1 00:00:33,877 --> 00:00:35,896 ギャー 最悪 もう! (雷鳴) 2 00:00:35,896 --> 00:00:37,996 雨って聞いてないから あぁ! (雷鳴) 3 00:00:45,539 --> 00:00:48,439 ここは 昭和? 4 00:00:52,712 --> 00:00:55,365 《この状況で読書だと? 5 00:00:55,365 --> 00:00:58,965 それにしても 凛とした お横顔だこと》 6 00:01:01,871 --> 00:01:04,274 きれいな召し物が…。 7 00:01:04,274 --> 00:01:09,195 よければ これを。 ありがとうございます。 8 00:01:09,195 --> 00:01:12,532 《紳士! だがしかし 手拭い? 9 00:01:12,532 --> 00:01:16,353 わらわ 令和で 初めて この目にしましたぞ》 10 00:01:16,353 --> 00:01:20,373 しばらく やみそうにないなぁ。 11 00:01:20,373 --> 00:01:23,877 あっ ホント まいっちゃいますよね。 12 00:01:23,877 --> 00:01:28,865 まぁ しかし 雨の日は 雨を愛すしかない。 13 00:01:28,865 --> 00:01:32,535 《何? 今の おしゃな ひと言》 14 00:01:32,535 --> 00:01:35,435 おかげで ゆっくり読書ができる。 15 00:01:38,525 --> 00:01:44,698 まさに 雨の日は 雨を愛す…。 16 00:01:44,698 --> 00:01:48,702 そして この雨のおかげで➡ 17 00:01:48,702 --> 00:01:51,621 新しい出会いもできた。 18 00:01:51,621 --> 00:01:56,543 《若干の既視感はあるものの これこそ純文学? 19 00:01:56,543 --> 00:02:00,030 純文学的 出会いというものですか?》 20 00:02:00,030 --> 00:02:05,051 失礼ですが お仕事は 何をなさってるんですか? 21 00:02:05,051 --> 00:02:08,488 駄文を書いて飯を食っている。 22 00:02:08,488 --> 00:02:12,288 《リピート アフター ミー!》 23 00:02:16,096 --> 00:02:20,133 《ともすれば よしんば 翻ってからに➡ 24 00:02:20,133 --> 00:02:24,854 内見予約したい所存で ありまする!》 25 00:02:24,854 --> 00:02:30,260 私 小説家なんて 初めてお会いいたしましたわ。 26 00:02:30,260 --> 00:02:33,863 そんな大げさなものではない。 27 00:02:33,863 --> 00:02:36,366 あの…。 28 00:02:36,366 --> 00:02:39,869 ん? ウソのように晴れた。 29 00:02:39,869 --> 00:02:42,522 では。 30 00:02:42,522 --> 00:02:44,541 あの! 31 00:02:44,541 --> 00:02:49,362 もし よろしければ 連絡先でも。 32 00:02:49,362 --> 00:02:54,718 週末に よく この先の公園で 言葉と戯れている。 33 00:02:54,718 --> 00:02:58,788 そこでまた よい風が 吹くかもしれない。 34 00:02:58,788 --> 00:03:02,788 それは… ですね。 35 00:04:05,522 --> 00:04:07,540 また ずいぶん 浮世離れした男ね。 36 00:04:07,540 --> 00:04:10,360 てか 雨宿りの出会いって 昭和じゃないんだからさぁ! 37 00:04:10,360 --> 00:04:12,378 その昭和っていうのが いいんじゃない。 38 00:04:12,378 --> 00:04:14,697 雨降って地固まる。 39 00:04:14,697 --> 00:04:18,017 おしゃ子様 使い方が ずいぶん おズレのようで…。 40 00:04:18,017 --> 00:04:20,553 まさに 雨後の筍。 41 00:04:20,553 --> 00:04:24,107 いやはや 晴耕雨読 っていうことかしら。 42 00:04:24,107 --> 00:04:26,126 もはや 雨という言葉の 連想ゲームにな…。 43 00:04:26,126 --> 00:04:28,878 もう 黙ってて 五月の蝿が。 