はやりだしたとは 今から たった百数十年前! 298 00:27:42,728 --> 00:27:48,867 それまでは 男も女と同じ数だけいて 上様も男じゃったと! 299 00:27:48,867 --> 00:27:51,770 あぁ だけん 田沼様は!➡ 300 00:27:51,770 --> 00:27:56,742 皆様は 幕府ん方々は こんことば どう思うておられとるとか! 301 00:27:56,742 --> 00:27:59,511 知らぬお方が ほとんどではございませぬかね。 302 00:27:59,511 --> 00:28:02,414 ここに かようにして置いてあるのに!? 303 00:28:02,414 --> 00:28:05,817 (黒木) 皆様が気になるのは 上様のお好みや➡ 304 00:28:05,817 --> 00:28:09,154 どなたに取り入れば うまく過ごせるかですので。 305 00:28:09,154 --> 00:28:13,025 黒木さんは!? 黒木さんも そげなことばかり気のいくと! 306 00:28:13,025 --> 00:28:17,829 私も 初めて そちらを読んだ時は 非常に驚きました。 307 00:28:17,829 --> 00:28:22,501 そうね! 驚いたとね! こりゃ なんとかせんといかんと! 308 00:28:22,501 --> 00:28:29,174 しかし 私は医者も蘭学も嫌いです! 309 00:28:29,174 --> 00:28:32,077 そうなのですか。 310 00:28:32,077 --> 00:28:36,515 されど お役目はお役目として果たす所存です。 311 00:28:36,515 --> 00:28:40,519 ご案じなく。 ありがとうございます。 312 00:28:50,529 --> 00:28:55,834 たくさん持ってきてはおりますが もったいなかですからね。 313 00:29:08,480 --> 00:29:10,816 これは。 314 00:29:10,816 --> 00:29:15,153 私が今まで 蘭語と医学について学んできたことや➡ 315 00:29:15,153 --> 00:29:17,823 気付いたことを書き留めたものです。 316 00:29:17,823 --> 00:29:21,159 講義を受けた方々の 役にも立つと思うので➡ 317 00:29:21,159 --> 00:29:24,463 こちらに納めてもらおうかと。 318 00:29:28,834 --> 00:29:34,539 では 講義に参りましょうか。 319 00:29:55,527 --> 00:29:57,462 各部屋に声をかけてまいります。 320 00:29:57,462 --> 00:30:03,168 ああ 大事なかです。 こんなこと 慣れっこですから。 321 00:30:05,203 --> 00:30:09,074 まぁ じゃあ 始めましょう。 322 00:30:09,074 --> 00:30:13,078 黒木さん 席について下さい。 323 00:30:15,547 --> 00:30:18,216 それがしは教え子では。 324 00:30:18,216 --> 00:30:21,553 このままでは 私は講義ができず➡ 325 00:30:21,553 --> 00:30:25,424 お役目を果たせないということに なってしまいます。 326 00:30:25,424 --> 00:30:28,427 黒木さんの役目は 私の補佐。 327 00:30:28,427 --> 00:30:33,565 ならば 教え子となって 講義を成立させて下さい。 328 00:30:33,565 --> 00:30:37,869 しかし。⚟あの~。 はい! 329 00:30:43,241 --> 00:30:46,144 脅かしてしまいましたか。 いえ! 330 00:30:46,144 --> 00:30:52,584 私こそ すみません! 異人の方を見たのは初めてで! 331 00:30:52,584 --> 00:30:57,923 言葉は通じますから どうかご安心を。 332 00:30:57,923 --> 00:31:00,525 あの 蘭学にご興味が? 333 00:31:00,525 --> 00:31:05,864 いえ! いえ あの その。 334 00:31:05,864 --> 00:31:08,767 そうではなく 御半下部屋に➡ 335 00:31:08,767 --> 00:31:13,205 具合の悪いものが 3名ほど出てしまったのです。➡ 336 00:31:13,205 --> 00:31:19,077 新しい御右筆は医学の心得もあると 耳にしまして。 337 00:31:19,077 --> 00:31:22,214 大奥には 医師はおらんのですか? 338 00:31:22,214 --> 00:31:25,884 御目見以上でなければ 診てはもらえませんし。 339 00:31:25,884 --> 00:31:30,222 その方たちも 具合のお悪い方が出ていると。 340 00:31:30,222 --> 00:31:33,558 参りましょう。 341 00:31:33,558 --> 00:31:37,896 お… お前! こ… こんなもん どっから連れてきたんだ…! 342 00:31:37,896 --> 00:31:41,566 落ち着いて。 青沼様は お医者なんだよ! 343 00:31:41,566 --> 00:31:44,236 つったって お前! そんな鬼みてえなやつと俺らじゃあ➡ 344 00:31:44,236 --> 00:31:46,905 体も違うだろうが。 連れてけ。 345 00:31:46,905 --> 00:31:50,242 青沼様 参りましょう。 346 00:31:50,242 --> 00:31:54,112 静かにせんと とって食うぞ! こんとんまが! 347 00:31:54,112 --> 00:31:59,251 お… 鬼が… 鬼がしゃべっとる。 348 00:31:59,251 --> 00:32:07,559 (せきこみ) 349 00:32:09,528 --> 00:32:11,863 あ… あれ? 350 00:32:11,863 --> 00:32:15,534 じゃあ 口ば開けて! 喉を見せて! 351 00:32:15,534 --> 00:32:17,836 早よう! 352 00:32:19,404 --> 00:32:25,544 発疹は? 見当たらんね。 353 00:32:25,544 --> 00:32:28,447 喉のほかに痛みは? 354 00:32:28,447 --> 00:32:33,151 あ 腰や背中が。 ふむ。 355 00:32:37,556 --> 00:32:40,225 風熱です。 356 00:32:40,225 --> 00:32:42,160 ふ… 風熱! 357 00:32:42,160 --> 00:32:46,898 <風熱は この当時 死に至る恐ろしい病であった> 358 00:32:46,898 --> 00:32:52,571 僖助さん 具合が悪いと訴えてるのは この方たちだけですか? 359 00:32:52,571 --> 00:32:56,908 は… はい! 今のところは。 360 00:32:56,908 --> 00:33:01,179 では この方たちを どこか別の部屋に移しましょう。 361 00:33:01,179 --> 00:33:04,516 僖助さんは仕事に戻って下さい。 え! 362 00:33:04,516 --> 00:33:09,187 (青沼)御目見以上にも具合が悪い方が 出ていると言ってましたよね。➡ 363 00:33:09,187 --> 00:33:12,090 僖助さんたちは いつも以上に大変になるでしょう。 364 00:33:12,090 --> 00:33:16,061 それから 部屋の皆さんで これを使って下さい。➡ 365 00:33:16,061 --> 00:33:20,799 仕事に入る前 入ったあと 病人に触れたあと➡ 366 00:33:20,799 --> 00:33:24,736 必ず それに水をかけて 手を洗って下さい。 367 00:33:24,736 --> 00:33:28,540 え… 何故に。 368 00:33:28,540 --> 00:33:32,878 風熱をいたずらに広げぬためです。 369 00:33:32,878 --> 00:33:36,214 あの これは何のために。 370 00:33:36,214 --> 00:33:38,884 (青沼)部屋の中を湿らせているのです。 371 00:33:38,884 --> 00:33:42,888 そのほうが 喉が楽になりますから。 372 00:33:52,430 --> 00:33:55,233 さようなところまで冷やすのですか? 373 00:33:55,233 --> 00:33:58,904 体の熱を下げるには わきの下➡ 374 00:33:58,904 --> 00:34:01,172 股の付け根などを冷やすのが いいのです。➡ 375 00:34:01,172 --> 00:34:07,045 ここには 体の熱を冷ますのに役立つ 血脈が集まっていますから。 376 00:34:07,045 --> 00:34:10,181 随分と親身な。 377 00:34:10,181 --> 00:34:15,053 医者というのは 脈を取り 薬を渡せば それでしまいだと思うておりました。 378 00:34:15,053 --> 00:34:19,190 薬をのめば 病が治るわけでもありませんしね。 379 00:34:19,190 --> 00:34:26,498 え…?病を治すのは 結局のところ 患者自身の持つ体の力なんです。 380 00:34:32,203 --> 00:34:36,074 薬も こういった看病も➡ 381 00:34:36,074 --> 00:34:41,212 その体の力が減じないようにするための 手助けしかできないんです。 382 00:34:41,212 --> 00:34:45,517 医者も そのために 患者につきあうことしかできません。 383 00:34:47,085 --> 00:34:51,556  回想 黒木先生に頂きました丸薬が よう効きまして。 384 00:34:51,556 --> 00:34:58,430 今朝方 黒い便が山のように出 熱も すっかり下がりまして。 385 00:34:58,430 --> 00:35:00,832 (良春)それは何より。 