44 00:04:28,878 --> 00:04:30,880 五月の蝿? 45 00:04:30,880 --> 00:04:33,049 うるさかったと? 46 00:04:33,049 --> 00:04:35,034 妙な文学に侵されてるわ~。 47 00:04:35,034 --> 00:04:37,036 あっ ちょっと 真鱈井 真鱈井 真鱈井…。 48 00:04:37,036 --> 00:04:39,038 ちょっと そこ 拭いといて。 あら? 49 00:04:39,038 --> 00:04:41,708 まぁ 読書? 珍しい。 50 00:04:41,708 --> 00:04:43,860 毎度 お世話さまで~す! バズく~ん。 51 00:04:43,860 --> 00:04:46,529 私も あなたの色に染まりたい~! 52 00:04:46,529 --> 00:04:48,929 あなた色に染まりたいなんて 言われることは…。 53 00:04:58,858 --> 00:05:00,860 あっ もしかして これ あれかな? 来たかな? 54 00:05:00,860 --> 00:05:03,696 ありがとう… わぁ! 買ったの最新のiPad! 55 00:05:03,696 --> 00:05:09,035 わぁ~ それ 高まるやつ~! 56 00:05:09,035 --> 00:05:14,040 あ~あ コミュニケーションが薄い。 57 00:05:14,040 --> 00:05:17,540 貴殿たちの言葉が 実に薄い。 58 00:05:20,196 --> 00:05:22,866 これ? それが➡ 59 00:05:22,866 --> 00:05:26,886 この薄さに 表れている。 60 00:05:26,886 --> 00:05:30,540 いや 便利なほうが よくない? 便利とは➡ 61 00:05:30,540 --> 00:05:32,876 不便から始まったもの。 62 00:05:32,876 --> 00:05:37,714 初心 忘れるべからず。 63 00:05:37,714 --> 00:05:40,366 時は きました。 64 00:05:40,366 --> 00:05:43,036 私は 行かねば 行かねば! 65 00:05:43,036 --> 00:05:46,206 では… どろん。 66 00:05:46,206 --> 00:05:50,210 ちょっと ちょっと おしゃ子様? 67 00:05:50,210 --> 00:05:54,597 大丈夫ですか 見習いさん! (笑い声) 68 00:05:54,597 --> 00:05:59,202 はぁ~ なかなか広いもんね。 69 00:05:59,202 --> 00:06:04,374 果たして 運命のあの人に 会えるのかしら? 70 00:06:04,374 --> 00:06:07,026 やぁ これは これは! 71 00:06:07,026 --> 00:06:10,530 運命 早っ ていうか なんでスワン? 72 00:06:10,530 --> 00:06:13,716 今日は今日で また すてきな召し物を。 73 00:06:13,716 --> 00:06:17,387 アッハハッ 恐縮です。 74 00:06:17,387 --> 00:06:19,887 《フッフッフッ かかったかな》 75 00:07:57,687 --> 00:08:00,540 これは? 76 00:08:00,540 --> 00:08:02,558 ここを訪ねてくれた人に➡ 77 00:08:02,558 --> 00:08:05,345 気が向いたら 手に取ってもらっている。 78 00:08:05,345 --> 00:08:07,363 ほぅ。 79 00:08:07,363 --> 00:08:09,365 《いちいち ミステリアスね~》 80 00:08:09,365 --> 00:08:13,236 君 姓名のほうは? 81 00:08:13,236 --> 00:08:15,355 生命のほう? 82 00:08:15,355 --> 00:08:19,509 《えっ 生命? 何 今 私は命を問われてるの? 83 00:08:19,509 --> 00:08:24,013 いきなり投げつけられるにしては 激ヘビーな テーマなんですけど》 84 00:08:24,013 --> 00:08:28,434 はかなくも 美しくありたいなと。 85 00:08:28,434 --> 00:08:30,687 はい。 ん? 86 00:08:30,687 --> 00:08:34,524 《違ったか? 文学失格? 人間失格?》 87 00:08:34,524 --> 00:08:37,677 ハッハッハッハッ…。 88 00:08:37,677 --> 00:08:40,596 命の話ととられたか。 89 00:08:40,596 --> 00:08:43,132 生命のほうって…。 あ~ 失礼 失礼。 90 00:08:43,132 --> 00:08:46,019 姓と名は ということだった。 91 00:08:46,019 --> 00:08:48,521 君の名は? という意味で。 92 00:08:48,521 --> 00:08:53,009 《うわ~ 前前前 前世から やり直させてくれ~い!》 93 00:08:53,009 --> 00:08:55,178 おかしくて 魅力的だ。 94 00:08:55,178 --> 00:08:59,515 《からの歴史的生還 人間合格》 95 00:08:59,515 --> 00:09:02,068 (せきばらい) 96 00:09:02,068 --> 00:09:06,889 私 おしゃ子と申します。 97 00:09:06,889 --> 00:09:10,526 よい名前だ。 98 00:09:10,526 --> 00:09:12,526 ありがとうございます。 99 00:09:32,698 --> 00:09:38,855 おしゃれとは 長い間 日光に照らされ白っぽくなる。 100 00:09:38,855 --> 00:09:42,358 そんな意味を含んでいる。 101 00:09:42,358 --> 00:09:44,360 それを認めてみた。 102 00:09:44,360 --> 00:09:47,460 《ぶ… 文学男子 よくわかんないけど…》 103 00:09:56,439 --> 00:10:01,677 先生 もし よろしければ あなたのおうちに おうか…。 104 00:10:01,677 --> 00:10:05,198 2人で少し 湿らせようか。 105 00:10:05,198 --> 00:10:07,216 湿らす? 106 00:10:07,216 --> 00:10:10,416 《鶯谷で湿らすって なんか卑わい》 107 00:10:13,523 --> 00:10:16,692 《いや 酒 飲むってことか~い》 108 00:10:16,692 --> 00:10:20,892 時に 君は どんな本を読む? 109 00:10:30,890 --> 00:10:33,860 あっ でも 一応 小さい頃に➡ 110 00:10:33,860 --> 00:10:37,180 父から著名な作家の授業を 受けてました。 111 00:10:37,180 --> 00:10:40,216 そのときは 誰を学んだ? 112 00:10:40,216 --> 00:10:43,703 《ヤッべえ 作家の部屋の記憶しかねえ。 113 00:10:43,703 --> 00:10:47,723 どうしたものか? ん? そうだ》 114 00:10:47,723 --> 00:10:50,026 あの! ん? 115 00:10:50,026 --> 00:10:53,045 本を見たら 何を学んだのか 思い出せそうです。 116 00:10:53,045 --> 00:10:55,531 雨蝶さんのおうちには➡ 117 00:10:55,531 --> 00:10:57,533 たくさん 本が ありそうですもんね。 118 00:10:57,533 --> 00:11:01,733 なので おうちに伺っても よろしいですか? 119 00:11:03,723 --> 00:11:07,910 私は 風の向くままに歩いてきた。 120 00:11:07,910 --> 00:11:10,263 君も風の一部だ。 121 00:11:10,263 --> 00:11:13,463 では 招こうか。 122 00:11:18,037 --> 00:11:22,225 ってことで 大ピンチ 抜けつつ➡ 123 00:11:22,225 --> 00:11:27,213 内見予約 完了! 124 00:11:27,213 --> 00:11:31,713 一石雨蝶。 125 00:11:35,371 --> 00:11:39,742 あっ こんにちは。 126 00:11:39,742 --> 00:11:42,545 《ふむふむ なんとも昭和を感じさせる➡ 127 00:11:42,545 --> 00:11:45,031 古きよき アパートメントスタイル。 128 00:11:45,031 --> 00:11:48,901 悪くない いと趣深しだわ》 129 00:11:48,901 --> 00:11:52,538 昭和 今日も生きなさい。 130 00:11:52,538 --> 00:11:55,041 (猫の鳴き声) 131 00:11:55,041 --> 00:11:57,877 かわいい猫ですね。 132 00:11:57,877 --> 00:12:00,696 お名前は 昭和って 付けられてるんですか? 