386 00:35:00,832 --> 00:35:04,703 あれは オランダわたりの丸薬でございましてね。 387 00:35:04,703 --> 00:35:07,172 まぁあ! さようで! 388 00:35:07,172 --> 00:35:14,879 ただ この薬 効きはよいものの…。 存じております。 389 00:35:17,816 --> 00:35:21,186 こちらで。 390 00:35:21,186 --> 00:35:25,857 父上。 あの丸薬は あれほど高価なものなのですか? 391 00:35:25,857 --> 00:35:30,195 あれはな 炭よ。 す… 炭!? 392 00:35:30,195 --> 00:35:33,098 炭を薬に仕立てたものじゃ。 393 00:35:33,098 --> 00:35:38,069 炭を食えば 黒い便が出るのは 当たり前じゃ。 394 00:35:38,069 --> 00:35:41,539 まさか 炭を薬と偽ったのですか? 395 00:35:41,539 --> 00:35:45,410 熱が下がる折を見計らって 与えるのが肝なのだ。 396 00:35:45,410 --> 00:35:50,215 さすれば こちらが与えた薬で治ったことになる。 397 00:35:50,215 --> 00:35:54,886 しかし それは それでは かたりではないですか。 398 00:35:54,886 --> 00:35:58,223 たかが炭に1両もらうなど。 良太郎。 399 00:35:58,223 --> 00:36:03,061 病と闘えるのは 患者の体の力だけだ。 400 00:36:03,061 --> 00:36:08,033 医者にできることなど せいぜい患者や家族の愚痴につきあって➡ 401 00:36:08,033 --> 00:36:10,735 ご機嫌をとるくらいのものだ。 402 00:36:17,509 --> 00:36:21,379 黒木さん? 403 00:36:21,379 --> 00:36:28,853 私は 以前 ある医者から 同じ言葉を聞いたことがあるんです。 404 00:36:28,853 --> 00:36:33,725 けれど その者の言葉は詭弁にしか聞こえず。 405 00:36:33,725 --> 00:36:39,864 医者というのは なんと あさましいものかと。 406 00:36:39,864 --> 00:36:46,204 私も とてもあさましい医者ですね。 407 00:36:46,204 --> 00:36:50,875 とどのつまりは 皆に好かれたくて。 408 00:36:50,875 --> 00:36:56,548 「ありがとう」と言われたくて 医者をやっているようなものですから。 409 00:36:56,548 --> 00:37:08,159 ♬~ 410 00:37:08,159 --> 00:37:13,031 水 替えてまいります。 冷たいほうが よろしいですよね。 411 00:37:13,031 --> 00:37:15,733 ありがとうございます。 412 00:37:18,803 --> 00:37:23,708 では 1両払え! 413 00:37:23,708 --> 00:37:30,415 例えば 感謝を銭金にかえて求める。 414 00:37:30,415 --> 00:37:36,521 あさましいとは そういうことだと 私は思います。 415 00:37:36,521 --> 00:38:11,823 ♬~ 416 00:38:11,823 --> 00:38:15,693 <その後 風熱は大奥で猛威を振るい➡ 417 00:38:15,693 --> 00:38:20,832 御目見以上に 24名の死者を出すこととなった> 418 00:38:20,832 --> 00:38:26,704 (意次)常ならば 御目見以下に 死者が多いものなのに 逆さ。 419 00:38:26,704 --> 00:38:32,177 はい。 こたびのありさまには 私も驚いておりまして。 420 00:38:32,177 --> 00:38:36,848 (意次)何か理由はあるのでしょうか? 421 00:38:36,848 --> 00:38:40,852 ひょっとすると。 422 00:38:43,521 --> 00:38:47,825 (意次)青沼のサボン? 423 00:38:52,197 --> 00:39:17,155 ♬~ 424 00:39:17,155 --> 00:39:23,461 しかし 黒木さんは オランダ文字が実にお上手ですね。 425 00:39:25,830 --> 00:39:32,503 まことですか? それがし 筆を褒められたのは初めてです。 426 00:39:32,503 --> 00:39:35,840 ええ とてもお上手です。➡ 427 00:39:35,840 --> 00:39:40,178 実に自然にミミズがのたくったような。 428 00:39:40,178 --> 00:39:51,789 私は 蘭学に向いているのでしょうか。 429 00:39:51,789 --> 00:39:55,193 お嫌いなんでしたね。 