133 00:12:00,696 --> 00:12:04,033 ああ こうして➡ 134 00:12:04,033 --> 00:12:07,870 昭和… と 口にする機会を作っている。 135 00:12:07,870 --> 00:12:10,556 なるほど。 136 00:12:10,556 --> 00:12:14,043 昭和 お前は 令和でも変わらず➡ 137 00:12:14,043 --> 00:12:17,546 昭和 という空気に包まれていて➡ 138 00:12:17,546 --> 00:12:19,865 居心地がよさそうだな。 139 00:12:19,865 --> 00:12:22,665 《お昭和 いい》 140 00:12:26,038 --> 00:12:28,040 (玄関の呼び鈴) 141 00:12:28,040 --> 00:12:31,527 はぁ~ これぞ 昭和の音。 142 00:12:31,527 --> 00:12:33,913 そして…。 (においを嗅ぐ音) 143 00:12:33,913 --> 00:12:37,533 昭和のにおい。 144 00:12:37,533 --> 00:12:39,535 はぁ~。 145 00:12:39,535 --> 00:12:42,872 (においを嗅ぐ音) 146 00:12:42,872 --> 00:12:44,872 《ようこそ》 147 00:12:48,377 --> 00:12:53,866 もうすぐ 餌の時間かニャ~。 148 00:12:53,866 --> 00:12:55,866 (猫の鳴き声) 149 00:15:15,841 --> 00:15:20,679 和! これぞ 和! 150 00:15:20,679 --> 00:15:24,016 つまらない部屋だが。 151 00:15:24,016 --> 00:15:26,716 それでは 失礼いたします。 152 00:15:33,509 --> 00:15:35,528 わぁ~。 153 00:15:35,528 --> 00:15:39,698 《やっぱり 予想どおりの お昭和な部屋。 154 00:15:39,698 --> 00:15:42,351 所狭しと積み上がった本の山。 155 00:15:42,351 --> 00:15:45,838 木のぬくもりしかない おしゃレトロな家具たち!》 156 00:15:45,838 --> 00:15:50,242 はぁ~! それにしても…。 157 00:15:50,242 --> 00:15:55,181 《蒔絵の文箱に 紫檀でできた文鎮や万年筆。 158 00:15:55,181 --> 00:15:57,533 おまけに 味のある扁額。 159 00:15:57,533 --> 00:16:00,169 まさに 文豪の部屋って感じ!》 160 00:16:00,169 --> 00:16:02,555 あぁ…。 161 00:16:02,555 --> 00:16:05,191 あっ この文机。 162 00:16:05,191 --> 00:16:09,178 木が いい雰囲気… あぁ…。 163 00:16:09,178 --> 00:16:13,349 ここに座ると 昭和が降りてくる。 164 00:16:13,349 --> 00:16:17,369 昭和が降りてくるとは…。 165 00:16:17,369 --> 00:16:21,290 昭和が降りてくるとは➡ 166 00:16:21,290 --> 00:16:24,860 昭和が降りてくるということ。 167 00:16:24,860 --> 00:16:29,498 《一人オウム返し なんて技なの!》 168 00:16:29,498 --> 00:16:31,684 《どうだ?》 169 00:16:31,684 --> 00:16:34,687 そうだ せっかくだから➡ 170 00:16:34,687 --> 00:16:37,339 雨蝶さんの作品も 見てみたいな~って。 171 00:16:37,339 --> 00:16:40,192 まぁ 一度 茶でもいれようか。 172 00:16:40,192 --> 00:16:43,512 あっ ありがとうございます。 173 00:16:43,512 --> 00:16:46,412 えっ 火鉢!? 174 00:16:49,685 --> 00:16:52,171 もしかして これで お茶を? 175 00:16:52,171 --> 00:16:54,540 《なんなの? この過度な世界観。 176 00:16:54,540 --> 00:16:58,177 こんなの教科書の写真でしか 見たことないよ》 177 00:16:58,177 --> 00:17:01,130 《えっ? どういうこと?》 178 00:17:01,130 --> 00:17:03,849 これは 昭和の骨董品で➡ 179 00:17:03,849 --> 00:17:06,852 何十年もの歳月が重なり➡ 180 00:17:06,852 --> 00:17:10,272 この灰の山ができている。 181 00:17:10,272 --> 00:17:14,360 こうすることで 昭和を感じることができる。 182 00:17:14,360 --> 00:17:16,862 昭和を書ける。 183 00:17:16,862 --> 00:17:22,184 昭和を書いた 雨蝶さんの作品は さぞ…。 184 00:17:22,184 --> 00:17:24,184 え? 185 00:17:26,672 --> 00:17:30,593 どうだろう? 指で感じる昭和は。 186 00:17:30,593 --> 00:17:35,848 《感じ… れない》 187 00:17:35,848 --> 00:17:40,719 昭和は なんか 温かい。 188 00:17:40,719 --> 00:17:44,023 あ~ そう 昭和は そうなんだ。 189 00:17:44,023 --> 00:17:50,679 (笑い声) 190 00:17:50,679 --> 00:17:54,867 《ん? なんだ? 急に襲ってきた この 一抹の違和感。 191 00:17:54,867 --> 00:17:58,254 初めて来た 見たこともない 部屋なはずなのに➡ 192 00:17:58,254 --> 00:18:02,554 どこか見たことがあるような この矛盾感…》 193 00:18:16,021 --> 00:18:19,041 《今 左から右に持ち替えた? 194 00:18:19,041 --> 00:18:22,041 なんで? この人 右利きよね?》 195 00:18:25,664 --> 00:18:29,501 《でも この部屋の配置って 左利き用…。 196 00:18:29,501 --> 00:18:32,705 ハッ これは まさか!》 197 00:18:32,705 --> 00:18:36,025 どうぞ。 ひとまず 今は結構です。 198 00:18:36,025 --> 00:18:38,025 ん? 199 00:18:40,179 --> 00:18:43,182 (せきばらい) 200 00:18:43,182 --> 00:18:47,036 先生 いつも そちらで 執筆されてるんですよね? 201 00:18:47,036 --> 00:18:49,505 ああ そうだが。 202 00:18:49,505 --> 00:18:54,526 先生 右利きですよね? 203 00:18:54,526 --> 00:18:57,446 ああ まぁ…。 204 00:18:57,446 --> 00:19:00,199 先生! いや…。 205 00:19:00,199 --> 00:19:02,551 文具にしても 用紙にしても➡ 206 00:19:02,551 --> 00:19:04,586 この急須の向きにしても➡ 207 00:19:04,586 --> 00:19:06,705 配置が左利き用で➡ 208 00:19:06,705 --> 00:19:11,860 右利きだと 不便そうだな~って。 209 00:19:11,860 --> 00:19:16,015 あっ… まぁ 昭和は➡ 210 00:19:16,015 --> 00:19:18,017 不便な時代だった。 211 00:19:18,017 --> 00:19:21,854 その ゴミ箱も 右にあったらいいのに。 212 00:19:21,854 --> 00:19:25,524 部屋の細かいことは 気にしていない。 213 00:19:25,524 --> 00:19:28,510 書くことに集中しているだけで…。 214 00:19:28,510 --> 00:19:32,197 でも ゴミ箱は こっちにあったほうが。 215 00:19:32,197 --> 00:19:36,397 あれ? これって先生の ボツになったやつですか? 216 00:19:40,005 --> 00:19:42,341 おおっ! 217 00:19:42,341 --> 00:19:44,677 今は そんな作品 どうでもいい。 218 00:19:44,677 --> 00:19:49,698 この部屋には 私と君という 作品があるのだから。 219 00:19:49,698 --> 00:19:51,684 あっ ちょっ どういう意味ですか? 220 00:19:51,684 --> 00:19:54,484 私たちの作品って あっ ちょっと… うっ…。 221 00:19:57,856 --> 00:20:02,711 《これは 夏目漱石の あの有名な 翻訳?》 222 00:20:02,711 --> 00:20:04,711 アイラブユー。 