430 00:39:55,193 --> 00:39:59,864 しかし 好かれれば好意を持つというのが 人の常! 431 00:39:59,864 --> 00:40:06,738 蘭学が私を好むというならば 私も おのず蘭学を好きになれることかと。 432 00:40:06,738 --> 00:40:10,508 (笑い声) (障子が開く音) 433 00:40:10,508 --> 00:40:12,877 講義部屋って ここ? 434 00:40:12,877 --> 00:40:18,549 はい! あの 受講をお望みで? 435 00:40:18,549 --> 00:40:21,552 はは ま~ねん。 436 00:40:23,888 --> 00:40:28,593 あ どうぞ もっと前に。 空いておりますので。 437 00:40:31,763 --> 00:40:37,902 なんと 帳面をご自分で。 438 00:40:37,902 --> 00:40:39,837 何ですか! これは! 439 00:40:39,837 --> 00:40:44,776 え? 春本だよ。 見たことねぇの 先生。 440 00:40:44,776 --> 00:40:46,911 初めて見ました。 441 00:40:46,911 --> 00:40:50,782 へへ じゃ 一緒に見るかい? 442 00:40:50,782 --> 00:40:56,921 おお。 おい かようなもの 大奥では禁ぞ! 443 00:40:56,921 --> 00:41:02,727 あ~ そんなこと言ってよ 実は手元に ないないするんじゃねえですか? ねぇ。 444 00:41:02,727 --> 00:41:06,731 何だと? ⚟(僖助)青沼先生。 445 00:41:06,731 --> 00:41:13,204 (青沼)僖助さん! 皆さんも治りましたか。 (4人)はい。 446 00:41:13,204 --> 00:41:18,543 皆 もうすっかり。 先生 この度は。 447 00:41:18,543 --> 00:41:22,246 (4人)まことにありがとうございました! 448 00:41:27,552 --> 00:41:31,889 (黒木)高岳様。 (高岳)あ~ よいよい。➡ 449 00:41:31,889 --> 00:41:39,197 青沼 実はの ぜひ そなたに会いたい というお方がおられての。 450 00:41:42,233 --> 00:41:48,239 (黒木)う… 上様! 御台様! 451 00:41:52,877 --> 00:41:57,248 (家治)実は 主殿頭より➡ 452 00:41:57,248 --> 00:42:02,520 そなたがサボンとやらで 風熱を防ぎきったと聞いての。 453 00:42:02,520 --> 00:42:04,455 (青沼)田沼様が…! 454 00:42:04,455 --> 00:42:10,194 いっそ 公儀で 大いに取り入れればどうかと思うてな。 455 00:42:10,194 --> 00:42:14,065 さすれば 風熱は出ぬようになろう? 456 00:42:14,065 --> 00:42:16,868 お… 恐れながら! 457 00:42:16,868 --> 00:42:20,738 サボンは一役は買ったかもしれませぬが➡ 458 00:42:20,738 --> 00:42:25,543 サボンを使うておれば 風熱に決してかからぬ➡ 459 00:42:25,543 --> 00:42:30,882 いわんや 風熱を治すという 類いのものではございませぬわけで。 460 00:42:30,882 --> 00:42:33,551 おや そうなのか!? 461 00:42:33,551 --> 00:42:37,422 まことに悔しいことですが➡ 462 00:42:37,422 --> 00:42:45,163 人は病を ことごとく防ぐ術を 見つけたことはないのです。 463 00:42:45,163 --> 00:42:51,469 (五十宮)なんとまぁ 正直な先生や。 464 00:43:07,418 --> 00:43:12,390 今日から私も ここの教え子や。 465 00:43:12,390 --> 00:43:14,859 あの…。 466 00:43:14,859 --> 00:43:22,533 青沼先生 はよ 講義 始めとくれやす! は… ははっ! 467 00:43:22,533 --> 00:43:53,231 ♬~ 468 00:43:53,231 --> 00:43:58,102 これ 赤面疱瘡のたねだよね? 469 00:43:58,102 --> 00:44:05,810 ♬~ 470 00:44:05,810 --> 00:44:08,179 赤面のサボンがあればいいわけでしょ!? 471 00:44:08,179 --> 00:44:13,518 あそこで赤面の研究をすると言うのか。 ダメに決まっておろうが! 472 00:44:13,518 --> 00:44:17,388 蘭学を口実に 大奥で一体 何をなさっているのやら。 473 00:44:17,388 --> 00:44:20,191 外道を引っ張り込んだということか。 474 00:44:20,191 --> 00:44:24,195 私も もっと力を得ねばなりませんね。