223 00:20:06,765 --> 00:20:08,784 あっ うっ…。 224 00:20:08,784 --> 00:20:10,686 キャーッ! 225 00:20:10,686 --> 00:20:15,858 あっ 猫ちゃんの置物 かわいい! 226 00:20:15,858 --> 00:20:19,228 はい 夏目漱石のね この部屋の特徴としては➡ 227 00:20:19,228 --> 00:20:22,781 やはり この 積み上げられた本の山。 228 00:20:22,781 --> 00:20:26,068 そして この文机がな いいだろ この文机の➡ 229 00:20:26,068 --> 00:20:28,003 この 木の感じがさぁ! 230 00:20:28,003 --> 00:20:31,407 って お~い! 寝てた寝てた 寝てたね? 231 00:20:31,407 --> 00:20:33,425 寝てんじゃねえよ! 232 00:20:33,425 --> 00:20:37,196 あっ あの猫の置物 かわいい! 233 00:20:37,196 --> 00:20:41,366 はぁ…。 234 00:20:41,366 --> 00:20:43,466 ん~っ なぁ~っ!! うわぁ~! 235 00:20:46,522 --> 00:20:51,677 この部屋に なぜか漂っていた違和感。 236 00:20:51,677 --> 00:20:54,029 そして 謎の既視感。 237 00:20:54,029 --> 00:21:01,370 その正体 あの猫の置物で 確信したわ! 238 00:21:01,370 --> 00:21:03,970 この部屋は…。 239 00:21:07,342 --> 00:21:10,996 文机 火鉢 レトロな筆記用具。 240 00:21:10,996 --> 00:21:13,332 そして 積み重なった本。 241 00:21:13,332 --> 00:21:17,386 極めつけは 漱石の書の扁額のコピー! 242 00:21:17,386 --> 00:21:23,859 おまけに 左利きの 漱石に合わせた物の配置。 243 00:21:23,859 --> 00:21:29,848 そして ご丁寧に 猫の置物まで コピーしてるなんて➡ 244 00:21:29,848 --> 00:21:32,367 なんて浅はかなの! 245 00:21:32,367 --> 00:21:34,353 何をいきなり。 246 00:21:34,353 --> 00:21:36,538 これは 私のオリジナルだ。 247 00:21:36,538 --> 00:21:40,692 部屋の全コピなんて おしゃ家ソムリエとして➡ 248 00:21:40,692 --> 00:21:43,045 言語道断だわ。 249 00:21:43,045 --> 00:21:46,348 ソムリエなど 外来語を この部屋で使わないでくれるか。 250 00:21:46,348 --> 00:21:48,867 ブゥー シーット!! 251 00:21:48,867 --> 00:21:53,856 先刻 アイラブユーって言ってた口が よく そんなこと言えるわね~。 252 00:21:53,856 --> 00:21:58,293 どうせ 部屋だけじゃなくて 口から吐き出す言葉も➡ 253 00:21:58,293 --> 00:22:01,346 ぜ~んぶ コピーなんでしょ。 254 00:22:01,346 --> 00:22:04,032 違う違う コピーなんかじゃない! 255 00:22:04,032 --> 00:22:07,019 違うっていうなら あなたの コピペ作品がないか➡ 256 00:22:07,019 --> 00:22:09,688 調べてみましょう。 257 00:22:09,688 --> 00:22:13,525 雨蝶さんの作品は どこかしら~? 258 00:22:13,525 --> 00:22:15,544 おいおい 頼むから やめてくれ。 259 00:22:15,544 --> 00:22:18,063 ちょちょちょちょ…。 ギュイーン! 260 00:22:18,063 --> 00:22:20,199 発見 ちょっと失礼。 261 00:22:20,199 --> 00:22:23,185 ん? あらららら… あら。 262 00:22:23,185 --> 00:22:25,871 あら… あら ちょっと ちょっと あっち行きなさい。 263 00:22:25,871 --> 00:22:28,740 これは 原稿用紙ではないとはいえ➡ 264 00:22:28,740 --> 00:22:31,940 この中には 先生の作品が たくさん詰まってるんでしょ。 265 00:22:34,847 --> 00:22:37,182 ハァーッ あ~!! 266 00:22:37,182 --> 00:22:39,518 えっ えっ えっ えっ! 267 00:22:39,518 --> 00:22:41,687 雨蝶の仕事フォルダーの中に➡ 268 00:22:41,687 --> 00:22:45,858 ネットニュースまとめ記事の 原稿しかないって どういうこと? 269 00:22:45,858 --> 00:22:50,262 しかも このネットニュース Twitterで炎上したものを➡ 270 00:22:50,262 --> 00:22:54,016 ただただ コピーして まとめただけの➡ 271 00:22:54,016 --> 00:22:58,003 記事とも呼べない 俗にいう クソ記事! 272 00:22:58,003 --> 00:23:02,407 アンタは どこまで コピペ人間なのよ! 273 00:23:02,407 --> 00:23:06,278 駄文を書いて 飯を食ってるって言っただろ! 274 00:23:06,278 --> 00:23:09,478 ⦅駄文を書いて飯を食っている⦆ 275 00:23:11,366 --> 00:23:14,870 はぁ~ にゃんですと~!! 276 00:23:14,870 --> 00:23:18,023 駄文を書いて飯を食ってるって➡ 277 00:23:18,023 --> 00:23:21,193 謙遜して 言ってるのかと思ったら➡ 278 00:23:21,193 --> 00:23:23,879 ネットニュースをまとめただけの➡ 279 00:23:23,879 --> 00:23:27,366 本当の意味の 駄文だったんか~い!! 280 00:23:27,366 --> 00:23:32,866 アンタは… 白紙だ~ ドーン!! 281 00:23:35,857 --> 00:23:38,210 ハァ… ハァ… ハァ…。 282 00:23:38,210 --> 00:23:40,210 はぁ… 一度 落ち着きたい。 283 00:23:44,199 --> 00:23:48,637 ふぅ~ 昭和だ~。 284 00:23:48,637 --> 00:23:50,637 昭和に逃げるな~!! 285 00:23:53,692 --> 00:23:55,727 口を開きゃ➡ 286 00:23:55,727 --> 00:24:00,782 昭和 昭和 昭和 昭和 昭和…。 287 00:24:00,782 --> 00:24:06,004 アンタは 昭和のステマか~!! 288 00:24:06,004 --> 00:24:10,409 しかも これの何が昭和なんだよ!? 289 00:24:10,409 --> 00:24:15,013 えぇ!? あのなぁ 私たちは今➡ 290 00:24:15,013 --> 00:24:18,684 令和を生きてるんです~! 291 00:24:18,684 --> 00:24:21,703 あぁ~! 292 00:24:21,703 --> 00:24:24,903 俺を殺してくれ~!! 293 00:24:27,175 --> 00:24:29,695 そうだよ 俺は情緒がないんだよ。 294 00:24:29,695 --> 00:24:32,698 生まれて初めて書いた 読書感想文は➡ 295 00:24:32,698 --> 00:24:35,017 他の学年も含め校内一と称された。 296 00:24:35,017 --> 00:24:39,187 だが! そこに書いた すべての文章は➡ 297 00:24:39,187 --> 00:24:42,190 過去の作家たちの言葉の寄せ集め。 298 00:24:42,190 --> 00:24:44,843 そう コピーだった。 299 00:24:44,843 --> 00:24:48,497 それから俺は 自分の評価が 下がることを恐れ➡ 300 00:24:48,497 --> 00:24:51,867 それを繰り返した。 301 00:24:51,867 --> 00:24:54,519 おかげで高校を卒業するまで 俺の コピペ文章は➡ 302 00:24:54,519 --> 00:24:58,006 教師たちから評価され続けた。 303 00:24:58,006 --> 00:25:00,692 俺の文学は死んでいる。 304 00:25:00,692 --> 00:25:04,346 紙に にじんだ よほど文字とも呼べぬ➡ 305 00:25:04,346 --> 00:25:07,032 無機質な インクたちが 俺を見上げて いつも笑うんだ。 306 00:25:07,032 --> 00:25:10,202 だから 書けない!! なのに書きたい! でも➡ 307 00:25:10,202 --> 00:25:14,373 怖くて書けない! そういうことを繰り返して➡ 308 00:25:14,373 --> 00:25:17,225 気が付くと➡ 309 00:25:17,225 --> 00:25:20,846 いくつもの季節が 俺の前を通り過ぎていった。 310 00:25:20,846 --> 00:25:24,032 これが 20年間➡ 311 00:25:24,032 --> 00:25:27,886 自分の言葉を 一文字も書けなかった男の話だ。 312 00:25:27,886 --> 00:25:33,525 それを書け~い!! 313 00:25:33,525 --> 00:25:36,511 な~に 長々としゃべってんのコラ~!! 314 00:25:36,511 --> 00:25:40,549 アンタの 今 口から出た言葉を これに書きなさいよ!! 315 00:25:40,549 --> 00:25:43,685 アンタの血が流れてる➡ 316 00:25:43,685 --> 00:25:48,206 今の言葉のほうが 私の心に➡ 317 00:25:48,206 --> 00:25:53,206 届いたんだよ。 おしゃ子さん…。 318 00:25:55,764 --> 00:25:57,764 ありがとう! 319 00:26:05,006 --> 00:26:10,679 いや 礼には及ばぬですぞ では…。 320 00:26:10,679 --> 00:26:14,516 あっ 最後に これだけ! 321 00:26:14,516 --> 00:26:19,337 あなたに吐いた言葉の中で 1つだけ コピーだと言われても➡ 322 00:26:19,337 --> 00:26:21,437 俺の生きた言葉があった! 323 00:26:23,875 --> 00:26:27,875 アイラブユー。 英語か~い!! 324 00:26:32,350 --> 00:26:34,350 (猫の鳴き声) 325 00:30:05,847 --> 00:30:10,035 なるほどな~。 えっ? 326 00:30:10,035 --> 00:30:12,203 めう江さん 読書なんて珍しい。 327 00:30:12,203 --> 00:30:15,357 何 読んでるんですか? え? 328 00:30:15,357 --> 00:30:17,359 知らない? 329 00:30:17,359 --> 00:30:20,845 今 これ ベストセラーの仁保雨蝶って➡ 330 00:30:20,845 --> 00:30:24,849 すっごい おもしろいの。 うん。 えっ? 331 00:30:24,849 --> 00:30:27,836 仁保… 雨蝶? ベストセラー!? 332 00:30:27,836 --> 00:30:30,355 ビックリした なに急に おっきな声 出して。 333 00:30:30,355 --> 00:30:33,024 ビックリしたのは こっちだよ。 めう江さん ちょっと貸して。 334 00:30:33,024 --> 00:30:35,410 えっ 何 何? え~! 335 00:30:35,410 --> 00:30:39,180 『二十年を20秒で伝える力』? 336 00:30:39,180 --> 00:30:41,480 えぇ~! 337 00:30:43,535 --> 00:30:49,090 1冊 書き上げてるけど こっちに振り切ったんか~い! 338 00:30:49,090 --> 00:30:54,863 ぶっとび~!! 339 00:30:54,863 --> 00:30:57,515 読んでるんだから返してよ。 340 00:30:57,515 --> 00:31:00,835 はいはい。 今週 仕上げですよね これ。 341 00:31:00,835 --> 00:31:04,672 ハッ いや 書いてますって! 342 00:31:04,672 --> 00:31:07,692 実際 だって ここにありますもん。 (猫の鳴き声) 343 00:31:07,692 --> 00:31:10,678 あっ はい 頑張ります。 じゃあ また。 344 00:31:10,678 --> 00:31:12,680 は~い うぃっす うぃっす。 345 00:31:12,680 --> 00:31:16,851 (雷鳴) 346 00:31:16,851 --> 00:31:18,853 遅かったわね。 347 00:31:18,853 --> 00:31:22,707 すみません。 348 00:31:22,707 --> 00:31:28,847 フフフフ… ハハハハハ…。 349 00:31:28,847 --> 00:31:30,847 アーッハッハッハッ…。